(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】心臓修復のための不死化心筋幹細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20230119BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230119BHJP
A61K 35/34 20150101ALI20230119BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20230119BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C12N1/00 F
A61P9/00
A61K35/34
C12N5/077
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528334
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 US2020060564
(87)【国際公開番号】W WO2021097329
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522190281
【氏名又は名称】セクレトーム・セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ, ラチャナ
(72)【発明者】
【氏名】カラタナシス, ソティリオス ケー.
(72)【発明者】
【氏名】コーシャル, サンジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ, サディッシュ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065BA06
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BB47
4C087BB64
4C087CA05
4C087NA14
4C087ZA36
(57)【要約】
本開示の実施形態は、小児または新生児個体から得られる、心筋幹細胞を含む、特定の不死化細胞に関連する組成物および使用方法に関する。特定の実施形態では、不死化細胞、または細胞由来の条件培地、またはその部分的もしくは全体的なセクレトームは、有効量でそれを必要とする個体に、単独または心筋幹細胞との組み合わせで提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の不死化新生児CD117+心筋幹細胞由来の条件培地を含む、組成物。
【請求項2】
前記細胞が、以下の特徴:CD90+、CD105+、CD31-、CD34-、CD45-および/またはトリプターゼ陰性のうちの一つ以上、ならびに薬学的に許容し得る担体を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記細胞が、以下の特徴:CD44+、CD47+および/またはCD73+のうちの一つ以上を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞が、以下の特徴:GATA4、CD80-、CD86-および/またはLin-のうちの一つ以上を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
不死化に先立ち、前記新生児CD117+心細胞が、30日齢未満である新生児個体の心臓から単離された、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記単離が、前記細胞を抗体と接触させることを含まない、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記単離が、抗体ベースの選択を使用した細胞濃縮工程を含まない、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞が、限定希釈培養によって単離される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記不死化が、hTERTの外来性発現によって達成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
不死化ヒト新生児CD117+心筋幹細胞を含む、組成物。
【請求項11】
前記細胞が、以下の特徴:CD90+、CD105+、CD31-、CD34-、CD45-および/またはトリプターゼ陰性のうちの一つ以上、ならびに薬学的に許容し得る担体を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞が、以下の特徴:CD44+、CD47+および/またはCD73+のうちの一つ以上を有する、請求項10~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記細胞が、以下の特徴:GATA4、CD80-、CD86-および/またはLin-のうちの一つ以上を有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
不死化に先立ち、前記新生児CD117+心細胞が、30日齢未満であった新生児個体の心臓から単離された、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記単離が、前記細胞を抗体と接触させることを含まない、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記単離が、抗体ベースの選択を使用した細胞濃縮工程を含まない、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞が、限定希釈培養によって単離される、請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記不死化が、hTERTの外来性発現によって達成される、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
心臓の医学的状態のため個体を治療する方法であって、前記個体に治療有効量の、不死化新生児CD117+心筋幹細胞由来の条件培地を含む組成物を提供する工程を含む、方法。
【請求項20】
前記組成物が、請求項1~9のいずれか一項で提供される組成物のいずれか一つから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
心臓の医学的状態のため個体を治療する方法であって、前記個体に治療有効量の、不死化新生児CD117+心筋幹細胞由来の条件培地を含む組成物を、複数の新生児CD117+心筋幹細胞を含む組成物と組み合わせて提供する工程を含む、方法。
【請求項22】
前記条件培地を含む前記組成物が、請求項1~9のいずれか一項で提供される組成物のいずれか一つから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
複数の新生児CD117+心筋幹細胞を含む前記組成物が、請求項10~18のいずれか一項で提供される組成物のいずれか一つから選択される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
それを必要とする対象における心筋組織を修復またはリモデリングする方法であって、前記対象の前記心筋組織を、請求項1~9のいずれか一項で提供される組成物、請求項10~18のいずれか一項で提供される組成物、またはそれらの組み合わせと接触させることを含む、方法。
【請求項25】
新生児心組織からCD117+幹細胞を単離する方法であって、新生児心組織から一つ以上の細胞を単離するか、または単離された一つ以上の細胞を有すること、および増殖を促進するための適当な培養培地において前記一つ以上の細胞を培養することを含み、前記単離が、前記細胞をCD117に結合する部分と接触させることを含まない、方法。
【請求項26】
前記単離が、前記細胞を抗体と接触させることを含まない、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記単離が、前記細胞をCD117抗体と接触させることを含まない、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記単離が、内皮細胞および/または造血細胞に対する陰性選択を必要とせずに、直接クローニングによって達成される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、少なくとも、心臓病学を含む、細胞生物学、分子生物学、および医学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
成人の心疾患は主要な死因であり、先天性心疾患の外科手術技術および術後ICUケアの進歩により、心不全を有する小児が増えている(Go et al.,2014;Go et al.,2014)。心疾患の根本原因の多くを含む、広範な医学的状態に寄与することが知られている重要な生物学的プロセスの二つは、炎症および線維症を含む。何世紀にもわたって、肝臓や皮膚のような他の組織とは対照的に、心臓は再生できない最後まで分化した器官であると考えられていた(Buja 2019において概説されている)。このパラダイムは、成人のヒト心臓の心筋細胞が入れ替わり、年に約1~2%の小さいが検出可能な割合で置き換わることが明らかにされた最近、覆された(Vujic et al 2019において概説されている)。このことが、学者および同様に製薬会社が、様々な心疾患の治療のための心臓再生の基本的なメカニズムを特定し、標的にするという動機を与えた。心臓再生には、1)心筋細胞複製および2)増殖および心筋細胞に分化することができる内在性の心筋幹細胞の存在という、二つの可能性のある機序がある。現在、心筋細胞増殖は、両生類、特定の魚類、および新生児哺乳類などの特定の状況で起こるが、成体の哺乳類における心臓再生に寄与しないことは明らかである。対照的に、常在の心筋幹細胞の移植により、ヒト心筋を修復/再生/リモデリングでき、これにより、駆出率の改善、瘢痕サイズの減少、拡張末期および収縮末期の体積の減少ならびに生活の質およびNYHAクラスの改善により示される心機能の改善をもたらすことが、臨床試験において最近示されている(Garbern et al.,2013)。
【0003】
細胞表面マーカーc-kit(CD117としても知られる)を発現する心筋幹細胞の集団は、ほぼ15年前に説明され、c-kit+細胞の均質で健康な集団は、抗炎症性および抗線維性特性をもたらすことが示されている。心細胞を発現するc-kitの磁気選択によるこれらの細胞の濃縮、続いて心筋梗塞などの心疾患の動物モデルにおける細胞の心臓送達は、心機能の一貫した改善を示した。これらの細胞の早期臨床試験でも同様の有望な結果が観察された。しかし、これらの細胞の継続的な科学的調査により、二つの問題が十分に明らかとなった。第一に、これらのc-kit+心筋幹細胞は、多くの異なる前駆細胞の混合物であり、そのほとんど(約90%)は、造血細胞および内皮細胞であり、心原性幹細胞ではない(Vicinanza et al.2017)。第二に、成人のヒト心臓から得られた心臓c-kit+細胞のほとんどは老化しており、これにより、心臓修復にほとんど寄与せず、またそのような老化細胞によって分泌される様々な炎症性因子を介して心臓損傷にも寄与する可能性もある(Lewis-McDouggal et al.2019)。
【0004】
したがって、損傷を受けた心筋組織によって引き起こされる心不全などの心臓の医学的状態を治療するための組成物および方法、ならびに広範な医学的状態において観察される炎症および線維性プロセスに対処するための組成物および方法のニーズが当該技術分野においてある。本発明は、これらのニーズを満たし、その他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、医学的状態の治療で使用するための、特定のヒト心筋幹細胞(hCSC)、特に、新生児心筋幹細胞(nCSC)、不死化nCSC(Im-nCSC)(例えば、クローン性分離株)、およびIm-nCSCによって産生された条件培地に関連する方法ならびに組成物に関する。特定の実施形態では、医学的状態は、心臓の医学的状態である。任意の炎症性、線維化または心臓の医学的状態は、このような組成物および方法を用いて治療され得るが、特定の実施形態では、状態は、心臓の筋肉(心筋)の修復、再生またはリモデリングから利益を得る心臓の状態である。ある特定の実施形態では、方法および組成物は、nCSCの修復能力、再生能力またはリモデリング能力を促進または強化する。ある特定の実施形態では、医学的状態は、炎症状態または疾患である。さらに特定の実施形態では、炎症態または疾患は、虚血性脳卒中、急性および慢性腎臓病、関節炎状態、皮膚科学的状態およびCOVID-19から選択されるが、これらに限定されない。さらに他の実施形態では、本発明の抗線維化特徴は、慢性線維症によって特徴付けられる創傷治癒および状態を改善することができる。
【0006】
本開示の実施形態は、ヒト、特に、新生児ヒトなどの哺乳類の心筋に由来する不死化細胞に関する方法および組成物を包含する。ある種の特定の実施形態では、細胞は、不死化新生児CD117+心筋幹細胞、特に新生児CD117+心筋幹細胞の不死化クローン性分離株を含む。
【0007】
さらなる実施形態において、本発明の不死化幹細胞は、以下の細胞表面マーカー特徴:CD90
+、CD105
+、CD117
+、CD44
+、CD73
+、CD47
+、CD31
-、CD34
-、CD45
-およびトリプターゼ陰性のうちの一つ以上、二つ以上、三つ以上、四つ以上、または五つ以上を有する(例えば、
