(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】3Dプリンティングの為に好適な組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20230118BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230118BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20230118BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20230118BHJP
C08G 63/12 20060101ALI20230118BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230118BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20230118BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230118BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230118BHJP
B29C 64/194 20170101ALI20230118BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20230118BHJP
【FI】
B29C64/314
C08L67/00
C08L1/00
C08K3/40
C08G63/12
B33Y70/00
B33Y40/20
B33Y10/00
B33Y80/00
B29C64/194
B29C64/118
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529880
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2020083250
(87)【国際公開番号】W WO2021105143
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522201679
【氏名又は名称】プランティクス ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ホルティウス,ベーア
(72)【発明者】
【氏名】バッカー,ライツァー ヤン ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】タイス,フェリー ルドフィクス
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、3Dプリンティングの為に好適な組成物であって、
2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステル、ここで、該ポリエステルは、0.6以下の重合度を有し、該重合度は、反応することができる官能基の最大数に対する、反応した官能基の数の比である、固体フィラー、希釈剤を含む、前記組成物に関する。本発明はさらに、成形された物体を調製する為の方法であって、本明細書に記載された組成物を用意すること、プリンターノズルを介して該組成物を押し出して、所望の形状の該組成物の層を形成し、該層を互いに積み上げて、成形された物体を形成すること、該成形された物体を硬化工程に付して、硬化した成形された物体を形成すること、ここで、該硬化工程は、該押出し工程の間及び/又は押出し工程の後に行われる、の工程を含む、前記方法に関する。上記の成形された物体がまた、特許請求の範囲に記載されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンティングの為に好適な組成物であって、
2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステル、ここで、該ポリエステルは、0.6以下の重合度を有し、該重合度は、反応することができる官能基の最大数に対する、反応した官能基の数の比である、
固体フィラー、
希釈剤
を含む、前記組成物。
【請求項2】
3Dプリンティング前の該ポリエステルの重合度が、少なくとも0.1、特には少なくとも0.2、より特には少なくとも0.25、なおより特には少なくとも0.3、である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が0.1~30重量%の安定剤を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記安定剤が、ポリマー、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース又はカルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はカルボキシエチルセルロース、及びタンパク質、並びに、無機塩、例えば酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及び炭酸カルシウム、の群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸が、ポリ酸の全量に対して計算して、少なくとも10重量%のトリカルボン酸、特に少なくとも30重量%のトリカルボン酸、好ましくは少なくとも50重量%、より特には少なくとも70重量%、さらにより特には少なくとも90重量%、又はなお少なくとも95重量%、のトリカルボン酸を含み、ここで、該トリカルボン酸は好ましくはクエン酸である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオールが、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも70モル%、より特には少なくとも90モル%、又はさらには少なくとも95モル%、のグリセロール、キシリトール、ソルビトール、又はマンニトール、特にはグリセロール、からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
20~50重量%のポリエステルを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
