IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウの特許一覧

特表2023-502912保持装置、保持装置システム及び保持装置を使用する方法
<>
  • 特表-保持装置、保持装置システム及び保持装置を使用する方法 図1
  • 特表-保持装置、保持装置システム及び保持装置を使用する方法 図2
  • 特表-保持装置、保持装置システム及び保持装置を使用する方法 図3
  • 特表-保持装置、保持装置システム及び保持装置を使用する方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】保持装置、保持装置システム及び保持装置を使用する方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/30 20210101AFI20230119BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20230119BHJP
   B22F 12/82 20210101ALI20230119BHJP
   B22F 10/00 20210101ALI20230119BHJP
   B22F 10/66 20210101ALI20230119BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230119BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230119BHJP
【FI】
B22F12/30
B23Q3/06 304H
B22F12/82
B22F10/00
B22F10/66
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527675
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2020082149
(87)【国際公開番号】W WO2021094592
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】102019130676.0
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer-Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D-80686 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アーンツ,クリスティアーン
(72)【発明者】
【氏名】マスロ,ゼミル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルブリンク,モリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジメール,ダニエール
【テーマコード(参考)】
3C016
4K018
【Fターム(参考)】
3C016EA01
4K018AA07
4K018BA04
(57)【要約】
ピン状要素(6)の着脱可能な固定のための固定機構を含む保持装置であって、固定機構は、複数の固定要素(5)と、少なくとも部分的な数の固定要素(5)に同時に作用するクランプ要素(4)と、を有し、クランプ要素(4)は、クランプ要素(4)が並進移動によってクローズ位置とリリース位置との間で切り替えることができるように支持されており、クローズ位置では関連する固定要素(5)が把持位置へと強制され、リリース位置は関連する固定要素(5)が開口することを許す、保持装置において、クランプ要素(4)は、クランプ要素(4)の並進移動が固定要素(5)の長手軸に平行に行われるように配置されている。さらに、保持装置(1)と、固定要素(5)による固定に適したピン状要素(6)と、を備える保持装置システム、及び、ワークピースを加算的に製造するため、並びにワークピースをクランプするための保持装置(1)の使用方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン状要素の着脱可能な固定のための固定機構を含む保持装置であって、
前記固定機構は、複数の固定要素と、少なくとも部分的な数の前記固定要素に同時に作用するクランプ要素と、を有し、
前記固定要素は、それらの長手軸が互いに平行に整列されており、
