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特表2023-502851充電式電池用のナノシリコン粒子/ワイヤーのアーク炉による製造
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  • 特表-充電式電池用のナノシリコン粒子/ワイヤーのアーク炉による製造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】充電式電池用のナノシリコン粒子/ワイヤーのアーク炉による製造
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/02 20060101AFI20230119BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230119BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022521668
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 CA2020000117
(87)【国際公開番号】W WO2021068054
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/913,152
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522143438
【氏名又は名称】エイチピーキュー・ナノ・シリコン・パウダーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミラド・マルダン
(72)【発明者】
【氏名】アリ・シャーヴェルディ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キャラバン
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB04
4G072BB05
4G072BB20
4G072GG03
4G072GG04
4G072HH01
4G072JJ47
4G072LL03
4G072MM03
4G072MM22
4G072MM38
4G072MM40
4G072QQ09
4G072RR22
4G072RR28
4G072UU30
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA13
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】
リチウムイオン電池のためのアノードの、高容量かつ高エネルギー効率の製造に使用する、粒子、ナノワイヤーまたはその両方の形態のナノシリコンおよび/またはナノシリコン-カーボン被覆複合体材料を製造するための、他の前処理材料を使用しない純粋なシリコンを原材料として用いるプロセスおよび装置。本装置は、少なくとも1つの電極を含み、反応器内に供給されたシリコンを溶融および気化するための少なくとも1つのアーク、例えばDC移送アークを提供するように適合された反応器を含む。冷却システムは、ナノ粒子および/またはナノワイヤーを形成するように、そのように生成されたシリコン蒸気を、反応器内で、冷却するためのガスを供給するために提供される。反応器は真空下にある。ガスは、ボルテックスによって、および/または中空電極を介して注入することができる。アーク電圧を制御し、電極の侵食を補うために、電極は消耗可能であり、垂直方向に移動可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純粋なナノシリコン、またはナノシリコン-カーボン被覆複合体の製造に使用するためのプロセスであって、前記プロセスが、
a)シリコンを溶融および気化させるための1つまたは複数のDC移送アークを使用する段階と、
b)ナノ粒子およびナノワイヤーの少なくとも1つを形成するために前記シリコン蒸気を冷却する段階を含むプロセス。
【請求項2】
反応器が提供され、前記反応器が、前記アーク、電極およびるつぼを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応器が真空下にある、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記シリコン蒸気を冷却するために前記反応器内にガスが注入される、請求項2および3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ガスがボルテックスによって注入される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記電極が中空であり、前記ガスが前記電極を介して注入される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
前記電極が、アーク電圧を制御し、電極の浸食を補うために、消耗可能であり、移動可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記シリコン蒸気の冷却に用いられる冷却ガスが、アルゴンなどの不活性ガスを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記シリコン蒸気の冷却に用いられる冷却混合物が、気化ゾーンに炭化水素を導入するために、不活性ガスおよび炭化水素などの炭素含有前駆体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記シリコン蒸気の冷却が、ボルテックスおよび中空電極のうち少なくとも1つを介して前記反応器の内部で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記シリコン蒸気の冷却が、例えば、ドラバルノズル(C-Dノズル)、低温ガス、または液体流、および固体冷却のうちの1つを使用して、前記反応器の外部で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
冷却された粒子が、例えばキャンドルフィルターでろ過され、次に、密閉されたコレクターに収集され、前記収集された粉体が、その後、例えば酸化を避けるために制御された不活性雰囲気を有するグローブボックスに移される、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
原料シリコンが、バッチ式または連続式で供給される、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
原料シリコンが、初めに、前記電極と前記反応器のるつぼの底部との間のアークによって溶融され、溶融したシリコンがアノードとして作用し、次に、前記電極と前記アノードとの間に形成されるアークによって気化される、請求項2から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
原料シリコンが、初めに、誘導コイルによって溶融され、溶融したシリコンがアノードとして作用し、次に、前記電極と前記アノードとの間に形成されるアークで気化される、請求項2から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記誘導コイルが、前記反応器の壁に設けられる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記誘導コイルが、前記原料シリコンを直接的に予熱および溶融するように適合されており、前記溶融したシリコンの気化が、主に前記アークによって達成される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
