(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】抗体クロマトグラフィー工程中の溶出液収集
(51)【国際特許分類】
C07K 1/16 20060101AFI20230118BHJP
C07K 1/18 20060101ALI20230118BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230118BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20230118BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230118BHJP
【FI】
C07K1/16 ZNA
C07K1/18
A61K39/395 K
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C07K16/18
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529468
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020082804
(87)【国際公開番号】W WO2021099528
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ ダウバート
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ゲルティンガー
(72)【発明者】
【氏名】カリン フェルデラー
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085DD32
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045GA21
4H045GA23
(57)【要約】
本発明は、ヒト治療用抗体の精製を目的とするクロマトグラフィー工程中のピーク分取及び溶出液収集のための改善された方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーによる抗体の精製方法であって、以下:
a)抗体を含むサンプルをクロマトグラフィー樹脂上にロードするステップ、
b)任意に、前記樹脂を洗浄するステップ、
c)溶出バッファーを前記クロマトグラフィー樹脂に適用するステップ、並びに
d)溶出液の収集を開始するステップ
を含み、
ここで、前記溶出液の吸収シグナルが予定値(A0)に達した後、予定間隔(D0)で前記溶出液の収集が開始され、
前記予定値(A0)が、精製しようとする前記抗体サンプルを含む異なる溶出ランによって得られる溶出ピークのピーク最大値での前記吸収シグナルの10~50%である方法。
【請求項2】
前記異なる溶出ランは、pH、負荷密度又は塩条件が変動する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変動する条件が、pH5~pH7の範囲内及び5~50g/L樹脂ロードの範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予定吸光度値(A0)が、280nmで測定して0~1500mAUの範囲内である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記予定吸光度値(A0)が、280nmで測定して700mAUである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予定間隔(D0)が、以下:
a)精製しようとする前記抗体サンプルを含む少なくとも2つの異なる溶出ラン(ER
1、・・・、ER
N)の前記溶出ピーククロマトグラムを受け取るステップであって、前記異なる溶出ランは、pH、負荷密度又は塩条件が変動するステップ、
b)ステップa)で受け取った前記溶出ピークの各々について吸収シグナルA
1、・・・、A
Nを指定するステップであって、A
1、・・・、A
Nの対応する溶出液画分の各々が、4%未満の凝集体/不純物含有率を有するステップ、
c)前記クロマトグラムにおける前記溶出ラン各々の前記吸収シグナルA
1、・・・、A
Nの流体量C
1、・・・、C
Nを決定するステップ、
d)A0の流体量C0に対する前記流体量C
1、・・・、C
Nの各々の差を計算するステップ、並びに
e)前記差を平均し(即ち、平均値を求め)、それにより、前記予定流体量間隔(D0)を取得するステップ
によって決定される流体量間隔である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記対応する溶出ピークの高さ最大値での吸収シグナルA
MAXに対するA
1、・・・、A
Nの距離が、280nmで測定して0~300mAUの範囲内である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記予定間隔値(D0)が、0.4~1.2CV流体量である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記予定間隔値(D0)が、0.6CV流体量である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記クロマトグラフィーが、イオン交換(IEX)クロマトグラフィーである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記クロマトグラフィーが、カチオン交換(CEX)クロマトグラフィーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体が、配列番号8のVH及び配列番号7のVLを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、配列番号10の重鎖と配列番号9の軽鎖を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法により得られる医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンパク質精製方法に関する。特に、本発明は、溶出液の収集開始のための最適化ピークカットを用いることによるクロマトグラフィー樹脂からの抗体溶離工程中のピーク分取のための改善された方法に関する。この最適化ピークカットは、様々な溶出ピーク幅及び高さを有する溶出ランで溶出液収集を開始するために、一貫して堅牢に適用することができる。より具体的には、本発明は、CEX純化工程中の溶出液収集を開始するために改善されたピークカットを適用してヒト治療用抗体を精製する方法、及び本明細書に開示の方法によって得られる精製抗体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
治療薬投与のために、全ての製剤原料は、異なる品質基準を満たす必要がある。例えば、治療用モノクローナル抗体(mAb)の臨床安全性及び忍容性を確実にするために、1つ又は複数の精製ステップは、mAbの製造プロセスに従う必要があり、例えば、凝集及び断片化した産物、核酸、ウイルス、宿主細胞タンパク質(HCP)、残留培地成分、並びに細胞培養添加剤などの不要な混入物を除去する必要がある。従って、全ての製造及び精製プロセスの開発の目標は、高い純度及び収率のタンパク質生成物をもたらす、信頼性が高く、再現可能で、且つ堅牢な方法を確立することである。重要なことには、バッチ間での生成物の一貫した品質を維持することが、医薬品製造において絶対に必要である。
【0003】
適切な均質性を達成すると共に、臨床適用に使用される治療グレード製品の高い品質基準を満たすために、精製プロセスの流れにいわゆる純化ステップが必要となる。往々にして、これらの純化ステップは、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)を含み、これは、初期抗体アフィニティクロマトグラフィーの後に、残留する凝集体及び不純物を除去するために使用される。
【0004】
純化工程中に適用される樹脂タイプ及び条件(例えば、負荷密度、結合-溶出モード又はフロースルーモード)の選択以外に、分取モードの選択(
図1)がもう1つの重要な側面である。「ピーク分取」は、溶出液収集の最も効率的なモードであり、これを用いて、収集されたタンパク質の純度を高めることができる。そのために、溶離中の溶出液収集を開始及び終了するための適切なピーク分取規格を決定しなければならない。ピーク分取は、目的の収集された画分が、隣接画分中(収集されない)に溶出した物質を最小限の量でしか含有しないことを確実にする。ピーク分取は、手動又は自動で実施することができる。手動モードでは、オペレータは、次の画分収集チューブへの取換えを決定する。自動化分取モードの場合には、規定の積分パラメータ(例えば、吸光度)が分取を制御する。サンプル組成物の変化(例えば、pH、塩濃度、伝導性、タンパク質濃度、負荷密度)は、ピーク形状の変動を招く恐れがあり、これは、入力された積分パラメータによって認識されない可能性があるため、自動化ピーク分取は、サンプル組成がクロマトグラフィーラン間で変化しない場合に限り推奨される。
【0005】
工業規模の製造の場合、ピークカットパラメータは、典型的に、280nmでの吸収の特異的シグナル(A280)、伝導率又はpHであり、これらは、画分の収集を開始及び停止するための閾値として予め決められる。例えば、Borg et al.(J Chromatogr A.2014 Sep 12;1359:170-81)は、ピーク上昇中に、280nmでの光学密度(OD)が0.5に達したとき、トリガーされる一定開始収集基準を適用するプール設計を開示している。エンドカットポイントは、最大ピーク値のパーセンテージにより決定される。国際公開第2014140570号パンフレットは、懸濁材料の規定尺度が明確な閾値に達したとき、収集を開始及び停止するという分離プロセスからの溶出液アウトプットの収集の制御に関する。Yigzaw et al.(Curr Pharm Biotechnol.2009 Jun;10(4):421-6)は、エンドカットポイントとして、ピーク最大値の異なる%での吸光度変動に基づく溶出液収集の停止を説明している。Westerberg et al.(Bioprocess Biosyst Eng.2010 Mar;33(3):375-82)は、HICケーススタディを開示しており、そこでは、収集を開始するための最初のカットポイントの選択に最大の影響を及ぼすパラメータを決定するモデルシミュレーションが使用された。この場合、パラメータは、ロードバッファーの伝導率であることが決定された。次に、サンプルロードの伝導率に対するカットポイントでの吸収シグナルの依存度を推定するために関数が設定された。続いて、特定の伝導率での上記関数の最大値が、理想的なカットポイントであることが決定された。
