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特表2023-502727骨切り術校正方法、校正装置、読み取り可能な記憶媒体、および整形外科手術システム
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  • 特表-骨切り術校正方法、校正装置、読み取り可能な記憶媒体、および整形外科手術システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】骨切り術校正方法、校正装置、読み取り可能な記憶媒体、および整形外科手術システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20230118BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20230118BHJP
   A61B 17/56 20060101ALN20230118BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B34/10
A61B17/56
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529784
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2020092437
(87)【国際公開番号】W WO2021098177
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】201911151229.4
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911151227.5
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522200258
【氏名又は名称】マイクロポート ナビボット(スーチョウ)カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マー,ジンヤン
(72)【発明者】
【氏名】スン,フェン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,フイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘー,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ペンフェイ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL01
4C160LL28
(57)【要約】
骨切り術校正方法、校正装置、および整形外科手術システムを提供する。骨切り術校正方法は、最初に、骨切り術校正装置を使用して現在の骨切り面の計算位置情報を取得し(S1)、その後、計算位置情報と計画された骨切り面の所定位置情報との位置誤差を確定し、位置誤差が既定値を超える場合、ロボットアームを再位置決めするための再位置決め情報を計算してロボットアーム(2)に送信する(S2)。最初の骨切り術によって形成された現在の骨切り面と計画された所定の骨切り面との位置誤差を比較および識別し、ロボットアーム(2)を再位置決めし、骨切り面の2次的な修正を行うことによって、骨切り面の最終的な精度を向上できる。加えて、ロボットアーム(2)の再位置決めおよび骨切り面の2次的な修正によって、骨切り術ナビゲーションツール(4)を骨に固定するための追加の骨釘を回避できる。したがって、患者の外傷面と手術時間を縮小することができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨切り術校正装置を使用して現在の骨切り面の計算位置情報を取得することと、
前記計算位置情報と計画された骨切り面に基づく所定位置情報との位置誤差を確定し、前記位置誤差が既定値を超える場合、再位置決め情報を計算してロボットアームに送信し、前記ロボットアームを制御して再位置決めすることと、
を備える骨切り術校正方法。
【請求項2】
前記骨切り術校正装置は位置決め校正ツールを含み、前記骨切り術校正装置を使用して前記現在の骨切り面の前記計算位置情報を取得するステップは、
前記現在の骨切り面上の前記位置決め校正ツールの動きに基づいて、または前記位置決め校正ツールによる前記現在の骨切り面の走査に基づいて、点群情報を取得することと、
前記位置決め校正ツールにより取得された前記点群情報を収集し、前記点群情報をフィッティング面にフィッティングさせることと、
前記フィッティング面の位置情報を計算し、前記フィッティング面の前記位置情報を前記現在の骨切り面の前記計算位置情報として定義することと、
を含む、請求項1に記載の骨切り術校正方法。
【請求項3】
前記位置決め校正ツールは2つ以上の現在の骨切り面を校正するために使用され、前記点群情報を前記フィッティング面にフィッティングさせる前に、前記骨切り術校正装置を使用して前記現在の骨切り面の前記計算位置情報を取得するステップは、
前記点群情報をクラスタリングで前記現在の骨切り面に対応するグループにそれぞれ分割することと、
各グループの前記点群情報に対して、無効な点群情報を除去し、残っている点群情報をフィッティング面にフィッティングさせることと、
をさらに含む、請求項2に記載の骨切り術校正方法。
【請求項4】
前記2つ以上の現在の骨切り面のそれぞれに対し、前記計算位置情報と前記所定位置情報との前記位置誤差を確定するステップは、
前記現在の骨切り面の前記計算位置情報と、前記計画された骨切り面の前記所定位置情報とをクラスタリングでマッチさせることと、前記現在の骨切り面の前記計算位置情報と対応する前記計画された骨切り面の前記所定位置情報との前記位置誤差をそれぞれ計算することと、を含む、請求項3に記載の骨切り術校正方法。
【請求項5】
前記現在の骨切り面上の前記位置決め校正ツールの動きは、S字状若しくはZ字状のスライド、複数点クリック移動、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項2に記載の骨切り術校正方法。
【請求項6】
前記骨切り術校正装置は、2つ以上の現在の骨切り面を校正するための変位校正ツールを含み、前記骨切り術校正装置を使用して前記現在の骨切り面の前記計算位置情報を取得するステップは、前記2つ以上の現在の骨切り面のそれぞれに対して、
前記変位校正ツールの検知面の少なくとも一部を前記現在の骨切り面に当接させることにより、追跡可能要素が設けられた前記検知面の位置情報を取得することと、
前記検知面に対する前記現在の骨切り面の変位情報を取得することと、
前記検知面に対する前記現在の骨切り面の前記変位情報および前記追跡可能要素が設けられた前記検知面の位置情報に基づいて、前記現在の骨切り面の前記計算位置情報を計算することと、
を含む、請求項1に記載の骨切り術校正方法。
【請求項7】
前記計算位置情報と前記所定位置情報との前記位置誤差を確定するステップは、