全量で10~85重量%のフィラーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記フィラーが、セルロース含有材料、ガラス球、特に中空ガラス球、及び2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導され、任意的にフィラーを含んでいてもよいところの硬化したポリエステルの粒子のうちの1以上から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、20~70重量%の希釈剤を含み、該希釈剤が好ましくは水である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
成形された物体を調製する為の方法であって、
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物を用意すること、
プリンターノズルを介して該組成物を押し出して、所望の形状の該組成物の層を形成し、該層を互いに積み上げて、成形された物体を形成すること、
該成形された物体を硬化工程に付して、硬化した成形された物体を形成すること、ここで、該硬化工程は、該押出し工程の間及び/又は押出し工程の後に行われる、
の工程を含む、前記方法。
【請求項12】
別個の硬化工程が、前記押出し工程の後に行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
硬化が、80~250℃、特には100~200℃、の温度で行われる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記硬化した成形された物体が、重量測定により決定された重合度を有し、該重合度は一般的に、少なくとも0.5、特には少なくとも0.6、特には少なくとも0.7、より特には少なくとも0.8、幾つかの実施態様において少なくとも0.9、であり、及び/又は、10重量%未満、特には5重量%未満、より特には2重量%未満、の含水量を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項15】
3Dプリントされた物体であって、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステル、フィラー、及び一般的に10重量%未満の水を含み、ここで、該ポリマーは、少なくとも0.5の重合度を有し、該重合度は、反応することができる官能基の最大数に対する、反応した官能基の数の比である、上記の3Dプリントされた物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンティング(3D-printing)の為に好適な組成物に向けられている。本発明はまた、3Dプリンティングにおける該組成物の使用に、及びそのようにして得られた成形された物体に向けられている。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンティングは、オーダーメードの(custom-made)物体を得る為の魅力的な方法である。3Dプリンティングは、多くの使用分野において広範な用途が見出されている。
【0003】
3Dプリントされた物体の現況技術に伴う問題は、熱可塑性ポリマーのプリンティングを可能にする一方、熱硬化性ポリマーの処理が非常に困難であることが判っていることである。
【0004】
熱硬化性ポリマーに基づいて、成形された物体を形成し、従って良好な熱安定性を示す為に、3Dプリンティングを通じて処理されることができる組成物が当技術分野において必要である。そのような組成物は、バイオベースの、化石を含まない成分に基づくものであることが、特には魅力的である。該組成物は、良好な安定性及び魅力的な視覚的外観を有する3D形状物を提供することを可能にする必要がある。該組成物は、再利用可能であり及び/又は生分解性であることが、特には魅力的であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、そのような組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、3Dプリンティングの為に好適な組成物であって、
2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステル、ここで、該ポリエステルは、0.6以下の重合度を有し、該重合度は、反応することができる官能基の最大数に対する、反応した官能基の数の比である、
固体フィラー、
希釈剤
を含む、上記組成物を提供する。
【0007】
本発明に従う組成物は、3Dプリンターを使用して処理されて、成形された物体を形成することができ、該物体は、プリンティング中又はその後、硬化工程に付されることができる。本発明において使用される該ポリエステルは、該成形された物体の良好な熱安定性をもたらす熱硬化性物質である。該フィラー及び該ポリエステルの供給源の適切な選択によって、バイオベースの、化石を含まない、再生可能な(renewable)、再利用可能な(recyclable)、及び/又は生分解性の組成物が得られることができる。本発明の組成物及びその特定の実施態様、並びに更なる実施態様の更なる利点は、更なる明細書から明らかになるであろう。
【0008】
本発明はまた、成形された物体を調製する為の方法であって、
本明細書に記載されている組成物を用意すること、
プリンターノズルを介して該組成物を押し出して、所望の形状の該組成物の層を形成し、該層を互いに積み上げて(building up)、成形された物体を形成すること、
該成形された物体を硬化工程に付して、硬化した成形された物体を形成すること、ここで、該硬化工程は、該押出し工程の間及び/又は押出し工程の後に行われる、
の工程を含む、上記方法を提供する。
【0009】
本発明は更に、3Dプリントされた物体であって、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステル、ここで、該ポリエステルは、少なくとも0.5、特には少なくとも0.6、の重合度を有し、該重合度は、反応することができる官能基の最大数に対する、反応した官能基の数の比である、及びフィラーを含む、上記の3Dプリントされた物体を提供する。
【0010】
本発明は、下記においてより詳細に説明されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ポリエステル
本発明に従う出発組成物は、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステルを含み、ここで、該ポリマーは、0.1~0.6の重合度を有し、該重合度は、反応することができる官能基の最大数に対する、反応した官能基の数の比である。
【0012】