【0006】
米国特許第20160272673号明細書には、サンプルからDVD-Igs(商標)を単離及び精製するためのクロマトグラフィー法が記載されており、この場合、精製されたDVD-Igs(商標)は、上記サンプルと比較して、宿主細胞タンパク質、凝集体及びウイルスが低減している。米国特許第20160264618号明細書には、カチオン交換クロマトグラフィーによる抗体の精製方法が開示されている。その場合、クロマトグラムでのUVシグナルが、溶出ランに応じて、50mAU、100mAU又はそれ以上の予定値まで上昇したら、溶出液の収集が開始する。
【0007】
一般に、分取の課題は、生成物回収が最大で、且つ不純物濃度が存在しないか、又は低く、しかも規格内であるように、溶出液収集を開始及び終止するための最適ピークカットポイントの決定にある。サンプル組成及び様々なプロセスパラメータ(例えば、pH、ロード)のバッチ間変動の影響を受けにくい最適化ピーク収集基準(生成物溶出液をプールするための)を決定することは、抗体タンパク質を精製するスケール非依存的方法のために極めて重要である。とりわけ、改善された収率、高い純度を備えると同時に低コストで組成物をもたらす精製方法は、プロセス開発にとって非常に高い価値がある。
【0008】
米国特許第20130303732号明細書は、UVピーク最大値の予定パーセントに依拠して、生成物品質とは無関係にプールプロセスを開始する従来のプール方法ではなく、連続的モニターシステムとして光散乱及びUV吸光度を用いて、リアルタイムでの溶出ピーク画分に関する情報を提供することにより、生物製剤精製プロセス中の混入物を制御する方法を提供する。
【0009】
本出願の基礎を成す技術的な課題は、溶出バッファー、塩濃度及び負荷密度のpHとは関係なく標的抗体の最適収率を同時に維持することにより、凝集体及び不純物の効率的な低減と共に、クロマトグラフィー中の抗体溶離の改善のための手段の提供にあることがわかるだろう。本発明は、溶出液収集の最適化開始ポイントを見出すために、予定流体量と一緒に使用される基準吸収シグナルを指定する方法を提供することにより、これらのニーズを満たす。この利点は、様々な条件の溶出ランの往々にして予測不可能なピーク高さ及び形状とは独立して、理想的な溶出液収集開始が実現されることである。さらに、治療用抗体の精製中にこれらの改善されたピーク開始基準を適用することによるピーク分取方法も提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここで、本発明者らは、クロマトグラフィーによるタンパク質の精製方法を提供し、これは、以下:
a)タンパク質を含むサンプルをクロマトグラフィー樹脂上にロードするステップ、
b)任意に、樹脂を洗浄するステップ、
c)溶出バッファーをクロマトグラフィー樹脂に適用するステップ、並びに
d)溶出液の収集を開始するステップであって、溶出液の吸収シグナルが予定値(A0)に達した後、予定間隔(D0)で溶出液の収集が開始されるステップ
を含む。
【0011】
A0に達した後に予定間隔D0で溶出液を収集する開始シグナルを取得するための基準シグナルとして用いられる吸収シグナルA0の決定は、以下:
a)精製しようとするタンパク質サンプルを含む少なくとも2つの異なる溶出ラン(ER1、・・・、ERN)(N=2以上の整数)の溶出ピーククロマトグラムを受け取るステップであって、異なる溶出ランは、pH、負荷密度又は塩条件が変動するステップ、並びに
b)溶出ピークにおいて吸光度値A0を指定するステップであって、A0は、各溶出ピークのピーク最大値での吸収シグナル(AMAX1、・・・、AMAXN)の10~50%の範囲にあり、且つER1、・・・、ERNの溶出ピーク各々の間で同じであるステップ
を含む。
【0012】
予定間隔D0は、以下:
a)精製しようとするタンパク質サンプルを含む少なくとも2つの異なる溶出ラン(ER1、・・・、ERN)の溶出ピーククロマトグラムを受け取るステップであって、異なる溶出ランは、pH、負荷密度又は塩条件が変動するステップ、
b)ステップa)で受け取った溶出ピークの各々について吸収シグナルA1、・・・、ANを指定するステップであって、A1、・・・、ANの対応する溶出液画分の各々が、5%未満の凝集体/不純物含有率を有するステップ、
c)クロマトグラムにおける溶出ラン各々の吸収シグナルA1、・・・、ANの流体量C1、・・・、CNを決定するステップ、
d)A0の流体量(C0である)に対する前記流体量C1、・・・、CNの各々の差D1、・・・、DNを計算するステップ、並びに
e)前記差D1、・・・、DNを平均し(即ち、平均値を求め)、それにより、予定流体量間隔D0を取得するステップ
を含む方法によって得られる流体量間隔である。
【0013】
さらに、本発明者らは、イオン交換クロマトグラフィー樹脂上に、抗体と凝集体/不純物を含有する混合物を適用するステップ、樹脂を洗浄するステップ、クロマトグラフィー樹脂から抗体を溶離するステップ、並びに本明細書に記載の方法で決定された収集の開始ポイントを用いるピーク分取により溶出液画分を収集するステップを含む、抗体の精製方法を提供する。溶出液収集の開始は、異なるピーク幅及び高さに関して影響を受けにくい。
【0014】
本方法は、ピークの最前部(即ち、上昇部)に凝集体/不純物蓄積を有するクロマトグラフィーピークによって描かれる抗体サンプルの精製に特に適している。例えば、高分子量(HMW)及び低分子量(LMW)の場合のように、不純物は、
図2に示す通り、未純化抗体サンプルの急激に増加するピークの開始時に濃縮した。
【0015】
溶出液収集を開始するための明確なA280吸収シグナル(UV280nmで測定された吸光度)を決めるのではなく、本発明者らは、ピークの発生を指し示すA280吸収シグナル(本明細書では、A0として示される)を決定した。A0は、例えば、少なくとも2つの異なる溶出ランの正規化溶出ピークの間の対応する流体量(測定単位:カラム体積、CV)で同じであり、その場合、異なる溶出ランは、pH、塩又は負荷密度条件が変動する。或いは、A0は、異なる溶出ランE1、・・・、ENの溶出ピークの最も低い高さを有する溶出ピークのピーク最大値の吸収シグナルの50%である。好ましくは、A0は、異なる溶出ランE1、・・・、ENの溶出ピークの全ピーク最大値の10%~50%である。
【0016】
吸収シグナルA0は、流体量C0(測定単位:カラム体積、CV)で、異なる溶出ランE1、・・・、ENの溶出ピーク曲線と交差する。C0は、溶出ピークの各々の形状に応じて、異なる溶出ランE1、・・・、ENの個々の溶出ピークの間で相違し得る。次に、A0の流体量(C0である)が、予定流体量間隔(本明細書では、「遅延」と呼ばれ、例えば、0.6カラム体積)と共に使用されることになり、それに次のA280吸収シグナルが到達すると、その対応する流体量と、一緒に溶出液収集の開始ポイントが定められる。
【0017】
一実施形態では、イオン交換クロマトグラフィーステップは、結合-溶出モードのマルチモーダルカチオン交換クロマトグラフィーステップ(Capto MMC ImpRes,GE Healthcare)であり、この場合、塩グラジエントを用いて、カラムから抗体を溶離する。
【0018】
一実施形態では、精製しようとする抗体は、モノクローナル抗体である。本発明はまた、本開示の方法を用いて、プロセスの流れ中の凝集体及び/又は不純物からモノクローナル抗体を分離したプロセスにより精製されたモノクローナル抗体も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(A)定量分取及び(B)ピーク分取(AEKTA avant User Manual 29-0351-84 AD,GE Healthcareから修正)を用いた分取モードの概略的クロマトグラムを示す。
【
図2】CEX純化工程中の溶出ランの代表的なクロマトグラムを示す。溶出液画分(X軸)の抗体モノマー含有率(左側Y軸)並びにHMW及びLMW凝集体/不純物(右側Y軸)を示す。凝集体/不純物は、溶出ピークの始め(画分H7、A8、B8、C8、D8、E8、F8、G8)に蓄積する。
【
図3A-3C】流体量間隔D0を決定するために使用した3つの試験溶出ランER1、ER2及びER3の溶出ピーククロマトグラムを示す。影付きのセグメントは、それぞれ、2300~400mAU(ER1の場合、
図3A)、1800~400mAU(ER2の場合、
図3B)、及び1300~400mAU(ER3の場合、
図3C)からの最適溶出プール面積を表す。各ランの溶出液収集の開始は、凝集体/不純物が10%未満の対応する溶出液画分を有する吸収シグナル地点である(
図2と比較)。
【
図4A-4G】溶出液の収集を開始するための予定流体量間隔D0を適用し、条件を変動させた、異なる溶出ラン#4~#10(ER
4~ER
10)の溶出ピーククロマトグラムを示す。
【
図5】Capto MMC ImpResを用いた抗体精製のために表示されるピーク収集開始ポイント及び終点を有する正規化溶出ピーククロマトグラムを示す。例示される溶出ラン(ER
4~ER
10)は、pH及び負荷密度を変動させた7つの異なる条件下で行う(表3)(a:A0と正規化C0の交差、b:予定D0間隔「遅延」(ここでは:0.6CV);c:ピーク分取開始(溶出液収集の開始);d:ピーク分取範囲、e:ピーク分取停止(溶出液収集の停止)ここでは、400mAU、UV280nm)A0:UV280nmで測定した予定吸収シグナル、ここでは:700mAU)。
