(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオールを含有する凍結乾燥粉末、及びサーモゲルの調製のためのその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 9/19 20060101AFI20230118BHJP
A61K 31/095 20060101ALI20230118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230118BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230118BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230118BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20230118BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A61K9/19
A61K31/095
A61P43/00 123
A61P43/00 105
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529876
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2020083148
(87)【国際公開番号】W WO2021105093
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519194722
【氏名又は名称】クレヴェクセル ファーマ
【氏名又は名称原語表記】CLEVEXEL PHARMA
(71)【出願人】
【識別番号】519194733
【氏名又は名称】アンスティチュ グスターヴ ルシー
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT GUSTAVE ROUSSY
(71)【出願人】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリク ドゥニ
(72)【発明者】
【氏名】ワン-ジャン シウピン
(72)【発明者】
【氏名】ドチュ エリック
(72)【発明者】
【氏名】クレメンソン セリーヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076CC29
4C076CC42
4C076DD38
4C076DD67
4C076EE23
4C076FF01
4C076FF36
4C076FF52
4C076GG01
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA52
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA03
4C206NA15
4C206ZB21
(57)【要約】
サーモゲルを調製するための凍結乾燥粉末であって、2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオール又はその薬学的に許容される塩の1つを1%~35%、1つ以上のポロキサマーを40%~85%、及び1つ以上の炭水化物化合物を0.1%~20%含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーモゲルを調製するための凍結乾燥粉末であって、
2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオール又はその薬学的に許容される塩の1つを1%~35%、
1つ以上のポロキサマーを40%~85%、及び
1つ以上の炭水化物化合物を0.1%~20%含むことを特徴とする凍結乾燥粉末。
【請求項2】
2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオールを5%~30%含有することを特徴とする請求項1に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項3】
ポロキサマーを45%~80%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項4】
60%~75%のポロキサマーを含有することを特徴とする請求項3に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項5】
ポロキサマーが、ポロキサマー407又はポロキサマー188から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項6】
ポロキサマー407及びポロキサマー188の混合物を含有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項7】
