(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】ウォータークラフト
(51)【国際特許分類】
B63B 1/28 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
B63B1/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529476
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 GB2020052957
(87)【国際公開番号】W WO2021099791
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522197763
【氏名又は名称】ビーエー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】スコフィールド,サイモン ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】グリッドン,ポール ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】カー,ジェイソン ジェイムズ
(57)【要約】
モーター駆動のアウトリガー安定化ウォータークラフトは、船首-船尾方向に延在するメインハルと、シングルアウトリガーであって、アウトリガーは、メインハルを安定化させるように配置されており、メインハルに対して実質的に平行に延在しており、メインハルから横方向に間隔を置いて配置されている、シングルアウトリガーと、メインハルの船尾においてまたはそれに近接して位置付けされている少なくとも1つの水中翼とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーター駆動のアウトリガー安定化ウォータークラフトであって、前記ウォータークラフトは、
船首-船尾方向に延在するメインハルと、
シングルアウトリガーであって、前記アウトリガーは、前記メインハルを安定化させるように配置されており、前記メインハルに対して実質的に平行に延在しており、前記メインハルから横方向に間隔を置いて配置されている、シングルアウトリガーと、
前記メインハルの船尾においてまたはそれに近接して位置付けされている少なくとも1つの水中翼と
を含む、モーター駆動のアウトリガー安定化ウォータークラフト。
【請求項2】
前記水中翼は、動的に調節可能であり、可変の力を前記メインハルに印加するように配置されている、請求項1に記載のウォータークラフト。
【請求項3】
前記アウトリガーは、小水線面積ハルである、請求項1または2に記載のウォータークラフト。
【請求項4】
前記アウトリガーは、動作の間に前記喫水線の下方に沈められるように配置されている第1の部分を含む、請求項1、2、または3に記載のウォータークラフト。
【請求項5】
前記アウトリガーは、前記第1の部分を前記ウォータークラフトに接合する接合部分を含み、前記接合部分は、前記第1の部分の幅よりも小さい、前記船首-船尾方向に対して垂直の幅を有している、請求項4に記載のウォータークラフト。
【請求項6】
前記アウトリガーは、動作の間に浮くように配置されている第2の部分をさらに含み、前記接合部分は、前記第1の部分を前記第2の部分に接合している、請求項5に記載のウォータークラフト。
【請求項7】
前記アウトリガーを前記メインハルに接続するアームをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項8】
前記第1の部分は、前記船首-船尾方向において、前記第2の部分と実質的に同じ長さを有している、請求項5、6、または7に記載のウォータークラフト。
【請求項9】
前記船首-船尾方向に平行な前記アウトリガーの長さは、前記メインハルの長さの25%から80%の間にあり、好ましくは、前記メインハルの長さの30%から75%の間にある、請求項1から8のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項10】
前記船首-船尾方向への前記アウトリガーの範囲は、前記船尾と前記船尾の前方の前記メインハルの全長の80%のポイントとの間にある、請求項1から9のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項11】
前記水中翼は、前記船尾の後方に装着されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項12】
前記メインハルの前記船尾においてまたはそれに近接して装着されている動的に調節可能な前記水中翼は、前記水中翼が前記船舶の合計排水量の0%から30%の間を支持するように、好ましくは、前記船舶の前記合計排水量の0%から20%の間を支持するように調節されるように配置されている、請求項2から11のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項13】
