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  • 特表-低消化性マメ科植物デンプン 図1
  • 特表-低消化性マメ科植物デンプン 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】低消化性マメ科植物デンプン
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/212 20160101AFI20230118BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20230118BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20230118BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A23L29/212
A23L33/21
A23L11/00 F
A23L11/00
G01N33/48 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529765
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 FR2020052135
(87)【国際公開番号】W WO2021099748
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】1913094
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】62/976,531
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】パルク、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】デュポン、アルバン
(72)【発明者】
【氏名】アルベール、マリー
(72)【発明者】
【氏名】デサイー、ファブリス
【テーマコード(参考)】
2G045
4B018
4B020
4B025
【Fターム(参考)】
2G045CB20
2G045DA31
4B018MD34
4B018MD57
4B018ME01
4B018ME14
4B018MF14
4B020LG09
4B020LK05
4B020LP30
4B025LD01
4B025LG42
4B025LP20
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、30~34重量%の遅消化性デンプン(SDS)含有量を有し、34~40重量%の極遅消化性デンプン(vSDS)含有量も有することを特徴とする、マメ科植物デンプンに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
30~34重量%である遅消化性デンプン(SDS)含有量を有し、34~40重量%である極遅消化性デンプン(vSDS)含有量も有することを特徴とする、マメ科植物デンプン。
【請求項2】
前記マメ科植物デンプンが、エンドウマメ、インゲンマメ、ブロードビーン、フィールドビーン、レンズマメ、アルファルファ、クローバー、及びハウチワマメのデンプンの群から選択され、特にエンドウマメデンプンであることを特徴とする、請求項1に記載のデンプン。
【請求項3】
64重量%を超える遅消化性及び極遅消化性デンプンの合計含有量を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のデンプン。
【請求項4】
マメ科植物デンプンのvSDS含有量を特定するための方法であって、この含有量は、ENGLYST消化を時間420分で到達するプラトーによって定めるその終点まで延長することによってグルコース放出を測定することで特定される、方法。
【請求項5】
マメ科植物デンプンの前記極遅消化性デンプンの含有量を特定する請求項4に記載の方法の、請求項1~3のいずれか一項に記載のデンプンを得るための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、30~34重量%の遅消化性デンプン(SDS)含有量を有し、34~40重量%の極遅消化性デンプン(very slowly digestible starch、vSDS)含有量を更に特徴とする(実験間での変動を考慮すると、これらの値に対して2%の標準偏差が許容される)、マメ科植物デンプン、詳細にはエンドウマメデンプンに関する。
【0002】
本発明はまた、遅消化性デンプン及び極遅消化性デンプンの合計含有量が60重量%超であるエンドウマメデンプンのバッチを選択する目的、及び製品の制御された均質性を確保する目的での、遅消化性(SDS)デンプン及び極遅消化性(vSDS)デンプンのこの制御された含有量の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
