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特表2023-502794α-シヌクレインの凝集に関連する疾患の診断、治療および予防のための新規な化合物
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  • 特表-α-シヌクレインの凝集に関連する疾患の診断、治療および予防のための新規な化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】α-シヌクレインの凝集に関連する疾患の診断、治療および予防のための新規な化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20230118BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20230118BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20230118BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20230118BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20230118BHJP
   C07D 491/056 20060101ALI20230118BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 31/4355 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A61P39/02
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/00
A61K51/04 200
C07D401/14
C07D403/04
C07D405/14
C07D491/056
C07D405/04
A61K31/4439
A61K31/506
A61K31/4355
A61K31/496
A61K31/5377
A61K31/497
A61K31/501
A61K31/4545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554964
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2020082778
(87)【国際公開番号】W WO2021099518
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】19210073.3
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522196065
【氏名又は名称】モダグ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】598165611
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ギーゼ,アルミン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェックベッカー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】レオノフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】リャザノフ,セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】グリージンガー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ピヒラー,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ヘルファート,クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】キューブラー,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ブス,ザブリナ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C063
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB07
4C050CC17
4C050EE01
4C050FF10
4C050GG01
4C050HH04
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB01
4C063BB06
4C063CC22
4C063CC25
4C063CC28
4C063CC29
4C063CC34
4C063CC41
4C063CC81
4C063DD02
4C063DD10
4C063DD12
4C063DD22
4C063DD29
4C063EE01
4C085KA30
4C085KB56
4C085LL13
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086BC38
4C086BC41
4C086BC42
4C086BC48
4C086BC50
4C086BC60
4C086BC73
4C086CB22
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZC37
(57)【要約】
本発明は、一般式(Ia)、(Ib)、(IIa)または(IIb)で表される化合物に関する。これらの化合物は、α-シヌクレインをイメージングするのに、およびα-シヌクレインの凝集に関連する疾患を診断するのに好適である。化合物はまた、α-シヌクレインの凝集に関連する疾患を治療および予防するのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Ia、Ib、IIaもしくはIIb
【化1】
(式中、X、XおよびXは、CR、NおよびNRから独立して選択され、但し、X、XおよびXのうちの少なくとも2つは、NまたはNRであり、
、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYはCRおよびNから独立して選択され、但し、Y、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNであり、
は、水素、C1~4アルキルおよび-(CH)-O-P(=O)(OR)(OR)から独立して選択され、C1~4アルキルは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得、
は、水素、ハロゲンおよびC1~4アルキルから独立して選択され、C1~4アルキルは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得、
Rは水素またはカチオンであり、
は、水素、ハロゲン、C1~4アルキル、OHおよびC1~4アルコキシであり、C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得、
およびRは、HおよびC1~4アルキルから独立して選択され、C1~4アルキルは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得るか、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、4~6員の飽和複素環を形成し、これは、RおよびRが結合する窒素原子に加えて、OおよびNから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含有し、前記4~6員の飽和複素環は、1つまたは複数のRで任意選択で置換され得、
は、ハロゲン、C1~4アルキル、OHおよびC1~4アルコキシから独立して選択され、C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得、
Halはハロゲンである)
で表される化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物もしくは塩。
【請求項2】
【化2】
が、
【化3】
であるか、または
【化4】
が、
【化5】
であり、
ここで、RおよびRが、請求項1に定義された通りである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
【化6】
が、
【化7】
であるか、または
【化8】
が、
【化9】
であり、
ここで、RおよびRが、請求項1に定義された通りである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの1つ、2つまたは3つがNである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
式IaもしくはIb中、YがNであり、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つがNであるか、または
式IIaもしくはIIb中、YがNであり、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つがNである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
がNであり、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYがCRであり、好ましくはYがNであり、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYがCHである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
がHである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
およびRのうちの少なくとも1つが、C1~4アルキルであり、C1~4アルキルが、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得る、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
およびRが、これらが結合する窒素原子と一緒になって、4~6員の飽和複素環を形成し、これは、RおよびRが結合する窒素原子に加えて、OおよびNから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含有し、前記4~6員の飽和複素環は、1つまたは複数のRで任意選択で置換され得る、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
4~6員の飽和複素環が、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルおよびピペラジニルから選択され、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルおよびピペラジニルが、1つまたは複数のRで任意選択で置換され得る、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
