IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シンセス・ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2023-502714外科用ツール、及びそのような外科用ツールを備えるロボットシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】外科用ツール、及びそのような外科用ツールを備えるロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20230118BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20230118BHJP
   A61B 17/14 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B34/20
A61B17/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529609
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2020082840
(87)【国際公開番号】W WO2021099547
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】19210955.1
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513164565
【氏名又は名称】シンセス・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Synthes GmbH
【住所又は居所原語表記】Eimattstrasse 3, CH-4436 Oberdorf, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デマンジェット・ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】マーサー・アラスデア
(72)【発明者】
【氏名】バートン・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ジスラー・ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ジルカ・ケビン
(72)【発明者】
【氏名】イケダ・ユウジ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ・ソウラブ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー・マシュー
(72)【発明者】
【氏名】レアンドリ・アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドリ・ブルーノ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL01
4C160LL28
(57)【要約】
本開示は、外科用ツール(2)であって、
長手方向軸(X)を画定する本体(20)と、
本体の遠位端(200)から延在するエンドエフェクタ(21)であって、枢動軸(Y)を中心に本体に対して移動可能である、エンドエフェクタ(21)と、
平面機構(11)に本体を堅固に固定するように構成された第1のコネクタ(27)と、
トラッカー(30)の遠位部分(300)を本体に堅固に固定するように構成された第2のコネクタ(26)であって、
第1のコネクタ(26)及び第2のコネクタ(27)が、長手方向軸(X)及び枢動軸(Y)を含む平面に対して互いに対称であり、トラッカー(30)又は平面機構(11)のいずれかの取り付けに適している、第2のコネクタ(26)と、
トラッカーの近位部分(301)を本体に堅固に固定するように構成された第3のコネクタ(203)と、を備える、外科用ツール(2)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ツール(2)であって、
長手方向軸(X)を画定する本体(20)と、
前記本体の遠位端(200)から延在するエンドエフェクタ(21)であって、枢動軸(Y)を中心に前記本体に対して移動可能である、エンドエフェクタ(21)と、
平面内でのみ移動するように物体を制約するように構成された平面機構(11)に前記本体を堅固に固定するように構成された第1のコネクタ(27)と、
トラッカー(30)の遠位部分(300)を前記本体に堅固に固定するように構成された第2のコネクタ(26)であって、
前記第1のコネクタ(26)及び前記第2のコネクタ(27)が、前記長手方向軸(X)及び前記枢動軸(Y)を含む平面に対して互いに対称であり、前記トラッカー(30)の前記遠位部分又は前記平面機構(11)のいずれかの取り付けに両方とも適している、第2のコネクタ(26)と、
前記トラッカーの近位部分(301)を前記本体に堅固に固定するように構成された第3のコネクタ(203)と、を備える、外科用ツール(2)。
【請求項2】
前記本体が、ユーザの手のひらを受容するように成形された凹部(202)を備える、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項3】
前記本体に対して選択的に枢動可能であるハンドル(22)を更に備え、前記ハンドルが、グリップ(24)と、前記エンドエフェクタを作動させるように構成されたトリガ(23、23a、23b)と、を備える、請求項1又は2に記載の外科用ツール。
【請求項4】
前記ハンドル(22)が、前記長手方向軸(X)に直交する軸(P)を中心に選択的に枢動可能である、請求項3に記載の外科用ツール。
【請求項5】
前記ハンドルが、前記エンドエフェクタを作動させるように構成された2つのトリガ(23a、23b)を備え、第1のトリガ(23a)が、前記ハンドルの遠位側に位置し、第2のトリガ(23b)が、前記ハンドルの近位側に位置し、前記第1のトリガ(23a)が、前記第2のトリガ(23b)より前記本体(20)に近い、請求項3又は4に記載の外科用ツール。
【請求項6】
前記ハンドル(22)が、前記長手方向軸(X)を中心に選択的に枢動可能である、請求項3に記載の外科用ツール。
【請求項7】
前記ハンドル(22)が、実質的にU字形状を有し、前記ハンドル(22)が、
前記長手方向軸(X)を中心に前記本体(20)に枢動可能に結合された遠位アーム(220)と、
前記グリップ(24)及び前記トリガ(23)を備える近位アーム(221)と、
前記近位アーム(221)が前記本体の近位端(201)からオフセットされるように、前記遠位アーム(220)及び前記近位アーム(221)を接続するブリッジ(222)と、を備える、請求項6に記載の外科用ツール。
【請求項8】
前記ブリッジ(222)が、前記ハンドルの前記遠位アーム(220)を中心に選択的に枢動可能である、請求項7に記載の外科用ツール。
【請求項9】
前記エンドエフェクタ(11)が、鋸ブレードである、請求項1~8のいずれか一項に記載の外科用ツール。
【請求項10】
ロボットシステムであって、
ロック可能な保持アーム(12)と、
前記保持アームに結合された作動ユニット(10)と、
前記作動ユニットに結合された平面機構(11)と、
請求項1~11のいずれか一項に記載の外科用ツール(2)であって、前記本体(20)が、前記第1のコネクタ(26、27)によって前記平面機構(11)に堅固に固定されている、外科用ツール(2)と、
前記第2のコネクタ(27)及び前記第3のコネクタ(203)によって前記外科用ツールの前記本体(20)に堅固に取り付けられているトラッカー(30)と、を備える、ロボットシステム。
【請求項11】
前記トラッカー(30)が、前記本体(20)の側面に実質的に平行に延在し、前記トラッカー(30)及び前記第2のコネクタ(27)が、前記本体と前記トラッカーとの間にユーザの指を通過させるのに十分なギャップ(G2)を残すように構成されている、請求項10に記載のロボットシステム。
【請求項12】
前記トラッカーの前記遠位部分(300)が、前記第1のコネクタ(26)又は前記第2のコネクタ(27)と係合するように構成されたプラグ(214)と、フレーム(315)、及び前記フレーム(315)の両側に回転可能に装着された2つのローラー(316)を含むローラーロックと、を備え、前記フレーム(315)は、前記ローラー(316)が前記第1のコネクタ(26)又は前記第2のコネクタ(27)の長手方向溝(260)と係合するロック位置と、ロック解除位置との間で、前記プラグ(314)に対して枢動可能であり、前記フレーム(314)が、それぞれの長手方向溝(260)において次々に前記ローラー(316)と係合又は係合解除することを可能にするように変形可能である、請求項10又は11に記載のロボットシステム。
【請求項13】
