(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】圧縮コラーゲンの作製及び使用
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20230119BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20230119BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A61F2/44
A61L27/24
A61L27/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526052
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 AT2020060387
(87)【国際公開番号】W WO2021087539
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522176713
【氏名又は名称】3デー スパイン マトリックス バイオテクノロジー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルガールト、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クラブラー、アレックス
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081BA12
4C081BB08
4C081CD121
4C081EA02
4C081EA11
4C097AA10
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC04
4C097DD05
4C097EE19
4C097FF05
4C097MM02
4C097MM03
4C097MM04
(57)【要約】
本発明は、以下を含む、圧縮コラーゲンを製造するための方法に関する:
a)ゲル化コラーゲンを第1の押圧方向に押圧すること;
b)工程a)のゲル化コラーゲンを、第1の押圧方向に実質的に直交する第2の押圧方向に押圧すること、
ただし、工程a)における押圧は、0.01~0.05バールの範囲の圧力で行われ、段階b)における押圧は、0.5バール~2バールの範囲の圧力で行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、圧縮コラーゲンを製造するための方法:
a)ゲル化コラーゲンを第1の押圧方向(6)に押圧すること;
d)工程a)からの前記ゲル化コラーゲンを、前記第1の押圧方向(6)に実質的に直交する第2の押圧方向(9)に押圧すること、
ただし、
工程a)における押圧は、0.01~0.05バールの範囲の圧力で行われ、工程b)における押圧は、0.5バール~2バールの範囲の圧力で行われる。
【請求項2】
工程a)における押圧が、0.012~0.03バールの範囲の圧力、好ましくは0.01833バールで行われ、及び/又は工程b)が、1バール~1.5バールの範囲の圧力、好ましくは1.01551バールで行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
押圧が、直線的に増大するか又は段階的に増大する圧力により行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)が、1~48時間、好ましくは6~24時間、さらにより好ましくは8~18時間、さらにより好ましくは10~14時間、とくに12時間行われ、及び/又は
工程b)が、6~96時間、好ましくは12~72時間、さらにより好ましくは24~66時間、さらにより好ましくは30~60時間、さらにより好ましくは36~54時間、さらにより好ましくは42~52時間、さらにより好ましくは46~50時間、とくに48時間行われる
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ゲル化コラーゲンが、溶液1mL当たり、1~20mg、より好ましくは1~10mg、さらにより好ましくは2mg~8mg、さらにより好ましくは4mg~6mg、とくに5.5mg~6.5mgの溶解されたコラーゲンを含むコラーゲン含有溶液をゲル化することによって提供されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
コラーゲン含有溶液が、好ましくは4.5~5、より好ましくは4.6~4.9、とくに4.7~4.8のpK
S値を有する有機酸を0.01~1%、好ましくは0.05~0.5%、好ましくは0.01~0.2%、とくに0.1%含む第1の水溶液中でコラーゲンを溶解させることによって調製されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
溶解されたコラーゲンのゲル化が、pH上昇剤を添加することによって行われることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
pH上昇剤が、緩衝物質であり、好ましくは2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)-エタンスルホン酸(HEPES)であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
圧縮コラーゲンが、第2の水溶液を含有する受容容器に移されることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
第2の水溶液が塩含有溶液であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の方法によって得ることが可能な圧縮コラーゲンを含むコラーゲン含有製品。
【請求項12】
請求項11に記載のコラーゲン含有製品を含むインプラント。
【請求項13】
インプラントが、髄核代替物、半月板代替物、靭帯代替物及び/又は腱代替物として適していることを特徴とする、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