本発明において使用される該脂肪族ポリアルコールは、少なくとも2個のヒドロキシ基、特には少なくとも3個のヒドロキシ基、を含む。一般的に、ヒドロキシ基の数は、10個以下、より特には8個以下、又は更には6個以下、特には2個又は3個、である。該ポリアルコールは、2~15個の炭素原子を有する。より特には、該ポリアルコールは、3~10個の炭素原子を有する。該ポリアルコールは、ヘテロ原子を含まないことが好ましい。より特には、該ポリアルコールは、C、H、及びO原子のみを含む脂肪族ポリアルカノールである。該ポリアルコールは、ヒドロキシ基以外の非炭素基を含まないことが好ましい。本発明の好ましい実施態様において、該ポリアルコールは、その炭素原子の数と比較して相対的に多数のヒドロキシ基を含む。例えば、ヒドロキシ基の数と炭素原子の数との比は、1:4(すなわち、4個の炭素原子当たり1個のヒドロキシ基、又は1個のジアルコールにつき8個の炭素原子)~1:1(すなわち、1個の炭素原子当たり1個のヒドロキシ基)である。特に、ヒドロキシ基の数と炭素原子の数との比は、1:3~1:1、より特には1:2~1:1、である。特に好ましいポリアルコールの基は、該比が1:1.5~1:1である基である。
【0013】
ヒドロキシ基と炭素原子との比が1:1である化合物が、特に好ましいと考えられる。
【0014】
好適なポリアルコールの例は、グリセロール、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールから選択されるトリアルコール、並びに1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール及び1,2-エタンジオールから選択されるジアルコールを包含する。グリセロール、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールの群から選択された化合物の使用が好ましく、グリセロールの使用が特に好ましい。
【0015】
グリセロールの好選度は、下記に基づく。第一に、グリセロールは20℃の融点を有し、それは、特には全て90℃を十分に上回る融点を有するキシリトール、ソルビトール及びマンニトールと比較して容易な処理を可能にする。更に、グリセロールは、高い質のポリマーをもたらし、従って、容易に入手可能な供給源の材料の使用を、良好な処理条件及び高品質の生成物と組み合わせることが見出された。アルコールの種々のタイプの混合物がまた使用されうる。
【0016】
しかしながら、該ポリアルコールは、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも70モル%、より特には少なくとも90モル%、又は更には少なくとも95モル%、の、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、又はマンニトール、特にはグリセロール、からなることが好ましい。一つの実施態様において、該ポリアルコールは、グリセロールから本質的になる。
【0017】
グリセリドとモノアルコールのエステル交換反応によるバイオディーゼルの製造の副産物であるグリセロールの使用は、本発明の特定の実施態様である。好適なモノアルコールは、C1~C10モノアルコール、特にはC1~C5モノアルコール、より特にはC1~C3モノアルコール、特にはメタノール、を包含する。該グリセリドは、グリセロールと脂肪酸とのモノエステル、ジエステル及びエステル(mono-di- and esters)であり、該脂肪酸は一般的に、10~18個の炭素原子を有する。関連付けられたグリセロールを有するバイオディーゼルを製造する為の好適な方法は、当技術分野において知られている。
【0018】
本発明において使用される該脂肪族ポリカルボン酸は、少なくとも2個のカルボン酸基、特には少なくとも3個のカルボン酸基、を含む。一般的に、カルボン酸基の数は、10個以下、より特には8個以下、又は更には6個以下、である。該ポリカルボン酸は、3~15個の炭素原子を有する。より特には、該ポリカルボン酸は、3~10個の炭素原子を有する。該ポリカルボン酸は、N又はSヘテロ原子を有していないことが好ましい。より特には、該ポリカルボン酸は、C原子、H原子及びO原子のみを含む脂肪族ポリカルボン酸である。
【0019】
一つの実施態様において、ジカルボン酸が使用される。該ジカルボン酸は、それが使用される場合には、2個のカルボン酸基、一般的には15個以下の炭素原子、を有する任意のジカルボン酸でありうる。好適なジカルボン酸の例は、イタコン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及びセバシン酸を包含する。イタコン酸及びコハク酸が好まれうる。
【0020】
一つの実施態様において、トリカルボン酸が使用される。該トリカルボン酸は、それが使用される場合には、3個のカルボン酸基、一般的には15個以下の炭素原子、を有する任意のトリカルボン酸でありうる。例は、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸(シス及びトランスの両方)、及び3-カルボキシ-シス,シス-ムコン酸を包含する。クエン酸の使用が、費用及び入手可能性の両方の理由で好ましいと考えられる。
【0021】
適用できる場合には、該ポリカルボン酸は、全体的に又は部分的には無水物、例えばクエン酸無水物、の形態で用意されうる。
【0022】
トリカルボン酸の使用は、魅力的な特性を有するポリエステルを結果として生じることが見出された。それ故に、一つの実施態様において、ポリ酸は、ジカルボン酸、他のトリカルボン酸、及びそれらの混合物との組み合わせであるかどうかに関わりなく、少なくとも10重量%のトリカルボン酸を含む。一つの実施態様において、該ポリ酸は、ポリ酸の全量に対して計算して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、のトリカルボン酸を含む。一つの実施態様において、トリカルボン酸の量は、少なくとも70重量%、より特には少なくとも90重量%、又は更に少なくとも95重量%、である。一つの実施態様において、該ポリ酸は、トリカルボン酸から本質的になり、ここで、語「本質的に」は、他の酸が、材料の特性に影響を及ぼさない量で存在しうることを意味する。
【0023】
本発明の別の実施態様において、該酸は、酸の全量に対して計算して、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、のジカルボン酸を含む。一つの実施態様において、ジカルボン酸の量は、少なくとも70重量%である。
【0024】
一つの実施態様において、該酸は、少なくとも10重量%のトリカルボン酸及び少なくとも2重量%のジカルボン酸、より特には少なくとも10重量%のトリカルボン酸及び少なくとも5重量%のジカルボン酸、又は少なくとも10重量%のトリカルボン酸及び少なくとも10重量%のジカルボン酸、の組み合わせを含む。この実施態様において、2つのタイプの酸の間の重量比は、所望の材料の特性に応じて、広範囲に変わりうる。一つの実施態様において、該ジカルボン酸は、所望の材料の特性に応じて、合計2~90重量%、特には5~90重量%、より特には10~90重量%、のジカルボン酸及びトリカルボン酸を構成する。上記で特定されるトリカルボン酸についての好ましい範囲がまた、この実施態様に適用できることに留意されたい。トリカルボン酸、特にはクエン酸、の使用は、特にはトリアルコール、例えばグリセロール、の使用との組み合わせで、高品質の複合材料の形成を結果として生じることが見出された。
