(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】注入および吸引用ニードルシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20230119BHJP
A61B 10/02 20060101ALI20230119BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A61M5/158 500D
A61B10/02 110K
A61M5/158 500Z
A61M5/32 520
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525606
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2020081083
(87)【国際公開番号】W WO2021089677
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519047196
【氏名又は名称】サガ サージカル アーベー
【氏名又は名称原語表記】SAGA SURGICAL AB
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】フォルスバール,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ウブナース,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】エドベルグ,マッツ
(72)【発明者】
【氏名】スパッレ,エリク
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066FF04
4C066JJ07
4C066KK14
(57)【要約】
ニードルシステム(10)は、ニードル構成およびアクチュエータ装置(30)を備える。ニードル構成は、ニードル(21)およびロッド(24)を備える。ニードルは、近位端(211)および遠位端(212)を有し、遠位端にニードル開口(203)を有する。ロッドは、近位端(221)および遠位端(222)を有するとともに、ニードルの長さよりも大きな長さを有する。ロッドは、ニードルの内側に嵌合するように構成された細長ロッド軸部(26)と、当該ロッドの遠位端に位置付けられたロッド先端部(23)と、を備える。アクチュエータ装置は、キャビティ(33)を備えたアクチュエータ本体(39)と、流体搬送装置(70)と整合して、流体のキャビティに対する流入および/または流出を可能にすることにより、ニードルを通じた流体の注入および/または吸引を可能にするように構成された第1の開口(61)と、を備える。このニードルシステムは、閉塞状態および開放状態を有する。閉塞状態においては、ロッド先端部がニードル開口を封止または封鎖し、開放状態においては、ロッド先端部がニードルに対して前方にシフトされ、ニードル開口を封止解除または封鎖解除する。ニードルの近位端は、アクチュエータ本体に接続されるとともに、キャビティに対して開放されている。ロッドは、キャビティの容積の変化時に、遠位方向の力が当該ロッドに及ぼされて、ニードル構成が開放状態となるように、アクチュエータ装置と相互作用するように構成されている。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードル構成(20)およびアクチュエータ装置(30、230、430、530)を備えたニードルシステム(10、610)であって、
前記ニードル構成(20)が、
近位端(211)および遠位端(212)を有し、前記遠位端(212)にニードル開口(203)を有するニードル(21、221、421、521)と、
近位端(221)および遠位端(222)を有するとともに、前記ニードル(21、221、421、521)の長さよりも大きな長さを有するロッド(24、224、424、524、624)であって、
前記ニードル(21)の内側に嵌合するように構成された細長ロッド軸部(26、226、426、526)と、
前記ロッド(24、224、424、524、624)の前記遠位端(222)に位置付けられたロッド先端部(23)と、
を備えた、ロッド(24、224、424、524、624)と、
を備え、
前記アクチュエータ装置(30、230、430、530)が、
キャビティ(33、233、433、533、633)を備えたアクチュエータ本体(39、239、439、539、639)と、
流体搬送装置(70)と整合して、流体の前記キャビティ(33、233、433、533、633)に対する流入および/または流出を可能にすることにより、前記ニードル(21、221、421、521)を通じた流体の注入および/または吸引を可能にするように構成された第1の開口(61、261、461、561)と、
を備え、
前記ニードルシステム(10、610)が、閉塞状態および開放状態を有し、前記閉塞状態においては、前記ロッド先端部(23)が前記ニードル開口(203)を封止または封鎖し、前記開放状態においては、前記ロッド先端部(23)が前記ニードル(21、221、421、521)に対して前方にシフトされ、前記ニードル開口(203)を封止解除または封鎖解除し、
前記ニードル(21、221、421、521)の前記近位端(211)が、前記アクチュエータ本体(39、239、439、539、639)に接続され、
前記ニードル(21、221、421、521)の前記近位端(211)が、前記キャビティ(33、233、433、533、633)に対して開放され、
前記ロッド(24、224、424、524、624)が、前記キャビティ(33、233、433、533、633)の容積の変化時に、遠位方向の力が前記ロッド(24、224、424、524、624)に及ぼされて、前記ニードルシステム(10、610)が前記開放状態となるように、前記アクチュエータ装置(30、230、430、530)と相互作用するように構成された、ニードルシステム。
【請求項2】
前記ロッド(24)が、前記キャビティ(33)の遠位壁(37)と相互作用するように構成された、請求項1に記載のニードルシステム。