150mg/mLより高い密度、好ましくは200mg/mLより高い密度、最も好ましくは240mg/mLより高い密度を有する圧縮されたコラーゲンを含む、コラーゲン含有製品又はインプラント。
【請求項15】
以下を含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法を実施するための装置(1):
a.底部(3)及び少なくとも1つの壁(4)によって画定された内部空間(5)を含む容器(2)であって、前記内部空間(5)中にゲル化された水含有コラーゲンを受容するのに適合している容器(2)、及び
b.前記容器(2)の前記内部空間(5)を閉鎖し、基部の方向に延びる第1の押圧方向(6)に動かすことが可能なピストン(7)、
ただし、前記少なくとも1つの壁(4)は、セグメントを含み、これらのセグメント(8)のうちの少なくとも1つは、前記第1の押圧方向(6)に実質的に直交して配向された第2の押圧方向(9)に動かすことが可能であることを特徴とする。
【請求項16】
基部(3)、少なくとも1つの壁(4)及び/又はピストン(7)が、前記内部空間(5)に開口する、容器(2)の内部空間(5)から水を除去するための少なくとも1つの開口部(10)を有することを特徴とする、請求項15に記載の装置(1)。
【請求項17】
容器(2)の内部空間(5)から水を除去するための少なくとも1つの開口部(10)が、水を受容するための少なくとも1つのさらなる容器(11)に連結されていることを特徴とする、請求項15又は16に記載の装置(1)。
【請求項18】
少なくとも1つの固定手段(12)を含み、該固定手段は、容器(2)上の第1の押圧方向(6)及び/又は第2の押圧方向(9)の端部位置において、前記第1の押圧方向(6)に動かすことが可能なピストン(7)、及び/又は前記第2の押圧方向(9)に動かすことが可能なセグメント(8)を固定するように設計されていることを特徴とする、請求項15~17の1項に記載の装置(1)。
【請求項19】
請求項1~8のいずれかに記載の方法における、請求項15~18のいずれかに記載の装置(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、椎間板ヘルニアの外科的処置のためのインプラントとして使用され得る圧縮されたゲル化コラーゲンに関する。
【背景技術】
【0002】
動物、とくに哺乳動物及びヒトにおける関節の摩耗はよく見られる問題である。この摩耗の原因は、多様なものであり得、肥満又は不適切な姿勢、病理学的原因、身体活動低下又は加齢などによるストレス上昇又は過度の労作に起因し得る。多くの場合、上記の原因により起こる、関節での衝撃吸収材として働く軟骨組織の損傷は、関節の摩耗の増加につながる。関節における摩耗の結果には、身体の他の部分にも広がり得る疼痛及び運動制限が含まれる。摩耗した関節に対する1つの可能な処置は、関節置換術(即ち内部プロテーゼ)又は軟骨移植若しくは軟骨細胞移植を伴う外科手術である。
【0003】
軟骨組織が決定的な役割を果たす臨床像は、椎間板ヘルニアである。椎間板は、頸椎、胸椎及び腰椎の椎体の間に位置する圧力弾性椎間板である。椎間板は変形可能であり、限定的な圧縮性及び伸長性を有する。これらの特性のため、椎間板は脊椎の動きに関与する。椎間板及び脊椎関節は、強い機械的ストレスを受けた場合も弾性的に反応する機能単位を形成する。
【0004】
椎間板は、内側のゼラチン状のコア(髄核)からなる。この組織は、細胞が少なく、約80%の水からなり、線維芽細胞及び2型コラーゲンからもなる。線維軟骨組織(線維輪)は髄核を取り囲んでいる。硝子軟骨は、椎間板と椎体の骨との上下の境界面で見られる。
【0005】
変性過程は、加齢に伴い椎間板の裂傷を引き起こす。脊椎のジャーキーツイスティング(jerky twisting)などのその後の圧力負荷の後、髄核が線維輪を通過するが、これには典型的には突然の痛みが伴う。この病的過程は、椎間板ヘルニアと呼ばれる。
【0006】
漏出した髄核物質は、神経刺激及び/又は傷を生じさせ得、疼痛、とくに脚若しくは腕への放散、又は感覚障害及び脱力につながる。
【0007】
現在の治療選択肢は、通常、疼痛を解消するだけであり、原因自体を排除するものではない。椎間板ヘルニアは、理学療法又は鎮痛剤などの非手術的処置と、椎間板の突出部分を除去する髄核摘出術などの外科的処置との両方で処置される。髄核摘出術の後、例えば、置換材料を埋め込み得る。
【0008】
国際公開第2012/004564号パンフレットは、とりわけ、コラーゲンの圧縮によって得られる生体材料を作製するための方法を記載している。
【0009】
独国特許出願DE10026789A1号明細書は、少なくとも1.5mg/mLの非圧縮コラーゲンを含む軟骨代替物としての生体マトリクスを開示する。非圧縮コラーゲンバイオマトリクスは一般に、その強度が低いために、髄核など、高い機械的ストレスを受けるコラーゲンに対する代替物としては適さない。
【0010】
髄核物質に対する代替物として使用され得るバイオマトリクスの例は、とりわけ、独国特許出願公開第10241817A1号明細書で開示されている。そこに記載されている生体マトリクスは、好ましくはゲル化コラーゲン線維を使用し、これはその後圧縮され、それによって最大1000mg/mLの最終コラーゲン濃度が可能である。圧縮は、例えば、一次元的に加えられる圧力によって行われる。
【0011】
独国特許出願公開第10241817A1号明細書で開示されているように、一次元的な圧縮は、非圧縮方向と比較して圧縮方向においてより高い強度をもたらす。しかし、この一次元圧縮材料は、例えば髄核に対する代替物としてのその使用に十分な強度を確保していない。
【0012】
したがって、本発明の目的は、とりわけ、例えば髄核に対する代替物として使用するための、高密度、従って高い強度を有する圧縮コラーゲンを含むバイオマトリクスを提供することである。
【発明の概要】
【0013】
驚くべきことに、少なくとも二次元的に押圧された圧縮ゲル化コラーゲンは、一次元のみで押圧されているか又は全く押圧されていないゲル化コラーゲンよりも高い強度を有することが分かった。したがって、本発明の第1の態様は、圧縮コラーゲンを作製するための方法であって、