【0025】
理論によって束縛されるものではないが、本発明者等は、三酸の使用、特にはトリオールと組み合わされた三酸の使用、が、なぜ高品質の複合材料の形成を結果として生じるかについて、幾つかの理由があると考える。第一に、特にはトリオールと組み合わされた三酸の使用は、高架橋ポリマーを作成して、増大された強度を結果として生じる。
【0026】
該ポリアルコールと該ポリ酸とのモル比は、使用される1以上のアルコールにおける反応基の数と1以上の酸における反応基の数との比によって制御される。一般的に、OH基の数と酸基の数との比は、5:1~1:5である。より特には、該比は、2:1~1:2、より特には1.5:1~1:1.5、より好ましくは1.1:1~1:1.1、でありうる。理論的モル比は、1:1である。
【0027】
任意的に、好適な触媒が、該ポリエステルの調製の為に使用されることができる。ポリエステルの製造の為に好適な触媒は、当技術分野において知られている。好ましい触媒は、重金属を含まない触媒である。有用な触媒は、強酸、例えば塩酸、ヨウ化水素酸及び臭化水素酸、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、塩素酸(HClO3)、ホウ酸、過塩素酸(HClO4)、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、及びトリフルオロメタンスルホン酸であるが、それらに限定されるものでない。触媒、例えば酢酸Zn及び酢酸Mn、がまた使用されることができるが、それらはあまり好ましくないものでありうる。
【0028】
一つの実施態様において、化合物は、ポリマーと疎水性材料との相互作用を増大するか、又は最終生成物の耐水性を増大する為に添加される。好適な化合物は、例えば、C5~C22の飽和又は不飽和脂肪酸又はその塩、C5~C22の飽和又は不飽和脂肪アルコール、並びに二量体及び三量体脂肪酸又はアルコールを包含する。例えば、グリセロールモノステアレート、クエン酸トリエチル、及び吉草酸が、本発明において使用されることができる。
【0029】
疎水性を増大する為の化合物は一般的に、ポリマーの量に対して計算して、0.1~5重量%の量、より特には0.3~3重量%の量、で施与されるであろう。
【0030】
該ポリエステルは、3Dプリンティング前に該組成物中に存在するとき、0.6以下の重合度を有する。該重合度が0.6超の場合、該ポリエステルの加工性は低減し得、幾つかの実施態様において、該組成物の粘度を、3Dプリンティングの為に十分に低く抑える為に、受け入れ難いほど多量の水が必要とされうる。多量の水の蒸発は、該組成物の収縮をもたらしうるので、魅力的でなくなりうる。3Dプリンティング前の該組成物の重合度は、0.5以下であることが好まれうる。
【0031】
3Dプリンティング前の該ポリエステルの重合度は、少なくとも0.1、特には少なくとも0.2、より特には少なくとも0.25、なおより特には少なくとも0.3、であることが好まれうる。プリンティング前のより高い重合度は、プリンティング後の硬化が少なくて済むことを確実にする。これは、より効率的なプロセスに役立つ。更に、より高い重合度は、該ポリマーと該フィラーとの過度の相互作用を制限するよう助けうる。
【0032】
該ポリマーは、該アルコールと該酸とを組み合わせて液相を形成することによって形成される。これは、化合物の性質に応じて、例えば、該酸が、該アルコール、特にはグリセロール、に溶解する温度に、成分の混合物を加熱することによって、行われることができる。これは、化合物の性質に応じて、例えば、20~250℃、例えば40~200℃、例えば60~200℃、又は90~200℃、の温度で行われうる。一つの実施態様において、該混合物は、100~200℃、特には100~150℃、の温度、より特には100~140℃、の温度で、5分~2時間、より特には10分~45分間、加熱され及び混合されうる。
【0033】
3Dプリンティング前の該組成物は一般的に、少なくとも5重量%のポリエステルを含む。5重量%未満のポリエステルが存在する場合には、該形成された成形された物体は、所望の特性を得る為に必要なポリエステル含量を有していないであろう。該組成物は、少なくとも10重量%、特には少なくとも20重量%、のポリエステルを含むことが好まれうる。該組成物は一般的に、85重量%以下のポリエステルを含む。85重量%を超えるポリエステルが存在する場合、該組成物の更なる成分が存在するのに十分な余地がなくなることになろう。該組成物は、75重量%以下のポリエステル、特には60重量%以下のポリエステル、幾つかの実施態様において、50重量%以下のポリエステル、を含むことが好まれうる。
【0034】
フィラー
該組成物は、固体フィラーを含む。該組成物がプリントされるときに該組成物に成形性を与え、気泡の形成を防止又は制限する為に、フィラーの存在が必要とされる。固体フィラーはまた、最終生成物に特定の特性、例えば、望ましい見た目及び触覚、又は特定の質感、を与えうる。フィラーの存在はまた、生成物の強度を増大することができる。該フィラーの密度を選択することによって、該最終生成物の密度に影響を及ぼすことが可能になる。
【0035】
3Dプリンティング前の該組成物は一般的に、少なくとも10重量%のフィラーを含む。10重量%未満のフィラーが存在する場合には、成形された物体の形成が困難になろう。該組成物は、少なくとも20重量%のフィラーを含むことが好まれうる。該組成物は一般的に、85重量%以下のフィラーを含む。85重量%を超えるフィラーが存在する場合には、該組成物の更なる成分が存在するのに十分な余地がなくなることになろう。該組成物は、80重量%以下のフィラー、特には70重量%以下のフィラー、幾つかの実施態様において、60重量%以下のフィラー、又は更には50重量%以下のフィラー、を含むことが好まれうる。
【0036】
本発明に従う組成物において使用される該フィラーは、想定された3Dプリンターのノズルを介して処理されることができる形態であるところの任意の固体物質でありうる。プリントされることになるペーストの組成物は、該3Dプリンターの該ノズルに適合されなければならず、逆もまた同様であることが、当業者には明らかであろう。そのような適合を行うことは、当業者の範囲内である。
【0037】
一般的に該フィラーは、微粒子材料であるが、糸タイプの繊維の使用を、糸タイプの繊維の処理の為に準備された3Dプリンティングプロセスと組み合わせることがまた可能である。そのようなプリンターノズルは、当技術分野で知られている。