【請求項3】
前記ロッド(24)が、前記キャビティ(33)の近位壁(38)と相互作用するように構成された、請求項1または2に記載のニードルシステム。
【請求項4】
前記アクチュエータ装置(430)が、前記キャビティ(433)の遠位端に配置され、前記キャビティ(433)の遠位壁を構成する可撓性の遠位膜(431)を備え、
前記ロッド(424)が、前記キャビティ(433)が前記キャビティ(433)の外側に対して加圧された場合に、前記遠位膜(431)によって遠位方向の力が前記ロッド(424)に及ぼされて、前記ニードルシステム(10、610)が前記開放状態となるように、前記遠位膜(431)と相互作用するように構成された、請求項1または2に記載のニードルシステム。
【請求項5】
前記アクチュエータ装置(430)が、前記遠位膜(431)に取り付けられ、前記力を前記ロッド(424)に及ぼすように構成された遠位力伝達ユニット(451)を備えた、請求項4に記載のニードルシステム。
【請求項6】
前記アクチュエータ装置(230)が、前記キャビティ(233)の近位端に配置され、前記キャビティ(233)の近位壁を構成する可撓性の近位膜(232)を備え、
前記ロッド(224)が、前記キャビティ(233)が前記キャビティ(233)の外側に対して減圧された場合に、前記近位膜(232)によって遠位方向の力が前記ロッド(224)に及ぼされて、前記ニードルシステム(10、610)が前記開放状態となるように、前記近位膜(232)と相互作用するように構成された、請求項1または3に記載のニードルシステム。
【請求項7】
前記アクチュエータ装置(230)が、前記近位膜(232)に取り付けられ、前記力を前記ロッド(224)に及ぼすように構成された近位力伝達ユニット(252)を備えた、請求項6に記載のニードルシステム。
【請求項8】
前記アクチュエータ装置(230、530)が、
前記キャビティ(233、533)の遠位端に配置され、前記キャビティ(233、533)の遠位壁を構成する可撓性の遠位膜(231、531)と、
前記キャビティ(233、533)の近位端に配置され、前記キャビティ(233、533)の近位壁を構成する可撓性の近位膜(232、532)と、
を備え、
前記ロッド(224、524)が、前記キャビティ(233、533)が前記キャビティ(233、533)の外側に対して加圧された場合に、前記遠位膜(231、531)によって遠位方向の力が前記ロッド(224、524)に及ぼされて、前記ニードルシステム(10、610)が前記開放状態となるように、前記遠位膜(231、531)と相互作用するように構成され、
前記ロッド(224、524)が、前記キャビティ(233、533)が前記キャビティ(233、533)の外側に対して減圧された場合に、前記近位膜(232、532)によって遠位方向の力が前記ロッド(224、524)に及ぼされて、前記ニードルシステム(10、610)が前記開放状態となるように、前記近位膜(232、532)と相互作用するように構成された、請求項1~3のいずれか1項に記載のニードルシステム。
【請求項9】
前記アクチュエータ装置(230)が、
前記遠位膜(231)に取り付けられた遠位力伝達ユニット(251)と、
前記近位膜(232)に取り付けられた近位力伝達ユニット(252)と、
を備え、
前記遠位力伝達ユニット(251)が、前記遠位力伝達ユニット(251)に関して遠位の位置で前記ロッド(224)に対して解除可能に連結するように構成され、
前記近位力伝達ユニット(252)が、前記近位力伝達ユニット(252)に関して遠位の位置で前記ロッド(224)に対して解除可能に連結するように構成された、請求項8に記載のニードルシステム。
【請求項10】
前記遠位力伝達ユニット(251)が、前記キャビティ(233)の内側かつ前記遠位膜(231)に関して近位で前記遠位膜(231)に取り付けられ、前記ロッド(224)に加わる力を遠位方向に伝達するように構成され、
前記近位力伝達ユニット(252)が、前記キャビティ(233)の内側かつ前記近位膜(232)に関して遠位で前記近位膜(232)に取り付けられ、前記ロッド(224)に加わる力を遠位方向に伝達するように構成された、請求項9に記載のニードルシステム。
【請求項11】
前記アクチュエータ装置(530)が、前記第1の開口(561)と前記ニードル(521)との間で流体を送達するとともに、前記第1の開口(561)と前記キャビティ(533)との間で流体を送達するように構成されたチャネル(580、581)を備えた、請求項8~10のいずれか1項に記載のニードルシステム。
【請求項12】
前記アクチュエータ装置(530)が、前記第1の開口(561)と前記ニードル(521)との間で流体を送達するように構成されたチャネル(580)を備え、前記チャネル(580)が、前記キャビティ(533)の内側に配置された可撓性部品(582)を備えた、請求項8~10のいずれか1項に記載のニードルシステム。
【請求項13】
前記アクチュエータ装置(230、430、530)が、前記アクチュエータ本体(239、439、539)の内側に配置され、近位方向の力を前記ロッド(224、424、524)に与えることにより、前記ニードルシステム(210、410、510)を前記閉塞状態において付勢するように配置されたばね(255、455、555)を備えた、請求項1~12のいずれか1項に記載のニードルシステム。
【請求項14】
前記アクチュエータ装置(30)の内側の前記キャビティ(233)が、
遠位方向および近位方向に垂直な方向における前記キャビティ(233)の前記近位端の第1の直径(D1)、
遠位方向および近位方向に垂直な方向における前記キャビティ(233)の前記遠位端の第2の直径(D2)、ならびに
前記キャビティ(233)の前記遠位端と前記近位端との間の位置において、遠位方向および近位方向に垂直な方向における前記キャビティ(233)の第3の直径(D3)であり、前記第1の直径(D1)および前記第2の直径(D2)よりも小さい、第3の直径(D3)、
として規定された空間的範囲を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のニードルシステム。
【請求項15】
