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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】非乳製品クラムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230119BHJP
   A23L 7/104 20160101ALI20230119BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20230119BHJP
   A23G 1/48 20060101ALI20230119BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20230119BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20230119BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20230119BHJP
   A23L 7/126 20160101ALI20230119BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20230119BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L7/104
A23G3/00
A23G1/48
A21D2/36
A21D13/00
A23L2/38 J
A23L7/126
A21D13/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022522031
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 FI2020050671
(87)【国際公開番号】W WO2021069804
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】20195877
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522145801
【氏名又は名称】オイ・カール・ファッツェル・エイビー
【氏名又は名称原語表記】OY KARL FAZER AB
【住所又は居所原語表記】FAZERINTIE 6, 01230 VANTAA, FINLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ウィルバーグ,モニカ
(72)【発明者】
【氏名】ツィッティング,アンッティ‐ユッシ
【テーマコード(参考)】
4B014
4B023
4B025
4B032
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB11
4B014GG01
4B014GG07
4B014GG09
4B014GG15
4B014GL07
4B014GL10
4B014GP01
4B014GP15
4B014GP23
4B023LC02
4B023LE26
4B023LG05
4B023LG06
4B023LK05
4B023LK07
4B023LK13
4B023LK17
4B023LP07
4B023LP14
4B023LQ02
4B025LB25
4B025LG03
4B025LG04
4B025LG05
4B025LG14
4B025LG36
4B025LG44
4B025LG45
4B025LP02
4B025LP04
4B025LP07
4B025LP10
4B025LP15
4B032DB16
4B032DB21
4B032DG01
4B032DG02
4B032DG04
4B032DG05
4B032DK05
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK32
4B032DK34
4B032DK51
4B032DP02
4B032DP05
4B032DP06
4B117LC03
4B117LG06
4B117LG13
4B117LG17
4B117LK10
4B117LK12
4B117LK24
4B117LP03
4B117LP04
(57)【要約】
本発明は、様々な食品用途のための非乳製品クラムの調製方法に関する。特に、本発明は、穀物ベースクラム、当該クラムの調製方法、穀物ベースクラムを含む食品、ならびに菓子製品および甘いベーカリー製品などの様々な食品用途における前記穀物ベースクラムの使用に関する。また、本発明は、穀物ベース製品の穀物風味を低減させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非乳製品の穀物ベースクラムを調製するための方法であって、
a)水性媒体中に糖と穀物ベース材料との混合物を供給して、前記糖と穀物ベース材料との水性混合物を得るステップ;
b)前記糖と穀物ベース材料の前記水性混合物をローストするステップ;
c)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物に、植物性脂肪および任意にココア原料を、任意に添加および混合するステップ;
d)ローストされた前記水性混合物を蒸発させて穀物ベースクラムを得るステップ;および
e)前記穀物ベースクラムを所望の大きさの断片に任意に粉砕するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記穀物ベース材料が、オート麦、大麦、ライ麦、小麦もしくは他のシリアルベース材料、またはこれらのいずれかの混合物、好ましくは、オート麦、大麦、ライ麦または小麦ベース材料、より好ましくは、オート麦もしくはライ麦ベース材料またはそれらの混合物、さらにより好ましくはオート麦ベース材料を含むか、またはそのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記穀物ベース材料が、穀物フラワー、発酵穀物ベース、穀物ベースの発酵製品、酵素処理された穀物または穀物ミルク、コンデンス穀物ベース、または麦芽穀物ベース、好ましくは穀物フラワー、発酵穀物ベースまたは酵素処理された穀物、より好ましくは、穀物フラワーを含むか、またはそのものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記穀物ベース材料が、オート麦フラワー、オート麦フレーク、オート麦粉、オート麦ミルク、オート麦ミルクパウダー、オカラ(オート麦ミルク製造からの残渣)、好ましくは、オート麦粉またはオート麦フラワーなどの、オート麦ベース材料であり、前記オート麦ベース材料が、任意に、発酵されるか、酵素処理されるか濃縮されるか、または麦芽処理される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記穀物ベース材料が、ライ麦ベース材料、好ましくは、全粒ライ麦フラワーまたはオート麦フラワーとライ麦フラワーとの混合物などのライ麦フラワー、である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)が、前記水性媒体に糖を添加すること、または酵素の作用により前記水性媒体に糖を供給することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、ロースト中に前記水性混合物中のタンパク質と還元糖との間でメイラード反応が起こるのに十分なロースト温度で、ロースト時間の間、前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物を、ローストすることを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ロースト中の前記水性混合物の乾燥物質含有率が、約40~98%、好ましくは約40~95%、より好ましくは約60~90%、さらにより好ましくは約80~90%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)が、前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物を、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも20分、例えば20~120分または30~60分であるロースト時間の間、大気圧での前記混合物の沸点温度であるロースト開始時のロースト温度で、ローストすることを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物に植物性脂肪を添加し混合するステップを含み、ここで前記植物性脂肪が、好ましくはココアバター、ココアバター同等物、および、例えばミルク、ペースト、粉末、フレークまたは断片の形態における、ナッツ、ココナッツまたはアーモンドからの植物性充填脂肪、好ましくはココアバターから、好ましくは選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
好ましくは繊維、脱脂アーモンド/ナッツ粉末から選択される他の植物ベースの原材料を、前記混合物に添加するステップを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ロースト前、ロースト中またはロースト後、好ましくはロースト後および蒸発前に、ココアマス、ココアパウダー、ココアバターまたは異なるココア成分の混合物を、植物性脂肪も任意に含有する前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物に、添加および混合するステップを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(d)が、好ましくは約-1000~-800mbar(-100~-80kPa)の圧力での、少なくとも10分の真空蒸発時間の間の、より好ましくは約10~40分の真空蒸発時間の間の、真空蒸発または熱蒸発を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
得られた前記穀物ベースクラムが、約0.5~5重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは1~4重量%、さらに好ましくは1~3重量%の最終含水率を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの酵素が、ステップ(a)の前記混合物に添加される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記穀物ベースクラムに植物性脂肪を添加してスラリーを得、これを湿式粉砕し、菓子製品、好ましくはチョコレートまたはチョコレートフィリングの製造においてポンプ操作可能な原料として使用するステップをさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
a)糖とオート麦ベース材料との水性混合物を供給するステップ;
b)糖とオート麦ベース材料との前記水性混合物を、好ましくは90~140℃または100~120℃の温度で、好ましくは少なくとも10~30分間ローストして、ローストされた液体混合物を得るステップ;
c)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、好ましくは、ロースト前またはロースト後に、糖とオート麦ベース材料との前記水性混合物に、植物性脂肪および/または任意にココア原料を、任意に添加および混合するステップ;
d)ローストされた前記液体混合物を、好ましくは約-100~-80kPaの圧力で、蒸発、好ましくは真空蒸発させて、液体から粉末形態へのローストされた混合物の相変化を得るステップ;および
e)真空蒸発させた粉末を任意に粉砕して、所望の大きさのオート麦ベースクラムを得るステップ、
を含む、オート麦ベースクラムを調製するための、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
a)水中に糖とオート麦ベース材料との混合物を供給して、糖とオート麦ベース材料との水性混合物を得るステップ;
b)糖とオート麦ベース材料との前記水性混合物を、好ましくは90~140℃の温度で、少なくとも10~30分間ローストして、ローストされた液体混合物を得るステップ;
c)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、ココア原料を、前記混合物に、任意に添加および混合するステップ;
d)ロースト前、ロースト中、またはロースト後に、ココアバターを添加するステップ:
e)ローストされた液体混合物を、蒸発、好ましくは真空蒸発させて、液体から粉末形態へのローストされた前記混合物の相変化を得るステップ;
f)真空蒸発させた粉末を任意に粉砕して、所望の大きさのオート麦ベースクラムを得るステップ、
を含む、オート麦ベースクラムを調製するための、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記クラムが、非乳製品またはヴィーガンクラムである、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
得られた前記穀物ベースクラムを、非乳製品菓子およびベーカリー製品、特にチョコレートの製造に使用するステップをさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記糖と穀物ベース材料のローストされた混合物を、好ましくは植物性脂肪と共に、更に好ましくはココア原料と共に含む、非乳製品クラムであって、
前記非乳製品クラムが、0.5~5重量%、通常1~5重量%、好ましくは1~4重量%、より好ましくは1~3重量%の含水率を有し、ここで前記穀物ベース材料の穀物風味が、ローストされていない穀物ベース材料と比較して低減されていることを特徴とする、非乳製品クラム。
【請求項22】