前記現在の骨切り面の前記計算位置情報と、計画された骨切り面の前記所定位置情報とをクラスタリングでマッチさせることと、前記現在の骨切り面の前記計算位置情報と、計画された骨切り面の前記所定位置情報との前記位置誤差を計算することと、
を含む、請求項1に記載の骨切り術校正方法。
【請求項8】
取得部と位置決め部とを備え、
前記取得部は現在の骨切り面の位置情報を取得するように構成され、
前記位置決め部は前記取得部に接続され、前記位置決め部はナビゲーション装置による位置決めのために構成され、
前記取得部により取得された前記現在の骨切り面の前記位置情報および前記ナビゲーション装置のもとでの前記位置決め部の位置決め情報は、前記現在の骨切り面の計算位置情報を確定するために使用される、骨切り術校正装置。
【請求項9】
前記骨切り術校正装置は位置決め校正ツールを含み、前記位置決め校正ツールは探知部と前記探知部に接続されている追跡可能要素とを含み、前記探知部は前記取得部として構成され、前記追跡可能要素は前記位置決め部として構成されている、請求項8に記載の骨切り術校正装置。
【請求項10】
前記位置決め校正ツールは接触追跡可能要素を含み、前記接触追跡可能要素の先端は前記探知部として構成され、前記先端は、点群情報を提供するために前記現在の骨切り面上を移動するように構成されている、請求項9に記載の骨切り術校正装置。
【請求項11】
前記位置決め校正ツールは誘導追跡可能要素を含み、前記誘導追跡可能要素の誘導端は前記探知部として構成され、前記誘導端は点群情報を提供するために前記現在の骨切り面上を移動するように構成されている、請求項9に記載の骨切り術校正装置。
【請求項12】
前記位置決め校正ツールは構造化された光スキャナを含み、前記構造化された光スキャナの走査端は前記探知部として構成され、前記走査端は前記現在の骨切り面を走査するように構成されている、請求項9に記載の骨切り術校正装置。
【請求項13】
前記骨切り術校正装置は変位校正ツールを含み、前記変位校正ツールは、順に接続されている2つ以上の検知面と、少なくとも1つの追跡可能要素と、複数の変位センサとを含み、前記追跡可能要素は前記検知面に接続され、前記検知面は前記変位センサに接続され、前記変位センサは、前記検知面に対する前記現在の骨切り面の変位情報を検出するように構成され、前記検知面および前記変位センサは前記取得部として構成され、前記追跡可能要素は前記位置決め部として構成されている、請求項8に記載の骨切り術校正装置。
【請求項14】
前記位置決め部と前記取得部との相対位置は固定されている、請求項8に記載の骨切り術校正装置。
【請求項15】
前記位置決め部は、磁気コイルと、前記磁気コイルに接続されているSIUモジュールとを備える、請求項8に記載の骨切り術校正装置。
【請求項16】
プログラムを記憶している読み取り可能な記憶媒体であって、前記プログラムは、請求項1から7のいずれか1項に記載の骨切り術校正方法を実施するためのプロセスによって実行される、読み取り可能な記憶媒体。
【請求項17】
制御装置と、ナビゲーション装置と、ロボットアームと、請求項8から15のいずれか1項に記載の骨切り術校正装置と、を備え、
前記ナビゲーション装置は、前記骨切り術校正装置の前記位置決め部とマッチして前記位置決め部の位置情報を取得し、前記位置情報を前記制御装置にフィードバックし、
前記制御装置は、前記骨切り術校正装置の前記位置決め部の前記位置情報に基づいて現在の骨切り面の前記計算位置情報を取得し、前記計算位置情報と計画された骨切り面の所定位置情報との位置誤差を確定するように構成されており、前記位置誤差が既定値を超える場合、前記制御装置は、前記ロボットアームを駆動して再位置決めする、整形外科手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット支援手術システムおよび方法の分野に関し、特に、骨切り術校正方法、校正装置、読み取り可能な記憶媒体、および整形外科手術システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工関節置換手術では、骨切り術の作業精度が確保できるように、人工関節の装着前に、骨切り術のために様々なポジショナやナビゲーション装置等が必要となる。人工膝関節全置換術(TKA)の手術中に骨切り術ナビゲーションツールの位置決めを達成するように外科医を支援する様々な方法が提案されている。一般に、既存のロボット支援手術システムでは、骨切り術ツールがロボットアームの端部に配置され、骨切り術ツールの動きがロボットアームによって制御されて、膝関節形成手術中の骨切り術ツールの位置決めを実現する。しかしながら、精度はロボットアームの絶対位置決め精度によって決定し、骨切り術中に骨切り面を追跡および校正することはできず、これは手術の精度に影響を及す。加えて、骨切り術中、鋸刃が鋸刃に作用する力によって鋸刃に垂直な方向に振れ、このことは計画された骨切り位置と実際の骨切り位置との間に簡単に誤差を引き起こし得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、既存の骨切り術の精度の低さの問題を解決するために、骨切り術校正方法、校正装置、読み取り可能な記憶媒体、および整形外科手術システムを提供することである。
【0004】
上述の技術的問題点を解決するために、本発明の第1態様によると、骨切り術校正方法が提供され、
骨切り術校正装置を使用して現在の骨切り面の計算位置情報を取得することと、
前記計算位置情報と計画された骨切り面に基づく所定位置情報との位置誤差を確定し、前記位置誤差が既定値を超える場合、再位置決め情報を計算してロボットアームに送信し、前記ロボットアームを制御して再位置決めすることと、を備える。
【0005】
任意選択で、骨切り術校正方法においては、前記骨切り術校正装置は位置決め校正ツールを含み、前記骨切り術校正装置を使用して前記現在の骨切り面の前記計算位置情報を取得するステップは、
前記現在の骨切り面上の前記位置決め校正ツールの動きに基づいて、または前記位置決め校正ツールによる前記現在の骨切り面の走査に基づいて、点群情報を取得することと、
前記位置決め校正ツールにより取得された前記点群情報を収集し、前記点群情報をフィッティング面にフィッティングさせることと、
前記フィッティング面の位置情報を計算し、前記フィッティング面の前記位置情報を前記現在の骨切り面の前記計算位置情報として定義することと、を含む。
【0006】
任意選択で、骨切り術校正方法においては、前記位置決め校正ツールは2つ以上の現在の骨切り面を校正するために使用され、前記点群情報を前記フィッティング面にフィッティングさせる前に、前記骨切り術校正装置を使用して前記現在の骨切り面の前記計算位置情報を取得するステップは、
前記点群情報をクラスタリングで前記現在の骨切り面に対応するグループにそれぞれ分割することと、
各グループの前記点群情報に対して、無効な点群情報を除去し、残っている点群情報をフィッティング面にフィッティングさせることと、をさらに含む。
【0007】