0.5%~15%の炭水化物化合物を含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項8】
1%~10%の炭水化物化合物を含有することを特徴とする請求項7に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項9】
炭水化物化合物が糖の中から選択されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項10】
炭水化物化合物が、マンニトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、ソルビトール、グルコース又はラフィノースの中から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項11】
炭水化物化合物が、ソルビトール又はマンニトールから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項12】
以下の成分の1つ以上をさらに含有することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末。
リンゴ、バナナ、チェリー、ココナッツ、レモン、メントール、オレンジ、ラズベリー、イチゴ、ココナッツ、トゥッティフルッティ又はバニラなどの香味剤及び/又は、
サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース又はネオタムなどの高強度甘味料。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末の製造方法であって、
酸性条件下におけるアミホスチンのアミホスチンチオールへの加水分解、
以下の方法による賦形剤含有溶液の調製、
最初に、ポロキサマーを除く、製剤中に提示される全ての賦形剤の溶解及び混合し、
均質な賦形剤溶液を得るためにポロキサマーを徐々に添加する前に温度の冷却、
得られたアミホスチンチオール溶液と得られた賦形剤溶液との混合、
得られた溶液の凍結乾燥、
密封前に窒素による不活性化、
を含む、凍結乾燥粉末の製造方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の凍結乾燥粉末を、水溶液で再構成することを含むサーモゲルの調製方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法によって得られるサーモゲル。
【請求項16】
抗癌療法、特に放射線療法及び/又は化学療法による癌の治療により損傷した粘膜又は皮膚組織を治療又は保護するための、請求項15に記載のサーモゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオールを含有する凍結乾燥粉末、及びサーモゲルを調製するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アミホスチン(S-{2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エチル}ジヒドロゲンホスホロチオエート)は、エチオフォスとしても知られており、アルカリホスファターゼの作用下で遊離活性2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオール(アミホスチンチオール)に変換されるリン酸化プロドラッグである。
【0003】
アミホスチンは、DNA結合性化学療法剤を含む癌化学療法及び放射線療法で使用される細胞保護補助剤である。現在まで、Clinigen Group社によってEthyol(登録商標)の商品名で市販されており、以下の適応症のためのIV潅流用の滅菌凍結乾燥粉末である。
-進行性卵巣癌患者に対するシスプラチンの反復投与による累積腎毒性の減少。
-頭頸部癌の術後放射線療法を受けている患者に対する中等度から重度の口腔乾燥の発生率の減少。なお、放射線部位(radiation port)は、耳下腺の大部分を含む。
【0004】
アミホスチン又はアミスフォチンチオールのその他の使用の可能性が、長年報告されている。例えば、Montanaらは、骨盤の放射線治療を受ける患者に対して、腸粘膜を保護するために局所的に適用されるアミホスチンの効果を試験した("Topical Application of WR-2721 to Prevent Radiation-Induced Proctosigmoiditis", Cancer, 69(11), 2826-2830 (1992))。同様に、Uzalらは、高用量を直腸内経路で局所投与した場合の放射線誘発性直腸炎に対するアミホスチンの保護作用を報告している("The Protective Effect of Amifostine on Radiation-Induced Proctitis: Systemic Versus Topical Application", Balkan Med J 29, 32-38 (2012))。
【0005】