化合物が検出可能に標識されており、好ましくは化合物が18F、11C、125I、123I、131I、77Brおよび76Brにより検出可能に標識されており、より好ましくは化合物が18Fまたは11Cにより検出可能に標識されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物もしくは塩。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物、またはその溶媒和物もしくは塩、および任意選択で薬学的に許容される担体を含む診断組成物。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物もしくは塩、および任意選択で薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
α-シヌクレイン凝集と関係がある疾患の診断における使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物もしくは塩。
【請求項15】
α-シヌクレイン凝集と関係がある疾患の治療における使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物もしくは塩。
【請求項16】
α-シヌクレイン凝集と関係がある疾患が、パーキンソン病、レビー小体型認知症および多系統萎縮症から選択される、請求項14または15に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
α-シヌクレイン凝集をインビトロまたはエクスビボで阻害するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物、またはそのプロドラッグ、溶媒和物もしくは塩の使用。
【請求項18】
α-シヌクレイン凝集のイメージングにおける使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物、またはその溶媒和物もしくは塩。
【請求項19】
凝集したα-シヌクレインの沈着物をイメージングする方法であって、
(i)検出可能な量の請求項11に記載の検出可能に標識された化合物を対象に導入するステップと、
(ii)前記化合物が前記凝集したα-シヌクレインと会合するのに十分な時間をおくステップと、
(iii)前記凝集したα-シヌクレインと会合した前記化合物を検出するステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
請求項11に記載の検出可能に標識された化合物、またはその溶媒和物もしくは塩を調製するためのキットであって、請求項11に記載の化合物、またはその溶媒和物もしくは塩を反応時に形成する少なくとも2つの前駆体化合物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α-シヌクレインをイメージングするのに、およびα-シヌクレインの凝集に関連する疾患を診断するのに好適な新規な化合物について言及する。化合物はまた、α-シヌクレインの凝集に関連する疾患を治療および予防するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
多数の神経性および神経変性疾患が公知であり、これらの多くは現在治癒不可能であり、かつ診断が難しい。一般的な神経変性疾患はすべて、脳内の特定のタンパク質のミスフォールディング、凝集および沈着を特徴とする。これらの疾患としては、医学的状態、例えばパーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病および他の多くのものが挙げられる。
【0003】
シヌクレイン病は、凝集およびミスフォールドしたα-シヌクレインタンパク質(αSYN)の蓄積および沈着を特徴とする疾患の一群である。シヌクレイン病としては、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)および多系統萎縮症(MSA)が挙げられる。これらの疾患は、中枢神経系および末梢神経系における凝集およびミスフォールドしたα-シヌクレインタンパク質の蓄積および沈着の分布の点で異なる。神経病理学的に、これらは、凝集およびミスフォールドしたα-シヌクレインタンパク質の疾患特異的蓄積および沈着により、他の神経変性疾患と区別され得る一方で、他の神経変性疾患は、凝集およびミスフォールドした他のタンパク質の蓄積および沈着を特徴とする。例えばアルツハイマー病は、凝集およびミスフォールドしたAベータ(Aβ)およびタウタンパク質を特徴とし、進行性核上性麻痺および大脳皮質基底核変性症は、凝集およびミスフォールドしたタウタンパク質を特徴とし、同様に前頭側頭型認知症の一部の症例は、凝集およびミスフォールドしたタウタンパク質を特徴とする。クロイツフェルト-ヤコブ病は、凝集およびミスフォールドしたプリオンタンパク質を特徴とする。
【0004】
凝集およびミスフォールドしたタンパク質の疾患特異的蓄積および沈着は、これらの凝集およびミスフォールドしたタンパク質沈着物に結合する化合物による治療法のためと診断のための両方の標的を提供する。
【0005】
凝集およびミスフォールドしたタンパク質の疾患特異的蓄積および沈着の診断的検出のための1つの選択肢は、凝集したタンパク質の前記沈着物に特異的および選択的高親和性結合を示す検出可能に標識された化合物の使用である。これは、例えば好適な放射性同位元素で標識されている化合物を用いて、および検出のためのPETイメージングを用いて行われ得る。化合物は、AβおよびタウのPETイメージングのための臨床使用に利用できるが、シヌクレイン病におけるα-シヌクレイン沈着物の診断用PETイメージングに使用できる化合物はこれまでに発明されていない(Kotzbauer,P.T.、Tu,Z.およびMach,R.H.、Current status of the development of PET radiotracers for imaging alpha synuclein aggregates in Lewy bodies and Lewy neurites. Clin. Transl. Imaging、2017.5:p.3~14)。これまでに他のグループにより開発および試験された化合物は、凝集およびミスフォールドした他のタンパク質、とりわけAβおよびタウと比較して、凝集およびミスフォールドしたα-シヌクレインに対する高い結合親和性、結合親和性における十分な選択性を含む特性の好適な組合せを欠いていた(凝集およびミスフォールドしたタンパク質の疾患特異的蓄積および沈着を特徴とする様々な疾患の鑑別診断に、ならびに同時に1種または複数種の疾患、すなわちレビー小体型認知症とアルツハイマー病を有する患者においても凝集およびミスフォールドしたα-シヌクレインの存在を正確に検出する能力に必要とされる)。さらに、必要とされる特性としては、血液脳関門を通過し、細胞内沈着物に結合する能力、脳組織への低い非特異的結合、および脳からの非結合化合物の急速な洗い流しが挙げられる。
【0006】
WO2009/146343は、アルツハイマー病の診断を可能にするために、脳内のアミロイド沈着物をインビボで研究するための陽電子放出断層撮影(PET)イメージングのトレーサーである、特定のピラゾール、1,2,4-オキサジアゾールおよび1,3,4-オキサジアゾールについて言及する。アルツハイマー病は、Aβおよびタウタンパク質の凝集を特徴とし、言及されたPETトレーサーは、これらのタンパク質の凝集体に結合する。対照的に、本発明は、α-シヌクレインの凝集を特徴とする疾患を標的とする。凝集したα-シヌクレインの選択的なイメージング診断では、α-シヌクレインへの選択的結合、ならびに凝集したAβおよびタウへの結合がないまたは低いことが必要とされる。
【0007】
WO00/66578は、NPY媒介性疾患/状態、例えば肥満の治療に有用である、特定のNPYアンタゴニストを記載する。WO00/66578の化合物のNPY5サブタイプに対する「直接的」効果に加えて、体重減少から恩恵を受ける疾患/状態、例えばインシュリン抵抗性、耐糖能障害、II型糖尿病、高血圧、高脂質症、心血管疾患、胆石、特定の癌、睡眠時無呼吸症候群などがあることを言及する。
【0008】
WO2010/000372は、タンパク質凝集と関係がある疾患および/または神経変性疾患の治療または予防に有用である特定の化合物に関する。WO2010/000372の化合物は、パーキンソン病を含む、タンパク質凝集と関係がある疾患を治療するのに特に好適である。該化合物は、Aβおよびタウを含むいくつかの異なる凝集したタンパク質に結合することが示された。したがって、これらは、タンパク質凝集と関係がある障害を診断するのに使用できるが、α-シヌクレイン凝集と関係がある障害と、アミロイドタンパク質凝集と関係がある他の障害、例えばタウオパチーまたはアルツハイマー病とを確実に区別することができない。しかし、これは、タンパク質凝集と関係がある障害の臨床症状が酷似しているため重要であり、例えば様々な障害を区別して、それに応じて治療を適合させることは非常に望ましい。さらに、WO2010/000372に記載された分子は、脂質および疎水性タンパク質への高い非特異的結合を有し、これは脳組織および他の組織における強力な非特異的結合につながる。したがって、該分子は、PETトレーサーに必要とされる、α-シヌクレインに対する必要な特異的結合および信号対雑音比に達しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述を考慮して、診断用としての特性が改善された化合物が必要であった。特に、α-シヌクレインへの結合の特異性が改善される必要がある。脳組織および他の組織における非特異的結合は低減される必要があり、結合親和性は増加される必要があり、生理学的半減期は減少される必要がある。
【0010】
米国特許出願公開第2005/0075375号は、C型肝炎ウイルスを治療するための特定の複素環化合物を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】[3H]-化合物1を用いたレビー小体型認知症を患う患者のヒト脳組織を用いたオートラジオグラフィーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、一般式Ia、Ib、IIaまたはIIb
【化1】
で表される化合物に関する。
【0013】
、XおよびXは、CR、NおよびNRから独立して選択され、但し、X、XおよびXのうちの少なくとも2つは、NまたはNRである。NおよびNRは、原子価が許す場合に存在し、すなわち、Nは、=X-、=X-または=X-位にのみ存在でき、NRは、-X-または-X-位にのみ存在できることが理解される。
【0014】
【化2】
の例としては、
【化3】
が挙げられる。
【0015】
【化4】
の例としては、
【化5】
が挙げられる。
【0016】
好ましい実施形態において、
【化6】

【化7】
(より好ましくは、
【化8】
)であるか、または
【化9】

【化10】
(より好ましくは、
【化11】
)である。
【0017】
、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYは、CRおよびNから独立して選択され、但し、Y、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNである。
【0018】
好ましい実施形態において、式IaまたはIb中、Y、Y、Y、Y、YおよびYは、CRおよびNから独立して選択され、但し、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つは1つはNである。より好ましい実施形態において、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの1つ、2つまたは3つはNであり、さらにより好ましくはY、Y、Y、Y、YおよびYのうちの1つまたは2つはNであり、さらにより好ましくはY、Y、Y、Y、YおよびYのうちの1つはNである。好ましい実施形態において、YはNである。
【0019】