前記トラッカーの前記近位端(301)が、舌部(303)によって接続されている上部アーム及び下部アーム(302)と、各それぞれのアーム(302)から延在している上部レバー及び下部レバー(304)と、を備え、前記第3のコネクタ(203)が、向かい合っている上部凹部及び下部凹部(204)と、向かい合っている右側溝及び左側溝(205)と、を備え、前記アーム(302)が、前記第3のコネクタ(203)の周りに位置付けられており、前記舌部(303)が、前記右側溝及び前記左側溝(205)のうちの1つと係合し、前記レバー(304)が、前記第3のコネクタ(203)と干渉しないロック解除位置と、各レバーが前記第3のコネクタのそれぞれの凹部(204)と係合するロック位置との間で移動可能である、請求項10~12のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項14】
前記トラッカーの前記近位端(301)が、前記第3のコネクタ(203)に嵌合する左側アーム及び右側アーム(302)を備え、各アーム(302)が、遠位方向に延在し、かつ内部リム(306)を含むフランジ(305)を備え、前記本体(20)が、それぞれのリム(306)と係合する右側溝及び左側溝(206)を備える、請求項10~12のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項15】
前記トラッカーの前記近位端が、前記第3のコネクタのハウジング(211)内に枢動可能に装着されるように構成されたシャフト(311)を備え、前記シャフト(311)が、非円形断面を有しており、前記ハウジング(211)が、第1の配向で前記シャフト(311)を挿入するように、かつ前記第1の配向から角度的にオフセットされた第2の配向で前記シャフト(311)を保持するように構成されたスロット(2110)を備える、請求項10~12のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項16】
前記平面機構が、開放位置と閉鎖位置との間で互いに対して移動し、かつ前記第1のコネクタ(26)及び前記第2のコネクタ(27)の外部形状に相補的な内部形状を有するクランプジョー(1110、1111)を備える、前記第1のコネクタ(26)又は前記第2のコネクタ(27)のいずれかと係合するように構成されたコネクタ(111)を備え、前記コネクタ(111)が、前記ジョー(1110、1112)をばね力に逆らって閉じさせるように構成された枢動可能な偏心レバー(112)を更に備える、請求項10~15のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項17】
前記トラッカーが、光学トラッカーである、請求項10~16のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項18】
前記トラッカーが、プラスチック材料で作製された単回使用トラッカーである、請求項10~17のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項19】
前記作動ユニットが、3~5つの電動自由度を備える、請求項10~18のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科用ツール、及びそのような外科用ツールを備えるロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
全膝関節形成術は、典型的には、損傷した骨及び軟骨を除去し、人工膝関節を装着するために、大腿骨骨端及び脛骨骨端の両方を切断する必要がある。
【0003】
その目的のために、外科医は、切断ブロックを通じて振動鋸を使用することによって、大腿骨に対して5回以上及び脛骨に対して1回又は2回以上の切断を行う必要がある。
【0004】
図1は、大腿骨コンポーネントFC及び脛骨コンポーネントTCを含む人工膝関節を受容することが意図された膝の概略斜視図である。一般的に、大腿骨Fに対して行われる切断は、平面F1に沿った遠位切断、平面F2に沿った前方切断、平面F3に沿った後方切断、並びに遠位面を前方面及び後方面にそれぞれ接続する前方面取りF4及び後方面取りF5である。平面T1に沿った脛骨Tの切断を行う必要がある。
【0005】
外科医がこれら全ての平面を正確にかつより短い時間で行うために、ロボットシステムが開発されている。
【0006】
例えば、図2に示すように、ロボットシステム1は、電動作動ユニット10と、作動ユニットの末端セグメントに取り付けられた第1の端部110、鋸2’に堅固に取り付けられた第2の端部111を備えた平面機構11と、を備える。鋸は、本体20’と、本体に対して移動可能な鋸ブレード21’と、切断を実行するために外科医によって保持されるように構成されたハンドル22’と、を備える。ロボットシステムはまた、鋸及び切断される骨の相対位置をリアルタイムで決定するために、鋸及び患者にそれぞれ取り付けられたトラッカー30’、31、並びに切断が行われる決定された平面と鋸ブレードとの整列を維持するために、患者又は外科医からの小さい動きを補償するように構成された制御ユニットも備える。鋸ブレードを作動させるために、外科医は、鋸のハンドル22’上に位置するトリガ23’を押す必要がある。鋸ブレードの速度は、トリガに加えられる圧力に依存し得る。
【0007】
行われる切断の角度配向によっては、鋸を、外科医にとって快適ではない位置に傾斜させる必要があり得る。
【0008】
図2は、鋸のハンドル22’が上向きに配向されたロボットシステムを示す。この位置は人間工学的ではなく、外科医は、切断を実行しながら鋸を制御するのが困難であり得る。その結果、外科医は、外科的介入で影響を与えるつもりではない軟組織(例えば、側副靭帯、膝関節包、及び/又は膝窩動脈)などの組織も切断する場合がある。特に、外科医は、トリガ23’に加えられる圧力を十分に制御しない場合があり、これにより、鋸ブレードの速度の制御が不十分になる。加えて、トラッカー30’がカメラによって検出可能な光学トラッカーである場合、外科医は、トラッカーが検出されず、ロボットシステムの停止につながり得る、カメラの視野の妨害を確実に行わないようにする必要がある。
【0009】
加えて、トラッカー30’及び平面機構11のコネクタが異なるため、同じ鋸2’で患者の両側(例えば、左脚及び右脚)を治療することは便利ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、患者の左側又は右側のいずれも治療し、患者及び周囲の手術部位との最小限の干渉を提供するように適合された外科用ツールを設計することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態は、外科用ツールであって、
長手方向軸を画定する本体と、
本体の遠位端から延在するエンドエフェクタであって、枢動軸を中心に本体に対して移動可能である、エンドエフェクタと、
平面内でのみ移動するように物体を制約するように構成された平面機構に本体を堅固に固定するように構成された第1のコネクタと、
トラッカーの遠位部分を本体に堅固に固定するように構成された第2のコネクタであって、
第1及びコネクタは、長手方向軸及び枢動軸を含む平面に対して互いに対称であり、トラッカーの遠位部分又は平面機構のいずれかの取り付けに両方とも適している、第2のコネクタと、
トラッカーの近位部分を本体に堅固に固定するように構成された第3のコネクタと、を備える、外科用ツールに関する。
【0012】
本明細書では、「遠位」及び「近位」という用語は、エンドエフェクタに対してそれぞれより近くにある及びより遠くにある外科用ツールの部分を示す。
【0013】
第1のコネクタ及び第2のコネクタの対称性は、平面機構又はトラッカーのいずれかも上記コネクタの各々に交換可能に接続することを可能にし、これは、患者の両側を治療するとき、外科用ツールを使用する際により大きい柔軟性を提供する。第3のコネクタも、長手方向軸及び枢動軸を含む平面に対して有利にも対称である。
【0014】
既知の外科用ツールでは、トラッカーは、1つのみのコネクタによって本体に取り付けられ、外科用ツールは使用中に振動するため、振動は、トラッカーを本体に対して移動させる場合がある。結果として、トラッカーを位置特定するシステムの信号は、誤って解釈され得、外科用ツールの位置は不正確であり得、それによって、外科的治療の精度に悪影響を与える可能性がある。
【0015】
2つのコネクタを使用してトラッカーを本体に取り付けることによって、トラッカーは、外科用ツールの使用中の振動による本体に対する移動がより起こりにくくなる。したがって、外科用ツールの位置は、より高い精度で決定され得、これは、外科的治療の質に有益である。
【0016】
いくつかの実施形態では、トラッカーは、本体の側面に実質的に平行に延在してもよく、トラッカー及び第2のコネクタは、本体とトラッカーとの間にユーザの指を通過させるのに十分なギャップを残すように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、本体は、ユーザの手のひらを受容するように成形された凹部を備え得る。これにより、ユーザは外科用ツールを強固に保持することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、トラッカーの遠位部分は、トラッカーの遠位部分が第1のコネクタ又は第2のコネクタと解放可能に係合することを可能にするロック解除位置と、トラッカーの遠位部分が第1のコネクタ又は第2のコネクタにロックされるロック位置との間で動作可能なスライダを備え得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、トラッカーは、単回使用トラッカーであり得る。
