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特表2023-502810サッカロポリスポラ組成物及びその食品における使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】サッカロポリスポラ組成物及びその食品における使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20230119BHJP
   A23L 7/104 20160101ALI20230119BHJP
   A23L 27/50 20160101ALN20230119BHJP
   C12H 6/02 20190101ALN20230119BHJP
   A23L 13/60 20160101ALN20230119BHJP
   C12G 3/022 20190101ALN20230119BHJP
   A01J 25/00 20060101ALN20230119BHJP
   A23L 17/00 20160101ALN20230119BHJP
   C12J 1/00 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L7/104
A23L27/50 E
C12H6/02
A23L13/60 A
C12G3/022
A01J25/00
A23L17/00 D
C12J1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576248
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 CN2021077377
(87)【国際公開番号】W WO2022033010
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】202010812299.6
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010812161.6
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(71)【出願人】
【識別番号】521555074
【氏名又は名称】江南大学(紹興)産業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】Jiangnan University (Shaoxing) Industrial Technology Research Institute
【住所又は居所原語表記】No. 19 Yangjiang East Road, Shaoxing, Zhejiang Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】毛健
(72)【発明者】
【氏名】劉双平
(72)【発明者】
【氏名】周志磊
(72)【発明者】
【氏名】姫中偉
(72)【発明者】
【氏名】韓笑
【テーマコード(参考)】
4B023
4B039
4B042
4B065
4B115
4B128
【Fターム(参考)】
4B023LC09
4B023LE30
4B023LG05
4B023LK18
4B023LP05
4B023LP08
4B023LP16
4B039LC17
4B039LG02
4B039LG06
4B039LG23
4B039LP08
4B039LP25
4B039LQ01
4B039LQ11
4B039LR01
4B039LR11
4B039LR15
4B039LR22
4B042AC04
4B042AD03
4B042AG12
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK11
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4B042AK20
4B042AP27
4B065AA01X
4B065AC20
4B065BA22
4B065CA41
4B065CA42
4B065CA43
4B065CA60
4B115AG02
4B115NB02
4B115NG02
4B115NG17
4B115NP01
4B115NP02
4B128BC05
4B128BL01
4B128BP01
4B128BP10
4B128BP11
(57)【要約】
サッカロポリスポラ組成物及び食品におけるその使用であって、当該組成物は麦麹からスクリーニングした生体アミンの含有量を低減させる効果のあるサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2と、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3とを含む。2種の菌株で製造した混合サッカロポリスポラ製剤を発酵アルコール飲料、発酵食品又は発酵調味料の製造プロセスに用いると、生体アミンの含有量を低減するとともにアミノ酸の含有量を高め、発酵製品の栄養価を高めることができ、さらに、発酵食品の品質を向上させ、発酵食品の安全性を向上させるという目的を達成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2020年4月30日から中国典型培養物保蔵センターに寄託され、寄託番号がCCTCC NO:M2020103である、サッカロポリスポラ・ヒルスタ(Saccharopolyspora hirsuta)J2。
【請求項2】
請求項1に記載のサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を含む、微生物製剤。
【請求項3】
1g又は1mLの発酵剤におけるサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の数量が1×10cfu以上であることを特徴とする、請求項2に記載の微生物製剤。
【請求項4】
請求項1に記載のサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を使用して製造された麦麹、ふすま麹、酒薬(酒造りやもち米発酵用酵母)又は他の形態の麹。
【請求項5】
麹を作る原料を破砕して、水を加えて攪拌し、滅菌した後、無菌環境で前記サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を加えて、25~55℃で72~96時間培養して得られることを特徴とする、請求項4に記載の麦麹、ふすま麹、酒薬又は他の形態の麹。
【請求項6】
請求項1に記載のサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2と、
2020年4月30日から中国典型培養物保蔵センターに寄託され、寄託番号がCCTCC NO:M2020104であるサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3とを含むことを特徴とする、サッカロポリスポラ組成物。
【請求項7】
前記サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3の菌体数の比は1:(0.8~1.2)であることを特徴とする、請求項6に記載のサッカロポリスポラ組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のサッカロポリスポラ組成物を含む微生物製剤であって、1g又は1mLの微生物製剤におけるサッカロポリスポラの数量が1×10cfu以上であることを特徴とする、微生物製剤。
【請求項9】
前記サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3とを含む生細胞、凍結乾燥して得た乾燥菌体、固定化された細胞、又は他の任意の形態で存在する微生物細胞であることを特徴とする、請求項8に記載の微生物製剤。
【請求項10】
請求項6又は7に記載のサッカロポリスポラ組成物を使用して製造された麦麹、ふすま麹、酒薬又は他の形態の麹。
【請求項11】
麹を作る原料を破砕して、水を加えて攪拌し、滅菌した後、無菌環境で前記サッカロポリスポラ組成物を加えて、25~55℃で72~96時間培養して得られることを特徴とする、請求項10に記載の麦麹、ふすま麹、酒薬又は他の形態の麹。
【請求項12】
発酵食品、調味料、飲料、タバコ、飼料の生産のための、請求項6もしくは7に記載のサッカロポリスポラ組成物、又は請求項8もしくは9に記載の微生物製剤、又は請求項10もしくは11に記載の麹の使用。
【請求項13】
前記発酵食品は発酵又は半発酵食品を含み、前記飲料は黄酒又は白酒を含み、前記調味料は食酢、醤油、調味料、チーズ又はソーセージを含むことを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
発酵食品又は飲料における生体アミンの含有量を低減させるための、請求項6もしくは7に記載のサッカロポリスポラ組成物、又は請求項8もしくは9に記載の微生物製剤、又は請求項10もしくは11に記載の麹の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品発酵技術の分野に属し、サッカロポリスポラ組成物及び食品におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