Clemensonらは、アミホスチンのチオール代謝産物を含有するサーモゲル(CPh-1014)が、アミホスチンを含有するサーモゲルと比較して、in vivoマウスモデルにおける照射によって誘発される口腔粘膜炎及び皮膚炎の重症度を大幅に低下させることを実証した("Preventing Radiation-Induced Injury by Topical Application of an Amifostine Metabolite-Loaded Thermogel", Int J Radiation Oncol Biol Phys, Vol. 104, No. 5, pp. 1141-1152 (2019))。
【0006】
米国特許第6,239,119号明細書は、アミホスチン及び関連化合物の局所適用による、放射線療法及び/又は化学療法による癌の治療によって損傷した粘膜組織を治療又は保護する方法を開示する。口腔内の粘膜組織を治療するための口腔ゲル製剤の使用が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アミホスチン又はその誘導体を含有する製剤(ゲル又はサーモゲルを含む)で遭遇する主な問題は、その安定性の欠如にある。この安定性の欠如は、活性物質の種々の不純物への分解、主に対称ジスルフィド不純物への分解をもたらす。
【0008】
国際公開第2018/100008号は、サーモゲルの調製を可能にする凍結乾燥2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオール配合物の調製方法を開示しており、前記凍結乾燥配合物は、再構成が容易であり、その貯蔵中に安定である。その特許出願に開示されている方法にもかかわらず、以前から知られている製剤と比較して、ジスルフィド不純物の生成を制限することにより、貯蔵中のアミホスチンチオールの安定性を著しく増加させるが、そのような組成物は、アミホスチンチオールがジスルフィドや他の不純物へと著しく分解されないようにするためには、低温(5℃以下)で貯蔵する必要がある。
【0009】
今日まで、2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオールを含有する凍結乾燥粉末は、サーモゲルを調製するために容易に再構成することができ、周囲条件(すなわち、温度及び湿度)で貯蔵した場合に安定である必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
今、驚くべきことに、2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオール、ポロキサマー及び炭水化物化合物を含有する凍結乾燥粉末は、サーモゲルを調製するために容易に再構成することができ、周囲条件で貯蔵されているにもかかわらず、数ヶ月間安定であることが見出された。
【0011】
本発明は、サーモゲルを調製するための凍結乾燥粉末に関し:
- 2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオール又はその薬学的に許容される塩の1つを1%~35%;
- 1つ以上のポロキサマーを40%~85%;及び
- 1つ以上の炭水化物化合物を0.1%~20%、含む。
【0012】
本発明による凍結乾燥粉末は、2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオールのジスルフィド不純物への重大な劣化を観察することなく、周囲温度で数ヶ月間貯蔵することができる。さらに、局所適用によって、抗癌療法、特に放射線療法及び/又は化学療法による癌の治療によって損傷した粘膜又は皮膚組織を治療又は保護するために使用することができるサーモゲルを得るために容易に再構成することができる。
【0013】
本発明の文脈において:
- 「凍結乾燥粉末(freeze-dried powder)」(又は「凍結乾燥粉末(lyophilised powder)」)は、8%未満の水、好ましくは5%未満の水、さらに好ましくは2%未満の水を含有する任意の粉末を指す;
- 「2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオール」は、「アミホスチンチオール」又は「WR-1065」とも呼ばれる、アミホスチンの活性細胞保護チオール代謝物を指す;
- 「ポロキサマー」は、最初にプロピレンオキシド、次にエチレンオキシドを低分子量の水溶性プロピレングリコールへ順次添加することによって合成されたエチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)の非イオン性ブロックコポリマーを指す(G. Bonacucina et al., "Thermosensitive Self-Assembling Block Copolymers as Drug Delivery Systems", Polymers 2011, 3, 779-811を参照)。ポロキサマーは、Pluronics(登録商標)、Lutrol(登録商標)、Kolliphor(登録商標)等、様々な名称で商業化されている;
