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特表2023-502948回転電気機械のモータモードの終了を管理するための制御モジュールおよび方法
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  • 特表-回転電気機械のモータモードの終了を管理するための制御モジュールおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】回転電気機械のモータモードの終了を管理するための制御モジュールおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/22 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
H02P3/22 A
H02P3/22 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528145
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020081668
(87)【国際公開番号】W WO2021094327
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】1912762
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508075579
【氏名又は名称】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】ナンファン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルフリード、カレーイロ
(72)【発明者】
【氏名】リュック、コビランスキ
【テーマコード(参考)】
5H530
【Fターム(参考)】
5H530AA02
5H530BB18
5H530CC15
5H530CC23
5H530CD01
5H530CD23
5H530CD30
5H530CD32
5H530CD34
5H530CE15
5H530DD03
5H530DD14
5H530EE07
5H530EF01
(57)【要約】
本発明の1つの態様は、自動車用の回転電気機械を制御するためのモジュールであって、制御モジュールは、計算プログラムと、ロータコイル電圧の値Vrotと、ロータコイルの抵抗値Rrotと、ロータコイル誘導の値Lrotとを備え、プログラムは、ロータコイル電流Irotを以下の式に従って推定し:
Irot[k]=Irot[k-1]+(Vrot[k-1]-Irot[k-1]×Rrot)/Lrot×Ts
式中、
Irot[k-1]は、時間k-1において前に計算されたロータコイル電流の推定値であり、
Tsは、インデックスk-1とインデックスkとの間のサンプリング時間であり、
モータモードからニュートラルモードに切り替えるために、前記制御モジュールは、推定ロータコイル電流Irotが所定の値に等しくなった後にステータの相の短絡を制御するように構成される、自動車用の回転電気機械を制御するためのモジュールに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ネットワークによって電力が供給されるロータコイル(Lrotor)およびステータの相(U、V、W)を備える、自動車両用の回転電気機械を制御するためのモジュールであって、前記制御モジュールは、計算プログラムと、前記ロータコイル電圧の値(Vrot)と、前記ロータコイルの抵抗値(Rrot)と、前記ロータコイル誘導の値(Lrot)とを備え、前記プログラムは、推定ロータコイル電流(Irot[k])を以下の式に従って推定し:
Irot[k]=Irot[k-1]+(Vrot[k-1]-Irot[k-1]×Rrot)/Lrot×Ts
式中、
Irot[k-1]は、時間k-1において前に計算された前記ロータコイル電流の推定値であり、
Vrot[k-1]は、時間k-1における前のロータコイル電圧であり、
Tsは、インデックスk-1とインデックスkとの間のサンプリング時間であり、
前記電気機械をモータモードからニュートラルモードに切り替えるために、前記制御モジュールは、前記推定ロータコイル電流(Irot[k)が所定の値、例えば0アンペアに等しくなった後に、前記ステータの前記相を同じ電位に配置することを制御するように構成される、制御するためのモジュール。
【請求項2】
モータモードからニュートラルモードに切り替えるために、前記制御モジュールが、前記推定ロータコイル電流(Irot[k)の関数としてステータコマンドを生成するように構成される、請求項1に記載の制御モジュール。
【請求項3】
前記制御モジュールが、ネットワーク電圧入力(Vdc)を備え、前記ロータコイル電圧が、0Vに等しいか、または以下の式に従って前記制御モジュールによって計算され:
Vrot[k-1]=-1×(Vdc[k-1]-Vdiode)
式中、Vdiodeは、例えば0.7Vに等しい定数である、請求項1または2に記載の制御モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の制御モジュールを備える回転電気機械であって、
誘導コイルを備えるロータと、
相を有する巻線を備えるステータと、
ロータ制御ユニットであって、
前記誘導コイルの入力とネットワークの正端子との間に接続された高段電子スイッチ(Q1)と、
グランドと前記誘導コイルの前記入力との間の低電子スイッチ(Q23)と、
前記誘導コイルの出力とグランドとの間の低出力電子スイッチ(Q24)と、
前記ネットワークの前記正端子に接続されたカソードと、前記誘導コイルの前記出力に接続されたアノードとを備えるダイオード(D)とを備え、