図6)。
【0008】
他の実施形態では、本発明の不死化幹細胞は、任意選択的に、殺傷スイッチで可逆的に不死化することができる。
【0009】
一部の実施形態では、不死化心筋幹細胞は、一つ以上の心臓の医学的状態を治療するために個体に提供される。他の実施形態では、不死化心筋幹細胞由来の条件培地は、心臓の医学的状態の治療のため個体に提供される。さらに他の実施形態では、細胞由来のセクレトームは、心臓の医学的状態の治療のために個体に提供される。さらに他の実施形態では、一つ以上の不死化細胞クローン性分離株由来の栄養因子が、心臓の医学的状態の治療のため個体に提供される。ある特定の他の実施形態では、上記の任意の組み合わせは、心臓または他の医学的状態の治療で使用され得る。
【0010】
一部の実施形態では、本開示は、CD117+不死化新生児心筋幹細胞などの、一つ以上の不死化新生児心筋幹細胞(Im-nCSC)由来の条件培地(CM)を含む組成物を提供する。ある種の特定の実施形態では、不死化新生児心筋幹細胞は、不死化クローン性分離株である。他の実施形態では、不死化新生児心筋幹細胞は、以下の特徴CD90+、CD105+、CD117+、CD44+、CD73+、CD47+、CD31-、CD34-、CD45-およびトリプターゼ陰性のうちの一つ以上、二つ以上、三つ以上、四つ以上、または五つ以上を有する。さらに他の実施形態では、不死化新生児心筋幹細胞は、以下の特徴:CD90+、CD105+、CD117+、CD44+、CD73+、CD47+、CD31-、CD34-、CD45-およびトリプターゼ陰性の全てを有する。さらに他の実施形態では、不死化新生児心筋幹細胞は、以下の特徴:GATA4-、CD44+、トリプターゼ陰性、CD80-、CD86-のうちの一つ以上、二つ以上、三つ以上、または四つ以上を有する。さらなる実施形態では、不死化新生児心筋幹細胞は、以下の特徴:GATA4-、CD44+、トリプターゼ陰性、CD80-、CD86-のうちの全てを有する。なおさらなる実施形態では、不死化新生児心筋幹細胞は、以下の特徴:CD117+、CD45-およびLin-のうちの一つ以上、二つ以上、または全てを有する。なおさらなる実施形態では、不死化新生児心筋幹細胞は、以下の特徴:CD117+およびCD45-を有する。
【0011】
本発明の一部の実施形態では、不死化に先立ち、新生児心筋幹細胞は、新生児個体の心臓から(例えば、個体からの生検から)単離される。ある特定の関連する実施形態では、幹細胞は、単一細胞クローニングによって単離される。さらに他の実施形態では、幹細胞は、文献で典型的に行われる任意の細胞選択工程を伴わない単一細胞クローニングによって単離される。一部の実施形態では、細胞がもたらされる個体は、細胞が個体の心臓から得られるとき(例えば、生検が採取されたとき)、30日未満である。一部の実施形態では、単離は、細胞を細胞選択のための抗体と接触させることを含まない。一部の実施形態では、単離は、抗体ベースの選択を使用した細胞濃縮工程を含まない。一部の実施形態では、細胞は、限定希釈培養によって単離される。一部の実施形態では、不死化は、例えば、レンチウイルス発現ベクターなどの、送達ベクターを使用した、ヒトテロメラーゼ(hTERT)遺伝子の外来性発現によって達成される。
【0012】
本発明の他の実施形態では、複数の不死化ヒト新生児心筋幹細胞クローン性分離株を含む組成物が提供される。
【0013】
さらに他の実施形態では、本開示は、個体に治療有効量の、不死化新生児心筋幹細胞由来の条件培地を含む組成物を提供する工程を含む、例えば、本明細書に記載される心臓の医学的状態または他の状態のため、個体を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、組成物は、本明細書で提供される組成物のいずれか一つから選択される。
【0014】
一部の実施形態では、本開示は、個体に治療有効量の、不死化新生児心筋幹細胞由来の条件培地を含む組成物を、不死化新生児心筋幹細胞などの、新生児心筋幹細胞を含む組成物と組み合わせて提供する工程を含む、心臓の医学的状態のため個体を治療する方法を提供する。一部の実施形態では、条件培地を含む組成物は、本明細書で提供される組成物のいずれか一つから選択される。
【0015】
さらに他の実施形態では、本開示は、不死化新生児心筋幹細胞から細胞クローンを単離する方法を提供し、方法は、新生児心組織から一つ以上の細胞を単離するか、または新生児心組織から単離された一つ以上の細胞を有すること、および増殖を促進するための適当な培養培地において一つ以上の細胞を培養することを含む。さらに特定の実施形態では、単離工程は、CD117などの特異的な細胞表面タンパク質に結合する部分と細胞を接触させることを含まない。
【0016】
追加の実施形態では、本開示により不死化された単離された細胞クローン性分離株は、単離されたとき、以下の特徴:GATA4-、CD44+、CD47+ CD31-、CD34-、CD45-、トリプターゼ-、CD80-、CD86-および不死化にこのような発現パターンを維持した不死化細胞のうちの、一つ以上、二つ以上、三つ以上、四つ以上、または五つ以上を有する。
【0017】
さらなる実施形態では、本開示の不死化細胞は、不死化に先立ち、小児または非小児個体を含む、新生児個体の心臓から本来得られる。特定の実施形態では、個体は、心臓の医学的状態を有する。ある特定の実施形態では、個体は、正常な心筋を有する。細胞は、一部の実施形態では、末期の心不全を有する小児個体の心筋由来であってもよい。心筋は、先天性心疾患を有する新生児個体由来であってもよい。
【0018】
他の特定の実施形態では、本開示の不死化細胞は、CD63
+、CD73
+、CD47
+、CD45
-、CD31
-であるエキソソームを分泌する(例えば、
図8)。不死化細胞は、VEGF-A、HGF、SCF、SDF-1α、IGF、PDGF-BおよびANG-1のような血管新生促進ならびに血管新生サイトカインを分泌する(例えば、表1)。
【0019】
さらに他の実施形態では、個体に治療有効量の、例えば、不死化新生児心筋幹細胞、不死化新生児心筋幹細胞による条件培地、不死化新生児心筋幹細胞により分泌されたエキソソームおよび/または任意のその組み合わせを含む、本開示の組成物を提供する工程を含む、本明細書に記載される心臓の医学的状態または任意の他の状態などの、医学的状態のため個体を治療する方法が提供される。より特定の実施形態では、組成物は、不死化新生児心筋幹細胞から分泌されたタンパク質および/またはエキソソームを独立して含む。
【0020】
他の特定の実施形態では、心筋内注射、静脈注射により、カプセル化細胞、例えば、細胞を保持するが、細胞によって産生されたパラクリン因子の循環への分泌を可能にする装置においてなどで、組成物を送達することなど、本発明の組成物を使用して、心臓の医学的状態が治療される。さらに他の特定の実施形態では、心臓の医学的状態は、心不全、心筋症または先天性心疾患である。
【0021】
本発明の追加の実施形態では、本明細書に記載される医学的状態の治療のための、本開示の不死化細胞由来の全条件培地(TCM)および/またはその成分を含む組成物、ならびに治療量でそれを使用する方法が提供される。なおさらなる実施形態では、本明細書に記載される医学的状態の治療のための、本開示の不死化細胞由来のエキソソームおよび/またはその成分を含む組成物、ならびに治療量でそれを使用する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、単一細胞培養を開始するためのnCSCの細胞希釈の例示的方法論を示す。
【0023】
【
図2】
図2は、
図1で説明された方法によって希釈された細胞を用いて開始された96ウェルプレートにおける単一細胞培養の代表的な位相差像を示す。
【0024】
【
図3】
図3は、
図1および2に示される方法を使用して得られた、nCSCの7つのクローン性分離株のフローサイトメトリー分析による表現型特徴決定を示す。
【0025】
【
図4】
図4は、本明細書に開示される方法を介して単離されたnCSCを不死化するために使用されるhTERT遺伝子を担持する例示的なレンチウイルスベクターを示す。
【0026】
【
図5】
図5は、nCSCおよびIm-nCSCの代表的な位相差顕微鏡像を示す。
【0027】
【
図6】
図6は、16継代の単一細胞培養から増殖させたIm-nCSCのフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【0028】
【
図7】
図7は、ラットの心臓における心筋梗塞後の心機能改善を示す。左室駆出率(EF)および短縮率は、心エコーにより分析された。
【0029】
【
図8】
図8は、Im-nCSC由来の総条件培地(Im-nCSC TCM)の特徴決定の結果を示す。
【0030】
【
図9】
図9は、Im-nCSC TCMが、新生児ラット心筋細胞の過酸化水素誘発性アポトーシスから保護することを示す。
【0031】
【
図10】
図10は、Im-nCSC TCMが血管新生を促進することを示す。
【0032】
【
図11】
図11は、Im-nCSC TCMが、細胞遊走およびインビトロ創傷治癒を促進することを示す。
【0033】
【
図12】
図12は、心エコー図によって測定される、静脈内注射によるラット心筋梗塞モデルにおけるnCSCおよびIm-nCSC TCMのインビボ機能活性を示す。
【0034】
【
図13】
図13は、Im-nCSCで観察された代表的な正常核型を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が記載される。本発明の目的のため、以下の用語が以下に定義される。
【0036】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的対象の一つまたは一つより多く(すなわち、少なくとも一つ)を指すために本明細書で使用される。一例として、「要素」は、一つの要素または一つより多くの要素を意味する。
【0037】
用語「および/または」は、別段示されない限り、「および」または「または」のいずれかを意味するために本開示において使用される。
【0038】
用語「例えば(e.g.)」は、「例えば(for example)」を意味するために本明細書で使用され、所定の工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を包含するが、いかなる他の工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を排除しないことを意味することは理解される。
【0039】
「約」とは、参照数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して最大30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%まで変化する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを意味する。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「投与すること」は、化合物、例えば、医薬化合物、または抗原などの他の薬剤などの物質を、対象に伝達、送達、導入、または輸送する任意の様式を指す。投与様式には、経口投与、局所接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、鼻腔内、または皮下投与が含まれる。一つ以上の治療剤などのさらなる物質と「と組み合わせた」投与は、同時(同時)および任意の順序での連続投与を含む。
【0041】
本明細書全体を通して、文脈が別段要求しない限り、語句「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含むこと」は、所定の工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を含むが、いかなる他の工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を排除しないことを意味することは理解される。「からなる」とは、「からなる」という語句に続くものは何でも含み、かつそれらに限定されることを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された構成要素が、要求されるか、または必須であること、ならびに他の構成要素が存在しないことを示す。「本質的にからなる」とは、語句の後に列挙される任意の構成要素、および列挙された構成要素について本開示で特定された活性または作用に干渉も、寄与もしない他の構成要素に限定される任意の構成要素を含むことを意味する。したがって、語句「本質的にからなる」は、列挙された構成要素が、要求されるか、または必須であることが、他の構成要素は、任意であり、列挙された構成要素の活性または作用に実質的に影響するかどうかに応じて、存在してもよいし、存在しなくてもよいことを示す。
【0042】
化合物に関連して使用されるときの「有効量」は、所望の応答を引き出すために必要な化合物の量である。一部の実施形態では、所望の応答は、例えば、対象における生物学的応答である。一部の実施形態では、化合物は、対象における生物学的応答に作用する有効量で対象に投与されてもよい。一部の実施形態では、有効量は、「治療有効量」である。
【0043】
用語「治療有効量」および「治療用量」は、本明細書に記載される対象における疾患または障害を治療するための対象への投与後に有効である、組成物(例えば、本明細書に開示される不死化CSCなどの新生児CSC由来の条件培地)の量を指すために本明細書で互換的に使用される。
【0044】