生理学的観点から、ヒト又は動物において、食事中に摂取される炭水化物の主要な部分は、植物に特有のエネルギー貯蔵分子であり、デンプン質食品(パスタ、穀粉、ジャガイモ)の主成分であるデンプンによって代表される。
【0004】
消化の過程で、デンプン分子は直鎖状グルカン鎖に分解され、次いでそれは、消化器系による吸収が可能である単純なグルコースに分解される。
【0005】
デンプンの消化は、唾液中の酵素である唾液アミラーゼにより、咀嚼中に口腔内で開始する。
【0006】
デンプンのこの最初の分解は、胃の酸性によって停止されるが、膵臓アミラーゼ及び腸アミラーゼの作用により、十二指腸(小腸の最初の部分)で再開される。
【0007】
これらすべてのアミラーゼの連続的な作用によって、マルトースとして知られる二糖が出現し、これ自体が、2つの単純な糖、すなわちグルコースに変換される。
【0008】
炭水化物の供給源である生物化学的に合成されたデンプンは、デンプンが生物の栄養貯蔵を構成している植物界において最も広範に拡がっている有機物質のうちの1つである。
【0009】
したがって、それは、より高等な植物の貯蔵器官及び組織中に、特に穀草穀物(コムギ、トウモロコシなど)、マメ科植物穀物(エンドウマメ、インゲンマメ(beans)など)、ジャガイモ又はキャッサバ塊茎、根、球根、茎、及び果実中に天然に存在する。
【0010】
デンプンは、2つのホモポリマー、アミロース及びアミロペクチンの混合物であり、分子構造の分岐源であるα-(1-4)結合及びα-(1-6)結合を介して互いに結合したD-グルコース単位から構成されている。
【0011】
これらの2つのホモポリマーは、その分岐度及びその重合度に関して異なっている。
【0012】
アミロースは、短い分岐鎖で僅かに分岐し、10,000~1,000,000ダルトンの分子量を有する。この分子は、600~1,000個のグルコース分子で形成されている。
【0013】
アミロペクチンは、α(1-6)結合を介して24~30個のグルコース単位ごとに長い分岐鎖を有する分岐した分子である。その分子量は、1,000,000~100,000,000ダルトンの範囲内であり、その分岐度は、およそ5%である。鎖全体で、10,000~100,000個のグルコース単位を含み得る。
【0014】
アミロース対アミロペクチンの比は、デンプンの由来植物に応じて異なる。
【0015】
デンプンは、粒状状態、すなわち半結晶性顆粒の形態で貯蔵器官及び組織に貯蔵される。
【0016】
この半結晶性状態は、本質的に、アミロペクチン高分子によるものである。
【0017】
天然状態では、デンプン粒は、15~45重量%の範囲内である結晶化度を有し、これは、実質的に由来植物及びその抽出のために実施される方法に応じて異なる。
【0018】
したがって、偏光下に置かれた粒状デンプンを顕微鏡で観察すると、「マルタクロス」と称される特徴的な黒色の十字が見られる。
【0019】
この正複屈折の現象は、これらの顆粒の半結晶性組織化に起因するものであり、ポリマー鎖の平均配向は、放射状である。
【0020】
粒状デンプンのより詳細な記述については、”Initiation a la chimie et a la physico-chimie macromoleculaires”[”Introduction to macromolecule chemistry and physical chemistry”],first edition,2000,volume 13,pages 41~86,Groupe Francais d’Etudes et d’Applications des Polymeres[French Polymer Group]の著作物中、S.Perezによる”Structure et morphologie du grain d’amidon”[”Structure and morphology of the starch grain”]と題するチャプターIIが参照され得る。
【0021】
乾燥デンプンは、由来植物に応じて、12~20重量%の範囲内の含水量を有する。この含水量は、当然、媒体の残留水分に応じて異なる(aw=1の場合、デンプンは、1グラム当たり最大0.5gの水を固定し得る)。
【0022】
過剰の水と共に、デンプン懸濁液を50℃を超える温度に加熱すると、デンプン粒は不可逆的に膨潤し、分散体となり、その後溶解する。
【0023】
デンプンに目的の技術的特性を与えるのは、特にこれらの特性である。
【0024】
「糊化範囲」と称される所与の温度範囲では、デンプン粒は非常に急速に膨潤し、その半結晶構造を失う(複屈折の喪失)。
【0025】
