IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アドバンスド ウェッティング テクノロジーズ ピーティーワイ エルティーディーの特許一覧

<>
  • 特表-新規な湿潤組成物 図1
  • 特表-新規な湿潤組成物 図2
  • 特表-新規な湿潤組成物 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】新規な湿潤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/38 20220101AFI20230119BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230119BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C09K23/38
C09K3/00 N
C08L101/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525954
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 AU2020051203
(87)【国際公開番号】W WO2021087562
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】2019904180
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520435670
【氏名又は名称】アドバンスド ウェッティング テクノロジーズ ピーティーワイ エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED WETTING TECHNOLOGIES PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ロバーツ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CC181
4J002EC028
4J002EC067
4J002EH156
4J002FD207
4J002FD208
4J002FD316
4J002GA00
(57)【要約】
本発明は、非水性液体の表面張力を低下させるときの、(a) 20~50wt%未満の1種以上のC10~C14アルコールと、(b) 非イオン性、カチオン性、アニオン性及び両性界面活性剤から選択される25~70wt%の界面活性剤と、(c) (i) 水及び(ii) 最大25wt%の水混和性C1~C3有機溶媒から選択される少なくとも1種を含む5~50wt%の極性成分とを含む、湿潤組成物の使用と、湿潤組成物を使用するための方法と、湿潤組成物を含有する製品及び非水性組成物とに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 20~50wt%未満の1種以上のC10~C14アルコールと;
(b) 非イオン性、カチオン性、アニオン性及び両性界面活性剤から選択される25~70wt%の1種以上の界面活性剤と;
(c) (i) 水及び(ii) 最大25wt%の水混和性C1~C3有機溶媒から選択される少なくとも1種を含む5~50wt%の極性成分と
を含む湿潤組成物を、非水性液体に加えるステップを含む、非水性液体の表面張力を低下させる方法。
【請求項2】
(a) 20~50wt%未満の1種以上のC10~C14アルコールと;
(b) 非イオン性、カチオン性、アニオン性及び両性界面活性剤から選択される25~70wt%の1種以上の界面活性剤と;
(c) (i) 水及び(ii) 最大25wt%の水混和性C1~C3有機溶媒から選択される少なくとも1種を含む5~50wt%の極性成分と
を含む湿潤組成物を、非水性液体に加えるステップと;
低エネルギー表面を、湿潤組成物を含む非水性液体と接触させるステップと
を含む、表面エネルギーが相対的に高い非水性液体によって低エネルギー表面を濡らす方法。
【請求項3】
湿潤組成物が、最大45wt%の1種以上のC10~C14アルコールを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
湿潤組成物が、C12アルコール及びC14アルコールを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
C14アルコールに対するC12アルコールの相対的比率が、50:50~90:10の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
界面活性剤が、アルコールアルコキシレートである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
極性成分が、10wt%の水を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
極性成分が、水混和性C1~C3アルコールを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
水混和性C1~C3アルコールが、エタノールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
湿潤組成物が、0~25wt%の1種以上の添加剤を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
非水性液体が、非水性物質を主体とする樹脂である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項2に記載の方法によって非水性液体状組成物によってコーティングされ、又は非水性液体状組成物を含浸させた低エネルギー表面を有する、製品。
【請求項13】
非水性液体、並びに、
(a) 20~50wt%未満の1種以上のC10~C14アルコールと;
(b) 非イオン性、カチオン性、アニオン性及び両性界面活性剤から選択される25~70wt%の1種以上の界面活性剤と;
(c) (i) 水及び(ii) 最大25wt%の水混和性C1~C3有機溶媒から選択される少なくとも1種を含む5~50wt%の極性成分と
を含む湿潤組成物を含む、液体状組成物。
【請求項14】
非水性樹脂、並びに、
(a) 20~50wt%未満の1種以上のC10~C14アルコールと;
(b) 非イオン性、カチオン性、アニオン性及び両性界面活性剤から選択される25~70wt%の1種以上の界面活性剤と;
(c) (i) 水及び(ii) 最大25wt%の水混和性C1~C3有機溶媒から選択される少なくとも1種を含む5~50wt%の極性成分と
を含む湿潤組成物を含む、樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低エネルギー表面の濡れに関する。特に、本発明は、非水性液体状組成物の表面張力を低下させることができる、湿潤組成物に関する。本発明は、表面張力が低下した非水性液体状組成物と、湿潤組成物を含有する非水性組成物の使用によって、低エネルギー表面の濡れ性を改善するための方法とにも関する。
【背景技術】
【0002】
表面張力は、空気等の気体と接触している液体の一特性である。液体の表面張力は、液体中の分子が互いに引き合う傾向によって左右され、液体分子どうしの分子間凝集相互作用の強さを反映する。表面張力が高い液体では、液体中の分子どうしの分子間相互作用を促進する凝集力は、液体分子と空気との相互作用を促進する接着力より強い。分子間凝集相互作用を断ち切り、表面張力が低い液体との比較で表面張力が高い液体の表面積を増大させるためには、さらなる仕事が必要になる。
【0003】
濡れは、液体と基材(固体又は別の液体)との相互作用と、それに続く、基材上での液体の広がりによって決まる現象である。ある液体の湿潤能力は、濡らすべき表面の表面上に表面形態の問題(例えば、非常に小さなスクラッチ)があることにより、毛管力が液体の広がりに影響を与える場合のようないかなる推進力もなしで、特定の表面上に液体が広がることができる能力を反映する。しかしながら、毛管力もまた、液体の表面張力によって左右される。
【0004】
ある液体が固体基材の表面を濡らすことができる能力は、液体と固体との界面エネルギーによって測定される。界面エネルギーは、液体の表面張力と、固体の表面エネルギーとの差によって定義される。この界面エネルギーの値が小さくなるほど、液体が固体上に広がることができる能力が高まる。液体の表面張力が高く、固体の表面エネルギーが低い場合、液体と固体の表面との界面エネルギーが大きく、したがって、濡れは起きない。このような状況下では、液体は、基材を濡らさないものであると評される。しかしながら、液体の表面張力を低下させ、及び/又は固体の表面エネルギーを増大させた場合、液体と固体の表面との界面エネルギーが低下し、これにより、濡れを起こすことができる。
【0005】
水は、20℃で約72mN/mの表面張力を有する。水を含む水性液体は表面張力が相対的に高く、界面エネルギーが高いため、エネルギーが低い表面は、このような水性液体によって容易には濡らされない。したがって、このような低エネルギー表面は、疎水性であると言うことができる。何らかの理由で水性液体を表面上に広がることが望ましい場合、低エネルギー表面の水濡れ性が不十分であると、問題が発生する可能性がある。同様の問題は、接触させて濡らすべき表面のエネルギーより高いエネルギーを有する非水性液体の場合にも起きる可能性がある。
【0006】
実際として、大部分の製造プロセス及び農業では、固体の表面エネルギーを増大させることは、非常に困難である。この結果、ほとんどの場合においては、固体上での液体の広がりを向上させるために液体の表面張力を低下させる必要がある。
【0007】
例として、農業界においては、農業用組成物を植物相に施用して、液体状又は粒子状の除草剤、殺真菌剤、殺有害生物剤又は肥料等の活性化合物を送達する。一般的に、活性化合物は、葉面散布物として水性液体系に取り込まれた状態で送達される。しかしながら、葉、芽及び茎等の植物の構成要素は、本質的に疎水性である。このことは、活性化合物が葉面散布の目標表面に到達して表面を被覆しても、単に表土に流れ落ちてしまい、施用効果が完全なものではなくなることを確実に防ぐために、葉面散布の目標表面の濡れ性を制御しなければならないことを意味する。
【0008】
さらに、インク等の染料は、紙又はテキスタイル等の上に広がることが望ましい。ナイロン及びポリエステル等の合成繊維製のテキスタイルを染色する場合、染料が繊維上を均一に被覆するようにするためには、繊維の表面を網羅的に濡らすことが好ましい。合成繊維の表面を本質的に疎水性に変えるフルオロアクリレート樹脂によって処理された合成繊維を染色する場合、染浴の湿潤能力が特に重要である。
【0009】
さらに、粒子が本質的に疎水性である場合、及び/又は粒子間の空隙が基材への液体の浸透を妨げる場合、水性液体による粒子の濡れに問題が発生する。例えば、ラミネートパーティクルボードの業界においては、個々の木材粒子フレークは、水性樹脂によってコーティングされている。この水性樹脂は、適切な条件下に置かれるとキュア及び硬化することが可能であり、これにより、水性樹脂は、粒子にとっての接着剤として機能することができる。しかしながら、乾燥した粒子フレークの表面自由エネルギーが非常に低く、すなわち、乾燥した粒子が、濡れが不十分な表面であることと、樹脂混合物が相対的に高い表面張力を有することとが理由になり、乾燥した粒子フレークと樹脂混合物との界面エネルギーは高い。この結果、フレーク表面上での樹脂の移動及び広がりが妨害される。大きなフレークが効果的に樹脂処理されていない場合、その結果として得られる木材粒子フレークから形成されたパネルの完全性に影響を与えることになる、脆弱な区域が生じる可能性がある。同様の要因は、エネルギーが相対的に高い非水性液体によって粒子又は繊維を効果的に樹脂化しようと試みる場合にも当てはまる。
【0010】
接触角(θ)は、一般的に、基材の濡れを定量化するために使用される。接触角は、三相接触線において液体(L)/蒸気(V)界面が固体(S)表面との間になす接線である。接触角は、液体及び固体表面の特性、並びに、液体と固体表面との相互作用及び分子間力のバランス(すなわち、凝集力及び接着力)によって決まる。液滴が表面に置かれているとき、液体の接触角は、0°~180°の範囲である。0°の接触角は、完全な濡れを表しており、液体は、基材の表面を覆うように薄膜を形成する。これに対して、90°超の接触角は、濡れがない状況を表すが、0°<θ<90°の接触角が観察された場合、部分的な濡れが起きている。したがって、接触角は、特定の液体によって特定の固定を濡らすプロセスの測定値である。しかしながら、固体の表面エネルギーにかかわらず、液体の表面張力を低下させることができれば、液体がより効果的に広がる。