【0020】
実施形態は、そのような外科用ツールを備えるロボットシステムに関する。
【0021】
ロボットシステムは、
ロック可能な保持アームと、
保持アームに結合された作動ユニットと、
作動ユニットに結合された平面機構と、
本体が、第1のコネクタによって平面機構に堅固に固定されている、上述の外科用ツールと、
第2のコネクタ及び第3のコネクタによって外科用ツールの本体に堅固に取り付けられている第1のトラッカーと、を備え得る。別のトラッカーは、作動ユニットに堅固に取り付けられ得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、トラッカーは、本体の側面に実質的に平行に延在してもよく、トラッカー及び第2のコネクタは、本体とトラッカーとの間にユーザの指を通過させるのに十分なギャップを残すように構成されている。
【0023】
いくつかの実施形態では、トラッカーは、光学トラッカーであり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、トラッカーは、単回使用トラッカーであり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、作動ユニットは、有利には、3~5つの電動自由度を備え得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、外科用ツールは、エンドエフェクタのアクチュエータに給電するために本体に結合された電気ケーブルを更に備える。
【0027】
あるいは、本体は、エンドエフェクタのアクチュエータに給電するためのバッテリを備え得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、エンドエフェクタは、鋸ブレードであり得る。
【0029】
いくつかの実施形態は、外科用ツールであって、
長手方向軸を画定する本体と、
本体の遠位端から延在するエンドエフェクタであって、本体に対して移動可能である、エンドエフェクタと、
平面機構に本体を堅固に固定するように構成された第1のコネクタと、
トラッカーを本体に堅固に固定するように構成された第2のコネクタと、
本体に対して選択的に枢動可能なハンドルであって、グリップと、エンドエフェクタを作動させるように構成されたトリガと、を備える、ハンドルと、を備える、外科用ツールに関する。
【0030】
そのような外科用ツールは、より人間工学的であり、エンドエフェクタのどのような配向であっても、外科医がエンドエフェクタの作動を正確に制御することを可能にする。
【0031】
いくつかの実施形態では、ハンドルは、長手方向軸に直交する軸を中心に選択的に枢動可能であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、本体は、ハンドルとは反対側に、ユーザの手を受容するように成形された凹部を備え得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、ハンドルは、エンドエフェクタを作動させるように構成された2つのトリガを備えることができ、第1のトリガは、ハンドルの遠位側に位置し、第2のトリガは、ハンドルの近位側に位置し、第1のトリガは、第2のトリガより本体に近い。
【0034】
いくつかの実施形態では、ハンドルは、長手方向軸を中心に選択的に枢動可能であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、ハンドルは、実質的にU字形状を有し得、ハンドルは、
長手方向軸を中心に本体に枢動可能に結合された遠位アームと、
グリップ及びトリガを備える近位アームと、
近位アームが本体の近位端からオフセットされるように、遠位アーム及び近位アームを接続するブリッジと、を備える。
【0036】
上記ブリッジは、ハンドルの遠位アームを中心に選択的に枢動可能であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1のコネクタ及び第2のコネクタは、長手方向軸を含む平面に対して対称であり、平面機構に直交し、したがって、第1のコネクタ及び第2のコネクタは、平面機構及びトラッカーのうちのいずれか1つに堅固に固定されるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】全膝関節形成術において大腿骨及び脛骨に行われる切断の概略図である。
図2】非人間工学的な位置に配向された鋸を有するロボットシステムの実施形態を示す。
図3A】ハンドルが、本体の長手方向軸に直交する軸を中心に枢動可能である、外科用ツールの実施形態を示す。
図3B】ハンドルが、本体の長手方向軸に直交する軸を中心に枢動可能である、外科用ツールの実施形態を示す。
図4】ハンドルが、本体の長手方向軸を中心に枢動可能である、外科用ツールの実施形態を示す。
図5A】外科用ツールへのトラッカーの取り付けの実施形態を示す。
図5B】外科用ツールへのトラッカーの取り付けの実施形態を示す。
図5C】外科用ツールへのトラッカーの取り付けの実施形態を示す。
図6A】外科用ツールへのトラッカーの取り付けの別の実施形態を示す。
図6B】外科用ツールへのトラッカーの取り付けの別の実施形態を示す。
図6C】外科用ツールへのトラッカーの取り付けの別の実施形態を示す。
図6D】外科用ツールへのトラッカーの取り付けの別の実施形態を示す。
図7A】本体へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図7B】本体へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図7C】本体へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図8】本体への平面機構の接続の実施形態を示す。
図9A】本体の近位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図9B】本体の近位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図10A】本体の遠位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図10B】本体の遠位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図11A図9A図9B及び図10A図10Bのコネクタを使用してトラッカーを本体に接続するための方法のステップを示す。
図11B図9A図9B及び図10A図10Bのコネクタを使用してトラッカーを本体に接続するための方法のステップを示す。
図11C図9A図9B及び図10A図10Bのコネクタを使用してトラッカーを本体に接続するための方法のステップを示す。
図12A】本体の遠位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図12B】本体の遠位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図13】本体の遠位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図14A】本体の遠位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図14B】本体の遠位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図14C】本体の遠位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
図15A】外科用ツールをロボットシステムに接続するための方法のステップを示す。
図15B】外科用ツールをロボットシステムに接続するための方法のステップを示す。
図15C】外科用ツールをロボットシステムに接続するための方法のステップを示す。
図15D】外科用ツールをロボットシステムに接続するための方法のステップを示す。
図15E】外科用ツールをロボットシステムに接続するための方法のステップを示す。
【0039】
図示の実施形態のいくつかでは、外科用ツールのハンドルは、枢動可能なハンドルではなく、固定ハンドルとして表されている。しかしながら、これらの実施形態は、枢動可能なハンドルが設けられているか、又は固定ハンドルが設けられているかにかかわらず、外科用ツールに適用可能である。したがって、本開示は、特定のタイプのハンドルを用いた例示される実施形態の組み合わせに限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0040】