すべてのデンプン粒が、およそ5~10℃の温度範囲で限界まで膨潤する。分散相を構成する膨潤デンプン粒と、水性連続相を増粘する分子(主にアミロース)とからなるペーストが得られる。
【0026】
ペーストのレオロジー特性は、これら2つの相の相対的な割合及びデンプン粒の膨潤体積に応じて異なる。糊化範囲は、デンプンの由来植物に応じて変動する。
【0027】
最大粘度は、デンプンペーストが多数の高膨潤デンプン粒を含有する場合に得られる。加熱が継続されると、デンプン粒が破裂し、物質が媒体中に分散するが、溶解は、100℃を超える温度でのみ生じる。
【0028】
アミロース-脂質複合体は、この組み合わせがアミロースと水分子との相互作用を阻害するために、膨潤を遅延するものであり、デンプン粒の完全な膨潤を得るためには、90℃超の温度が必要である(アミロメイズが脂質と複合体を形成するため)。
【0029】
デンプン粒の消失及び高分子の溶解は、粘度の低下をもたらす。
【0030】
デンプンペーストの温度を(冷却によって)下げると、アミロースとアミロペクチンとの間の不相溶性による高分子の不溶化及び相分離が引き起こされ、続いて、これらの高分子の結晶化が観察される。
【0031】
この現象は、レトログラデーションという名称で知られている。
【0032】
ペーストがアミロースを含有する場合、レトログラデーションを受けるのはこの第1の分子である。
【0033】
これは主として、二重らせんの形成、及びこれら二重らせんが組み合わさることによる、接合ゾーン(junction zones)を介して三次元ネットワークを生じることになる「結晶」(B型)の形成から成る。
【0034】
このネットワークは、数時間で非常に迅速に形成される。このネットワークの発達の過程で、水素結合を介した二重らせん同士の会合が、らせんに伴う水分子を追い出し、著しいシネレシスを引き起こす。
【0035】
デンプンの構造的複雑さ及びその物理的/化学的特性は、この種類の炭水化物が、様々な方法でヒト及び動物によって吸収、消化されることを意味する。
【0036】
これが、デンプンが、その消化性に従って、易消化性、遅消化性、又は非消化性の3つのカテゴリに分類され得る理由である。
【0037】
天然では粒状/半結晶性であるデンプンは、食品加工の過程で熱、圧力、及び/又は水分に曝露されると、易消化性デンプン(RDS)に変換され得る。
【0038】
遅消化性デンプン(SDS)は、依然として結晶性構造を有し、消化酵素に対するアクセス性が低いことから、RDSよりも消化酵素による分解に時間が掛かる。
【0039】
このSDS画分の消化は、血液中へのグルコースの中程度で規則的な放出に繋がる。これらは、低GIデンプン(「低血糖指数」を意味する)として知られている。
【0040】
そのため、高SDS含有量の食品は、低いSDS含有量しかない食品よりも低い食後血糖応答及び低いインスリン応答を誘発する。
【0041】
逆に、RDSは、そのグルコースを血流中に非常により迅速に放出するため、栄養価の高い炭水化物である。
【0042】
いわゆる耐性デンプン(RS)については、腸酵素による非消化性繊維(トウモロコシブラン、オートムギ繊維、ガムなど)として扱うことができる。
【0043】
全デンプンがその3つの成分であるRDS、SDS、及びRSの合計であることは、先行技術で認められている。
【0044】
したがって、これらの異なるデンプン画分は、ヒト消化器系において異なる速度で消化される。
【0045】
したがって、SDSはRDSよりも遅い消化速度を有することが認められている。RSは、小腸における酵素消化に抵抗するデンプンの画分である。それらは大腸で発酵されることから、食物繊維と見なすことができる。
【0046】
したがって、SDS及びRDS画分が、利用可能なグルコース源である。
【0047】
SDSは、コムギ、コメ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシなどの穀草や、エンドウマメ、インゲンマメ、及びレンズマメなどのマメ科植物の未調理の穀物の一部に、天然に存在している。
【0048】
SDS含有量は、主に食品加工中のデンプンの糊化によって影響される。
【0049】
実際、このプロセスの過程で温度、圧力、及び湿気へ曝露されることにより、SDS画分のRDSへの変換が引き起こされ、デンプンが酵素消化に対してよりアクセス可能な状態となる。
【0050】
この変換は、調理条件を制御してデンプンの糊化を制限することにより、最小限に抑えることができる。
【0051】
したがって、食品組成物又は食品製品中の元のSDS含有量は、その調製が行われた方法に応じて異なることになる。
【0052】
例えば、通常はSDSをほとんど含まない膨らませた(puffed)朝食用シリアル又はパンとは対照的に、一部のパスタ、半ゆでにした米、精白玉麦、及び一部のクッキーが、多くのSDSを含有する食品製品であることが知られている。
【0053】
