(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】電磁場画像化用蒸気セル
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20230119BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20230119BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20230119BHJP
G01R 29/10 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
G01R29/08 F
C03C15/00 Z
C03C23/00 D
G01R29/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523860
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 CA2020051271
(87)【国際公開番号】W WO2021102555
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521266918
【氏名又は名称】クオンタム ヴァリー アイデアズ ラボラトリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】アマルロー ハーディ
(72)【発明者】
【氏名】ラミレス-セラーノ ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー ジェームズ ピー
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA11
4G059AC01
(57)【要約】
第1の表面と第2の表面とを有する誘電体を含む蒸気セルが開示される。誘電体は第1の表面から第2の表面まで延在する複数の壁を含む。周囲壁が誘電体の開放容積を包囲しており、開放容積内には相互接続された壁が、開放容積を複数のセルへと区画するように配置されている。各セルは、第1の表面によって画定される第1の開口部と、第2の表面によって画定される第2の開口部と、を有する。蒸気セルは、第1の開口部を覆い、かつ誘電体の第1の表面に接合されて第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する、第1の光学窓を更に含む。第2の光学窓は第2の開口部を覆っており、誘電体の第2の表面に接合されて第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面および前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する誘電体を得ることと、
前記誘電体から材料を除去して前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する複数の壁を形成することであって、前記複数の壁は、
前記誘電体の開放容積を包囲する周囲壁、および
前記開放容積を複数のセルへと区画するように前記開放容積内に配置されている相互接続された壁を備え、各セルは前記第1の表面によって画定される第1の開口部および前記第2の表面によって画定される第2の開口部を有する、形成することと、
前記第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成するために、光学窓の表面を前記誘電体の前記第1の表面に接合することであって、前記光学窓は前記複数のセルの前記第1の開口部を覆う、接合することと、
を含む、蒸気セルを製造する方法。
【請求項2】
前記誘電体から材料を除去することは、レーザビームを前記誘電体上に収束させてその材料を機械加工することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘電体から材料を除去することは、前記誘電体を化学物質に曝露してそこから材料をエッチングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記誘電体から材料を除去することは、少なくとも1つの相互接続された壁を貫通する通路を形成することであって、前記通路は前記少なくとも1つの相互接続された壁によって分離されたセルが流体連通することを可能にするように構成される、形成すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記相互接続された壁のうちの3つ以上が結合部において繋がっており、
前記誘電体から材料を除去することは、前記結合部を貫通する通路を形成することであって、前記通路は前記結合部と隣り合うセル同士が流体連通することを可能にするように構成される、形成すること、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸気セルは標的放射を検出するように構成されており、
前記誘電体から材料を除去することは、前記周囲壁に沿って前記開放容積内へと延びる複数の突起を形成することであって、前記複数の突起は前記標的放射の波長以下の最大寸法を有する、形成すること、を含む、
請求項1または請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記標的放射は少なくとも0.3mmの波長を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記誘電体を得ることは、前記誘電体から材料を除去して前記第1および第2の表面を形成することを含む、請求項1または請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
接合前に、前記複数のセルの各々の中に蒸気または前記蒸気の供給源を配設することを含み、
前記光学窓の前記表面を接合することは、複数の空洞の各々の中に前記蒸気または前記蒸気の前記供給源を閉じ込めることを含む、
請求項1または請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記誘電体から材料を除去することは、前記誘電体の前記周囲壁を貫通して前記複数のセルのうちの少なくとも1つに至る穴を形成することを含み、
前記穴を通して蒸気を流すことと、
前記複数のセル内に前記蒸気を封止するために前記穴を閉塞することと、を含む、請求項1または請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記周囲壁に前記穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを含み、
前記穴を閉塞することは、前記複数のセル内に前記蒸気を封止するために前記管の端部を閉じることを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光学窓を貫通する穴を形成することであって、前記穴は、前記光学窓の前記表面が前記誘電体の前記第1の表面に接合されるときに、前記複数のセルのうちの少なくとも1つを前記光学窓の外部に流体連通させるように位置付けられる、形成することと、
前記穴を通して蒸気を流すことと、
前記複数のセル内に前記蒸気を封止するために前記穴を閉塞することと、
を含む、請求項1または請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記光学窓に前記穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを含み、
前記穴を閉塞することは、前記複数のセル内に前記蒸気を封止するために前記管の端部を閉じることを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記光学窓の前記表面は第1の窓表面であり、前記光学窓は前記第1の窓表面の反対側の第2の窓表面を備え、
方法であって、
前記光学窓から材料を除去して、前記第2の窓表面から前記第1の窓表面へと部分的に延在する複数のポケットを形成することを含む、請求項1または請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の窓表面および前記第2の窓表面は周縁部によって境界付けられており、
前記光学窓から材料を除去して複数のポケットを形成することは、
前記複数のポケットを前記光学窓の実効比誘電率が定まるようなサイズの構成で形成することであって、前記実効比誘電率は前記光学窓を形成する材料と関連付けられる固有の比誘電率とは異なっている、形成すること、を含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記光学窓は第1の光学窓である、
請求項1または請求項2~5のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法は、
前記複数のセルの各々の中に蒸気または前記蒸気の供給源を配設することと、
第2の光学窓の表面を前記誘電体の前記第2の表面に接合して、前記第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成することであって、前記第2の光学窓は前記複数のセルの前記第2の開口部を覆って前記複数のセルの各々の中に前記蒸気または前記蒸気の前記供給源を閉じ込める、形成することと、を含む、方法。
【請求項17】
誘電体であって、
第1の表面、
前記第1の表面の反対側の第2の表面、および
前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する複数の壁、を備え、前記複数の壁は、
前記誘電体の開放容積を包囲する周囲壁、ならびに
前記開放容積を複数のセルへと区画するように前記開放容積内に配置されている相互接続された壁であり、各セルは前記第1の表面によって画定される第1の開口部および前記第2の表面によって画定される第2の開口部を有する、相互接続された壁、を備える、誘電体と、
前記複数のセルの各々の中にある蒸気または前記蒸気の供給源と、
前記第1の開口部を覆い、かつ前記誘電体の前記第1の表面に接合されて前記第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する、第1の光学窓と、
前記第2の開口部を覆い、かつ前記誘電体の前記第2の表面に接合されて前記第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する、第2の光学窓と、
を備える、蒸気セル。
【請求項18】
前記蒸気セルは標的放射を検出するように構成されており、
前記周囲壁は前記開放容積内へと延びている複数の突起を備え、前記複数の突起は前記標的放射の波長以下の最大寸法を有する、
請求項17に記載の蒸気セル。
【請求項19】
前記複数の突起は前記周囲壁に沿って均等に離間されている、請求項18に記載の蒸気セル。
【請求項20】
前記複数の突起の各々は前記開放容積内へとテーパしている、請求項18に記載の蒸気セル。
【請求項21】
前記標的放射は少なくとも0.3mmの波長を有する、請求項18に記載の蒸気セル。
【請求項22】
前記第1の光学窓および前記第2の光学窓の一方または両方は、
第2の窓表面の反対側の第1の窓表面であって、前記誘電体に接合されている、第1の窓表面と、
前記第2の窓表面から前記第1の窓表面へと部分的に延在する複数のポケットと、を備える、請求項17または請求項18~21のいずれか1項に記載の蒸気セル。
