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特表2023-502982起電性細胞の光学的及び電気的プロービング用3次元マイクロ電極アレイ(MEA)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】起電性細胞の光学的及び電気的プロービング用3次元マイクロ電極アレイ(MEA)
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230119BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230119BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALN20230119BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 B
C12M1/34 D
C12N5/0793
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528556
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 US2020060779
(87)【国際公開番号】W WO2021097447
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/935,987
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/083,976
(32)【優先日】2020-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510170730
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ セントラル フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520195970
【氏名又は名称】アクソシム, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】ラジャラマン スワミナサン
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ チャールズ エム
(72)【発明者】
【氏名】クンドゥ アブラ
(72)【発明者】
【氏名】カーリー ローリー
(72)【発明者】
【氏名】ムーア マイケル ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヒエウ
(72)【発明者】
【氏名】ラウンツリー コリー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC02
4B029FA15
4B065AA90X
4B065CA46
(57)【要約】
本明細書において開示されるのは、基板体(例えば、チップ)、マイクロニードル、トレース、及びウェルを含む新しい3次元マイクロ電極アレイ(3D MEA)であり、3D MEAは、基板体の一方の側の電気信号を基板体の他方の側に伝達させることを実現。また、3D MEAを使用して起電性細胞を成長させ、電気生理学的信号を得る方法も開示される。また、3D MEAを製造するための製造技術も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元マイクロ電極アレイ(3D MEA)を製造する方法であって、
平面導電性シートに複数の切り欠きを形成することと、
複数のマイクロニードルが前記平面導電性シートに対して直角に延びるように、前記複数の切り欠きで材料を移行させることと、
前記平面導体シートを切断し、前記複数のマイクロニードルを前記平面シートから切り離し、切り離された複数のマイクロニードルを製造することと、
前記切り離された複数のマイクロニードルを上面、下面、及び前記上面と下面の間にある縁面を備える透明な平面基板体に固定することと、
を含み、
一又は複数の導電性トレースが前記縁面と、前記下面又は上面の一方又は双方に蒸着され、
前記切り離された複数のマイクロニードルが前記導体トレース上に固定されることにより、前記複数のマイクロニードルのうち少なくとも一つのマイクロニードルと前記複数一又は複数の導電性トレースのうち少なくとも一つのトレースが導電的に接続される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記平面導電性基板は、金属、ポリマー-金属複合体、導電性シリコン複合体又は導電性ガラスで構成される、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記金属は、ステンレス鋼、チタン、亜鉛、マグネシウムニチノール、バナジウム又はそれらの組み合わせ及びそれらの合金を含む、
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記透明な平面基板は、ガラス又は透明なポリマーを含む、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロニードルは、前記平面導電性シートに対して60°以上、70°又は80°の角度となっている、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロニードルは、80°以上の角度となっている、
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
絶縁層を前記複数のマイクロニードルに蒸着することを更に含む、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記絶縁層は、パリレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、SU-8、二酸化ケイ素、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、又はこれらの組み合わせを含むとともに、前記複数のマイクロ電極の一部が露出するように蒸着され、前記マイクロ電極の一部が前記絶縁層で覆われる、
ことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記絶縁層は、狭域精密ドロップキャスティングによって蒸着される、
ことを特徴とする請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記固定ステップに続けて、細胞を前記複数のマイクロニードルの上に配置することを更に含む、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記細胞は、起電性細胞を含む、
ことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記起電性細胞から電気生理学的信号を検知することを更に含む、
ことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記切り離された複数のマイクロニードルを前記透明な平面基板体に固定する前に、前記マスクが少なくとも前記上面又は下面のいずれか一方と前記縁面の一部とを覆うように、少なくとも一つの開口部を備えるマスクを前記透明な平面基板体に当ること、
導電性材料を前記少なくとも一つの開口部を通して前記透明な平面基板体に蒸着することと、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記蒸着は、電子ビーム蒸着、抵抗蒸着、レーザー蒸着、スクリーン印刷、又は電気メッキによって行われる、
ことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
マスクを当てられた状態の前記透明な平面基板体は、前記導電性材料が前記縁面に蒸着されるように蒸着中に角度を付けて保持される、
ことを特徴とする請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記透明な平面基板体は、基部と、前記基部に対して直角に固定されたブラケット部とを備える角度付き蒸着リグによって角度をつけて保持される、
ことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の方法によって製造された3D MEA。
【請求項18】
透明な平面基板体を少なくとも一つの開口部を備えたマスクで覆うことであって、前記透明な平面基板体は上面、下面、及び前記上面と下面の間にある少なくとも一つの縁面を備え、前記少なくとも一つの開口部は前記縁面に重なることと、
導電性材料を前記少なくとも一つの開口部を通して前記透明な平面基板体に蒸着することであって、前記導電性材料は前記縁面に蒸着され、前記透明な平面基板は蒸着の方向に対して角度をつけて保持されることと、を備える、
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記透明な平面基板の保持は、前記透明な平面基板を斜角蒸着と関連付けることを備える、
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記斜角蒸着は、基部と、前記基部に対して直角に固定されたブラケット部とを備える角度付き蒸着リグを使用する、
ことを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
3次元マイクロ電極アレイ(3D MEA)を製造する方法であって、
複数のマイクロニードルを上面、下面、及び前記上面と下面の間にある縁面を備え、前記下面又は上面の一方又は双方に一又は複数の導電性トレースが蒸着された透明な平面基板体に固定することと、
少なくとも一つのフレーム部材を前記透明な平面基板に取り付けることであって、前記少なくとも一つのフレーム部材は、前記縁面が挿入される少なくとも一つの溝と、その中に画定され前記上面から前記下面に広がる少なくとも一つのチャネルを備えることと、
導電性材料を前記少なくとも一つのチャネルに蒸着し、前記導電性材料が前記少なくとも一つのトレースと導電的に接続するようにすることと、を備える、
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記複数のマイクロニードルは、金属ポリマー金属複合体、シリコン及び/又は導電性ガラスで構成される、
ことを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記透明な平面基板は、ガラスを含む、
ことを特徴とする請求項21及び22記載の方法。
【請求項24】
平面導電性シートに複数の切り欠きを形成することと、
前記平面導電性シートに対して直角に延びるように、前記複数の切り欠きで材料を移行させることと、
前記平面導体シートを切断し、前期複数のマイクロニードルを前期平面シートから切り離し、切り離された複数のマイクロニードルを製造することと、
によって、前記固定ステップの前に前記複数のマイクロニードルを製造する、
ことを特徴とする請求項21~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記複数のマイクロニードルは、前記平面導電性シートに対して60°以上、70°又は80°の角度となっている、
ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記複数のマイクロニードルは、80°以上の角度となっている、
ことを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項27】