黄酒は1種の醸造酒で、一般にはもち米、トウモロコシ、キビを原料とし、糖化剤として麦麹を、発酵剤として酵母を加えて、蒸煮、加麹、糖化発酵、圧搾、濾過、煎酒(火入れ)、貯蔵、調合により得られたものである。黄酒には主成分の水、エタノールの他に、18種のアミノ酸を含有している。そのうち8種の必須アミノ酸があり、等量のワイン、ビールに比べて当該8種のアミノ酸が数倍も多いため、黄酒を常に飲むのは健康に良いとされる。黄酒には、ポリフェノール、多糖、ポリペプチドなどの抗酸化物質を豊富に含有しているため、抗酸化活性がある。黄酒の醸造はビールやワインと違って、開放発酵プロセスを採用する。発酵反応系ではアミノ酸の含有量が豊富で、微生物の種類が複雑で数量が多く、コロニー構造が複雑である。発酵に関与する細菌は主に酢酸菌、乳酸菌、バシラス、サッカロポリスポラなどである。しかし、微生物の代謝生成物は黄酒に独特な風味をもたらすとともに、生体アミンなどの有害物質が黄酒に含まれる。
【0003】
生体アミンとは、アミノ酸の脱炭酸で形成される含窒素有機塩基性小分子化合物である。生体アミンは動植物と微生物の体内に一般的に存在し、適量の生体アミン成長を促進し、ラジカルを除去し、代謝活性を向上させ、免疫力を高めることができ、人体内で重要な生理機能を発揮する一方、過剰量の生体アミンを摂取すると動脈、血管及び微小血管が拡大するため、下痢、頭痛、腹部痙攣、嘔吐などの不良な生理反応を引き起こしたり、死に至らせる場合もある。生体アミンは様々な食品に幅広く存在しており、ヨーグルト、黄酒、白酒、料理酒、醤油、食酢、ワインなどの発酵食品には特に含有量が高い。
【0004】
発酵食品における生体アミンは主に微生物の代謝から生成されたアミノ酸脱炭酸酵素が遊離アミノ酸に作用して生成される。発酵プロセスでは微生物の代謝から生成されるプロテアーゼとカルボキシペプチダーゼが穀物のタンパク質に作用して、それを分解して低分子ペプチドやアミノ酸を生成して、生体アミンの生成のための豊富な前駆物質を提供し、アミノ酸脱炭酸酵素が作用すると、大量の生体アミンが生成される。
【0005】
現在、国内外の研究では食品発酵と生体アミン低減へのサッカロポリスポラの使用に関する報告が見当たらなかった。そのため、最新のバイオ技術を利用して、優れた特性がある微生物をスクリーニングすることは高品質、高生産量、独特な風味があって良質な発酵食品を生産し、発酵食品の安全性を向上させる分野では大きな意義がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来の醸造食品における生体アミンの含有量が高いという課題を解決するために、優れた特性があるサッカロポリスポラを提供し、酒類(白酒、黄酒)、ソーセージ及び醤油の発酵プロセスにおいて生体増強のために用いることにより、発酵食品における生体アミンの含有量を低減し、食品の食感と風味を改善して、従来の発酵食品における放線菌の使用をより有効に活用することである。
【0007】
本発明の第1の目的は、サッカロポリスポラ・ヒルスタ(Saccharopolyspora hirsuta)J2とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシス(Saccharopolyspora jiangxiensis)J3とを含むサッカロポリスポラ組成物を提供することである。
前記サッカロポリスポラ・ヒルスタ(Saccharopolyspora hirsuta)J2は、2020年4月30日から中国典型培養物保蔵センターに寄託され、寄託番号がCCTCC NO:M2020103である。
前記サッカロポリスポラ・ジアングシエンシス(Saccharopolyspora jiangxiensis)J3は、2020年4月30日から中国典型培養物保蔵センターに寄託され、寄託先は中国武漢の武漢大学であり、寄託番号はCCTCC NO:M2020104である。
【0008】
本発明のサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2及びサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3は、いずれも次の優れた特性がある。
(1)食品発酵反応系に用いても、食品の正常な発酵に影響を与えない。
(2)当該菌株から製造された純粋な麦麹は黄酒の発酵に適し、黄酒のアミノ酸の含有量を高めることができる。
(3)生体アミンの生成量は2.5mg/L未満で、生体アミンの検出量は極めて少ない。
(4)チラミン、ヒスタミン、プトレシン、カダベリンのいずれにも分解効果がある。
(5)ソーセージ、黄酒、白酒、チーズ及び醤油の発酵に用いることができ、生体アミンを低減させる特性がある。
【0009】
本発明の第2の目的は、前記サッカロポリスポラ組成物を含む微生物製剤を提供することである。
【0010】
一実施形態において、前記1g又は1mLの発酵剤におけるサッカロポリスポラの数量は1×10cfu以上である。
【0011】
一実施形態において、前記微生物製剤は前記サッカロポリスポラを放線菌液体培地に播種して、28~30℃で培養して得られた、サッカロポリスポラ細胞を含む発酵剤である。
【0012】
本発明の第3の目的は、前記サッカロポリスポラ組成物を用いて製造した麹を提供することである。その製造方法は次のとおりである。原料を破砕して水を加えて攪拌し、滅菌した後、無菌環境で種菌を播種し、播種量は5‰~15%で、菌液濃度は10~10cfu/mLであり、25~55℃で72~96時間培養し、培養が終了した後、使用に備えて寄託する。
【0013】
一実施形態において、前記サッカロポリスポラ麹の原料を蒸煮した後、無菌条件下で攤涼し(広げて冷まし)、麹を播種して原料と均一に混合する工程及び後に開耙(水を追加)する工程はいずれも無菌環境において行われ、前記サッカロポリスポラ麹は無菌環境において播種及び培養して得る。
【0014】
一実施形態において、前記麹は前記サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2又は前記サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3を用いて製造した純粋な麦麹を混合した混合麦麹である。
【0015】
一実施形態において、前記麦麹の製造方法は次のステップを含む。
(1)精麦であって、小麦を少量の粉末が付くように1粒を3~5片程度に破砕することにより、麦粒組織を破砕して、デンプンを露出させる。
(2)湿潤であって、ステップ(1)で処理した材料に材料の質量の30~40%の浄水を加え、15~25分間攪拌して、充分かつ均一に水分を吸収させる。
(3)蒸煮滅菌であって、ステップ(2)で処理した材料を蒸煮して滅菌する。
(4)播種であって、ステップ(3)の材料が40℃未満に冷却した後、活性化されたサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を播種し、播種濃度は10~10cfu/mLである。
(5)発酵。
【0016】
一実施形態において、前記ステップ(5)の発酵は次のステップを含む。
a)胞子発芽期であって、麹の原料をトレイに投入して6時間後に、品温が緩やかに約34~35℃に上昇し、自己制御モードをオンにして小風量で間欠的に通風し、1回は5~10分で、間隔は2時間として、品温を32℃に下げ、均一に吹き通さなければならない。
b)菌糸成長期であって、間欠的通風が3~5回になると、菌糸が成長し始め、品温が35℃以上に上がって、麹の原料が固結し始め、この時は連続的に通風し、品温を35±2℃に維持すべきである。
c)菌糸増殖期であって、播種から12時間後に、品温が早く上昇し、この時は1回目の固結の状態に応じて麹をひっくり返す必要があり、麹をひっくり返す前に、測温プローブを持ち上げて、麹ひっくり返し装置をオンにした後、敷き詰めて、測温プローブを降ろして、通風・噴霧システムをオンにする。
d)1回目に麹をひっくり返した後、品温が36~37℃に保持され、スムーズな通風噴霧を保持して、約20時間後に、麹の原料が再び固結し、麹の原料が白みを帯びていることを目視にて確認し、温度を37℃以下に制限して、2回目に麹をひっくり返し、麹を2回ひっくり返した後、品温を35±2℃に制限する。
【0017】
本発明の第4の目的は、黄酒の発酵のための前記混合麦麹の使用を提供することである。
【0018】
本発明の第5の目的は、発酵食品、飲料又は調味料の製造のための前記混合麦麹の使用を提供することである。
【0019】
一実施形態において、前記食品は、ソーセージの発酵又は半発酵食品を含み、ただしそれらに限定されない。
【0020】
一実施形態において、前記飲料は、発酵黄酒又は白酒を含み、ただしそれらに限定されない。
【0021】
一実施形態において、前記調味料は、醤油、ソーセージを含み、ただしそれらに限定されない。
【0022】
一実施形態において、前記使用は、前記混合麦麹を醸酒原料と混合して発酵させることである。
【0023】
一実施形態において、前記方法は、純粋な麦麹を12~16%の播種量で発酵タンクにおいて米飯、酒母などの原料と均一に混合して発酵させることで、発酵では従来の発酵プロセスを採用する。
【0024】
本発明の第6の目的は、ソーセージ、黄酒、白酒、醤油、チーズにおける生体アミンの低減のための、前記サッカロポリスポラ組成物又は混合麦麹の使用を提供することである。