前記水中翼は、主水中翼本体部と、後縁フラップとを含み、前記後縁フラップは、前記主本体部に対して移動するように配置されており、それによって、前記メインハルに印加される力を変化させ、および/または、前記水中翼の迎え角が調節可能であり、それによって、前記メインハルに印加される力を変化させる、請求項1から12のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項14】
前記水中翼は、後退可能である、請求項1から13のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項15】
前記水中翼のスパンは、前記メインハルのビームよりも大きい、請求項1から14のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項16】
前記水中翼は、前記アウトリガーにさらに接合されている、請求項1から15のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項17】
前記水中翼は、前記ウォータークラフトのトリムを制御するように配置されており、および/または、前記ウォータークラフトの荷重の変化を補償するように配置されている、請求項1から16のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項18】
前記メインハルは、複数の水中翼を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項19】
前記アウトリガーは、少なくとも1つの水中翼をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項20】
前記アウトリガーの上に位置付けされている前記水中翼は、動的に調節可能であり、可変の力を前記アウトリガーに印加するように配置されている、請求項19に記載のウォータークラフト。
【請求項21】
前記アウトリガーの上に位置付けされている前記水中翼は、前記第1の部分の前記船尾においてまたはそれに近接して位置付けされている、請求項19または20に記載のウォータークラフト。
【請求項22】
前記アウトリガーの上に位置付けされている前記水中翼は、前記メインハルに向けて延在しており、および/または、前記アウトリガーの上に位置付けされている前記水中翼は、前記ウォータークラフトのロールを制御するように配置されている、請求項19、20、または21に記載のウォータークラフト。
【請求項23】
前記メインハルは、前記ウォータークラフトの合計の静的な排水量の70%以上を支持しており、好ましくは、前記ウォータークラフトの合計の静的な排水量の70%から95%を支持している、請求項1から22のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項24】
前記アウトリガーは、前記ウォータークラフトの合計の静的な排水量の30%以下を支持しており、好ましくは、前記ウォータークラフトの合計の静的な排水量の5%から30%を支持している、請求項1から23のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項25】
前記水中翼を動的に調節するように配置されている制御システムをさらに含む、請求項2から24のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項26】
前記ウォータークラフトを推進させるように配置されているモーター駆動の推進デバイスをさらに含み、前記モーター駆動の推進デバイスは、前記船首-船尾方向において前記水中翼の前方に位置決めされている、請求項1から25のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータークラフトに関し、とりわけ、アウトリガー安定化ウォータークラフトに関する。
【背景技術】
【0002】
カタマラン配置を備えた(すなわち、一緒に接合されている2つの対称的なハルを備えた)ウォータークラフトが、当技術分野においてよく知られている。しかし、そのようなウォータークラフトが荒れた海の条件で使用されるときに、クラフトは、不十分な耐航性を有し、波に応答して大きい移動を受ける可能性がある。耐航性を改善するために、小水線面積ツインハル(SWATH:small waterplane area twin hull)船舶が使用され得る。しかし、そのようなクラフトは、たとえば、重い機器を輸送するために使用されているときに、典型的に、ウォータークラフトの荷重の変化に敏感である。これは、クラフトのトリムが影響を受けることを引き起こす可能性があり、そのようなクラフトが大きなペイロードを運搬することを非実用的にする可能性がある。
【0003】