前記穀物風味の低減が、ナッツのような/穀物のようなおよび生の穀物のような/脂肪のような/油のようなというシリアル官能属性における低減を含む、請求項21に記載の非乳製品クラム。
【請求項23】
前記穀物風味の低減が、芳香化合物1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-メチルブタン酸およびo-グアヤコールの濃度の減少を含む、請求項21または22に記載の非乳製品クラム。
【請求項24】
好ましくはココアバターと共に、サッカロースまたはサッカロース/フルクトースとオート麦ベース材料とのローストされた混合物、より好ましくは、ココアバターと任意で共に、サッカロースとオート麦粉またはオート麦フラワーとのローストされた混合物、を含む、請求項21に記載の非乳製品クラム。
【請求項25】
請求項1~20のいずれか1項に記載の方法により得られる、クラム。
【請求項26】
請求項21~25のいずれか1項に記載のクラム、を含む食品であって、前記食品が、菓子製品、甘い焼き製品、飲料、スプレッドおよびスナック製品からなる群から選択される、食品。
【請求項27】
前記食品が、チョコレートタイプの製品、チョコレートプラリネのような充填されたチョコレートタイプの製品、チョコレートタブレット、チョコレートコーティングされたフィリング、チョコレートコーティングされたバー、ビスケットタイプの製品、ビスケットタイプの製品用のフィリング、チョコレートコーティングされたケーキ、チョコレートコーティングされた内包物、チョコレートがコーティングされたまたは充填されたポン菓子(puffed cereals)、内包物を有するかまたはチョコレートでコーティングされたシリアルバー、およびクロワッサンとタルトのような充填された甘いベーカリー製品からなる群から選択される、菓子製品または甘いベーカリー製品である、請求項26に記載の食品。
【請求項28】
食品、好ましくは菓子製品または甘いベーカリー製品の製造における、請求項21~25のいずれか1項に記載のクラムの使用。
【請求項29】
穀物ベース製品の穀物風味を低減させるための方法であって、
a)水性媒体中に糖と穀物ベース材料との混合物を供給して、前記糖と穀物ベース材料との水性混合物を得るステップ;
b)前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物をローストするステップ;
c)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、好ましくはロースト前またはロースト中および真空処理する前に、植物性脂肪を、前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物に、任意に添加および混合するステップ;
d)ローストされた混合物を蒸発させて、穀物ベースクラムを得るステップ;および
f)前記穀物ベースクラムを、前記穀物ベース製品の原材料として使用するステップ、
を含む、方法。
【請求項30】
前記穀物風味の低減が、ナッツのような/穀物のようなおよび生の穀物のような/脂肪のような/油のようなというシリアル官能属性における低減を含む、請求項29に記載の非乳製品クラム。
【請求項31】
前記穀物風味の低減が、芳香化合物1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-メチルブタン酸およびo-グアヤコールの濃度の減少を含む、請求項29または30に記載の非乳製品クラム。
【請求項32】
穀物ベース製品のカラメル様風味を増加させる、請求項29から31のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品技術の分野に関し、特に、様々な食品用途のための非乳製品クラム(crumb)を調製する方法に関する。より具体的には、本発明は、非乳製品の穀物ベースクラム、前記クラムの調製方法、非乳製品の穀物ベースクラムを含む食品、特に菓子類および甘いベーカリー製品、ならびに様々な食品用途での非乳製品の穀物ベースクラムの使用に関する。本発明はまた、本発明の方法によって調製された穀物ベースクラムを含む穀物ベースの製品の穀物風味のレベルを低下させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミルクチョコレートの製造にチョコレートクラムを使用することは、チョコレート業界では周知である。従来より、ミルクチョコレートクラムは、ミルク、糖およびココアマスの共乾燥混合物を指し、その塊状で空気を含んだ構造は、ブレッドクラムに似ている。典型的なミルククラムプロセスは、牛乳の低温殺菌と蒸発、コンデンスミルクへの糖の溶解、例えばバッチオーブンまたはエバポレーターでの調理、ココアリカーの添加、得られたペーストの混練、低含水率までの乾燥、適切なサイズのクラム片を得るための破砕を含む。あるいは、糖は、調理前に粉乳と水との混合物に溶解または部分的に溶解され得る。
【0003】
クラム製造の大きな特徴は、牛乳やココアに存在するタンパク質のアミノ酸と、水と、還元糖(ラクトースなど)とのメイラード反応であり、この反応がクラムにカラメル風味を生じさせる要因となっている。ミルクチョコレートに対するチョコレートクラムの主な利点は、乾燥原料であるミルク、ココア、糖を別々に添加しても得られない、独特のカラメル風味を有することである。さらに、一般的なミルクチョコレートクラムのレシピは、チョコレート製造のための原料の大部分を含むため、その後のチョコレート製造は、クラムと、油脂と、乳化剤との加工に簡素化される。
【0004】
ヴィーガン(vegan)食を好むか、または健康上の理由(アレルギー、乳糖不耐症)のために牛乳や乳製品を避けなければならない人々がますます多くなってきているので、菓子産業では非乳製品またはヴィーガンチョコレート製品、およびチョコレートクラム代用品が必要とされている。さらに、非乳製品クラムは、例えば様々なフィリングまたはコーティングとして、非乳製品またはヴィーガン用の甘い焼かれた製品の製造に使用することも可能である。
【0005】
ヴィーガンチョコレートまたは非乳製品チョコレートは、すでにいくつか販売されている。現在の非乳製品チョコレート配合物のほとんどは、牛乳、コンデンスミルク、バターオイル、およびクリームなどの乳成分を含まないが、近年、シリアル素材をベースにしたココアエクステンダーを含むチョコレート配合物も研究されてきている。
【0006】
特許文献1(米国特許第6,521,273号明細書)は、ココアリカーまたはココアバターおよび無脂肪のシリアルベースのココアエクステンダーを含む麦芽入りチョコレート配合物を開示している。シリアル、例えば大麦麦芽は、所望の色および風味にトーストされ、粉砕され、冷却され、そしてココアリカーまたはココアバターが添加される。
【0007】
特許文献2(米国特許第4,356,209号明細書)は、ココアと、中程度から濃い色にトーストされた脱脂小麦胚芽を含む、増量されたココアパウダーに関する。トーストされた脱脂小麦胚芽は、チョコレートケーキのレシピにおいて、本物のココアの最大50%が置き換えられた。
【0008】
特許文献3(国際公開第80/02636号)は、脂肪、フレーバー、挽いたブレンド小麦粉の混合物、および任意に着色剤を含む模造ココアパウダーに関し、この混合物を添加還元糖と共に加熱して、模造ココアパウダーにココア様色を得ることができる。
【0009】
特許文献4(米国特許出願公開第20150342214号明細書)は、ローストした小麦、またはローストしたおよび/または麦芽大麦を用いたココア代替物を提供するためのプロセスに関する。このプロセスは、ローストした小麦または大麦を水と混合し、蒸発容器内で少なくとも65℃の温度を少なくとも30分間維持し、溶液を噴霧乾燥させてココア代替物を得るステップを含む。
【0010】
しかし、最終的な菓子または甘いベーカリー製品に良好な味を付与し、かつ良好な官能特性およびレオロジー特性を提供する、非乳製品原材料に基づく新規中間製品の必要性が依然として存在する。また、要求される特性を有する、このような中間製品(クラム)を得るための穀物ベースの原料を加工する方法も、必要とされている。また、付加価値製品の製造において、難消化性繊維など穀物の重要な栄養的画分をすべて利用できることも、有益である。同時に、できるだけ天然の原料および天然成分のみを使用することが所望されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,521,273号明細書
【特許文献2】米国特許第4,356,209号明細書
【特許文献3】国際公開第80/02636号
【特許文献4】米国特許出願公開第20150342214号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、非乳製品の穀物ベースクラム代用品、特に穀物ベースのミルクチョコレートクラム代用品、ならびに美味しいヴィーガンチョコレート製品および非乳製品の甘い焼き製品を調製する方法を提供することによって、上記のニーズを満たすことを目的とする。本発明はまた、穀物ベース材料の風味プロファイルを改変する方法、特に穀物ベース材料およびその材料を含む製品の穀物風味を低減させるための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの特定の実施形態は、従属請求項において定義される。
【0014】
本発明は、中間生成物、すなわちクラムを得るための穀物ベース原料の新規な加工方法の発見に基づいており、この方法は、様々な最終菓子、甘いベーカリー製品、または他の食品(飲料、スプレッド(spreadings)およびスナックなど)に、良好な味および官能属性を付与するものである。さらに、本発明のクラムは、本発明の方法を利用しない穀物ベース原料と比較して、粘度、発塵性(dusting)、および加工時の一般的な取り扱いの点で、改善された加工性を有する。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、非乳製品の穀物ベースクラムを調製する方法が提供され、この方法は、水性媒体中に糖と穀物ベース材料との混合物を供給して糖と穀物ベース材料との水性混合物を得るステップ;糖と穀物ベース材料との水性混合物をローストするステップ;ロースト前、ロースト中またはロースト後に、前記水性混合物に、植物性脂肪および任意にココア原料を、任意に添加および混合するステップ;ローストされた混合物を蒸発させて、穀物ベースクラムを得るステップ;および前記穀物ベースクラムを所望の大きさの断片に任意に粉砕するステップ、を含む。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、糖と穀物ベース材料のローストされた混合物を、任意に植物性脂肪と共に、さらに任意にココア原料と共に含有する、非乳製品のヴィーガンクラムが提供され、ここで、この非乳製品クラムは、0.5~5重量%の含水率を有し、この穀物ベース材料の穀物風味は、ローストされていない穀物ベース材料と比較して低下している。本発明のさらなる態様は、本発明の方法によって得ることができる非乳製品クラムである。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、本発明のクラムを含有する食品が提供される。
【0018】
本発明の更なる態様は、本発明の非乳製品クラムを、様々な食品、典型的には菓子製品、甘い焼き製品、飲料、スプレッドおよびスナック製品に使用することである。
【0019】
本発明の別の態様は、穀物ベース材料および製品の穀物風味を低減させる方法であり、この方法は、本発明のプロセスに従って穀物ベースクラムを調製するステップと、穀物ベースの製品の製造にそれを使用するステップとを含む。
【0020】
本発明によってかなりの利点が得られる。第1に、本発明の方法は、非乳製品の穀物ベースクラムを提供し、このクラムは、様々な食品、典型的には甘味食品に使用され得、これにより、未加工の穀物ベース材料と比較して改善された味、ならびに改善された官能特性およびレオロジー特性が、前記食品に提供される。特に、本発明のクラムを、対応する未加工の穀物ベース材料の代わりに使用すると、ヴィーガン用および非乳製品のチョコレート製品における穀物の望ましくない強い味は、低減または完全に取り除かれる。通常、製品の風味プロファイルはカラメル化され、生の穀物風味は低減される。また、使用する条件、特に適用温度によってロースティングレベルを調整することにより、所望の風味レベルを得ることが可能である。
【0021】
従って、本発明の方法によって、加工された穀物ベース材料の使用目的に応じて加工された穀物ベース材料の風味プロファイルを修正し、調整することが、可能である。通常、穀物風味は低減され、そしてアロマプロファイルが調整され、製品の意図された用途のアロマプロファイルをサポートする、よりバランスが取れているが強いアロマプロファイルが、得られる。
【0022】
第2に、本発明のクラムの加工性は、本発明の方法に従って加工されていない対応する原料と比較して、著しく改善される。改善された加工性は、粘度の減少、発塵性の減少、特にフラワー(flour)の発塵性の減少、ブリッジングの減少、および例えばチョコレート製造工程中(例えばロール精製工程中)の一般的に容易な取り扱い、という観点での加工性を意味する。さらに、オートミルク(oat milk)/オートミルクパウダーまたは他のヴィーガン「ミルクパウダー」と比較して、穀物ベースクラム(特にオート麦ベースクラム)を調製するための本発明のプロセスにより、所望によりチョコレート製造において難消化性繊維などの、全ての重要な栄養的画分を利用することができるようになる。
【0023】
第3に、本発明のクラムおよびそれから製造される製品では、未加工原料の対応物またはそのような未加工原料から製造される製品と比較して、貯蔵寿命が増加する。微生物学的品質が改善され、その結果、貯蔵寿命が増加する。未加工の穀物原料では、有害生物に悩まされる可能性があり、このことは、例えばチョコレート製造において加工で低温から中温しか使用されないため、望ましくない。
【0024】
