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特表2023-502969MerTKおよびTYRO3の二重阻害剤としてのアリールアミノピリミジンおよびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】MerTKおよびTYRO3の二重阻害剤としてのアリールアミノピリミジンおよびその方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20230119BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230119BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230119BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20230119BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20230119BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A61P35/00
A61P31/00
A61P43/00 105
A61P9/00
A61P37/04
A61P37/02
A61P7/02
A61K31/506
C07D401/14
C07D405/14
C07D413/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528309
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 US2020060559
(87)【国際公開番号】W WO2021097326
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/936,005
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】501345323
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】コン,デユー
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ユーバイ
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ランション
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】フライ,スティーブン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063AA05
4C063BB01
4C063BB09
4C063CC31
4C063CC52
4C063CC72
4C063CC79
4C063DD03
4C063DD10
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC42
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA54
4C086ZB07
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB32
(57)【要約】
本明細書において、MERチロシンキナーゼ(MERTK)活性とTYRO3キナーゼ活性との両方を阻害する、アミノピリミジン含有化合物が開示される。抗がん剤、免疫刺激剤および免疫調節剤、血小板凝集阻害剤、抗感染症薬、ならびに補助薬としてのアミノピリミジン含有化合物の合成および使用の方法も更に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
(式中、
UおよびUは、UまたはUのうち一方のみがNであることができるという条件の下、各々独立して、NまたはCXであり、
Xは、HまたはC1~C8アルキルであり、
は、C1~C4アルコキシ、ハロゲン、C1~C8アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、ニトリル、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、-C(O)R10、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から選択され、前記シクロアルキルまたは前記ヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、およびC1~C4アルコキシからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で、独立して置換され、
10は、-NH、水素、またはC1~C4アルキルであり、
Gは、-OHまたは-NRであり、
およびRは、各々独立して、水素、C1~C4アルキル、または-C(O)R50であり、
50は、C1~C4アルキルまたは水素であり、
mは0または1であり、
は、水素、C1~C10アルキル、C1~C4ハロアルキル、-C(O)R20、および-(CHCyからなる群から選択され、
nは、0、1、2、3、または4であり、
Cyは、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、アリール、およびC3~C5ヘテロアリールからなる群から選択され、その各々が、ハロゲン、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、C3~C8シクロアルキル、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で独立して置換され、
20は、C1~C4アルキル、-(CHOR30、および-(CHCyからなる群から選択され、
qは、0、1、2、3、または4であり、
wは、0、1、2、3、または4であり、
30は、水素またはC1~C8アルキルであり、
Cyは、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、アリール、およびC3~C5ヘテロアリールからなる群から選択され、その各々が、ハロゲン、-NH、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、-C(O)-(C1~C4アルキル)、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で、独立して置換される)の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
mは1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Gは-OHである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
UはNであり、UはCHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
UはCHであり、UはCHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
UはNであり、Uは-C-CHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
は、メトキシ、クロロ、メチル、シクロプロピル、エチル、-C(O)NH、ジフルオロエチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、およびトリフルオロメチルからなる群から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
は、トリフルオロメチルまたはクロロである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、およびネオペンチルからなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
は-C(O)R20であり、R20は-(CHOR30であり、qは0であり、R30はC1~C4アルキルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
は-C(O)R20であり、R20は-(CHCyであり、wは0であり、Cyは、その各々が、C1~C4アルキルから独立して選択される、0、1、2、または3個の基で、独立して置換される、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
は-(CHCyであり、nは0または1であり、Cyは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、スピロ[3.3]ヘプチル、シクロヘプチル、フェニル、オキセタニル、イソオキサゾリル、ピペリジニル、およびテトラヒドロピラニルからなる群から選択され、その各々が、メチル、フルオロ、シクロプロピル、クロロ、n-プロピル、およびイソプロピルからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で、独立して置換される、請求項7に記載の化合物。
【請求項13】
Cyはシクロペンチルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Gは-NRである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項15】
Gは、-NH、-NHCH、-N(CH、または-NHC(O)CHである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
UはNであり、UはCHである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
はメトキシである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
は、水素または-C(O)R20であり、R20は、-(CHCyであり、wは0であり、Cyはシクロペンチルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
「a」および「b」と印をつけられた炭素上の置換基は、トランス配置のものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
前記化合物は、
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
治療有効量の、請求項1に記載の化合物と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項22】
Merおよび/またはTyro3チロシンキナーゼに関連する疾患の治療のための方法であって、前記方法は、対象に、有効量の請求項1に記載の化合物を投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
前記疾患は、がん、感染症、線維症、血栓性疾患、凝固障害、または患部組織を取り巻く、免疫抑制された微小環境に関連する疾患である、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によりその全体が本明細書にあらゆる目的で組み込まれている、2019年11月15日に出願された米国特許仮出願第62/936,005号に対する優先権の利益を主張するものである。
【0002】
政府による支援
本発明は、アメリカ国立衛生研究所による助成金(助成金番号CA249190)を通じた政府による支援を受けて実現されたものである。政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【0003】
分野
ここに開示される主題は、全般的には、Merチロシンキナーゼ(Mer tyrosine kinase、MerTK)活性およびTyro3チロシンキナーゼ活性の両方を阻害するアリールアミノピリミジン含有化合物と、当該化合物の、抗がん剤、免疫刺激剤および免疫調節剤、血小板凝集阻害剤、抗感染症薬、ならびに補助薬としての使用と、当該化合物の製造方法と、に関する。
【背景技術】
【0004】
MerTKは、TAMとして知られる受容体チロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinase、RTK)ファミリーのメンバーであり、このファミリーには、AxlおよびTyro3も含まれている。TAMファミリーの各メンバーは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および保存性細胞内キナーゼドメインを含む。TAMファミリーのメンバーは、リガンド誘導ホモ二量体化を受け、その後、触媒チロシンキナーゼ活性化と、細胞内シグナル伝達を受ける。交差リン酸化が、このRTKファミリー内で見られたが、そのことは、ヘテロ二量体化も起こり得るということを示している。これらのRTKは、多くの上皮組織内と、免疫系、神経系、および生殖系の細胞内とで広く発現する。具体的には、MerTKは、これまでに、単球内、ならびに上皮組織および生殖組織で発現することが判明している。
【0005】
TAM受容体およびリガンドの過剰発現が、広範な固体腫瘍および血液腫瘍において見られ、さまざまな腫瘍の種類においてその予後不良およびそのシグナルと相関し、残存、化学療法抵抗性、運動性、および浸潤性を増進する。また、生来の免疫反応を減少させる際に、それらが果たす役割は、それらの阻害を、免疫抑制的腫瘍微小環境を逆転させるための新たな機序とする。
【0006】
がん、感染性疾患、および血栓症を含む(ただし、それらに限られない)さまざまな疾患や疾病に、Mer、Tyro3、およびAxlが関与しているとはいえ、MerとTyro3との両方を標的とする、効能のある化合物が必要とされている。そのような二重の標的化が可能な化合物および組成物に対して、ニーズが存在し続けている。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている主題は、式I:
【化1】

の化合物、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容される塩を対象とする。さまざまな置換基が、本明細書に記載されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている主題は、式Iの化合物と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物を対象とする。医薬組成物は、1つ以上の追加的な活性薬剤を更に含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている主題は、Merおよび/またはTyro3に関連する疾病または疾患を治療する方法を対象とする。一部の実施形態では、疾病または疾患はがんである。他の実施形態では、疾病または疾患は感染症である。他の実施形態では、疾病または疾患は、MerまたはTyro3チロシンキナーゼに関連する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている主題は、免疫賦活療法において式Iの化合物を使用する方法を対象とする。他の実施形態では、本明細書に記載されている主題は、免疫調節療法において式Iの化合物を使用する方法を対象とする。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている主題は、式Iの組成物を製造する方法を対象とする。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている主題は、a)式Iの化合物を含む第一の医薬組成物と、b)取扱説明書と、を含む、Merおよび/またはTyro3チロシンキナーゼにより媒介される状態を治療するためのキットを対象とする。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている主題は、式IIの化合物と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物を対象とする。医薬組成物は、1つ以上の追加的な活性薬剤を更に含み得る。
【0014】
本明細書に開示されている主題のこれらのおよび他の実施形態が、以下の説明および実施例においてより詳細に論じられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本明細書では、Merチロシンキナーゼ(MerTK)およびTyro3チロシンキナーゼの二重阻害剤である、式Iの化合物とその医薬組成物とが開示される。そのため、本明細書に開示されている化合物および組成物は、Merチロシンキナーゼ(MerTK)およびTyro3チロシンキナーゼのうちの一方または両方により媒介されている疾病および疾患を治療するのに有益である。治療方法の一例は、がんを患っている対象の場合におけるものである。化合物は、がんと戦うために使用することができるだけでなく、有利なことには、免疫刺激剤および免疫調節剤、血小板凝集阻害剤、抗感染症薬、ならびに補助薬としても使用することができる。
【0016】
式Iの化合物は、MerおよびTyro3チロシンキナーゼのための二重阻害剤として、10倍の活性を有し得るということが、予想外なことに判明している。芳香環上にメタ置換パターンを有する化合物はとりわけ有用である。
【0017】
ここで開示される主題は、以下により十分に説明されるであろう。しかしながら、ここで開示される主題の属する分野の当業者であれば、これまでの説明で提示された教示の利益を有する、本明細書において規定され、ここで開示される主題の多くの修正形態および他の実施形態を想起するであろう。それゆえ、ここで開示される主題は、開示された具体的実施形態に限定されるべきではなく、修正した形態および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれるように意図されているということを理解されたい。
【0018】
A.定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する際、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上そうではないと明白に指示していない限り、複数の指示対象も含む。したがって、例えば、単数形の「a」や「an」をつけて、「官能基」、「アルキル基」、または「残基」などと言及した場合には、それぞれ、2つ以上のそのような官能基、アルキル基、または残基などの混合物を含む。
【0019】
本明細書で使用する際、用語「約(about)」が、現在の主題の化合物または薬剤の量、1回分の投与量、時間、温度などのような測定可能な値に言及するという場合には、指定の量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、または更には±0.1%の範囲で変動した量を含むものとする。
【0020】
「およそ(approximately)」、「約(about)」、および「実質的に(substantially)」という用語を本明細書で使用する際、明示された量に近い量であって、それでもなお所望の機能を実行し、所望の結果を実現する量を表す。例えば、一部の実施形態では、文脈によっては、「およそ(approximately)」、「約(about)」、および「実質的に(substantially)」という用語は、明示された量の10%以内の量を指すことができる。「概ね(generally)」という用語を本明細書で使用する際、特定の値、量、または特徴を主として含むか、またはそれらに向かう傾向のある値、量、または特徴を表す。
【0021】
本明細書においては、範囲は、「約」をつけた特定の値から、および/または「約」をつけた別の特定の値までの範囲として表すことができる。そのような範囲が表現される場合には、一部の実施形態は、ある特定の値からの、および/または別の特定の値までの範囲を含む。同様に、値がその値の前に「約(about)」を付けて近似値として表現される場合には、その特定の値が、一部の実施形態を形成するものと理解されたい。そうした範囲の各々の端点は、他方の端点と関連して有意であり、かつまた他方の端点と独立して有意であるいうことを更に理解されたい。また、多くの値がここに開示され、かつ各々の値が、その値そのものに加えて、「約(about)」をその値の前に伴ってここに開示されるということも理解されたい。例えば、値「10」が開示される場合に、「約(about)10」もまた開示されている。2つの1位の数の間の各1位の数も開示されているということもまた理解されたい。例えば10と15が開示されると、11、12、13、および14もまた開示されているということになる。
【0022】
明細書およびその後ろの請求項において、ある組成物中の特定の元素または成分の重量部に言及する場合には、その組成物または物品中の、ある元素または成分と、その重量部がそれに対して表現されている任意の他の元素または成分との間の重量関係を意味する。つまり、ある化合物が、成分Xを2重量部および成分Yを5重量部含有する場合、成分Xと成分Yは、2:5の重量比で存在し、他の追加的成分がその化合物中に存在するか否かに関わらず、その比率で存在する。
【0023】
また、ある成分の重量パーセント(wt.%)は、具体的にそうではないと明示されていない限り、その成分が含まれている配合物または組成物の総重量を基準にしている。
【0024】
本明細書で使用する際、「任意選択の(optional)」または「任意選択的に(optionally)」という用語は、これらに続いて記述される事象や条件が、起こる可能性もあれば、起こらない可能性もあるということを意味し、かつその記述が、その事象または条件が起こる事例およびそれが起こらない事例を含むということを意味する。
【0025】
本明細書で使用する際、用語「対象(subject)」は、哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類のような脊椎動物であり得る。したがって、本明細書において開示される方法の対象は、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット、またはげっ歯類であり得る。その用語は、特定の年齢または性別を意味するものではない。したがって、成体および新生の対象、ならびに胎児が、オスメスを問わず、カバーされるように意図されている。一実施形態では、対象は哺乳類である。別の一実施形態では、対象はヒトである。用語「患者(patient)」は、ヒトの対象および獣医学上の対象を含む。開示される方法の一部の実施形態では、対象は、投薬ステップの前に、1種類以上のウイルス感染症の処置が必要であるかどうかを診断される。さまざまな実施形態では、その1種類以上の疾患は、チクングニア熱、ベネズエラウマ脳炎、デング熱、インフルエンザ、およびジカ熱から選択される。
【0026】
本明細書で使用する際、用語「治療(treatment)」は、疾病、病的状態、または疾患を直す、改善させる、安定化させる、または予防する意図をもって、患者を医学的管理することを指す。この用語は、積極的治療、すなわち、疾病、病的状態、または疾患を改善させることに具体的に向けられた治療を含み、かつまた、原因治療、すなわち、関連する疾病、病的状態、または疾患の原因を取り除くことに向けられた治療をも含む。また、この用語は、緩和処置、すなわち、疾病、病的状態、または疾患を直すことよりもむしろ、症状を取り除くことを目指して設計された治療を含み、予防的治療、すなわち、関連する疾病、病的状態、または疾患の進行を最小化する、または部分的または完全に阻止することに向けられた治療を含み、かつ支持療法、すなわち、関連する疾病、病的状態、または疾患の改善に向けた別の具体的療法を補うために用いられる治療をも含む。さまざまな実施形態では、その用語は、哺乳類(例えば、ヒト)を含む対象の任意の治療をカバーし、かつ、(i)ある疾病にかかりやすくなっている可能性があるが、まだ罹っているとは診断されていない対象において、その疾病が発生するのを防止すること、(ii)その疾病を阻害すること、すなわち、その進行を阻止すること、または(iii)その疾病を取り除くこと、すなわちその疾病の軽減をもたらすこと、を含む。一部の実施形態では、対象は、霊長類などの哺乳類であり、一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0027】
本明細書で使用する際、用語「予防する(prevent)」または「予防すること(preventing)」は、特に事前の行為によって、何事かが起こるのを、あらかじめ排除する、避ける、除去する、機先を制する、止める、または妨げることを指す。低減する、抑制する、または予防するという用語を本明細書で使用する際、特に別途ことわらない限り、他の2つの用語の使用もまた明確に開示されているということを理解されたい。
【0028】
本明細書で使用する際、用語「診断された(diagnosed)」は、スキルを有する人、例えば医師による健康診断を受けて、本明細書において開示されている化合物、組成物、または方法によって診断または治療可能な状態を有することが判明したということを意味する。開示される方法の一部の実施形態では、対象は、投薬ステップの前に、ウイルス感染症の処置が必要であるかどうかを診断される。本明細書で使用する際、「ある疾患の治療が必要であると識別された」などのフレーズは、その疾患の治療の必要性に基づいて、対象が選択されたことを指す。その識別は、一部の実施形態では、診断をする人物とは別の人物によって実施され得るということが考えられる。また、一部の実施形態では、投薬は、その後も引き続いて投薬を実施する人によって実施され得るということも考えられる。
【0029】
本明細書で使用する際、「投与すること(administering)」および「投与(administration)」という用語は、調合された医薬製剤を対象に提供する任意の方法を指す。そのような方法は当業者には周知のものであり、例えば、経口投与、経皮投与、吸入による投与、鼻噴投与、局所投与、膣内投与、点眼、耳内投与、脳内投与、直腸内投与、ならびに、例えば静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、および皮下投与などの、注射可能なものを含む非経口投与が挙げられるが、それらに限られない。投与は、連続的または断続的なものであり得る。さまざまな実施形態では、製剤が治療的に投与、すなわち、既存の疾病または状態を治療するために投与され得る。更なるさまざまな実施形態では、製剤が予防的に投与、すなわち、疾病または状態を予防するために投与され得る。
【0030】
「接触させること(contacting)」という用語を、本明細書において生物学的文脈において使用する際、開示された化合物と、細胞、標的受容体、または他の生物学的実体とを一つにして、その化合物が、直接的に、すなわち標的そのものと相互作用することによって、または間接的に、すなわち標的の活性が依存する対象である他の分子、補因子、因子、またはタンパク質と相互作用することによって、その標的(例えば、受容体、細胞など)の活性に影響を及ぼし得るようにすることを指す。
【0031】
本明細書で使用する際、用語「有効量」は、所望の結果を達成する、または望ましくない状態に対して効果を有するのに十分な量を指す。例えば「治療的有効量」とは、所望の治療結果を達成する、または望ましくない症状に対して効果を有するのに十分な量であって、それでいて副作用を引き起こすには概ね不十分である量を指す。任意の特定の患者に対する、具体的な、治療的に有効な1回分の投与量レベルは、さまざまな要因に応じて変化し、そのような要因としては、治療中の疾患およびその疾患の重篤度、用いられる具体的な組成物、年齢、体重、一般的健康状態、患者の性別および食餌、投与の時間、投与の経路、用いられる具体的な化合物の排出速度、治療の継続時間、用いられる具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に用いられている薬剤、および医学分野では周知の同様の要因が挙げられる。例えば、化合物の1回分の投与量を、所望の治療効果を得るのに要する量よりも低いレベルで開始し、次第に投与量を、所望の効果を達成するまで増加させるというのは、当該技術分野の技量の範囲内のことにすぎない。望ましい場合には、投与の目的のために、一日の投与量を複数の投与量に分割して投与してもよい。その結果、1回の投与量は、投与回数分を全部あわせて1日の投与量をなすような量、すなわち分量を含有し得る。投与量は、万一何らかの禁忌症が見られる場合には、個々の医師によって調節され得る。投与量は、変動させることができ、1日あたり1回以上の投与回数で、1日または数日間投与され得る。所与の分類の医薬品に対して適切な投与量については関連文書にガイドラインを見出すことが可能である。更なるさまざまな実施形態では、製剤が、「予防的有効量」、すなわち、疾病または状態を予防するのに有効な量で投与され得る。
【0032】
体重が約70kg以上のヒトの成人に対する経口または非経口投与の場合のような、一部の実施形態では、1日あたりの投与量としては、約10mg~約10,000mg、好ましくは約200mg~約1,000mgが適切であるはずであるが、上限については、超過する場合もある。1日あたりの投与量は、1回の投与で、または分割された複数回の投与で投与されてもよく、あるいは非経口投与の場合には、持続的投与として投与されてもよい。
【0033】
本明細書および請求項の全体を通じて、「含む」という語およびその変化形(comprise、comprises、およびcomprising)」は、文脈からそうでないということが必要とされない限り、非排他的意味で用いられる。本明細書に記載の実施形態は、実施形態「からなる(consisting of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」を含みことを理解されたい。
【0034】
式Iの化合物は、生体内で代謝され得る部分を有する化合物を含む「プロドラッグ」の形態であり得る。他の実施形態では、式I’の化合物が、「プロドラッグ」の形態であり得る。一般的に、プロドラッグは、生体内でエステル分解酵素によって代謝されるか、他のメカニズムによって代謝されて、活性薬物が得られる。プロドラッグの例および使用法は、当該技術分野では周知である(例えば、Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照)。そのようなプロドラッグ誘導体の調製については、さまざまな文献ソースで論じられている(例えば、Alexander et al.,J.Med.Chem.1988,31,318;Aligas-Martin et al.,PCT WO2000/041531,p.30)。プロドラッグは、化合物の最終単離および精製中にその場で調製され得るか、あるいは、遊離酸形態またはヒドロキシル基に精製された化合物を、好適なエステル化剤と別途反応させて、調整され得る。ヒドロキシル基は、カルボン酸で処理することによってエステルに転換され得る。プロドラッグ部分の例としては、置換または非置換の、分枝鎖または非分枝鎖の低級アルキルエステル部分、(例えば、プロピオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ-低級アルキル-アミノ低級-アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例えば、アセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール-低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、(例えば、メチル、ハロ、またはメトキシ置換基で)置換されたアリールおよびアリール-低級アルキルエステル、アミド、低級-アルキルアミド、ジ-低級アルキルアミド、ならびにヒドロキシアミドが挙げられる。生体内で他のメカニズムにより活性化形態に転換されるプロドラッグもまた含まれる。複数の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、本明細に記載の式のうちの任意のもののプロドラッグである。
【0035】
本明細書に開示の化合物の「誘導体」は、医薬的に許容される塩、プロドラッグ、重水素化形態、放射線的に標識化された形態、異性体、溶媒和化合物、およびそれらの組み合わせである。
【0036】
「医薬的に許容される塩」は、親化合物が、その酸性塩または塩基性塩を作ることで修飾されている、開示された化合物の誘導体を指す。本開示の化合物は、広い範囲の有機酸および無機酸により酸添加塩を形成し、製薬化学において用いられることの多い、生理学的に許容される塩を含む。そのような塩も本開示の一部である。そのような塩を形成するために用いられる典型的な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次亜リン酸などが挙げられる。有機酸から誘導される塩、例えば脂肪族モノおおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸およびヒドロキシアルカンジオール酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などもまた使用され得る。したがってそのような医薬的に許容される塩としては、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン-2-安息香酸塩、臭化物塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,4-二酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、塩化物塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、ヒプル酸、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テラフタル酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩などが挙げられる。
【0037】
本明細書で使用する際、用語「置換(された)」は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むものと考えられる。一部の実施形態では、許容される置換基としては、非環式および環式で、分枝鎖および非分枝鎖の、炭素環式およびヘテロ環式で、芳香族および非芳香族の有機化合物の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば下記のものが挙げられる。許容される置換基は、1つまたは2つ以上であってよく、かつ適切な有機化合物ごとに同じものまたは異なるものであってもよい。本開示の目的のために、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の結合価を満たす、本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有し得る。本開示は、いかなる意味でも、有機化合物の許容される置換基によって制限されることを意図してはいない。また、「置換」または「~で置換された」という用語は、そのような置換は、置換される原子および置換基の許容される価数にしたがうものであり、置換の結果として安定した化合物となる、例えば、再配置、環化、脱離などによる自発的に変換をしない化合物となるという暗黙の条件を含む。特定の実施形態では、そうでないと明確にことわらない限り、個々の置換基は、更に任意選択的に置換され得る(すなわち、更に置換されても、置換されなくてもよい)ということも考えられる。
【0038】
さまざまな用語を定義する際に、「A」、「A」、「A」、および「A」が、さまざまな具体的置換基を表現するための一般的なシンボルとして本明細において使用される。これらのシンボルは、任意の置換基であってよく、本明細書に開示の置換基に限定されず、ある事例である特定の置換基に定義されたシンボルが、別の事例では、何らかの他の置換基として定義され得る。
【0039】
本明細書で使用する際、「アルキル」という用語は、1~24個の炭素原子の分枝鎖または非分枝鎖の飽和炭化水素基であり、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどが挙げられる。アルキル基もまた、置換または非置換であり得る。アルキル基は、本明細書に記載の、任意選択的に置換されたアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、またはチオールを含むが、それらに限定されない1つ以上の基で置換され得る。「低級アルキル」基は、1~6個(例えば、1~4個)の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0040】
本明細書を通して、「アルキル」は、一般的に、非置換アルキル基および置換アルキル基の両方を指すように用いられるが、置換アルキル基はまた、本明細書においては、アルキル基上の具体的な置換基(複数可)を識別することによって、本明細書において具体的に言及される。「アルコキシアルキル」という用語は、後述されるような1つ以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基を具体的に指すものである。「アルキルアミノ」という用語は、後述されるような1つ以上のアミノ基で置換されたアルキル基などを具体的に指すものである。「アルキル」が1つの事例で使用され、具体的な用語、例えば「アルキルアルコール」が別の事例で使用される場合、「アルキル」という用語が、「アルキルアルコール」などの具体的用語を指さないということを暗に示すなどということを意図してはいない。