前記アクチュエータ本体(239、439、539)が、
前記アクチュエータ本体(39)の内側で前記遠位膜(231、431、531)の遠位かつ前記キャビティ(233、433、533)の外側の第1の中空(271、471、571)であり、前記キャビティ(233、433、533)が加圧された場合に前記遠位膜(231、431、531)の遠位方向の撓みを可能にするように構成された、第1の中空(271、471、571)と、
環境気圧を前記第1の中空(271、471、571)に送達するように構成された第2の開口(262、472、562)と、
を備えた、請求項4、5、および8~14のいずれか1項に記載のニードルシステム。
【請求項16】
前記アクチュエータ本体(39)が、環境気圧を前記キャビティ(233、533)の外側の前記近位膜(232、532)の近位側に送達するように構成された第3の開口(263、563)を備えた、請求項6~15のいずれか1項に記載のニードルシステム。
【請求項17】
前記アクチュエータ本体(639)の内部に配置された可撓性のベローズ(680)が、前記キャビティ(633)を形成し、
前記ベローズ(680)が、遠位ベローズ壁(681)および近位ベローズ壁(682)を備え、
前記ロッド(624)が取り付けられたロッドキャリア(690)の一部が、前記キャビティ(633)の内部に配置され、
前記ロッド(624)が、注入および吸引の両者において遠位方向に押されることにより、前記ニードルシステム(610)が前記開放状態となるように、前記ロッドキャリア(690)を介して、前記ベローズ(680)の遠位壁(681)および近位壁(682)と相互作用するように構成された、請求項1に記載のニードルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、ニードルおよびアクチュエータ装置を備え、流体の注入および/または吸引が可能なニードルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医学分野においては、さまざまな目的のニードルが存在する。たとえば、注入、吸引、および生検用のニードル構成が異なる目的で一般的に使用される。これらの種類のニードル構成に共通の特徴として、ニードル構成のニードルは、たとえば流体の注入または吸引の実行のため、(人間または動物の)身体部分に挿入される。これらの種類の侵襲的処置に関連して、感染のリスクが常に存在する。
【0003】
リスク状況の複数の例が存在する。粘膜を穿刺する場合、表面殺菌は不可能であり、経直腸的前立腺生検前の局所麻酔投与に例示される通り、現在の標準的なニードルでは、細菌を組織に持ち込むことになる。皮膚は、たとえばアルコールにより殺菌可能である。ただし、皮膚のクリプトが依然として細菌を含んでいる可能性がある。標準的なニードルの穿刺では、細菌が組織に入り込み、特殊な状況では臨床感染を引き起こす可能性がある。たとえば、羊水穿刺または皮下静脈ポートもしくはシャント等の皮下異物装置の穿刺等、ニードルの対象が極めて脆弱な状況がある。他の例として、糖尿病患者または細胞増殖抑制治療等の免疫修飾治療を継続中の患者の任意の穿刺等、患者が感染の影響を大きく受けやすい場合がある。従来技術のニードルは通常、開口先端を有し、細菌および組織の一部を身体内に運ぶ穿孔器として機能するため、感染の絶好の温床となる。
【0004】
ニードルを閉じればこれらの問題の一部を克服可能ではあるが、従来技術のニードルは、細菌移動を最小限に抑えるとともに、安全に何度も使用でき、その機能がユーザに依存しないほか、注入および吸引の両者において組織内の抵抗を感じられる今日の標準的な皮下ニードルによる触覚フィードバックをユーザの手にもたらす設計および機能メカニズムが欠けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本開示の目的は、従来技術の注入・吸引ニードルシステムと関連する欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、第1の態様において、ニードル構成およびアクチュエータ装置を備えたニードルシステムにより達成される。ニードル構成は、ニードルおよびロッドを備える。ニードルは、近位端および遠位端を有し、遠位端にニードル開口を有する。ロッドは、近位端および遠位端を有するとともに、ニードルの長さよりも大きな長さを有する。ロッドは、ニードルの内側に嵌合するように構成された細長ロッド軸部と、当該ロッドの遠位端に位置付けられたロッド先端部と、を備える。アクチュエータ装置は、キャビティを備えたアクチュエータ本体と、流体搬送装置と整合して、流体のキャビティに対する流入および/または流出を可能にすることにより、ニードルを通じた流体の注入および/または吸引を可能にするように構成された第1の開口と、を備える。
【0007】
このニードルシステムは、閉塞状態および開放状態を有する。閉塞状態においては、ロッド先端部がニードル開口を封止(seal)または封鎖(block)し、開放状態においては、ロッド先端部がニードルに対して前方にシフトされ、ニードル開口を封止解除または封鎖解除する。ニードルの近位端は、アクチュエータ本体に接続されるとともに、キャビティに対して開放されている。ロッドは、キャビティの容積の変化時に、遠位方向の力が当該ロッドに及ぼされて、ニードル構成が開放状態となるように、アクチュエータ装置と相互作用するように構成されている。
【0008】
流体搬送装置の概念は広く解釈され、吸引および/または注入を実行可能な任意の装置(任意の種類の注射器、チューブ、または容器等)を含み、独立して過圧もしくは減圧されるか、または、周囲大気圧に対して過圧もしくは減圧を施す装置に接続されたIV流体ユニットによって輸液が凝集することに留意されたい。
【0009】
このようなニードルシステムは、従来技術のニードルシステムの欠点を克服し、操作が簡単であると同時に、注入および吸引の両者に対応可能である。
【0010】
