IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クアンティカ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2023-502685材料吐出システム、プリントヘッド、3Dプリンター、および材料吐出のための方法
<>
  • 特表-材料吐出システム、プリントヘッド、3Dプリンター、および材料吐出のための方法 図1
  • 特表-材料吐出システム、プリントヘッド、3Dプリンター、および材料吐出のための方法 図2
  • 特表-材料吐出システム、プリントヘッド、3Dプリンター、および材料吐出のための方法 図3
  • 特表-材料吐出システム、プリントヘッド、3Dプリンター、および材料吐出のための方法 図4
  • 特表-材料吐出システム、プリントヘッド、3Dプリンター、および材料吐出のための方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】材料吐出システム、プリントヘッド、3Dプリンター、および材料吐出のための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20230118BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20230118BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230118BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230118BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C64/209
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529447
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2020081636
(87)【国際公開番号】W WO2021099185
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】19210067.5
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522196674
【氏名又は名称】クアンティカ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】QUANTICA GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェルバー,ルートビヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハートコップ,ベン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL74
(57)【要約】
材料吐出システム、プリントヘッド、3Dプリンター、および材料吐出のための方法が提供される。材料吐出システムは、ハウジングと、ハウジングに設けられ、ハウジングを上部空間と下部空間とに分割するプレートとを含み、下部空間は、吐出のための材料を保持するように構成され、材料吐出システムはさらに、コントローラユニットと、1つ以上の材料吐出ユニットとを含み、1つ以上の材料吐出ユニットは各々、プレートにおいて略平行な2つのスリットによって形成されたメンブレンと、上部空間においてメンブレンの上方に設けられた第1の電極と、第1の電極上に設けられた圧電素子と、圧電素子上に設けられた第2の電極とを含み、第1の電極および第2の電極は各々、電圧を圧電素子に提供するためにコントローラユニットに電気的に接続され、1つ以上の材料吐出ユニットの各々はさらに、メンブレンの下に設けられ、下部空間へと延長する延長部材を含む。材料吐出システムはさらにノズルプレートを含み、ノズルプレートは、ハウジングの底端に設けられ、1つ以上のノズル開口部を含み、ノズル開口部は、それぞれの延長部材のそれぞれの下部に対応する位置に形成され、下部空間において前記下部から所定距離離れて設けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料吐出システムであって、
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングを上部空間と下部空間とに分割するプレートとを含み、前記下部空間は、吐出のための材料を保持するように構成され、前記材料吐出システムはさらに、