任意選択で、骨切り術校正方法においては、前記2つ以上の現在の骨切り面のそれぞれに対し、前記計算位置情報と前記所定位置情報との前記位置誤差を確定するステップは、前記現在の骨切り面の前記計算位置情報と、前記計画された骨切り面の前記所定位置情報とをクラスタリングでマッチさせることと、前記現在の骨切り面の前記計算位置情報と対応する前記計画された骨切り面の前記所定位置情報との前記位置誤差をそれぞれ計算することと、を含む。
【0008】
任意選択で、骨切り術校正方法においては、前記現在の骨切り面上の前記位置決め校正ツールの動きは、S字状若しくはZ字状のスライド、複数点クリック移動、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0009】
任意選択で、骨切り術校正方法においては、前記骨切り術校正装置は、2つ以上の現在の骨切り面を校正するための変位校正ツールを含み、前記骨切り術校正装置を使用して前記現在の骨切り面の前記計算位置情報を取得するステップは、前記2つ以上の現在の骨切り面のそれぞれに対して、
前記変位校正ツールの検知面の少なくとも一部を前記現在の骨切り面に当接させることにより、追跡可能要素が設けられた前記検知面の位置情報を取得することと、
前記検知面に対する前記現在の骨切り面の変位情報を取得することと、
前記検知面に対する前記現在の骨切り面の前記変位情報および前記追跡可能要素が設けられた前記検知面の位置情報に基づいて、前記現在の骨切り面の前記計算位置情報を計算することと、を含む。
【0010】
任意選択で、骨切り術校正方法においては、前記計算位置情報と前記所定位置情報との前記位置誤差を確定するステップは、
前記現在の骨切り面の前記計算位置情報と、計画された骨切り面の前記所定位置情報とをクラスタリングでマッチさせることと、前記現在の骨切り面の前記計算位置情報と、計画された骨切り面の前記所定位置情報との前記位置誤差を計算することと、を含む。
【0011】
上述の技術的問題点を解決するために、本発明の第2態様によると、骨切り術校正装置が提供され、該骨切り術校正装置は取得部と位置決め部とを備え、
前記取得部は現在の骨切り面の位置情報を取得するように構成され、
前記位置決め部は前記取得部に接続され、前記位置決め部はナビゲーション装置による位置決めのために構成され、
前記取得部により取得された前記現在の骨切り面の前記位置情報および前記ナビゲーション装置のもとでの前記位置決め部の位置決め情報は、前記現在の骨切り面の計算位置情報を確定するために使用される。
【0012】
任意選択で、骨切り術校正装置においては、前記骨切り術校正装置は位置決め校正ツールを含み、前記位置決め校正ツールは探知部と前記探知部に接続されている追跡可能要素とを含み、前記探知部は前記取得部として構成され、前記追跡可能要素は前記位置決め部として構成されている。
【0013】
任意選択で、骨切り術校正装置においては、前記位置決め校正ツールは接触追跡可能要素を含み、前記接触追跡可能要素の先端は前記探知部として構成され、前記先端は、点群情報を提供するために前記現在の骨切り面上を移動するように構成されている。
【0014】
任意選択で、骨切り術校正装置においては、前記位置決め校正ツールは誘導追跡可能要素を含み、前記誘導追跡可能要素の誘導端は前記探知部として構成され、前記誘導端は点群情報を提供するために前記現在の骨切り面上を移動するように構成されている。
【0015】
任意選択で、骨切り術校正装置においては、前記位置決め校正ツールは構造化された光スキャナを含み、前記構造化された光スキャナの走査端は前記探知部として構成され、前記走査端は前記現在の骨切り面を走査するように構成されている。
【0016】
任意選択で、骨切り術校正装置においては、前記骨切り術校正装置は変位校正ツールを含み、前記変位校正ツールは、順に接続されている2つ以上の検知面と、少なくとも1つの追跡可能要素と、複数の変位センサとを含み、前記追跡可能要素は前記検知面に接続され、前記検知面は前記変位センサに接続され、前記変位センサは、前記検知面に対する前記現在の骨切り面の変位情報を検出するように構成され、前記検知面および前記変位センサは前記取得部として構成され、前記追跡可能要素は前記位置決め部として構成されている。
【0017】
任意選択で、骨切り術校正装置においては、前記位置決め部と前記取得部との相対位置は固定されている。
【0018】
上述の技術的問題点を解決するために、本発明の第3態様によると、プログラムを記憶している読み取り可能な記憶媒体が提供され、前記プログラムは、上述の骨切り術校正方法を実施するためのプロセスによって実行される。
【0019】
上述の技術的問題点を解決するために、本発明の第4態様によると、整形外科手術システムが提供され、
制御装置と、ナビゲーション装置と、ロボットアームと、上述の骨切り術校正装置と、を備え、
前記ナビゲーション装置は、前記骨切り術校正装置の前記位置決め部とマッチして前記位置決め部の位置情報を取得し、前記位置情報を前記制御装置にフィードバックし、
前記制御装置は、前記骨切り術校正装置の前記位置決め部の前記位置情報に基づいて現在の骨切り面の前記計算位置情報を取得し、前記計算位置情報と計画された骨切り面の所定位置情報との位置誤差を確定するように構成されており、前記位置誤差が既定値を超える場合、前記制御装置は、前記ロボットアームを駆動して再位置決めする。
【0020】
要約すれば、本発明によって提供される骨切り術校正方法、校正装置、読み取り可能な記憶媒体、および整形外科手術システムは、初めに、骨切り術校正装置を使用して現在の骨切り面の計算位置情報を取得し、その後、計画された骨切り面の所定位置情報に基づき、計算位置情報と所定位置情報との位置誤差を確定し、位置誤差が既定値を超える場合、再位置決め情報を計算してロボットアームに送信し、ロボットアームを再位置決めする。このようにして、最初の骨切り術によって形成された現在の骨切り面と計画された所定の骨切り面との間の位置誤差を比較して識別し、ロボットアームを再位置決めし、骨切り面の2次的な修正を行うことによって、骨切り面の最終的な精度を向上できる。さらに、ロボットアームを再位置決めし、骨切り面を2次的に修正することによって、ナビゲーションツールを骨に固定するための追加の骨釘を回避できる。したがって、患者の外傷面と手術時間を縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
当業者は、添付の図面が本発明のより良い理解のために提供されていること、およびいかなる方法であっても本発明の範囲が限定されることはないことを理解するであろう。
図1】本発明の実施形態1による整形外科手術システムを使用する膝関節形成術の模式図である。
図2】本発明の実施形態1による骨切り術校正方法のフローチャートである。
図3】本発明の実施形態1による骨切り術校正装置の模式図である。
図4】本発明の実施形態1の第1例による骨切り術校正装置の使用法の模式図である。
図5】本発明の実施形態1の第2例による骨切り術校正装置の模式図である。
図6】本発明の実施形態1の第3例による骨切り術校正装置の模式図である。