【0011】
液体による固体の濡れの改善は、液体への界面活性剤の添加によって達成することができる。界面活性剤には種々様々なクラスがあり、多種多様な産業で幅広く使用されている。一般に、界面活性剤は、親水性頭部基及び疎水性尾部を有する、両親媒性化合物である。界面活性剤は、液体と、表面と、空気との三相界面に移動し、三相界面に吸着して、濡れ性及び液体の広がりを改善することができる。しかしながら、界面活性剤が三相界面に吸着すると、バルク液体中の界面活性剤の濃度が低下し、これにより、液体の表面張力が増大し、濡れは、より多くの界面活性剤分子が三相界面に移動するまでは、緩やかになる。これは、スティックスリップ現象として知られている。スティックスリップ現象は、界面活性剤濃度が臨界ミセル濃度(CMC)に到達したらすぐにミセルが液体中に形成されることとも相まって、数多くの界面活性剤の湿潤性能を制限している。これらのミセルは、三相界面に移動し、三相界面で有効な状態になることができる界面活性剤の濃度を維持するように分解されなければならない。
【0012】
有機シリコーンは、薬物及びパーソナルケア製品並びに農薬組成物中に使用される、有力なクラスの界面活性剤である。市販の有機シリコーン界面活性剤の一例は、Silwet L-77(商標)であり、これは、トリロキサンエトキシレートである。他の商用有機シリコーン界面活性剤には、Silwet 408(商標)及びSilwet HS312(商標)が挙げられる。有機シリコーン界面活性剤は、20~26mN/mの表面張力(Kovalchukら、Advances in Colloid and Interface Science、第210巻、2014年8月、65~71頁)、及び、疎水性尾部基の緻密なシロキサン骨格によるものと考えられる、非常に良好な界面活性剤の広がり性(spreadability)を示すことが報告されている。しかしながら、有機シリコーン界面活性剤は効果的ではあるが、これらの化合物は、ハチを含む昆虫個体群にとっては内分泌かく乱物質として作用し得ると考えられている。さらに、有機シリコーンのエトキシレート部分は容易に生分解され得るが、シロキサン部分は、環境湿度及び環境温度に応じて年率2~8%の速度で、時間をかけてゆっくり加水分解する。この結果、これらの界面活性剤の総合的な生分解性は、低いものであると考えられる。有機シリコーン界面活性剤の分解生成物は、土壌を疎水性に変えることもあり得るが、これは、農業用途に関しては望ましくないことである。
【0013】
フッ素系界面活性剤は、非常に効果的な別のクラスの界面活性剤であり、親水性頭部基及び疎水性フルオロ炭素尾部を有する、合成化合物である。これらの界面活性剤は、15~20mN/mの最小限の表面張力を有する水性液体を生成することが可能であり、この水性液体は、塗料及びコーティング、接着剤、清浄剤、防曇剤及び静電防止剤並びに泡状消火剤(fire-fighting foam)中に使用することができる。しかしながら、フッ素系界面活性剤の欠点は、フッ素系界面活性剤が、環境中に残留する可能性及び生物濃縮性を有する可能性がある、有毒性が高い分解生成物を生成し得ることである。例えば、一部の消防士訓練場の地下水は、訓練場が最後に使用されてから10年超が経過した後でもフッ素系界面活性剤によって汚染された状態のままであることもあり得ることが判明した。
【0014】
国際特許出願第PCT/AU2012/000335号明細書では、界面活性剤と合わさった50wt%以上の不溶性C5~C12アルコールを含有する、湿潤組成物が記載されており、この湿潤組成物は、水性液体に加えて、水性液体が低エネルギー表面を濡らすことができる能力を改善するために配合されている。しかしながら、これらの組成物のうちの一部に伴う課題は、これらの組成物のうちの一部が強いにおいを放つものであることもあるため、一部の用途における組成物の実用性が制限されるという点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際特許出願第PCT/AU2012/000335号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Kovalchukら、Advances in Colloid and Interface Science、第210巻、2014年8月、65~71頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
非水性液体、特に、表面張力が相対的に高い非水性液体を用いて、低エネルギー疎水性表面の濡れ性を改善することができる、代替的な組成物及び方法を開発することが、依然として望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、望ましくは低エネルギー表面を濡らす非水性液体に加えることを意図された、湿潤組成物に関する。
【0019】
本発明の一態様において、本発明による使用のための湿潤組成物は、
(a) 20~50wt%未満の1種以上のC10~C14アルコールと;
(b) 非イオン性、カチオン性、アニオン性及び両性界面活性剤から選択される25~70wt%の1種以上の界面活性剤と;
(c) (i) 水及び(ii) 最大25wt%の水混和性C1~C3有機溶媒から選択される少なくとも1種を含む5~50wt%の極性成分と
を含む。
【0020】
本発明の別の態様において、本明細書に記載の湿潤組成物及び非水性液体を含む、非水性液体状組成物が提供される。
【0021】
本発明の別の態様において、本明細書に記載の湿潤組成物を非水性液体に加えるステップを含む、非水性液体の表面張力を低下させる方法が提供される。
【0022】
本明細書に記載の湿潤組成物を非水性液体に加えるステップと;
低エネルギー表面を、湿潤組成物を含む非水性液体と接触させるステップと
を含む、表面エネルギーが相対的に高い非水性液体によって低エネルギー表面を濡らす方法も提供される。
【0023】
次に、以下の図面を参照しながら、本発明の湿潤効果を例示する実施形態について説明するが、これらの実施形態は、例示的なものにすぎないように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】50%の非イオン性界面活性剤、25%のドデカノール及び25%の2-ブトキシエタノールを含む、本発明の一実施形態の0.1%の湿潤組成物を含む水性液体の場合の、時間(s)に対する表面張力(mN/m)の変化を示す、グラフである。
図2】50%の非イオン性界面活性剤、25%のドデカノール及び25%のエタノールを含む、本発明の一実施形態の0.5%の湿潤組成物を含む水性液体の場合の、時間(s)に対する表面張力(mN/m)の変化を示す、グラフである。
図3】50%の非イオン性界面活性剤、25%のドデカノール及び25%のエタノールを含む、本発明の一実施形態の1.0%の湿潤組成物を含む水性液体の場合の、時間(s)に対する表面張力(mN/m)の変化を示す、グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において使用されているとき、「a」、「an」及び「the」という単数形は、単数形のみを表すことが明示的に記載されていない限り、単数形と複数形の両方を表す。
【0026】
「約(about)」という用語、及び、一般には約という用語で修飾されているか否かにかかわらず、範囲の使用は、包含される数が、本明細書に記載された厳密な数に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく引用された範囲に実質的に収まる範囲を指すように意図されていることを意味する。本明細書において使用されているとき、「約」は、当業者であれば理解するものであるが、「約」が使用されている文脈に応じてある程度異なる。その用語が使用されている文脈を考慮しても当業者にとって明確でない用語の使用があった場合、「約」は、当該特定の用語の±10%までを意味する。
【0027】
そうではないと示されていない限り、本明細書において言及されている百分率(%)は、重量パーセント(すなわち、wt%、w/w又はw/v)によるものである。
【0028】
本明細書に記載の湿潤組成物は、望ましくは低エネルギー表面を濡らす非水性液体に加えることを意図されている。湿潤組成物は、長鎖アルコール及び少なくとも1種の極性成分と合わさった界面活性剤を含む。湿潤組成物を非水性液体に加えて、非水性液体の表面張力を低下させる。
【0029】
一態様において、本発明による有用な湿潤組成物は、
(a) 20~50wt%未満の1種以上のC10~C14アルコールと;
(b) 非イオン性、カチオン性、アニオン性及び両性界面活性剤から選択される25~70wt%の1種以上の界面活性剤と;
(c) (i) 水及び(ii) 最大25wt%の水混和性C1~C3有機溶媒から選択される少なくとも1種を含む5~50wt%の極性成分と
を含む。
【0030】
湿潤組成物は、湿潤組成物の成分として、少なくとも1種のC10~C14アルコールを含む。少なくとも1種のC10~C14アルコールは、20重量%以上~50重量%未満の量で湿潤組成物中に存在する。湿潤組成物は、単一のC10~C14アルコールを含有することができる。代替的には、湿潤組成物が2種以上のC10~C14アルコールの混合物を含有することができるように、1種より多いC10~C14アルコールが存在してもよい。C10~C14アルコール又はC10~C14アルコールの混合物は、湿潤組成物のアルコール成分として考えることができる。
【0031】
C10~C14アルコールの分子中には多数の炭素原子が存在するため、C10~C14アルコールは、一般に、水に不溶性又は難溶性である。「水不溶性」は、熱及び/又は撹拌によって溶解を促したとしても、アルコールが水に溶解しないことを意味する。C10~C14アルコールは、20℃で10mg/L以下の水溶性を有することができる。
【0032】
C10~C14アルコールは、脂肪族アルコールであるが、10~14個の炭素原子から構成される直鎖状又は分岐状炭化水素構造を有する第一級、第二級又は第三級アルコールであってもよい。したがって、アルコールは、C10~C14の鎖長を有することができる。
【0033】
後でさらに説明するように、C10~C14アルコールは、湿潤組成物中の界面活性剤が液体/蒸気界面で集合することができる能力に有利な影響を与えることができると考えられているため、湿潤組成物中におけるC10~C14アルコールの使用は、重要である。
【0034】
一実施形態において、湿潤組成物は、2種以上のC10~C14アルコールの混合物を含む。例えば、本発明の一実施形態の湿潤組成物は、C12アルコールとC14アルコールとの混合物を含むことができる。このような実施形態において、湿潤組成物のアルコール成分中におけるC10~C14アルコールの総量は、20重量%~50重量%未満の範囲に留まる。
【0035】
一形態において、湿潤組成物は、少なくとも1種のC10~C14直鎖脂肪族アルコールを含む。しかしながら、1種より多い直鎖脂肪族C10~C14アルコールが湿潤組成物中に存在することもできる。
【0036】
有利なことに、C10~C14アルコールは、1-オクタノール(C8アルコール)等の他の長鎖脂肪族アルコールよりにおいが弱い。この結果、一部の実施形態において、C10~C14アルコールを含む湿潤組成物は、湿潤組成物のにおいをマスキングするためのフレグランス等の添加剤を必要としない。
【0037】
一実施形態において、湿潤組成物は、C10、C12若しくはC14直鎖脂肪族アルコール又はこのようなアルコールの混合物を含む。例示的な直鎖脂肪族C10、C12及びC14アルコールは、1-デカノール、1-ドデカノール及び1-テトラデカノールであってもよい。
【0038】
一形態において、湿潤組成物は、単独のC12アルコールを含み、又はC10アルコール若しくはC14アルコールと合わさったC12アルコールを含む。
【0039】
湿潤組成物がC10アルコール又はC14アルコールと混和したC12アルコールを含む場合、アルコールの混合物中におけるC10アルコール又はC14アルコールに対するC12アルコールの相対的比率は、50:50~90:10の範囲であり得る。
【0040】
当業者ならば、C12アルコールと、C10又はC14アルコールとの相対的比率が、重量による各成分の相対的な量に基づくことは理解されよう。すなわち、50:50の相対的比率では、湿潤組成物は、重量により等しい量のC12アルコールと、C10又はC14アルコールとを含む。したがって、相対的比率は、混合物中におけるアルコール化合物の重量比も反映することができる。
【0041】
一実施形態において、湿潤組成物は、C10アルコールと合わさったC12アルコールを含む。このような実施形態において、C10アルコールに対するC12アルコールの相対的比率は、重量により50:50~80:20の範囲であり得る。
【0042】