前記ロータ制御ユニットは、モータモード停止コマンドの場合、高速減磁命令に従って前記低電子スイッチ(Q23)の閉鎖、前記低出力電子スイッチ(Q24)の開放および前記高段電子スイッチ(Q1)を、または低速消磁命令に従って前記低電子スイッチ(Q23)の閉鎖、前記低出力電子スイッチ(Q24)の閉鎖および前記高段電子スイッチ(Q1)の開放を制御することができ、
高速消磁命令の場合、前のロータコイル電圧が、以下の式に従って計算され:
Vrot[k-1]=-1×(Vdc[k-1]-Vdiode)
低速消磁命令の場合、前記ロータコイル電圧は0に等しい、ロータ制御ユニットとを備える、回転電気機械。
【請求項5】
温度センサであって、前記ロータ抵抗の値(Rrot)が前記温度センサによって測定された前記温度の関数として推定される、温度センサを備える、請求項4に記載の回転電気機械。
【請求項6】
前記ロータコイル誘導の値(Lrot)が、前記トルクおよび速度に基づいて推定された前記機械の動作点の関数として推定される、請求項4または5に記載の回転電気機械。
【請求項7】
前記制御モジュールが、ステータコマンドおよびロータコマンド、以下の式による命令トルクTem[k]を送信するステップを備え:
Tem[k]=Tem_0×(Irot[k]/Irot_0)^2
式中、前記ロータ電流Irot_0は、前記制御モジュールが前記モータモード停止コマンドを受信した時点の推定ロータ電流であり、Tem_0は、前記推定ロータコイル電流(Irot[k)が所定の値に等しくなるまでの、前記制御モジュールが前記モータモード停止コマンドを受信した時点の前記機械の前記推定電磁トルクである、請求項4から6のいずれか一項に記載の回転電気機械。
【請求項8】
前記ステータの相に接続された高電子スイッチおよび低電子スイッチを備える電圧変換器を備え、前記制御モジュールが、前に起動されたモータモードに対するモータモード停止コマンドを受信したときに、前記制御モジュールは、前記推定ロータ電流(Irotk)に従ってハイサイド電子スイッチおよびローサイド電子スイッチのパルス幅変調(PWM)を修正するためのステータコマンドを送信し、それにより、前記推定ロータ電流(Irotk)が低いほど、RMS電圧に関して前記ステータ相への電力供給を減少させるために前記パルス幅変調がより低減される、請求項4から7のいずれか一項に記載の回転電気機械。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか一項に記載の自動車両用の回転電気機械のモータモードを停止するための方法であって、
ロータコイル電流(Irot[K])を以下の式に従って推定するステップであって、
Irot[k]=Irot[k-1]+(Vrot[k-1]-Irot[k-1]×Rrot)/Lrot×Ts
式中、
Irot[k-1]は、時間k-1において前に計算された前記ロータコイル電流の推定値であり、
Vrot[k-1]は、時間k-1における前のロータコイル電圧であり、
Tsは、インデックスk-1とインデックスkとの間のサンプリング時間である、推定するステップと、
エンジン停止コマンドを受信するステップであって、
高速消磁命令に従って、低出力電子スイッチ(Q24)の開放を制御することによって、または低速消磁命令に従って、前記低出力電子スイッチ(Q24)の閉鎖を制御することによって、高段電子スイッチ(Q1)の開放および低電子スイッチ(Q23)の閉鎖を制御する減磁サブステップと、
前記推定ロータコイル電流(Irot[K])が所定の値に等しくなった後にステータの相を同じ電位にもっていくための制御サブステップとを含む、受信するステップとを含む、方法。
【請求項10】
命令トルク(Tem[k])を以下の式に従って計算するステップであって、
Tem[k]=Tem_0×(Irot[k]/Irot_0)^2
式中、前記ロータ電流Irot_0は、制御モジュールが前記モータモード停止コマンドを受信した時点の推定ロータ電流であり、Tem_0は、前記制御モジュールが前記モータモード停止コマンドを受信した時点の命令の電磁トルクである、計算するステップと、
前記推定ロータコイル電流(Irot[k)が所定の値に等しくなるまで、前記命令トルクの関数として前記ロータおよび前記ステータを制御するステップとをさらに含む、請求項9に記載の自動車両用の回転電気機械のモータモードを停止するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、回転電気機械を制御する技術分野である。
【0002】
本発明は、回転電気機械のモータトルクの終了を管理するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
それ自体公知の方法で、可逆電気機械は、特にアクセサリフェイスプレートを介して燃焼エンジンに結合され得る。一般にスタータオルタネータと呼ばれるこの電気機械は、車両バッテリを充電するために発電機モードで動作することができ、車両にトルクを提供するためにモータモードで動作することができる。
【0004】
発電機モードは、電気機械が制動段階で電気エネルギーをバッテリに送出することを可能にする回生制動機能に使用することができる。特に、モータモードは、交通状況に応じて燃焼エンジンを停止および再始動するための自動機能(ストップ・アンド・スタート機能のためのSTT機能と呼ばれる)、ブースト機能と呼ばれるエンジンストールを支援するための機能であって、電気機械が燃焼エンジンモードで駆動する段階で燃焼エンジンを時折支援することを可能にする機能、および燃料消費および汚染排出物を最小限に抑えるために、エンジン速度を低下させるかまたは停止するように運転者からの明示的な行動なしにトラクションチェーンの開放を自動化することを可能にする、コースティング機能において使用することができる。加えて、モータモードは、電気機械が燃焼エンジンによって提供されるトルクなしに車両を前進させるのに必要なトルクを提供する、電気自動車モードで使用することができる。