さらに、本発明の方法によって調製された穀物ベースクラムにより、前記穀物ベースクラムを含む対応するチョコレートのグリーンラベル宣言が、可能になる。本質的に、クリーンラベルは、できるだけ少ない原材料を使って製品が製造され、それらの原材料が家庭で使用する可能性のある健康に良い食材と消費者が認識し考慮する品物であると確認することを意味する。それは、原材料がわかりやすく人工的な原材料や合成化学物質を含まない食品を探求し、食品メーカーに対する「信頼」と結びつけている。本発明の目的の一つは、天然原料および天然成分のみを使用することであるため、例えば、タンパク加水分解物または加水分解されたタンパク質の使用は回避される。好ましくは、本発明の製品および方法は、タンパク加水分解物および加水分解されたタンパク質を含まない。
【0025】
本技術のさらなる特徴および利点は、いくつかの実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】チョコレートAおよびBの前鼻腔経路(orthonasal)の臭気印象(図1A)の官能結果を示す。チョコレートAは未加工のオート麦フラワーを含有し、チョコレートBは発酵オート麦ベースから出発して本発明の方法によって調製されたクラムを含有していた。それ以外の点では、チョコレートマスの製造とレシピは同じであり、材料の量も等しかった。
図1B】後鼻腔経路(retronasal)の臭気印象の官能結果を示す。チョコレートAは未加工のオート麦フラワーを含有し、チョコレートBは発酵オート麦ベースから出発して本発明の方法によって調製されたクラムを含有していた。それ以外の点では、チョコレートマスの製造とレシピは同じであり、材料の量も等しかった。
図1C】味/口当たりの官能結果を示す。チョコレートAは未加工のオート麦フラワーを含有し、チョコレートBは発酵オート麦ベースから出発して本発明の方法によって調製されたクラムを含有していた。それ以外の点では、チョコレートマスの製造とレシピは同じであり、材料の量も等しかった。
図2】チョコレートAとBとの間の分析データおよび官能データの比較を示し、チョコレートAは未加工のオート麦粉を含有し、チョコレートBは発酵オート麦ベースから出発して本発明の方法によって調製されたクラムを含有していた。
図3】オート麦フラワーを含有する参照チョコレートと比較した、7つのチョコレート試料の官能属性に対するオート麦ベースクラムの加工パラメータの影響を示す、主成分分析のチャートである。
図4】シリアル官能属性、シリアル属性に影響を与える芳香化合物、および加工パラメータの主成分分析のチャートである。オート麦ベースクラムを含有する3つのチョコレート試料と、オート麦フラワーを含有する参照チョコレート試料が、分析に含まれた。
図5】官能データと分析データを組み合わせた主成分分析チャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
本明細書において、用語「穀物(grain)」または「穀物ベース材料」は、任意のシリアルベース材料を含み、ここで前記穀物は、典型的には、オート麦、大麦、ライ麦、小麦またはこれらのいずれかの混合物、好ましくはオート麦またはライ麦である。前記穀物または穀物ベース材料は、例えば、粉末、フレーク、フラワー(flour)、穀物ミルク、コンデンス穀物ミルク、穀物ミルク粉末、酵素処理された穀物、発酵穀物、発酵穀物ベース製品、麦芽穀物(麦芽エキス)または穀物の他の任意の画分の形態であってもよい。
【0028】
「オート麦ベース材料」には、オート麦粉、オート麦フラワー、オート麦フレーク、オート麦ミルク、オート麦ミルクパウダー、発酵オート麦、発酵オート麦ミルク、コンデンスオート麦ミルク、酵素処理オート麦、オート麦オカラ(オート麦ミルク製造時の固体残留物(residue)または残渣(left-over))、またはその他のオート麦の画分が含まれるが、それらに限定されない。
【0029】
「ライ麦ベース材料」は、好ましくは、ライ麦フラワーまたはライ麦粉、例えば全粒ライ麦フラワー、またはオート麦フラワーとライ麦フラワーとの混合物である。
【0030】
「植物性脂肪」には、すべての食用植物性油脂および食用植物性脂肪が含まれる。用途、所望の融解プロファイルおよび味に応じて、ココアバターなどの植物性脂肪、ココアバター同等物、植物性充填脂肪(filling fat)(例えば、ミルク、ペースト、粉末、フレーク、断片、クリームまたはオイルなど任意の形態の、ナッツ、ココナッツ、およびアーモンドなど)が、使用され得る。
【0031】
「ココア原料」には、ココアマス、ココアパウダー、ココアバター、ローストされていないおよびローストされたココアニブ、または異なるココア成分の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
従来、チョコレート製造において、「クラム」という用語は、ミルク、糖、およびココアリカーの共乾燥混合物である、ミルクチョコレートクラムを指す。本開示内では、用語「クラム」は、非乳製品の穀物ベースの製品を指し、その原料は、メイラード反応に必要な成分(タンパク質、水および還元糖)を含み、本発明の方法に従って加工されて、メイラード反応に基づくカラメル様風味、他のトースト風味、きつね色に焦がした(browned)風味および他の風味成分を生成し、特にクラム成分中の穀物風味のレベルを低減させる。
【0033】
「糖」は、植物ベースの糖をすべて含む。したがって、糖には、サッカロース(スクロース)、フルクトース、グルコース、マルトースおよびそれらの任意の組み合わせ、好ましくはサッカロース、またはサッカロースとフルクトースとの混合物もしくはグルコースとフルクトースとの混合物が含まれるが、これらに限定されない。「糖」には、糖を添加せずに水性混合物中の還元糖を得るために、酵素の作用によって(自然発酵またはスターターの使用のいずれかによって)穀物デンプンから生成される糖も含まれる。添加される糖、典型的にはサッカロース(スクロース)は、好ましくは粒状の、予め粉砕された形態であるが、液体、シロップまたはそれらの組み合わせおよび繊維などの他の形態も適用可能である。植物ベースの糖のさらなる例には、果物またはベリーから抽出されたシロップが含まれる。いくつかの実施形態では、糖はまた、ポリオール(糖アルコール)を含んでもよい。
【0034】
本開示内では、用語「ローストする」は、材料、典型的には糖と穀物ベース材料との水性混合物を、混合物の穀物タンパク質と還元糖との間でメイラード反応が起こるのに十分なロースト温度でロースト時間の間、加熱することを意味する。必要なロースト時間および温度は、ローストする材料の成分および含水率、加える圧力、および所望のアウトプットに依存する。一般に、温度が高いほどローストに必要な時間は短くなる。圧力は、ローストを早めたり遅らせたりするために使用され得る。一般に、ロースト開始時の温度は、大気圧下での混合物の沸点温度であり、ロースト中に上昇する。例えば、ロースト開始時の温度が約100℃であれば、ロースト終了時付近では約120℃となる場合がある。ロースト時間は、特に限定されない。通常、少なくとも10分、好ましくは少なくとも20分または少なくとも30分であるが、利用可能な製造装置にもよるが、場合によっては10分未満であってもよい。
【0035】
上述のように、ローストステップ中の加工パラメータは、糖と穀物ベース材料との水性混合物中で、タンパク質と還元糖との間でメイラード反応が起こるように選択される。タンパク質から自然に形成される遊離アミノ酸および特に小さなペプチドは、メイラード反応の前駆体のように作用し、還元糖と反応し、揮発性フレーバー化合物を形成する。
【0036】
一般に、メイラード反応は、食品の色、官能属性、タンパク質の機能性、タンパク質の消化率に変化をもたらす。メイラード反応は、タンパク質、ペプチド、およびアミノ酸におけるアミノ基と、還元糖におけるカルボニル基との縮合により開始され、シッフ塩基の形成とケトサミンの形成がもたらされる。ケトサミンがさらに反応し、反応性のα-ジカルボニル種となり、これがさらに、例えば、他のアミン、グアニジン、およびチオールと反応する。これらの中間体は、ストレッカー分解を受ける可能性がある。さらに下流の反応は、異なる糖化最終生成物、メイラード反応中間体の形成を含む。
【0037】
ストレッカーアルデヒドは、パン、コーヒー、ココアなどの食品における風味の発現にとって重要な物質である。その低い嗅覚閾値のために、食品中で形成される最も重要なストレッカーアルデヒドは、2-メチルブタナール(Ileから)、3-メチルブタナール(Leuから)、フェニルアセトアルデヒド(Pheから)、メチルプロパナール(Valから)およびメチオナール(Metから)である。
【0038】
本発明において、穀物ベースの原料の穀物風味を低減することが可能であることが見出された。したがって、本発明は、シリアル風味、典型的には、ナッツのような/穀物のようなおよび生の穀物のような/脂肪のような/油のような等の穀物官能属性を低減させるための方法を提供する。前記穀類官能属性は、しばしば、3-メチル酪酸(3-methyl butanoic acid)、2-メチル酪酸(2-methyl butanoic acid)、ヘキサン酸、1ペンタノール、1ヘキサノールおよびo-グアヤコール、特に2-メチル酪酸、1ペンタノール、1ヘキサノールおよびo-グアヤコールなどの芳香化合物に関連している。上記の穀物の官能属性の一因となり得る他の芳香化合物としては、例えばヘキサナールおよびトリメチルピラジンが挙げられる。一方、いくつかの芳香化合物は、通常、穀物の官能属性であるナッツのような/穀物のようなおよび生の穀物のような/脂肪のような/油のような、と負の相関を示す。このような芳香化合物としては、例えば、トランス,トランス-2,4-デカジエナール、トランス,シス-2,6-ノナジエナール、2,3-ペンタンジオン、マルトールおよびノナナール、特にノナナールが挙げられる。
【0039】
上記に開示したように、糖と穀物ベースの原料との混合物をローストすることにより、ここで前記混合物は、植物性脂肪および任意にココア原料も任意に含有し、ローストされた前記混合物から水を蒸発させることにより、種々の食品(通常は甘い食品)に使用され得る穀物ベースクラムが得られることが、見出されている。本発明の穀物ベースクラムは、未加工の穀物ベース材料と比較して、改善された官能特性およびレオロジー的特性を有する前記食品を提供する。特に、本発明のクラムを、対応する未加工の穀物ベース材料の代わりに使用すると、チョコレート製品における穀物の望ましくない味は低減するか、または完全に消失する。さらに、本発明の穀物ベースクラムから製造されたチョコレートは、未処理の穀物フラワーから調製された対応するチョコレートと比較して、より滑らかであり、改善された融解プロファイルを有することが見出された。
【0040】
穀物ベースクラムを調製するための本発明による方法は、したがって、水性媒体中に糖と穀物ベース材料との混合物を供給するステップ;糖と穀物ベース材料の前記混合物をローストするステップ;ロースト前、ロースト中またはロースト後に、前記混合物に、植物性脂肪および任意にココア原料を任意に添加および混合するステップ:ローストされた混合物を蒸発させて穀物ベースクラムを得るステップ;および前記穀物ベースクラムを所望の大きさに任意に粉砕するステップ、を含む。
【0041】
穀物ベースクラムを調製するためのプロセスは、混合、加熱、および蒸発または他の乾燥操作のための手段を含む、任意の適切な装置またはアセンブリにおいて実施され得る。例えば、調理器、加熱ジャケットを有する混合反応器、調理用押出機、または調理器とオーブンとの組み合わせを使用することが、可能である。
【0042】
原則として、本発明の方法は、バッチプロセスとして実施することも、連続プロセスとして実施することも可能である。しかし、メイラード反応の制御は通常、バッチプロセスにおいて、より容易である。また、所望のフレーバーおよび芳香化合物のレベルの調整および修正も通常、バッチプロセスにおいて、より容易である。
【0043】
1つの実施形態では、糖と穀物ベース材料との混合物を提供するステップは、わずかに上昇した温度、例えば50~90℃で水と糖とを混合し、こうして前記糖の少なくとも一部を水に溶解し、続いて前記穀物ベース材料を、混合物に添加することを含む。1つの実施形態では、糖および穀物ベース材料は、ローストを開始する前に、好ましくは例えば40~80℃などの室温をわずかに超える温度で、水中に同時に混合される。
【0044】
通常、糖と穀物ベース材料とを含む前記水性混合物中の糖は、適用される温度および圧力条件における糖の飽和点を超えるか、またはそれより低い可能性がある濃度を有する。低糖含有量の最終製品が望まれる場合には、通常、少量の糖が使用される。
【0045】
また、糖を添加せずに、酵素の作用によって(自然発酵またはスターターの添加によっても)穀物デンプンから水性媒体への還元糖を生成することも、可能である。
【0046】
従って、一実施形態では、上述のステップa)は、水性媒体に糖を添加すること、または酵素の作用により前記水性媒体に糖を供給すること、または両方の組合せを含む。
【0047】
1つの実施形態では、添加される糖は、サッカロース(スクロース)、フルクトース、グルコース、マルトースおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、好ましくはサッカロースである。添加された糖は、例えば、粒状、予め粉砕された形態であり得るが、液体、シロップまたはそれらの組み合わせおよび繊維などの他の形態も適用可能であり、また、果物またはベリーから抽出されたシロップも適用可能である。
【0048】
好ましい実施形態では、水性媒体は、水、発酵穀物ベースまたは酵素処理された穀物ベースである。1つの好ましい実施形態では、水性媒体は水である。しかし、他の水性媒体を使用することもできる。水の量は、穀物ベース材料の含水率に応じて調整され得る。穀物ベース材料の含水率が比較的高い場合、例えば、穀物ミルクベース、発酵穀物ベースおよび酵素処理された穀物ベースの場合、水分量は通常、減少される。
【0049】