【0025】
一実施形態において、前記生体アミンは、チラミン、ヒスタミン、プトレシン、カダベリンを含み、ただしそれらに限定されない。
【0026】
一実施形態において、前記醸造黄酒又は白酒は前記サッカロポリスポラから純粋な麹を製造して、酒類の発酵のためにこれを添加して得たものである。
【0027】
本発明の有益な効果は次のとおりである。
(1)本発明の菌株を食品発酵反応系に用いても、食品の正常な発酵に影響を与えない。
【0028】
(2)サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2から製造した純粋な麦麹は黄酒の発酵に用いることができ、アルコールの収率を向上させるだけでなく黄酒におけるアミノ酸の含有量を高めることができる。純粋発酵黄酒のアミノ酸の含有量は最大で6434.81±123.3mg/Lに達しており、対照群のサンプルに比べて40.37%高くなっている。しかも当該菌株の添加は従来の黄酒の風味には明らかな影響がない。サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を添加するサンプル群は対照群に比べて生体アミンの含有量が21.71%低減しているとともに、黄酒におけるアミノ酸態窒素の含有量及び栄養価を高めており、黄酒におけるアミノ酸と揮発性物質の含有量を高め黄酒の品質を向上させるという目的を達成している。
【0029】
(3)サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2の生体アミン生成量は2.5mg/L未満で、生体アミンの検出量は極めて少なく、生体アミンがほとんど生成されない。サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2のチラミンに対する分解率は77.41%に達しており、ヒスタミンに対する分解率は100%に達しており、プトレシンに対する分解率はそれぞれ58.1%に達しており、カダベリンに対する分解率は47.71%に達しており、総生体アミンに対する分解率は72.98%に達しており、生体アミンを低減させる能力に優れている。
【0030】
(4)当該サッカロポリスポラはまた、発酵食品における生体アミンを低減させる効果があり、それをソーセージの発酵に用いて、サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を添加して発酵させたソーセージにおいて生体アミンの平均含有量は129.60mg/kgと生体アミンを低減させる効果が明らかで、対照群に比べて36.19%低減している。サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を添加する白酒は対照群に比べて生体アミンの含有量が24.32%低減している。サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を添加する醤油は対照群に比べて生体アミンの含有量が34.28%低減している。サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を添加するチーズは対照群に比べて生体アミンの含有量が16.37%低減している。
【0031】
(5)サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2は品質を向上させ有害物質を低減する効果があり、それをタバコの発酵に用いる場合に、サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を添加する発酵葉タバコにおける有害成分のタール量、HCN、フェノール、NH及び亜硝酸塩の含有量は対照群に比べてそれぞれ23.51%、16.25%、19.75%、27.09%、37.62%低減している。
【0032】
(6)サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2は栄養転化率を高める効果があり、それを飼料の発酵に用いる場合に、サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を添加する発酵飼料における有機酸の含有量は対照群に比べて26.77%高くなり、アミノ酸の含有量は21.98%高くなり、粗タンパク質の含有量は18.53%高くなっている。
【0033】
本発明は、サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3とを含む複合菌剤をさらに提供し、当該複合菌剤には次の用途がある。
(1)サッカロポリスポラ複合菌剤を添加した発酵黄酒のアミノ酸の含有量が最も高く、菌株を添加しても従来の黄酒の風味にはさほどの影響はない。生体アミンの含有量を低減させる効果は対照群に比べて42.17%低減しており、黄酒におけるアミノ酸態窒素の含有量及び栄養価を高めており、黄酒におけるアミノ酸と揮発性物質の含有量を高め黄酒の品質を向上させるという目的を達成している。
【0034】
(2)サッカロポリスポラ複合菌剤には生体アミンを低減させる効果があり、複合菌剤を添加するケツギョの塩漬け物は生体アミンの含有量が対照群に比べて20.87%低減し、料理酒の生産に用いる場合は料理酒における生体アミンの含有量が対照群に比べて23.16%低減し、食酢の生産に用いる場合は生体アミンの含有量が対照群に比べて25.08%低減し、チーズの生産に用いる場合はチーズにおける生体アミンの含有量が対照群に比べて13.33%低減している。
【0035】
(3)サッカロポリスポラ複合菌剤には品質を向上させ有害物質を低減させる効果があり、それをタバコの発酵に用いる場合に、複合菌剤を添加した発酵葉タバコにおける有害成分のタール量、HCN、フェノール、NH及び亜硝酸塩の含有量は対照群に比べてそれぞれ30.12%、17.14%、22.01%、16.73%、27.15%低減している。
【0036】
(4)サッカロポリスポラ複合菌剤には栄養転化率を高める効果があり、それを飼料の発酵に用いる場合に、複合菌剤を添加する発酵飼料における有機酸の含有量は対照群に比べて29.18%高くなり、アミノ酸の含有量は10.22%高くなり、粗タンパク質の含有量は14.48%高くなっている。
【0037】
生物材料の寄託について
サッカロポリスポラ・ジアングシエンシス(Saccharopolyspora jiangxiensis)J3は、分類名がサッカロポリスポラ・ジアングシエンシス(Saccharopolyspora jiangxiensis)J3で、2020年4月30日から中国典型培養物保蔵センターに寄託され、寄託先は中国武漢の武漢大学であり、寄託番号はCCTCC NO:M2020104である。
【0038】
サッカロポリスポラ・ヒルスタ(Saccharopolyspora hirsuta)J2は、分類名がサッカロポリスポラ・ヒルスタ(Saccharopolyspora hirsuta)J2で、2020年4月30日から中国典型培養物保蔵センターに寄託され、寄託先は中国武漢の武漢大学であり、寄託番号はCCTCC NO:M2020103である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1はサッカロポリスポラJ2の系統樹である。
図2図2はサッカロポリスポラJ3の系統樹である。
図3図3は黄酒発酵プロセスにおける理化学的指標の変化である。(A)はアルコール度数、(B)は還元糖、(C)は滴定酸、(D)はアミノ酸態窒素。
図4図4はサッカロポリスポラJ2による黄酒発酵サンプルの風味物質の主成分分析である。
図5図5はサッカロポリスポラJ3による黄酒発酵サンプルの風味物質の主成分分析である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
黄酒の理化学的指標の測定は次のとおりである。アルコール度数、アミノ酸態窒素及び総酸の測定は規格GB/T 13662-2018に基づいて行った。生体アミンの含有量及び風味物質は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びガスクロマトグラフィー-質量分析装置(GC-MS)を用いて測定した。還元糖の含有量の測定はDNS法を用いた。
【0041】
ソーセージの理化学的指標の測定は次のとおりである。粗タンパク質の含有量は規格GB5009.3-2010のセミミクロケルダール法に基づいて測定した。水分の含有量は規格GB/T 9695.15-2008に記載の方法に従って測定した。pHの測定では、10gのサンプルに90mLの蒸留水を加えて均質化した後に2分間静置し、pH計を用いて上澄み液のpHを測定した。
【0042】
生体アミンの含有量の測定方法は次のとおりである。1mLの被検液を15mL遠心管に正確に量り取り、1mLの飽和NaHCO溶液を加えて均一に混合し、2mLのダンシルクロリド(5mg/mLのアセトン)を加えて、均一に混合して65℃の恒温水浴鍋に入れて暗所で30分間誘導し、室温で静置した後、0.5mLの飽和NaCl溶液を加え、均一に混合して5mLのジエチルエーテルを加えて、20秒間ボルテックスし、静置して分層した後、上層の有機相を15mL遠心管に移し、下層の水相は1回抽出して、2回の抽出液を合わせて、50℃の水浴下で窒素ブローして乾燥させた。1mLのアセトニトリルを加えて振盪して均一に混合して、残留物を溶解し、0.22μmのフィルターで濾過し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。