前記クランプ要素は、前記クランプ要素が並進移動によってクローズ位置とリリース位置との間で切り替えることができるように支持されており、前記クローズ位置では関連する前記固定要素が把持位置へと強制され、前記リリース位置は関連する前記固定要素が開口することを許し、
前記クランプ要素は、前記クランプ要素の前記並進移動が前記固定要素の長手軸に平行に行われるように配置されている、
保持装置。
【請求項2】
前記少なくとも部分的な数の前記固定要素は前記ピン状要素の力結合による固定のために設計されている、
請求項1記載の保持装置。
【請求項3】
前記少なくとも部分的な数の前記固定要素はコレットである、
請求項1又は2記載の保持装置。
【請求項4】
前記固定要素は、その長手軸に平行に調整可能に固定されている、
請求項1乃至3いずれか1項記載の保持装置。
【請求項5】
前記クランプ要素はプレート状である、
請求項1乃至4いずれか1項記載の保持装置。
【請求項6】
前記並進移動に平行に又は非平行に前記クランプ要素に作用するバネ弾性力によって特徴付けられる、
請求項1乃至5いずれか1項記載の保持装置。
【請求項7】
前記クランプ要素は、前記クローズ位置と前記リリース位置との間の移動のためにモータ駆動されている、
請求項1乃至6いずれか1項記載の保持装置。
【請求項8】
前記保持装置に属さない締付ユニットに前記保持装置を固定するように設計された締付固定ユニットによって特徴付けられる、
請求項1乃至7いずれか1項記載の保持装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項によって設計された保持装置と、
固定要素による固定に適したピン状要素と、
を備える保持装置システム。
【請求項10】
前記保持装置は、前記ピン状要素のための開口を有する加算的製造に適した適用表面を備え、
前記適用表面は、前記加算的製造の条件下において前記加算的製造のための出発材料との材料結合的接続を生じない適用表面材料によって形成されており、
前記ピン状要素のうちの少なくとも1つは、それぞれ1つの接続要素を形成し又は接続要素の一部であり、
前記少なくとも1つの接続要素の少なくとも1つのプロセス表面は、前記加算的製造のための出発材料との材料結合的接続のために適している、
請求項9記載の保持装置システム。
【請求項11】
前記固定機構は、プロセス表面のうちの少なくとも1つが適用表面と面一又は実質的に面一になるように設けられている、
請求項9又は10記載の保持装置システム。
【請求項12】
製造プロセス又は機械加工プロセスのためのワークピースを保持するために請求項1乃至8いずれか1項記載の保持装置を使用する方法であって、
前記ワークピースは、前記少なくとも部分的な数の前記固定要素に固定するためのピン状要素を備えるか又はかかるピン状要素に固定されている、
方法。
【請求項13】
前記ワークピースの加算的製造のために請求項12記載の方法を使用する方法であって、
a)前記保持装置の適用表面上に出発材料を適用し、
b)前記出発材料の少なくとも一部をワークピースとして固化し、
c)前記ワークピースを前記保持装置から解放し、
d)前記方法ステップb)中に、前記出発材料との材料結合接続を形成しない適用表面材料を前記適用表面に使用し、
e)少なくとも部分的な数の前記固定要素においてピン状要素が固定され、前記ピン状要素のうちの少なくとも1つはそれぞれ1つの接続要素を形成するか又は1つの接続要素の一部であり、前記接続要素のうちの少なくとも1つの少なくともプロセス表面は、前記加算的製造のために提供される出発材料との材料結合的接続に適しており、
e)特徴b)による方法ステップ中に、前記プロセス表面と形成されるべきワークピースとの間の材料結合的接続を生成する、
方法。
【請求項14】
前記ピン状要素を固定するために、前記ワークピースの内部応力によって生じる変形の結果として、前記ワークピースと材料結合的に接続する又は前記ワークピースに固定されるピン状要素を、それぞれの固定要素に対する移動を許容するような固定力を選択する、
請求項2を引用する請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
加算的製造の少なくとも1つの部分ステップの終了後に、
クランプ要素をリリース位置にし、その後、再びクローズ位置にし、
この後、製造プロセス又は加工プロセスを続行するか又は前記ワークピースを別のタイプの加工に提供する、
請求項12乃至14いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ワークピースを固定するために請求項1乃至8いずれか1項記載の保持装置を使用する方法であって、