【0038】
微粒子フィラーが使用される場合、該フィラーは一般的に、材料のタイプに応じて、その最長軸にわたって決定された50mm以下の最大粒径を有する。本明細書の文脈において、語「微粒子」は、該材料の形状に対していかなる要件も課さない。該微粒子材料は、繊維状又は非繊維状でありうる。該粒子が非繊維状である場合には、該フィラーは一般的に、材料のタイプに応じて、その最長軸にわたって決定された10mm以下の最大粒径を有する。より大きい粒子及びより小さい粒子の組み合わせを使用することが好まれうる。
【0039】
一つの実施態様において、5mm以下、特には2mm以下、の平均粒径(その最長軸にわたって決定される)を有する粒子が、使用される。最小値として、0.001mmの平均粒径が言及されうる。
【0040】
一つの実施態様において、相対的に小さい粒子が使用される。この場合、該平均粒径は好ましくは、0.5mm以下である。幾つかの実施態様において、該平均粒径は、0.1mm以下、又は更には0.05mm以下、である。
【0041】
別の実施態様において、より大きい粒子が使用される。この場合、該平均粒径は、例えば0.5~5mm、特には0.5~2mm、である。
【0042】
相対的に滑らかな表面仕上げを有する物体については、該フィラーは、1mm以下、特には0.5mm以下、の最大粒径(Dv90)を有することが、部分的に好まれうる。相対的に粗い表面仕上げを有する物体については、該フィラーは、ある分率の粒子、例えば5~50体積%の、少なくとも1mmの粒径を有する粒子を含むことが好まれうる。
【0043】
一つの実施態様において、該フィラーは、天然材料、例えば植物又は動物から誘導された材料、を含む。
【0044】
植物ベースの材料の例は、セルロースベースの材料、例えば未使用の若しくは使用済みの紙、未使用の若しくは使用済みのボール紙、任意の形態の木材若しくは他の植物材料、又はそれらの組み合わせ、を包含する。一つの実施態様において、木材パルプ化プロセスから直接的に得られる、いわゆるバージンパルプから誘導されたセルロースベースの材料が使用される。このパルプは、任意の植物材料に由来することができるが、ほとんどは木材に由来することができる。木材パルプは、軟材の木、例えばトウヒ、マツ、モミ、カラマツ及びツガ、並びに硬材、例えばユーカリ、ポプラ(popular)、アスペン及びカバノキ、に由来する。一つの実施態様において、該セルロース系材料は、リサイクル紙から誘導されたセルロース材料、例えば、再生された本、紙、新聞及び定期刊行物、鶏卵カートン、並びに他のリサイクル紙又はボール紙製品から得られたセルロースパルプ、を含む。特定の供給源は、紙の製造において使用するのに好適になるには短過ぎる紙繊維である、リジェクトされた(reject)紙繊維の使用である。セルロース供給源の組み合わせがまた使用されうる。植物由来の材料の更なる例は、綿、亜麻、麻(hemp)、草、葦、竹、コーヒー粉末(coffee grounds)、例えばコメ由来の種子の殻、黄麻、ケナフ、ラミー、サイザル等、及びそれらから誘導された材料である。一般的には、好適な粒径に粉砕され、必要な場合には好適な含水量まで乾燥された植物材料が、使用されうる。
【0045】
動物由来の材料の例は、フェザー、ダウン、毛髪及びその誘導体、例えばウール、を包含し、骨粉をまた包含する。
【0046】
セルロースベースの材料、例えば木材粉塵(dust)、木材パルプ、並びに他のセルロースベースの材料、例えば麻から誘導された粉塵及びパルプの使用は、特には魅力的な結果をもたらすことが見出された。
【0047】
好適なフィラーの更なる例は、酸化物、例えばアルミナ、ベリリア、セリア、ジルコニア、シリカ、チタニア、及びそれらの混合物及び組み合わせ、並びに非酸化物、例えば炭化物、ホウ化物、窒化物、ケイ化物、及びそれらの混合物及び組み合わせ、例えば炭化ケイ素、を包含する、セラミック材料のフィラーを包含する。本明細書の目的の為には、ガラスはセラミック材料と考えられる。ガラスは、例えば、短繊維、中実であるか中空であるかに関わりなくガラスビーズ、及び粉末化ガラス(ground glass)粒子の形態で使用されうる。好適なフィラーは更に、雲母(micaceaous)フィラー、炭酸カルシウム、及び無機物、例えばフィロケイ酸塩等、の材料を包含する。粘土、砂等がまた使用されうる。
【0048】
好適なフィラーはまた、ポリマーフィラー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド(例えば、ナイロン-6、ナイロン6.6等)、ポリアクリルアミド、及びアリールアミドポリマー、例えばアラミドの粒子又は短繊維、を包含する。好適なフィラーはまた、炭素繊維及び炭素微粒子材料を包含する。本発明において使用される粉砕された(comminuted)硬化したポリエステル樹脂がまた、フィラーとして使用されうる。フィラーを含む粉砕された硬化したポリエステル樹脂がまた使用されうる。これは、本発明に従う使用済み物品を、新しい物品に再利用することを可能にする。
【0049】
一般的には、フィラーとして、複合物、例えばフィラーと共に提供されたポリマー粒子、がまた使用されうる。
【0050】
好適な更なるフィラーは、低濃度で該ポリエステル組成物に溶解することができる材料、例えばデンプン、を包含する。このタイプの材料が使用される場合、該材料は、該材料がまた固体形態で存在することを確実にするのに十分な量で、使用されるべきである。
【0051】
種々のタイプ及び材料のフィラーの組み合わせがまた使用されうる。
【0052】
希釈剤
本発明に従う3Dプリンティングの為に好適な組成物は、希釈剤を含む。該組成物が該3Dプリンターに供給されることになるときに、その生成プロセスの全ての段階で該組成物が適切な粘度を有することを確実にする為に、希釈剤が必要であることが見出された。特に、実質的な量のフィラーが該ポリエステルに組み込まれることになる場合、希釈剤は、混合中の有効な粘度を確実にする為に必要とされる。
【0053】
好適な希釈剤は、幾つかの要件を満たす必要があり、該希釈剤は、低粘度の液体である。該希釈剤は、該ポリオール及び該カルボン酸との反応性を有していないか、又は低い反応性を有する。該希釈剤は、該ポリオール及び該カルボン酸の為の良好な溶媒であるべきである。該希釈剤は、該組成物の3Dプリンティング後に、該組成物から容易に蒸発するべきである。後者の点は、プリントされた物体が硬化工程に付される前であっても、該プリントされた生成物が、その形状を保持するのに十分な安定性を有することを確実にする為に必要である。
【0054】
他の液体が可能であるが、技術的、経済的、及び環境的な理由で、水の使用が好ましいと考えられる。従って、該希釈剤は一般的に、少なくとも50重量%、特には少なくとも70重量%、より特には少なくとも90重量%、更により特には少なくとも95重量%、の水からなる。