コントローラユニットと、
1つ以上の材料吐出ユニットとを含み、前記1つ以上の材料吐出ユニットは各々、
前記プレートにおいて略平行な2つのスリットによって形成されたメンブレンと、
前記上部空間において前記メンブレンの上方に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極上に設けられた圧電素子と、
前記圧電素子上に設けられた第2の電極とを含み、前記第1の電極および前記第2の電極は各々、電圧を前記圧電素子に提供するために前記コントローラユニットに電気的に接続され、前記1つ以上の材料吐出ユニットの各々はさらに、
前記メンブレンの下に設けられ、前記下部空間へと延長する延長部材を含み、
前記材料吐出システムはさらにノズルプレートを含み、前記ノズルプレートは、前記ハウジングの底端に設けられ、1つ以上のノズル開口部を含み、前記ノズル開口部は、それぞれの延長部材のそれぞれの下部に対応する位置に形成され、前記下部空間において前記下部から所定距離離れて設けられる、材料吐出システム。
【請求項2】
前記圧電素子は、前記スリットの方向に対応する長さ方向を有し、前記長さ方向に垂直な幅方向を有するとともに、前記メンブレンに垂直な、前記下部空間から前記上部空間へと配向された高さ方向を有し、
前記圧電素子は、横方向圧電効果の変形が前記圧電素子の前記長さ方向に沿って生じるような配向で設けられる、請求項1に記載の材料吐出システム。
【請求項3】
縦方向圧電効果は、前記圧電素子のd33効果に関連付けられた効果であり、および/または、前記圧電素子の分極は、前記高さ方向と平行である、請求項1または2に記載の材料吐出システム。
【請求項4】
前記プレートは金属プレートであり、前記メンブレンは金属メンブレンであり、
前記圧電素子は、前記金属メンブレンに導電接合され、
接合が、前記圧電素子と前記金属メンブレンとの接触面の略全体上で提供される、請求項1~3のいずれか1項に記載の材料吐出システム。
【請求項5】
前記ノズル開口部の直径直径は、30~200マイクロメートルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の材料吐出システム。
【請求項6】
電圧が前記圧電素子に印加されない場合、前記所定距離は、5~450マイクロメートルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の材料吐出システム。
【請求項7】
ポリイミド薄膜メンブレンが、前記圧電素子と下方に存在するあらゆる材料との接触を防止するための障壁として作用するように、前記金属プレートと前記延長部材との間に設けられ、
前記ポリイミド薄膜メンブレンは、カプトンメンブレンであり、および/または、
前記ポリイミド薄膜メンブレンの厚さは、10~100マイクロメートルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の材料吐出システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の材料吐出システムの1つ以上を含む、プリントヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載のプリントヘッドを1つ以上含む、3Dプリンター。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の材料吐出システムからの材料吐出のための方法であって、電圧が前記第1の電極および前記第2の電極に印加され、前記圧電素子の縦方向変形が前記金属メンブレンの屈曲へと変わり、それにより、前記延長部材の線形運動を引き起こす、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3Dプリンターのためのプリントヘッドに関する。特に、この発明は、材料吐出システム、プリントヘッド、3Dプリンター、および材料吐出のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットタイプの3Dプリンターは、アクチュエータユニットとプリントヘッドとを含む。アクチュエータユニットは、3次元空間でプリントヘッドを動かす。プリントヘッドは、印刷材料を吐出するように構成された材料吐出システムを含む。印刷材料は吐出システムから吐出されて、3次元物体の層を連続的に形成する。オプションで、吐出された材料は、3次元物体を形成する際に硬化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