前記誘導コイルが、るつぼの誘導加熱によって前記原料シリコンを間接的に予熱および溶融するように適合され、前記溶融したシリコンの気化が、主に前記アークによって達成される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
冷却レートが、前記ボルテックスに定義された穴の数および直径ならびに前記ガス流量によって、さらにまた、例えば冷却ガスの進入角度を選択することによって調整されるように適合される、請求項5および10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載のプロセスにより製造されたナノシリコン-カーボン複合体を用いてリチウムイオン電池を製造するためのプロセス。
【請求項21】
純粋なナノシリコン、またはナノシリコン-カーボン被覆複合体の製造に使用するための装置であって、前記装置が、
a)少なくとも1つの電極を含む反応器であって、前記反応器内に供給されたシリコンを溶融および気化させるための少なくとも1つのアーク、例えばDC移送アークを提供するように適合された反応器と、
b)ナノ粒子およびナノワイヤーの少なくとも一方を形成するように、そのように生成されたシリコン蒸気を冷却するための冷却システムを含む装置。
【請求項22】
前記反応器がるつぼを含む、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記反応器が、例えば真空ポンプを介して真空下にある、請求項21および22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記シリコン蒸気を冷却するために、前記反応器内に冷却ガスを注入するためのガスインジェクタが設けられている、請求項21から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記冷却ガスがボルテックスによって注入される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記電極が中空であり、前記ガスインジェクタが、前記中空電極を介して前記反応器のチャンバ内に前記冷却ガスを注入するための前記中空電極を含む、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記電極が、アーク電圧を制御し、電極の侵食を補うために、消耗可能であり、典型的には垂直に移動可能である、請求項21から26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記シリコン蒸気を冷却するために用いられる前記冷却ガスが、アルゴンのような不活性ガスを含む、請求項24から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記シリコン蒸気を冷却するために用いられる冷却混合物が、前記反応器の気化ゾーンに炭化水素を導入するように、不活性ガスおよび炭化水素などの炭素含有前駆体を含む、請求項21から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記冷却システムが、前記反応器の内部に設けられ、前記シリコン蒸気の冷却のためのボルテックスおよび中空電極のうち少なくとも1つを含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記冷却システムが、前記反応器の外部に設けられ、例えば、ドラバルノズル(C-Dノズル)、低温ガス、または液体流、および固体冷却のうちの1つを含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
ろ過システムが、前記反応器の外部に設けられ、冷却された粒子をろ過するように適合されており、前記ろ過システムが、例えばキャンドルフィルターを含む、請求項21から31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
コレクターが、前記反応器の外部に設けられ、ろ過された粒子を収集するように適合されている、請求項21から32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
グローブボックスが、前記コレクターの下流に設けられ、前記コレクターから受け取った前記粉体を収容するように適合されており、前記グローブボックスが、前記粉体の酸化を避けるために制御された不活性雰囲気を有する、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記反応器が、典型的には連続的に、原料シリコンを反応器チャンバに供給するための供給口を含む、請求項1から34のいずれか一項に記載の装置。
【請求項36】
前記反応器がるつぼを含み、初期アークが、前記反応器に供給された原料シリコンを溶かすために前記電極と前記るつぼの底部の間に提供されるように適合され、そのように溶融したシリコンが、次にアノードとして作用し、前記電極と前記アノードの間に形成された前記アークによって気化するように適合されている、請求項21から35のいずれか一項に記載の装置。
【請求項37】
前記反応器が、前記反応器内に供給された原料シリコンを溶融するように適合された誘導コイルを含み、そのように溶融したシリコンが、次にアノードとして作用し、前記電極と前記アノードの間に形成された前記アークによって気化されるように適合されている、請求項21から35のいずれか一項に記載の装置。
【請求項38】
前記誘導コイルが前記反応器の壁に設けられる、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記誘導コイルが、前記原料シリコンを直接的に予熱および溶融するように適合されており、そのように溶融した前記シリコンの気化が、主に前記アークによって達成される、請求項37に記載の装置。
【請求項40】
前記誘導コイルが、前記反応器のるつぼの誘導加熱によって、前記原料シリコンを間接的に予熱および溶融するように適合されており、そのように溶融した前記シリコンの気化が、主に前記アークによって達成される、請求項37に記載の装置。
【請求項41】
前記ボルテックスに穴が定義され、前記穴の数および直径が、冷却レートを調整するために選択される、請求項25および30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項42】
前記冷却システムが、選択された冷却ガス進入角度を提供するように適合されている、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記冷却システムが、前記冷却ガスの流量を調整するように適合されている、請求項21から42のいずれか一項に記載の装置。
【請求項44】
延長部が、るつぼを電源に接続するために、前記反応器の前記るつぼから外部に突出する、請求項21から43のいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
前記電極が前記反応器の底部の上に設けられ、原料シリコンが前記反応器の前記底部に供給されるように適合され、前記冷却システムが前記原料シリコンと前記電極の下端との間に冷却ガスを供給するように適合され、前記アークがカソードとして作用する前記電極とアノードとして作用する溶解した原料シリコンとの間に提供される、請求項21から44のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