好ましい実施形態において、式IaまたはIb中、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNである。さらに好ましい実施形態において、式IaまたはIb中、YはNであり、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNである。
【0020】
好ましい実施形態において、式IaまたはIb中、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNであり、他のY、Y、Y、Y、YおよびYはCR(例えばCH)である。さらに好ましい実施形態において、式IaまたはIb中、YはNであり、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNであり、他のY、Y、Y、YおよびYはCR(例えばCH)である。
【0021】
好ましい実施形態において、式IaまたはIb中、YはNであり、他のY、Y、Y、YおよびYはCRであり、より好ましくはYはNであり、Y、Y、Y、YおよびYはCHである。
【0022】
好ましい実施形態において、式IIaまたはIIb中、Y、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYは、CRおよびNから独立して選択され、但し、Y、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNである。より好ましい実施形態において、Y、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの1つ、2つまたは3つはNであり、さらにより好ましくはY、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの1つまたは2つはNであり、さらにより好ましくはY、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの1つはNである。好ましい実施形態において、YはNである。
【0023】
好ましい実施形態において、式IIaまたはIIb中、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNである。好ましい実施形態において、式IIaまたはIIb中、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNである。さらに好ましい実施形態において、式IIaまたはIIb中、YはNであり、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNである。
【0024】
好ましい実施形態において、式IIaまたはIIb中、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNであり、他のY、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYはCR(例えばCH)である。好ましい実施形態において、式IIaまたはIIb中、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNであり、他のY、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYはCR(例えばCH)である。さらに好ましい実施形態において、式IIaまたはIIb中、YはNであり、Y、Y、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNであり、他のY、Y、Y、Y、Y、YおよびYはCR(例えばCH)である。好ましい実施形態において、式IIaまたはIIb中、YはNであり、Y、Y、YおよびYのうちの少なくとも1つはNであり、他のY、Y、Y、Y、Y、YおよびYはCR(例えばCH)である。
【0025】
好ましい実施形態において、式IIaまたはIIb中、YはNであり、他のY、Y、Y、Y、Y、YおよびYはCRであり、より好ましくは、YはNであり、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYはCHである。
【0026】
、Y、Y、Y、Y、Y、YおよびYとしての1つまたは複数の窒素原子の導入は、α-シヌクレインへの結合の選択性を強力に高め、したがってα-シヌクレイン凝集と関係がある対応する障害、例えばパーキンソン病、レビー小体型認知症および多系統萎縮症が、他のタンパク質の凝集による障害、例えば主にAβおよびタウが凝集するアルツハイマー病と区別できることが、驚くべきことに見出された。さらに、信号対雑音比が改善される。
【0027】
は、水素、C1~4アルキルおよび-(CH)-O-P(=O)(OR)(OR)から選択され、C1~4アルキルは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得る。好ましい実施形態において、Rは、水素、メチルまたは2-フルオロエチルである。存在する場合、-(CH)-O-P(=O)(OR)(OR)は、XまたはXに結合することが好ましい。
【0028】
Rは水素またはカチオンである。カチオンは、薬学的に許容される任意のカチオンであってよい。好ましくは、カチオンは一価カチオンである。例としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、ならびにプロトン化形態のエタノールアミン、コリン、リジン、メグルミン、ピペラジンおよびトロメタミンがある。好ましくは、カチオンはナトリウムである。本発明の化合物において、Rはいずれも水素であり得るか、Rはいずれもカチオン(同じまたは異なるカチオン)であり得るか、または一方のRが水素であり得、他方がカチオンであり得る。好ましくは、Rはいずれもナトリウムである。二価カチオン、例えばCa2+、Mg2+およびZn2+、または三価カチオン、例えばAl3+は、得られる塩の水溶性が低いため、可能であるが、好ましくはない。Rが-(CH)-O-P(=O)(OR)(OR)である化合物およびその合成は、参照により本明細書に組み込まれるWO2017/102893に記載される。
【0029】
は、水素、ハロゲンおよびC1~4アルキルから独立して選択され、C1~4アルキルは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得る。好ましい実施形態において、Rは水素である。
【0030】
は、水素、ハロゲン、C1~4アルキル、OHおよびC1~4アルコキシであり、C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得る。好ましい実施形態において、Rは水素またはフッ素である。さらにより好ましくは、Rは水素である。
【0031】
およびRは、HおよびC1~4アルキルから独立して選択され、C1~4アルキルは、1つもしくは複数のハロゲンで任意選択で置換され得るか、またはRおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、4~6員の飽和複素環を形成し、これは、RおよびRが結合する窒素原子に加えて、OおよびNから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含有し、4~6員の飽和複素環は、1つまたは複数のRで任意選択で置換され得る。
【0032】
一実施形態において、RおよびRは、HおよびC1~4アルキルから独立して選択され、C1~4アルキルは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得る。好ましくは、RおよびRは、HおよびC1~4アルキルから独立して選択される。好ましい実施形態において、RおよびRのうちの少なくとも1つは、C1~4アルキルであり、C1~4アルキルは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得る。より好ましい実施形態において、Rは水素であり、RはC1~4アルキルであり、C1~4アルキルは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得る。より好ましい実施形態において、RおよびRのうちの少なくとも1つは、C1~4アルキルである。より好ましい実施形態において、Rは水素であり、RはC1~4アルキルである。
【0033】
さらなる実施形態において、RおよびRは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、4~6員の飽和複素環を形成し、これは、RおよびRが結合する窒素原子に加えて、OおよびNから選択される1つまたは複数の(例えば1つの)ヘテロ原子を任意選択で含有し、4~6員の飽和複素環は、1つまたは複数のRで任意選択で置換され得る。好ましい実施形態において、4~6員の飽和複素環は、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルおよびピペラジニルから選択され、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルおよびピペラジニルは、1つまたは複数のRで任意選択で置換され得る。より好ましくは、4~6員の飽和複素環は、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニルおよびピペラジニルから選択され、ピペラジニルのN原子は、Rで任意選択で置換され得る。
【0034】
は、ハロゲン、C1~4アルキル、OHおよびC1~4アルコキシから独立して選択され、C1~4アルキルおよびC1~4アルコキシは、1つまたは複数のハロゲンで任意選択で置換され得、好ましくは、RはC1~4アルキルまたはフッ素である。
【0035】
Halはハロゲン、例えばBr、ClおよびFであり、好ましくはHalはBrまたはFである。
【0036】
mは、Y、Y、YおよびYを含有する環の水素以外のR基の数である。mは、0~m最大の整数であり、m最大は、Y、Y、YおよびYを含有する環の炭素原子の数である。好ましくは、mは0である。
【0037】
nは、Y、Y、YおよびYを含有する環の水素以外のR基の数である(式IIaおよびIIb)。nは、0~n最大の整数であり、nmaxは、Y、Y、YおよびYを含有する環の炭素原子の数である。好ましくは、nは0である。
【0038】
pは、YおよびYを含有する環中の水素以外のR基の数である(式IaおよびIb)。pは、0~p最大の整数であり、p最大は、YおよびYを含有する環の炭素原子の数である。好ましくは、pは0である。
【0039】
本発明の化合物はまた、そのプロドラッグ、溶媒和物または塩の形態で存在してもよい。
【0040】
本発明の化合物は塩を形成し、これも本発明の範囲内である。別段の指示がない限り、本明細書において、本発明の化合物への言及は、その塩への言及を含むことが理解される。薬学的に許容される(すなわち、非毒性の生理学的に許容される)塩が好ましいが、他の塩も、例えば調製中に用いられ得る単離または精製のステップでまたはインビトロ方法で有用である。本発明の化合物の塩は、例えば化合物をある量、例えば等量の酸と、媒体、例えば塩が沈殿する媒体中でまたは水性媒体中で反応させ、次いで凍結乾燥させることにより形成され得る。
【0041】