前記ワークピースを、力結合及び/又は形状結合により、前記少なくとも部分的な数の固定要素に固定されたピン状要素によって保持する、
方法。
【請求項17】
前記ワークピースは少なくとも2つの保持装置の間でクランプされる、
請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に基づく保持装置、保持装置システム及び保持装置を使用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
WO2019/016155A1より、加算的製造(additiven Fertigung)のための方法において基板ユニットとして使用される保持装置が知られている。複数のピン状要素は、固定機構によって保持装置に固定され、固定機構は、ピン状要素を形状結合的に作用する係合によって固定するプレート状のロックユニットを備える。形状結合的係合は、全てのピン状要素に対して同一平面内で行われる。さらに、形状結合的係合に対応する係合可能性がピン状要素に設けられる必要がある。
【0003】
EP0857544B1は、多数の互いに平行に配向されたピン状要素、ダウエルピン(Spannstifte)と称される、が横方向に互いに当接し、主延在方向に個別に変位可能である保持装置を開示している。ピン状要素は、フレーム内に配置され、固定のために固定力を伝達する変位可能な壁を介して、互いに、また周囲のフレームに押圧される。
【0004】
DE102012224280A1は、吸引ユニットを用いてワークピースをクランプする締付装置を開示している。吸引ユニットは、複数の位置決めピンを有する支持装置によって支持されている。位置決めピンはハウジングを貫通し、外周が円錐形で、位置決めピンを固定する役割を果たすクランプスリーブでそれぞれ取り囲まれている。ハウジング内では、ピストンは空気圧によって駆動され、ピストンは、クランプ要素と見なすことができ、下降時に各クランプスリーブの円錐台形のセクションと作用し、したがって、それぞれのクランプスリーブは、関連する位置決めピンとともに半径方向外側に押され、これにより、ハウジング壁へのピン状要素の力結合的なクランピングが実現される。そのため、ピストンはクランプスリーブを介して間接的にだけ位置決めピンに作用する。クランプスリーブはそれ自体でピン状要素を固定するのではなく、単にピン状要素の外側への半径方向の変位を確保するだけである。そのため、ピストンの動きによってクランプスリーブが開閉するのではなく、シフトする。
【0005】
DE102007020898A1は、冒頭に述べたタイプの保持装置を開示しており、この装置においても、直前に述べた先行技術と同様に、ワークピースを負圧によって保持し、プランジャに配置された吸引カップがワークピースを固定する。ピン状のプランジャは、所望の位置にあるとき、クランプ要素によって固定される。一実施形態では、プランジャはクランプ要素によって固定され、クランプ要素はプランジャを取り囲む半円形の凹部を有する。クランプ要素は、プランジャの長手方向軸に垂直に作用する並進力によって、クローズ位置にもたらされる。クランプ要素を閉じるための力は、説明には明示されていないが、図面に示されている要素で加えられる。
【0006】
ワークピースのための締付装置(Spannvorrichtung)は、DE102017119193A1から知られており、この装置は、ワークピースの輪郭に適応する輪郭片を有している。輪郭片は、密集したピン状要素を有し、その先端をワークピースに当接して固定する。固定のために、収容スリーブの形をしたクランプ要素は、ピンの配列と平行に、周囲のハウジングに対してシフトする。収容スリーブとハウジングとの間のコンタクト領域のくさび形によって、収容スリーブがピンを直接内側に押圧し、ピンが互いにクランプされる。そのため、追加の固定要素は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2019/016155A1
【特許文献2】EP0857544B1
【特許文献3】DE102012224280A1
【特許文献4】DE102007020898A1
【特許文献5】DE102017119193A1
【発明の概要】
【0008】
本発明は、冒頭に述べたタイプの保持装置に、シンプルな構成のピン状要素においても確実な固定を可能にし、好ましくはピン状要素が軸方向に固定される位置の調整を可能にする代替構造を提供するという技術的問題に基づいている。さらに、保持装置システム及び保持装置の使用方法を提供する。