【0055】
3Dプリンティングの為に好適な組成物は一般的に、少なくとも5重量%の希釈剤を含む。存在する希釈剤が少ない場合には、前述された効果は得られないであろう。希釈剤の量は、少なくとも10重量%、特には少なくとも15重量%、より特には少なくとも20重量%、であることが好まれうる。他方では、希釈剤の量は、多過ぎるべきではない。希釈剤の量は一般的に、70重量%以下である。より高い百分率では、プリンティング後に得られた該物体の安定性は、非常に高いプリンティング温度が使用される場合を除いて、不十分でありうる。60重量%以下、特には50重量%以下、の希釈剤を使用することが好まれうる。
【0056】
更なる成分
該組成物は、更なる成分、例えば安定剤、を含みうる。
【0057】
一つの実施態様において、安定剤は、該希釈剤、該フィラー、及び該ポリエステルの相互作用を増大して、他の成分から該希釈剤を分離することなく、加工可能な材料を提供するよう助けることによって、プリンティング前の該組成物の特性及び加工性を改善する為に使用される。
【0058】
別の実施態様において、安定剤は、プリンティング中及びプリンティング後、但し硬化前に、該組成物の特性及び加工性を改善する為に添加される。この場合、該安定剤は、該プリントされた組成物が、プリンティング条件下で好適には高い粘度を有すること、及び該プリントされた物体が、プリンティング後、但し硬化前に十分な剛性を有すること、を確実にする為に添加される。一般的には、これらの安定剤は、水、ポリエステル、及びフィラーを結合し、それによって、カンチレバーが該物体のベースを広げることができる程度である「オーバーハング(overhang)」を増大することを可能にすることによって、該組成物の擬似塑性(pseudoplasticity)を増大する。好適な安定剤は、ポリマー、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース又はカルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はカルボキシエチルセルロース、及びタンパク質、を包含する。好適な安定剤は更に、無機塩、例えば酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及び炭酸カルシウム、を包含する。該無機塩は、該組成物の急速な凝固が必要とされる場合に、魅力的であることが見出された。他方では、該無機塩は時々、最終生成物の増大された脆弱性を、その更なる組成に応じてまたもたらしうる。
【0059】
添加されることになる安定剤の量は、達成されることになる効果及び該組成物における更なる成分に応じて決まることになろう。一般的には、安定剤は、プリンティング前の出発組成物の重量に対して計算して、0.1~30重量%の量で添加されることになろう。安定剤がほとんど使用されない場合には、効果は見られないであろう。多過ぎる安定剤が使用される場合には、該組成物の粘度は、受け入れ難いほど高くなりうると同時に、更なる有益な効果は得られない。0.1~25重量%、特には0.5~20重量%、より特には1~15重量%、の量が一般的に好ましい。
【0060】
該組成物は、更なる成分を含むことができる。添加するのに魅力的でありうる更なる成分の例は、上記で論じられている通り、本発明に従う顔料、色素、及び粉砕された再利用された材料を包含する。2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステルを含む硬化した粒子の添加はまた、フィラーを含んでいるかどうかに関わりなく、考えられうる。
【0061】
一つの実施態様において、グリセロール及びクエン酸から誘導された、0.1~0.6、特には0.2~0.6、の重合度を有する、20~50重量%のポリエステルを含む、3Dプリンティングの為に好適な組成物が提供される。これは好ましくは、全量で10~80重量%のフィラーと組み合わされることができる。該フィラーは、例えば、セルロース含有材料、例えば木材パルプ、木材粉塵、又は紙繊維、から選択されることができる。該フィラーは例えば、低密度材料を得る為のガラス球、特には中空ガラス球、又は綿繊維、から選択されることができる。様々なタイプのフィラーの組み合わせがまた使用されうる。2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導された、任意的にフィラーを含んでいてもよいところの硬化したポリエステルの粒子の使用がまた魅力的である。該組成物は、例えば0.5~25重量%、特には1~20重量%、の量の安定剤、特にはデンプン、又は例えば0.5~20重量%若しくは1~15重量%の量の水酸化カルシウムは、良好な結果をもたらすことが見出されたので、それらを含むことが好ましい。
【0062】
組成物の製造及び使用
該組成物は、様々な成分を混合することによって得られうる。一般的には、第一に、任意的に水の存在下で、モノマー溶液から開始し、次に更なる成分を添加することによって、該ポリマーを調製することが好ましい。該更なる成分は、単一工程又は複数工程において、同じ又は異なる温度で添加されることができる。
【0063】
本発明はまた、成形された物体を調製する為の方法であって、
前述されたポリエステル、フィラー、及び希釈剤を含む組成物を用意すること、
プリンターノズルを介して該組成物を押し出して、所望の形状の該組成物の層を形成し、該層を互いに積み上げて、成形された物体を形成すること、並びに
該押出し工程の間及び/又はその後に、該成形された物体を硬化工程に付して、硬化した成形された物体を形成すること
の工程を含む、上記方法に関する。
【0064】
この方法はまた、本明細書において3Dプリンティングとして示される。
【0065】
該押出し工程は、プリンターノズルを介して該組成物を押し出す工程を包含する。例えば、該組成物の温度を適合させることによって、又は適切な量の希釈剤若しくは存在する場合には安定剤を選択することによって、該組成物の粘度を当該のプリンターノズルに適合させることは、当業者の範囲内である。
【0066】
該希釈剤は、該組成物中、液相であることが必要なので、最小温度は、該希釈剤の融点である。
【0067】
高められた温度での押出しは、該組成物の適切な粘度をもたらす。該押出し工程は、押出し直前に該組成物で決定される、高められた温度、例えば少なくとも25℃、特には少なくとも40℃、で行われることが好ましい。該希釈剤の沸点を上回る処理は、制御の利かないガス形成をもたらしうるので、該温度は、該希釈剤の沸点未満であることが好ましい。
【0068】
該温度は、空気ストリーム、特には熱風、を提供することによって、或いはマイクロ波若しくは赤外線、又は当業者に明らかになる他の好適な加熱手段を使用することによって、所望の値にされることができる。