【
図6】溶出液収集の開始ポイントに到達するために用いようとする間隔D0を決定するコンセプトを示す。ピークの形状が変動する2つの溶出ランの溶出ピークが概略的に例示される。基準吸光度A0と、最大ピーク高さ(A
MAX1、A
MAX2)での、及び最適溶出開始(A
1、A
2)のための吸収シグナル、並びに対応する流体量C0、C
1及びC
2が表示される。最適溶出開始は、凝集体含量及び不純物が規格内の溶出画分に関する。典型的に、4%未満の凝集体/不純物(即ち、HMW及びLMW含有率)(即ち、96%超のモノマー含有率)が、画分に最適であると考えられる。
【
図7】異なる形状(
図5に例示されたピーク形状と比較して)を有する溶出ピークに予定間隔D0を適用するコンセプトを示す。溶出液収集は、吸収シグナルAXでCXに達したとき、流体量間隔D0で開始する。
【
図8】UNICORN(商標)7.1(Build 7.1.0.378)のMethod Editor内の既定グラジエント溶出相の相特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
クロマトグラフィーによるタンパク質精製
製薬業において、治療用mAbなどの標的分子の製造プロセスは、典型的に以下:i)標的タンパク質の生産を含む上流処理(USP);ii)精製による純粋形態の標的タンパク質の生産を含む下流処理(DSP);及びiii)製品の完全性及び安全性を達成するための最終処理に区分される。
【0021】
典型的には、生産段階後の下流精製プロセスの最初のステップは、採取された細胞培養ブロスの清澄化を含み、ここで、沈殿、凝集、(デプス)濾過及び/又は遠心分離の1つ又は複数のステップを用いて、細胞、細胞残屑、及び他の混入物から所望のタンパク質を分離する。下流精製プロセスは、プロセス及び産物関連不純物を効率的に除去するための、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換、疎水性相互作用、ハイドロキシアパタイト、クロマトフォーカシング、ゲル濾過、及び逆相などの1つ又は複数の(直交型)クロマトグラフィー分離ステップをさらに含む。これらの混入物として、限定されないが、宿主細胞タンパク質(HCP)、浸出プロテインA、生成物アイソフォーム、高分子量(HMW)種、低分子量(LMW)種、及び切除又は分解産物が挙げられる。二量体及びより高次の凝集体(多量体)などのHMW種をもたらし得るパラメータとして、限定されないが、タンパク質濃度、pH、イオン強度、酸素、温度、塩濃度、せん断力、外的ストレス(例えば、金属表面との相互作用、空気への曝露、凍結及び/又は解凍)が挙げられる。望ましくない翻訳後修飾又は分子アンフォールディングも凝集を促進し得る。
【0022】
アフィニティクロマトグラフィーは、精製しようとする所望の標的タンパク質と特異的に相互作用する化合物の使用を指す。通常、所望の標的生成物を単離、精製、又は除去する目的で、化合物を樹脂に固定化する。例えば、抗体の精製のために、アフィニティ樹脂は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のプロテインA、レンサ球菌属種(Streptococcus sp.)由来のプロテインG、ペプトストレプトコッカス・マグヌス(Peptostreptococcus magnus)由来のプロテインL、及びそれらの組換え若しくは合成バージョン又はペプチドを含む。樹脂としては、MAbSelect(商標)(GE Healthcare)、Prosep A(登録商標)(Millipore)などが挙げられる。実験室規模の適用の場合、1ステップアフィニティ精製で、一般的に満足な純度が達成される。例えば、プロテインAクロマトグラフィーは、抗体を捕捉するための最も広く用いられているものとして、アフィニティ精製は、IgGのFc部分に対するその高い特異性のために、>95%の純度を維持する。精製方法の他の例としては、チオール基吸着(thiophilic adsorption)、疎水性相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィー、金属キレートアフィニティクロマトグラフィー、及びサイズ排除クロマトグラフィーが挙げられる(Vijayalakshmi,M.A.,Appl.Biochem.Biotech.75(1998)93-102)。残留凝集体及び/又は不純物の更なる除去は、1つ若しくは2つの追加クロマトグラフィーステップの組合せにより達成することができ、それは、ハイドロキシアパタイト、疎水性相互作用(HIC)、及びイオン交換クロマトグラフィー(IEX、例えば、カチオン交換(CEX)、アニオン交換(AEX)、又は混合モード交換)を含み得る。製造規模では、凝集体及び/又は不純物の除去は、初期抗体アフィニティクロマトグラフィーの後、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)の使用によって達成されることが多い。初期アフィニティ捕捉の下流の混入物除去のためには、市販のマルチモーダルイオン交換体、例えば、Capto MMC及びCapto adhere、並びにCapto MMC ImpRes及びCapto adhere ImpRes(全て、GE Healthcareから)を使用することができる。IEXは、表面電荷が異なるタンパク質を分離して、高いサンプルロード容量で高精細分解を達成する。分離は、荷電タンパク質(即ち、荷電アミノ酸側鎖)と、逆荷電クロマトグラフィー媒体との間の可逆的な静電気的相互作用に基づく。AEXは、正荷電官能基(例えば、4級アミン基を有する強アニオン交換体、又は2級アミン基を有する弱アニオン交換体)を含む。標的タンパク質の等電点(pI)より高いpH値では、タンパク質の正味電荷は負であり、これは、正荷電樹脂に対するその結合を促進する。標的タンパク質の溶離は、漸増塩グラジエントを用いるか、事前に定めたpH及び塩濃度の段階溶出によるか、又は溶出バッファーpH漸減によるかのいずれかにより実施される。これに対し、CEXは、負荷電官能基を有する樹脂(例えば、サルファイト基を有する強カチオン交換体、又はカルボキシレートアニオンを有する弱カチオン交換体)上でのタンパク質の精製を含む。ここで、典型的に、標的タンパク質は、標的タンパク質のpIより低いpHの低塩濃度のバッファー液中の樹脂に結合する(即ち、タンパク質の電荷は正である)。標的タンパク質の溶離は、漸増塩グラジエントを用いるか、事前に定めたpH及び塩濃度での段階溶出によるか、又は溶出バッファーpH漸増によるかのいずれかにより実施される。
【0023】
タンパク質分子は、その電荷特性が大幅に異なり、その全電荷、電荷密度及び表面電荷分布の違いに応じて、荷電クロマトグラフィー媒体との様々な程度の相互作用を示す。例えば、モノクローナル抗体は、カルボキシル基及びアミノ基などのイオン化基を含む。これらの基の電荷は、pHに依存する。従って、抗体のpIに応じて、バルク生成物を様々なpH条件に曝露することにより、タンパク質分子の電荷を操作することができる。AEX及びCEXはいずれも、凝集体だけではなく、他の不純物も除去するのに有効であることが実証されている。
【0024】
分取タイプ
典型的に、標的生成物からの二量体及び他の凝集体種の分離は、これらの実体が類似する化学構造であるために、困難である。従って、精製プロセスの制御、また、特に分取タイプの選択は、樹脂(例えば、AEX、CEX、HICなど)及び適用する条件(例えば、タンパク質ロード、結合-溶出モード又はフロースルーモード)の選択以外に重要な他の側面である。「定量分取」工程中、画分コレクターは、溶出液を連続的に収集し、溶出ステップ全体を通して、明確な設定量に従いチューブを取り換える。このタイプの分取は、ストレート分取としても知られる(
図1A)。これに対し、「ピーク分取」は、収集されたタンパク質ピークの純度を高めると共に、使用されるチューブの数を最小限にするために使用することができる(
図1B)。また、「定量」及び「ピーク」分取の組合せを適用することもでき、これによって「定量分取」により収集される画分と「ピーク分取」により収集される画分を異なる収集チューブに向けることが可能になる。「ピーク分取」工程中に、標的タンパク質からの凝集体及び/又は不純物の分離は、特定のピーク開始及び停止収集基準を用いて、間接的に制御される。溶出中にピーク収集を開始及び終止するためのピークカット基準として、いくつかのパラメータが利用可能である。工業規模の製造の場合、典型的なピークカットパラメータは、特定のA280吸収シグナル(UV280nmで測定)、伝導率又はpHであり、溶出液の収集を開始及び停止するための閾値基準として事前に定められている。課題は、一方で、生成物の回収を最大にし、且つ凝集体及び/又は不純物濃度が存在しないか、又は極めて低く、しかも規格内であるように、生成物溶出液収集の開始及び終止のための最適なカットポイント(閾値基準)を決定することである。さらに、これらのポイントの決定は、様々な溶出条件下で精製しようとするサンプルの溶出ピーク形状の潜在的な相違のために阻まれる。
【0025】
ピークカット基準は、標的タンパク質が、個別のピークとして凝集体/不純物から識別可能に「溶出する」ように、標的タンパク質から除去しようとする凝集体/不純物が標的タンパク質から、例えば、洗浄ステップによって十分にベースライン分離される場合にしか容易に設定することはできない。こうした場合、溶出液収集のためのシグナルは、通常、往々にして、溶出ピークの上昇部で溶出ピークが達成する最大高さのパーセンテージに基づき、低吸光度値に設定される。しかし、ピークの最前部に凝集体/不純物が累積して、標的タンパクと凝集体/不純物との明確な境界が存在しないサンプル(例えば、ピークの明確な境界がない線形グラジエント)の場合(