【0005】
既知の機械では、保護(熱、時間、または速度)が作動したときにモータモードを停止すると、電気機械のインバータのスイッチング素子が開く。次いで、ステータに含まれる電流が車両の車載ネットワークに送り返され、アクセサリフェイスプレートにおけるトルク衝撃および車載ネットワーク内の過電圧を引き起こす。
【0006】
したがって、ニュートラルモードを通過する間これらの衝撃を回避するために、モータモードが停止したときのトルクを管理するためのアルゴリズムを備える制御ユニットが、存在する。制御ユニットは、ロータ電流、次いでステータ電圧をこの同じ速度で0に下げるために、速度に従ってトルク命令およびトルク勾配を送信する。
【0007】
モータモードを迅速に終了するためにロータ電流をゼロに下げるために、ロータ内の電流を低下させる高速消磁を課すために、閉ループ内でまたはマイナスUB+(UB+は機械の端子間の電圧である)に等しい低速減磁を実行することによって、ロータ電圧ゼロ命令が、課される。高速消磁では、ロータのコイルには、モータモードとは逆に電力が供給され、これにより、より迅速に消磁される。
【0008】
消磁時間は、ロータ速度に依存する。
【0009】
次に、ロータが消磁されると、ネットワークへの電流の戻りを回避するために、例えば、約10msの所定の持続時間の間、インバータ/整流器の低段MOSFETを閉じることによってステータの相間で短絡が行われ、それにより、ステータのコイル内のジュール加熱によって、ステータの残留電流が失われる。
【0010】
しかし、モータモードからのこの退出は、しばしば、ステータ短絡およびニュートラルモードへの移行のためのゼロ電流におけるロータの配置中にトルクの振動および電気ネットワークの過電圧を引き起こす。実際、ロータに電流が依然として存在する間にステータの短絡が起こることが定期的に起こる。
【0011】
1つの解決策は、ステータを短絡させる前に最悪の場合の消磁時間を待つことである。しかし、これにより、モータモードからニュートラルモードへの移行が遅くなり、運転者の体験に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0012】
したがって、現在、ニュートラルモードへの移行速度と過電圧との間にはトレードオフが、存在する。
【0013】
別の解決策は、例えば、ロータの誘導コイルと直列の抵抗器と、この抵抗器の電圧を測定するためのユニットとを使用して、ロータの誘導コイル内の電流を測定することである。しかし、そのような抵抗器は、ジュール発熱をもたらし、機械の効率を低下させる。加えて、消磁の終了時にロータ電流は非常にゆっくりと減少するため、消磁時間は非常に長い。
【0014】
したがって、モータモードからニュートラルモードへの移行のために、トルクの振動および電気ネットワーク内の過電圧を低減または相殺する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、より良好なロータ消磁スロープのシミュレーションを有すること、したがって過度に長い遅延を回避しながら、ロータが従来技術より少ない電流を有する場合にステータを短絡することを可能にするためにロータの動力学を考慮することによって、上記で言及した問題に対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1つの態様は、ロータコイルと、電気ネットワークによって電力が供給されるステータの相とを備える自動車両用の回転電気機械を制御するためのモジュールであって、制御モジュールは、計算プログラムと、ネットワークの電圧、ロータコイルの抵抗値、ロータコイル誘導の値を含む入力とを備え、プログラムは、推定ロータコイル電流を以下の式に従って推定し、
Irot[k]=Irot[k-1]+(Vrot[k-1]-Irot[k-1]×Rrot)/Lrot×Ts
式中、
Irot[k-1]は、時間k-1において前に計算されたロータコイル電流の推定値であり、
Vrot[k-1]は、時間k-1における前のロータコイル電圧であり、
Tsは、インデックスk-1とインデックスkとの間のサンプリング時間であり、
電気機械をモータモードからニュートラルモードに切り替えるために、前記制御モジュールは、推定ロータコイル電流が所定の値、例えば0アンペアに等しくなった後に、ステータの相を同じ電位に配置することを制御するように構成される、モジュールに関する。
【0017】
本発明によれば、対象のロータの電流を最終段の指標として推定することによって、ロータの電流がほぼ0であるときにニュートラルモードに移行することが可能である。したがって、ロータ内の電流の減少およびステータ内の減少を可能な限り同時にゼロに近くなるように改善することによって、衝撃を低減するか、またはさらには解消し、過電圧を排除することが可能である。実際、DCバス上の電流および電圧のピークは、モータモードからニュートラルモードへの移行において減少し、励磁および相電流の振動は低減されるか、またはさらには消失し、したがって、関連するトルクの衝撃は小さくされる。さらに、モータモードからニュートラルモードに移行するのにかかる時間が、大幅に短縮される。
【0018】
前の段落で概説した特徴に加えて、本発明の1つの態様による制御モジュールは、個別にまたは任意の技術的に実行可能な組み合わせで考えられる以下の中からの1つまたは複数の追加の特徴を有することができる。
【0019】
1つの実施形態によれば、回転電気機械の制御モジュールは、上記で定義された推定ロータコイル電流ならびにロータおよびステータコマンドの計算を実施するためのソフトウェア命令を記憶するメモリを備える。
【0020】