【0009】
技術的問題は、冒頭に述べたタイプの取付け装置では請求項1の特徴的な特徴によって、保持装置システムでは請求項10の特徴によって解消され、使用方法では請求項13又は請求項17の特徴によって解決される。本発明の有利な実施形態は、それぞれの場合において、従属請求項から生じる。
【0010】
ピン状要素の着脱可能な固定のための固定機構を有する保持装置において、固定機構は、複数の固定要素と、複数の固定要素のうちの少なくとも部分的な数の固定要素に(auf zumindest eine Teilanzahl der Fixierelemente)同時に作用するクランプ要素とを有する。ここで、固定要素は、それらの長手軸が互いに平行になるように整列され、クランプ要素は、クランプ要素が並進移動によってクローズ位置とリリース位置との間で切り替えることができるように支持されており、クローズ位置では関連する固定要素が把持位置へと強制され(gezwungen)、リリース位置は関連する固定要素が開口することを許し(eine Oeffnung erlaubt)、クランプ要素の並進移動が固定要素の長手方向に対して平行に行われるように、クランプ要素を配置することが提案される。
【0011】
固定要素へのクランプ要素の作用は、例えば固定要素を取り囲むクランプ要素の開口の壁領域で、固定要素、例えば固定要素の外周への、クランプ要素の直接的又は間接的な力の作用によってクローズ位置を取る場合に達成される。クランプ要素がリリース位置にもたらされると又は運ばれると(gebracht)、例えば固定エレメントの固有の弾性に基づいて又はクランプ要素の移動によって引き起こされる能動的な力作用によって、固定要素の開放運動(Oeffnungsbewegung)が達成される。
【0012】
固定要素がその長手軸を互いに平行にして整列され、クランプ要素の並進運動が固定要素の長手軸に平行に行われることにより、多数の互いに間隔を置いたピン状要素の特に効果的かつ扱いやすい固定が可能となる。このために、クランプ要素がプレート状であると特に有利である。
【0013】
固定には、ピン状要素を手動又は自動で固定要素の1つに挿入する。例えば、ウェッジクランプ又はスリージョーチャックなどの、好ましくはコレット若しくはクランプ片(Spannzangen)又は他の挟み込むように作用する要素であり得る固定要素によって、ピン状要素の固定は力結合により行われることができ、したがって、ピン状要素は必ずしも形状結合のために準備される必要はない。つまり、ピン状要素として標準的な部品を使用できるため、特別な製造コストを回避することができる。さらに、力結合により、固定要素内のそれぞれのピン状要素の軸方向の位置を補正することができる。それぞれ1つの固定要素に挿入された複数のピン状要素が同時に固定されるべきなので、ピン状要素の許容偏差が干渉嵌合又は締りばめ(uebermasspassung)によって補償されるように、固定要素が設けられていると有利である。
【0014】
ピン状要素の力結合的な固定は、保持装置の用途によっては、さらなる利点が得られる。力結合の強さは、それぞれのピン状要素が意図された使用に対して確実に固定されるが、同時に、限界力を超えると、関連する固定要素におけるピン状要素の変位が可能になる、ように調整されることができる。これは、例えば、ピン状要素を介して保持装置によって保持された物体が、例えば、熱的に誘発された内部応力によって変形する場合に有利であり得る。ピン状要素は、変形又は歪み(der Verformung oder einem Verzug)に追従することができるので、保持装置に保持されている物体は内部応力を緩和することができる。内部応力から解放された物体、例えば、加算的に製造されたワークピースは、その後、例えば、歪みによって生じた物体形状の誤差を補正するために、さらに加工されることができる。
【0015】
上述の、力結合の強さを意図的に設定する措置に代えて又は加えて、保持装置の使用に際し、保持装置によって保持されている物体の内部応力を緩和するために、固定要素をクランプ要素によって開口させ、したがってピン状要素を解放し、その後再び固定するように提供することができ、その結果、保持装置に保持され、少なくとも大部分が内部応力からリリースされた物体に、さらなる加工ステップが行われることができる。
【0016】