図2)には、最適な収集開始の決定は困難である。特に、タンパク質の荷電バリアント及び凝集形態は、依然として精製プロセスの重大な課題となる。加えて、プロセスパラメータ(例えば、溶出バッファーのpH、カラムにロードされるタンパク質の量)は、典型的に特定の範囲内で変動し、ピークの形状(即ち、幅及び高さ)に直接影響を及ぼし得る。低過ぎるピーク開始基準(例えば、吸光度)を選択すると、より高く且つ/又は狭いピークの場合には不純物の除去が効果的ではなくなるのに対し、高過ぎるピーク開始基準を選択すると、より低く且つ/又は広いピークの場合に収率が低下する。明確なA280シグナルに全く到達することがなければ、結果として、サンプルは一切収集されることはなく、標的タンパク質全体が消失する。従って、同等若しくは類似品質の溶出液をもたらす多様な条件にわたって効果的に使用することができる、溶出液収集のための普遍的に有効な開始ポイントの決定は、困難且つやりがいのある作業である。この課題の解決は、本明細書に説明されるクレームに反映され、実施例及び図面に例示される。
【0026】
実施形態
本開示は、精製工程中のクロマトグラフィー樹脂から抗体を溶離するための改善された方法に関する。特に、本開示は、吸収シグナルA0に達した後、予定間隔D0で溶出液を収集するための開始シグナルを取得するための基準シグナルとして用いられる吸収シグナルA0の決定方法に関し、この方法は、以下:
a)精製しようとするタンパク質サンプルを含む少なくとも2つの異なる溶出ラン(ER1、・・・、ERN)の溶出ピーククロマトグラムを受け取るステップであって、異なる溶出ランは、pH、負荷密度又は塩条件が変動するステップ、並びに
b)溶出ピークにおいて吸光度値A0を指定するステップであって、A0は、各溶出ピークのピーク最大値での吸収シグナルの10~50%の範囲にあり、且つER1、・・・、ERNの各溶出ピークの間で同じであるステップ
を含む。
【0027】
別の実施形態では、本開示は、抗体サンプルのクロマトグラフィーで溶出液画分を収集するための改善された開始ポイントの基準として用いようとする吸収シグナルA0の決定方法に関し、この方法は、以下:
a)抗体サンプルを含む少なくとも2つの異なる溶出ラン(ER1、・・・、ERN)の溶出ピーククロマトグラムを決定するステップであって、異なる溶出ランは、pH、負荷密度又は塩条件が変動するステップ、
b)前記異なる溶出ランクロマトグラムの各々において吸収シグナル(A1、・・・、AN)を指定するステップであって、
i)吸収シグナル(A1、・・・、AN)のそれぞれの溶出ピークのピーク最大値での吸収シグナル(AMAX1、・・・AMAXN)に対する数値差が、300mAU以下であり、
ii)この吸収シグナル(A1、・・・、AN)で収集された対応する溶出液画分が、10%未満の凝集体/不純物含有率を特徴とするステップ、
c)ステップb)で指定された前記吸収シグナルの流体量に従って溶出ピーククロマトグラムを正規化するステップ、
d)正規化した溶出ピーククロマトグラムをオーバーレイするステップ、並びに
e)吸収シグナルA0を決定するステップであって、A0が、溶出ピークの上昇部にあり、正規化溶出ピーク間で対応するカラム体積について同じである、ステップ
を含む。
【0028】
他の実施形態では、ステップb)において、それぞれの溶出ピークのピーク最大値AMAXでの吸収シグナルに対する吸収シグナルの差は、150mAU以下、200mAU以下、250mAU以下、300mAU以下、400mAU以下、500mAU以下、600mAU以下、700mAU以下である。
【0029】
他の実施形態では、A1、・・・、ANと、対応する溶出ピークの高さ最大値での吸収シグナルAMAXとの距離は、280nmで測定して0~150mAU、0~200mAU、0~250mAU、0~300mAU、0~400mAU、0~500mAU、0~600mAU、0~700mAUの範囲である。
【0030】
他の実施形態では、ステップb)での吸収シグナル(A1、・・・、AN)の対応する溶出液画分は、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満の凝集体/不純物含有率を特徴とする。好ましい実施形態では、凝集体/不純物含有率は、HMW及びLMW種に関する。
【0031】
別の実施形態では、凝集体及び/若しくは不純物、例えば、高分子量多量体種(二量体、オリゴマー、凝集体)、低分子量種(クリップなど)及び他の混入物などからの標的抗体の効率的な分離と共に、溶出液収集の最適な開始ポイントを設定することにより、クロマトグラフィー樹脂から抗体を溶離する方法が提供される。
【0032】
本開示はまた、クロマトグラフィー樹脂からの抗体の精製方法にも関し、これは、以下:a)抗体及び凝集体/不純物を含むサンプルを樹脂にロードするステップ、b)任意に、樹脂を洗浄バッファーで洗浄するステップ、c)溶出バッファーを適用するステップ、及びd)抗体溶出液を収集するステップを含み、ここで、溶出液の収集は、吸収シグナルAXでの予定吸光度値A0の流体量C0の後、少なくとも0.1CV流体量で開始される。さらに別の実施形態では、溶出液の収集は、吸収シグナルAXでのA0の流体量C0の後、少なくとも0.2CV、少なくとも0.3CV、少なくとも0.4CV、少なくとも0.5CV、少なくとも0.6CV、少なくとも0.7CV、少なくとも0.8CV、少なくとも0.9CV、少なくとも1.0CV、少なくとも1.1CV、少なくとも1.2、少なくとも1.3CV、少なくとも1.4CV、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7CV、少なくとも1.8CV、少なくとも1.9CV、少なくとも2.0CV、少なくとも2.1CV、少なくとも2.2CV、少なくとも2.3CV、少なくとも2.4CV、少なくとも2.5CV、少なくとも2.6CV、少なくとも2.7CV、少なくとも2.8CV、少なくとも2.9CV、少なくとも3.0CVで開始される。
【0033】
他の実施形態では、抗体溶出液の収集が開始される流体量間隔D0は、吸収シグナルAXでのA0の流体量C0の後、0.1CV、0.2CV、0.3CV、0.4CV、0.5CV、0.6CV、0.7CV、0.8CV、0.9CV、1.0CV、1.1CV、1.2CV、1.2CV、1.4CV、1.5CV、1.6CV、1.7CV、1.8CV、1.9CV、2.0CV、2.1CV、2.2CV、2.3CV、2.4CV、2.5CV、2.6CV、2.7CV、2.8CV、2.9CV、3.0CVである。
【0034】
さらに別の実施形態では、本開示は、クロマトグラフィー樹脂から抗体を溶離する方法を提供し、ここで、本方法は、1つ又は複数のイオン交換クロマトグラフィーステップを含み、これは、ピーク分取(即ち、溶出液の収集)の開始が、吸収シグナルAXでのA0の流体量C0後の0.1~1.8CV流体量であることを特徴とする。
【0035】
特定の実施形態では、本開示は、抗体を溶離する方法を提供し、ここで、本方法は、1つ又は複数のカチオン交換クロマトグラフィーステップを含み、これは、ピーク分取(即ち、溶出液の収集)の開始が、吸収シグナルAXでのA0の流体量C0後の0.1~1.8CV流体量であることを特徴とする。
【0036】
本明細書に記載される全ての実施形態において、吸収シグナルAXは、異なる溶出ランER1、・・・、ERNの個々の溶出ピーク間で変動し得る。
【0037】
また、クロマトグラフィー工程中の抗体溶離の方法も開示され、ここで、溶出液は、吸収シグナルA0の予定流体量後、少なくとも0.1~3.0CV流体量、好ましくは0.4~1.2CVの遅延を伴って収集され、ここで、前記吸収シグナルA0は、オーバーレイ及び正規化クロマトグラムにおいて異なるpH又は負荷密度条件を有する少なくとも2つの異なる溶出ランによって得られる少なくとも2つのクロマトグラフィー溶出ピークの第1交差ポイントでの吸光度である。好ましくは、正規化は、流体量に従う。
【0038】
別の実施形態では、前記溶出ランは、異なるpH及び負荷密度条件で行われる。
【0039】
一実施形態では、本開示は、抗体を溶離する方法を提供し、ここで、本方法は、アフィニティクロマトグラフィーに続いて、混合モードクロマトグラフィーステップを含む。この混合モードステップは、カチオン若しくはアニオン交換又はその両方の組合せのいずれかを特徴とし得る。このステップは、単一タイプのイオン交換体混合モード工程に基づいてもよいし、又はアニオン交換混合モードステップの前にカチオン交換混合モードステップ(又はその逆)を実施するなどの多重イオン交換体混合モードステップを含んでもよい。一実施形態では、イオン交換混合モードステップは、1ステップ工程である。
【0040】
特定の実施形態では、イオン交換混合モードステップは、2ステップイオン交換混合モードプロセスを含む。好適なカチオン交換カラムは、その固定相が、アニオン基を含むカラムである。こうしたカラムの一例は、Capto MMC(商標)、Capto MMC(商標)ImpRes(GE Healthcare)、Nuvia(商標)cPrime(商標)(Biorad)である。
【0041】
別の実施形態では、好適なアニオン交換カラムは、その固定相が、カチオン基を含むカラムである。こうしたカラムの一例は、Capto Adhere(商標)、及びCapto Adhere(商標)ImpRes(GE Healthcare)である。
【0042】
一実施形態では、アフィニティクロマトグラフィーステップは、一次回収サンプルを、好適なアフィニティクロマトグラフィー支持体を含むカラムに供することを含む。こうしたクロマトグラフィー支持体の例として、限定されないが、プロテインA、プロテインG、プロテインL、目的の抗体が産生された抗原を含むアフィニティ支持体、及び他のFc結合分子を含むアフィニティ支持体が挙げられる。特に、プロテインAは、IgG抗体のアフィニティ精製のために有用である。特定の態様では、プロテインAは、ProSep(登録商標)Ultra Plus Protein A、MabSelect SuRe(商標)Protein A、及びAmsphere Protein A(商標)樹脂から選択される。一態様では、プロテインAカラムは、サンプルローディングの前に好適なバッファーで平衡させる。好適なバッファーの一例は、PBS、pH7.0~7.3である。この平衡の後、サンプルをカラムにロードする。カラムにロードした後、例えば、平衡バッファーを用いて、カラムを1回又は複数回洗浄する。異なるバッファーを用いた他の洗浄をカラムの溶出前に使用してもよい。次に、適切な溶出バッファーを用いて、プロテインAカラムを溶出することができる。好適な溶出バッファーの一例は、酢酸ナトリウムバッファー、pH約3.6を含む。