- 「炭水化物化合物」とは、Cm(H2O)nの式を満たす任意の生物物質を指す。炭水化物化合物は「糖類」としても知られている。好ましくは、「炭水化物化合物」は、単糖又は二糖、すなわち糖を指す;
- 「サーモゲル」(又は「感熱性サーモゲル」)は、温度遷移の間に液体と硬いゲルとの間で遷移する特性を示す任意のポリマー溶液を指す。好ましくは、「サーモゲル」は、室温で液体であり、体温でゲル化し、そのゲル化状態により粘膜及び皮膚に付着することができるヒドロゲルを指す;
- 活性成分の「薬学的に許容される塩」は、前記有効成分に無機酸又は有機酸を添加した任意の塩を指し、アルコール、ケトン、エーテル又は塩素化溶媒などの有機又は水性溶媒中でのそのような酸を作用させたものであり、薬学的観点から許容されるものである。
- 特に明記しない限り、全ての%値は重量%である。
【0014】
本発明は、2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオール、ポロキサマー及び炭水化物化合物を含むサーモゲルを調製するための凍結乾燥粉末に関する。好ましくは、本発明は、以下の個別の又は組み合わせた特徴を有する、上記で定義されたサーモゲルを調製するための凍結乾燥粉末に関し:
- 凍結乾燥粉末は、5%~30%の2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオール;より好ましくは10%~20%の2-[(3-アミノプロピル)アミノ]エタンチオールを含有する;
- 凍結乾燥粉末は、45%~80%のポロキサマー;より好ましくは60%~75%のポロキサマーを含有する;
- 凍結乾燥粉末は、ポロキサマー407又はポロキサマー188として選択される1つ以上のポロキサマーを含有する。より好ましくは、凍結乾燥粉末は、ポロキサマー407及びポロキサマー188の混合物を含有する。さらに好ましくは、凍結乾燥粉末は、ポロキサマー407及びポロキサマー188の混合物を含有し、ポロキサマー407:ポロキサマー188の重量比は1.5~6である。
- 凍結乾燥粉末は、0.5%~15%の炭水化物化合物、より好ましくは1%~10%の炭水化物化合物を含み、及び/又は
- 凍結乾燥粉末は、糖の中から選択された1つ以上の炭水化物化合物を含有する。より好ましくは、凍結乾燥粉末は、マンニトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、ソルビトール、グルコース及びラフィノースの中から選択される1つ以上の炭水化物化合物を含有する。さらに好ましくは、凍結乾燥粉末は、ソルビトール及びマンニトールから選択される1つ以上の炭水化物化合物を含有する。
【0015】
本発明による凍結乾燥粉末はまた、さらなる成分、例えば香味剤又は高密度の甘味料を含有してもよい。それに伴い、本発明はまたさらに、以下の成分の1つ以上を含有する、上記で定義されるサーモゲルを調製するための凍結乾燥粉末に関する:
- リンゴ、バナナ、チェリー、ココナッツレモン、メントール、オレンジ、ラズベリー、イチゴ、トゥッティフルッティ又はバニラなどの香味剤;及び/又は
- サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース又はネオテームなどの高強度甘味料。
【0016】
本発明による凍結乾燥粉末は、当業者が公知の任意のプロセスに従って調製することができる。特に、本発明はまた、上記定義の凍結乾燥粉末を調製するための方法に関し、前記方法は、以下の工程を含む。
- 酸性条件下でアミホスチンをアミホスチンチオールへ加水分解する。
- 賦形剤を含有する溶液は以下の方法により調製する。
最初に、ポロキサマーを除く、製剤中に含まれる全ての賦形剤を溶解及び混合し、
均質な賦形剤溶液を得るため、を徐々に添加する前に温度を冷却する。
- 得られたアミホスチンチオール溶液と得られた賦形剤溶液とを混合する。
- 得られた溶液を凍結乾燥する。
- 密封前に窒素不活性化する。
【0017】
上述のように、本発明による凍結乾燥粉末は、局所適用によって、抗癌療法、特に放射線治療及び/又は化学療法による癌の治療によって損傷した粘膜又は皮膚組織を治療又は保護するために有用なサーモゲルを調製するために使用することができる。本発明はまた、上述のように定義した凍結乾燥粉末と水溶液を用いた再構成を含むサーモゲルの製造方法に関する。
サーモゲルを調製するために使用される水溶液は、水のみから作製されてもよく、又はポロキサマー、浸透増強剤、芳香又は甘味料などの味マスキング剤、粘膜付着剤、共溶媒、湿潤剤又は着色剤などの1つ以上の成分を含有してもよい。
水溶液は、凍結乾燥粉末:水溶液(w/w)が1~5の比率で添加されてもよい。
【0018】
上記方法に従って調製されたサーモゲルは新規である。本発明はまた、上記のようなプロセスによって得られるサーモゲルに関する。
【0019】