別の実施形態において、湿潤組成物は、C14アルコールと合わさったC12アルコールを含む。このような実施形態において、C14アルコールに対するC12アルコールの相対的比率は、重量により56:44~87:13の範囲であり得る。好ましい一形態において、C14アルコールに対するC12アルコールの相対的比率は、重量により約70:30である。
【0043】
C12アルコールは、C10又はC14アルコールより多量に存在し得るため、湿潤組成物のアルコール成分(すなわち、成分(a))の主成分を形成することができる。
【0044】
一実施形態において、湿潤組成物は、1-ドデカノールと、1-デカノール又は1-テトラデカノールとの混合物を含む。湿潤組成物中における1-デカノール又は1-テトラデカノールに対する1-ドデカノールの相対的比率は、上記の範囲であり得る。
【0045】
特定の一実施形態において、湿潤組成物は、1-ドデカノールと1-テトラデカノールとの混合物を含む。アルコールの混合物中における1-テトラデカノールに対する1-ドデカノールの相対的比率は、重量により50:50~90:10の範囲であり得る。例えば、1-テトラデカノールに対する1-ドデカノールの相対的比率は、重量により50:50、56:44、60:40、70:30、80:20、87:13、85:15又は90:10から選択することができる。
【0046】
湿潤組成物は、適量のC10~C14アルコールを含むことができる。C10~C14アルコールの総量は、同様に規定の比率で存在する湿潤組成物の残りの成分との間でバランスがとれている。
【0047】
一部の実施形態において、湿潤組成物中におけるC10~C14アルコールの総量は、湿潤組成物に対して少なくとも20%であり、湿潤組成物に対して少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%又は少なくとも25%であり得る。C10~C14アルコールの総量は、湿潤組成物の重量により、最大49%、最大48%、最大47%、最大45%、最大35%、最大30%又は最大28%であり得る。C10~C14アルコールの総量は、これらのいずれかの上限及び下限に収まる任意の濃度であればよく、例えば、22~47重量%又は25~45重量%であってもよい。
【0048】
一部の実施形態において、湿潤組成物は、約20wt%、22.5wt%、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%又は45wt%の総量の1種以上のC10~C14アルコールを含むことができる。
【0049】
本発明の湿潤組成物は、界面活性剤をさらに含む。界面活性剤成分は、湿潤組成物の25~70重量%を構成し、非イオン性、カチオン性、アニオン性及び両性界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含む。湿潤組成物の界面活性剤成分は、上記界面活性剤のうちの2種以上の混合物を含むことができる。界面活性剤の混合物が存在する場合、湿潤組成物中の界面活性剤の総量は、25~70%の範囲である。
【0050】
湿潤組成物の界面活性剤成分が、有機シリコーン界面活性剤又はフッ素系界面活性剤を含まないことが一要件である。
【0051】
湿潤組成物のための界面活性剤は、両親媒性化合物であり、非水性液体の表面張力を低下させることができる界面活性剤から選択することができる。界面活性剤は、目的とする非水性液体に少なくとも部分的に、好ましくは完全に可溶なものにすべきである。「少なくとも部分的に可溶」は、界面活性剤の量の少なくとも約50%、65%、75%、80%、90%又は95%が、非水性液体に溶解することができることを意味する。当業者ならば、非水性液体中の選択した界面活性剤の可溶度を容易に判定することができる。
【0052】
界面活性剤は、湿潤組成物中のC10~C14アルコール又は他の添加剤と化学反応すべきではない。さらに、界面活性剤は、界面活性剤が加えられる非水性液体又は界面活性剤が加えられる非水性液体の任意の成分と化学反応しないように選択されるべきである。熱を加えたときであっても化学反応がないようにすべきである。「化学反応しない」又は「化学反応がない」は、新たな化学的生成物を形成する反応が存在しないことを意味する。化学物質間には、水素結合又は他の可逆的な化学的相互作用が存在してもよい。界面活性剤は、低エネルギー表面と化学反応すべきではなく、さもなければ、付着に問題が生じることになる。好ましくは、界面活性剤は、低エネルギー表面との間に水素結合又は他の結合を形成しない。
【0053】
有利には、界面活性剤は、無毒性で不燃性のものであるように選択される。界面活性剤は、非水性液体の表面張力を低下させ、又は表面張力の低下を補助すること以外には、界面活性剤を加える非水性液体の特性に悪影響しない。界面活性剤が、色、粘度及びにおいを含む非水性液体の特性を変化させない場合、有利である。
【0054】
一実施形態において、界面活性剤は、生体適合性と生分解性とを有する無毒性のものであってもよい。これは、環境適合性であることと、天然の水路に存在する魚類及び他の生物にとって無毒性のものであることとが所望される、農業用組成物中への使用を意図した湿潤組成物の場合においては、有利なことがある。毛髪、皮膚又は爪への施用を意図した化粧品組成物又はニュートラシューティカルズ/医薬組成物等、生体適合性が望ましい他の用途に関しては、界面活性剤は、非アレルギー性のものを選択すべきであり、皮膚を刺激するものにすべきでない。
【0055】
別の実施形態において、界面活性剤は、非水性樹脂等、複合型非水性液体(complex non-aqueous liquid)を分散相中に保持するために選択された界面活性剤であってもよい。これは、二酸化チタン等の顔料粒子を樹脂中に使用する場合、特に重要である。例えばパーティクルボードの形成に使用される木材粒子フレークをコーティングするために樹脂が使用される場合、選択される界面活性剤は、硬化プロセス中にパーティクルボードがさらされる温度の熱に耐えられるものにすべきであり、樹脂がキュアによって硬化することができる能力に影響しないようにすべきである。界面活性剤が耐熱性ではない場合、高温で界面活性剤が分解したとしても、周囲の環境にとって有害ではない無毒性の副生成物が生じることになるはずである。樹脂が紙をコーティングするためのものである場合において、界面活性剤分子の分解から生じた何らかの副生成物によって紙が変色しないことが重要とされるとき、界面活性剤は、紫外線に対して安定なものにすべきである。
【0056】
別の実施形態において、界面活性剤は、粉末状除草剤、殺有害生物剤若しくは肥料、又は他の作用物質を含有する他の粉末状配合物を安定な非水性懸濁液中に保持して、除草剤、殺有害生物剤、肥料又は他の作用物質をスプレーとして施用することを可能にするために選択された、界面活性剤であってもよい。
【0057】
界面活性剤は、界面活性剤を加える非水性液体の動的濡れ性を低下させることができるものにすべきである(ただし、静的な測定値を使用して、動的濡れ性を判定することができる)。一部の界面活性剤は、非水性液体の静的表面張力を低下させることができるが、一部の界面活性剤の高い分子量と、この結果としての低い分子移動度は、非水性液体の動的表面張力を低下させることができないことを意味する。これにより、一部の実施形態においては、前述の一部の界面活性剤の有用性が減じる。
【0058】
湿潤組成物は、非イオン性、カチオン性、アニオン性及び両性界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含む。非水性液体中で自己集合してミセルになることができる界面活性剤を、使用することができる。
【0059】
1種より多い界面活性剤が湿潤組成物中に存在することも可能であり、各界面活性剤は、同じ種類の界面活性剤であってもよいし、又は異なる種類の界面活性剤であってもよい。本明細書において単数形の界面活性剤に言及されている場合、そうではないことが文脈により明らかになっていない限り、単数形の界面活性剤は、その範囲に、1種より多い界面活性剤を含むことを理解されたい。
【0060】
概して、ある界面活性剤を別の界面活性剤に加えても、一般には、表面張力に対する累積的な効果が生じることはない。より正確に言えば、多くの状況下では、界面活性剤混合物が表面張力を低下させることができる能力は、混合物中で最も性能のよい界面活性剤のものに限定される可能性がある。
【0061】
有利なことに、(界面活性剤のブレンドを含む)本明細書に記載の界面活性剤は、約6超、7超、8超、9超、10超、11超、12超、13超、14超、15超、16超又は17超の親水親油バランス(HLB)を有することができる。
【0062】
有利には、界面活性剤は、湿潤組成物に対して25wt%以上~最大70wt%の量で存在する。界面活性剤は、少なくとも約25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%、60wt%、65wt%若しくは70wt%、又はこれらの限度に収まる任意の濃度の量で存在し得る。例えば、界面活性剤成分は、湿潤組成物の30~65wt%又は40~60wt%を形成することができる。さらに、1種より多い界面活性剤が存在することもできるが、1種より多い界面活性剤が存在する場合、湿潤組成物中における界面活性剤の総量は、望ましい濃度範囲に収まる。
【0063】
湿潤組成物を調製するために使用される界面活性剤は、固体形態であってもよいし、又は液体形態であってもよい。一実施形態において、界面活性剤は、液体形態である。界面活性剤の混合物が使用される場合、界面活性剤のブレンドは、液体形態であってもよい。液体形態の界面活性剤をC10~C14アルコール及び極性成分と合わせて、本明細書に記載の湿潤組成物を形成することがより好都合な場合もある。一部の実施形態においては、熱を加えて、成分どうしを合わせる処理を補助することができる。
【0064】
液体形態の界面活性剤は、無希釈の(すなわち、界面活性剤のみを含有する)液体であってもよいし、又は、溶媒に溶解若しくは分散された界面活性剤を含有する溶液であってもよい。例示的な溶媒は、水であってもよい。したがって、界面活性剤化合物は、界面活性剤溶液の一部を形成する。他の化合物又は成分が界面活性剤溶液中に存在してもよい。
【0065】
界面活性剤溶液は、溶媒に溶解又は分散された適量の界面活性剤を含むことができる。例えば、界面活性剤溶液は、溶媒中の50%、60%、70%、80%、85%、90%又は95%の界面活性剤を含むことができる。
【0066】
湿潤組成物の界面活性剤成分が、1種又は複数の活性な界面活性剤化合物そのものから構成されることは理解されよう。したがって、界面活性剤溶液を使用して、湿潤組成物を調製する場合、C10~C14アルコール成分と合わせられた界面活剤の量は、その結果として得られる最終的な湿潤組成物中における活性な界面活性剤化合物の濃度が確実に25~70wt%の範囲になるように選択される。一例示として、50wt%の界面活性剤溶液50gを含む100gの湿潤組成物は、25wt%の界面活性剤を含有する。
【0067】
界面活性剤は、ノニルフェノールアルコキシレート、若しくは、(BL8として販売されている)アルコキシレート等のアルコールアルコキシレート等の、エトキシレート;ドデシルスルフェート;又は第四級化アルキルアンモニウム化合物であってもよい。界面活性剤は、Teric(登録商標)(Tericシリーズのいずれかであるが、N、12A、9A、13A9、16A、7ADN及びBLシリーズが好ましい。)、DS10025(登録商標)若しくはDS10030(登録商標)、Tween(登録商標)、Dynol(登録商標)又はSurfynol(登録商標)のブランドで販売されている、界面活性剤であってもよい。
【0068】
一部の実施形態において、界面活性剤は、非イオン性である。(界面活性剤のブレンドを含む)非イオン性界面活性剤は、約6超、7超、8超、9超、10超、11超、12超、13超、14超、15超、16超又は17超の親水親油バランス(HLB)を有することができる。
【0069】