原料シリコンを供給するために、前記反応器の上端に入口が設けられ、前記反応器から冷却された粒子を取り出すために、前記反応器の上端に出口が設けられる、請求項21から45のいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
前記出口が、前記冷却された粒子をろ過するように適合されたろ過ユニットと、その下流で連通する、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
請求項21から47のいずれか一項に記載の装置により製造されたナノシリコン-カーボン複合体を用いてリチウムイオン二次電池を製造するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2019年10月9日に出願された現在係属中の米国仮出願第62/913,152号の優先権を主張し、この米国仮出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本主題は、特にリチウムイオン電池の製造における原料として使用するための、ナノシリコンおよび/またはナノシリコン-カーボン複合体の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン(Li-ion)電池のアノード材料として、ナノ粒子、ナノワイヤー、または多孔質ナノシリコンの形でシリコンを使用することが、近年広く研究されている。アノード材料として商業的に使用されているグラファイトと比較して、シリコンの比容量はグラファイトの10倍である(Siとグラファイトでそれぞれ3800-4000mAh/gと約380mAh/g)。それにもかかわらず、シリコンの性質とその結果として生じるリチウムイオンとの反応のために、リチウムイオン電池にシリコンを実装することは依然として困難である。
【0004】
より高性能なリチウムイオン電池を製造するための課題の1つは、アノード材料としてナノシリコン粉体を使用することである[参考文献1から3]。リチウム化プロセスでは、結晶シリコン(c-Si)がアモルファスLiSiに変わり、完全にリチウム化されると結晶Li15Siに変わる。リチウム化中に、Siアノードは大きな体積変化(最大280-400%)を受け、アノードの劣化とバッテリー容量の低下につながる。この劣化の背後にある理由は、リチウム化中に一度電圧が50-70mVに低下するとLiSi(x≒3.75)相[参考文献4から6]が形成されることである[参考文献7]。体積変化によって生じる応力およびひずみ場は、シリコン粒子の亀裂または破壊を引き起こし、それによって電池の寿命を短くする。
【0005】
文献[参考文献4、6、および8]によると、機械的緩衝は、体積変化の問題を克服するための有望な解決策である。この技術は、シリコン-カーボン複合体を作成するために、ナノシリコン粒子をグラファイトやカーボンなどのアクティブシェルで覆うことである。ナノシリコンのカーボン被覆された形態は、リチウムイオン電池の製造において電極としてシリコンを使用することの限界を克服するための潜在的な候補であることが示されている。シリコン-カーボン複合体粒子は、より高い容量とクーロン効率を提供する。被覆カーボン層は、応力/ひずみ場に抵抗し、元の材料の破壊靭性を高め、LiSi相の形成を本質的に防ぐためのバッファーとして機能する。固体電解質界面(SEI)も、リチウムイオン電池の容量性能における重要な要素である。粒子の亀裂は、より多くのSEIをもたらし、その結果、より不活性な表面をもたらす。
【0006】
2019年1月17日にLyubinaに公開された米国特許公開第2019/0016601A1号[参考文献9]は、アノードとして使用されるナノシリコン-カーボン被覆粒子が、リチウム化/脱リチウム化サイクル中に、より高い容量を示すことを報告した。主に、SiHの化合物としてのシリコンと、炭素前駆体としての炭化水素(CH)をRFプラズマと冷却粒子に導入する化学蒸着(CVD)法によって、ナノシリコン-カーボン複合体が製造されている。この刊行物では、炭素はシリコン粒子全体に分布し、外層で最もアモルファス炭素濃度が高いことがわかる。シリコン粒子の周りのシェルとしてのアモルファスカーボンは、SEIの形成を減少させると考えられている[参考文献10から13]。シリコン-カーボン複合体のカーボン濃度が高いほど、過度なSEI形成が防止されるため、より有利である。
【0007】
2016年6月28日にYangらに発行された米国特許第9,379,381B2号[参考文献8]は、カーボン-シリコン複合粒子を取得するためのメカノケミカルプロセスについても説明した。このプロセスは、ボールミル粉砕、粉体後処理、およびCVDによるカーボン被覆の下でのSiClとLi13Siの間の反応を含む。
【0008】
粒子サイズの制御は、シリコンアノードの亀裂と粉砕を制御するためのもう1つの要素である。Liuら[参考文献6]およびM.T.McDowellら[参考文献14]は、その場(in-situ)TEM観察により、直径150nm未満の完全なリチウム化シリコン粒子の亀裂発生が生じないことを報告した。より小さな粒子は、体積膨張によって生まれるリチウムイオン輸送とひずみ緩和を促進することが示されている。ナノワイヤーの場合、Ryuら[参考文献15]は、それを下回ると亀裂は発生しない直径300nmのしきい値サイズを報告した。
【0009】
現在、上述の既知の製造技術のほとんどは、シリコン原料が化合物としてプロセスに導入される[参考文献8、9、および16]、または有毒物質を使用する[参考文献17]、化学/電気化学プロセスまたはCVDプロセスである。
【0010】
したがって、より高い生産速度およびより良好なエネルギー効率で二次電池を製造するためのナノシリコンおよび/またはナノシリコンカーボン被覆複合体またはナノワイヤーカーボン被覆複合体を製造するためのシステムを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、ナノシリコンおよび/またはナノシリコン-カーボン複合体を製造するための新しいシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に記載の実施形態は、一態様では、純粋なナノシリコン、ナノシリコン-カーボン複合体、またはナノシリコン-カーボン被覆複合体の製造に使用するためのプロセスを提供し、そのプロセスは、
a)シリコンを溶融および気化させるための1つまたは複数のDC移送アークを使用する段階と、
b)冷却システムを提供する段階を含む。
【0013】
また、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、誘導コイルが、るつぼの誘導加熱によって、シリコンを直接的に予熱および溶融するか、またはシリコンを間接的に予熱および溶融するために提供され、気化は主にアークによって達成される。
【0014】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、冷却システムが、ボルテックスおよび/または中空電極(アルゴンのみ、またはアルゴン-炭化水素の混合物)などの内部冷却システムを含むプロセスを提供する。
【0015】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、冷却システムが、ドラバル(De Laval)ノズル(C-Dノズル)、低温ガス、液体流または固体冷却などの外部冷却システムを含むプロセスを提供する。