塩基部分を含有する化合物は、様々な有機および無機酸との塩を形成し得る。例示的な酸付加塩としては、酢酸塩(例えば酢酸またはトリハロ酢酸、例えばトリフルオロ酢酸により形成されるもの)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩(例えば2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(例えば2-ナフタレンスルホン酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩(例えば3-フェニルプロピオン酸塩)、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(例えば硫酸により形成されるもの)、スルホン酸塩(例えば本明細書に言及されるもの)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、例えばトシル酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。
【0042】
本発明の化合物のプロドラッグおよび溶媒和物も本明細書において企図される。本明細書で使用する用語「プロドラッグ」は、対象に投与すると、代謝または化学的過程による化学変換を受けて、本発明の化合物またはその塩および/もしくは溶媒和物を生成する化合物を意味する。
【0043】
本発明の化合物の溶媒和物としては、例えば水和物が挙げられる。
【0044】
鏡像異性形態およびジアステレオ異性形態を含む、本発明の化合物のすべての立体異性体(例えば様々な置換基上の不斉炭素により存在し得るもの)は、本発明の範囲内で企図される。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば他の異性体(例えば特定の活性を有する純粋または実質的に純粋な光学異性体)を実質的に含まない場合も、あるいは例えばラセミ体として、またはすべての他のもしくは選択された他の立体異性体と混合される場合もある。本発明の化合物のキラル中心は、IUPAC 1974年勧告により定義されるSまたはR立体配置を有し得る。
【0045】
ラセミ形態は、物理的方法、例えば分別結晶化、ジアステレオ異性誘導体の分離もしくは結晶化、またはキラルカラムクロマトグラフィーによる分離によって分割され得る。個々の光学異性体は、光学的に活性な酸との塩の形成、次いで結晶化を含むが、これに限定されない任意の好適な方法により、ラセミ体から得られ得る。
【0046】
本発明の化合物のすべての立体配置異性体は、混合物または純粋もしくは実質的に純粋な形態のいずれかで企図される。本発明の化合物の定義は、シス(Z)とトランス(E)の両方のアルケン異性体、ならびに環状炭化水素または複素環のシスおよびトランス異性体を包含する。
【0047】
特許請求される化合物の重水素化バージョンも提供され得る。重水素化が存在する位置は、特に限定されないが、例えばRおよびRのC1~4アルキルにあり得る。
【0048】
本明細書を通じて、基およびその置換基は、安定な部分および化合物を提供するように選択され得る。
【0049】
本発明の化合物は、任意選択で薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、診断または医薬組成物の形態で提供され得る。
【0050】
本発明に従って、用語「診断組成物」は、α-シヌクレイン凝集と関係がある疾患の根底にある凝集したα-シヌクレインの存在の決定のための組成物に関する。
【0051】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は、検出可能であるか、または検出可能に標識されている。本発明に従って、化合物の存在が、従来の技術、例えばNMR分光法、単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、光検出、陽電子放出断層撮影(PET)、電子顕微鏡法、磁気共鳴イメージング(MRI)、分光法、クロマトグラフィー、ELISAアッセイ、放射性放出の検出により、好ましくはPET、シンチレーションカウンティングまたはガンマカウンティングにより、より好ましくはPETにより監視できる場合、化合物は検出可能であるか、または検出可能に標識されていることが理解される。
【0052】
本発明の化合物が、凝集したα-シヌクレインをイメージングするためのプローブとして用いられる場合、これらは標識されている必要がある。標識の特定の性質は、イメージングに用いられる方法に依存する。典型的には、陽電子を放出し(PET)、短い半減期を有する放射性標識、例えば18F、11C、125I、123I、131I、77Brおよび76Br、特に18Fおよび11Cが有用である。その短い半減期により、本発明の標識化合物は、試験に用いられる直前に調製される必要がある。したがって、本発明の診断組成物はまた、反応させて本発明の所望の化合物を形成する、本発明の化合物の少なくとも2つの前駆体からなるキットの形態で提供されてもよい。
【0053】
当業者は、検出可能な標識を本発明の化合物に結合させることができる方法を考案することができるであろう。以下のスキームは、例示的な例として利用され得る。
【0054】
18Fによる標識
2-[18F]フルオロエチルトシレートは、化合物23から出発する化合物21および化合物22の調製のためのWO2010/000372、32頁、スキームAに記載されるように、窒素、酸素および硫黄求核剤を含有する化合物のフルオロエチル化を介して18Fを取り込むのに有用な前駆体である。化合物AおよびBは、同じ方式で調製され得る。別の方法としては、CのDへの変換(J.Med.Chem.2013、56、4568~4579、スキーム2を参照のこと)またはスキーム1における化合物24の化合物12への変換について示されるように、好適な脱離基の直接的な求核置換が挙げられる。
【化12】
【0055】
11Cによる標識
11Cにより標識された本発明の化合物は、化合物23から出発する化合物27および化合物28の調製のためのWO2010/000372、32頁、スキームBに記載されるように、[11C]Melによる好適な前駆体の直接求核アルキル化により調製され得る。本発明の化合物1は、化合物2から出発して類似的に合成され得る。同じ方式で、化合物18および化合物19は、スキーム2に示されるように化合物9から出発して合成され得る。代替的には、比活性の損失なしに温和な条件下で[11C]ヨウ化メチルを[11C]ホルムアルデヒドに変換することによる、ジメチルホルムアミド中での溶液としての[11C]ホルムアルデヒドの生成の簡単かつ利用可能な方法(J.M.Hookerら、Angew.Chem.Int.Ed.2008、47、5989~5992)が、還元的アミノ化を介した化合物2の化合物1への変換に用いられてもよい。
【化13】
【0056】
本発明は、凝集したα-シヌクレインの沈着物をイメージングする方法であって、
(i)本発明の検出可能に標識された化合物を含む検出可能な量の組成物を対象に導入するステップと、
(ii)化合物が凝集したα-シヌクレインと会合するのに十分な時間をおくステップと、
(iii)凝集したα-シヌクレインと会合した化合物を検出するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0057】
検出可能に標識された化合物を含む組成物は、下記に記載される任意の投与経路、例えば経口または非経口などにより対象に導入され得る。標識化合物が患者に導入され得、化合物が凝集したα-シヌクレインと会合するようになるのに十分な期間の後、標識化合物は、患者の内部で非侵襲的に検出される。代替的には、標識化合物が患者に導入され得、化合物が凝集したα-シヌクレインと会合するようになるのに十分な時間がおかれ、次に患者の組織試料が採取され、標識化合物は、患者から離れた組織内で検出される。組織試料はまた、標識化合物を組織試料に導入する前に患者から除去されてもよい。化合物が凝集したα-シヌクレインに結合するようになるのに十分な時間をおいた後、化合物は検出され得る。
【0058】
凝集したα-シヌクレインのイメージングはまた、凝集したα-シヌクレインの量が決定され得るように定量的に実行されてもよい。
【0059】
本発明はさらに、α-シヌクレインの凝集と関係がある疾患の治療または予防における使用のための、本発明の化合物、およびそのプロドラッグ、溶媒和物または塩に関する。
【0060】
さらなる実施形態は、α-シヌクレインの凝集と関係がある疾患を治療または予防するための医薬組成物の調製のための本発明の化合物の使用、およびα-シヌクレインの凝集と関係がある疾患を治療または予防する方法であって、治療有効量の本発明の化合物をそれを必要とする患者に投与するステップを含む、方法である。これは、下記に記載される「医薬組成物」としての化合物の適用を含む。
【0061】
本発明に従って用語「凝集」は、α-シヌクレインのオリゴマまたは多量体複合体の形成を指し、これは炭水化物、核酸、脂質および/または金属イオンのような追加の生体分子の複合体への組込みを伴い得る。
【0062】
本明細書で使用する用語「α-シヌクレインの凝集と関係がある疾患」は、凝集したα-シヌクレインの存在を特徴とする疾患を指す。このような凝集したα-シヌクレインは、特定の組織に、より好ましくは神経組織または脳組織に沈着物を形成し得る。凝集の程度は、特定の疾患に依存する。
【0063】
本発明に従って、用語「医薬組成物」は、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト患者への投与のための組成物に関する。本発明の医薬組成物は、上に列挙した化合物、ならびに本発明の化合物の特性を変化させ、それにより例えばその機能を安定化、調節および/または活性化することができる任意選択のさらなる分子を含む。組成物は、固体、液体または気体の形態であってよく、とりわけ粉末、錠剤、溶液またはエアロゾルの形態であってよい。本発明の医薬組成物は、任意選択でおよびさらに、薬学的に許容される担体または賦形剤を含み得る。好適な医薬担体および賦形剤の例は当技術分野で周知であり、これらとしては、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、様々な種類の湿潤剤、滅菌溶液、DMSOを含む有機溶媒などが挙げられる。このような担体を含む組成物は、周知の従来の方法により製剤化され得る。
【0064】
医薬組成物は、個々の患者の臨床状態、医薬組成物の送達部位、投与方法、投与スケジューリングおよび実務者に公知の他の要因を考慮して、良好な医療行為と一致したやり方で製剤化および服用される。したがって、本明細書の目的のための医薬組成物の「有効量」は、このような考慮により決定される。当業者は、個人に投与される医薬組成物の有効量が、とりわけ化合物の性質に依存することを公知である。
【0065】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、非経口、槽内、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、滴剤または経皮パッチによるような)、口腔内または経口もしくは経鼻スプレーとして投与され得る。好ましくは、これらは、診断のためのPETトレーサーとして用いられる場合は静脈内、疾患を治療または予防するために用いられる場合は経口投与される。
【0066】
「薬学的に許容される担体」は、非毒性の固体、半固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、カプセル化物質、または任意の種類の製剤補助剤を意味する。
【0067】
本明細書で使用する用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内への注射および注入を含む、投与様式を指す。
【0068】