図7】本発明の実施形態2による骨切り術校正装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。図面は非常に簡略化された形態で提供されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではなく、実施形態を説明する際の利便性および明確さを容易にすることのみを意図としていることに留意されたい。加えて、図面に示されている構造は、多くの場合、実際の構造の一部である。特に、図面の異なる強調を示す必要があり、場合によっては異なる縮尺が使用される。
【0023】
本発明で使用されているような、単数形「1つ」、「1個」、および「該」は、内容において別途指定のない限り、複数の指示対象を含む。本発明で使用されているような、「または」という用語は、内容において別途指定のない限り、一般に「および/または」を含む意味で使用される。本発明で使用されているような、「複数」という用語は、内容において別途指定のない限り、一般に「少なくとも1つ」を含む意味で使用される。本発明で使用されているような、「少なくとも2つ」という用語は、内容において別途指定のない限り、一般に「2以上」を含む意味で使用される。さらに、「第1」、「第2」、および「第3」という用語は説明目的でのみ使用され、相対的な重要性を示したり暗示したり、示された技術的特徴の数を暗に示したりするものとして理解されることがあってはならない。したがって、「第1」、「第2」、および「第3」として定義される特徴には、明示的または暗黙的に1つまたは少なくとも2つの特徴が含まれてもよい。
【0024】
本発明は、既存の骨切り術の精度の低さの問題を解決するための、骨切り術校正方法、校正装置、読み取り可能な記憶媒体、および整形外科手術システムを提供するものである。
【0025】
骨切り術校正方法は、骨切り術校正装置を使用して現在の骨切り面の計算位置情報を取得することと、計算位置情報と計画された骨切り面に基づく所定位置情報との位置誤差を確定し、位置誤差が既定値を超える場合、再位置決め情報を計算してロボットアームに送信し、ロボットアームを制御して再位置決めすることと、を備える。
【0026】
骨切り術校正装置は、取得部と位置決め部とを備える。取得部は現在の骨切り面の位置情報を取得するように構成され、位置決め部は取得部に接続され且つ取得部との相対位置が固定され、位置決め部はナビゲーション装置による位置決めのために構成され、取得部により取得された現在の骨切り面の位置情報およびナビゲーション装置のもとでの位置決め部の位置決め情報は、現在の骨切り面の計算位置情報を確定するために使用される。
【0027】
読み取り可能な記憶媒体は、プログラムを記憶している読み取り可能な記憶媒体であって、プログラムは、上述の骨切り術校正方法を実施するためのプロセスによって実行される。
【0028】
整形外科手術システムは、制御装置と、ナビゲーション装置と、ロボットアームと、上述の骨切り術校正装置と、を備え、ナビゲーション装置は、骨切り術校正装置の位置決め部とマッチして位置決め部の位置情報を取得し、位置情報を制御装置にフィードバックし、制御装置は、骨切り術校正装置の位置決め部の位置情報に基づいて現在の骨切り面の計算位置情報を取得し、計算位置情報と計画された骨切り面の所定位置情報との位置誤差を確定するように構成されており、位置誤差が既定値を超える場合、制御装置は、ロボットアームを駆動して再位置決めする。
【0029】
このようにして、最初の骨切り術によって形成された現在の骨切り面と計画された所定の骨切り面との間の位置誤差を比較して識別し、位置誤差が既定値を超える場合、ロボットアームを再位置決めし、骨切り面の2次的な修正を行うことによって、骨切り面の最終的な精度を向上できる。さらに、ロボットアームを再位置決めし、骨切り面を2次的に修正することによって、ナビゲーションツールを骨に固定するための追加の骨釘を回避できる。したがって、患者の外傷面と手術時間を縮小することができる。
【0030】
以下、図面を参照して説明する。
【0031】
[実施形態1]
図1から6を参照し、図1は、本発明の実施形態1による整形外科手術システムを使用する膝関節形成術の模式図である。図2は、本発明の実施形態1による骨切り術校正方法のフローチャートである。図3は、本発明の実施形態1による骨切り術校正装置の模式図である。図4は、本発明の実施形態1の第1例による骨切り術校正装置の使用法の模式図である。図5は、本発明の実施形態1の第2例による骨切り術校正装置の模式図である。図6は、本発明の実施形態1の第3例による骨切り術校正装置の模式図である。
【0032】
本発明の実施形態1は、整形外科手術システムを提供する。図1は、整形外科手術システムを使用する膝関節形成術の模式図を示す。しかしながら、本発明の整形外科手術システムは、適用環境に特に制限なく、その他の整形外科手術にも適用できる。以下の説明では、整形外科手術システムは、例として、膝関節形成術を使用して説明されているが、本発明を限定するために使用されるべきではない。
【0033】
図1に示すように、整形外科手術システムは、制御装置、ナビゲーション装置、ロボットアーム2、および骨切り術ナビゲーションツール4を含む。実施形態によっては、制御装置はコンピュータである。コンピュータは、制御部、主ディスプレイ8、およびキーボード10を備えており、より好ましくは、補助ディスプレイ7も含む。本実施形態では、補助ディスプレイ7および主ディスプレイ8に表示される内容は同じであり、例えば、両方とも骨切り術位置画像を表示するために使用される。ナビゲーション装置は、電磁位置決めナビゲーション装置、光学位置決めナビゲーション装置、または電磁位置決めナビゲーション装置として選択される。本実施形態では、ナビゲーション装置は、光学位置決めナビゲーション装置である。他のナビゲーション方法と比較して、光学位置決めナビゲーションは高い計測精度を有することで、骨切り術ナビゲーションツールの位置決め精度を効果的に向上できる。以下の説明では、光学位置決めおよびナビゲーション装置を説明の例として取り上げるが、それに限定されない。
【0034】
ナビゲーション装置は、ナビゲーションマーカーおよびトラッカー6を含む。ナビゲーションマーカーは、基部追跡可能要素15およびツール追跡可能要素3を含む。基部追跡可能要素15は固定、例えば、基部追跡可能要素15は外科用トロリー1に固定されて、基部座標系(基部追跡可能要素座標系とも呼ばれる)を提供する。ツール追跡可能要素3は、骨切り術ナビゲーションツール4の位置を追跡するために、骨切り術ナビゲーションツール4に取り付けられている。骨切り術ナビゲーションツール4は、骨切り術ナビゲーションツール4がロボットアーム2によって支持され、骨切り術ナビゲーションツール4の空間位置および姿勢が調整されるように、ロボットアーム2の端部に取り付けられている。
【0035】
実際には、トラッカー6は、ツール追跡可能要素3によって反射される信号(例えば、光信号)を捕捉し、ツール追跡可能要素3の位置(すなわち、基部追跡可能要素システム下のツール追跡可能要素の位置および姿勢)を記録するために使用される。制御装置のメモリに記憶されているコンピュータプログラムは、ツール追跡可能要素の現在の位置および所望の位置にしたがってロボットアーム2の動きを制御する。ロボットアーム2は、ツール追跡可能要素3が所望の位置に到達するように骨切り術ナビゲーションツール4およびツール追跡可能要素3を駆動して移動させる。ツール追跡可能要素3の所望の位置は、骨切り術ナビゲーションツール4の所望の位置に対応する。