単独で又は1種以上の他の界面活性剤と組み合わせて適切に使用され得る非イオン性界面活性剤の一部の例には、脂肪アルコールエトキシレート(オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル及びペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル等);アルキルフェノールエトキシレート(ノノキシノール及びTriton X-100等);脂肪酸エトキシレート(ステアリン酸型、オレイン酸型又はラウリル型脂肪酸エトキシレート等)、エトキシ化アミン及び脂肪酸アミド(ポリエトキシ化牛脂アミン、並びに、コカミドモノエタノールアミン及びコカミドジエタノールアミン等のアミド等);エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(ポロキサマー等);グリセロールの脂肪酸エステル(グリセロールモノステアレート及びグリセロールモノラウレート等);ソルビトールの脂肪酸エステル(ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート及びソルビタントリステアレート、並びに、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)60及びTween(登録商標)80等、これらのエトキシレート等のSpan(登録商標)界面活性剤を含む);スクロースの脂肪酸エステル;並びに、アルキルポリグルコシド(デシルグルコシド、ラウリルグルコシド及びオクチルグルコシド等)が挙げられる。非イオン性界面活性剤は、エトキシ化テトラメチルデシンジオール(例えば、Surfynol(商標)ブランド)であってもよく、このエトキシ化テトラメチルデシンジオールは、単独であってもよいし、又は、アルキレングリコール(エチレングリコール等)若しくはアルコールアルコキシレートとの混合物であってもよい。
【0070】
一実施形態において、湿潤組成物は、アルキルポリグルコシド型界面活性剤を含む。アルキルポリグルコシドは、糖を主体とする親水性頭部基と、C~C16脂肪アルコール尾部とを有する、糖(すなわち、グルコース及びスクロース)に由来する界面活性剤である。このような界面活性剤は、性能と、環境への影響が最小限であることとを理由として、望ましいものであり得る。さらに、このような界面活性剤は生分解性であり、天然の供給源に由来するものであるため、環境に優しい湿潤組成物用としては魅力的な候補になり得る。アルキルポリグルコシドは、C10~C14アルコール成分及び極性成分と合わせて、湿潤組成物を形成するための溶液として用意されてもよい。例えば、アルキルポリグルコシドは、50wt%水溶液として用意されてもよい。
【0071】
上述の界面活性剤の分解生成物は、発生する環境への影響を最小限にすることが可能であり、農業用途向けに望ましいものであるため、一部の実施形態において、グリコール及びグリセロール等のアルコールのエステル脂肪酸エステル(モノエステル、ジエステル及びトリエステル)が望ましいこともある。
【0072】
一部の実施形態において、界面活性剤は、アニオン性である。アニオン性界面活性剤は、スルフェート型、スルホネート型、ホスフェート型及びカルボキシレート型界面活性剤から選択されるクラスに属し得る。アニオン性界面活性剤は、遊離酸形態で使用することもできるし、又は、アンモニウム塩形態、有機アミン塩形態、マグネシウム塩形態、カリウム塩形態及びナトリウム塩形態を含む塩形態等、中和形態で使用することもできる。
【0073】
単独で又は1種以上の他の界面活性剤と組み合わせて適切に使用され得るアニオン性界面活性剤の一部の例には、アルキルスルフェート(ラウリル硫酸ナトリウム及びドデシル硫酸ナトリウム等);アルキルエーテルスルフェート(ラウレス硫酸ナトリウム及びミレス硫酸ナトリウム等);スルホスクシネート(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホネート(ドデシルベンゼンスルホネート及びドデシルジフェニルエーテルジスルホネート等);アリールアルキルエーテルホスフェート;アルキルエーテルホスフェート;及びアルキルカルボキシレート(ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム及びラウロイルサルコシン酸ナトリウム等)が挙げられる。当業者ならば、上記アニオン性界面活性剤の他の塩形態が存在し得ることは理解されよう。
【0074】
一部の実施形態において、モノスルホン酸化若しくはジスルホン酸化又はリン酸化された脂肪族直鎖又は分岐状アルコール等のアニオン性界面活性剤が好ましいこともある。同様に、α-オレフィンスルホネート及び第二級アルカンスルホネート等、炭化水素を直接スルホン化して得られた界面活性剤も使用することができる。
【0075】
特定の実施形態において、一般的にはLABS酸(Linear Dodecal Benzyl Sulphonic Acid:直鎖状ドデカールベンジルスルホン酸)として知られたモノスルホン酸化アリールアルキルフェノール様界面活性剤、並びに、アンモニウムLABS及びトリエタノールアミンLABS等のLABS塩が適している。遊離酸及び中和形態のドデシルジフェニルジスルホネート(例えば、Dowfax 2AO)、特に、適切な非イオン性界面活性剤と合わさったものが使用されてもよい。ジオクチルスルホスクシネート並びにそのナトリウム塩及びアンモニウム塩(DOS)、特に、脂肪族アルコールアルコキシレートと合わさったものは、有用な急速湿潤剤であり得る。
【0076】
一部の実施形態において、界面活性剤は、カチオン性である。カチオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム化合物及びpH依存性の第一級、第二級又は第三級アミンから選択されるクラスに属し得る。カチオン性界面活性剤は、臭化物型及び塩化物型の塩形態を含む塩形態等、中和形態で使用することもできる。
【0077】
単独で又は1種以上の他の界面活性剤と組み合わせて適切に使用され得るカチオン性界面活性剤の一部の例には、ベヘントリモニウムクロリド、ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、セタルコニウムクロリド(CKC)及びステアラルコニウムクロリドを含むベンザルコニウムクロリド(BAC)、ベンゼトニウムクロリド、ベンゾドデシニウムクロリド、カルバエトペンデシニウムブロミド(carbethopendecinium bromide)、セトリモニウムブロミド(CTAB)、セトリモニウムクロリド(CTAC)、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、ジデシルメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DODAB)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ドミフェンブロミド、オクテニジンジヒドロクロリド並びにトンゾニウムブロミド等の、アルキル第四級アンモニウム化合物が挙げられる。当業者ならば、上記カチオン性界面活性剤の他の塩形態が存在し得ることは理解されよう。
【0078】
好ましいカチオン性界面活性剤は、ベンザルコニウムクロリド(BAC)のクラスに属するものであり、ジメチルベンジルアンモニウムクロリド型、セタルコニウムクロリド型及びステアラルコニウムクロリド型界面活性剤から選択することができる。
【0079】
一部の実施形態において、界面活性剤は、両性である。両性界面活性剤は、同じ界面活性剤分子内に酸性基及び塩基性基を有する。酸性基及び塩基性基は、pHに応じて、アニオン性基又はカチオン性基を形成することができる。両性界面活性剤は、双性であることも可能であり、特定のpHで負電化と正電荷との両方を有し得る。
【0080】
両性界面活性剤は、特定のpH条件下でカチオン性又はアニオン性界面活性剤として振る舞うことができるため、状況によっては、両性界面活性剤が採用されることもある。例えば、酸性のpH又は低いpH(例えば、6以下のpH)では、両性界面活性剤は、プロトン化した状態になり、カチオン性界面活性剤として作用することができるが、アルカリ性のpH又は高いpH(例えば、8以上のpH)では、両性界面活性剤は、脱プロトン化した状態になり、アニオン性界面活性剤として作用する。
【0081】
単独で又は1種以上の他の界面活性剤と組み合わせて適切に使用され得る両性界面活性剤の一部の例には、ラウラミンオキシド及びミリスタミンオキシド等のアルキルアミンオキシド;コカミドプロピルベタイン等のベタイン;ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、オレイミドプロピルヒドロキシスルタイン、タロウアミドプロピルヒドロキシスルタイン、エルカミドプロピルヒドロキシスルタイン及びラウリルヒドロキシスルタイン等のヒドロキシスルタイン;並びに、ラウロアンホ酢酸ナトリウム等のアンホアセテートが挙げられる。
【0082】
一実施形態において、湿潤組成物は、双性形態の両性界面活性剤等、双性界面活性剤を含まない。
【0083】
一組の実施形態において、湿潤組成物は、アルコールアルコキシレート型、アルキルベンゼンスルホネート型及びベンザルコニウムクロリド型界面活性剤から選択される界面活性剤を含む。界面活性剤の混合物も想定される。例えば、湿潤組成物は、アルコールアルコキシレートと、アルキルベンゼンスルホネートとの界面活性剤混合物を含むことができる。
【0084】
一部の実施形態において、界面活性剤の混合物中の界面活性剤のうちの1種は、安定な配合物としての湿潤組成物の維持を補助するための、乳化剤として作用することもできる。
【0085】
一実施形態において、湿潤組成物は、界面活性剤の混合物を含むことができ、この場合、界面活性剤のうちの1種は、ドデシルベンゼンスルホネート等のアルキルベンゼンスルホネートである。アルキルベンゼンスルホネートは、湿潤組成物を安定化させ、湿潤組成物成分の相分離を防止又は最小化するのに役立つ乳化剤として作用することができる。湿潤組成物は、乳化剤として、比較的少量のアルキルベンゼンスルホネートのみを必要とすることがある。一実施形態において、湿潤組成物は、最大5wt%のアルキルベンゼンスルホネートを含む。
【0086】
本発明の湿潤組成物は、5~50wt%の極性成分をさらに含む。極性成分は、(i) 水及び(ii) 最大25wt%の水混和性C1~C3有機溶媒から選択される少なくとも1種を含む。したがって、湿潤組成物のC10~C14アルコール及び界面活性剤は、極性成分である水及び水混和性C1~C3有機溶媒のうちの少なくとも1種と合わせられる。
【0087】
湿潤組成物中に極性成分が存在することが望ましい場合もあるが、その理由は、湿潤組成物中のC10~C14アルコールと界面活性剤とを相溶化するのに役立つと考えられているためである。したがって、極性成分は、C10~C14アルコール及び界面活性剤のための相溶化剤として作用する可能性がある。極性成分は、湿潤組成物を加えるべき非水性液体に含まれる湿潤組成物中でC10~C14アルコール及び界面活性剤を可溶化するのに役立つ可能性もある。
【0088】
一部の実施形態において、極性成分は、水を含む。水は、適量で湿潤組成物の極性成分中に存在することができる。例えば、極性成分は、0.5wt%、1wt%、2wt%、2.5wt%、5wt%、7.5wt%、10wt%、12.5wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、40wt%若しくは50wt%、又はこれらの限度に収まる任意の濃度の量の水を含むことができる。
【0089】
極性成分が5wt%以上の濃度の水を含む場合、水は、単独の状態であってもよいし、又は少なくとも1種の他の化合物と混和した状態であってもよい。水が混和物の状態である場合、極性成分中における成分の量は、合計で50wt%を超えない。
【0090】
極性成分が5wt%未満の濃度の水を含む場合、極性成分が確実に少なくとも5wt%であるようにするためには、水が、少なくとも1種の他の化合物と混和する必要がある。一例示として、水が2.5wt%の濃度で存在する場合、極性成分が湿潤組成物の少なくとも5wt%を確実に形成するようにするために、極性成分は、2.5wt%の少なくとも1種の他の成分をさらに含む。
【0091】
水は、湿潤組成物の別の成分の一部として加えることもできるし、又は、意図的に別個の成分として加えることもできる。一実施形態において、湿潤組成物の極性成分は、5~10wt%の水を含む。
【0092】
湿潤組成物中に存在する水が、湿潤組成物によって表面張力を低下させることが望ましく、湿潤組成物そのものを加えるべきものである、目的とする非水性液体と区別されることは理解されよう。
【0093】
一実施形態において、極性成分は、最大25wt%の水混和性C1~C3有機溶媒を含む。水混和性C1~C3有機溶媒は、5~25wt%の量で湿潤組成物の極性成分中に存在し得る。
【0094】
極性成分は、0.5wt%、1wt%、2wt%、2.5wt%、5wt%、7.5wt%、10wt%、12.5wt%、15wt%、20wt%若しくは25%wt%、又はこれらの限度に収まる任意の濃度の量の水混和性C1~C3有機溶媒を含むことができる。
【0095】
極性成分が5~25wt%の濃度の水混和性C1~C3有機溶媒を含む場合、溶媒は、単独の状態であってもよいし、又は少なくとも1種の他の化合物と混和した状態であってもよい。C1~C3有機溶媒が混和物の状態である場合、極性成分中における成分の量は、合計で50wt%を超えない。
【0096】