食品のSDS含有量は、従来から、H.N.ENGLYST及び共同研究者らによって開発されたin vitro法(1992年にEuropean Journal of Clinical Nutrition,volume46,ppS33-S50で発表)を用いて特定される。
【0054】
以下では、「ENGLYSTによる」この1992年の方法を参照する。
【0055】
この方法は、小腸で発生する酵素消化を再現するために開発された。
【0056】
消化酵素の存在下で、製品又はデンプンの試料を管に導入し、グルコースの放出を120分間の反応中に測定する。
【0057】
この方法では、以下が区別される:
- RDS画分、迅速に遊離するグルコース(RAG)を測定することによる;この場合、0~20分の間に放出されたグルコースを測定する。
- SDS画分、ゆっくりと遊離するグルコース(SAG)を測定することによる;この場合、20~120分の間に放出されたグルコースを測定する。
- RS画分、120分後に放出されないグルコースに対応し、ENGLYST法に従って以下の式によって計算される。TS-(RDS+SDS)、式中、TS=総デンプン(分析がデンプン自体に対して実施される場合、100重量%に等しいと見なす)である。
【0058】
少なくとも40重量%がSDSであるデンプン由来の利用可能な炭水化物を50重量%超含有する炭水化物に富む食品は、従来から高SDS食品と見なされる。
【0059】
したがって、これは、SDSが低い食品と比較して、血糖指数及びインスリンの産生を抑えるために推奨される。
【0060】
これらの食品用途で従来から使用されているすべてのデンプンのうち、マメ科植物デンプン、より具体的にはエンドウマメデンプンが、最適な候補である。
【0061】
実際、エンドウマメの種子は、高いデンプン含有量(乾燥重量基準で55~70重量%)及び低血糖指数で知られている(Ratnayake et al.,2002,Pea starch,composition,structure and properties-A review,in Starch/Starke,54,217-234)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0062】
したがって、一般にENGLYSTによる27~38重量%のSDS含有量を有する天然のエンドウマメデンプンは、栄養用途において興味深い。
【0063】
しかしながら、エンドウマメデンプンのバッチ間の変動は、説明されている必要性を必ずしも満たすものではない。この変動は、2つの主要な基準:季節性(生産されたエンドウマメデンプンの品質が季節間で変動し得ること)及び使用される様々な抽出方法(プロセス中に使用される熱水処理の影響)、によるものである。
【0064】
エンドウマメデンプンバッチの品質を保証するために、本出願企業は、特定のSDS含有量、及びENGLYST法ではこれまで特徴付けられなかった画分、いわゆる「極遅消化性デンプン」又はvSDS画分を特定し、明らかにすることによって、この結果を得ることが可能であることを見出した。
【0065】
したがって、本発明は、30~34重量%の遅消化性デンプン(SDS)含有量を有し、34~40重量%の極遅消化性デンプン(vSDS)含有量を有することを更に特徴とする(実験間での変動を考慮すると、これらの値に対して2%の標準偏差が許容される)、マメ科植物デンプン、詳細にはエンドウマメデンプンに関する。
【0066】
本発明はまた、遅消化性デンプン及び極遅消化性デンプンの合計含有量が64重量%超であるエンドウマメデンプンのバッチを選択する目的、及び製品の制御された均質性を確保する目的での、遅消化性(SDS)デンプン及び極遅消化性(vSDS)デンプンのこの制御された含有量の使用にも関する。
【0067】
本発明の目的のために、「マメ科植物」とは、ジャケツイバラ科(cesalpiniaceae)、ネムノキ科(mimosaceae)、又は狭義マメ科(papilionaceae)に属するいずれの植物も意味し、特に、エンドウマメ、インゲンマメ、ブロードビーン(broad bean)、フィールドビーン(field bean)、レンズマメ、アルファルファ、クローバー、又はハウチワマメを例とする狭義マメ科に属するいずれの植物も意味する。Can.J.Physiol.Pharmacol.1991,69 pp.79-92に発表された「Composition,structure,functionality and chemical modification of legume starches:a review」と題するR.HOOVERらによる論文には、その表中に様々なマメ科植物について記載されている。
【0068】
好ましくは、マメ科植物は、エンドウマメ、インゲンマメ、ブロードビーン、及びフィールドビーンを含む群から選択される。
【0069】