用語「調節すること」は、典型的には、対照と比較して、統計的に有意な量または生理学的に有意な量で、「増加すること」、「増強すること」または「刺激すること」ならびに「減少すること」または「低減すること」を含む。「増加した」、「刺激された」または「増強した」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、組成物でないもしくは対照組成物、試料または試験対象によって産生される量の1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍以上(例えば、500、1000倍)(全ての整数および間の少数点ならびに1より上、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)である増加を含み得る。「減少した」または「低減した」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、間の全ての整数を含む、組成物でない(薬剤もしくは化合物の不存在)または対照組成物によって産生される量の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少を含み得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」は、本明細書に開示される組成物(例えば、本明細書に開示される不死化hCSCなどの新生児CSC由来の条件培地)で治療することができる、症状を呈するか、または症状を呈するリスクがある任意の動物を含む。適当な対象(患者)は、ヒト患者を含む。適当な対象には、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなど)、家畜(ブタ、ウマ、ウシなど)、および飼育動物またはペット(ネコもしくはイヌなど)も含まれる。非ヒト霊長類(サル、チンパンジー、ヒヒまたはアカゲなど)も含まれる。
【0046】
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ総合的にまたは完全に、例えば、一部の所与の量のうちの95%以上を意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」は、疾患または状態の症状または病理に対する任意の望ましい作用を含み、治療される疾患または状態の一つ以上の測定可能なマーカーの最小限の変化または改善さえも含み得る。「治療」または「治療すること」は、必ずしも疾患もしくは状態、またはその関連する症状の完全な根絶または治癒を示さない。この治療を受ける対象は、それを必要とする任意の対象である。臨床的改善の例示的なマーカーは、当業者に明らかであろう。
【0048】
用語「CD117」および「c-kit」は、両方の名称によって同義的に進む同じタンパク質を参照して、本開示に従って互換的に使用され得る。c-kit/CD117タンパク質、ならびにそれをコードする遺伝子は、広範に特徴付けられており、当該技術分野で周知である(例えば、https://www.uniprot.org/uniprot/P10721およびUNIPROT受託番号P10721)。
【0049】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法、組成物、試薬、細胞を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が本明細書で記載される。本明細書において引用される特許および特許出願を含むが、これらに限定されない、全ての刊行物および参考文献は、それぞれ個々の刊行物または参考文献が、完全に記載されるものとして参照により本明細書に組み込まれることを具体的かつ個別に示されたかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願が優先権を主張する任意の特許出願はまた、刊行物および参考文献について上記された方法で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「心筋幹細胞」は、心組織に由来する細胞として定義されてもよく、クローン形成性、多能性、および自己再生性である。特定の実施形態では、これらの心筋幹細胞は、以下の:CD117、CD90、CD105、CD73、CD44、およびCD47のうちの一つ以上を発現し、以下の:CD31、C34、CD45、およびトリプターゼの一つ以上について陰性である。
【0051】
概要
本開示は、特に、ヒト新生児心筋幹細胞(nCSC)に関する組成物および方法ならびにそれを単離および不死化する方法、ならびにこのような心筋幹細胞の培養物から採取された条件培地、ならびに治療的に、例えば、心組織を修復、再生および/またはリモデリングするため、ならびに炎症および/または線維化プロセスにより引き起こされる医学的状態(例えば、心臓の医学的状態)を治療するために、このような細胞、培地および/または条件培地に再懸濁された細胞を使用する方法を提供する。
【0052】
I.本開示の細胞ならびにその条件培地およびセクレトーム
本開示の実施形態は、それを必要とする個体に治療機能を提供する哺乳類の細胞、または細胞由来の条件培地に関する。特定の実施形態では、細胞は、哺乳類の心臓における治療機能または効果を達成するのに有用な不死化ヒト新生児心筋幹細胞(Im-nCSC)である。一部の実施形態では、細胞は、不死化ヒト新生児心筋幹細胞であるIm-nCSCであり、それらは、哺乳類の心臓において、抗炎症性、抗線維化、血管新生促進であり、および/または治療機能または効果に有用である一つ以上の薬剤を分泌する。特定の実施形態では、細胞は、インビボでの心臓への投与の際に、それ自体の修復能力、再生能力もしくはリモデリング能力の活性を有する、および/またはインビボでの心臓への投与の際に、ヒト心筋の内在性細胞および/もしくは組織の修復能力、再生能力またはリモデリング能力を促進するための活性を有する、不死化ヒト新生児心臓CSCである。特定の実施形態では、細胞は、不死化新生児ヒトCSCであり、それは、抗炎症性、抗線維化、血管新生促進であり、および/またはインビボでの心臓への投与の際に、修復能力、再生能力もしくはリモデリング能力の活性を有し、および/またはインビボでの心臓への投与の際に、ヒト心筋における内在性細胞および/または組織の修復能力、再生能力またはリモデリング能力を促進するための活性を有する一つ以上のタンパク質を分泌する。特定の実施形態では、細胞は、細胞に由来する条件培地の、インビボでの心筋への送達が、内在性細胞および/または組織の修復、再生またはリモデリングを増強するように、バイスタンダー効果を惹起することができる一つ以上のタンパク質を分泌する。
【0053】
特定の実施形態では、不死化ヒト新生児心臓CSCは、ヒト新生児心臓CSCクローン性分離株を取得し、任意の適当な不死化方法によりそれらを不死化することによって作製される。例えば、非限定的に、サルウイルス40ラージT抗原の導入による不死化(Kobayashi et al.,(2000)Science 287:1258-62、Nakamura et al.,(1997)Transplantation 63 (11):1541-47)、p53および網膜芽細胞腫タンパク質に対するアンチセンス構築物のトランスフェクション(Werner et al.,(2000)Biotechnol Bioeng 68 (1):59-70)、切断されたMetタンパク質のトランスジェニック導入(Amicone et al.,(1997)EMBO J.16 (3):495 503)、およびC型肝炎ウイルスコアタンパク質の発現(Ray et al.,(2000)Virology 271:197-204)を含む、本発明での使用に適した多くのこうした方法が知られている。
【0054】
一つの特定の実施形態では、本開示のヒト新生児心臓CSCは、ヒトテロメラーゼ(hTERT)を発現するベクター(例えば、レンチウイルスベクター)でそれを安定的に遺伝子導入することによって不死化される。ヒト線維芽細胞細胞のインビトロでの増殖を制限する機序は、各細胞分裂でのテロメアの進行性の短縮化であることが示されている(Hayflicket al.,(1961)Exp.Cell Res.25:585-621)。テロメアは、染色体の末端領域を構成し、短縮化テロメアは、増殖の制限を引き起こす。しかしながら、幹細胞は、テロメラーゼ逆転写酵素を使用して染色体末端にテロメアリピート配列を付加することによって、テロメア依存性増殖制限を回避することができる(Greider et al.,(1985)Cell 43:405-413)。ヒト新生児心臓CSCのテロメラーゼ再構成を達成して、例えば、心臓指向性細胞療法および心臓研究における使用のためのインビトロでの継代後の新生児心筋幹細胞の表現型特徴を有する安定な新生児ヒト心臓由来クローン性幹細胞株を発生する能力は、細胞一貫性を確保し、治療使用のため大量のこれらの細胞を産生するための複数のドナーの必要性を排除する。例えば、一部の実施形態では、このような細胞は、インビボでの心臓への投与の際に、修復能力、再生能力もしくはリモデリング能力の活性を有し、および/またはインビボでの心臓への投与の際に、ヒト心筋における内在性細胞および/もしくは組織の修復能力、再生能力またはリモデリング能力を促進するための活性を有する、一つ以上の分泌された因子、例えば、分泌されたタンパク質を含む、無限の量の条件培地を産生する能力がある細胞として機能し得る。他の実施形態では、このような細胞は、一つ以上の分泌された因子、例えば、創傷治癒および/または心疾患以外の医学的状態において治療的利益をもたらすことができる抗炎症性、抗線維化および血管新生促進特性を有する分泌されたタンパク質を含む、無限の量の条件培地を産生する能力がある細胞工場として機能し得る。
【0055】
不死化に使用されるテロメラーゼは、ヒトTERT(hTERT)遺伝子などによってコードされてもよい。ヒト新生児心臓CSCは、任意の適当な方法を使用してhTERTで遺伝子導入されてもよい。例えば、ヒト新生児心臓CSCは、hTERT遺伝子を細胞内に導入する能力がある組み換えウイルスを感染させてもよい。別の例では、ヒト新生児心臓CSCは、レンチウイルスのウイルスベクターを感染されてもよく、hTERTを含有する個々のCSCクローンが、単離され、拡大されてもよい。レンチウイルスベクターは、適当なプロモーター(例えば、CMVプロモーター)の制御下にhTERTを含んでもよく、その例示的な例が、
図4に示される。
【0056】
一態様では、本発明は、ヒトテロメラーゼを発現する不死化ヒト細胞の集団を提供し、集団は、初期継代にある新生児ヒト心筋幹細胞の表現型特性を呈し、インビトロで、後期継代で前記表現型特性(例えば、70以上の範囲で非常に高い集団倍加レベル(PDL))を発現し続ける。別の態様では、本発明は、ヒトテロメラーゼを発現する不死化ヒト細胞を提供し、細胞は、インビトロで早期継代にある新生児ヒト心筋幹細胞の表現型特性を呈し、インビトロで、後期継代で前記表現型特性を発現し続ける。一実施形態では、不死化細胞は、インビトロで主要なタイプの心細胞(すなわち、内皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞)に分化するよう誘導され得る。
【0057】
本発明の追加の実施形態では、不死化細胞を使用して、条件培地を産生してもよい。ある特定の実施形態では、条件培地を、様々な適応症のいずれかで使用して、例えば、心臓および他の医学的状態を治療し、血管新生を誘導し、炎症を阻害し、心筋細胞の救済を促進し、およびインビボで心線維症を低減してもよい (Ongstad et al.2019)。
【0058】
一部の実施形態では、不死化細胞はCD117を発現する。他の実施形態では、不死化細胞は、高レベルでCD117を発現する。様々な実施形態では、「高レベル」のCD117発現のへの本明細書における言及は、分析された(例えば、フローサイトメトリーによる)細胞の>80%が、CD117を発現することを意味する。さらに他の実施形態では、「低レベル」のCD117発現のへの本明細書における言及は、分析された(例えば、フローサイトメトリーによる)細胞の<80%が、CD117を発現することを意味する。
【0059】
ある特定の実施形態では、不死化の前後の細胞の形態は、実質的には変化せず、および/または老化の証拠を示さないことによって特徴付けられる(
図5)。
【0060】
他の実施形態では、不死化細胞はCD31を発現しない。一実施形態では、不死化細胞はCD45を発現しない。さらに他の実施形態では、不死化細胞は、CD117を発現するが、CD31またはCD45は発現しない。他の特定の実施形態では、不死化細胞は、高レベルでCD117を発現するが、CD31またはCD45を発現しない(
図6)。他の特定の実施形態では、不死化細胞は、CD117、CD90、CD105、CD44、CD47およびCD73を発現するが、CD31またはCD45を発現しない(
図6)。
【0061】
新生児心筋幹細胞は、不死化に先立ち、任意の適当な供給源から得られてもよい。特定の実施形態では、不死化される心筋幹細胞の供給源は、新生児個体由来または子宮内の個体由来である。特定の実施形態では、細胞は、成人心筋幹細胞ではない。細胞は、同じ細胞の子孫を使用して治療使用を必要とする個体から得られてもよく、または細胞は、別の個体から得られてもよい。細胞は、新生児個体の寄付された心臓または生きている新生児個体の心臓に由来してもよい。細胞は、それを必要とする個体に商業的に提供されてもよく、または必要とする個体の医療を監督する医療施設または開業医に提供されてもよい。特定の実施形態では、細胞は、1日齢~30日齢のヒト対象から得られる。例えば、ヒト対象は、1日齢、2日齢、3日齢、4日齢、5日齢、6日齢、7日齢、8日齢、9日齢、10日齢、11日齢、12日齢、13日齢、14日齢、15日齢、16日齢、17日齢、18日齢、19日齢、20日齢、21日齢、22日齢、23日齢、24日齢、25日齢、26日齢、27日齢、28日齢、29日齢、または30日齢であってもよく、またはそれ以下であってもよい。ヒト対象はまた、1日齢未満であってもよい。