本発明による保持装置は、固定要素がその長手軸に平行に調整可能に固定されるように設計することもできる。このように、ピン状要素の軸方向における位置を調整するさらなる可能性がある。ピン状要素の軸方向における位置の調整は、例えば、ピン状要素の長さの製造公差に対応して行うことができる。しかしながら、固定機構の構造により、特にピン状要素が多数ある場合には、異なる軸方向位置でそれぞれの固定要素に作用する場合もある。例えば、固定要素への機械的係合がプレート状のクランプ要素によって行われる場合、これは、クランプ要素の支持点から離間した特定の領域における膨張に応じて、その重量のためにたるむ可能性がある。この点に関して、固定要素の位置がそれらの軸方向の長手方向に平行に調整される場合、クランプ要素の作用の位置及び、したがってそれぞれの固定要素にクランプ要素から作用する力を調整することができ、その結果、クランプ要素は、関係するすべての固定要素に、十分に同一の力で作用する。
【0017】
保持装置での固定要素の固定は、例えば、それぞれの固定要素に取り付けられたネジと、保持装置のベース要素にある相手側ネジによって行うことができ、したがって、固定要素の長手軸方向の位置は、固定要素の相手側ネジへのねじ込み量(das Mass des Eindrehens)によって決定される。
【0018】
本発明による保持装置は、少なくとも1つのバネ弾性要素を備えることができ、バネ弾性要素は、並進移動に対してバネ弾性力によってクランプ要素に作用する。バネ弾性力は、例えば、クローズ位置への並進運動を支援する一方で、リリース位置への並進移動に反対方向に向けられることができる。
【0019】
本発明による保持装置は、クランプ要素がクローズ位置とリリース位置との間の移動のためにモータ駆動されるように設計されることができる。あるいは、手動操作を提供することもできる。
【0020】
さらに、有利には、本発明の保持装置は、保持装置に属さない締付ユニット(Spanneinheit)に保持装置を締付けて固定する(Aufspannung)ように設計された締付固定ユニット(Aufspanneinrichtung)が提供されるように、設計される。これにより、プロセスチェーンにおける自動締付を解決するために、従来の締付システムで保持装置をクランプする(Einspannung)ように設定することができる。保持装置が加算的製造に使用される場合、保持装置は、その上に存在する加算的に製造されたワークピースとともに、締付ユニットを介してプロセスチェーンのさらなるプロセスステップに供給されることができる。
【0021】
本発明による保持装置システムは、本発明による保持装置と、固定要素による固定に適したピン状要素を備える。
【0022】
特に、保持装置がピン状要素のための開口を有する加算的製造に適した適用表面を有するように、保持装置システムが設計されていると有利である。その際、適用表面は、加算的製造の条件下において加算的製造のための出発材料との材料結合的接続を生じない適用表面材料を介して形成されており、ピン状要素のうちの少なくとも1つは、それぞれ1つの接続要素を形成し又は接続要素の一部であり、少なくとも1つの接続要素の少なくとも1つのプロセス表面は、加算的製造のための出発材料との材料結合的接続のために適している。ピン状要素によって接続要素が形成されると、すなわち加算的製造はピン状要素自体の表面上で行われる。しかしながら、ピン状要素は、保持装置での固定のための接続要素の一部としてのみ機能し、それ以外の接続要素はピン形状から逸脱することも可能である。
【0023】
適用表面は、例えばセラミックからなることができ、少なくとも1つの接続要素は、例えば、製造されるべき成形部品と同じ材料からなるか、又は、少なくとも所望の材料結合的接続に適した表面を有することができる。少なくとも1つの接続要素は、少なくとも一部の領域において(bereichsweise)、出発材料よりも割安な材料からなることができる。例えば、少なくとも1つの接続要素には鋼を使用することができるとともに、出発材料にはニッケル系合金を使用することができる。適用表面は、保持装置の基板要素に施されたコーティングを介して又は基板要素の中実材料(Vollmaterial des Substratelements)を介して形成されることができる。
【0024】
上述のタイプの加算的製造は、ピン状要素のための異なる固定機構を有する保持装置の使用の下で、WO2019/016155A1から知られており、その開示内容は全範囲において組み込まれている。
【0025】