治療目的で、医薬組成物はまた、徐放系により好適に投与されてもよい。徐放性組成物の好適な例としては、成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態の半透過性ポリマーマトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58481)、L-グルタミン酸およびγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidman,U.ら、Biopolymers 22:547~556(1983))、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(R.Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15:167~277(1981)およびR.Langer、Chem.Tech.12:98~105(1982))、エチレンビニルアセテート(R.Langerら、同文献)またはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133988)が挙げられる。徐放性医薬組成物はまた、リポソームに封入された化合物を含んでいてもよい。医薬組成物を含有するリポソームは、それ自体公知の方法により調製される:DE3218121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:3688~3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)77:4030~4034(1980);EP52322;EP36676;EP88046;EP143949;EP142641;特開83-118008;米国特許第4,485,045号および第4,544,545号;ならびにEP102324。通常、リポソームは、小さな(約200~800オングストローム)ユニラメラ型であり、脂質含有量は約30mol%コレステロールを超え、選択された割合は、最適な治療法のために調整される。
【0069】
非経口投与のために、医薬組成物は、一般に、これを所望の程度の純度で、単位投与量の注射可能な形態(溶液、懸濁液またはエマルジョン)で、薬学的に許容される担体、すなわち、使用した投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、製剤の他の成分と適合するものと混合することにより製剤化される。
【0070】
一般に、製剤は、医薬組成物の成分を、液体担体もしくは微粉化した固体担体またはその両方と均一且つ密接に接触させることにより調製される。次に、必要な場合、生成物は、所望の製剤に成形される。好ましくは、担体は非経口担体、より好ましくは、レシピエントの血液と等張性である溶液である。このような担体ビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられる。非水性ビヒクル、例えば固定油およびオレイン酸エチル、ならびにリポソームも、本明細書において有用である。担体は、好適には、微量の添加剤、例えば等張性および化学的安定性を高める物質を含有する。このような物質は、使用した投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、これらとしては、緩衝液、例えばリン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはその塩;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸;低分子量(約10残基未満の)(ポリ)ペプチド、例えばポリアルギニンまたはトリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニン;セルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール;対イオン、例えばナトリウム;ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート、ポロキサマーまたはPEGが挙げられる。
【0071】
治療的投与に用いられる医薬組成物の成分は、滅菌でなければならない。滅菌性は、滅菌濾過膜(例えば0.2μmの膜)を通す濾過により容易に達成される。医薬組成物の治療成分は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静注用バッグまたはバイアル内に入れられる。
【0072】
医薬組成物の成分は、通常、単位または複数用量容器、例えば密封アンプルまたはバイアルに、水溶液としてまたは再構成のための凍結乾燥製剤として貯蔵される。凍結乾燥製剤の例として、10mlのバイアルに、5mlの滅菌濾過した1%(w/v)水溶液が充填され、得られた混合物が凍結乾燥される。輸液は、注射用静菌水を用いて凍結乾燥した化合物を再構成することにより調製される。
【0073】
本発明はさらに、α-シヌクレイン凝集と関係がある疾患を治療または予防する方法であって、治療有効量の本発明の化合物をそれを必要とする患者に投与するステップを含む、方法に関する。
【0074】
本明細書で使用する用語「治療有効量」は、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。本発明において、所望の生物学的応答は、α-シヌクレイン凝集の阻害、および/または組織に存在する凝集したα-シヌクレインの量の減少である。
【0075】
本発明はまた、α-シヌクレイン凝集をインビトロまたはエクスビボで阻害するための上で定義した化合物の使用に関する。
【0076】
α-シヌクレイン凝集と関係がある疾患は特に限定されず、典型的にはパーキンソン病、レビー小体型認知症および多系統萎縮症から選択される。
【0077】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するものである。しかし、これらは、限定として解釈されるべきではない。
【実施例
【0078】
実施例1:合成および試験
化学合成手順
以下の方法は、本発明の化合物の調製および例示的な実施例に関する詳細を提示する。本発明の化合物は、公知または市販の出発物質および試薬から有機合成の技術分野の当業者により調製され得る。
【0079】
すべての出発物質および溶媒和物は商用等級であり、別段明記されない限り、受け取った状態で使用した。
【0080】
薄層クロマトグラフィー(TLC)を、Macherey-Nagelプレコートシート、0.25mm ALUGRAM(登録商標)SIL G/UV254プレート、UVによる検出を用いて、および/または10重量%のエタノール性リンモリブデン酸試薬で焦がし、次いで200℃で加熱することにより行った。
【0081】
フラッシュカラムクロマトグラフィーを、Merckシリカゲル60(0.063~0.100mm)を用いて実施した。
【0082】
分析用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、Waters996フォトダイオードアレイ検出器を備えたWaters HPLCシステムを用いて実施した。すべての分離は、水中の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)(v/v)およびアセトニトリル中の0.1%TFAの移動相を伴った。HPLCを、流速1mL・分-1で逆相(RP)カラムEurospher RP18、100Å、5μm、250×4.6mmを用いて実施した。
【0083】
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)および液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)の分析を、上記のWaters HPLC装置に連結したWaters Micromass ZQ4000質量分析計を用いて得た。
【0084】
NMRスペクトルを、TXI HCN z勾配プローブを備えた400MHz Bruker Avance分光計(Bruker AG、Rheinstetten、Germany)を用いて記録した。すべてのスペクトルをTOPSPIN3.1(Bruker AG、Karlsruhe、Germany)を用いて処理した。H NMR化学シフト(δ)を、内部標準としてCHCl、DMSO-d5およびTFA-d1に対する百分率(ppm)で報告する。データを以下の通り報告する:化学シフト、多重度(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、qi=五重線、dd=二重線の二重線、dt=三重線の二重線、b=ブロード、m=多重線)、カップリング定数(J、Hzで示す)、積分。13C NMR化学シフト(δ)を、内部標準としてCDCl、DMSO-d6およびTFA-d1に対する百分率(ppm)で報告する。以下の実験を使用して、化合物の共鳴を記録した:H-1D、13C-1D NMRスペクトルおよび13C-APT(1/145秒の単一のJ-展開時間での付属プロトン試験、スペクトルを、四級基およびメチレン基が正の符号を有し、メチル基およびメチン基が負の符号を有するように処理した)。HおよびAPTスペクトルにおける共鳴の重なりを分解して、検出不可能な共鳴を復元するために、2D-[13C,H]-HSQC(異核種単一量子コヒーレンス)、2D-[13C,H]-HMBC(異核多結合相関)および2D-NOESYをいくつかの化合物について記録した。
【0085】
選択された化合物(化合物1、化合物2、化合物12、化合物18)を、99%トリチウムガス/Kerrの触媒によるH/T交換標識を用いたRC TRITEC AG、Teufen、Switzerlandによる結合アッセイのためにトリチウム標識した。化合物を、185MBqパッケージ、濃度37MBq/mLおよび1.1~2.3GBq/mmolの範囲の比活性でエタノール溶液として供給した。
【0086】
方法A:1H-ピラゾールの合成
当業者は、下記に示した化合物11Aおよび化合物11Bが、同じ化合物の2つの互変異性型であることを認識するであろう。このような互変異性型はすべて、本発明の一部と考えられる。例示として、例えば下記の化合物11について示されたピラゾール部分の互変異性型はすべて、本発明に含まれる。関連した方式で、当業者は、本明細書に含有される化合物名が命名法の慣習に基づくものであり、互変異性体の立体配置が下記の化合物11Aに関するように示されることを認識するであろう。したがって、1,3-ベンゾジオキソール置換基は3位にある。代替的な命名法の慣習は、下記の互変異性化合物11Bに基づくものであり、該慣習において、1,3-ベンゾジオキソール置換基は5位にある。
【化14】
【0087】
例示的な例:2-[3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1H-ピラゾール-5-イル]-6-フルオロピリジン化合物11
【化15】
水素化ナトリウム(FW24.00、油中60%、3.9mmol、156mg)を、DMSO(7.5mL)およびTHF(1.9mL)中の1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エタノン(FW164.16、492mg、3.00mmol)およびメチル6-フルオロピリジン-2-カルボキシレート(FW155.13、605mg、3.9mmol)の溶液に添加し、反応混合物を20℃で15時間撹拌した。反応混合物をAcOH(450μL)を含有する60mLの氷水に注入した。混合物を1時間撹拌した。得られた沈殿物を濾過除去し、水(10mL)、ヘキサン:EtOH=5:1(10mL)、ヘキサン(10mL)で洗浄し、風乾して、粗中間体1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-3-(6-フルオロピリジン-2-イル)プロパン-1,3-ジオン(594mg)を黄色固体として得た。EtOH(20mL)中のこの粗中間体の懸濁液に、ヒドラジン水和物(146μL、150mg、3mmol)を添加した。反応混合物を70℃で5時間撹拌し、冷却し、真空濃縮した。残渣をMeOH(10mL)に懸濁し、5分間撹拌しながら煮沸し、冷却し、濾過除去し、MeOH(10mL)で洗浄し、20℃で15時間高真空乾燥して、純粋な生成化合物11(471mg、1.66mmol、2ステップにわたって55%)を白色固体として得た。