【0069】
該押出し工程の間の温度に応じて、該ポリマーの硬化は、押出し中又はその直後に行われうる。それにもかかわらず、一般的には、別個の(追加の)硬化工程を行うことが好ましいであろう。
【0070】
該成形された物体は、それが望ましい場合には、該硬化工程が行われる前に、乾燥工程に付されうる。一般的に、室温、例えば15℃又は20℃~100℃、の温度で行われる該乾燥工程は、該成形された物体から希釈剤を除去する為に行われる。相対的に低い温度、例えば80℃未満又は50℃未満、での乾燥は、エネルギー消費量が低いので好まれうる。乾燥は、該物体のサイズ及び形状、そこに存在する水の量、並びに該成形された物体における水の量に応じて、例えば0.1時間~3日間、又は0.25時間~3日間、行われることができる。好適な乾燥条件を選択することは、当業者の範囲内である。水の蒸発を増大するよう助ける為の真空の施与が、考えられうる。
【0071】
該硬化工程は、該ポリエステルを更に重合することが意図される。該硬化工程の最も重要な点は、該ポリエステルが、反応温度、例えば80~250℃、特には100~200℃、の生成温度にあることである。硬化は、当技術分野において知られている加熱技術において、例えば80℃~450℃までのオーブン温度を有するオーブン内で、行われることができる。種々のタイプのオーブンが使用され得、ベルトオーブン、対流式オーブン、マイクロ波オーブン、赤外線オーブン、熱風オーブン、慣習的なベーキングオーブン及びそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されるものでない。硬化は、単一工程又は複数工程で行われることができる。硬化時間は、該物体のサイズ及び形状、並びに使用されるオーブンのタイプ及び温度に応じて、5秒~24時間である。好適な硬化条件を選択することは、当業者の範囲内である。より長い硬化時間は、魅力的でなくなりうるので、硬化時間は、5秒~12時間、特には5秒~8時間、より特には5秒~4時間、又は5秒~2時間、であることが好まれうる。特に、より大きいサイズを有する物体については、硬化中に温度勾配を施与することが好まれ得、ここで、該硬化工程の開始時の温度は、該硬化工程の最後の温度よりも低い。温度勾配の施与は、該物体からの水の除去速度を制御することを可能にし、それによって、表面の不均一性の形成を防止するよう助けうる。より大きい物体の場合、上述の乾燥工程は、上記で論じられている通り好ましいと考えられる。
【0072】
硬化後、重量測定により決定された重合度は一般的に、少なくとも0.5、特には少なくとも0.6、より特には少なくとも0.7、更により特には少なくとも0.8、幾つかの実施態様において、少なくとも0.9、になるであろう。理論的な最大の重合度は、1.0である。
【0073】
硬化後、該硬化した成形された物体の含水量は一般的に、10重量%未満、特には5重量%未満、より特には2重量%未満、である。
【0074】
本発明はまた、2~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールと3~15個の炭素原子を有する脂肪族ポリカルボン酸とから誘導されたポリエステル、ここで、該ポリマーは、少なくとも0.5、特には少なくとも0.6、の重合度を有し、該重合度は、反応することができる官能基の最大数に対する、反応した官能基の数の比である、フィラー、及び一般的に10重量%未満の水を含む、3Dプリントされた物体に関する。
【0075】
組成、含水量、及び重合度(後者の2つは該硬化した物体)について上記で示されている好ましさがまた、この実施態様に当てはまる。
【0076】
該硬化した物体は、当技術分野において知られている後処理、例えば、サンディング(sanding)、コーティング、又は研磨、塗装若しくは他の表面処理、に付されることができる。
【0077】
本発明は、多くの適用の為の物体、例えば装飾用物体、家具等を包含する多くの適用の為の物体、を提供するのに好適である。特定の使用が、大規模プロトタイプの生成にある。3Dプリンティングの使用は、基材の機械加工よりも安価であり、3Dプリントされた熱可塑性プラスチックよりも変形しにくい方式でのオーダーメード生成を可能にする。
【0078】
当業者に明らかであろう通り、本発明の様々な観点の好ましい実施態様は、互いに排他的である場合を除いて、組み合わされることができる。
【0079】
本発明は、下記の実施例によって説明されるが、それらに限定されるものでなく又はそれらによって限定されるものでもない。
【0080】
実施例1
ポリエステルポリマー溶液の調製
純度>99%のグリセロール1.0kg、及びクエン酸(純度>99%)2.0kgが、撹拌され且つ加熱された反応器内に入れられた。また、ホウ酸(0.5m/m、>99%純度)9gが添加された。該混合物は、135℃になるまで約15分間加熱され、そして、その温度で15分間維持され、引き続き、水道水で含水量60%まで希釈され、そして、更に冷やされた。結果として得られたポリマーは、0.4の重合度を有する。
【0081】
実施例2
木材粉塵及びデンプンを用いる成形された物体の製造
3Dプリンティングの為に好適な組成物は、以下の通り調製された。実施例1に記載されている通りのポリエステルポリマー10キログラムが、90℃に加熱され、そして、デンプン0.75kg及び木材粉塵0.75kgと一緒にされ、引き続き、撹拌された。該混合物は、50℃未満に冷却され、そして、デンプン1.5kg及び木材粉塵1.5kgが更に添加され、引き続き、混合された。
【0082】
結果として得られた組成物は、28重量%のポリエステル、15重量%のデンプン、15重量%の木材粉塵、及び42重量%の水からなっていた。該ポリエステルの重合度は、0.4のままであった。
【0083】
該組成物は、成形された物体を、3Dプリンターを使用してプリントする為に使用された。該組成物は、50~60℃の温度で該3Dプリンターノズルに供給され、そして、8mmノズルを介して、20mm/秒の速度で3mmの層の厚さに押し出された。該ノズルから出る際に、該材料は、熱風(200℃超)を吹き付けられる。熱風の吹き付けは、該デンプンの結合特性を刺激することが意図される。
【0084】
引き続き、該成形された物体が、熱風循環オーブン内で、200℃の温度で2時間、乾燥され、且つ硬化された。
【0085】
該硬化した物体の含水量は、5重量%未満であった。該物体は、0.8超の重合度を有していた。
【0086】
図1は、プリンティング中の該物体を示す。該図から分かる通り、本発明は、制御され且つ再現可能な様式で、複雑な形状物の製造を可能にし、且つ「オーバーハング」(overhang)、すなわち該物体の側面がベース面よりも延在している部分、を有する物体のプリンティングを可能にするのに十分に安定である。