モノハルボートは、荷重の変化に対して改善された応答を有することが知られている。モノハルボートの抗力は、ハル形状をより細長くする(すなわち、その幅またはビームに対してその長さを増加させる)ことによって低減され得る。そのようなボートは、アウトリガーを提供され得、アウトリガーは、ボートを安定化させるために使用される。そのようなボートは、「プロア」構成のボートとして知られ得る。しかし、そのようなボートは、アウトリガーに起因して水の中で高い抗力を有し、低減された効率を有する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述した問題に少なくとも部分的に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、モーター駆動(motorised)のアウトリガー安定化(stabilised)ウォータークラフトであって、ウォータークラフトは、船首-船尾方向に延在するメインハルと、シングルアウトリガーであって、アウトリガーは、メインハルを安定化させるように配置されており、メインハルに対して実質的に平行に延在しており、メインハルから横方向に間隔を置いて配置されている、シングルアウトリガーと、メインハルの船尾においてまたはそれに近接して装着されている少なくとも1つの水中翼とを含む、モーター駆動のアウトリガー安定化ウォータークラフトが提供される。これは、良好な耐航性、荷重の変化に対する改善された応答、および、低い抗力を提供することが可能であり、改善された燃料効率を結果として生じさせる。また、アウトリガーは、より細長いハルが使用されることを可能にすることができ、それは、抗力を低減させることも可能であり、一方で、アウトリガーの存在は、細長いハルが使用されるときでも、改善された静的な安定性を提供することが可能である。
【0006】
随意的に、水中翼は、動的に調節可能であり、可変の力(variable force)をメインハルに印加するように配置されている。これは、荷重の変化に対して改善された応答を提供し、ウォータークラフトの耐航性を改善し、ウォータークラフトのトリムの制御を可能にすることができる。
【0007】
随意的に、アウトリガーは、小水線面積ハル(waterplane area hull)である。これは、安定性を維持しながら、抗力を低減させることが可能である。
【0008】
随意的に、アウトリガーは、動作の間に喫水線の下方に沈められるように配置されている第1の部分を含む。これは、抗力の大きな増加を回避しながら、浮力を提供することが可能である。
【0009】
随意的に、アウトリガーは、第1の部分をウォータークラフトに接合する接合部分を含む。接合部分は、第1の部分の幅よりも小さい、船首-船尾方向に対して垂直の幅を有することが可能である。また、接合部分は、第1の部分よりも船首-船尾方向に短い長さを有することが可能である。これは、小水線面積を提供することが可能であり、それは、抗力を低減させることが可能である。
【0010】
随意的に、アウトリガーは、動作の間に浮くように配置されている第2の部分をさらに含む。このケースでは、接合部分は、第1の部分を第2の部分に接合することが可能である。
【0011】
随意的に、ウォータークラフトは、第2の部分をメインハルに接続するアームをさらに含む。
【0012】
随意的に、第1の部分は、船首-船尾(または、前後)方向において、第2の部分と実質的に同じ長さを有している。
【0013】
随意的に、船首-船尾方向に平行なアウトリガーの長さは、メインハルの長さの25%から80%の間にあり、好ましくは、メインハルの長さの30%から75%の間にある。
【0014】
随意的に、船首-船尾方向へのアウトリガーの範囲は、船尾と船尾の前方のメインハルの全長の80%のポイントとの間にある。
【0015】
随意的に、水中翼は、船尾の後方に装着されている。
【0016】
随意的に、メインハルの船尾においてまたはそれに近接して装着されている動的に調節可能な水中翼は、水中翼が船舶の合計排水量の0%から30%の間を支持するように、好ましくは、船舶の合計排水量の0%から20%の間を支持するように調節されるように配置されている。
【0017】
随意的に、水中翼は、主水中翼本体部と、後縁フラップとを含み、後縁フラップは、主本体部に対して移動するように配置されており、それによって、メインハルに印加される力を変化させる。これは、水中翼によって作り出される揚力に対する改善された制御を提供することが可能である。いくつかの配置において、2つ以上の後縁フラップが提供され得る。
【0018】
随意的に、水中翼の迎え角が調節可能であり、それによって、メインハルに印加される力を変化させる。これは、水中翼によって作り出される揚力に対する改善された制御を提供することが可能である。
【0019】
随意的に、水中翼は、後退可能である。これは、水中翼が使用されていないときに、および/または、浅い水域での動作の間に、水中翼への損傷を防止することが可能である。
【0020】
随意的に、水中翼のスパンは、メインハルのビームよりも大きい。
【0021】
随意的に、水中翼は、アウトリガーにさらに接合されている。これは、水中翼の揚力を増加させ、耐航性を改善することが可能である。
【0022】
随意的に、水中翼は、ウォータークラフトのトリムを制御するように配置されている。
【0023】
随意的に、水中翼は、ウォータークラフトの荷重の変化を補償するように配置されている。
【0024】
随意的に、メインハルは、複数の水中翼を含む。
【0025】