極性成分が5wt%未満の濃度の水混和性C1~C3有機溶媒を含む場合、極性成分が少なくとも5wt%であることを確実にするためには、溶媒は、少なくとも1種の他の化合物と混和する必要がある。一例示として、水混和性C1~C3有機溶媒が2.5wt%の濃度で存在する場合、極性成分が湿潤組成物の少なくとも5wt%を確実に形成するようにするために、極性成分は、2.5wt%の少なくとも1種の他の成分をさらに含む。
【0097】
「水混和性」は、C1~C3有機溶媒が水と混ざり合って、均一な溶液を形成することができることを意味する。水混和性C1~C3有機溶媒の例には、アセトアルデヒド、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、エチレングリコール、グリセロール、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1,3-プロパンジオール及びプロピレングリコールが挙げられる。水混和性C1~C3有機溶媒は、極性溶媒であってもよい。
【0098】
一実施形態において、水混和性C1~C3有機溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール等の水混和性C1~C3アルコールであり、好ましくはエタノールである。
【0099】
湿潤組成物中の水混和性C1~C3有機溶媒、(C1~C3アルコール等)の量は、溶媒の可燃性を理由として、25wt%未満に限定することが望ましい場合もある。一部の実施形態において、C1~C3有機溶媒は、湿潤組成物に対して20%未満、15%未満、10%未満又は5wt%以下の量で存在することが望ましい場合もある。
【0100】
一部の実施形態において、湿潤組成物の極性成分は、水と水混和性C1~C3有機溶媒との組合せを含む。このような実施形態において、前述の組合せ中における水混和性C1~C3有機溶媒の量は、25wt%を超えない。当業者ならば、水及び水混和性C1~C3有機溶媒のそれぞれが極性化合物であってもよいことは理解されよう。
【0101】
一部の実施形態において、本発明の湿潤組成物は、本明細書において規定された量のC10~C14アルコール、界面活性剤及び極性成分から本質的になることができる。したがって、一部の実施形態において、湿潤組成物を調製するために使用されたC10~C14アルコール及び界面活性剤の量が合算しても100%にならない場合、アルコール及び界面活性剤成分に極性成分を、湿潤組成物の総質量又は総体積が100%になるように加えることができる。したがって、極性成分が、湿潤組成物の残り部分を形成することができる。
【0102】
任意選択により、1種以上の添加剤を、湿潤組成物に取り込ませることができる。これらの添加剤には、フレグランス、消泡剤、不凍剤、乳化剤、活性化合物、塩、染料(又は他の着色料)及び粒子(例えば、二酸化チタン等の顔料粒子)、安定剤、保存料及び/又はバッファーを挙げることができ、これらは、別々にされた状態で存在してもよいし、又は合わさった状態で存在してもよい。これらの添加剤は、適量で湿潤組成物中に存在することができる。望ましい量は、これらの添加剤の使用の結果として湿潤組成物に付与されることが所望される効果(例えば、香気又は色の濃さ)によって左右され得る。一部の実施形態において、湿潤組成物は、0~5wt%、0~10wt%、0~20wt%又は0~25wt%の1種以上の添加剤を含んでもよい。一実施形態において、湿潤組成物は、心地よい香りを生じさせるフレグランスを有する、化合物を含んでもよい。本発明の湿潤組成物は、強いにおいを放つものではないが、所望に応じて、湿潤組成物にフレグランスを加えて、心地よい香りを付与し、又は任意の悪臭を低減若しくはマスキングすることもできる。
【0103】
一実施形態において、フレグランスは、エッセンシャルオイルである。エッセンシャルオイルは、レモン若しくはオレンジオイル又はパインオイルであってもよい。フレグランスは、フェノールアルデヒドを含むことができる。フェノールアルデヒドは、バニリン又はイソバニリンであってもよい。フレグランスは、濃縮形態で加えられてもよいし、又は、1wt%、2wt%、5wt%、10wt%溶液として溶媒中に加えられてもよい。例えば、バニリンをエタノール等の溶媒に(例えば10wt%で)加えることができる。
【0104】
有利には、湿潤組成物は、危険のないものである。湿潤組成物が不燃性である場合も、有利である。湿潤組成物は、高温で安定なもの、例えば、最大40℃までは安定なものにすべきである。これらの特性が確実に満たされるようにするためには、湿潤組成物の成分は、これらの要件を個別に満たし、及び/又は合わせられたときにもこれらの要件を満たさなければならない。
【0105】
一部の実施形態において、C10~C14アルコール、界面活性剤及び極性成分を含む、湿潤組成物の成分は好ましくは、容易に分解して、環境並びに植物、海洋生物及び動物にとって無毒性で危険のない分解生成物になることができる、環境に優しい化合物から選択される。これは、本発明の湿潤組成物が、フッ素系界面活性剤及び有機シリコーン界面活性剤に伴う環境及び生物に関する重大な問題を回避できるようになるため、有利な場合がある。
【0106】
一実施形態において、湿潤組成物は、1-ドデカノール(20%~50%未満)と、非イオン性界面活性剤(25~70%)と、約10%の水とを含む。
【0107】
別の実施形態において、湿潤組成物は、1-ドデカノール及び1-テトラデカノール(20%~50%未満を占める、C12アルコールと、C14アルコールとの70:30ブレンド)と、非イオン性界面活性剤(25~70%)と、約10%の水とのブレンドを含む。
【0108】
別の実施形態において、湿潤組成物は、1-ドデカノール(20%~50%未満)と、非イオン性界面活性剤(25~70%)と、エタノール(25%)とを含む。
【0109】
上記湿潤組成物の実施形態のすべてにおいて、任意選択により、10%以下のドデシルベンゼンスルホネートが乳化剤として加えられてもよい。
【0110】
配合された湿潤組成物は、非水性液体の表面張力を変化させるために非水性液体に加えられることを意図されている。
【0111】
望ましくは、湿潤組成物は、C10~C14アルコールと、界面活性剤と、極性成分とを含む、安定な混合物の形態である。湿潤組成物は、安定な溶液、懸濁液又はエマルションの形態であってもよい。「安定」であることは、湿潤組成物の形成後又は貯蔵中に、湿潤組成物の濁り若しくは粘度の変化、又は湿潤組成物の成分どうしの実質的な分離(例えば、相分離、沈降又は沈殿等)が存在しないことを意味する。湿潤組成物は、4~40℃の範囲の温度で少なくとも5時間安定であり得る。好ましい複数の実施形態において、湿潤組成物は、数週間、数か月間又は数年間安定であるため、有効期間が長い。しかしながら、一部の実施形態において、短い期間の間だけ安定であればよい場合では、湿潤組成物を使用直前に調製してもよい。例えば、C12~C14アルコール等、アルコールの分子量がより高分子量である一部の組成物の場合、熱により、アルコールを界面活性剤と合わせる処理を補助することができる。このような状況下においては、何らかの分離が起きる前に湿潤組成物を使用することができる。
【0112】
湿潤組成物の濁度に関する研究は、配合物の安定性の判定の助けとなり得る。
【0113】
湿潤組成物を形成するためには、最初に、所望の量の界面活性剤を所望の量のC10~C14アルコールと合わせ、次いで、所望の量の極性成分(例えば、水及び/又は水混和性C1~C3有機溶媒)を初期混合物に加え、合わせて、湿潤組成物を形成する。しかしながら、製造の順番は重要ではなく、湿潤組成物の成分は、任意の順番で合わせることができる。例えば、最初に界面活性剤と極性成分とを混ぜ合わせた後、C10~C14アルコールを加えることもできる。さらに、界面活性剤は、最後に混合されてもよい。
【0114】
湿潤組成物が、1-ドデカノール(C12アルコール)と、1-デカノール(C10アルコール)又は1-テトラデカノール(C14アルコール)との混合物等、少なくとも2種の異なるC10~C14アルコールの混合物を含むべき場合、選択した所望の量のアルコールは、界面活性剤と別々にして又は一緒にして合わせることができる。
【0115】
一部の実施形態において、2種以上の異なるC10~C14アルコールのブレンドが、界面活性剤と、水及び/又は他の添加剤とを含む混合物に加えられる。例えば、C12:C14の相対的比率が70:30である、1-ドデカノール及び1-テトラデカノールを含有する商用調製物にも利用可能なものがある。異なるアルコールを混合物に導入するという目的で、選択した量の商用調製物を界面活性剤及び添加剤と合わせることができる。所望に応じて、1種以上のさらなるC10~C14アルコールを加えることもできる。例えば、アルコールブレンドの他にも、さらなる量の1-ドデカノール(C12アルコール)を界面活性剤と合わせて、さらなるアルコールを導入し、及び/又は湿潤組成物中におけるC10~C14アルコールの相対的比率を変更することもできる。
【0116】
非水性液体が非水性樹脂、非水性農業用製品又は任意の他の非水性材料であるとしても、湿潤組成物が、非水性液体への添加前に、完全な配合物として調製されることが重要である。
【0117】
したがって、C10~C14アルコール、界面活性剤及び極性成分(例えば、水及び/又は水混和性C1~C3有機溶媒)は、これらが、目的とする1つの非水性液体になるように加え合わされ、非水性液体に別々に加えられることがないように、湿潤組成物中で一体になっている。特に、アルコール湿潤剤は、界面活性剤の非水性溶液に漸増的に加えられることがない。C10~C14アルコールと界面活性剤とを一緒にして非水性液体に加えることの利点の1つは、湿潤組成物を使用前に好都合に販売、輸送及び貯蔵することができることである。別の利点は、湿潤組成物を非水性液体に加えると、C10~C14アルコール及び界面活性剤の相対的濃度が固定され、この結果、エンドユーザーが各成分をどのくらい非水性液体に加えればよいか考慮する必要がなくなることである。
【0118】
使用するときには、湿潤組成物を非水性液体に加え、非水性液体の表面張力を低下させる。
【0119】
有利なことに、本発明の湿潤組成物は、湿潤組成物を含有する非水性液体の表面張力を、20℃で25mN/m未満にすることができる。一部の実施形態において、本発明の湿潤組成物は、湿潤組成物を含有する非水性液体の表面張力を、20℃で24mN/m未満、23mN/m未満、22mN/m未満又は21mN/m未満に低下させることができる。
【0120】
本発明の湿潤組成物を用いた場合にこのような低い表面張力を実現できることは、予想外のことである。同等の値の低い表面張力は一般的には、フッ素系界面活性剤及び有機シリコーン界面活性剤を用いた場合にのみ実現可能なものであると考えられている。好ましくは、本発明の湿潤組成物は、フッ素系界面活性剤及び有機シリコーン界面活性剤を不含である。したがって、フッ素系界面活性剤及び有機シリコーン界面活性剤の非存在下においても湿潤組成物がこのような低い表面張力の値を達成できることは、驚くべきことである。
【0121】
当業者は、公知の技法を用いて、本発明の湿潤組成物を含有する非水性液体の表面張力を判定することができる。例示的な技法の1つがペンダント・ドロップ角度測定法(pendant drop goniometry)であり、ペンダント・ドロップ角度測定法は、ペンダント・ドロップの幾何形状の光学的分析により、表面張力及び界面張力の判定を可能にする。
【0122】
界面活性剤は、非水性液体に加えられたらすぐに、液体/蒸気界面に集合することによって液体の表面張力を低下させることができる。しかしながら、本発明の湿潤組成物中のC10~C14アルコールと界面活性剤との組合せは、界面活性剤の性能を向上させることができ、これによって、驚くべきことに、界面活性剤を単独で用いた場合に達成可能な表面張力の低下を上回る、さらなる表面張力の低下を達成することができる。C10~C14アルコールと界面活性剤とは、累積的又は相乗的に相互作用して、表面張力を低下させることができる。
【0123】
理論に縛られることが望むわけではないが、不溶性C10~C14アルコールは、非イオン性、アニオン性及びカチオン性界面活性剤中におけるミセルの形成を制限し、又は防止し、この結果、三相湿潤界面に移動することができる溶液中の界面活性剤分子の濃度が高くなり、これにより、これらの界面活性剤の通常の濡れ性に関する性能(normal wettability performance)が改善されると考えられている。
【0124】
C10~C14アルコールは、水に不溶性又は難溶性であり、分散しにくいものであるため、水及び水混和性C1~C3有機溶媒から選択される少なくとも1種を含む極性成分の存在は、界面活性剤の存在下でのC10~C14アルコールの分散及び相溶化を促進することができる。
【0125】