【0087】
実施例3
木材粉塵、デンプン、及び中空ガラスパール(hollow glass pearls)を用いる成形された物体の製造
デンプン15グラムが、実施例1の樹脂(40重量%のポリマー及び60重量%の水を含む)300グラムに混合された。該混合物は、80℃に加熱され、そして、該デンプンが溶解されるまで撹拌された。次に、それが50℃未満に冷却され、そして、デンプン30グラムが更に添加された。木材粉塵40グラム及び45重量%の中空ガラスパールが添加され、引き続き、混合された。結果として得られた組成物は、28重量%のポリエステル、10重量%のデンプン、10重量%の木材粉塵、10重量%の中空ガラスパール、及び42重量%の水からなっていた。
【0088】
該ポリエステルの重合度は、0.4であった。
【0089】
該混合物は、実施例2に記載されている通りに3Dプリントされ、乾燥され且つ硬化された。該硬化した物体の含水量は、5重量%未満であった。該物体は、0.8超の重合度を有していた。
【0090】
該硬化した物体は、
図2に示されている。該図から分かる通り、本発明は、複雑な形状物の製造を可能にし、且つ「オーバーハング」、すなわち該物体の側面がベース面よりも延在している部分、を有する物体のプリンティングを可能にするのに十分に安定である。中空ガラスパールを使用することにより、物体が低密度であっても、該物体が木材粉塵の使用から得られることができる故に、なおまだ自然な見た目及び感触(natural look and feels)を有する該物体の形成が結果として生じた。
【0091】
実施例4
木材粉塵及び水酸化カルシウムを用いる成形された物体の製造
水酸化カルシウム30グラム及び木材粉塵70グラムが混合された。該混合物は、実施例1の樹脂(40重量%のポリマー及び60重量%の水を含む)300グラムに、数回に分けて添加されると同時に、温度が50℃を超えないことを確実にする。結果として得られた組成物は、30重量%の樹脂、7.5重量%の水酸化カルシウム、17.5重量%の木材粉塵、及び45重量%の水を含んでいた。該ポリエステルの重合度は、0.4であった。
【0092】
該混合物は、実施例2に記載されている通りに3Dプリントされ、乾燥され且つ硬化された。該硬化した物体の含水量は、5重量%未満であった。該物体は、0.8超の重合度を有していた。
【0093】
該硬化した物体が、
図3に示されている。該図から分かる通り、この組成物は、複雑な3D形状物の高精度でのプリンティングを可能にする。
【0094】
実施例5
デンプン及び綿繊維を用いる成形された物体の製造
デンプン15グラムが、実施例1の樹脂(40重量%のポリマー及び60重量%の水を含む)300グラムに混合された。該混合物は、80℃に加熱され、そして、該デンプンが溶解されるまで撹拌された。次に、それが50℃未満に冷却され、そして、デンプン30グラムが更に添加された。綿繊維75グラム及び増粘剤としてのアエロジル(フュームドシリカ)10グラムが添加され、引き続き、混合された。結果として得られた組成物は、28重量%のポリエステル、10重量%のデンプン、17重量%の綿繊維、2重量%のエアロゾル、及び42重量%の水からなっていた。
【0095】
該ポリエステルの重合度は、0.4であった。
【0096】
該混合物は、実施例2に記載されている通りに3Dプリントされ、乾燥され且つ硬化された。該硬化した物体の含水量は、5重量%未満であった。該物体は、0.8超の重合度を有していた。
【0097】
該硬化した物体は、
図4に示されている。該図から分かる通り、より長い繊維を含むこの組成物は、粗い表面を有する物体をもたらし、複雑な3D形状物のプリンティングを可能にする。
【0098】
実施例6
CMC及びリジェクトされた紙繊維を用いる成形された物体の製造
実施例1の樹脂300グラムが、80℃に加熱された。リジェクトされた紙繊維75グラム及びカルボキシメチルセルロース安定剤9グラムが添加され、引き続き、混合された。結果として得られた組成物は、31重量%のポリエステル、2重量%のCMC、20重量%のリジェクトされた紙繊維、及び47重量%の水からなっていた。該ポリエステルの重合度は、0.4であった。
【0099】
該混合物は、実施例2に記載されている通りに3Dプリントされ、乾燥され且つ硬化された。該硬化した物体の含水量は、5重量%未満であった。該物体は、0.8超の重合度を有していた。
【0100】
該硬化した物体は、
図5に示されている。該図から分かる通り、本発明は、リジェクトされた紙繊維を、魅力的な3D形状を有する生成物に変換することを可能にする。リジェクトされた紙繊維は、紙のリサイクル産業からの廃棄ストリームである。該紙繊維は、新しい紙に再利用するには短過ぎる繊維を含む。該繊維に加えて、該画分はまた、10~30重量%の炭酸カルシウムを含む。
【0101】
実施例7
麻粒子(hemp particles)に基づく大規模物体の製造
25リットルの惑星形ミキサー中で、水5kgが100℃の温度に加熱された。デンプン0.75kgが麻粒子1kgと混合され、そして、該混合物が水に添加された。該麻粒子は、麻の繊維を除いた残渣(shives)及び繊維材料の混合物であり、種々の粒径の材料を含んでおり、最大粒子は、5mmほどであった。次に、実施例1に従って調製された樹脂5kgが添加された。該混合物は、撹拌され、そして、室温に冷却された。麻粒子0.35kgが、水酸化カルシウム1kgと混合された。この混合物の半分が、該樹脂組成物に添加され、該混合物は1時間撹拌され、麻及び水酸化カルシウムの該混合物の残り半分が添加され、引き続き、再び撹拌された。結果として得られた組成物は、31重量%のポリエステル、10重量%の麻粒子、8重量%のCaOH、6重量%のデンプン、及び残部の水からなっていた。該ポリエステルの重合度は、0.4であった。
【0102】
該組成物は、成形された物体を、3Dプリンターを使用してプリントする為に使用された。該組成物は、70℃の温度で該3Dプリンターノズルに供給され、そして、11mmノズルを介して、20mm/秒の速度で5mmの層の厚さに押し出された。該ノズルから出る際に、該材料は、熱風(200℃超)を吹き付けられる。熱風の吹き付けは、水の蒸発を刺激して、該物体の増大された安定性をもたらすことが意図される。
【0103】
該成形された物体はその後、熱風循環オーブン内で、160℃の温度で2時間、乾燥され且つ硬化された。
【0104】
該硬化した物体の含水量は、5重量%未満であった。該物体は、0.8超の重合度を有していた。
【0105】
3Dプリンティング直後の該物体の写真は、
図6にある。該硬化した物体の写真は、
図7にある(ペンは規模を示す為)。該写真から分かる通り、該物体は、安定であり、自立している。該物体は、以下の寸法:高さ35cm、幅43cm、及び厚さ13cmを有していた。
【国際調査報告】