種々実施形態において、ロッドは、キャビティの遠位壁と相互作用するように構成されている。たとえば、いくつかの実施形態において、アクチュエータ装置は、キャビティの遠位端に配置され、キャビティの遠位壁を構成する可撓性の遠位膜を備えていてもよい。このような実施形態において、ロッドは、キャビティが当該キャビティの外側に対して加圧された場合に、遠位膜によって遠位方向の力が当該ロッドに及ぼされて、ニードルシステムが開放状態となるように、遠位膜と相互作用するように構成されていてもよい。
【0011】
種々実施形態において、ロッドは、キャビティの近位壁と相互作用するように構成されている。たとえば、いくつかの実施形態において、アクチュエータ装置は、キャビティの近位端に配置され、キャビティの近位壁を構成する可撓性の近位膜を備えていてもよい。このような実施形態において、ロッドは、キャビティが当該キャビティの外側に対して減圧された場合に、近位膜によって遠位方向の力が当該ロッドに及ぼされて、ニードルシステムが開放状態となるように、近位膜と相互作用するように構成されていてもよい。
【0012】
言い換えると、このようなニードルシステムの実施形態は、撓むことによってキャビティの容積を増大または減少させる結果、ロッドを遠位方向に押してニードルシステムを開放状態とすることにより、システムと整合する流体搬送装置からの流体の移動または流体搬送装置への流体の移動を可能にする遠位膜または近位膜を有するアクチュエータ装置を含む。
【0013】
さらに、このような構成には、近位構成の場合にのみシステムの内側に存在する(周囲大気圧に対する)加圧と、これとは逆に、遠位構成の場合にのみシステムの内側に存在する(周囲大気圧に対する)減圧と、が望ましくないシステムの開放のリスクとはならない利点がある。これは、注入または吸引のみが試みられ、その反対を阻止する必要がある場合に都合が良いと考えられる。
【0014】
いくつかの実施形態において、アクチュエータ装置は、キャビティの遠位端に配置され、キャビティの遠位壁を構成する可撓性の遠位膜と、キャビティの近位端に配置され、キャビティの近位壁を構成する可撓性の近位膜と、を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、ロッドは、キャビティが当該キャビティの外側に対して加圧された場合に、遠位膜によって遠位方向の力が当該ロッドに及ぼされて、ニードルシステムが開放状態となるように、遠位膜と相互作用するように構成されるとともに、キャビティが当該キャビティの外側に対して減圧された場合に、近位膜によって遠位方向の力が当該ロッドに及ぼされて、ニードルシステムが開放状態となるように、近位膜と相互作用するように構成されていてもよい。
【0015】
言い換えると、このようなニードルシステムの実施形態は、撓むことによってキャビティの容積を増大および減少させる結果、ロッドを遠位方向に押してニードルシステムを開放状態とすることにより、システムと整合する流体搬送装置からの流体の移動および流体搬送装置への流体の移動を可能にする遠位膜および近位膜を有するアクチュエータ装置を含む。
【0016】
種々実施形態において、アクチュエータ装置は、アクチュエータ本体の内側に配置され、近位方向の力をロッドに与えることにより、ニードルシステムを閉塞状態において付勢するように配置されたばねを備えていてもよい。
【0017】
ロッドを近位方向に付勢することにより、ロッドの先端部がニードル開口に対してしっかりと保持される。このような構成によって、ニードルの挿入および後退時に、ニードル開口とロッドの先端部との間に隙間が生じることを防止する。その結果、挿入および後退時に、たとえば細菌のニードル上の不要な堆積が最小限に抑えられる。
【0018】
ばねという用語は広く解釈されるべきであり、ばね力を与え得る任意の装置(たとえば、射出成形されたプラスチック細部)を含むことに留意するとともに、本開示がコイルばねによってばねを例示する一方、対応するばね力を与えるその他任意の装置が使用され得ることが了解されるものとする。
【0019】
さらに、このような構成によれば、ばね力と膜の特性との間の関係の変更、調整、および最適化が可能となる。このため、従来のニードルのユーザが経験する触感を非常に高い精度で再現することができる。このようなユーザが経験する触感は、注入または吸引流体が受ける抵抗を表しており、言うまでもなく、生体組織における注入および吸引の両者について、損傷を回避するための非常に重要あるいは極めて重要な態様を表す。
【0020】
さらに、ロッドを近位方向に付勢することにより、注入または吸引の実行に際してニードルシステムが作動していない場合には、ロッドが自動的に閉じるため、この安全なシステムがユーザに依存しなくなるほか、組織内の移動時にニードルの意図せぬ開放を阻止する。
【0021】
さらに、注入時には先端部の周囲が(周囲大気圧に対して)常に加圧され、この事実とロッドが付勢されている事実とが組み合わさって、流体輸送装置からの過圧の減少に伴ってニードルシステムが徐々に閉じる結果、先端部とニードル開口との間の隙間に組織が挟まるリスクが最小化または少なくとも減少し、先端部がニードル開口に接するようにニードルシステムを完全に閉鎖することが可能になる。これにより、注入後も抗菌性を保ち、同じ患者への複数回の注入(たとえば、前立腺生検に先立つ前立腺周りの局所麻酔の注入)にも安全なニードルシステムが実現される。
【0022】
たとえば後方を向いた内部中心コーンによってニードルとシースとの嵌合を最適化すると、閉鎖時に先端がシースの中心にガイドされる。ニードル先端およびシースに対して同じ外径を使用すると、隙間も縁部もない滑らかな外面が実現される。ニードル先端の付勢、最適な嵌合、および滑らかな外面を組み合わせることにより、1回使用および複数回使用の両者において、細菌の堆積の確率が低いニードルが実現される。この効果は、たとえば表面および/または被膜の研磨によってさらに増大され得る。
【0023】
アクチュエータ装置の内側のキャビティは、遠位方向および近位方向に垂直な方向における当該キャビティの近位端の第1の直径、遠位方向および近位方向に垂直な方向における当該キャビティの遠位端の第2の直径、ならびに当該キャビティの遠位端と近位端との間の位置において、遠位方向および近位方向に垂直な方向における当該キャビティの第3の直径であり、第1の直径および第2の直径よりも小さい、第3の直径として規定された空間的範囲を有していてもよい。
【0024】