絶縁層を前記複数のマイクロニードルに蒸着することを更に備える、
ことを特徴とする請求項21~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記絶縁層は、パリレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、SU-8、二酸化ケイ素、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート又はこれらの組み合わせを含むとともに、前記複数のマイクロ電極の一部が露出するように蒸着され、前記マイクロ電極の一部が前記絶縁層で覆われる、
ことを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記絶縁層は、狭域精密ドロップキャスティングによって蒸着される、
ことを特徴とする請求項27又は28記載の方法。
【請求項30】
前記固定ステップに続けて、細胞を前記複数のマイクロニードルの上に配置することを更に備える、
ことを特徴とする請求項21~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記細胞は、起電性細胞である、
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記起電性細胞から電気生理学的信号を検知することを更に含む、
ことを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
請求項21~32のいずれかに記載の方法によって製造された3D MEA。
【請求項34】
上面、下面、及び前記上面と下面の間にある縁面を備える透明な平面基板体と、
前記透明な平面基板体に蒸着される複数の導電性トレースと、
ステンレス鋼で構成される複数の微細加工3Dマイクロニードルであって、前記複数の3Dマイクロニードルのうち少なくとも一つのマイクロニードルが前記複数の導電性トレースのうち少なくとも一つと導電的に接続するように前記透明な平面基板体に取り付けられる複数の微細加工3Dマイクロニードルと、
を備え、
任意で、前記透明な平面基板体と関連付けられた少なくとも一つのフレーム部材であって、前記少なくとも一つのフレーム部材は、前記縁面が挿入される少なくとも一つの溝と、その中に画定され前記上面から前記下面に広がる少なくとも一つのチャネルと、前記少なくとも一つのチャネル内に蒸着されることで、前記複数の導電性トレースのうち少なくとも一つとの導電的な接続を提供する導電性材料と、を備える少なくとも一つのフレーム部材を備える、
ことを特徴とする3D MEA。
【請求項35】
平面導電性シートに複数の切り欠きを形成することと、
複数のマイクロニードルが前記平面導電性シートに対して直角に延びるように、前記複数の切り欠きで材料を移行させることと、
前記平面導体シートを切断し、前期複数のマイクロニードルを前記平面シートから切り離し、切り離された複数のマイクロニードルを製造することと、
によって、前記複数の微細加工3Dマイクロニードルが製造される、
ことを特徴とする請求項34記載の3D MEA。
【請求項36】
前記複数のマイクロニードル上に、前記複数のマイクロニードルの一部が露出し、かつそれにより前記マイクロニードルの一部が覆われるような絶縁層を更に備える、
ことを特徴とする請求項34又は35記載の3D MEA。
【請求項37】
前記絶縁層は、パリレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、SU-8、二酸化ケイ素、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、又はこれらの組み合わせによって構成される、
ことを特徴とする請求項36記載の3D MEA。
【請求項38】
前記絶縁層は、狭域精密ドロップキャスティングによって蒸着される、
ことを特徴とする請求項36又は37記載の3D MEA。
【請求項39】
前記複数のマイクロニードルの上に配置された細胞を更に備える、
ことを特徴とする請求項34~38のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項40】
前記細胞は、起電性細胞である、
ことを特徴とする請求項39記載の3D MEA。
【請求項41】
前記導電性材料は、銀、金、グラフェン又はカーボンナノチューブを含む、
ことを特徴とする請求項39記載の3D MEA。
【請求項42】
上面、下面、及び前記上面と下面の間にある縁面を備える透明な平面基板体と、
前記透明な平面基板体の前記縁面と、前記上面又は下面の一方又は双方に蒸着される複数の導電性トレースと、
ステンレス鋼で構成される複数の微細加工3Dマイクロニードルであって、前記複数の3Dマイクロニードルのうち少なくとも一つのマイクロニードルが前記複数の導電性トレースのうち少なくとも一つと導電的に接続するように前記透明な平面基板体に取り付けられる複数の微細加工3Dマイクロニードルと、
を備える、
ことを特徴とする3D MEA。
【請求項43】
平面導電性シートに複数の切り欠きを形成することと、
複数のマイクロニードルが前記平面導電性シートに対して直角に延びるように、前記複数の切り欠きで材料を移行させることと、
前記平面導体シートを切断し、前期複数のマイクロニードルを前記平面シートから切り離し、切り離された複数のマイクロニードルを製造することと、
によって、前記複数の微細加工3Dマイクロニードルが製造される、
ことを特徴とする請求項42記載の3D MEA。
【請求項44】
前記複数のマイクロニードル上に、前記複数のマイクロニードルの一部が露出し、かつそれにより前記マイクロニードルの一部が覆われるような絶縁層を更に備える、
ことを特徴とする請求項42又は43記載の3D MEA。
【請求項45】
前記絶縁層は、パリレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、SU-8、二酸化ケイ素、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、又はこれらの組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項44記載の3D MEA。
【請求項46】
前記絶縁層は、狭域精密ドロップキャスティングによって蒸着される、
ことを特徴とする請求項44又は45記載の3D MEA。
【請求項47】
前記複数のマイクロニードルの上に配置された細胞を更に備える、
ことを特徴とする請求項42~46のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項48】
前記細胞は、起電性細胞である、
ことを特徴とする請求項47記載の3D MEA。
【請求項49】
前記導電性材料は、銀、金、グラフェン又はカーボンナノチューブを含む、
ことを特徴とする請求項34記載の3D MEA。
【請求項50】
前記透明な平面基板体は、ガラスを含む、
ことを特徴とする請求項42~49のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項51】
透明な平面基板体に、液体溶液が複数のマイクロニードルの上に保持されてもよいように関連付けられた培養ウェルを更に含む、
ことを特徴とする請求項42~50のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項52】
透明な平面基板体に、液体溶液が複数のマイクロニードルの上に保持されてもよいように関連付けられた培養ウェルを更に含む、
ことを特徴とする請求項34~41のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項53】
請求項48記載の3D MEAを取得することと、
起電性細胞から電気生理学的信号を検知することと、
を備える、
ことを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項40記載の3D MEAを取得することと、
起電性細胞から電気生理学的信号を検知することと、
を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項55】
上面、下面、及び前記上面と下面の間にある縁面を備える透明な平面基板体と、
前記縁面、前記上面又は下面、もしくはその組み合わせに蒸着される複数の導電性トレースと、
複数の微細加工3Dマイクロニードルであって、前記複数の3Dマイクロニードルのうち少なくとも一つのマイクロニードルが前記複数の導電性トレースのうち少なくとも一つと導電的に接続するように前記透明な平面基板体に取り付けられ、前記複数の微細加工3Dマイクロニードルは、3Dマイクロニードルの第1のセットを備え、第1の幅寸法と第1の長さ寸法を有する第1部分と、3Dマイクロニードルの第2のセットを備え、第2の幅寸法と第2の長さ寸法を有する第2部分とを備える組立体において提供され、前記第2の幅寸法は前記第1の幅寸法より大きく、前記第1の長さ寸法は前記第2の長さ寸法より大きく、そして、任意で、前記複数の微細加工3Dマイクロニードルは、導電的に分離されている複数の微細加工3Dマイクロニードルと、
を備える、
ことを特徴とする3D MEA。
【請求項56】
前記第1のセットは、約8個の3Dマイクロ電極を備え、前記第2のセットは、約2個の3Dマイクロ電極を備える、
ことを特徴とする請求項55記載の3D MEA。
【請求項57】
前記第1の幅寸法は約10~500μmであり、前記第1の長さ寸法は約10~500μmであり、前記第2の幅寸法は約10~500μmであり、前記第2の長さ寸法は約10~500μmである、
ことを特徴とする請求項55記載の3D MEA。
【請求項58】
前記第1部分と前記第2部分は、前記第1部分が神経細胞の神経管と一致し、前記第2部分が神経細胞の神経節と一致する幾何学形状を形成する、
ことを特徴とする請求項55~57のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項59】
前記複数のマイクロニードルの上に配置された一又は複数の細胞を更に備える、
ことを特徴とする請求項55~58のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項60】
前記一又は複数の細胞は、一又は複数の神経細胞を含む、
ことを特徴とする請求項59記載の3D MEA。
【請求項61】
前記一又は複数の神経細胞は、末梢神経系ニューロン、中枢神経系ニューロン、シュワン細胞、オリゴデンドロサイト、ミクログリア細胞、グリア細胞、他の末梢又は中枢神経支持細胞、もしくはそれらの組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項60記載の3D MEA。
【請求項62】
前記切り離された複数のマイクロニードルは、3Dマイクロニードルの第1のセットを備え、第1の幅寸法と第1の長さ寸法を有する第1部分と、3Dマイクロニードルの第2のセットを備え、第2の幅寸法と第2の長さ寸法を有する第2部分とを備え、前記第2の幅寸法は前記第1の幅寸法より大きく、前記第1の長さ寸法は前記第2の長さ寸法より大きく、そして、任意で、前記複数の3Dマイクロニードルを導電的に分離することを更に備える、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項63】
前記複数の3Dマイクロニードルは、3Dマイクロニードルの第1のセットを備え、第1の幅寸法と第1の長さ寸法を有する第1部分と、3Dマイクロニードルの第2のセットを備え、第2の幅寸法と第2の長さ寸法を有する第2部分とを備え、前記第2の幅寸法は前記第1の幅寸法より大きく、前記第1の長さ寸法は前記第2の長さ寸法より大きく、そして、任意で、前記複数の3Dマイクロニードルを導電的に分離することを更に備える、