【0043】
一実施形態では、サンプルバッファーのpH及びイオン強度を調節することにより、マルチモーダルCEXのためにアフィニティクロマトグラフィー溶出液を調製する。例えば、アフィニティ溶出液は、約10~約200g/Lの負荷密度で、約4.5~約7.0のpHに調節することができる。好ましくは、pHは、4.95~5.65であり、負荷密度は、20~40g/Lである。アフィニティ溶出液サンプルをマルチモーダルCEXカラムにロードする前に、好適なバッファーを用いてカラムを平衡させることができる。好適なバッファーの一例は、20mM酢酸ナトリウム、20mM MES、pH5.5である。平衡の後、アフィニティ溶出液をカラムにロードする。ロードした後、好適なバッファーを用いて、カラムを1回又は複数回洗浄する。好適なバッファーの一例は、平衡バッファーそのものである。別の実施形態では、類似条件下での混合モードクロマトグラフィーステップのために、アフィニティ溶出液を調製する。
【0044】
本発明の一実施形態は、得られる抗体溶出液が、宿主細胞タンパク質、DNA、浸出プロテインA、凝集体、HMW種、LMW種及びフラグメントといったプロセス及び生成物関連不純物を実質的に含まないように、サンプルから抗体を精製する方法に関する。
【0045】
一実施形態では、本開示は、粗混合物(標的抗体以外に、HCP、凝集体及び他の不純物を含み得る)からの細胞培養物由来抗体又は抗体フラグメントの精製方法を提供し、ここで、本方法は、アフィニティクロマトグラフィーステップ及び1つ若しくは複数のIEXクロマトグラフィーステップを含み、これらは、溶出液収集を開始するためのクロマトグラフィーピークカット基準が、以下:i)基準としての第1の予定A280シグナルA0が到達された第1流体量時点C0と、ii)第2のA280シグナル(AX)が到達された第2カラム体積時点CX(その時点で、標的タンパク質溶出液収集が開始される)を含むことを特徴とする。CXとC0との差は、予定流体量間隔D0と一致する。
【0046】
一実施形態では、CXとC0の間の流体量差は、0.1~2.5CV流体量の範囲である。他の実施形態では、CXとC0の間の差は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9又は3.0CV流体量である。
【0047】
一態様では、抗体の特性決定のために、カチオン交換クロマトグラフィー工程中の溶出にpHグラジエントを使用する。一実施形態では、pHグラジエントは、4.9~7.0の範囲である。
【0048】
別の態様では、溶出に線形塩グラジエントを使用する。一実施形態では、塩グラジエントは、100~500mMの範囲である。
【0049】
本開示の一実施形態では、精製しようとする抗体は、ヒト、ヒト化又はキメラ抗体である。
【0050】
本発明の特定の実施形態では、精製しようとする抗体は、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又はIgMアイソタイプ抗体及びそれらの変異体である。
【0051】
好ましい実施形態では、精製しようとする抗体は、IgG1抗体である。
【0052】
一実施形態では、本開示は、IL-17Cに特異的な抗体又は抗体フラグメントの精製方法に関する。別の実施形態では、本開示は、IL-17Cに特異的な抗体又は抗体フラグメントの精製方法に関し、ここで、前記抗体又は抗体フラグメントは、以下:
配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1領域、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2領域、配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3領域、配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1領域、配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3領域
を含む。
【0053】
別の実施形態では、本開示は、IL-17Cに特異的な抗体又は抗体フラグメントの精製方法に関し、ここで、前記抗体又は抗体フラグメントは、以下:配列番号1のHCDR1領域、配列番号2のHCDR2領域、配列番号3のHCDR3領域、配列番号4のLCDR1領域、配列番号5のLCDR2領域、及び配列番号6のLCDR3領域を含む。
【0054】
一実施形態では、本開示は、配列番号8の可変重鎖及び配列番号7の可変軽鎖に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、重鎖及び軽鎖を含む可変重鎖及び可変軽鎖を含む抗体の精製方法に関する。
【0055】
さらに別の実施形態では、本開示は、配列番号10の重鎖及び配列番号9の軽鎖に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、重鎖及び軽鎖を含む抗体の精製方法に関する。
【0056】
一実施形態では、本開示は、配列番号8の可変重鎖及び配列番号7の可変軽鎖を含む抗体の精製方法に関する。
【0057】
さらに別の実施形態では、本開示は、配列番号10の重鎖及び配列番号9の軽鎖を含む抗体の精製方法に関する。
【0058】
別の実施形態では、本開示は、IL-17Cに特異的な抗体又は抗体フラグメントの精製方法に関し、ここで、前記抗体又は抗体フラグメントは、以下:配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1領域、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2領域、配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3領域、配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1領域、配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3領域、並びに配列番号8の可変重鎖及び配列番号7の可変軽鎖に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する可変重鎖及び可変軽鎖を含む。
【0059】
別の実施形態では、本開示は、IL-17Cに特異的な抗体又は抗体フラグメントの精製方法に関し、ここで、前記抗体又は抗体フラグメントは、以下:配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1領域、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2領域、配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3領域、配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1領域、配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3領域、並びに配列番号10の重鎖及び配列番号9の軽鎖に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、重鎖及び軽鎖を含む。
【0060】
別の実施形態では、本開示は、IL-17Cに特異的な抗体又は抗体フラグメントの精製方法に関し、ここで、前記抗体又は抗体フラグメントは、以下:配列番号1のHCDR1領域、配列番号2のHCDR2領域、配列番号3のHCDR3領域、配列番号4のLCDR1領域、配列番号5のLCDR2領域及び配列番号6のLCDR3領域、並びに配列番号8の可変重鎖及び配列番号7の可変軽鎖に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する可変重鎖及び可変軽鎖を含む。
【0061】
別の実施形態では、本開示は、IL-17Cに特異的な抗体又は抗体フラグメントの精製方法に関し、ここで、前記抗体又は抗体フラグメントは、以下:配列番号1のHCDR1領域、配列番号2のHCDR2領域、配列番号3のHCDR3領域、配列番号4のLCDR1領域、配列番号5のLCDR2領域、及び配列番号6のLCDR3領域、並びに配列番号10の重鎖及び配列番号9の軽鎖に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する重鎖及び軽鎖を含む。
【0062】
本発明を適用することができる抗体調製物は、天然、合成、又は組換え供給源からの未精製若しくは部分的精製抗体を含み得る。この混合物は、細胞培養材料、例えば、可溶化細胞及び細胞培養上清であってもよい。特定の実施形態では、混合物は、清澄化細胞培養回収物である。他の実施形態では、抗体調製物は、プロテインAクロマトグラフィー溶出液である。また別の実施形態では、混合物は、AIEXクロマトグラフィーステップにより得られる溶出液である。本発明の方法を純化ステップとして用いて、抗体を含有する任意の混合物から抗体を精製することができる。
【0063】
さらに、本開示は、本明細書に記載の方法により精製される1つ又は複数の抗体を含む医薬組成物に関する。
【0064】
得られるサンプル生成物中の目的の抗体の純度は、当業者に周知の方法を用いて分析することができ、そうした方法として、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、Poros(商標)A HPLCアッセイ、HCP ELISA、プロテインA ELISA及びウエスタンブロット分析が挙げられる。
【0065】
好ましい実施形態では、本明細書に提供される方法により、95.0%、95.5%、96.0%、96.5%、97.0%、97.5%、98.0%、98.5%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%以上、又は99.9%以上のSECモノマー含有率を有する精製抗体が得られる。別の実施形態では、精製タンパク質は、100%のSECモノマー含有率を有する。