a)ゲル化コラーゲンを第1の押圧方向に押圧し;
b)工程a)のゲル化コラーゲンを、第1の押圧方向に実質的に直交する第2の押圧方向に押圧する
工程を含み、
工程a)における押圧が、0.01~0.05バールの範囲の圧力で、工程b)における押圧が、0.5バール~2バールの範囲の圧力で実施される、
方法に関する。
【0014】
本発明による方法では、ゲル化コラーゲンを最初に一方向に押圧する。続いて、第1の方法工程からの一次元的に圧縮されたコラーゲンが第1の押圧方向に実質的に直交する第2の押圧方向にさらに押圧される、第2の工程が行われる。この第2工程において、例えば髄核代替物として使用するのに十分な強度を有する圧縮コラーゲンマトリクスを作製し得る。同等の強度又はコラーゲン密度は、従来の方法では達成し得ない(例えば、独国特許出願公開第10241817A1号明細書を参照)。
【0015】
本発明の別の態様は、本発明による方法によって得ることが可能な圧縮コラーゲンを含むコラーゲン含有製品に関する。
【0016】
本発明による方法によって得ることが可能な圧縮コラーゲンは、多種多様な目的のために使用されるコラーゲン含有製品の一部であり得る。
【0017】
本発明のまたさらなる態様は、本発明によるコラーゲン含有製品又は本発明による方法によって得ることが可能な圧縮コラーゲンを含むインプラントに関する。
【0018】
コラーゲン、とくに圧縮コラーゲンは、とりわけ軟骨代替物として使用され得る。軟骨は、とりわけその強度と可撓性との組み合わせを特徴とするため、軟骨代替物が、とくにその生体適合性に関しても内在性の軟骨に匹敵する特性を有することは明白である。これらの特性は、ゲル化コラーゲンを少なくとも二次元的に押圧することによって達成され得る。したがって、本発明による圧縮コラーゲンを含むコラーゲン含有製品は、インプラントとしての使用にとくに適している。
【0019】
本発明の別の態様は、本発明による方法を実行するための装置に関し、これは、
-底部及び少なくとも1つの壁によって画定された内部空間を含む容器であって、ゲル化した水含有コラーゲンを前記内部空間中に受容するのに適合している容器と;
-容器の内部空間を閉鎖し、基部の方向に延びる第1の押圧方向に動かすことが可能なピストンと、
を含み、
前記少なくとも1つの壁がセグメントを含み、これらのセグメントのうちの少なくとも1つが、前記第1の押圧方向に実質的に直交して配向された第2の押圧方向に動かすことが可能であることを特徴とする。
【0020】
本発明のまたさらなる態様は、本発明による方法における本発明による装置の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明によるインプラントがヒトの脊椎の一部に適用される場合の可撓性を調べた結果を示す。
【0022】
【
図2】
図2は、本発明によるインプラントをヒトの脊椎の一部に使用する場合の椎間板内の圧力を調べた結果を示す。
【0023】
【
図3】
図3は、本発明によるインプラントをヒトの脊椎の一部に使用する場合の椎間板の高さを調べた結果を示す。
【0024】
【
図4】
図4は、本発明によるインプラントをヒトの脊椎の一部に使用する場合の再脱出に対する抵抗性を調べた結果を示す。
【0025】
【
図5】
図5は、本発明による装置の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による方法では、ゲル化コラーゲンは、最初に第1の押圧方向に押圧され、次に第2の押圧方向に押圧される。第1及び/又は第2の押圧方向への押圧は、それぞれ少なくとも1回行われる。この方法のための出発材料は、ゲル化コラーゲンである。
【0027】
ゲル化コラーゲンは、溶解されたコラーゲンをゲル化させることによって作製され得る。溶解されたコラーゲンの供給源は、軟骨、腱、靭帯及び骨であり得、軟骨が最も好ましい供給源である。軟骨、腱、靭帯及び骨は、好ましくはウシ、ブタ、ヒツジ及びラットなどの哺乳動物に由来し、先行技術で公知の方法(例えば独国特許第10026789号明細書)によって得られる。独国特許第DE10026789号明細書の方法など、コラーゲンを得るための特定の方法の使用は、哺乳動物又はヒトで使用するためにコラーゲンをその抽出後にさらに処理する必要がないという利点を有する。
【0028】
哺乳動物由来のコラーゲンに加えて、クラゲ及び植物もコラーゲンのさらなる供給源として適している。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「圧縮コラーゲン」は、少なくとも2つの押圧方法の結果として非加圧コラーゲンよりも密度が高くなっているゲル化コラーゲンを指す。圧縮コラーゲンは、出発材料(非圧縮コラーゲン)と比較して、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、さらにより好ましくは少なくとも40倍の圧縮(例えば6mg/ml~240mg/ml)、さらにより好ましくは少なくとも80倍の圧縮を有する。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「第1の押圧方向と実質的に直交する第2の押圧方向」とは、本発明による方法において、第1の押圧方向6に実質的に直交する押圧方向9を有する少なくとも1つの押圧工程が提供されることを意味する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「押圧方向」は、ゲル化コラーゲンに圧力が加えられる方向である。
【0032】
工程a)におけるゲル化コラーゲンの第1の方向での押圧及び/又は工程b)における第1の押圧方向に実質的に直交する第2の方向への押圧は、圧力、持続時間、温度及び最終寸法からなる群から選択される様々なパラメータを考慮して行われ得、好ましくは圧力、持続時間及び温度のパラメータは、本発明による圧縮コラーゲンを作製するために変更され得る。
【0033】