ことを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項64】
前記複数の3Dマイクロニードルは、3Dマイクロニードルの第1のセットを備え、第1の幅寸法と第1の長さ寸法を有する第1部分と、3Dマイクロニードルの第2のセットを備え、第2の幅寸法と第2の長さ寸法を有する第2部分とを備え、前記第2の幅寸法は前記第1の幅寸法より大きく、前記第1の長さ寸法は前記第2の長さ寸法より大きく、そして、任意で、前記複数の微細加工3Dマイクロニードルを導電的に分離することを更に備える、
ことを特徴とする請求項34~52のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項65】
前記第1部分と前記第2部分は、前記第1部分が神経細胞の神経管と一致し、前記第2部分が神経細胞の神経節と一致する幾何学形状を形成する、
ことを特徴とする請求項64記載の3D MEA。
【請求項66】
前記3D MEAは、伝導速度、振幅、積分、化合物投与後の興奮性、閾値、感度、CAP時間幅、CAP波形形状、又はそれらの組み合わせを推定するために複合活動電位を測定するように構成される、
ことを特徴とする請求項34~52、64又は65のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項67】
前記複数の細胞は、一又は複数の神経細胞を含む、
ことを特徴とする請求項10~12及び30~32のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
前記一又は複数の神経細胞は、末梢神経系ニューロン、中枢神経系ニューロン、シュワン細胞、オリゴデンドロサイト、ミクログリア細胞、グリア細胞、他の末梢又は中枢神経支持細胞、もしくはそれらの組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項67記載の方法。
【請求項68】
前記細胞は、一又は複数の神経細胞を含む、
ことを特徴とする請求項39、40、47、48のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項69】
前記一又は複数の神経細胞は、末梢神経系ニューロン、中枢神経系ニューロン、シュワン細胞、オリゴデンドロサイト、ミクログリア細胞、グリア細胞、他の末梢又は中枢神経支持細胞もしくはそれらの組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項68記載の3D MEA。
【請求項70】
前記複数のマイクロニードルのうち少なくとも一つは、最大約1000μmの高さを備える、
ことを特徴とする請求項39~52、55~61、64~66、68又は69のいずれかに記載の3D MEA。
【請求項71】
前記少なくとも一つの3次元電極は、約300μm~約1000μmの間の高さを備える、
ことを特徴とする請求項70記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項72】
前記少なくとも一つの3次元電極は、最大約150μmの高さを備える、
ことを特徴とする請求項70記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項73】
前記少なくとも一つの3次元電極は、約50μm~約150μmの間の高さを備える、
ことを特徴とする請求項70記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項74】
前記3D MEAは、マイクロエンジニアリング生理学的システムにおける一又は複数の生体電気信号の、リアルタイムで信頼性の高い検知を行う、
ことを特徴とする請求項55又は64記載の3D MEA。
【請求項75】
前記マイクロエンジニアリング生理学的システムは、組織移植片、細胞懸濁液、又はそれらの組み合わせを備える、
ことを特徴とする請求項74記載の3D MEA。
【請求項76】
前記マイクロエンジニアリングされた生理学的システムは、マイクロパターン化プラットフォーム上で培養された神経細胞又はマイクロパターン化プラットフォーム上に播種された組織移植片を備え、前記マイクロパターン化プラットフォームは、神経構造物の形成を可能にし、前記神経構造物は、軸索成長領域、神経節領域、樹状突起領域、シナプス領域、スフェロイド領域、又はそれらの組み合わせを備える、
ことを特徴とする請求項74記載の3D MEA。
【請求項77】
前記第2部分は、前記神経節領域又はスフェロイド領域に配置され、前記第1部分は、軸索成長領域の下に規定された間隔で配置された複数のマイクロニードルを備える、
ことを特徴とする請求項76記載の3D MEA。
【請求項78】
前記3Dマイクロニードルの第1のセット、前記3Dマイクロニードルの第2のセット、又は双方は、記録電極、刺激電極、又はそれらの組み合わせを備える、
ことを特徴とする請求項77記載の3D MEA。
【請求項79】
前記規定された間隔は、最大約50μmの間隔を含む、
ことを特徴とする請求項77記載の3D MEA。
【請求項80】
前記マイクロ電極アレイは、最大1年間、前記マイクロエンジニアリング生理学的システムにおける一又は複数の生体電気信号の検知を行う、
ことを特徴とする請求項74記載の3D MEA。
【請求項81】
前記マイクロ電極アレイは、最大約8週間、前記マイクロエンジニアリング生理学的システムにおける一又は複数の生体電気信号の検知を行う、
ことを特徴とする請求項74記載の3D MEA。
【請求項82】
前記3D MEAは、前記マイクロエンジニアリング生理学的システムが成熟している間、前記マイクロエンジニアリング生理学的システムの電気生理学的及び光学的な追跡を同時に行うことができるように構成される、
ことを特徴とする請求項80又は81記載の3D MEA。
【請求項83】
ニューロン細胞を前記第2部分の少なくとも一部の上に配置するか、又は組織移植片を前記第2部分の少なくとも一部の上に播種することと、軸索を前記第1部分の少なくとも一部の上で成長させること、とによってマイクロエンジニアリング生理学的システムを形成することと、
前記マイクロエンジニアリング生理学的システムにおける一又は複数の生体電気信号の検知をリアルタイムで行うこと、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項62又は63記載の方法。
【請求項84】
前記第1の複数の電極、前記第2の複数の電極、又は双方は、記録電極、刺激電極、又はそれらの組み合わせを備える、
ことを特徴とする請求項83記載の方法。
【請求項85】
形成の間、前記マイクロエンジニアリング生理学的システム内の生体電気信号を検知し、かつ前記マイクロエンジニアリング生理学的システムを光学的に追跡することと、前記マイクロエンジニアリング生理学的システム内の生体電気信号を検知し、かつ前記マイクロエンジニアリング生理学的システムを光学的に追跡することとを最大1年間続けること、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項83記載の方法。
【請求項86】
マイクロエンジニアリング生理学的システムにおいて複合活動電位を再現可能に検知するためのシステムであって、前記システムは、請求項74記載の3D MEAを備え、前記マイクロエンジニアリング生理学的システムは、一又は複数のニューロン細胞を備える、
ことを特徴とするシステム。
【請求項87】
前記複数の3Dマイクロニードルを導電的に分離することを更に備える、
ことを特徴とする請求項1~16又は21~31のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
3次元マイクロ電極アレイ(3D MEA)を製造する方法であって、
平面導電性シートに複数の切り欠きを形成することと、
複数のマイクロニードルが前記平面導電性シートに対して直角に延びるように、前記複数の切り欠きで材料を移行させることと、
前記平面導体シートを切断し、前期複数のマイクロニードルを前期平面シートから切り離し、切り離された複数のマイクロニードルを製造することと、
前記切り離された複数のマイクロニードルを上面、下面、及び前記上面と下面の間にある縁面を備える透明な平面基板体に固定することと、
を備える方法。
【請求項89】
一又は複数の導電性トレースが前記縁面と、前記下面又は上面の一方又は双方に蒸着されている、
ことを特徴とする請求項88記載の方法。
【請求項90】
前記縁面が挿入される少なくとも一つの溝と、その中に画定され前記上面から前記下面に広がる少なくとも一つのチャネルとを備える少なくとも一つのフレーム部材を前記透明な平面基板体に取り付けることと、
導電性材料を前記少なくとも一つのチャネルに蒸着し、前記導電性材料が前記少なくとも一つのトレースと導電的に接続するようにすることと、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項88記載の方法。
【請求項91】
前記切り離された複数のマイクロニードルは、3Dマイクロニードルの第1のセットを備え、第1の幅寸法と第1の長さ寸法を有する第1部分と、3Dマイクロニードルの第2のセットを備え、第2の幅寸法と第2の長さ寸法を有する第2部分とを備え、前記第2の幅寸法は前記第1の幅寸法より大きく、前記第1の長さ寸法は前記第2の長さ寸法より大きく、そして、任意で、前記複数の3Dマイクロニードルを導電的に分離することを更に備える、
ことを特徴とする請求項88記載の方法。
【請求項92】
前記角度は、約60°~90°、約70°~90°又は約80°~90°となっている、
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項93】
前記基板体の前記角度は、前記蒸着の方向に対して約25°~85°となっている、
ことを特徴とする請求項15又は18~20のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
前記基板の前記角度は、前記蒸着の角度に対して約40°~50°となっている、
ことを特徴とする請求項94記載の方法。
【請求項95】
前記蒸着は、電子ビームを使用して行われる、
ことを特徴とする請求項93又は94記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願、および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの刊行物の全体の開示は、本明細書に記載および請求された発明の日付の時点で当業者に知られている最新技術をより完全に説明するために、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本特許開示には、著作権保護の対象となる資料が包含されている。本著作権所有者は、米国特許商標庁の特許ファイルまたは記録に記載されている特許文書または特許開示のファクシミリ複製に異議はないが、それ以外の場合、全ての著作権を留保する。
【0003】
本出願は、2019年11月15日に出願された米国特許仮出願第62/935,987号及び2020年9月27日に出願された米国特許仮出願第62/083,976号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