【0088】
方法B:1H-ピラゾールの合成
例示的な例:4-[3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1H-ピラゾール-5-イル]-2-ブロモピリジン化合物9
【化16】
乾燥THF(5mL)中のカリウムtert-ブトキシド(FW112.21、281mg、2.5mmol)の溶液を、乾燥THF(5mL)中の1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エタノン(FW164.16、328mg、2mmol)およびメチル2-ブロモピリジン-4-カルボキシレート(FW216.03、518mg、2.4mmol)の撹拌溶液に窒素下で添加した。反応混合物を20℃で15時間撹拌した。20μLのアリコートをサンプリングし、1Mリン酸緩衝液pH7でクエンチし、EtOAcで抽出し、TLCにより分析した。ケトンの完全な変換が観察された。混合物を1Mリン酸緩衝液pH7(15mL)および氷水(15mL)に注入し、0℃で30分間撹拌した。得られた黄色固体を濾過除去し、水(5×10mL)で洗浄し、風乾して、656mg(1.88mmol、94%)の粗中間体1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-3-(2-ブロモピリジン-4-イル)プロパン-1,3-ジオンを得、これを精製せずに次のステップに使用した。THF(10mL)中のこの中間体およびヒドラジン一水和物(FW50.06、d1.03;274μL、282mg、5.64mmol)の混合物を50℃で15時間撹拌した。冷却した混合物を水(40mL)に注入し、0℃で30分間撹拌した。得られた沈殿物を濾過除去し、水で洗浄し、風乾した。粗生成物をn-BuOH(10mL)およびDMF(1mL)から結晶化して、純粋な生成化合物9(458mg、1.33mmol、2ステップにわたって67%)を白色粉末として得た。
【0089】
方法C:Boc保護基の除去
例示的な例:4-[5-(2-ブロモピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]アニリン化合物7
【化17】
トリフルオロ酢酸(2mL、2.96g、26mmol)を、方法Bに従ってtert-ブチルN-(4-アセチルフェニル)カルバメートおよびメチル2-ブロモピリジン-4-カルボキシレートから調製した粗tert-ブチル{4-[5-(2-ブロモピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]フェニル}カルバメート(FW415.28、865mg、2.08mmol)の懸濁液に添加した。混合物を室温で15時間撹拌し、真空濃縮した。1Mリン酸緩衝液pH7(20mL)を添加し、得られた沈殿物を濾過除去し、水(2×10mL)で洗浄し、風乾して、543mg(1.72mmol、3ステップにわたって69%)の所望の生成物を黄色オレンジ色固体として得た。
【0090】
方法D:1H-ピラゾールの合成
例示的な例:4-[3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1H-ピラゾール-5-イル]-2-フルオロピリジン化合物12
【化18】
iPrNEt(1.79mL、1.33g、10.26mmol)を、CHCl(35mL)中の1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エタノン(561mg、3.42mmol)およびMgBr・EtO(1.56g、6.04mmol)の撹拌混合物に添加した。得られた懸濁液を5分間撹拌し、次にCHCl(7mL)中のペンタフルオロフェニル2-フルオロピリジン-4-カルボキシレート(1.37g、4.45mmol)を滴下添加した。反応混合物を48時間撹拌した。次に、1N水性HCl(20mL)を添加し、5分間撹拌を続けた。水層をCHCl(20mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を乾燥(MgSO)して、真空濃縮した、残渣を、EtO(10mL)で粉砕し、濾過した。固体をEtOで洗浄し、風乾して、粗生成物(1.14g、オレンジ色固体)を得た。粗生成物を、EtOAc(8mL)およびヘキサン(4mL)から再結晶化して、純粋な中間体1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-3-(2-フルオロピリジン-4-イル)プロパン-1,3-ジオン(900mg、3.13mmol、92%)をオレンジ色固体として得た。この中間体をTHF(20mL)に懸濁し、ヒドラジン一水和物(292μL、300mg、6mmol)を添加した。反応混合物を70℃で5時間撹拌し、冷却し、真空濃縮した。残渣をEtO(10mL)に懸濁し、5分間撹拌しながら煮沸し、冷却し、濾過除去し、EtO(2×10mL)で洗浄し、20℃で15時間高真空乾燥して、生成化合物12(722mg、2.55mmol、2ステップにわたって76%)を白色固体として得た。
【0091】
方法E:ペンタフルオロフェニルエステルの合成
例示的な例:ペンタフルオロフェニル2-フルオロピリジン-4-カルボキシレート化合物59
【化19】
DCC(FW206.33、2.27g、11mmol)を、1,4-ジオキサン(40mL)中の2-フルオロピリジン-4-カルボン酸(1.41g、10mmol)およびペンタフルオロフェノール(1.84g、10mmol)の撹拌懸濁液に添加した。15時間撹拌を続け、その時点までに無色の沈殿物が形成された。混合物をCelite(登録商標)を通して濾過し、蒸発させて、半固体を得た。シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより、エステル化合物59(2.21g、7.2mmol、72%)を純粋な無色の油として得た。
【0092】
方法F:1H-ピラゾールの合成
例示的な例:6-[3-(3-ブロモフェニル)-1H-ピラゾール-5-イル]-1,3-ジオキソロ[4,5-c]ピリジン化合物20
【化20】
【0093】
ステップ1
メタノール(0.7mL)中の1,3-ジオキソロ[4,5-c]ピリジン-6-カルボキシアルデヒド(WO/2019/208509)(35mg、0.23mmol)および1-(3-ブロモフェニル)エタノン(46mg、0.23mmol)の懸濁液に、Ba(OH) 8HO(5mg)およびNaOH(0.5mg)を添加し、得られた混合物を室温(RT)で一晩撹拌した。メタノールの真空蒸発後、残渣を水(5mL)中で粉砕し、固体を濾過により回収し、冷メタノール(0.5mL)で洗浄し、乾燥して、中間体化合物1-(3-ブロモフェニル)-3-([1,3]ジオキソロ[4,5-c]ピリジン-6-イル)プロパ-2-エン-1-オン(67mg、88%)を白色固体として得た。
【0094】
ステップ2
DMSO(0.8mL)中の1-(3-ブロモフェニル)-3-([1,3]ジオキソロ[4,5-c]ピリジン-6-イル)プロパ-2-エン-1-オン(67mg、0.2mmol)の勢いよく撹拌した懸濁液に、H(30%、45mg、0.4mmol)の水溶液を添加し、次いで水性NaOH(10%、16μL、0.04mmol)を滴下添加した。黄色混合物をRTで1.5時間撹拌し、冷リン酸緩衝液(20mL、0.1M、pH7)に注入した。油性沈殿物を酢酸エチル(215mL)で抽出し、合わせた有機画分を、NaSOで乾燥し、真空濃縮して、残渣をトルエン(0.8mL)に再懸濁した。トルエン中の懸濁液をヒドラジン水和物(35mg、0.7mmol)およびPTSA水和物(5mg)で処理し、混合物を還流下で1.5時間乾燥した。冷却した後、リン酸緩衝液(0.3M、20mL)を添加し、生成物を酢酸エチル(220mL)で抽出した。合わせた有機画分を塩水(5mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(15g、シリカゲル63~100、CHCl/MeOH=100/1)で精製して、黄色固体を得、これをEtO(1mL)で洗浄して、化合物20(25mg、36%)を白色固体として得た。
【0095】
方法G:1H-ピラゾールの合成
例示的な例:4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1H-イミダゾール-2-イル]-2-ブロモピリジン化合物48
【化21】
DCM(5mL)中の1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エタノン(138mg、0.84mmol)、MgBr・EtO(542mg、2.1mmol)の混合物をDIPEA(323mg、426μL、2.5mmol)で処理し、RTで10分間撹拌した。次に、乾燥DCM(5mL)中の3,6-ジクロロピリダジン-4-カルボン酸(203mg、1.05mmol)、ベンゾトリアゾール(125mg、1.05mmol)およびDCC(216mg、1.05mmol)を25℃で3時間撹拌することにより別に調製した1H-ベンゾトリアゾール-1-イル(3,6-ジクロロピリダジン-4-イル)メタノンの粗混合物を、5分間にわたって滴下添加した。得られた混合物を25℃で12時間撹拌し、次に水性0.5M HCl(2mL)で処理し、25℃でさらに10分間撹拌した。水(20mL)の添加後、混合物をDCM(215mL)で抽出した。合わせた有機画分を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、中間体1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-3-(3,6-ジクロロピリダジン-4-イル)プロパン-1,3-ジオン(190mg、67%)をオレンジ色固体として得、これをさらに精製せずに次のステップで使用した。この中間体をTHF(4mL)に懸濁して、ヒドラジン一水和物(40mg、0.8mmol)を添加した。反応混合物を40℃で一晩撹拌し、冷却し、真空濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル63~100、20g、クロロホルム/メタノール=100/1)により精製して、化合物48(100mg、2ステップにわたって36%)を薄黄色固体として得た。
【0096】
方法H:1H-イミダゾールの合成
例示的な例:4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1H-イミダゾール-2-イル]-2-ブロモピリジン化合物33
【化22】
【0097】
ステップ1
DMF(6mL)中の1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-ブロモエタノン(729mg、3mmol)、2-ブロモピリジン-4-カルボン酸(606mg、3mmol)およびKCO(414mg、3mmol)の懸濁液を、55~60℃で6時間撹拌した。冷却した後、混合物を水(60mL)に注入し、10分間撹拌し、得られた沈殿物を濾過により回収し、フィルター上で水(20mL)で洗浄し、乾燥して、中間体化合物2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-オキソエチル2-ブロモピリジン-4-カルボキシレート(899mg、87%)を得、これをさらに精製せずに次のステップで使用した。
【0098】
ステップ2