材料吐出システムは、印刷材料の液滴を吐出するための圧電アクチュエータシステムを含む場合がある。圧電アクチュエータシステムは通常、複数の積層圧電素子を含む。しかしながら、そのような積層圧電素子は製造が複雑であり、複雑な駆動電子機器を必要とし、構造的に敏感である。
【0004】
EP 1 631 439 B1は、物体を定義するデータに応答して構成材料の薄層を順に重ねて順次形成することによって物体を生成するための装置に関する。装置は、複数の出力オリフィスを有して形成された表面を各々有し、他のオリフィスから独立して各オリフィスを通して構成材料を分配するように制御可能である複数の印刷ヘッドと、印刷ヘッドが搭載されるシャトルと、支持面と、コントローラとを含み、コントローラは、支持面上に第1の層を形成し、その後、他の層を順次形成するように、支持面上を前後に移動するようにシャトルを制御し、シャトルが動くにつれてデータに応答してそれぞれのオリフィスの各々を通して構成材料を分配するように印刷ヘッドを制御するように適合され、各印刷ヘッドは、他の印刷ヘッドから独立してシャトルから取り外し可能であり、交換可能である。
【0005】
US 2003/088969 A1は液滴吐出装置に関し、それは、複数の液体吐出ノズルと、多孔質材料を含む液体供給層とを含み、液体供給層は、ノズルに関連付けられた穴を特徴として備え、液滴吐出装置はさらに、ノズルを通して液滴を吐出するために穴に関連付けられた複数の変換器を含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みて、目的は、改良された材料吐出システム、プリントヘッド、3Dプリンター、および材料吐出のための方法を提供することである。上述の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、この発明のさらなる局面に関する。
【0007】
この発明によれば、材料吐出システムが提供される。材料吐出システムは、ハウジングと、ハウジングに設けられ、ハウジングを上部空間と下部空間とに分割するプレートとを含み、下部空間は、吐出のための材料を保持するように構成され、材料吐出システムはさらに、コントローラユニットと、1つ以上の材料吐出ユニットとを含み、1つ以上の材料吐出ユニットは各々、プレートにおいて略平行な2つのスリットによって形成されたメンブレンと、上部空間においてメンブレンの上方に設けられた第1の電極と、第1の電極上に設けられた圧電素子と、圧電素子上に設けられた第2の電極とを含み、第1の電極および第2の電極は各々、電圧を圧電素子に提供するためにコントローラユニットに電気的に接続され、1つ以上の材料吐出ユニットの各々はさらに、メンブレンの下に設けられ、下部空間へと延長する延長部材を含む。材料吐出システムはさらにノズルプレートを含み、ノズルプレートは、ハウジングの底端に設けられ、1つ以上のノズル開口部を含み、ノズル開口部は、それぞれの延長部材のそれぞれの下部に対応する位置に形成され、下部空間において前記下部から所定距離離れて設けられる。
【0008】
本発明の好ましい一実施形態によれば、圧電素子は、スリットの方向に対応する長さ方向を有し、長さ方向に垂直な幅方向を有するとともに、メンブレンに垂直な、下部空間から上部空間へと配向された高さ方向を有する。圧電素子は、横方向圧電効果の変形が圧電素子の長さ方向に沿って生じるような配向で設けられる。
【0009】
本発明の好ましい一実施形態によれば、縦方向圧電効果は、圧電素子のd33効果に関連付けられた効果であり、および/または、圧電素子の分極は、高さ方向と平行である。
【0010】
本発明の好ましい一実施形態によれば、プレートは金属プレートであり、メンブレンは金属メンブレンである。圧電素子は、金属メンブレンに導電接合される。接合が、圧電素子と金属メンブレンとの接触面の略全体上で提供される。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態によれば、ノズル開口部の直径は、30~200マイクロメートルである。
【0012】
この発明の一局面によれば、電圧が圧電素子に印加されない場合、所定距離は、5~450マイクロメートルである。
【0013】
本発明の好ましい一実施形態によれば、ポリイミド薄膜メンブレンが、圧電素子と下方に存在するあらゆる材料との接触を防止するための障壁として作用するように、金属プレートと延長部材との間に設けられる。ポリイミド薄膜メンブレンは、カプトンメンブレンである。それに加えて、またはそれに代えて、ポリイミド薄膜メンブレンの厚さは、10~100マイクロメートルである。
【0014】
本発明の別の局面によれば、本発明に従った材料吐出システムの1つ以上を含む、プリントヘッドが提供される。
【0015】