【請求項23】
前記第1の光学窓および前記第2の光学窓の一方または両方は、前記光学窓を形成する材料と関連付けられる固有の比誘電率とは異なる実効比誘電率を有する、請求項17または請求項18~21のいずれか1項に記載の蒸気セル。
【請求項24】
前記第1の光学窓および前記第2の光学窓の一方または両方は、
第2の窓表面の反対側の第1の窓表面であって、前記誘電体に接合されている、第1の窓表面と、
前記第2の窓表面から前記第1の窓表面へと部分的に延在しかつ前記光学窓のある実効比誘電率が定まるようなサイズで構成されている、複数のポケットと、を備え、前記実効比誘電率は前記光学窓を形成する材料と関連付けられる固有の比誘電率とは異なっている、請求項17または請求項18~21のいずれか1項に記載の蒸気セル。
【請求項25】
前記複数のポケットは前記第2の窓表面と平行な方向に沿ってサイズが小さくなって、漸減する実効比誘電率が定まるようになっている、請求項24に記載の蒸気セル。
【請求項26】
少なくとも1つの相互接続された壁は、前記少なくとも1つの相互接続された壁によって分離されたセルを流体連通する通路を備える、請求項17または請求項18~21のいずれか1項に記載の蒸気セル。
【請求項27】
前記相互接続された壁のうちの3つ以上が結合部において繋がっており、前記結合部は前記結合部と隣り合うセル同士を流体連通させる通路を備える、請求項17または請求項18~21のいずれか1項に記載の蒸気セル。
【請求項28】
前記第1の光学窓は誘電体ミラーを備える、請求項17または請求項18~21のいずれか1項に記載の蒸気セル。
【請求項29】
前記誘電体ミラーは前記誘電体の前記第1の表面に接合されている前記第1の光学窓の前記表面に沿って配設されている、請求項28に記載の蒸気セル。
【請求項30】
前記第2の光学窓は反射防止コーティングを備える、請求項17または請求項18~21のいずれか1項に記載の蒸気セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2019年11月27日に出願された「Vapor Cells for Imaging of Electromagnetic Fields」と題する米国仮出願第62/941,572号に対する優先権を主張し、その開示を参照によって本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
以下の記載は、電磁場画像化用蒸気セルに関する。
【発明の概要】
【0003】
Over-the-air(OTA)試験は、情報を取得および通信するために電磁放射を利用する多くのシステム(例えば、レーダシステム、医用画像化システム、セルラーシステム、等)にとって重要である。また更に、規制への準拠を保証するために、そのようなシステムの設計、製造、および配備中のそれらの試験も重要である。そのような試験の困難さは、システムが利用する電磁周波数がより高い周波数(例えば30GHz超)へとスケーリングするにつれて、および、システムの複数の構成要素間の統合の結合がより緊密になるにつれて、大きくなる。高周波電子機器のシステム統合の例は、アンテナと送受信機システムおよび増幅器との融合である。特にmm波のレジームにおける、そのような高度に統合され精緻化されたシステムの試験は、自動車および輸送、レーダ、ならびに電気通信の業界にとって、迫り来る問題として広く認識されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1A】内部支持構造を形成するリブまたは壁を有する、例示の蒸気セルの概略図である。
【
図1B】
図1Aの例示の蒸気セルの上面図および部分側面図を提示する図である。
【
図1C】一方の光学窓がそれ自体に形成されたポケットを含む、
図1Aの例示の蒸気セルの概略図である。
【
図1D】2つの光学窓がそれ自体に形成されたポケットを含む、
図1Aの例示の蒸気セルの概略図である。
【
図1E】フレームの一部が第1の光学窓の役割を果たし、フレームに接合された第2の光学窓がそれ自体に形成されたポケットを含む、
図1Aの例示の蒸気セルの概略図である。
【
図2A】複数の正方形のセルを画定する複数の壁を含む誘電体202を有する例示の蒸気セルの概略図である。
【
図2B】複数の壁が複数の六角形のセルを画定する、
図2Aの例示の蒸気セルの代替の実装形態である。
【
図2C】誘電体の一部が光学窓の役割を果たす、
図2Bの例示の蒸気セルの誘電体の概略図である。
【
図3A】例示の平坦な光学窓の30GHzから50GHzまでのモデル化した反射および透過を示すグラフである。
【
図3B】例示のパターン形成した光学窓の30GHzから50GHzまでのモデル化した反射および透過を示すグラフである。
【
図4】内部容積内へと突出しているテーパ構造を含む例示の周囲壁の概略図である。
【
図5A】実効比誘電率が漸減する光学窓を有する例示の蒸気セルの、上面視して示した等高線グラフである。
【
図5B】x軸に対して垂直な側面断面図に対応する、
図5Aの例示の蒸気セルの等高線グラフである。
【
図5C】y軸に対して垂直な側面断面図に対応する、
図5Aの例示の蒸気セルの等高線グラフである。
【
図5D】
図5Aの光学窓における誘電率の異なる円形領域を示す、上面視して示した概略図である。
【
図5E】円形のポケットを回転対称の同心の輪として配置した結果得られる、
図5Dに示すような誘電率の異なる円形領域を有する例示の光学窓を、上面視して示した概略図である。
【
図6A】漸減する実効比誘電率をもたらす段丘状の断面を有する例示の光学窓の、上面視した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一般的な態様において、電磁放射を画像化するための蒸気セルが開示され、そのような蒸気セルを製造するための方法も含まれる。いくつかの実装形態では、蒸気セルは、内部支持構造を形成し蒸気セルの内部容積を複数の部分容積へと区画するリブを含む。内部支持構造は、蒸気セルの光学窓に対する支持を提供し得る。複数の部分容積は構成(例えば、形状、サイズ、等)が同一であってもよく、部分容積の周期配列を形成し得る。この製造方法によって、リュードベリ原子電位計を使用して電磁場を画像化するために使用できる、薄い蒸気セルの製作が可能になり得る。蒸気セルにわたる位相分解能は、標的放射場の波長と比較したその厚さと、蒸気中の原子を準備しそれらの反応を読み出すために使用される光学場の空間分解能とによって決定される。
【0006】
いくつかの実装形態では、蒸気セルは、好適なフレームを作り出すこと、および次いで、蒸気中の原子を準備しそれらを読み出すために使用される光学的な場または信号(例えばレーザビーム)を反射できる薄い誘電体ミラーをフレームに接合(例えば、ブラッグ反射器をフレームに接合)することによって、製作され得る。フレーム上に第1の光学窓を接合することができる。第1の光学窓は頂部光学窓であり得る。そのような接合には、フリット接合、陽極接合、低温接触接合、または何らかの他の接合方法が含まれ得る。原子または分子サンプルの純度を維持するべく第2の光学窓(例えば底部光学窓)を蒸気セルに封止するために、低温接触接合が使用され得る。ただしいくつかの変形形態では、他の接合方法(例えば、フリット接合、陽極接合、等)を使用してもよい。状況によっては、低温接触接合が、高温および/または高電圧を必要とする接合方法よりも有利である。これらの後者の方法では結果的にかなりのガス放出が生じ、リュードベリ原子ベースの電場感知の場合など原子の純粋なサンプルが利用される場合に、蒸気セルの性能を損なう可能性がある。
【0007】
いくつかの変形形態では、フレームは、第2の光学窓をフレームに封止した後で蒸気セル内に原子または分子サンプルを導入するための軸部を含む。例えば、軸部は、原子または分子サンプルの導入後に溶融され閉鎖され得る、石英ガラス(vitreous silica)(または石英ガラス(quartz glass))で形成された管状の延長部であってもよい。いくつかの変形形態では、フレームは、第2の光学窓をフレームに封止した後で蒸気セル内に蒸気(例えば、原子または分子サンプル)を導入するための、充填穴を含む。充填穴は、充填穴にカバーまたは栓を接触接合することによって、低温で封止され得る。ただし他の封止方法を使用してもよい。
【0008】
いくつかの実装形態では、蒸気セルは、フレームを作り出すこと、および次いで、原子を準備しそれらを読み出すために使用される光学的な場または信号(例えばレーザビーム)を反射できる薄い誘電体ミラー(例えばブラッグ反射器)を有する光学窓をフレームに接合することによって、製作され得る。フレーム上に第1の光学窓を接合することができる。第1の光学窓は頂部光学窓であり得る。第1の光学窓は誘電体ミラーを含み得る。誘電体ミラーは薄型であり得る。場合によっては、誘電体ミラーを第1の光学窓の表面上に堆積させてもよい。また場合によっては、誘電体ミラーは、(例えば、接着剤または糊着剤を介して)第1の光学窓の表面に取り付けられる。
【0009】
いくつかの実装形態では、蒸気セルは、例えば、蒸気セルの異なる領域における光を画像化することによって高い空間分解能での入射電磁場の画像化が可能になり得るように、光学窓が大気圧下で歪まないようにするための、フレームに沿ったリブを有する。例えば、蒸気セルの表面に沿った異なるエリア間のクロストークを最小化することができ、このことによって空間分解能が改善される。いくつかの実装形態では、壁反射が測定に干渉するのを防止するために、蒸気セルの縁部に沿って、漸減する屈折率が使用される。光学窓を、画像化すべき高周波電磁場の反射が低減するように機械加工することもできる。いくつかの変形形態では、パターン形成した壁を、電場振幅の減衰によってなどで壁からの反射が更に低減するように機械加工することができる。また更に、リブには、蒸気セル内の気体、例えばアルカリ原子を蒸気セル全体に均一に分布させることができるように、小さい間隙が切り込まれていてもよい。
【0010】
いくつかのケースでは、蒸気セル磁気測定のために蒸気セルを使用することができる。室温付近で封止接合が行われる実装形態では、蒸気セルの統合時間(integration time)を長くするために、蒸気セルにスピン緩和防止コーティングを適用することができる。そのような蒸気セルは、自由空間を通してまたは光ファイバ束などの導波路によって、光学的に結合することができる。
【0011】
電位計にリュードベリ原子を使用することによって、高周波電場(HFE)の正確な絶対測定が実現されてきた。この技術によって従来技術が進歩する見込みのかなり高いアンテナ測定用途が、いくつか存在する。しかしながら、特定の(大小両方の)範囲のアンテナサイズにおいておよび高出力において、課題が存在する。これらの課題は、今日使用されているいずれのものよりも電磁透過性の高い、導電体不使用のHFEプローブによって軽減され得る。誘電性プローブの使用によって、コストを劇的に下げる手段を提供しつつ、これらの測定において到達し得るエラーフロアを押し下げることができ、この結果新しい用途領域が開かれる。高周波電子機器のOver the air(OTA)試験はこれらのデバイスの統合が進むにつれてますます重要になっているが、それらを従来の方法を使用して試験することは非常に困難になっている。プローブから望ましくない材料をほぼ完全に除去することによって、被試験装置(DUT)から放射される電磁場の決定にとって重要な、並外れて高い正確度の測定を実現できる。
【0012】
本明細書で提示する技術によって、
図1A~