電子回路とニューロンや心筋細胞などの生体細胞をインビトロで接続するための信頼性の高いデバイスを必要とする多くの分野では、マイクロ電極アレイ(MEA)の製造が不可欠である。細胞とともにMEAを使用することで、臨床試験前に薬の挙動を予測することができ、高価な後期開発薬の失敗や市場撤退を数多く回避することができる。MEAは、電気刺激性細胞から発せられる電気信号をモニターしたり、これらの細胞を電気的に刺激したりするために使用される。これらの測定はリアルタイムで行われるため、研究者はマイクロ電極の近傍にある小さなインビトロネットワーク領域において細胞群がどのように反応するかを非常に正確に研究することができる。MEAの利用により、毒性試験における動物の必要性が減少し、動物実験やヒトでの臨床試験に先立つベンチトップでの薬物スクリーニングをより良く行うことが可能になる。結果として、今日のMEAは、パーキンソン病、てんかん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、神経因性疼痛、自閉症スペクトラム障害などの神経疾患に対する「疾患オンチップ」モデルで使用されている。さらに、不整脈のリスクを評価するための既存の心臓安全性メカニズムの改善にも利用できる可能性がある。したがって、MEA技術は、疾患モデリング、創薬、安全性、毒性学を進歩させることができる。
【0005】
従来はクリーンルームと専門技術が必要とされてきたため、多くの生物学者はマイクロ流体力学における新たなイノベーションの追求を阻まれてきた。レーザーカッター、プロッターカッター、3Dプリンターなどの製造機器を低コストで利用でき、市販の材料を使用し、多様な製品設計者のコミュニティを集めることができるため、クリーンルームに代わる選択肢として、メーカースペースはますます広がりを見せている。広義には、メーカースペースは大抵の場合誰でも利用可能な物理的空間であり、利用者は追加的・削減的技術を含むツールを使用し「殆ど何でも」制作できる。こうした空間はFab Labネットワーク(fabfoundation.org)のような組織の一部として公式化されることもあれば、より非公式に組織化されることもある。世界中に1,000以上のアクティブな空間を持つメーカースペースは、製造技術利用の壁を下げ、マイクロ流体力学におけるラピッドプロトタイピング技術の探求を可能にしている。
【0006】
マイクロ流体製造が従来のフォトリソグラフィー方式から「メーカー製造」に移行した重要な要因は、産業に容易に転用できる完全統合型マイクロ流体システムの推進にある。しかし、ラボオンチップデバイスの大きな障害となっているのは、必要なすべてのインターフェース(検知、電気操作および流入/流出など)にデバイスを接続し、密封することである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Cは、レーザー微細加工の概略工程フローを示す。
図1A】25μmの厚さを有するステンレス鋼基板上に、Eolite Lasers社製Quick Laze 50ST2を用いて1064nm(IR)波長でワシントンタワー形状のレーザー微細加工を行う。
図1B】皮下注射針を用いてレーザー微細加工領域を面外に移行させ、同じ波長1064nm(IR)のレーザー微細加工により、3Dマイクロニードルをステンレス基板から切り離す。
図1C】切り離した鍵型3Dマイクロニードル。マイクロニードルの幅は300μm、高さは400μm、ピッチは600μmである。挿入図は、ステンレス鋼板の鍵型切り欠きを示している。 図2A図2Iは、ガラスチップの製造とステンレス鋼の組み立ての概略工程フローを示す。
図2A】ガラスチップ(500μm厚)を、IPA(イソプロピルアルコール;2-プロパノール)中のKOH(水酸化カリウム)が最大2Mとなる溶液で洗浄。
図2B】カプトンシャドウマスクを介した電子ビーム蒸着によるチタン-金(30nm-90nm)層の金属化。カプトンシャドウマスクは、355nm(UV)を用いてレーザー微細加工された。
図2C】チタン-金のトレースは幅150μm、接点パッドは1mm×1mmになるように設計されている。
図2D】3Dマイクロニードルは、トレースと位置を揃えた後、銀ペーストで接着される。上述のように、金、グラフェン又はカーボンナノチューブなど、他の適切な材料を使用することができる。銀ペーストは、ステンレス鋼の切り欠きを通してキャスティングできる。
図2E】銀ペーストを用いて10本のマイクロニードルを有する鍵型3Dステンレス鋼が接着されたガラスチップ。
図2F】PDMSを用いてPET-G培養リングを取り付け、レーザー微細加工(1064nm)を用いて3Dマイクロニードルを互いに分離し、10数の3D記録/刺激部位を得る。
図2G】PDMSの制御下での精密ドロップキャスティングと自己平坦化により、絶縁層を得る。
図2H】PDMSの体積によって、PET-Gリングによって限定された領域におけるPDMS絶縁体の高さが制御され、3Dマイクロ電極アレイ(MEA)の幾何学的面積が決定される。図2Iは、単一の3D MEAと相互作用するHL-1細胞。 図3A~3Bは、配線製作の概略工程フローを示す。
図3A】Asiga社製MAX 27UVで印刷した3Dプリントフレームを貼付ける。2枚のフレームをガラスの各側にスライドさせる。フレームはガラスチップがスライドするように設計された700μmの溝を有する。ビアの直径は1mmで、ビアをフレームの下面に移行させるチャネルは1mm幅である。
図3B】3Dプリントされたビアに銀インクのキャスティングにより、ガラスチップの上面にある金パッドが、3Dプリントされたフレームの下面にある銀パッドに効果的に移行する。 図4A図4Fは、各マイクロニードルが面外に移行した後のワシントンタワー3DマイクロニードルのSEM画像である。
図4A】鍵型パターンがステンレス鋼基板から離脱していないことがわかる。
図4B】3DマイクロニードルのクローズアップSEM画像である。
図4C】レーザー微細加工後に面外に移行した3Dマイクロニードルの傾斜角の箱ひげ図(N=10)である。
図4D】10個の個々の3Dマイクロニードルを形成するためにレーザースクライビングされた鍵型アレイのSEM画像である。クローズアップSEM画像は、レーザースクライブラインと、銀ペーストの層上に静止している3Dマイクロニードルを示している。
図4E】PDMSで絶縁された3D MEAのSEM画像。PDMSがトレースとデバイスの平面部分を絶縁することで、高さ最大400μmの記録/刺激部位が得られる。
図4F】単一の3D MEAのクローズアップを挿入図として示している。 図5A~5Fは、完全に組立済みのデバイスの光学顕微鏡写真である。
図5A】Ti-Au金属トレースとパッドを備えたガラスチップ。
図5B】3Dマイクロニードルが銀ペーストを使用してガラス基板に接着された後のデバイスの顕微鏡写真である。
図5C】その後、図5Cに見られるように互いに分離されるようにレーザー微細加工される。
図5D】3Dプリントフレームをガラスチップにスライドさせた、完全に組立済みのデバイス。
図5E】金属化された金パッドが、3Dプリントされたフレーム上のビアと位置が揃っている様子を示す3Dプリントされたビアのクローズアップ画像。
図5F】ビアを銀ペーストで充填し、ガラスチップの上部にある金トレースがパッケージ済みデバイスの下部に移行するようにした、接続準備完了デバイス。
図6A】組立済みデバイス、3Dプリントフレームを有するパッケージ済みデバイス及びランドルズの等価回路に従った適正プロットのインピーダンス(実数)スペクトル。
図6B】組立済みデバイス、3Dプリントフレームを有するパッケージ済みデバイス並びに回路適正化及び抽出に使用される図6Cのランドルズの等価回路に従った適合プロットの位相スペクトル。
図6C】ランドルズの等価回路。
図6D】銀インクのキャスティング後のビアのDC抵抗の箱ひげ図。 図7A図7Fは、市販のAxion Biosystems社製MUSE電子機器インターフェースに接続されたパッケージ済みデバイスである。
図7C】3D MEAのノイズプロット。
図7D】2DIV後のHL-1細胞の光学顕微鏡写真。
図7E】Axion Biosystems社製MUSEで観察されたHL-1細胞の心拍。
図7F】HL-1心拍からの単一拍動の誇張プロット。 図8A図8Eは、設計からデバイスへの転用を示す3D MEAの工程フローである。
図8A】(i)10個のマイクロ電極を有する鍵型アレイの構成の概略図(IRレーザーは赤色で示されている)。(ii)レリーフ加工されたレーザー微細加工2D鍵型アレイの光学画像。
図8B】(i)3Dプリントされた移行用構造物の概略図。(ii)プリントされた移行用構造物のSEM画像。
図8C】(i)10個のマイクロ電極がすべて垂直3D状態に遷移した、最終的な鍵型MEAの概略図。(ii)3Dプリントされた移行リグを使用して、酸洗されたマイクロ電極を最終的な3D MEAの状態に押し上げたときのSEM画像。挿入図は、より拡大したSSマイクロ電極の先端のSEMを示す。
図8D】(i)3D MEAのための「エッジラップ」金属化及び培養ウェル組立のための概略的な工程フロー。(i)UVレーザーでカプトン(登録商標)マスクのパターンを形成する。(ii)マスクをガラス基板に巻き付けて基板の端と裏面をカバーし、角度付き蒸着リグに配置する。(iii)電子ビーム蒸着工程により、トレースを蒸着する。(iv)マスクを除去した後、導電性インク・エポキシを使用して鍵型MEAをトレースの上に貼り付け、デバイスを硬化させる。(v)IRレーザー微細加工により、電極を選択的に分離する。(vi)次に、PETGの培養ウェルをPDMSで取り付ける。絶縁体は、PDMSの精密なドロップキャストと硬化によって形成される。
図8E】(i)Axion BioSystems社製MUSEシステムで製造したデバイスの光学画像。(ii)組織培養領域のクローズアップ。 図9A図9Bは、ベルジャー内部での電子ビーム蒸着の模式図である。
図9A】基板が平らな状態(従来)での電子ビーム蒸着の概略図。(iii)平らな基板では、蒸着材料が底面にしか当たらず、陰影ができるため側面をコーティングできない。
図9B】3Dプリント角度付き蒸着プラットフォーム上に基板を置いた場合の電子ビーム蒸着の模式図。(iii)角度のついた基板は、平らな面と端の両方に蒸着することができる。もう一度蒸着して裏面をコーティングすれば完成である。挿入図は、3Dプリント角度付き蒸着リグ上に置かれた基板と、蒸着されたTi-Auトレースの光学画像である。 図10A図10Cは、3D MEAの特性分析である。
図10A】MEAプラットフォーム(N=4)の全周波数スペクトルインピーダンス。生理的に適切な1kHzにおいて、インピーダンスの実部は7.5kΩ、位相は-20°であり、いずれもマイクロ電極として期待される範囲内の値である。
図10B】3D MEAプラットフォームのノイズ測定(N=4)。ノイズ測定は、カスタムインターフェースモジュールを装着したAxion BioSystems社製MUSEプラットフォームで行われ、AxISソフトウェアで記録された。図示されているチャネル35、65、77、87の画面キャプチャでは、PBSのRMSノイズはそれぞれ3.18μV、3.64μV、3.65μV、3.29μVである。これらのノイズの測定値は平均して3.44μVであり、刺激及び記録用マイクロ電極として望ましい範囲内である。
図10C】移行用リグの使用による角度のばらつき。3Dプリント移行リグによって、ニードルが平均80°(N=10)で確実に鍵型の配置にセットされている。 図11A図11Bは、3D MEAの上における28DIVでのラットDRGの成長を示す。
図11A】鍵型構造物上のDRG細胞を蛍光カルセインで染色したもの。