【0016】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、そのように製造されたナノシリコン-カーボン複合体を使用してリチウムイオン電池を製造するためのプロセスを提供する。
【0017】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、ナノシリコン-カーボン被覆複合体を製造するための方法を提供する。
【0018】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、純粋なナノシリコンまたはナノシリコン-カーボン被覆複合体を製造する際に使用するためのプロセスを提供し、そのプロセスは、
a)シリコンを溶融および気化させるために1つまたは複数のDC移送アークを使用する段階と、
b)ナノ粒子およびナノワイヤーの少なくとも1つを形成するためにシリコン蒸気を冷却(クエンチ)する段階を含む。
【0019】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、反応器が提供されるプロセスを提供し、反応器は、アーク、電極、およびるつぼを含む。
【0020】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、反応器が真空下にあるプロセスを提供する。
【0021】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、シリコン蒸気を冷却するために、ガスが反応器に注入されるプロセスを提供する。
【0022】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、ガスがボルテックスによって注入されるプロセスを提供する。
【0023】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、電極が中空であり、ガスが電極を介して注入されるプロセスを提供する。
【0024】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、アーク電圧を制御し、電極の侵食を補うために、電極が消耗可能であり、移動可能であるプロセスを提供する。
【0025】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、シリコン蒸気の冷却に用いられる冷却ガスがアルゴンなどの不活性ガスを含むプロセスを提供する。
【0026】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、シリコン蒸気の冷却に用いられる冷却混合物が、気化ゾーンに炭化水素を導入するために、不活性ガスおよび炭化水素などの炭素含有前駆体を含むプロセスを提供する。
【0027】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、シリコン蒸気の冷却がボルテックスおよび中空電極のうちの少なくとも1つを介して反応器の内部で行われるプロセスを提供する。
【0028】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、シリコン蒸気の冷却が、例えば、ドラバルノズル(C-Dノズル)、低温ガス、または液体流、および固体状態の冷却のうち1つを使用して、反応器の外部で行われるプロセスを提供する。
【0029】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、冷却された粒子が、例えばキャンドルフィルターでろ過され、次に、密封されたコレクターに収集され、収集された粉体が、その後、例えば酸化を避けるための制御された不活性雰囲気を有するグローブボックスへと移されるプロセスを提供する。
【0030】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、原料シリコンがバッチ式または連続式で供給されるプロセスを提供する。
【0031】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、原料シリコンが、初めに電極と反応器のるつぼの底部の間のアークによって溶融され、溶融したシリコンがアノードとして作用し、次に電極とアノードとの間に形成されるアークによって気化されるプロセスを提供する。
【0032】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、原料シリコンが、初めに誘導コイルによって溶融され、溶融したシリコンがアノードとして作用し、次に電極とアノードとの間に形成されるアークによって気化されるプロセスを提供する。
【0033】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、誘導コイルが反応器の壁に設けられるプロセスを提供する。
【0034】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、誘導コイルが、原料シリコンを直接的に予熱および溶融するように適合され、溶融したシリコンの気化が、主にアークによって達成されるプロセスを提供する。
【0035】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、誘導コイルがるつぼの誘導加熱によって原料シリコンを間接的に予熱および溶融するように適合され、溶融したシリコンの気化が、主にアークによって達成されるプロセスを提供する。
【0036】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、冷却レートが、ボルテックスに定義された穴の数および直径ならびにガス流量によって、さらにまた、例えば冷却ガスが入る角度を選択することによって調整されるように適合されるプロセスを提供する。
【0037】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、上記のプロセスのいずれか1つによって製造されたナノシリコン-カーボン複合体を用いてリチウムイオン電池を製造するためのプロセスを提供する。
【0038】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、純粋なナノシリコンまたはナノシリコンカーボン被覆複合体を製造に使用するための装置を提供し、その装置は
a)少なくとも1つの電極を含み、反応器に供給されたシリコンを溶融および気化させるための少なくとも1つのアーク、例えばDC移送アークを提供するように適合された反応器と、
b)ナノ粒子およびナノワイヤーのうちの少なくとも1つを形成するように、そのように生成されたシリコン蒸気を冷却するための冷却システムを含む。
【0039】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、反応器がるつぼを含む装置を提供する。
【0040】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、反応器が、例えば真空ポンプを介して真空下にある装置を提供する。
【0041】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、シリコン蒸気を冷却するために、反応器内に冷却ガスを注入するためのガスインジェクタが設けられている装置を提供する。
【0042】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、冷却ガスがボルテックスによって注入される装置を提供する。