トルエン(7mL)中の中間体化合物2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-オキソエチル2-ブロモピリジン-4-カルボキシレート(364mg、1mmol)およびAcONH(924mg、12mmol)の懸濁液を、4時間集中的に撹拌しながら100℃で加熱した。冷却した後、反応混合物を、リン酸緩衝液(50mL、0.25M、pH7)で処理し、酢酸エチル(250mL)で抽出した。合わせた有機画分を、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル63~100、30g、CHCl/MeOH=100/1→100/3)により精製した。精製生成物を、水性エタノール(90%)から再結晶化して、化合物33(140mg、41%)を淡固体として得た。
【0099】
方法I:1H-1,2,4-トリアゾールの合成
例示的な例:4-[3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル]-2-ブロモピリジン化合物30
【化23】
n-BuOH(2mL)中のt-BuOK(84mg、0.75mmol)の溶液に、ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-カルボキサミジン塩酸塩(100mg、0.5mmol)を0℃で添加し、混合物をRTで20分間撹拌した。2-ブロモイソニコチン酸ヒドラジド(108mg、0.5mmol)の添加後、黄色懸濁液を85℃で3時間撹拌した。室温に冷却した後、エタノール(4mL)を添加し、COを懸濁液に5分間バブリングした。溶媒を真空除去した後、残渣を水(10mL)中で粉砕し、得られた沈殿物を濾過により回収し、水(5mL)で洗浄し、乾燥して、化合物30(85mg、49%)を灰色固体として得た。
【0100】
方法J:1H-1,2,4-トリアゾールの合成
例示的な例:4-[3-(2-ブロモピリジン-4-イル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル]-N,N-ジメチルアニリン化合物44
【化24】
n-BuOH(2mL)中の2-ブロモイソニコチン酸ヒドラジド(151mg、0.7mmol)、4-(ジメチルアミノ)ベンゾニトリル(307mg、2.1mmol)およびKCO(48mg、0.5mmol)の混合物を145℃で8時間撹拌した。混合物を真空濃縮し、粗生成物を2回のカラムクロマトグラフィー(シリカゲル63~100、20g、CHCl/MeOH=100/1)および(シリカゲル63~100、20g、アセトン/ヘキサン=1/5)により精製して、化合物44(20mg、8%)をベージュ固体として得た。
【0101】
方法K:4-クロロ-1H-ピラゾールの合成
4-[3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4-クロロ-1H-ピラゾール-5-イル]-2-ブロモピリジン、化合物28
【化25】
水(3mL)中の化合物9(100mg、0.29mmol)およびNCS(80mg、0.6mmol)の懸濁液を70℃で16時間撹拌した。TLCは出発物質の消費を示した。RTに冷却した後、沈殿物を濾過により回収し、水(25mL)で洗浄し、エタノール(8mL)から再結晶化して、化合物28(52mg、47%)を灰色固体として得た。
【0102】
方法L:1-[4-(4-R-ピペラジン-1-イル)フェニル]エタノンの合成
例示的な例:1-{4-[4-(2-メトキシエチル)ピペラジン-1-イル]フェニル}エテノン
【化26】
DMF(5mL)中の1-[4-(ピペラジン-1-イル)フェニル]エタノン(408mg、2mmol)、1-ブロモ-2-メトキシエタン(417mg、3mmol)およびCsCO(1304mg、4mmol)の混合物を、25℃で一晩撹拌した。DMFの真空蒸発後、残渣を水(25mL)と酢酸エチル(35mL)とで分配し、水相を、酢酸エチル(25mL)で抽出し、合わせた有機画分を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(30gシリカゲル63~100、クロロホルム→クロロホルム/MeOH=100/2)により生成して、1-{4-[4-(2-メトキシエチル)ピペラジン-1-イル]フェニル}エテノン(525mg、99%)を薄黄色固体として得た。
【0103】
2-メトキシエチル2,6-ジブロモピリジン-4-カルボキシレートおよび2-メトキシエチル2,6-ジクロロピリジン-4-カルボキシレートを、公表されたプロトコル(Journal of Medicinal Chemistry(2012)、55、10564~10571)に従って調製した。
【0104】
tert-ブチル(4-アセチルフェニル)メチルカルバメート、tert-ブチル(4-アセチルフェニル)-N-()メチルカルバメート、tert-ブチル(4-アセチルフェニル)エチルカルバメートおよびtert-ブチル(4-アセチルフェニル)(2-フルオロエチル)カルバメートを、公表されたプロトコル(Organic Letters(2020)、22、5522~5527)に従って調製した。
【0105】
1-[4-(4-フルオロピペリジン-1-イル)フェニル]エタノンおよび1-[4-(3-フルオロアゼチジン-1-イル)フェニル]エタノンを、公表されたプロトコル(WO2011071570A1)に従って調製した。
【0106】
ペンタフルオロフェニル2-フルオロピリジン-4-カルボキシレートおよびペンタフルオロフェニル2-クロロピリジン-4-カルボキシレートを、方法Eに従って調製した。1-{4-[4-(2-メトキシエチル)ピペラジン-1-イル]フェニル}エテノンおよび1-{4-[4-(2-フルオロエチル)ピペラジン-1-イル]フェニル}エテノンを、方法Lに従って調製した。
【0107】
本発明の例示的な化合物を、表1および2に示す。表1は、特定の例示的な化合物の名称、構造式、IUPAC名、調製のための出発物質、合成方法および化学収率を示す。表2は、特定の例示的な化合物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)保持時間、HPLCに加えて低分解能質量分析を用いた分子量実測値、およびプロトン核磁気共鳴(H-NMR)を示す。
【0108】
【表1-1】
【0109】
【表1-2】
【0110】
【表1-3】
【0111】
【表1-4】
【0112】
【表1-5】
【0113】
【表1-6】
【0114】
【表2-1】
【0115】
【表2-2】
【0116】
【表2-3】
【0117】
【表2-4】
【0118】
【表2-5】
【0119】
実施例2:凝集したα-シヌクレイン、タウおよびAβによる結合研究
化合物の結合親和性および標的選択性を分析するために、2種類のインビトロ線維結合アッセイ:飽和アッセイおよび競合アッセイを使用した。
【0120】
1)線維の調製
α-シヌクレインおよびタウ46を、確立されたプロトコル(Nuscher Bら、J.Biol.Chem.、2004;279(21):21966~75)に従って大腸菌から精製し、Aβ1~42をrPeptide、Watkinsville、GA、USAから得た。線維を、絶えず撹拌して組換えタンパク質を凝集させることにより調製した。詳細には、50mMトリス、pH7.0+0.02%NaN中100mMのNaClと混合した70μMのα-シヌクレインを、1400rpm、37℃で96時間インキュベートした。10μMのタウ46を、0.03mg/mlのヘパリンと、50mMトリス、pH=7.0中で、1,000rpm、37℃で72時間インキュベートした。Aβ1~42を、20mM NaP、pH=8.0+0.2mM EDTA+0.02%NaNに溶解した(Deeg AAら、Biochim.Biophys.Acta、2015;1850(9):1884~90;Goedert Mら、Nature、1996;383(6600):550~3)。
【0121】
2a)飽和結合アッセイ
PBSで希釈した超音波処理αSYN(0.04μM)またはタウ46(0.4μM)またはAβ1~42(6μM)線維を、減少濃度の[H]-標識化合物(48nMまたは24nM~23pM)と、50mMトリス塩基、10%エタノール、0.05%Tween20、pH7.4中でインキュベートした。非特異的結合を決定するために、各非標識化合物(400nM)を、二連のセットの結合反応に添加した。
【0122】
アッセイプレートを、プラスチック箔(リシールテープ、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)で覆い、37℃で2時間撹拌しながらインキュベートした。採集前に、フィルター(プリントフィルターマットB、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)を、5mg/mLのポリエチレンイミン(PEI、ポリ(エチレンイミン)溶液、Sigma Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、Germany)と4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、結合および遊離リガンドを、採集器(Filtermate採集器、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)を用いて真空濾過により分離した。フィルターを、4℃に冷却した緩衝液で3回洗浄し、その後、電子レンジで中出力で2分間乾燥した。メルトオンシンチレータシート(MeltiLex(商標)B/HS、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)を、120℃に設定した加熱プレートを用いてフィルターに溶け込ませた。室温で凝固させた後、フィルターをビニール袋(MicroBeta(登録商標)用の試料袋、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)に密封した。トリチウムの蓄積を、液体シンチレーションカウンター(Wallac MicroBeta(登録商標)TriLux、1450 LSC & Luminescence Counter、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)で迅速にカウントした。放射能を、増加トリチウム標識化合物またはコールド化合物濃度に対してプロットした。GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.、バージョン7.03、La Jolla、CA、USA)において非線形回帰分析を用いてデータ点のフィッテングを行った。
【0123】
2b)修正飽和結合アッセイ
飽和結合アッセイでは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した一定濃度の超音波処理ヒト組換えαSYN(15nM/ウェル)またはタウ46(250nM/ウェル)またはAβ1~42(1μM/ウェル)線維を、低結合プレート(96ウェルマイクロテストプレート、Ratiolab GmbH、Dreieich、Germany)において、増加濃度(0.05nM~12nM/24nM)の[H]-化合物1または[H]-化合物2と、200μL/ウェルの全量での30mMトリスHCl、10%エタノール、0.05%Tween20、pH7.4(以降、インキュベーション緩衝液と称する)中でインキュベートした。放射性トレーサーの非特異的結合を、400nM非標識化合物1または化合物2との共インキュベーションにより決定した。最適な線維濃度を、濃度決定アッセイを用いて決定した。
【0124】