図1Eに示すもののような蒸気セルの電場画像化デバイス、例えばHFE用のCCDの構築および運用が可能になる。原子ベースの電場感知を使用すると、得られる空間および位相分解能によって、DUTに近い平面内で位相および振幅の両方を画像化することが可能になる。蒸気セルセンサの平面にわたる振幅および位相の情報は、フレネル理論などのよく知られている手順を使用して電場を別の場所に伝播するために使用され得る。
【0013】
アンテナ設計のエンジニアリング科学を検証するために、および、アンテナがそれらの所与の用途で意図したように動作することを保証するために、多くの場合、アンテナ放射パターンの正確な測定が必要になる。試験には、他のタイプのデバイスからの電磁放射、例えば、増幅器などの他のHFEデバイスからのEMIも重要である。アンテナパターン測定に対する従来技術の手法は通常は導電性アンテナである電場プローブを利用し、このときプローブおよび被試験アンテナ(AUT)はいずれも大型の電波暗室によって包囲される。これらの暗室は通常、あらゆる放射を吸収するフォームで内側をコーティングされた、封止された大型の金属性の箱である。最も基本的な測定を行うためにさえも、AUTとプローブの間に金属ケーブルを配線しなければならない。位置決め装置中の金属構造体は環境の複雑さを更に高め、エラー源となっている。
【0014】
本明細書に示すようなより柔軟なリュードベリ原子ベースの技術を用いれば、個々の用途に合わせた電波暗室のサイズの調整がより容易になり、暗室の性能に対するコストが軽減され得る。電気的に小型のアンテナ - 寸法がそれらの動作波長に対して小さいもの - の場合、過剰な金属構造体の存在は、それらの放射の所望の方向以外の全ての方向での十分な吸収を保証するという困難な課題を更に悪化させる。電力のみのパターン測定のためには、リュードベリ原子電位計はアンテナとプローブの間の同期を必要とせず、これによりミリメートルスケールの軽量の発振器によってAUTに電波供給を行うことが可能になり、ケーブルの必要性が完全に排除される。
【0015】
いくつかの実装形態では、本開示に提示されている蒸気セルによって、アンテナなどの高周波電子デバイスによって生成される電磁場の振幅および位相を画像化するための、複数電磁場点画像化デバイス(multiple field point imaging device)を実現できる。そのような画像化デバイスは軽量かつ携帯可能であり得、実地でのまたは組立てライン上でのアンテナの非常に正確な較正を可能にする。そのような特徴は、通信、自動車レーダ、電子機器、気象レーダ、および軍用レーダにおける多くの用途にとって、非常に有益であり得る。本明細書で開示する蒸気セルに基づく画像化デバイスは、Over the air試験(OTA)のためにDUTから発する電磁場を画像化するのに適している。OTAは、DUTを試験するための非侵襲的かつ非破壊的な方法を可能にするので望ましい。いくつかの実装形態では、蒸気セルによって、以下の利点のうちの1つまたは複数が可能になる:[1]誘電性の性質、[2]薄さ(位相分解能を与える)、[3]構造の完全性、[4]電磁場を捉えるための広い面積、[5]応答の均一性、[6]光学的に読み出された場を画像化するための反射性バッキング、[7]軸部のない蒸気セルの構成、[8]壁からの反射を低減するためのインピーダンス整合を目的とした、漸減する誘電特性の使用、[9]反射を低減するための窓の機械加工、[10]反射を低減するための壁のパターン加工、および[11]様々なサイズの様々な周波数の電磁放射用の蒸気セルを工業規模で製造する能力。他の利点が可能である。これらの特性を単一の蒸気セルに組み込むことは非常に有利であり、これにより原子ベースの電場感知を使用する電場画像化にその蒸気セルを使用することが可能になり得る。
【0016】
図1A~
図1Eおよび
図2A~
図2Cに、蒸気セルの例示の実装形態が示されている。特に、
図1Aは、内部支持構造を形成するリブ(または壁)を有する、例示の蒸気セルの概略図を示す。
図1Bは、
図1Aの例示の蒸気セルの上面図および部分側面図を提示している。この例示の蒸気セルは、フレームと2つの光学窓とを含む。フレームは、シリコンまたはガラスからレーザ切削、エッチング、または機械加工する(あるいはこれらを任意に組み合わせる)ことができる。ただし他の材料(例えばサファイア)を使用してもよい。フレームは、内部容積を複数の部分容積またはセルへと区画する、リブ構造(ribbing)または接続壁を含む。部分容積はサイズおよび形状が均一であってもよく、フレーム内に周期配列に従って配設されてもよい。部分容積内に、標的放射を検出するための蒸気もしくは気体(またはこれらの供給源)が存在する。レーザ切断によって、蒸気セルの製造が大量生産により適したものになる。多くの変形形態において、蒸気セルの一方側(底部)にある光学窓は、蒸気セル内の原子の初期化および読み出しに使用される光学信号(または光線)のうちの1つまたは複数を反射するのに最適化されている、多層ブラッグ反射器(または誘電体ミラー)を含む。ブラッグ反射器は、SiO
2およびTiO
2の交互の層で製作され得る。ただし、別のタイプの層およびそれらの配列を使用してもよい。いくつかの変形形態では、ブラッグ反射器の最後の層はSiO
2で形成され、ブラッグ反射器をフレームに接触接合できるようになっている。
【0017】
ブラッグ反射器がSiO2ではなく別の材料で製作されている場合、ブラッグ反射器の表面上にSiO2接着層を設置することが更に可能である。SiO2接着層は、接触接合可能な表面を形成し得るかまたは含み得る。他の材料も可能である。例えば、ブラッグ反射器の表面上にTiO2接着層を設置してもよい。この層は、接触接合可能な表面を形成し得るかまたは含み得る。いくつかのケースでは、反射器は、測定の対象である入射場の散乱を低減するために、誘電性を有しかつ薄型である必要がある。頂部光学窓を、陽極接合またはガラスフリット接合などの高温および/または高電圧を利用可能な接合技法を使用して、フレームに取り付けることができる。フレームがガラスで製作される場合、陽極接合用の接着層として、薄いSiの層をフレーム材料上に堆積させることができる。頂部層とフレームがいずれもガラスから形成されている場合、それらを接触接合することも可能である。
【0018】
いくつかの実装形態では、光学窓の一方または両方に、レーザ加工またはエッチングによってポケットが形成されていてもよい。
図1Cは、一方の光学窓がそれ自体に形成されたポケットを含む、
図1Aの例示の蒸気セルの概略図を提示している。
図1Dは、両方の光学窓がそれ自体に形成されたポケットを含む、
図1Aの例示の蒸気セルの概略図を提示している。ポケットはパターンを形成するように配置され得る。場合によっては、ポケットは、光学窓の材料の量をその構造の完全性を維持しながら減らすように機能し得る。場合によっては、ポケットは、光学窓を形成する材料と関連付けられる固有の比誘電率とは異なる実効比誘電率を定めるように機能し得る。この実効比誘電率によって、電磁放射(例えば測定すべき標的放射)が反射または散乱されて複数の部分容積に入る可能性を下げることができる。ただし他の利益が可能である。これらの実装形態のうちのいくつかでは、光学窓のうちの一方 - 例えば底部光学窓 - は、鏡面表面を含む。鏡面表面は光学窓の内側表面上または外側表面上にあり得る。光学窓がポケットを含む場合、ポケットは外側表面の一部または全部を画定し得る。
【0019】
いくつかの実装形態では、例示の蒸気セルはフレームと一体の光学窓を含み、例えば、
図1Aおよび
図1Bに示す2つの光学窓の一方はフレームと一体である。光学窓はフレームの壁によって画定することができ、これは平坦な外側表面を有し得る。ただし場合によっては、壁は外側表面に沿ったポケットを含み得る。
図1Eは、フレームの一部が光学窓の役割を果たす、
図1Aの例示の蒸気セルの概略図を提示している。この部分はフレームの壁に相当し得、内側に鏡面表面を有し得る。ただし、フレームが透明な材料(例えばガラス)から製作される場合は、鏡面になる部分は外側表面上にあってもよい。これらの実装形態では、フレームと一体ではない第2の光学窓は、複数の部分容積またはセル内に蒸気を閉じ込めるために、フレームに接合され得る。第2の光学窓はそれ自体に形成されたポケットを含み得る。
【0020】
本明細書で開示する蒸気セルは、フレームのリブ構造を含み得る。
図1A~
図1Eおよび
図2A~
図2Cに示すようなリブ構造は、蒸気セルの平面にわたる光場の画像化を可能にするべく、例えば大気圧に起因する、光学窓の歪みを最小にするように選択されている。試験下の場(FUT)の散乱を低減するために、光学窓は薄型である。この構成によって、蒸気セルのある領域から発する光線がそれぞれ入射電磁場(RF-mm)、すなわちFUTについての空間情報を担持することが可能になる。通常は、光学画像化の空間分解能によって、入射電磁場(FUT)の空間分解能が決定されることになる。蒸気セルのフレームのリブには、製造中に気体または蒸気が蒸気セルを均一に充填するように、通路(例えば、ノッチ、チャネル、等)が切り込まれている。
【0021】
いくつかの実装形態では、蒸気セルから外向きに延在する軸部(例えば、蒸気セルの側面から外向きに延在する軸部)を介して、蒸気セルを充填することが可能であり得る。軸部は、蒸気セルの充填後に溶融などによって封止可能な管状構造体に相当し得る。いくつかの実装形態では、光学窓のうちの1つまたはフレーム中の蒸気セルの側面に位置する小さな穴を通して蒸気セルを充填することが最適であり得る。この小さな穴(または充填穴)に接触接合を行うことで、蒸気セルを封止することができる。この場合、より大きい窓は、高温および/または高電圧の手法を使用して封止することができる。充填穴は、内部構造を脱気するおよび蒸気セルを充填するのに十分な大きさでさえあればよい。いくつかの変形形態では、充填穴は、蒸気セルを脱気するおよびそれをポンプ作用によって所望の圧力まで下げるのに十分な大きさでさえあればよい。この後者の方法は、化学反応による充填のための方法、例えば、測定に使用される原子種もしくは分子種で内部容積を充填するための、蒸気セル内のゲッタ源、別の化学物質放出機構、または熱活性化による方法が実施され得る場合に、使用されることになる。
【0022】
ここで
図2Aを参照すると、複数の壁204(またはリブ)を含む誘電体202(またはフレーム)を有する例示の蒸気セル200の概略図が提示されている。複数の壁204は誘電体202内に正方形のセル(または部分容積)を画定する。ただしセルは他の形状を有してもよい。例えば、
図2Bは、複数の壁204が六角形のセルを画定する代替の実装形態を提示している。誘電体202はまた、第1の表面206および第2の表面208も含む。第2の表面208は第1の表面206の反対側に配設されており、複数の壁204は、第1の表面206から第2の表面208まで延在する。場合によっては、第1の表面206および第2の表面208は平面状である。場合によっては、第1の表面206と第2の表面208は互いに平行である。複数の壁204は、周囲壁210と、複数の相互接続された壁212と、を含む。周囲壁210は誘電体202の開放容積214を包囲しており、相互接続された壁212は、開放容積214内に開放容積214を複数のセル216へと区画するように配置されている。セル216の各々は、第1の表面206によって画定される第1の開口部218と、第2の表面208によって画定される第2の開口部220と、を有する。
図2A~
図2Bに示すようないくつかの変形形態では、複数のセル216は、周期配列(例えば二次元周期配列)を形成する。
【0023】