有利には、それは、エンドウマメであり、「エンドウマメ」の用語は、本明細書においてその最も広い意味で考慮され、具体的には、以下が含まれる。
- 「丸型エンドウマメ(smooth pea)」のすべての野生種、及び
- 「丸型エンドウマメ」及び「シワ型エンドウマメ(wrinkled pea)」のすべての変異種で、これらの種について通常意図される用途(ヒト食品、動物飼料、及び/又は他の用途)にかかわらない。
上記変異種は、C-L HEYDLEYらによる論文、題名「Developing novel pea starches.」Proceedings of the Symposium of the Industrial Biochemistry and Biotechnology Group of the Biochemical Society,1996,pp.77-87に記載されているように、特に、「変異体r」、「変異体rb」、「変異体rug3」、「変異体rug4」、「変異体rug5」、及び「変異体lam」と命名されたものである。
【0070】
別の有利な変型例によると、マメ科植物(例えば、エンドウマメ又はフィールドビーンの種)は、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも40重量%のデンプン(乾燥/乾燥)を含有する穀物を与える植物である。
【0071】
「マメ科植物デンプン」は、いずれかの手段によって、マメ科植物から、特に狭義マメ科から抽出された任意の組成物を意味することを意図しており、そのデンプン含有量は、上記組成物の乾燥重量に対する乾燥重量として表したパーセントで、40%超、好ましくは50%超、更により優先的には75%超である。
【0072】
有利には、このデンプン含有量は、90重量%超(乾燥/乾燥)である。特に、それは、98重量%超を含む95重量%超であり得る。
【0073】
「天然」デンプンとは、いかなる化学修飾も受けていないデンプンを意味する。
【0074】
その基本的SDS画分含有量を特定するために、「Classification and measurement of nutritionally important starch fractions」,Eur.J.Clin.Nutr.,46(Supp.2),S33-S50(1992)にあるH.N.Englystらの方法のin vitro消化操作条件に従って、本発明に従うものであるかそうでないかにかかわらず、エンドウマメデンプンを分析する。
【0075】
この方法は、食品に含有される易消化性デンプン(RDS)、遅消化性デンプン(SDS)、及び非消化性(耐性)デンプン画分(RS)を測定することからなる。
【0076】
これらの画分は、パンクレアチン、アミログルコシダーゼ、及びインベルターゼによる酵素消化後に特定する。
【0077】
放出されたグルコースは、DiaSys Dispersion France Sarl社から市販されているグルコースオキシダーゼキットGlucose GOD FS、参照番号1 2500 99 10 923、を用い、上記キットのプロトコルに従って比色法によって測定する。
【0078】
ENGLYSTに従って消化を測定するために実行した方法の詳細は、以下の通りである。
使用した試薬:
- 無水酢酸ナトリウム(参照番号:71184、SIGMA社製)
- 安息香酸(参照番号:242381、SIGMA社製)
- CaCl2(参照番号:1.02378.0500、MERCK社製)
- 0.1M酢酸(参照番号:33209、SIGMA社製)
- ブタパンクレアチン 8×USP(参照番号:P7545、SIGMA社製)
- アミログルコシダーゼEC3.2.1.3(SIGMA社製、活性≧260U/mL/約300AGU/mL、カタログ番号A7095)
- インベルターゼEC3.2.1.26(SIMA社製、活性≧300単位/mg固体、カタログ番号I-4504)
- グアー(参照番号:G4129、SIGMA社製)
- 66度のエタノール
【0079】
手順
飽和安息香酸溶液の調製
【0080】
1LのRO水中に4gの安息香酸を秤量し、混合する。この溶液は、室温で1ヶ月間保存することができる。
【0081】
1M/LのCaCl2溶液の調製
【0082】
10mLのRO水中に1.1098gのCaCl2を秤量し、混合する。この溶液は、室温で1ヶ月間保存することができる。
【0083】
0.1M-pH5.2の酢酸緩衝液の調製
250mLの飽和安息香酸溶液中に8.203gの無水酢酸ナトリウムを秤量する。
- 500mLのRO水を添加し、混合する。
- 0.1M酢酸を用いてpHを5.2±0.5に調整する。
- メスフラスコ中、RO水で1000mLとして仕上げる。
- 1MのCaCl2溶液4mLを1Lの調製した緩衝液に添加する。
- 混合し、pHをチェックする。
この溶液は、4℃で1ヶ月間保存することができる。
【0084】