制御モジュールの1つの実施形態によれば、モータモードからニュートラルモードに切り替えるために、制御モジュールは、推定ロータコイル電流の関数としてステータコマンドを生成するように構成される。
【0021】
1つの実施形態によれば、前に計算されたロータコイル電圧は、所定の値、例えば0ボルトまたはマイナス11ポイントの3ボルトに等しい。
【0022】
別の実施形態によれば、制御モジュールは、ネットワーク電圧入力(Vdc)を備え、前に計算されたロータコイル電圧は、0Vに等しいか、または制御モジュールによって以下の式に従って計算され:
Vrot[k-1]=-1×(Vdc[k-1]-Vdiode)、
式中、Vdiodeは、例えば、ゼロ点7ボルトに等しい定数である。
【0023】
本発明はまた、前述の実施形態による制御モジュールを備える回転電気機械であって、
誘導コイルを備えるロータと、
相を有する巻線を備えるステータと、
ロータ制御ユニットであって、
誘導コイルの入力とネットワークの正極端子との間に接続された高段電子スイッチと、
グランドと誘導コイルの入力との間の低電子スイッチと、
誘導コイルの出力とグランドとの間の低出力電子スイッチと、
ネットワークの正端子に接続されたカソードと、誘導コイルの出力に接続されたアノードとを備えるダイオードとを備え、
ロータ制御ユニットは、モータモード停止コマンドの場合、高速減磁命令に従って低電子スイッチの閉鎖、低出力電子スイッチの開放および高段電子スイッチの開放を、または低速消磁命令に従って低電子スイッチの閉鎖、低出力電子スイッチの閉鎖および高段電子スイッチの開放を制御することができ、
高速消磁命令の場合、前のロータコイル電圧は、以下の式に従って計算され:
Vrot[k-1]=-1×(Vdc[k-1]-Vdiode)
低速消磁命令の場合、ロータコイル電圧は0に等しい、ロータ制御ユニットとを備える、回転電気機械に関する。
【0024】
電気機械の1つの実施形態によれば、回転電気機械は、温度センサであって、ロータ抵抗の値が温度センサによって測定された温度の関数として推定される、温度センサを備える。
【0025】
例えば、ロータ抵抗の値は、以下の式に従う:Rrot=R0(1+αv.ΔT)
式中、R0は、所定の温度におけるコイルの抵抗値であり、ΔT(K)は、所定の温度と温度センサによって測定された温度との間の温度の変化であり、αvは、例えば0.0039から0.008、好適には0.00396に等しい所定の等圧的体積膨張係数である。
【0026】
具体的には、ロータの抵抗は、主にロータの温度に応じて変化する。
【0027】
電気機械の別の実施形態によれば、ロータ抵抗の値は、所定の値である。
【0028】
したがって、これらの2つの実施形態によれば、ロータ電流を推定するために、ロータコイル抵抗に相当する値またはロータ抵抗の推定値のいずれかが、計算される。
【0029】
ロータ回転速度センサをさらに備える電気機械の1つの実施形態によれば、ロータコイル誘導の値は、推定または命令ロータトルクおよび回転速度に基づいて推定された機械の動作点の関数として推定される。
【0030】
電気機械の別の実施形態によれば、制御モジュールは、ロータの回転速度を推定し、ロータコイル誘導の値は、推定または命令ロータトルクおよび推定回転速度に基づいて推定された機械の動作点の関数として推定される。
【0031】
具体的には、ロータのインダクタンスは磁気飽和に応じて変化するため、推定ロータコイル電流の精度を向上させるために、ロータのインダクタンスの推定値が、算出される。
【0032】
別の実施形態によれば、ロータコイル誘導(Lrot)の値は、最終段の相当値である。
【0033】
回転電気機械の1つの実施形態によれば、制御モジュールは、以下の式による命令トルクTem[k]に合わせてステータを制御するための伝達ステップを含み、
Tem[k]=Tem_0×(Irot[k]/Irot_0)^2
式中、ロータ電流Irot_0は、制御モジュールがモータモード停止コマンドを受信した時点の推定ロータ電流であり、Tem_0は、制御モジュールがモータモード停止コマンド命令を受信した時点の機械の電磁トルクである。
【0034】
回転電気機械の1つの実施形態によれば、電気機械は、ステータの相に接続された高電子スイッチおよび低電子スイッチを備える電圧変換器を備え、制御モジュールが事前に起動されたモータモードのモータモード停止コマンドを受信すると、制御モジュールは、推定ロータ電流に応じてハイサイド電子スイッチおよびローサイド電子スイッチのパルス幅変調を変更するためのステータコマンドを送信し、それにより、推定ロータ電流が低いほど、RMS電圧に関してステータ相への電力の供給を減少させるためにパルス幅変調が、より低減される。
【0035】
この実施形態および前述の実施形態の一例によれば、ステータコマンドは、計算された命令トルクTem[k]、例えば計算された命令トルクTem[k]に依存する。
【0036】
1つの例によれば、電気機械は、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチをパルス幅変調によって制御することを可能にするステータ制御ユニットを備え、パルス幅変調は、ステータコマンドに従ってパラメータ化される。
【0037】
本発明の別の態様はまた、様々な実施形態の有無にかかわらず、上記で説明した回転電気機械のモータモードを停止するための方法であって、
ロータコイル電流(Irot[k])を以下の式に従って推定するステップであって、
Irot[k]=Irot[k-1]+(Vrot[k-1]-Irot[k-1]×Rrot)/Lrot×Ts
式中
Irot[k-1]は、時間k-1において前に計算されたロータコイル電流の推定値であり、
Vrot[k-1]は、時間k-1における前のロータコイル電圧であり、
Tsは、インデックスk-1とインデックスkとの間のサンプリング時間である、推定するステップと、