例示の誘電体202は、例示の蒸気セル200によって測定される電場(または電磁放射)が透過する材料で形成され得る。材料は高い抵抗率、例えば、ρ>103Ω・cmを有する絶縁材料であってもよく、単結晶、多結晶セラミクス、または非晶質ガラスに相当し得る。例えば、誘電体202はシリコンで形成され得る。別の例では、誘電体202は、酸化シリコン(例えば、SiO2、SiOx、等)を含むガラス、例えば石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはアルミノケイ酸塩ガラスで形成され得る。場合によっては、誘電体202の材料は、例えば酸化マグネシウム(例えばMgO)、酸化アルミニウム(例えばAl2O3)、二酸化シリコン(例えばSiO2)、二酸化チタン(例えばTiO2)、二酸化ジルコニウム、(例えばZrO2)、酸化イットリウム(例えばY2O3)、酸化ランタン(例えばLa2O3)などの、酸化物材料である。酸化物材料は不定比性(例えばSiOx)であってもよく、また、1つまたは複数の二元酸化物(例えば、Y:ZrO2、LaAlO3、等)の組合せであってもよい。また場合によっては、誘電体102の材料は、例えばシリコン(Si)、ダイヤモンド(C)、窒化ガリウム(GaN)、フッ化カルシウム(CaF)などの、非酸化物材料である。
【0024】
例示の蒸気セル200は、誘電体202の第1の表面206に接合されて第1の開口部218の各々の周囲に封止部を形成している表面224を有する、第1の開口部218を覆う第1の光学窓222を含む。第2の光学窓226は第2の開口部220を覆っており、誘電体202の第2の表面208に接合されて第2の開口部220の各々の周囲に封止部を形成している表面228を更に有する。第1の光学窓222および第2の光学窓226はこのようにして、複数のセル216内に蒸気(または蒸気の供給源)を閉じ込めることができる。いくつかの変形形態では、第1の光学窓222は、ブラッグ反射器などの誘電体ミラーを含む。誘電体ミラーは、誘電体202の第1の表面206に接合されている、第1の光学窓222の表面224に沿って配設され得る。いくつかの変形形態では、第2の光学窓226は反射防止コーティングを含む。
【0025】
第1の光学窓222および第2の光学窓226は、誘電体202の複数のセル216内に封止されている蒸気を探査するために使用される電磁放射(例えばレーザ光)を透過する材料で形成され得る。例えば、第1の光学窓222および第2の光学窓226の材料は、電磁放射の赤外波長(例えば700~5000nm)、電磁放射の可視波長(例えば400~700nm)、または電磁放射の紫外波長(例えば10~400nm)が透過するものであり得る。また更に、第1の光学窓222および第2の光学窓226の材料は、高い抵抗率、例えばρ>103Ω・cmを有する絶縁材料であってもよく、単結晶、多結晶セラミクス、または非晶質ガラスにも相当し得る。例えば、第1の光学窓222および第2の光学窓226の材料は、石英、石英ガラス、またはホウケイ酸塩ガラスなどに見られる、酸化シリコン(例えば、SiO2、SiOx、等)を含み得る。別の例では、第1の光学窓222および第2の光学窓226の材料は、サファイアまたはアルミノケイ酸塩ガラスに見られるような、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3、AlxOy、等)を含み得る。場合によっては、第1の光学窓222および第2の光学窓226の材料は、例えば酸化マグネシウム(例えばMgO)、酸化アルミニウム(例えばAl2O3)、二酸化シリコン(例えばSiO2)、二酸化チタン(例えばTiO2)、二酸化ジルコニウム、(例えばZrO2)、酸化イットリウム(例えばY2O3)、酸化ランタン(例えばLa2O3)などの、酸化物材料である。酸化物材料は不定比性(例えばSiOx)であってもよく、また、1つまたは複数の二元酸化物(例えば、Y:ZrO2、LaAlO3、等)の組合せであってもよい。また場合によっては、第1の光学窓222および第2の光学窓226の材料は、例えばダイヤモンド(C)、フッ化カルシウム(CaF)などの、非酸化物材料である。
【0026】
いくつかの実装形態では、第1の光学窓222および第2の光学窓226の一方は、誘電体202と一体である。これらの実装形態では、誘電体202の一部は光学窓の役割を果たす。例えば、
図2Cは、誘電体202の一部が第2の光学窓226の役割を果たす、
図2Bの誘電体202の概略図を提示している。
図2Cでは、複数のセル216は第1の表面206から部分的に誘電体202を通って延在する。第1の光学窓206は各セル216を、それらの対応する第1の開口部218の周囲に封止部を形成するときに閉じ込める。
図2Cの誘電体202を製造するために、誘電体202の第1の表面206に、複数のセル216の形状を画定する穴を含む、パターン形成した層を適用してもよい。穴を通して露出される第1の表面206の部分を、次いで化学エッチャントと接触させてもよい。他の製造方法が可能である。
【0027】
例示の蒸気セル200は、複数のセル216の各々の中に、蒸気または蒸気の供給源を含む。蒸気は、アルカリ金属原子の気体、希ガス、気体の二原子ハロゲン分子、または有機分子の気体などの構成成分を含み得る。例えば、蒸気は、アルカリ金属原子(例えば、K、Rb、Cs、等)の気体、希ガス(例えば、He、Ne、Ar、Kr、等)、または両方を含み得る。他の例では、蒸気は二原子ハロゲン分子(例えば、F2、Cl2、Br2、等)の気体、希ガス、または両方を含み得る。更に別の例では、蒸気は、有機分子(例えばアセチレン)の気体、希ガス、または両方を含み得る。他の構成成分を含む、蒸気に関する他の組合せが可能である。蒸気の供給源は、例えば熱、紫外放射への曝露などのエネルギー刺激に反応して、蒸気を生成し得る。例えば、蒸気はアルカリ金属原子の気体に相当し得、蒸気の供給源は、複数のセル216内へと配設されるときに固相または液相となるように十分に冷却された、アルカリ金属の集合体に相当し得る。いくつかの実装形態では、蒸気の供給源は複数の壁204によって画定される1つまたは複数のセル216内に存在し、蒸気の供給源は、加熱されるとアルカリ金属原子の気体を生成するように構成されている、アルカリ金属原子の液体または固体供給源(例えば、アルカリ金属原子を含むアジド化合物)を含む。
【0028】
多くの実装形態において、相互接続された壁212は、複数のセル216の間を蒸気が流れることを可能にするための通路(例えば、チャネルまたは溝)を含む。通路によって、例示の蒸気セル200が、動作中に複数のセル216全体にわたる蒸気の均等な分布(例えば、セル216間の等しい圧力、各セル216内の蒸気の等しい濃度、など)を維持することが可能になり得る。この通路によってまた、製造中に複数のセル216を蒸気で充填することも可能になり得る。蒸気の充填は、誘電体202にある充填穴、第1の光学窓222にある充填穴、第2の光学窓226にある充填穴、またはこれらの何らかの組合せを通して蒸気を導入することによって行うことができる。そのような充填はまた、1つまたは複数の複数のセル216内に配設されている蒸気の供給源を、エネルギー(例えば熱)で刺激することによっても行われ得る。
図2A~
図2Bに示すようないくつかの変形形態では、相互接続された壁212のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの相互接続された壁によって分離されたセルを流体連通する通路230を含む。いくつかの変形形態では、相互接続された壁212のうちの3つ以上が結合部(union)で繋がり、この結合部は結合部と隣り合うセル同士を流体連通する通路を含む。
【0029】
相互接続された壁212は、第1の光学窓222および第2の光学窓226に機械的支持を提供しつつ、例示の蒸気セル200が広い面積にわたって電磁放射を受けることを可能にするような(例えば、厚さ、幅、直径、等による)寸法であり得る。いくつかの変形形態では、相互接続された壁212は、誘電体202の開放容積214の25パーセント以下を占める。いくつかの変形形態では、相互接続された壁212は、誘電体202の開放容積214の20パーセント以下を占める。いくつかの変形形態では、相互接続された壁212は、誘電体202の開放容積214の15パーセント以下を占める。いくつかの変形形態では、相互接続された壁212は、誘電体202の開放容積214の10パーセント以下を占める。いくつかの変形形態では、相互接続された壁212は、誘電体202の開放容積214の5パーセント以下を占める。いくつかの変形形態では、相互接続された壁212は、誘電体202の開放容積214の3パーセント以下を占める。
【0030】
いくつかの実装形態では、誘電体202は薄く、複数のセルの各々216が管状のセルを形成するようになっている。これらの実装形態では、誘電体202は、第1の表面206と第2の表面208の間の距離よって画定される高さ、および、この高さに対して垂直な方向に沿った最大寸法によって定められる幅を有し得る。いくつかの変形形態では、高さは幅の10パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の8パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の6パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の4パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の2パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の1パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の0.5パーセント以下である。
【0031】
いくつかの構成では、例示の蒸気セル200は、誘電体ミラーのない1つの光学窓、例えば第2の光学窓226を有する。この光学窓には、光学的な場または信号(例えば光線)に対する反射防止コーティングを施すことができる。光学窓はいくつかの変形形態ではファイバアレイに結合することもできるが、FUTからの干渉および散乱を低減するためには、自由空間結合が有利である。
図3Bに示すように、第1の光学窓222および第2の光学窓226を、材料の量は減るが構造の完全性は維持されるように機械加工することができる。窓を機械加工して材料の量を減らすことによってそれらの実効比誘電率が低くなり、その結果FUTに対する光学窓の抵抗率が低くなる。機械加工によってこうして光学窓の実効屈折率が下げられる。
【0032】
図3Aは、例示の平坦な光学窓の30GHzから50GHzまでのモデル化した反射および透過を示すグラフを提示しており、
図3Bは、例示のパターン形成した光学窓の30GHzから50GHzまでのモデル化した反射および透過を示すグラフを提示している。パターン形成した光学窓は、1つの表面上に、ウェルまたはポケットの構成を有するように機械加工されている。場合によっては、ウェルまたはポケットの構成は周期的であり得る。
図3Aおよび
図3Bのグラフを比較することで示されるように、パターン形成した光学窓の透過は、平坦な光学窓の透過よりも大きい。パターン形成した光学窓からの反射は、平坦な光学窓の反射よりも低い。レーザで材料を変容させて比誘電率を変える(例えば、レーザのエネルギーを材料内に吸収する)など、実効比誘電率を変える他の方法を使用してもよい。
【0033】
ここで
図2A~