ロースト中の前記水性混合物の乾燥物質含有率は通常、約40~95%、さらには40~98%、好ましくは約60~90%、より好ましくは約80~90%である。より低い乾燥物質含有率も可能であるが、蒸発時間がより長くなるため、長い処理時間が必要になる。
【0050】
好ましくは、糖と穀物ベース材料との水性混合物は、0.7~0.9の水分活性(aW)値を有する。しかし、水分活性値は、所望の風味プロファイルに従って調整され得る。
【0051】
糖と穀物ベース材料との水性混合物のpHは、所望の最終製品およびその風味プロファイルに応じて変化し得る。一般に、メイラード反応による褐色化は、pHの上昇(pH10程度まで)とともに増加する。典型的には、糖と穀物ベース材料との水性混合物のpHは、約5~7である。必要または所望により、当業者に明らかなように、適切な酸性またはアルカリ性成分を用いて、または発酵により、pHを調整することができる。
【0052】
1つの実施形態では、前記水性媒体は、発酵穀物ベース、特に発酵オート麦ベースである。発酵穀物ベースを得るために、穀物材料、典型的には穀物フラワー、および好ましくは少量の糖(発酵菌のより良い増殖能を実現するために)を冷水または熱水と混合し、スターターを適切な温度で添加する。所望により、混合物を低温殺菌して、発酵菌のための適切に純粋なベースを確実にすることができる。発酵は、必要な時間または所望する時間、通常は数時間実施され得る。また、スターターを添加しない自然発酵も、使用され得る。
【0053】
発酵穀物ベース、特に発酵オート麦ベースは、穀物ベースクラムの製造に使用され得る。通常、糖はロースト前に混合物に添加される。混合物の乾燥物質含有率が低い場合、ロースト前に若干の追加の穀物フラワーも添加され得る。例えば、発酵オート麦ベースは、通常、5~30%、典型的には約10~20%の乾燥物質含有率を有する。必要に応じて、例えばロースト開始時に約40~70%以上の乾燥物質含有率となるように、若干のオート麦フラワーを添加して乾燥物質含有率を増加させてもよい。あるいは、ロースト開始時に水性混合物の乾燥物質含有率を増加させるか、真空と温度を利用して余分な水分を除去することも可能である。
【0054】
別の実施形態では、前記水性媒体は、酵素処理された穀物ベース、特に酵素処理されたオート麦ベースである。酵素処理により、加熱プロセス中に穀物デンプンの粘度が低下し、また、メイラード反応に対するより反応性の良い成分を得るために還元糖のレベルを上昇させることができる。好ましい酵素としては、例えば、デンプン分子内でランダムな様式で加水分解を触媒して粘度を低下させるエンドアミラーゼ、またはデンプン分子の末端近くのグリコシド結合に作用して穀物ベース中のグルコースのレベルを増加させるエキソアミラーゼ(主にグルコアミラーゼ)、ならびに例えばオート麦に自然に存在するβグルカンを分解する[β]グルカナーゼが挙げられる。いくつかの実施形態において、好ましい酵素は、ベータグルカナーゼ、エンドアミラーゼ、グルコアミラーゼ、またはそれらの組み合わせを含むが、アルファ-アミラーゼは加えられない。酵素活性はまた、発酵によって、または天然酵素によってもたらされ得る。
【0055】
酵素処理された穀物ベースを得るために、1つの実施形態では、酵素を、水中に穀物原料を含む混合物(典型的には約10~20重量%の穀物水溶液)に添加し、適当な時間反応させる。酵素処理後、得られた混合物は、そのまま穀物ベースクラムの製造に用いることができるか、または遠心分離して不溶性部分を除去することができる。
【0056】
1つの実施形態では、酵素処理された穀物ベースが、ローストプロセスの前に遠心分離され、得られた酵素処理された穀物ベースは、特にオート麦を出発材料として使用し、酵素がグルコアミラーゼおよび任意にエンドアミラーゼを含む場合、新鮮な穀物ミルクに類似している。遠心分離し、グルコアミラーゼおよびエンドアミラーゼで処理したオート麦ベースから調製したオート麦クラムをオート麦チョコレートの製造に使用すると、酵素処理したオート麦ベースの不溶性部分も含むオート麦クラムから製造したチョコレートと比較して、レオロジー特性がわずかに向上することが見出された。しかし、酵素処理した穀物ベースから調製したオート麦クラムからチョコレートをうまく製造するために、遠心分離は必ずしも要求されない。
【0057】
1つの実施形態では、ベータグルカナーゼ酵素で処理したオート麦ベース材料からオート麦クラムが調製され、そしてオート麦チョコレートの製造に使用され、βグルカナーゼ処理なしで製造した対応するチョコレートと比較してチョコレートの口当たりが変化することが、見いだされた。典型的には、チョコレートの溶解性は増加したが、粘着性があり脂肪のような口当たりは減少した。使用目的に応じて、このような官能属性は、望ましいものと好ましくないものがあり得る。
【0058】
このように、酵素処理された穀物ベースは、穀物ベースクラムの製造に使用され得る。ローストステップの前に、酵素処理された穀物ベースに糖を添加してもよい。混合物の乾燥物質含有率が低い場合、ロースト前に若干の追加の穀物フラワーも加えることができ、またはローストの開始時にいくらかの水を除去することができる。例えば、酵素処理されたオート麦ベースは、しばしば5~30%、通常約10~20%の乾燥物質含有率を有するので、ローストステップの前に粘度を高めるために、若干のオート麦フラワーを添加してもよいし、いくらかの水分を除去してもよい。
【0059】
上記のように、穀物ベースの出発原料が穀物フラワーよりも乾燥物質含有率の低い発酵穀物ベースまたは酵素処理された穀物ベース含むか、またはそのものである場合、ロースト初期に水性混合物の乾燥物質含有率を高めるか、真空や温度を利用して余分な水分を除去することが可能である。あるいは、ロースト前に穀物粉を一部加えて粘度を上げることも可能である。
【0060】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、したがって、穀物ベース原料の酵素処理、添加されるスターターを用いた穀物ベース材料の発酵、穀物ベース原料の自然発酵、またはそれらの任意の組合せを含み得る。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、穀物ベースの出発材料は、穀物フラワーまたは穀物粉である。
【0062】
また、穀物ベース材料の凝縮形態または麦芽形態を使用することも可能である。
【0063】
糖は、当業者に知られている従来の植物由来の糖形態、例えばサッカロース、フルクトース、グルコースおよびそれらの任意の組み合わせから選択され得る。実施形態において、糖が混合物に加えられる場合、典型的にはサッカロース、好ましくは粒状サッカロース、またはサッカロースとフルクトースとの混合物が使用される。糖、特にサッカロースは、原料の加工および混合を改善し、風味担体としても作用する。フルクトースなどの追加の糖は、メイラード反応をさらに増加させる可能性がある。通常、糖は固体の形態で添加されるが、いくつかの実施形態では、液体の形も使用され得る。
【0064】
1つの実施形態では、水中の糖および穀物ベース材料を含む混合物に、少なくとも1つの酵素、典型的にはメイラード反応における前駆体として作用し得る還元糖を生成する酵素が、添加される。このような酵素には、エンドアミラーゼおよびグルコアミラーゼなどのアミラーゼが含まれるが、これらに限定されない。また、酵素の作用のみによって水性混合物中に還元糖を生成させることも可能であり、その結果、糖の添加を回避することができる。1つの実施形態では、糖は、酵素の作用(自然発酵またはスターターの添加のいずれか)および糖の添加の両方によって、前記水性混合物に供給され得る。
【0065】
水中で糖および穀物ベース材料を含む混合物をローストする際に、メイラード反応および任意にカラメル化も起こる。メイラード反応は、タンパク質のアミノ酸と、混合物中に存在する還元糖との間で起こり、クラムに心地よい風味と色を付与する。カラメル化では、特定の糖が熱分解され、クラムにさらなる風味と色がもたらされる。しかし、カラメル風味は、メイラード反応でも生成される。いくつかの好ましい実施形態では、メイラード反応およびカラメル化の両方が起こるように、反応条件および原料が、選択される。
【0066】
ロースト中の水性混合物の乾燥物質含有率は、約40~95%、好ましくは約60~90%、より好ましくは約80~90%である。
【0067】
糖と穀物ベース材料との前記水性混合物は、メイラード反応および任意にカラメル化が起こるのに十分なロースト温度で、ロースト時間の間、ローストされる。当業者によって理解されるように、必要なロースト時間は、材料の含水率、適用される温度および圧力、反応成分、pH、全体的なプロセス設計、および所望のアウトプット、すなわち好ましいロースト度または風味プロファイルに依存する。通常、ロースト時間は、少なくとも10分、好ましくは少なくとも20分または少なくとも30分、例えば通常の雰囲気で20~120分、好ましくは30~60分である。より高いロースト温度および/または圧力でより短い時間、例えば10分未満も可能である。あるいは、低温と組み合わせてより長い時間を使用することも可能である。このように、ロースト時間は限定されるものではなく、所望のアウトプットに依存する。好ましいロースト度を得るために、異なる時間と温度の組み合わせが、使用され得る。
【0068】
ローストプロセスの一番初めの段階では、前記混合物の温度は、添加される原料の温度とほぼ同じであり、その後、加熱により混合物の沸点温度まで上昇させる。通常、実際のロースト開始時の温度は、大気圧下での前記混合物の沸点温度であり、ロースト中に上昇する。加熱中、前記混合物の沸点は、調理パラメータと、混合物の成分とによって決定される。通常、ロースト中の温度は、機械と所望の風味プロファイルに応じて、90℃~140℃、または90℃~120℃の範囲となる。
【0069】
本発明の1つの実施形態では、前記混合物は、ローストの始めに沸騰温度まで加熱され、さらに加熱することなく放置される。
【0070】
1つの実施形態では、糖、穀物ベース材料、および水を含む混合物に、植物性脂肪が、添加され得る。前記植物性脂肪は、ロースト前、ロースト中、またはロースト後に、ただし蒸発する前に前記混合物に添加され得る。1つの実施形態では、植物性脂肪は、ロースト後、蒸発の前、好ましくは真空処理の前に、前記混合物に添加される。1つの実施形態では、植物性脂肪は、ロースト前に混合物に添加される。さらなる実施形態では、植物性脂肪は、ロースト中、または一部がロースト中および一部がロースト後に、前記混合物に添加される。
【0071】
本発明の好ましい一実施形態では、植物性脂肪は、ロースト後、蒸発前に、前記混合物に添加される。
【0072】
植物性脂肪は、用途に応じて選択される。好ましくは、植物性脂肪は、ココアバター、ココアバター同等物(cocoa butter equivalent:CBE)、植物性充填脂肪、好ましくは、通常、ミルク、ペースト、粉末、フレーク、油、クリームまたは断片の形態の、ナッツ、ココナッツまたはアーモンドからの植物性充填脂肪(例えばココナッツ油、ココナッツ脂肪、アーモンド油、またはナッツおよびアーモンドそのまま、これらの任意の組み合わせ)である。好ましくは、本発明のクラムは、ココアバターを含む。しかし、ココアバターに加えて、またはその代わりに、他の植物性脂肪を使用することもできる。
【0073】
1つの実施形態では、本発明の方法は、他の植物ベースの成分を前記混合物に添加するステップも含んでいる。そのような他の植物ベース成分は、好ましくは、繊維、脱脂アーモンド粉末および脱脂ナッツ粉末から選択される。繊維のような他の植物ベース物質は、典型的には、所望の風味、食感、または他の成分のレベルを調整するために添加される。1つの好ましい実施形態において、穀物ベース材料および水性媒体を含むが、添加された糖を含まず、糖が酵素の作用によって生成される混合物中に、繊維は、含まれる。
【0074】
いくつかの実施形態では、典型的には、穀物ベースクラムの意図された使用が、チョコレート風味の菓子または甘いベーカリー製品の製造で行われる場合、ココア粉末、ココアマス、ココアバターまたは異なるココア原料の混合物などのココア原料は、ロースト前、ロースト中、またはロースト後に、糖および穀物ベース材料の水性混合物に添加される。用語「ココアパウダー」は、ココアマスからココアバターを分離した後に残るココアマスの部分を指す。好適なココア原料のさらなる例には、未ローストおよびローストされたココアニブが含まれる。場合により、糖と穀物ベース材料との水性混合物は、ココアパウダー、ココアマスまたはその両方が添加されるとき、典型的にはココアパウダーが添加されるとき、植物性脂肪も含んでいる。
【0075】
1つの実施形態では、ココアマスなどのココア原料は、ロースト後、蒸発する前に混合物に添加される。さらなる実施形態では、ココア原料は、ロースト前に前記混合物に添加される。別の実施形態では、ココアマス、ココアパウダーまたはその両方のようなココア原料は、一部はロースト前、一部はロースト中、および一部はロースト後、ただし蒸発前に、前記混合物に添加される。
【0076】
ロースト後、少なくとも糖および穀物ベース材料を含むローストされた混合物が、蒸発させる。蒸発は、熱蒸発でも真空蒸発でもよく、好ましくは真空蒸発(バキューム)であり、部分真空蒸発であってもよい。熱蒸発の例としては、例えば、典型的には真空を用いないオーブン乾燥、またはローラー乾燥が挙げられる。
【0077】
蒸発、好ましくは真空蒸発では、液体から粉末の形態への相変化が起こる。典型的には、真空蒸発は、約-1000mbar~約-800mbar(-100~-80kPa)の圧力で実施される。通常、液体から粉末への相変化は、真空蒸発の最初の数分間で起こり始める。粉末状への相変化後、さらに蒸発させる時間は、最終製品の所望の水分量によって異なる。蒸発、通常は、真空蒸発は、所望の最終含水率に達するまで続けられる。通常、少なくとも10分、例えば約10~40分の真空蒸発時間が、使用される。
【0078】
通常、真空蒸発後の温度は、例えば約50℃~約80℃である。終了温度は、開始温度、開始水分量、真空処理時間および条件(加熱、冷却)によって異なる。