【0041】
「ハロアルキル」は、1つ以上(例えば、1~6個または1~3個)の水素原子がハロゲンで置き換えられている、非分枝鎖または分枝鎖の、上に定義されたようなアルキル基を指す。残基が、2つ以上のハロゲンで置換される場合、その残基は、結合したハロゲン部分の数に対応するプレフィックスを用いて言及され得る。ジハロアルキルおよびトリハロアルキルは、同じハロゲンであり得るが、その必要もない、2つ(「ジ」)または3つ(「トリ」)のハロ基で、置換されたアルキルを指す。ハロアルキルの例としては、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル、1,2-ジブロモエチルなどが挙げられる。
【0042】
このような慣習は、本明細書に記載される他の基に対しても用いられる。すなわち、「シクロアルキル」のような用語が、非置換および置換両方のシクロアルキル部分を指す一方で、本明細書においては置換部分はまた、具体的に識別され得る。例えば、ある特定の置換のシクロアルキルは、例えば、「アルキルシクロアルキル」と呼ばれ得る。同様に、置換アルコキシは、例えば「ハロゲン化アルコキシ」として具体的に言及され得る。また、ある特定の置換アルケニルは、例えば「アルケニルアルコール」と具体的に言及され得る、等々。ここでも再び、「シクロアルキル」のような一般的用語と、「アルキルシクロアルキル」のような具体的な用語とを用いる慣習は、一般的用語が具体的な用語を含まないということを暗に示すなどということを意図していない。
【0043】
本明細書で使用する際、「シクロアルキル」という用語は、少なくとも3つの炭素原子を備える非芳香族炭素系環であるが、単一の環(単環式シクロアルキル)または多環式(例えば、二環式シクロアルキルまたはスピロ環式シクロアルキル)のものであり得る。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。シクロアルキルは、任意の数(その非限定的な例は、C3~C6、C4~C6、C5~C6、C3~C8、C4~C8、C5~C8、およびC6~C8である)の炭素原子を含み得る。一部の実施形態では、シクロアルキルは、C3~C8である。上記のように、スピロシクロアルキル基も、スピロ[3.3]ヘプタンのような「シクロアルキル」という用語によって含まれる。
【0044】
本明細書で使用する際、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、環員のうちの少なくとも1つが炭素以外である、単環式および多環式非芳香族環系を指す。ヘテロシクロアルキルは、任意の数の炭素を含み得る。その非限定的な例は、C2~C9、C2~C8、C2~C7、C3~C6、C4~C6、C5~C6、C3~C8、C4~C8、C5~C8、およびC6~C8である。一部の実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、C2~C7である。ヘテロシクロアルキル基の非限定的な例としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アゼチジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。
【0045】
シクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、置換のまたは非置換のものであり得る。シクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、本明細書に記載の、任意選択的に置換されたアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、またはチオールを含むが、それらに限定されない1つ以上の基で置換され得る。
【0046】
「アルコキシ」という用語は、エーテル結合を通じて結合した、-O-アルキルまたは-O-シクロアルキルラジカルを指す。アルコキシ基は、任意選択的に1つ以上の置換基で置換され得る。
【0047】
「ハロアルコキシ」という用語は、1つ以上のハロ置換基によって置換されている-O-アルキル基を指す。ハロアルコキシ基の例としては、トリフルオロメトキシ、および2,2,2-トリフルオロエトキシが挙げられる。
【0048】
本明細書で使用する際、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する構造式を有する、2~24個の炭素原子の炭化水素基である。例えば(A)C=C(A)のような非対称構造は、E異性体とZ異性体との両方を含むように意図されている。このことは、本明細書においては、非対称アルケンが存在する構造式において推定され得るか、または結合記号C=Cによって明示的に示され得る。アルケニル基は、1つ以上の基で置換され得るが、その基としては、本明細書において説明されるように、任意選択的に置換されたアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、またはチオールが挙げられるが、それに限られない。
【0049】
本明細書で使用する際、「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも3つの炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、すなわちC=Cを含む、非芳香族炭素系環である。シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。シクロアルケニルは、任意の数(その非限定的な例は、C3~C6、C4~C6、C5~C6、C3~C8、C4~C8、C5~C8、およびC6~C8である)の炭素原子を含み得る。一部の実施形態では、シクロアルケニルは、C3~C8である。
【0050】
「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合(すなわちC=C)を含む非芳香族炭素系環で、環の炭素原子のうちの少なくとも1つが、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄、またはリンが挙げられるが、それらに限られない)で置き換えられているものである。ヘテロシクロアルケニルは、任意の数(その非限定的な例は、C3~C6、C4~C6、C5~C6、C3~C8、C4~C8、C5~C8、およびC6~C8である)の炭素原子を含み得る。一部の実施形態では、ヘテロシクロアルケニルは、C3~C8である。
【0051】
シクロアルケニル基およびヘテロシクロアルケニル基は、置換のまたは非置換のものであり得る。シクロアルケニル基およびヘテロシクロアルケニル基は、本明細書に記載の、任意選択的に置換されたアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、またはチオールを含むが、それらに限定されない1つ以上の基で置換され得る。
【0052】
本明細書で使用する際、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する構造式を有する、2~24個の炭素原子の炭化水素基である。アルキニル基は、非置換のもの、または本明細書に記載の、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、またはチオールを含むが、それらに限定されない1つ以上の基で置換されたものであり得る。
【0053】
本明細書で使用する際「アリール」という用語は、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼンなどであるが、それらに限定されない、任意の炭素系芳香族基を含有する、単環式または多環式基である。「ビアリール」という用語は、ある具体的なタイプのアリール基であり、「アリール」の定義に含まれる。ビアリールは、ナフタレンにおけるように融合した環構造を介して一つに結合されている、またはビフェニルにおけるように1つ以上の炭素-炭素結合を介して結合している、2つのアリール基を指す。
【0054】
本明細書で使用する際、「ヘテロアリール」という用語は、芳香族基の環内に取り込まれた少なくとも1つのヘテロ原子を有する任意の芳香族基を含む単環式または多環式基である。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられるが、それらに限定されない。ヘテロアリールは、任意の数(その非限定的な例は、C3~C9、C3~C8、C3~C7、C3~C6、C3~C5、C3~C4、C4~C5、C4~C6、C5~C6、C4~C8、C5~C8、およびC6~C8である)の炭素原子を含み得る。一部の実施形態では、ヘテロアリールは、C4~C5である。そのようなヘテロアリール基の非限定的な例としては、イミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インドリル、インダゾリル、ピリダジル、ピリジル、ピロリル、ピラゾリル、ピラジニル、キノキソリル、ピラニル、ピリミジニル、フリル、チエニル、トリアゾリル、チアゾリル、カルボリニル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアモルホリ二ル(thiamorpholinyl)スルホン、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、オキソピペリジニル、オキソピロリジニル、オキソアゼピニル、アゼピニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、フラザニル、チアジアジル、オキサチオリル、アクリジニル、フェナンスリジニル、ベンゾシノリニルなどが挙げられる。
【0055】
アリール基またはヘテロアリール基は、置換のまたは非置換のものであり得る。アリール基またはヘテロアリール基は、本明細書に記載の、任意選択的に置換されたアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、またはチオールを含むが、それらに限定されない1つ以上の基で置換され得る。
【0056】
本明細書で使用する際、「アルデヒド」という用語は、式-C(O)Hで表される。本明細書全体を通して、「C(O)」は、カルボニル基、すなわち、C=Oの簡易表記である。
【0057】
本明細書で使用する際、「アミン」または「アミノ」という用語は、式-NA(式中、AおよびAは、独立して、水素、または本明細書に記載のような、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、もしくはヘテロアリール基であり得る)で表される。
【0058】
本明細書で使用する際、「アルキルアミノ」という用語は、式-NH(-アルキル)で表されるが、ただしアルキルは、本明細書に記載のものである。代表的な例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、(sec-ブチル)アミノ基、(tert-ブチル)アミノ基、ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、(tert-ペンチル)アミノ基、ヘキシルアミノ基などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0059】
本明細書で使用する際、「ジアルキルアミノ」という用語は、式-N(-アルキル)で表されるが、ただしアルキ本明細書に記載のものである。代表的な例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ(sec-ブチル)アミノ基、ジ(tert-ブチル)アミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジ(tert-ペンチル)アミノ基、ジヘキシルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-プロピルアミノ基、N-エチル-N-プロピルアミノ基などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0060】
本明細書で使用する際、「カルボン酸」という用語は、式-C(O)OHによって表される。
【0061】
本明細書で使用する際、「エステル」という用語は、式-OC(O)Aまたは-C(O)OA(式中、Aは、任意選択的に置換された、本明細書に記載のような、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり得る)によって表される。本明細書で使用する際、「ポリエステル」という用語は、式-(AO(O)C-A-C(O)O)-または-(AO(O)C-A-OC(O))-(式中、AおよびAは、独立して、任意選択的に置換された、本明細書に記載のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であってよく、「a」は、1~500の整数である)で表される。「ポリエステル」は、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物と、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物との反応によって生成される基を記述するために用いられる用語である。
【0062】
本明細書で使用する際、「エーテル」という用語は、式AOA(式中、AおよびAは、独立して、任意選択的に置換された、本明細書に記載のようなアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり得る)によって表される。本明細書で使用する際、「ポリエーテル」という用語は、式-(AO-AO)(式中、AおよびAは独立して、任意選択的に置換された、本明細書に記載のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であってよく、「a」は、1~500の整数である)で表される。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびポリブチレンオキシドが挙げられる。
【0063】
本明細書で使用する際、「ハライド」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を指す。
【0064】
本明細書で使用する際、「ヒドロキシル」という用語は、式-OHで表される。
【0065】
本明細書で使用する際、「ケトン」という用語は、式AC(O)A(式中、AおよびAは独立して、任意選択的に置換された、本明細書に記載のようなアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり得る)で表される。
【0066】
本明細書で使用する際、「アジド」という用語は、式-Nで表される。
【0067】
本明細書で使用する際、「ニトロ」という用語は、式-NOで表される。
【0068】
本明細書で使用する際、「ニトリル」という用語は、式-CNで表される。
【0069】
本明細書で使用する際、「シリル」という用語は、式-SiA(式中、A、A、およびAは、独立して、水素、または任意選択的に置換された、本明細書に記載のようなアルキル基、シクロアルキル基、アルコキ基シ、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、もしくはヘテロアリール基であり得る)で表される。
【0070】
本明細書で使用する際、「スルホ-オキソ」という用語は、式-S(O)A、-S(O)、-OS(O)、または-OS(O)OA(式中、Aは、水素、または任意選択的に置換された、本明細書に記載のようなアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、もしくはヘテロアリール基であり得る)で表される。本明細書全体を通して、「S(O)」は、S=Oの簡易表記である。「スルホニル」という用語は、式-S(O)(式中、Aは、水素または、任意選択的に置換された、本明細書に記載のようなアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、もしくはヘテロアリール基を指す)で表されるスルホ-オキソ基を指すように本明細書において使用される。本明細書で使用する際、「スルホン」という用語は、式AS(O)(式中、AおよびAは独立して、任意選択的に置換された、本明細書に記載のようなアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり得る)で表される。本明細書で使用する際、「スルホキシド」という用語は、式AS(O)A(式中、AおよびAは独立して、任意選択的に置換された、本明細書に記載のようなアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり得る)で表される。
【0071】
本明細書で使用する際、「チオール」という用語は、式-SHで表される。
【0072】
本明細書で使用する際、「R」、「R」、「R」、「R」(nは整数)は、独立して、上に挙げられた基のうちの1つ以上の基を有し得る。例えば、Rが直鎖アルキル基である場合、アルキル基の水素原子のうちの1つは、任意選択的に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、ハライドなどで置換され得る。選択された基によっては、第1の基は、第2の基内に取り込まれ得るか、あるいは、第1の基は、第2の基にぶら下がり(すなわち、結合し)得る。例えば、「アミノ基を含むアルキル基」というフレーズでは、アミノ基が、アルキル基の主鎖内に組み込まれ得る。あるいは、アミノ基は、アルキル基の主鎖に結合し得る。選択された基(複数可)の性質が、第1の基が、第2の基に埋め込まれるか、または第2の基に結合するかを決定することとなる。
【0073】
本明細書に記載のように、本明細書に記載されている主題の化合物は「任意選択的に置換された」部分を含有し得る。一般的に、「置換された」という用語は、「任意選択的に」という用語が前につくかどうかに関わらず、指定された部分の1つ以上の水素が、好適な置換基で置き換えられていることを意味する。別途そうでないと示されない限り、「任意選択的に置換された」基は、基の置換可能な位置のそれぞれに、好適な置換基を有し得るが、任意の所与の構造における2つ以上の位置が、指定された基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合、その置換基は、それぞれの位置で、同じものであるか、または異なるものであるかのいずれかであり得る。本明細書に記載されている主題によって想定される置換基の組み合わせは、安定的な、または化学的に実行可能な化合物の生成を結果としてもたらすものである。特定の実施形態では、明確にそうではないとことわらない限り、個々の置換基は、更に任意選択的に置換され得る(すなわち、更に置換されるかまたは置換されない)ということも考えられる。
【0074】
本明細書で使用する際、「安定的」という用語は、それらの製造、検出、および、特定の実施形態では、それらの回収、精製、および本明細書に開示される1つ以上の目的での使用を可能とする条件に晒された場合にも、実質的に変化をしない化合物を指す。
【0075】
「任意選択的に置換された」基の置換可能な炭素原子上の好適な一価の置換基は、独立して、ハロゲン、-(CH0-4、-(CH0-4OR、-O(CH0-4、-O-(CH0-4C(O)OR、-(CH0-4CH(OR、-(CH0-4SR、Rで置換され得る-(CH0-4Ph、Rで置換され得る-(CH0-4O(CH0-1Ph、Rで置換され得る-CH=CHPh、Rで置換され得る-(CH0-4O(CH0-1-ピリジル、-NO、-CN、-N、-(CH0-4N(R、-(CH0-4N(R)C(O)R、-N(R)C(S)R、-(CH0-4N(R)C(O)NR 、-N(R)C(S)NR 、-(CH0-4N(R)C(O)OR、-N(R)N(R)C(O)R、-N(R)N(R)C(O)NR 、-N(R)N(R)C(O)OR、-(CH0-4C(O)R、-C(S)R、-(CH0-4C(O)OR、-(CH0-4C(O)SR、-(CH0-4C(O)OSiR 、-(CH0-4OC(O)R、-OC(O)(CH0-4SR-、SC(S)SR、-(CH0-4SC(O)R、-(CH0-4C(O)NR 、-C(S)NR 、-C(S)SR、-SC(S)SR、-(CH0-4OC(O)NR 、-C(O)N(OR)R、-C(O)C(O)R、-C(O)CHC(O)R、-C(NOR)R、-(CH0-4SSR、-(CH0-4S(O)、-(CH0-4S(O)OR、-(CH0-4OS(O)、-S(O)NR 、-(CH0-4S(O)R、-N(R)S(O)NR 、-N(R)S(O)、-N(OR)R、-C(NH)NR 、-P(O)、-P(O)R 、-OP(O)R 、-OP(O)(OR、SiR 、-(C1-4直鎖または分枝鎖アルキレン)O-N(R、または(C1~4直鎖または分枝鎖アルキレン)C(O)O-N(Rであり、各Rは、以下で定義されるように置換されていてよく、かつ独立して、水素、C1~6脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、-CH-(5~6員ヘテロアリール環)、または5~6員の、飽和、部分的に不飽和の、または窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有するアリール環から選択され、または、上記の定義にも関わらず、2つの独立して発生しているRをその介在する原子(複数可)とともにまとめて、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、3~12員の、飽和、部分的に不飽和の、またはアリール単環式または二環式環であって、以下で定義される置換のものであり得る環を形成する。
【0076】
上、(または2つの独立して発生しているRを、その介在する原子とともにまとめることによって形成される環)上の好適な一価の置換基は、独立して、ハロゲン、-(CH0-2、-(ハロR)、-(CH0-2OH、-(CH0-2OR、-(CH0-2CH(OR、-O(ハロR)、-CN、-N、-(CH0-2C(O)R、-(CH0-2C(O)OH、-(CH0-2C(O)OR、-(CH0-2SR、-(CH0-2SH、-(CH0-2NH、-(CH0-2NHR、-(CH0-2NR 、-NO、-SiR 、-OSiR 、-C(O)SR、-(C1~4直鎖または分枝鎖アルキレン)C(O)OR、または-SSRであり、なお各Rは、非置換であるか、あるいはもし「ハロ」が前についている場合には、1つ以上のハロゲンのみで置換されており、かつ、独立して、C1~4脂肪族の、-CHPh、-O(CH0-1Ph、もしくは窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、5~6員の、飽和、部分的に不飽和の、またはアリール環、から選択される。Rの飽和炭素原子上の好適な二価置換基としては、=Oおよび=Sが挙げられる。
【0077】
「任意選択的に置換された」基の飽和炭素原子上の好適な二価置換基としては、以下のもの:=O、=S、=NNR 、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、-O(C(R ))2-3O-、または-S(C(R ))2-3S-が挙げられ、独立して発生しているRの各々は、水素、以下に定義されるように置換のものであり得るC1~6脂肪族、または、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、非置換の5~6員の飽和、部分的に不飽和、またはアリール環から選択される。「任意選択的に置換された」基の近隣の、置換可能な炭素に結合する好適な二価置換基としては、-O(CR 2-3O-が挙げられ、独立して発生しているRの各々は、水素、以下に定義されるように置換のものであり得るC1~6脂肪族、または、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、非置換の5~6員の飽和、部分的に不飽和、またはアリール環から選択される。
【0078】
の脂肪族基上の好適な置換基としては、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 、または-NOが挙げられ、各Rは非置換であり、あるいは「ハロ」が前に付く場合には、1つ以上のハロゲンによってのみ置換され、かつ、独立して、C1~4 脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、または、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、5~6員で、飽和、部分的に不飽和の、またはアリール環である。
【0079】
「任意選択的に置換された」基の置換可能な窒素上の好適な置換基としては、-R、-NR 、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)C(O)R、-C(O)CHC(O)R、-S(O)、-S(O)NR 、-C(S)NR 、-C(NH)NR 、または-N(R)S(O)が挙げられ、各Rは、独立して、水素、以下に定義されるように置換されたC1~6脂肪族、非置換の-OPh、または、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、非置換の5~6員の飽和、部分的に不飽和、またはアリール環であり、あるいは上の定義に関わらず、2つの独立して発生しているRは、介在する原子(複数可)と一つにまとめて、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、非置換の3~12員で、飽和、部分的に飽和の、またはアリール単環式または二環式環を形成する。
【0080】
の脂肪族基上の好適な置換基は、独立して、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 、または-NOであり、各Rは、非置換であるか、あるいは「ハロ」が前に付く場合には、1つ以上のハロゲンによってのみ置換され、かつ、独立して、C1~4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、または、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する、5~6員で、飽和、部分的に不飽和の、またはアリール環である。
【0081】
「有機残基」という用語は、炭素を含有する残基、すなわち、少なくとも1つの炭素原子を含む残基を定義し、炭素含有基、残基、または上で定義したラジカルを含むが、それらに限定されない。有機残基は、さまざまなヘテロ原子を含み得るか、または別の分子に、例えば酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子を通じて結合され得る。有機残基の例としては、アルキルまたは置換アルキル、アルコキシまたは置換アルコキシ、モノまたは二置換アミノ、アミド基などが挙げられるが、それらに限定されない。有機残基は、好ましくは、1~18個の炭素原子、1~15個の炭素原子、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、有機残基は、2~18個の炭素原子、2~15個の炭素原子、2~12個の炭素原子、2~8個の炭素原子、2~4個の炭素原子、または2~4個の炭素原子を含み得る。
【0082】
「残基」という用語の同義語は、「ラジカル」という用語であるが、これは、明細書およびその後ろの請求項において、本明細書において説明されている分子のフラグメント、集団、または下位構造を指す。なお、その分子がどのように調製されるかを問わない。例えば、ある特定の化合物内の2,4-チアゾリジンジオンラジカルは、構造:
【化2】
を有し、チアゾリジンジオンが、その化合物を調製するために用いられるのかどうかとは無関係である。一部の実施形態では、ラジカル(例えば、アルキル)は、1つ以上の「置換基ラジカル」を自らに結合させることによって、更に修飾される(すなわち、置換アルキルとなる)。所与のラジカル中の原子の数は、本明細書のどこか別のところで、そうではないことが示されている場合は除き、現在説明されている主題にとってはそれほど重要というわけではない。
【0083】
本明細書において定義され、用いられる場合、「有機ラジカル」という用語は、1つ以上の炭素原子を含有するものを指す。ある有機ラジカルは、例えば、1~26個の炭素原子、1~18個の炭素原子、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有し得る。一部の実施形態では、ある有機ラジカルは、2~26個の炭素原子、2~18個の炭素原子、2~12個の炭素原子、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子、または2~4個の炭素原子を有し得る。有機ラジカルはしばしば、有機ラジカルの炭素原子のうちの少なくとも一部のものに結合した水素を有し得る。無機原子を含まない有機ラジカルの一例は、5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチルラジカルである。一部の実施形態では、有機ラジカルは、自らにまたは自らの内部に結合した1~10個の、例としてハロゲン、酸素、硫黄、窒素、リンなどが挙げられる無機ヘテロ原子を含み得る。有機ラジカルの例としては、アルキル、置換のアルキル、シクロアルキル、置換のシクロアルキル、一置換アミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、シアノ、カルボキシ、カルボアルコキシ、アルキルカルボキシアミド、置換アルキルカルボキシアミド、ジアルキルカルボキシアミド、置換ジアルキルカルボキシアミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、チオアルキル、チオハロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環式、または置換ヘテロ環式ラジカルが挙げられるがそれらに限定されない。なお、これらの用語については、本明細書のどこかに定義した通りである。ヘテロ原子を含む有機ラジカルの少数の非限定的な例としては、アルコキシラジカル、トリフルオロメトキシラジカル、アセトキシラジカル、ジメチルアミノラジカルなどが挙げられる。
【0084】
本明細書において定義され用いられる場合、「無機ラジカル」という用語は、炭素原子を含まず、それゆえ炭素以外の原子のみを含むものを指す。無機ラジカルは、水素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、セレン、および、例えばフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素のようなハロゲンから選択される原子を組み合わせて結合したものを含み、これらは個別に存在することもでき、また化学的に安定的な組み合わせに、まとめて結合されることもできる。無機ラジカルは、まとめて結合されている、10個以下の、または好ましくは1~6個のもしくは1~4個の、上にリストした無機原子を有する。無機ラジカルの例としては、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、チオール、サルフェート、ホスフェート、および同様の、一般に既知の無機ラジカルが挙げられるが、それらに限定されない。無機ラジカルは、周期表の金属元素(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ランタノイド金属、またはアクチナイド金属)を、その内部に結合された形で有しないが、そのような金属のイオンは、アニオン性無機ラジカル(例えば、サルフェート、ホスフェート、または同様のアニオン性無機ラジカル)の場合に、医薬的に許容されるカチオンとして機能し得る場合がある。無機ラジカルは、本明細書内のどこか別のところで、個別にそうではないことが示されている場合を除いて、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、スズ、鉛、またはテルルなどのメタロイド元素を含まず、貴ガス元素も含まない。
【0085】
本明細書に記載の化合物は、1つ以上の二重結合を含み得るが、それにより、潜在的にはシス/トランス(E/Z)異性体および他の配座異性体を引き起こすもととなる。特にそうではないとことわらない限り、本明細書に記載されている主題は、すべてのそのような可能な異性体、およびそのような異性体の混合物を含む。
【0086】
特にそうではないとことわらない限り、実線のみとして化学結合を示しており、くさびまたは点線としては示していない式は、各々の可能な異性体、例えば、各鏡像異性体およびジアステレオ異性体、およびラセミまたはスカレミック混合物のような異性体の混合物の可能性を考慮している。本明細書に記載の化合物は、1つ以上の不斉中心を含み得る。そして、潜在的には、ジアステレオ異性体および光学異性体を引き起こすもととなる。特にそうではないとことわらない限り、現在説明している主題は、すべてのそのような可能性のあるジアステレオ異性体と、それらのラセミ混合物と、それらの実質的に純粋な、分割された鏡像異性体と、すべての可能性のある幾何異性体と、それらの医薬的に許容される塩とを含む。立体異性体の混合物、および単離された個別具体の立体異性体もまた含まれる。そのような化合物を調製するために用いられる合成手順の間に、または、当業者には知られている、ラセミ化反応またはエピマー化の手順を用いる際に、そのような手順の生成物は、立体異性体の混合物であり得る。
【0087】
多くの有機化合物は、平面偏光の平面を回転させる能力を有する光学活性形態で存在する。光学活性化合物を説明する際には、プレフィックスDおよびL、またはRおよびSが用いられて、分子の、分子のキラル中心(複数可)の周りの絶対配置を示す。プレフィックスdおよび1、または(+)および(-)を用いて、化合物による平面偏光の回転のサインを指定するが、(-)またはlは、化合物が左旋性のものであることを意味する。プレフィックスが(+)またはdである化合物は、右旋性である。所与の化学構造に対して、立体異性体と呼ばれるこれらの化合物は、互いに重ねることができない鏡像であることを除いて同一である。ある具体的な立体異性体は、鏡像異性体とも呼ばれ得る。そのような異性体の混合物は、鏡像体混合物と呼ばれる場合が多い。50:50で鏡像異性体を混合した混合物は、ラセミ混合物と呼ばれる。本明細書に記載の化合物の多くは、1つ以上のキラル中心を有し得るので、異なる鏡像異性体形態で存在し得る。必要に応じて、キラル炭素を、アスタリスク(*)を用いて明示することができる。キラル炭素への結合が、開示された式中で直線で描かれる場合、キラル炭素の(R)および(S)配置の両方、それゆえ、鏡像異性体およびそれらの混合物の両方が、その式に含まれるということを理解されたい。当該技術分野で使用されるように、キラル炭素の周りの絶対配置を指定することが望ましい場合、キラル炭素への結合のうちの一方(平面の上方にある原子への結合)は、くさびとして描くことができ、他方(平面の下方にある原子への結合)は、一連の短い平行線またはくさびとして描くことができる。カーン・インゴルド・プレローグ順位則を、キラル炭素に対する(R)または(S)配置を指定するために使用し得る。
【0088】
開示された化合物が、1つのキラル中心を含む場合、その化合物は、2つの鏡像異性体形態で存在する。具体的にそうではないと明示されていない限り、開示された化合物は、鏡像異性体と、ラセミ混合物と呼ばれる具体的な50:50の混合物などの鏡像異性体の混合物との両方を含む。鏡像異性体は、当業者には知られている方法によって分割され得る。そのような方法の例としては、例えば、結晶化によって分離され得る、ジア立体異性体塩の形成や(CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation by David Kozma(CRC Press、2001)を参照)、例えば、結晶化、気液クロマトグラフィまたは液体クロマトグラフィによって分離され得る、ジア立体異性体誘導体または複合体の形成や、一方の鏡像異性体の、鏡像異性体特異的薬剤との選択的反応、例えば、酵素によるエステル化や、例えば結合されたキラルリガンドを伴うシリカのキラル支持体上でのキラル環境中での、またはキラル溶媒の存在下での気液クロマトグラフィまたは液体クロマトグラフィが挙げられる。所望の鏡像異性体が、上記の分離手順のうちの1つによって、別の化学成分に転換される場合、更なるステップによって、所望の鏡像異性体形態を遊離させ得るということを理解されたい。あるいは、光学活性剤、基質、触媒、または溶媒を用いる不斉合成によって、または不斉変換によって一方の鏡像異性体を他方に転換することによって、特定の鏡像異性体を合成することもできる。
【0089】
開示された化合物中のキラル炭素での特定の絶対配置の指定は、化合物の、指定された鏡像異性体形態が、鏡像異性体過剰状態(e.e.)で提供され得るということを意味すると理解される。本明細書で使用する際、鏡像異性体過剰状態は、特定の鏡像異性体が、50%超、例えば、60%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、または99%超で存在することである。一部の実施形態では、指定された鏡像異性体は、他の鏡像異性体を実質的に伴わない。化合物の「R」形態は、化合物の「S」形態を実質的に伴わないため、「S」形態の鏡像異性体過剰状態で存在する。逆に化合物の「S」形態は、化合物の「R」形態を実質的に伴わないため、「R」形態の鏡像異性体過剰状態で存在する。
【0090】