エンジン停止コマンドを受信するステップであって、
高速消磁命令に従って、低出力電子スイッチの開放を制御することによって、または低速消磁命令に従って、低出力電子スイッチの閉鎖を制御することによって、高段電子スイッチの開放および低電子スイッチの閉鎖を制御する消磁サブステップと、
推定ロータコイル電流が所定の値に等しくなった後にステータの位相を同じ電位にもっていくための制御サブステップとを含む、受信するステップとを含む、回転電気機械のモータモードを停止するための方法に関する。
【0038】
前述の方法の1つの実施形態によれば、本方法は、
以下の式に従って命令トルク(Tem[k])を計算するステップであって、
Tem[k]=Tem_0×(Irot[k]/Irot_0)^2
式中、ロータ電流Irot_0は、制御モジュールがモータモード停止コマンドを受信した時点の推定ロータ電流であり、Tem_0は、制御モジュールがモータモード停止コマンド命令を受信した時点の命令の電磁トルクである、計算するステップと、
推定ロータコイル電流が所定の値に等しくなるまで、命令トルクの関数としてステータを制御するステップとをさらに含む。
【0039】
本発明およびその様々な用途は、以下の説明を読み、添付の図面を検討することにより、よりよく理解されるであろう。
【0040】
図面は、本発明の完全に非限定的な指示として提示されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】ステータ電気システムSEの概略図である。
図2】ロータ電源システムの電気概略図である。
図3】本実施形態の第1の例による概略ブロック図である。
図4】本実施形態の第2の例による概略ブロック図である。
図5】本実施形態の第3の例による概略ブロック図である。
図6A】従来技術によるステータの相内のネットワーク電圧Vdc、電気ネットワーク電流Idc、実際のロータ電流Iexc[A]およびIph[A]をグラフで表すヒストグラムである。
図6B】上記で説明した実施形態の第1の例による電気機械のステータの相内のネットワーク電圧Vdc、電気ネットワーク電流Idc、実際のロータ電流Iexc[A]およびIph[A]をグラフで表すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面は、本発明の完全に非限定的な指示として提示されている。
【0043】
電気機械は、バッテリに接続された車載電気ネットワークを備える車両に設置されるように意図されている。
【0044】
車載ネットワークは、12V、24V、または48Vのネットワークであってもよい。電気機械は、アクセサリフェイスプレート上に配置されたベルトまたはチェーンシステムによって、それ自体既知の方法で燃焼エンジンに結合される。加えて、電気機械は、LIN(Local Interconnect Network)、CAN(Controller Area Network)、またはイーサネット通信プロトコルを使用してエンジンコンピュータと通信することができる。電気機械は、モータモードで動作することができ、発電機モードとも呼ばれるオルタネータモードで動作することができる。機械がオルタネータモードで動作できる場合、電気機械は、スタータオルタネータである。
【0045】
回転電気機械Mは、少なくとも3つの相U、V、Wを有するステータと、ステータに巻回された3つのコイルu、v、wとを備える。
【0046】
これらの実施形態の1つの実施態様によれば、回転電気機械は、スタータオルタネータである。
【0047】
スタータオルタネータは、特に、以下でより詳細に説明する本発明による電気技術的部分および制御モジュールを備える。より正確には、電気技術的部分は、電機子要素とインダクタ要素とを備える。1つの例では、電機子はステータであり、インダクタは、励磁コイルを備えるロータであり、以下、ロータコイルLrotorと呼ばれる。ステータは、N個の相を備える。検討中の例では、ステータは、3つの相U、V、Wを備える。この例では、コイルu、v、wは、スター構成で接続され、そのそれぞれは、その出力において、対応する相U、V、Wをそれぞれ備える。別の例によれば、電気機械は、6つの相を含む。
【0048】
変形例として、相の数Nは、5相機械では5に等しく、6相または二重3相機械では6に等しく、または7相機械では7に等しくてもよい。ステータの相は、デルタまたはスター構成で結合され得る。デルタ結合とスター結合の組み合わせも考えられる。
【0049】
図1は、ステータ電気システムSEの概略図である。電気システムSEは、DC電源B、この例では48ボルト(しかし、これは、例えば、12ボルトまたは24ボルトであってもよい)の、例えば自動車のバッテリに接続された第1の電源端子B+および第2の電源端子B-を備え、それによって、車両の電気装置の他のアイテム(図示せず)に車載ネットワークを介して電力を供給することを可能にする。
【0050】
DC電源Bはまた、自動車のバッテリと、車両のバッテリと並列に接続されたコンデンサバンクとを備えることもできる。この例では、第2の端子B-は、電気システムSEのグランドである。
【0051】
電気システムSEは、前記DC電圧源Bからの電力を回転電気機械Mに供給するための電圧変換器Oをさらに備える。
【0052】
電圧変換器Oは、並列に接続された複数のスイッチングアームを備え、その数は、回転電気機械Mの相の数と同じである。この場合、電圧変換器Oは、第1のアームXと、第2のアームYと、第3のアームZとを備えるが、6相回転電気機械の例の場合、例えば6つのスイッチングアームを備えることができる。
【0053】
各アームX、Y、Zは、ハイグループHSを共に形成するハイサイドスイッチHS_X、HS_Y、HS_Zと、ローグループLSを共に形成するローサイドスイッチLS_X、LS_Y、LS_Zとを備える。アームX、Y、Zのハイサイドおよびローサイドの各スイッチは、中間点PX、PY、PZにおいて互いに接続されている。