図2Bを参照すると、第1の光学窓222および第2の光学窓226の一方または両方は、光学窓を形成する材料と関連付けられる固有の比誘電率とは異なる実効比誘電率を有し得る。いくつかの実装形態では、第1の光学窓222および第2の光学窓226の一方または両方は、第2の窓表面の反対側の第1の窓表面を含み得る。これらの実装形態では、第1の窓表面(例えば、第1の光学窓222の表面224)は、誘電体202に接合される。複数のポケットが、第2の窓表面から第1の窓表面へと部分的に延在する。複数のポケットは、光学窓の材料の量をその構造の完全性を維持しながら減らすように構成され得る。場合によっては、複数のポケットは、光学窓のある実効比誘電率が定まるようなサイズで構成される。この実効比誘電率は、光学窓を形成する材料と関連付けられる固有の比誘電率とは異なる。
【0034】
誘電体202、第1の光学窓222、第2の光学窓226、またはこれらの何らかの組合せを、周囲壁210に近付くにつれてテーパするように構成することによって、反射も低減され得る。このテーパは製造中の機械加工によって実現されてもよく、より良好なインピーダンス整合を可能にし得る。誘電体202はまた、複数の壁204の反射および励起を防止し、動作中の例示の蒸気セル200内の蒸気の反応をより均一にするための、周囲壁210に機械加工されたサブ波長構造を有し得る。
【0035】
いくつかの実装形態では、例示の蒸気セル200は、標的放射(例えば、少なくとも0.3mmの波長を有する標的放射)を検出するように構成されている。例えば、周囲壁210は、開放容積214内へと延びる複数の突起を備える。複数の突起は、周囲壁210に向かって伝播する電磁放射(例えば標的放射)をインピーダンス整合させるように機能し得る。そのような伝播は例えば、第1の表面206および第2の表面208の一方または両方と平行であり得る。伝播はまた、誘電体202の開放容積214内(または複数のセル216内)で行われ得る。いくつかの変形形態では、複数の突起の各々は、標的放射の波長以下の最大寸法を有する。いくつかの変形形態では、複数の突起は周囲壁210に沿って均等に離間されている。いくつかの変形形態では、複数の突起の各々は、開放容積214内へとテーパしている。例えば、
図4は、内部容積内へと突出しているテーパ構造402を含む例示の周囲壁400の概略図を提示している。テーパ構造402は1mmの底辺および3mmの高さを有する三角形の突起に相当し、周囲壁400からの電磁反射を低減する役割を果たす。テーパ構造402は、周囲壁400に沿って、誘電体の外側部分が対称に、例えば回転軸(例えば
図4のz軸)に関して対称になるように配設され得る。
【0036】
ここで
図5A~
図5Cを参照すると、実効比誘電率が漸減する光学窓を有する例示の蒸気セルの等高線グラフが提示されている。等高線グラフは、例示の蒸気セルの上面図および2つの断面図に対応している。漸減する比誘電率は、
図5Dに示すような誘電率(ε)の異なる円形領域を有する光学窓を使用して確立され得る。この構成では、光学窓は、実効比誘電率を漸減させるために、回転対称な同心のいくつかの輪となったポケットを含み得る。
図5Eに示すように、ポケットは円形であり得る。ただし他の形状が可能である。また更に、ポケットは様々な深さを有してもよく、
図5Eに示すものとは別のパターンで分布されてもよい。
図5Dには誘電率の異なる3つの円形領域が描かれているが、光学窓は誘電率の他の分布を有してもよい。
【0037】
等高線グラフは、ボルト毎メートル(V/m)の単位で定量化される、例示の蒸気セルにおける電場強度の分布を示す。各光学窓の実効比誘電率は、誘電率の異なる3つの円形領域、すなわち、外側の輪(ε=ε3)、内側の輪(ε=ε2)、および内側の輪によって境界付けられる中央円盤(ε=ε1)の存在に起因して漸減する。中央円盤の電場強度の分布は、光学窓において比誘電率の漸減のない蒸気セルよりも均一である。より均一な分布は、構造の縁部からの反射の低減に起因している。誘電率の漸減によって、蒸気セルの中心からの半径方向距離が大きくなるにつれて大きさが減少する実効比誘電率が確立される。そのような漸減する比誘電率によって、電磁波の壁反射が低減され得る。
【0038】
光学窓の他の構成によって、大きさが漸減する実効比誘電率を得ることが可能である。例えば、
図6Aは、段丘状の断面を有する例示の光学窓の、上面視した概略図を提示している。
図6Bは
図6Aの例示の光学窓の側面図を示す。段丘状の断面は、例示の光学窓の縁部からその内部へと半径方向距離を移動したときに大きくなる光学窓の厚さを作り出すための、3つの段部を含む。この例では、段丘状の構成によって、例示の光学窓の中心からの半径方向距離が大きくなるにつれて大きさが減少する実効比誘電率が得られる。この例では、この実効比誘電率によって、
図5A~
図5Cの等高線グラフに示すような電場強度の分布を生み出すことができる。
【0039】
入来する電磁場の電力の測定を、遷移双極子モーメントおよび基本定数を介して原子の特性と関連付けることができる。いくつかのケースでは、本明細書に記載するように蒸気セルを使用すると、管理された実験室環境内で電力を高精度に測定することができ、蒸気セルは電場の自己較正絶対測定を実現し得る。DUTからの電磁放射の測定時、蒸気セルは、DUTから放出される電力の自己較正絶対測定を実現することができ、これを参照ビーム測定と共に使用して、電磁放射の位相を抽出することができる。測定はDUTごとの標準として機能し得る。また更に、参照ビームを用いるホログラフィ装置で蒸気セルが使用される場合、この装置は完全に自己較正される測定を行うことができるが、その理由は、フィードバックループを使用してリュードベリ原子ベースの電力センサ(または蒸気セル)を基準として用いることで、参照波電力を較正し安定させることができるからである。蒸気セルの幾何形状は、蒸気セルフレームをレーザ切削することまたは蒸気セル構造をエッチングすることによって、10μm以下の精度まで把握することができる。OTA試験は、電気通信キャリア、電子機器製造者、および規制機関を含む、多くの異なる関係者から必要とされている。OTA試験は規格と関連付けられている場合があり、政府規制への準拠の保証、およびコストのかかる設計ミスの回避に寄与することができる。準拠および試験は、高周波電子機器産業が厳しい世界市場のスケジュールおよび技術仕様に対応するのに役立ち得る。
【0040】
いくつかの実装形態では、蒸気セルを製造する方法は、第1の表面と第1の表面の反対側の第2の表面とを有する誘電体を得ることを含む。方法はまた、誘電体から材料を除去して第1の表面から第2の表面まで延在する複数の壁を形成することも含む。複数の壁は、誘電体の開放容積を包囲する周囲壁と、開放容積を複数のセルへと区画するように開放容積内に配置されている相互接続された壁と、を含む。複数のセルの各々は、第1の表面によって画定される第1の開口部と、第2の表面によって画定される第2の開口部と、を有する。方法は、光学窓の表面を誘電体の第1の表面に接合して、第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成することを更に含む。光学窓は複数のセルの第1の開口部を覆う。
【0041】
いくつかの実装形態では、光学窓は第1の光学窓である。これらの実装形態では、方法は、複数のセルの各々の中に蒸気または蒸気の供給源を配設することを含む。方法はまた、第2の光学窓の表面を誘電体の第2の表面に接合して、第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成することも含む。第2の光学窓は、複数のセルの第2の開口部を覆って、複数のセルの各々の中に蒸気または蒸気の供給源を閉じ込める。
【0042】
いくつかの実装形態では、誘電体から材料を除去することは、レーザビームを誘電体上に収束させてその材料を機械加工することを含む。いくつかの実装形態では、誘電体から材料を除去することは、誘電体を化学物質に曝露してそこから材料をエッチングすることを含む。いくつかの実装形態では、誘電体から材料を除去することは、少なくとも1つの相互接続された壁を貫通する通路を形成することを含む。通路は、少なくとも1つの相互接続された壁によって分離されたセルが流体連通することを可能にするように構成される。いくつかの実装形態では、相互接続された壁のうちの3つ以上が結合部において繋がる。これらの実装形態では、誘電体から材料を除去することは、結合部を貫通する通路を形成することであって、通路は結合部と隣り合うセル同士が流体連通することを可能にするように構成される、形成すること、を含む。
【0043】
いくつかの実装形態では、蒸気セルは標的放射を検出するように構成される。そのような実装形態では、誘電体から材料を除去することは、周囲壁に沿って開放容積内へと延びる複数の突起を形成することを含む。いくつかの変形形態では、複数の突起の各々は、標的放射の波長以下の最大寸法を有する。標的放射は少なくとも0.3mmの波長を有し得る。ただし他の波長が可能である。いくつかの実装形態では、誘電体を得ることは、誘電体から材料を除去して第1および第2の表面を形成すること(例えば、研磨、エッチング、機械加工など)を含む。
【0044】
いくつかの実装形態では、方法は、接合前に、複数のセルの各々の中に蒸気または蒸気の供給源を配設することを含む。これらの実装形態では、光学窓の表面を接合することは、複数の空洞の各々の中に蒸気または蒸気の供給源を閉じ込めることを含む。
【0045】
いくつかの実装形態では、誘電体から材料を除去することは、誘電体の周囲壁を貫通して複数のセルのうちの少なくとも1つに至る穴を形成することを含む。そのような実装形態では、方法は、穴を通して蒸気を流すことと、複数のセル内に蒸気を封止するために穴を閉塞することと、を含む。特定の変形形態では、方法は、周囲壁に穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを更に含み得る。これらの変形形態では、穴を閉塞することは、複数のセル内に蒸気を封止するために管の端部を閉じることを含む。
【0046】
いくつかの実装形態では、方法は、光学窓を貫通する穴を形成することを含む。穴は、光学窓の表面が誘電体の第1の表面に接合されるときに、複数のセルのうちの少なくとも1つを光学窓の外部に流体連通させるように位置付けられる。方法はまた、穴を通して蒸気を流すこと、および複数のセル内に蒸気を封止するために穴を閉塞することも含む。特定の変形形態では、方法は、光学窓に穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを更に含む。これらの変形形態では、穴を閉塞することは、複数のセル内に蒸気を封止するために管の端部を閉じることを含む。
【0047】
いくつかの実装形態では、光学窓表面は第1の窓表面であり、光学窓は、第1の窓表面の反対側の第2の窓表面を含む。そのような実施形態では、方法は、光学窓から材料を除去して、第2の窓表面から第1の窓表面へと部分的に延在する複数のポケットを形成することを含む。更なる実装形態では、第1の窓表面および第2の窓表面は周縁部によって境界付けられる。光学窓から材料を除去して複数のポケットを形成することはその場合、複数のポケットを光学窓の実効比誘電率が定まるようなサイズの構成で形成することを含む。この実効比誘電率は、光学窓を形成する材料と関連付けられる固有の比誘電率とは異なる。
【実施例】
【0048】
いくつかのケースでは、蒸気セルを製造する方法は、以下の実施例に従って実施され得る。ただし、実施例は例示のみを目的としている。材料および方法のいずれの修正も、本開示の範囲から逸脱することなく実行され得る。