開示された化合物が2つ以上のキラル炭素を有する場合、その化合物は、3種類以上の光学異性体を有していてもよく、ジア立体異性体形態で存在していてよい。例えば、2つのキラル炭素が存在する場合、化合物は、最大4種類の光学異性体と、2対の鏡像異性体((S,S)/(R,R)と(R,S)/(S,R))と、を有する。鏡像異性体の対(例えば、(S,S)/(R,R))は、互いに鏡像立体異性体となっている。鏡像ではない立体異性体(例えば、(S,S)および(R,S))は、ジアステレオ異性体である。ジア立体異性体の対は、例えば、クロマトグラフィまたは結晶化のような当業者に知られている方法で分離し得る。各対内の個々の鏡像異性体は、上述のとおり分離され得る。具体的にそうではないと排除されない限り、開示された化合物は、そのような化合物の各ジア立体異性体およびそれらの混合物を含む。
【0091】
一部の実施形態では、化合物は、シクロヘキシル環のようなシクロアルキル環上に2つのキラル炭素を有し得る。この場合、キラル炭素上の置換基は、「シス」または「トランス」配置におけるように標識化され得る。例えば、シクロヘキシル上の置換基は、一部の実施形態では、以下のように標識化される:
【化3】
【0092】
本明細書に記載の化合物は、その天然の同位体存在度および非天然の同位体存在度の両方で原子を含む。開示された化合物は、1つ以上の原子は、天然で典型的に存在する原子量または原子質量とは異なる原子量または原子質量を有する原子で置き換えられるという事実がなければ、同位体的に標識化され、または同位体的に置換された、説明されているのと同一の化合物であり得る。本明細書に記載されている主題の化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、フッ素、および塩素、例えば、それぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F、および36Clが挙げられる。化合物は、そのプロドラッグと、当該化合物または当該プロドラッグの医薬的に許容される塩と、を更に含み、前述の同位体および/または本明細書に記載されている主題の範囲内の他の原子の他の同位体を含む。現在説明されている主題の、ある特定の同位体的に標識化された化合物、例えば、Hおよび14Cのような放射性同位体がその中に組み込まれる化合物は、薬剤および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化した、すなわち、H、および炭素-14、すなわち、14C同位体は、その容易な調製と検出性から特に好ましい。更に、より重い同位体、例えば重水素(すなわち、H、)などによる置換を行うと、例えばインビボ半減期が長くなることのような代謝安定性がより高くなる、または必要な投薬量が少なくなるなどの結果としての、特定の治療的利点を得ることができ、そのため、ある一部の条件下では好ましいものであり得る。現在説明されている主題の同位体的に標識化された化合物およびそのプロドラッグは、一般に、直ぐに利用できる同位体的に標識化された薬剤で、同位体的に標識化されていない薬剤を置き換えることにより、下記の手順を実行することによって、調製され得る。
【0093】
本明細書に記載の化合物は、溶媒和化合物として存在し得る。「溶媒和化合物」は、1つ以上の溶媒分子と式Iの化合物とが関連付けされたものまたは複合体を指す。他の実施形態では、「溶媒和化合物」は、1つ以上の溶媒分子と式Iの化合物とが関連付けされたものまたは複合体を指す。溶媒和化合物を形成する溶媒の例としては、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、およびエタノールアミンが挙げられるが、それらに限定されない。「ハイドレート」という用語は、溶媒の分子が水である複合体を指す。特にそうではないとことわらない限り、本明細書に記載されている主題は、すべてのそのような可能な溶媒和化合物を含む。
【0094】
化学物質は、多形体またはモディフィケーションと呼ばれる、異なる順序の状態で存在する固体を形成することが知られている。多形体物質の異なるモディフィケーションどうしは、その物性が大いに異なり得る。本明細書に記載されている主題による化合物は、異なる多形体で存在し得るが、そのことで、ある特定のモディフィケーションが準安定性を有することを可能とする。特にそうではないとことわらない限り、本明細書に記載されている主題は、すべてのそのような可能な多形体を含む。
【0095】
本明細書において開示されるある材料、化合物、組成物、および成分は、市販されているものもあり、または当業者には一般に知られている技法を用いて容易に合成され得る。例えば、開示された化合物および組成物を調整する際に使用される開始材料および試薬は、Aldrich Chemical Co.,(Milwaukee,Wis.)、Acros Organics(Morris Plains,N.J.)、Fisher Scientific(Pittsburgh,Pa.)、またはSigma(St.Louis,Mo.)などの市場における供給元から入手できる。あるいは、それらは、当業者には知られている方法によって、以下の参照文献において規定されている手順にしたがって調製される:Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,Volumes1-17(John Wiley and Sons,1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,Volumes 1-5 and Supplementals(Elsevier Science Publishers,1989);Organic Reactions,Volumes 1-40(John Wiley and Sons、1991);March’s Advanced Organic Chemistry,(John Wiley and Sons,4th Edition);and Larock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989)。
【0096】
他の定義が、本明細書の他の場所で提供される。
【0097】
B.化合物
本明細書に開示の化合物は、式Iの化合物または医薬的に許容される塩、プロドラッグ、代謝物、またはそれらの誘導体である。これらの化合物は、有用な、MerおよびTyro3チロシンキナーゼの二重阻害剤である。複数の実施形態では、式Iは、以下の一般構造式:
【化4】

(式中、
UおよびUは、UまたはUのうち一方のみがNであることができるという条件の下、各々独立して、NまたはCXであり、
Xは、HまたはC1~C8アルキルであり、
は、C1~C4アルコキシ、ハロゲン、C1~C8アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、ニトリル、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、-C(O)R10、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から選択され、前記シクロアルキルまたは前記ヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、およびC1~C4アルコキシからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で独立して置換され、
10は、-NH、水素、またはC1~C4アルキルであり、
Gは、-OHまたは-NRであり、
およびRは、各々独立して、水素、C1~C4アルキル、または-C(O)R50であり、
50は、C1~C4アルキルまたは水素であり、
mは0または1であり、
は、水素、C1~C10アルキル、C1~C4ハロアルキルC(O)R20、および-(CHCyからなる群から選択され、
nは、0、1、2、3、または4であり、
Cyは、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、アリール、およびC3~C5ヘテロアリールからなる群から選択され、その各々が、ハロゲン、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、C3~C8シクロアルキル、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で、独立して置換され、
20は、C1~C4アルキル、-(CHOR30、および-(CHCyからなる群から選択され、
qは、0、1、2、3、または4であり、
wは、0、1、2、3、または4であり、
30は、水素またはC1~C8アルキルであり、
Cyは、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、アリール、およびC3~C5ヘテロアリールからなる群から選択され、その各々が、ハロゲン、-NH、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、-C(O)-(C1~C4アルキル)、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で、独立して置換される)を有し、またはその医薬的に許容される塩を有する。
【0098】
特定の実施形態では、化合物は、Gが-OHである化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、Gが-NH、-NHCH、-N(CH、または-NHC(O)CHである化合物を含む。
【0099】
特定の実施形態では、化合物は、UがNであり、かつUがCHである化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、UがCHであり、かつU2がCHである化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、UがNであり、かつUが-C-CHである化合物を含む。
複数の実施形態では、化合物は、式I’:
【化5】

(式中、
Uは、NまたはCHであり、
は、C1~C4アルコキシ、ハロゲン、C1~C8アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、ニトリル、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から選択され、
mは、0または1であり、
は、水素、C1~C10アルキル、-C(O)R20、および-(CHCyからなる群から選択され、
nは、0、1、2、3、または4であり、
Cyは、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、アリール、およびC3~C5ヘテロアリールからなる群から選択され、かつ、ハロゲン、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で置換され、
20は、C1~C4アルキル、-(CHOR30、および-(CHCyからなる群から選択され、
qは、0、1、2、3、または4であり、
wは、0、1、2、3、または4であり、
30は、水素またはC1~C8アルキルであり、
Cyは、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、アリール、およびC3~C5ヘテロアリールからなる群から選択され、かつ、ハロゲン、-NH、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、-C(O)-(C1~C4アルキル)、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で置換される)の化合物、またはその医薬的に許容される塩を含む。
【0100】
特定の実施形態では、化合物は、式I’(式中、UはNである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式I’(式中、UはCHである)の化合物を含む。
【0101】
特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、メトキシ、クロロ、メチル、エチル、-C(O)NH、ジフルオロエチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、およびトリフルオロメチルからなる群から選択される)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはアルコキシである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはメトキシである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはハロアルキルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはトリフルオロメチルまたはジフルオロエチルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは非分枝鎖C1~C4アルキルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはエチルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはジメチルアミノである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはハロゲンである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはブロモである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはトリフルオロメチルまたはクロロである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはピロリジニル、メチルで置換されているピペラジニル、またはピペリジニルである)の化合物を含む。
【0102】
特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、mは1である)の化合物を含む。
【0103】
特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、直鎖または分枝鎖のC1~C5アルキルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、およびネオペンチルからなる群から選択される)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、メチル、イソブチル、およびネオペンチルからなる群から選択される)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは水素である)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rはメチルである)の化合物を含む。
特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは-C(O)R20であり、R20は、-(CHCyであり、wは0であり、Cyは、各々が、C1~C4アルキルから独立して選択される、0、1、2、または3個の基で独立して置換されるシクロペンチルまたはシクロヘキシルである)の化合物を含む。
【0104】
特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは-C(O)R20であり、R20は、-(CHOR30である)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、qは0である)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、R30は、C1~C4アルキルである、)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、R30は、t-ブチルである、)の化合物を含む。
【0105】
特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは-C(O)R20であり、R20は、-(CHCyである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、wは0である)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、wは1である)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Cyは、任意選択的にC1~C4アルキルで置換されたC3~C8シクロアルキルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Cyは、任意選択的にC1~C4アルキルで置換されたシクロペンチルまたはシクロヘキシルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Cyはシクロペンチルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Cyはメチルで置換されたシクロヘキシルである)の化合物を含む。
【0106】
特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは-(CHCyである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、Cyは、C3~C8シクロアルキル、アリール、およびC2~C7ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、nは0または1であり、Cyは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニル、オキセタニル、イソオキサゾリル、ピペリジニル、およびテトラヒドロピラニルからなる群から選択され、各々が独立して、メチル、フルオロ、シクロプロピル、クロロ、n-プロピル、およびイソプロピルからなる群から選択される、0、1、2、または3個の基で置換される)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、nは0である)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、nは1である)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、CyはC3~C8シクロアルキルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、Cyは、シクロペンチル、シクロブチル、およびシクロヘキシルからなる群から選択される)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、Cyはアリールである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、Cyはフェニルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、CyはC2~C7ヘテロシクロアルキルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、Cyはテトラヒドロピラニルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、nは1であり、Cyは、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、およびテトラヒドロピラニルからなる群から選択される)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、nは0または1であり、Cyは、3-メチルシクロブチル、3,3-ジメチルシクロブチル、3-シクロプロピルシクロブチル、スピロ[3.3]ヘプチル、4-フルオロフェニル、および3-5-ジクロロフェニルからなる群から選択される)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、nは0であり、Cyはペンチルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、nは1であり、Cyはペンチルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、nは1であり、Cyは任意選択的に、メチル、エチル、またはイソプロピルで置換されたピペリジニルである)の化合物を含む。特定の実施形態では、化合物は、式IまたはI’(式中、Rは、-(CHCyであり、nは0であり、Cyはメチルで2回置換されたシクロヘキシルである)の化合物を含む。
【0107】
特定の実施形態では、化合物は、「a」および「b」と印をつけられた炭素上の置換基が、トランス配置のものである、式IまたはI’の化合物を含む。
【0108】
特定の実施形態では、式IまたはI’の化合物は、表1の化合物を含む。
【0109】
C.医薬組成物
一部の実施形態では、本明細書に記載されている主題は、少なくとも1つの、式Iまたは式I’の化合物と医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物に関する。一部の実施形態では、治療有効量の少なくとも1つの開示された化合物を含む医薬組成物が提供され得る。一部の実施形態では、予防的に有効量の少なくとも1つの開示された化合物を含む医薬組成物が提供され得る。一部の実施形態では、本明細書に記載されている主題は、医薬的に許容される担体と、化合物とを含み、化合物が有効量で存在する、医薬組成物に関する。
【0110】
化合物の医薬的に許容される塩は、化合物の生物学的有効性と特性とを保持する、従来の酸添加塩または塩基添加塩であり、好適な、毒性のない有機もしくは無機酸、または有機もしくは無機塩基から形成される。例示的な酸添加塩としては、無機酸由来のものが挙げられ、そのような酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、および硝酸、ならびに有機酸由来の酸で、例えば、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸などが挙げられる。塩基添加塩の例としては、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、および四級アンモニウム水酸化物由来のものが挙げられ、例えば、テトラメチルアンモニウム水酸化物が挙げられる。医薬化合物を化学修飾して塩にすることは、化合物の物理的および化学的安定性、吸湿性、流動性、可溶性の改善を実現するための、既知の技術である。例えば、H.Ansel et.al.、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(6th Ed.1995)at pp.196 and 1456-1457を参照のこと。
【0111】
医薬組成物は、医薬的に許容される担体中の化合物を含む。医薬的に許容される担体とは、無菌水溶液または無菌非水溶液、分散液剤、懸濁液またはエマルション、および無菌注射剤液に再構成するための無菌粉末、または使用の直前に用いる分散液剤を指す。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース、ならびにそれらの好適な混合物、植物油(例えば、オリーブオイル)、注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。化合物は、医薬的に許容される担体または希釈剤、ならびに任意の他の既知の補助剤および賦形剤とともに、従来の技術にしたがって配合される。その技術の例が、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa..1995に開示されている。
【0112】
さまざまな実施形態では、開示された医薬組成物は、活性成分としての開示された化合物(その医薬的に許容される塩(複数可)を含む)と、医薬的に許容される担体と、任意選択的に、他の治療成分または補助剤と、を含む。組成物の例としては、経口投与、直腸内投与、局所投与、および非経口投与(皮下投与、筋肉内投与、および静脈内投与を含む)に好適なものが挙げられる。ただし、任意の所与のケースで最も好適な経路は、特定のホスト、投与されている活性成分が標的としている状態の性質および重篤さによって異なる。医薬組成物は、便利なことに、単位投与量形態で提示され得る。また、医薬組成物は、薬学分野で周知の任意の方法で調製され得る。
【0113】
担体の選択は、部分的には、組成物を投与するために使用される具体的な方法によって決定される。したがって、現在説明されている主題の医薬組成物の好適な製剤形態については、広範なものが存在する。経口投与、霧噴霧(エアゾール)投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、直腸投与、および膣内投与用の、以下の製剤形態は、単に例示的なものに過ぎず、決して限定するためのものではない。
【0114】
経口投与に好適な製剤形態は、(a)液体溶液、例えば、有効量の化合物を、例えば水、生理食塩水、またはオレンジジュースなどの希釈剤に溶解させたもの、(b)カプセル、小袋、タブレット、口内錠剤、およびトローチ、ただし各々が、所定の量の活性成分を、固体または微粒として含有するもの、(c)粉末、(d)適切な液体中の懸濁液、ならびに(e)好適なエマルションからなり得る。液体の製剤形態は、希釈剤、例えば、水、シクロデキストリン、ジメチルスルホキシド、およびアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、およびポリエチレンアルコール(ポリエチレングリコールを含む)を含み得るが、医薬的に許容され得る界面活性剤、懸濁剤、または乳化剤を含むと含まないとを問わない。カプセル形態は、通常の硬質シェルおよび軟質シェルのゼラチンタイプのものであり得るが、それらは、例えば、界面活性剤、潤滑剤、および無菌充填剤を含有し、それらの例としては、乳糖、蔗糖、リン酸カルシウム、およびコーンスターチが挙げられる。タブレット形態は、乳糖、蔗糖、マンニトール、コーンスターチ、片栗粉、アルギン酸、結晶セルロース、アカシアガム、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、香味剤、および医薬的適合性を有する担体のうちの1つ以上を含み得る。口内錠剤形態は、通常は蔗糖、およびアカシアガムまたはトラガントガムである風味内に含まれる活性成分や、ゼラチンおよびグリセリン、または蔗糖およびアカシアガム、エマルションのような無菌ベース内に活性成分を含むトローチならびに、蔗糖およびアカシアガム、エマルション、ゼラチンおよびグリセリンのような無菌ベース内に添加したゼリー、ならびに活性成分に加えて、上記のような担体を含む、当該技術分野で知られているようなゼリーを含み得る。
【0115】
本開示の化合物を単独で、または他の好適な成分と組み合わせて、吸入によって投与する、エアゾール製剤形態に製造することができる。これらのエアゾール製剤形態は、加圧された許容可能な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、および窒素)内に配置され得る。またそれらを、例えば、噴霧吸入器またはアトマイザーで用いる、非加圧向け調製用の医薬剤として製剤され得る。
【0116】
非経口投与に好適な製剤形態には、水性および非水性の、等張性で、無菌の注射用液であって、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、および意図されているレシピエントの血液と製剤を等張にするための溶質を含み得るものと、水性および非水性の、無菌懸濁液であって、懸濁剤、可溶化剤、増ちょう剤、安定化剤、および防腐剤を含み得るものとが挙げられる。化合物は、無菌の液体または複数の液体の混合物などの医薬的担体における生理学的に許容可能な希釈剤内で投与され得、無菌の液体または複数の液体の混合物は、水、生理食塩水、デキストロースおよび関連する糖類の水溶液、アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、またはヘキサデシルアルコール、グリコール、例えばプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール、例えばポリ(エチレングリコール)400、グリセロールケタル、例えば2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、エーテル、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステル、もしくはグリセリド、またはアセチル化脂肪酸グリセリド(の添加に関係なく)医薬的に許容可能な界面活性剤、例えば、石鹸もしくは洗剤、懸濁剤、例えばペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、もしくはカルボキシメチルセルロース、または乳化剤、および他の医薬的補助剤が含まれ得る。
【0117】
非経口投与用製剤形態で用いられ得るオイルには、石油、動物油、植物油、合成油が挙げられる。オイルの具体的な例としては、ピーナッツ油、大豆油、ごま油、綿実油、コーン油、オリーブオイル、ワセリン、および鉱物油が挙げられる。非経口用製剤形態における使用のための好適な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。非経口製剤形態における使用のための好適な石鹸は、脂肪酸アルカリ金属、アンモニウム、およびトリエタノールアミンの塩を含み、また好適な洗剤には、(a)カチオン製洗剤、例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライド、およびアルキルピリジニウムハライドと、(b)アニオン性洗剤、例えば、アルキル、アリール、およびオレフィンスルホネート、アルキルオレフィン、エーテル、およびモノグリセリドサルフェート、およびスルホスクシナートと、(c)非イオン性洗剤、例えば、脂肪族アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマーと、(d)両性洗剤、例えば、アルキルβ-アミノプロピオネート、および2-アルキルイミダゾリン四級アンモニウム塩と、(e)それらの混合物が挙げられる。
【0118】
非経口製剤形態は、典型的には、溶液中に、約0.5重量%~約25重量%の活性成分を含む。好適な防腐剤および緩衝剤を、上記のような製剤形態において用いることができる。注射の行われる現場での刺激や痛みを最小化または排除するため、上記の組成物は、約12~約17の親水性・親油性バランス(HLB)を有する1つ以上の非イオン性界面活性剤を含んでいてよい。そのような製剤形態中の界面活性剤の量は、約5重量%~約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤としては、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられ、例えばソルビタンモノオレイン酸、およびプロピレンオキシドのプロピレングリコールとの縮合によって形成される、エチレンオキシドの、疎水性塩基との高分子量の付加物が挙げられる。
【0119】
医薬的に許容される賦形剤も、当業者には周知である。賦形剤の選択は、部分的には、具体的な化合物によって、および組成物を投与するために使用される具体的な方法によって決定される。したがって、本開示の医薬組成物には、広範な好適な製剤形態が存在する。以下の方法と賦形剤は、あくまでも例にすぎず、決して限定することを意図していない。医薬的に許容される賦形剤は、好ましくは、活性成分の活動に干渉しないものであり、しかも副作用を引き起こさないものである。好適な担体および賦形剤としては、水、アルコール、およびプロピレングリコールなどの溶媒、固形の吸収材および希釈剤、表面活性薬剤、懸濁剤、タブレット化バインダー、潤滑剤、香味剤、ならびに着色剤が挙げられる。
【0120】
製剤は、1回投与量を封入した容器で、または複数投与量を封入した容器、例えばアンプルおよびバイアルで提示され得る。また製剤は、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管され得るが、注射の場合には、使用直前に無菌の液体賦形剤(例えば、水)を単に添加すればよい。即席の注射用溶液および懸濁液を、無菌の粉末、顆粒、およびタブレットから調製することもできる。注射可能な組成物用の効果的な医薬用担体のための要件は、当業者には周知である。Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,Eds.,238-250(1982)およびASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,622-630(1986)を参照のこと。
【0121】
局所投与に好適な製剤形態は、通常は蔗糖、およびアカシアガムまたはトラガントガムである風味内に含まれる活性成分を含む口内錠剤、ゼラチンおよびグリセリン、または蔗糖およびアカシアガムのような無菌ベース内に活性成分を含むトローチ、ならびに好適な液体担体内の活性成分を含むマウスウォッシュ、ならびに活性成分に加えて、当該技術分野では知られている担体を含む、クリーム、エマルション、およびゲルが挙げられる。
【0122】
また、直腸投与に好適な製剤形態は、乳化ベース、または水溶性ベースなどのさまざまなベースと混合されることによって、坐薬として提示され得る。膣内投与に好適な製剤形態は、活性成分に加えて、当該技術分野で既知である上記の担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体、またはスプレー用製剤として提示され得る。
【0123】
当業者であれば、本開示の化合物を、動物に、体外から投与する好適な方法が利用可能であり、かつ、特定の化合物を投与するために、2つ以上の経路が用いられ得るが、ある特定の経路は、他の特定の経路よりも、より即効的でより有効な反応を提供し得るということを理解するであろう。
【0124】
これらの適用について、本方法は、MerおよびTyro3チロシンキナーゼのうちの1つ以上の阻害に効果的な、治療有効量の化合物を、動物、特に哺乳類、より具体的にはヒトに投与することを含む。一部の実施形態では、動物に投与される式Iの化合物は、Merチロシンキナーゼ選択的阻害剤である。本方法はまた、MerおよびTyro3チロシンキナーゼ機能障害のうちの1つ以上に関連する疾患、または感染性疾病によって悩まされやすい体質を有する患者の治療のために、治療有効量の化合物を投与することも含む。一部の実施形態では、患者は、Merチロシンキナーゼに関連する疾患に悩まされている。現在説明されている主題の文脈における、動物、特にヒトに投与される1回あたりの投与量は、合理的な時間の枠内で、その動物の内部で治療的な反応に影響を及ぼすのに十分なものである必要がある。当業者ならば、投与すべき全体量は、例えばその動物の健康状態、その動物の体重、その疾患または感染性疾病の重篤度およびその進行ステージなどのさまざまな要因によって変化するということを認識するであろう。
【0125】
典型的な治療において投与される、本開示の化合物の総量は、マウスの場合には体重を基準にして、好ましくは約10mg/kg~約1000mg/kgであり、ヒトの場合には、1日あたりの投与量では、体重を基準にして、約100mg/kg~約500mg/kg、より好ましくは、200mg/kg~約400mg/kgである。この総量は、必ずしもそうである必要はないが、典型的には、より少ない1回あたりの投与量の一連の投与として、1日あたり約1回~約3回で、約24か月にわたって投与され、好ましくは1日あたり2回で、約12か月にわたって投与され得る。
【0126】
一部の実施形態では、本発明の活性化合物を含む、Mer TKIの1日量(これは1日1回または2回以上の投与回数で提供され得る)を投与することによって、ホストを治療するための方法が提供される。一実施形態では、Mer TKIの1回あたりの投与量は、約.5mg~約200mgである。一実施形態では、1回あたりの投与量は、少なくとも約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約10mg、約12mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約125mg、約140mg、約150、約175、または約200mgである。別の一実施形態では、1回あたりの投与量は、約200mg~1250mgである。一実施形態では、1回あたりの投与量は、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、約500mg、約525mg、約550mg、約575mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、約700mg、約725mg、約750mg、約775mg、約800mg、約825mg、約850mg、約875mg、約900mg、約925mg、約950mg、約975mg、約1000mgあるいはそれよりも多い量である。
【0127】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、追加的な抗腫瘍剤、抗悪性腫瘍薬、抗がん剤、免疫調整剤、免疫賦活剤、抗感染症薬、抗血栓症剤,および/または抗凝固剤と組み合わせられる。ホストに投与される投与総量は、単剤療法の間に投与される量と同様であり得るが、少なくなる場合もあり得、例えば、約0.5mg~約150mgであり得る。一実施形態では、1回あたりの投与量は、少なくとも約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約10mg、約12mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約125mg、約140mg、または約150mgである。