このようなキャビティの構成は、キャビティの容積を最小限に抑えるため、注入および/または吸引後にキャビティに残る流体の体積を最小限に抑える。これは、たとえば正確な体積の流体を投与可能となる点で都合が良く、注入用の多くの流体が非常に高価であるという事実から、コストの点でも都合が良い。また、吸引後に残る流体を最小限に抑えることによって、吸引された流体をより多く分析に使用可能となり、たとえば人からの吸引に必要な流体の量を最小限に抑えられる。
【0025】
いくつかの実施形態において、このニードルシステムにおいては、可撓性のベローズがアクチュエータ本体の内部に配置されてキャビティを形成する。このようなベローズは、遠位ベローズ壁および近位ベローズ壁を備えていてもよい。ロッドが取り付けられたロッドキャリアの一部がキャビティの内部に配置されていてもよく、ロッドは、注入および吸引の両者において遠位方向に押されることにより、ニードルシステムが開放状態となるように、ロッドキャリアを介して、ベローズの遠位壁および近位壁と相互作用するように構成されていてもよい。
【0026】
このような実施形態は、構成要素の数が少ない点のほか、組み立てが簡単で製造および組み立てのコストの観点で効率的である点の両者において、簡素であるため都合が良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1a】
図1aは、ニードルシステムを模式的に示した図である。
【
図1b】
図1bは、閉塞状態のニードルシステムを模式的に示した図である。
【
図1c】
図1cは、開放状態のニードルシステムを模式的に示した図である。
【
図2a】
図2aは、2つの膜を有するニードルシステムを模式的に示した図である。
【
図2b】
図2bは、2つの膜を有するニードルシステムを模式的に示した図である。
【
図3】ニードルシステムのキャビティ寸法を模式的に示した図である。
【
図4】1つの膜を有するニードルシステムを模式的に示した図である。
【
図5a】2つの膜を有するニードルシステムを模式的に示した図である。
【
図5b】2つの膜を有するニードルシステムを模式的に示した図である。
【
図5c】2つの膜を有するニードルシステムを模式的に示した図である。
【
図6a】
図6aは、ニードルシステムを模式的に示した側面図である。
【
図6b】
図6bは、
図6aのニードルシステムを模式的に示した断面図である。
【
図6c】
図6cは、
図6aおよび
図6bのニードルシステムのロッドキャリアを模式的に示した斜視図である。
【
図6d】
図6dは、
図6aおよび
図6bのニードルシステムを模式的に示した断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1aは、ニードル構成20およびアクチュエータ装置30を備えたニードルシステム10を模式的に示している。ニードル構成20は、ニードル21およびロッド24を備える。ニードル21は、近位端211および遠位端212を有し、遠位端212にニードル開口203を有する。
【0029】
ロッド24は、近位端221および遠位端222を有するとともに、ニードル21の長さよりも大きな長さを有する。ロッド24は、ニードル21の内側に嵌合するように構成された細長ロッド軸部26と、当該ロッド24の遠位端222に位置付けられたロッド先端部23と、を備える。
【0030】
アクチュエータ装置30は、キャビティ33を備えたアクチュエータ本体39と、流体搬送装置70と整合して、流体のキャビティ33に対する流入および/または流出を可能にすることにより、ニードル21を通じた流体の注入および/または吸引を可能にするように構成された第1の開口61と、を備える。流体搬送装置の概念は、広く解釈され、吸引および/または注入を実行可能な任意の装置(任意の種類の注射器、チューブ、または容器等)を含む。
【0031】
ニードルシステム10は、閉塞状態および開放状態を有する。
図1bに示すように、閉塞状態においては、ロッド先端部23がニードル開口203を封止または封鎖する。
図1cに示すように、開放状態においては、ロッド先端部23がニードル21に対して前方にシフトされ、ニードル開口203を封止解除または封鎖解除する。ニードル21の近位端211は、アクチュエータ本体39に接続されるとともに、キャビティ33に対して開放されている。ロッド24は、キャビティ33の容積の変化時に、遠位方向の力が当該ロッド24に及ぼされて、ニードルシステム10が開放状態となるように、アクチュエータ装置30と相互作用するように構成されている。
【0032】
たとえば、ニードルシステム10を開放状態にするため、ロッド24は、キャビティ33の遠位壁37と相互作用するように構成されていてもよい。これの追加または代替として、ニードルシステム10を開放状態にするため、ロッド24は、キャビティ33の近位壁38と相互作用するように構成されていてもよい。
【0033】
ここで
図2aおよび
図2bを参照して、注入および吸引の両者が可能なニードルシステム210をもう少し詳しく説明する。ニードルシステム210は、流体搬送装置用の第1の開口261を有する本体239を備えたアクチュエータ装置230を備える。アクチュエータ装置230は、キャビティ233の遠位端に配置され、キャビティ233の遠位壁を構成する可撓性の遠位膜231をさらに備える。また、キャビティ233の近位端に可撓性の近位膜232が配置され、キャビティ233の近位壁を構成する。ロッド224は、キャビティ233が当該キャビティ233の外側に対して加圧された場合すなわち注入手順において、遠位膜231により遠位方向の力が当該ロッド224に及ぼされ、ニードルシステム210が開放状態となって注入が開始されるように、遠位膜231と相互作用するように構成されている。さらに、ロッド224は、キャビティ233が当該キャビティ233の外側に対して減圧された場合すなわち吸引手順において、近位膜232により遠位方向の力が当該ロッド224に及ぼされ、ニードルシステム210が開放状態となって吸引が開始されるように、近位膜232と相互作用するように構成されている。
【0034】