本発明のさらに別の局面によれば、本発明に従ったプリントヘッドを含む、好ましくは本発明に従ったプリントヘッドを1つ以上含む、3Dプリンターが提供される。
【0016】
本発明によれば、本発明に従った材料吐出システムからの材料吐出のための方法であって、電圧が第1の電極および第2の電極に印加され、圧電素子の縦方向変形が金属メンブレンの屈曲へと変わり、それにより、延長部材の線形運動を引き起こす、方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】圧電素子が中立位置にある状態での、本発明の一実施形態に従った吐出ユニットの概略図である。
図2】圧電素子が引張位置にある状態での、本発明の一実施形態に従った吐出ユニットの概略図である。
図3】本発明の一実施形態に従ったプリントヘッドの概略分解図である。
図4】本発明の一実施形態に従った、組み立てられたプリントヘッドの概略断面図である。
図5】本発明の一実施形態に従ったアクチュエータアセンブリの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面の詳細な説明
以下に、本発明の実施形態を説明する。なお、説明されるすべての実施形態のいくつかの局面は、特に明記されない限り、いくつかの他の実施形態でも見出される場合があり、または、当業者にとって自明である場合がある。しかしながら、理解しやすさを高めるために、各局面は、初めて言及される場合にのみ詳細に説明され、同じ局面のいかなる説明の繰り返しも省略される。
【0019】
図1は、圧電素子102が中立位置にある状態での、本発明の一実施形態に従った材料吐出ユニット(material ejection unit)MEU1の概略図を示す。詳細には、図1は、本発明の一実施形態に従った材料吐出ユニット1の断面を示す。
【0020】
本発明の一実施形態では、材料吐出システム(material ejection system)MES2は、互いに平行に配置された1つ以上の材料吐出ユニット1を含む(図5参照)。前記実施形態では、1つ以上のMEU1は、単一の共通のハウジング200内に形成される。好ましい一実施形態では、1つ以上のMEUのハウジング200は共通のハウジングであり、複数のハウジング部品を含む。図1の側壁201および202は、ハウジング200のハウジング部品である。
【0021】
本発明の一実施形態では、ハウジング200にプレート600が設けられ、それは好ましくは金属プレート600である。好ましい一実施形態では、プレート600は、ハウジング200の断面の略全体にわたって設けられ、それにより、ハウジング200における上部空間10および下部空間20を定義する。プレート600には、平行なスリット601が、好ましくはレーザー切断および/または電鋳によって形成される。スリット601間には、金属メンブレンまたは舌部602が形成される。好ましい一実施形態では、複数のメンブレン602が互いに隣り合って形成され、隣接するMEU1の隣接するメンブレン602と少なくとも1つのスリット601を共有する。
【0022】
本発明の実施形態では、メンブレン602の上方に、すなわち上部空間10に、第1の電極101が設けられる。好ましい実施形態では、第1の電極101は、好ましくはスパッタリングプロセスで、導電層によって形成される。第1の電極101の上方に、圧電素子102が設けられる。圧電素子102の上方に、第2の電極103が設けられる。好ましい実施形態では、第2の電極101は、好ましくはスパッタリングプロセスで、導電層から形成される。
【0023】
本発明の一実施形態では、第1の電極101は、金属メンブレンによって形成される。すなわち、金属メンブレンは電極として機能し、圧電素子は、金属メンブレン上に直接設けられる。
【0024】
圧電素子102は、第1の電極101および第2の電極103に導電接続される。第1および第2の電極は、電気コネクタ104aおよび104bを介してコントローラ105に導電接続される。好ましい一実施形態では、MESの1つ以上のMEUが、単一の共通のコントローラ105に接続される。コントローラは、第1の電極101および第2の電極103を介して圧電素子102に印加される電圧を制御するように構成される。好ましい実施形態では、コントローラ105は、それぞれの圧電素子102ごとに独立して電圧を制御するように構成される。
【0025】
好ましい一実施形態では、圧電素子102は単一の積層圧電素子であり、より好ましくは、改質ジルコン酸鉛チタン酸鉛、PZT、PIC255、組成である。
【0026】