【0128】
一部の実施形態では、活性化合物を、追加的薬剤(抗腫瘍剤、抗悪性腫瘍薬、抗がん剤、免疫調整剤、免疫賦活剤、抗感染症薬、抗血栓症剤,および/または抗凝固剤)と組み合わせて同時投与するケースについては、本明細書においてそうではないと記載されない限り、投与されるべき式Iまたは式I’の化合物の量は、患者の体重の約0.01mg/kg~約50mg/kg以上であり、あるいは、同時投与される第2の化合物、患者の状態、対処をされる必要がある疾病の深刻度、および投与経路によっては、相当にこれより多くなる。一実施形態では、追加的抗腫瘍剤、抗悪性腫瘍薬、抗がん剤、免疫調整剤、免疫賦活剤、抗感染症薬、抗血栓症剤および/または抗凝固剤は、例えば、約0.01mg/kg~約500mg/kgの範囲の量で投与され得る。一実施形態では、経口での投与の場合、好適な1日あたりの投与量は、例えば、約0.1~4000mgであり、この量を、経口で、1日1回、2回、3回で投与し、連続的に投与(終日)または断続的に(例えば、週に3~5日間)投与され得る。
【0129】
1回あたりの投与量は、投与の経路、タイミング、および投与の頻度によって、更に、本化合物の投与と、所望の生理学的効果とに伴い得る、何らかの副作用の存在、性質、および度合いによっても決定されるであろう。当業者であれば、さまざまな状態または疾病の状態、特に、慢性的な状態または疾病状態は、複数回の投与を伴う、延長された処置を必要とし得るということを理解するであろう。
【0130】
一部の実施形態では、組成物は、ウイルス感染症、細菌感染症、血栓性疾患もしくは凝固障害、または制御不能の細胞増殖の疾患を治療することが知られている、少なくとも1つ以上の薬剤を更に含む。そのような薬剤は、本明細書内に詳しく記載されている。
【0131】
D.化合物の製造方法
一部の実施形態では、式Iまたは式I’の化合物の製造方法が開示される。本開示による化合物は、例えば、本明細書において説明される方法によって調製することができる。当業者であれば、保護基の適切な使用法[Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis]および文献内に見られる既知の化合物を、有機合成の分野における標準的な方法を用いて調製する方法を理解するであろう。時に、推奨される合成ステップの順番を変更する必要が生じ得るが、このことは、有機合成の分野の当業者である化学者の判断にとっては明らかであろう。以下の例は、本明細書に記載されている主題がより完全に理解され得るように提供され、あくまでも例示的なものに過ぎず、限定するためのものと考えるべきではない。
【0132】
一部の実施形態では、開示された化合物は、本明細書に記載される複数の合成方法の生成物を含む。一部の実施形態では、開示された化合物は、本明細書に記載される合成方法によって生成される化合物を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている主題は、開示される方法で生成される、治療有効量の生成物を含む医薬組成物と、医薬的に許容される担体とを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている主題は、医薬品を製造するための方法を含み、その方法は、開示された化合物のうちの任意のものの少なくとも1つの化合物、または開示された方法の少なくとも1つの生成物を、医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることを含む。
【0133】
E.化合物を使用する方法
本明細書に記載されている主題の化合物および医薬組成物は、さまざまな疾患を治療または抑制することにおいて有用であるが、そのような疾患としては、制御不能の細胞増殖の疾患、例えば、癌、感染症(例えば、ウイルス感染症および細菌感染症)、および血栓性疾患が挙げられるが、それらに限定されない。
【0134】
本明細書においてより詳細に説明されるように、リガンド結合したMerTKは、ホスファチジルセリンと複合体を形成し得るが、更にアポトーシス細胞と結合し得、これがトリガとなって、炎症性サイトカインの摂取と抑制が起こる。このことは、一部特定の癌(例えば、急性白血病(ALLおよびAML))および一部の固形腫瘍(例えば、乳癌、結腸癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫など)では、異常に発現される。
【0135】
MerTKリガンドとしては、増殖停止特異性6タンパク質(GAS6;Chen、et al;Oncogene(1997)14、2033-2039)、プロテイン-S、タビーおよびタビー様プロテイン-1(TULP1)、およびガレクチン-3が挙げられる。これらのリガンドのうちのいくつかは、リンパ液注に存在し、多くの組織で局所的に発現する。これらのリガンドが、MerTKの細胞外ドメインに結合し、その結果、チロシンキナーゼ活性化を引き起こす。
【0136】
1994年にMerTKが発見されて以来、多くの文献で、MerTKを、多くの効能に対する創薬ターゲットであると示唆している(例えば、以下を参照:WO2013/052417;Frye,S.“Academic Drug Discovery and Chemical Biology,”Presentation at Northwestern’s 18th Annual Drug Discovery Symposium,November 2013;WO2011/146313/WO2014/062774;Liu et al.(2012)ACS Med Chem.Lett.3(2):129-134;Schlegel et al.(2013)J.Clin.Invest.123(5):2257-67;Zhang et al.(2013)J.Med.Chem.56:9683-9692;Liu et al.(2013)Eur.J.Med.Chem.65:83-93;Christoph et al.(2013)Mol.Cancer Ther.12(11):2367-77;Linger et al.(2013)Blood 122:1599-1609;Lee-Sherick et al.(2015)Ocotarget,Advanced Publications 2015)。例えば、MerTKは、多くの血液および上皮の悪性細胞で異所的に発現するか、または過剰発現する。MerTKおよびGAS6の発現は、これらの腫瘍タイプにおける予後不良および/または化学療法抵抗性と相関している。しかしながら、腫瘍細胞におけるMerTKシグナル伝達の増加が、腫瘍の悪性度に寄与するメカニズムは、未だ明らかにはなっていない。
【0137】
2013年、MerTK -/-ノックアウトマウスが、正常マウスよりも、腫瘍増殖を受けにくいという判定がなされた(Cook et al.(2013)J.Clin.Invest.123:3231-3242)。MerTKは通常は、骨髄系列の細胞で発現し、そこで、アポトーシス材料の摂取に続いて、炎症性サイトカインを抑制するように作用する。MerTK -/-白血球は、腫瘍細胞誘発型の創傷治癒サイトカインの発現が低く(IL-10およびGAS6)、急性炎症性サイトカインの発現が高い(IL-12およびIL-6)ということが判明した。更に、腫瘍内のCD8+リンパ球が増加している。Mer-/-マウスの腫瘍の微小環境において、MerTKが喪失すると、同一遺伝子の、免疫適格性のあるマウス内の乳腺腫瘍および黒色腫の樹立、成長、および転移の速度が遅くなる
【0138】
Paolino et al.らは、新たに開発された低分子TAMキナーゼ阻害剤、LDC1267を使って、野生型NK細胞に対して実施した処置について報告しており、上記の阻害剤が与える治療可能性および治療効率性が、転移抑制のNK細胞活性を、生体内で高めるとしている(Paolino et al.(2014)Nature 507:508-512)。このTAM阻害剤を用いて経口または腹腔内投与を実施すると、NK細胞に依存して、マウスの乳癌と黒色腫の転移が著しく減少した。
【0139】
TAM受容体チロシンキナーゼは、ある感染性疾病における関与についてこれまでに研究されてきた。例えば、Shimojimaらは、Tyro3受容体チロシンキナーゼファミリー、Axl、Dkt、およびMerTK、のメンバーによるフィロウイルス、エボラウイルス、およびマーブルグウイルスの細胞内移行への関与について報告し、各Tyro3ファミリーメンバーは、おそらくは、感染症における細胞移入要因である可能性が高い(Shimokima et al.(2006)Journal of Virology p.10109-10116)。TAM受容体チロシンキナーゼが、それを標的に研究された追加的疾病としては、以下が挙げられるが、それらに限定されない:細菌感染症(U.S.8,415,361)、ザイールエボラウイルス(Brindley et al.(2011)Virology 415:83-84)、ワクシニアウイルス(Morizono et al.(2011)Cell Host&Microbe9:286-298;Morizono and Chen(2014)J.Virology88(8):4275-4290;Mercer and Helenius(2008)Science320:531-535)、デング熱ウイルス(WO2013/124324;Bhattacharayya et al.(2013)Cell Host&Microbe14:136-147;Meertens et al.(2012)Cell Host Microbe12:544-557)、黄熱病(WO2013/124324)、西ナイル熱(WO2013/124324)、エボラ(Bhattacharayya et al.(2013)Cell Host&Microbe14:136-147)、およびヒトT細胞白血病ウイルス(Bhattacharayya et al.(2013)Cell Host&Microbe14:136-147)。
【0140】
更に、Bernsmeierらは、急性憎悪した肝不全(acute-on-chronic liver failure、ACLF)の患者の循環器系、肝臓、およびリンパ系のノードにおいて、MerTKを発現したモノサイトとマクロファージの数が大いに増加したということを見出した(Bernsmeier et al.(2015)Gastroenterology 1-13)。置換ピラゾロピリミジンの追加(WO2011/146313、25頁参照)により、炎症性サイトカインの産生が回復した。
【0141】
TAM(Tyro3-Axl-Mer)受容体チロシンキナーゼはまた、血小板凝集への関与についても研究されてきた。2004年、Chenらが、MerTKが、おそらくはそのリガンドであるGas6を通じた活性化を通じて、試験管内での血小板の機能の調整と、生体内での血小板依存型血栓症の抑制に参加するということを観察した(Chen et al.(2004)Arterioscler.Thrombosis Vase.Biol.1118-1123)。Chenの報告によれば、凝集している血小板上のPtdSerが、MerTKを活性化させて、血塊の形成を安定化させる助けになっている。MerTKノックアウトマウスは、血小板の凝集を減少させたが、正常な出血時間と凝固パラメータを維持していた。その結果、これらのマウスは、付随する自発的出血を増加させることなく、血栓症から保護されているように思われた。(また、Angelillo-Scherrer et al.(2005)J.Clin.Invest.115(2):237-246も参照)。
【0142】
複数の特定の実施形態は、MerTKおよびTyro3二重阻害活性を有する化合物を含む。二重阻害は、多くの疾病および疾患に対して臨床的に有用であり得る、合理的な組み合わせ戦略であり得る。
【0143】
したがって、式Iの化合物の使用の方法を更に本明細書において論じる。
【0144】
1.治療方法
本明細書に開示の化合物は、制御不能の細胞増殖の疾患、感染症、および/または血栓性障害もしくは凝固障害を治療または抑制するために有用である。一部の実施形態では、治療有効量の開示された化合物、または開示された化合物を含む組成物を、対象に投与することを含む方法が提供される。
【0145】
本明細書に開示の化合物はまた、免疫調節性剤または免疫賦活剤としても有用である。
【0146】
本明細書において開示され、以下で更に論じるように、一部の実施形態では、MerチロシンキナーゼおよびTyro3チロシンキナーゼのうちの一方または両方に関連する疾患を治療する方法が提供され、その方法は、対象に、有効量の少なくとも1つの式Iの化合物を投与するステップを含む。一部の実施形態では、その方法は、Merチロシンキナーゼに関連する疾患の治療の方法である。
【0147】
上記の任意の実施形態におけるように、その疾患が、がん、感染症、線維症、血栓性疾患、凝固障害、または患部組織を取り巻く、免疫抑制された微小環境に関連する疾患である、方法。
【0148】
上記の任意の実施形態におけるように、疾患ががんである方法。
【0149】
上記の任意の実施形態におけるように、がんが、乳癌、子宮頚癌、消化器癌、結腸直腸癌、脳癌、皮膚癌、前立腺癌、卵巣癌、甲状腺癌、精巣癌、膵臓癌、子宮内膜癌、黒色腫、神経膠腫、白血病、リンパ腫、慢性骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、および形質細胞腫瘍(骨髄腫)からなる群から選択される。
【0150】
上記の任意の実施形態におけるように、腫瘍またはがんは、MerTK +/+である方法。
【0151】
上記の任意の実施形態におけるように、腫瘍またはがんは、MerTK -/-である方法。
【0152】
上記の任意の実施形態におけるように、疾患は感染症である方法。
【0153】
上記の任意の実施形態におけるように、感染症はウイルス性感染症である方法。
【0154】
上記の任意の実施形態におけるように、感染症は細菌性感染症である方法。
【0155】
上記の任意の実施形態におけるように、疾患は線維症である方法。更なる実施形態では、線維症は、肝線維症である。
【0156】
上記の任意の実施形態におけるように、追加的な活性薬剤を投与することを更に含む方法。
【0157】
複数の実施形態では、少なくとも1つの細胞において、MerチロシンキナーゼおよびTyro3チロシンキナーゼのうちの一方または両方を阻害する方法であって、その方法は、少なくとも1つの細胞を、有効量の少なくとも1つの式Iの化合物に接触させるステップを含む。一部の実施形態では、その方法は、少なくとも1つの細胞で、Merチロシンキナーゼを阻害するための方法であって、その方法は、少なくとも1つの細胞を、有効量の少なくとも1つの式Iの化合物に接触させるステップを含む。
【0158】
上記の任意の実施形態におけるように、細胞は、接触させるステップに先立って、その細胞が哺乳類から単離されている方法。
【0159】
上記の任意の実施形態におけるように、哺乳類が、投与するステップに先立って、MerチロシンキナーゼおよびTyro3チロシンキナーゼのうちの一方または両方に関連する疾患の治療の必要があると診断される方法。更なる実施形態では、その哺乳類は、Merチロシンキナーゼに関連する疾患の治療の必要があると診断されている。
【0160】
a.抗腫瘍剤としての使用
一部の実施形態では、開示された化合物または組成物は、腫瘍細胞内で、Merチロシンキナーゼを阻害することによって、抗がん効果を発揮することができる。一部の実施形態では、治療される癌は、MerTKを過剰発現する。一部の実施形態では、MerTKを過剰発現しているがんは、急性骨髄性白血病、T細胞性急性リンパ性白血病、B細胞性急性リンパ性白血病、肺癌、神経膠腫、黒色腫、前立腺癌、神経鞘腫、マントル細胞リンパ腫、および横紋筋肉腫からなる群から選択される。一部の実施形態では、がんは、異所的にMerTKを発現する。
【0161】
一部の実施形態では、治療されるがんは、MerTKの細胞外ドメインまたは膜貫通ドメインのアミノ酸配列において、P40S(黒色腫)、S159F(肺)、E204K(尿路)S428G(胃)、143IF(肺)、A446G(腎臓)、N454S(肝臓)、W485S/C(リンパ腫)、およびV486I(黒色腫)から選択される変異をしている。一部の実施形態では、治療されるがんは、MerTKサイトゾルドメインのアミノ酸配列において、L586F(尿路)、G594R(胸)、S626C(尿路)、P672S(肺)、L688M(結腸)、A708S(頭頸部)、N718Y(肺)、R722stop(結腸)、M790V(肺)、P802S(黒色腫)、V873I(肝臓)、S905F(肺)、K923R(黒色腫)、P958L(kidney)、D983N(肝臓)、およびD990N(結腸)から選択される変異を有している。
【0162】
一部の実施形態では、開示された化合物または組成物は、がんにかかったホストに、1つ以上の追加的化学療法薬と組み合わせて投与され、その結果、相乗的抗がん効果を奏し、本明細書に記載の化合物または化学療法薬の一方だけによる治療と比較して、ホストの生存を延長させる。一部の実施形態では、本明細書に記載のMer TKI化合物を、化学療法薬と組み合わせて使用することは、化学療法薬の標準的ケアにおける投与量を増やすことなく、抗がん効果を高める。一部の実施形態では、本明細書に記載のMer TKI化合物を、化学療法薬と組み合わせて使用することは、標準的ケアでの投与量よりも、化学療法薬の投与量を減らしながら、同等かそれ以上の抗がん効果を発揮する。
【0163】
一部の実施形態では、開示された化合物または組成物は、非小細胞肺癌(non-small cell lung carcinoma、NSCLC)を治療する際に用いられるために提供される。一部の実施形態では、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹ったホストを治療するための方法が提供され、その方法は、そのホストに、有効量の開示された化合物または組成物を、1つ以上の追加的化学療法薬と組み合わせて投与することを含む。本明細書に記載されている主題の一部の実施形態では、がんにかかったホストを治療するための方法が提供され、その方法は、ホストに、現在説明されている主題のMer TKIを含む有効量の活性化合物を、別のチロシンキナーゼ阻害剤とともに投与することを含む。一部の実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害剤である。一部の実施形態では、FGFR阻害剤は、AZD-4547である。一部の実施形態では、がんは、非小細胞肺癌(NSCLC)である。本明細書に記載されている主題の一部の実施形態では、非小細胞肺癌(NSCLC)にかかったホストを治療するための方法が提供され、その方法は、ホストに、現在説明されている主題の、Mer TKIを含む有効量の活性化合物を、追加的チロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて投与することを含み、追加的チロシンキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブおよびクリゾチニブからなる群から選択される。
【0164】
一部の実施形態では、開示された化合物または組成物は、黒色腫を治療する際に用いられるために提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載のMer TKI化合物の投与は、化学療法薬と組み合わせて行われる。一部の実施形態では、化学療法薬は、抗プログラム細胞死-1(PD-1)剤である。一部の実施形態では、化学療法薬は、B-RAF阻害剤である。一部の実施形態では、B-RAF阻害剤はベムラフェニブである。一部の実施形態では、ホストは、B-RAF変異を有する黒色腫には罹っていない。一部の実施形態では、ホストは、B-RAF変異を有する黒色腫に罹っている。一部の実施形態では、ホストは、RAS変異を有する黒色腫に罹っている。一部の実施形態では、黒色腫は、MerTを過剰発現している。一部の実施形態では、黒色腫は、既に転移している。
【0165】
一部の実施形態では、開示された化合物または組成物は、急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia、ALL)を治療する際に用いられるために提供される。一部の実施形態では、ALLにかかったホストを治療するための方法が提供され、その方法は、ホストに、有効量の開示された化合物または組成物を、メトトレキサートと組み合わせて投与することを含む。
【0166】
一部の実施形態では、開示された化合物または組成物が、急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia、AML)を治療する際に用いられるために提供される。一部の実施形態では、AMLは、野生型FLT3プロテインを含む。一部の実施形態では、AML細胞の複製は、FLT3の発現に依存する。一部の実施形態では、AMLは、FLT3-ITD変異を含む。一部の実施形態では、AMLは、FLT3-TKD変異を含む。一部の実施形態では、AMLは、FLT3-ITD変異とFLT3-TKD変異との両方を含む。一部の実施形態では、FLT3阻害剤、または本明細書において記載されるMER/FLT3二重阻害剤が、AMLに罹っているホストに投与され、AMLが、FLT3-TKD内で、アミノ酸F691またはD835での変異を含む。
【0167】
一部の実施形態では、Mer TKIを含む現在説明されている主題の化合物を、腫瘍生存信号阻害量(例えば0.5~150mgの投与量)が、ホストに、単独で、または化学療法薬および/もしくは抗がん標的剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、腫瘍生存信号阻害量(例えば、少なくとも150mg/1回の投与量、一部の実施形態では、少なくとも200、250、300、350、400、450、または500mg/総投与量以上)の、Mer TKIを含む現在説明されている主題の活性化合物が、ホストに、単独で、または化学療法薬および/もしくは抗がん標的剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、Mer TKIと化学療法薬とは、相乗的に作用する。一部の実施形態では、化学療法薬と組み合わせたMer TKIの使用が、化学療法薬の標準的ケアにおける投与量を増やすことなく、抗腫瘍効果を高める。
【0168】
一部の実施形態では、Mer TKIを含む、現在説明されている主題の化合物の、化学療法と組み合わせての使用は、標準的ケアにおける投与量よりも少ない投与量の化学療法薬を用いながら、同等またはより大きな抗腫瘍効果を奏する。
【0169】
本明細書に記載されている主題の一部の実施形態では、Mer TKIを含む、現在説明されている主題の化合物は、がんにかかったホストに、化学療法薬の投与または電離放射線への曝露に先立って、その最中に、またはその後で投与され得る。一部の実施形態では、ホストは、有効量の化学療法薬または電離放射線を投与され、その後、Mer TKIを投与される。
【0170】
一部の実施形態では、がんにかかったホストを治療するための方法が提供され、その方法は、ホストに、有効量の開示された化合物または組成物を、免疫調整剤と組み合わせて投与することを含む。一部の実施形態では、免疫調整剤は、CTLA-4阻害剤、PD-1または抗-PD-1リガンド、IFN-α、IFN-β、およびワクチン、例えば、がんワクチンからなる群から選択される。一部の実施形態では、がんにかかったホストを治療するための方法が提供され、その方法は、ホストに、有効量の、Mer TKIを含む現在説明されている主題の活性化合物を、Keytruda(登録商標)(ペンブロリズマブ)と組み合わせて投与することを含む。一部の実施形態では、がんにかかったホストを治療するための方法が提供され、その方法は、ホストに、有効量の、Mer TKIを含む現在説明されている主題の活性化合物を、Opdivo(ニボルマブ)と組み合わせて投与することを含む。一部の実施形態では、がんにかかったホストを治療するための方法が提供され、その方法は、ホストに、有効量の、Mer TKIを含む現在説明されている主題の活性化合物を、Yervoy(登録商標)(イピリムマブ)と組み合わせて投与することを含む。一部の実施形態では、がんにかかったホストを治療するための方法が提供され、その方法は、ホストに、有効量の、Mer TKIを含む現在説明されている主題の活性化合物を、ペンブロリズマブおよびイピリムマブからなる群から選択される免疫調整剤と組み合わせて投与することを含み、がんは、黒色腫である。一部の実施形態では、Mer TKは、現在説明されている主題の活性化合物がMER/Tyro3 TKI二重阻害剤であることを含む、現在説明されている主題において有用である。一部の実施形態では、Mer TKIは、二重Mer/Tyro3 TKIである。一部の実施形態では、Mer TKIは、MER-特異性TKIである。一部の実施形態では、Mer TKIは、Tyro3-特異性TKIである。
【0171】
(i)腫瘍
本明細書に記載される活性化合物と方法は、腫瘍の治療に有用である。本明細書において考慮されるように、治療されるがんは、原発腫瘍または転移腫瘍であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、固体腫瘍を治療するために用いられ、固体腫瘍としては、例えば、黒色腫、肺癌(肺腺癌、基底細胞癌、扁平上皮癌、大細胞癌、細気管支肺胞癌、気管支原性肺癌、非小細胞癌、小細胞癌、中皮腫を含む);乳癌(乳管癌、小葉癌、炎症性乳癌、明細胞癌、粘液癌、漿膜腔乳癌を含む);結腸直腸癌(結腸癌、直腸癌、結腸直腸腺癌);肛門癌;膵臓癌(膵臓腺癌、膵島細胞癌、神経内分泌腫瘍を含む);前立腺癌;前立腺腺癌;卵巣癌(漿膜癌を含む、卵巣上皮癌-間質腫瘍、子宮内膜性腫瘍、および粘液性嚢胞腺癌、性索間質性腫瘍);肝臓および胆管癌(肝細胞癌、胆管細胞癌、血管腫を含む);食道癌(食道腺癌および扁平上皮癌を含む);口腔扁平上皮癌および中咽頭扁平上皮癌、唾液腺腺様嚢胞癌、膀胱癌、胃癌、膀胱癌、子宮の癌(子宮内膜腺癌、眼癌、子宮乳頭漿膜癌、子宮明細胞癌、子宮内腫および平滑筋肉腫、混合ミュラー管腫瘍を含む);神経膠腫、神経膠芽腫、髄芽腫、および他の脳の腫瘍;腎臓癌(腎細胞癌、明細胞癌、ウィルムス腫瘍を含む);頭頸部の癌(扁平上皮癌を含む);胃の癌(胃癌、胃腺癌、消化管間質腫瘍);精巣癌;胚細胞性腫瘍;神経内分泌腫瘍;子宮頚部癌;消化管、胸、および他の器官の癌様体;印環細胞癌;肉腫を含む間葉系腫瘍、線維肉腫、血管腫、血管腫症、血管周皮細胞腫、偽血管腫性間質性過形成、筋組織腫瘍、線維腫症、炎症性筋線維芽細胞腫瘍、脂肪腫、血管脂肪腫、顆粒細胞腫、神経線維腫、神経鞘腫、血管肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、黒色腫を含む皮膚癌、子宮頸癌、網膜芽細胞腫、頭頸部癌、膵臓癌、脳癌、甲状腺癌、精巣癌、腎臓癌、膀胱癌、軟組織癌、副腎癌、尿道癌、陰茎癌、粘液肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、悪性線維性組織球腫、リンパ管肉腫、中皮腫、扁平上皮癌;類表皮癌、悪性皮膚付属器腫瘍、腺癌、肝細胞腫、肝細胞癌、腎細胞癌、グラヴィッツ腫瘍、胆管細胞癌、移行上皮癌、絨毛癌、精上皮腫、胚的細胞癌、未分化神経膠腫;多形神経膠芽腫、神経芽細胞腫、髄芽細胞腫、悪性髄膜腫、悪性神経鞘腫、神経線維肉腫、副甲状腺癌、甲状腺髄様癌、気管支カルチノイド、褐色細胞腫、膵島細胞癌、悪性カルチノイド、悪性傍神経節腫、黒色腫、メルケル細胞新生物、葉状腫瘍、唾液腺癌、胸腺癌、および膣のがんなどが挙げられる。
【0172】
一部の実施形態では、神経膠芽腫にかかったホストを治療するための方法が提供され、その方法は、ホストに、有効量の、Mer TKIを含む現在説明されている主題の活性化合物を、テモゾロミドと組み合わせて投与することを含む一部の実施形態では、乳癌にかかったホストを治療するための方法が提供され、ホストに、有効量の、Mer TKIを含む現在説明されている主題の活性化合物を、トラスツズマブと組み合わせて投与することを含む。
【0173】
一部の実施形態では、がんはNSCLCである。一部の実施形態では、がんは黒色腫である。一部の実施形態では、がんは乳癌である。一部の実施形態では、がんは神経膠芽腫である。一部の実施形態では、がんは骨癌である。一部の実施形態では、がんは脳癌である。一部の実施形態では、がんは結腸癌である。一部の実施形態では、がんは直腸癌である。一部の実施形態では、がんは子宮内膜癌である。一部の実施形態では、がんは食道癌である。一部の実施形態では、がんは消化管の癌である。一部の実施形態では、がんは腎臓癌である。一部の実施形態では、がんは肝臓癌である。一部の実施形態では、がんは肺癌である。一部の実施形態では、がんはマントル細胞リンパ腫である。一部の実施形態では、がんは卵巣癌である。一部の実施形態では、がんは膵臓癌である。一部の実施形態では、がんは脳下垂体癌である。一部の実施形態では、がんは前立腺癌である。一部の実施形態では、がんは骨格筋癌である。一部の実施形態では、がんは皮膚癌である。一部の実施形態では、がんは胃癌である。一部の実施形態では、がんは甲状腺癌である。一部の実施形態では、がんは神経内分泌癌である。一部の実施形態では、がんは胃食道癌である。一部の実施形態では、がんは腎細胞癌である。一部の実施形態では、がんは頭頸部癌である。
【0174】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、リンパ腫または、リンパ球または骨髄球の増殖性疾患または異常にかかったホストを治療するために有用な方法である。例えば、本明細書に記載のMer TKIは、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫にかかった対象に投与され得る。例えば、対象は、AIDS-関連リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、血管免疫芽細胞性リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、バーキット様リンパ腫(小型非切れ込み核細胞性リンパ腫)、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、腸疾患型T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、脾臓γ-δT細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、鼻型T細胞リンパ腫、小児リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、T細胞白血病、形質転換リンパ腫、治療関連T細胞リンパ腫、またはワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症などであるが、これらに限定されない非ホジキンリンパ腫に罹っている可能性がある。
【0175】
あるいは、対象は、結節性硬化型古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、混合細胞型CHL、リンパ球枯渇型CHL、リンパ球豊富型CHL、リンパ球優位型ホジキンリンパ腫;または結節性リンパ球優位型HLなどであるが、これらに限定されないホジキンリンパ腫に罹っている可能性がある。
【0176】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、特異T細胞、B細胞、またはNK細胞ベースのリンパ腫、増殖性疾患、または異常に罹っているホストを治療するために有用であり得る。例えば、対象は、末梢性T細胞リンパ腫、例えば、末梢性T細胞リンパ腫および他に特に指定されない末梢性T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)、未分化大細胞リンパ腫、例えば、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性、ALK陰性大細胞リンパ腫、または原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、例えば、菌状息肉腫、セザリー症候群、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、原発性皮膚CD30+T細胞リンパ球増殖性疾患、原発性皮膚進行性表皮向性CD8+細胞傷害性T細胞リンパ腫、原発性皮膚γ-δT細胞リンパ腫、原発性皮膚小/中CD4+T細胞リンパ腫、およびリンパ腫様丘疹症、成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)、芽球性NK細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、肝脾γ-δT細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、鼻型NK T細胞リンパ腫、治療関連T細胞リンパ腫、例えば、実質臓器または骨髄移植後に現れるリンパ腫、T細胞性前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、NK細胞の慢性リンパ増進出性疾患、進行性NK細胞白血病、小児性全身性EBV+T細胞リンパ増進出症(慢性活性EBV感染症関連症)、種痘様水疱症様リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、腸症関連T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、または皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫特異T細胞またはNK細胞リンパ腫などであるが、これらに限定されない特異T細胞またはNK細胞リンパ腫に罹っている可能性がある。
【0177】
あるいは、対象は、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜内リンパ組織リンパ腫(MALT)、小細胞リンパ球リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、バーキットリンパ腫、縦隔洞大細胞B細胞リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL)、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出リンパ腫、またはリンパ腫様肉芽腫症、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞性前リンパ球性白血病、ヘアリー細胞白血病、脾リンパ腫/白血病、分類不能、赤脾髄びまん性小B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病-変種、リンパ形質細胞性リンパ腫、重鎖病、例えば、α重鎖病、γ重鎖病、μ重鎖病、プラズマ細胞骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外性プラズマ細胞腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、慢性炎症に関連するDLBCL、老人性エプスタイン・バーウイルス(EBV)+DLBCL、縦隔(胸腺)原発B細胞性大細胞型リンパ腫、原発性皮膚DLBCL、脚型、ALK+大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多発癌由来の大細胞型B細胞リンパ腫、キャッスルマン病、B細胞リンパ腫、分類不能であるが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫の間に位置する特徴を有するもの、B細胞リンパ腫、分類不能であるが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫の間に位置する特徴を有するもの、結節硬化型古典的ホジキンリンパ腫、リンパ球豊富型古典的ホジキンリンパ腫、混合細胞型古典的ホジキンリンパ腫、または白血球枯渇型古典的ホジキンリンパ腫などであるが、これらに限定されない特異B細胞リンパ腫または増殖性疾患に罹っている可能性がある。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、白血病にかかった対象に対して使用され得る。例えば、対象は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(A L)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、ヘアリー細胞性白血病(HCL)、急性前骨髄球性白血病(AMLのサブタイプ)、T細胞前リンパ球性白血病(TPLL)、大顆粒リンパ球性白血病、または成人T細胞性慢性白血病、大顆粒リンパ球性白血病(LGL)などであるが、これらに限定されないリンパ性または骨髄性の、急性または慢性の白血病に罹っている可能性がある。一部の実施形態では、患者は、例えば、未分化型AML(MO)、骨髄芽球性白血病(Ml、最低限の細胞の成熟の有無に関わらず)、骨髄芽球性白血病(M2、細胞の成熟有)、前骨髄球性白血病(M3またはM3変種[M3V])、骨髄単球性白血病(M4またはM4変種で、好酸球増加症を伴うもの[M4E])、単球性白血病(M5)、赤血白血病(M6)、または巨核芽球性白血病(M7)などの急性骨髄性白血病に罹っている。
【0178】
(ii)急性骨髄性白血病