【0054】
この例では、各ハイサイドまたはローサイドスイッチは、各々がフライバックダイオードを備える金属酸化物半導体電界効果トランジスタである。
【0055】
したがって、この場合、この例では、第1のアームX上で、第1の中間点PXによって第1のローサイドスイッチLS_Xに接続された第1のハイサイドスイッチHS_Xと、第2のアームY上で、第2の中間点PYによって第2のローサイドスイッチLS_Yに接続された第2のハイサイドスイッチHS_Yと、第3の中間点PZによって第3のローサイドスイッチLS_Zにそれぞれ接続された第3のハイサイドスイッチHS_Zとが存在する。
【0056】
各中間点PX、PY、PZは、前記回転電気機械Mの少なくとも1つの相U、V、Wに接続されているので、この場合、この例では、第1の中間点PXは相Uに接続され、第2の中間点PYは相Vに接続され、第3の中間点Zは相Wに接続される。
【0057】
電圧変換器Oは、ハイサイドHS_X、HS_Y、HS_ZおよびローサイドLS_X、LS_Y、LS_Zスイッチを制御するためのユニットUをさらに備える。したがって、前記制御ユニットUは、スイッチごとに、対応するスイッチの制御部に接続された出力を備える。図1の過負荷を回避するために、制御ユニットUの出力と第3のローサイドスイッチLS_Zの制御部との間の接続、および制御ユニットUの別の出力と第2のハイサイドスイッチHS_Yの制御部との間の接続のみが示されている。
【0058】
制御ユニットUは、パルス幅変調(PWM)を介して各アームX、Y、Zのスイッチを制御する。
【0059】
図2は、ロータ電源システムの電気概略図である。
【0060】
ロータ電源システムは、電圧源、この場合はDC電源Bから負荷、この場合はロータコイルLrotorに電力を供給するための電力線を備える。
【0061】
前記電力線は、第1の主端子Dと第2の主端子Sとを有するメインスイッチQ1を備え、第1の主端子Dと第2の主端子Sとの間に主電流lpが通過するように意図されている。
【0062】
メインスイッチQ1は、メインスイッチQ1を閉状態、開状態または半閉状態に選択的に配置するための制御端子Gをさらに備える。半閉鎖状態では、メインスイッチQ1は、制御端子Gによって制御される、第1のDと第2の主端子Sとの間に接続される可変抵抗器に相当する。この場合、メインスイッチQ1はパワートランジスタである。より具体的には、パワートランジスタは、頭字語MOSFETによっても知られる金属酸化物半導体電界効果トランジスタであり、この場合、これは、エンハンスメントMOSFETである。
【0063】
電力線は、電気システムのスイッチングアームの一部を構成するハイサイドスイッチシステム1である。
【0064】
スイッチングアームは、制御端子によって制御される第1および第2の主端子も含むローサイドスイッチQ23を含むローサイドスイッチシステムを備える。
【0065】
ローサイドスイッチQ23およびメインスイッチQ1は、ハイサイドスイッチQ1であり、中間点で接続されている。
【0066】
ローサイドスイッチQ23は、中間点と車両のグランドであってもよい負端子B-との間に接続される。
【0067】
ロータコイルLrotorは、中間点で接続された端子を備える。
【0068】
電気システムは、これもまた第1および第2の主端子も備える低出力または消磁電子スイッチQ24をさらに備え、このスイッチは、負端子と励磁コイルの他方の端子との間に接続され、制御端子によって制御される、る。
【0069】
消磁電子スイッチQ24は、電気機械がオルタネータモードまたはモータモードにあるときに飽和モードで、または励磁コイルを消磁するために制御モジュールによって制御される。
【0070】
ローサイド電子スイッチQ23は、消磁電子スイッチQ24と共に、メインスイッチQ1が開いているときにコイルLrotorの制御された消磁を可能にする。
【0071】
ロータ電源システムは、この実施形態では、端子B+とロータコイルLrotorの第2の端子との間にダイオードD1をさらに備える。
【0072】
このダイオードD1は、ローサイドスイッチQ23を閉じ、消磁スイッチQ24を開くことで、ロータの迅速な消磁を可能にする。
【0073】
制御モジュールは、ロータコイルLrotorに注入される励磁電流を生成するためのチョッパを組み込んだ励磁回路を備える。
【0074】
回転電気機械は、モータモード、ニュートラルモードを備え、オルタネータモードを備えてもよい。
【0075】
制御モジュールは、メモリと、例えばマイクロコントローラとを備える制御回路をさらに備える。
【0076】
制御モジュールは、回転電気機械をモータモードにするために回転電気機械に印加されるトルク命令に基づいて、ステータコマンドおよびロータコマンドを生成することができるモータアルゴリズムを備える。例えば、特に自動車両の燃焼エンジンを始動するときに、回転電気機械のモータモードを作動させる要求に続いて、前記方法は、自動車両のエンジンコンピュータによって送信された命令トルクおよび命令トルク勾配を適用するステップを含む。
【0077】
この実施形態では、制御モジュールは、ステータを制御するように電圧変換器Oのスイッチを制御するように制御ユニットUに命令することができる。
【0078】
別の実施形態では、制御モジュールは、制御ユニットUである。
【0079】
したがって、制御モジュールは、ロータ電源システムのスイッチQ1、Q23、Q24を制御することもできる。
【0080】
本発明は、モータモードからニュートラルモードに切り替えるときのトルクの振動および電気ネットワークにおける過電圧を低減または相殺することを目的とする。
【0081】
制御モジュールは、この実施形態では、DC電源の電圧に対応する、電気ネットワークの電圧Vdcを測定するための入力を備える。
【0082】