【0066】
別の実施形態では、本明細書に提供される方法により、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%以上、又は99%以上の収率で、精製抗体が得られる。
【0067】
好ましい実施形態では、本開示は、クロマトグラフィーによる抗体の精製方法に関し、これは、以下:
a)抗体を含むサンプルをクロマトグラフィー樹脂上にロードするステップ、
b)任意に、樹脂を洗浄するステップ、
c)クロマトグラフィー樹脂に溶出バッファーを適用するステップ、及び
d)溶出液の収集を開始するステップ
を含み、ここで、溶出液の収集は、溶出液の吸収シグナルが予定値(A0)に達した後、予定間隔(D0)で開始される。
【0068】
別の実施形態では、予定値(A0)は、精製しようとする抗体サンプルを含む異なる溶出ランによって得られる溶出ピークのピーク最大値での吸収シグナルの10~50%の範囲である。前記の異なる溶出ランは、pH、負荷密度又は塩条件が変動する。好ましくは、変動する条件は、pH5~pH7の範囲内及び5~50g/L樹脂ロードの範囲内である。
【0069】
好ましい実施形態では、予定吸光度値(A0)は、280nmで測定して0~1500mAUの範囲にある。別の実施形態では、予定吸光度値(A0)は、280nmで測定して約700mAUである。また別の実施形態では、A0は、溶出ピークの上昇部にある。
【0070】
別の実施形態では、先行するいずれかに記載の方法に関し、ここで、予定間隔(D0)は、以下:
a)精製しようとする抗体サンプルを含む少なくとも2つの異なる溶出ラン(ER1、・・・、ERN)の溶出ピーククロマトグラムを受け取るステップであって、異なる溶出ランは、pH、負荷密度又は塩条件が変動するステップ、
b)ステップa)で受けとった溶出ピークの各々について吸収シグナルA1、・・・、ANを指定するステップであって、A1、・・・、ANの対応する溶出液画分の各々が、5%未満の凝集体/不純物含有率を有するステップ、
c)クロマトグラムにおける溶出ラン各々の吸収シグナルA1、・・・、ANの流体量C1、・・・、CNを決定するステップ、
d)A0の流体量C0に対する前記流体量C1、・・・、CNの各々の差を計算するステップ、並びに
e)前記差を平均し(即ち、平均値を求め)、それにより、予定流体量間隔(D)を取得するステップ
によって決定される流体量間隔である。
【0071】
好ましい実施形態では、対応する溶出ピークの最大高さでの個々の吸収シグナルAMAXに対するA1、・・・、ANの距離は、280nmで測定して0~100mAUの範囲にある。
【0072】
別の実施形態では、予定間隔値(D0)は、0.4~1.2CV流体量であるか、又は予定間隔値(D0)は、0.6CV流体量である。
【0073】
好ましい実施形態では、クロマトグラフィーは、イオン交換(IEX)クロマトグラフィーである。好ましくは、クロマトグラフィーは、カチオン交換(CEX)クロマトグラフィーである。最も好ましくは、クロマトグラフィーは、マルチモーダルCEXである。
【0074】
好ましい実施形態では、本開示は、マルチモーダルカチオン交換(CEX)クロマトグラフィーによる抗体の精製方法に関し、これは、以下:
a)前記抗体を含むサンプルをマルチモーダルCEXクロマトグラフィー樹脂上にロードするステップ、
b)任意に、樹脂を洗浄するステップ、
c)溶出バッファーをマルチモーダルCEXクロマトグラフィー樹脂に適用するステップ、並びに
d)溶出液の収集を開始するステップ
を含み、
ここで、溶出液の吸収シグナルが、280nmで測定して700mAUの予定値(A0)に達した後、0.6CV流体量の予定間隔(D0)で溶出液の収集が開始され、
前記抗体は、配列番号10の重鎖及び配列番号9の軽鎖を含む。
【0075】
別の実施形態では、本開示は、マルチモーダルカチオン交換(CEX)クロマトグラフィーによるIL-17Cに特異的な抗体の精製方法に関し、これは、以下:
a)前記抗体を含むサンプルをマルチモーダルCEXクロマトグラフィー樹脂上にロードするステップ、
b)任意に、樹脂を洗浄するステップ、
c)溶出バッファーをマルチモーダルCEXクロマトグラフィー樹脂に適用するステップ、並びに
d)溶出液の収集を開始するステップ
を含み、
ここで、溶出液の吸収シグナルが、280nmで測定して700mAUの予定値(A0)に達した後、0.6CV流体量の予定間隔(D0)で溶出液の収集が開始され、
前記抗体は、以下:配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1領域、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2領域、配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3領域、配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1領域、配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3領域、並びに配列番号8の可変重鎖及び配列番号7の可変軽鎖に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する可変重鎖及び可変軽鎖を含む。
【0076】
別の実施形態では、本開示は、マルチモーダルカチオン交換(CEX)クロマトグラフィーによるIL-17Cに特異的な抗体の精製方法に関し、これは、以下:
a)前記抗体を含むサンプルをマルチモーダルCEXクロマトグラフィー樹脂上にロードするステップ、
b)任意に、樹脂を洗浄するステップ、
c)溶出バッファーをマルチモーダルCEXクロマトグラフィー樹脂に適用するステップ、並びに
d)溶出液の収集を開始するステップ
を含み、
ここで、溶出液の吸収シグナルが、280nmで測定して700mAUの予定値(A0)に達した後、0.6CV流体量の予定間隔(D0)で溶出液の収集が開始され、
前記抗体は、以下:配列番号1のアミノ酸配列を含むHCDR1領域、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2領域、配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3領域、配列番号4のアミノ酸配列を含むLCDR1領域、配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3領域、並びに配列番号10の重鎖及び配列番号9の軽鎖に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する、重鎖及び軽鎖を含む。
【0077】
定義
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、ペプチド結合を介して互いに連結したアミノ酸の連続鎖を指す。この用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を示すために用いられ、ペプチド結合を介して互いに連結された2つのアミノ酸を含む最小鎖を指すことができる。本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ペプチドフラグメント」、「ポリペプチド」、「アミノ酸鎖」、「アミノ酸配列」、又は2つ以上のアミノ酸の1つ若しくは複数の鎖を示すために用いられるいずれか他の用語は、総称的に、「タンパク質」の定義に含まれる。この用語は、さらに、翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、又はアミド化を被ったタンパク質も包含する。宿主細胞において発現可能な任意のタンパク質を、本発明に従って、発現させ、精製することができる。例えば、酵素、受容体、抗体、抗体フラグメント、ホルモン、調節因子、サイトカイン抗原、結合剤、融合タンパク質、代替スカフォールドタンパク質などを精製するために、本開示を使用することができる。
【0078】
「バッファー」は、その酸-塩基コンジュゲート成分の作用によるpHの変化に影響されない溶液である。例えば、バッファーの所望のpHに応じて使用することができる様々なバッファーは、Buffers.A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems,Gueffroy,D.,ed.Calbiochem Corporation(1975)に記載されている。この範囲内でpHを制御するバッファーの非限定的な例として、MES、MOPS、MOPSO、Tris、HEPES、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、及びアンモニウムバッファー、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0079】
「溶出バッファー」という用語は、典型的に、ポリペプチド(分析物)を、それが先に適用された精製装置(例えば、クロマトグラフィー樹脂)から取り出す(溶出する)ために使用されるバッファーを指す。典型的には、溶出バッファーは、不要な凝集体/不純物からの目的のポリペプチドの分離が達成され得るように、選択される。多くの場合、溶出バッファー中の特定の成分、例えば、特定の塩(例えば、NaCl)の濃度を溶出工程中に変化させる(グラジエント)。グラジエントは、連続的(線形)又は段階的(保持期間により中断される)であってもよい。
【0080】
「線形塩グラジエント」という用語は、溶出工程中に用いられるグラジエントバッファーの時間経過と共に変化する塩濃度(イオン強度)を指す。典型的には、固定相との相互作用を促進するために、サンプルは低塩環境にロードする。一般に用いられる塩は、塩化及び酢酸ナトリウム及びカリウムである。分析物を溶離する目的で、固定相/分析物相互作用を妨害するために、適切な塩濃度が必要とされる。典型的な溶出濃度は、100~500mMの範囲である。