好ましい実施形態によれば、工程a)における押圧は、0.012~0.03バールの範囲の圧力、好ましくは0.015~0.025バールの範囲の圧力、とくに好ましくは0.01833バールの圧力で、及び/又は工程b)における押圧は、1~1.5バールの範囲の圧力、好ましくは1.01551バールの圧力で行われる。これらの圧力は、空気圧を含まない。即ち、圧縮しようとするコラーゲンに加えられる実際の圧力は、上述の圧力又は圧力範囲と一般的な空気圧(例えば海面で1.01325バール)との和である。
【0034】
コラーゲンに上述の範囲の圧力を加えると、コラーゲンの穏やかであり同時に均一な圧縮がもたらされることが示されている。コラーゲンに加えられる圧力は、好ましくは、均一に分配されるように圧縮しようとするコラーゲンの実質的に全てに加えられる。
【0035】
好ましい実施形態によれば、工程a)及び/又は工程b)における押圧は、直線的又は段階的に圧力を上昇させることによって行われる。
【0036】
押圧中にコラーゲンに加えられる圧力は、一定(即ち工程a)及びb)中に規定圧力)であり得るか又は経時的に上昇させ得るかの何れかである。コラーゲンに対する圧力の上昇は、直線的又は段階的であり得る。当然のことながら、圧縮しようとするコラーゲンに対して、最初に圧力を上昇させ、続いて一定の圧力にするか又はその逆を適用することも可能である。圧力を上昇させて、終点(即ち到達すべき最大圧力)が上述の範囲になるようにする。
【0037】
好ましい実施形態によれば、工程a)は、1~48時間、好ましくは6~24時間、さらにより好ましくは8~18時間、さらにより好ましくは10~14時間、とくに12時間行われ、及び/又は工程b)は、6~96時間、好ましくは12~72時間、さらにより好ましくは24~66時間、さらにより好ましくは30~60時間、さらにより好ましくは36~54時間、さらにより好ましくは42時間~52時間、さらにより好ましくは46時間~50時間、とくに48時間行われる。
【0038】
本発明による方法で使用される好ましい圧縮圧力ゆえに、圧力は、とくに、一方では圧縮されたコラーゲン体における可能な最大の圧縮を達成し、他方ではコラーゲン体における一定の圧縮を達成するために、より長期間にわたって加圧されることが好ましい。
【0039】
好ましい実施形態によれば、工程a)及び/又は工程b)は、0℃~20℃、好ましくは0℃~15℃、さらにより好ましくは0℃~10℃、さらにより好ましくは1℃~9℃、さらにより好ましくは2℃~8℃、とくに4℃~6℃の温度で行われる。
【0040】
本発明による方法によって作製される加圧コラーゲンは、その後の適用分野に応じて異なる寸法を有し得る。特定の適用(例えば椎間円板の代替物として)に対して、本発明のさらに好ましい実施形態によれば、本発明による方法の工程a)及び/又は工程b)の結果、加圧されたゲル化コラーゲンの最終寸法が1.5~5mm、好ましくは2~4mm、さらにより好ましくは2.4mm~3.0mm、さらにより好ましくは2.6mm~2.8mm、とくに2.7mmの辺長となる。
【0041】
好ましい実施形態によれば、二次元的に加圧されるゲル化コラーゲンのために用いられるゲル化コラーゲンは、コラーゲン含有溶液をゲル化することにより提供され得る。コラーゲン含有溶液は、好ましくは溶液1mL当たり、1~20mg、さらにより好ましくは1~10mg、さらにより好ましくは2mg~8mg、さらにより好ましくは4mg~6mg、とくに5.5mg~6.5mgの溶解されたコラーゲンを含む。
【0042】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、コラーゲン含有溶液は、好ましくは4.5~5、より好ましくは4.6~4.9、とくに4.7~4.8のpKS値を有する0.01~1%、好ましくは0.05~0.5%、好ましくは0、01~0.2%、とくに0.1%の有機酸を含む第1の水溶液中でコラーゲンを溶解させることによって調製され、有機酸は好ましくは酢酸である。コラーゲン含有溶液の調製のための方法は、当業者にとって十分に公知である。
【0043】
冒頭で述べたように、軟骨、腱、靭帯及び骨は、溶解されたコラーゲンの供給源となり得る。とくに好ましくは、溶解されたコラーゲンは、好ましくはその単離のために独国特許第10026789号明細書に記載されている方法を使用して、ラット尾部の腱から単離される。
【0044】
より好ましい実施形態によれば、溶解されたコラーゲンは、1型コラーゲンである。このコラーゲン型は線維形成性であり、皮膚、腱、骨、象牙質、線維軟骨及び角膜で見られる。
【0045】
さらなる好ましい実施形態によれば、溶解されたコラーゲンは、90%超、好ましくは95%超、さらにより好ましくは99%超、とくに99.8%超の純度を有する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶解されたコラーゲンのゲル化は、pH上昇剤を添加することによって行われ得る。好ましくは、ゲル化方法は、30分~10時間、好ましくは45分~5時間、より好ましくは1~4時間、さらにより好ましくは2~3時間、最も好ましくは約2.5時間にわたって行われる。とくに有利なのは、15℃~50℃、好ましくは20℃~45℃、さらにより好ましくは25℃~40℃、さらにより好ましくは30℃~39℃、最も好ましくは約34℃の範囲の温度でのコラーゲンのゲル化である。ゲル化方法中、混合を改善するために、溶液を連続的又は不規則に撹拌又は混合し得る。この方法では、ゲル化コラーゲンの構造が破壊されないように混合を行うことが重要である。
【0047】
本発明の別のより好ましい実施形態によれば、pH上昇剤は、コラーゲン含有溶液中のコラーゲンに対して0.1:2(v/v)、好ましくは0.5:1.5(v/v)、より好ましくは0.8:1.2(v/v)、最も好ましくは1:1(v/v)の比で添加される。
【0048】
さらにより好ましい実施形態によれば、pH上昇剤は、得られるコラーゲン含有溶液のpHが7.0~9.0、好ましくは7.0~8.0、より好ましくは7.1~7.8、さらにより好ましくは7.3~7.5に上昇するような量でコラーゲン含有溶液に添加される。pH上昇剤は、好ましくは、コラーゲンゲルを含む溶液のpHが7.0~7.4となるような量でコラーゲン含有溶液に添加される。