本発明によるサーモゲルは、局所適用によって、抗癌療法、特に放射線療法及び/又は化学療法による癌の治療によって損傷した粘膜又は皮膚組織を治療又は保護するために使用することができる。本発明はまた、抗癌療法、特に放射線療法及び/又は化学療法による癌の治療によって損傷した粘膜又は皮膚組織を処置又は保護するための、上記に定義されるサーモゲルに関する。
癌の放射線療法による損傷としては、口腔粘膜炎(頭頸部癌の放射線照射の場合)、頸部上皮炎(頭頸部癌の放射線照射の場合)、食道炎(肺の放射線照射の場合)、皮膚紅斑(乳房の放射線照射の場合)、腸炎(腹部照射の場合)、膣炎及び膣乾燥(骨盤照射の場合)、直腸炎(骨盤照射の場合)、及び脱毛(脳照射の場合)が挙げられる。
好ましくは、本発明は、放射線誘発性の口腔粘膜炎又は皮膚紅斑を治療するための上記サーモゲルに関する。
【0020】
最後に、本発明はまた、抗癌療法、特に放射線療法及び/又は化学療法による癌の治療によって損傷した粘膜又は皮膚組織を治療又は保護する方法であって、上記で定義されたサーモゲルを局所適用する方法に関する。好ましくは、本発明は、上記で定義されたサーモゲルの局所適用による放射線誘発口腔粘膜炎又は皮膚紅斑を治療する方法に関する。
次に、以下の実施例により、本発明を非限定的に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施例]
例1-凍結乾燥組成物
1.1-凍結乾燥組成物の調製方法
アミホスチン500mg/mlの溶液を塩酸4M中に調製し、60℃の水浴中で1時間加熱してアミホスチンチオール溶液を得る。
【0022】
賦形剤を含有する溶液は、以下の方法によって調製される:
- 最初に、ポロキサマーを除いて、製剤中に提示された全ての賦形剤を、磁気撹拌下で水を含むボトル中に溶解及び混合し、
- ボトルを氷の中に置き、次の工程のためにそれを冷やしたままにすることによって、得られた溶液の温度を冷却し、
- 磁気攪拌下、完全に可溶化するまでポロキサマー(Kolliphor(登録商標))を徐々に添加する。
【0023】
得られたアミホスチンチオール溶液と賦形剤溶液を必要な割合で混合し、目的の組成及び濃度の溶液を得る。
【0024】
次いで、溶液を20mlバイアルに分配し、以下の表1に報告するプログラムを用いて凍結乾燥する。
【0025】
【表1】
次いで、得られた凍結乾燥粉末を、30秒間、手動で窒素下で不活性化し、その後、ゴム製ストッパ及びアルミニウムクリンプを使用して密封する。
【0026】
1.2-凍結乾燥粉末1及び2
以下の表2に報告される凍結乾燥粉末1及び2(LP1及びLP2)の組成物は、上記に開示されたプロセス(例1.1)に従って調製された。
【0027】
【表2】
得られた白色凍結乾燥粉末LP1及びLP2は、良好な外観及び良好に形成されたケークである。
【0028】
例2-サーモゲルの調製
凍結乾燥粉末LP1及びLP2をサーモゲルに再構成するために、5mlの水を、針及びシリンジを使用して、ストッパを通って密封したバイアルに導入する。
【0029】
ケーク内に水が浸透するまで1分待った後、バイアルを手で2分間穏やかに振り、透明なサーモゲルを得る。
【0030】
例3-凍結乾燥粉末の安定性
3.1-参考
炭水化物化合物を含まず、実施例1.1に開示された方法に従って調製された凍結乾燥粉末を、この評価のための参考(すなわち、Ref.)として使用する。前記基準凍結乾燥粉末の組成を、以下の表3に報告する。
【0031】
【表3】
3.2-実験要項
LP1、LP2及びRef.のバイアルは、安定性チャンバー内において、以下の条件下で保存した。
- 5℃/周囲RH(すなわち、相対湿度)、
- 25℃/60%RH、及び
- 40℃/75%RH。
【0032】
これらの条件下でのLP1、LP2及びRef.の安定性を1、3及び6か月の貯蔵後に評価した。
【0033】
安定性試験は、ICHガイドライン「Q1A(R2)新原薬及び新製剤の安定性試験」に従い実施した。以下のパラメーターが評価されている。
- 目視によるケーク外観、
- 目視による溶液外観、
- pH計によるpH、
- HPLCによる純度及び不純物。
【0034】
3.3-結果
LP1、LP2及びRef.について得られた結果を以下の表4~6に報告する。
【0035】
【0036】
【0037】
【表6】
3.4-結論
参考製剤Ref.(炭水化物を含まない)は、40℃/75%RHの加速条件で保存すると不安定である。主要な分解不純物ジスルフィド(RRT1.25)は、40℃/75%RHで6ヶ月間貯蔵後に特に増加(>2.6%)した。
逆に、LP1及びLP2の安定性は、加速条件(40℃/75%RH)で6ヶ月間貯蔵した後でも優れている。HPLCによる純度測定は、主要不純物、アミホスチン及びそのジスルフィドのレベルが低いことを示した。
【0038】
さらに、凍結乾燥組成物中の炭水化物化合物、特にマンニトール(LP2参照)の添加は、再構成に有益であると言える。マンニトールを含有する製品の再構成は迅速であり、40℃/75%RHでさえ、6ヶ月の貯蔵後に有意な変化は観察されない。
【国際調査報告】