図11B】鍵型構造物の領域を含むDRGの明視野顕微鏡写真(輪郭は赤で示されている)。図11Aのカルセイン染色と重ねた、DRG細胞体培養物の明視野顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ガラス-ステンレス鋼プラットフォームをベースとした3次元マイクロ電極アレイ(3D MEA)の微細加工及び組み立てについて開示する。本技術は従来にない「メーカースペース微細加工」技術を使用することを含み、様々な生体適合性材料パレットを用いたコスト効率の良いデバイスの製造を短期間に行うことができる。
【0009】
3D MEAの一実施形態では、高さ約400μm、幅約300μmのステンレス鋼電極を平面レーザー微細加工で製造し、平面から移行して3D形状を持つようにする。2Dから3Dへの移行角度は、微細加工面に対して常に垂直であり得る。レーザー微細加工された3次元ステンレス鋼電極は、チップ用に金属トレースが端まで配線されたガラスダイに接着され、起電性細胞の電気生理学的活動を測定することができる。均一な絶縁体を形成して3D MEAを実現するために、ポリジメチルシロキサン(PDMS)又は他の絶縁材料の狭域精密ドロップキャスティング(CPDC)が使用され得る。具体的な実施形態では、ガラスが基板材料として使用され、起電性細胞培養物の光学的及び電気的プロービングを同時に行うことが可能なほどの光学的透明性を得られる。
【0010】
さらに、トレースをデバイスの下面に移行させ、製造されたデバイスを市販のデータ収集及び分析装置と接続させることを可能とするような、3Dプリント及び導電性インクのキャスティングを使用した独自の配線インターフェースが開示される。一実施形態では、3D MEAは、約1kHzの電気生理学的に適切な周波数において、それぞれ最大13.3kΩ及び約-12.1°の平均インピーダンス及び位相を示している。ガラスチップの上面からデバイスの下面へと電気接点を移行させるカスタムメイド配線は高い導電性を示し、生体マイクロデバイス用の配線としての有効性を実証している。細胞(特に不死化心筋細胞など)の電気生理学的活動が3D MEAから記録され、デバイスのエンドツーエンド開発を実証している。このような3D MEAは、起電性細胞培養物のベンチトップでの薬理学的スクリーニングや電気生理学的評価において重要な役割を果たすことが可能である。なお、米国公開特許公報20190240658号は、背景及びサポート情報として、その全体が本明細書に組み込まれることに留意されたい。
【0011】
他の実施形態では、Nerve-on-a-Chip(登録商標)構造物などのマイクロエンジニアリング生理学的システムの光学的及び電気的プロービングを同時に行うために設計された3D MEAを製造するための微細加工及び組立方法が開示される。本実施形態の微細加工及び組立工程は、「エッジラップ」金属配線とカスタムメイドのデジタル光処理(DLP)3Dプリント移行リグをそれぞれ含む。一実施形態では、神経細胞(例えば、初代ラット後根神経節(DRG)細胞)を含むNerve-on-a-Chip(登録商標)構築物はさらに、28日インビトロ(DIV)、3D MEAの上に播種され培養される。製造技術の試験結果、インピーダンス分光法、二乗平均平方根(RMS)ノイズ特性、MEAの機械的安定性及び蛍光イメージングによる統合組織チップ(3D MEA上のNerve-on-a-Chip(登録商標)構築物)の長期培養可能性についても、本明細書に示す。
【0012】
本明細書に記載される実施形態は、多くの用途及び使用法を有する。例としては、特に毒性試験、薬物スクリーニング、安全性試験、疾患モデリング、幹細胞評価、臓器及び神経オンチップモデル、様々な細胞タイプの光学的及び電気的刺激、農業植物システムモデル、環境及びガスセンシングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
定義
本明細書では、1つ又は複数の好ましい実施形態の詳細な説明を提供する。しかしながら、本発明は、様々な形態で具現化できることを理解されたい。したがって、本明細書に開示された特定の詳細は、限定的に解釈されるものではなく、むしろ、特許請求の範囲の根拠として、また、当業者に対し任意の適切な方法で本発明を採用するように教示するための代表的な根拠として解釈されるものである。
【0014】
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数の参照を含む。特許請求の範囲および/または明細書中の用語「含む」と併用される場合、用語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、「1つ」を指し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」も指し得る。本明細書で「例えば」、「など」、「含む」などの語句のいずれかが使用される場合、別途明示的に記載されない限り、「かつ限定されない」という語句が続くと理解される。同様に、「一例」、「例示的」などは、非限定的であると理解される。
【0015】
「実質的に」という用語は、意図される目的に悪影響を与えない記述からの逸脱を許容するものである。説明的な用語は、「実質的に」という用語が明示的に列挙されなくても、「実質的に」という用語によって修飾されると理解される。したがって、例えば、語句「レバーは垂直に延在する」は、正確な垂直配置が、レバーがその機能を実行するために必要でない限り、「レバーは実質的に垂直に延在する」ことを意味する。
【0016】
用語「含む(comprising)」および「含む(incluing)」および「有する(having)」および「伴う(involving)」(ならびに同様に「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」、および「伴う(involves)」)などは、互換的に使用され、同じ意味を有する。具体的には、用語の各々は、「含む」という米国特許法の一般的な定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも以下の」を意味するオープンな用語であると解釈され、追加の特徴、制限、態様などを除外しないようにも解釈される。したがって、例えば、「ステップa、b、およびcを伴うプロセス」は、プロセスが少なくともステップa、b、およびcを含むことを意味する。用語「1つの(a)」または「1つの(an)」が使用される場合は、かかる解釈が文脈において無意味でない限り、「1つ以上」が理解される。
【0017】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、「おおよそ」、「ほぼ」、「周囲」、または「その領域内」を指し得る。「約」という用語が数値範囲と併せて使用される場合、それは、記載される数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を修正する。一般に、「約」という用語は、本明細書において、記載される値を上方または下方(より高いまたはより低い)20パーセントの分散で修正するために使用される。本明細書で使用される「マイクロエンジニアリング生理学的システム」、「器官型調製物」、「3D細胞ネットワーク」、「3D器官モデル」、「生体機能チップ」などの用語は、任意の生体模倣インビトロシステムを指し得る。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、特定の生物学的システムの構造的特徴及び機能的特徴を発現するように構成されている。マイクロエンジニアリングされたシステムの一例には、三次元細胞培養システムが含まれる。一実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、神経細胞のための三次元細胞培養システムを含み、これは、インビボ神経線維のものを模倣する構造的特徴及び機能的特徴の両方を促進する。特定のマイクロエンジニアリング生理学的システムは、単離された細胞、組織移植片、組織移植片断片、又はそれらの組み合わせの成長を促進するように構成され得る。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、ニューロン細胞、神経細胞、神経組織移植片、又はそれらの組み合わせを含む。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、米国特許出願第15/510,977号に開示されている様々なシステムのいずれかを含み、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。マイクロエンジニアリング生理学的システムは、米国特許出願第16/077,411号に開示される様々なシステムのいずれかを含み得、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「組織移植片」は、生物又は対象から得られる、単離される又は別様で分離される任意の組織を含み得る。例示的な組織移植片としては、単離された神経移植片が挙げられる。組織移植片は、任意の電気的に活性又は電気的に応答性のある組織の移植片を含み得る。実施形態では、組織移植片は、末梢神経組織の移植片及び中心神経組織の移植片又はそれらの組み合わせを含む。移植片は、脳由来組織移植片、脊髄由来組織移植片、腸由来組織移植片、末梢由来組織移植片又はそれらの組み合わせであり得る。実施形態では、組織移植片は、背根神経節(DRG)移植片、網膜移植片、皮質移植片、又はそれらの組み合わせを含む。組織移植片は、複数の1つ以上のニューロン細胞を含み得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「組織移植片」は、生物又は対象から得られる、単離される又は別様で分離される任意の組織を含み得る。例示的な組織移植片としては、単離された神経移植片が挙げられる。組織移植片は、任意の電気的に活性又は電気的に応答性のある組織の移植片を含み得る。実施形態では、組織移植片は、末梢神経組織の移植片及び中心神経組織の移植片又はそれらの組み合わせを含む。移植片は、脳由来組織移植片、脊髄由来組織移植片、腸由来組織移植片、末梢由来組織移植片又はそれらの組み合わせであり得る。実施形態では、組織移植片は、背根神経節(DRG)移植片、網膜移植片、皮質移植片、又はそれらの組み合わせを含む。組織移植片は、複数の1つ以上のニューロン細胞を含み得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「ニューロン細胞」、「神経細胞」などの用語は、樹状突起、軸索及び体細胞の少なくとも1つもしくは組み合わせを含む細胞又は代替的に、神経系組織から単離された、もしくは神経系組織内で見出された任意の細胞もしくは細胞群を指し得る。実施形態では、ニューロン細胞は、軸索を含むか、又は軸索を形成し得る任意の細胞である。ニューロン細胞は、単離された一次神経節組織を含み得る。一部の実施形態では、神経細胞は、シュワン細胞、グリア細胞、神経膠細胞、皮質ニューロン、神経細胞から単離されたもしくは神経細胞に由来するか又は神経細胞の表現型に実質的に類似した神経細胞表現型もしくは表現型を有する細胞に分化した胚性細胞、神経細胞表現型に分化した誘導多能性幹細胞(iPS)、あるいは神経組織に由来するか、又は神経表現型に分化した間葉系幹細胞である。特定の実施形態では、ニューロン細胞は、背根神経節(DRG)組織、網膜組織、脊髄組織、腸組織、又は脳組織由来のニューロンであり、各場合において、成人、青年、子供、又は胎児の対象に由来する。一部の実施形態では、神経細胞は、対象の神経組織から単離された任意の1つ以上の細胞である。実施形態では、神経細胞は、対象の末梢神経系に由来する一次細胞、対象の中枢神経系に由来する一次細胞、又はそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、神経細胞は、哺乳類細胞である。実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。特定の実施形態では、神経細胞は、初代ヒト組織又はヒト幹細胞に由来する。一部の実施形態では、細胞は、非ヒト哺乳類細胞であるか、又は非ヒト哺乳類から単離された細胞に由来する。細胞が由来する元の動物から単離されるか、又は分離された場合、ニューロン細胞は、2つ以上の種から単離されたニューロンを含み得る。