リムーバブル密封テープ(PerkinElmer)で覆われたプレートを、シェーカー(MaxQ(商標)6000、軌道径1.9cm、Thermo Fisher Scientific Inc.、Marietta、OH、USA)上で45rpmで37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、結合および遊離放射性リガンドを、フィルターマット採集器(PerkinElmer)を用いてガラス繊維フィルターマットB(PerkinElmer)を通す真空濾過により分離した。αSYNおよびAβ1~42線維を含有するプレートを採集するために、フィルターマットを、採集前に5mg/mLのポリエチレンイミンと4℃で30分間さらにインキュベートした。フィルターを100mL(約1mL/ウェル)の冷たいインキュベーション緩衝液で3回洗浄し、その後電子レンジで中出力で2.5分間乾燥した。メルトオンシンチレータシート(MeltiLex(商標)B/HS、PerkinElmer)を、120℃に設定した加熱プレートを用いてフィルターに溶け込ませた。室温で硬化させた後、フィルターを、ビニール試料袋(PerkinElmer)に密封した。トリチウムの蓄積を、Wallac MicroBeta(登録商標)TriLux液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer)で迅速にカウントした。放射能を、H-標識化合物濃度に対してプロットした。GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.、バージョン7.03、La Jolla(CA)、USA)において非線形回帰分析を用いてデータ点のフィッテングを行った。
【0125】
3a)競合結合アッセイ
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した一定濃度の超音波処理ヒト組換えαSYN(200nM/ウェル)またはタウ46(208nM/ウェル)線維を、低結合プレート(96ウェルマイクロテストプレート、Ratiolab GmbH、Dreieich、Germany)において、1nM[H]-化合物1、および1μMから出発して50mMトリス-塩基、10%EtOH、0.05%Tween20、pH7.4中で希釈した1:4連続希釈の目的のコールド化合物と共に、インキュベートした。K値の計算のために、超音波処理ヒト組換えαSYN線維に対する化合物1のK値を、3nMに設定した。
【0126】
アッセイプレートをプラスチック箔(リシールテープ、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)で覆い、37℃で2時間撹拌しながらインキュベートした。採集前に、フィルター(プリントフィルターマットB、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)を、5mg/mLのポリエチレンイミン(PEI、ポリ(エチレンイミン)溶液、Sigma Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、Germany)と4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、結合および遊離リガンドを、採集器(Filtermate採集器、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)を用いて真空濾過により分離した。フィルターを、4℃に冷却した緩衝液で3回洗浄し、その後電子レンジ内で中出力で2分間乾燥した。フィルターを、追加されたシンチレータ(BETAPLATE SCINT、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)と共にビニール袋(MicroBeta(登録商標)用の試料袋、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)に密封した。トリチウムの蓄積を、液体シンチレーションカウンター(Wallac MicroBeta(登録商標)TriLux、1450 LSC & Luminescence Counter、PerkinElmer、Waltham、MA、USA)で迅速にカウントした。放射能を、増加トリチウム標識化合物またはコールド化合物濃度に対してプロットした。GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.、バージョン7.03、La Jolla(CA)、USA)の非線形回帰分析を用いてデータ点のフィッテングを行った。
【0127】
3b)修正競合結合アッセイ
競合結合実験では、一定濃度の組換えαSYN線維(超音波処理、15nM/ウェル)を、1nM[H]-化合物1または[H]-化合物2および減少濃度の連続希釈の非標識競合物(連続希釈1:4または1:3.5または1:3はそれぞれ、非標識競合物の濃度範囲1μM~1pMまたは1μM~4nMまたは1μM~17pMを提供する)と、200μL/ウェルの全量での30mMトリスHCl、10%エタノール、0.05%Tween20、pH7.4中でインキュベートした。プレートをリムーバブル密封テープ(PerkinElmer、Waltham、MA、USA)で覆い、RTで4.5時間インキュベートした。
【0128】
濾過および読み出しを、飽和結合アッセイについて記載したように実施した。[H]-標識リガンド結合[CMP中]を、増加競合物濃度に対してプロットし、非線形回帰分析を用いてデータ点のフィッテングを行って、IC50およびK値を計算した(GraphPad Software,Inc.、バージョン7.03、La Jolla(CA)、USA)。超音波処理組換えαSYN線維による競合結合アッセイでは、K値の計算を、化合物1および化合物2に対してそれぞれ0.6nMおよび0.2nMのK値に基づき行った。
【0129】
線維結合飽和アッセイはK値を提供する。このアッセイを、直接放射性標識された化合物(例えばH標識)で実施する。K値を表3aおよび3bに示す。飽和結合アッセイを、それぞれ組換えヒトα-シヌクレイン、Aβ1-42およびタウ46から生成した線維凝集体を標的構造として用いて実施した。
【0130】
結果は、α-シヌクレイン線維に対する高い親和性を示す。化合物1、化合物2および化合物12は非常に高い親和性を示し、K値は10nM未満であった。化合物1および化合物2をAβおよびタウ46線維への結合に関しても試験し、これらは良好ないし優れた選択性を示し、このことは凝集したα-シヌクレインの診断的検出にこれらの化合物が好適であることを証明する。
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
線維競合アッセイはK値を提供する。Kは、標的構造(1nM)、我々の場合には組換えα-シヌクレインおよびタウ46線維に結合する、50%の参照化合物、この場合は[H]-化合物1(1nM)または[H]-化合物2(1nM)を置き換えるのに必要とされる非放射性被験化合物(競合リガンド)の濃度を表す定量的尺度である。このアッセイは、非放射性リガンドのスクリーニングに好適である。被験化合物に対して得られたK値を、表4a、4bおよび5に示す。
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
【表7-1】
【0137】
【表7-2】
【0138】
【表7-3】
【0139】
様々な競合アッセイの結果は、α-シヌクレイン線維に対する被験化合物の高い結合親和性を示す(K値が低いほど、高い結合親和性を示す)。化合物1に対する競合アッセイ(表4a)の場合、α-シヌクレインおよびタウ46線維に対する同様のK値は、化合物1と同様の選択性を示し、α-シヌクレイン線維よりタウ46線維に対するK値が高い化合物については、データは選択性のさらなる改善を示唆する。
【0140】
さらに、化合物63、64および65を、フェニル環のうちの1つに窒素原子を有する対応する化合物との直接比較で試験した。化合物1についての表6において、0.4nMのK値が得られたが、化合物65(フェニル環に窒素原子を欠く)のK値は、はるかに高く(1.9nM)、化合物1の結合親和性の著しい改善を示す。K値に基づく結合性の分析は、N含有化合物の結合親和性の著しい改善を明らかにした。参照リガンド[H]-化合物1(1nM)による競合結合アッセイにおいて被験化合物に対して得られたK値を表6に示す。
【0141】
【表8】
【0142】
実施例3:細胞培養物の治療効果
潜在的に治療上有用な効果を同定するために、化合物を、H4細胞における凝集したα-シヌクレイン依存性毒性の2つの細胞モデルで試験した。これらの細胞モデルは、α-シヌクレインhemi-Venus融合構築物(V1S+SV2)または全長α-シヌクレインの誘導性過剰発現を可能にする(モデルは、Bartels M、Weckbecker D、Kuhn PH、Ryazanov S、Leonov A、Griesinger C、Lichtenthaler SF、Botzel K、Giese A:Iron-mediated aggregation and toxicity in a novel neuronal cell culture model with inducible alpha-synuclein expression、Sci.Rep.2019年6月24日;9(1):9100に詳細に記載される)。さらに、DMSOおよびFeClの添加は、細胞毒性の増加に関連するα-シヌクレインの凝集を促進する。細胞培養アッセイは、細胞数の変化およびアポトーシスを示す凝縮した核のパーセンテージの変化を決定することによりこれらの効果を使用して、どの化合物が最も有望な効果を示し、したがって治療上有用であり得るかについての情報を得る。
【0143】
データを下記の表7に要約する。これらの実験において、細胞を、陽性対象として10μM anle138cの存在下での100μM FeClおよび0.75%DMSO、ならびに陰性対照として化合物1~19(10μM)またはDMSOとインキュベートした。48時間後、細胞を、OPERAハイスループットイメージングシステムでイメージングし、Acapellaソフトウェア(PerkinElmer)を用いて分析した。表は、DMSO対照と比較した細胞数の変化および凝縮した核を有する細胞(すなわちアポトーシス細胞)の画分の変化を示す。凝縮した核の画分の減少(細胞数の大幅な減少なし)は、有益な治療上の効果を示す。
【0144】
【表9】
【0145】
実施例4:[11C]-標識化合物1および化合物2のインビボ体内分布
11C]-標識化合物1および化合物2をそれぞれ、マウスの尾静脈に静脈内注射した。次に、マウスを小動物PET装置でイメージングした。いずれの化合物でも、SUV値>1.5で良好な血液脳関門透過が観察された。さらに、脳からの迅速な洗い流しが見られた。[11C]-標識化合物1および化合物2のクリアランス半減期はそれぞれ12分および9分であった。
【0146】
実施例5:ヒト脳組織を用いたオートラジオグラフィー
オートラジオグラフィーを、トリチウム標識された化合物1を用いた凍結脳組織、およびレビー小体型認知症を有する患者の帯状回に由来する脳組織の組織学的切片で実施した。[H]-化合物1を濃度3nMで組織のインキュベーションに使用し、次いで洗浄するステップの場合、灰白質への優先的結合が観察でき、これは、凝集したα-シヌクレインの公知の分布と同一のパターンである(図1、左のパネル)。特異的結合が、過剰な非トリチウム標識(すなわち、「コールド」)化合物1により遮断される場合、化合物1の脳組織への非特異的結合がないか非常に低いことが分かる(図1、右のパネル)。
【0147】
これらの所見は、化合物1が、ヒトシヌクレイン病患者に存在する病理学的に凝集したα-シヌクレインに特異的に且つ高い親和性で結合し、凝集したα-シヌクレインの診断的検出を可能にすることを示す。
図1
【国際調査報告】