【0062】
本開示の実施形態は、ヒトを含む哺乳類の心筋由来の細胞に由来する不死化新生児CSCを包含する。特定の実施形態では、ヒト新生児心臓CSCは、特定の遺伝子型および/または表現型を有してもよい。不死化ヒト新生児心臓CSCは、ある特定の実施形態では、治療使用の際に、細胞の意図される機能に適した細胞の特定の遺伝子型または表現型の決定後に、それを必要とする個体に提供されてもよい。しかしながら、一部の好ましい実施形態では、不死化ヒト新生児心臓CSCを培養することから産生される条件培地は、意図される機能を有する条件培地の産生に適した細胞の特定の遺伝子型または表現型の決定後に、それを必要とする個体に提供される。特定の実施形態では、不死化ヒト新生児心臓CSCは、CD117+細胞であり、特定の実施形態では、不死化ヒト新生児心臓CSCは、CD117+、CD90+、CD105+、CD73+、CD44+、CD47+およびCD31-、CD45-である。他の実施形態では、不死化ヒト新生児心臓CSCはまた、以下の特徴:GATA4-、CD44+、CD31-、トリプターゼ-、CD80-、CD45-、CD86-、HLAクラスI+、およびHLAクラスII-のうちの一つ、二つ、三つ、四つまたは五つ以上を有する。他の実施形態では、不死化ヒト新生児心臓CSCはまた、以下の特徴:GATA4-、CD44+、CD73+、CD47+、CD31-、トリプターゼ-、CD80-、CD45-、CD86-、HLAクラスI+、およびHLAクラスII-のうちの一つ、二つ、三つ、四つまたは五つ以上を有する。
【0063】
一部の実施形態では、不死化ヒト新生児心臓CSCは、局在化した細胞または組織の修復、再生またはリモデリングに有益である一つ以上のタンパク質または因子を天然で分泌する。一部の実施形態では、本開示は、状態下で不死化ヒト新生児心臓CSCを培養し、これにより、それらが、局在化した細胞または組織の修復、再生またはリモデリングに有益である一つ以上のタンパク質または因子を分泌することによって産生される条件培地を提供する。このようなタンパク質または因子は、いかなる種類であってもよいが、特定の実施形態では、それらは、サイトカイン、血管新生促進因子、成長因子、転写因子、miRNAなどである。一部の実施形態では、細胞は、VEGF-A、HGF、SCF、SDF-1α、ANG-1、bFGF、PDGFB、およびIGF-1のうちの一つ以上、または任意の組み合わせを分泌する。一部の実施形態では、細胞は、VEGF-A、HGF、SCF、SDF-1α、ANG-1、bFGF、PDGFB、およびIGF-1のうちの一つ以上から分泌される因子を分泌し、一部の実施形態では、本開示は、このような因子のうちの一つ以上を含む条件培地を提供する。ある特定の実施形態では、細胞は、SDF-1α、VEGF-A、PGDF-Aおよび/もしくはFGF-2、またはその組み合わせの分泌を増加させるように操作される。このような操作は、任意の方法によるが、特定の実施形態では、これらの因子および/または治療価値があるが、これらの細胞によって発現されない他の因子のうちの一つ以上の発現の増加のための組み換え技術による細胞操作を包含する。したがって、一部の実施形態では、このような遺伝子操作された細胞由来の条件培地は、本開示によって提供される。本発明での使用が企図される別の操作は、不死化ヒト新生児心臓CSCの、熱ショック因子および/またはサイトカインの分泌を増加させる他の薬剤への曝露である。
【0064】
一部の実施形態では、不死化ヒト新生児心臓CSCは、直接または間接的な、局在化した細胞または組織の修復、再生またはリモデリングに有益である一つ以上のタンパク質または因子を天然で発現する。例えば、不死化ヒト新生児心臓CSCは、VEGF-Aおよび/またはSDF-1aを発現してもよい。加えて、ヒト新生児心臓CSCと同様に、不死化ヒト新生児心臓CSCは、HSF-1、HSP60、および/またはHSP70の発現の活性化を、天然またはHSF-1、HSP60、および/もしくはHSP70の発現を増加させるための細胞の操作のいずれかによって、有してもよい(Sharma et al,2017)。したがって、本開示は、一部の実施形態では、このような細胞によって産生される条件培地を提供し、前記条件培地は、VEGF-Aおよび/またはSDF-1αを含む。一部の実施形態では、本開示は、HSF-1、HSP60、および/またはHSP70の発現を、天然または操作のいずれかにより含む、このような細胞によって産生される条件培地を提供する。一部の実施形態では、不死化新生児心筋幹細胞の条件培地(CM)は、表1に詳述される予め特定された範囲内のパラクリン因子(例えば、サイトカインおよび成長因子)の固有の組み合わせを含む。
【0065】
さらに、不死化新生児心筋幹細胞のセクレトーム中のエキソソーム含量の分析は、直径137.6nM(モード値、SD=49.1nM)のエキソソームの数が、1.1e+9±3.81e+7粒子/mlの範囲内にあること、およびこれらのエキソソームが、表面マーカーCD63、CD73
+、CD47
+を示し、それらが、CD31およびCD45について陰性であることを示した(
図8を参照)。
【0066】
不死化ヒト新生児心臓CSCは、複数の細胞として存在してもよく、複数の細胞は、所望の心臓幹細胞に関して100%均一であってもよい。または、一部の実施形態では、複数の細胞は、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、もしくは25%の均一性を有するか、または所望の不死化ヒト新生児心臓CSCに関して、その均一性のパーセンテージを少なくとも有するなどの、100%未満の均一性を有してもよい。不死化ヒト新生児心臓CSCは、100%の均一性を有するか、または99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、もしくは25%の均一性を有するなどの、100%未満の均一性を有する複数で存在するとき、方法で利用され得る。
【0067】
不死化ヒト新生児心臓CSCは、適当な培地、温度、および酸素レベル条件下を含む、使用前の期間(例えば、本明細書に開示される条件培地を産生するための培養での使用)保存されてもよく、または有意な保存時間なしで使用されてもよい。特定の実施形態では、保存細胞培地は、一つ以上の熱ショック応答誘導剤を含む。
【0068】
不死化ヒト新生児心臓CSCは、低レベルのMHCクラスII、または共刺激タンパク質CD88およびCD80を発現するため、同種療法に使用されてもよい。これらの細胞は、別の患者の免疫系に移植されたとき、免疫応答を開始させない。このような場合、細胞は、臨床適用のための在庫品として使用され得る。
【0069】
特定の実施形態では、若年個体由来のCSCは、成人の心臓由来の同様の由来細胞と比較して、強い修復能力および/または再生能力を示した(Sharma et al.,2017)。これらの能力の増加は、一部には、特定の実施形態では、若い細胞によるものより強力なセクレトームによるものである。これは、若い細胞が、少なくとも特定の実施形態では、好ましい同種産物であり得ることを意味する。さらに、一部の実施形態では、これらの優れた修復および/または再生特性は、本開示によるヒト新生児心臓CSCの不死化後に維持される。したがって、例えば、一部の実施形態では、不死化ヒト新生児心臓CSCによって産生されるセクレトームは、損傷した心組織の修復および/または再生の誘導で使用するための、成人心臓細胞からもたらされるCSCによって産生されるセクレトームよりも優れている。したがって、本開示は、それを必要とする患者に、一つ以上の不死化ヒト新生児心臓CSC由来の条件培地を含む組成物を投与する工程を含む、心組織への損傷の修復および/または再生を誘導する方法を提供する。一部の実施形態では、ヒト新生児心臓CSCの集団は、一つ以上の不死化ヒト新生児心臓CSC由来の条件培地を含む組成物中に再懸濁され、条件培地および再懸濁されたヒト新生児心臓CSCを含む組成物が、患者に投与される。
II.nCSCの単離方法
【0070】
本開示はまた、CD117(すなわち、c-kit)に結合する部分を有する表面を含む基材に収集された細胞を曝露させる必要がない、新生児組織からCD117+CSCを単離する、新規の方法を提供する。この方法は、全てが、試料に存在する細胞の不均一な集団からCD117+細胞を選択するために、CD117結合部分(抗体など)を含むこのような基材(例えば、プレート、ビーズ、またはカラム)に収集された細胞を曝露することを含む、CD117+ hCSCを単離する先行技術の方法とは対照的である。
【0071】
本明細書に開示される方法は、一部、成人ヒト心臓とは対照的に、新生児ヒト心臓が、造血前駆細胞および内皮前駆細胞の混入がほとんどないか、または全くない、心原性CD117+幹細胞の均一な集団を含有するという驚くべき発見に基づく。さらに、本発明者らは、新生児ヒト心臓のCD117+細胞が、たとえ最初単一細胞として播種されたとしても、培養で増殖することができるクローンを生じ、それらの増殖速度が、細胞のCD117陽性のレベルに関連することを発見した。したがって、高い程度のCD117+発現を有する細胞は、一般的に、より低い発現のCD117を有する細胞より速く増殖するが、本発明者らが増殖を観察した全ての細胞は、少なくともある程度までCD117を発現していた。さらに、新生児心組織のCD117+細胞は、心筋梗塞の動物モデルで試験されたとき、老化の証拠を示さず、有意な心臓修復および再生活性を有する大きな細胞数に拡大しない(例えば、
図7を参照)。
【0072】
したがって、これらの驚くべき発見に少なくとも一部基づき、本開示は、CD117磁気ビーズ(または任意の他のCD117+細胞濃縮手法)で事前に選択することなく、新生児心臓組織から直接、ヒト新生児心臓CSC(例えば、CD117+新生児心臓CSCの均一な集団)を単離および増殖させる方法を提供する。この方法は、本開示に先立ち開示されていない、表現型CD90+、CD105+、CD117+、CD44+、CD73+、CD47+、CD31-、CD34-、CD45-およびトリプターゼ陰性により定義される固有の細胞集団の選択を提供する。加えて、このような方法は、大量の細胞の取得において単一細胞ドナーおよびドナー独立性をもたらし、細胞均一性を確保し、治療が意図される細胞の非GMP品質の物質(すなわち、CD117磁気ビーズ)への曝露に付随する規制上の懸念を回避するため、先行技術の方法よりも有意な利点をもたらす。さらに、それらは、新生児心臓試料の取得と、例えば、治療目的のため、本明細書に開示される方法に従った条件培地の産生および/または不死化のための、集団CD117+細胞の提供との間で行わなければならない処理のレベルを低減する。
【0073】
様々な実施形態では、本開示はまた、新生児心組織からCD117+CSCを単離する方法を提供し、方法は、新生児心組織から一つ以上のクローン性分離株細胞を単離するか、または単離された一つ以上のクローン性分離株細胞を有する工程、および増殖を促進するための適当な培養培地において一つ以上の細胞を培養する工程を含み、単離工程は、細胞を、CD117に結合する部分(例えば、CD117抗体)と接触させる工程を含まない。一部の実施形態では、方法は、培養または複数の培養を開始する工程を含み、各培養は、心組織由来の一つ以上の細胞を伴う。一部の実施形態では、各培養または複数の培養物の各々は、最初、心組織由来の一つの細胞のみが播種される。これは、当該技術分野で公知の任意の適当な方法、例えば、FACSソーティングまたは新生児心組織試料から得られた細胞の限定希釈培養によって達成され得る。
【0074】
方法は、培養または複数の培養の一つ以上の増殖速度をモニタリングする工程を含んでもよい。方法は、培養または複数の培養の増殖速度を、公知のCD117+発現の参照試料または参照値の増殖速度と比較することによって、培養または複数の培養の一つ以上のCD117陽性のレベルを近似させる工程を含んでもよい。他のクローンよりも急速に増殖するクローンが、さらなる拡大、特徴決定、および/または凍結保存のために選択され得る。他のクローンよりも高いレベルのCD117陽性を発現するクローンが、さらなる拡大、特徴決定、および/または凍結保存のために選択されてもよい。さらなる特徴決定は、例えば、ヒトVEGFA、SDF-1α、PDGFB、IGF-1、ANG-1、bFGF、SCFおよび/またはHGFについての分析などの、セクレトーム分析(例えば、ELISA、MSDなどによる)の性能;例えば、マーカー(例えば、間葉系幹細胞マーカーCD105もしくはCD90、幹細胞マーカーCD117、内皮細胞マーカーCD31、マスト細胞マーカートリプターゼ、および/または造血剤細胞系統マーカーCD45)の細胞表面発現の分析などの、表現型特徴決定(例えば、フローサイトメトリーによる);老化分析;ならびに/あるいは例えば、インビボ心臓損傷モデルでの機能、例えば、血管新生、酸化ストレスに対する抵抗性、および/または治療有効性を促進する能力の特徴決定を含み得るが、これらに限定されない。一部の実施形態では、このような方法は、当該技術分野で公知の方法または本明細書に開示される方法を使用して単離された細胞の不死化をさらに含んでもよい。不死化は、任意の適当な手段によるものであってもよい。一部の実施形態では、不死化は、テロメラーゼの発現によるものである。例示的には、テロメラーゼは、ヒトTERT(hTERT)遺伝子によってコードされてもよい。ヒト新生児心臓CSCは、hTERTで遺伝子導入されてもよく、hTERT遺伝子を細胞に伝達することができる組換えウイルスを感染させてもよく、または当該技術分野で公知かつ利用可能な任意の適当な方法を使用してCSCに送達されてもよい。