【0049】
本発明の別のより好ましい実施形態によれば、pH上昇剤は緩衝物質、好ましくは2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)-エタンスルホン酸(HEPES)である。
【0050】
pH上昇剤は、水中で溶解させ得るか、又は溶解されたコラーゲンに直接(固体物質としても)添加し得るかの何れかである。
【0051】
さらにより好ましい実施形態によれば、pH上昇剤は、好ましくはHam’F12培地、炭酸水素ナトリウム及びD-グルコースからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む水性組成物の一部である。
好ましい実施形態では、工程a)及びb)の後、第2の水溶液を含有する受容容器に圧縮コラーゲンを移す。
好ましくは、受容容器の形状は、角型ではなく、実質的に楕円形、実質的に丸形又は円形である。
好ましくは、第2の水溶液は生理食塩水、より好ましくはPBS+である。
【0052】
受容容器への移動は、好ましくは、実質的に角度のある断面から実質的に角度のない、より好ましくは実質的に楕円形、さらにより好ましくは実質的に丸形、最も好ましくは実質的に円形の断面に移動させることによって、圧縮コラーゲンの外形を受容容器の断面に適合させるように働く。これは、好ましくはコラーゲンの膨潤によって、より好ましくは吸水によって行われる。
【0053】
本発明の別の態様は、本発明による方法によって得ることが可能な、本発明による圧縮コラーゲンを含むコラーゲン含有製品に関する。
好ましい実施形態によれば、本発明による方法によって得ることが可能な生成物は、不透明から黄色がかった色を有する。
好ましい実施形態によれば、本生成物は、好ましくは実質的に円筒形である三次元形状を有する。この円筒形の三次元形状は、好ましくは、2mm~5mm、好ましくは2.7mm~4.5mm、さらにより好ましくは3.2mm~3.8mm、とくに約3.5mmの直径を有する、実質的に非角形、より好ましくは実質的に楕円形、さらにより好ましくは実質的に丸形、最も好ましくは実質的に円形の基部を含むことを特徴とする。
【0054】
本発明による生成物は、好ましくは粘弾性及び/又は浸透圧特性(好ましくはネイティブの髄核物質の粘弾性及び/又は浸透圧特性に匹敵する)を示し、機械的に安定であり、及び/又は高度に圧縮されている(好ましくは最大240mg/ml又はそれを超える)。
本発明に従って作製される圧縮コラーゲンは、ヒドロゲルの特性も示す。
本発明の別の態様は、本発明によるコラーゲン含有製品を含むインプラントに関する。
本発明によるインプラントは、多種多様な目的に使用され得る。本発明によるインプラントは、髄核代替物、半月板代替物、靭帯代替物及び/又は腱代替物として使用され得、それによって半月板損傷(例えば半月板断裂)及び靭帯損傷(手根靭帯、黄色靭帯、鼠径靭帯、膝蓋靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯)の処置のための髄核代替物としてとくに適している。適用分野に応じて、本発明によるコラーゲン含有製品を適切なインプラントになるように形成し、埋め込み得る。
【0055】
さらに好ましい実施形態によれば、インプラントは、細胞、さらにより好ましくは椎間板の細胞が遊走し得ることを特徴とする長期インプラントである。細胞の遊走を通じて、本発明によるインプラントは、椎間板インプラントの場合、髄核に類似した組織になり得る。
【0056】
さらに好ましい実施形態によれば、インプラントは、手術によって埋め込み得る。この操作は、動物、とくに哺乳動物、及びヒトに対して行い得る。
【0057】
手術の過程で、本発明によるインプラントは、補助手段によって、受容容器から、好ましくは線維輪の内側に位置する標的部位に動かされ得る。その特性のために、本発明によるインプラントは、好ましくは、髄核物質の代替物として適切である。
【0058】
より好ましい実施形態によれば、外科手術は、低侵襲手術技術を使用して行われる。
外科手術は、好ましくは疼痛、より好ましくは背部及び/又は脚の疼痛を伴う、椎間板ヘルニアに対する処置として行われることが好ましい。
【0059】
本発明によるインプラントの量は、好ましくは、隣接する椎間板の高さに従って決定され、及び/又はその目標位置に圧入される。
【0060】
手術は、好ましくは髄核摘出術後に行われ、及び/又は好ましくは線維輪の閉鎖によって完了する。
【0061】
好ましい実施形態によれば、コラーゲン含有製品又はインプラントは、150mg/mL超、より好ましくは200mg/mL超、最も好ましくは240mg/mL超の密度を有する圧縮コラーゲンを含む。
好ましくは、上記密度を有するコラーゲン含有製品及び/又はインプラントは、本発明による方法によって調製される。
【0062】
本発明の別の態様は、本発明による方法を実行するための装置1に関し、装置1は、
・底部3及び少なくとも1つの壁4によって画定された内部空間5を含む容器2であって、ゲル化した水含有コラーゲンを内部空間5内に受容するのに適合している容器2と;
・容器2の内部空間5を閉鎖し、基部の方向に延びる第1の押圧方向6に動かすことが可能なピストン7と、
を含み、
前記少なくとも1つの壁は、4つのセグメントを含み、これらのセグメント8のうちの少なくとも1つは、第1の押圧方向6に実質的に直交して配向された第2の押圧方向9に動かすことが可能である。
【0063】
容器2は、好ましくは、滅菌可能な細胞培養に適した材料、好ましくはポリテトラフロン(登録商標)HS 11097を含むか、又はコラーゲンと接触する面がこの細胞培養に適した材料で少なくとも部分的にコーティングされる。
【0064】
本発明の好ましい実施形態によれば、底部3、少なくとも1つの壁4及び/又はプランジャ7は、容器2の内部空間5から水を除去するために内部空間5に開口する少なくとも1つの開口部10を含む。
【0065】