制御モジュールは、ロータコイルの抵抗値Rrotと、ロータコイル誘導の値Lrotとを備える。
【0083】
図3は、この実施形態の第1の例によるブロック図を概略的に示す。
【0084】
制御モジュールが、ロータコイルの抵抗値Rrotおよびロータコイル誘導の値Lrotを入力として受け取る第1の実施形態。これらの2つの値のそれぞれは、所定の固定値または制御モジュールに送信される計算値とすることができる。
【0085】
制御モジュールは、ロータコイル電流の推定値(Irot[k)を計算するためのソフトウェア命令を記憶するメモリを備える。
【0086】
推定ロータコイル電流は、以下の式に従って計算される:
【数1】
【0087】
式中、Irot[k-1]は、時間k-1において前に計算されたロータコイル電流の推定値であり、Vrot[k-1]は、時間k-1における前のロータコイル電圧であり、Tsは、インデックスk-1とインデックスkとの間のサンプリング時間である。
【0088】
電気機械は、モータモードとニュートラルモードとを備え、モータモードからニュートラルモードに移行するために、前記制御モジュールは、推定ロータコイル電流(Irot[k)が所定の値、例えば0アンペアに等しくなった後、ステータの相を同じ電位に配置することを制御するように構成される。
【0089】
この実施形態では、制御モジュールは、この式に従ってロータコイル電圧を計算する:
Vrot[k-1]=-1×(Vdc[k-1]-Vdiode)、
式中、Vdiodeは、例えば、ダイオードD1の端子間電圧を表す0.7Vに等しい定数である。
【0090】
1つの実施形態によれば、制御モジュールは、推定ロータ電流(Irot[K])の関数としてステータコマンドを生成するように構成される。
【0091】
特に、制御モジュールは、この実施形態では、推定ロータ電流(Irot[k)が所定値、例えば0アンペアに等しくなった後、ステータ電気システムSEのローサイドスイッチLS_X、LS_Y、LS_Zの閉鎖およびハイサイドスイッチHS_X、HS_Y、HS_Zの開放を制御するように構成される。これは、ステータの位相をグランドする。別の実施形態によれば、制御モジュールは、推定ロータ電流(Irot[K])が所定値、例えば0アンペアに等しくなった後、ステータ電気システムSEのローサイドスイッチLS_X、LS_Y、LS_Zの開放、およびハイサイドスイッチHS_X、HS_Y、HS_Zの閉鎖を制御するように構成される。この例では、これは、ステータの位相を端子B+にある同じ電位に設定する。
【0092】
ステータ電気システムSEのローサイドスイッチLS_X、LS_Y、LS_Zの閉鎖およびハイサイドスイッチHS_X、HS_Y、HS_Zの開放は、制御ユニットに送られるステータコマンドによって、または、直接スイッチを制御することによって制御することができる。
【0093】
したがって、本発明は、モータモードを停止する要求に続いて、インバータのスイッチ(スイッチング素子)が完全に開く前に消費される電流を減少させるために、推定ロータ電流Irotに従って電気機械が制御されることを可能にする。このようにして電流を推定することにより、まず、コイルが非常に低いまたはゼロのロータ電流を有するときに、ステータの相を電位に配置することを制御することが可能になり、それによってステータの相での短絡、したがってトルクの振動および過電圧も回避または低減する。さらに、実際ではなく推定されることによって、より高速になり、実際のロータ電流を測定または計算するためのシステムに依存しないことが可能になる。
【0094】
実際、この式は、推定電流が、ロータの消磁の開始の少なくともすべてにわたって推定実際電流に近いか、またはそれに等しいことを可能にし、消磁の終了時、モータモードからニュートラルモードへの移行時間を短縮するために、計算された推定電流は、実際のロータ電流よりも迅速に0アンペアに近くなる。
【0095】
したがって、推定電流は、自動車両の車載ネットワークにおけるトルクの衝撃および過電圧を回避または低減することと、信頼性が高く高速であることとの両方を可能にする。
【0096】
図4は、本実施形態の第2の例によるブロック図を概略的に示す。
【0097】
電気機械は、例えばステータの巻線または電気機械の軸受に対して取り付けられた温度センサをさらに備え、ロータ抵抗の値Rrotが、温度センサによって測定された温度Tの関数として推定されることを除いて、上記で説明した電気機械と同一である。例えば、ロータ抵抗の値Rrotは、以下の式に従う:
Rrot=R0(1+αv.ΔT)
式中、R0は、所定の温度、例えば293.15に対応する25℃でのロータコイルの抵抗の値であり、ΔTは、所定の温度と温度センサによって測定された温度との間の温度変化、例えば125℃-25℃=100℃であり、αv(K-1)は、例えば0.00396に等しい所定の等圧的な体積膨張係数である。
【0098】
R0は、例えば0.47オームに等しくてもよく、例えば120℃では、ロータコイル抵抗は0.65オームの値を有する。
【0099】
したがって、この例では、制御モジュールは、温度に伴うロータコイルの抵抗の上昇を考慮に入れるため、ロータコイル電流をより正確に推定する。
【0100】
図5は、この実施形態の第3の例によるブロック図を概略的に示す。
【0101】
電気機械は、電気機械がロータ位置および回転速度センサをさらに備え、制御モジュールが、推定トルクおよびロータの回転速度に基づいて推定された電気機械の動作点の関数としてロータコイル誘導Lrotの値を推定することを除いて、上記で説明した電気機械と同一である。
【0102】
ロータの角度位置は、ホール効果アナログセンサと、ロータと共に回転する関連する磁気ターゲットとによって測定され得る。
【0103】