【0075】
一部の実施形態では、本開示は、新生児CSCの培養物または新生児CSCの複数の培養物におけるCD117陽性のレベルを近似させる方法を提供し、方法は、培養中の細胞の増殖速度を決定する工程、およびその速度を、参照試料の増殖の速度または公知のCD117+発現の参照値と比較する工程を含む。
【0076】
一部の実施形態では、CD117+新生児心臓CSC(本明細書に開示される)を単離するこのような方法は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる、米国特許公開第US2015/0328263号に開示される治療目的などのため利用され、例えば、CD117+もしくはそうでなければ不死化CSCのそれを必要とする対象への投与;不死化CSC由来の条件培地のそれを必要とする対象への投与;および/または不死化CSCおよび不死化CSC由来の条件培地の組み合わせのそれを必要とする対象への投与を含むが、これらに限定されない。このような治療目的は、典型的には、当該技術分野で公知の方法または本明細書に開示される方法に従って、新生児CSCの不死化後に、上記組成物のいずれかのそれを必要とする対象への投与を含む。
【0077】
当業者であれば、CD117+CSCを新生児心組織から単離する上記方法に加えて、所望のnCSCを単離するための他の日常的な方法も存在し、単離は、任意の適当な手段によって行われ得ることを理解する。例えば、CD117+成人CSCを単離する従来の方法は、試料に存在する細胞の集団からCD117+細胞を取り出すために、収集された細胞を、CD117抗体などの、CD117に結合する部分を有する表面を含む基材に曝露する工程を含む。一部の実施形態では、本開示は、このような方法を使用しない。
【0078】
当業者はまた、細胞をヒト心筋から得て、その後細胞をさらに処理する日常的な方法が存在することを理解する。特定の実施形態では、生検などにより、組織を、新生児心筋を含むヒト心筋(例えば、心臓の右心耳または「RAA」から得られる)から得ることによって、所望のヒト新生児心臓CSCを単離する方法が存在する。心筋は、既知の心臓異常のない個体由来のものであってもよい。心筋は、末期の心不全を有する個体由来または先天性心疾患を有する個体由来のものであってもよく、これらの場合、心筋は、正常であってもなくてもよい。抽出された組織は、コラゲナーゼの存在下でなど、組織の切断によるものを含む、それらの組織から単数の細胞を分離しながら、特定の培地に曝露されてもよい。特定の実施形態では、組織および組織断片は、培地中に沈降させ、上清が得られる。細胞は、上清から収集され、適当な期間、培養培地に懸濁されてもよい。この後、所望のCD117+ヒト新生児心臓CSCは、例えば、そこから単離される。所望のヒト新生児心臓CSCの単離は、本明細書に開示されるか、または当該技術分野で公知の任意の手段によって生じてもよい。一部の実施形態では、単離は、収集された細胞を、CD117抗体などの、CD117に結合する部分を有する表面を含む基材に曝露する工程を含まない、本明細書に開示される方法を介する物である。
【0079】
ある特定の実施形態では、所望のヒト新生児心臓CSCが単離されると、それらは、適当な継代を含む、標準的な条件下で培養されてもよい。細胞の培養培地は、細胞が個体に送達されるときに利用される培地と実質的に同一であってもよく、または同一でなくてもよい。培地は、一つ以上の熱ショック応答誘導剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0080】
III.本開示の細胞の使用方法ならびにその条件培地およびセクレトーム
本開示の方法は、それを必要とする個体における少なくとも一つの医学的状態の療法のための、ある特定のnCSC(および、ある種の特定の実施形態では、CD117+間葉系様の細胞)の使用、またはこのような細胞を培養することによって産生される条件培地の使用を含む。一部の実施形態では、細胞は、本明細書に開示される方法を介して単離され、単離は、収集された細胞を、CD117抗体などの、CD117に結合する部分、または任意の他の表面タンパク質に結合する部分を有する表面を含む基材に曝露することを含まない。一部の実施形態では、クローン性細胞単離株は、不死化される(例えば、hTERT不死化を介して)。特定の実施形態では、細胞、細胞を培養することによって産生される条件培地またはそれらの条件培地中に再懸濁された細胞は、医学的状態に有用であり、抗炎症性もしくは抗線維化効果の創出ならびに/または組織修復、再生、および/もしくは置換の促進は、治療上有用である。
【0081】
特定の実施形態では、医学的状態は、心臓の医学的状態である。特定の実施形態では、治療有効量の、本明細書に記載される不死化ヒト新生児心臓CSC、不死化ヒト新生児心臓CSC由来の条件培地、または不死化ヒト新生児心臓CSC由来の条件培地に再懸濁された細胞が、個体に提供され、特定の実施形態では、条件培地は、カテーテル、直接注射を介して、またはある場合では、局所投与により治療を必要とする領域に局所的に個体に送達される。他の実施形態では、治療有効量の、本明細書に記載される不死化ヒト新生児心臓CSC、不死化ヒト新生児心臓CSC由来の条件培地、または不死化ヒト新生児心臓CSC由来の条件培地に再懸濁された細胞が、個体に静脈内に提供される。療法を受ける個体は、任意の性別または年齢であってもよい。心臓の医学的状態を有する個体は、医師によって診断されてもよく、または診断されなくてもよい。ある特定の実施形態では、個体は、心臓の医学的状態の個人的または家族歴を有する。個体は、喫煙、高い低密度リポタンパク質(LDL)血漿レベルおよび/または低い高密度リポタンパク質(HDL)血漿レベル、制御不能な高血圧、肥満(個人の理想体重に対して20%より重い)、制御不能な糖尿病、高いC反応性タンパク質血漿レベル、またはその組み合わせなどの心臓の医学的状態のリスクにあってもよい。特定の実施形態では、個体についてのある特定の遺伝子型または表現型の診断の際に、個体に、本開示の一つ以上の方法が提供される。
【0082】
単離が、それを必要とする個体へのそれらの送達または細胞由来の条件培地の個体への送達に先立ち、収集された細胞を、CD117抗体などの、CD117(すなわち、c-kit)に結合する部分、または別の細胞表面タンパク質に結合する部分を有する表面を含む基材に曝露することを含まない、例えば、本明細書に開示される方法を介した、所望の細胞の供給源個体からの単離の際に、細胞は、例えば、一つ以上の発現構築物の組み換え発現のための遺伝子操作、さらに培養および/または濃縮などを通じて、さらに改変されてもよい。このようなさらなる改変はまた、本明細書に記載される細胞の不死化を含んでもよい。このような実施は、当該技術分野で日常的である。細胞内に遺伝子導入された発現構築物は、任意の種類のものであってもよいが、特定の実施形態では、構築物は、サイトカイン、血管新生促進因子、成長因子、転写因子などを発現する。特定の実施形態では、構築物は、VEGF-A、HGF、SCF、SDF-1α、ANG-1、HSF-1、PGDF-A、FGF-2、もしくはその組み合わせを発現し、および/またはそれらの発現を直接的または間接的に増加させる別のタンパク質を発現する。細胞は、ある特定のタンパク質の分泌および/または発現を増加させるための一つ以上の薬剤に曝露されてもよい。
【0083】
ある特定の実施形態では、治療有効量の本明細書に記載される細胞は、一つ以上の治療方法で利用されるが、一部の好ましい実施形態では、個体は、代わりに、治療有効量の、細胞由来の条件培地;細胞由来のセクレトームの全ての一部;細胞由来の一つ以上の分泌されたタンパク質もしくは他の因子(例えば、エキソソーム、細胞外ビークル、miRNAなど);またはその組み合わせを受け取る。一部の実施形態では、細胞由来の条件培地は、一つ以上のヒト新生児心臓CSCと組み合わせて個体に投与される。これらの成分または組み合わせのいずれか一つの使用は、特定の実施形態では、それらの使用の際に、内在性心筋細胞の増殖を促進する。ある特定の実施形態では、これらの成分または組み合わせのいずれか一つの使用は、心筋の修復、再生またはリモデリングを可能にする。ある特定の実施形態では、これらの成分または組み合わせのいずれか一つの使用は、治療される個体における内在性CSCの増殖、修復、再生またはリモデリング能力を促進するか、または強化する。
【0084】
特定の実施形態では、治療有効量の細胞、細胞(もしくは不死化ヒト新生児心臓CSC)を培養することによって産生された条件培地、それらの条件培地に再懸濁された細胞は、数時間、数日、数週間または数ヶ月の期間にわたり複数回投与されてもよい。治療有効用量は、連続投与の過程で増加または減少されてもよい。
【0085】
特定の実施形態では、細胞が個体に提供されるとき、それらは、別の治療部分と併せて(同じもしくは異なる組成物中で)、または同時に提供されてもよい。すなわち、特定の実施形態では、細胞は、インビボでの投与の際に、細胞の機能を強化する一つ以上の薬剤と実質的に同時に個体に投与される。このような薬剤は、任意の種類のものであってもよいが、特定の実施形態では、薬剤は、一つ以上の熱ショック応答誘導剤である。
【0086】
ある場合では、一つ以上の薬剤は、細胞と実質的に同時に個体に提供されるが、特定の実施形態では、細胞は、個体へのそれらの送達に先立ち、一つ以上の薬剤に曝露され、薬剤は、インビボ送達の際に細胞の機能を強化する。特定の実施形態では、細胞は、培養中に一つ以上の薬剤に曝露される。細胞は、薬剤に1回または複数回曝露されてもよく、細胞が培養で継代されるとき、薬剤は、その後の培地に存在してもよく、または存在しなくてもよい。特定の実施形態では、薬剤は、一つ以上の遺伝子の発現を増加させ、一つ以上のタンパク質もしくは他の因子(miRNAなど)、またはその組み合わせの分泌を増加させることによって、細胞の治療使用を強化する。特定の実施形態では、遺伝子またはタンパク質は、サイトカイン、血管新生促進因子、成長因子、転写因子、miRNA、およびエキソソーム(濃縮タンパク質およびmiRNAを含有する小型の輸送ビークル)などである。ある特定の実施形態では、薬剤は、熱ショック応答誘導剤である。
【0087】
一実施形態では、特定かつ治療有効数の細胞が、個体に提供される。例えば、一部の実施形態では、1億個未満、例えば、100万~4000万または100万~5000万個の細胞が、個体に提供される。特定の実施形態では、100万~2000万個の細胞が提供されるが、一部の実施形態では、細胞の100万の位の数字は、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~20、2~19、2~18、2~17、2~16、2~15、2~14、2~13、2~12、2~11、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~20、3~19、3~18、3~17、3~16、3~15、3~14、3~13、3~12、3~11、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~20、4~19、4~18、4~17、4~16、4~15、4~14、4~13、4~12、4~11、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~20、5~19、5~18、5~17、5~16、5~15、5~14、5~13、5~12、5~11、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~20、6~19、6~18、6~17、6~16、6~15、6~14、6~13、6~12、6~11、6~10、6~9、6~8、6~7、7~20、7~19、7~18、7~17、7~16、7~15、7~14、7~13、7~12、7~11、7~10、7~9、7~8、8~20、8~19、8~18、8~17、8~16、8~15、8~14、8~13、8~12、8~11、8~10、8~9、9~20、9~19、9~18、9~17、9~16、9~15、9~14、9~13、9~12、9~11、9~10、10~20、10~19、10~18、10~17、10~16、10~15、10~14、10~13、10~12、10~11、11~20、11~19、11~18、11~17、11~16、11~15、11~14、11~13、11~12、12~20、12~19、12~18、12~17、12~16、12~15、12~14、12~13、13~20、13~19、13~18、13~17、13~16、13~15、13~14、14~20、14~19、14~18、14~17、14~16、14~15、15~20、15~19、15~18、15~17、15~16、16~20、16~19、16~18、16~17、17~20、17~19、17~18、18~20、18~19、または19~20などである。
【0088】
特定の実施形態では、本明細書に開示される不死化ヒト新生児心臓CSCを培養することによって作製された条件培地内のタンパク質、miRNA、または任意の他の因子を単離することができる。特定の実施形態では、条件培地から、セクレトーム自体またはタンパク質およびエキソソームなどのセクレトームの一つ以上の成分が、個体に提供される。エキソソームは、それ自体、非常に強力な修復および/または再生能力を有し、細胞ではなく個体に治療的に提供されてもよい。特定の実施形態では、条件培地は、細胞ではなく個体に治療的に提供される。
【0089】
IV.心臓の医学的状態