【0079】
蒸発後、穀物ベースクラムは、粉末の形態で得られる。典型的には、それは、約0.5~5重量%、1~5重量%、1~4重量%、または1~3重量%(例えば約1.2~2.8重量%)の最終含水率を有する。望ましい最終含水率は、穀物ベースクラムの使用目的によって異なり、水分量対活性水、粉末輸送(湿りすぎるとダマの原因になる)、後続のプロセスステップ(パッキングまたは次のユニット操作への直接)、異なる成分の相段階(糖、炭水化物:ガラス状/ゴム状/結晶構造)などのいくつかの要因によって影響を受ける。得られたクラムは、冷却されるか、または冷却可能にされる。
【0080】
所望または必要であれば、クラムは適当な大きさの粒子または断片に粉砕され、ここで適切な大きさは、クラムの意図された用途に依存する。
【0081】
本発明の1つの実施形態は、オート麦ベースクラムを調製する方法であって、当該方法は、
a)糖とオート麦ベース材料との水性混合物を供給するステップ;
b)糖とオート麦ベース材料との前記水性混合物を、好ましくは90~140℃または100~120℃の温度で好ましくは少なくとも10~30分間ローストして、ローストされた液体混合物を得るステップ;
c)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、好ましくはロースト前またはロースト中に、糖とオート麦ベース材料との前記水性混合物に、植物性脂肪および任意にココア原料を、任意に添加および混合するステップ;
d)ローストされた前記液体混合物を、好ましくは約-100~-80kPaの圧力で、蒸発、好ましくは真空蒸発させて、液体から粉末形態へのローストされた混合物の相変化を得るステップ;および
e)真空蒸発させた粉末を任意に粉砕して、所望の大きさのオート麦ベースクラムを得るステップ、を含む。
【0082】
本発明のさらなる実施形態は、オート麦ベースクラムを調製するための方法であり、当該方法は、
a)糖とオート麦ベース材料との水性混合物を供給するステップ;
b)糖とオート麦ベース材料との水性混合物を、好ましくは90~140℃または100~120℃の温度で、好ましくは少なくとも10~30分間ローストして、ローストされた液体混合物を得るステップ;
c)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、前記混合物に、ココアマス、ココア粉末、またはその両方などのココア原料を、任意に添加および混合するステップ;
d)ロースト前、ロースト中、またはロースト後に、ココアバターを添加するステップ:
e)ローストされた液体混合物を、好ましくは約-100~-80kPaの圧力で、蒸発、好ましくは真空蒸発させて、液体から粉末形態へのローストされた混合物の相変化を得るステップ;
f)真空蒸発させた粉末を任意に粉砕して、所望の大きさのオート麦ベースクラムを得るステップ、
を含む。
【0083】
1つの実施形態では、ココアバターは、ローストの後に、および蒸発の前に、ローストされた液体混合物に、添加される。
【0084】
1つの実施形態では、真空蒸発は、約-100~-80kPaの圧力で実施される。
【0085】
本発明の一実施形態において、糖とオート麦ベース材料の水性混合物は、糖とオート麦フラワーまたはオート麦粉との混合物である。本発明の別の実施形態では、糖とオート麦ベース材料の水性混合物は、糖と発酵したオート麦ベースとの混合物である。本発明のさらなる実施形態では、糖とオート麦ベース材料の水性混合物は、糖と酵素処理されたオート麦ベースとの混合物である。1つの実施形態では、糖と穀物ベース材料、特にオート麦ベース材料との水性混合物は、添加される、糖および酵素処理オート麦ベースに酵素の作用によって生成される糖、を含む。
【0086】
本発明の一実施形態において、本方法は、穀物ベースクラムに植物性脂肪を添加してスラリーを得、これを湿式粉砕し、菓子製品、好ましくはチョコレートまたはチョコレートフィリングの製造においてポンプ操作可能な原料として使用するステップを含む。
【0087】
好ましい実施形態において、本発明による方法はまた、得られた穀物ベースクラムを非乳製品菓子およびベーカリー製品、特にチョコレートの製造において使用するステップを、含む。さらなる好ましい実施形態において、本発明による方法は、得られたオート麦ベースクラムを、非乳製品菓子およびベーカリー製品、特にチョコレートまたはチョコレートタイプの製品の製造に使用するステップを含む。典型的には、前記ベーカリー製品は、甘いベーカリー製品を含む。
【0088】
本発明のさらなる目的は、好ましくは植物性脂肪と共に、任意にココアマス、ココア粉末、ココアバターまたはそれらの任意の組み合わせなどのココア原料と共に、糖と穀物ベース材料とのローストされた混合物を含む、非乳製品クラムであり、前記クラムは、0.5~5重量%、通常1~5重量%、好ましくは1~4重量%、より好ましくは1~3重量%の含水率を有し、ローストされていない穀物ベース材料と比較して、穀物ベース材料の穀物風味は、低減されている。
【0089】
好ましい実施形態において、本発明のクラムにおける穀物風味の低減は、ナッツのような/穀物のようなおよび生の穀物のような/脂肪のような/油のようなというシリアル官能属性における低減を含む。好ましくは、穀物風味の低減は、芳香化合物1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-メチル酪酸およびo-グアヤコールの濃度の減少を含む。1つの好ましい実施形態では、前記クラムは、好ましくはココアバターと共に、サッカロース、またはサッカロースおよびフルクトースと、オート麦ベース材料とのローストされた混合物を含むか、またはそのものである。1つの実施形態において、前記クラムは、任意にココアバターと共に、サッカロースと、オート麦粉またはオート麦フラワーとのローストされた混合物を含むか、またはそのものである。
【0090】
本発明のさらなる実施形態は、穀物ベースクラムであり、これは、以下のもの含むか、または以下のものから本質的に構成される(パーセンテージは重量で示される):
10~30%、好ましくは10~28.5%の穀物ベースの乾燥材料ベース
25~71%、好ましくは25.5~70.5%の糖
6~60%、好ましくは6~58%の水
0~4%、好ましくは0~4.4 %の植物性油脂
0~20%、好ましくは0~18.5%のココアマス/粉末。
【0091】
本発明のクラムは、様々な食品、好ましくは菓子製品、甘い焼き菓子、および甘いベーカリー製品の製造に使用され得る。このような菓子または食品には、チョコレートタイプの製品、ビスケットタイプの製品のためのフィリング、チョコレートプラリネのような充填されたチョコレート製品、チョコレートタブレット、チョコレートコーティングされた内包物、チョコレートがコーティングされたまたは充填されたポン菓子(puffed cereals)、内包物を有するかまたはチョコレートでコーティングされたシリアルバーなどがあるが、これらに限定されない。
【0092】
本発明のクラムを含み得る甘い焼き製品の例としては、充填または非充填ビスケットタイプの製品またはケーキ、クロワッサンおよびタルト、このような製品のためのフィリング、チョコレートコーティングされたケーキ、およびチョコレートコーティングされたバーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
さらなる実施形態において、本発明のクラムは、例えば飲料、スプレッド、およびスナック製品(甘いまたは塩辛いスナックのいずれか)などの様々な他の食品においても使用が見出される。本発明の1つの実施形態は、水と混合することができ、したがってココア飲料の調製においてインスタントココア粉末に取って代わる、すぐに使用できる、ヴィーガン、オート麦-ココアクラムである。
【0094】
一般に、本発明のクラムは、一般的に粉乳が使用されるような食品用途において含有され得る。それは、例えばベーカリーおよびホームベーカリーにおいて、ミルクの乾燥代替物として使用され得、さらなる利点として良好な保存性を有する。
【0095】
上記のように、穀物ベース製品の穀物風味を低減させるための本発明による方法は、本発明のプロセスに従って穀物ベースクラムを調製するステップと、穀物ベース製品の製造における原材料として穀物ベースクラムを使用するステップとを含む。典型的には、本発明による方法は、ナッツのような/穀物のようなおよび生の穀物のような/脂肪のような/油のような、としてのシリアル官能属性を低減させる。好ましい実施形態では、穀物風味の低減は、芳香化合物1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-メチル酪酸およびo-グアヤコールの濃度の減少を含む。さらなる好ましい実施形態において、穀物ベースの製品の穀物風味を低減させるための方法は、前記穀物ベースの製品のカラメル様風味を増加させる。
【0096】
開示される本発明の実施形態は、本明細書に開示される特定の構造、プロセスステップ、または材料に限定されず、関連する技術分野における通常の当業者によって認識されるようなその同等物に拡張されることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0097】
本明細書を通して1つの(one)実施形態または1つの(an)実施形態への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な場所での「1つの(one)実施形態において」または「1つの(an)実施形態において」というフレーズの出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。また、例えば、約、実質的になどの用語を用いて数値に言及する場合、正確な数値も開示される。
【0098】
本明細書で使用される場合、複数のアイテム、構造要素、構成要素、および/または材料は、便宜上、共通のリストで示され得る。しかし、これらのリストは、リストの各メンバーが別個の固有のメンバーとして個別に識別されるかのように解釈されるべきである。したがって、そのようなリストの個々のメンバーは、反対の指示なしに共通のグループにおけるそれらの提示にのみ基づいて、同じリストの任意の他のメンバーの事実上の均等物として解釈されるべきではない。さらに、本発明の様々な実施形態および実施例は、その様々な構成要素の代替案と共に本明細書で言及される場合がある。そのような実施形態、実施例、および代替案は、互いの事実上の均等物として解釈されるのではなく、本発明の別個の自律的な表現として考慮されることが理解される。
【0099】
さらに、記載された特徴、構造、または特徴は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされ得る。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状などの例のような多数の具体的な詳細が提供される。しかしながら、関連する技術分野の当業者であれば、本発明は、1つまたは複数の特定の詳細なしで、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施することができることを認識するであろう。他の例では、周知の構造、材料、または操作は、本発明の態様を不明瞭にするのを避けるために、詳細に示されないか、または説明されない。
【実施例
【0100】
〔実施例1〕
オート麦ベースクラムの調製
オート麦フラワーを出発材料として、本発明の方法によりオート麦ベースクラムを調製した。オート麦ベースクラムの原材料を、表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
まず、混合、蒸気加熱、および任意に真空蒸発のための手段を備えた加熱混合混練反応器などの適切なクラムクッカーに、水および糖を加え、75℃の温度で5分間混合した。オート麦粉末を添加し、蒸気/水ジャケット温度130℃で30分間混合を継続した(ローストステップ)。所望により、ココアマスなどの他の原材料を、この段階、すなわちロースト前またはロースト中に添加することができた。ローストの終了時、製品温度は、約107℃であった。
【0103】
次に、液体混合物に、ココアバターを添加した。所望であれば、ココアマスもこの段階で添加することができた。前記混合物を、攪拌しながら15分間真空処理した。バキューム圧力は-998mbar、バキューム終了時のクラム温度は、60~80℃であった。真空処理の間、液体から粉末への相変化が、最初の数分間で始まった。蒸発は、所望の含水率に達するまで続けられ、このケースでは15分で行われた。
【0104】
真空処理後、得られたクラムは、0.35~0.50の水分活性値を有していた。このクラムを冷却し、粉砕して、1.0~3.0%の含水率(分析法カールフィッシャー(KF)滴定:Karl Fischer titration)を有するオート麦ベースのチョコレートクラムを得た。
【0105】
上述したプロセスは、所望のアウトプット、特にチョコレートクラムの風味プロファイルに従って、異なる原料、プロセス時間、温度およびpH値を使用し、メイラード反応の反応成分の数を調節することによって、修正することが可能である。
【0106】
特に、穀物ベースクラムの原材料の以下の量を、テストした。なお、量はこれより少なくても多くてもよい。パーセンテージは重量で示される。
穀物ベースの乾燥材料ベース 10~28.5%
糖 25.5~70.5%
水 6~58%
植物性油脂 0~4.4%
ココアマス/パウダー 0~18.5%
ナッツ類、アーモンド
ココナッツ
【0107】
また、出発原料として異なる穀物を用いた様々な加工パラメータが試験され、例えば、ロースト温度90~130℃、ロースト時間30~120分、真空処理時間15~45分、最終含水率1.4~2.8%とした。穀物ベースクラムの風味プロファイルの期待に応えるために、加工パラメータは、最適化され得る。
【0108】
〔実施例2〕
オート麦ベースクラムから作製されるオート麦チョコレート