別の実施形態(図示せず)によれば、制御モジュールは、命令トルクおよび回転電気機械の回転速度に依存する所定のトルク勾配に従ってステータコマンドをモータモードからニュートラルモードに切り替えるように構成され、制御モジュールは、推定ロータ電流Irotが所定値以下であるときにステータの相を同じ電位に配置することを制御する。
【0104】
本実施形態の1つの例によれば、ステータコマンドは、ステータの電圧と回転電気機械の起電力との間の進角と、インバータのスイッチング素子の開角と、反転電圧とによって規定される。
【0105】
この第2の実施形態の1つの実施態様によれば、回転電気機械の回転速度が高いほど、所定のトルク勾配が小さくなる。
【0106】
これらの実施形態の1つの実施態様によれば、モータモードを停止する要求は、トルク印加時間の満了後に生成される。
【0107】
これらの実施形態の1つの実施態様によれば、モータモードを停止する要求は、温度閾値を超えた後に生成される。
【0108】
これらの実施形態の1つの実施態様によれば、モータモードを停止する要求は、回転電気機械の回転速度閾値を超えた後に生成される。
【0109】
これらの実施形態の1つの実施態様によれば、ロータコマンドは、励磁電流の値である。
【0110】
本発明はまた、電気機械のモータモードからニュートラルモードに切り替えるための方法に関する。
【0111】
方法は、中断された燃焼エンジン始動段階中の電気機械のトルク制御に関する。
【0112】
図6Aは、従来技術によるステータの相のネットワーク電圧Vdc、電気ネットワーク電流Idc、実際のロータ電流Iexc[A]およびIph[A]をグラフで表すヒストグラムである。
【0113】
図6Bは、上記で説明した実施形態の第1の例による電気機械のステータの相のネットワーク電圧Vdc、電気ネットワーク電流Idc、実際のロータ電流Iexc[A]およびIph[A]をグラフで表すヒストグラムである。
【0114】
本発明による方法は、上記で説明した式に従ってロータコイル電流(Irot[k)を推定するステップを含む。
【0115】
各ヒストグラムにおいて、自動車両の燃焼エンジンを始動させるときに回転電気機械がモータモードを終了するための要求の間、エンジンコンピュータが通信バスを介して電気機械に対応する命令、ならびに命令トルク、および命令勾配を送信するときの時間t0(図6Aのヒストグラムについては約1.125秒、図6Bのヒストグラムについては0.775秒)を見ることが可能である。この燃焼エンジンの始動は、例えば、交通状況に応じて燃焼エンジンを停止および再始動するための自動機能(STT機能と呼ばれる、ストップ・アンド・スタート機能)の枠組みの中で行われる。
【0116】
制御モジュールは、この時点t0において、この実施形態では、高速消磁命令に従って、ロータコイルの励磁電流Iexcおよびステータの各相の電流Iphを減少させるために、次の式:Tem[k]=Tem_0×(Irot[k]/Irot_0)^2による命令トルク(Tem[k])の計算に従って、ロータコマンドおよびステータコマンドを制御する。制御モジュールがモータモード停止コマンド命令を受信した時間における命令Tem_0の電磁トルクが、この時間t0におけるTem[k]を算出するために記録される。
【0117】
コイル電流の電流Iexcは、時間t1まで曲線に沿って減少していることが分かる。時間t1(図6Aのヒストグラムでは約1.195秒、図6Bのヒストグラムでは約0.8秒)。
【0118】
時間t1において、図6Aのヒストグラムによって表される従来技術の例では、実際のロータコイル電流Iexcは、約5アンペアであるが、図6Bのヒストグラムによって表される本発明の実施形態の例では、実際のロータコイル電流Iexcは、0.5アンペアに近い。
【0119】
時間t0において、制御モジュールは、時間t2まで低電子スイッチQ23を閉じ、低出力電子スイッチQ24を開き、高段電子スイッチQ1を開くことによって、ロータの高速消磁を制御する。
【0120】
図6Aのヒストグラムにおけるステータの相の短絡を制御するステップに対応し、本発明の例示的な実施形態による、図6Bのヒストグラムではステータの位相を同じ電位に配置することを制御するステップに対応する時間t2は、推定ロータコイル電流(Irot[k)が0に等しくなった後である。具体的には、ロータコイルは電流を有していないか、またはほとんど電流が残っていないため、ステータの相の短絡は、ネットワーク内に、非常に小さいか、またはゼロでさえある電流ピークを引き起こす。
【0121】
ロータコイルLrotorが通電している場合、ロータは回転しており、ステータの位相は同じ電位にあるため、これは短絡を形成する電流、したがって図6Aのヒストグラムにおける電流ピークおよび図6Bのヒストグラムにおける非常に小さい電流を時間t3まで送達することが、t2から分かる。
【0122】
この期間では、図6Aに示す従来技術のヒストグラムでは、車両のネットワークの破壊を引き起こす可能性がある過電圧Vdcを見ることができるが、図6Bのヒストグラムでは、実際の励磁電流が時間t2で0Aに近いため、過電圧はないか、またはほとんどない。
【0123】
時間t3(図6Aのヒストグラムでは約1.207秒、図6Bのヒストグラムでは0.805秒)は、電気機械のニュートラルモードへの移行に対応する。機械は、そのブリッジのすべてが開いている。ロータコイルLrotorには電力が供給されておらず、もはや蓄積エネルギーを戻さない。
【0124】
t2とt3との間の短絡期間は、図6Aのヒストグラムでは0.007秒であり、図6Bのヒストグラムでは0.003秒である。
【0125】
本発明によれば、短絡期間は、時間t1におけるロータ内の電流がより小さいため、より短い。
【0126】
別段の指示がない限り、異なる図に現れる1つの同じ要素は、単一の参照符号を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】