酢酸緩衝液によるグアーガム溶液の調製
- 300mLの酢酸緩衝液中に、正確に750mgのグアーガムを秤量する。
- 連続撹拌下に置く。
【0085】
分析する試料及び使用する酵素の調製
【0086】
試料の調製
- 試験する乾燥デンプンを正確に0.8g秤量する。
- 20mLの0.1M酢酸緩衝液-pH5.2+グアーガム、を添加する。
- バイアルを37℃で撹拌しながら15分間水浴中に入れる。
- T=0分で得た溶液の0.1mLを取り、次いで66度のエタノールの0.9mLを添加する(すなわち、10倍の希釈率)。
- 時間T=0分で、比色法によってグルコース量(%として)を特定する。
ブランク及び標準(0.5gの無水デキストロースを秤量)を、試料の調製と同じ条件下で作製する。
【0087】
酵素カクテルの調製
【0088】
酵素カクテルは、12個の試料を試験するように設計する。以下のプロトコルに従って、当日に調製する必要がある。
【0089】
ブタパンクレアチン 8×USPの調製
【0090】
パンクレアチンの4つの溶液を調製して、54mLの上清を得る。
【0091】
これを行うために:
- 2.5gのブタパンクレアチン 8×USPを秤量する。
- 20mLのRO水を添加し、10分間混合する。
- この溶液を1500Gで10分間遠心分離する。
- 13.5mLの上清を回収する。
【0092】
アミログルコシダーゼの調製
- 3.7mLのアミログルコシダーゼEC3.2.1.3溶液を4.3mLのRO水で希釈し、10分間混合する。
- この新しい溶液の6mLを取り、54mLのパンクレアチン(pancreatic)上清に添加し、混合する。
【0093】
インベルターゼの調製
50mgのインベルターゼEC3.2.1.26を秤量する。
6mLのRO水を添加し、10分間混合する。
この新しい溶液の4mLを取り、54mLのパンクレアチン上清に添加し、混合する。
【0094】
消化プロトコル
- 5mLの酵素カクテルを試料調製物に添加する。
- 撹拌しながら恒温槽中、37℃で120分間インキュベートする。
- T=20分及びT=120分で得た溶液の0.1mLを取り、次いで66度のエタノール0.9mLを添加する(すなわち、10倍の希釈率)。
- 試料を混合し、1500Gで3分間遠心分離する。
- 時間T=20分及びT=120分で、比色法によってグルコース量(%として)を特定する。
【0095】
遊離グルコース(fg)及び総グルコース(tg)レベルの特定
【0096】
遊離グルコース(FG)レベルは、時間0分で取った測定値に対応する。
【0097】
総グルコース(TG)レベルは、以下のようにして測定する。
- 「エッペンドルフ」型のチューブに、T=120分で得た溶液の0.25mLを取る。
0.25mLの4N塩酸を添加し、混合する。
- チューブを、ドライモードの100℃の水浴中に45分間置き、室温まで冷却させる。
- 加水分解された溶液を、0.25mLの4N水酸化ナトリウムで中和する。
- 0.25mLのRO水を添加し、混合する。
- RO水で10倍に希釈する(0.9mL中に0.1mL)。すなわち、最終希釈率を40倍とする。
【0098】
RDS、SDS、及びRSの特定
【0099】
以下の時間で放出されたグルコースを特定する。
- T=0分(初期グルコース含有量)
- T=20分(20分後に放出されたグルコース含有量)
- T=120分(120分後に放出されたグルコース含有量)。
【0100】
ENGLYST法によると:
【0101】
【数1】
【0102】
RDS、SDS、及びRS画分の特定は、以下のようにして行う:
- RDS=(G20-FG)×0.9
- SDS=(G120-G20)×0.9
- RS=TS-(RDS+SDS)(式中、TS=(TG-FG)×0.9)
【0103】
この方法によれば、一般的には天然のエンドウマメデンプンは、13~16重量%のRDS含有量、27~38重量%のSDS含有量、及び45~56重量%のRS含有量を有し、これらの値は、実験間での変動を考慮して、2%の標準偏差で表される。
【0104】
本出願人は、必要とされる消化性基準を満たす可能性がより高い30~34重量%のSDS含有量であるエンドウマメデンプンバッチをまず選択し、次いで極遅消化性デンプン(vSDS)含有量を特定することを推奨する。
【0105】
多くの長期間にわたる調査の後、本出願企業は、ENGLYSTによって確立されたものとは対照的に、反応動態が120分で停止されない限りにおいて、いわゆる消化耐性(RS)画分が消化されることを見出した。
【0106】
本出願人の知る限り、Carbohydrates Polymer,vol75,pp436-447のCHUNGらだけが、2009年に、ENGLYSTとは僅かに異なる加水分解条件に基づいて、すなわち、20~180分で消化されたものがSDS画分であるとして、エンドウマメデンプンを分類することを提案している。