【0021】
実施形態では、ニューロン細胞は、交感神経ニューロン、脊髄運動ニューロン、中枢神経系ニューロン、運動ニューロン、感覚ニューロン、コリン作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、グルタミン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、血清作動性ニューロン、介在ニューロン、アドレナリン作動性ニューロン、及び三叉神経節ニューロンのうちの1つ以上のニューロンである。一部の実施形態では、神経細胞は、星状細胞、乏突起膠細胞、シュワン細胞、ミクログリア、上衣細胞、放射状グリア、衛星細胞、腸グリア細胞、及び下垂体細胞のうちの1つ以上のグリア細胞である。一部の実施形態では、神経細胞は、マクロファージ、T細胞、B細胞、白血球、リンパ球、単球、肥満細胞、好中球、ナチュラルキラー細胞、及び好塩基球のうちの1つ以上の免疫細胞である。一部の実施形態では、神経細胞は、造血幹細胞、神経幹細胞、脂肪由来幹細胞、骨髄由来幹細胞、誘導多能性幹細胞、星状細胞由来誘導多能性幹細胞、線維芽細胞由来誘導多能性幹細胞、腎上皮由来誘導多能性幹細胞、角質細胞由来誘導多能性幹細胞、末梢血由来誘導多能性幹細胞、肝細胞由来誘導多能性幹細胞、間葉細胞由来誘導多能性幹細胞、神経幹細胞由来誘導多能性幹細胞、脂肪細胞由来誘導多能性幹細胞、前脂肪細胞由来誘導多能性幹細胞、軟骨細胞由来誘導多能性幹細胞、及び骨格筋由来誘導多能性幹細胞のうちの1つ以上の幹細胞である。一部の実施形態では、神経細胞は、角質細胞である。一部の実施形態では、神経細胞は、内皮細胞である。
【0022】
「単離されたニューロン」、「単離されたニューロン細胞」、「単離された神経細胞」などは、それらが元々成長する生物又は培養物から除去又は分離された神経細胞を指し得る。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、懸濁液中のニューロンである。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、組織試料又は非ニューロン細胞もしくは非神経細胞を有する懸濁液を含む細胞のより大きな混合物の成分である。一部の実施形態では、神経細胞は、組織移植片の場合のように、それらが由来する動物から除去されるときに単離されたものである。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、動物から切除されたDRG中のニューロンである。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、ヒツジ細胞、ヤギ細胞、ウマ細胞、ウシ細胞、ヒト細胞、サル細胞、マウス細胞、ラット細胞、ウサギ細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ブタ細胞、又は他の非ヒト哺乳動物から選択される1つの種、又は種の組み合わせに由来する少なくとも一つ以上の細胞を含む。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、ヒト細胞である。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、ヒトニューロン細胞に類似又は実質的に類似した分化表現型を有するように予め条件付けされた幹細胞である。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、ヒト細胞である。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、非ヒトニューロン細胞に類似又は実質的に類似した分化表現型を有するように予め条件付けされた幹細胞である。一部の実施形態では、幹細胞は、間葉系幹細胞、誘導多能性幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、表皮幹細胞、哺乳動物の臍帯から単離された幹細胞、又は内皮幹細胞から選択される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ニューロン細胞培養培地」又は単に「培養培地」という用語は、細胞の成長、培養(culture)、培養(cultivating)、増殖、伝搬、又は別様で操作をサポートするのに好適な任意の栄養物質を指し得る。一部の実施形態では、培地は、神経成長因子(NGF)を補充した神経バサル培地を含む。一部の実施形態では、培地は、ウシ胎児血清(FBS)を含む。実施形態では、培地は、L-グルタミンを含む。培養培地は、環状アデノシン一リン酸(cAMP)を含み得る。特定の実施形態では、培地は、約0.001体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。実施形態では、培地は、約0.001体積%~約0.008体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。一部の実施形態では、培地は、約0.001体積%~約0.006体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。培地は、約0.001体積%~約0.004体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含み得る。一部の実施形態では、培地は、約0.002体積%~約0.01体積% の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。実施形態では、培地は、約0.003体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。特定の実施形態では、培地は、約0.004体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。実施形態では、培地は、約0.006体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。培地は、約0.008体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含み得る。一部の実施形態では、培地は、約0.002体積%~約0.006体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。一部の実施形態では、培地は、約0.003体積%~約0.005体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。シュワン細胞分化を組み込む実施形態では、培養培地は、アスコルビン酸、FBS、cAMP、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳類、爬虫類、動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、霊長類、ラット、マウス、ウサギなど)及びヒトを含むがこれらに限定されない、動物界の全てのメンバーを含む。
【0025】
「電気刺激」という用語は、細胞が交流(AC)又は直流(DC)のいずれかの電流に曝露されているプロセスを指し得る。電流は、固体基板に導入されるか、もしくは細胞培養培地又は細胞培養システムの他の好適な構成要素を介して印加され得る。一部の実施形態では、電気刺激は、一又は複数のマイクロニードルをデバイス又はシステム内の異なる位置に配置して、細胞培養容器にわたって電圧電位を生成することによってデバイス又はシステムに提供される。マイクロニードルは、一又は複数のワイヤによって、一又は複数の増幅器、電圧計、電流計、及び/又は電気化学システム(電池又は発電機など)と動作可能に接続している。かかるデバイス及びワイヤにより、電流が生成され、組織培養システム全体で電位が生成される回路が形成される。
【0026】
本明細書で使用される場合、「記録」という用語は、一又は複数のニューロン細胞の応答を測定することを指し得る。かかる応答は、電気生理学的応答、例えば、パッチクランプ電気生理学的記録又は電界電位記録であり得る。
【0027】
具体的な実施形態の詳細な説明
一実施形態によれば、三次元マイクロ電極アレイ(3D MEA)を製造する方法が開示される。その方法は、平面導電性シートに複数の切り込みを形成する(レーザー微細加工が典型的)ことによって複数のマイクロニードルを生成すること、複数のマイクロニードルが平面導電性シートに対して直角に延びるように、前記複数の切り欠きで材料を移行させることと、及び平面導体シートを切断し、複数のマイクロニードルを平面シートから切り離し、切り離された複数のマイクロニードルを製造することを含み得る。この方法の実施形態は、切り離された複数のマイクロニードルを上面、下面、及び前記上面と下面の間にある縁面を備える透明な平面基板体に固定することをさらに含み得る。透明な平面基板体は、縁面と、下面又は上面の一方又は双方に導電性トレースを備え得、切り離された複数のマイクロニードルが導電性トレースの上部に固定されることにより、複数のマイクロニードルのうち少なくとも1つのマイクロニードルと一又は複数の導電性トレースのうち少なくとも一つのトレースが導電的に接続される。平面導電性基板は、金属(例えば、ステンレス鋼)で構成されていてもよい。透明な平面基板体は、ガラス又はポリマー/プラスチックで構成されてもよい。透明なポリマーの例としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート等、又はそれらの共重合体の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0028】
特に指定しない限り、「トレース」という用語は、基板体に蒸着されたあらゆる導電性材料を広く含む。「トレース」という用語は、図2に関して後述するように、導電性の線状トレース及びパッドを含む。
【0029】
「マイクロニードル」及び「マイクロ電極」という語は、本明細書を通して互換的に用いられ、起電性細胞からの記録又は起電性細胞を刺激するために用いられる電極を指し得る。
【0030】
別の実施形態によれば、縁面上に1又は複数の導電性トレースを備える透明な平面基板を製造することを含む方法が開示される。その方法は、透明平面基板体をマスクで覆うことを含み、マスクは少なくとも1つの開口部を備え、透明平面基板体は、上面、下面、及び上面と下面との間に少なくとも1つの縁面を含み、少なくとも1つの開口部が当該縁面に重なる。覆うに際して、その方法は、少なくとも1つの開口部を通して透明平面基板体上に導電性材料を蒸着することを含み、導電性材料は縁面に蒸着される。具体的な実施形態では、電子ビームを使用して蒸着が行われるが、このとき透明な平面基板は電子ビームに対して角度をつけて保持される。さらに具体的な実施形態では、その方法は透明な平面基板を斜角蒸着と関連付けることを含む。非限定的な一つの例では、斜角蒸着において、基部と、基部に対して直角に固定されたブラケット部を備える角度付き蒸着リグが使用される。
【0031】
本開示によれば、電子ビーム蒸着はトレースを蒸着するために使用される典型的な方法であるが、他の蒸着方法が使用されてもよいことに留意されたい。これらには、抵抗蒸着、レーザー蒸着、スクリーン印刷、電気メッキなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