【0081】
「等電点(pI)」という用語は、特定の分子又は表面が正味電荷を帯びていないpHである。ポリペプチドのpIは、ポリペプチドを構成するアミノ酸に依存する。そのpIを下回るpHで、ポリペプチドは、正味の正電荷を帯びる。そのpIを超えるpHで、ポリペプチドは、正味の負電荷を帯びる。従って、ポリペプチドは、所与のpHでのそのイオン化状態に基づいて分離することができる。ポリペプチドの実際pIは、翻訳後修飾などの因子に影響される可能性があり、等電点電気泳動などの実験方法により決定することができる。
【0082】
「クロマトグラフィー」という用語は、例えば、凝集体及び/又は不純物及び/又は他の非標的分子の除去により、サンプルから1つ若しくは複数の標的分子を精製する任意の既存又は将来のクロマトグラフィーに基づくプロセスを指す。クロマトグラフィー工程中に、混合物中の目的の溶質、例えば、ポリペプチドは、混合物の個々の溶質が、移動相の影響下で、又は結合及び溶質プロセスで、固定相から移動する速度の差によって混合物中の他の溶質から分離される。クロマトグラフィーの例として、限定されないが、以下のものが挙げられる:アフィニティクロマトグラフィー、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー、フロースルークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、擬似移動床クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過、クロマトフォーカシング。
【0083】
「混合モードクロマトグラフィー」又は「マルチモーダルクロマトグラフィー」という用語は、混合モード吸収剤を用いる精製プロセスを指し、これは、目的のポリペプチドと吸収剤リガンドとの間の疎水性、カチオン交換、及び水素結合相互作用などの多重モードの相互作用をもたらす。市販の混合モードクロマトグラフィー樹脂として、以下のものが挙げられる:GE Healthcare Life SciencesからのCapto(商標)MMC、Capto(商標)MMC ImpRes、Capto Blue、Blue Sepharose(商標)6 Fast Flow、Capto(商標)Adhere、及びCapto(商標)Adhere ImpRes、又はEMD MilliporeからのEshmuno(登録商標)HCX、又はBio-RadからのNuvia(商標)cPrime。
【0084】
「カチオン交換樹脂」又は「カチオン交換吸収剤」という用語は、負電荷を帯び、従って、固相上で、又はそれを介して通過する水溶液中のカチオンとの交換のための遊離カチオンを有する固相を指す。固相に付着してカチオン交換樹脂を形成する負荷電リガンドは、例えば、カルボン酸塩又はスルホン酸塩であってもよい。市販のカチオン交換樹脂としては、アガロースに固定化されたカルボキシ-メチル-セルロース、スルホプロピル(SP)が挙げられる(例えば、GE Healthcare Life SciencesからのSP Sepharose(商標)XL、SP-Sepharose(商標)Fast Flow、SP Sepharose(商標)High Performance、CM Sepharose(商標)Fast Flow、CM Sepharose(商標)High Performance、Capto(商標)S、及びCapto(商標)SP ImpRes、又はEMD MilliporeからのFractogel(登録商標)EMD SE HiCap、Fractogel(登録商標)EMD SO3”、Fractogel(登録商標)EMD COO”、Eshmuno(商標)S、及びEshmuno(商標)CPX、又はBio-RadからのUNOsphere(商標)S及びNuvia(商標)S)。
【0085】
「アニオン交換樹脂」又は「アニオン交換吸収剤」という用語は、本明細書では、正電荷を帯び、例えば、そこに付着した4級アミノ基などの1つ又は複数の正荷電リガンドを有する固相を指すために用いられる。市販のアニオン交換樹脂としては、以下のものが挙げられる:GE Healthcare Life SciencesからのDEAE Sepharose(商標)Fast Flow、Q Sepharose(商標)Fast Flow、Q Sepharose(商標)High Performance、Q Sepharose(商標)XL、Capto(商標)DEAE、Capto(商標)Q、及びCapto(商標)Q ImpRes、又はEMD MilliporeからのFractogel(登録商標)EMD TMAE HiCap、Fractogel(登録商標)EMD DEAE、及びEshmuno Q、又はBio-RadからのU Osphere(商標)Q及びNuvia(商標)Q。
【0086】
「クロマトグラム」という用語は、クロマトグラフィー精製プロセスの少なくとも一部の間に記録される1つ又は複数の出力パラメータのグラフ表示を指す。クロマトグラムは、時間の関数としての出力パラメータ、累積カラム体積又はクロマトグラフィー精製に関するいずれか他のパラメータを表し得る。本方法では、各精製は、精製工程中の出力パラメータをモニターすることにより、クロマトグラムとして記録される。「出力パラメータ」という用語は、クロマトグラフィー精製の結果を示す記録可能なパラメータを指す。出力パラメータの例として、限定されないが、1つ又は複数の波長でのUV吸光度、伝導率、光散乱検出、蛍光放射、質量分析法、記録流体量、記録pH、記録圧力が挙げられる。出力パラメータは、好適には、クロマトグラフィー精製の下流の流路中で一直線に測定される。本明細書で使用されるA0、A1、・・・、AN、AX、及びAMAXは、吸収シグナルに対応する。C0、C1、・・・、CN、CX、及びCMAXは、それぞれ、A0、A1、・・・、AN、AX、及びAMAXの対応する流体量(カラム体積)である。
【0087】
「溶出ピークの上昇部」という用語は、最大ピーク高さに到達する前のベースラインを超えるシグナルを指す。相応して、溶出ピークの下降部は、ベースラインを超える最大ピーク後のシグナルを指す。
【0088】
「抗体」という用語は、5つの主要クラス(アイソタイプ)の免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、又はそれらのサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)、並びにそれらの組合せ及び変異体のいずれかのグリコシル化及び非グリコシル化免疫グロブリンを指す。本明細書で使用される場合、この用語は、任意の種(例えば、ヒト、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリなど)由来の抗体、並びにそれらの組合せ又は変異体(例えば、ヒト化、キメラ抗体)を包含する。この用語は、モノクローナル及びポリクローナル抗体、並びに単一特異的及び多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)を指す。本明細書で使用される場合、用語は、抗原決定部分を含む融合タンパク質、並びに抗原認識部位を含むいずれか他の修飾免疫グロブリン分子も包含する。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトな免疫グロブリン並びに抗体フラグメントを含み、それらは、抗原と特異的に相互作用する(例えば、結合、立体障害、空間分布の安定化により)能力を保持する抗体の1つ又は複数の部分を指す。結合フラグメントの例として、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv及びdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546)、一本鎖Fv(scFv)(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883)が挙げられる。任意の天然に存在する、酵素として取得可能な、合成、代替スカフォールド、又は遺伝子操作されたポリペプチドであって、抗原と特異的に結合して、複合体を形成するポリペプチドも、本明細書で使用される用語「抗体」に包含されることが意図される。
【0089】
「混入物」及び「不純物」という用語は、本明細書において互換可能に用いられ、あらゆる好ましくない分子を指し、そうしたものとして、生体高分子、例えば、DNA、RNA、1つ若しくは複数の宿主細胞タンパク質、内毒素、脂質、及び1種若しくは複数種の添加剤が挙げられ、これらは、本発明のプロセスを用いて、1つ若しくは複数の外来又は好ましくない分子から分離される標的タンパク質を含有するサンプル中に存在し得る。加えて、こうした混入物は、精製プロセス前に行われ得るステップで使用される任意の試薬を含有し得る。
【0090】
「高分子量(HMW)種」は、標的タンパク質質量より高い分子量を有する種、例えば多量体などを含む。多量体は、標的タンパク質のモノマー以外のあらゆるものを含む。例えば、IgG抗体のモノマーは、2つの重鎖及び軽鎖を含む従来の四量体抗体組成物を包含する。多量体は、標的タンパク質質量より高い分子質量を有する種、例えば二量体(共有又は非共有結合された2つの同一タンパク質)、並びに凝集体(共有若しくは非共有結合された完全及び/又は部分タンパク質)を含む。
【0091】
「低分子量(LMW)種」は、標的タンパク質質量より低い分子量を有する種、例えば、クリップ、及び分解産物を含む。
【0092】
本明細書で使用される場合、「純化」という用語は、初期(アフィニティ)捕捉ステップ後の下流処理ステップを指し、これは、凝集体及び/又は不純物の残量を除去することを目的とする。純化工程中に除去される凝集体/不純物は、典型的に、捕捉ステップ中に除去される不純物よりも生成物と高い類似性を有する。
【0093】