【0043】
実施例1:サッカロポリスポラのスクリーニングと同定
(1)サンプルの採取と前処理
麦麹サンプルは浙江省紹興市の黄酒工場から採取され、採取した麦麹を密封された無菌プラスチック袋に入れて4℃で保存していた。50mL遠心管に5gの麦麹を秤量し、30mLの蒸留水を加えて30℃のインキュベーターシェーカーに入れて30分間培養した。
【0044】
(2)菌株の平板スクリーニング
放線菌スクリーニング培地であって、硝酸カリウム1.0g/L、リン酸二水素カリウム0.5g/L、硫酸マグネシウム0.5g/L、硫酸第一鉄0.01g/L、塩化ナトリウム0.5g/L、可溶性デンプン20.0g/L、寒天15.0g/Lからなり、pHの値は7.2~7.4(25℃)である。
【0045】
無菌操作環境において、無菌ピペットで1mLのサンプルを吸引して15mL無菌遠心管に入れ、無菌水を加えて10mLとし、充分かつ均一に混合して、10-1のサンプル均一液を得た。無菌ピペットで10-1のサンプル均一液を1mL吸引して15mL無菌遠心管に入れ、無菌水を加えて10mLとし、充分かつ均一に混合して、10-2のサンプル均一液を得た。前記手順により、10-1~10-6の10倍段階希釈シリーズ麦麹、研米水、発酵マッシュ希釈均一液を調製した。
【0046】
麦麹、発酵マッシュ、研米水の各種希釈度の菌液をそれぞれ100μL吸引して放線菌スクリーニング培地に塗布して、28℃で1~7日培養した。コロニー密度が適切な平板から乳白色で薄くて隆起又は凸面があり、少ししわのある単一のコロニーをピックアップして、それぞれ画線して放線菌スクリーニング培地に播種し、繰り返し画線して純粋なコロニーを選定して、選定菌株を保存した。
【0047】
(3)菌株同定
選定菌株のゲノムを抽出し、選定菌株に対して16S rDNA増幅による配列決定を行う。
【0048】
PCR増幅プライマーは、27F(5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’)、1492R(5’-GGTTACCTTGTTACGACTT-3’)であった。
【0049】
PCR増幅反応系(50μL)は、2×Taq PCR Master Mix25μLであり、上流と下流プライマーは各1μLとし、テンプレートは1μLとし、無菌水22μLを加えて50μLとした。
【0050】
PCR増幅プロセスは次のとおりである。94℃での3分間予備変性、95℃での30秒間変性、58℃での30秒間アニール、72℃での2分間延伸を、合計で35のサイクルとし、最後に72℃で8分間延伸した。
【0051】
PCR生成物は1%アガロースゲル電気泳動を用いて測定し、遺伝子配列決定業者に配列決定を依頼し、返された配列決定結果に基づいて、NCBI公式サイトにおいてBLAST配列アラインメントを行った。16S rDNA配列を用いてBLASTアラインメントを行い、さらに系統発生解析を行った結果は図1図2に示すとおりである。菌株J2のヌクレオチド配列(配列番号1)はサッカロポリスポラ属サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta、GenBank登録番号:MN515057.1及びNR_118870.1)との相同性又は類似性が98.30%以上に達しているため、菌株をサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2と命名した。菌株J3のヌクレオチド配列(配列番号2)はサッカロポリスポラ属サッカロポリスポラ・ジアングシエンシス(S.jiangxiensis、GenBankの類似配列番号:MG255179.1)との相同性又は類似性が98.84%以上となるため、当該菌株をサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3と命名した。
【0052】
(4)サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2菌株の生体アミンの代謝能についての解析:
種菌の活性化:寄託したサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を放線菌液体培地に播種し、播種量は10%で、30℃で48時間振盪培養して、一次種菌液を得た。活性化した菌株を放線菌液体培地に播種し、播種量は10%で、48時間振盪培養し、回転数は150回転/分で、温度は30℃であった。
【0053】
サンプルの前処理:種菌をそれぞれ生体アミン生成測定培地及び生体アミン分解測定培地に播種して、28℃で5日振盪培養し、12000回転/分で5分間遠心分離して上澄み液を収集した。
【0054】
放線菌液体培地:硝酸カリウム1.0g/L、リン酸二水素カリウム0.5g/L、硫酸マグネシウム0.5g/L、硫酸第一鉄0.01g/L、塩化ナトリウム0.5g/L、可溶性デンプン20.0g/Lからなり、pHの値は7.2~7.4(25℃)であった。
【0055】
生体アミン生成測定培地:放線菌液体培地に0.4g/LのL-チロシン、1g/LのL-ヒスチジン、1g/LのL-リシン、1g/LのL-オルニチン、0.05g/Lの5’-リン酸ピリドキサールが添加されたもの。
【0056】
生体アミン分解測定培地:放線菌液体培地に50mg/Lの生体アミン(ヒスタミン、チラミン、カダベリン、プトレシン、スペルミン、スペルミジン、トリプタミン、β-フェニルエチルアミンを含む)を添加して、pHを6.0~6.2に調整したもの。
【0057】
サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の生体アミン低減効果を分析したところ、生体アミン生成測定培地及び生体アミン分解測定培地において培養したサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の生体アミンの生成量は2.5mg/L未満で、生体アミンの検出量は極めて少ないことから、生体アミンの含有がほぼ検出されていないということが示され、したがって生体アミンは生成しないと考えている。サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2のチラミンに対する分解率は77.41%で、ヒスタミンに対する分解率は100%に達しており、プトレシンに対する分解率は58.1%に達しており、カダベリンに対する分解率は47.71%に達しており、総生体アミンに対する分解率は72.98%に達していることから、菌株はいずれも生体アミンを低減させる能力に優れているということが示された。
【0058】
(5)サッカロポリスポラJ3の生体アミンの代謝能についての解析
サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3の生体アミン低減効果を解析したところ、生体アミンの前駆体が存在する培地において培養したサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3の各種生体アミンの生成量はいずれも2.5mg/L未満で、生体アミンの検出量は極めて少ないことから、生体アミンの含有がほぼ検出されていないということが示され、したがって生体アミンは生成しないと考えている。サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3のチラミンに対する分解率はそれぞれ81.55%で、ヒスタミンに対する分解率はそれぞれ100%に達しており、プトレシンに対する分解率はそれぞれ51.8%に達しており、カダベリンに対する分解率はそれぞれ40.01%に達しており、総生体アミンに対する分解率は69.09%に達していることから、当該菌株は生体アミンを低減させる能力に優れているということが示された。
【0059】
実施例2:サッカロポリスポラの活性化と培養
放線菌液体培地:硝酸カリウム1.0g/L、リン酸二水素カリウム0.5g/L、硫酸マグネシウム0.5g/L、硫酸第一鉄0.01g/L、塩化ナトリウム0.5g/L、可溶性デンプン20.0g/Lからなり、pHの値は7.2~7.4(25℃測定)であった。
【0060】
PDA培地:ジャガイモデンプン6.0g/L、グルコース20.0g/L、寒天20.0g/Lからなり、pHが5.4~5.8であるものを121℃で15分間高圧滅菌したものであり、固体培地はこれに基づいて添加して得られた。
【0061】
MRS培地:牛肉エキス10g/L、ペプトン10g/L、酵母エキス0.5g/L、グルコース20g/L、ポリソルベート80 0.10g/L、酢酸ナトリウム5g/L、リン酸水素二カリウム2g/L、クエン酸水素二アンモニウム2g/L、硫酸マグネシウム0.58g/L、硫酸マンガン0.28g/Lからなるもの。
【0062】
実施例1でスクリーニングしたサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を放線菌液体培地に播種し、播種量は10%で、30℃で48時間振盪培養して、一次種菌液を得た。活性化した菌株を放線菌液体培地に播種し、播種量は10%で、48時間振盪培養し、回転数は150回転/分で、温度は25~45℃として、菌体濃度が10~10cfu/mLの菌液を得、培養して成熟した後、これを純粋な麦麹の製造に使用した。