以下、スリット601の方向、すなわちメンブレン602の方向は、長さ方向lを定義する。金属プレート600の平面において長さ方向に垂直に、幅w方向が定義され、前記平面に垂直に、下部空間から上部空間へと、高さ方向hが定義される。図1および図2では、それぞれの方向は、左上の座標系における矢印によって示される。
【0027】
本発明によれば、圧電素子102はd33構成で設けられる。すなわち、圧電素子の分極方向は、電圧が印加されると第1の電極101と第2の電極103との間に生成される電界と平行である。
【0028】
本発明によれば、圧電素子はさらに、電圧が高さ方向に印加されると横方向圧電効果が長さ方向に観察されるような配向で設けられる。
【0029】
言い換えれば、圧電素子102は、電圧が第1の電極101および第2の電極103に印加されると長さ方向および高さ方向に伸張し、高さ変形は長さ変形よりも効率的である。
【0030】
好ましい一実施形態では、d33モード構成で整列された圧電素子における電界は、直交するd31構成の電界と比較して、より高い正味効率を有する。
【0031】
本発明の一実施形態では、圧電素子はさらに、一次的なd33歪みの変形のおよそ1/3の、直交するd31変形を経験する。
【0032】
好ましい一実施形態では、金属プレート600は鋼鉄製である。好ましい一実施形態では、導電性薄膜エポキシ接着剤が、圧電素子102と金属プレート600および/または第1の電極に形成された金属メンブレン602とを接合するために使用され、好ましくは圧電素子102と金属メンブレン602との接触面全体にわたって形成される。これは、圧電素子および金属メンブレン602の接合面間の電気伝導性を可能にする。好ましい一実施形態では、金属メンブレン602は第1の電極101として使用される。
【0033】
本発明の一実施形態では、金属メンブレン602の下に、すなわちハウジング200の下部空間20に、延長部材400が設けられる。好ましい一実施形態では、延長部材は、円筒状の延長部材400である。好ましい一実施形態では、延長部材400は、金属メンブレン602の中心位置に設けられる。
【0034】
本発明の一実施形態では、延長部材400の上端部402が、好適な可撓性を有する接着剤によって金属メンブレン602に固定される。
【0035】
本発明の一実施形態では、ノズルプレート800(図3参照)が、下部空間20の下端すなわち底を定義するハウジングの底部に設けられる。ノズルプレート800には、1つ以上のノズル開口部801が形成される。好ましい一実施形態では、ノズル開口部801の少なくとも1つは、1つのMES2における1つ以上のMEU1の延長部材の位置に対応する。
【0036】
好ましい一実施形態では、ノズル開口部801の直径は、30~200マイクロメートル、より好ましくは50~110マイクロメートル、最も好ましくは65~85マイクロメートルである。好ましい一実施形態では、ノズルプレートは金属またはポリマーから形成され、ノズル開口部801は好ましくはエッチングまたはレーザー切断によって形成される。
【0037】
本発明の一実施形態では、電圧が圧電素子に印加されない場合、延長部材400の下端部401が、ノズルプレート800まで所定距離離れて位置付けられる。所定距離は、好ましくは5~450マイクロメートル、より好ましくは70~250マイクロメートル、最も好ましくは190~225マイクロメートルである。
【0038】
図2は、圧電素子が伸張された位置にある状態、すなわち電圧が印加された状態での、本発明の一実施形態に従った吐出ユニットの概略図を示す。上述されたように、電圧が第1の電極101および第2の電極103を介して圧電素子102に印加されると、これら2つの電極間に電界が生成される。本発明によれば、電界は高さ方向と平行であり、高さ方向に一次的なd33効果を生成し、長さおよび/または幅方向に二次的なd31効果を生成する。
【0039】
本発明によれば、圧電素子102は金属メンブレン602に固定される。したがって、圧電素子102は長さ方向に自由に膨張できないため、d31効果は、圧電素子102および金属メンブレン602の屈曲へと変わる。
【0040】
本発明の一実施形態では、この屈曲はさらに、同様に屈曲に寄与する圧電素子102のさらなる高さ膨張をもたらすd33効果によって増幅される。
【0041】
言い換えれば、d31効果および/またはd33効果は、圧電素子および金属メンブレン602の屈曲を引き起こす。本発明によれば、金属メンブレン602の屈曲は、高さ方向に沿った延長部材の並進へと変換される。この屈曲は、以下に疑似バイモルフ変形とも呼ばれる。
【0042】
すなわち、金属メンブレン602に対する圧電素子の横方向収縮および膨張は、圧電素子および金属メンブレン602の接続面に関して直交運動を引き起こし、前記金属メンブレン602の中心で金属メンブレン602に直交する線形運動の最高振幅での圧電伸張の増幅をもたらす。