外科用ツール
図示の実施形態では、外科用ツールは、外科用鋸として表される。すなわち、外科用ツールは、本体と、鋸ブレードであるエンドエフェクタと、を備える。鋸ブレードは、本体内に配置されたアクチュエータに結合されている。電源を入れると、アクチュエータは、鋸ブレードを、枢動軸を中心に本体に対して移動させる。鋸ブレードの上記移動は、切断面と呼ばれる平面を画定する。上記外科用ツールを使用して、例えば、図1を参照しながら前述した全膝関節形成術において、骨により多くの平面切断のうちの1つを行うことができる。
【0041】
しかしながら、例示されていない実施形態は、本体と、本体に対して移動可能であるようにアクチュエータによって制御されるエンドエフェクタと、を備える任意の他のタイプの外科用ツールを含む。そのようなエンドエフェクタは、特に、本体に対して回転するバリ又はドリルビットであり得る。外科用ツールを使用して、骨表面を加工するか、又は骨に1つ又は複数のボアを穿設することができる。
【0042】
本体は、本体の近位端と遠位端との間に延在する長手方向軸を画定する。本体の遠位端は、エンドエフェクタに結合されている。
【0043】
ユーザによる外科用ツールの取り扱いのために構成されたハンドルは、本体の近位領域に配置されている。
【0044】
ハンドルは、ユーザの手に保持されるように構成されたハンドルの一部分であるグリップを備える。ハンドルは、ユーザの指によって押されたときに、アクチュエータを作動させてエンドエフェクタを移動させるように構成された少なくとも1つのトリガを更に備える。好ましくは、エンドエフェクタの移動速度は、トリガ上でユーザによって加えられる圧力に依存する。グリップに対するトリガの位置は、ユーザが、グリップを保持している手の少なくとも1つの指でトリガを押すことができるように選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、ハンドルは、本体に対して選択的に枢動可能である。したがって、ユーザは、エンドエフェクタの配向に応じて、外科用ツールの人間工学を最適化するために、ハンドルの配向を変更し得る。
【0046】
配向の変化は、連続的であってもよく、すなわち、2つの端部位置間の本体に対するハンドルの任意の位置が利用可能である。
【0047】
あるいは、配向の変化は段階的であってもよく、すなわち、本体に対するハンドルの離散的な数の位置(例えば、相対傾斜の5°ごと)のみが利用可能である。
【0048】
両方の場合において、外科用ツールは、ハンドルを本体に堅固に固定するように構成されたロック機構を備え得る。ユーザは、本体に対するハンドルの配向を変更することを意図している場合、最初にロック機構をロック解除して、ハンドルを移動させることを可能にする必要がある。本体に対するハンドルの所望の配向が達成されると、ユーザは、外科用ツールを使用する前に、ロック機構をロックする必要がある。一実施形態によれば、ロック機構は、機構をロック解除するためにユーザによって押され得るボタンを含み得る。ボタンは、ユーザがボタンへの押圧を解放するとき、機構をロック構成に戻すばね部材によって付勢され得る。
【0049】
本体に対するハンドルのこの選択的な配向により、図2の状況は、ハンドルをユーザにとってより人間工学的な位置に配置することによって回避され得る。
【0050】
一実施形態によれば、ハンドルは、本体の長手方向軸に直交する軸を中心に枢動可能である。
【0051】
図3A及び図3Bは、外科用ツールの第1の実施形態を示す。
【0052】
ツールは、本体20を備える。本体20は、長手方向軸Xに沿って細長い形状を呈する。本体20は、遠位端200を備え、それから鋸ブレード21及び近位端201が延在する。
【0053】
図示されていないが、本体は、長手方向軸Xに直交する枢動軸Yを中心に、図3Aのシートに直交し、かつ長手方向軸に平行な平面内で鋸ブレードを移動させるために、鋸ブレードに動作可能に結合されたアクチュエータ(モーター)を含む。
【0054】
アクチュエータは、電気ケーブルによって、又は本体に埋め込まれたバッテリによって給電され得る。
【0055】
図3A及び図3Bの実施形態では、電気ケーブルは、本体の近位端201から、長手方向軸Xに沿って延在してもよい。他の実施形態では、電気ケーブルは、鋸の適切な使用を妨げない限り、本体の任意の他の部分から延在してもよい。
【0056】
ハンドル22は、長手方向軸Xに直交する軸Pの周りで、本体に枢動可能に装着されている。本体とハンドルとの間の接続は、ロックボタン25によって作動され得るロック機構を備える。
【0057】
本体に対するハンドルの角度位置を変更するために、ユーザは、ボタン25を押し、ハンドルを、特定の数の許容位置に(例えば、隣接する位置間の5°の間隔で)自由に又は角度的にインデックス付けされ得る所望の位置に移動させ、ボタンを解放してハンドルを所望の位置にロックすることができる。
【0058】
ハンドル22は、ピストル形状設計を提示し得る。
【0059】
ハンドルは、グリップ24を構成する、概して中央領域を備える。そのために、上記中央領域の形状及び寸法は、ユーザの手によって容易かつ快適に保持されるように設計されている。
【0060】
ハンドルは、本体20とグリップ24との間でハンドル22の遠位側に位置する第1のトリガ23aを備える。したがって、ユーザがハンドルを手に保持するとき、アクチュエータを作動させるために、1つの指(例えば、人差し指)をトリガ23a上に配置することができる。
【0061】
有利な実施形態によれば、ハンドルは、グリップ24に対して第1のトリガ23aとは反対側のハンドルの近位側に位置する第2のトリガ23bを備え得る。上記第2のトリガ23bは、第1のトリガ23aと同じ機能を有する。
【0062】
上記第2のトリガ23bは、図2のように、例えば、ハンドルが本体の上に位置する場合、図3Aと比較して、外科用ツールが逆位置に配向される場合に特に有用であり得る。そのような場合、ユーザは、自分の人差し指を第2のトリガ23b上に配置するように、図3のものとは逆の方法でグリップ24を保持することができる。
【0063】
したがって、ユーザは、快適かつ人間工学的な方法で外科用ツールを保持するために、第1のトリガ又は第2のトリガのいずれかを使用することを選択することができる。
【0064】
ハンドルとは反対側のその側面では、本体20は、ユーザの手を受容するように成形された凹部202を備え得る。凹部は、本体20に対する手の直感的な位置決めを提供する。このようにして、ユーザは、外科用ツールをしっかりと保持するために、一方の手をグリップ24及びトリガの周りに、及び他方の手を本体の凹部202に配置することができる。
【0065】
コネクタ26は、遠位端の近くで、本体の側面に延在する。(図3A及び図3Bには見えない)別のコネクタは、本体の反対側に延在する。各コネクタは、トラッカー及び/又は平面機構の取り外し可能な取り付けのために構成されている。取り付けは、ねじ又はピンによって提供され得る。好ましくは、トラッカー及び/又は平面機構の取り付け又は取り外しは、いかなるツールも必要とせずに行われる。例えば、取り付けは、いかなるツールも用いないでユーザによって操作され得るレバークランプ又はスライダによって提供され得る。コネクタの実施形態は、以下で説明する図7A図7B及び図8A図8Bに示している。
【0066】
好ましくは、コネクタは、長手方向軸Xを含む平面に対して対称であり、切断面に対して垂直である。このようにして、外科的介入が行われる患者の側(例えば、膝関節形成術の場合では左脚又は右脚)に応じて、各コネクタは、平面機構又はトラッカーのいずれかに交換可能に取り付けられて、ロボットデバイスの最も便利な構成を提供することができる。
【0067】
別の実施形態によれば、ハンドルは、長手方向軸を中心に枢動可能である。
【0068】
図4は、外科用ツールの第2の実施形態を示す。
【0069】
ツールは、本体20を備える。本体20は、長手方向軸Xに沿って細長い形状を呈する。本体20は、遠位端200を備え、それから鋸ブレード21及び近位端201が延在する。
【0070】
図示されていないが、本体は、図4のシートに直交し、かつ長手方向軸に平行な平面内で鋸ブレードを移動させるために、鋸ブレードに動作可能に結合されたアクチュエータ(モーター)を含む。
【0071】
アクチュエータは、電気ケーブルによって、又は本体に埋め込まれたバッテリによって給電され得る。
【0072】
図4の実施形態では、電気ケーブル(図示せず)は、本体の近位端201から、長手方向軸Xに直交する方向に、例えば、本体20とハンドル22との間の接続とは反対の方向に延在し得る。他の実施形態では、電気ケーブルは、鋸の適切な使用を妨げない限り、本体の任意の他の部分から延在し得る。
【0073】
ハンドル22は、長手方向軸Xの周りで、本体に枢動可能に装着されている。本体とハンドルとの間の接続は、ロックボタン25によって作動され得るロック機構を備える。
【0074】
本体に対するハンドルの角度位置を変更するために、ユーザは、ボタン25を押し、ハンドルを、特定の数の許容位置に(例えば、隣接する位置間の5°の間隔で)自由に又は角度的にインデックス付けされ得る所望の位置に移動させ、ボタンを解放してハンドルを所望の位置にロックすることができる。