分散されたC10~C14アルコールは、湿潤組成物が加えられた非水性液体中では準安定状態であり得、非水性溶液から非常に迅速に相分離し、この結果、アルコール及び関連する界面活性剤が湿潤界面に迅速に移動する傾向がある。このような三相界面への急速な移動は、界面への界面活性剤の分散を補助し、非水性液体が低エネルギー表面等の表面を濡らすことができる能力の改善に寄与すると考えられている。
【0126】
C10~C14アルコールの相分離は、界面活性剤分子を分散させるための大きな表面積をもたらす、小さな液滴又はマイクロコロイド(micro-colloid)を形成することもできる。
【0127】
C10~C14アルコールもまた、非水性液体中における界面活性剤ミミセルの形成を制限し、又は防止することができ、この結果、三相湿潤界面に移動することができる溶液中の界面活性剤分子の濃度が高くなり、これらの界面活性剤の通常の濡れ性性能が改善される。
【0128】
一部の実施形態においては、本発明の湿潤組成物を含む非水性液体中でミセルが形成されず、又はミセルの形成が減少している。非水性液体中で「ミセルが形成されず」、又は「ミセルの形成が減少している」とは、非水性液体中で自己集合したいくつかのミセルが存在してもよいことであると理解されたい。
【0129】
ミセルを形成する欠点は、非水性液体の表面張力を低下させ、アルコールを分散させるために用いることができる界面活性剤が少なくなることであり、例えば、界面活性剤がミセルを形成する場合は、形成した何らかのエマルションを安定化するために用いることができる界面活性剤が少なくなる。界面活性剤と合わさった長鎖アルコールは、溶液中に存在する間は準安定状態であるため、湿潤界面に迅速に移動し、ミセルが壊れた後に界面活性剤分子が湿潤界面に拡散することはない。この結果、関連する高濃度の界面活性剤は、臨界ミセル濃度によって制限される界面活性剤を単独で用いた場合よりはるかに迅速に湿潤界面に移動する。
【0130】
C10~C14アルコールが三相湿潤界面に迅速に移動すると、界面活性剤分子が放出されるが、ミセルが存在しない場合、これらの界面活性剤分子も三相湿潤界面に迅速に拡散され、この結果として、三相接触線において界面活性剤分子が溶液の内部から液体/空気間期に拡散することによって生じた低エネルギー表面に非水性液体が迅速に拡散するため、スティックスリップ現象が低減される。
【0131】
湿潤組成物を加える液体は、非水性又は実質的に非水性である。
【0132】
非水性液体は、農業用組成物からなり、又は農業用組成物を含むことができる。農業用組成物は、殺有害生物剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺真菌剤、殺線虫剤、消毒剤、除草剤、肥料又は微量栄養素として使用するためのものであってもよい。一実施形態において、湿潤組成物は、窒素肥料並びにマグネシウム肥料、カルシウム肥料及びホウ素肥料又は窒素-リン-カリウム(NPK)型肥料等、植物の群葉(foliage)に施用される葉面用肥料に加えることができる。
【0133】
湿潤組成物は、農業用組成物が葉の表面を濡らすことができる能力を増大させることができる。別の実施形態において、湿潤組成物は、農業用組成物が、製材を主体とする基材の表面を濡らすことができる能力を増大させ、これによって、有害生物に対する抑制剤を提供することができる。例えば、挽材は、使用前に、殺虫剤及び/又は殺真菌剤に含浸及び/又は浸漬されてもよい。さらに、湿潤組成物は、農業用組成物が種子を濡らすことができる能力を改善することができる。例えば、種子は、発芽前の種子を保護するために、殺虫剤及び/又は殺真菌剤によってコーティングされていてもよい。湿潤系と一緒にして、種子用着色剤を加えることもできる。
【0134】
一実施形態において、本発明の湿潤組成物を含む、農業用組成物が提供される。
【0135】
非水性液体は、医薬、ニュートラシューティカルズ又は化粧品からなり、又はこれらを含むことができる。一実施形態において、液体は、薬物化合物からなり、又は薬物化合物を含む。一実施形態において、湿潤組成物は、医薬、ニュートラシューティカルズ又は化粧品が皮膚、毛髪及び/又は爪を含む人間又は動物の身体の表面を濡らすことができる能力を増大させることができる。
【0136】
記載された湿潤組成物の利点の1つは、湿潤組成物を非水性液体に加えると、湿潤組成物により、液体中のあらゆる固形分を分散させることが可能であり、したがって、固形分の「沈降(drop-out)」しやすさが低下することである。これは、他の方法で、すなわち、湿潤組成物が存在しない場合に採用され得る固形分含量より高い固形分含量の非水性液体を用いた濡れが、湿潤組成物によって可能になることを意味する。固形分含量が高い液体によって濡らす利点は、液体を固体に含浸させたときの、クロマトグラフィーによる液体の分離が少なくなることである。液体の分離が低減される結果、固体がより均一に含浸され、最終的には、固体は、強度と耐久性がより向上したものになる。固形分を分散させる別の利点は、粘性がより高い非水性液体を用いて、低エネルギー表面を濡らすことができることである。
【0137】
非水性液体は、複合型液体(complex liquid)であってもよい。複合型液体は、非水性樹脂であってもよい。樹脂は、高い粘度と、硬化又はキュアする能力とを有することができる。樹脂は、特定の樹木によって生成された天然の物質であってもよい。しかしながら、樹脂は、天然樹脂であってもよいし、又は合成樹脂であってもよい。樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂又はポリエステル樹脂であってもよく、非水性樹脂の中でも特に、エポキシビニルエステル樹脂、ラミネート加工用ポリエステル樹脂、ヒドロキシル基を含有するポリエステル変性ビニルコポリマーを含むポリエステル変性ビニルコポリマー、ヒドロキシル基を含有するビニルコポリマーを含むビニルコポリマー、非水性アクリル樹脂、アルキド樹脂及び変性アルキド樹脂、ポリウレタン及びカルバミン酸系樹脂(carbamic resin)、疎水性ポリオール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂、ビスオキサゾリジン(bisoxazolidine)樹脂、レオロジー調整用樹脂、アクリルポリオール、疎水性ポリオール、熱可塑性アクリル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、ポリエステルポリオール、飽和ポリエステル、エポキシエステルカルバミド樹脂、水分硬化性樹脂、アミンを用いて硬化を加速させる型の不飽和ポリエステル樹脂(amine accelerated unsaturated polyester resin)、アクリルポリオールが挙げられる。エポキシ樹脂等の多液型又は二液型樹脂の場合、湿潤組成物は、前述の二液型樹脂を構成する薬剤(parts)を合わせると、合わせられた樹脂による基材の濡れが硬化前に増進されるように、前述の二液型樹脂を構成する薬剤の片方又は両方の中に含まれることが可能である。例えば、二液型エポキシ樹脂製品の場合、湿潤組成物は、樹脂成分若しくは硬化剤成分又はこれらの両方の中に含まれてもよい。樹脂は、アミン型又はホルムアルデヒド型樹脂であってもよい。一部の実施形態において、樹脂は、ポリビニルクロリド樹脂、ポリビニルアセテート樹脂又はレゾルシノール樹脂である。一実施形態において、非水性液体は、紙又は木材粒子フレークを濡らすための樹脂である。
【0138】
上記を鑑みると、本発明は、非水性液体を含む様々なコーティング、例えば、油を主体とする塗料を含む油を主体とするコーティング、セルロースを主体とするコーティング、塩素化ゴムコーティング、ビニルコーティング、アクリルコーティング、変性アルキドコーティングを含むアルキドコーティング、飽和ポリエステルコーティング、不飽和ポリエステルコーティング、ポリウレタンコーティング、エポキシコーティング、シリコーンコーティング、コーティング用の尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂及びメラミン樹脂、コーティング用のフェノール樹脂、アスファルトコーティング、ビチューメンコーティング及びピッチコーティング、並びにシリケートコーティングに適用される。本発明は、植物油、桐油、アマニ油、中国桐油、並びに、デッキ用オイル、製材及び木材用のオイル、家具用オイル、ワニス及び木材用着色剤等を含む、基材をコーティング又は保護するために使用される他のオイル等のオイルにも適用することができる。本発明は、上記コーティング中に使用される非水性バインダー及び樹脂を含む、非水性バインダー及び樹脂にも適用される。
【0139】
特に塗料に関しては、塗料は、バインダーと、バインダーの粘度を低下させる必要がある場合、溶媒等の希釈剤とから構成される、ビヒクルから構成される。したがって、塗料は、一般に、バインダーと希釈剤との組合せである。溶媒は粘度を低下させて、ある程度効率が向上した基材の広がり及び浸透を可能にする。しかしながら、任意の固体表面上において任意の液体が広がり及び浸透する速度は、液体の粘度と、表面張力、すなわち、液体と表面との界面エネルギーとを2つの主要な因子とする、毛管力(Laplace力)を動力とする粘性流によるものであることは、流体の流れに関する物理学の基礎である(Roberts R.J.2004 https://openresearch-repository.anu.edu.au/handle/1885/49373)。したがって、本発明の湿潤組成物の添加は、バインダーの表面張力を大幅に低下させ、溶媒と相まって、バインダーの広がり及び浸透をさらに改善する。ある材料の表面をバインダー又は樹脂によってコーティングすることが必要な場合、他の非水性系を用いたときにも同様の効果が得られる。
【0140】
塗料がキュアしたときには希釈剤の実質的にすべてが蒸発しているが、バインダーのみは、コーティングされた表面に残っている。塗料の表面上での硬化の開始(皮張り)前にバインダーが効果的に広がらなかった場合、得られる仕上げ塗膜は粗く、不具合のあるものである。
【0141】
バインダーは塗料の塗膜形成成分であり、硬化の前に広がらなければならない。バインダーは、様々な種類の配合物のすべてに常に存在する、唯一の成分である。数多くのバインダーは厚すぎて塗布できないため、薄めなければならない。シンナーが存在する場合、シンナーの種類は、バインダーに応じて異なる。しかしながら、表面張力が低下して、より迅速なバインダーの流動及び浸透が可能になると、より滑らかな表面が生じる。光沢、耐久性、柔軟性及び靭性等の特性を付与するのが、バインダーである。上述のように、これらのバインダーは、アルキド、アクリル樹脂、ビニルアクリル樹脂、ビニルアセテート/エチレン(VAE)、ポリウレタン、ポリエステル、メラミン樹脂、エポキシ、シラン又はシロキサン等の合成又は天然樹脂を含む。
【0142】
一実施形態において、本発明の湿潤組成物を含む、樹脂が提供される。
【0143】
コンクリートを形成するために使用されるセメント組成物に湿潤組成物を加えて、コンクリートの広がり又は流動性を向上させ、コンクリートの浸透を補助することもできる。
【0144】
湿潤組成物を非水性液体に加えると、非水性液体の表面張力が低下する。湿潤組成物を加えると、非水性液体の表面張力は、湿潤組成物が存在しない場合における同じ非水性液体の表面張力との比較で低下する。したがって、湿潤組成物を含む非水性液体の接触角は、低エネルギー疎水性表面上においては、湿潤組成物が存在しない場合における同じ非水性液体との比較で小さくなるということになる。非水性液体に加えられた場合の湿潤組成物は、非水性液体と一緒になって、低エネルギー表面の濡れ性を増大させる。言い換えると、湿潤組成物を使用して、疎水性表面の非水系濡れ性を増大させることができる。
【0145】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つの湿潤組成物を非水性液体に加えるステップを含む、非水性液体の表面張力を低下させる方法が提供される。
【0146】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つの湿潤組成物と、非水性液体とを含む、非水性液体状組成物が提供される。湿潤組成物を含む非水性液体状組成物は、湿潤組成物が内部に存在することによって表面張力が低下した組成物であってもよい。
【0147】
湿潤組成物を含む非水性液体状組成物は、表面張力が低下した樹脂組成物又は農業用組成物であってもよい。
【0148】