【0063】
寄託したアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)及びニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)をPDA平板に播種して、28℃で3~5日培養した。その後、無菌水で胞子液を洗浄して、再びPDAナスフラスコに移し、温度が28℃で3~5日培養して、菌体濃度が10~10cfu/mLの菌液を得、胞子が成熟した後、純粋な麦麹の製造に使用した。
【0064】
寄託したラクトバチルス・プランタルム(L.plantarum、Lactobacillus plantarum)をMRS培地に播種し、播種量は10%で、37℃恒温で24時間嫌気培養して、一次種菌培養液を得た。活性化された種菌液を再びMRS液体培地に播種し、播種量は10%で、37℃恒温で24時間嫌気培養して、菌体濃度が10~10cfu/mLの菌液を得、種菌を培養して成熟した後、純粋な麦麹の製造に使用した。
【0065】
サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3からの純粋な麦麹は上記と同じ方法で製造し、ただし違いは、サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2をサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3に置き換えることである。
【0066】
実施例3:サッカロポリスポラからの純粋な麦麹の製造
(1)精麦であって、小麦を少量の粉末が付くように1粒を3~5片程度に破砕したことにより、麦粒組織を破砕して、デンプンを露出させた。
(2)湿潤であって、ステップ(1)で処理した材料に約35~40%の浄水を加え、20~25分間攪拌して、充分かつ均一に水分を吸収させた。
(3)蒸煮滅菌であって、ステップ(2)で処理した材料を121℃で30分間滅菌した。
(4)播種であって、ステップ(3)の材料が36℃に冷却後、実施例2の方法で活性化した種菌を播種し、播種菌液の濃度は10~10cfu/mLで、播種量は5‰~15%であった。
【0067】
(5)麹の原料をトレイに投入した後、適切な品温と室温を保持して、静置して約6時間培養した。
【0068】
a)胞子発芽期:麹の原料をトレイに投入してから6時間後に、品温が緩やかに約34~35℃に上昇し、自己制御モードをオンにして小風量で間欠的に通風し、1回は5~10分で、間隔は2時間として、品温を32℃に下げ、均一に吹き通さなければならない。
【0069】
b)菌糸成長期:間欠的通風を3~5回実施してから、菌糸が成長し始め、品温が35℃以上に上がって、麹の原料が固結し始め、この時は連続的に通風し、品温を約35℃に維持した。
【0070】
c)菌糸増殖期:播種から12時間後に、品温が早く上昇し、この時は1回目の固結の状態に応じて麹をひっくり返す必要があり、麹をひっくり返す前に、測温プローブを持ち上げて、麹ひっくり返し装置をオンにした後、敷き詰めて、測温プローブを降ろした。通風・噴霧システムをオンにした。
【0071】
d)1回目に麹をひっくり返した後、品温が36~37℃に保持され、スムーズな通風噴霧を保持して、約20時間後に、麹の原料が再び固結し、麹の原料が白みを帯びていることを目視にて確認し、温度を37℃以下に制限するには難があり、2回目に麹をひっくり返し、麹を2回ひっくり返した後、品温を約35℃に制御した。
【0072】
(6)麹の出来上がり:72~96時間培養し、培養が終了した後、麦麹を4~7℃の冷凍庫に入れて、使用に備えて貯蔵した。
上記の方法により、菌体数量が1015cfu/g程度でサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2から純粋な麦麹、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3から純粋な麦麹をそれぞれ製造した。
【0073】
実施例4:サッカロポリスポラからの混合麦麹の製造
実施例3で製造したサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2からの純粋な麦麹とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3からの純粋な麦麹を任意の割合で混合して、混合麦麹を製造した。
【0074】
選択可能で、醸造アルコール飲料の発酵用の混合麦麹はサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2からの純粋な麦麹とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3からの純粋な麦麹を1:(0.8~1.5)の質量比で混合したものである。
【0075】
実施例5:黄酒の発酵のためのサッカロポリスポラからの純粋な麦麹の使用
(1)本実施例では、従来の黄酒の発酵のための原料配合比は(発酵体積が1Lの場合)、蒸し米500g、浄水417L、酒母38gであった。
(2)従来の黄酒醸造プロセス:
a)酵母の活性化と培養:グリセリン保存管に入れた酵母菌を、無菌実験台においてYPD培地に移して、30℃で150回転/分の条件下で24時間培養し、その後、調製した酒母に移して、酵母を移した後は30℃で150回転/分の条件下で、使用に備えて18~24時間培養した。
【0076】
b)酒母の製作:600gの蒸し米に1600mLの浄水、60gの生麦麹を加えて、800U/g米飯として糖化酵素で糖化し、糖化温度を55~65℃に制限し、時間は3~4時間で、糖化が終了して糖度が12°Bx以上となったら、115℃下で15分間滅菌し、滅菌した後は24~31℃に冷却し、成熟した酵母種菌培養液を5%入れ、培養温度は30℃以下で、培養時間は24時間で培養し、成熟後に酒母を得た。
【0077】
c)ステップ(1)に記載の従来の黄酒の発酵の原料配合比に従って原料を投入して発酵させる。実験群は純粋な麦麹45.3gで、対照群は生麦麹39.3g、熟麦麹6.0gであった。
【0078】
最初の4日は前期発酵段階で、温度を28~30℃に制限して、4日発酵させ、最初の4日は毎日少なくとも1回開耙し、初めての開耙の時間は8~10時間であった。後期発酵段階では、温度が13~15℃で、毎日攪拌して1回開耙し、発酵は10~15日持続した。
【0079】
対照群(TF Control)は、本実施例のc)の純粋な麦麹を工場から採取した生麦麹39.3g/Lと熟麦麹6.0g/Lに置き換えたものである。
【0080】
実施例6:黄酒の発酵のためのサッカロポリスポラからの混合麦麹の使用
混合麦麹発酵群は、サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2からの純粋な麦麹とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3からの純粋な麦麹の複合麦麹を出芽酵母(サッカロミセスセレビシエ)と併用して従来の醸造方法で発酵させた。
【0081】
複合菌剤群(Mix)は、菌体数1:1の割合でサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2からの純粋な麦麹とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3からの純粋な麦麹を添加し、添加量は合計で45.3gであった。
【0082】
黄酒発酵プロセスにおける理化学的指標の変化
黄酒の発酵におけるサッカロポリスポラの役割の一層の検証のために、従来の麦麹と純粋な麦麹による発酵プロセスにおける理化学的指標(アルコール度数、還元糖、滴定酸、アミノ酸態窒素)の変化を比較した。純粋発酵の方は6群に分け、それぞれがアスペルギルス・フラバス(A.flavus、黄酒の発酵でよく使用する菌)、ニホンコウジカビ(A.oryzae、清酒の醸造でよく使用する菌)、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシス(S.jiangxiensis)J3、Mix、ラクトバチルス・プランタルム(L.plantarum)であった。当該5種の純粋な麦麹をそれぞれ出芽酵母と併用して従来の醸造方法で発酵させる。発酵が終了すると、ラクトバチルス・プランタルム(L.plantarum)群以外の各群はアルコール度数、酸度、アミノ酸態窒素の含有量がいずれも黄酒の国家規格に達している(図3)。ラクトバチルス・プランタルム(L.plantarum)群の滴定酸の含有量は早く17.50g/Lに増加しており、サンプルには明らかな酸敗が生じていた。サッカロポリスポラは黄酒発酵プロセスにおいて重要な理化学的指標にさほどの影響はなく、発酵が正常に進んでいることが示された。
【0083】
黄酒発酵サンプルにおけるアミノ酸の含有量
HPLC法で発酵黄酒のアミノ酸の含有量を解析したところ、サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を添加した実験群のアミノ酸の含有量は6434.81±123.3mg/Lに達しており、対照群に比べて40.37%高くなっている。Mix、アスペルギルス・フラバス(A.flavus)及びニホンコウジカビ(A.oryzae)実験群のアミノ酸の含有量には大差がないが、いずれも対照群(TF Control)を有意に上回っている。サッカロポリスポラ・ジアングシエンシス(S.jiangxiensis)J3を添加した実験群の総アミノ酸の含有量は対照群と大差がなく、一部のアミノ酸の含有量が対照群を有意に上回っている。