この少なくとも1つの開口部10は、好ましくは、ゲル化コラーゲンが押圧方法の過程でこの少なくとも1つの開口部10を通じて押圧され得ないように設計される。したがって、少なくとも1つの開口部10は、好ましくは50μm~500μm、好ましくは100~300μm、さらにより好ましくは120~250μm、さらにより好ましくは130~200μm、とくに160μmのサイズを有する。
【0066】
基部3、少なくとも1つの壁4及び/又はプランジャ7はまた、十分に機械的に安定な材料を含み得るか、又はそれから構成され得、これは、好ましくは、適切に使用した場合、コラーゲンと接触する領域全体にわたって多孔性であり、透水性であり得る。多孔性及び透水性材料の使用は、別個の開口部の挿入(例えば穴を穿孔することによる)なく作製し得るので、とくに有利である。多孔質材料の細孔は、本明細書中で定義されるような開口部10に対応する。
【0067】
焼結方法において一緒に結合される顆粒から構成される多孔性プラスチックがとくに適している。これにより、気体及び、とくに水などの液体が部品を通って流れることを可能にする空洞(細孔)が形成される。本発明による装置に適用可能な多孔性プラスチック製品は、様々な熱可塑性材料から作製され得、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルスルホン(PES)及びPE/PPコポリマーがとくに好ましい。孔径は、水が材料に浸透し得るが、コラーゲン含有材料には浸透し得ないような寸法である。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「水」という用語は、圧縮しようとする出発材料中に存在する他の物質及び塩を含み得る。この文脈において、「水」は「水溶液」と同義であり得る。
【0069】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、容器2の内部空間5から水を除去するための少なくとも1つの開口部10は、水を受容するための少なくとも1つのさらなる容器11に連結される。
【0070】
コラーゲン含有材料の圧縮中に生成された圧縮水を除去するために、本発明による装置は、吸水用のさらなる容器11を含む。これにより、水が装置から直接環境に漏出することが防止される。圧縮方法の完了後、水を容器11から除去し得る。
【0071】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、装置1は、容器2上の第1の押圧方向6及び/又は第2の押圧方向9の端部位置において、第1の押圧方向6に動かすことが可能なピストン7、及び/又は第2の押圧方向9に動かすことが可能なセグメント8を固定するように設計される少なくとも1つの固定手段12を含む。
【0072】
固定装置は、第1の押圧方向6に動かすことが可能なピストン7及び/又は第2の押圧方向9に動かすことが可能なセグメント8を1つの位置に固定することを可能にするので、とくに有利である。圧縮方法後に、圧縮しようとするコラーゲンに対する圧力が低減されるか又は完全に除去される場合、圧縮コラーゲンの形状は、固定装置によって維持され得る。さらに、固定装置は、コラーゲンを第2の方向に圧縮することを可能にする。したがって、第2の装置を使用せずに、単一の装置で両方の圧縮方向にコラーゲンを圧縮することが可能である。
【0073】
少なくとも1つの固定手段12の固定は、好ましくは解除可能である。
少なくとも1つの固定手段12は、好ましくは、ねじ接続部(例えば、ねじ、ナット)、釘、ピン又はクランプである。
【0074】
本発明の別の態様は、本発明による方法における本発明による装置1の使用に関する。
【0075】
本発明の好ましい実施形態によれば、工程a)及び/又はb)は、本発明による装置1の容器2内で行われる。
【0076】
水は圧縮性ではないので、ゲル化コラーゲンが押圧される容器2が水に対して少なくとも部分的に透過性であるように設計されていると、ゲル化コラーゲンを押圧する際に有利である。
【0077】
底部3、少なくとも1つの壁4及び/又はプランジャ7は、好ましくは、容器2の内部空間5から水を除去するために内部空間5に開口する少なくとも1つの開口部10を含む。これらの開口部10は、好ましくは、ゲル化コラーゲンが押圧方法の過程でこれらの開口部10を通じて押圧されないように設計される。したがって、壁又は境界は、50μm~500μm、好ましくは100~300μm、さらにより好ましくは120~250μm、さらにより好ましくは130~200μm、とくに160μmのサイズの開口部10を有する。
【0078】
本発明の好ましい実施形態によれば、溶解されたコラーゲンのゲル化は、ゲル化コラーゲンの押圧と同じ容器2中で行われる。この容器2は、好ましくは、細胞培養に適した滅菌可能な材料、好ましくはポリテトラフロン(登録商標)HS 11097からなるか、又はコラーゲンと接触する面上が細胞培養に適したこの材料で少なくとも部分的にコーティングされる。
【0079】
図面の詳細な説明
図1~
図4は、例のセクションに記載する。
【0080】
図5は、底部3及び少なくとも1つの壁4によって区切られた内部空間5を含む容器2を含む、本発明による装置1の好ましい実施形態の、第1のセクションとは独立した、正面図(a)のセクション及び側面図(b)のセクションを示す。容器2は、ゲル化した水含有コラーゲンを内部空間5に受容するように設計される。さらに、容器2は、容器2の内部空間5を閉鎖し、基部の方向に延びる第1の押圧方向6に動かすことが可能なピストン7を含む。装置1は、少なくとも1つの壁4がセグメントを含み、これらのセグメント8の少なくとも1つが、第1の押圧方向6に実質的に直交して配向される第2の押圧方向9に動かすことが可能であることを特徴とする。基部3は、容器2の内部空間5から水を除去するために内部空間5に開口する開口部10を有する。容器2の内部空間5から水を除去するためのこの開口部10は、水を受容するためのさらなる容器11に接続される。装置1は、容器2上の第1及び第2の押圧方向の端部位置において、第1の押圧方向6に動かされ得るピストン7と、第2の押圧方向9に動かされ得るセグメント8とを固定するように設計される2つの固定手段12を含む。
【0081】
以下、本発明を例示する例について説明する。