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、急性骨髄性白血病(AML)に罹っているホストを治療するために用いることができる。一部の実施形態では、AMLは、野生型FLT3プロテインを含む。一部の実施形態では、AML細胞の複製は、FLT3の発現に依存する。一部の実施形態では、AMLは、FLT3-ITD変異を含む。一部の実施形態では、AMLは、FLT3-TD変異を含む。一部の実施形態では、AMLは、FLT3-ITD変異とFLT3-TKD変異との両方を含む。
【0179】
FLT3-ITD変異は、当該技術分野で周知のものである。FLT3-TKD変異も、当該技術分野で周知のものである。一部の実施形態では、FLT3阻害剤またはMER/FLT3二重阻害剤が、AMLに罹っているホストに投与され、AMLが、FLT3-TKD内で、アミノ酸F691またはD835での変異を含む。一部の実施形態では、FLT3-TKD変異は、D835H、D835N、D835Y、D835A、D835V、D835V、D835E、I836F、I836L、I836V、I836D、I836H、I836M、およびF691Lから選択される。一部の実施形態では、ホストは、FLT3-TKDのD835Y変異型に罹っている。一部の実施形態では、ホストは、FLT3-TKDのF691L変異型に罹っている。
【0180】
一部の実施形態では、ホストは、急性前骨髄球白血病(AMLのサブタイプ)、最未分化型AML(MO);骨髄芽球性白血病(Ml、最低限の細胞の成熟の有無に関わらず)、骨髄芽球性白血病(M2、細胞の成熟有)、前骨髄球性白血病(M3またはM3変種[M3V])、骨髄単球性白血病(M4またはM4変種で、好酸球増加症を伴うもの[M4E])、単球性白血病(M5)、赤血白血病(M6)、または巨核球白血病(M7)に罹っている。一部の実施形態では、ホストは再発性のまたは過去の治療で難治性のAMLに罹っている。一部の実施形態では、ホストは以前、FLT3阻害剤または他の化学療法薬で治療を受けている。
【0181】
一部の実施形態では、FLT3阻害剤は、FLT3-ITD変異とFLT3-TKD変異との両方を有するAMLに対して有効である。しかも、他のFLT3阻害剤、例えば、AC220に対する抵抗性が確立してしまっている場合にもそうである。
【0182】
一部の実施形態では、ホストは、FLT3の変異を含む急性骨髄性白血病(AML)に罹っており、この変異は、本明細書に記載のFLT3阻害剤以外のFLT3阻害剤に抵抗性をもたらすものである。一部の実施形態では、ホストは、FLT3の変異を含むAMLに罹っており、この変異は、キザルチニブ(AC220)に対する、またはレスタウルチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、タンデュチニブ、ミドスタウリン、アムバチニブ、クレノラニブ、ドビチニブ、ENMD-2076(EntreMed)、もしくはKW-2449(Kyowa Hakko Kirin)、もしくはそれらの組み合わせから選択される他のFLT3阻害剤に対する抵抗性をもたらすものである。
【0183】
(iii)化学療法薬
一部の実施形態では、本明細書に記載の活性化合物またはMer TKIを、化学療法薬と組み合わせて、またはそれと交互に用いる。そのような薬剤としては、タモキシフェン、ミダゾラム、レトロゾール、ボルテゾミブ、アナストロゾール、ゴセレリン、mTOR阻害剤、PI3キナーゼ阻害剤、mTOR-PBK二重阻害剤、MEK阻害剤、RAS阻害剤、ALK阻害剤、HSP阻害剤(例えば、HSP70およびHSP90阻害剤、またはそれらの組み合わせ)が挙げられるが、それらに限定されない。mTOR阻害剤の例としては、ラパミシンおよびその類似体、エベロリムス(アフィニトール)、テムシロリムス、リダフォロリムス、シロリムス、およびデフォロリムスが挙げられるが、それらに限定されない。P13キナーゼ阻害剤の例としては、ウォルトマニン、デメトキシビリジン、ペリフォシン、イデラリシブ、PX-866、IPI-145、BAY80-6946、BEZ235、RP6503、TGR1202(RP5264)、MLN1117(ΓΝΚ1117)、ピクチリシブ、ブパルリシブ、SAR245408(XL147)、SAR245409(XL765)、パロミド529、ZSTK474、PWT33597、RP6530、CUDC-907、およびAEZS-136が挙げられるが、それらに限定されない。MEK阻害剤の例としては、トラメチニブ、セルメチニブ、MEK162、GDC-0973(XL518)、およびPD0325901が挙げられるが、それらに限定されない。RAS阻害剤の例としては、レオライシンおよびsiG12D LODERが挙げられるが、それらに限定されない。ALK阻害剤の例としては、クリゾチニブ、AP261 13、およびLDK378が挙げられるが、それらに限定されない。HSP阻害剤としては、ゲルダナマイシンまたは17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17AAG)、およびラディシコールが挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態では、化学療法薬は、抗プログラム細胞死-1(PD-1)剤、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、BMS936559、ランブロリズマブ、MPDL3280A、ピディリズマブ、AMP-244、およびMED14736である。一部の実施形態では、化学療法薬は、B-RAF阻害剤、例えば、ベムラフェニブまたはソラフェニブである。一部の実施形態では、化学療法薬は、FGFR阻害剤、例えば、AZD4547、ドビチニブ、BGJ398、LY2874455、およびポナチニブであるが、それらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書に記載の活性化合物またはMer TKIを、クリゾチニブと組み合わせて使用する。
【0184】
一部特定の実施形態では、追加的治療薬は、抗炎症剤、化学療法薬、放射線治療用薬剤、追加的治療薬、または免疫抑制剤である。
【0185】
好適な化学療法薬としては、放射性分子、細胞毒または細胞傷害性薬物と呼ばれる毒素であって、細胞の生存にとって有害な任意の薬剤を含むもの、作用剤、およびリポゾーム、または他のベシクル含有化学療法化合物が挙げられるが、それらに限定されない。一般的抗癌医薬品としては、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))またはリポソーム型ビンクリスチン(マルキーボ(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシンまたはセルビジン(登録商標))またはドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))、シタラビン(シトシンアラビノシド、アラ-C、またはシトサール(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(エルスパール(登録商標))またはPEG-L-アスパラギナーゼ(ペグアスパルガーゼまたはオンカスパー(登録商標))、エトポシド(VP-16)、テニポシド(Vumon(登録商標))、6-メルカプトプリン(6-MPまたはピュリネソール(登録商標))、メトトレキサート、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標))、プレドニゾン、デキサメタゾン(デカドロン)、イマチニブ(グリベック(登録商標))、ダサチニブ(スプリセル(登録商標))、ニロチニブ(タシグナ(登録商標))、ボスチニブ(ボシュリフ(登録商標))、およびポナチニブ(アイクルシグ(商標))が挙げられる。更なる好適な化学療法薬の例としては、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシルデカルバジン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アルキル化剤、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、アントラマイシン(AMC))、有糸分裂阻害剤、シス-ジクロロジアミン白金(ΓΓ)(DDP)シスプラチン)、ジアミノ-ジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生物質、抗代謝物、アスパラギナーゼ、BCGライブ(膀胱内)、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、およびベタメタゾン酢酸エステル、ビカルタミド、ブレオマイシンサルフェート、ブスルファン、ロイコボリンカルシウム、カリチアマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BSNU)、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルヒチン、結合型エストロゲン、シクロホスファミド、シクロホスファミド、シタラビン、シタラビン、サイトカラシンB、シトキサン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダクチノマイシン(旧名アクチノマイシン)、ダウノルビシンHC1、ダウノルビシンクエン酸塩、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ドセタキセル、ドラセトロンメシル酸塩、ドキソルビシンHC1、ドロナビノール、E.coli L-アスパラギナーゼ、エメチン、エポエチン-a、エルウィニアL-アスパラギナーゼ、エステル化エストロゲン、エストラジオール、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム、臭化エチジウム、エチニルエストラジオール、エチドロン酸塩、エトポシドシトロボラム因子、リン酸エトポシド、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルコナゾール、フルダラビンリン酸エステル、フルオロウラシル、フィウタミド、葉酸、ゲムシタビンHC1、グルココルチコイド、ゴセレリン酢酸塩、グラミシジンD、グラニセトロンHC1、ヒドロキシ尿素、イダルビシンHC1、イホスファミド、インターフェロンa-2b、イリノテカンHC1、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイプロリド酢酸塩、レバミソールHC1、リドカイン、ロムスチン、マイタンシノイド、メクロレタミンHC1、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、酢酸メゲストロール、メルファランHC1、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メチルテストステロン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクトレオチド酢酸塩、オリゴマイシンA、オンダンセトロンHC1、パクリタキセル、パミドロン酸二ナトリウム、ペントスタチン、ピロカルピンHC1、プリマイシン、カルムスチンインプラントとのポリフェプロザン20、ポルフィマーナトリウム、プロカイン、プロカルバジンHC1、プロプラノロール、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾトシン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テノポシド、テストラクトン、テトラカイン、チオエパクロラムブシル、tモグアニン、チオテパ、トポテカンHC1、トレミフェンクエン酸塩、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、およびビノレルビン酒石酸塩が挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書に記載の活性化合物またはMer TKIは、オリゴマイシンAと組み合わせて使用される。
【0186】
本明細書に開示の化合物と組み合わせて投与され得る追加的治療薬としては、ベバシズマブ、スチニブ、ソラフェニブ、2-メトキシエストラジオールまたは2ME2、フィナスナート、バタラニブ、バンデタニブ、アフリベルセプト、ボロシキシマブ、エタラシズマブ((MEDI-522)、シレンジタイド、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ゲフィチニブ、トラスツズマブ、ドビチニブ、フィグツムマブ、アタシセプト、リツキシマブ、アレムツズマブ、アルデスロイキン、アトリズマブ、トシリズマブ、テムシロリムス、エベロリムス、ルカツムマブ、ダセツズマブ、HLL1、huN901-DMl、アチプリモド、ナタリズマブ、ボルテゾミブ、カーフィルゾミブ、マリゾミブ、タネスピマイシン、メシル酸サキナビル、リトナビル、メシル酸ネルフィナビル、インジナビルサルフェート、ベリノスタット、パノビノスタット、マパツムマブ、レクサツムマブ、デュラネルミン、ABT-737、オブリメルセン、プリチデプシン、タルマピモド、P276-00、エンザスタウリン、チピファルニブ、ペリフォシン、イマチニブ、ダサチニブ、レナリドミド、タリドミド、シムバスタチン、ABT-888、テモゾロミド、エルロチニブ、ラパチニブ、スニチニブ、FTS、AZD6244、BEZ235、およびセレコキシブが挙げられ得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の活性化合物またはMer TKIを、ゲフィチニブと組み合わせて使用する。
【0187】
一部の実施形態では、本明細書に記載のMer(Mer/Tyro3)二重阻害剤を、AMLの治療のために、化学療法薬と組み合わせて使用する。そのような薬剤としては、シタラビン(アラ-C)と、ダウノルビシン、イダルビシン、クラドリビン、フルダラビン、Gleevec(登録商標)(イマチニブ)、Sprycel(登録商標)(ダサチニブ)、アドリアマイシン、三酸化二ヒ素、セルビジン、クラフェン、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびトポテカンが挙げられるが、それらに限定されないアンスラシクリン薬が挙げられ得るが、これらに限定されない。AMLを治療するのに用いられ得る他の化学療法用薬剤の一部としては、エトポシド(VP-16)、6-チオグアニン(6-TG)、ヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標))、コルチコステロイド薬、例えばプレドニゾンまたはデキサメタゾン(Decadron(登録商標))、メトトレキサート(MTX)、6-メルカプトプリン(6-MP)、アザシチジン(Vidaza(登録商標))、およびデシタビン(Dacogen(登録商標))が挙げられる。一部の実施形態では、本明細書に記載のMer二重阻害剤を、追加的阻害剤と組み合わせて用いる。一部の実施形態では、本明細書に記載のMer二重阻害剤を、追加的阻害剤と組み合わせて、AMLに罹っているホストを治療する。本明細書に記載のMer二重阻害剤と組み合わせて用いるための追加的阻害剤としては、レスタウルチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、タンデュチニブ、ミドスタウリン、クレノラニブ、ドビチニブ、ENMD-2076(Entremed)、アムバチニブ、またはKW-2449(Kyowa Hakko Kirin)が挙げられる。
【0188】
一部の実施形態では、本明細書に記載のMer二重阻害剤を、Ras阻害剤と組み合わせて用いる。Ras阻害剤の例としては、レオライシン、FusOn-H2、およびsiG 12D LODERが挙げられるが、それらに限定されない。
【0189】
一部の実施形態では、本明細書に記載のMer二重阻害剤を、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤(PI3K阻害剤)と組み合わせて用いる。現在説明されている主題において使用し得る阻害剤は、周知のものである。阻害剤の例としては、ウォルトマニン、デメトキシビリジン、ペリフォシン、イデラリシブ、ピクチリシブ、パロミド529、ZSTK474、PWT33597、CUDC-907、AEZS-136、PX-866、IPI-145、RP6503、SAR245408(XL147)、デュベリシブ、GS-9820、GDC-0032(2-[4-[2-(2-イソプロピル-5-メチル-l,2,4-トリアゾール-3-イル)-5,6-ドミドロイミダゾ[l,2-d][l,4]ベンゾオキサアゼピン-9-イル]ピラゾール-l-イル]-2-メチルプロパンアミド)、MLN-I 1 17((S)-メチルホスホン酸=(2R)-l-フェノキシ-2-ブタニル=水素;またはメチル(オキソ){[(2R)-l-フェノキシ-2-ブタニル]オキシ}ホスホニウム))、BYL-719((2S)-N1-[4-メチル-5-[2-(2,2,2-トリフルオロ-1,1-ジメチルエチル)-4-ピリジニル]-2-チアゾリル]-1,2-ピロウジンカルボキシアミド)、GSK2126458(2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダ5ドニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド)、TGX-221((±)-7-メチル-2-(モφホルム-4-イル)-9-(l-ヘニランモエチル-ピド[l,2-a]-イリミジン-4-オン))GSK2636771(2-メミル-l-(2-メミル-3-(トリフルオロメミル)ベンジカルボン酸二塩酸塩)、KTN-193((R)-2-((l-(7-メチル-2-モルホリノ-4-オキソ-4H-ピリド[l,2-a]ピリミジン-9-イル)エチイ)アミノ)安息香酸)、TGR-1202/RP5264、GS-9820((S)-1-(4-((2-(2-アミノピリミジン-5-イル)-7-メチル-4-モヒドロキシプロパン-1-オン)、GS-1101(5-フルオロ-3-フェニル-2-([S)]-l-[9H-プリン-6-イルアンモ]-プロピル)-3H-キナゾリン-4-オン)、AMG-319、GSK-2269557、SAR245409(N-(4-(N-(3-((3,5-ジメトキシフェニル)アミノ)キノキサウン-2-イル)スルファモイル)フェニル)-3-メトキシ-4メチルベンズアミド)、BAY80-6946(2-アミノ-N-(7-メモキシ-8-(3-モホリノプロポキシ)-2,3-ジヒドロイイダゾ[l,2-c]キナズ)、AS252424(5-[l-[5-(4-フルオロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-フラン-2-イル]-メタ-(Z)-イリデン]-チアゾリジン-2,4-ジオン)、CZ24832(5-(2-アルニノ-8-フルオロ-[l,2,4]トリアゾロ[l,5-a]ピリジン-6-イル)-N-tert-ブチルピリドメ-3-フルホナブパルリシブ(5-[2,6-ジ(4-モルホルニル)-4-ピリミジニル]-4-(トリフルオロメチル)-2-ピリドマヌネ)、GDC-0941(2-(lH-インダゾール-4-イル)-6-[[4-(メチルスルホニル)-l-ピペラジニル]メチル]-4-(4-モルホルミル)チエノ[3,2-d]ピリミジン)、GDC-0980((S)-l-(4(2-(2-アミノピリルニジン-5-イル)-7-メトl-4-モホルモトルエノ[3,2-d]ピリインジン-6イル)メチル)ピペラジン-l-イル)-2-ヒドロキシプロパン-l-オン(RG7422としても知られている))、SF1126((8S,14S,17S)-14-(カルボキシメチル)-8-(3-グナルドジノプロピル)-17-(ヒドロキシメチル)-3,6,9,12,15-ペンタオキソ-l-(4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-クロメン-2-イル)モルホリノ-4-イウム)-2-オキサ-7,10,13,16-テトラアザオクタデカン-18-エート)、PF-05212384(N-[4-[[4-(ジメチルアミノ)-l-ピペリジニル]カルボニル]フェニル]-N’-[4-(4,6-ジ-4-モルホリニル-l,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]尿素)、LY3023414、BEZ235(2-メチル-2-{4-[3-メチル-2-オキソ-8-(キノリン-3-イル)-2,3-ドミドロ-lH-イミダゾ[4,5-c]クモルム-l-イル]フェニル}プロパネムXL-765(N-(3-(N-(3-(3,5-ジメモキシフェニルアンモ)キノキサリン-2-イル)スルファモイル)フェニル)-3-メトキシ-4-メチルベンズアミド)、およびGSK1059615(5-[[4-(4-ピリジニル)-6-キノリニル]メチレン]-2,4-チアゾリジンジオン)、PX886(酢酸[(3aR,6E,9S,9aR,10R,l laS)-6-[[ビス^ロプ-2-エニル)アンモ]メミリデン]-5-ヒドロキシ-9-(メトキシメルヒル)-9a,l la-ジトリオキソ-2,3,3a,9,10,ll-ヘキサヒドロインデノ[4,5h]イソクロメン-10-イル](ソノリシブとしても知られているもの))、およびWO2014/071109に記載の構造であって、以下の式:
【化6】
を有するものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0190】
一部の実施形態では、本明細書に記載のMer二重阻害剤を、STAT5経路のモジュレータと組み合わせて用いる。ヤヌスキナーゼ2(JAK2)-シグナル伝達兼転写活性化因子5(STAT5)経路を変調させる化合物としては、レスタウルチニブ、ルキソリチニブ、SB1518、CYT387、LY3009104、INC424、LY2784544、BMS-91 1543、NS-018、およびTG101348が挙げられるが、それらに限定されない。
【0191】
一部の実施形態では、本明細書に記載のMer二重阻害剤を、AKT阻害剤と組み合わせて用いるが、そのようなAKT阻害剤としては、MK-2206、GSK690693、ペリフォシン、(KRX-0401)、GDC-0068、トリシリビン、AZD5363、ホノキオール、PF-04691502、およびルテホシンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0192】
(iv)免疫調節性の組み合わせ剤
本明細書に記載の活性化合物で、病気に罹った細胞に直接効果をもたらす投与量で使用されるものは、固体腫瘍に対して追加的または相乗的な効能を発揮するのを期待して、1つ以上の免疫療法用薬剤と組み合わせて用いることができる。一部の実施形態では、腫瘍関連マクロファージMerT阻害量のMer T Jが、免疫調整剤と組み合わせて、またはそれと交互に使用される。一部の実施形態では、ホスト腫瘍生存信号阻害、抗ウイルスまたは抗細菌量のMer T Iが、免疫調整剤と組み合わせて、またはそれと交互に使用される。
【0193】
免疫調整剤は、ホストの免疫系を誘導、増強、または抑制することによって疾患に対処する小分子または生物学的薬剤である。本願においては、ホストの免疫系を誘導または増強させる1つ以上の免疫調整剤が選択される。一部の免疫調整剤は、ホストの免疫系を促進するが、他のものは腫瘍細胞よりよく攻撃できるように、ホストの免疫系を訓練するのを助けるものである。他の免疫調整剤は、がんの成長を助けるタンパク質を標的にする。
【0194】
免疫療法の3つの大まかな分類は、抗体、がんのワクチン、および非特異的免疫療法である。抗体は、典型的には、モノクロナール抗体として投与されるが、これは必須ということではない。「そのままのモノクロナール抗体」は、腫瘍細胞上の抗原に付着することによって作用する。一部の抗体は、身体の免疫系が腫瘍細胞を破壊するのを助けるためのマーカーとして機能する。他のものは、腫瘍細胞のための信号伝達のための物質をブロックする。抗体は、腫瘍の成長を直接的または間接的に容易にする任意の信号伝達または代謝に関わる物質に、結合するように、一般的に使用され得る。例としては、CD52抗原に結合するアレムツズマブ(キャンパス)、およびHER2タンパク質に結合するトラスツズマブ(ヘルセプチン)が挙げられる。
【0195】
一部の実施形態では、その送達または効能を高める他の部位にコンジュゲートされる抗体が使用され得る。例えば、抗体は、細胞毒性を有する薬剤または放射標識に結合され得る。コンジュゲートされた抗体は、時に、「タグ付けされた、標的化された、またはロードされた」ものとして言及される。放射標識化された抗体には、小さな放射性粒子が付着している。例としては、ゼヴァリンがあり、これは、リンパ腫を治療するために使用されるCD20に対する抗体である。化学療法用に標識化される抗体は、細胞毒性を有する剤が付着している抗体である。例としては、アドセトリスがあり、これは、CD30を標的としており、またカドサイラは、HER2を標的とする。オンタックは、抗体ではないが、ジフテリア菌から出る毒素に付着するインターロイキン2であるという点で、抗体と同様の働きをする。
【0196】
現在説明されている主題において用いることができる、免疫療法の別のカテゴリーには、がんのワクチンがある。多くのがんワクチンは、腫瘍の細胞から、腫瘍細胞の一部から、または純粋な抗原から調製される。ワクチンは、免疫反応を高めるのを助けるための免疫賦活剤とともに使用することができる。一例としてはプロベンジがあり、これは、米国FDAによって承認された最初のがんワクチンである。ワクチンは、例えば、樹状細胞ワクチンまたはベクターベースのワクチンであり得る。
【0197】
非特異的な腫瘍に対する免疫療法と免疫賦活剤は、免疫系を刺激して、腫瘍細胞をより良く攻撃させる化合物を含むものである。そのような免疫療法剤には、サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン(主要なものとして用いられるが、βまたはγもあり得る)が挙げられる。そのような薬剤の具体例としては、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IL-12、IL-7、IL-21、CTLA-4を標的とする薬剤(例えば、ヤーボイ、すなわちイピリムマブ)、およびPD-1またはPDL-1を標的とする薬剤(例えば、ニボルマブ(BMS)、ペンブロリズマブ(Merck)、ピディリズマブ(CureTech/Teva)、AMP-244(Amplimmune/GSK)、BMS-936559(BMS)、およびMEDI4736(Roche/Genentech))が挙げられる。
【0198】
免疫系を高める他の薬剤としては、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドミド、カルメットゲラン桿菌、およびイミキモドが挙げられる。MerTK阻害剤と組み合わせて使用できる追加的治療薬としては、二重特異性抗体、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法、および腫瘍浸潤リンパ球が挙げられる。
【0199】
現在説明されている主題の一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物が、少なくとも1つの免疫抑制剤とともに使用され得る。免疫抑制剤は、カルシニューリン阻害薬、例えばシクロスポリンまたはアスコマイシン、例えばシクロスポリンA(NEORAL(登録商標))、FK506(タクロリムス)、ピメクロリムス、mTOR阻害剤、例えばラパマイシンまたはその誘導体、例えばシロリムス(RAPAMUNE(登録商標))、エベロリムス(Certican(登録商標))、テムシロリムス、ゾタロリムス、バイオリムス-7、バイオリムス-9、ラパログ、例えば、リダフォロリムス、アザチオプリン、キャンパス1H、SIP受容体モジュレータ、例えばフィンゴリモドまたはその類似体、抗IL-8抗体、ミコフェノール酸またはその塩、たとえば、ナトリウム塩、またはそのプロドラッグ、例えばミコフェノール酸モフェチル(CELLCEPT(登録商標))、OKT3(ORTHOCLONE OKT3(登録商標))、プレドニゾン、ATGAM(登録商標)、THYMOGLOBULIN(登録商標)、ブレキナルナトリウム、OKT4、T10B9.A-3A、33B3.1、15-デオキシスパガリン、トレスペリムス、レフルノミド ARAVA(登録商標)、CTLAI-Ig、抗-CD25、抗-IL2R、バシリキシマブ(SIMULECT(登録商標))、ダクリズマブ(ZENAPAX(登録商標))、ミゾルビン、メトトレキサート、デキサメタゾン、ISAtx-247、SDZ ASM 981(ピメクロリムス、Elidel(登録商標))、CTLA41g(アバタセプト)、ベラタセプト、LFA31g、エタネルセプト(Enbrel(登録商標)としてImmunex社により販売)、アダリムマブ(Humira(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、抗-LFA-1抗体、ナタリズマブ(Antegren(登録商標))、エンリモマブ、ガビリモマブ、抗胸腺細胞グロブリン、シプリズマブ、アレファセプトエファリズマブ、ペンタサ、メサラジン、アサコール、コデインホスフェート、ベノリレート、フェンブフェン、ナプロシン、ジクロフェナク、エトドラクおよびインドメタシン、アスピリンおよびイブプロフェンからなる群から好ましくは選択される。
【0200】
b.免疫調節剤または免疫賦活剤としての使用
さまざまな実施形態では、本明細書に記載の化合物は、MerTK-誘導による炎症促進性サイトカイン抑制の働きを逆転させる免疫調整剤、例えば、創傷治癒サイトカイン(IL-10およびGAS6)として使用でき、かつ急性炎症性サイトカイン(IL-12およびIL-6)の発現を高める免疫調整剤としても使用できる。このように、アミノピリミジン化合物は、ホストの病気に罹っている組織のエリアの微小環境を、「再正常化」または「再プログラム」して、病気に罹っている細胞を攻撃することができるようにする。免疫刺激活性は、腫瘍、がん、またはその他の新生物に罹っているホストを治療するために治療的に用いることができる。あるいは、感染症、例えば、ウイルス感染症または細菌感染症に罹っているホストを治療するためにも治療的に用いることができる。
【0201】
本明細書に記載の化合物または医薬的に許容される組成物、塩、同位的類似体、もしくはそのプロドラッグの免疫刺激活性を利用して、MERTK-陰性(-/-)腫瘍またはがんの治療に使用することができる。一部の実施形態では、がんは、MERTK-陰性(-/-)乳癌である。
【0202】
したがって、本明細書に記載されている主題の一部として、本明細書に開示の化合物の1つ以上が、その免疫刺激効果ゆえに、化学療法用化合物または放射線といった標準的ケアの、抗悪性新生物効能を高める手段としての補助的療法として使用可能である。
【0203】
本明細書に記載されている主題の一部の実施形態では、本明細書に開示の化合物の1つ以上が、その免疫刺激効果ゆえに、抗ウイルスまたは抗細菌の標準的ケアの療法の効能を高める手段としての補助的療法として使用可能である。
【0204】
例えば、開示された化合物または組成物は、免疫調節有効量で、ホストに投与されて、腫瘍免疫を抑制するために、腫瘍関連マクロファージにおけるMerチロシンキナーゼ活性を阻害する。一部の実施形態では、生来の抗腫瘍免疫を刺激するための免疫調整剤として投与されるMer TKIの投与量は、ホストに直接的抗がん剤として投与されるMer TKIの投与量よりも少なくなっている。一部の実施形態では、Mer TKIは、直接的な細胞毒性効果を示す投与量ではなく、免疫調節の効果を示す投与量で投与される。
【0205】
一部の実施形態では、がんは、MERTK-陰性(-/-)がんである。
【0206】
いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、と考えられている。化学療法薬の投与の結果、腫瘍細胞のアポトーシスがもたらされ、抗原性腫瘍タンパク質が晒されることになる。そこでホストの生来の免疫系が刺激され、化学療法または電離放射線治療後の腫瘍細胞からのアポトーシス性の抗原成分を認識するようになり、免疫応答が稼働するようになる。一部の実施形態では、化学療法薬または電離放射線の投与は、事前、同時、または事後に引き続いてのMer TKI投与を伴うものの、標準的ケアの化学療法プロトコルを用いて実行される。一部の実施形態では、Mer TKIの補助的または相乗的活性のため、標準的ケアの化学療法プロトコルが、ホストに対する毒性を下げるように変更される。
【0207】
一部の実施形態では、腫瘍の治療のための方法が提供され、その方法は、腫瘍そのものの内部での生存信号を阻害することなく、腫瘍関連マクロファージ内でのTK信号伝達を阻害するために有効量のMer TKIを投与することを含む。このようにMer TKIは、通常の腫瘍化学療法中においてマクロファージが有する腫瘍原性耐性を阻害することによって、腫瘍に対する免疫応答を強化するために用いることができる。免疫調節用のMer TKIの投与量は、化学療法の施術前、施術中、または施術後に与えることができ、化学療法の施術中には同時並行で実施しても、断続的に実施してもよい。一部の実施形態では、腫瘍の周囲の微小環境における免疫応答の効率が高まったことで、必要となる化学療法薬の量が、その化学療法薬用に規定されている通常の標準的ケアにおける量よりも少なくなる。一部の実施形態では、化学療法に伴う補助療法の1つのタイプとして、Mer TKIを含む現在説明されている主題の活性化合物の1回あたりの投与量(例えば0.5~150mg/回)が投与される。
【0208】
本明細書に記載されている主題の一部の実施形態では、Mer TKIが、免疫調整剤としてがんに罹っているホストに投与され、腫瘍免疫を抑制するために、腫瘍関連マクロファージ内におけるMerチロシンキナーゼ活性を阻害する。一部の実施形態では、生来の抗腫瘍免疫を刺激するための免疫調整剤として投与されるMer TKIの投与量は、ホストに直接的抗がん剤として投与されるMer TKIの投与量よりも少なくなっている。一部の実施形態では、Mer TKIは、がんに対する直接的な細胞毒性効果を示す投与量ではなく、免疫調節性の効果を示す投与量で投与される。
【0209】
一部の実施形態では、現在説明されている主題の活性化合物の免疫調節効果に関連する1回あたりの投与量は、直接的に、細胞生存信号を阻害する抗腫瘍もしくは細胞毒性効果、または直接的な抗ウイルスもしくは抗細菌効果に関連する投与量と比べて、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍以上少なくなっている。一部の実施形態では、ホスト内で免疫調節性効果を誘発するために用いられる1回あたりの投与量は、約0.5mg~約150mgである。一部の実施形態では、その1回あたりの投与量は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約10mg、約12mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約125mg、約140mg、または約150mgである。
【0210】
c.抗感染症薬としての使用
さまざまな実施形態では、有効量の、開示された化合物または組成物は、生来の免疫系を刺激するための、免疫調整剤として投与され得る。免疫賦活活性は、感染症にかかっているホストを治療するために、治療的に用いられ得る。一部の実施形態では、感染症は、ウイルス感染症である。一部の実施形態では、感染症は、細菌感染症である。一部の実施形態では、有効量の、開示された化合物または組成物は、任意のウイルス関連感染症にかかっているホストを治療するために用いられ得る。ウイルスがウイルスエンベロープホスファチジルセリンを有する場合に、MerTKと複合体を作り、ウイルスの侵入を可能にし、あるいは、感染のプロセスまたは維持において、ウイルスの侵入を、MerTKが容易化する。
【0211】
(i)ウイルス感染症
ウイルスはエンベロープウイルスであっても、非エンベロープウイルスであってもよい。一部の実施形態では、ホストは、例えば、フラビウイルス科のウイルス、例えばフラビウイルス(例えば黄熱病、西ナイル熱、デング熱)、ヘパシウイルス(C型肝炎ウイルス、「HCV」)、ペギウイルスおよびペスチウイルス(ウシウイルス性下痢症ウイルス)、フィロウイルス科ウイルス、例えば、エボラウイルス、トガウイルス科ウイルス、例えばチクングニア熱ウイルス、コロナウイルス、例えばSARS(重症急性呼吸器症候群)およびMERS(中東呼吸器症候群)、オルトミクソウイルス科ウイルス、例えばインフルエンザ、パラミクソウイルス科ウイルス、例えば呼吸器多核体ウイルス(RSV)、はしかおたふくかぜ、ならびにカリシウイルス科ウイルス、例えば、ラ後ウイルス、ベシウイルス、およびサポウイルスおよびノロウイルス(ノーウォーク様ウイルス)、およびレンチウイルス、例えば、HIVから選択されるウイルスに感染しているか、または感染する脅威に曝されている。一部の実施形態では、本明細書に開示の活性化合物が、併用療法用の別の抗ウイルス剤と組み合わせて、またはそれと交互に投与される。
【0212】