本開示の実施形態は、本明細書に記載される不死化新生児CSCの培養から作製された条件培地および/または本明細書に開示される方法を介して単離された新生児心臓CSCを用いた、一つ以上の心臓の医学的状態の治療に関する。このような実施形態の特定の態様は、一つ以上の心臓の医学的状態の逆転または一つ以上の心臓の医学的状態の少なくとも一つの症状の改善をもたらす。例示的な実施形態では、心臓の医学的状態は、心不全である。心不全は、冠動脈疾患、心臓発作、高血圧、心臓弁の障害、心筋症(例えば、疾患、感染、アルコール乱用およびコカインまたは化学療法に使用される一部の薬物などの薬物の毒性効果によって引き起こされるなど)、特発性心筋症、先天性心疾患および/または遺伝的要因を含む、一つ以上の原因の結果であり得る。
【0090】
本開示の実施形態の特定だが、例示的な適応症は、鬱血性心不全を含む心不全;心室リモデリングの予防;および/または心筋症のための適用を少なくとも含む。他の適応症はまた、冠動脈疾患、虚血性心疾患、心臓弁膜症、構造的心臓介入に続発する脳卒中などを含み得る。特定の実施形態では、本開示の方法および組成物は、心筋症または鬱血性心不全などの確立された心臓の医学的状態を逆転させることを含む、治療するのに十分な心筋修復および/または再生を提供する。
【0091】
個体が心不全を有する場合、患者は、駆出率(EF)の保存または駆出率(EF)の低減を有してもよい。駆出率は、微小循環希薄化および広範な心筋線維症により特徴付けられ、イソプロテレノール誘導型心筋症モデルを使用した以前の研究が、CSCが、げっ歯類モデルにおいて心機能を改善することを示した(Sharma et al;2017)ため、両方が、治療有効量の細胞、不死化ヒト新生児心臓CSC由来の条件培地、または不死化ヒト新生児心臓CSC由来の条件培地に再懸濁された細胞で改善され得る。
【0092】
個体が心筋症を有する場合、心筋症は、虚血性または非虚血性心筋症であってもよい。心筋症は、長期にわたる高血圧、心臓弁の問題、以前の心臓発作からの心臓組織損傷、慢性的な動悸、代謝障害、栄養障害、妊娠、アルコール乱用、薬物乱用、化学療法薬物、ウイルス感染、ヘモクロマトーシス、遺伝的状態、コレステロール値上昇、またはその組み合わせによって引き起こされ得る。心筋症はまた、特定されていない原因、すなわち、特発性心筋症を有していてもよい。
【0093】
治療有効量または細胞数、不死化ヒト新生児心臓CSC由来の条件培地、または不死化ヒト新生児心臓CSC由来の条件培地に再懸濁された細胞は、化学療法誘発性心毒性を予防し得る。開示された本発明はまた、臓器移植手術における輸送中の臓器保存の拡大のため使用されてもよい。
【0094】
V.炎症性疾患
本開示の実施形態は、新生児心臓CSC、不死化新生児心臓CSC、新生児心臓CSC由来の条件培地、または不死化新生児心臓CSC、およびc-新生児心臓CSCもしくは不死化ヒト新生児CSC由来の条件培地に再懸濁された新生児心臓CSCを含む組成物を提供し、各々が、抗炎症性および抗アポトーシス特性を有し、疾患プロセスの主要成分が、炎症プロセスに関与する一つ以上の疾患を治療するために使用することができる。炎症成分を含み、本開示のこのような組成物で治療され得るこのような疾患の非限定的な例としては、腎障害(急性腎損傷および慢性腎疾患の両方)、虚血性脳卒中、関節炎、ドライアイ、パーキンソン病を含む神経変性疾患、重症虚血肢、COVID-19、および他の炎症性疾患が挙げられる。したがって、一部の実施形態では、本開示は、炎症性疾患の治療に使用するための、新生児心臓CSC、不死化新生児心臓CSC、新生児心臓CSCまたは不死化新生児心臓CSC由来の条件培地、および新生児心臓CSCまたは不死化新生児CSC由来の条件培地に再懸濁された新生児心臓CSCを含む組成物を提供する。一部の実施形態では、本開示は、腎障害(急性腎損傷および慢性腎疾患の両方)、虚血性脳卒中、関節炎、ドライアイ、神経変性疾患、パーキンソン病、および重症虚血肢から選択される疾患の治療に使用するための、新生児心臓CSC、不死化新生児心臓CSC、新生児心臓CSCまたは不死化新生児心臓CSC由来の条件培地および新生児心臓CSCまたは不死化新生児心臓CSC由来の条件培地に再懸濁された新生児心臓CSCを含む組成物を提供する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象に、有効用量の、新生児心臓CSC、不死化新生児心臓CSC、新生児心臓CSCまたは不死化新生児心臓CSC由来の条件培地、および新生児心臓CSCまたは不死化新生児心臓CSC由来の条件培地に再懸濁された新生児心臓CSCを含む組成物を投与する工程を含む、炎症性疾患を治療する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象に、有効用量の、新生児心臓CSC、不死化新生児心臓CSC、新生児心臓CSCまたは不死化新生児心臓CSC由来の条件培地、および新生児心臓CSCまたは不死化新生児心臓CSC由来の条件培地に再懸濁された新生児心臓CSCを含む組成物を投与する工程を含む、腎障害(急性腎損傷および慢性腎疾患の両方)、虚血性脳卒中、関節炎、ドライアイ、神経変性疾患、パーキンソン病、または重症虚血肢を治療する方法を提供する。
【0095】
VI.創傷治癒
線維症および炎症は、創傷治癒における二つの重要な経路である。したがって、本開示の一部の実施形態は、炎症性疾患の治療に使用するための、新生児心臓CSC、不死化新生児心臓CSC、新生児心臓CSCまたは不死化新生児心臓CSC由来の条件培地、および新生児心臓CSCまたは不死化新生児CSC由来の条件培地に再懸濁された新生児心臓CSCを含む組成物を提供し、各々を使用して、創傷を治療し、創傷治癒を促進することができる。特定の実施形態では、本明細書に開示される不死化新生児CSCを培養することによって作製した条件培地内のタンパク質、miRNA、または任意の他の因子を単離することができ、このような単離されたタンパク質、miRNAまたは因子を創傷を有する対象に投与して、創傷を治療してもよい。特定の実施形態では、増殖、遊走、および基材合成などの組織線維症および細胞機能を調節する責任を有する、タンパク質およびエキソソームなどのセクレトームの不死化新生児CSC、条件培地、セクレトーム自体、または一つ以上の成分を使用して、創傷の進行および分離を前進させることができる。
【0096】
VII.併用療法
一部の実施形態では、本開示の治療を受けたか、または本開示の治療を受けているか、または受ける予定である個体にも、標的の医学的状態のための別の治療が提供される。例えば、一部の実施形態では、心臓の医学的状態を治療するための本開示の治療を受けたか、または心臓の医学的状態を治療するための本開示の療法を受けているか、もしくは受ける予定である個体にも、心臓の医学的状態のための別の療法が提供される。本開示の療法は、他の治療に先行または続いてもよい。本開示の療法は、数分から数時間、数日、数週間または数ヶ月に及ぶ間隔によって、他の治療に先行または続いてもよい。他の薬剤および即時療法が、個体に別々に与えられる実施形態では、本開示の療法および追加の療法が、依然として個体に有利に組み合わされた効果を及ぼすことができるように、概して、有意な期間が、各送達の時間の間で期限切れにならないことを確かにする。このような例では、例えば、互いに同時に、もしくは数分以内に、または互いの約1~12、6~12、もしくは12~24時間以内に、両方の様式で個体と接触し得ることが企図される。一部の状況では、治療の期間を著しく延長することが望ましい場合があるが、各投与間で数日(2、3、4、5、6、または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8)経過する。
【0097】
特定の実施形態では、本開示の療法および追加の療法は、同時に提供される。特定の実施形態では、本開示の療法および追加の療法は、異なる時間で提供される。別個の実体は、同じ組成物内であってもよく、またはそれらは、別個の組成物に含まれてもよい。本開示の療法および第二の療法が、異なる時間で提供される場合、それらは、数分、数時間、数日、数週間、または数ヶ月などの時間の任意の適当な範囲によって隔てられてもよい。それらが別々に提供される実施形態では、二つ(またはそれ以上)の療法の送達の順序は、別の療法の前、同時または後の、細胞、セクレトーム、および/または条件培地の送達を含む、任意の適切な順序であってもよい。
【0098】
本開示の療法と共に利用される他の治療の例としては、以下の:ACE阻害剤、アルドステロン阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB);ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、コレステロール低下薬、ジゴキシン、利尿薬、変力療法、カリウムもしくはマグネシウム、血管拡張剤、抗凝固医薬、アスピリン、手術、VAD移植、VAT、冠動脈バイパス、経皮的冠動脈形成術(PCI)またはその組み合わせのうちの一つ以上が挙げられる。
【0099】
VIII.本開示のキット
本明細書に記載される不死化新生児心臓CSC、またはこのようなCSC由来の条件培地のいずが、キットに含まれていてもよい。キットは、心臓の医学的状態の療法ための他の薬剤を追加で含んでいてもよい。
【0100】
キットの成分は、水性培地中または凍結乾燥形態のいずれかに包装されていてもよい。キットの容器手段は、概して、少なくとも一つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含み、それらに成分が入れられ、好ましくは、適当に分配されてもよい。キット内に一つより多くの複数の成分が存在する場合、キットはまた、概して、追加の構成要素が別々に配置され得る、第二の容器、第三の容器または他の追加の容器も含み、それに、追加の成分が、別々に入れられてもよい。しかしながら、成分の様々な組み合わせが、バイアルに含まれてもよい。本開示のキットはまた、典型的には、市販のための厳重な封で一つ以上の組成物を含有するための手段を含む。このような容器は、所望のバイアルが保持される、注射器またはブロー成形されたプラスチック容器を含んでもよい。特定の実施形態では、細胞は、凍結状態で送達され、プラスチックバイアルで提供されてもよく、または提供されなくてもよい。
【0101】
組成物は、シリンジ可能な組成物に製剤化されてもよい。容器手段が、それ自体、注射器、ピペット、および/または他のこのような類似の装置であってもよい場合、それから、製剤が、身体の罹患領域に適用されてもよく、動物に注入されてもよく、および/またはキットの他の成分に適用されてもよく、および/または混合されてもよい。しかしながら、キットの成分は、乾燥粉末として提供されてもよい。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供されるとき、粉末は、適当な溶媒の添加によって再構成することができる。溶媒はまた、別の容器手段で提供されてもよいことは想定される。
【0102】
本開示のキットはまた、典型的には、例えば、所望のバイアルが保持される注射器および/またはブロー成形されたプラスチック容器などの、市販のため厳重な封でバイアルを収容するための手段も含む。
【0103】
特定の実施形態では、キットは、個体が心臓の医学的状態を有することを決定するための試薬および/またはツールを含む。一部の実施形態では、キットは、ACE阻害剤、アルドステロン阻害剤、アンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB);ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、コレステロール低下薬、ジゴキシン、利尿薬、変力療法、カリウム、マグネシウム、血管拡張剤、抗凝固医薬、アスピリン、TGF-ベータ阻害剤、およびその組み合わせのうちの一つ以上などの、心臓に関連する医学的状態のための一つ以上の追加の療法を含む。
【0104】
VII.医薬組成物
本開示の医薬組成物の実施形態は、有効量の新生児心臓CSCまたは薬学的に許容し得る担体に分散されたこのような細胞由来の条件培地を含む。有効量の新生児CSCは、任意の適当な数の細胞を含んでもよい。一部の実施形態では、有効量は、1億個未満の細胞、例えば、100万~4000万または100万~5000万個の細胞である。一部の実施形態では、有効量は、100万~2000万個の細胞を含むが、一部の実施形態では、細胞の100万の位の数字は、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~20、2~19、2~18、2~17、2~16、2~15、2~14、2~13、2~12、2~11、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~20、3~19、3~18、3~17、3~16、3~15、3~14、3~13、3~12、3~11、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~20、4~19、4~18、4~17、4~16、4~15、4~14、4~13、4~12、4~11、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~20、5~19、5~18、5~17、5~16、5~15、5~14、5~13、5~12、5~11、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~20、6~19、6~18、6~17、6~16、6~15、6~14、6~13、6~12、6~11、6~10、6~9、6~8、6~7、7~20、7~19、7~18、7~17、7~16、7~15、7~14、7~13、7~12、7~11、7~10、7~9、7~8、8~20、8~19、8~18、8~17、8~16、8~15、8~14、8~13、8~12、8~11、8~10、8~9、9~20、9~19、9~18、9~17、9~16、9~15、9~14、9~13、9~12、9~11、9~10、10~20、10~19、10~18、10~17、10~16、10~15、10~14、10~13、10~12、10~11、11~20、11~19、11~18、11~17、11~16、11~15、11~14、11~13、11~12、12~20、12~19、12~18、12~17、12~16、12~15、12~14、12~13、13~20、13~19、13~18、13~17、13~16、13~15、13~14、14~20、14~19、14~18、14~17、14~16、14~15、15~20、15~19、15~18、15~17、15~16、16~20、16~19、16~18、16~17、17~20、17~19、17~18、18~20、18~19、または19~20などである。例えば、一つの特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、薬学的に許容し得る担体に分散された1000万個の新生児心臓CSCを含む。一つの特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、1000万個の新生児CD117+CSCおよび培養された新生児CSC由来の条件培地を含む。一部の実施形態では、条件培地が回収される培養された新生児心臓CSCは、不死化新生児ヒト新生児心臓CSCである。