例
例1:コラーゲンGCの調製
例1は、ラット尾腱からのコラーゲンの調製を記載し、市販のI型コラーゲン溶液に言及する。
【0082】
ラット尾腱からのコラーゲンの単離は、先行技術、例えば独国特許第10026789号明細書に記載のように行い得る。この場合、高齢ラットから単離したコラーゲンMSをコラーゲンGCとして取得する。
【0083】
例2:コラーゲンGCのゲル化
例2は、コラーゲンGCのゲル化を記載する。
【0084】
コラーゲンGCのゲル化は、例として、以下の工程を含んだ:
a.表1(Table 1)で示される以下の成分を含むゲル中和溶液の調製:
【表1】
b.均質になるまで、コラーゲンGC溶液とゲル中和溶液を1:1(v/v)の比で混合し、その結果、生理的pHへの中和が起こる。
c.前の工程からの均質溶液を矩形の断面(長さ:20cm、幅:2.7cm、高さ5cm)の注入チャンバーに注ぐ。注入チャンバーは、装置中に配置される。
d.34℃で2.5時間の鋳造チャンバーでの前工程の均質溶液のゲル化。
【0085】
例3:ゲル化コラーゲンGCの押圧
例3は、ゲル化コラーゲンGCの二次元的な押圧を記載する。
【0086】
ゲル化コラーゲンGCの二次元的押圧は、以下の例示的な工程を含んでいた:
a.例2の装置の改変、プラスチックカバーをパンチ付きカバーボンネット(cover bonnet)(ウエイトボンネット(weight bonnet)+穿孔器1.01kg)に置き換えた。
b.PBS+溶液による下側フィルタプレートの湿潤
c.スペーサーの使用
d.カバーボンネット(cover bonnet)で装置を閉じる
e.最終寸法2.7mmまで2~6℃で12時間の最初の押圧
f.一次元的に押圧されたゲル化コラーゲンGCの取り出し
g.鋳造チャンバーを横に開きながら、一次元的に押圧されたゲル化コラーゲンGCを装置に挿入
h.スペーサーの使用
i.最終サイズ2.7mmまでの2~6℃での第2の押圧は、以下の工程を含んでいた:
i.2.5kgで4h
ii.5kgで20h
iii.10kgで24h
【0087】
例4:押圧されたコラーゲンGCのさらなる処理
例4は、二次元的に押圧されたコラーゲンGCのさらなる処理を記載する。
【0088】
二次元的に押圧されたコラーゲンGCのさらなる処理は、以下の例示的な工程を含んでいた:
a.辺長2.7mmの二次元的に押圧されたコラーゲンGCの装置からの取り出し
b.二次元的に押圧されたコラーゲンGCを、例えば5cmの長さの小片に加工する。
c.前の工程からの小片をPBS+緩衝液で満たした内径3.5mmのアプリケーションチューブに移し、それによって小片が膨潤して直径3.5mmの円形断面になる。
d.前の工程からの小片を2~10℃で保存する。
e.2~37℃にて、15~20kGy、好ましくは17.5~17.7kGyで、前の2つの工程の何れかからの小片をガンマ線滅菌。
【0089】
例5:椎間板ヘルニア後のインプラントとしての本発明の製品の生体力学的試験
例5は、椎間板ヘルニア後のヒト脊椎の一部においてインプラントとして使用された本発明による製品の生体力学的特性を記載する。
【0090】
本発明による製品の特性ゆえに、これは、椎間板ヘルニアの処置におけるインプラントとして使用され得る。これらの特性には、例えばネイティブの髄核と同様の240mg/mLのコラーゲン含量が含まれる。
【0091】
例5a:インプラントの製作
【0092】
本発明によるインプラントは、本発明の方法に従って製造された。インプラントは、98.5%純度のネイティブI型コラーゲンからなり、以下の寸法:50mm×3.5mm(長さ×直径)を有していた。
【0093】
例5b:脊椎試料の起源及び調製
【0094】
ヒトのレンチキュラースパイン(lenticular spine)の機能単位を表す6つの試料に対してインビトロ実験を行った。表2(Table 2)で試料の概要を提供する。
【表2】
【0095】
6つの試料は4名のヒトドナー由来であった。各試料は、椎間板及びその2つの隣接する椎骨からなり、これによりディスクレベル(disc level)が与えられる。1~3のPfirmannグレードは、椎間板ヘルニアの指標に対する適切な椎間板の質であると考えられた。
【0096】
軟組織及び筋線維を試料から除去した。試験装置において標本を適切に取り付けることができるように、標本を頭方端及び尾方端の両方でポリメチルメタクリラート(PMMA)に埋め込んだ。
【0097】
例5c:試料取り扱い工程
後方欠損の生成
【0098】
骨鉗子を用いて、各試料を椎弓切除術に供した。6×7mmの「ボックスカット(box-cut)」を線維輪に作った。ボックスカット(box-cut)は、ノミを使用して形成され得る長方形の開口部である。この空洞は、後の工程で適切なインプラントで線維輪を閉じることができるように作られた。
【0099】
椎間板脱出の生成
繰り返しストレス試験によって、椎間板脱出、即ち線維輪を通る髄核物質の通過が生じた。
繰り返し荷重試験は、油圧サーボローディングフレーム(Instron 8871,Darmstadt,Germany)で行った。特注の回転基部を材料試験機の支持面に取り付けた。試料を回転基部にフランジで固定し、これは360°/分の回転速度を維持した。次いで、回転基部を横に30mmずらして、検体の偏心反復荷重を達成した。油圧ピストンの荷重を350Nまで直線的に増加させた。次いで、5Hzで100~600Nの範囲の正弦波力を最大100,000サイクルまで加えた。この最大100,000サイクルは、12時間以内に実験を実施し、従って試料の劣化を回避するために定義された。30mmの側方変位は、最大18Nmを印加し得るようにレバーアームとして効果的に作用した。試験又は荷重は、髄核物質が漏出したときに停止させた。漏出した髄核物質を、作製されたボックスカット(box-cut)からのものを含め、除去した。したがって、部分的な髄核摘出術を行った。
【0100】
本発明のインプラントの埋め込み