【0107】
この改変によって、「遅消化性」デンプンの含有量が増加する結果となるが、反応動態を120分に限定しているEnglystによって報告された式にはすでに対応していないSDS画分に基づいて計算されたものである。
【0108】
本出願企業は、ENGLYST消化動態を500分まで延長し、マメ科植物デンプン、特にエンドウマメデンプンの消化が120分の時間点を超えて継続し、420分の時点で最大消化率のプラトーに到達するという観察結果を得た。
【0109】
したがって、本出願人は、この新しい、更により遅消化性であるデンプンを利用して、本発明に従う「極遅消化性」又はvSDS成分を定めることを決定した。
【0110】
更に、そしてこれは、先行技術で一般に認められている通りのENGLYST試験を延長して実施することに対する重要な点の1つであるが、このvSDS率は、マメ科植物デンプン、特にエンドウマメデンプンの、初期にENGLYSTによって120分以降として定められたものであるRS含有量のサブ画分の消化に対応している。一方、RDS及びSDS含有量は、変わっていない。
【0111】
したがって、先行技術において、特に上述のCHUNGらによって知られている内容とは対照的に、本発明は、ENGLYST試験の操作条件を変更してSDSレベルを人為的に増加させることを含むものではなく、ENGLYST消化を、本明細書において時間420分で到達するプラトーによって定めるその終点まで延長することによって、考慮されるマメ科植物デンプン、特にエンドウマメデンプンの実際のグルコース放出能力を特定可能とする操作条件を採用するものである。
【0112】
したがって、本発明は、マメ科植物デンプンのvSDS画分含有量を特定するための方法に更に関し、この含有量の特定は、ENGLYST消化を時間420分で到達するプラトーによって定めるその終点まで延長することによってグルコース放出を測定することで行う。最後に、本発明は、本発明に従うデンプンを得るための、マメ科植物デンプンの極遅消化性デンプン含有量の測定の使用に更に関する。
【0113】
時間420分でグルコース放出の測定を行うことにより、以下を可能とする新しい式を開発することができる:
1)420分の消化後のプラトーで最大消化率に到達するという観察結果に基づく、RS画分値の補正(この場合は「補正RS」と称する)。
次いで、補正RS(420分後の非消化性画分)は、100-(T420×0.9)に等しいと推定される。補正係数0.9は、ENGLSYT法に従う画分の計算に必要である。
2)単純な計算によるvSDS含有量の推定:
vSDS=100-(RDS+SDS+補正RS)
【0114】
例示を意図するものであり、本発明に従うある特定の実施形態及びある特定の有利な特性を単に言及するものであり、並びに非限定的である以下の実施例を読むことによって、本発明は、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1図1は、ENGLYSTに従う120分までの動態を示す。
【0116】
図2図2は、図1からのデータを繰り返すと共に、動態を420分まで延ばしたものである。
【実施例
【0117】
実施例1:商品名N735で本出願企業が製造した天然エンドウマメデンプンの1バッチ(バッチWS88Vと称する)を、ENGLYST(1992)に従って、反応時間120分まで分析し、次いで反応時間420分まで分析した。
【0118】
以下の表1は、従来のENGLYST法によって計算されたRDS、SDS、及びRSの重量パーセントでの含有量を示す。
【0119】
【表1】
【0120】
消化動態を420分に延長し、420分後に放出されたグルコースの測定を行うことで、以下の表2に記録した補正RS及びvSDSの重量パーセントによる含有量が計算によって得られる。
【0121】
【表2】
【0122】
実施例2:様々なエンドウマメデンプンバッチの消化プロファイルの広範な特性評価及び選択
【0123】
本出願企業が抽出した天然のエンドウマメデンプンの更なる14個のバッチに対して、広く消化動態を実施し、消化率のバッチ間変動を確認するだけでなく、目的とする用途に最も適するバッチも定める。以下の表3は、RDS、SDS、RS、及びvSDSの重量パーセントでの含有量を示す。
【0124】
【表3】
【0125】
したがって、本発明者らが、30~34重量%のSDS含有量及び34~40重量%のvSDS含有量(標準偏差2%)によって本発明者らのエンドウマメデンプンを定める場合、WX24V(SDSが低すぎる)及びW9167(SDS含有量は許容内であるがvSDS含有量が低すぎる)のバッチを除外しなければならないということになる。この選択方法により、制御された均質性を有し、遅消化性及び極遅消化性デンプンの合計含有量が64重量%を超えるエンドウマメデンプンバッチのみが確実に得られる。
図1
図2
【国際調査報告】