【0036】
したがって、整形外科手術システムの適用のために、骨切り術ナビゲーションツール4の自動位置決めが実現でき、骨切り術ナビゲーションツール4のリアルタイム姿勢は、手術中にツール追跡可能要素3によって追跡およびフィードバックされ、骨切り術ナビゲーションツール4の位置および姿勢の調整は、ロボットアームの動きを制御することによって達成される。骨切り術ナビゲーションツール4は、高い位置決め精度を実現するだけでなく、ロボットアーム2によっても支持され、これはつまり、ナビゲーションツールを人体に固定する必要がなく、人体への2次的または更なる損傷を回避できる。
【0037】
一般に、整形外科手術システムは、外科用トロリー1およびナビゲーショントロリー9をさらに含む。制御装置およびナビゲーション装置の一部は、ナビゲーショントロリー9に取り付けられ、例えば、制御部はナビゲーショントロリー9の内側に取り付けられ、キーボード10は操作のためにナビゲーショントロリー9の外側に配置される。主ディスプレイ8、補助ディスプレイ7、およびトラッカー6のそれぞれは、ブラケットに取り付けられ、ブラケットは、ナビゲーショントロリー9に垂直に固定され、ロボットアーム2は、外科用トロリー1に取り付けられる。外科用トロリー1およびナビゲーショントロリー9の使用は、外科手術全体をより便利にする。実施形態によっては、制御装置の少なくとも一部は、外科用トロリー1および/またはナビゲーショントロリー9に配置されている。他の実施形態では、制御装置は他の独立した装置に配置されているが、本出願はそれに限定されない。
【0038】
膝関節形成手術を行う場合、本実施形態の整形外科システムの使用には、一般に、以下の操作が含まれる。初めに、外科用トロリー1とナビゲーショントロリー9を病床の隣の適切な位置に移動させる。続いて、ナビゲーションマーカー(ナビゲーションマーカーは大腿骨追跡可能要素11および脛骨追跡可能要素13も含む)、骨切り術ナビゲーションツール4、およびその他の関連コンポーネント(例えば、滅菌バッグ)を取り付ける。続いて、術者18は、例えば骨切り面の座標、プロテーゼのモデル、プロテーゼの取り付け方向、およびその他の情報を含む骨切り術計画を取得するように、患者17の骨のCT/MRスキャンモデルを術前計画のためにコンピュータにインポートする。具体的には、CT/MRスキャンから得られた患者の膝関節画像データに基づき、膝関節の3次元デジタルモデルを作成し、その後、膝関節の3次元デジタルモデルに基づいて骨切り術計画を作成することで、術者は骨切り面に応じた術前評価を行うことができる。より具体的には、骨切り術計画は、膝関節の3次元デジタルモデルならびに得られたプロテーゼのサイズ仕様および骨切り術プレートの設置位置に基づいて決定される。骨切り術計画は、最終的に、外科手術者のための基準の提供のため、骨切り面座標、骨切り量、骨切り角度、プロテーゼの仕様、プロテーゼの設置位置、手術補助具等の一連の基準データを記録し、特に、骨切り角度の選択の理由等の一連の論理的説明を含む、外科レポートの形態で出力される。その中でも、膝関節の3次元デジタルモデルは主ディスプレイ8に表示でき、術者は、キーボード10によって外科的パラメータを入力して、術前計画を容易にすることができる。術前評価後、術者18は、追跡可能要素のペンを使用して、患者の大腿骨および脛骨上の特徴点をマーキングし(すなわち、術者は、患者の大腿骨上の複数の大腿骨の解剖学的特徴点および脛骨上の複数の脛骨の解剖学的特徴点をマーキングし)、ナビゲーション装置(基部追跡可能要素15を基準とする)を使用して、患者の脛骨14および大腿骨12上の全ての特徴点の位置を記録し、全ての特徴点の位置を制御部に送信し、その後、制御部は、照合アルゴリズムによって大腿骨12および脛骨14の実際の向きを取得する。大腿骨12および脛骨14の実際の向きは、大腿骨12および脛骨14のCT/MR画像の向きと一致する。続いて、大腿骨および脛骨の実際の向きは、ナビゲーション装置を通して大腿骨および脛骨に取り付けられている対応する追跡可能要素にリンクされることで、大腿骨追跡可能要素11および脛骨追跡可能要素13は、リアルタイムで骨の実際の位置を追跡できる。手術中、骨に対する追跡可能要素の相対位置が固定されている限り、骨の動きは手術効果に影響を与えない。さらに、手術前に計画された骨切り面の座標は、ナビゲーション装置を通してロボットアーム2に送られる。ロボットアーム2がツール追跡可能要素3を通じて骨切り面の位置を特定し、所定位置に移動した後、ロボットアーム2は保持状態を維持する(すなわち、動かない)。その後、術者は、振子式鋸または電気ドリル等の手術ツール5を使用することにより、骨切り術ナビゲーションツール4を用いて骨切りおよび/またはドリル作業を行うことができる。骨切りおよびドリル作業が完了した後、術者はプロテーゼを取り付けて他の外科手術を行うことができる。
【0039】
位置決め用ロボットアームのない従来の手術およびナビゲーション手術システムは、骨切り術ナビゲーション位置決めツールの手動調整を必要とするが、これは精度が悪く、調整効率が低い。ロボットアーム位置決めナビゲーションツールを使用すると、術者は追加の骨釘で骨にナビゲーションツールを固定する必要がないため、患者の外傷面および手術時間が縮小される。
【0040】
本実施形態では、ナビゲーションマーカーは、大腿骨追跡可能要素11および脛骨追跡可能要素13をさらに含む。大腿骨追跡可能要素11は、大腿骨12の空間的位置および姿勢を特定するために使用され、脛骨追跡可能要素13は、脛骨14の空間的位置および姿勢を特定するために使用される。前述の通り、ツール追跡可能要素3は、骨切り術ナビゲーションツール4に取り付けられているが、他の実施形態では、ツール追跡可能要素3は、ロボットアーム2の端部接合部に取り付けられてもよい。
【0041】
上述の整形外科手術システムに基づいて、ロボット支援手術が実現でき、このことは、術者が骨切り位置を特定することに役立ち、骨切り術を容易にすることに役立つ。術者が整形外科手術システムまたは他の方法(ロボット支援なく手動で骨切り術を行う等)によって骨切り術を行った後、複数の骨切り面が得られる(以下、現在の骨切り面と呼ぶ)。背景技術において説明したように、現在の骨切り面の精度は、ロボットアームの位置決め精度や鋸刃の振れ等の理由により制限されている。したがって、図2に示されるように、本実施形態は、以下を含む骨切り術校正方法を提供する。
ステップS1:骨切り術校正装置を使用して現在の骨切り面の計算位置情報を取得する。
ステップS2:計算位置情報と計画された骨切り面に基づく所定位置情報との位置誤差を確定し、位置誤差が既定値を超える場合、再位置決め情報を計算してロボットアームに送信し、ロボットアームを制御して再位置決めする。
【0042】