埋め込みは低侵襲性であった。本発明によるインプラントを穿孔器によって椎間板に押し込んだ。髄核物質は、無傷の椎間板中の線維輪によって囲まれており、従って自然な支持を受ける。本発明によるインプラントの機能性を判定し、無傷の椎間板中の髄核物質とそれを比較するために、「ボックスカット(box-cut)」によって生成された欠損を線維輪閉鎖装置Barricaid(登録商標)(Intrinsic Therapeutics,Germany)によって閉鎖した。
【0101】
例5d:生体力学的試験の性能
試験環境
試験は室温で行った。脱水及び崩壊を防止するために、生理食塩水に浸したガーゼで試料を包んだ。
【0102】
可撓性の判定
この試験は、インタクトな椎間板を用いて、ボックスカット(box-cut)後に、髄核摘出術後に、本発明のインプラントの埋め込み後に、及び繰り返し荷重試験後に、行った。
【0103】
可撓性を判定するために、検体を最初に尾方端で固定した。純粋な屈曲モーメントを1.5°/秒の一定速度で頭方端に加えた。屈曲モーメントを±7.5Nmのレート(rate)で加えた。ここで、±7.5Nmを以下の方向に使用した:側方屈曲右/左(+/-)、屈曲/伸展(+/-)及び左/右(+/-)軸回転。
試料を3.5回の荷重サイクルに供した。最初の2.5サイクルは、粘弾性応答の影響を最小限に抑えるための予備サイクルとした。結果に対して最後のサイクルを使用した。
【0104】
椎間板の内側の圧力の決定
この試験は、インタクトな椎間板を用いて、ボックスカット(box-cut)後に、髄核摘出術後に、本発明のインプラントの埋め込み後に、及び繰り返し荷重試験後に、行った。
椎間板内の圧力は、椎間板の髄核に配置された埋め込み型圧力センサーによって記録した。
【0105】
椎間板の高さの決定
この試験は、インタクトな椎間板を用いて、ボックスカット(box-cut)後に、椎間板ヘルニア形成後に、髄核摘出術後に、本発明のインプラントの埋め込み後に、及び繰り返し荷重試験後に、行った。
椎間板の高さは、Instron材料試験機を使用して決定した。測定前に検体に100Nの予備荷重を5秒間かけた。
【0106】
繰り返し荷重試験
この試験は、本発明によるインプラントの埋め込み後に実施した。
繰り返し荷重試験は、油圧サーボローディングフレーム(Instron 8871,Darmstadt,Germany)で行った。特注の回転基部を材料試験機の支持面に取り付けた。試料を回転基部にフランジで固定し、これは360°/分の回転速度を維持した。次いで、回転基部を横に30mmずらして、検体の偏心繰り返し荷重を達成した。油圧ピストンの荷重を350Nまで直線的に増加させた。次いで、5Hzで100~600Nの範囲の正弦波力を最大100,000サイクルまで加えた。30mmの側方変位は、最大18Nmを印加し得るようにレバーアームとして効果的に作用した。埋め込み後、100,000回の荷重サイクルの前にコア物質の出口では試験を停止せず、インプラントの出口で試験を停止した。この最大100,000サイクルは、12時間以内に実験を実施し、従って試料の劣化を回避するために定義された。
【0107】
再脱出に対する抵抗性の判定
この試験は、繰り返し荷重試験後に行った。
肉眼的評価のために、椎間板を椎間板の中央横断面で切断した。インプラントの状態を判定するためにデジタルカメラで写真を撮影した。
【0108】
例5e:生体力学的試験の結果
可撓性の判定
図1は、「インタクトな椎間板で(a)、ボックスカット(box-cut)後に(b)、髄核摘出術後に(c)、本発明のインプラントの埋め込み後に(d)、及び繰り返し
埋め込み後の可動域は、インタクトな椎間板と同程度のレベルまで減少したことが分かり得る。この正の効果は、繰り返し荷重試験によって逆転した。
【0109】
椎間板の内側の圧力の決定
図2は、「インタクトな椎間板で(a)、ボックスカット(box-cut)後に(b)、髄核摘出術後に(c)、本発明のインプラントの埋め込み後に(d)、及び繰り返し荷重試験後に(e)行われたこの試験の結果を示す。
椎間板内の圧力は、インタクトな椎間板での圧力をさらに上回って、埋め込みによって上昇し得る。殆どの場合、繰り返し荷重試験によっても圧力を低下させることができなかった。
【0110】
椎間板の高さの決定
図3は、「インタクトな椎間板で(a)、ボックスカット(box-cut)後に(b)、椎間板ヘルニア後に(c)、髄核摘出術後に(d)、本発明のインプラントの埋め込み後に(e)、及び繰り返し荷重試験後に(f)行われたこの試験の結果を示す。
椎間板の高さは、埋め込みによってインタクトな椎間板の高さまで下げ得る。この場合も、この効果は、繰り返し荷重試験によって逆転した。
【0111】
新たな脱出に対する抵抗性の判定
図4は、この試験の結果を示す。鉗子はインプラントを指す。インプラントは、埋め込まれた部位で周囲の髄核物質内に残った。繰り返し荷重試験の結果として、新たな椎間板の脱出は生じなかった。
【0112】
結果のまとめ
ヒト腰椎の機能部に椎間板脱出を加えた。本発明によるインプラントは、椎間板の可撓性及び高さの両方をインタクトな椎間板の可撓性及び高さに適合させることが可能であった。埋め込み後、椎間板内の圧力は、インタクトな椎間板の圧力さえも超えた。
【0113】
本発明のインプラントをヒトにおいて使用する可能性
上記の例によって示されるように、本発明によるインプラントは、椎間板ヘルニア後の椎間板の特性を回復させるために適している。一般に、背部及び/又は脚の疼痛を伴う椎間板ヘルニアは、髄核摘出術によって処置され得る。この過程で、髄核物質が除去される。本発明の製品によるインプラントは、除去された髄核物質に対する代替物として使用し得、アプリケーションチューブからプランジャによって欠損部に押し込み得る。埋め込まれるインプラントの量は、例えばHong et al.(Asian Spine Journal,Vol.4,No.1,pp.1-6,2010)に記載のように、隣接する椎間板の高さに従って決定され得る。
【0114】
除去された髄核物質の代わりとしての本発明によるインプラントの使用は、低侵襲外科技術によって実行され得る。
【0115】
インプラントの挿入後、線維輪を閉鎖するべきである。適切な閉鎖系は、Barricaid(登録商標)(Intrinsic Therapeutics,Germany)などであり、市販されている。
【国際調査報告】