本発明の湿潤組成物は、任意の手段によって非水性液体に加えることができる。一実施形態において、湿潤組成物は、非水性液体に滴下される。湿潤組成物の添加は、手動により実施することもできるし、又は、送達システムをプログラムするコンピュータによって制御することもできる。異なる非水性液体は、望ましい表面張力の低下を達成するために異なる量の湿潤組成物を必要とする。一部の実施形態において、湿潤組成物は、漸増的に加えられる(注記:C10~C14アルコール及び界面活性剤は、やはり一緒に加えられる。)。各増分を加えた後では、非水性溶液を、その表面張力及び低エネルギー又は疎水性表面を濡らす能力について観察することができる。一旦望ましい濡れが達成されたら、さらなる量の湿潤組成物を非水性液体に加える必要はない。代替的には、既知量の湿潤組成物を非水性溶液に加えることもできる。この既知量は、事前の実験に基づいて決定することができる。
【0149】
非水性液体に加えられる湿潤組成物の量は、望ましくないミセル形成がないため、限定されない。したがって、ミセルが形成する濃度(臨界ミセル濃度)に至るまではある特定のレベルの濡れ性に達する界面活性剤とは異なり、本発明の湿潤組成物は、Teflon又は表面エネルギーが非常に低い他の表面等、濡れが非常に難しい表面上における湿潤を改善するために、任意の実用的な濃度に至まで加えることができる。一部の実施形態において、量を増やした湿潤組成物を液体に加えると、非水性液体の表面張力をさらに低下させることができる。
【0150】
非水性液体に加えられた湿潤組成物の量は、湿潤組成物が、表面に対する非水性液体の濡れ性に有利な影響を及ぼすことを確実にするものにすべきである。非水性液体に加えられる湿潤組成物の量は、約10vol%、5vol%、4vol%、3vol%、2vol%、1.5vol%、1vol%、0.15vol%、0.05vol%、0.10vol%又は0.005vol%であり得る。一実施形態において、湿潤組成物は、0.1~5vol%、0.5~4vol%及び1~3vol%から選択される範囲の量で非水性液体に加えられる。多すぎる湿潤組成物が加えられた場合は、無駄な費用になる可能性がある。少なすぎる湿潤組成物が加えられた場合、湿潤には望ましい効果が及ぼされない。一部の実施形態において、前述の量の湿潤組成物を加えると、約0.5wt%、0.3wt%、0.1wt%又は0.15wt%のC10~C14アルコールを有する非水性液体が生じる。湿潤組成物の過剰投入によって起きる唯一の悪影響は、濡れが迅速に起きすぎることであると思われるが、これは、ほとんど問題になることはない。より低い用量の湿潤組成物を使用して、慣用的な界面活性剤との比較で非水性液体の濡れ性を改善することができる。
【0151】
臨界ミセル濃度に到達したらすぐに、ミセル形成により、界面活性剤が表面張力を低下させることができる能力が制限される可能性がある慣用的な界面活性剤とは異なり、本発明の湿潤組成物は、非水性液体に達する湿潤組成物の用量が増えていくのに伴って、表面張力の低下を増進し続けることができる。
【0152】
非水性液体への湿潤組成物の添加後、非水性液体の表面張力は、約70ダイン/cm未満に低下し得る。特定の実施形態において、有利なことに、湿潤組成物は、非水性液体の表面張力を約25ダイン/cm未満、24ダイン/cm未満、23ダイン/cm、22ダイン/cm未満、21ダイン/cm未満、20ダイン/cm未満、19ダイン/cm未満又は18ダイン/cm未満に低下させることができる。一部の実施形態において、表面張力を可能な限り小さくすることが望ましいこともある。他の複数の実施形態において、現在のアニオン性、カチオン性及び非イオン性界面活性剤によって達成される表面張力の低下をわずかに下回る程度に表面張力を低下させることのみが必要な場合もある。他の複数の実施形態において、現在のスーパースプレッダーの表面張力と同様の表面張力、すなわち、23ダイン/cm未満の表面張力を得ることが望ましいこともある。他の複数の実施形態において、現在の有機シリコーンスーパースプレッダーの表面張力、すなわち、20ダイン/cm未満の表面張力を得ることが望ましいこともある。他の複数の実施形態において、現在のフッ素系界面活性剤スーパースプレッダーの表面張力と同様の表面張力、すなわち、18ダイン/cm未満の表面張力を得ることが望ましいこともある。望ましい表面張力は、当業者ならば決定することが可能であり、この決定を行うのに必要な相応の量の湿潤組成物を加えることができる。
【0153】
非水性液体への湿潤組成物の添加は、濡れ性の改善を反映する、表面における非水性液体の非水系静的又は前進接触角にも影響し得る。一部の実施形態において、非水性液体の前進接触角は、約90°未満、80°未満、70°未満、60°未満、50°未満、40°未満、30°未満、20°未満、10°又は5°未満に減少させることができる。一実施形態において、非水性液体の前進接触角は、10°未満に減少させることができる。望ましい濡れ性は、当業者ならば決定することができる。
【0154】
本発明の湿潤組成物は、表面エネルギーが低い表面上における非水性液体の広がりを補助するための「スーパースプレッダー」として作用することができる。本発明の湿潤組成物は、現在公知の有機シリコーン界面活性剤又はフッ素系界面活性剤に比べて少なくとも同等又はそれを上回るレベルで性能を発揮することができる。
【0155】
低エネルギー表面の濡れ性の増大は、本発明の湿潤組成物を含む非水性液体によって表面をより素早くコーティングすることができることを意味し得る。低エネルギー表面の濡れは、本発明を用いない液体の場合より10倍、100倍又は1000倍速いものであり得る。これは、コスト及び時間の節約を意味する。一部の実施形態において、基材の表面をコーティング又は含浸するのに必要な非水性液体がより少なくなっているが、これもやはり、著しい商業的な利益を意味する。コーティングを設けるのに必要な液体の量の低減は、製品品質にいかなる悪影響も与えないようにすべきである。樹脂コーティングに関しては、一部の実施形態において、必要とされる樹脂がより少なくなるが、樹脂によってコーティングされた又は樹脂を含浸させた最終製品の耐テーバー摩耗性、耐スクラッチ性、耐汚染性及び/又は耐衝撃性には何の変化もない。
【0156】
本発明によって(すなわち、湿潤組成物の添加によって)変性された樹脂によってコーティングされた木材粒子フレークを含む物品は、改善された機械加工性を有し得る。改善された機械加工性は、「チップアウト(chip-out)」の発生が低減されること、すなわち、ラミネートの付着及びパネルの強度にとって決定的に重要である、樹脂によって処理されていない個々のフレーク又は複数のフレークからなる群がパネルの表層から除去されることが低減されることを意味する。これは、個々のフレーク上における樹脂の分配が改善され、フレーク間の樹脂の分配のバラつきが減少することに起因すると考えられている。この実施形態における本発明の湿潤組成物の使用により、樹脂とフレークとを混合するように設計されたブレンダーを柔軟に設定することができる。この結果、モータ電流を低減し、電力を節約することができる。樹脂の分配に関しては、樹脂の使用量を低減し、並びに/又は、使用される木材の密度を低下させ、この結果として、使用される木材の量を低減することが見込まれるが、これは必然的に、コスト削減につながる。
【0157】
本発明のさらなる一態様によれば、
本発明の実施形態の湿潤組成物を非水性液体に加えるステップと;
低エネルギー表面を、湿潤組成物を含む非水性液体と接触させるステップと
を含む、表面エネルギーが相対的に高い非水性液体によって低エネルギー表面を濡らす方法が提供される。
【0158】
湿潤組成物を含む液体の接触角は、低エネルギー表面上においては、湿潤組成物が存在しない場合における同じ液体の接触角との比較で小さくなっている。
【0159】
接触角を判定するための方法は、当業者に公知である。例えば、接触角測定法は、適切な方法の一例である。接触角測定法は、目的とする非水性液体に及ぼされる湿潤組成物の効果と、処理された非水性液体が葉、製材、紙等の目的とする基材を濡らすことができる能力とを直接判定することができる。
【0160】
本発明の湿潤組成物を非水性液体に加えることにより、疎水性表面を、非水性液体によって素早く、ほぼ完全に濡らすことができる。湿潤組成物中のC10~C14アルコールは、湿潤作用を妨害する界面活性剤ミセルが形成する可能性を低下させると考えられている。
【0161】
低エネルギー表面は、基材の一部を形成してもよいが、本明細書に記載の湿潤組成物の使用により、非水性液体による基材の濡れを改善することが望ましい場合もある。
【0162】
本発明の湿潤組成物を含む非水性液体によって濡らされることが望ましい基材は、限定されない。基材は、相対的に大きい一続きの表面積を有することもできるし、又は基材が粒子状であってもよい。基材は、繊維状であってもよいし、又は多孔性であってもよい。一実施形態において、基材は、紙である。別の実施形態において、基材は、ガラス繊維断熱材等の人工繊維である。基材は、グラスファイバー製造用のガラス繊維であってもよい。繊維は、航空宇宙産業、自動車製造、土木工学用鉄筋コンクリート、ラッピング、パネル材、保護ケーシング及び他の炭素繊維製品の使途等、製造業用途向けの織布型又は不織布型材料に使用するための炭素繊維であってもよい。本発明の湿潤組成物は、合成繊維の中でも特にナイロン、ポリエステル、Kel-F及びTeflon、オレフィン、ポリエステル、レーヨン、スパンデックス、アラミド、Orlon、Zylon、Derclon、Vecran、アセトニトリル等が挙げられる、前述の低エネルギー合成織布型若しくは不織布型又は固体材料への樹脂の含浸又は広がりを改善するために使用することもできる。基材は、天然物であってもよい。一実施形態において、基材は、皮革である。基材は、天然繊維又は合成繊維を含むことができる。天然繊維は、ウールであってもよい。天然繊維は、処理されたウール、例えば、皮革処理されたウールであってもよい。合成繊維は、PTFE、ポリエステル、ナイロン、アクリル、レーヨン、アセテート、スパンデックス、アクリル(例えば、Orlon(商標))又はパラアラミド(例えば、Kevlar(登録商標))を含み、又はこれらから構成されることができる。基材は、ポリ(テトラフルオロエチレン)(Teflon(登録商標))等の合成ポリマーであってもよい。基材は、種子であってもよい。基材は、植物の葉を含む群葉、芽、茎及び根であってもよい。基材は、木材を主体とするものであってもよいし、又は製材を主体とするものであってもよい。製材を主体とする製品には、楽器等の木工品;竹製物品;トウ製の杖及びトウ製の製品;コルク製品並びに枝編み細工製品が挙げられる。他の製材を主体とする製品には、チップボード、ハードボード、中密度ファイバーボード(MDF)及び高密度ファイバーボード、配向性ストランドボード及びパーティクルボードを含む、挽材、合板、単板及び再生木材製品(reconstituted wood product)が挙げられる。基材は、群葉を主体とするものであってもよい。群葉を主体とする基材は、葉、枝、種子、茎、樹皮、根、又は、生きている植物若しくは枯れた植物の任意の部分であってよい。基材は、再生木材製品の構成要素であり得る木材粒子フレークであってもよいし、又は、殺虫剤又は殺真菌剤を含浸、例えば加圧含浸させ、若しくは殺虫剤又は殺真菌剤によって浸漬された挽材であってもよい。
【0163】
望ましくは、湿潤組成物を含む非水性液体によって濡らされた基材の表面は、低い表面エネルギーを有する。表面は、約50ダイン未満、40ダイン未満、30ダイン未満又は25ダイン未満の表面エネルギーを有し得る。基材の表面は、疎水性であってもよい。「疎水性」は、表面が、約90°超、100°超、110°超、120°超、130°超、140°超、150°超、160°超、170°超又は175°超の静的又は前進水接触角を有することを意味する。疎水性は、基材の表面のうちで最も上にある数層の化学的機能性によって付与され得る。代替的には、又はさらには、疎水性は、表面粗さによってもたらされる。表面粗さは、表面の多孔度と、粗さをもたらす他の形態的特徴とを含む。
【0164】
湿潤組成物を使用して、表面への非水性液体の液滴の広がりを増進することができる。湿潤組成物を使用して、基材への非水性液体の浸透を増進することができる。非水性液体の浸透により、多孔性基材に非水性液体を含浸させることができる。
【0165】
表面の濡れ性は、当業者に公知の任意の手段によって測定することができる。濡れ性は、接触角測定法によって判定することができる。有利には、濡れ性は、セシル・ドロップ(sessile drop)(又は静滴(static drop))測定を用いて判定される。
【0166】
濡れ性はペンダント・ドロップ角度測定法等、水を含む非水性液体の表面張力の変化を測定する方法を用いて、判定することができる。湿潤組成物を含有しない非水性液体は、比較対象として使用することが可能であり、この場合、表面張力の低下は、比較対象を基準にして評価される。
【0167】
代替的には、濡れ性は、任意選択によりWilhelmy天秤を使用して測定された前進接触角及び/又は後退接触角の測定値を用いて、判定される。いかなる比較データも、同じ時刻の濡れ性の測定値を使用するべきである。