本発明による保持装置システムの固定機構は、プロセス表面のうちの少なくとも1つが適用表面と面一又は実質的に面一となるように配置されることができる。これは、接続要素がピン状要素自体から形成される場合に特に有利である。製造プロセス又は加工プロセスのためにワークピースを保持するための、本発明による保持装置の使用方法では、ワークピースに属する又はワークピースに固定されたピン状要素によって、少なくとも部分的な数の固定要素にワークピースが固定される。
【0026】
ワークピースは、例えば、マシニング加工(spanabhebend bearbeitet)されることができる。
【0027】
特に有利には、加算的製造方法のための使用を提供することができる。その際、保持装置の適用表面に出発材料を適用し、出発材料の少なくとも一部を固化してワークピースにする。その際、適用表面には、ワークピースの固化中に出発材料との材料結合的接続を生じない適用表面材料が使用される。ワークピースにするための出発材料の固化中に、ワークピースと少なくとも1つの接続要素との間で材料結合的接続が生成されるため、ワークピースは保持装置上に止め置かれる(findet halt)。その際、少なくとも1つの接続要素は、固定要素のうちの1つに固定されたピン状要素によって形成されるか又はこのように固定された少なくとも1つのピン状要素を有する。
【0028】
ワークピースという用語は、まだ完全に形成されていない加工されるべき物体を含み、特に、材料適用又は堆積によって、特に加算的に、製造される成形体も含まれる。
【0029】
加算的製造の後、あるいは必要に応じてさらなるプロセスを経た後に、ワークピースは保持装置から解放される。これは、クランプ要素をリリース位置にし、固定要素を開くという、シンプルな方法で行われる。その後、ワークピースをピン状要素とともに保持装置から取り外すことができる。
【0030】
ピン状要素は、さらなる保持装置において若しくはさらなるプロセスステップのための締付システムにおいて使用されることができ、あるいは、ワークピースから分離されることができる。
【0031】
保持装置は、ワークピースを取り外した後、必要に応じてさらなるピン状要素を装着し、別の用途に使用されることも可能である。ワークピースの出発材料と載置表面との間に材料結合がないため、保持装置はほとんど消耗しない。
【0032】
本発明による保持装置では、複数のワークピースを、同時に又は時間的に相前後して加算的に製造することができる。
【0033】
本発明による使用は、ピン状要素の固定のために、ワークピースの内部応力によって生じる変形の結果として、ワークピースと材料結合的に接続する又はワークピースに固定されるピン状要素の、それぞれの固定要素に対する移動を許容するような固定力を選択する、ことを提供することができる。このようにして、該当するピン状要素は、ワークピースの変形、例えば、熱的に誘起された内部応力による引っ張り又は歪み(Vorzug)に追従することができ、これにより、内部応力を緩和することができる。変形によって生じたワークピースの不所望な形状は、その後の加工プロセス、例えばさらなる加算的製造ステップなどの、例えばマシニングプロセス又は材料適用プロセス(Material auftragende Prozesse)によって補正することができる。
【0034】
しかしながら、本発明による使用は、加算的製造の少なくとも1つの部分ステップの終了後に、クランプ要素をリリース位置にし、その後、再びクローズ位置にし、この後、製造プロセス又は加工プロセスを続行するか又は前記ワークピースを別のタイプの加工に供給する、ことも提供することができる。クランプ要素がリリース位置にあるとき、固定要素が開き、その前にそこに固定されていたピン状要素がリリースされ、したがってワークピースの存在し得る内部応力(moeglicherweise vorliegende Eigenspannungen)を緩和することができる。ピン状要素の一時的なリリースは、内部応力を緩和するために複数回行われることができる。
【0035】
さらに、本発明によれば、保持装置は、ワークピースを締付けて固定する(Spannen)ために使用することができ、ワークピースは、少なくとも部分的な数の固定要素に固定されたピン状要素によって力結合的及び/又は形状結合的に保持される。このため、まだ固定されていない、保持装置から突出するピン状要素にワークピースが押しつけられる。ワークピースに接近してくるピン状要素は、ワークピースの輪郭に応じて、関連する固定要素に所定の距離だけ(Stueck weit)押し込まれれる。その後、クランプ要素はクローズ位置へともたらされ、したがって、ピン状要素が保持装置に固定され、少なくとも部分的な数が同時にワークピースに接触する。これにより、特に不規則に成形された物体又は凹凸のある物体(ungleichmaessig geformte Koerper)をクランプすることができる。本発明による使用は、EP0857544B1から知られる先行技術を、ピン状要素の固定方法を変更することでさらに発展させたものを意味する。