より広く言えば、治療をうけるホストは、以下の科のウイルス:ボルナウイルス科、ブニヤウイルス科、コロナウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ニャミウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ポックスウイルス科、レトロウイルス科、ラブドウイルス科、およびトガウイルス科を含むが、これらに限定されない、エンベロープウイルスに感染している可能性がある。ブニヤウイルス科からのウイルスの例としては、ブニヤウイルス、例えばラクロスウイルスおよびハンターンウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。コロナウイルス科からのウイルスの例としては、コロナウイルス、例えばSARSまたはトロウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。フィロウイルス科からのウイルスの例としては、エボラウイルスおよびマールブルク病ウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。フラビウイルス科からのウイルスの例としては、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、例えば、西ナイル熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、および黄熱病ウイルス、ならびにC型肝炎ウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。ヘパドナウイルス科からのウイルスの例としては、B型肝炎ウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。ヘルペスウイルス科からのウイルスの例としては、サイトメガロウイルス、1型および2型単純ヘルペスウイルス1、HHV-6、HHV-7、HHV-8、偽性狂犬病ウイルス、および水痘帯状疱疹ウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。オルトミクソウイルス科からのウイルスの例としては、インフルエンザウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。パラミクソウイルス科からのウイルスの例としては、はしか、メタニューモウイルス、おたふくかぜウイルス、パラインフルエンザ、呼吸系発しんウイルス、センダイウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。ポックスウイルス科からのウイルスの例としては、ポックスウイルス、例えば、天然痘ウイルス、サル痘ウイルス、および伝染性軟属腫ウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、およびヤタポックスウイルス、例えば、タナ痘ウイルスおよびヤナ痘ウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。レトロウイルス科からのウイルスの例としては、コルティウイルス、例えば、CTFVウイルスおよびバンナウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV-1およびHTV-2、マウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ヒトT-細胞白血病ウイルス1および2、ならびにXMRVウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。ラブドウイルス科からのウイルスの例としては、水疱性口内炎ウイルスインディアナ株および狂犬病ウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。トガウイルス科からのウイルスの例としては、風疹ウイルスまたはαウイルス、例えば、チクングニア熱ウイルス、東部馬脳炎ウイルス、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス、または西部ウマ脳炎ウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。
【0213】
一部の実施形態では、ホストは、チクングニア熱ウイルスに感染している。一部の実施形態では、ホストは、エボラウイルスに感染している。一部の実施形態では、本明細書において記載の活性化合物またはMer TKIを、ブリンシドフォビル(CMXOOl)と組み合わせて用いる。
【0214】
一部の実施形態では、ホストは、非エンベロープウイルスに感染しており、その例としては、以下の科:アデノウイルス、アレナウイルス、ビルナウイルス、カリシウイルス、イリドウイルス、オフィオウイルス、パルボウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス、ピコルナウイルス、およびレオウイルスのものが挙げられるが、ただしそれらに限定されない。アデノウイルス科からのウイルスの例としては、アデノウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。アレナウイルス科からのウイルスの例としては、出血熱ウイルス、例えばガナリトウイルス、LCMVウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、およびマチュポウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。イリドウイルス科からのウイルスの例としては、アフリカブタコレラウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。パピローマウイルス科からのウイルスの例としては、パピローマウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。パポバウイルス科からのウイルスの例としては、ポリオーマウイルス、例えば、BKウイルスおよびJCウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。パルボウイルス科からのウイルスの例としては、パルボウイルス、例えば、ヒトボカウイルス、およびアデノ随伴ウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。ピコナウイルス科からのウイルスの例としては、アプトウイルス、カルジオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、腸管系ウイルス、エンテロウイルス、手足口病ウイルス、A型肝炎ウイルス、へパトウイルス、ポリオウイルス、およびライノウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。レオウイルス科からのウイルスの例としては、レオウイルスおよびロタウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。
【0215】
一部の実施形態では、ホストは、アストロウイルス、カリシウイルス(例えばノロウイルスおよびノーウォークウイルス、ただしそれらに限定されない)、およびヘペウイルス(例えばE型肝炎ウイルス、ただしそれらに限定されない)のようなウイルスに感染している。
【0216】
既に説明したように、本明細書に記載の化合物は、ウイルス感染症に罹っているホストに、別の抗ウイルスまたは抗感染症化合物と組み合わせて投与され得る。本明細書に記載の化合物と組み合わせて用いることができる抗ウイルス化合物としては、アバカビル、アシクロビル、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル、アンプリゲン、アルビトル、アタザナビル、バラビル、ボセプレビル、ボセプレビレルテット、シドホビル、ドルテグラビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エピビル、エンフビルチド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、ラミブジン、イオピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサバール、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リルピビリン、リマンタジン、ピリミジン、サキナビル、シメプレビル、ソホスブビル、スタブジン、テラプレビル、テノホビル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、トラポルベド、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、およびジドブジンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0217】
一部の実施形態では、ホストは、ヒト免疫不全ウイルスに感染しており、かつ本明細書に記載の化合物を、抗HIV併用薬、例えば、Atripla(登録商標)、またはエムトリシタビンを含む他の薬剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、ヒト免疫不全ウイルスに感染した患者は、アタザナビル、リトナビル、またはTruvada(登録商標)と、本明細書に記載の化合物との組み合わせを用いて治療され得る。一部の実施形態では、ヒト免疫不全ウイルスに感染した患者は、ドルテグラビル、Truvada(登録商標)と、本明細書に記載の化合物との組み合わせを用いて治療され得る。一部の実施形態では、ヒト免疫不全ウイルスに感染した患者は、ドルテグラビル、Epzicom(登録商標)と、本明細書に記載の化合物との組み合わせを用いて治療され得る。一部の実施形態では、ヒト免疫不全ウイルスに感染したホストは、ラルテグラビルと、Truvada(登録商標)と、本明細書に記載の化合物との組み合わせを用いて治療され得る。一部の実施形態では、ヒト免疫不全ウイルスに感染したホストは、Complera(登録商標)と、本明細書に記載の化合物との組み合わせを用いて治療され得る。当業者ならば、HIVに感染しているホストは、ウイルスの変異パターンに応じて、多くの薬剤の組み合わせを用いて治療され得るということを理解するであろう。患者は、薬剤を適切に、本明細書に記載の化合物と組み合わせを用いて治療され得る。
【0218】
一部の実施形態では、ホストはC型肝炎ウイルスに感染しており、本明細書に記載の活性化合物に加えて、抗C型肝炎薬で治療される。例えば、患者は、Sovaldi(商標)、Harvoni(登録商標)、リバビリンおよび/またはペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物とを組み合わせて治療され得る。一部の実施形態では、ペグ化インターフェロンは、Peglntron(登録商標)である。一部の実施形態では、ペグ化インターフェロンは、Pegasys(登録商標)である。一部の実施形態では、C型肝炎ウイルスに感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、C型肝炎ウイルスに感染したホストが、Harvoni(登録商標)と、リバビリンと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、C型肝炎ウイルスに感染したホストが、Olysio(商標)と、リバビリンと、ペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物との組み合わせを用いて治療される。一部の実施形態では、ペグ化インターフェロンは、Peglntron(登録商標)である。一部の実施形態では、ペグ化インターフェロンは、Pegasys(登録商標)である。一部の実施形態では、ホストはC型肝炎ウイルスに感染しており、本明細書に記載の活性化合物に加えて、ABT-267、ABT-333、およびABT-450/リトナビルの組み合わせで治療される。一部の実施形態では、ホストはC型肝炎ウイルスに感染しており、本明細書に記載の活性化合物に加えて、MK-5172およびMK-8742の組み合わせで治療される。
【0219】
一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型1に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、ペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物との組み合わせを用いて、12週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型1に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、本明細書に記載の化合物とを用いて、12週間にわたって治療され、引き続いて、リバビリンと、ペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、24週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型2に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、12週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型3に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、24週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型3に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、ペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、12週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型4に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、ペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、12週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型4に感染したホストが、Olysio(商標)と、本明細書に記載の化合物との組み合わせを用いて、12週間にわたって治療され、引き続き、リバビリンと、ペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、24~28週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型5に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、ペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、12週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型5に感染したホストが、リバビリンと、ペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、48週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型6に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、ペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、12週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型6に感染したホストが、リバビリンと、ペグ化インターフェロンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、48週間にわたって治療される。
一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型1に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、Olysio(商標)と、リバビリンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、12週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型1に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、24週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型2に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、12週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型3に感染したホストが、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、24週間にわたって治療される。一部の実施形態では、C型肝炎遺伝子型4に感染した患者が、Sovaldi(商標)と、リバビリンと、本明細書に記載の化合物とを用いて、24週間にわたって治療される。
一部の実施形態では、パピローマウイルスに感染したホストが、イミキモドと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、パピローマウイルスに感染したホストが、凍結療法と、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、パピローマウイルスは、ホストから外科的に取り除かれ、ホストは、本明細書に記載の化合物で治療される。一部の実施形態では、ホストは手術の前、間、および後に、本明細書に記載の化合物を受ける。一部の実施形態では、患者は、本明細書に記載の化合物を術後に受ける。
【0220】
一部の実施形態では、2型単純ヘルペスウイルスに感染したホストが、Famvir(登録商標)と、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、1型単純ヘルペスウイルスに感染したホストが、アシクロビルと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、2型単純ヘルペスウイルスに感染したホストが、アシクロビルと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、1型単純ヘルペスウイルスに感染したホストが、Valtrex(登録商標)と、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、2型単純ヘルペスウイルスに感染したホストが、Valtrex(登録商標)と、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、1型単純ヘルペスウイルスに感染したホストが、アシクロビルを用いての治療に先立って7日間にわたって、本明細書に記載の化合物を受ける。一部の実施形態では、2型単純ヘルペスウイルスに感染したホストが、アシクロビルを用いての治療に先立って7日間にわたって、本明細書に記載の化合物を受ける。一部の実施形態では、1型単純ヘルペスウイルスに感染したホストが、Valtrex(登録商標)を用いての治療に先立って、7日間にわたって本明細書に記載の化合物を受ける。一部の実施形態では、2型単純ヘルペスウイルスに感染したホストが、Valtrex(登録商標)を用いての治療に先立って、7日間にわたって本明細書に記載の化合物を受ける。
【0221】
一部の実施形態では、水痘帯状疱疹ウイルスVZVに感染したホストが、アシクロビルと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、水痘帯状疱疹ウイルスVZVに感染したホストが、Valtrex(登録商標)と、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、水痘帯状疱疹ウイルスVZVに感染したホストが、ファムシクロビルと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、水痘帯状疱疹ウイルスVZVに感染したホストが、ホスカルネットと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、水痘帯状疱疹ウイルスVZVに感染したホストが、Zostavax(登録商標)のワクチン接種に先立って、本明細書に記載の化合物を用いて治療される。一部の実施形態では、水痘帯状疱疹ウイルスVZVに感染したホストが、Zostavax(登録商標)のワクチン接種の前後に本明細書に記載の化合物を用いて治療される。
【0222】
一部の実施形態では、インフルエンザウイルスに感染したホストが、Relenza(登録商標)と、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、インフルエンザウイルスに感染したホストが、Tamiflu(登録商標)と、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、ホストはインフルエンザウイルスに感染し、アマンタジンと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、インフルエンザウイルスに感染したホストが、リマンタジンと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。
【0223】
一部の実施形態では、サイトメガロウイルスに感染したホストが、バルガンシクロビルと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、サイトメガロウイルスに感染したホストが、ガンシクロビルと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、サイトメガロウイルスに感染したホストが、ホスカルネットと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、サイトメガロウイルスに感染したホストが、シドホビルと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。
【0224】
一部の実施形態では、B型肝炎ウイルスに感染したホストが、ラミブジンと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、B型肝炎ウイルスに感染したホストが、アデホビルと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。
【0225】
一部の実施形態では、B型肝炎ウイルスに感染したホストが、テノホビルと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。一部の実施形態では、B型肝炎ウイルスに感染したホストが、テルビブジンと、本明細書に記載の化合物とを用いて治療される。
【0226】
(v)細菌感染症
一部の実施形態では、開示された化合物または組成物が、細菌感染症に感染しているホストを治療するための有効量で用いられる。一部の実施形態では、処置を受ける細菌は、例えば、グラム陰性桿菌(Gram-negative bacilli、GNB)、特に大腸菌、グラム陽性球菌(Gram-positive cocci、GPC)、黄色ブドウ球菌、フェカリス菌、または肺炎球菌である。一部の実施形態では、細菌感染症は、例えば、大腸菌、サルモネラ菌、および他の腸内細菌科、シュードモナス、モラクセラ、ヘリコバクター、ステノトロホモナス、デロビブリオ、酢酸バクテリア、レジオネラ菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、緑膿菌、コレラ菌、プロテウス・ミラビリス、エンテロバクター・クロアカ、セラチア・マルセセンス、破傷風菌、ヘリコバクターピロリ菌、ゲルトネル菌、腸チフス菌、シゲラ・フレックスネリ、またはアシネトバクターバウマンニなどであるが、それらに限定されないグラム陰性細菌引き起こされ得る。一部の実施形態では、細菌感染症は、例えば、以下の属:桿菌、リステリア、ブドウ球菌、腸球菌、ラクトバチルス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ペディオコッカス、連鎖状球菌、アセトバクテリウム、クロストリジウム、真正細菌、ヘリオバクテリウム、ヘリオスピリルム、メガスフェラ、ペクチナタス、セレノモナス、ザイモフィラス、スポロムサ、マイコプラズマ、スピロプラズマ、ウレアプラズマ、またはエリシペロスリクスからのグラム陽性種によって引き起こされ得る。
【0227】
一部の実施形態では、細菌感染症は、肝不全に関連する。一部の実施形態では、本明細書に開示の活性化合物は、抗生物質または他の抗微生物薬と組み合わせて、投与される。
【0228】
一部の実施形態では、細菌感染症は、肝不全に関連する。一部の実施形態では、本明細書に開示の活性化合物は、抗生物質または他の抗微生物薬と組み合わせて、投与される。
【0229】
一部の実施形態では、患者は、慢性肝不全の急性増悪(ACLF)に罹っている。一部の実施形態では、患者は、急性肝不全に罹っている。一部の実施形態では、患者は、慢性肝不全に罹っている。一部の実施形態では、肝不全は、アルコール性肝臓病、慢性ウイルス性C型肝炎、慢性ウイルス性B型肝炎、慢性的胆管の詰まり、ウィルソン病、ヘモクロマトーシス、薬物および毒物への曝露、自己免疫性肝炎、嚢胞性線維症、α抗トリプシン欠乏症、肥満、または住血吸虫症から選択される疾病または健康不良状態から引き起こされる。一部の実施形態では、線維症は、肝臓線維症である。
【0230】
一部の実施形態では、本明細書に開示の活性化合物は、細菌感染症の予防または治療のための抗生物質と組み合わせて投与される。抗生物質の例としては、セフォタキシム(Claforan)、オフロキサシン(Floxin)、ノルフロキサシン(Noroxin)、またはトリメトプリムスルファメトキサゾール(Bactrim、Septra)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0231】
d.血小板凝集阻害剤としての使用
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、治療を必要とするホスト内での血餅(血栓)の形成の治療において使用される。一部の実施形態では、ホストは、冠状動脈疾患、末梢血管疾患、または脳血管疾患に罹っている。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物が、血液凝固の潜在力が抑えられていることが望ましい、任意の医療的または外科的処置に先立って、ホストに投与される。一部の実施形態では、本明細書に開示の活性化合物は、別の抗血栓症剤または抗凝固剤と組み合わせて投与される。
【0232】
一部の実施形態では、本明細書に記載の、開示された化合物または組成物が、治療を必要とする対象における血餅(血栓)の形成の治療において使用するために提供され、その治療は、本明細書に記載の活性化合物、またはその医薬的に許容可能な組成物、塩、異方性類似体、またはプロドラッグを投与することを含む。
【0233】
一部の実施形態では、血餅形成の治療は、例えば、冠状動脈疾患、末梢血管疾患、または脳血管疾患に罹っている対象において行われる。または、その治療は、血液凝固の潜在力が抑えられていることが望ましい、他の任意の医療的または外科的処置にも先立って行われる。冠動脈の疾患としては、例えば、冠状動脈の硬化、すなわち冠状動脈の部分的または全体的詰まりから生じる任意の冠状動脈の機能不全(病理)が挙げられる。先の冠動脈の疾患という用語はまた、安定および不安定狭心症(それぞれstable and unstable angina pectoris、SAPおよびUAP)、左心室機能不全(left ventricular dysfunction、LVD)、(うっ血性)心不全(CHF)、心筋性の死といったある範囲の様々な急性および慢性の病理を含む。末梢血管の疾患には、例えば、閉塞性または機能性の末梢動脈疾患(PAD)が挙げられる。閉塞性PADの例としては、末梢動脈閉塞が挙げられ、急性のものであり得る。また、ビュルガー病(塞栓性血栓血管炎)もまた挙げられる。機能性PADの例としては、レイノー病、レイノー現象、および肢端チアノーゼが挙げられる。脳血管疾患としては、例えば、血管の病理過程の結果生じる脳の任意の異常が挙げられる。一部の実施形態では、脳血管疾患は、脳虚血、脳溢血、虚血性脳卒中、出血性卒中、または脳虚血もしくは虚血性脳卒中後の血流の再導入の結果起こる虚血再潅流損傷から選択される。更なる実施形態では、医療的または外科的処置として行われるのは、肺静脈アブレーション術である。
【0234】
一部の実施形態では、血餅の形成に対する治療は、血管内に血栓が生じているホストの体内において行われるが、その原因となる病理または治療は、例えば、心筋梗塞、不安定性狭心症、心房細動、発作、腎損傷、経皮経管冠状動脈形成術、粥状動脈硬化、播種性血管内凝固、敗血症、内毒血症(すなわち、血液の中に、菌体内毒素が存在すること)、肺塞栓症、および深部静脈血栓症が挙げられる。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、人工臓器、シャント、および人工器官(例えば、患者に埋め込まれた人工心臓弁)の表面上に血餅を有するホスト、および冠状動脈内にステントを埋め込まれた患者に投与される。一部の実施形態では、ホストには、何らかの病理の結果としての血餅の形成のため、(例えば、VWF(振動による白い指)の遺伝子の変異、開裂性タンパク質分解酵素、ADAMT13)、有効量の本明細書に記載の化合物が投与される。なお、上記のVWFでは、VWFを小さな添木の板に自発的に括りつけるため、その結果、血管内に微小な血栓が生じ、そこから血栓性血小板減少性紫斑病および他の微小血管障害が生じる。微小血管障害は、非常に細い血管(毛細血管)の壁が非常に厚くしかし弱くなり、出血が生じ、タンパク質が漏出し、血液の流速が落ちるという、血管の疾患である。一部の実施形態では、治療が、溶血性尿毒症症候群に罹っている患者内において行われる。
【0235】
一部の実施形態では、本明細書に開示の活性化合物は、追加的血小板凝集阻害剤と組み合わせて投与される。血小板凝集阻害剤の例としては、アスピリン、チロフィバン(Aggrastat)、アグレノックス、アグリリン、トリフルサル(Disgren)、フローラン、エプチフィバチド(Integrilin)、ジピリダモール(Presantine)、シロスタゾール(Pletal)、アブシキシマブ(ReoPro)、およびテルトロバンが挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態では、Mer TKIと追加的血小板凝集阻害剤とは相乗的に作用する。一部の実施形態では、追加的血小板凝集阻害剤と組み合わせてのMer TKIの使用が、標準的ケアにおける投与量を増やすことなく、抗血栓効果または抗血餅効果を高める。
【0236】
一部の実施形態では、追加的血小板凝集阻害剤は、アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤である。ADP受容体阻害剤の例としては、クロピドグレル(Plavix)、プラスグレル(Effient)、チカグレロール(Brilinta)、チクロピジン(Ticlid)、N6-メチル-2’-デオキシアデノシン-3’,5’-ビスリン酸(MRS2179;PY1阻害剤)、および2-メチルチオアデノシン5’-モノリン酸トリエチルアンモニウム塩(2-Me-SAMP;PY12阻害剤)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0237】
一部の実施形態では、本明細書に開示の活性化合物は、複数種類の血小板凝集阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、本明細書に開示の活性化合物は、N6-メチル-2’-デオキシアデノシン-3’,5’-ビスリン酸と、2-メチルチオアデノシン5’-モノリン酸トリエチルアンモニウム塩と組み合わせて投与される。
【0238】
一部の実施形態では、本明細書に開示の活性化合物は、抗凝血剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、抗凝血剤は、ヘパリン組成物である。一部の実施形態では、ヘパリン組成物は、低分子ヘパリン組成物である。低分子ヘパリン組成物は、当業者には周知のものであり、その例として、チンザパリン、セルトパリン、パマパリン、ナドロパリン、アルデパリン、エノキサパリン、レビパリン、ダルテパリン、およびフラキシパリンが挙げられるが、それらに限定されない。l抗凝血剤の追加的の例としては、ワルファリン(Coumadin)、フラグミン、ヘップ-ロック、ラブノックス、およびミラドンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0239】
e.ナノ粒子組成物または担体としての使用
一部の実施形態では、例えば、送達における利便性追及および/または放出物の送達時間の延長のために、有効量の本明細書に記載の活性化合物が、ナノ粒子内に取り込まれる。ナノスケールでの材料を使用することで、例えば、溶解性、分散性、血液循環に関する寿命の半減期、薬剤放出特性、および免疫原性などの基本的物性を変更することができるようになる。過去20年ほどの間に、多くのナノ粒子をベースとした治療および診断のための薬剤が開発され、癌、糖尿病、疼痛、喘息、アレルギー、および感染症の治療に用いられてきた。これらのナノスケールの薬剤は、より効果的な投与の経路および/またはより利便性の高い投与の経路を提供し、治療におけるより低い毒性を提供し、製品のライフサイクルを延長させ、最終的にはヘルスケアのコストを下げさせる。治療における送達系として、ナノ粒子は、標的化をした送達と、制御されながらの放出を可能にする。
【0240】
また、ナノ粒子をベースにした薬剤の送達を用いると、持続的に一様の速度での薬剤の放出を実現し、それによって、投与の頻度を減らし、しかも薬剤を標的中心に送達できるため、全身的な副作用を最小化し、または、併用療法のために、2種類以上の薬剤を同時に送達して、相乗的な効果を生じて、薬剤抵抗を抑制することができる。今日までに、多くのナノテクノロジーベースの治療用製品が、臨床現場での使用のための認証を受けてきている。こうした製品の中で、リポゾーム製剤とポリマーベースのコンジュゲートが、製品全体の80%以上を占める。Zhang, L.,et al.,Nanoparticles in Medicine:Therapeutic Applications and Developments,Clin.Pharm.and Ther.,83(5):761-769,2008を参照。
【0241】
最適な固体の脂質ナノ粒子(SLN)は、制御された方法によって製造され得るが、その際、α型脂質の断片が作り出されて保存され得る。これを行うことにより、SLN担体が、つまり脂質がα型からβ型に転化するにつれて、薬剤の制御された放出が結果的に行われるという、ビルトインのトリガ機構を有するようになる。薬剤の放出プロファイルは、脂質マトリクスの組成物、界面活性剤の濃度、および製造パラメータにしたがって修正できる。See,Muller,R.H.,et al.,Solid lipid nanoparticles(SLN)for controlled drug delivery-a review of the state of the art,Eur.H.Pharm.Biopharm.,50:161-177,2000を参照。Consienらは、脂質ナノ粒子を形成する新規のアミノ脂質を有する脂質ナノ粒子と、例えば、それらの粒子を、核酸のような生物学的活性化合物の細胞内送達へ使用することを最近開示した。米国特許第8,691,750号(Consienら)を参照。
【0242】
制御された放出については、Kanwarが、アルギン酸を吸着させたキトサンを吸着させたラクトフェランを吸着させたリン酸カルシウムナノ粒子と、ナノ粒子からのラクトフェリンの制御された放出と、を最近開示した。WO2012/145801(Kanwar)を参照。また、Armesらは、ポリマー製のテンプレート化コア-シェル型ナノ粒子であって、系のpHが制御された形で変化したことに応じて、少なくとも1つの活性薬剤を、系内に制御しながら放出するのを容易にするように適合されたナノ粒子を最近開示した。本明細書に参照によって組み込まれている、米国特許第8,580,311号(Armes、S.et al.)を参照。
【0243】
PetrosとDeSimoneは、最近、ナノ粒子設計のデザインの戦略をレビューした。また、同じくPetrosとDeSimoneは、マイクロ粒子およびナノ粒子を生成するための、彼らのPRINT(非湿潤性テンプレートナノ粒子での粒子複製)技術についてレビューを行った。Petros,R.A.and DeSimone,I.M.,Strategies in the design of nanoparticles for therapeutic applications,Nature Reviews/Drug Discovery,vol.9:615-627,2010を参照。重要なことに、PetrosとDeSimoneは、ナノ粒子の製造において、1つのパラメータ(形状または粒径)を、粒子の他のすべての属性とは独立して変更できるということを開示した。PetrosとDeSimoneは、彼らのペーパーを締めくくるにあたり、工学的に製造されるナノ粒子の機能にとって、その中心になることが判明したいくつかの粒子の属性を概説している。これらのパラメータには、粒径、粒子の形状、構造的特徴、および治療薬を放出する能力が含まれる。追加的なナノ粒子製造方法は、米国特許第8,465,775号、同第8,444,899号、同第8,420,124号、同第8,263,129号、同第8,158,728号、および同第8,268,446号にも見出すことができる。なお、これらのすべては参照によって、本明細書に組み込まれる。