図示のように、アクチュエータ装置230は、遠位膜231に取り付けられた遠位力伝達ユニット251と、近位膜232に取り付けられた近位力伝達ユニット252と、を備えていてもよい。力伝達ユニット251、252の機能は、膜231、232の動きをロッド224に伝達することである。遠位力伝達ユニット251は、当該遠位力伝達ユニット251に関して遠位の位置でロッド224に固定された第1の突起241に対して解除可能に連結するように構成されている。近位力伝達ユニット252は、当該近位力伝達ユニット252に関して遠位の位置でロッド224に固定された第2の突起242に対して解除可能に連結するように構成されている。力伝達ユニット251、252は、ロッド224が各力伝達ユニット251、252の孔を通って自由に延びる点において、ロッド224に対して解除可能に接続されている。ただし、力伝達ユニット251、252が突起241、242を介してロッド224に作用すると同時に、ロッド224に対して自由に移動できるようにする他の構成も考えられる。
【0035】
このような構成において、第1の突起241は、第2の突起242に関して遠位にある。遠位力伝達ユニット251および近位力伝達ユニット252は、遠位膜231および近位膜232と固定されていても都合が良いし、それぞれの一体部として構成されていても都合が良い。
【0036】
さらに、図示のように、遠位力伝達ユニット251は、キャビティ233の内側かつ遠位膜231に関して近位で遠位膜231に取り付けられ、第1の突起241を介してロッド224に加わる力を遠位方向に伝達するように構成されていてもよい。このような構成のため、近位力伝達ユニット252は、キャビティ233の内側かつ近位膜232に関して遠位で近位膜232に取り付けられ、第2の突起242を介してロッド224に加わる力を遠位方向に伝達するように構成されている。このような構成において、第1の突起241は、第2の突起242に関して遠位にある。
【0037】
アクチュエータ本体239の内側で遠位膜231の遠位かつキャビティ233の外側に第1の中空271が構成されていてもよい。第1の中空271は、キャビティ233が加圧された場合に遠位膜231の遠位方向の撓みを可能にするように構成されている。そして、本体239の第2の開口262が環境気圧を第1の中空271に送達するように構成されている。本体239の第3の開口263が環境気圧をキャビティ233の外側の近位膜232の近位側に送達するように構成され、吸引時に近位膜232の遠位方向の撓みを可能にするように構成されていてもよい。
【0038】
図3は、寸法に関するキャビティ233の構成の様子を模式的に示している。すなわち、アクチュエータ装置230の内側のキャビティ233は、遠位方向および近位方向に垂直な方向における当該キャビティ233の近位端の第1の直径D1として規定された空間的範囲を有していてもよい。キャビティ233は、遠位端において、遠位方向および近位方向に垂直な方向の第2の直径D2を有するとともに、当該キャビティ233の遠位端と近位端との間の位置において、遠位方向および近位方向に垂直な方向における当該キャビティ233の第3の直径D3であり、第1の直径D1および第2の直径D2よりも小さい、第3の直径D3を有する。このような構成は、キャビティ233の容積を最小限に抑えるため、注入および/または吸引後にキャビティ233に残る流体の体積を最小限に抑えることができる。
【0039】
図4は、注入のみ可能なニードルシステム410の別の構成を示している。ニードルシステム410は、ニードル421およびアクチュエータ装置430を備える。キャビティ433の遠位端に可撓性の遠位膜431が配置され、キャビティ433の遠位壁を構成する。ロッド424は、キャビティ433が当該キャビティ433の外側に対して加圧された場合に、遠位膜431によって遠位方向の力が当該ロッド424に及ぼされて、ニードルシステム410が開放状態となるように、遠位膜431と相互作用するように構成されている。
【0040】
図示のように、アクチュエータ装置430は、遠位膜431に取り付けられた遠位力伝達ユニット451を備えていてもよい。遠位力伝達ユニット451は、遠位膜431と固定されるか、または、遠位膜431の一体部として構成され、ロッド424に固定されるとともに、膜431の動きをロッド424に伝達する機能を有するのが好都合である。
【0041】
アクチュエータ本体439の内側で遠位膜431の遠位かつキャビティ433の外側に、開口472を介して外気圧に開放された第1の中空471が構成されていてもよい。第1の中空471は、キャビティ433が加圧された場合に遠位膜431の遠位方向の撓みを可能にするように構成されている。
【0042】
図示はしていないものの、吸引のみ可能なニードルシステムの構成には、ニードルシステム410の特徴に対応する特徴を含むが、キャビティ433の近位端に配置され、キャビティ433の近位壁を構成する近位膜を備えるという事実のみが異なる。このような構成において、ロッド424は、キャビティ433が当該キャビティ433の外側に対して減圧された場合に、近位膜によって遠位方向の力が当該ロッド424に及ぼされて、ニードルシステム410が開放状態となるように、近位膜と相互作用するように構成されている。
【0043】
図5aは、注入および吸引の両者が可能なニードルシステム510の別の構成を示している。ニードルシステム510は、ニードル521と、流体搬送装置用の第1の開口561を有する本体539を備えたアクチュエータ装置530と、を備える。キャビティ533の遠位端に可撓性の遠位膜531が配置され、キャビティ533の遠位壁を構成する。また、キャビティ533の近位端に可撓性の近位膜532が配置され、キャビティ533の近位壁を構成する。ロッド524は、キャビティ533が当該キャビティ533の外側に対して加圧された場合すなわち注入手順において、遠位膜531により遠位方向の力が当該ロッド524に及ぼされ、ニードルシステム510が開放状態となってニードル521を介した注入が開始されるように、遠位膜531と相互作用するように構成されている。さらに、ロッド524は、キャビティ533が当該キャビティ533の外側に対して減圧された場合すなわち吸引手順において、近位膜532により遠位方向の力が当該ロッド524に及ぼされ、ニードルシステム510が開放状態となってニードル521を介した吸引が開始されるように、近位膜532と相互作用するように構成されている。