【0043】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、電極が中空であり、ガスインジェクタが、中空電極を介して反応器のチャンバ内に冷却ガスを注入するための中空電極を含む装置を提供する。
【0044】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、アーク電圧を制御し、電極の侵食を補うために、電極が消耗可能であり、典型的には垂直に移動可能である装置を提供する。
【0045】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、シリコン蒸気を冷却するために使用される冷却ガスが、アルゴンのような不活性ガスを含む装置を提供する。
【0046】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、シリコン蒸気を冷却するために使用される冷却混合物が、反応器の気化ゾーンに炭化水素を導入するように、不活性ガスおよび炭化水素などの炭素含有前駆体を含む装置を提供する。
【0047】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、冷却システムが反応器の内部に設けられ、シリコン蒸気を冷却するためのボルテックスおよび中空電極のうちの少なくとも1つを含む装置を提供する。
【0048】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、冷却システムが反応器の外部に設けられ、例えば、ドラバルノズル(C-Dノズル)、低温ガス、または液体流、および固体冷却のうち1つを含む装置を提供する。
【0049】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、ろ過システムが反応器の外部に設けられ、冷却された粒子をろ過するように適合されており、ろ過システムが、例えばキャンドルフィルターを含む装置を提供する。
【0050】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、コレクターが、反応器の外部に提供され、ろ過された粒子を収集するように適合されている装置を提供する。
【0051】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、グローブボックスが、コレクターの下流に設けられ、コレクターから受け取った粉体を収容するように適合されており、グローブボックスが、粉体の酸化を回避するために制御された不活性雰囲気を有する装置を提供する。
【0052】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、反応器が、典型的には連続的に、原料シリコンを反応器チャンバに供給するための供給口を含む装置を提供する。
【0053】
さらに、本明細書に記載される実施形態は、別の態様において、反応器がるつぼを含み、初期アークが、反応器に供給される原料シリコンを溶かすために電極とるつぼの底部との間に提供されるように適合され、そのように溶融したシリコンが、次にアノードとして作用し、電極とアノードとの間に形成されるアークによって気化するように適合されている装置を提供する。
【0054】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、反応器が、反応器に供給された原料シリコンを溶融するように適合された誘導コイルを含み、そのように溶融したシリコンが、次にアノードとして作用し、電極とアノードの間に形成されたアークによって気化されるように適合されている装置を提供する。
【0055】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、誘導コイルが反応器の壁に設けられる装置を提供する。
【0056】
さらに、本明細書に記載された実施形態は、別の態様において、誘導コイルが、原料シリコンを直接的に予熱および溶融するように適合されており、そのように溶融したシリコンの気化が、主にアークによって達成される装置を提供する。
【0057】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、誘導コイルが、反応器のるつぼの誘導加熱によって原料シリコンを間接的に予熱および溶融するように適合されており、そのように溶融したシリコンの気化が、主にアークによって達成される装置を提供する。
【0058】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、ボルテックスに穴が定義され、穴の数および直径が、冷却レートを調整するために選択される装置を提供する。
【0059】
さらに、本明細書に記載される実施形態は、別の態様において、冷却システムが、選択された冷却ガス進入角度を提供するように適合されている装置を提供する。
【0060】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、冷却システムが、冷却ガスの流量を調整するように適合されている、装置を提供する。
【0061】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、延長部が、るつぼを電源に接続するために、反応器のるつぼから外部に突出する装置を提供する。
【0062】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、電極が反応器の底部の上に設けられ、原料シリコンが反応器の底部に供給されるように適合され、冷却システムが原料シリコンと電極の下端との間に冷却ガスを供給するように適合され、アークがカソードとして作用する電極とアノードとして作用する溶解した原料シリコンの間に提供される装置を提供する。
【0063】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、原料シリコンを供給するために、反応器の上端に入口が設けられ、反応器から冷却された粒子を引き出すために、反応器の上端に出口が設けられる装置を提供する。
【0064】
さらに、本明細書に記載される実施形態は、別の態様において、出口が、冷却された粒子をろ過するように適合されたろ過ユニットと、その下流で連通する装置を提供する。
【0065】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、上記装置のいずれか1つによって製造されたナノシリコン-カーボン複合体を用いてリチウムイオン電池を製造するための装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
本明細書に記載された実施形態のより良い理解のために、そしてそれらがどのように実施され得るかをより明確に示すために、次に、少なくとも1つの例示的な実施形態を示す添付の図面を、例示としてのみ参照する。
【0067】
図1】例示的な実施形態によって製造されたナノシリコン粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図2】例示的な実施形態による、SEMによって作られた、ナノシリコンワイヤーおよび粒子のSEM画像である。
図3】例示的な実施形態による、ナノシリコンおよび/またはナノシリコン-カーボン複合体製造のプロセスステップを例示的に示す概略図である。
図4】例示的な実施形態による、反応器の概略垂直断面図である。
図5】例示的な実施形態による、ガス(または任意の種類の不活性ガス、または不活性ガスと炭化水素の混合物)の冷却に使用される、図4の反応器の、ボルテックスの概略底面図である。