随意的に、アウトリガーは、少なくとも1つの水中翼をさらに含む。これは、ウォータークラフトのロールに対する改善された制御を提供することが可能である。
【0026】
随意的に、アウトリガーの上に位置付けされている水中翼は、動的に調節可能であり、可変の力をアウトリガーに印加するように配置されている。これは、ウォータークラフトのロール応答が調節されることを可能にする。
【0027】
随意的に、アウトリガーの上に位置付けされている水中翼は、第1の部分の船尾においてまたはそれに近接して位置付けされている。
【0028】
随意的に、アウトリガーの上に位置付けされている水中翼は、メインハルに向けて延在している。
【0029】
随意的に、アウトリガーの上に位置付けされている水中翼は、ウォータークラフトのロールを制御するように配置されている。
【0030】
随意的に、メインハルは、ウォータークラフトの合計の静的な排水量の70%以上を支持しており、好ましくは、ウォータークラフトの合計の静的な排水量の70%から95%を支持している。
【0031】
随意的に、アウトリガーは、ウォータークラフトの合計の静的な排水量の30%以下を支持しており、好ましくは、ウォータークラフトの合計の静的な排水量の5%から30%を支持している。
【0032】
随意的に、ウォータークラフトは、水中翼を動的に調節するように配置されている制御システムをさらに含む。制御システムは、慣性測定ユニットを随意的に含むことが可能である。
【0033】
随意的に、ウォータークラフトは、ウォータークラフトを推進させるように配置されているモーター駆動の推進デバイスをさらに含み、モーター駆動の推進デバイスは、船首-船尾方向において水中翼の前方に位置決めされている。
【0034】
ここで、本発明は、添付の図面を参照して、単なる非限定的な例として説明されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明によるウォータークラフトの斜視図である。
【
図2】本発明によるウォータークラフトの第2の斜視図である。
【
図3】本発明によるウォータークラフトの第3の(後方)斜視図である。
【
図4】本発明によるウォータークラフトのプロファイル図である。
【
図5】本発明によるウォータークラフトの平面図である。
【
図6】本発明によるウォータークラフトの正面図である。
【
図7】小水線面積ハルアウトリガーを含む本発明によるウォータークラフトの第1の斜視図である。
【
図8】小水線面積ハルアウトリガーを含む本発明によるウォータークラフトの第2の斜視図である。
【
図9】小水線面積ハルアウトリガーを含む本発明によるウォータークラフトの第3の(後方)斜視図である。
【
図10】小水線面積ハルアウトリガーを含む本発明によるウォータークラフトのプロファイル図である。
【
図11】小水線面積ハルアウトリガーを含む本発明によるウォータークラフトの平面図である。
【
図12】小水線面積ハルアウトリガーを含む本発明によるウォータークラフトの正面図である。
【
図13】水中翼がアウトリガーまで延在した状態の、
図3のウォータークラフトの修正されたバージョンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、アウトリガー安定化ウォータークラフトに関する。
図1に示されているように、ウォータークラフトは、メインハル10およびアウトリガー11を含む。メインハル10は、船首-船尾方向に延在しており、アウトリガー11は、この方向に対して実質的に平行に延在しており、メインハル10から横方向に間隔を置いて配置されている(すなわち、船首-船尾方向に対して垂直の方向に分離されている)。アウトリガー11は、シングルアウトリガーである。すなわち、ウォータークラフトは、1つのアウトリガーのみを有しており、トリマランの場合のような第2のアウトリガーを有していない。メインハル10およびアウトリガー11は、アーム17によって接合されている。ウォータークラフトは、水中翼12をさらに含み、水中翼12は、
図2に示されているように、メインハル10の船尾においてまたはそれに近接して装着されている。動作の間に、水中翼12は沈められており(すなわち、喫水線の下方にある)、水中翼の周りのフローが、結果として生じる揚力を引き起こすようになっており、そして、揚力は、メインハル10に伝達される。ウォータークラフト(ひいては、メインハル)は、排水モード(displacement mode)、半滑走モード、または完全滑走モードで使用され得、たとえば、船舶の速度に応じて、これらのモードの間で移行することが可能である。
【0037】
図1~