【0043】
本発明の一局面は、疑似バイモルフ変形がd31効果および/またはd33のみよりも高い振幅を有し、したがって圧電変形が増幅されることである。これは、同じ圧電素子を使用する場合、または、同じ並進を達成するより小型の圧電素子を使用する場合に、延長部材の並進範囲の改良を可能にする。すなわち、疑似バイモルフ変形は、従来の圧電アクチュエータと比較して、よりコスト効率が高い。
【0044】
本発明の一実施形態では、ハウジング200の下部空間20に、材料が設けられる。材料は、延長部材400の下端部401が材料で終わるように設けられる。好ましい実施形態では、材料は液相で設けられる。
【0045】
本発明によれば、材料内での下端部401の動きが、ノズル開口部801を通る材料の一部の吐出を引き起こす。言い換えれば、好ましくは円形のノズル開口部の上方に位置する材料の柱が、下向きの衝撃を経験するであろう。これは、ノズル開口部を通る材料の制御された吐出を可能にする。
【0046】
粘度、表面張力、および他の流動学的要因といった異なる液体材料特性が、理想的な液滴放出を可能にする、作動のパラメータ制御のためのいくつかの窓を作成する。
【0047】
好ましい一実施形態では、MES2のMEU1は、各MEUの圧電素子の各々に電圧を独立して印加することにより、コントローラ105によって独立して駆動され得る。
【0048】
図3は、本発明の一実施形態に従ったプリントヘッド3の概略分解図を示す。本発明によれば、1つ以上のMEU1がMES2を形成する。さらに、本発明によれば、3Dプリンターのためのプリントヘッド3は、MES2と、さらなる構成要素とを含む。
【0049】
図3に示すような本発明の一実施形態では、プリントヘッド3はさらに、第1のコネクタ1101を介して材料を下部空間20に供給するための材料供給システム1100を含む。プリントヘッド3はさらに、上部空間10から気体および材料を除去または挿入するための第1の真空コネクタ1102、ならびに/もしくは、下部空間20から気体および材料を除去または挿入するための第2の真空コネクタ1103を含む。
【0050】
プリントヘッド3は、以下に説明される層状構造を有する。異なる層の使用は製造の点で多くの利点を有するが、本発明はそれらに限定されない。特に、ある実施形態では、いくつかの層が省略されてもよく、および/または、任意の数の層の機能が組合されるか別の層へと分割されてもよい。
【0051】
プリントヘッド3はさらに、ノズルプレート800の上方に設けられたスペーサープレート2002を含む。スペーサープレート2002は、それぞれの延長部材400のそれぞれの下端401に対するそれぞれのノズル開口部の正確な相対的位置付けを容易にする。
【0052】
プリントヘッド3はさらに、スペーサープレート2002の上方に設けられた基準プレート2003を含む。スペーサープレート2002は、それぞれの延長部材400のそれぞれの下端401に対するそれぞれのノズルプレート800の正確な位置付けを容易にするために、基準プレート2003に固定される。
【0053】
プリントヘッド3はさらに、基準プレート2003の上方に設けられたプリント回路基板(printed circuit board)PCB層3001を含む。PCB層3001は、少なくとも1つの加熱素子と、好ましくは少なくとも1つの温度感知素子3002とを含む。PCB層3001は、材料を加熱するように、および/または、材料の温度を制御するように構成される。
【0054】
プリントヘッド3はさらに、PCB層3001の上方に設けられた材料チャネルプレート2004を含む。材料チャネルプレート2004では、MEU1に各々対応する1つ以上の材料貯留槽が形成される。PCB層3001の少なくとも1つの加熱素子は、それぞれの1つ以上の材料貯留槽内の材料を加熱するために、材料チャネルプレートと熱接触している。少なくとも1つの加熱素子と温度感知素子3002とは、ノズルプレート800の上方に形成された材料貯留槽内に存在する材料の閉ループ温度制御のために構成される。
【0055】
プリントヘッド3はさらに、材料チャネルプレート2004の上方に設けられた断熱壁要素2005を含む。断熱壁要素2005は、加熱された材料チャネルプレート2004をその上方に位置する要素から断熱するように構成される。
【0056】
プリントヘッド3はさらに、材料選別プレート2006の上に設けられた材料流入プレート2007を含む。材料流入プレートは、材料供給システムを通して供給された材料をハウジングの少なくとも1つの壁に沿って材料貯留槽に誘導するように構成される。