最初の骨切り術によって形成された現在の骨切り面と計画された所定の骨切り面との位置誤差を比較して識別し、ロボットアーム2を再位置決めし、骨切り面の2次的な修正を行うことによって、骨切り面の最終的な精度を向上できる。さらに、ロボットアーム2を再位置決めし、骨切り面を2次的に修正することによって、ナビゲーションツールを骨に固定するための追加の骨釘を回避できる。したがって、患者の外傷面と手術時間を縮小することができる。
【0043】
上述の骨切り術校正方法を達成するために、実施形態1は、取得部と、位置決め部とを含む骨切り術校正装置を提供する。取得部は現在の骨切り面の位置情報を取得するように構成され、位置決め部はナビゲーション装置による位置決めのために構成され、取得部により取得された現在の骨切り面の位置情報およびナビゲーション装置のもとでの位置決め部の位置決め情報は、現在の骨切り面の計算位置情報を確定するために使用される。好ましくは、制御装置による取得部の位置情報の座標変換を容易にするために、位置決め部は取得部に接続され、位置決め部と取得部との相対位置は固定されている。
【0044】
本実施形態では、骨切り術校正装置は位置決め校正ツールを含み、位置決め校正ツールは探知部と、探知部に接続されている追跡可能要素200とを含み、探知部は取得部として構成され、追跡可能要素200は位置決め部として構成されている。実施形態によっては、追跡可能要素200は、4つの反射球201を含み、4つの反射球201は、光学ナビゲーションシステムNDI(すなわち、前述のナビゲーション装置の1つ)によって認識される幾何学的アレイを形成する。探知部と追跡可能要素200との相対位置は固定されており、相対位置関係は事前に記憶装置に記憶されている。具体的には、光学ナビゲーションシステムは、追跡可能要素200上の反射球201によってフィードバックされた情報を受信/追跡するように構成され、こうして、追跡可能要素200の位置情報が取得され、その後、位置情報が制御装置に送信される。制御装置は、探知部に対する追跡可能要素の事前に記憶されている位置関係に従い、探知部の位置情報を計算し、探知部によって探知された位置情報に基づいて現在の骨切り面の計算位置情報を取得する。制御装置は、計画された骨切り面の所定位置情報(記憶装置に事前に記憶されている)に基づいて、計算位置情報と所定位置情報との位置誤差を確定し、位置誤差が既定値を超える場合、再位置決め情報を計算して、ロボットアーム2に送信し、ロボットアーム2を制御して再位置決めする。なお、ここで探知部と追跡可能要素との間の相対的な位置関係は固定されているが、これら2つが固定的に接続されなくてはいけないことに限らず、むしろ組み立て後のそれらの間の相対的な位置関係が固定されている。実施形態によっては、探知部および追跡可能要素は、取り外し可能に接続されている。骨切り術校正装置が変形し、または探知部を交換しなくてはならない場合は、骨切り術校正装置全体を交換せずに、探知部を直接交換できる。さらに、整形外科手術システムは、上述のような骨切り術校正装置を含んでいる。ナビゲーション装置6は、骨切り術校正装置の位置決め部とマッチして位置決め部の位置情報を取得し、位置情報を制御装置にフィードバックする。制御装置は、骨切り術校正装置の位置決め部の位置情報に基づいて現在の骨切り面の計算位置情報を取得し、計算位置情報と計画された骨切り面の所定位置情報との位置誤差を確定するように構成され、位置誤差が既定値を超える場合、制御装置はロボットアーム2を駆動して再位置決めする。具体的には、所定位置情報に位置誤差を重畳させて再位置決め情報を取得し、再位置決め情報をロボットアーム2に送信してロボットアームを再位置決めする。
【0045】
さらに、ステップS1は、現在の骨切り面上の位置決め校正ツールの動き(例えばZ字状若しくはS字状のスライド、または複数点クリック移動)に基づいて、または位置決め校正ツールによる現在の骨切り面の走査に基づいて、点群情報を取得することと、位置決め校正ツールにより取得された点群情報を収集し、点群情報をフィッティング面にフィッティングさせることと、フィッティング面の位置情報を計算し、フィッティング面の位置情報を現在の骨切り面の計算位置情報として定義することと、を含む。
【0046】
任意選択で、計算位置情報は、計算法線ベクトルおよび計算位置を含み、フィッティング面の位置情報を計算するステップは、位置決め校正ツールの追跡可能要素座標系(すなわち、反射球座標系)におけるフィッティング面の法線ベクトルnpおよび位置PP(xp,yp,zp)に基づいて、追跡可能要素座標系と下肢DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine 医用デジタル画像および通信)データ座標系との間の変換行列MP→Vを用いて、下肢DICOMデータ座標系におけるフィッティング面の計算法線ベクトルnVおよび計算位置Pv(xv,yv,zv)を得ることを含む。任意選択で、追跡可能要素座標系と下肢DICOMデータ座標系との間で座標変換が行われる場合、大腿骨(または脛骨)追跡可能要素座標系は間接的に使用される。これは、大腿骨(または脛骨)上の追跡可能要素及び位置決め校正ツールの追跡可能要素200が、光学ナビゲーションシステムNDIにおいてそれぞれの位置および姿勢情報を有するからである。具体的には、まず、追跡可能要素座標系と大腿(または脛骨)追跡可能要素座標系との間の変換行列MP→Vを用いて、追跡可能要素座標系におけるフィッティング面の法線ベクトルnpおよび位置PP(xp,yp,zp)が、大腿骨(または脛骨)追跡可能要素座標系における法線ベクトルnBおよび位置PB(xB,yB,zB)に変換され、その後、大腿骨(または脛骨)追跡可能要素座標系のフィッティング面の法線ベクトルnBおよび位置PB(xB,yB,zB)が大腿骨(または脛骨)反射球座標系と下肢DICOMデータ座標との間の変換行列MB→Vを用いて、下肢DICOMデータ座標系における計算法線ベクトルnVおよび計算位置Pv(xv,yv,zv)に変換される。
【0047】
さらに、位置誤差は、計画された骨切り面の所定法線ベクトルおよび所定位置に基づいて得られた計算法線ベクトルと所定法線ベクトルとの間の法線ベクトル回転行列と、計算位置と計画された骨切り面の所定位置との間の位置偏差とを含む。具体的には、下肢DICOMデータ座標系におけるフィッティング面の計算法線ベクトルnVおよび計算位置Pv(xv,yv,zv)を、それぞれ、計画された骨切り面の所定法線ベクトルn0および所定位置PO(xO,yO,zO)と比較する。2つの法線ベクトルを通じて、フィッティング面と計画された骨切り面との間のオイラー角が得られ、更に、回転行列R3×3が得られる。回転行列R3×3を用いて計画された骨切り面と平行になるようにフィッティング面を回転し、2つの平面間の距離dが計算される。法線ベクトル回転行列R3×3および位置偏差dは、フィッティング面と計画された骨切り面との位置誤差である。フィッティング面は現在の骨切り面を示すため、法線ベクトル回転行列R3×3および位置偏差dは、現在の骨切り面と計画された骨切り面との位置誤差である。
【0048】