【0044】
上記例示の通り、キャビティ533の加圧および減圧は、流体搬送装置と整合するように構成された本体539の第1の開口561を介して生じる。チャネル580がキャビティ533への流体の送入およびキャビティ533からの流体の送出を行うほか、ニードル521への流体の送入およびニードル521からの流体の送出も行う。言い換えると、チャネル580は、「並行」の意味において、流体をニードル521およびキャビティ533の両者へと送入するように構成されている。キャビティ533は、膜531、532が近位方向および遠位方向へと撓み得るようにしつつ、最小限の容積を有するように構成されていてもよい。このような構成は、チャネル580の容積が最小化されるような構成と併せて、注入および/または吸引後にキャビティ533およびチャネル580に残る流体の体積を最小限に抑える。
【0045】
図示のように、アクチュエータ装置530は、遠位膜531に取り付けられた遠位力伝達ユニット551と、近位膜532に取り付けられた近位力伝達ユニット552と、を備えていてもよい。遠位力伝達ユニット551および近位力伝達ユニット552は、遠位膜531および近位膜532それぞれの一体部として構成され、
図2a~
図2cおよび
図4に関して上述した構成と同様に、膜531、532の動きをロッド524に伝達する機能を有するのが好都合である。
【0046】
アクチュエータ本体539の内側で遠位膜531の遠位かつキャビティ533の外側に第1の中空571が構成されていてもよい。第1の中空571は、キャビティ533が加圧された場合に遠位膜531の遠位方向の撓みを可能にするように構成されている。そして、第2の開口562が環境気圧を第1の中空571に送達するように構成されている。第3の開口563が環境気圧をキャビティ533の外側の近位膜532の近位側に送達するように構成され、吸引時に近位膜532の遠位方向の撓みを可能にするように構成されていてもよい。
【0047】
図5bは、注入および吸引の両者が可能なニードルシステム510のさらに別の構成を示している。
図5bのニードルシステム510は、流体が第1の開口561からニードル521に送達される点において、
図5aのニードルシステム510に類似する。チャネル580は、第1の開口561から延び、キャビティ533内の第1の点で終端する。また、第2のチャネル581がキャビティ533の第2の点からニードル521まで延びている。言い換えると、チャネル580および第2のチャネル581は、「順次」の意味において、キャビティ533を介して流体をニードル521に送入するように構成されている。このような構成の利点として、チャネル580、581を介して注入または吸引される流体に空気が入るリスクが小さくなる。
【0048】
図5cは、注入および吸引の両者が可能なニードルシステム510のさらに別の構成を示している。
図5cのニードルシステム510は、流体が第1の開口561からニードル521に送達される点において、
図5aのニードルシステム510に類似する。チャネル580は、第1の開口561から延び、ニードル521で終端する。チャネル580の一部582が可撓性の「膜状」壁で構成され、キャビティ533の一部がチャネル580の可撓性部582の周りに延びている。注入および吸引時、チャネル580の可撓性部582はそれぞれ、膨張および収縮することにより、本明細書に規定のキャビティ533の容積を変化させることになる(なお、容積変化の膜531、532への送達を促進するため、キャビティ533には、液体等の非圧縮性媒体が充填されているのが好ましい)。言い換えると、可撓性部582を含むチャネル580は、「直接」の意味において、キャビティ533を介して流体をニードル521に送入するように構成されている。このような構成によれば、流体を流した場合に、第1の開口561とニードル521との間の途中で流体と空気とが接触することはないという事実から、チャネル580を介して注入または吸引される流体に空気が入るリスクがさらに小さく、あるいは最小限に抑えられる。
【0049】
図2a~
図2c、
図4、および
図5に示すように、ニードルシステム210、410、510のアクチュエータ装置230、430、530は、アクチュエータ本体239、439、539の内側に配置され、近位方向の力をロッド224、424、524に与えることにより、ニードルシステム210、410、510を閉塞状態において付勢するように配置されたばね255、455、555を備えていてもよい。
図2a~
図2c、
図4、および
図5に示すように、ばね255、455、555は、本体239、439の内面に対して遠位方向に配置されるか、または、本体539自体の一部を形成する。ばね255、455、555は、近位端において、遠位力伝達ユニット251、451、551に接することにより、近位方向の付勢力を与える。このような構成の効果として、ロッド224、424、524の先端部23がニードル開口203に対してしっかりと保持される。このような構成によって、ニードル221、421、521の挿入および後退時に、ニードル開口203とロッド224、424、524の先端部23との間に隙間が生じることを防止する。
【0050】
このようなばね255、455、555は広く解釈されるべきであり、ばね力またはばね力に類似する力を与え得る任意の装置(たとえば、射出成形されたプラスチック細部)を含むことに留意するとともに、本開示がコイルばねによってばねを例示する一方、対応する力を与えるその他任意の装置が使用され得ることが了解されるものとする。
【0051】
図6a~
図6dは、注入および吸引の両者が可能なニードルシステム610のさらに別の構成を示している。上述のニードルシステムと同様に、ニードルシステム610は、ニードル構成620およびアクチュエータ装置630を備える。ニードル構成620は、近位端611および遠位端612を有し、遠位端612にニードル開口603を有するニードル621を備える。ロッド6624は、近位端625および遠位端622を有するとともに、ニードル621の長さよりも大きな長さを有する。ロッド624は、ニードル621の内側に嵌合するように構成された細長ロッド軸部626と、当該ロッド624の遠位端622に位置付けられたロッド先端部623と、を備える。