図6に示されている構成では、水中翼は、船尾の後方に(すなわち、トランサムの後方に、または、メインハル10の最後方部に)装着されているように示されているということが留意されることとなる。しかし、水中翼12(それは、メインハル水中翼12と称され得る)は、メインハル10の最後方部(すなわち、船尾)ではなく、その近くの位置にも位置付けされ得るということが理解されることとなる。たとえば、水中翼は、メインハル10の後部25%における位置に位置付けされ得る。また、水中翼がメインハル10に装着されている(すなわち、取り付けられている)ポイントは、水中翼自身の前後方向における位置と前後(すなわち、船首-船尾)方向において同じであることが可能であるということ、または、これらの2つの場所が互いにオフセットされ得るということが理解されることとなる。たとえば、水中翼12は、支柱を使用してメインハル10に装着され得、支柱は、垂直方向下向きに延在するか、または、垂直方向に対して異なる角度で延在することが可能である。
【0038】
図1~
図6に示されている配置では、アウトリガーは、従来の排水型ハルの形態を有しており、従来の排水型ハルでは、アウトリガーハルの下側部が沈められており、アウトリガーハルの上側部が喫水線の上方にある。換言すれば、アウトリガー11のハルは、小さい排水型ハルのように作用すると考えられ得、それは、メインハル10よりも小さい。しかし、下記に説明されることとなるように、たとえば、
図7~
図12に示されている配置など、アウトリガー11の他の配置も可能である。
【0039】
図7~
図12に示されている配置では、アウトリガー11は、小水線面積ハルの形態を有している。小水線面積ハルは、第1の部分13を含み、第1の部分13は、動作の間に完全に沈められている。この部分は、「潜水艦」部分として知られている可能性がある。小水線面積ハルは、接合部分14をさらに含むことが可能であり、接合部分14は、第1の部分をウォータークラフトの残りの部分に接合している。とりわけ、接合部分14は、薄い接合部分であり、それは、第1の部分13のものよりも小さいビーム方向(すなわち、船首-船尾方向に対して垂直の水平方向)への幅を有している。すなわち、
図12に示されている図では、接合部分14の幅は、第1の部分13の幅よりも小さい。また、接合部分は、第1の部分の長さよりも船首-船尾方向に短い長さを有することが可能である。いくつかの配置において、接合部分の長さは、高さとともに変化することが可能である。通常動作の間に、薄い接合部分は、喫水線にあり、それは、喫水線において小さい断面積を提供する。これは、このハルタイプの「小水線面積」を提供する。
【0040】
小水線面積ハルは、第2の部分15をさらに含むことが可能であり、第2の部分15は、喫水線の上方にあり、(動作の間に)浮くことが可能である。第2の部分15は、ボートが大きいヒール(すなわち、リスト)角にあるときに、水と接触し、したがって浮き、復原モーメントを作り出すことが可能である。そのような大きいヒール角は、波の運動に起因して起こる可能性があり、または、メインハル10がアウトリガー11に向けてロールすることを引き起こす方向へのターンの間に起こる可能性がある。第2の部分は、接合部分によって第1の部分に接合され得、第2の部分は、アーム17によってウォータークラフトの残りの部分に接合され得る。また、第2の部分15は省略され得るということが理解されることとなる。第2の部分15が省略されるときには、接合部分14は、アーム17に直接的に接合され得る。
【0041】
図7に最良に見られるように、アウトリガーの第1の部分13およびアウトリガーの第2の部分15は、前後方向に、互いに実質的に同じ長さを有することが可能である。代替的に、いくつかの配置において、第1の部分13および第2の部分15の長さは、互いに異なっていてもよい。たとえば、第1の部分13は、第2の部分15よりも長くなっていてもよい。これらの相対的な長さは、第1の部分13の所望の体積にしたがって変化させられ得、それは、アウトリガー11とメインハル10との間の距離に応じて選ばれ得る。
【0042】
従来では、小水線面積ハルは、典型的に、小水線面積ツインハル(SWATH)構成を備えた船舶において使用されており、このタイプの2つのハルが一緒に接合された状態になっている。しかし、本発明は、アウトリガー11のみが小水線面積ハルを有しており、メインハル10が異なるハル形態を有する配置を提供する。たとえば、
図7~
図12に示されているアウトリガー安定化ウォータークラフトの配置の構成は、小水線面積ハル構成を備えたアウトリガー11と、従来のハルを備えたメインハル10とを有している。
【0043】
従来のハル10(たとえば、排水型ハル、半排水型/半滑走ハル、または滑走ハルなど)と小水線面積アウトリガーとの組み合わせは、船舶のトリムまたは効率が損なわれることなく、(たとえば、貨物からの)荷重の変化が収容されることを可能にしながら、たとえば、荒れた海の条件において、とりわけ良好な安定性および耐航性を与えることが可能である。さらに、この構成は、メインハル10の船尾においてまたはそれに近接して装着されている水中翼12と組み合わせられるときに、水中翼の効果に起因してとりわけ良好な耐航性を与えることが可能であると同時に、小水線面積ハルアウトリガーに関連付けられる抗力の低減に起因して燃料消費を低減させる。さらに、アウトリガーの使用は、所与の構築面積(すなわち、構築において使用される材料の量)またはデッキ面積に関して、メインハルが従来のカタマランのものよりも長くなることを可能にすることができ、そして、それは、抵抗を低減させ、耐航性を改善することが可能である。