【表1】
注:表中gagaはγ-アミノ酪酸。
【0084】
サッカロポリスポラの生体アミン低減効果を解析した。得られた製品は高速液体クロマトグラフィーにより黄酒の生体アミンの含有量を測定したところ、サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を添加したサンプル群は対照群に比べて21.71%低減し、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3を添加したサンプル群は対照群に比べて35.09%低減している。サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3を添加した複合菌剤(Mix)群は対照群に比べて42.17%低減している。
【0085】
純粋発酵と従来の発酵の風味の解析
主成分解析法を用いて純粋発酵と従来の発酵のサンプルにおける風味成分の変化と類似性を解析した。全てのサンプルのバイプロット(biplot)解析から、サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3で発酵させた黄酒における1番と2番の主成分の分散への累積寄与率はいずれも83.6%であることが分かり、これにより発酵サンプルに風味の差があることの理由がほぼ解明している。図4から分かるように、従来の発酵群はサッカロポリスポラ・ジアングシエンシス(S.jiangxiensis)J3群に近づいているが、アスペルギルス(A.flavus、A.oryzae)群及びラクトバチルス・プランタルム(L.plantarum)群と明らかに離れている。これはサッカロポリスポラが殆どの風味物質の合成に関与しており、黄酒の発酵において大きな役割を果たすことを示している。
【0086】
実施例7:黄酒の発酵のためのサッカロポリスポラ菌剤の使用
実施例5の従来の黄酒の原料投入処方で黄酒の発酵を行い、実験群としてそれぞれMix群、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3群を設け、ただし、麦麹の播種割合はいずれも10%で、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3群にはサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3からの純粋な麦麹を播種し、Mix群にはサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3とサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の混合菌液を用いて実施例3の方法で製造した複合種菌麦麹を播種したことで違っている。黄酒醸造プロセスと指標測定手順については実施例4を参照した。
【0087】
(1)黄酒の主要理化学的指標への影響:
表2から分かるように、発酵が終了した後は各群のアルコール度数が約14%V/Vに達しており、全てのサンプルの還元糖、総酸及びアミノ酸態窒素の含有量はいずれも4.52~5.03g/Lで、いずれも黄酒の理化学的規格に適合している。有意性を検討したところ、Mix群とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3群のアルコール度数、総酸含有量及びアミノ酸態窒素の含有量は対照群と有意差がない(P>0.05)ことから、サッカロポリスポラ属サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3を播種しても黄酒発酵プロセスにおいて主要理化学的指標に大きな影響がなく、黄酒発酵プロセスにはマイナスの影響がないことが分かった。
【表2】
【0088】
(2)サッカロポリスポラの黄酒における生体アミンの含有量への影響
発酵が終了した後、複合菌剤を播種したMix群とサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3群のサンプルの生体アミンの含有量はそれぞれ15.57±0.44mg/L、16.88±1.41mg/Lで、いずれも対照群の26.75±2.39mg/Lよりは低かった。サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の方の総アミン含有量の平均値は対照群に比べて41.79%低減し、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3群は対照群に比べて36.90%低減している。複合菌剤Mixとサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3はいずれも生体アミンの含有量を低減させる効果があることが示された。
【0089】
以上から明らかなように、黄酒発酵反応系に複合菌剤Mix、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3を播種しても黄酒の品質に影響はなく、しかも総アミンに対する分解率がそれぞれ対照群の41.79%と36.90%に達していることから、複合菌剤Mixの直接的な添加の方も、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3の方も、黄酒の生産に用いると黄酒における生体アミンの含有量を調整するために利用する可能性があり、複合菌剤Mixの方は黄酒における生体アミンの分解効果がより優れていることが示されている。
【0090】
実施例8:サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の発酵ソーセージへの使用による生体アミンの含有量低減
(1)種菌の活性化と培養
放線菌液体培地:硝酸カリウム1.0g/L、リン酸二水素カリウム0.5g/L、硫酸マグネシウム0.5g/L、硫酸第一鉄0.01g/L、塩化ナトリウム0.5g/L、可溶性デンプン20.0g/Lからなり、pHの値は7.2~7.4(25℃測定)であった。
【0091】
寄託したサッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を放線菌液体培地に播種し、播種量は10%で、30℃で59時間振盪培養して、一次種菌液を得た。活性化した菌株を放線菌液体培地に播種し、播種量は10%で、48時間振盪培養し、回転数は150回転/分で、温度は30℃であった。培養して菌体濃度が10~10cfu/mL程度になったら発酵ソーセージに使用した。
【0092】
(2)発酵ソーセージの製造
質量基準で、65~80%の赤身と20~35%の脂身を取り合わせた。洗浄して骨、腱、筋膜、リンパ、血管、病変及び損傷部位を除去した。赤身と脂身を分けて、4~5cmの肉塊に切った。赤身と約5~8%の砕氷をみじん切り器に入れて、1~3分間切り刻む。豚肉の質量基準で、0.01~0.15%の亜硝酸ナトリウム、2~3%の食塩、0.2~0.3%の複合リン酸塩、0.05~0.06%のアスコルビン酸ナトリウムを加えた。香辛料、コショウ、ニンニク、唐辛子、ナツメグは原料肉の0.2%~0.3%とした。2群はそれぞれ8~12%の活性化サッカロポリスポラを播種し、1群は播種せずに対照とし、1~2分間切り刻み、さらに脂身と約5~8%の砕氷を加えて、4~6分間切り刻む。塩漬けした後にケーシングに詰め込む。ソーセージ発酵プロセスのパラメータは表3に示すとおりである。
【表3】
【0093】
(3)サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の生体アミン低減効果の解析
実施例1の方法で種菌を活性化し生体アミンの含有量を測定した。
【0094】
サンプル前処理の手順は次のとおりである。50mL遠心管に5.0gの挽いたサンプルを秤量し、20mLの5%トリクロロ酢酸を加えて30分間超音波処理して、50mL栓付き遠心管に移し、6000回転/分で10分間遠心分離して、上澄み液を50mLメスフラスコに移し、残渣を20mLの前記溶液で再び1回抽出して、上澄み液を合わせて所定の目盛りまで希釈した。
【0095】
表4から分かるように、サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を添加して発酵させたソーセージは発酵により成熟するとpHはそれぞれ6.16±0.16で、対照群は6.51±0.17であり、水分の含有量と粗タンパク質の含有量には有意差がない。サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を添加して発酵させたソーセージは成熟すると生体アミンの平均含有量が129.60mg/kgで、対照群に比べて36.19%低減している。
【表4】
【0096】
実施例9:サッカロポリスポラJ2の白酒への使用による生体アミンの含有量低減
白酒の醸造で使用したサッカロポリスポラからの純粋な麦麹は実施例3の麦麹の作製方法を参照して作製した。実施例1の方法で生体アミンの含有量を測定した。