ポリペプチドの収率及び純度の決定方法は、当業者には周知である。ポリペプチドの収率及び純度は、任意の好適な分析方法(例えば、銀染色ゲル上でのバンド強度、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、ELISA、HPLCなど)により決定することができる。例示的な方法は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。純度は、例えば、相対的な「曲線下面積」(AUC)値を用いて決定することができ、これは、典型的に、クロマトグラム、例えば、HPLCクロマトグラム中のピークについて取得することができる。任意に、純度は、既知純度の参照材料を用いて作成された標準曲線を用いるクロマトグラフィー又は他の手段により決定される。また、重量比で純度を決定してもよい。
【0094】
「結合及び溶出モード」という用語は、サンプル中に含有する少なくとも1つの生成物(例えば、Fc領域含有タンパク質、抗体)が、クロマトグラフィー樹脂又は媒体と結合し、後に溶出される生成物分離技術を指す。
【0095】
「吸収」という用語は、光を吸収する物理的プロセスを指すのに対し、「吸光度(absorbance)」は、所与の波長λでサンプル長さにつきサンプルによって吸収された光の量の数学的尺度である。これはまた、光学密度(OD)又は吸光度(extinction)としても知られる。多くの物質は、その化学組成のために、紫外線(UV)又は可視(VIS)光を吸収する。UV範囲は、190~380nmであり、VISは、380~770nmの範囲である。タンパク質の場合、例えば、ペプチド結合は、215nmで光を吸収し、特定のアミノ酸上の芳香族基は、280nmで吸収する。物質による光の吸収は、こうした物質の存在を検出し、物質の濃度を測定するために使用されてきた。典型的な吸光度単位は、「吸光度単位」、「AU」と呼ばれ、無次元である。吸光度は、サンプルにより反射若しくは散乱される光の量か、又はサンプルを介して透過される量のいずれかに基づいて計算される。全ての光がサンプルを通過する場合、何も吸収されないため、吸光度はゼロであり、透過は100%となる。これに対し、光が一切サンプルを透過しなければ、吸光度は無限であり、透過率(%)はゼロである。ランバート・ベールの法則(Beer-Lambert law)、即ち、A=e×b×cを用いて、所与の波長での吸光度を計算し、式中、Aは、吸光度(無次元、A=log10 P0/P)であり、P0は、入射光の強度であり、Pは、透過光の強度であり、eは、モル吸光係数又はモル減衰係数(M-1cm-1)であり、bは、サンプルの経路長さ(例えば、キュベットの長さ(cm))であり、cは、溶液中溶質のモル濃度(mol/L)である。
【0096】
本明細書で使用する吸光度単位は、UV280nmの波長及び0.2cmの経路長さで決定される。
【0097】
「予定吸光度値A0」という用語は、溶出ピーク中の事前に設定され、事前に決定された固定吸収シグナルに関連し、これは、規定抗体サンプルの異なる溶出ランER1、・・・、ERNの間で等しい。
【0098】
C0は、各クロマトグラムにおける溶出ラン(ER1、・・・、ERN)の個別溶出ピークの各々について吸光度値A0の対応する流体量(測定単位は、「カラム体積」、CVである)である(C0は、異なる溶出ランER1、・・・、ERNの間で相違し得る)。
【0099】
A1、・・・、ANは、対応する溶出液画分を有する溶出ランER1、・・・、ERNの溶出ピークの各々について決定された吸光度値であり、上記画分は、凝集体/不純物を全く示さないか、又は10%未満の凝集体/不純物含有率を示すか、又は規格以内の凝集体/不純物含有率を示す。
【0100】
AXは、溶出液収集が、効果的に開始される吸光度値である(AXは、異なる溶出ランER1、・・・、ERNの間で相違し得る)。好ましくは、AXは、A0を超える値である(AX>A0)。
【0101】
CXは、溶出液収集が、効果的に開始される流体量である(CXは、異なる溶出ランの間で相違し得る)。CXは、C0の後、予定流体量間隔D0で到達され、式CX=C0+D0により計算することができる。
【0102】
「予定間隔(D0)」という用語は、予定流体量間隔を指す。好ましくは、D0は、A0の流体量(C0である)に対する流体量C1、・・・、CNの差を平均する(即ち、平均値を求める)ことにより計算される。C1、・・・、CNは、精製しようとするタンパク質サンプルを含む少なくとも2つの異なる溶出ラン(ER1、・・・、ERN)の溶出ピーククロマトグラムにおける吸収シグナルA1、・・・、ANの流体量であり、ここで、異なる溶出ランは、pH、負荷密度又は塩条件が変動し、A1、・・・、ANの対応する溶出液画分の各々は、10%未満、7.5%未満、5%未満、4.5%未満、4%未満、3.5%未満、3%未満の凝集体/不純物含有率を有する。或いは、中央値を用いて、差の集合の中央を表すこともできる(例えば、その集合が外れ値である場合)。また、D0は、計算することなく、予め決定された間隔として定義することもできる。
【0103】
表1に示すアミノ酸及びコード化核酸配列は、IL-17C抗体の一例、並びにその部分である。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【実施例】
【0108】
実施例1.間隔D0の決定
3000Lバイオリアクター内の組換えIgG1を発現する哺乳動物細胞培養物から得られた清澄化細胞上清をMabSelect SuRe(GE Healthcare)プロテインAカラムにロードした。回収物中のIgGは、プロテインAに選択的に結合される。ローディングに続いて、数回の洗浄ステップを実施する。その後、約5カラム体積の溶出バッファーを含むグラジエント溶離のカラムから抗体を溶離する。溶出プールは、抗体並びに残留凝集体及び不純物を含有し、その約2%は二量体、多量体、及び凝集体混合物であり、約1%が低分子量(LMW)混入物であった。ウイルス不活性化ステップ、デプス濾過ステップ及びAIEX純化ステップの後、IgGサンプルを、結合-溶出モードのAEKTA avantシステムを備えたマルチモーダルCEXカラム(Capto MMC ImpRes,GE Healthcare)にロードしてから、洗浄ステップを実施し、線形塩グラジエントで溶離した。異なるpH及び負荷密度条件下で、個別の試験溶出ランER
1~ER
3を表2に示すように実施した。高純度の収集抗体溶出液を得るために、「ピーク分取」を使用した。残留凝集体/不純物を除去すると同時に、高収率の標的タンパク質を維持するために、プロセス条件及びピークの形状に応じて、ピーク最大値又は最大値の直前若しくは直後に、ピーク収集を開始する必要がある。個別の試験溶出ランの溶出液収集の最適な開始のための吸収シグナルA
1~A
3及び対応する流体量を表2に列記する。溶出ランER
1~ER
3のクロマトグラムを
図3A~3Cにそれぞれ示す。
【0109】
【0110】
AMAXは、溶出ピークの最大高さでの吸収シグナルである。A0は、予定基準吸収シグナルである。C0は、A0の対応する流体量である。C0は、本実施例と同様に、個別の溶出ピーク各々について相違し得る。溶出液収集での吸収は、溶出液収集開始について、それぞれ最適な個々の吸収シグナルA1、A2、及びA3を示している。C1、C2、及びC3は、溶出液収集での対応する流体量である。D1、D2、及びD3は、C1、C2、及びC3と、対応するC0との個々の差(「間隔」)である。予定間隔D0は、差D1、D2、及びD3を平均することによって得られる。本実施例におけるこの平均値は、(0.7+0.6+0.6)/3=0.63である。
【0111】
実施例2.溶出液収集を開始するためのD0の使用
グラジエントバッファーのpH及び樹脂体積当たりのタンパク質ロードに応じて、得られる溶出ピークは、幅及び高さが実質的に異なり、従って、溶出液収集の最適な開始のための個々の吸収シグナルも異なる(実施例1)。一貫して堅牢な溶出液収集開始を適用するために、基準A280シグナル(A0)に対する予定間隔(D0)でのA280吸収シグナル(AX)を使用して、溶出液収集を開始した。予定A280シグナルA0を700mAUに設定し、実施例1で決定した0.6CV流体量間隔(D0)を使用して、溶出液収集の開始ポイントとして最適A280シグナル(AX)に到達した。
【0112】
流体量間隔D0後に到達され、且つそこで溶出液収集が開始された吸収シグナルAXを、各溶出ランの対応する流体量と一緒に表3に示す。
【0113】
【0114】
本発明のピーク収集基準を示す溶出ランER
4~ER
10のクロマトグラムを
図4A~4Gに示す。分析結果(収率、HMW、LMW、モノマー)を、図面及び下記の表4A~Gに示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
予定間隔での溶出液収集開始を伴う異なる溶出ランER
4、・・・、ER
10の正規化溶出ピーク(流体量に従う)を
図5に示す。各溶出液収集の終点は、400mAUに設定した。7つの精製ランのAX/D0で得られた溶出液の収率及びSECモノマー部分を表5にまとめる。
【0123】
【0124】
実施例3.対照設定及び相特性
制御ソフトウェアUNICORN(商標)7.1(Build 7.1.0.378,GE Healthcare)のMethod Editorでは、グラジエント溶離相のマスク内の線形グラジエント溶離工程中の「遅延」ピーク分取開始を統合する可能性はない(
図8)。そのため、計算コマンドワークアラウンド(workaround)を作成した。UNICORN(商標)ソフトウェアの既定溶離相を、UNICORN(商標)Method Editor内でテキスト命令によりマニュアル編集して、既定の、固定UV280吸収シグナル(ここでは:700mAU)後に、所望される0.6CV遅延ピーク分取開始を設定した。従って、分取開始は、最大ピーク高さとは独立している。Unicorn内での既定溶離相命令のこのような変更により、プロセス条件及び結果として生じる異なる溶出ピーク形状とは独立に、溶出液収集の最適な開始が実施された。表6は、50mAUでのピーク分取開始を含む、UNICORN(商標)での標準既定線形溶離グラジエント相のテキスト命令を示す。表7は、予定及び事前設定された700mAUのUV280吸収シグナル後の0.6CV遅延ピーク分取開始を含む、線形溶離グラジエント相のマニュアル編集された命令を示す。
【0125】
【0126】
【国際調査報告】