【0105】
一つの特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、有効量の新生児CSC(例えば、1000万個の細胞)および培養された新生児CSC由来の条件培地に存在する分泌された因子の濃縮調製物を含む。分泌された因子のこのような濃縮調製物は、例えば、培地に存在する分泌された因子の全てまたは一部を保持しながら、細胞由来の条件培地を濾過して、培地の一部または全てを除去することによって調製されてもよい。このような濃縮因子は、ペレット形態で保存されてもよい。このような濃縮因子は、保存のため、または対象への投与のため、薬学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、界面活性剤、および/またはビークルに再懸濁されてもよい。濃縮因子は、薬学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、界面活性剤、および/またはビークル単独、または新生児心臓CSC集団(例えば、有効用量のCSC)と組み合わせて再懸濁されてもよい。一部の実施形態では、それから条件培地を回収して、分泌された因子の濃縮調製物を調製する、培養された新生児CSCは、不死化新生児CSCである。一部の実施形態では、対象に投与される、および/または本明細書に開示される医薬組成物に含まれるCSCは、不死化されない。
【0106】
条件培地は、対象への投与のため製剤化されてもよい。一部の実施形態では、条件培地に存在する生理活性因子は、(例えば、条件培地の濾過によって)濃縮され、生理活性因子は、一つ以上の薬学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、界面活性剤、および/またはビークルを含む医薬組成物において再製剤化される。語句「薬学的または薬理学的に許容し得る」は、例えば、必要に応じてヒトなどの、動物に投与されたとき、有害反応、アレルギー反応または他の有害な反応を生じさせない分子実体および組成物を指す。細胞を含む医薬組成物の調製は、参照により本明細書に取り込まれる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.Lippincott Williams and Wilkins,2005により例示される通り、本開示を照らして当業者に知られている。さらに、動物(例えば、ヒト)投与のため、調製物は、FDA事務局の生物学的基準が要求する無菌性、発熱性、一般安全性および純度基準を満たすべきであることが理解されるであろう。
【0107】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容し得る担体」は、当業者に公知である、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、これと同様の物質およびその組み合わせを含み得る。任意の従来の担体が、有効成分と不適合である場合を除き、医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0108】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に開示される方法に従って単離された一つ以上のヒト新生児心臓CSCを含む医薬組成物を提供し、前記組成物は、一つ以上の薬学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、界面活性剤、および/またはビークルをさらに含む。例えば、一部の実施形態では、組成物は、PlasmaLyte(Baxter、Deerfield、IL)において製材化された、本明細書に開示される方法に従い単離された複数のヒト新生児心臓CSCを含む。一部の実施形態では、ヒト新生児心臓CSCは不死化される。一部の実施形態では、不死化は、hTERT発現を介してである。
【0109】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に開示される方法に従って単離されたヒト新生児心臓CSCの培養物由来の条件培地を含む医薬組成物を提供し、前記組成物は、一つ以上の薬学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、界面活性剤、および/またはビークルをさらに含む。条件培地は、対象への直接投与のため製剤化されてもよい。特定の実施形態では、条件培地は、濾過により生理活性因子が濃縮され、濃縮された因子は、一つ以上の薬学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、界面活性剤、および/またはビークルを含む医薬組成物において再製剤化される。例えば、一部の実施形態では、組成物は、PlasmaLyte(Baxter、Deerfield、IL)において製材化された、本明細書に開示される方法に従い単離された複数の新生児心臓CSCの培養物由来の条件培地由来の濃縮生理活性因子を含む。一部の実施形態では、ヒト新生児心臓CSCは不死化される。一部の実施形態では、不死化は、hTERT発現を介してである。
【実施例】
【0110】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。当業者であれば、以下の実施例に開示されている技術は、本発明の実施において良好に機能するために発明者によって発見された技術を表し、したがってその実施のための好ましい様式を構成するものとみなすことができることを理解すべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示の観点では、本開示の特定の実施形態において多くの変更がなされてもよく、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、依然として同様のまたは類似の結果を得るべきである。
【0111】
実施例1:新生児CD117陽性心前駆細胞の単離
心不全を含む心臓の医学的状態および炎症性疾患は、乳児、小児、および成人を含む、あらゆる年齢の患者に有効な療法を必要とする。特に、損傷した心筋組織などによって引き起こされる心不全などの、心臓の医学的状態を有する成人および小児において、機能的心筋を再生するための組成物および方法が必要とされる。
【0112】
損傷した心筋を治療するためにそれを必要とする患者に投与することができる、条件培地の産生に使用することができるCD117+nCSCを単離し、不死化する新規の方法を、本実施例において記載する。
【0113】
本発明者らは、成人ヒト心臓とは対照的に、新生児ヒト心臓が、造血前駆細胞および内皮前駆細胞の混入がほとんどないか、または全くない、心原性CD117+幹細胞の均一な集団を含有することを見出した。さらに、本発明者らは、これらの新生児ヒト心臓由来幹細胞が、老化の証拠を示さず、心筋梗塞の動物モデルで試験したとき、有意な心臓修復および再生活性を有する大きな細胞数に増殖し、拡大することができるクローンを生じさせることを見出した。したがって、これらの知見に一部基づき、本発明者らは、これまで文献で行われている、CD117磁気ビーズでの事前の選択なく、これらの新生児心臓幹細胞を新生児心組織から直接得ることができると判断した。これは、療法を意図する細胞を、非GMP品質の材料(すなわち、CD117磁気ビーズ)に曝露することに関する規制上の懸念を回避するという点で、大きな利点である。
【0114】
ここでは、本発明者らは、CD117抗体濃縮なしに得られたヒト新生児心臓幹細胞クローンの単離および機能的特徴決定に関する方法論およびある種のデータを記載する。
【0115】
本研究は、メリーランド州立大学医学部の施設内治験審査委員会および動物実験委員会(IACUC)により承認された。親または患者の同意を得た後、右心耳(RAA)の標本(20±40mg)を、日常的な心臓手術中に新生児(1日齢~30日齢)から得た。
1.RAA組織を、生理食塩水を充填した100mmのペトリ皿に移し、それを洗浄した。この工程を2回繰り返す。Steri 250(Inotech)で滅菌した鉗子を使用して、心臓標本から線維化組織および脂肪を除去した。次いで、試料をHamのF12培地に移し、1~2mm
2の切片に刻んだ。
2.組織断片を50mlの管に移し、沈殿させた。上清を除去し、堆積片を、コラーゲンII型CSL2(Worthington番号4177)5~10mlに再懸濁した。コラゲナーゼを、組織サイズおよび種類に応じて、HamのF12培地中の1~2mg/mlの濃度で溶解した。その後、試料を、振とう機上、200rpm、37℃で30~45分間インキュベートした。
3.コラゲナーゼ処理後、管を振とう器から取り出し、消化されていない片を沈殿させ、放出された細胞を含有する上清を、15℃で10分間、1000rpmで遠心分離し、成長培地(10%FBS、0.2mM L-グルチオン、10ng/ml bFGF、0.005U/ml EPOを添加したハムのF12栄養混合物)に再懸濁し、成長培地を含有するT25に播種し、フラスコを、37℃、5%CO2下のインキュベーターに入れた。72時間後、非付着細胞を吸引により除去し、付着細胞をPBSで洗浄し、新鮮な成長培地を加えた。細胞が90~95%のコンフルエンスに達したら、成長培地を除去し、細胞をTrypLE(商標)3mlを使用して剥離した。細胞剥離後、成長培地を加え、細胞懸濁液を50mlの試験管に移し、1000rpm、15℃で10分間遠心分離し、上清を廃棄して、細胞パレットを収集し、細胞数を得た。
4.
図1に示す通り、10,000個の細胞を連続希釈のため使用して、クローンの単一細胞単離物を得た。およそ8個の細胞/mLを使用して、単一細胞単離物を得た。8個の細胞/mL懸濁液50μlを、96ウェルプレート中の個々のウェルに分注した。1個より多くの細胞を有するウェルは、顕微鏡下での目視検査により実験から除外した。
5.細胞数を手動で計数し、集団倍加レベル(PDL)を、式:PDL=3.32(log(収集時の総細胞/播種時の総細胞))を使用して計算した。クローンが老化に達するまで、継代培養を行い、一つの継代培養から次の継代培養でPDLの変化を観察しなかった。
【0116】
計80個のウェルから、1個の細胞を含む24個のウェルを検出した。24個の播種した単一細胞のうち、18個が、活発に増殖するクローンを形成した(クローニング効率75%)。
図2は、単一細胞培養の一部の代表的な画像を示す。
【0117】
増殖しているクローンを、4%パラホルムアルデヒドで固定し、間葉系幹細胞マーカーCD105およびCD90、幹細胞マーカーCD117、内皮細胞マーカーCD31、マスト細胞マーカートリプターゼ、造血剤細胞系統マーカーCD45、ならびにCD44およびCD47に特異的な蛍光色素抱合一次抗体で標識し、10,000事象/試料を収集しながら、Becton-Dickinson Fortessa上でのフローサイトメトリーにより評価した。
【0118】
FACS分析は、18個の増殖しているクローン全てが、CD117陽性であったが、7個のみが、高い(>80%)CD117陽性であり(
図3)、残りの11個のクローンが、弱く陽性であった(<74%)ことを示した。
【0119】
さらに、これらの高CD117陽性クローンは、低CD117陽性クローン(データは示さず)よりも約2倍速く増殖し、CD31およびCD45について陰性であった。
【0120】
これらの結果をまとめると、動物および成人ヒト心臓由来のCD117+細胞とは対照的に、ヒト新生児心臓CD117+細胞は、驚くべきことに、内皮細胞および造血前駆細胞の混入を回避し、これは、生物学的に固有かつ予想外であるだけでなく、文献において現在行われている通りである。
【0121】
実施例2:新生児CD117陽性心前駆細胞の不死化
新生児CD117+CSCは、損傷した心筋の修復、再生および/またはリモデリングを誘導し、心機能を改善するタンパク質を分泌する。これらのCD117+新生児CSCの不死化は、このような分泌タンパク質を含む条件培地の無制限の供給である産生を可能にする。本実施例は、このような不死化を提供する。
【0122】
新生児CD117+CSCクローンを、実施例1で上で開示した方法に従って単離し、クローンを培養で拡大する。典型的には、高レベルのCD117を発現するクローンを不死化したが、一部の例では、低レベルのCD117を発現するクローンも不死化した。
【0123】
不死化を、ヒト新生児CD117+心臓CSCクローンのhTERTを発現するレンチウイルスベクターでのトランスフェクションによって達成し、hTERTを発現するクローンを単離し、増殖させ、長期使用のため保存した。