【0097】
白酒の醸造は二次発酵法を採用し、一次発酵の時はモロコシを蒸し通した後、空冷で25℃に冷却し、4%のニホンコウジカビ種菌液を添加して、28℃下で24時間培養した。10%のもみ殻、15%の蒸留酒麹、8%のふすま、5~9%の純粋な麦麹を添加して、1%の割合で出芽酵母種菌液を播種し、その後、密封して、30日発酵させた後に蒸留した。二次発酵の時は10%の中温の蒸留酒麹を添加して、1%の割合で出芽酵母種菌液を播種し、酵母種菌液の濃度は1010~1012cfu/mLで、引き続き12~15日発酵させて蒸留した。
【0098】
サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2の生体アミン低減効果を以下のように解析した。蒸留後の白酒をアルコール度数60%(V/V)にブレンドし、調合後のサンプルにおける生体アミンの含有量を測定し、サッカロポリスポラ・ヒルスタ(S.hirsuta)J2を添加するサンプル群は対照群に比べて24.32%低減している。
【0099】
実施例10:サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の醤油への使用による生体アミンの含有量低減
実施例1の方法で種菌を活性化し生体アミンの含有量を測定した。高塩希釈状態発酵により醤油を醸造した。
(1)まず豆粕と小麦を1:1の割合で均一に混合し、その後、蒸し通した。
(2)5‰~10%の割合で菌液濃度が10~10cfu/mLのサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2種菌液を加え、その後、材料の質量の約1.5~2倍の塩水を加えて、醤油マッシュ(醤醪、麹を大量の塩水と混ぜて濃厚な半流動の状態にする混合物)の最終的な塩含有量は約18%で、水分の含有量は65%であり、その後、均一に混合した。
【0100】
(3)しょうぺい、(「しょう」の漢字は「醤」、「ぺい」の漢字は酒偏に、旁は「立」と「口」を縦に重ねたもの、麹を少量の塩水と混ぜて流れない状態にする混合物)を以下のように発酵させた。初期発酵温度を14~16℃に制限し、発酵が進行するにつれて温度が徐々に約35℃に上昇していった。発酵を約5ヶ月持続した。
【0101】
(4)醤油マッシュの発酵が終了した後、プレートアンドフレーム式フィルタープレス装置において圧搾して、しょうぺいを除去した。圧搾が終了した後はダイアトマイト濾過と膜濾過を行って、沈殿を除去した。濾過して清澄になった醤油を低温殺菌して、充填した。
【0102】
サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の生体アミン低減効果を解析した。サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を添加した醤油製品における生体アミンの含有量は対照群に比べて34.28%低減している。
【0103】
実施例11:サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の料理酒への使用による生体アミンの含有量低減
実施例5の醸造方法により純粋発酵黄酒を得、発酵黄酒に質量基準で10%の食塩を加えて、滅菌機において85℃で30分間滅菌して熱充填した。
【0104】
菌株の料理酒における生体アミンの含有量の低減効果を解析した。高速液体クロマトグラフィーにより料理酒における生体アミンの含有量を測定し、サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を添加したサンプル群は、対照群に比べて生体アミンの含有量が低減している。
【0105】
実施例12:サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の食酢への使用による生体アミンの含有量低減
実施例5の醸造方法により純粋発酵黄酒を得、これを酢酸の発酵原料として、実施例1の方法で生体アミンの含有量を測定した。
【0106】
酢酸の発酵では固体発酵プロセスを採用した。大型の糠、ふすま、黄酒を1:4:10の質量比で均一に攪拌して、5%の酢の固体発酵基質(「さくぺい」、「さく」の漢字は、「酢」、「しょう」の漢字は「しょうぺい」の「ぺい」に同じ)を播種し、播種後の最初の2日は毎日材料の表面から前記固体発酵基質をひっくり返し、温度を35~42℃に保持した。6~8日目に材料の底部に至った。8~12日目では、毎日底部から前記固体発酵基質をひっくり返し、温度が自ず低減した。酢の固体発酵基質から生酢を分離して、85℃で30分間滅菌して12ヶ月熟成させた。充填した前に高温滅菌を行ってから、熱充填した。
【0107】
調製した食酢の品質を測定したところ、固体発酵醸造食酢における酢酸の含有量はいずれも55g/Lであった。食酢における生体アミンの含有量を解析したところ、高速液体クロマトグラフィーにより料理酒における生体アミンの含有量を測定し、サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を添加したサンプル群は、対照群に比べて生体アミンの含有量が低減している。
【0108】
実施例13:サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2のチーズ発酵への使用による生体アミンの含有量低減
実施例1の方法で種菌を活性化し生体アミンの含有量を測定した。
【0109】
新鮮な牛乳を均質化して低温殺菌処理を行い、室温に冷却後、0.1g/Lの発酵剤を添加して、均一に攪拌し、32~35℃で30分間酸性化して0.05g/Lのキモシンを添加し、均一に混合してカードができたら切断し、ホエーを排除してチーズカードを得た。チーズカードの表面に10~10cfu/mLのサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を散布し、30~37℃で3~5日培養し、成長して成熟後、3.0g/Lの食塩を加え、その後、圧搾成形によりチーズ完成品を得た。
【0110】
発酵チーズ完成品について測定したところ、サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を添加したチーズ完成品の生体アミンの含有量は対照群に比べて16.37%低減している。
【0111】
実施例14:サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2のタバコ発酵への使用による品質向上と有害物質低減
実施例1の方法で種菌を活性化させた。活性化した菌液を4℃、10000gで15分間遠心分離し、収集した菌体から無菌水で10~10cfu/mLのサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2菌液を調製し、菌液を葉タバコの表面に均一に散布して、充分かつ均一に混合し、等量の無菌水で処理したものを対照とし、30~37℃で湿度70~80%の恒温恒湿チャンバーに入れて15日発酵培養して、毎日通風し、培養が終了した後、葉タバコを水分15%未満まで乾燥した。
【0112】
発酵葉タバコの品質を測定したところ、得られた発酵葉タバコの香気成分が明らかに増加し、不要なガスが減り、刺激性が低減している。発酵葉タバコにおける有害成分のタール量、HCN、フェノール、NH及び亜硝酸塩の含有量は対照群に比べてそれぞれ23.51%、16.25%、19.75%、27.09%、37.62%低減している。
【0113】
実施例15:サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2の飼料発酵への使用による栄養転化率の向上
実施例1の方法で種菌を活性化させた。米糠、藁、豆粕を(1~5):(1~5):2の割合で均一に混合し、粉砕して発酵物を調製した。原料と水の比が1:0.5~0.9の割合で水を加えて、10‰~10%の割合で菌液濃度が10~10cfu/mLのサッカロポリスポラ・ヒルスタJ2を播種し、均一に攪拌して、自然発酵させ、発酵温度は30~40℃で、発酵時間は4~9日であり、発酵が終了後に水分の含有量が15%未満になるまで乾燥して、生物発酵飼料を得た。
【0114】
発酵飼料の品質を解析した。得られた発酵飼料には特別な香気があり、しかも栄養が豊富で、アミノ酸の構成にバランスがとれており、有機酸の含有量は対照群に比べて26.77%高くなり、アミノ酸の含有量は21.98%高くなり、粗タンパク質の含有量は18.53%高くなっている。
【0115】
実施例16:サッカロポリスポラによる魚の発酵食品における生体アミンの含有量の低減
実施例1の方法で種菌を活性化させた。サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2菌液、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3菌液をそれぞれ調製し、両者を1:0.7~1.5で混合して、複合菌液Mixを得た。
【0116】
中性プロテアーゼを用いた発酵によりケツギョの塩漬け物を調製した。プロセスは具体的に次のとおりであった。
(1)サンプル前処理:ケツギョの内臓を取り除き、秤量して3kgであった。