図6】例示的な実施形態による、誘導コイルを用いる予熱システムを含む反応器の概略垂直断面図である。
図7】例示的な実施形態による、中空グラファイト電極を介した冷却ガス注入(炭化水素注入)を含む反応器の概略垂直断面図である。
図8】例示的な実施形態による、中空グラファイト電極とボルテックスを介した冷却ガス注入(炭化水素注入)を含む反応器の概略垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本主題は、原料として純粋なシリコンを用い、他の前処理を行わないプロセスに関するものである。アークプロセスは拡張性があることが証明されており、シリコンの比気化エネルギーの計算値は約5kWhr/kgであって、多くの異なるアークプロセスのエネルギー要件内にあることがわかっている(例えば、Siemensプロセスでは100kWh/kg[参考文献19]であるのと比較し、シリコン製錬では11-13kWhr/kgのシリコンを必要とする[18])。
【0069】
本主題は、リチウムイオン電池のアノードの高容量および高エネルギー効率な製造に使用される、1μm未満、好ましくは300nm未満、最も好ましくは150nm未満の粒子、ナノワイヤーまたはその両方の組み合わせの形態のナノシリコンおよび/またはナノシリコン-カーボン被覆複合体材料を製造するプロセスを開示するものである。より具体的には、炭素前駆体の種類と混合ガス中の濃度を調整することにより、特定のカーボン層の厚さと炭素濃度の有無にかかわらず球状ナノシリコン粉体とナノワイヤーを製造する方法が、本明細書に提供される。
【0070】
したがって、本主題は、2019年4月18日にPyrogenesis Canada Incに公開された国際特許公開第WO2019/071335A1号[参考文献20]に記載のものと同様の直流移送式電気アーク炉を使用するが、いくつかの重要な相違点を有する、ナノシリコンおよび/またはナノシリコン-カーボン複合体粉体製造のための実施形態を提供する。本実施形態では、炭化水素(炭素前駆体)を気化ゾーンに導入するために、反応器が真空下にあり、冷却ガスインジェクタとしてのボルテックスが反応器に加えられている。また、炭化水素前駆体の注入は、同じ目的で中空グラファイト電極を用いられてもよい。中空電極を使用する目的は、主に、アークを安定化させ気化活性化エネルギーまたはスパッタリングを低減して気化レートを高めるため、高温ゾーンで炭化水素を分解して炭素原子を導入するため、およびナノシリコンまたはナノシリコン-カーボン複合体の製造に向けて効果的な核生成プロセスを行うために、シリコン原子によるガスの過飽和状態のためのプラズマを発生させるためなど、いくつかの理由のためのガス導入にある。
【0071】
反応器にはカソードとして消耗可能である電極が1つ装備されているが、気化速度や製造速度を上げるために、それ以上の電極が用いられることも可能である。電極は、アーク電圧の制御と、電極の浸食を補うために、垂直方向に移動可能である。原料のシリコンが溶けると、それがアノードとして作用し、シリコンのアノードに移送されるアークが効果的にシリコンを蒸発させる。このプロセスでは、電気アークはシリコンから過飽和蒸気を発生させるために用いられ、その後、高い冷却レートでシリコン原子の核生成と凝集を開始し、ナノシリコン粒子を形成する。
【0072】
また、このプロセスはナノシリコン粒子の製造に限定されるものではなく、ガス速度や反応圧力によっては、ナノシリコンワイヤーおよび/またはナノシリコンワイヤー-カーボン被覆複合体も製造することができる(図1および図2参照)。
【0073】
図3は、ナノシリコンおよび/またはナノシリコン-カーボン複合体を製造するためのプロセスステップをまとめたものである。原料としてのシリコン片、または好ましくは粉体の形態は、連続プロセスとして連続的に供給することもでき、または、バッチプロセスとして反応器301に予め投入しておくこともできる。反応器301でシリコンが溶融し気化すると、真空ポンプ302が蒸気を冷却システム303に移送し、冷却ガス304(アルゴンのような不活性ガスのみ、または不活性ガスと炭化水素などの炭素含有前駆体の混合物)が蒸気を冷却させる。真空ポンプ302は、粉体特性(D50および粉体粒度分布(PSD))や気化温度(圧力が低いほど気化温度は低くなる)を制御するため、および酸素レベルを最小にするために、反応器301内の陰圧維持および反応器の圧力制限に使用される。
【0074】
不活性ガスは、ナノ粒子の酸化を防ぎ、シリコンの気化レートや冷却レートを制御するために使用される。冷却ガスとしての不活性ガスは、カーボン被覆を必要としないナノシリコンを製造するために用いられる。冷却された粒子は、ろ過チャンバ305に移送され、キャンドルフィルター306などの適切なろ過媒体に堆積され、その後、粒子は密閉されたコレクター307に収集される。最終ステップでは、ナノシリコン粉体の酸化を防ぐために、不活性雰囲気が制御されたグローブボックス308に、収集された粉体を移す。
【0075】
以下の実施形態例で説明するように、冷却システムは、高い冷却レートのために、反応器に直接組み込むこと、すなわち内部冷却とすることができ、冷却ガスが気化ゾーンで瞬時にシリコン蒸気に衝突する。内部冷却の場合、本主題は、ナノ粒子を製造するための操作構成を提供する。
【0076】
外部冷却の場合、ドラバルノズル(C-Dノズル)、低温ガスまたは液体の流れ、または固体冷却によって冷却を行うことができる。いずれの場合も、粉体はキャンドルフィルターでろ過され、粉体コレクターに収集される。
【0077】
以下の実施形態例は、ナノシリコン-カーボン被覆複合体の製造に使用することができ、シリコン粒子への炭素の溶解を開始するために、システムへの(炭素前駆体としての)炭化水素注入の構成および方法が提供されている。また、炭化水素注入は、上述の2つの構成の組み合わせでもなされる。どちらの反応器構成でも、炭化水素注入なしの場合と同様に、純粋なナノシリコンの製造に使用することができる。
【0078】
(例1)
図4は、プロセスの主要部分である反応器を表している。本明細書で用いられる反応器は、国際特許公開第WO2019/071335A1号[参考文献20]に記載された真空アーク炉を改良したものである。本反応器では、高速の不活性ガスまたは不活性ガスと炭素前駆体の混合ガスをアークに近い領域に移送するためのガスインジェクタが追加されている。この実施形態で使用される反応器は、電源402に接続されるカソードとして、そして電極シーラント403によって反応器に接続される、消耗可能なグラファイト電極401、または他の材料で作られた電極を含む。グラファイトるつぼ404は、延長部405によって電源402に接続され、シリコンの溶融とその後の気化に十分な高温で反応器を動作させるために耐火性の層405-a、405-bおよび405-cによって絶縁されている。
【0079】
バッチプロセスの場合、原料シリコン406は、るつぼ404に予め装填することができ、または好ましくは供給口407から連続的に供給して連続的に動作させることができる。アークは、最初に、装填物406を予熱して溶かすためにカソード401とるつぼ404の底部の間で点火され、次に、アーク413はシリコンを効果的に蒸発させるために溶けたシリコンに移される。炭素前駆体としての、または冷却剤として使用されるアルゴンなどの不活性ガス(または任意の種類の不活性ガス)によって希釈された状態の純粋な炭化水素は、ボルテックス409によって408に注入され、特定の角度および特定の速度で気化/冷却/核生成ゾーン411で410に入る。シリコンの気化、冷却、核生成プロセスは、好ましくは、アーク413の周辺領域で行われる。炭化水素は、エタン(C)、エチレン(CH)、メタン(CH)、プロパン(C)のいずれか、またはHの任意の形態の他の炭化水素であり得る。