【0044】
下記に記載されているようなオプションおよび変形例のすべてが、
図1~
図6および
図7~
図12に示されているハルおよびアウトリガーの実施形態に等しく適用可能であるということが理解されることとなる。
【0045】
メインハル10は、細長いハル形状を有することが可能である。いくつかの配置において、アウトリガー11および水中翼12は、メインハル形状の使用を可能にすることができ、メインハル形状は、その細長さ(それは、排水量に対する長さの比、または、ビームに対する長さの比によって測定され得る)に起因して、そうでなければ、使用するのに不安定で非実用的であることとなる。すなわち、本発明のアウトリガー11および水中翼の配置は、増加された安定性および改善された耐航性を提供しながら、そのような細長いハル形状が提供する抗力の低減を可能にすることができる。
【0046】
いくつかの配置において、水中翼12は、動的に調節可能であり得る。換言すれば、水の中に沈められているときの水中翼の位置は変化させられ得、それが、可変の力をメインハル10に印加するようになっている。これは、さらに改善された耐航性を可能にすることができ、また、たとえば、水の条件(たとえば、波)の変化、および/または、たとえば、運搬されている貨物に起因にするボートの荷重の変化に応答して、ボートのトリムがアクティブに制御されることを可能にすることができる。
【0047】
動作の間に、メインハル水中翼12は、典型的に、合計排水量(すなわち、船舶の重量)の0%から30%の間、好ましくは、船舶の合計排水量の0%から20%の間を支持することが可能である。動的に調節可能な水中翼12が使用されるときに、水中翼によって支持されている船舶の排水量の割合(すなわち、水中翼12によってメインハル10に印加される力)は、水中翼が動的に調節されるときに変化し得るということが理解されることとなる。いくつかの状況において、水中翼12は、負の揚力を提供することも可能である。たとえば、いくつかの配置において、メインハル10の船尾における水中翼12は、典型的に、水の条件に応じて、合計排水量の-30%から30%の間を支持することが可能である。
【0048】
いくつかの配置において、水中翼12は、主水中翼本体部と、主水中翼本体部に対して移動するように配置されている後縁フラップとを含むことが可能である。この配置では、主水中翼は固定されていてもよい。後縁フラップは、主本体部に対して移動させられ、水中翼12によってメインハル10に印加される力の動的な調節を提供することが可能である。さらに、いくつかの配置において、複数の後縁フラップが、その長さに沿って(すなわち、水中翼のスパンに沿って)水中翼12の上で使用され得る。これは、水中翼によって作り出される揚力がそのスパンに沿って変化させられることを可能にすることによって、水中翼によって印加される力に対する改善された制御を提供することが可能であり、ひいては、水中翼12によって担持される船舶の排水量に対する改善された制御を提供することが可能である。とりわけ、これは、ロールおよびトリムが独立して制御されることを可能にすることができる。
【0049】
代替的にまたは追加的に、水中翼12自身の迎え角が可変であってもよい。換言すれば、沈められているときの水中翼の位置(または、角度)が変化させられ得、水中翼12によってメインハル10に印加される力が変化するようになっている。
【0050】
いくつかの配置において、水中翼12は、船舶が水の中にあるときにそれが水から外の位置に移動することができるように配置され得る。たとえば、水中翼は、枢動ポイントの周りに船尾方向に回転するように配置され得、それが、水から外へ持ち上げられるようになっている。また、水中翼は、メインハル10の中へまたはメインハルの近くの位置へ後退可能であってもよい。後退位置において、翼は、好ましくは、依然として喫水線の下方にあることが可能であるが、喫水線におけるまたは喫水線の上方の後退位置も可能である。これは、水中翼が使用されることができないような水深である場合にも、ボートが浅い水の中で動作させられることを可能にすることができる。また、これは、使用されていないときに(たとえば、ボートが停泊され、係留され、または、その他の方法で保管されているときに)、水中翼が保護されることを可能にすることができる。
【0051】
いくつかの配置において、水中翼12のスパン(すなわち、
図12に示されているような幅)は、メインハル10のビーム(すなわち、幅)よりも大きくなっていることが可能である。これは、安定性に対して改善された制御を提供することが可能である。
図6および
図12に示されている配置では、水中翼12は、アウトリガーに向けてメインハルの船内に延在している。水中翼は、代替的にまたは追加的に、メインハル10の船外に(すなわち、アウトリガー11から離れる方向に、ならびに、
図6および
図12に示されている図において左側に)延在することが可能であるということが理解されることとなる。
【0052】
さらに、いくつかの配置において、および、
図13に示されているように、水中翼12は、メインハル10からアウトリガーへ延在することが可能であり、アウトリガー11に接合され得る。換言すれば、水中翼12は、メインハル10とアウトリガー11との間に広がることが可能である。