【0075】
ハンドル22は、実質的にU字形状を呈し得る。より正確には、ハンドルは、長手方向軸Xを中心に本体20に枢動可能に結合された遠位アーム220と、グリップ24及びトリガ23を備える近位アーム221と、を含む。
【0076】
遠位アーム及び近位アームは、軸Xからオフセットされた、本体20に対して実質的に平行に延在し得るブリッジ222によって接続されている。
【0077】
このようにして、近位アーム221は、本体の近位端201からギャップG1だけオフセットされている。ギャップG1は、ユーザの指のための十分な空間を可能にするように設計され、それにより、ユーザは、手をグリップ24の周りに巻き付けることが可能になる。
【0078】
トリガ23は、ブリッジとグリップとの間で、近位アームの遠位側に有利に位置する。したがって、ユーザがハンドルを手に保持するとき、アクチュエータを作動させるために、1つの指(例えば、人差し指)をトリガ23上に配置することができる。
【0079】
一実施形態によれば、ブリッジは、遠位アーム220に対して、遠位アームの軸Wを中心に枢動可能であり得る。遠位アーム220とブリッジ222との間の接続は、ロックボタン(図示せず)によって作動され得るロック機構を備える。
【0080】
このようにして、ユーザは、外科用ツールの本体及びエンドエフェクタに対する近位アームの配向を調整するために、2つの回転自由度から利益を得ることができる。
【0081】
トラッカー
トラッカーは、手術において使用可能な任意のトラッカーであり得る。
【0082】
好ましくは、トラッカーは、外科的介入後に廃棄されることが意図される単回使用トラッカーであり得る。そのために、トラッカーは、プラスチック材料で作製され、滅菌シートに提供され得る。そのような単回使用トラッカーを使用する利点は、再利用可能な外科用デバイスで発生する滅菌コストを低減することである。別の利点は、本体に対する追跡可能な要素の位置の大きい精度を提供することである。実際、再利用可能なトラッカーは、繰り返し使用及び滅菌後に変形し、それによって精度を失う場合がある。
【0083】
トラッカーは、特に光学トラッカーであってもよいが、他の追跡技術、例えば電磁的なものは除外されない。
【0084】
有利な実施形態によれば、トラッカーは、本体に対して実質的に平行な細長い形状を備え得る。
【0085】
トラッカーは、いくつかの部品のアセンブリによる不正確さを低減し、かつアセンブリ時間及びコストを節約するために、システムに関与する部品の数を減らすために単一の部品として提供され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、トラッカーは、本体に取り外し可能に取り付けられたトラッカーホルダと、トラッカーホルダに取り付けられた追跡可能要素と、を備えることができる。
【0086】
好ましくは、トラッカーと本体との間の接続は、ユーザの指の通過を可能にするのに十分な、本体とトラッカーとの間のギャップG2(図5C及び図6Cを参照)を提供するように設計されている。したがって、ユーザが自分の手の手のひらを凹部202内に配置することによって本体20を保持するとき、ユーザは、本体とトラッカーとの間を通過することによって指で本体を巻き付けることができる。
【0087】
トラッカーの本体への取り付けは、可逆的である。特に、トラッカーは取り外して、再利用可能なトラッカーの場合に洗浄及び滅菌するか、又は単回使用トラッカーの場合に廃棄することができる。
【0088】
上述のコネクタを介して本体の遠位端に取り付けられることに加えて、トラッカーは、本体の近位端にも有利に取り付けられる。このようにして、本体へのトラッカーの固定は安定し、これにより、トラッカーが曝露され得る振動又はショックにもかかわらず、本体に対するトラッカーの位置が外科的介入中に固定されたままになることが確実になる。
【0089】
図5A図5C及び図6A図6Dは、トラッカーの取り付けのための2つの代替実施形態を示す。例示的な図面では、ハンドル22は、本体20に堅固に接続されるように見えているが、上述のように本体に対して枢動可能であってもよい。
【0090】
図5A図5Cを参照すると、トラッカー(又はトラッカーホルダ)30は、本体のコネクタ26及び/又は27に結合されるように構成された遠位端300と、長手方向軸Xに実質的に直交する平面内に延在する実質的にU字形状を有する近位端301と、を有する細長い形状を呈する。
【0091】
本体の近位端201は、上側及び下側に向かい合っている凹部204を有する実質的に丸い形状、並びに右側及び左側に向かい合っている溝205を有する接続部品203を備える。
【0092】
トラッカーの近位端301は、接続部品203の両側に延在する上部及び下部アーム302を備える。アームは、溝205のうちの1つと係合する舌部303を備える中間部分によって接続されている。
【0093】
トラッカーの近位端301は、上部レバー及び下部レバー304を更に備える。
【0094】
トラッカーを本体に装着する前に、レバーは、接続部品203を妨げないようにロック解除位置(図5A図5Bを参照)に配置され、それによって、下部及び上部アームを接続部品の周りに挿入することが可能になる。
【0095】
トラッカーの近位端301が接続部品に装着され、舌部303がそれぞれの溝205に挿入されると、レバー304は、各レバーがそれぞれの凹部204と係合するロック位置まで枢動される(図5Cを参照)。このロック位置では、レバーは、トラッカーの近位端を本体にしっかりと取り付ける。
【0096】
トラッカーを本体から取り外す必要がある場合、ユーザは、単にレバーをロック解除位置に枢動させ、接続部品から近位端を取り外す必要がある。
【0097】
接続部品203及びコネクタ26、27は、本体の長手方向軸X及び鋸ブレードの枢動軸Yを含む平面に対して対称であるため、トラッカーは、本体のいずれかの側に装着され、コネクタ26又はコネクタ27のいずれかに取り付けられ得る。
【0098】
図6A図6Dを参照すると、トラッカー(又はトラッカーホルダ)30は、本体のコネクタ26及び/又は27に結合されるように構成された遠位端300と、長手方向軸Xに実質的に直交する平面内に延在する実質的にU字形状を有する近位端301と、を有する細長い形状を呈する。
【0099】
本体の近位端201は、実質的に丸い形状を有する接続部品203を備える。加えて、溝206は、近位端の領域において、本体の右側及び左側に提供される。
【0100】
トラッカーの近位端301は、接続部品203に嵌合する丸い形状を有する左側アーム及び右側アーム302を備える。各アームは、遠位方向に延在するフランジ305を備える。各フランジ305には、それぞれの内部リム306が設けられている。
【0101】
トラッカーを本体に取り付けるために、近位端は、最初に、接続部品203から近位に配置され(図6Aを参照)、次いで、遠位方向に長手方向軸に沿って移動され(図6Bを参照)、そして、アームが接続部品203に嵌合する(図6Cを参照)。この最後の位置では、リム306は溝206と係合し、それによって、トラッカーの近位端が本体に対して固定される。接続部品への近位端の係合中に、フランジ305は、リム306が溝206と係合するまでわずかに変形し得る。そのために、トラッカー(又はトラッカーホルダ)は、好ましくはプラスチックで作製される。
【0102】
次いで、トラッカーの遠位端は、コネクタを介して本体の遠位端に取り付けられる。
【0103】
接続部品203、溝206、及びコネクタ26、27は、本体の長手方向軸X及び鋸ブレードの枢動軸Yを含む平面に対して対称であるため、トラッカーは、本体のいずれかの側に装着され、コネクタ26又はコネクタ27のいずれかに取り付けられ得る。
【0104】
コネクタの設計に応じて、トラッカー及び平面機構を本体に取り付ける様々な方法が提供され得る。
【0105】
図7A図7Cは、いかなるツールも必要としない、本体の遠位端へのトラッカーの接続の実施形態を示す。
【0106】
本体20の遠位部分のみが、これらの図では表されている。
【0107】
コネクタ26、27は、本体の長手方向軸Xと鋸ブレードの枢動軸Yとを含む平面に対して対称である。したがって、一方のコネクタの設計の説明も、他方のコネクタに適用される。
【0108】
コネクタ26は、本体20から軸X及びYに直交する方向Zに延在する平行六面体形状を有する。コネクタ26の上側には、2つの交差する溝260、261が設けられている。溝260は、長手方向軸Xに平行である。溝261は、溝260に直交する。
【0109】
トラッカー30の近位端は、コネクタ26又は27と係合するように構成された平行六面体雌コネクタ307を備える。図7Cでよりよく見られるように、コネクタ307の上側は、溝260と係合するように構成された、軸Zの方向に延在する可撓性脚部308を備える。コネクタ307の上側は、溝261と係合するように構成された、可撓性脚部308間に位置する内部リブ309を更に備える。コネクタ307の下側は見えないが、同様の可撓性脚部及び内部リブがこの下側に設けられている。