(2)発酵液の調製:ケツギョと等質量の飲料水を使用し、これを100%として、6%の塩、1%のネギ、0.6%のショウガ、0.1%のトウシキミ、0.05%のウイキョウ、0.05%のクミン、0.01%の唐辛子、0.01%のサンショウ、300000Uの中性プロテアーゼを加えて、均一に混合して、発酵液を得た。
(3)播種:発酵液を3部に分け、一部は10%の播種量で発酵液に菌液濃度が10cfu/mLの複合菌液Mixを播種し、もう一部は10%の播種量で発酵液に菌液濃度が10cfu/mLのサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3を播種し、さらにもう1部は播種しないとした。
(4)発酵:ケツギョをステップ(3)の播種後の発酵液に浸し、上から石をかけて押し固め、20℃で6日発酵させて、ケツギョの塩漬け物を得た。
【0117】
生体アミンの測定方法は次のとおりである。50mL遠心管に5.0gの挽いた魚肉サンプルを秤量し、20mLの5%トリクロロ酢酸を加えて30分間超音波処理して、50mL栓付き遠心管に移し、6000回転/分で10分間遠心分離して、上澄み液を50mLメスフラスコに移し、残渣を20mLの前記溶液で再び1回抽出して、上澄み液を合わせて目盛りまで希釈した。その後、1mLの上澄み液を15mL遠心管に正確に量り取り、1mLの飽和NaHCO溶液を加えて均一に混合し、2mLのダンシルクロリド(5mg/mLのアセトン)を加えて、均一に混合して65℃の恒温水浴鍋に入れて暗所で30分間誘導し、室温で静置した後、0.5mLの飽和NaCl溶液を加え、均一に混合して5mLのジエチルエーテルを加えて、20秒間ボルテックスし、静置して分層した後、上層の有機相を15mL遠心管に移し、下層の水相は1回抽出して、2回の抽出液を合わせて、50℃の水浴下で窒素ブローして乾燥させた。
【0118】
1mLのアセトニトリルを加えて振盪して均一に混合して、残留物を溶解し、0.22μmのフィルターで濾過し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。
【0119】
発酵が終了後、複合菌剤Mixで強化したケツギョの塩漬け物の生体アミンは対照群に比べて20.87%低減している。
【0120】
実施例17:サッカロポリスポラの料理酒への使用による生体アミンの含有量低減
実施例1の方法で生体アミンの含有量を測定した。
【0121】
実施例5の醸造方法により純粋発酵黄酒を得、発酵黄酒に質量基準で10%の食塩を加えて、滅菌機において85℃で30分間滅菌して熱充填した。
【0122】
菌株の料理酒における生体アミン低減効果を解析した。高速液体クロマトグラフィーにより料理酒における生体アミンの含有量を測定し、複合菌剤Mix、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3を添加したサンプル群は、対照群に比べてそれぞれ23.16%、18.91%低減している。
【0123】
実施例18:サッカロポリスポラの食酢への使用による生体アミンの含有量低減
実施例5の醸造方法で純粋発酵黄酒を得、これを酢酸の発酵原料として、実施例1の方法で生体アミンの含有量を測定した。
【0124】
酢酸の発酵では固体発酵プロセスを採用した。大型の糠、ふすま、黄酒を1:4:10の質量比で均一に攪拌して、5%の酢の固体発酵基質を播種し、播種後の最初の2日は毎日材料の表面から前記固体発酵基質をひっくり返し、温度を35~42℃に保持した。6~8日目に材料の底部に至った。8~12日目では、毎日底部から前記固体発酵基質をひっくり返し、温度が自ずと低減した。酢の固体発酵基質から生酢を分離して、85℃で30分間滅菌して12ヶ月熟成させた。充填した前に高温滅菌を行ってから、熱充填した。
【0125】
複合菌剤Mix及びサッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3の生体アミン低減効果を解析した。固体発酵醸造食酢における酢酸の含有量はいずれも55g/Lであった。サンプルにおける生体アミンの含有量を測定し、複合菌剤Mix、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3を添加したサンプル群は、対照群に比べてそれぞれ25.08%、27.61%低減している。
【0126】
実施例19:サッカロポリスポラのチーズ発酵への使用による生体アミンの含有量低減
実施例1の方法で種菌を活性化し生体アミンの含有量を測定した。サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2菌液、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3菌液をそれぞれ調製し、両者を1:0.8~1.4で混合して、複合菌液Mixを得た。
【0127】
新鮮な牛乳を均質化して低温殺菌処理を行い、室温に冷却後、発酵剤として0.1mL/Lの菌体数比1:1のラクトバチルス・ブルガリクスとラクトバチルス・プランタルムの混合菌液を添加し(菌液の菌体濃度は1×10~10cfu/mL)、均一に攪拌し、32~35℃で30分間酸性化して0.05g/Lのキモシンを添加し、均一に混合してカードができたら切断し、ホエーを排除してチーズカードを得た。チーズカードの表面に10~10cfu/mLのサッカロポリスポラ菌剤を散布し、30~37℃で3~5日培養し、成長して成熟後に3.0g/Lの食塩を加え、その後、圧搾成形によりチーズ完成品を得た。
【0128】
発酵チーズ完成品を測定したところ、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3、複合菌剤Mixを添加したチーズ完成品の生体アミンの含有量は対照群に比べて13.33%、21.66%低減している。
【0129】
実施例20:サッカロポリスポラのタバコ発酵への使用による品質向上と有害物質低減
実施例1の方法で種菌を活性化させた。サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2菌液、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3菌液をそれぞれ調製し、両者を1:0.7~1.5で混合して、複合菌液Mixを得た。
【0130】
活性化した菌液を4℃、10000gで15分間遠心分離し、収集した菌体から無菌水で10~10cfu/mLの菌液を調製し、菌液を葉タバコの表面に均一に散布して、充分かつ均一に混合し、等量の無菌水で処理したものを対照とし、30~37℃で湿度70~80%の恒温恒湿チャンバーに入れて15日発酵培養して、毎日通風し、培養が終了した後、葉タバコを水分15%未満まで乾燥した。
【0131】
発酵葉タバコの品質を測定したところ、発酵葉タバコの香気成分が明らかに増加し、不要なガスが減り、刺激性が低減している。サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3を添加した発酵葉タバコにおける有害成分のタール量、HCN、フェノール、NH及び亜硝酸塩の含有量は対照群に比べてそれぞれ32.65%、17.55%、17.69%、25.36%、29.17%低減している。複合菌剤Mixを添加した発酵葉タバコにおける有害成分のタール量、HCN、フェノール、NH及び亜硝酸塩の含有量は対照群に比べてそれぞれ30.12%、17.14%、22.01%、16.73%、27.15%低減している。
【0132】
実施例21:サッカロポリスポラの飼料発酵への使用による栄養転化率の向上
実施例1の方法で種菌を活性化させた。サッカロポリスポラ・ヒルスタJ2菌液、サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3菌液をそれぞれ調製し、両者を1:0.5~1.2で混合して、複合菌液Mixを得た。
【0133】
米糠、藁、豆粕を(1~5):(1~5):2の割合で均一に混合し、粉砕して発酵物を調製した。原料と水の比が1:0.5~0.9の割合で水を加えて、10‰~10%の割合で菌液濃度が10~10cfu/mLの菌液を播種し、均一に攪拌して、自然発酵させ、発酵温度は30~40℃で、発酵時間は4~9日であり、発酵が終了後に水分の含有量が15%未満になるまで乾燥して、生物発酵飼料を得た。
【0134】
発酵飼料の品質を解析した。得られた発酵飼料には特別な香気があり、しかも栄養が豊富で、アミノ酸の構成にバランスがとれている。サッカロポリスポラ・ジアングシエンシスJ3を添加した発酵飼料における有機酸の含有量は対照群に比べて37.26%高くなり、アミノ酸の含有量は18.57%高くなり、粗タンパク質の含有量は23.41%高くなっている。複合菌剤Mixを添加した発酵飼料における有機酸の含有量は対照群に比べて29.18%高くなり、アミノ酸の含有量は10.22%高くなり、粗タンパク質の含有量は14.48%高くなっている。
【0135】
上記の好適な実施例で本発明を開示しているが、本発明はそれに限定されない。当業者は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な変更や修正を行うことができ、本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載した内容に準拠する。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2023502810000001.app
【国際調査報告】