さらなる実施形態においては、複数のマイクロニードルを上面、下面、及び上面と下面の間にある縁面を備え、下面又は上面の一方又は双方に一又は複数の導電性トレースが蒸着された透明な平面基板体に固定することと、少なくとも一つのフレーム部材を透明な平面基板に取り付けることであって、少なくとも一つのフレーム部材は、縁面が挿入される少なくとも一つの溝と、その中に画定され上面から下面に広がる少なくとも一つのチャネルを備えることと、導電性材料を少なくとも一つのチャネルに蒸着し、導電性材料が少なくとも一つのトレースと導電的に接続するようにすることとを備える3次元マイクロ電極アレイ(3D MEA)の製造方法が提供される。マイクロニードルは、本明細書に記載される微細加工プロセスによって形成されてもよい。
【0033】
本明細書に記載の方法の実施形態において、複数の3Dマイクロニードルは、3Dマイクロニードルの第1のセットと第1の幅寸法と第1の長さ寸法とを有する第1部分と、3Dマイクロニードルの第2のセットと第2の幅寸法と第2の長さ寸法とを有する第2部分とを備える組立体であって、第2の幅寸法は第1の幅寸法より大きく、第1の長さ寸法は第2の長さ寸法より大きく、そして、任意で、複数の微細加工3Dマイクロニードルが導電的に分離されていることを更に備える組立体において相互接続される。
【0034】
一実施形態では、上記方法はマイクロエンジニアリング微小生理学的システムを形成することをさらに備える。マイクロエンジニアリング微小生理学的システムは、ニューロン細胞を第2部分の少なくとも一部の上に配置すること又は組織移植片を第2部分の少なくとも一部の上に播種することによって形成され得る。さらに、上記方法は軸索を第1部分の少なくとも一部の上で成長させることを含み得る。実施形態において、上記方法はマイクロエンジニアリング生理学的システムにおける一又は複数の生体電気信号の検知をリアルタイムで行うことを含む。実施形態において、第1の複数の電極、第2の複数の電極、又は双方は、記録電極、刺激電極、又はそれらを組み合わせたものを備えている。
【0035】
さらに、実施形態では、形成の間、マイクロエンジニアリング生理学的システム内の生体電気信号を検知すること及びマイクロエンジニアリング生理学的システムを光学的に追跡することを含む。上記方法は、生体電気信号を検知すること及びマイクロエンジニアリング生理学的システムを光学的に追跡することを最大1年続けることを含み得る。
【0036】
別の実施形態によれば、上面、下面、及び上面と下面の間にある縁面を備える透明な平面基板体と、透明な平面基板体の縁面と、上面又は下面の一方又は双方に蒸着される複数の導電性トレースと、ステンレス鋼で構成される複数の微細加工3Dマイクロニードルであって、複数の3Dマイクロニードルのうち少なくとも一つのマイクロニードルが複数の導電性トレースのうち少なくとも一つと導電的に接続するように透明な平面基板体に取り付けられる複数の微細加工3Dマイクロニードルとを含む3D MEAが開示される。
【0037】
別の実施形態は、上面、下面、及び上面と下面の間にある縁面を備える透明な平面基板体と、透明な平面基板体に蒸着される複数の導電性トレースと、ステンレス鋼で構成される複数の微細加工3Dマイクロニードルであって、複数の3Dマイクロニードルのうち少なくとも一つのマイクロニードルが複数の導電性トレースのうち少なくとも一つと導電的に接続するように透明な平面基板体に取り付けられる複数の微細加工3Dマイクロニードルと、任意で、透明な平面基板体と関連付けられた少なくとも一つのフレーム部材であって、少なくとも一つのフレーム部材は、縁面が挿入される少なくとも一つの溝と、その中に画定され上面から下面に広がる少なくとも一つのチャネルと、少なくとも一つのチャネル内に蒸着されることで、複数の導電性トレースのうち少なくとも一つとの導電的な接続を実現する導電性材料と、を備える少なくとも一つのフレーム部材とを有する3D MEAに係る。
【0038】
さらに別の実施形態では、上面、下面、及び上面と下面の間にある縁面を備える透明な平面基板体と、縁面、上面又は下面、もしくはその組み合わせに蒸着される複数の導電性トレースと、複数の微細加工3Dマイクロニードルであって、複数の3Dマイクロニードルのうち少なくとも一つのマイクロニードルが複数の導電性トレースのうち少なくとも一つと導電的に接続するように透明な平面基板体に取り付けられる複数の微細加工3Dマイクロニードルとを備える3D MEAが提供される。複数の微細加工3Dマイクロニードルは、3Dマイクロニードルの第1のセットと第1の幅寸法と第1の長さ寸法とを有する第1部分と、3Dマイクロニードルの第2のセットと第2の幅寸法と第2の長さ寸法とを有する第2部分とを備え、第2の幅寸法は第1の幅寸法より大きく、第1の長さ寸法は第2の長さ寸法より大きいことを備える組立体において提供される。複数の微細加工3Dマイクロニードルは、取り付け後に導電的に分離されてもよい。具体的な実施形態では、第1セットは、約8個の3Dマイクロ電極を備え、第2のセットは、約2個の3Dマイクロ電極を備える。別の具体的な実施形態では、第1の長さが第2の長さ寸法より大きく、第2の幅寸法が第1の幅寸法より大きいことを考慮し、第1の幅寸法は約10~500μmであり、第1の長さ寸法は約10~500μmであり、第2の幅寸法は約10~500μmであり、第2の長さ寸法は約10~500μmである。一つの具体的な実施例では、第1部分と第2部分は、第1部分が神経細胞の神経管と一致し、第2部分が神経細胞の神経節と一致する幾何学形状を形成する。
【0039】
実施形態では、軸索成長領域内のマイクロニードル間の規定された間隔は、最大約5cmの間隔を備える。実施形態では、規定された間隔は、最大約1cm、約2cm、約3cm、約4cm又は約5cmである。規定された間隔は、1cm未満であり得る。実施形態では、規定された間隔は、約9mmの大きさである。規定された間隔は、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm又は約9mmであり得る。特定の実施形態では、マイクロニードル間の規定された間隔は、1mm未満である。いくつかの実施形態では、規定された間隔は、約100μmから約900μmの間の間隔を備える。実施形態では、規定された間隔は、100μm未満である。マイクロニードル間の規定された間隔は、約10μm、約20μm、約30μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、又は約100μmであり得る。規定された間隔は、約10μm未満であり得る。特定の実施形態では、規定された間隔は、約10μm~約5mmの間の距離である。規定された間隔は、約100μm~約1mmの間であり得る。
【0040】
実施形態では、3D MEAは、マイクロエンジニアリング生理学的システムにおける一又は複数の生体電気信号の、リアルタイムで信頼性の高い検知を行うように構成される。マイクロエンジニアリング生理学的システムは、組織移植片、細胞懸濁液、又はそれらの組み合わせを備え得る。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、マイクロパターン化プラットフォーム上で培養された神経細胞又はマイクロパターン化プラットフォーム上に播種された組織移植片を備える。マイクロパターン化プラットフォームは、神経構造物の形成を可能にし、神経構造物が軸索成長領域、神経節領域、樹状突起領域、シナプス領域、スフェロイド領域、又はそれらの組み合わせを備えるように構成され得る。
【0041】
実施形態では、複数の微細加工3Dマイクロニードルの第2部分は、神経節領域又はスフェロイド領域に配置される。複数の微細加工3Dマイクロニードルの第1部分は、軸索成長領域の下に規定された間隔で配置された複数のマイクロニードルを備え得る。
【0042】
実施形態では、3Dマイクロニードルの第1のセット、前記3Dマイクロニードルの第2のセット、又は双方は、記録電極、刺激電極、又はそれらの組み合わせを備え得る。規定された間隔は、最大約50μmの間隔を含み得る。様々な実施形態では、マイクロ電極アレイは、最大1年、マイクロエンジニアリング生理学的システムにおける一又は複数の生体電気信号の検知を行うように構成される。マイクロ電極アレイは、最大約8週間、マイクロエンジニアリング生理学的システムにおける一又は複数の生体電気信号の検知を行うように構成され得る。実施形態では、3D MEAは、マイクロエンジニアリング生理学的システムが成熟している間、マイクロエンジニアリング生理学的システムの電気生理学的及び光学的な追跡を同時に行うことができるように構成される。
【0043】
別の態様は、マイクロエンジニアリング生理学的システム内の複合活動電位を再現可能に検知するためのシステムであって、本明細書に開示される様々な3D MEAのいずれかを備え、マイクロエンジニアリング生理学的システムが一又は複数の神経細胞を備えるシステムを含む。
【0044】
マイクロニードルを微細加工又はマイクロミリングし二次元から三次元に移行させる場合、結果として得られる角度は、平面導電性シートに対して60°以上、70°又は80°度となり得る。具体的な実施形態では、角度は45~90°、60~90°、75~90°又は80~90°となっている。より具体的な実施形態では、マイクロニードルは80°以上の角度となっている。複数の三次元マイクロニードルの個々のマイクロニードルは、最大約1000μmの高さを備え得る。三次元マイクロニードルは、約30μm~約1000μmの間の高さを備え得る。三次元マイクロニードルは、最大約800μmの高さを備え得る。実施形態では、三次元マイクロニードルの高さは約100μm~約500μmの間である(100μmと500μmを含む)。三次元マイクロニードルの高さは、約250μm~約450μmの間であり得る(250μmと450μmを含む)。特定の実施形態では、三次元マイクロニードルの高さは約350μm~約450μmの間であり得る(350μmと450μmを含む)。実施形態では、三次元マイクロニードルは最大約150μmの高さを備える。特定の実施形態では、三次元マイクロニードルは約50μm~約150μmの間の高さを備える。三次元マイクロニードルは、約800、700μm、600μm、500μm、400μm、300μm、200μm又は100μmの高さを備え得る。特定の実施形態では、三次元マイクロニードルの高さは約450μmである。三次元マイクロニードルの高さは、100μm未満であり得る。実施形態では、三次元マイクロニードルの高さは約100μm、約90μm、約80μm、約70μm、約60μm、約50μm、約40μm、約30μm、約20μm又は約10μmである。
【0045】
上述の方法の実施形態は、複数のマイクロニードルを透明な平面基板体に固定する前又は後に複数のマイクロニードル上に絶縁層を蒸着させることをさらに含んでもよい。特定の実施形態では、絶縁層は複数のマイクロ電極の一部が露出し、マイクロ電極の一部が絶縁層によって覆われるように蒸着される。絶縁層の蒸着には、標準的な絶縁材料、例えばパリレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、SU-8、二酸化ケイ素、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、又はこれらの組み合わせなどを使用してもよい。絶縁材料の1つの具体例は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。絶縁層は、本明細書の教示に照らして当業者に明らかであろうプロセスによって蒸着されてもよい。具体的な例では、絶縁層は狭域精密ドロップキャスティングによって蒸着される。