さらに、計算位置情報と所定位置情報との位置偏差を確定した後、法線ベクトル回転行列R3×3(法線ベクトル回転行列R3×3がオイラー角に変換された後の各軸の回転量)および位置偏差dのうちの少なくとも1つが既定値を超える場合、所定位置情報に法線ベクトル回転行列R3×3と位置偏差dを重畳させて再位置決め情報を取得し、再位置決め情報をロボットアームに送信してロボットアームを制御および再位置決めする。当業者は、実際の状況に基づいて、適切な既定値を法線ベクトル回転行列R3×3および位置偏差dにそれぞれ設定することができ、法線ベクトル回転行列R3×3および位置偏差dの少なくとも1つが既定値を超える場合、最初の骨切り術によって形成された現在の骨切り面の精度が要件を満たしておらず、2回目の骨切り術が必要であることが考えられる。このように法線ベクトル回転行列R3×3および位置偏差dをロボットアーム2の再位置決めに加え、ロボットアーム2に送信してロボットアーム2を再位置決めし、さらなる骨切り術を行うことで、より正確な骨切り結果が得られる。一方、法線ベクトル回転行列R3×3および位置偏差dのそれぞれが既定値に一致する場合は、つまり、現在の骨切り面の精度が要件を満たし、外科的処置を続行できる。
【0049】
上述の説明では、4つの反射球が追跡可能要素200として概略的に使用されていることを理解されたい。反射球の配置は、矩形分配に限らず、木のように分配することもでき、反射球の数もまた4つに限らない。追跡可能要素200は、光学的追跡可能要素球の形態に限らないことに留意されたい。図3に示すように、磁気コイル202が追跡可能要素200として使用される。追跡可能要素200の一端部には、現在の骨切り面の位置情報を取得するための取得部111が接続されている。取得部111は図3に示すような平面状に限らず、筆状(例えば図4および5参照)、またはその他の形状および構造(例えば図6参照)であってもよい。具体的には、5DOFコイルを追跡可能要素200として使用でき、コイルのケーブルの端部は、SIUモジュール203に接続されている。この構成では、ナビゲーション装置はNDI磁気ナビゲーションAURORAを使用できる。このようにして、追跡可能要素200の位置情報も、コイルの位置および向きを検出することによって取得される。上述の骨切り術校正は、各骨切り術のステップが完了した後に行われるか、または複数の骨切り術のステップが完了した後に一度で行われることが理解されたい。骨切り術校正のタイミングは、作業習慣に基づいて決定され、つまり、いつ骨切り術校正を行うかは、作業習慣に基づいて決定される。
【0050】
図4を参照すると、実施形態1の好ましい第1例では、位置決め校正ツールは、接触追跡可能要素を含み、接触追跡可能要素の先端121は探知部として構成され、先端は現在の骨切り面上でZ字状にスライドさせて現在の骨切り面の位置情報(主にZ字状のいくつかの特徴点の位置情報)を取得するために使用される。好ましくは、接触追跡可能要素の先端121は現在の骨切り面に接触するために使用され、追跡可能要素200は、反射球追跡可能要素であり、接触追跡可能要素の先端121とは反対の他端に配置されている。この構成では、ナビゲーション装置6は、追跡可能要素200を介して先端121の位置情報を取得することができる。先端121は、現在の骨切り面に接触すると、「Z」字状のスライドや「S」字状のスライド、複数点クリック移動などのように、現在の骨切り面上の異なる経路を移動またはスライドして、可能な限り多くの点群情報を収集することができる。さらに、先端が現在の骨切り面での移動を完了した後、制御装置は点群情報内の無効点を除去することができ、その後、仮想のフィッティング面に有効な点群情報をフィッティングさせ、フィッティング面の幾何学的中心位置および法線ベクトルを抽出し、さらに、幾何学的中心位置および法線ベクトルを座標系の間の変換関係を用いて下肢DICOMデータ座標系における計算位置および法線ベクトルに変換する。これによって、現在の骨切り面の計算位置情報を取得することができる。先端のスライド軌道は「Z」字状に限定されるものではなく、「コ」字状や任意の線または点で画定される形状など、他の形状であってもよいことを理解されたい。
【0051】
実施形態によっては、位置決め校正ツールは2つ以上の現在の骨切り面を校正するために使用され、点群情報をフィッティング面にフィッティングさせる前に、骨切り術校正装置を使用して現在の骨切り面の計算位置情報を取得するステップは、点群情報をクラスタリングで現在の骨切り面に対応するグループにそれぞれ分割することと、各グループの点群情報に対して、無効な点群情報を除去し、残っている点群情報をフィッティング面にフィッティングさせることと、をさらに含む。例示の実施形態では、骨切り術を実行した後、大腿骨は5つの現在の骨切り面を取得する。すなわち、大腿骨遠位端面、大腿骨遠位端面取り面、大腿骨遠位端前部面取り面、大腿骨遠位端後部面取り面、大腿骨遠位端後部切断面である。制御装置は、ナビゲーション装置により取得された点群情報をクラスタリングで5つのグループに分割して、5つのフィッティング面にそれぞれフィッティングさせ、さらには5つのフィッティング面の位置情報を取得する。さらに、5つの計画された骨切り面の所定位置情報と、実測されたフィッティング面の位置情報(すなわち、現在の骨切り面の計算位置情報)とをクラスタリング手法でマッチさせ、各現在の骨切り面の計算位置情報とそれに対応する計画された骨切り面の位置との位置誤差をそれぞれ計算し、位置誤差のいずれか1つが既定値を超える場合、より正確な骨切りの結果を得るために、骨切り術の再位置決めを行う。
【0052】
図5を参照すると、実施形態1の第2例では、位置決め校正ツールは誘導追跡可能要素を含む。誘導追跡可能要素の誘導端122は探知部として構成され、誘導端は、現在の骨切り面上をZ字状に移動するように構成されている。実施形態によっては、誘導追跡可能要素の誘導端122は現在の骨切り面を検出し、現在の骨切り面の位置情報(主にZ字状のいくつかの特徴点の位置情報)を取得するように構成されている。追跡可能要素200は反射球追跡可能要素であり、誘導追跡可能要素の誘導端122とは反対の他端に配置されている。例示の実施形態では、誘導追跡可能要素はアクティブ赤外線方式の誘導追跡可能要素であり、誘導端122は赤外線を放射することができる。反射信号を検出することにより、位置合わせされた点(現在の骨切り面上に位置する)の位置情報を得ることができる。この構成では、ナビゲーション装置6は、追跡可能要素200を介して誘導端122の位置情報を取得することができる。誘導端122は、現在の骨切り面と位置合わせされると「Z」字状にスライドし、可能な限り多くの点群情報を収集する。十分な点群情報を収集した後、フィッティング面を生成することが可能になる。
【0053】
図6を参照すると、実施形態1の第3例では、位置決め校正ツールは構造化された光スキャナを含み、構造化された光スキャナの走査端123は探知部として構成され、走査端123は、現在の骨切り面の位置情報を取得するために現在の骨切り面を走査するように構成されている。実施形態によっては、構造化された光スキャナの走査端123は現在の骨切り面を走査するために使用される。追跡可能要素200は、構造化された光スキャナ上に配置された反射球追跡可能要素であり、構造化された光スキャナの走査端123および追跡可能要素200は、使用前に位置合わせされ、追跡可能要素200の局所座標系における走査端123の情報を取得する。構造化された光スキャナの走査端123は、走査することによって現在の骨切り面の位置情報を取得することができ、その後、現在の骨切り面の位置情報を制御装置に送信する。制御装置は、追跡可能要素200の局所座標系と下肢DICOMデータ座標系との間の座標変換関係を用いて、現在の骨切り面の計算位置情報を取得する。