【0080】
粉体とガスは出口412から図3のろ過チャンバ305に移送される。冷却レートは、図5に示すボルテックス501の穴502の数と直径、および図4のガス流量408によって調整することができる。より具体的には、冷却ガスの進入角度、ボルテックスの穴の数と直径の選択は、所望の冷却ガスレートに依存する。不活性ガスの種類もまた冷却レートに影響する。
【0081】
(例2)
あるいは、第2の実施形態において、図6に示すように、誘導コイル601によってシリコンの予熱/溶融工程を得ることができる。この場合、シリコンの気化は、主にアークによって実現される。
【0082】
(例3)
他の例として第3の実施形態が図7に示され、冷却ガス701は、図4および図6のボルテックス409を用いずに、中空グラファイト電極702(または他の材料からなる電極)を介して図4の気化/冷却/核生成ゾーン411に導入され得る。したがって、冷却ガス(アルゴン、または任意の種類の不活性ガスもしくは不活性ガスと炭化水素の混合物)は、気化/冷却/核生成ゾーン411にアーク方向に向かって直接進入する。
【0083】
(例4)
さらなる例としての第4の実施形態では、(図4および図6の)ボルテックス409と(図7の)中空電極702の両方を介して冷却ガス(アルゴンまたは任意の種類の不活性ガス、もしくは不活性ガスと炭化水素の混合ガス)を導入することによって、図8に示す構成で気化/冷却/核生成のプロセスが実現され得る。本実施形態では、冷却ガス(アルゴンまたは任意の種類の不活性ガスもしくは不活性ガスと炭化水素の混合ガス)701は、中空電極702とボルテックス409により、図4の気化/冷却/核生成ゾーン411に導入され得る。この構成により、冷却レートが高くなり、より具体的には炭化水素を使用する場合、シリコン粒子への炭素溶解が高くなる。
【0084】
上記の説明は実施形態の例を提供するが、説明された実施形態のいくつかの特徴および/または機能は、説明された実施形態の精神および動作原理から逸脱することなく変更可能であることが理解されるであろう。したがって、上述してきたことは、実施形態の例示であり、非限定的であることを意図しており、当業者には、本明細書に添付の特許請求の範囲に定義された実施形態の範囲から逸脱することなく他の変形および修正を行うことができることが理解されるであろう。
【0085】
(参考文献)
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純粋なナノシリコン、ナノシリコン-カーボン複合体、またはナノシリコン-カーボン被覆複合体の製造に使用するためのプロセスであって、前記プロセスが、
a)シリコンを溶融および気化させるための1つまたは複数のDC移送アークを使用する段階と、
b)ナノ粒子およびナノワイヤーの少なくとも1つを形成するために前記シリコン蒸気を冷却する段階を含むプロセス。
【請求項2】
反応器が提供され、前記反応器が、前記アーク、電極およびるつぼを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応器が真空下にある、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記シリコン蒸気を冷却するために前記反応器内にガスが注入される、請求項2および3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ガスがボルテックスによって注入される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記電極が中空であり、前記ガスが前記電極を介して注入される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
前記電極が、アーク電圧を制御し、電極の浸食を補うために、消耗可能であり、移動可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記シリコン蒸気の冷却に用いられる冷却ガスが、アルゴンなどの不活性ガスを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記シリコン蒸気の冷却に用いられる冷却混合物が、気化ゾーンに炭化水素を導入するために、不活性ガスおよび炭化水素などの炭素含有前駆体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記シリコン蒸気の冷却が、ボルテックスおよび中空電極のうち少なくとも1つを介して前記反応器の内部で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記シリコン蒸気の冷却が、例えば、ドラバルノズル(C-Dノズル)、低温ガス、または液体流、および固体冷却のうちの1つを使用して、前記反応器の外部で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
冷却された粒子が、例えばキャンドルフィルターでろ過され、次に、密閉されたコレクターに収集され、前記収集された粉体が、その後、例えば酸化を避けるために制御された不活性雰囲気を有するグローブボックスに移される、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
原料シリコンが、バッチ式または連続式で供給される、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
原料シリコンが、初めに、前記電極と前記反応器のるつぼの底部との間のアークによって溶融され、溶融したシリコンがアノードとして作用し、次に、前記電極と前記アノードとの間に形成されるアークによって気化される、請求項2から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
原料シリコンが、初めに、誘導コイルによって溶融され、溶融したシリコンがアノードとして作用し、次に、前記電極と前記アノードとの間に形成されるアークで気化される、請求項2から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記誘導コイルが、前記反応器の壁に設けられる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記誘導コイルが、前記原料シリコンを直接的に予熱および溶融するように適合されており、前記溶融したシリコンの気化が、主に前記アークによって達成される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
前記誘導コイルが、るつぼの誘導加熱によって前記原料シリコンを間接的に予熱および溶融するように適合され、前記溶融したシリコンの気化が、主に前記アークによって達成される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
冷却レートが、前記ボルテックスに定義された穴の数および直径ならびに前記ガス流量によって、さらにまた、例えば冷却ガスの進入角度を選択することによって調整されるように適合される、請求項5および10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載のプロセスにより製造されたナノシリコン-カーボン複合体、またはナノシリコン-カーボン被覆複合体を用いてリチウムイオン電池を製造するためのプロセス。
【請求項21】