【0244】
ナノ粒子は、当該技術分野で既知のさまざまな方法を用いて調製され得る。例えば、ナノ粒子は、ナノ沈殿、フロー中心流体チャネル、噴霧乾燥、1種類および2種類のエマルション溶媒の蒸発、溶媒抽出、相分離、ミル加工、ミクロエマルションを用いる手順、ミクロ製造、ナノ製造、犠牲層、単純式および複雑式のコアセルベート技術、のような方法と、当業者に既知の他の方法のような方法によって形成され得る。代替的にまたは追加的に、単分散の、半導体、導体、磁性、有機、および他のナノ材料の、水性の溶媒または有機溶媒による合成が明らかにされてきた(Pellegrino et al.、2005、Small、1:48;Murray et al.、2000、Ann.Rev.Mat.Sci.、30:545;and Trindade et al.、2001、Chem.Mat.、13:3843)。追加的方法が、文献に記載されている(例えば、Doubrow,Ed.,“Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy,”CRC Press,Boca Raton, 1992;Mathiowitz et al.,1987,J.Control.Release,5:13;Mathiowitz et al.,1987,Reactive Polymers,6:275;and Mathiowitz et al.,1988,J.Appl.Polymer Sci.,35:755;米国特許第5,578,325号および同第6,007,845号;P.Paolicelli et al.,“Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles”Nanomedicine.5(6):843-853(2010)を参照のこと)。
【0245】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、例えば、ポリマー性ナノ粒子のようなナノ粒子に関連する。ナノ粒子は、天然のポリマーを含み得るが、その例としては、キトサン、アルギン酸、デキストラン、ゼラチン、およびアルブミン、ならびに合成ポリマーも含み得る。例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリ(セバシック無水物)、ポリ(e-カプロラクトン)、ポリスチレン、熱応答性(すなわち、NIPAAmおよびCMCTS-g-PDEA)およびpH-応答性(すなわち、Eudragit LI 00、Eudragit SおよびAQOAT AS-MG)ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0246】
一部の実施形態では、ポリマー性粒子は、約0.1nm~約10000nm、約1nm~約1000nm、約10nm~1000nm、約100nm~800nm、約400nm~600nm、または約500nmである。一部の実施形態では、ミクロ粒子は、約0.1nm、0.5nm、1.0nm、5.0nm、10nm、25nm、50nm、75nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nm、1250nm、1500nm、1750nm、または2000nmである。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、ポリスチレン粒子、PLGA粒子、PLA粒子、または他のナノ粒子に共有結合する。
【0247】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、中実のものであっても、中空のものであってもよく、また1つ以上の層を含んでいてよい。一部の実施形態では、各層が独自の組成物と、独自の特性を、他の層(複数可)に対して有する。1つだけ例を挙げると、ナノ粒子は、コア/シェル構造を有し得る。そのコアは一方の層であり(例えば、ポリマー性コア)であり、シェルは第2の層である(例えば、脂質二分子膜または単分子膜)。一部の実施形態では、ナノ粒子は、複数の異なる層を含み得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、1つ以上の層によって取り囲まれ、取り込まれ得る。
【0248】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物を含むナノ粒子は、任意選択的に、1つ以上の脂質を含み得る。一部の実施形態では、ナノ粒子は、リポゾームを含み得る。一部の実施形態では、ナノ粒子は、脂質二分子膜を含み得る。一部の実施形態では、ナノ粒子は、脂質単分子膜を含み得る。一部の実施形態では、ナノ粒子は、ミセルを含み得る。一部の実施形態では、ナノ粒子は、脂質膜(例えば、脂質二分子膜、脂質単分子膜など)で囲まれた、ポリマー性マトリックスを含むコアを含み得る。一部の実施形態では、ナノ粒子は、非ポリマー性コア(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス性粒子、タンパク質、核酸、炭水化物、など)であって、脂質層(例えば、脂質二分子膜、脂質単分子膜、etc.)で囲まれた非ポリマー性コアを含み得る。
【0249】
他の実施形態では、ナノ粒子は、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含み得る。一部の実施形態では、非ポリマー性ナノ粒子は、非ポリマー性構成成分を集めたものであり、例えば金属原子(例えば、金原子)を集めたものである。
【0250】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、任意選択的に1つ以上の両親媒性物質を含み得る。一部の実施形態では、両親媒性物質が、安定性が高まり、均質性が改善され、あるいは粘度が高まったナノ粒子の製造を促進し得る。一部の実施形態では、両親媒性物質は、脂質膜(例えば、脂質二分子膜、脂質単分子膜など)の内部表面に関連づけられ得る。当該技術分野で既知の多くの両親媒性物質が、現在説明されている主題に有用なナノ粒子を製造する際に使用するのに好適である。そのような両親媒性物質としては、ホスホグリセリド、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレイロキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA)、ジオレイルフォスファチジルコリン、コレステロール、コレステロールエステル、ジアシルグリセロール、ジアシルグリセロールスクシナート、ジフォスファチジルグリセロール(DPPG)、ヘキサンデカノール、脂肪族アルコール、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、表面活性化脂肪酸、例えばパルミチン酸またはオレイン酸、脂肪酸、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸アミド、ソルビタントリオレアート(Span(登録商標)85)グリココール酸、ソルビタンモノラウレアート(Span(登録商標)20)、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)、ポリソルベート60(Tween(登録商標)60)、ポリソルベート65(Tween(登録商標)65)、ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)、ポリソルベート85(Tween(登録商標)85)、ポリオキシエチレンモノステアレート、サーファクチン、ポロクサマー;ソルビタン脂肪酸エステル、例えばソルビタントリオレアート、レシチン、リソレシチン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、リン酸ジセチル、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ステアリールアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシル-アミン、パルミチン酸アセチル、リシノール酸グリセロール、ステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール、ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン、ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート、リン脂質、合成および/または天然の洗剤で、高い界面活性特性を有するもの、デオキシコール酸、シクロデキストリン、カオトロピック塩、イオン対化剤、ならびにそれらをくみあわせたものが挙げられるが、それらに限定されない。両親媒性物質の成分は、異なる両親媒性物質の混合物であってもよい。当業者ならば、ここに挙げたものは、界面活性を有する物質の包括的リストではなく、その例を集めたに過ぎないリストであるということを認識するであろう。現在説明されている主題にしたがって用いられるナノ粒子の製造に、任意の両親媒性物質を使用することができる。
【0251】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、任意選択的に1つ以上の炭水化物を含み得る。炭水化物は天然のものまたは合成されたものであり得る。炭水化物は、誘導体化された天然の炭水化物であり得る。特定の実施形態では、炭水化物は、単糖類または二糖類を含み、その例としては、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、リボース、乳糖、蔗糖、麦芽糖、トレハロース、セルビオ、万ノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロナン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、およびノイラミン酸が挙げられるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、炭水化物は、多糖類(例えば、プルラン、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(C)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルスターチ、カラギーナン、グリコン、アミロース、キトサン、N,0-カルボキシルメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、スターチ、キチン質、イヌリン、コンンニャク、グルコマンナン、プスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードラン、およびキサンタンが挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態では、ナノ粒子は、炭水化物、例えば多糖類を含まない(または、特異的に排除している)。特定の実施形態では、炭水化物は、炭水化物誘導体、例えば糖アルコールを含み得るが、例としては、マンニトール、ソルビトール、キシリトールエリスリトール、マルチトール、およびラクチトールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0252】
一部の実施形態では、関連するナノ粒子は、1つ以上のポリマーを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、非メトキシ終端ポリマーである1つ以上のプルロニックポリマーポリマーを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子を構成するポリマーのうち少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%(重量/重量)のポリマーが、非メトキシ終端、プルロニックポリマーである。一部の実施形態では、ナノ粒子を構成するすべてのポリマーが、非メトキシ終端、プルロニックポリマーである。一部の実施形態では、ナノ粒子は、非メトキシ終端ポリマーである1つ以上のポリマーを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子を構成するポリマーのうち少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%(重量/重量)のポリマーが、非メトキシ終端ポリマーである。一部の実施形態では、ナノ粒子を構成するすべてのポリマーが、非メトキシ終端ポリマーである。一部の実施形態では、ナノ粒子が、プルロニックポリマーを含まない1つ以上のポリマーを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子を構成するポリマーのうち少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%(重量/重量)のポリマーが、プルロニックポリマーを含まない。一部の実施形態では、ナノ粒子を構成するすべてのポリマーが、プルロニックポリマーを含まない。一部の実施形態では、上記のようなポリマーは、コーティング層(例えば、リポゾーム、脂質単分子膜、ミセルなど)によって囲まれ得る。一部の実施形態では、さまざまなナノ粒子の要素がポリマーにカップリングされ得る。
【0253】
ポリマーの他の例としては、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えば、ポリ(l,3-ジオキサン-2オン))、ポリ酸無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物))、ポリプロピルフマレート、ポリアミド(例えば、ポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド-co-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(例えば、ポリ((P-ヒドロキシアルカノエート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレア、ポリスチレン、およびポリアミン、ポリリシン、ポリリシン-PEGコポリマー、およびポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)-PEGコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0254】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、米国食品医薬品局(FDA)によってヒトへの使用がこれまでも認められてきた(21 C.F.R.§177.2600)ポリマーを含むが、例としては、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(l,3-ジオキサン-2オン))、ポリ酸無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物))、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、およびポリシアノアクリレートが挙げられるがそれらに限定されない。
【0255】
一部の実施形態では、ポリマーは親水性であり得る。例えば、ポリマーは、アニオン性基(例えば、ホスフェート基、サルフェート基、カルボキシレート基)、カチオン性基(例えば、四級アミン基)、または極性基(例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含み得る。一部の実施形態では、ナノ粒子は、親水性ポリマー性マトリックスが、ナノ粒子内に親水性環境を生成する。一部の実施形態では、ポリマーは、疎水性であり得る。一部の実施形態では、疎水性ポリマー性マトリックスを含むナノ粒子が、ナノ粒子内に疎水性環境を生成する。ポリマーが親水性か疎水性かの選択は、ナノ粒子に取り込まれる(例えばカップリングされる)材料の性質に影響を及ぼし得る。
【0256】
一部の実施形態では、ポリマーは、1つ以上の部分および/または官能基で修飾され得る。様々な部分または官能基を、現在説明されている主題にあわせて用いることができる。一部の実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、糖質、および/または多糖類由来の非環式のポリアセタールによって修飾され得る(Papisov、2001、ACS Symposium Series、786:301)。一部特定の実施形態は、Grefらへの、米国特許第5,543,158号またはWO2009/051837(Von Andrianら)の一般的教示を用いて実現され得る。
【0257】
一部の実施形態では、ポリマーは、脂質または脂肪酸基で修飾され得る。一部の実施形態では、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸のうちの1つ以上であり得る。一部の実施形態では、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、αリノール酸、γリノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸のうちの1つ以上であり得る
【0258】
一部の実施形態では、ポリマーは、1つ以上のアクリルポリマーであり得る。特定の実施形態では、アクリルポリマーとしては、例えば、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリシアノアクリレート、および前述のポリマーのうちの1つ以上を含む組み合わせが挙げられる。アクリルポリマーは、四級アンモニウム基の含有量が小さいアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの完全重合コポリマーを含み得る。
【0259】
一部の実施形態では、ポリマーはカチオン性ポリマーであり得る。一般的に、カチオン性ポリマーは、縮合可能であり、かつ/または負に帯電した核酸の鎖(例えば、DNA、またはその誘導体)を保護することが可能である。アミン含有ポリマー、例えばポリ(リシン)(Zauner et al.、1998、Adv.Drug Del.Rev.、30:97; and Kabanov et al.、1995、Bioconjugate Chem.、6:7)、ポリエチレンイミン(PEI;Boussif et al.、1995、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、1995、92:7297)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska-Latallo et al.、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、93:4897;Tang et al.、1996、Bioconjugate Chem.、7:703;and Haensler et al.、1993、Bioconjugate Chem.、4:372)は、正に帯電させて、生理学的pHにして、核酸によりイオン対を形成させて、さまざまな細胞株で、遺伝子導入の媒介をさせることもできる。複数の実施形態では、ナノ粒子は、カチオン性ポリマーを含まなくてもよい(あるいは排除していてもよい)。
【0260】
一部の実施形態では、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解性ポリエステルであり得る(Putnam et al.、1999、acromolecules、32:3658;Barrera et al.、1993、J.Am.Chem.Soc、115:11010;Kwon et al.、1989、Macromolecules、22:3250;Lim et al.、1999、J.Am.Chem.Soc、121:5633;and Zhouetal.、1990、Macromolecules、23:3399)。これらのポリエステルの例としては、ポリ(L-ラクチド-co-L-リシン)(Barrera et al.、1993、J.Am.Chem.Soc、115:11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al.、1990、Macromolecules、23:3399)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al.、1999、Macromolecules、32:3658;and Lim et al.、1999、J.Am.Chem.Soc、121:5633);andポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al.、1999、Macromolecules、32:3658;and Lim et al.、1999、J.Am.Chem.Soc、121:5633)が挙げられる。
【0261】
これらのおよび他のポリマーの特性およびそれらの調製方法は、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,123,727号、同第5,804,178号、同第5,770,417号、同第5,736,372号、同第5,716,404号、同第6,095,148号、同第5,837,752号、同第5,902,599号、同第5,696,175号、同第5,514,378号、同第5,512,600号、同第5,399,665号、同第5,019,379号、同第5,010,167号、同第4,806,621号、同第4,638,045号、および同第4,946,929号を参照のこと。また、Wang et al.、2001、J.Am.Chem.Soc、123:9480;Lim et al.、2001、J.Am.Chem.Soc、123:2460;Langer、2000、Acc.Chem.Res.、33:94;Langer、1999、J.Control.Release、62:7;and Uhrich et al.、1999、Chem.Rev.、99:3181を参照のこと)。より一般的には、ある好適なポリマーを合成するための様々な方法が、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts,Ed.by Goethals,Pergamon Press, 1980;Principles of Polymerization by Odian, John Wiley&Sons, Fourth Edition,2004;Contemporary Polymer Chemistry by Allcock et al.,Prentice-Hall,1981; Deming et al.,1997,Nature,390:386;ならびに米国特許第6,506,577号、同第6,632,922号、同第6,686,446号、および同第6,818,732号に記載されている。
【0262】
ポリマーは、直鎖または分枝鎖ポリマーであり得る。一部の実施形態では、ポリマーは、デンドリマーであり得る。一部の実施形態では、ポリマーは、実質的に互いに架橋結合し得る。一部の実施形態では、ポリマーは、実質的に架橋を含まないことができる。一部の実施形態では、ポリマーは、架橋ステップを経ることなしで、使用され得る。ナノ粒子は、前出のおよびその他のポリマーのうちの任意のものの、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ブレンド、混合物、および/または付加物を含み得るということを更に理解されたい。当業者ならば、ここに挙げたポリマーのリストは、現在説明されている主題にしたがって有用であり得るポリマーの包括的リストではなく、その例を集めたに過ぎないリストであるということを認識するであろう。
【0263】
現在説明されている主題の化合物は、多くの方法のうちの任意のものによって、ナノ粒子にカップリングされ得る。一般に、カップリングは、化合物とナノ粒子との間の結合の結果である。この結合は、その結果として、化合物がナノ粒子の表面に付着すること、および/またはナノ粒子の内部に含有される(カプセル化される)ことをもたらし得る。しかしながら一部の実施形態では、化合物は、ナノ粒子に結合することよりも、ナノ粒子の構造の結果として、ナノ粒子によってカプセル化される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、本明細書において提供されるポリマーを含み、本明細書に記載の化合物は、そのナノ粒子に結合される。本明細書に記載の化合物は、さまざまな方法によって、所望に応じてナノ粒子にカプセル化し得るが、それらの例としては、C.Astete et al.,“Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles”J.Biomater.Sci.Polymer Edn,Vol.17,No.3,pp.247-289(2006);K. Avgoustakis“Pegylated Poly(Lactide) and Poly(Lactide-Co-Glycolide)Nanoparticles:Preparation,Properties and Possible Applications in Drug Delivery”Current Drug Delivery 1:321-333(2004);C.Reis et al.,“Nanoencapsulation I.Methods for preparation of drug-loaded polymeric nanoparticles”Nanomedicine2:8-21(2006);P. Paolicelli et al.,“Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles”Nanomedicine.5(6):843-853(2010)が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書に記載の化合物をカプセル化するために、好適な他の方法を用いることができ、その例としては、Ungerへの、米国特許第6,632,671号(2003年10月14日発行)に開示されている方法が挙げられるが、それらに限られない。
【0264】
特定の実施形態では、ナノ粒子は、ナノ沈殿プロセスまたは噴霧乾燥によって調製される。ナノ粒子を調製する際に用いる条件は、所望のサイズや特性(例えば、疎水性、親水性、外部の形態、「粘着性」、形状など)を有する粒子を生成するために変更され得るナノ粒子を調製するための方法および用いられる条件(例えば、溶媒、温度、濃度、空気の流量など)は、ナノ粒子に結合する材料および/またはポリマーマトリックスの組成物によって変化し得る。上記の方法のいずれかによって調製された粒子が、所望の範囲のサイズを外れていたとしても、その粒子は、例えば篩を用いてサイズ調整可能である。
【0265】
現在説明されている主題の一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物を含むナノ粒子を製造するためにPRINTテクノロジーが用いられる。
【0266】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物を含むリポゾーム系ナノ粒子が本明細書において提供される。一部の実施形態では、制御下で放出するための配合を施した、本明細書に記載の化合物を含む、リポゾーム系ナノ粒子が本明細書において提供される。
【0267】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物を含むポリマー系ナノ粒子が本明細書において提供される。一部の実施形態では、制御下で放出するための配合を施した、本明細書に記載の化合物を含むポリマー系ナノ粒子が本明細書において提供される。
【0268】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、アルブミンと、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、多糖類と、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、金属と、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、金と、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、酸化鉄と、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、ケイ素と、本明細書に記載の化合物とから構成される。
【0269】
ナノ粒子の製造に用いられるポリマーについては、いくつかのレビューが利用可能である。例えば、Soppimath,.S.,et al.,Biodegradable polymeric nanoparticles as drug delivery devices,J.Controlled Release,70:1-20,2001;Agnihotri,S.A.,et al.,Recent advances on chitosan-based micro-and nanoparticle delivery,J.Controlled Release,100(l):5-28,2004;Ganta,S,et al.,A review of stimuli-responsive nanocarriers for drug and gene delivery,J.Controlled Release,126(3):187-204,2008;Danhier,F.et al.,PLGA-based nanoparticles:An overview of biomedical applications,J.Controlled Release,161(2):505-522,2012を参照のこと。
【0270】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、L-グルタミン酸コポリマーと、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、L-アラニンコポリマーと、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、L-リシンコポリマーと、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、L-チロシンコポリマーと、本明細書に記載の化合物とから構成される。他の実施形態では、ナノ粒子は、乳酸-グリコール酸共重合体と、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、メトキシ-PEG-ポリ(D,L-ラクチド)と、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、HPMAコポリマーと、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、ポリシクロデキストランと、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、ポリグルタメートと、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、ポリ(イソ-ヘキシル-シアノアクリレート)と、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、ポリ-L-リシンと、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、PEGと、本明細書に記載の化合物とから構成される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、ポリマーと、本明細書に記載の化合物とを組み合わせたものから作られる。
【0271】
一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、ナノ粒子から、約1~約90日間にわたり放出される。一部の実施形態では、化合物は、約3~28日間にわたり放出される。一部の実施形態では、化合物は、約5~21日間にわたり放出される。
【0272】
2.疾患を治療する方法
一部の実施形態では、対象における、MerおよびTyro3チロシンキナーゼの一方または両方に関連する疾患を治療するための方法が開示され、その方法は、対象に、有効量の少なくとも1つの開示された化合物を投与し、それにより疾患を治療するステップを含む。一部の実施形態では、疾患は、Merチロシンキナーゼに関連する。
【0273】
対象における腫瘍を治療する方法もまた開示され、その方法は、対象に、有効量の開示された化合物または組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、対象は、投与のステップに先立って、腫瘍の治療が必要であると診断されている。更なる実施形態では、方法は、腫瘍の治療が必要な対象を識別するステップを更に含む。
【0274】
一部の実施形態では、腫瘍は、MerTK +/+である。他の実施形態では、腫瘍は、MerTK -/-である。
【0275】
対象における癌を治療する方法もまた開示され、その方法は、対象に、有効量の開示された化合物または組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、対象は、投与のステップに先立って、がんの治療が必要であると診断されている。一部の実施形態では、方法は、がんの治療が必要な対象を識別するステップを更に含む。
【0276】
一部の実施形態では、がんはMerTK +/+である。一部の実施形態では、がんはMerTK -/-である。
【0277】
対象における、患部組織を取り巻く、免疫抑制された微小環境を治療する方法もまた開示され、その方法は、対象に、有効量の開示された化合物または組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、投与のステップに先立って、対象は、免疫抑制された微小環境の治療が必要であると診断されている。一部の実施形態では、方法は、免疫抑制された微小環境の治療が必要な対象を識別するステップを更に含む。
【0278】
対象における、血栓性疾患を治療する方法もまた開示され、その方法は、対象に、有効量の開示された化合物または組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、対象は、投与のステップに先立って、抗血栓療法が必要であると診断されている一部の実施形態では、方法は、抗血栓療法が必要な対象を識別するステップを更に含む。
【0279】
一部の実施形態では、対象は哺乳類である。一部の実施形態では、哺乳類はヒトである。
一部の実施形態では、対象は、投与ステップに先立って、障害の治療が必要であると診断されている。一部の実施形態では、方法は、疾患の治療が必要な対象を識別するステップを更に含む。
【0280】
一部の実施形態では、対象は患部組織を取り巻く、免疫抑制された微小環境の治療が必要であると診断されている。一部の実施形態では、方法は、患部組織を取り巻く、免疫抑制された微小環境の治療が必要な対象を識別するステップを更に含む。
【0281】
一部の実施形態では、有効量は、治療的有効量である。一部の実施形態では、有効量は、予防的有効量である
【0282】
一部の実施形態では、疾患は、がん、感染症、線維症、血栓性疾患、または凝固障害である。
【0283】
一部の実施形態では、疾患は、感染症である。一部の実施形態では、感染症は、細菌感染症である。一部の実施形態では、感染症は、ウイルス感染症である。更なる実施形態では、ウイルス感染症は、ウイルスエンベロープホスファチジルセリンを有する。
【0284】
一部の実施形態では、疾患は、患部組織を取り巻く、免疫抑制された微小環境に関連する。
【0285】
一部の実施形態では、疾患は、制御不能の細胞増殖の疾患である。一部の実施形態では、制御不能の細胞増殖の疾患は、がんである。一部の実施形態では、がんは、乳癌、子宮頚癌、消化器癌、結腸直腸癌、脳癌、皮膚癌、前立腺癌、卵巣癌、甲状腺癌、精巣癌、膵臓癌、子宮内膜癌、黒色腫、神経膠腫、白血病、リンパ腫、慢性骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、および形質細胞腫瘍(骨髄腫)から選択される。更なる実施形態では、がんは、MerTK +/+である。一部の実施形態では、がんはMerTK -/-である。
【0286】
一部の実施形態では、疾患は、血栓性疾患または凝固障害である。血栓性疾患の例としては、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、および心臓発作が挙げられるが、それらに限定されない。
【0287】
一部の実施形態では、疾患は、肝臓疾患である。肝臓疾患の例としては、アルコール関連肝臓疾患、硬変、非アルコール性脂肪肝、肝炎、ヘモクロマトーシス、および原発性胆汁性肝硬変が挙げられるが、それらに限定されない。
【0288】
一部の実施形態では、疾患は、Merおよび/またはTyro3チロシンキナーゼ機能障害に関連する。更なる実施形態では、疾患は、Merチロシンキナーゼに関連する。更なる実施形態では、疾患は、Tyro3に関連する。
【0289】
3.感染症を治療する方法
一部の実施形態では、対象において感染症を治療するための方法が開示され、その方法は、対象に、有効量の少なくとも1つの開示された化合物、またはその医薬的に許容される塩を投与し、それにより感染症を治療するステップを含む。
【0290】