【0168】
湿潤組成物は、農業用組成物が群葉の表面を濡らすことができる能力を増大させることができる。別の実施形態において、湿潤組成物は、農業用組成物が、製材を主体とする基材の表面を濡らすことができる能力を増大させ、これによって、有害生物に対する抑制剤を提供することができる。例えば、挽材は、使用前に、殺虫剤及び/又は殺真菌剤に含浸及び/又は浸漬されてもよい。さらに、湿潤組成物は、農業用組成物が種子を濡らすことができる能力を改善することができる。例えば、種子は、発芽前の種子を保護するために、殺虫剤及び/又は殺真菌剤によってコーティングされていてもよい。湿潤系と一緒にして、種子用着色剤を加えることもできる。
【0169】
基材の表面は、湿潤組成物を含む非水性液体によってコーティングし、又はこの非水性液体を含浸させることができる。基材表面が非水性液体によってコーティングされた実施形態において、有利には、利用可能な全表面積の少なくとも約90%、80%、70%、60%又は50%がコーティングされている。多孔性基材表面に含浸させた実施形態において、有利には、利用可能な全空隙の少なくとも約90%、80%、70%、60%又は50%は、液体によって満たされている。
【0170】
本発明の別の態様において、本明細書に記載の湿潤組成物を含む非水性液体状組成物によってコーティングされた、又はこの非水性液体状組成物を含浸させた低エネルギー表面を有する、製品が提供される。製品は、非水性液体状組成物によってコーティングされ、又は非水性液体状組成物を含浸させた紙又はパーティクルボードであってもよい。一実施形態において、濡らしたい基材は、本発明の湿潤組成物を含む非水性液体状組成物によってプレコーティングされ、又はこの非水性液体状組成物を予備含浸させてもよい。基材のプレコーティング又は予備含浸は、基材と、後で施用されるものである、やはり湿潤組成物によって処理された非水性液体状組成物との接触を改善するのに役立つ可能性がある。例えば、パーティクルボードフレークを、本発明の湿潤組成物を含む非水性液体状組成物によって(例えば、湿潤組成物を含有する非水性液体をフレークにスプレーすることによって)プレコーティングした後、他のフレークと結合させて、パーティクルボードを形成することもできる。プレコーティングされたフレークは、パーティクルボードの表面エネルギーの増大を補助することができ、これにより、やはり湿潤組成物を含む非水性液体状組成物によってパーティクルボードをより容易に濡らすことが可能になる。
【0171】
本発明の湿潤組成物を使用して、表面エネルギーが修正された基材を形成することができることも発見された。例えば、パーティクルボード基材の表面エネルギーは、本発明の湿潤組成物を含む非水性液体によってプレコーティングされたパーティクルボードフレークを用いてパーティクルボードを形成することによって、修正することができる。これにより、水性又は非水性液体であり得る通常の樹脂等の通常の液体によって、パーティクルボードをより容易に濡らすことができる。一部の実施形態において、湿潤組成物は、パーティクルボード基材の表面エネルギーを増大させることができ、これにより、パーティクルボードと、パーティクルボード基材を濡らすことが望ましい液体(例えば、樹脂)との界面エネルギーを低下させて、基材上に液体をより効果的により広く広げることを可能にすると考えられている。これにより、樹脂がパーティクルボード基材を濡らすことができる能力を向上させることが可能であり、パーティクルボードの曲げ強度及び引張強度等の基材の機械的特性を改善することができる。
【0172】
次に、以下の実施例を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、これらの実施例は、いかなる点においても限定を加えるものではない。
【実施例
【0173】
湿潤組成物を調製するための一般的な手順
後述する実施例の湿潤組成物を形成するために、所望の量の界面活性剤を所望の量のC10~C14アルコールと合わせることによって、初期混合物を形成する。次いで、初期混合物を所望の量の水又はエタノールと合わせる。次いで、成分を混合して、湿潤組成物を得る。水は高エネルギー液体であるため、大抵の場合、湿潤組成物の湿潤能力は、液体として水を使用して実証された。しかしながら、これは、他の非水性液体、特に、接触して濡らすべき表面よりエネルギーが高い非水性液体と一緒に使用された場合の湿潤組成物の能力を実証していることを理解されたい。
【0174】
(実施例1~6)
湿潤組成物、及び表面張力に及ぼされる湿潤組成物の効果
表1に詳細に記載のように、上記一般プロトコルを用いて、多種多様な種類及び量の成分を含有する多種多様な湿潤組成物を調製した。
【0175】
調製した湿潤組成物試料を、超純水によって希釈して、0.1wt%、0.5wt%及び1.0wt%の濃度の湿潤組成物を有する水性組成物を形成した。次いで、調製した試料の表面張力を、ペンダント・ドロップ角度測定法によって評価した。水のみ又は水と界面活性剤のみ又はC12アルコールのみからなる参照用試料(R1~R4)、及び1-オクタノール(C8アルコール)と界面活性剤とを含有する比較例(CE1)も調製し、試験した。
【0176】
ペンダント・ドロップ角度測定法を用いて、異なる濃度の試験組成物を含有する水性組成物の表面張力(mN/m)の測定を実施した。超純水を使用して、4.0002mmのチタンボールを使って画像を補正した後に20℃でゴニオメーターをチェックした。
【0177】
表1では、ペンダント・ドロップ角度測定法の表面張力の結果及び濃度効果も示されている。示されている結果は、液体と、濃度の差との両方のp値が0.001未満である、分散分析の要約である。
【表1】
【0178】
結果:
表1にみられるように、超純水の表面張力は、20℃で約72mN/mだった。本発明の湿潤組成物は、水の表面張力を、試験された濃度のうちの1つ以上で24mN/m未満の値に著しく低下させることが可能だった。
【0179】
異なる濃度で水の表面張力に及ぼされる実施例6の湿潤組成物の効果も、図1図3に示されている。
【0180】
図1~3に見られるように、非イオン性界面活性剤及びドデカノールと、25%の量のエタノールとを含有する湿潤組成物を水に加えると、水の表面張力が低下し、表面張力は、時間の経過に伴って低下し続けた。
【0181】
(実施例7)
湿潤組成物と農業用組成物との相溶性
本発明の湿潤組成物と、商用除草剤濃縮物との相溶性を評価する。
【0182】
除草作用のある組成物を、1%(w/w)の濃度になるように水で希釈し、選択した湿潤組成物を、2%(w/w)の濃度で下記の除草作用のある組成物に加える。
【0183】
試験された除草作用のある組成物は、次のとおりである。
・ Glyphosate 360g/l(Roundup(登録商標))
・ MCPA(2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸)広葉樹用除草剤
・ Grazon 100g/lのブトキシエチルエステルとして存在する300g/Lのトリクロピル
・ Picloram 木本雑草用除草剤
・ BrushOff(登録商標)(メトスルフロンメチル粉末)。水和剤である600g/kgの木本雑草用雑草用除草剤
・ 2,4D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)広葉樹用除草剤
【0184】
湿潤組成物を含有する除草作用のある混合物は、安定である。
【0185】
(実施例8)
湿潤組成物と樹脂組成物との相溶性
水溶液中における本発明の湿潤組成物と、最大65%の固形分を含有するメラミン尿素ホルムアルデヒド樹脂との相溶性を評価する。
【0186】
2%(w/w)の量の湿潤組成物を、樹脂に加える。固形分は、湿潤組成物と反応せず、湿潤組成物を含有する樹脂は、安定なエマルションの状態である。
【0187】
(実施例9)
湿潤組成物と葉面肥料との相溶性
湿潤組成物と、硫酸アンモニウム、ドロマイト及び石膏分散物、銅塩、(カルシウム)並びに様々な窒素型葉面肥料等の液体状葉面肥料との相溶性を試験する。湿潤組成物を含有する肥料は、安定である。
【0188】
(実施例10)
パーティクルボードフロアリング中への湿潤組成物の使用
0.2%湿潤組成物を、シングルデイライト式パーティクルボードプレスで製造したフロアリングの表面と芯の両方に加えることによって、フロアリングを製造した。
【0189】
(実施例11)
グラスファイバー
ビニルエステル樹脂SPV1265は、グラスファイバー製屋根用パネルの製造をはじめとして、数多くの他の用途で使用されている。ビニルエステル樹脂SPV1265を不織布型グラスファイバーマットと織布型グラスファイバーマットとの両方に含浸させた後、望ましい形状に成型しながら触媒及びある程度の熱を用いてキュアする。ビニルエステル樹脂SPV1265は、このようなマットに含浸させるのが非常に難しい物質であり、したがって、キュアした最終的なパネルは、樹脂の含浸が不十分であるため、非常に雑然としたものに見えることがある。これは、ビニルエステル樹脂の高い表面張力によるものである。樹脂含浸を改善するために、製造業者は、グラスファイバーマットの表面エネルギーを増大させるという目的で、マットを完全に乾かす直前にフッ素系界面活性剤の溶液を加えた後で圧延を行うステップを、一連のグラスファイバーマットの製造シーケンスに追加しなければならなかった。これは非常に高価であり、プロセスを遅くしもする。フッ素系界面活性剤もまた有毒性であり、土壌水中で安定であり得る(硬化後であっても、つまりは、埋立地から数十年間にわたって、地下水を人間又は動物の消費用として有毒性のものに変える)。
【0190】
グラスファイバーマットに含浸させようとするビニルエステル樹脂(フッ素系界面活性剤を含有しない)に、湿潤組成物を加えるという解決策が見出された。湿潤組成物を0.5%でビニルエステル樹脂に加えた場合、樹脂は、Klemm試験(TAPPI)によって測定したとき、格段に速くなった速度でグラスファイバーマットに含浸したが、これは、グラスファイバーマットが5分以内に20mmの高さまで迅速にウィッキングにより吸い上げられたことを示している。湿潤組成物が加えられなかった場合は、ウィッキングが全く観察されなかった。使用した湿潤組成物は、次の組成を有していた。
【表2】
【0191】
(実施例11)
モデル用Teflon表面上の非水性液体
モデル用Teflon表面上における、表1の実施例1、2、3、5及び6の様々な湿潤組成物と、アマニ油及び桐油との相溶性及び広がりの試験を実施した。アマニ油及び桐油という製品は両方とも、コーティング及び塗料業界において、バインダーとして幅広く使用されている。
【0192】
すべての湿潤組成物は、純粋な(無希釈の)アマニ油及び桐油と完全に相溶し、さらには、ミネラルテルペンチンによって希釈されたアマニ油及び桐油とも相溶した。AWT配合物の用量の率は、より高い濃度でも相溶性を確保するために、3体積%だった。純粋な油の相溶性を試験した後、油/湿潤組成物混合物の体積により50%のミネラルテルペンチンを加えて、ミネラルテルペンチンとの相溶性についても試験した。
【0193】
試験時の温度は18℃だったため、上述のアマニ油及び桐油は両方とも、非常に粘性が高いものだった。
【0194】
試験された各湿潤組成物は、アマニ油と桐油との両方に完全に相溶するものであることに加えて、モデル用Teflon表面上における未処理の油の広がりを同じように改善した。これらの組合せのすべては、希釈済み及び無希釈のアマニ油及び桐油に加えた場合、モデル用Teflon表面上でより迅速に広がった。
【0195】
これらの湿潤組成物は、それぞれ水溶液と相溶するため、これらの湿潤組成物のそれぞれが非水性バインダーとも相溶することは、非常に有利なことである。
【0196】
当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、数多くの変更形態が明らかであろう。
【0197】
以下の特許請求の範囲では、そうではないことが文脈により要求されていない限り、「含む」という語句並びに「備える」及び「具備する」等の変更形態は、記載された整数若しくはステップ又は複数の整数若しくはステップからなる群を含意し、いかなる他の整数若しくはステップ又は複数の整数若しくはステップからなる群も排除しないものとして理解される。
【0198】
本明細書における何らかの既発表刊行物(若しくはその刊行物から得られる情報)又は何らかの既知の事項への言及は、当該既発表刊行物(若しくはその刊行物から得られる情報)又は既知の事項が、本明細書が関する試みの範囲(field of endeavour)の一般常識の一部を形成することに認定若しくは承認又は何らかの形式の示唆を与えるものとして解されるべきでない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】