純粋なナノシリコン、ナノシリコン-カーボン複合体、またはナノシリコン-カーボン被覆複合体の製造に使用するための装置であって、前記装置が、
a)少なくとも1つの電極を含む反応器であって、前記反応器内に供給されたシリコンを溶融および気化させるための少なくとも1つのアーク、例えばDC移送アークを提供するように適合された反応器と、
b)ナノ粒子およびナノワイヤーの少なくとも一方を形成するように、そのように生成されたシリコン蒸気を冷却するための冷却システムを含む装置。
【請求項22】
前記反応器がるつぼを含む、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記反応器が、例えば真空ポンプを介して真空下にある、請求項21および22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記シリコン蒸気を冷却するために、前記反応器内に冷却ガスを注入するためのガスインジェクタが設けられている、請求項21から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記冷却ガスがボルテックスによって注入される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記電極が中空であり、前記ガスインジェクタが、前記中空電極を介して前記反応器のチャンバ内に前記冷却ガスを注入するための前記中空電極を含む、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記電極が、アーク電圧を制御し、電極の侵食を補うために、消耗可能であり、典型的には垂直に移動可能である、請求項21から26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記シリコン蒸気を冷却するために用いられる前記冷却ガスが、アルゴンのような不活性ガスを含む、請求項24から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記シリコン蒸気を冷却するために用いられる冷却混合物が、前記反応器の気化ゾーンに炭化水素を導入するように、不活性ガスおよび炭化水素などの炭素含有前駆体を含む、請求項21から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記冷却システムが、前記反応器の内部に設けられ、前記シリコン蒸気の冷却のためのボルテックスおよび中空電極のうち少なくとも1つを含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記冷却システムが、前記反応器の外部に設けられ、例えば、ドラバルノズル(C-Dノズル)、低温ガス、または液体流、および固体冷却のうちの1つを含む、請求項21から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
ろ過システムが、前記反応器の外部に設けられ、冷却された粒子をろ過するように適合されており、前記ろ過システムが、例えばキャンドルフィルターを含む、請求項21から31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
コレクターが、前記反応器の外部に設けられ、ろ過された粒子を収集するように適合されている、請求項21から32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
グローブボックスが、前記コレクターの下流に設けられ、前記コレクターから受け取った前記粉体を収容するように適合されており、前記グローブボックスが、前記粉体の酸化を避けるために制御された不活性雰囲気を有する、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記反応器が、典型的には連続的に、原料シリコンを反応器チャンバに供給するための供給口を含む、請求項1から34のいずれか一項に記載の装置。
【請求項36】
前記反応器がるつぼを含み、初期アークが、前記反応器に供給された原料シリコンを溶かすために前記電極と前記るつぼの底部の間に提供されるように適合され、そのように溶融したシリコンが、次にアノードとして作用し、前記電極と前記アノードの間に形成された前記アークによって気化するように適合されている、請求項21から35のいずれか一項に記載の装置。
【請求項37】
前記反応器が、前記反応器内に供給された原料シリコンを溶融するように適合された誘導コイルを含み、そのように溶融したシリコンが、次にアノードとして作用し、前記電極と前記アノードの間に形成された前記アークによって気化されるように適合されている、請求項21から35のいずれか一項に記載の装置。
【請求項38】
前記誘導コイルが前記反応器の壁に設けられる、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記誘導コイルが、前記原料シリコンを直接的に予熱および溶融するように適合されており、そのように溶融した前記シリコンの気化が、主に前記アークによって達成される、請求項37に記載の装置。
【請求項40】
前記誘導コイルが、前記反応器のるつぼの誘導加熱によって、前記原料シリコンを間接的に予熱および溶融するように適合されており、そのように溶融した前記シリコンの気化が、主に前記アークによって達成される、請求項37に記載の装置。
【請求項41】
前記ボルテックスに穴が定義され、前記穴の数および直径が、冷却レートを調整するために選択される、請求項25および30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項42】
前記冷却システムが、選択された冷却ガス進入角度を提供するように適合されている、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記冷却システムが、前記冷却ガスの流量を調整するように適合されている、請求項21から42のいずれか一項に記載の装置。
【請求項44】
延長部が、るつぼを電源に接続するために、前記反応器の前記るつぼから外部に突出する、請求項21から43のいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
前記電極が前記反応器の底部の上に設けられ、原料シリコンが前記反応器の前記底部に供給されるように適合され、前記冷却システムが前記原料シリコンと前記電極の下端との間に冷却ガスを供給するように適合され、前記アークがカソードとして作用する前記電極とアノードとして作用する溶解した原料シリコンとの間に提供される、請求項21から44のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
原料シリコンを供給するために、前記反応器の上端に入口が設けられ、前記反応器から冷却された粒子を取り出すために、前記反応器の上端に出口が設けられる、請求項21から45のいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
前記出口が、前記冷却された粒子をろ過するように適合されたろ過ユニットと、その下流で連通する、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
請求項21から47のいずれか一項に記載の装置により製造されたナノシリコン-カーボン複合体、またはナノシリコン-カーボン被覆複合体を用いてリチウムイオン二次電池を製造するための装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】