実施例1のオート麦ベースクラムを、オート麦チョコレートの製造に使用した。オート麦クラムチョコレートの原材料を表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
上述した原材料の量は、所望の風味および栄養プロファイルに応じて変化し得ることが理解される。
【0111】
この例では、チョコレートは3本ロールリファイナーで精製され、従来の方法でコンチングされた。また、精製コンチェ、ボールミルによる精製などの他の精製およびコンチング方法を用いることも可能である。
【0112】
レシチンおよびココアバターの一部を除く全ての原材料を混合し、50~55℃に温め、約6バールの圧力で、3ロールリファイナーで予備粉砕した。さらにココアバターを添加し、混合物を3本ロールリファイナーで約14バールの圧力で細かく粉砕した。この混合物を、約55℃で8~12時間、従来のコンチングにかけた。次に、レシチンおよび残りのココアバターを混合しながら添加した。得られた混合物を、24時間静置した。
【0113】
3ロール精製プロセスからのオート麦クラムチョコレートは、脂肪含量35.21%(NIR:Near Infrared spectroscopy)、Casson塑性粘度2.335Pas、Casson降伏値3.243Pa、定速(16.2 rpm)3930mPas(3つすべてがHaake VT550粘度計による測定)、粒子サイズ27.8μm(Malvern D0.9)および含水率1.4%(NIR)を有した。
【0114】
〔比較例〕
比較のために、オート麦チョコレートを、オート麦クラムチョコレートについて上述したのと同じレシピおよびプロセスを用いて、未処理のオート麦粉を用いて製造した。したがって、ローストプロセスは除いたが、精製およびコンチングプロセスは同じであった。
【0115】
ロール精製プロセスからの基本的なオート麦フラワーチョコレートは、脂肪含量37.06%(NIR)、Casson塑性粘度1.35 Pas、Casson降伏値2.048 Pa、定速(16.2 rpm)2324 mPas(3つすべてがHaake VT550粘度計で測定)、粒子サイズ28.401μm(Malvern D0.9)および含水率1.54%(NIR)を有していた。
【0116】
オート麦ベースクラムからも、基本的なオート麦フラワーからもチョコレートを製造することが可能であった。しかし、風味の特徴やチョコレートの構造には大きな違いがあった。
【0117】
基本的なオート麦フラワーチョコレートは、チョコレートの溶解が始まった後に放出された強い穀物味を有していた。オート麦フラワーの味は、風味のプロファイルと後味において圧倒的であった。それは、ダークチョコレートのタイプに近かった。溶解プロファイル/能は、素早く融解し、少し粉っぽいものであった。保存期間が長くなると、脂肪の酸化生成物によると思われる苦い後味があることがわかった。
【0118】
オート麦クラムチョコレートはよりクリーミーであり、強いカラメル風味の特徴を有していた。オート麦クラムチョコレートは、より「ミルクチョコレート」のような風味を有し、風味のプロファイルは一定であった。さらに、クラムプロセスにより、構造が改善され、よりクリーミーで長時間の融解プロファイルを有するようになった。また、口当たりの長期持続性も、分析において説明された。オート麦クラムチョコレートは、マイルドな穀物味を有しているが、基本的なオート麦粉チョコレートバージョンのように圧倒的ではない。後味は良好で、カラメルのようであった。1年間の保存期間後、異臭(off-flavour)は検出されなかった。全体的な香りの強さは、クラムチョコレートで強く、これはクラムローストプロセスからのメイラード反応成分によるものであった。
【0119】
〔実施例3〕
ライ麦ベースクラムの調製
全粒ライ麦フラワーから出発して、穀物ベースクラムを調製した。全粒ライ麦フラワーは、繊維含有率が高いために最も難題であると思われたので、選択された。このことがチョコレート製造プロセスと同様に、クラムのローストプロセスにどのような影響するかを確認することが重要であった。ライ麦粉の繊維含有率は20%で、オート麦粉の繊維含有率は8%であった。ライ麦チョコレートクラムの原材料を、表3に示す。
【0120】
【表3】
【0121】
混合、均質化、蒸気加熱および真空化の手段を備えた適切なクラムクッカーに水および糖を加え、70~90℃の温度で5分間混合した。なお、糖の一部は水に溶解する。ライ麦粉および粉砕した麦芽粒を添加した。ローストステップは、蒸気圧2バールのオープンクッカーで攪拌しながら30~40分間実施した。生成物の終了温度は95℃であった。
【0122】
次に、加熱を停止し、混合しながら液体混合物にココアマスを添加した。得られた混合物を、10~15分間、加熱または冷却することなく真空にした。真空圧力は約-900mbar、真空処理終了時のクラム温度は約70~80℃であった。真空処理の間、液体から粉末形態への相変化が起こった。真空処理の後、得られたライ麦クラムを粉砕した。最終的なクラムの含水率は2.0%であった(KF)。
【0123】
ライ麦粉を加工してライ麦ベースクラムを得ることが十分に可能であることが判明した。得られたライ麦クラムは所望の特性を有しており、以下の実施例に示すように、精製してチョコレートタブレットに製造することができた。
【0124】
〔実施例4〕
ライ麦ベースクラムから製造したライ麦チョコレート
実施例3のライ麦ベースクラムを、ライ麦チョコレートの製造に使用した。ライ麦チョコレートの原材料を、表4に示す。
【0125】
【表4】
【0126】
レシチンおよびココアバターの一部を除く全原料を混合し、50~55℃に加温した後、3本ロールリファイナーで予備粉砕を行った。さらにココアバターを加え、混合物を細かく粉砕した。この混合物を、約55℃で8~12時間、従来のコンチングにかけた。次に、レシチンおよび残りのココアバターを混合しながら添加した。得られた混合物を24時間静置した。最後に、得られた混合物をテンパリングし、所望に応じて使用した。
【0127】
得られたライ麦チョコレートは、脂肪分33.7%(近赤外線分光法(NIR))、Casson塑性粘度4.562Pas、Casson降伏値1.065Pas、定速(16.2rpm)5823mPas(3つすべてがHaake VT550粘度計で測定)、粒子サイズ(Malvern D0.9)33.7μm、含水率0.37%(KF)であった。
【0128】
得られたライ麦クラムベースのチョコレートは、典型的なチョコレート風味と組み合わされた、マイルドな麦芽風のトーストしたライ麦パンの風味を有していた。高い繊維含量のため、構造は少し短かった。しかし、このチョコレートは通常のチョコレートと同じで、チョコレートタブレットやその他の製品に使用できた。
【0129】
〔実施例5〕
発酵オート麦ベースクラムおよびそれを用いたチョコレート
クラム調製前に穀物原料を発酵させることにより、穀物ベースの風味をさらに発展させることを目的とした。発酵オート麦ベースの原料を表5に示す。
【0130】
【表5】
【0131】
まず、オート麦粉とグラニュー糖の混合物に沸騰水(100℃)を注ぎ、生成物を、前記温度で約15分間保持した。前記混合物のpHは、約6.5であった。得られたオート麦ベース混合物を44℃まで冷却し、スターターを加えた。
【0132】
オート麦ベース混合物を、41℃で16.5時間発酵させた。発酵後、前記混合物は、プディング様構造を有し、pH値は4.1であった。
【0133】
クラムの調製
【0134】
発酵させたオート麦ベースとグラニュー糖をクラムクッカーに加えた。乾燥度を高めるために、若干の余分なオート麦フラワーを加えた。ローストは、pH5.0および2~3バールの蒸気圧で30分間実施した。
【0135】
ロースト後、ココアマスを液体混合物に加えた。ロースト中の水分の蒸発が多いため、若干の水も加えた。15分間真空処理を行い、粉末状の混合物(クラム)を得た。液体から粉末への相転移は、真空処理の最初の数分間で起こり始めた。真空処理の後、前記クラムを、微粉末に粉砕した。最終的なクラムは、1.5-2%(KF)の含水率を有した。
【0136】
発酵させたオート麦クラムは、オート麦ベースを発酵させずに製造したオート麦クラムよりもさらにマイルドな穀物風味のプロファイルを有していた。おそらく発酵プロセスからの反応成分の含有率が高いために、発酵なしのオート麦クラムと比較して、より強いカラメル様風味が認められた。
【0137】
発酵オート麦クラム、および発酵オート麦クラムから調製されたチョコレートの原材料を、表6に示す。チョコレートの調製については後述する。
【0138】
【表6】
【0139】
チョコレートの調製
【0140】
発酵オート麦ベースクラムは、ロール精製プロセスと従来のコンチングを使用するチョコレート製造において、使用した。前記製造は、実施例2に記載された手順に従った。
【0141】
発酵オート麦ベースクラムから作製されて得られたチョコレートは、脂肪分34%(NIR)、Casson塑性粘度4.066Pas、Casson降伏値2.622Pas、定速(16.2rpm)5958mPas(3つすべてがHaakeVT550粘度計で測定)、粒子サイズ(Malvern D0.9)27.8μmおよび含水率0.32%(KF)であった。
【0142】
〔実施例6〕
オート麦ベースクラムの製造における酵素処理(グルコアミラーゼおよびエンドアミラーゼ)
この実験では、加熱プロセスでオート麦ベースのデンプン粘度を下げるために酵素を使用した。その目的はまた、メイラード反応に対するより反応性の高い成分を得るために、還元糖のレベルを上昇させることであった。
【0143】
使用した酵素は、デンプン多糖類の(1,4)-α-D-グルコシド結合を加水分解するエンド-アミラーゼと、多糖類の非還元末端で(1,4)-および(1,6)-α-D-グルコシド結合を加水分解するL-グルコアミラーゼであった。
【0144】
オート麦粉末の20%水溶液を調製した。この混合物の乾燥物含有率は、17.52%であった。オート麦粉末の重量に基づいて0.20%の量のエンド-アミラーゼを添加したときの混合物の温度は、60℃であった。約15分後、オート麦粉の重量に基づいて0.30%の量のL-グルコアミラーゼを添加した。エンドアミラーゼを添加してから約1.5時間後、混合物を遠心分離し、酵素処理したオート麦ベース(オートミルクに似ている)を得た。また、遠心分離を行わない試験も行った。
【0145】
酵素処理オート麦ベースからのクラムの製造は、基本的に実施例1で示した手順に従ったが、第1のステップでは追加の水は必要なく、糖および酵素処理オート麦ベースをクラムクッカーに添加した。この混合物を1~2バールの蒸気圧下で75分間ローストし、97.5℃の温度で終了させた。酵素処理によりメイラード反応のための反応成分が増加し、反応がより容易に進行するので、オート麦フラワーから開始する本発明のプロセスと比較して、より低い温度を適用することが可能である。酵素処理したオート麦ベースから調製したオート麦クラムの原材料は、表7に示すとおりである。
【0146】
【表7】
【0147】
ロースト後、ココアマスを加え、シロップ状の混合物を-800~-950mbarの圧力で30分間真空処理した。得られたクラムを微粉末に粉砕し、チョコレートの製造に使用した。
【0148】
チョコレートの調製
【0149】
酵素処理したオート麦ベースから調製したクラムを、ロール精製プロセスおよび従来のコンチングを用いて、チョコレートの製造に使用した。前記製造は、実施例2に記載した手順に従った。
【0150】
【表8】
【0151】
レシチンおよびココアバターの一部を除くすべての原材料を混合し、50~55℃に加温し、3本ロールリファイナーで予備粉砕した。さらにココアバターを加え、前記混合物を微粉砕した。この混合物を、約55℃で8~12時間、従来のコンチングに供した。次に、レシチンおよび残りのココアバターを混合しながら添加した。得られた混合物を24時間静置した。最後に、得られた混合物をテンパリングした。
【0152】
酵素処理したオート麦ベースを遠心分離して得られたチョコレートは、脂肪分33.7 %(NIR)、Casson塑性粘度2.532Pa、Casson降伏値3.237Pa、定速(16.2rpm)4161mPas、粒子サイズ(Malvern D0.9)28.7μm、含水率0.53%(KF)であった。
【0153】
酵素処理したオート麦ベースを遠心分離せずに得られたチョコレートは、脂肪分32.1%(NIR)、Casson塑性粘度3.064Pa、Casson降伏値3.735Pa、定速(16.2rpm)5003mPas、粒子サイズ(Malvern D0.9)34.4μmであった。
【0154】
結果
【0155】
酵素処理したオート麦ベースから開始するクラムプロセス、およびその後のチョコレート製造プロセスは、いずれも良好に成功した。クラムプロセスでは、エンドアミラーゼが、加熱プロセス中に粘度を低下させた。L-グルコアミラーゼは、オート麦ベースからのグルコースレベルを増加させた。酵素処理したオート麦ベースを遠心分離した「フレッシュオートミルク」からもオート麦クラムを作製することができた。また、遠心分離を行わない酵素処理ベースも、良好に機能した。しかし、いずれのケースでも、オート麦粉末を出発原料として用いた実施例1のクラムプロセスと比較して含水率が高いため、クラムのロースト時間が長くなった。
【0156】
理解されるように、オート麦ベースの乾燥物含有率を増加させることにより、プロセスを最適化することができ、これによりクラム調理プロセスが短縮される。さらに、強い風味が所望されない場合には、酵素レベルを最適化し、グルコースレベルを減少させることができる。還元糖の量を増やすことで、風味特性を調整することが可能である。
【0157】
不溶性部分を遠心分離で除去すると、レオロジー特性が改善されることがわかった。遠心分離した試料から調製したチョコレートでは、粒子径が小さくても、Casson粘度が低くなっていた。Casson塑性粘度とCasson降伏値はともにモールドチョコレートに典型的な値であった。
【0158】
〔実施例7〕
穀物ベースクラムの製造における酵素処理(β-グルカナーゼ)