【0052】
アクチュエータ装置630は、キャビティ633を備えたアクチュエータ本体639を備える。アクチュエータ本体639の第1の開口661は、流体搬送装置(
図6a~
図6dには示さず)と整合して、流体のキャビティ633に対する流入および/または流出を可能にすることにより、ニードル621を通じた流体の注入および/または吸引を可能にするように構成されている。
【0053】
上述のシステムに関して、ニードルシステム610は、閉塞状態および開放状態を有し、閉塞状態においては、ロッド先端部623がニードル開口603を封止または封鎖し、開放状態においては、ロッド先端部623がニードル621に対して前方にシフトされ、ニードル開口603を封止解除または封鎖解除する。
【0054】
ニードル621の近位端611は、アクチュエータ本体639に接続されるとともに、キャビティ633に対して開放されている。ロッド624は、キャビティ633の容積の変化時に、遠位方向の力が当該ロッド624に及ぼされて、ニードルシステム610が開放状態となるように、アクチュエータ装置630と相互作用するように構成されている。
【0055】
より詳細には、アクチュエータ本体639の内部に配置された可撓性のベローズ680に、キャビティ633を構成する中空の中間部が構成されている。ベローズ680の遠位部が可撓性の遠位ベローズ壁681を形成し、ベローズ680の近位部が可撓性の近位ベローズ壁682を形成する。遠位ベローズ壁681の開口683が第1の開口661に対して開放され、近位ベローズ壁682の開口684がニードル621に対して開放されている。遠位ベローズ壁681および近位ベローズ壁682の周方向縁部間には、たとえば環状チューブの形態の剛性距離装置695が配置されている。このような構成は、遠位ベローズ壁681および近位ベローズ壁682の周方向縁部の遠位方向および近位方向の動きを防止する。このような動きを防止する他の手段として、アクチュエータ本体639の内壁に周方向縁部を直接取り付けることがある。
【0056】
ロッド624は、ベローズ680の内側のキャビティ633内に一部が配置されたロッドキャリア690に固定されている。ロッドキャリア690は、遠位端691および近位端692を備える。ロッドキャリア690の遠位端691は、遠位ベローズ壁681に関して遠位に配置されたフランジ694を備えた形状である。ロッドキャリア690の近位端692は、近位ベローズ壁682に関して遠位に配置されている。ロッドキャリア690には、ニードル621と第1の開口661との間で注入および吸引時にベローズ680を介して送達される流体の流れの阻止を回避する溝693が配置されている。
【0057】
上述の例と同様に、アクチュエータ本体639の内側に配置されたばね655は、近位方向の力をロッド624に与えることにより、ニードルシステム610を閉塞状態において付勢するように配置されている。
図6bおよび
図6dに示すように、ばね655は、本体639の内面に対して遠位方向に配置されるか、または、本体639自体の一部を形成していてもよい。ばね655は、近位端において、ロッドキャリア690の遠位端693に接することにより、近位方向の付勢力を与える。このような構成の効果として、ロッド624の先端部623がニードル開口603に対してしっかりと保持される。
【0058】
注入シナリオにおいては、特定の圧力下で第1の開口661および近位ベローズ壁682の開口684を介して、たとえば注射器からベローズ680に流体が導入される。ベローズ680のキャビティ633を充填している間に、流体からの圧力が近位ベローズ壁682に遠位方向の力を与える。たとえば
図6a、
図6b、および
図6cに例示する通り、アクチュエータ本体639の孔640を介して、ベローズ680の外側が大気圧に対して開放されており、その結果、流体の導入によって、近位ベローズ壁682が遠位方向に撓むことになる。近位ベローズ壁682の遠位方向の撓みがロッドキャリア690の近位端692に力を与えると、ロッド624が遠位方向に押されることにより、ニードルシステム610が開放状態となって、キャビティ633の内側の流体がニードル開口603を通って流出し得る。
【0059】
吸引シナリオにおいては、たとえば注射器により第1の開口661および近位ベローズ壁682の開口684を介して、ベローズ680の内側すなわちキャビティ633の内側に相対的な減圧が実現される。たとえば
図6a、
図6b、および
図6cに例示する通り、アクチュエータ本体639の孔640を介して、ベローズ680の外側が大気圧に対して開放されているという事実から、ベローズ680の内側の減圧の結果として、ベローズ680が遠位方向および近位方向に膨張することになる。このベローズ680の膨張の結果として、遠位ベローズ壁681が遠位方向に撓むことになる(そして、近位ベローズ壁682が近位方向に撓むことになる)。
図6bおよび
図6dに示すように、この遠位ベローズ壁681の遠位方向の撓みは、上述の例と同様に、遠位ベローズ壁681とアクチュエータ本体639との間に形成された中空671によって可能とされる(近位ベローズ壁682の近位方向の撓みは、近位ベローズ壁682とアクチュエータ本体639との間に形成された中空672によって可能とされる)。遠位ベローズ壁681の遠位方向の撓みの結果として、ロッドキャリア690の遠位端691のフランジ694(このフランジ694は、遠位ベローズ壁681の開口683よりも広い)が遠位ベローズ壁681によって遠位方向に押されることにより、ニードルシステム610が開放状態となる。そして、キャビティ633の内側の減圧により、流体がニードル開口603を通って、ニードル624およびキャビティ633を介して吸引され、第1の開口661を通じて、たとえば注射器に流入し得る。
【0060】
図6dにおいては、ロッドキャリア690に溝が存在しないものの、ニードル621と第1の開口661との間での注入および吸引時のベローズ680を介した流体の送達を可能にする切り欠き696が近位端に構成されていることに留意されたい。
【国際調査報告】