【0110】
溝260、261と可撓性脚部308と内部リブ309との協働は、トラッカー(又は平面機構)を方向X及び方向Zの両方に保持することを可能にする。
【0111】
トラッカーの雌コネクタ307は、それぞれのコネクタの一部である枢動可能なロック310によって、コネクタ26又は27に更に取り外し可能に固定され得る。
【0112】
図8は、いかなるツールも必要としない、本体への平面機構の接続の実施形態を示す。本体のコネクタ26、27は、図7A図7Cにおけるのと同じである。
【0113】
平面機構の端部111に設けられたコネクタは、(図8に示される)開放位置と、平面機構がジョーによって本体のコネクタ26又は27に固定される閉鎖位置との間で、互いに対して移動可能な2つのクランプジョー1110、1111を備える。ジョーは、ばね1112によって開放位置に付勢される。図示の実施形態では、上部ジョー1111は、平面機構に対して固定され、下部ジョー1110は、上部ジョーに対して移動可能である。
【0114】
ジョーの内部形状は、コネクタ26、27の外部形状に相補的である。
【0115】
コネクタは、閉鎖方向に枢動されるときに、ジョー1110、1112をばね1112によって加えられる力に逆らって近づけさせるように構成された偏心レバー112を更に備える。逆に、レバーを閉鎖方向とは反対の開放方向に枢動させると、ジョーはばねの支援を受けて開く。
【0116】
図9A図9Bは、本体の近位部分へのトラッカーの接続の更なる実施形態を示す。トラッカーの近位部分は、本体の近位端に設けられた対応するハウジング211内に枢動可能に装着されるように構成されたシャフト311を備える。シャフト311は、円形断面を有しない。むしろ、シャフトは、向かい合っている半円形側部3111によって接続された2つの向かい合っている直線状側部3110を備える。直線状側部3110間の距離は、半円形側部3111間の距離より小さい。ハウジング211は、ハウジングの内部容積2111より狭いスロット2110を備える。その結果、シャフト311は、直線状側部3110をスロットに通すことのみによってハウジング内に導入することができる。次いで、シャフトをハウジングに対して約90°枢動させると、シャフトがハウジング内に保持される。
【0117】
図10A図10Bは、本体の遠位部分へのトラッカーの接続の実施形態を示す。このトラッカーは、特に図9A図9Bを参照しながら説明したものと同じであり得る。
【0118】
本体20の遠位部分には、図7Aに示されるように、コネクタ26、27が設けられている。
【0119】
トラッカー30の遠位端には、ロック解除位置とロック位置との間で並進移動可能であるスライダ313が設けられている。
【0120】
図10Bに示されるロック位置では、スライダ313は、溝260、261に嵌合する内部突出部3130を備える。このようにして、トラッカーは、コネクタ26に対して並進及び回転に関して固定される。
【0121】
図11A図11Cは、図9A図9B及び図10A図10Bのコネクタを使用してトラッカーを本体に接続するための方法のステップを示す。
【0122】
図11Aに示すように、トラッカーの近位シャフト311は、最初に、本体の近位端に設けられたハウジング211内に、軸Xに実質的に平行な矢印によって示される方向に導入される。
【0123】
次いで、図11Bに示すように、トラッカーは、トラッカーの遠位端をコネクタ26の前にもたらすように、矢印によって示される方向にシャフト311を中心に枢動される。このステップでは、スライダ313は、ロック解除位置にある。
【0124】
最後に、図11Cに示すように、スライダ313は、矢印によって示される方向にロック位置に並進される。
【0125】
したがって、トラッカー30は、本体20に安定して固定される。
【0126】
トラッカーを本体から取り外すには、前のステップを逆順に行う必要がある。
【0127】
図12A図12Bは、本体の遠位部分へのトラッカーの接続の別の実施形態を示す。コネクタ26、27は、図7Aに示されるものと実質的に同じである。特に、コネクタ26は、両側に長手方向溝260を備える(この実施形態では溝261は省略され得る)。
【0128】
トラッカー30の遠位部分は、コネクタ26と係合するように構成されたプラグ314を備える。プラグは、コネクタ26の形状に適合された中央開口部を備えるため、トラッカー30が本体20に接続されるとき、プラグは、本体20と接触し、長手方向溝260へのアクセスを残しながらコネクタ26を取り囲む。
【0129】
トラッカー30の遠位部分は、ローラーロックを更に備える。ローラーロックは、長方形形状を有するフレーム315を備える。ローラー316は、フレーム315の2つの反対側に回転可能に装着されている。フレーム315は、プラグ214がコネクタ26と係合するとき、本体の長手方向軸Xに実質的に垂直なヒンジ317によってプラグ314に接続される。したがって、ローラーロックは、ロック解除位置(図12Aを参照)とロック位置(図12Bを参照)との間で枢動可能である。ロック位置では、ローラー316は、コネクタ26の長手方向溝260と係合し、プラグ314をコネクタ30に接続されたままにする。ロック解除位置とロック位置との間の移行は、コネクタを係合又は係合解除するために、閾値より大きい押し力又は引き力がローラーロックに印加されたときのフレームの弾性変形によって可能にされる。例えば、フレームは、上記力が印加されるときに上記力の方向に変形し、それにより、ローラー316を次々に係合又は係合解除し、ローラーが溝260内に保持されるのに互いに十分近接している休止位置に戻ることができる金属ワイヤで形成されてもよい。
【0130】
図13は、ロック位置における、本体の遠位部分へのトラッカーの接続の別の実施形態を示す。トラッカー30の遠位部分は、枢動可能なロック318を備える。見えないが、コネクタ26、27は、図7Aに示されるものと実質的に同じである。特に、コネクタは、それらの側部の両方に長手方向溝260を備える(この実施形態では溝261は省略され得る。
【0131】
枢動可能なロックは、コネクタ27の上側及び下側と係合するように構成された2つのアームを備える(上部アーム319のみが図13に見られる)。各アームは、コネクタのそれぞれの長手方向溝と係合するように内側に延在する突出部320を備える。枢動可能なロックは、有利には、プラスチック材料で作製される。ロック解除位置とロック位置との間の移行は、閾値より大きい押し力又は引き力がロックに印加されてコネクタが係合又は係合解除されるとき、枢動可能なロックのアームの弾性変形によって可能にされる。
【0132】
図14図14Cは、本体の遠位部分へのトラッカーの接続の別の実施形態を示す。
【0133】
トラッカーの遠位部分は、コネクタ26又は27の両側と係合するように構成された2つの翼321を備える。各翼321は、トラッカーが本体に接続されているとき、本体の長手方向軸に実質的に平行に延在するシャフト322を中心に枢動可能である。各翼321は、コネクタの長手方向溝260又は270と係合するように構成されたフィンガ324を備える。翼は、ハウジング323内の翼間に配置されたばね(図示せず)によってロック位置(図14Bを参照)に付勢される。トラッカーを接続又は接続解除するために、ユーザは、フィンガ324を互いに離間させるように翼321を挟む必要がある(図14Cを参照)。
【0134】
図12A図14Cの実施形態では、トラッカーは、最初に、上述したものなどの任意の好適な手段によって、本体の近位端に接続される。
【0135】
図15A図15Eは、外科用ツールをロボットシステムに接続するための方法のステップを示す。
【0136】
図15A及び図15Bを参照すると、作動ユニット10及び平面機構11は、点線で概略的に表される滅菌ドレープ3によって覆われている。次の図には表されていないが、滅菌ドレープは、外科的介入の終了まで所定の位置に留まる。
【0137】
接続部品113は、平面機構の端部111に接続され、滅菌ドレープは、平面機構の端部111と、無菌である接続部品113との間にクランプされる。接続部品は、図8のクランプジョー1110、1111、及び偏心レバー112を備える。
【0138】
接続部品は、レバー114をロックすることによって、平面機構に固定される。
【0139】
図15Cを参照すると、(例えば、図11A図11Cに示されるような)トラッカー30を以前に備えている鋸2は、コネクタ27を開放クランプジョー1110、1111に挿入することによって接続部品113に装着されている。
【0140】
次いで、図15Dに示すように、鋸は、偏心レバー112を作動させてクランプジョーを閉じることによって、接続部品113に固定される。
【0141】
図15Eに示すように、本体から延在する電気ケーブルは、接続部品113を介して作動ユニットの電力システムに電気的に接続されている。
【0142】
したがって、ロボットデバイスは使用する準備が整う。
【0143】
ロボットシステム
外科用ツールは、文献国際公開第2018/103945号に記載されているようなロボットシステムで有利に使用され得る。
【0144】