βグルカナーゼ酵素を、オート麦に自然に存在するβグルカンに起因するオート麦ベースクラムの、発生し得る粘着性を減少させるために使用した。その目的は、オート麦ベースのヴィーガンチョコレートにおける口当たりと融解特性を改善することであった。
【0159】
使用した酵素は、セルロースおよびキシラナーゼ活性を有するβ-グルカナーゼであった。βグルカナーゼ活性は12,500U/gであり、酵素の投与量は、オート麦粉末の量を基準にして0.12%であった。原材料の量を、下記表9に示す。
【0160】
【表9】
【0161】
第1に、水(90%)と糖を反応器に加え、温めた。酵素を水(10%)に混合し、糖スラリー中に添加した。この後、オート麦の粉末を添加した。反応時間は、酵素反応に最適なマス(mass)温度(60~65℃)となるように、先のパラメータで120分とした。
【0162】
次に、ローストフェーズを開始することにより、反応をゆっくりと停止させた。混合物を、クラムクッカーで、攪拌速度50rpmで60分間ローストし、水循環115℃、ロースト終了時のマス温度104℃であった。
【0163】
ロースト後、ココアバターを添加し、真空処理を開始した。真空処理時間は30分、攪拌速度は60rpm、水循環は50℃であった。クラムを微粉末に粉砕し、チョコレートの製造に使用した。
【0164】
チョコレートの調製
【0165】
βグルカナーゼ処理したオート麦ベースから調製したクラムを、チョコレートの製造に使用した。簡単に言うと、加熱混合反応器でドライコンチングを開始した。チョコレートクラム、ココアマス、およびココアバターの一部を、反応器に添加した。温度は50~60℃、コンチング時間は、60~120分であった。
【0166】
【表10】
【0167】
コンチング後、バニラ、レシチンおよび残りのココアバターを加えた。コンチングされたマスを反応器から取り出した。ボールミル精製機で精製を開始した。マスを、所望の粒子径に達するまで循環させた。最後に、チョコレートをテンパリングし、チョコレートタブレットに成型した。
【0168】
得られたチョコレートは、脂肪分36.5%(計算値)、Casson塑性粘度1.787Pa、Casson降伏値6.683Pa、定速(16.2rpm)3985mPas(いずれもHaake VT550粘度計にて測定)、粒子サイズ20μmであった。
【0169】
オート麦ベースをβグルカナーゼで処理することにより、チョコレートの構造に影響を与えることが可能であった。チョコレートを官能分析し、酵素処理をしていない基本的なオート麦クラムチョコレートと比較した(実施例1)。チョコレートの口当たりは、βグルカナーゼ処理により変化した。チョコレートの融解性は増加し、粘着性および脂肪分の多い口当たりは、低減した。しかし、これらの官能特性は、使用用途によってポジティブにもネガティブにも作用し得る。
【0170】
〔実施例8〕
穀物ベースのチョコレートクラムフィリング
オート麦ベースのチョコレートクラムを調製し、プラリネやビスケットなどの非乳製品フィリング用途に使用した。
【0171】
オート麦ベースのチョコレートクラムの調製は、実施例1に記載の手順に従った。得られたオート麦チョコレートクラムおよびフィリングの他の原材料、特に軟質フィリング脂肪、例えばパームベース脂肪、および任意選択のフレーバーおよび栄養剤を、ボールミル中で複合精製およびコンチングプロセスに付した。複合精製およびコンチングプロセス(精製コンチェ)は、55~60℃の温度で10時間継続された。精製およびコンチング時間は、所望のレオロジーパラメーター、風味および粒子サイズによってさらに調整され得る。得られたチョコレートクラムフィリングは通常、23~30μmの粒子サイズおよび35~36%の脂肪含有率を有していた。これは、プラリネおよびビスケットのフィリングとして成功裏にテストされた。
【0172】
〔実施例9〕
チョコレート試料の官能分析
2つのチョコレート試料を外部官能分析に供した。チョコレートAは、非加工オート麦粉末を含み、チョコレートBは、発酵オート麦ベースから出発して本発明の方法によって調製されたオート麦ベースクラムを含んでいた。チョコレートマスの調製とレシピは同一であり、オート麦ベース材料の量も同等であった。ココアの量は、通常のミルクチョコレートと、40%のココア含有率を有するダークチョコレートとの中間の量であった。
【0173】
5人のパネリストからなる官能専門家パネルによる記述的官能評価が行われた。前鼻腔経路の香気印象(鼻腔からの匂いの感知)、後鼻腔経路の香気印象(口腔からの匂いの感知)および味覚/口当たりの属性は、0~5のスケールで評価された。結果は、図1A(前鼻腔経路)、図1B(後鼻腔経路)、図1C(味覚・口当たり)に示されている。
【0174】
チョコレートAの前鼻腔経路の匂いの印象は、チョコレートBに比べてややミルキーに感じられ、図1Aに示すように、チョコレートBはダークチョコレート/ココアおよびカラメルの香りを有していた。
【0175】
図1Bに見られるように、チョコレートAの後鼻腔経路の匂いの印象は、ダークチョコレート/ココアの印象は非常に弱いが、はっきりとしたナッツ/アーモンドの香りを有していた。チョコレートBは、前鼻腔経路の印象と同様に、より多くのダークチョコレート/ココアおよびカラメルの香りを有していた。
【0176】
チョコレートAにおける明確なナッツ/アーモンドの香りは、ローストされた穀物に相関している。チョコレートBでは、この香りが著しく小さいことから、本発明の製法により、オート麦特有のシリアル味を弱めることが可能になる。
【0177】
味覚(甘味/苦味/酸味)および口当たり(脆さ、融解性および粘着性)の属性は、図1Cに示す通りである。両チョコレートとも味は同じように甘く、チョコレートBはより苦く感じられることが判明した。チョコレートBの口蓋での融解能および口どけは、長く続いた。全体的な強さは、チョコレートBの方が高く評価された。
【0178】
〔実施例10〕
GC-Oによる芳香分析、ガスクロマトグラフィー-質量分析法(Gas chromatography-mass spectrometry:GC-MS)による選択された芳香化合物の定量、および官能データと分析データの統計的評価と関連付け
試料のMeOH/水抽出液に対して、ガスクロマトグラフィー-嗅覚検査法(Gas chromatography-olfractometry:GC-O)分析を行った。化合物はGCカラム上で分離され、一部はスニッフィングポートへ、一部は検出器へ溶出された。スニッフィングポートでは、香りの活性化合物を嗅いで評価することができた。検出結果からプロファイルに寄与する強力な匂いの化合物をピックアップし、同定された芳香化合物と未知の芳香化合物に分離した。同定された芳香化合物は、チョコレートに通常存在する化合物である。未知の芳香化合物は、チョコレートに存在するが、まだ同定されていない化合物である。未同定の理由は、外部の分析サービスが試料の原料ベースについてまだ知らされていなかったためである。
【0179】
両チョコレート試料は、前記「未知」の芳香化合物を比較的多量に示した。チョコレートBは、チョコレートBと比較して、より強力な未知の嗅覚印象を有していた。官能的属性、参照化合物の利用可能性およびMSシグナルに基づいて、より強力な26の芳香化合物が、定量化のために選択された。
【0180】
2つのチョコレート中の26の選択された芳香化合物の量を比較した。チョコレートAを基準レベルとして選択した(指数1.00)。2つのチョコレートの分析データと官能データの比較を図2に示す。成分は4つのグループに分類された。クリーミー/ミルキー、チョコレート、ダークチョコレート、カラメルの4つのグループに分類された。
【0181】
分析データと官能データの関連性から、チョコレートBはモニターされた芳香化合物のほぼ全てにおいてより強いことが分かる。この結果は、先の官能評価を裏付けるものである:本発明のプロセスは、メイラード反応に典型的な芳香化合物を強化する。さらに、このプロセスは、穀物ベースのチョコレートに通常存在するシリアル味を低減させる。
【0182】
〔実施例11〕
チョコレート試料の分析(DoE実験)
本発明の方法を用いて、非乳製品である穀物ベースクラムを製造するために、DoE実験を行った。このクラムは、ヴィーガンチョコレートの製造に使用された。同じチョコレートレシピを使用するが、本発明の方法に従って穀物原料を処理しないことによって、参照チョコレートを調製した。チョコレート試料の香りと官能プロファイルを分析した。
【0183】
原料としてオート麦を用い、加工パラメータを以下のように変化させて、クラムを調製した。
- ロースト時間 30~90分
- 加熱温度 100~140℃
- 混合 30~100rpm
- 水の量 8~15%
- 追加パラメータ:pHと発酵の影響(酸性/アルカリ性)、酵素処理
【0184】
官能分析
【0185】
記述的官能分析は、官能専門家パネルによって実施された。まず、記述的特性のリストが作成された。異なる官能属性の強度を、異なる日および異なる日の時間帯に0~5のスケールで評価した。
【0186】
図3は、官能属性と加工パラメータの主成分分析を示している。官能分析では、異なる試料がおおよそ3つの異なるクラスターにグループ化されることが示された。
-クラスター1:参照-生の穀物のような、ナッツのような属性が高い;DoE1およびDoE2-生の穀物のような、ナッツのような属性が低め
-クラスター2:DoEs3、5、6および8-よりバランスが取れており、生穀物のような属性は低め。
-クラスター3:DoE7:カラメルのような、ロースト香が高く、フルボディの印象を与える卓越したもの。
【0187】
官能分析に基づいて、本発明の方法は、各種チョコレート試料の官能プロファイルに大きな影響を与え、生穀物のような、および、ナッツのような/アーモンドのような/穀物のような属性を低減させ、その結果、参照と比較して穀物の風味を低減させた。異なるクラスターから代表的な例(参照、DoE 1、DoE 3、DoE 7)を選択し、さらに分析を行った。
【0188】
芳香化合物の分析
【0189】
芳香分析用試料は、以下のように調製した。チョコレート試料30g+温水60gを混合し、チョコレートスラリーを作製した。チョコレートスラリーを、100mLのメタノール(MeOH)を用いて60℃、150mbarで6時間、Soxhletに導入した。MeOH相を回収し、ジクロロメタン(DCM)で抽出した。DCM相を13000rpm、0℃で15分間遠心分離し、透明なDCM相を得た。その後、10gのNaSOで乾燥させた。希薄な試料分析用の1mLを除去し、残りの試料を約4mLに濃縮した。選択した芳香化合物の定量は、標準添加法で行った。
【0190】
チョコレートおよびシリアルにおける官能属性の既知のドライバーである芳香化合物を文献に基づいて分析のために選択し、3-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、ヘキサナール、1-オクテン-3-オール、ノナナール、デカナール、トランス,トランス-2,6-ノナジエナール、トランス-2,シス-6-ノナジエナール、トランス、トランス-2,4-ノナジエナール、トランス,トランス-2,4-デカジエナール、2,4,6-ノナトリエナールを含んだ。濃度が高くなるとシリアル官能属性を著しく高める芳香化合物としては、通常、3-メチル酪酸、2-メチル酪酸、ヘキサン酸、1-ヘキサノール、1-ペンタノール、1-オクテン-3-オールおよびo-グアヤコール、特に2-メチル酪酸、1-ペンタノール、1-ヘキサノールおよびo-グアヤコールの芳香化合物が挙げられる。
【0191】
図4は、シリアル属性対加工パラメータに影響を与える、シリアル官能属性対芳香化合物の主成分分析を示す。図4はまた、風味プロファイルに対するいくつかの任意の追加処理(処理1-発酵(酸性条件);処理2-アルカリ性条件;処理3-酵素処理(アミラーゼ))の効果を示す。
【0192】
図5は、官能および分析データの両方に基づく主成分分析を示している。
【0193】
この結果から、本発明の方法は、本発明の方法によって調製された穀物ベースクラムを含む穀物ベースの製品の穀物風味のレベルを低減させるのに、有効であることがわかる。特に、本発明の方法は、ナッツのような/穀物のようなおよび生の穀物のような/脂肪のような/油のような、としてのシリアル官能属性を効果的に低減させる。典型的には、これは、3-メチル酪酸、2-メチル酪酸、ヘキサン酸、1-ペンタノールおよびo-グアヤコール、特に2-メチル酪酸、1ペンタノールおよびo-グアヤコールなどの芳香化合物の濃度の減少として見て取ることができる。
【0194】
同時に、本発明の方法は、上記のシリアル官能属性と負の相関関係を有する芳香化合物の濃度を増加させることができる。したがって、本発明の方法は、2,3-ペンタンジオン、マルトール、ノナナール、トランス,トランス-2,6-ノナジエナール、トランス-2,シス-6-ノナジエナール、トランス,トランス-2,4-デカジエナール、特にノナナールなどの芳香化合物の濃度を増加させることができる。フラネオールを加えた後者の化合物のいくつかは、カラメル属性に対してポジティブなドライバーでもある。したがって、カラメル様の風味を増加させると同時に穀物風味を低減させることも、可能である。
【0195】
穀物ベースクラムの使用目的に応じて、したがって、所望のアウトプットに応じて、適用温度、還元糖の量、異なる原料、加工時間、pH値などの使用条件および反応成分を調整することによって、所望の風味レベルおよび風味特性を得ることが可能である。
【0196】
前述の例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理を例示するものであるが、当業者には、発明的能力を発揮することなく、また本発明の原理および概念から逸脱することなく、形態、用途および実施の詳細における多数の変更を行うことができることは明らかであろう。従って、以下に示す請求項による場合を除き、本発明が限定されることは意図していない。
【0197】