図4は、本発明による新生児CD117+ヒト新生児心臓CSCの不死化における使用のための構築物の非限定的な例を示す。
【0124】
加えて、可逆的な不死化新生児CD117+CSCクローンを、例えば、その全体を参照により本明細書に取り込む、Hu,X.,et al.,Oncotarget,2017,Vol.8,(No.67),pp:111847-111865に記載される方法による、遺伝子切除のため使用することができる配列と
図4に示す不死化遺伝子を隣接させることによって構築することができる。一例では、不死化遺伝子は、FRT部位、すなわち、一つがCMVプロモーターに対して5’、および一つがピューロマイシン耐性カセットに対して3’で隣接している。次いで、FLPリコンビナーゼを使用して、不死化カセットの切除を促進し、これにより不死化を逆転させてもよい。多量の条件培地の産生のためのその有用性に加えて、このような細胞は、任意選択的に、細胞から作製した条件培地と組み合わせた、細胞の患者への送達に先立ち、不死化を逆転させた後、患者への直接投与のため使用することができる。
【0125】
殺傷スイッチ制御を、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV-TK)のチミジンキナーゼの遺伝子を組み込むことによって、ベクターに任意選択的に組み込む。HSV-TKは、グアノシンヌクレオシドの類似体であるプロドラッグガンシクロビル(GCV)をリン酸化する。リン酸化GCVを、宿主DNAに組み込み、DNA鎖の伸長を終結させ、これにより、細胞死をもたらす。したがって、このような可逆的な不死化新生児心臓CSCをGCVで投与された患者の治療は、HSV-TKを発現する投与した細胞の死をもたらし、薬剤の安全性を確保する。他の殺傷スイッチは、当該技術分野で既知であり、本明細書に開示する構築物で使用してもよい。
【0126】
実施例3 新生児CSCおよびその培養培地の特徴決定
a.テロメアおよびテロメア長
ヒト新生児心臓CSCクローンのテロメアの長さを計算するために、蛍光インサイツハイブリダイゼーションおよびDako(カタログ番号K5327)のフローサイトメトリー用のフルオレセイン抱合PNAプローブ(Telomere PNAキット/FITC)を使用して、フローサイトメトリー分析を行う。四倍体であり、長いテロメア(>30kbp)を有する細胞株1301を、対照として使用する。相対的なテロメア長(RTL)を、以下の式を使用して計算する。
【数1】
【0127】
b.老化関連β-ガラクトシダーゼ染色
細胞老化を、製造元の指示に従い、β-ガラクトシダーゼ染色キット(カタログ番号9860、Cell Signaling technology、ボストン、マサチューセッツ州)を使用して評価する。簡潔に述べると、不死化の前後のヒト新生児心臓CSC(5.0×10
4)を、24ウェルに播種する。24時間後、成長培地を細胞から除去し、細胞をPBSで洗浄し、室温で15分間、1×固定溶液で固定する。細胞を、β-ガラクトシダーゼ染色溶液1mlと一晩インキュベートし、翌日に撮像する。結果は、これらの新生児ヒト心臓由来幹細胞が老化の証拠を示さないことを示している。(
図5)
【0128】
c.パラクリン因子分泌
不死化新生児CSCを、85~90%のコンフルエンスに達するまで、完全に異物フリーの培地で成長させた。細胞を、温かい、血清および成長因子を含まないHamのF12培地で2回洗浄し、その後、HamのF12を添加し、37℃で、48時間インキュベートして、総条件培地(TCM)を得た。TCMから、1000gで30分間、続いて20,000gで30分間の遠心分離により、微小粒子(MV)を除去し、次いで3KDaのフィルター(Millipore Inc、ビレリカ、マサチューセッツ州)を使用して濃縮することによって、細胞デブリおよび粒子状物質を予め除去した。総タンパク質含有量を、TCA-NLS法、続いてビシンコニンアッセイ(BCA)法(Thermofisher、Waltham、MA)を使用して、定量した。Im-nCSC由来のTCMの外観は、透き通って透明であり、アポトーシス体を含まない(
図8)。IM-nCPC TCMは、dsDNAを含まず、0.2~0.4ng/ml(最大許容200ng/ml)である。TCMは、90~99.0%CD63
+であり、CD45およびCD31について陰性である(図)。
【0129】
タンパク質含量を正規化するために、本発明者らは、以下の式:
(濃縮係数)×(培地の総容量)/条件培地の総タンパク質含量 を使用した。
【0130】
条件培地を、TCA-NLS法、続いてBCA法を使用して定量し、タンパク質合計1mgに正規化する。8種のパラクリン因子VEGFA、SDF-1α、PDGFB、IGF- 1、ANG-1、bFGF、SCFおよびHGFを、製造業者のプロトコルに従って、メソスケールディスカバリーデバイスを使用して分析する。結果は、Im-nCSC TCMが、8種のパラクリン因子全てを表1に示すレベルで分泌することを示す。
【表1】
【0131】
実施例4-不死化新生児CSCおよびその培養培地の機能的活性
a.インビトロ活性
a1.血管新生活性
血管形成に対するTCMの血管新生促進効果を試験するために、HMEC細胞を、Im-nCPC由来TCM(Im-nCSC TCM)および陰性対照としてIMDM基礎培地、陽性対照としてHMEC完全培地を使用したインビトロ標準血管新生アッセイに供した。簡潔に述べると、管アッセイ形成を行い、CMの血管新生能を評価する。管様構造の形成を、前述したように、マトリゲルで被覆した24ウェルプレート(BD Biosciences、サンノゼ、カリフォルニア州)で評価する。簡潔に述べると、ヒト微小血管内皮細胞(HMEC-1、ATCC(登録商標)CRL-3243(商標))を計数し、マトリゲル(製品番号354230、BD Biosciences、サンノゼ、カリフォルニア州)を含有する還元成長因子上に播種した20,000個の細胞/mm2の密度で播種し、(i)内皮完全細胞培地(Lonza)を陽性対照として、(ii)Im-nCSC由来の条件培地、または(iii)基礎培地を陰性対照として加える。6~12時間後に細胞を撮像し、各ウェルの完全な画像を再構成する。次に、ImageJ64、NIH(http://rsb.info.nih.gov/ij)を使用して、総管長を測定する。
【0132】
結果は、複雑かつ成熟した内皮管ネットワークを形成するHMECの能力が、IMDMに存在しないが、Im-nCSC TCMの存在下では、
図10に示すようにHMECが成熟管を形成したことを示した。
【0133】
a2.創傷治癒活性
Im-nCSC TCMの創傷治癒能力を評価するために、インビトロ創傷治癒アッセイを行って、総条件培地で処理した細胞の相対的遊走能力を評価した。HMEC(HMEC-1 ATCC(登録商標)CRL-3243(商標))を12ウェルプレートに播種して、コンフルエントな単層を生成した。基底培地を用いた12時間の血清枯渇状態の後、1mLのピペットチップを使用して、細胞単層に沿って直線状の傷を付けて、創傷をシミュレートした。細胞を基礎培地で1回洗浄することによって、細胞デブリを除去した。細胞を、Im-nCSC、陰性対照としてのPBSおよび陽性対照としてのVEGF-A(3.0μg/μl)に由来する総条件培地で処理した。各創傷の画像を、治療後0時間および22時間の時点で、スクラッチに沿った特定の参照点で撮影した。HMECを、カルセインAM細胞透過性染料(ThermoFisher Scientific,Inc.)で染色し、Im-nCSC TCMから得た条件培地で処理前および処理後に撮像した。ImageProソフトウェアを使用して、治療前および後の総創傷面積を測定し、創傷閉鎖における変化率を計算した。結果は、Im-nCSC由来TCMが、陰性対照と比較して、創傷治癒プロセスを有意に増加させたことを示した(
図11)。
【0134】
a3.H2O2誘導性細胞アポトーシスに対する保護
酸化ストレスに応答したアポトーシスの評価を、アネキシンVアポトーシス検出キット(カタログ番号556547、BD Pharmingin)を使用して行う。簡潔に述べると、新生児ラット心筋細胞(NRCM)をLonza Walkersville,Inc(RCM-561)から購入し、製造元の指示に従って培養した。簡潔に述べると、ラット心筋細胞成長培地(RCGM)の全ての成分を、冷却室で一晩解凍し、混合した。24ウェルプレートの10ウェルを、ニトロセルロース/メタノール混合物(メタノール1.0mlに溶解した0.1cm2のニトロセルロース)でコーティングし、ラット心筋細胞の各バイアルを、完全RCGM10mlに懸濁した。細胞懸濁液1mlを、一晩インキュベーション後に、各ウェル(3×10
5個の細胞/ウェル)に移し、NRCMを、血清を含まない基礎培地中、Im-nCSC由来条件培地(50μM)の存在下または不存在下で6時間、100μM過酸化水素で処理し(n=4つの技術的複製)、続いてBD Pharmingen FITCアネキシンVアポトーシス検出キットI(カタログ番号556547)を使用してアネキシンV/PIについてフロー分析した。データは、Im-nCSC TCMが、早期アポトーシスマーカーアネキシンVの発現を有意に減少したことを示した(
図9)。これらの結果は、Im-nCSC由来のTCMが、酸化ストレス誘導性アポトーシスを減少したことを示す。
【0135】
b.インビボ活性
b1.ラット心筋梗塞(MI)モデルにおける細胞移植
心筋梗塞を、免疫不全のオスのラット(体重、250~300g)における左前下行(LAD)冠動脈の永久的な結索によって誘発する。心臓を、左開胸を介して露出し、近位LADを結索する。その後、ビークル(IMDM)100μLに懸濁した100万個のnCSCおよびIm-nCSC細胞を、対照としてビークル(IMDM)100μLを、梗塞の四つの隣接部位の心筋に注入する。ベースラインの心エコー図を、心筋梗塞手術の1日前に取得する。心エコー検査も、心筋梗塞の7日後および28日後に行う。二次元およびMモード心エコーを、VisualSonics Vevo 2100超音波ユニット(VisualSonics、Toronto、Canada、www.visualsonics.com)を使用して行い、分割面積変化(FAC)を評価する。画像を、胸骨傍長軸および胸骨傍短軸から中乳頭レベルで取得する。心筋の生存率を、以下のように評価する。梗塞サイズを計算するために、長軸に沿った様々なレベルでのマッソントリクローム染色切片を、コラーゲン沈着について分析する。梗塞サイズの決定のため正中線技術を、前記の通り使用する。染色した切片を、ImageProソフトウェアによって分析する。簡潔に述べると、梗塞サイズを、長軸に沿った様々なレベルでマッソントリクローム染色した切片を使用して計算する。生組織および非生組織を計算するために、赤色画素(生組織)および青色画素(非生組織)の数を計算し、画素の非生組織/全体数の比率を示す。データは、nCSCとnCSC由来の不死化クローンの両方が、nCSCまたはnCSC由来の不死化クローンの移植後の、駆出率の有意な増加および率の短縮によって図において示す通り、機能的であることを示した。これらの結果は、不死化が、nCSC由来クローンの機能に影響を与えなかったことを示唆する(
図7)。
【0136】
b2.ラットMIモデルにおけるIm-nCPC由来TCMの機能的活性
Im-nCSC由来の総条件培地(TCM)の機能を決定するために、ラットを、縫合でのLAD結索による前中隔MIの対象にする。麻酔し、仰臥位のラットで、心エコーを行い、超音波プローブを、胸壁に直接置いた。MIに先立ち、左心室駆出率(LVEF)は、約80%であった。MIの約10分後、処置(nCSC、Im-nCSC由来TCMおよびIMDM)を、尾静脈を使用して静脈内投与した。24時間後、心機能を、ベースラインの心エコー検査で評価した。5日後、治療群に、別の用量の処置を投与した。nCSCおよびIm-nCSC由来TCMを注射した動物は、MIの2日後からMIの4週後までLV機能の有意な悪化を示さなかった。4週の時点で、LVEFは、プラセボ群よりもnCSC治療群で有意に高かった(
図12)。短縮率(FS)および減少した収縮終期容積(ESV)を含む他のパラメータも、プラセボ群と比較して有意に改善し、心拍出量/体重および後壁厚を含む他のLV機能パラメータも改善および正常なリモデリング心臓の傾向にあった。nMSCの利点は、4週間のエンドポイント中顕著に持続した。(
図12)
【0137】
均等物
本発明は、上述の特定の実施形態と併せて記載されてきたが、多くの代替案、修正およびその他の変形は、当業者にとって明らかであろう。このようなすべての代替、修正および変形は、本発明の趣旨および範囲内に入ることが意図される。本明細書において言及され、かつ/または出願データシートに列挙される、全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公開は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、必要に応じて、様々な特許、出願、および刊行物の概念を採用して、さらにさらなる実施形態を提供するよう修正することができる。これらおよびその他の変更は、上記に詳述した説明に照らして実施形態に行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定するものとして解釈されるべきではないが、かかる特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に、全ての可能な実施形態を含むものとして解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されない。
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【国際調査報告】