上記ロボットシステム1は、電動作動ユニット10と、作動ユニットの末端セグメントに取り付けられた第1の端部110、外科用ツール2に堅固に取り付けられた第2の端部111を備えた平面機構11と、を備える。ロボットシステムはまた、エンドエフェクタ及び切断される骨の相対位置をリアルタイムで決定するために、切断ツール及び患者に取り付けられたトラッカー30、31を備え、計画された切断を達成するために、患者又は外科医からの小さい動きを補償するように構成された制御ユニットを備える。
【0145】
作動ユニット10は、複数の可動セグメントで作製されたシリアルアーキテクチャを有する。いくつかの実施形態では、作動ユニットは、各目標面に対する切断面の位置及び配向を調節するための3つの電動回転自由度を有する。他の実施形態では、作動ユニットは、2つの電動回転自由度及び1つ又は2つの電動並進自由度を有する。一般的に、作動ユニットは、3つ~5つの電動自由度を有し、そのうちの少なくとも2つは、互いに対して直交する回転自由度である。セグメント及びそれらのコンポーネントは、ロボットデバイスが、平面機構及び外科用ツールを保持できるのに十分な強靭さを保ち、並びにユーザが外科用ツールを操作するときにユーザによって加えられる何らかの標準的な圧力に抵抗しつつも、可能な限りコンパクトで軽量であるように、最適に一体化される。
【0146】
好ましくは、作動ユニットのアーキテクチャは、3つの回転自由度を有して作製される。
【0147】
好ましいアーキテクチャによれば、セグメントは、2つの隣接セグメントの回転軸(すなわち、第1の軸及び第2の軸、又は第2の軸及び第3の軸のいずれか)が互いに対してほぼ平行であり、第1の軸が第3の軸に対してほぼ直交するように配置される。好ましくは、2つの隣接セグメントの回転軸は互いに対して平行であり、第1の軸は第3の軸に直交している。
【0148】
膝関節形成術(TKA、UKAなど)で使用される際、対象の脚部の内側(内方)又は外側(外方)にロボットデバイスを配置することができる。第1の回転軸は、膝の矢状面に対してほぼ直交し、内側上顆又は外側上顆の水準にほぼ位置することが意図される。ロボットシステムのどんな用途でも、作動ユニットを大体の範囲で位置合わせするために識別及び使用しやすい何らかの解剖学的目印を定義することができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、作動ユニットのアーキテクチャは、切断面内における、電動化されてもよく、されなくてもよい追加の運動を可能にする。6つの電動自由度を排除することによって、本発明は、具体的にはリアルタイムでの骨の動きを補償するために必要とされる、特に第1の軸に従ったより低い慣性、ひいてはより大きい応答性によって、大型外科用ロボットに対して差別化される。
【0150】
以下でより詳述するように、作動ユニットは、制御ユニットによって制御される。制御ユニットは、ロボットデバイス内に一体化されてもよく、又はロボットデバイスから分離されてもよい。
【0151】
外科用ツールは、平面機構11によって作動ユニットに結合され、平面機構は、切断面内での切断ツールの移動を制約するように構成されている。
【0152】
有利なことに、切断ツールは、平面機構から分離させることができる。好ましくは、特に切断ツールがトラッカーを受容することを意図しない場合、切断ツールの取り付け手段は、再現可能な固定を提供する。
【0153】
平面機構を実装するために、いくつかの異なるアーキテクチャが存在する。例えば、平面機構は、1つの回転軸と切断ツールを長手方向に沿って搬送する1つの並進軸とだけを有するように作製することができる。あるいは、平面機構は、2つの直交する並進軸と回転軸とを有して作製することができる。別の実施形態によれば、平面機構は、回転軸と切断ツールを搬送する並進軸とを含むアーチ状のスライダであってもよい。
【0154】
一実施形態によれば、平面機構は受動的である、すなわち、この機構は電動化されておらず、ユーザによって自由に操作され得る。このような受動的機構の1つの利点は、鋸を骨において操作するときにユーザの知覚が維持されることである。例えば、外科医は、切断ブロックにおいて鋸を自由に操作し、骨の抵抗の変化を感知することによって、鋸ブレードが骨の後部に到達したことに気付くことに慣れており、この知覚は、関節において非常に低い摩擦を有する受動的平面機構により完全に維持される。
【0155】
あるいは、平面機構は、少なくとも部分的に能動的であってもよい、すなわち、少なくとも1つの電動自由度を有することができる。平面機構が能動的である場合、すなわち、少なくとも2つの電動自由度を有する場合、切断は自動的に実行され得る。上記電動自由度は全て、切断面内で切断ツールを移動させるように構成されていることに留意されたい。
【0156】
実施形態にかかわらず、平面機構は、切断面が目標面と整合すると、各自由度をロックするロックシステムを備えてもよい。
【0157】
システムは、作動ユニットを支持する関節接合するロック可能保持アーム12を備え、この保持アームは、手術台、脚部ホルダなどの機械的支持体に接続するか又はホイールをブロックすることができる可動カートに装着するのに適している。脚部ホルダは、患者が手術台に横たわっているとき、脚部を所定の屈曲位置に維持するように構成された調節可能な機構である。
【0158】
保持アームは、玉継手、回転継手、及び/又は並進継手を使用する、いくつかの関節接合セグメントで作製される。
【0159】
保持アームは、手動でノブ(機械的ロックシステム)によって、又はロックシステムの専用アクチュエータによって能動的にロック可能である。ロックシステムは、電気システム、圧電システム、油圧システム、空気圧システム、又はこのようなシステムの組み合わせ(例えば、電気モータによって駆動される油圧シリンダ)であってもよい。例えば、SMITH & NEPHEW社は、SPIDER(商標)の名称で、能動的にロック可能な受動的保持アームを販売している。アクチュエータは、ボタン、フットスイッチ、遠隔ボタンなどであり得る。ロボットデバイスを操作するために、ユーザは、ロボットデバイスの所望のポーズが達成されるまでアクチュエータを作動させ続けなければならない。
【0160】
保持アームは、ロボットデバイスの重量を支え、治療される解剖学的構造に対するロボットデバイスの大まかな位置決めを維持する。このため、デバイスを操作する際のユーザの運動が制限され、有利な実施形態では、ユーザ及び/又は患者の運動、切断ツールの振動、及び作動ユニットの運動によって引き起こされる反発力が減衰される。
【0161】
一実施形態によれば、保持アームは受動的である。
【0162】
有利なことに、保持アームは、ロボットデバイスと、患者に固定されたトラッカーに対するロボットデバイスの目標位置との間の距離に応じて漸進的に制動されてもよい。例えば、制動力は、ロボットデバイスの目標位置までの距離に反比例してもよい。あるいは、1つ又は複数の同心体積(例えば、立方体又は球体)が、ロボットデバイスの目標位置の周囲に画定されてもよい。制動力は、上記体積のうちの1つにおけるロボットデバイスの存在に応じて調節することができる。よって、ロボットデバイスが目標位置に近接しているとき、保持アームは制動され、ユーザは力フィードバック情報を受け取ることができる。あるいは、フィードバック情報は、光信号又は音響信号の形態で提供されてもよい。例えば、光信号の可変フラッシュ周波数及び/又は強度は、ロボットデバイスと目標位置との間の距離を示すことができる。同様に、音響信号の可変周波数、反復速度、及び/又は振幅が、上記距離を示すことができる。いずれの場合も、制動は完全ではないため、ユーザは常に、最終的な所望の位置までロボットデバイスを常操作することができる。次に、保持アームは、ユーザからの動作(例えば、アクチュエータの操作、ボタンの解放又は押圧)に応じて係止される。ロボットデバイスを再び移動させることを望む場合、ユーザはおそらくは上述の制動力で、再度アクチュエータを操作して保持アームを解放しなければならない。ロボットデバイスの新たな目標位置が規定される場合、新たな制動量が規定され、上記新たな量に基づいて制動が調節される。
【0163】
好ましくは、レバーアームの効果を最小限に抑えるために、保持アームと作動ユニットとの間の接続部を、作動ユニットの第1のセグメント又はロボットデバイスの重心に可能な限り近づける。保持アームに取り付けられた作動ユニットの一部は、ロボットデバイスの基部と呼ばれる。
【0164】
一実施形態によれば、作動ユニットの第1のセグメントは、保持アームに固定されてもよい。このような場合、作動ユニットの第2のセグメントは、必然的に第1のセグメントに対して移動可能である。このアーキテクチャは、作動ユニットの動いているコンポーネントの重量を最小限に抑えるという点で有利である。その結果、ロボットデバイスは応答性が高くなることができ、切断面のリアルタイム制御に好適である。
【0165】
一実施形態によれば、作動ユニットの第1のセグメントは、保持アームに対して移動可能であってもよい。このような場合、第1のセグメント及び第2のセグメントは、好ましくは単一のハウジングに埋め込まれる。
【0166】