【0049】
(実施例1)
方位<100>の両面p型シリコンウエハを入手した。このシリコンウエハは直径が4インチであり、厚さが500μmであり、表面粗さRaはどの面も1nm以下であった。シリコンウエハの電気特性には104Ω・cmの抵抗が含まれていた。Schottからホウケイ酸塩ガラスで形成されたガラスウエハも入手した。ガラスウエハは直径4インチ、厚さ300μmの、MEMpax(登録商標)ウエハであった。表面粗さは0.5nm未満であった。
【0050】
接触陽極接合の準備としてシリコンおよびガラスウエハを検査した。特に、チップ、マイクロクラック、およびスクラッチがないか、ウエハを視認検査した。ウエハが1nm未満の表面粗さを有することも検証した。酸化炉内で湿式成長プロセスを用い、シリコンウエハの両面上でSiO2の500nm保護層を成長させた。酸化炉の温度は約1100℃に設定し、シリコンウエハの処理時間は約40分であった。(SiO2層を有する)シリコンウエハの厚さ均一性について、その4インチの直径エリアにわたって500±6nm以内であることを検証した。表面粗さが1nm未満であることも検証した。
【0051】
シリコンウエハの材料を機械加工するためにProtolaser U4 マイクロレーザツールまたはProtolaser R マイクロレーザツールのいずれかを使用して、シリコンウエハをシリコンフレームへと形成した。シリコンフレームは周囲壁と、周囲壁内の相互接続された壁とを含んでいた。相互接続された壁によって六角形形状の複数のセルを画定した。複数の六角形形状のセルの間に通路を画定するために、相互接続された壁にノッチを形成した。シリコンフレームを、機械加工中に生じた可能性のあるクラックまたはチップがないか、5×および10×倍率のルーペで視認検査した。シリコンフレームの表面欠陥がゼロまたは最小限であった場合、そのフレームを選択して続く蒸気セル製作へと進めた。
【0052】
次いでシリコンフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、メタノールおよびイソプロパノールで洗浄した。次にシリコンフレームを、10:1の体積比および室温で55nm/分のエッチ速度を有する緩衝酸化物エッチ(BOE)溶液中に浸漬した。緩衝酸化物エッチ溶液は、フッ化アンモニウムで緩衝したフッ酸を含んでいた。シリコンフレームを少なくとも11分間浸漬して、シリコンフレームの各側の表面からSiO2の500nm保護層を除去した。緩衝酸化物エッチから取り出した後で、シリコンフレームを視認検査した。シリコンフレーム上に機械加工プロセス由来の埋まった物質が見つかった場合、そのシリコンフレームは廃棄した。SiO2の領域がシリコンフレーム上に残っている場合、シリコンフレームを再び緩衝酸化物エッチ溶液中に浸漬し、取り出し、その後再検査した。シリコンフレームのどちらの面にもSiO2の500nmの保護層がない場合、そのシリコンフレームを選択して、最終洗浄および100nmのSiO2接着層の成長へと進めた。
【0053】
シリコンフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、アセトンおよびイソプロパノールで洗浄した。超音波クリーナを使用して、シリコンフレームを浸漬したアセトンまたはイソプロパノールの槽を撹拌することで洗浄プロセスを補助した。次いでシリコンフレームの1つの面上にSiO2の100nm層を成長させた。スパッタリングチャンバ内のサンプルの温度は、SiO2の100nm層に対して1nm以下の表面粗さを得るために、最低値である600℃に設定した。100nmのSiO2層の厚さ均一性について、シリコンフレームのエリアにわたって100±6nm以内であることを検証した。シリコンフレームがこの均一性基準を満たさない場合、そのシリコンフレームは廃棄した。
【0054】
次いで100nmのSiO2層を有するシリコンフレームを綿棒および光学用薄葉紙を使用してメタノールおよびイソプロパノールで洗浄し、その表面上の(例えば取り回しに起因するような)緩く付着した残渣を除去した。続いてシリコンフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、アセトンおよびイソプロパノールで入念に洗浄した。1回目の視認検査用の入念な洗浄プロセス中には低倍率のルーペ(例えば10×)を使用し、続く2回目の視認検査用には高倍率顕微鏡(例えば50×~200×)を使用した。シリコンフレームが2回目の視認検査に合格した場合、そのシリコンフレームをアセトンの槽内に設置して、(例えばBranson Ultrasonic Cleaner CPX-952-117Rで)40kHzで超音波洗浄した。例えば、シリコンフレームをアセトンのガラスビーカ内に設置して、室温で20分間超音波洗浄してもよい。超音波洗浄後、シリコンフレームを粒子を含まない圧縮空気で乾燥させ、接合で必要になるまで気密容器内で保管した。
【0055】
別途、ガラスウエハを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、メタノールおよびイソプロパノールで洗浄した。必要に応じて、ガラスウエハをアセトンのガラス容器内に設置し、室温で20分間超音波洗浄した。超音波洗浄後、ガラスウエハを粒子を含まない圧縮空気で乾燥させ、その後接合で必要になるまで気密容器内で保管した。
【0056】
次いで1つのシリコンフレームおよび1つのガラスウエハを、陽極接合用のアセンブリ内に設置した。シリコンフレームの場合、SiO2の100nm層よって画定される平面状の表面の反対側の平面状の表面が陽極接合プロセスに関与した。このアセンブリにおいて、シリコンフレームの平面状の表面とガラスウエハを接触させて接合面を形成し、この接合面を視認検査して光学縞が存在することを確認した。次いでシリコンフレームを約400℃の温度まで加熱した。この温度に達した後で、シリコンおよびガラスチップに600Vを約15分間印加し、これにより陽極接合の形成を促進させた。陽極接合が完了したことを示す光学縞の消失を確認するために、接合面を再び検査した。次に、欠陥(例えば、泡、マイクロクラック、未接合のエリア、等)がないか、陽極接合を検査した。セルの周囲の面積の80%以上に欠陥がない場合には、(例えば、穴から環境への、穴から別の穴への、等の)開いたチャネルがないか、陽極接合を更に検査した。開いたチャネルが発見された場合、その陽極接合は漏れがないと見なされないため、その陽極接合体は廃棄した。
【0057】
漏れのない陽極接合によって接合されたシリコンおよびガラス体を、アセトンおよびメタノール中で洗浄した。この洗浄プロセス中、シリコンフレームの未接合の表面を綿棒および光学用薄葉紙を使用してアセトンおよびメタノールで洗浄し、あらゆる残渣(例えば、陽極接合を形成するために使用されるアセンブリのグラファイトプレートからの残渣)を除去した。次いで、すぐに形成されることになる接触接合を損ない得る欠陥(例えば、掻き傷、ピッチング、等)が存在しないことを保証するために、シリコンフレームの未接合の表面を視認検査した。次いで陽極接合体を個々に洗浄した。特に、陽極接合体をアセトンのガラスビーカ内に単独で(すなわち他のチップを伴わずに)設置し、室温で20分間超音波洗浄した。超音波洗浄後、陽極接合体を、粒子を含まない圧縮空気で乾燥させた。陽極接合体の1回目の視認検査には低倍率のルーペ(例えば10×)を使用し、続く2回目の視認検査には高倍率顕微鏡(例えば50×~200×)を使用した。1回目および2回目の視認検査を利用して、陽極接合体上に目に見える残渣または沈着物が残っていないことを確実にした。
【0058】
次いで、陽極接合体 - および第2のガラスウエハ - を、接触接合を行うためにクリーンルーム環境(例えばクラス1000以上)内に入れた。陽極接合体のシリコンフレーム上のSiO2の100nm層によって画定される平面状の表面、および第2のガラスウエハの平面状の表面を光学用の紙とアセトンで拭って、それらから肉眼で見える沈着物または異物を取り除いた。次いでこの対をアセトン槽(例えば、アセトンを入れたビーカ)内に浸漬し、超音波洗浄によって15分間洗浄した。続いてこの対をアセトン槽から取り出し、イソプロパノールですすぎ(例えば、イソプロパノール槽内に浸漬し)、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。
【0059】
次いでこの対をYES-CV200RFSプラズマシステム内に設置し、窒素プラズマを使用して45秒間活性化させた。特に、シリコンフレーム上のSiO2の100nm層によって画定される平面状の表面、およびガラスウエハの平面状の表面をプラズマ活性化させた。プラズマシステムのRF電力は約75Wに設定し、内圧は約150ミリトールに維持した。プラズマシステム内に窒素ガスを約20sccmの体積流量で導入した。プラズマ洗浄による活性化後、この対をYES-CV200RFSプラズマシステムから取り出し、脱イオン水中で5分間すすいだ。このすすぎのプロセスは活性化した表面をヒドロキシル化する役割を果たした。いくつかの変形形態では、塩基性水溶液(例えば、水酸化アンモニウムの水溶液)を用いて、すすぎのプロセスを実行した。2つのヒドロキシル化および活性化された表面が接触して一体にならないように注意した。
【0060】
次に、パラフィンで覆ったCsの錠剤を空洞内に設置し、両方の部片を真空チャンバ内に移し、「押圧指(press finger)」を有する固定具内に取り付けた。固定具によって第2のガラスウエハを、間隙が画定されるように陽極接合体のシリコンフレームの隣に保持した。ガラスウエハの活性化およびヒドロキシル化された表面をシリコンフレームの活性化およびヒドロキシル化されたSiO2表面に対面させた。次いで真空チャンバを封止し、ポンプ作用によって低い圧力(例えば10-3トール未満)へと下げた。
【0061】
真空チャンバ内の圧力がその所望の圧力に達したら、固定具を作動させて、ガラスウエハの活性化およびヒドロキシル化された表面を、シリコンフレームの活性化およびヒドロキシル化されたSiO2表面に接触させた。「押圧指」を使用して接触した表面を一体にして20分間保持し、このことにより接触接合の形成を促進した。いくつかの変形形態では、「押圧指」を使用して、標的圧力(例えば約2MPa)を20分間継続して加えた。約90℃のオーブン内で8時間アニーリングすることによって、接合を強化した。アニーリングプロセスによってパラフィン錠剤中のCsが放出された。
【0062】
(実施例2)
Howard Glass Co., Inc.から厚さ1mm、直径4インチの厚いガラスウエハを入手した。厚いガラスウエハの表面粗さRaは、どちらの面も1nm以下であった。Schottからホウケイ酸塩ガラスで形成された薄いガラスウエハも入手した。薄いガラスウエハは直径4インチ、厚さ300μmの、MEMpax(登録商標)ウエハであった。表面粗さは0.5nm未満であった。接触陽極接合の準備として厚いガラスウエハおよび薄いガラスウエハを検査した。特に、チップ、マイクロクラック、およびスクラッチがないか、ガラスウエハを視認検査した。ウエハが1nm未満の表面粗さを有することも検証した。
【0063】
単一の面上に500nmのSiO2の層を有する100μmのSiウエハを、厚いガラスウエハの各面にSiO2層が表面に露出するように陽極接合した。100μmのSiウエハによって厚いガラスウエハ上にSiの層を形成した。別法として、Siの層を厚いガラス層の各面上に堆積させてもよく、SiO2を露出した表面上にスパッタリングしてもよい。例えば、厚いガラスウエハの両面上にプラズマ促進化学蒸気堆積法(PECVD)を用いて厚さ1μm以下のSi層を堆積させてもよく、積層したフレームの各面上にSiO2の500nm保護層をスパッタリングしてもよい。