【0057】
プリントヘッド3はさらに、材料流入プレート2007の上方に設けられたポリイミド薄膜メンブレン2008を含む。ポリイミド薄膜メンブレン2008は、それぞれの延長部材400をMEU1のそれぞれの金属メンブレン602に固定するように構成される。好ましい実施形態では、ポリイミド薄膜メンブレンは、カプトン(Kapton)メンブレンである。好ましい実施形態では、ポリイミド薄膜メンブレンの厚さは、10~100マイクロメートル、より好ましくは20~80マイクロメートル、最も好ましくは25~50マイクロメートルである。
【0058】
本発明の一実施形態では、ポリイミド薄膜メンブレンは、圧電素子と下方の材料貯留槽内に存在するあらゆる材料との接触を防止するための障壁として作用する。
【0059】
プリントヘッド3はさらに、ポリイミド薄膜メンブレン2008の上方に設けられた圧電素子保持プレート2009を含む。圧電素子保持プレート2009は、MES2の金属プレート600を含む。好ましい一実施形態では、MEU1のそれぞれの圧電素子102は、圧電素子保持プレート2009の上面の上方で接合される。MEUのそれぞれの延長部材400は、圧電素子保持プレート2009の下面の下方で固定され、疑似バイモルフ線形運動の、材料と気体との界面または材料と真空との界面を通した、材料貯留槽内に存在する材料への下向きの衝撃伝達を容易にする。
【0060】
プリントヘッド3はさらに、圧電素子保持プレート2009の上方に設けられたトップスペーサープレート2010を含む。
【0061】
プリントヘッド3はさらに、トップスペーサープレート2010の上方に設けられたPCB最上層3003を含む。PCB最上層3003は、MES2のコントローラ105を含む。MEU1のそれぞれの圧電素子102は、電気コネクタ104bを介してPCB最上層3003に接続される。
【0062】
プリントヘッド3はさらに、好ましくはPCB最上層3003上に設けられ、圧電素子保持プレート2009を通って下部空間20に入り、貯留槽内へと延長する材料レベル感知ユニット3005を含む。これは、プリントヘッド3に移送される適量の材料を維持することを可能にする。
【0063】
本発明の一実施形態では、プリントヘッド3はさらに、PCB最上層3003上に設けられ、PCB最上層3003を3Dプリンターの制御電子機器に接続するように構成された電気コネクタユニット3004を含む。
【0064】
図4は、図3の実施形態に従った、組み立てられたプリントヘッドの概略断面図を示す。本発明の実施形態では、組み立てられた場合、プリントヘッド3は、MES2のハウジング200と、MES2の1つ以上のMEU1とを含む。
【0065】
図5は、図3の実施形態に従ったアクチュエータアセンブリの概略斜視図を示す。詳細には、圧電素子保持プレート2009が、プリントヘッド3の残りから切り離されて示される。
【0066】
圧電素子保持プレート2009の下に、ポリアミド薄膜2008が、好ましくは圧電保持プレート2009の底面の略全体を覆って設けられる。ポリアミド薄膜2008の下に、複数の延長部材400が、MEU1ごとに1つ設けられる。圧電保持プレートでは、複数の平行なスリット601が、複数のメンブレン602を、MEU1ごとに1つ形成している。メンブレン602上に、複数の圧電素子102が、MEU1ごとに1つ設けられる。
【0067】
本発明の一実施形態では、延長部材400は、温度制御材料から、および圧電素子へのあらゆる直接的な熱的影響から圧電素子を引き離しながら、高振幅の作動を前記材料に伝達するように構成され、それにより、油圧アクチュエータシステムにおける熱歪みおよび摩耗を減少させる。
【0068】
本発明の一実施形態では、ノズル開口部の好ましくは線形の配置は、異なる構成では、1つの材料貯留槽内のノズル密度を改良するように変更される。配置は、圧電素子の最大密度が、圧電素子保持プレート2009上で個々に対処可能であることに依存する。前記圧電素子の形状は好ましくは、円形状、八角形状、六角形状、四角形状、三角形状、および/または前記形状の切頭体のうちの1つ以上であり得る。
【0069】
上に説明され例示されたことは、この発明の実施形態と、変形のうちのいくつかとである。ここに使用される用語、説明、および図は、例示のためにのみ述べられ、限定として意図されない。当業者であれば、別段の指示がない限り、すべての用語がそれらの最も広範な合理的な意味で意図される請求項およびそれらの均等物によって定義されるよう意図されたこの発明の精神および範囲内で、多くの変更が可能であることを認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】