【0053】
いくつかの配置において、複数の水中翼が、メインハルの上に装着され得る。2つ以上の水中翼がメインハルの上に存在しているときに、それぞれの水中翼は、上記に説明されている配置のいずれかで使用され得る。たとえば、複数の水中翼は、メインハルの船尾においてまたはそれに近接して装着され得る。そのような配置では、水中翼は、ビーム方向に装着され得、それぞれの水中翼が別個に制御可能な(すなわち、動的に調節可能な)状態になっている。他の配置では、固定された水中翼および動的に調節可能な水中翼の混合物が存在していることも可能である。
【0054】
図6および
図12に示されているように、アウトリガーは、また、水中翼16を含むことが可能である。すなわち、メインハルの上に提供される水中翼12と同様に、別個の水中翼16(すなわち、アウトリガー水中翼)が、アウトリガー11の上に提供され得る。アウトリガー水中翼16は、アウトリガーの上の任意の適切な場所に位置付けされ得る。いくつかの配置において、アウトリガー水中翼16は、アウトリガー11の船尾においてまたはそれに近接して位置付けされ得る。他の配置において、アウトリガー水中翼は、ウォータークラフトの船体中央部位置(または、ウォータークラフトの重心)においてまたはそれに近接して位置付けされ得る。これは、ウォータークラフトの改善されたロール制御を提供することが可能である。
【0055】
メインハル水中翼12に関して上記に説明されているように、アウトリガー水中翼16の迎え角は、アウトリガー水中翼16によってアウトリガーに印加される力を変化させるように制御可能であり得、および/または、1つもしくは複数の後縁フラップが、アウトリガー水中翼16の上に提供され得る。水中翼12がアウトリガー11にも接続されている
図13の配置は、一緒に接合されているメインハル水中翼12およびアウトリガー水中翼16としても考えられ得るということが理解されることとなる。また、メインハル水中翼12がアウトリガー11まで延在しており、アウトリガー水中翼16がメインハル10まで延在しており、メインハル10とアウトリガー11との間に広がる2つの全幅水中翼が存在するようになっている、配置も可能であるということが理解されることとなる。さらに、メインハル水中翼12およびアウトリガー水中翼16のいずれかの一方が、船舶の全幅に広がる(ひいては、アウトリガーまたはメインハルにそれぞれ接合する)ことが可能であり、他方は、船舶の幅の一部のみに広がり、別のコンポーネントに接合されていないことが可能である。さらに、追加的な水中翼が追加され得、3つ以上の水中翼が存在するようになっている。そのような追加的な水中翼は、メインハル10に装着されるか、アウトリガー11に装着されるか、または、メインハルとアウトリガーとの間に広がることが可能である。
【0056】
アウトリガー水中翼16は、任意の適切な構成のものであることが可能である。
図12に示されている配置では、アウトリガー水中翼16は、アウトリガー11の船内に位置付けされている。すなわち、アウトリガー水中翼16のスパンは、アウトリガー15の第1の部分からメインハル10に向けてビーム方向に延在している。しかし、水中翼アウトリガー16は、アウトリガー11の船外側に提供されてもよい(すなわち、メインハル10から離れる方向に延在している)ということが理解されることとなる。アウトリガー水中翼16は、ウォータークラフトの姿勢(とりわけ、ウォータークラフトのバランス(ロール)、および、アウトリガーのヒーブ振幅)に対する改善された制御を提供することが可能である。アウトリガー水中翼16がメインハルまで延在して接合されている配置では、アウトリガー翼は、メインハル重量のいくらかを担持し、船舶の抵抗を低減させることが可能である。
【0057】
いくつかの配置において、水中翼12、16のうちの一方または両方は、上反角または下反角の配置を有することが可能である。すなわち、水中翼のスパンは、使用時に水平方向になっているのではなく、水平方向に対して所定の角度になっていてもよい。下反角の配置のケースでは、水中翼は、上向きに傾斜する2つのパーツを有することが可能であり、上反角の配置のケースでは、水中翼は、下向きに傾斜する2つのパーツを有することが可能である。
【0058】
ウォータークラフトは、制御システムをさらに含むことが可能であり、制御システムは、水中翼12および(存在するときには)アウトリガー水中翼16の位置の動的な制御を提供するように配置されている。上記に説明されているように、水中翼の迎え角は、制御システムによって制御され得、および/または、水中翼のうちの1つまたは複数の上の後縁フラップの角度は、制御システムによって制御され得る。ウォータークラフトのトリム、ボートの回転運動(すなわち、ピッチ、ロール、およびヨー)、ボートの並進運動(ヒーブ、スウェイ、およびサージ)のうちの少なくとも1つを制御するように、および/または、ウォータークラフトの荷重の変化を補償するように、制御は最適化され得る。制御システムは、自動的に、および/または、ユーザーによる入力に応答して、上記の制御を提供するように配置され得る。制御システムは、船舶の状態を測定するために、および、それにしたがって水中翼に命令するために、慣性測定ユニットを使用することが可能である。制御システムは、水中翼に命令するために、たとえば、舵角、入力操舵角、慣性測定ユニットからのヨー角、および、(たとえば、GPSユニットからの)速度のうちの少なくとも1つを使用することが可能である。