【0064】
次に、ガラスウエハの材料を機械加工するためにProtolaser U4 マイクロレーザツールまたはProtolaser R マイクロレーザツールのいずれかを使用して、厚いガラスウエハからSi層およびSiO2層を有するガラスフレームを切り出した。ガラスフレームは周囲壁と、周囲壁内の相互接続された壁とを含んでいた。相互接続された壁によって六角形形状の複数のセルを画定した。複数の六角形形状のセルの間に通路を画定するために、相互接続された壁にノッチを形成した。ガラスフレームを、機械加工中に生じた可能性のあるクラックまたはチップがないか、5×および10×倍率のルーペで視認検査した。ガラスフレームの表面欠陥がゼロまたは最小限であった場合、そのフレームを選択して続く蒸気セル製作へと進めた。
【0065】
次いでガラスフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用してメタノールおよびイソプロパノールで洗浄した。次にSi層およびSiO2層を有するガラスフレームを、10:1の体積比および室温で55nm/分のエッチ速度を有する緩衝酸化物エッチ(BOE)溶液と接触させた(例えば、その中に浸漬した)。緩衝酸化物エッチ溶液は、フッ化アンモニウムで緩衝したフッ酸を含んでいた。表面を少なくとも11分間接触させてSiO2の500nm保護層を除去し、この結果ガラスフレーム上にはSiが残った。緩衝酸化物エッチから取り出した後で、ガラスフレームを視認検査した。ガラスフレーム上に機械加工プロセス由来の埋まった物質が見つかった場合、そのガラスフレームは廃棄した。SiO2の領域がガラスフレーム上に残っている場合、ガラスフレームを再び緩衝酸化物エッチ溶液と接触させ、取り出し、その後再検査した。シリコンフレームの表面にSiO2の500nm保護層がない場合、そのガラスフレームを選択して最終洗浄へと進めた。
【0066】
次いでガラスフレームを綿棒および光学用薄葉紙を使用してメタノールおよびイソプロパノールで洗浄し、それらの表面上の(例えば取り回しに起因するような)緩く付着した残渣を除去した。続いてガラスフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、アセトンおよびイソプロパノールで入念に洗浄した。1回目の視認検査用の入念な洗浄プロセスには低倍率のルーペ(例えば10×)を使用し、続く2回目の視認検査用には高倍率顕微鏡(例えば50×~200×)を使用した。ガラスフレームが2回目の視認検査に合格した場合、そのガラスフレームをアセトンの槽内に設置して、(例えばBranson Ultrasonic Cleaner CPX-952-117Rで)40kHzで超音波洗浄した。例えば、ガラスフレームをアセトンのガラスビーカ内に設置して、室温で20分間超音波洗浄してもよい。超音波洗浄後、ガラスフレームを粒子を含まない圧縮空気で乾燥させ、接合で必要になるまで気密容器内で保管した。
【0067】
1つのガラスウエハを選択し、Protolaserシステムのうちの1つを使用して、3mmの穴を、その穴がガラスフレームにおけるセルのうちの1つと位置合わせされ得るように切削した。穴を使用して、パラフィンでコーティングしたCs液滴を使用して蒸気セルにCsを充填した。
【0068】
別途、薄いガラスウエハを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、メタノールおよびイソプロパノールで洗浄した。必要に応じて、薄いガラスウエハをアセトンのガラスビーカ内に設置し、室温で20分間超音波洗浄した。超音波洗浄後、薄いガラスウエハを粒子を含まない圧縮空気で乾燥させ、その後接合で必要になるまで気密容器内で保管した。
【0069】
次いで(Siの層を有する)ガラスフレームおよび1つの薄いガラスウエハを、陽極接合用のアセンブリ内に設置した。ガラスフレームの場合、Siの層によって画定される平面状の表面が陽極接合プロセスに関与した。このアセンブリにおいて、ガラスフレームの平面状の表面とガラスウエハを接触させて接合面を形成し、この接合面を視認検査して光学縞が存在することを確認した。次いでガラスウエハを約400℃の温度まで加熱した。この温度に達した後で、接触させたガラス体に600Vを約15分間印加し、これにより陽極接合の形成を促進させた。陽極接合が完了したことを示す光学縞の消失を確認するために、接合面を再び検査した。次に、欠陥(例えば、泡、マイクロクラック、未接合のエリア、等)がないか、陽極接合を検査した。セルの周囲の面積の80%以上に欠陥がない場合には、(例えば、穴から環境への、穴から別の穴への、等の)開いたチャネルがないか、陽極接合を更に検査した。開いたチャネルが発見された場合、その陽極接合は気密性を有すると見なされないため、その陽極接合体は廃棄した。各ガラスウエハおよびガラスフレーム上のその対応する表面に同じプロセスを実行した。
【0070】
陽極接合されたガラス体をアセトンおよびメタノール中で洗浄した。この洗浄プロセス中、3mmの穴を有する窓を綿棒および光学用薄葉紙を使用してアセトンおよびメタノールで洗浄し、あらゆる残渣(例えば、陽極接合を形成するために使用されるアセンブリからの残渣)を除去した。次いで、すぐに形成されることになる接触接合を損ない得る欠陥(例えば、掻き傷、ピッチング、等)が存在しないことを保証するために、窓を視認検査した。次いで陽極接合体を単独で洗浄した。特に、充填穴を有さない窓を、アセトンおよびメタノールで洗浄した。陽極接合体の1回目の視認検査には低倍率のルーペ(例えば10×)を使用し、続く2回目の視認検査には高倍率顕微鏡(例えば50×~200×)を使用した。1回目および2回目の視認検査を利用して、陽極接合体上に目に見える残渣または沈着物が残っていないことを確実にした。5mm平方の寸法以上のガラスウエハを同様に洗浄して、これを接触接合を使用して充填穴を封止できるように準備した。
【0071】
次いで、陽極接合体 - および5mm平方の寸法よりも大きい正方形のガラスウエハ - を、接触接合を行うためにクリーンルーム環境(例えばクラス1000以上)内に入れた。この対に対して、充填穴を有する接合した構造体の平面状の表面、およびガラスウエハの平面状の表面を光学用の紙とアセトンで拭って、それらから肉眼で見える沈着物または異物を取り除いた。続いてこの対をアセトン槽から取り出し、イソプロパノールですすぎ、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。このプロセスを表面が光学ループを使用して目で見てきれいになるまで繰り返した。
【0072】
次いでこの接合した構造体および窓をYES-CV200RFSプラズマシステム内に設置し、窒素プラズマを使用して45秒間活性化させた。特に、充填穴を有する窓および平面状のガラスカバーを、プラズマによって活性化した。プラズマのRF電力は約75Wに設定し、内圧は約150ミリトールに維持した。プラズマシステム内に窒素ガスを約20sccmの体積流量で導入した。プラズマによる活性化後、この対をYES-CV200RFSプラズマシステムから取り出し、脱イオン水中で5分間すすいだ。接合した構造体を、脱イオン水と、空洞が水で充填されないように慎重に接触させた。このすすぎのプロセスは活性化した表面をヒドロキシル化する役割を果たした。いくつかの変形形態では、塩基性水溶液(例えば、水酸化アンモニウムの水溶液)を用いて、すすぎのプロセスを実行した。2つのヒドロキシル化および活性化された表面が接触して一体にならないように注意した。
【0073】
次に、パラフィンで覆ったCsの錠剤を3mmの穴を使用して空洞内に設置し、両方の部片を真空チャンバ内に移し、「押圧指」を有する固定具内に取り付けた。固定具によってガラス部片を、間隙が画定されるように陽極接合体のガラス窓の隣に保持した。ガラス部片の活性化およびヒドロキシル化された表面をガラスフレームの活性化およびヒドロキシル化された表面に対面させた。次いで真空チャンバを封止し、ポンプ作用によって低い圧力(例えば10-3トール未満)へと下げた。
【0074】
対が所望の圧力に達したら、固定具を作動させて、ガラス部片の活性化およびヒドロキシル化された表面を、陽極接合した構造体の活性化およびヒドロキシル化された表面に接触させた。「押圧指」を使用して接触した表面を一体にして20分間保持し、このことにより接触接合の形成を促進した。いくつかの変形形態では、「押圧指」を使用して、標的圧力(例えば約2MPa)を20分間継続して加えた。約90℃で8時間アニーリングすることによって、接合を強化した。アニーリングプロセスによって空洞内のCsが放出された。
【0075】
記載されているもののいくつかの態様では、蒸気セルを製造する方法が以下の実施例によって更に記載され得る。
(実施例1)
第1の表面および第1の表面の反対側の第2の表面を有する誘電体を得ることと、
誘電体から材料を除去して第1の表面から第2の表面まで延在する複数の壁を形成することであって、複数の壁は、
誘電体の開放容積を包囲する周囲壁、ならびに
開放容積を複数のセルへと区画するように開放容積内に配置されている相互接続された壁を備え、各セルは第1の表面によって画定される第1の開口部および第2の表面によって画定される第2の開口部を有する、形成することと、
第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成するために、光学窓の表面を誘電体の第1の表面に接合することであって、光学窓は複数のセルの第1の開口部を覆う、接合することと、
を含む、蒸気セルを製造する方法。
(実施例2)
誘電体から材料を除去することは、レーザビームを誘電体上に収束させてその材料を機械加工することを含む、実施例1に記載の方法。
(実施例3)
誘電体から材料を除去することは、誘電体を化学物質に曝露してそこから材料をエッチングすることを含む、実施例1または実施例2に記載の方法。
(実施例4)
誘電体から材料を除去することは、少なくとも1つの相互接続された壁を貫通する通路を形成することであって、通路は少なくとも1つの相互接続された壁によって分離されたセルが流体連通することを可能にするように構成される、形成すること、を含む、実施例1または実施例2~3のいずれか1つに記載の方法。
(実施例5)
相互接続された壁のうちの3つ以上が結合部において繋がっており、
誘電体から材料を除去することは、結合部を貫通する通路を形成することであって、通路は結合部と隣り合うセル同士が流体連通することを可能にするように構成される、形成すること、を含む、
実施例1または実施例2~4のいずれか1つに記載の方法。
(実施例6)
蒸気セルは標的放射を検出するように構成されており、
誘電体から材料を除去することは、周囲壁に沿って開放容積内へと延びる複数の突起を形成することであって、複数の突起は標的放射の波長以下の最大寸法を有する、形成すること、を含む、
実施例1または実施例2~5のいずれか1つに記載の方法。
(実施例7)
標的放射は少なくとも0.3mmの波長を有する、実施例6に記載の方法。
(実施例8)
誘電体を得ることは、誘電体から材料を除去して第1および第2の表面を形成することを含む、実施例1または実施例2~7のいずれか1つに記載の方法。
(実施例9)
接合前に、複数のセルの各々の中に蒸気または蒸気の供給源を配設することを含み、
光学窓の表面を接合することは、複数の空洞の各々の中に蒸気または蒸気の供給源を閉じ込めることを含む、