【0036】
本発明による使用の有利な実施形態では、ワークピースは少なくとも2つの保持装置の間でクランプされ、したがって、例えば2つの、理想的には反対の方向から作用することによって、ワークピースを加工のために確実にクランプすることができる。
【0037】
本発明による保持装置、本発明による保持装置システム、及び本発明による保持装置の使用の例示的な実施形態を、以下で図によって示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】クランププレートを有する保持装置を示す図である。
図2図1による保持装置をクランププレートがない状態で示す図である。
図3】4つのコレットと1つのピン状要素を備えたクランププレートの部分を示す図である。
図4図1によるクランププレートを有する保持装置及び基板プレートの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、下部ベースプレート2、上部ベースプレート3、クランププレート4を備えた保持装置1を斜視図で示す。下部ベースプレート2及び上部ベースプレート3の代わりに、単一のベースプレートを設けることも可能である。図2は、保持装置1をクランププレート4がない状態で示す。上部ベースプレート3では、例示的な固定要素として機能する複数のコレット5が固定されており、図1ではその上端面(die oberen Stirnflaechen)のみが示されており、好ましくはクランププレート4の上部表面と面一になっている。クランププレート4は、コレット5を締付けて固定するための特許請求の範囲の意味でのクランプ要素として機能する。コレット5は、適切な開口を介してクランププレート4を貫通してガイドされ、ここで、コレット5の長手軸に平行で上部ベースプレート3から離れるクランププレートの移動によって、コレット5がコレット5の外周への開口の壁部の力作用でクローズ位置又は把持位置へと強制され、クランププレート4が上部ベースプレート3の方向に向かってリリース位置にもたらされるときに、コレットがその固有の弾性で開口するように、開口が寸法設定されている。
【0040】
図3は、4つのコレット5を備えたクランププレート4の上部表面の部分拡大図であり、そのうちの1つにはピン状要素6が装着されている。同様に、図1及び図2には、ピン状要素6が1つだけ示されている。以下に示すホルダ装置1の典型的な使用法では、コレット5の全て又は多くにピン状要素6が装着される。
【0041】
図4は、保持装置1を断面で示し、クランププレート4の上部に、典型的に付加的製造方法に関連して使用される基板プレート7が配置される。基板プレート7は多数の開口8を有し、開口は、図4には示されていないピン状要素6に対応して設けられる。
【0042】
図4で見られるように、クランププレート4は、バネ弾性要素9、例えば皿ばね、によって、上部ベースプレート3上で支持されている。操作ボタン10はクランププレート4に作用し、上部ベースプレート3の垂直膨出部11を介して図4における垂直方向の移動のためにガイドされる。
【0043】
保持装置1を使用するために、ピン状要素6がコレット5に固定される。このために、クランププレート4が操作ボタン10を介して上部ベースプレート3の方向に押圧され、その結果、クランププレート4は、開口8内に配置されたコレット5を開放させるリリース位置にある。開放されたコレット5内に、又は-必要に応じて‐部分的な数の開放されたコレット5内に(in eine Teilanzahl der geoeffneten Spannzangen 5)、それぞれピン状要素6が挿入される。操作ボタン10がリリースされた後、クランププレート4はバネ弾性要素9によってクローズ位置である上部位置にもたらされ、その位置でコレット5が把持位置へと強制される。こうして、挿入されたピン状素子6が固定される。
【0044】