一部の実施形態では、感染症は、ウイルス感染症または細菌感染症である。一部の実施形態では、感染症は、細菌感染症である。一部の実施形態では、感染症は、ウイルス感染症である。更なる実施形態では、ウイルス感染症は、ウイルスエンベロープホスファチジルセリンを有する。
【0291】
一部の実施形態では、対象は哺乳類である。一部の実施形態では、哺乳類はヒトである。
【0292】
一部の実施形態では、対象は、投与のステップに先立って、感染症の治療が必要であると診断されている。一部の実施形態では、方法は、感染症の治療が必要な対象を識別するステップを更に含む。
【0293】
一部の実施形態では、方法は、有効量の抗ウイルス薬を、対象に投与することを更に含む。
【0294】
一部の実施形態では、有効量は、治療的有効量である。一部の実施形態では、有効量は、予防的有効量である。
【0295】
一部の実施形態では、感染症は、Mer、Tyro3、およびAxlチロシンキナーゼ機能障害のうちのいずれか1つ以上に関連する。一部の実施形態では、感染症は、Tyro3および/またはMerチロシンキナーゼ機能障害に関連する。一部の実施形態では、感染症は、Merチロシンキナーゼ機能障害に関連する。一部の実施形態では、感染症は、Tyro3チロシンキナーゼ機能障害に関連する。
【0296】
4.少なくとも1つの細胞で、TAMチロシンキナーゼを阻害する方法
一部の実施形態では、少なくとも1つの細胞内で、TAMチロシンキナーゼ(MerおよびTyro3の両方を含む)を阻害するための方法が開示され、その方法は、少なくとも1つの細胞を、有効量の少なくとも1つの開示された化合物に接触させて、感染症を治療するステップを含む。
【0297】
一部の実施形態では、細胞は、哺乳類の細胞である。一部の実施形態では、細胞は、ヒトの細胞である。一部の実施形態では、細胞は、接触するステップに先立って、哺乳類から単離されている。
【0298】
一部の実施形態では、接触は、哺乳類への投与を介して行われる。一部の実施形態では、哺乳類は、投与するステップに先立って、TAMチロシンキナーゼの阻害を行うことが必要であると診断された。一部の実施形態では、哺乳類は、投与するステップに先立って、TAMチロシンキナーゼの機能不全に関連する疾患の治療が必要であると診断された。
【0299】
一部の実施形態では、MerおよびTyro3チロシンキナーゼの二重阻害は、がんを治療することに関連する。更なる実施形態では、Merチロシンキナーゼを阻害することは、がんを治療することに関連する。
【0300】
一部の実施形態では、化合物は、MerおよびTyro3チロシンキナーゼの二重阻害性を示し、IC50が、約30μM未満、約25μM未満、約20μM未満、約15μM未満、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約0.5μM未満である。
【0301】
5.薬品の製造
一部の実施形態では、本明細書に記載されている主題は、対象における疾患を治療するための薬品の製造のための方法に関し、その方法は、有効量の開示された化合物、または開示された方法による製品を、医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることを含む。
【0302】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている主題は、対象における感染症を治療するための薬品の製造のための方法に関し、その方法は、有効量の開示された化合物、または開示された方法による製品を、医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることを含む。
これらの適用について、本方法は、1つ以上のMerおよびTyro3チロシンキナーゼの二重阻害に効果的な、治療有効量の化合物を、動物、特に哺乳類、より具体的にはヒトに投与することを含む。現在説明されている主題の文脈における、動物、特にヒトに投与される1回あたりの投与量は、合理的な時間の枠内で、その動物の内部で治療的な反応に影響を及ぼすのに十分なものである必要がある。当業者ならば、投与すべき全体量は、その動物の健康状態およびその動物の体重を含む、様々な要因によって変化するということを認識するであろう。
【0303】
典型的な治療において投与される、本開示の化合物の総量は、マウスの場合には体重を基準にして、好ましくは約10mg/kg~約1000mg/kgであり、ヒトの場合には、1日あたりの投与量では、体重を基準にして、約100mg/kg~約500mg/kg、より好ましくは、200mg/kg~約400mg/kgである。この総量は、必ずしもそうである必要はないが、典型的には、より少ない1回あたりの投与量の一連の投与として、1日あたり約1回~約3回で、約24か月にわたって投与され、好ましくは1日あたり2回で、約12か月にわたって投与され得る。
【0304】
1回あたりの投与量は、投与の経路、タイミング、および投与の頻度によって、更に、本化合物の投与と、所望の生理学的効果とに伴い得る、何らかの副作用の存在、性質、および度合いによっても決定されるであろう。当業者であれば、さまざまな状態または疾病の状態、特に、慢性的な状態または疾病状態は、複数回の投与を伴う、延長された処置を必要とし得るということを理解するであろう。
【0305】
このように、一部の実施形態では、本明細書に記載されている主題は、薬品の製造法に関し、開示された化合物、または開示された製造方法の製品、またはそれらの医薬的に許容される塩、溶媒和化合物、もしくは多形体を、医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることを含む。
【0306】
6.キット
特定の実施形態では、本明細書に記載されている主題は、a)式Iの化合物を含む第一の医薬組成物と、b)取扱説明書と、を含む、Merおよび/またはTyro3チロシンキナーゼにより媒介される状態を治療するためのキットを対象とする。
【0307】
一部の実施形態では、少なくとも1つの化合物と少なくとも1つの薬品は、一緒に調剤される。一部の実施形態では、少なくとも1つの化合物と少なくとも1つの薬品は、同一のパッケージに包装される。
【0308】
キットはまた、他の構成要素と同一のパッケージに包装され、一緒に調剤され、かつ/または一緒に送達される化合物および/もしくは製品を含む。例えば、薬品の製造業者、薬品の再販業者、医師、調剤薬局、または薬剤師は、開示された化合物および/または製品と、他の構成要素を含むキットを、患者に送達するために提供することができる。
【0309】
開示されたキットは、開示された化合物、製品、および医薬組成物から調製され得るということを理解されたい。なお、開示されたキットは、開示された使用の方法と関連させて用いることができるということも理解されたい。
【0310】
本明細書に引用されたすべての出版物および特許出願書は、いかなるそしてすべての目的のために、参照によって、あたかも個別の出版物または特許出願書の各々が、具体的にかつ個別に、参照により組み込まれると示されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。万一、本開示と、参照により本明細書に組み込まれたいずれかの出版物および特許出願書との間に不一致が見られる場合には、本開示が優先される。本明細書のいかなる記述も、上記の出版物が、先行して発見されたことをもって、ここで開示される主題が、上記の出版物に先立つという資格がないと認めたものであるとみなすべきではない。
【0311】
本明細書に開示されている主題は、以下の実施形態を対象とする:
式I:
【化7】
(式中、
UおよびUは、UまたはUのうち一方のみがNであることができるという条件の下、各々独立して、NまたはCXであり、
Xは、HまたはC1~C8アルキルであり、
は、C1~C4アルコキシ、ハロゲン、C1~C8アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、ニトリル、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、-C(O)R10、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から選択され、前記シクロアルキルまたは前記ヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、およびC1~C4アルコキシからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で独立して置換され、
10は、-NH、水素、またはC1~C4アルキルであり、
Gは、-OHまたは-NRであり、
およびRは、各々独立して、水素、C1~C4アルキル、または-C(O)R50であり、
50は、C1~C4アルキルまたは水素であり、
mは0または1であり、
は、水素、C1~C10アルキル、C1~C4ハロアルキルC(O)R20、および-(CHCyからなる群から選択され、
nは、0、1、2、3、または4であり、
Cyは、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、アリール、およびC3~C5ヘテロアリールからなる群から選択され、その各々が、ハロゲン、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、C3~C8シクロアルキル、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で独立して置換され、
20は、C1~C4アルキル、-(CHOR30、および-(CHCyからなる群から選択され、
qは、0、1、2、3、または4であり、
wは、0、1、2、3、または4であり、
30は、水素またはC1~C8アルキルであり、
Cyは、C3~C8シクロアルキル、C2~C7ヘテロシクロアルキル、アリール、およびC3~C5ヘテロアリールからなる群から選択され、その各々が、ハロゲン、-NH、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C1~C4アルコキシ、-C(O)-(C1~C4アルキル)、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4アルキルアミノ、および(C1~C4)(C1~C4)ジアルキルアミノからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で、独立して置換される)化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【0312】
2.mは1である、実施形態1に記載の化合物。
【0313】
3.Gは-OHである、実施形態1または2に記載の化合物。
【0314】
4.UはNであり、かつUは、CHである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の化合物。
【0315】
5.UはCHであり、かつUは、CHである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の化合物。
【0316】
6.UはNであり、かつUは、-C-CHである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の化合物。
【0317】
7.Rは、メトキシ、クロロ、メチル、エチル、シクロプロピル、-C(O)NH、ジフルオロエチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、およびトリフルオロメチルからなる群から選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物
【0318】
8.Rは、クロロまたはトリフルオロメチルである、実施形態7に記載の化合物。
【0319】
9.Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、およびネオペンチルからなる群から選択される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の化合物。
【0320】
10.Rは、-C(O)R20であり、R20は、-(CHOR30であり、qは0であり、かつR30は、C1~C4アルキルである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の化合物。
【0321】
11.Rは、-C(O)R20であり、R20は、-(CHCyであり、wは0であり、Cyは、その各々が、C1~C4アルキルから独立して選択される、0、1、2、または3個の基で、独立して置換される、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の化合物。
【0322】
12.Rは、-(CHCyであり、nは、0または1であり、Cyは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、スピロ[3.3]ヘプチル、シクロヘプチル、フェニル、オキセタニル、イソオキサゾリル、ピペリジニル、およびテトラヒドロピラニルからなる群から選択され、その各々が、メチル、フルオロ、シクロプロピル、クロロ、n-プロピル、およびイソプロピルからなる群から独立して選択される、0、1、2、または3個の基で、独立して置換される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の化合物。
【0323】
13.Cyは、シクロペンチルである、実施形態12に記載の化合物。
【0324】
14.Gは、-NRである、実施形態1または2に記載の化合物。
【0325】
15.Gは、-NH、-NHCH、-N(CH、または-NHC(O)CHである、実施形態14に記載の化合物。
【0326】
16.UはNであり、かつUは、CHである、実施形態15に記載の化合物。
【0327】
17.Rは、メトキシである、実施形態16に記載の化合物。
【0328】
18.Rは、水素または-C(O)R20であり、R20は、-(CHCyであり、wは0であり、かつCyは、シクロペンチルである、実施形態17に記載の化合物。
【0329】
19.「a」および「b」と印をつけられた炭素上の置換基は、トランス配置のものである、実施形態1~18のいずれか1つに記載の化合物。
【0330】
20.化合物は、表1から選択される、実施形態1に記載の化合物。
【0331】
21.治療有効量の、実施形態1~20のいずれか1つに記載の化合物と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0332】
22.対象に、有効量の実施形態1~20のいずれか1つに記載の化合物を投与するステップを含む、Merおよび/またはTyro3チロシンキナーゼに関連する疾患を治療するための方法。
【0333】
23.疾患が、がん、感染症、線維症、血栓性疾患、凝固障害、または患部組織を取り巻く、免疫抑制された微小環境に関連する疾患である、実施形態22に記載の方法。
【実施例
【0334】
以下に調製および実施例を提供し、当業者がより明確に現在説明されている主題について理解し、実践できるようにする。これらの調製および実施例は、本明細書に記載されている主題の範囲を制限するものとしてみなされるべきではなく、むしろ、例示的なものとして、および代表的なものとして、みなされるべきである。
【0335】
1.一般的な実験方法
すべての溶媒は、Sigma-Aldrich社(無水グレード)、VWR International社、またはFisher Scientific社から購入した。すべての非水性反応は、直火で乾燥またはオーブンで乾燥させた丸底フラスコ内にて、窒素またはアルゴン雰囲気下で行われた。反応温度は、熱電対式温度計と、アナログ式のホットプレート攪拌器を用いて制御した。反応は、特にことわらない限り、室温(r.t.:およそ23℃)で行われた。分析薄膜クロマトグラフィ(thin-layer chromatography、TLC)を、E.Merckシリカゲル60 F254プレート上で実施し、UV、モリブデン酸セリウムアンモニウム、過マンガン酸カリウム、およびアニスアルデヒドステインを用いて可視化した。収率は、単離された時点の、分光学的に純粋な化合物として報告した。
【0336】
H NMRスペクトルを、Varian 400MHz分光計で記録し、重水素化溶媒のシグナルを基準として記録した。H NMRスペクトルのデータは、以下のようにして報告する。化学的シフト(δ ppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、dd=ダブルダブレット、dt=ダブルトリプレット、q=カルテット、m=マルチプレット、br=ブロード、app=アパレント)、カップリング定数(Hz)、および積分値。LC/MSを、Agilent Technologies 6110四重極機器で実行し、記録した。
【0337】
マイクロ流体キャピラリー電気泳動(MCE)アッセイを、参照により、その全体が本明細書に組み込まれるZhang et al.(J Med Chem2013.56(23)、9683-9692)に規定されている手順にしたがって実施した。活性アッセイを、384ウェルの、ポリプロピレン製マイクロプレート内で、最終体積50μLの50mMのHepes中で実施した。Phは、7.4で、10mMのMgClと、1.0mMのDTTと、0.01%のTritonX-100と、0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)とを含有し、1.0μMの蛍光基質を含み、各酵素に対して、ATP濃度をKm値とした。すべての反応は、70mMのEDTAを20μL添加することによって終了させた。180分間のインキュベーション後、リン酸化基質ペプチドおよび非リン酸化基質ペプチドを、1xCR-8を補充した緩衝液中で、12-シッパーチップを取り付けたLabChip EZ Reader上で分離させた。データは、EZ Readerソフトウェアを用いて分析した。 MCEアッセイのためのアッセイ条件は、下記表1Aに示されている。
【0338】
【表1】
【0339】
2.化学実験
実施例1
トランス-4-((5-(1-(シクロペンチルメチル)ピペリジン-4-イル)-2-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール
【化8】
【0340】
イソプロパノール(20mL)中の、5-ブロモ-4-クロロピリミジン-2-アミン(1.0g、4.80mmol)とトランス-4-アミノシクロヘキサノール(608mg、5.28mmol)との混合液に、KCO(1.33g、9.60mmol)を添加した。反応混合液を、還流下で18時間攪拌してから、減圧下で濃縮した。残渣を、あらかじめパックされているシリカゲル使い捨てカラムを用いて、カラムクロマトグラフィによって精製し、所望の生成物である、トランス-4-((2-アミノ-5-ブロモピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサノール(1.0g、73%)を、白色の固体として得た。
【0341】
4-ジオキサン(30mL)中の、トランス-4-((2-アミノ-5-ブロモピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサノール(1.0g、3.48mmol)と、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボン酸tert-ブチル(1.18g、3.83mmol)との溶液に、水(10.0mL)中のKCO(1.44mg、10.4mmol)と、Pd(PPh(201mg、0.17mmol)とを添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で、90℃の温度で8時間にわたって加熱し、水でクエンチし、EtOAcで抽出した(10mLで3回)。有機層をまとめて乾燥させ(NaSO)、濃縮した。残渣を、あらかじめパックされているシリカゲル使い捨てカラムを用いて、カラムクロマトグラフィによって精製し、所望の生成物である、4-(2-アミノ-4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)ピリミジン-5-イル)-5,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボン酸tert-ブチル(1.14mg、84%)を黄色の固体として得た。
【0342】
MeOH(40mL)中の4-(2-アミノ-4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)ピリミジン-5-イル)-5,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボン酸tert-ブチル(1.14g、2.93mmol)の溶液に、Pd/C(171mg、15%)を添加した。反応混合物を、水素雰囲気下、室温で、16時間にわたって攪拌し、その後、セライトのパッドを通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮した。残渣を、あらかじめパックされているシリカゲル使い捨てカラムを用いて、カラムクロマトグラフィによって精製し、所望の生成物である、4-(2-アミノ-4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)ピリミジン-5-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(1.04g、91%)を、白色の固体として得た。
【0343】
1,4-ジオキサン/tBuOH(5:1,18mL)中の4-(2-アミノ-4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)ピリミジン-5-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(212mg、541μmol)と、3-ブロモアニソール(132mg、704μmol)との溶液に、BrettPhos(13.1mg、24.4μmol)と、BrettPhosPdG3(22.1mg、24.4μmol)と、炭酸セシウム(318mg、0.98mmol)とを添加した。その後、反応フラスコをシールし、脱気して、3回、窒素を再充填した。続いて反応液を、100℃で16時間にわたって攪拌しながら加熱した。完了したとみなした時点で(TLC)、反応混合物を冷却し、ブライン(60mL)上に注いで、酢酸エチル(30mL×3回)抽出した。有機層をまとめて、無水MgSO4で乾燥させ、濾過して、真空下で濃縮した。対応する残渣を、あらかじめパックされているシリカゲル使い捨てカラムによって精製し、所望の生成物である、4-(4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)-2-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(187mg、69%)を淡黄色の固体として得た。
【0344】
CHCl(10mL)中の、4-(4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)-2-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(103.5mg、0.21mmol)の溶液に、ジオキサン(1.0mL)中の4.0MのHCl溶液を添加した。反応混合物を、室温で1時間にわたって攪拌し、続いて、真空下で濃縮し、トランス-4-((2-((3-メトキシフェニル)アミノ)-5-(ピペリジン-4-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール塩酸塩(90.3mg、quant.)を白色の固体として得た。この化合物を、更に精製することなくそのまま、以下の転換のために用いた。
【0345】
1,2-ジクロロエタン(10mL)中の、トランス-4-((2-((3-メトキシフェニル)アミノ)-5-(ピペリジン-4-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール塩酸塩(45.3mg、0.104mmol)と、トリエチルアミン(14.5μL、0.104mmol)と、シクロペンタンカルバルデヒド(55.4mg、0.209mmol)と、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(48.7mg、0.230mmol)との混合物に、酢酸(8.4μL、0.146mmol)を添加した。反応混合物を25oCで16時間攪拌した。完了したとみなした時点で(TLC)、反応混合物にMeOHを添加し、セライトの短いパッドを通して濾過した。濾液を濃縮し、分取HPLC(10~99% MeCN/水)で精製し、トランス-4-((5-(1-(シクロペンチルメチル)ピペリジン-4-イル)-2-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール(42.0mg、84%)を白色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ 7.52(s,1H),7.34(t,J=8.2Hz,1H),7.14(t,1H),7.03(dd,J=8.2,1.8Hz,1H),6.85(dd,J=8.1,2.4Hz,1H),4.14(t,J=12.0Hz,1H),3.83(s,3H),3.74(d,J=12.4Hz,2H),3.64-3.52(m,1H),3.48(d,J=1.6Hz,1H),3.19(d,J=7.2Hz,2H),3.17-3.07(m,1H),2.95(t,J=12.2Hz,1H),2.41-2.29(m,1H),2.11(d,J=14.2Hz,2H),2.06-1.86(m,7H),1.81-1.62(m,4H),1.57(t,J=12.4Hz,2H),1.45-1.22(m,5H).[M+H]に対するMS(ESI)(C2842 ):m/z計算値480.3;m/z実測値480.3;LC-MS:純度95%超。
【0346】
実施例2
シクロペンチル(4-(4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)-2-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)ピペリジン-1-イル)メタノン
【化9】
【0347】
トランス-4-((2-((3-メトキシフェニル)アミノ)-5-(ピペリジン-4-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール塩酸塩(45.0mg、0.104mmol)と、THF(15mL)中のトリエチルアミン(32μL、0.228mmol)との混合物に、シクロペンタンカルボキシルクロリド(19.2mg、0.145mmol)を、室温で添加した。反応混合物を室温で一晩攪拌し、真空下で濃縮させた。残渣を分取HPLC(10~99% MeCN/水)で精製し、所望の生成物である、シクロペンチル(4-(4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)-2-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)ピペリジン-1-イル)メタノン(25mg、50%)を白色の固体として得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ 7.45(s,1H),7.34(t,J=8.2Hz,1H),7.13(t,J=2.3Hz,1H),7.02(ddd,J=7.9,2.0,0.8Hz,1H),6.84(ddd,J=8.2,2.5,0.8Hz,1H),4.69(d,J=13.3Hz,1H),4.22(d,J=13.8Hz,1H),4.20-4.09(m,1H),3.83(s,3H),3.63-3.53(m,1H),3.23(td,J=13.1,2.0Hz,1H),3.14-3.02(m,1H),2.87(tt,J=12.0,2.9Hz,1H),2.74(td,J=12.7,2.2Hz,1H),2.01(d,J=11.2Hz,4H),1.96-1.81(m,4H),1.81-1.67(m,4H),1.67-1.50(m,4H),1.50-1.23(m,5H).[M+H]に対するMS(ESI)(C2840 ):m/z計算値494.3;m/z実測値494.3;LC-MS:純度95%超。
【0348】
実施例3
トランス-4-((5-(1-シクロペンチルピペリジン-4-イル)-2-((2-メチルピリジン-4-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール
【化10】
【0349】
トランス-4-((2-((2-メチルピリジン-4-イル)アミノ)-5-(ピペリジン-4-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール塩酸塩(43.4mg、0.100mmol)と、トリエチルアミン(19.6μL、0.141mmol)と、シクロペンタノン(20μL、0.221mmol)と、エタノール(3mL)中のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(13.2mg、0.211mmol)との混合物に、酢酸(9.2μL、0.161mmol)を添加した。反応物を40C未満の温度で16時間攪拌した。完了したと見なした時点で(LCMS)、反応混合物をNaHCO水溶液(50mL)上に注ぎ、EtOAcで抽出した(20mL×3回)。酢酸エチル層をまとめてMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮させた。残渣を、自動逆相カラムクロマトグラフィシステム(15.5g、HP C18、HO/ACNグラジエント)によって精製し、トランス-4-((5-(1-シクロペンチルピペリジン-4-イル)-2-((2-メチルピリジン-4-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール(42.5mg、89%)を、白色の固体として得た。化合物を、4NのHCl(22.6μL)で処理し、凍結乾燥させて、塩酸塩を得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ 8.22(d,J=7.0Hz,1H),7.99(d,J=17.2Hz,2H),7.90(s,1H),4.11(td,J=11.2,3.7Hz,1H),3.72(d,J=12.3Hz,2H),3.66-3.50(m,2H),3.20-3.05(m,2H),2.96-2.82(m,1H),2.61(s,3H),2.23(d,J=16.4Hz,2H),2.17-1.99(m,6H),1.90(d,J=24.3Hz,4H),1.74(s,4H),1.61-1.35(m,4H),1.33-1.26(m,1H).[M+H]に対するMS(ESI)(C2639):m/z計算値451.32;m/z実測値451.30.LC-MS:純度95%超。
【0350】
実施例4
シクロペンチル(4-(4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)-2-((2-メトキシピリジン-4-イル)アミノ)ピリミジン-5-イル)ピペリジン-1-イル)メタノン
【化11】
【0351】
DMF(0.39mL)中のシクロペンタンカルボン酸(9.4μL、87μmol)溶液に、HATU(32.9mg、86.6μmol)と、DIPEA(69μL、0.39mmol)とを添加した。混合物を5分間攪拌してから、トランス-4-((2-((2-メトキシピリジン-4-イル)アミノ)-5-(ピペリジン-4-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール三塩酸塩(40.0mg、78.8μmol)を添加した。反応混合物を、室温で3時間攪拌した。溶媒を、減圧下で蒸発させ、残渣を、シリカゲルの使い捨てカラム(ISCO)(CHCl-MeOHグラジエント)を用いて精製し、シクロペンチル(4-(4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)-2-((2-メトキシピリジン-4-イル)アミノ)ピリミジン-5-イル)ピペリジン-1-イル)メタノンジ二塩酸塩(39.4mg、69.4μmol)を、オフホワイト色の固体として得た(収率88%)。H NMR(400MHz,CDOD)δ 8.26(d,J=6.8Hz,1H),7.82-7.73(m,2H),7.58(s,1H),4.68(d,J=13.3Hz,1H),4.28-4.12(m,5H),3.62(td,J=10.1,9.5,5.1Hz,1H),3.33-3.21(m,1H),3.13-3.97(m,2H),2.83-2.73(m,1H),2.10-1.31(m,20H).[M+H]に対するMS(ESI)(C2739 ):m/z計算値495.31;m/z実測値495.30;LC-MS:純度95%超。
【0352】
実施例5
トランス-4-((2-((2-クロロピリジン-4-イル)アミノ)-5-(1-フェニルピペリジン-4-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール
【化12】
【0353】
1,4-ジオキサンとtBuOH(5:1、2mL)とのの混合物中のトランス-4-((2-((2-クロロピリジン-4-イル)アミノ)-5-(ピペリジン-4-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)シクロヘキサン-1-オール(50mg、124μmol)と、ブロモベンゼン(23mg、148μmol)との溶液に、BrettPhos(11.1mg、12.4μmol)と、BrettPhosPdG3(10.1mg、24.4μmol)と、炭酸セシウム(120mg、372μmol)と、を添加した。反応混合物を脱気し(3回)、窒素下、温度90℃で、16時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷やし、ブライン(10mL)でクエンチし、酢酸エチルで抽出した(10mL、3回)。有機層をまとめて、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残渣を、使い捨てのシリカゲルカラム(ISCO)を用いて精製し、所望の生成物である、4-(4-((トランス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)-2-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(36mg、61%)を、白色の固体として得た。H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 8.32(d,J=5.7Hz,1H),8.04(d,J=1.7Hz,1H),7.80-7.75(m,2H),7.67-7.59(m,4H),7.45(dd,J=5.8,1.9Hz,1H),4.22(s,1H),3.89-3.83(m,4H),2.73-2.56(m,1H),2.28-2.17(m,6H),2.09-2.05(m,4H),1.72(d,J=17.5Hz,2H),1.52(d,J=13.6Hz,2H).[M+H]に対するMS(ESI)(C2631ClN):m/z計算値479.22;m/z実測値479.20;LC-MS:純度95%超。
【0354】
表1は、適切な試薬を用い、実施例1~5の手順に則って調製された化合物を記述する。(注:IC50:++++は、10nM未満を意味し、+++は、10~100nMを意味し、++は、100nM~1μMを意味し、+は、1~30μMを意味し、-は、不活性を意味する。)
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0355】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0356】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【0357】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【0358】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【0359】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【0360】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【表36】
【0361】
【表37】
【表38】
【表39】
【表40】
【表41】
【0362】
【表42】
【表43】
【表44】
【表45】
【表46】
【0363】
【表47】
【表48】
【表49】
【表50】
【表51】
【0364】
【表52】
【表53】
【表54】
【表55】
【表56】
【表57】
【0365】
本明細書に記載されている主題の属する分野の当業者であれば、これまでの説明で提示された教示の利益を有する、本明細書に記載されている主題に対する多くの修正形態およびその他の実施形態を想起するであろう。それゆえ、本明細書に記載されている主題は、開示された具体的実施形態に限定されるべきではなく、修正した形態および他の実施形態が、前述の実施形態のリストおよび添付の請求項の範囲内に含まれるように意図されているということを、理解されたい。なお、本明細書において、具体的な用語が用いられているが、それらは一般的で、説明的な意味でのみ用いられており、限定することを目的としては用いられていない。
【国際調査報告】