実施例1または実施例2~8のいずれか1つに記載の方法。
(実施例10)
誘電体から材料を除去することは、誘電体の周囲壁を貫通して複数のセルのうちの少なくとも1つに至る穴を形成することを含む、
実施例1または実施例2~9のいずれか1つに記載の方法であって、
方法は、
穴を通して蒸気を流すことと、
複数のセル内に蒸気を封止するために穴を閉塞することと、を含む、方法。
(実施例11)
周囲壁に穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを含み、
穴を閉塞することは、複数のセル内に蒸気を封止するために管の端部を閉じることを含む、
実施例10に記載の方法。
(実施例12)
光学窓を貫通する穴を形成することであって、穴は、光学窓の表面が誘電体の第1の表面に接合されるときに、複数のセルのうちの少なくとも1つを光学窓の外部に流体連通させるように位置付けられる、形成することと、
穴を通して蒸気を流すことと、
複数のセル内に蒸気を封止するために穴を閉塞することと、
を含む、実施例1または実施例2~9のいずれか1つに記載の方法。
(実施例13)
光学窓に穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを含み、
穴を閉塞することは、複数のセル内に蒸気を封止するために管の端部を閉じることを含む、
実施例12に記載の方法。
(実施例14)
光学窓の表面は第1の窓表面であり、光学窓は第1の窓表面の反対側の第2の窓表面を備える、
実施例1または実施例2~13のいずれか1つに記載の方法であって、
方法は、
光学窓から材料を除去して、第2の窓表面から第1の窓表面へと部分的に延在する複数のポケットを形成することを含む、方法。
(実施例15)
第1の窓表面および第2の窓表面は周縁部によって境界付けられており、
光学窓から材料を除去して複数のポケットを形成することは、
複数のポケットを光学窓の実効比誘電率が定まるようなサイズの構成で形成することであって、実効比誘電率は光学窓を形成する材料と関連付けられる固有の比誘電率とは異なっている、形成すること、を含む、
実施例14に記載の方法。
(実施例16)
光学窓は第1の光学窓である、
実施例1または実施例2~15のいずれか1つに記載の方法であって、
方法は、
複数のセルの各々の中に蒸気または蒸気の供給源を配設することと、
第2の光学窓の表面を誘電体の第2の表面に接合して、第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成することであって、第2の光学窓は複数のセルの第2の開口部を覆って複数のセルの各々の中に蒸気または蒸気の供給源を閉じ込める、形成することと、を含む、方法。
【0076】
記載されているもののいくつかの態様では、蒸気セルが以下の実施例によって更に記載され得る。
(実施例1)
誘電体であって、
第1の表面、
第1の表面の反対側の第2の表面、および
第1の表面から第2の表面まで延在する複数の壁、を備え、複数の壁は、
誘電体の開放容積を包囲する周囲壁、ならびに
開放容積を複数のセルへと区画するように開放容積内に配置されている相互接続された壁であり、各セルは第1の表面によって画定される第1の開口部および第2の表面によって画定される第2の開口部を有する、相互接続された壁、を備える、誘電体と、
複数のセルの各々の中にある蒸気または蒸気の供給源と、
第1の開口部を覆い、かつ誘電体の第1の表面に接合されて第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する、第1の光学窓と、
第2の開口部を覆い、かつ誘電体の第2の表面に接合されて第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する、第2の光学窓と、
を備える、蒸気セル。
(実施例2)
蒸気セルは標的放射を検出するように構成されており、
周囲壁は開放容積内へと延びている複数の突起を有し、複数の突起は標的放射の波長以下の最大寸法を有する、
実施例1に記載の蒸気セル。
(実施例3)
複数の突起は周囲壁に沿って均等に離間されている、実施例2に記載の蒸気セル。
(実施例4)
複数の突起の各々は開放容積内へとテーパしている、実施例2または実施例3に記載の蒸気セル。
(実施例5)
標的放射は少なくとも0.3mmの波長を有する、実施例2または実施例2~4のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例6)
第1の光学窓および第2の光学窓の一方または両方は、
第2の窓表面の反対側の第1の窓表面であって、誘電体に接合されている、第1の窓表面と、
第2の窓表面から第1の窓表面へと部分的に延在する複数のポケットと、を備える、実施例1または実施例2~5のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例7)
第1の光学窓および第2の光学窓の一方または両方は、光学窓を形成する材料と関連付けられる固有の比誘電率とは異なる実効比誘電率を有する、実施例1または実施例2~6のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例8)
第1の光学窓および第2の光学窓の一方または両方は、
第2の窓表面の反対側の第1の窓表面であって、誘電体に接合されている、第1の窓表面と、
第2の窓表面から第1の窓表面へと部分的に延在しかつ光学窓のある実効比誘電率が定まるようなサイズで構成されている、複数のポケットと、を備え、実効比誘電率は光学窓を形成する材料と関連付けられる固有の比誘電率とは異なっている、実施例1または実施例2~6のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例9)
複数のポケットは第2の窓表面と平行な方向に沿ってサイズが小さくなって、漸減する実効比誘電率が定まるようになっている、実施例8に記載の蒸気セル。
(実施例10)
少なくとも1つの相互接続された壁は、少なくとも1つの相互接続された壁によって分離されたセルを流体連通する通路を備える、実施例1または実施例2~9のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例11)
相互接続された壁のうちの3つ以上が結合部において繋がっており、結合部は結合部と隣り合うセル同士を流体連通させる通路を備える、実施例1または実施例2~10のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例12)
第1の光学窓は誘電体ミラーを備える、実施例1または実施例2~11のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例13)
誘電体ミラーは誘電体の第1の表面に接合されている第1の光学窓の表面に沿って配設されている、実施例12に記載の蒸気セル。
(実施例14)
第2の光学窓は反射防止コーティングを備える、実施例1または実施例2~12のいずれか1つに記載の蒸気セル。
【0077】
本明細書は多くの詳細を包含しているが、これらは特許請求され得る内容の範囲を限定するものとしてではなく、特定の例に特有の特徴の記載として理解されるべきである。別個の実装形態の文脈で本明細書に記載されているかまたは図面に示されている特定の特徴を組み合わせることもできる。逆に、単一の実装形態の文脈で記載されているかまたは示されている様々な特徴を、複数の実施形態において別々に、または任意の好適な下位組合せで、実施することもできる。
【0078】
同様に、図面では操作が特定の順序で描かれているが、このことは、望ましい結果を達成するために、そのような操作をその示された特定の順序でもしくは連続的に行うこと、または示されている全ての操作を行うことを要求するものと理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスク処理および並列処理が有利であり得る。また更に、上記した実装形態における様々なシステム構成要素の分離は、そのような分離が全ての実装形態において必要であるものと理解されるべきではなく、記載されたプログラム構成要素およびシステムを、全体的に単一の製品において1つに統合できるか、または複数の製品へとパッケージングできることが理解されるべきである。
【0079】
いくつかの実施形態を記載した。ただし、様々な修正を行い得ることが理解されるであろう。したがって、以下の特許請求の範囲の範囲内には他の実施形態が含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2019年11月27日に出願された「Vapor Cells for Imaging of Electromagnetic Fields」と題する米国仮出願第62/941,572号に対する優先権を主張する。本出願はまた2020年8月18日に出願された「Vapor Cells for Imaging of Electromagnetic Fields」と題する米国出願第16/996,652号に対する優先権を主張する。これらの出願の開示を参照によって本明細書に組み込む。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
例示の誘電体202は、例示の蒸気セル200によって測定される電場(または電磁放射)が透過する材料で形成され得る。材料は高い抵抗率、例えば、ρ>103Ω・cmを有する絶縁材料であってもよく、単結晶、多結晶セラミクス、または非晶質ガラスに相当し得る。例えば、誘電体202はシリコンで形成され得る。別の例では、誘電体202は、酸化シリコン(例えば、SiO2、SiOx、等)を含むガラス、例えば石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはアルミノケイ酸塩ガラスで形成され得る。場合によっては、誘電体202の材料は、例えば酸化マグネシウム(例えばMgO)、酸化アルミニウム(例えばAl2O3)、二酸化シリコン(例えばSiO2)、二酸化チタン(例えばTiO2)、二酸化ジルコニウム、(例えばZrO2)、酸化イットリウム(例えばY2O3)、酸化ランタン(例えばLa2O3)などの、酸化物材料である。酸化物材料は不定比性(例えばSiOx)であってもよく、また、1つまたは複数の二元酸化物(例えば、Y:ZrO2、LaAlO3、等)の組合せであってもよい。また場合によっては、誘電体202の材料は、例えばシリコン(Si)、ダイヤモンド(C)、窒化ガリウム(GaN)、フッ化カルシウム(CaF)などの、非酸化物材料である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
いくつかの実装形態では、第1の光学窓222および第2の光学窓226の一方は、誘電体202と一体である。これらの実装形態では、誘電体202の一部は光学窓の役割を果たす。例えば、
図2Cは、誘電体202の一部が第2の光学窓226の役割を果たす、
図2Bの誘電体202の概略図を提示している。
図2Cでは、複数のセル216は第1の表面206から部分的に誘電体202を通って延在する。第1の光学窓
222は各セル216を、それらの対応する第1の開口部218の周囲に封止部を形成するときに閉じ込める。
図2Cの誘電体202を製造するために、誘電体202の第1の表面206に、複数のセル216の形状を画定する穴を含む、パターン形成した層を適用してもよい。穴を通して露出される第1の表面206の部分を、次いで化学エッチャントと接触させてもよい。他の製造方法が可能である。
【国際調査報告】