【0054】
上記方法によれば、最初の骨切り術によって形成された現在の骨切り面と計画された所定の骨切り面との位置誤差を比較して識別し、ロボットアーム2を再位置決めし、骨切り面の2次的な修正を行うことによって、骨切り面の最終的な精度を向上できる。さらに、ロボットアーム2を再位置決めし、骨切り面を2次的に修正することによって、ナビゲーションツールを骨に固定するための追加の骨釘を回避できる。したがって、患者の外傷面と手術時間を縮小することができる。当然ながら、校正は、骨切り術が完了した直後に行うこともできるし、全ての骨切り術のステップが完了した後に一度で行うこともできる。これに基づき、本実施形態はまた、プログラムが記憶されている読み取り可能な記憶媒体を提供し、プログラムが実行される際、上述の骨切り校正方法が実施される。代替的には、上記プログラムは、整形外科手術システムの制御装置に一体化されている等、ハードウェア装置に一体化されている。
【0055】
[実施形態2]
本発明の実施形態2による骨切り術校正装置の模式図である図7を参照する。
【0056】
本発明の実施形態2によって提供される骨切り術校正方法、校正装置、読み取り可能な記憶媒体、および整形外科手術システムは、実施形態1によって提供されるものと基本的に同じである。同じ部分は説明せず、相違点のみを以下に説明する。
【0057】
実施形態2では、骨切り術校正装置は変位校正ツールを含み、変位校正ツールは、順に接続されている2つ以上の検知面131と、少なくとも1つの追跡可能要素200と、複数の変位センサ132とを含む。追跡可能要素200は検知面131に接続され、各検知面131は複数の変位センサ132に接続されている。変位センサ132は、検知面131に対する対応の現在の骨切り面の変位情報を検出するように構成され、検知面131および変位センサ132は取得部として構成され、追跡可能要素200は位置決め部として構成されている。
【0058】
実施形態2では、骨切り術校正装置を使用して現在の骨切り面の計算位置情報を取得するステップは、2つ以上の現在の骨切り面のそれぞれに対して、変位校正ツールの検知面131の少なくとも一部を対応する現在の骨切り面に当接させることにより、追跡可能要素200が設けられた検知面131の位置情報を取得することと、検知面131に対する対応の現在の骨切り面の変位情報を取得することと、検知面131に対する対応の現在の骨切り面の変位情報、および追跡可能要素が設けられた検知面131の位置情報に基づいて、対応の現在の骨切り面の計算位置情報を計算することと、を含む。
【0059】
図7を参照すると、例示の実施形態では、変位校正ツールは、順に接続されている5つの検知面131と、1つの追跡可能要素200と、複数の変位センサ132と、を含む。追跡可能要素200は1つ目の検知面131に接続され、検知面131は変位センサ132に接続されている。変位センサ132は、5つの検知面131により形成される半円筒の内側に設置されている。半円筒の形状は、骨切り術により得られる5つの現在の骨切り面のおおよその形状とフィットする。半円筒の5つの検知面131が現在の骨切り面に当接すると、検知面131に配置されている変位センサ132は変位データを生成し、変位データに基づいて検知面131に対する現在の骨切り面の変位差が計算される。その後、変位差および検知面131の固有の特性(例えば、複数の検知面131の間の角度など)に基づいて、現在の骨切り面の位置情報が計算される。その後、ナビゲーション装置のもとでの追跡可能要素200の位置情報に基づいて、制御装置は現在の骨切り面の計算位置情報を計算することができる。
【0060】
さらに、5つの計画された骨切り面の所定位置情報と、実際に測定された現在の骨切り面の計算位置情報とをクラスタリングでマッチさせ、現在の骨切り面の計算位置情報のそれぞれと、対応する計画された骨切り面の所定位置情報との位置誤差を計算し、位置誤差のいずれか1つが既定値を超える場合、より正確な骨切り結果を得るために、骨切り術の再位置決めを行う。
【0061】
任意選択で、変位校正ツールは、変位センサによって検出されたデータを制御装置に送信するためのBluetooth(登録商標)送信機をさらに含むことで、制御装置によって計算が行われる。当然、当業者はまた、変位センサによって検出されたデータを他の送信方法を通じて送信してもよい。
【0062】
本明細書における例示的な実施形態のそれぞれは、漸進的に説明されていることに留意されたい。それぞれが他との相違点に焦点を当てている。それらの間の同じおよび同様の部品に関しては、相互参照する。加えて、例示的な実施形態の異なる部品を組み合わせて使用することもでき、本発明においてこれは限定されない。
【0063】
要約すれば、本発明によって提供される骨切り術校正方法、校正装置、読み取り可能な記憶媒体、および整形外科手術システムは、初めに、骨切り術校正装置を使用して現在の骨切り面の計算位置情報を取得し、その後、計画された骨切り面の所定位置情報に基づき、計算位置情報と所定位置情報との位置誤差を確定し、位置誤差が既定値を超える場合、再位置決め情報を計算してロボットアームに送信し、ロボットアームを再位置決めする。このようにして、最初の骨切り術によって形成された現在の骨切り面と計画された所定の骨切り面との間の位置誤差を比較して識別し、ロボットアームを再位置決めし、骨切り面の2次的な修正を行うことによって、骨切り面の最終的な精度を向上できる。さらに、ロボットアームを再位置決めし、骨切り面を2次的に修正することによって、ナビゲーションツールを骨に固定するための追加の骨釘を回避できる。したがって、患者の外傷面と手術時間を縮小することができる。
【0064】
上記説明は、本発明の実施形態の説明にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。上述の開示にしたがって発明の技術分野の当業者によって行われるいかなる変更および修正も、特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0065】
1:外科用トロリー
2:ロボットアーム
3:ツール追跡可能要素
4:骨切り術ナビゲーションツール
5:振子式鋸
6:NDIナビゲーション装置
7:補助ディスプレイ
8:主ディスプレイ
9:ナビゲーショントロリー
10:キーボード
11:大腿骨追跡可能要素
12:大腿骨
13:脛骨追跡可能要素
14:脛骨
15:基部追跡可能要素
17:患者
18:術者
121:先端
122:誘導端
123:走査端
131:検知面
132:変位センサ
200:追跡可能要素
202:磁気コイル
203:SIUモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】