【0059】
アーム17の上側表面は、それが船舶のデッキの一部を形成するように配置され得る。たとえば、それは、メインハルのデッキと連続的であることが可能である。これは、より大きい使用可能なデッキスペースを可能にし、船舶容量の増加を提供することが可能である。
【0060】
アウトリガー11は、任意の適切な長さのものであることが可能であるが、典型的に、メインハル10の長さの25%から80%の間にあり、好ましくは、メインハル10の長さの30%から75%の間にある。アウトリガーは、それがメインハル10の船尾と船尾の前方のメインハル10の全長の80%のポイントとの間に位置付けされるように位置決めされ得る。
【0061】
ウォータークラフトの静的な排水量(すなわち、重量)は、メインハルおよびアウトリガーによって担持されるということが理解されることとなる。いくつかの配置において、メインハルは、ウォータークラフトの合計の静的な排水量の70%以上を支持しており、好ましくは、合計の静的な排水量の70%から95%を支持している。したがって、そのような配置では、アウトリガーは、ウォータークラフトの合計の静的な排水量の30%以下を支持することが可能であり、好ましくは、合計の静的な排水量の5%から30%を支持することが可能である。メインハルおよびアウトリガーによって担持される合計の静的な排水量の割合は、固定されておらず、荷重条件(それは、貨物などのような外部荷重の変化に起因して、燃料および貯蔵品の使用に起因して、ならびに、乗員の移動に起因して、変化する可能性がある)に起因して変化することが可能であり、クラフトが水を通ってトラベルしているときに動的に変化することが可能であるということが理解されることとなる。
【0062】
ウォータークラフトは、モーター駆動のウォータークラフト(すなわち、パワーボート)である。そのような配置では、ウォータークラフトは、任意の適切なモーター駆動の推進システムによって主に推進させられ得る。たとえば、1つまたは複数のプロペラ、ウォータージェット、またはポッドドライブが、任意の適切な構成で、メインハル10の上に位置付けされ得る。推進システムのタイプおよびその場所は、メインハル水中翼12の位置を考慮して選ばれ得、水中翼および推進ユニットが互いに干渉しないようになっている。とりわけ、いくつかの配置において、推進システム(および、とりわけ、その推進デバイス)は、船首-船尾方向において水中翼の前方に位置決めされているか、または、船首-船尾方向において水中翼と同じレベルに位置決めされている。推進デバイスおよび水中翼の異なる相対的な位置を有する他の配置も可能であるということが認識されることとなる。
【0063】
さらに、追加的な推進ユニットが、アウトリガーの上に提供され得る。繰り返しになるが、アウトリガーの上の推進ユニットは、任意の公知の適切な推進システムを使用することが可能である。アウトリガーの上に推進ユニット(すなわち、追加的な推進ユニット)を備えた配置では、追加的な推進ユニットは、ウォータークラフトを推進させるための追加の推進力を提供するために使用され、および/または、追加的な操縦能力を提供するために(たとえば、バウスラスターとして作用するために)使用され得る。
【0064】
本発明によるウォータークラフトは、アウトリガーよって安定化されているモノハルウォータークラフトとして説明されてきた。しかし、ウォータークラフトは、「非対称のカタマラン」であると考えられることもでき、メインハル10およびアウトリガー11がカタマランの2つのハルを形成した状態になっているということが理解されることとなる。本発明のウォータークラフトは、モノハルウォータークラフト(それは、荷重の変化を容易に収容することが可能である)およびマルチハルウォータークラフトの両方の利点を組み込んでおり、それは、改善された耐航特性および低減された抗力を有することが可能であるということが理解されることとなる。
【0065】
本発明は例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、それは、開示されている例示的な実施形態に限定されないということが当業者によって理解されるべきである。さまざまな変更例、組み合わせ、サブコンビネーション、および代替例は、それらが添付の特許請求の範囲またはその均等物の中にある限りにおいて、設計要件および他の要因に応じて生じることが可能である。本開示の任意の例または実施形態の特徴は、本開示の任意の他の例または実施形態からの特徴と組み合わせられ得る。
【符号の説明】
【0066】
10 メインハル
11 アウトリガー
12 水中翼
13 第1の部分
14 接合部分
15 第2の部分
16 アウトリガー水中翼
17 アーム
【国際調査報告】