システムはまた、切断対象の解剖学的構造に対する鋸のポーズをリアルタイムで決定するように構成された追跡ユニットを含む。
【0167】
追跡ユニットは、典型的には、追跡システムを含んでもよく、それ自体は既知である。
【0168】
コンピュータ支援手術において一般的に使用される追跡システムは、個別に又は組み合わせて使用することができる様々な技術(受動光学、能動光学、電磁、ジャイロ、ジャイロスコープ慣性測定、超音波など)を使用する。好適な実施形態によれば、追跡システムは、受動光学技術に基づく。
【0169】
追跡ユニットは、作動ユニットの任意のコンポーネント、例えば、可動セグメントのうちの1つに取り付けられ得る少なくとも1つのトラッカーを備える。
【0170】
作動ユニットの各セグメントの位置は、モータのエンコーダ又はセンサ、並びにロボットセグメントの全ての軸及び距離を含むロボットの較正モデルにより、リアルタイムで既知となる。このモデル、及びロボットにおける周知の幾何学的モデリング技術を用いて、全てのセグメントの相対位置を計算することが可能であるため、外部トラッカーを使用してロボットに付与された座標系において1つの測定値が既知である場合、どのセグメント位置も同じ座標系において既知である。加えて、トラッカーが作動ユニットの基部に取り付けられ、第2のトラッカーが解剖学的構造に取り付けられている場合、作動ユニットのいかなるセグメントのポーズも、解剖学的構造のトラッカーに付与された座標系において既知である。
【0171】
〔実施の態様〕
(1) 外科用ツール(2)であって、
長手方向軸(X)を画定する本体(20)と、
前記本体の遠位端(200)から延在するエンドエフェクタ(21)であって、枢動軸(Y)を中心に前記本体に対して移動可能である、エンドエフェクタ(21)と、
平面内でのみ移動するように物体を制約するように構成された平面機構(11)に前記本体を堅固に固定するように構成された第1のコネクタ(27)と、
トラッカー(30)の遠位部分(300)を前記本体に堅固に固定するように構成された第2のコネクタ(26)であって、
前記第1のコネクタ(26)及び前記第2のコネクタ(27)が、前記長手方向軸(X)及び前記枢動軸(Y)を含む平面に対して互いに対称であり、前記トラッカー(30)の前記遠位部分又は前記平面機構(11)のいずれかの取り付けに両方とも適している、第2のコネクタ(26)と、
前記トラッカーの近位部分(301)を前記本体に堅固に固定するように構成された第3のコネクタ(203)と、を備える、外科用ツール(2)。
(2) 前記本体が、ユーザの手のひらを受容するように成形された凹部(202)を備える、実施態様1に記載の外科用ツール。
(3) 前記本体に対して選択的に枢動可能であるハンドル(22)を更に備え、前記ハンドルが、グリップ(24)と、前記エンドエフェクタを作動させるように構成されたトリガ(23、23a、23b)と、を備える、実施態様1又は2に記載の外科用ツール。
(4) 前記ハンドル(22)が、前記長手方向軸(X)に直交する軸(P)を中心に選択的に枢動可能である、実施態様3に記載の外科用ツール。
(5) 前記ハンドルが、前記エンドエフェクタを作動させるように構成された2つのトリガ(23a、23b)を備え、第1のトリガ(23a)が、前記ハンドルの遠位側に位置し、第2のトリガ(23b)が、前記ハンドルの近位側に位置し、前記第1のトリガ(23a)が、前記第2のトリガ(23b)より前記本体(20)に近い、実施態様3又は4に記載の外科用ツール。
【0172】
(6) 前記ハンドル(22)が、前記長手方向軸(X)を中心に選択的に枢動可能である、実施態様3に記載の外科用ツール。
(7) 前記ハンドル(22)が、実質的にU字形状を有し、前記ハンドル(22)が、
前記長手方向軸(X)を中心に前記本体(20)に枢動可能に結合された遠位アーム(220)と、
前記グリップ(24)及び前記トリガ(23)を備える近位アーム(221)と、
前記近位アーム(221)が前記本体の近位端(201)からオフセットされるように、前記遠位アーム(220)及び前記近位アーム(221)を接続するブリッジ(222)と、を備える、実施態様6に記載の外科用ツール。
(8) 前記ブリッジ(222)が、前記ハンドルの前記遠位アーム(220)を中心に選択的に枢動可能である、実施態様7に記載の外科用ツール。
(9) 前記エンドエフェクタ(11)が、鋸ブレードである、実施態様1~8のいずれかに記載の外科用ツール。
(10) ロボットシステムであって、
ロック可能な保持アーム(12)と、
前記保持アームに結合された作動ユニット(10)と、
前記作動ユニットに結合された平面機構(11)と、
実施態様1~11のいずれかに記載の外科用ツール(2)であって、前記本体(20)が、前記第1のコネクタ(26、27)によって前記平面機構(11)に堅固に固定されている、外科用ツール(2)と、
前記第2のコネクタ(27)及び前記第3のコネクタ(203)によって前記外科用ツールの前記本体(20)に堅固に取り付けられているトラッカー(30)と、を備える、ロボットシステム。
【0173】
(11) 前記トラッカー(30)が、前記本体(20)の側面に実質的に平行に延在し、前記トラッカー(30)及び前記第2のコネクタ(27)が、前記本体と前記トラッカーとの間にユーザの指を通過させるのに十分なギャップ(G2)を残すように構成されている、実施態様10に記載のロボットシステム。
(12) 前記トラッカーの前記遠位部分(300)が、前記第1のコネクタ(26)又は前記第2のコネクタ(27)と係合するように構成されたプラグ(214)と、フレーム(315)、及び前記フレーム(315)の両側に回転可能に装着された2つのローラー(316)を含むローラーロックと、を備え、前記フレーム(315)は、前記ローラー(316)が前記第1のコネクタ(26)又は前記第2のコネクタ(27)の長手方向溝(260)と係合するロック位置と、ロック解除位置との間で、前記プラグ(314)に対して枢動可能であり、前記フレーム(314)が、それぞれの長手方向溝(260)において次々に前記ローラー(316)と係合又は係合解除することを可能にするように変形可能である、実施態様10又は11に記載のロボットシステム。
(13) 前記トラッカーの前記近位端(301)が、舌部(303)によって接続されている上部アーム及び下部アーム(302)と、各それぞれのアーム(302)から延在している上部レバー及び下部レバー(304)と、を備え、前記第3のコネクタ(203)が、向かい合っている上部凹部及び下部凹部(204)と、向かい合っている右側溝及び左側溝(205)と、を備え、前記アーム(302)が、前記第3のコネクタ(203)の周りに位置付けられており、前記舌部(303)が、前記右側溝及び前記左側溝(205)のうちの1つと係合し、前記レバー(304)が、前記第3のコネクタ(203)と干渉しないロック解除位置と、各レバーが前記第3のコネクタのそれぞれの凹部(204)と係合するロック位置との間で移動可能である、実施態様10~12のいずれかに記載のロボットシステム。
(14) 前記トラッカーの前記近位端(301)が、前記第3のコネクタ(203)に嵌合する左側アーム及び右側アーム(302)を備え、各アーム(302)が、遠位方向に延在し、かつ内部リム(306)を含むフランジ(305)を備え、前記本体(20)が、それぞれのリム(306)と係合する右側溝及び左側溝(206)を備える、実施態様10~12のいずれかに記載のロボットシステム。
(15) 前記トラッカーの前記近位端が、前記第3のコネクタのハウジング(211)内に枢動可能に装着されるように構成されたシャフト(311)を備え、前記シャフト(311)が、非円形断面を有しており、前記ハウジング(211)が、第1の配向で前記シャフト(311)を挿入するように、かつ前記第1の配向から角度的にオフセットされた第2の配向で前記シャフト(311)を保持するように構成されたスロット(2110)を備える、実施態様10~12のいずれかに記載のロボットシステム。
【0174】
(16) 前記平面機構が、開放位置と閉鎖位置との間で互いに対して移動し、かつ前記第1のコネクタ(26)及び前記第2のコネクタ(27)の外部形状に相補的な内部形状を有するクランプジョー(1110、1111)を備える、前記第1のコネクタ(26)又は前記第2のコネクタ(27)のいずれかと係合するように構成されたコネクタ(111)を備え、前記コネクタ(111)が、前記ジョー(1110、1112)をばね力に逆らって閉じさせるように構成された枢動可能な偏心レバー(112)を更に備える、実施態様10~15のいずれかに記載のロボットシステム。
(17) 前記トラッカーが、光学トラッカーである、実施態様10~16のいずれかに記載のロボットシステム。
(18) 前記トラッカーが、プラスチック材料で作製された単回使用トラッカーである、実施態様10~17のいずれかに記載のロボットシステム。
(19) 前記作動ユニットが、3~5つの電動自由度を備える、実施態様10~18のいずれかに記載のロボットシステム。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
【国際調査報告】