動詞「含む(to comprise)」および「含む(to include)」は、本書では、同じく引用されていない特徴の存在を排除も要求もしないオープンな限定として使用されている。従属請求項に記載された特徴は、特に明示されない限り、相互に自由に組み合わせ可能である。さらに、本書を通じて「1つの(a)」または「1つの(an)」、すなわち単数形の使用は、複数を除外するものではないことを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、食品産業、特に菓子製品、甘い焼き菓子、飲料、スプレッドおよびスナック製品の製造において産業上の利用可能性が見出される。本発明の方法は、穀物風味の低減が所望される、あらゆる穀物ベースの製品の製造においても使用が見出される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非乳製品の穀物ベースクラムを調製するための方法であって、
a)水性媒体中に糖と穀物ベース材料との混合物を供給して、前記糖と穀物ベース材料との水性混合物を得るステップ;
b)前記糖と穀物ベース材料の前記水性混合物をローストするステップ;
c)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、ココアマス、ココアパウダー、ココアバターまたは異なるココア成分の混合物を、前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物に、添加および混合するステップ;
d)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物に、植物性脂肪を、任意に添加および混合するステップ;
e)ローストされた前記水性混合物を蒸発させて穀物ベースクラムを得るステップ;および
f)前記穀物ベースクラムを所望の大きさの断片に任意に粉砕するステップ、
を含み、
前記穀物ベース材料が、穀物フラワー、発酵穀物ベース、穀物ベースの発酵製品、酵素処理された穀物または穀物ミルク、コンデンス穀物ベース、または麦芽穀物ベース、を含むか、またはそのものである方法。
【請求項2】
前記穀物ベース材料が、オート麦、大麦、ライ麦、小麦もしくは他のシリアルベース材料、またはこれらのいずれかの混合物、好ましくは、オート麦、大麦、ライ麦または小麦ベース材料、より好ましくは、オート麦もしくはライ麦ベース材料またはそれらの混合物、さらにより好ましくはオート麦ベース材料を含むか、またはそのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記穀物ベース材料が、穀物フラワー、発酵穀物ベースまたは酵素処理された穀物、より好ましくは、穀物フラワーを含むか、またはそのものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記穀物ベース材料が、オート麦フラワー、オート麦フレーク、オート麦粉、オート麦ミルク、オート麦ミルクパウダー、オカラ(オート麦ミルク製造からの残渣)、好ましくは、オート麦粉またはオート麦フラワーなどの、オート麦ベース材料であり、前記オート麦ベース材料が、任意に、発酵されるか、酵素処理されるか濃縮されるか、または麦芽処理される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記穀物ベース材料が、ライ麦ベース材料、好ましくは、全粒ライ麦フラワーまたはオート麦フラワーとライ麦フラワーとの混合物などのライ麦フラワー、である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)が、前記水性媒体に糖を添加すること、または酵素の作用により前記水性媒体に糖を供給することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、ロースト中に前記水性混合物中のタンパク質と還元糖との間でメイラード反応が起こるのに十分なロースト温度で、ロースト時間の間、前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物を、ローストすることを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ロースト中の前記水性混合物の乾燥物質含有率が、約40~98%、好ましくは約40~95%、より好ましくは約60~90%、さらにより好ましくは約80~90%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)が、前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物を、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも20分、例えば20~120分または30~60分であるロースト時間の間、大気圧での前記混合物の沸点温度であるロースト開始時のロースト温度で、ローストすることを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物に植物性脂肪を添加し混合するステップを含み、ここで前記植物性脂肪が、好ましくはココアバター、ココアバター同等物、および、例えばミルク、ペースト、粉末、フレークまたは断片の形態における、ナッツ、ココナッツまたはアーモンドからの植物性充填脂肪、好ましくはココアバターから、好ましくは選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
好ましくは繊維、脱脂アーモンド/ナッツ粉末から選択される他の植物ベースの原材料を、前記混合物に添加するステップを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ースト後および蒸発前に、ココアマス、ココアパウダー、ココアバターまたは異なるココア成分の混合物を、植物性脂肪も任意に含有する前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物に、添加および混合するステップを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(e)が、好ましくは約-1000~-800mbar(-100~-80kPa)の圧力での、少なくとも10分の真空蒸発時間の間の、より好ましくは約10~40分の真空蒸発時間の間の、真空蒸発または熱蒸発を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
得られた前記穀物ベースクラムが、約0.5~5重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは1~4重量%、さらに好ましくは1~3重量%の最終含水率を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの酵素が、ステップ(a)の前記混合物に添加される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記穀物ベースクラムに植物性脂肪を添加してスラリーを得、これを湿式粉砕し、菓子製品、好ましくはチョコレートまたはチョコレートフィリングの製造においてポンプ操作可能な原料として使用するステップをさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
a)糖とオート麦ベース材料との水性混合物を供給するステップ;
b)糖とオート麦ベース材料との前記水性混合物を、好ましくは90~140℃または100~120℃の温度で、好ましくは少なくとも10~30分間ローストして、ローストされた液体混合物を得るステップ;
c)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、好ましくは、ロースト前またはロースト後に、糖とオート麦ベース材料との前記水性混合物に、ココア粉末、ココアマス、ココアバターまたはそれらの任意の組み合わせ、および、任意に植物性脂肪を、添加および混合するステップ;
d)ローストされた前記液体混合物を、好ましくは約-100~-80kPaの圧力で、蒸発、好ましくは真空蒸発させて、液体から粉末形態へのローストされた混合物の相変化を得るステップ;および
e)真空蒸発させた粉末を任意に粉砕して、所望の大きさのオート麦ベースクラムを得るステップ、
を含む、オート麦ベースクラムを調製するための、請求項~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
a)水中に糖とオート麦ベース材料との混合物を供給して、糖とオート麦ベース材料との水性混合物を得るステップ;
b)糖とオート麦ベース材料との前記水性混合物を、好ましくは90~140℃の温度で、少なくとも10~30分間ローストして、ローストされた液体混合物を得るステップ;
c)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、ココアマス、ココア粉末、またはその両方を、前記混合物に、添加および混合するステップ;
d)ロースト前、ロースト中、またはロースト後に、ココアバターを添加するステップ:
e)ローストされた液体混合物を、蒸発、好ましくは真空蒸発させて、液体から粉末形態へのローストされた前記混合物の相変化を得るステップ;
f)真空蒸発させた粉末を任意に粉砕して、所望の大きさのオート麦ベースクラムを得るステップ、
を含む、オート麦ベースクラムを調製するための、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記クラムが、非乳製品またはヴィーガンクラムである、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
得られた前記穀物ベースクラムを、非乳製品菓子およびベーカリー製品、特にチョコレートの製造に使用するステップをさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法によって得られることを特徴とし、ココア原料と共に前記糖と穀物ベース材料のローストされた混合物を含み、前記ココア原料は、ココアマス、ココア粉末、ココアバターおよびそれらの任意の組み合わせから、好ましくは植物性脂肪と共に選択される、非乳製品クラムであって、
前記非乳製品クラムが、0.5~5重量%、通常1~5重量%、好ましくは1~4重量%、より好ましくは1~3重量%の含水率を有し、ここで前記穀物ベース材料の穀物風味が、ローストされていない穀物ベース材料と比較して低減されていることを特徴とする、非乳製品クラム。
【請求項22】
前記穀物風味の低減が、ナッツのような/穀物のようなおよび生の穀物のような/脂肪のような/油のようなというシリアル官能属性における低減を含む、請求項21に記載の非乳製品クラム。
【請求項23】
前記穀物風味の低減が、芳香化合物1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-メチルブタン酸およびo-グアヤコールの濃度の減少を含む、請求項21または22に記載の非乳製品クラム。
【請求項24】
コアバターと共に、サッカロースまたはサッカロース/フルクトースとオート麦ベース材料とのローストされた混合物、好ましくは、ココアバターと共に、サッカロースとオート麦粉またはオート麦フラワーとのローストされた混合物、を含む、請求項21に記載の非乳製品クラム。
【請求項25】
請求項21~24のいずれか1項に記載のクラム、を含む食品であって、前記食品が、菓子製品、甘い焼き製品、飲料、スプレッドおよびスナック製品からなる群から選択される、食品。
【請求項26】
前記食品が、チョコレートタイプの製品、チョコレートプラリネのような充填されたチョコレートタイプの製品、チョコレートタブレット、チョコレートコーティングされたフィリング、チョコレートコーティングされたバー、ビスケットタイプの製品、ビスケットタイプの製品用のフィリング、チョコレートコーティングされたケーキ、チョコレートコーティングされた内包物、チョコレートがコーティングされたまたは充填されたポン菓子(puffed cereals)、内包物を有するかまたはチョコレートでコーティングされたシリアルバー、およびクロワッサンとタルトのような充填された甘いベーカリー製品からなる群から選択される、菓子製品または甘いベーカリー製品である、請求項25に記載の食品。
【請求項27】
食品、好ましくは菓子製品または甘いベーカリー製品の製造における、請求項21~24のいずれか1項に記載のクラムの使用。
【請求項28】
穀物ベース製品の穀物風味を低減させるための方法であって、
a)水性媒体中に糖と穀物ベース材料との混合物を供給して、前記糖と穀物ベース材料との水性混合物を得るステップ;
b)前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物をローストするステップ;
c)ロースト前、ロースト中またはロースト後に、好ましくはロースト前またはロースト中および真空処理する前に、植物性脂肪を、前記糖と穀物ベース材料との前記水性混合物に、任意に添加および混合するステップ;
d)ローストされた混合物を蒸発させて、穀物ベースクラムを得るステップ;および
f)前記穀物ベースクラムを、前記穀物ベース製品の原材料として使用するステップ、
を含み、
穀物ベースの材料は、オート麦およびライ麦ベースの材料から選択され、タンパク質加水分解物の使用は回避される、方法。
【請求項29】
前記穀物風味の低減が、ナッツのような/穀物のようなおよび生の穀物のような/脂肪のような/油のようなというシリアル官能属性における低減を含む、請求項28に記載の非乳製品クラム。
【請求項30】
前記穀物風味の低減が、芳香化合物1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-メチルブタン酸およびo-グアヤコールの濃度の減少を含む、請求項28または29に記載の非乳製品クラム。
【請求項31】
オート麦およびライ麦ベース製品のカラメル様風味を増加させる、請求項28から30のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】