コレット5は、その長手方向の位置を変更できるように、上部ベースプレート3に固定されている。好ましくは、コレット5の固定はそれぞれ1つのネジ12によって実現される。このようにして、コレット5の外径又はクランププレート4の開口の内径の製造公差に反応することができる。特に、これにより、コレット5の長手軸方向の位置を、クランププレート4の上部表面、即ちベースプレート2又は3の反対側の表面の、1つの平面からの任意のズレに適合させることが可能になる。かかるズレは、製造公差の他に、クランププレート4に作用する重力の結果として、即ちクランププレート4がたわむことによって生じ得る。コレット5の位置を適合させることにより、クローズ位置にあるクランププレート4は、ピン状要素6が確実に固定されるように、各コレット5を把持位置へと強制することができる。
【0045】
加算的製造のための保持装置1の使用にあたっては、クランププレート4の上部に基板プレート7が設けられる。基板プレート7は、適用表面13を有し、その表面材料は、製造プロセスにおいて、ワークピースを加算的に製造する図示されていない出発材料との材料結合接続を生じさせないように選択される。加算的製造では、コンピュータ制御のもと、流体又は固体の出発材料から、物理的又は化学的な硬化プロセス又は溶融プロセスを使用することによって、ワークピースの層ごとの構築が行われる。例えば、エネルギービーム、好ましくはレーザービームをこれに用いることができる。
【0046】
加算的製造時に形成されるワークピースを保持装置1で保持できるように、ピン状要素6は、少なくとも1つのプロセス表面14(図3参照)に、加算的製造のプロセスの際に出発材料との材料結合を形成する表面材料を有している。この目的のために、ピン状要素6は、材料結合に適した材料で全体を作ることができる。このようにして、形成されるワークピースは、コレット5内に固定されたピン状要素6を介して保持装置1により保持される。この場合、ピン状要素6はそれぞれ、製造されるべきワークピースのための特許請求の範囲の意味における接続要素を形成する。あるいは、1つ以上のピン状要素6は、プロセス表面14を有する接続要素の1つ以上の部分であることができ、これを基板プレート7の上部に配置することもできる。
【0047】
ピン状要素6が接続要素を形成すると、これらは、好ましくは、そのプロセス表面14が基板プレート7の適用表面13と面一又は同一平面(buendig)になるように、開口部8内に配置される。ワークピースの製造後、操作ボタン10によってクランププレート4をリリース位置に移動させることにより、ワークピースをそこに材料結合的に接続されているピン状要素6とともに保持装置1から容易に解放することができる。ピン状要素6は、さらなるプロセスステップのために、別の締付ツール(Spannarmatur)でワークピースをクランプするために使用することができる。ピン状要素6が最早必要とされない場合、それらは、従来の方法で、例えば、鋸引きプロセス又は火花放電によって、ワークピースから分離することができる。しかし、保持装置1上で生産されたワークピースを、保持装置1とともにさらなるプロセス工程に供給することもできる。この目的のために、任意の締付固定ユニット(Aufspanneinrichtung)15を保持装置1に設けることができる。
【0048】
基板プレートは、出発材料と材料結合に起因する摩耗がなく、再利用が可能である。異なる基板プレート7を1つの同一の保持装置1に使用することができる。それぞれの製造プロセスに必要のないコレット5は、基板プレート7によって覆われ、可能な限り、出発材料が保持装置1に入らないようにすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 保持装置(Halterungsvorrichtung)
2 下部ベースプレート(Untere Basisplatte)
3 上部ベースプレート(Obere Basisplatte)
4 クランププレート(Einspannplatte)
5 コレット(Spannzange)
6 ピン状要素(Stiftfoermiges Element)
7 基板プレート(Substratplatte)
8 開口(Durchbruch)
9 バネ弾性要素(Federelastisches Element)
10 操作ボタン(Bedienungsknopf)
11 膨出部(Ausbuchtung)
12 ネジ(Gewinde)
13 適用表面(Auftragsoberflaeche)
14 プロセス表面(Prozessoberflaeche)
15 締付固定ユニット(Aufspanneinrichtung)
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】