【0046】
本明細書に記載される3D MEAの実施形態は、複数のマイクロニードルの上に配置された細胞をさらに含んでもよい。これは、マイクロニードルが透明な平面基板体に固定される前又は後に生じてもよい。具体的な実施形態では、細胞は起電性細胞である。電気生理学的信号は、一又は複数のマイクロニードルの上に配置された起電性細胞から得られてもよく、そうした電気生理学的信号は一又は複数のマイクロニードルとトレースの導電的な接続を介して伝達される。電気生理学的信号は、起電性細胞から生じる電圧変化や電流を含む。使用されてもよい細胞の種類及び電気的測定の種類に関する更なる情報は、以下に提供される。
【0047】
本明細書に記載の3D MEAの実施形態は、液体溶液が複数のマイクロニードルの上に保持されてもよいように、透明な平面基板体に関連する培養ウェルをさらに備えてもよい。3D MEAの製造に関連する方法の実施形態は、培養ウェルを透明な平面基板に関連付けることをさらに備える。例えば、これは絶縁層を蒸着させた後に起こるであろうが、必ずしもそうである必要はない。
【0048】
また、細胞は刺激に対する細胞反応であることを観察又はモニタリングするために、光を当てる及び/又は当てることを可能にする透明な平面基板について言及する。代替の実施形態では、方法又は3D MEAの実施形態に関する透明な平面基板の説明は、細胞の視覚的モニタリングが必要でない又は望まれない場合などは、非透明基板で代用してもよい。
【0049】
細胞及び電気生理学的信号の検知
本明細書に記載されるような3D MEAは、任意の適切な種類の細胞と共に使用され得る。例えば、細胞は原核細胞又は真核細胞であってもよい。細胞は、単細胞生物又は多細胞生物からのものであってもよい。いくつかの場合では、細胞は遺伝子操作されたものであり、例えば、細胞はキメラ細胞であってもよい。細胞は、細菌、真菌、植物細胞、動物細胞などであってもよい。細胞は、ヒト由来又は非ヒト動物あるいは哺乳類(例えば、マウス、ラット、ブタ等)由来であってもよい。例えば、動物由来である場合、細胞は心筋細胞、神経細胞(例えば、大脳皮質ニューロン、嗅覚受容ニューロン、嗅覚感覚ニューロン等)、骨細胞、骨芽細胞、筋細胞(例えば、心筋細胞)等であってもよい。細胞は、初代細胞又は不死化細胞であってもよい。いくつかの場合では、細胞は初代哺乳類ニューロン(例えば、ヒト皮質ニューロン、ラット皮質ニューロンなど)である。
【0050】
加えて、いくつかの実施形態では、細胞は任意の適切な細胞培養技術を使用して3D MEA上で培養されてもよいことに留意されたい。例えば、哺乳類細胞は適切な細胞培地の存在下で37℃で培養されてもよい。
【0051】
さらに別の態様では、ニューロンなどの細胞は、本明細書で論じるように、例えば一又は複数のマイクロニードルと電気的に通信するように配置される。電極は、細胞を刺激するため、及び/又は細胞の電気的状態を決定するために使用されてもよい。一以上のマイクロニードルが、例えば細胞の別個の領域において、細胞と電気的に通信するように配置されてもよい。いくつかの場合では、マイクロニードルは、例えば約500nm以下の間隔を空けて比較的近接するように配置されてもよい。一実施形態では、マイクロニードルは、最大約1000nmの間隔を空けて配置される。マイクロニードルは、約500nm未満の間隔で配置され得る。実施形態では、マイクロニードルは、50nm~300nmの間隔で配置される。マイクロニードルは、最大約200nmの間隔で配置され得る。特定の実施形態では、マイクロニードルは、最大約500μmの間隔で配置される。マイクロニードルは、最大約1000μmの間隔で配置され得る。特定の実施形態では、マイクロニードルは、約10μmから約100μmの間隔で配置される。マイクロニードルは、互いに約25μm~約75μmの間隔で配置され得る。一実施形態では、マイクロニードルは、互いに約50μm離れている。
【0052】
膜電位などの電気的挙動を示すものであれば、どのような細胞も使用され得る。例えば、細胞は、膜電位を測定する(例えば、瞬間的に、時間の関数として、薬剤や印加された外部電位などの外部刺激に反応して)ことが望まれる細胞であってもよく、細胞は、電界を検知するために使用され得る細胞(例えば、サメなどのある種の生物に存在するロレンチーニ器官からの細胞)であってもよく、又は細胞は、電気信号を生成できる細胞、例えば、ニューロン(活動電位を生成できる)、心筋細胞、又は電気細胞(デンキウナギ又はシビレエイなどの生物で放電を行うために用いられる)であってもよい。いくつかの場合では、ニューロンは、一又は複数のイオンチャネル(例えば、電位依存性イオンチャネル、リガンド依存性イオンチャネル)を備える。特定の場合では、ニューロンのリガンド依存性イオンチャネルは、コリン作動性受容体(例えば、アセチルコリンの結合に反応するタンパク質)である。コリン作動性受容体は、いくつかの場合では、神経細胞型ニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)のファミリーに属していてもよい。神経細胞型ニコチン性アセチルコリン受容体は、典型的には、α(例えば、α2~α10)及びβ(例えば、(β3、(β4、β5))サブユニットの異なる組み合わせからなる5量体複合体であり、パーキンソン病、アルツハイマー病及び/又は多動性障害などの神経疾患に対する薬物標的となり得る。
【0053】
マイクロニードルは、細胞の一部と電気通信していてもよく、すなわち、マイクロニードルが細胞及び/又は細胞の領域の電気的挙動を測定又は、それに影響を与えることができるように、細胞に対して配置されていてもよい。マイクロニードルは、マイクロニードルを使用して細胞の別個の領域を測定できるような寸法であってもよい。非限定的な例として、細胞がニューロンである場合、マイクロニードルは、ニューロンの軸索、樹状突起、及び/又は体細胞の一部の電気的挙動を測定又は、それに影響を与えることができるように配置されてもよい。マイクロニードルは、細胞と物理的に接触していてもよく、又は物理的に接触していないが細胞の電気的状態の変化がマイクロニードルの電気的状態に影響を与えることができるように配置されていてもよく、及び/又はその逆であってもよい。いくつかの実施形態では、マイクロニードルの少なくとも一部が細胞内に挿入される。全体を通して述べたように、一又は複数のマイクロニードルが細胞と電気通信していてもよい。
【0054】
一連の実施形態では、マイクロニードルと電気通信している細胞は、マイクロニードルに電流を流すか電位を印加することによって電気的に刺激され得るが、マイクロニードルは細胞の電気的状態に影響を与えるために使用されてもよい。例えば、電気刺激により細胞の膜電位が変化してもよく、あるいは十分な電流又は電位の印加によりニューロンが刺激されてニューロンが分極(例えば、過分極)又は脱分極され得る。いくつかの場合では、電流又は電位は、刺激装置ユットによって電極に印加され得る。
【0055】
別の一連の実施形態では、細胞の分極又は脱分極、活動電位や細胞膜電位(例えば、シナプス後電位)の変化といった細胞の電気的状態の変化は、コンダクタンスの変化など、細胞と電気通信しているマイクロニードルの電気的状態の変化を引き起こすことがあるが、この変化は、例えば、当業者に知られている技術を使用して何らかの方法で測定及び/又は記録され得る。いくつかの場合では、電気的状態(例えば、電気信号)の変化は、記憶され(例えば、デジタルメモリに)、ディスプレイに出力され、及び/又は何らかの方法で修正/変換されてもよい。したがって、本発明の一実施形態は、本明細書に記載されるようなマイクロニードルを用いた細胞の電気的状態の測定を実現する。いくつかの実施形態によれば、マイクロニードルの少なくとも一部は、細胞内(例えば、細胞内空間)に挿入される。いくつかの場合では、電気信号は細胞からマイクロニードルに伝送されてもよく、信号はその後マイクロニードルと電気通信している増幅器ユニットに伝送されてもよい。いくつかの場合では、細胞はまた、電気的に刺激されたものであってもよく、例えば、細胞と電気通信しているマイクロニードルに電流又は電位を印加することにより電気的に刺激されたものであってもよい。具体例として、ニューロン又はその一部(例えば、軸索、樹状突起、体細胞など)の電気的状態は、ニューロンと電気通信しているナノスケールワイヤーを用いて測定されてもよい。例えば、ニューロンは脱分極(例えば、化学種又はニューロンを脱分極させることができるナノスケールワイヤー又は他の電極への曝露により)し、ニューロン全体の活動電位の形成及び伝播を引き起こしてもよく、この活動電位は、本明細書に記載されるようにマイクロニードルを使用して測定されてもよい。このようにして、一又は一以上のニューロンが研究されてもよい。いくつかの実施形態では、相互通信ネットワークを形成する一又は複数のニューロンからの電気信号は、一又は複数のマイクロニードルを用いて記録されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、細胞の電気的状態を変化させる疑いのある化学種に細胞を曝露することによって、細胞の電気的状態を変化させてもよい。例えば、細胞の脱分極を促進することができる化学種又は細胞の脱分極を阻害する化学種は、細胞の電気状態を変化させるために、及びいくつかの場合では、ニューロンなどの細胞を分極(例えば、過分極)又は脱分極させるために使用され得る。一連の実施形態では、化学種は、細胞の挙動を治癒又は変化させることができると疑われる薬物又は薬物候補、神経毒、神経伝達物質などを含む。いくつかの場合では、薬物又は薬物候補は、一又は複数のタイプのイオンチャネルを標的としてもよい。非限定的な例として、薬物又は薬物候補は、神経細胞型ニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)を標的としてもよい。
【0057】
別の一連の実施形態によれば、複数のマイクロニードルは、サイズの小ささのため、細胞又はその一部と電気通信するように配置されてもよい。例えば、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個又は少なくとも50個またはそれ以上のマイクロニードルが、細胞又はその一部、例えば、細胞がニューロンである場合は軸索及び/又は樹状突起と電気通信するように配置されてもよい。いくつかの実施形態では、一以上のマイクロニードルが、細胞又はその一部に挿入されてもよい。例えば、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個又は少なくとも50個またはそれ以上の電極が、細胞又はその一部に挿入されてもよい。実施形態では、最大約100個の電極が細胞内に挿入される。最大約50個のマイクロ電極が、細胞内に挿入され得る。特定の実施形態では、最大約25個の電極が、細胞内に挿入される。したがって、複数のマイクロニードルはそれぞれ、いくつかの実施形態において、細胞の別個の領域を独立して測定するために使用されてもよい。一以上のナノスケールワイヤーが存在する場合、マイクロニードルは、それぞれが個別に同じであってもよいし、異なっていてもよい。マイクロニードルの非限定的な例には、本明細書に記載されるもののいずれかが含まれる。
【0058】
様々な例示的な方法において、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイは、マイクロエンジニアリング生理学的システムに使用され、電気生理学的刺激及び電気的に活性な細胞集団の記録に役立ち得る。
【0059】
様々な実施形態において、かつ本明細書に開示されるマイクロ電極アレイの使用を通じて、本開示は、天然の解剖学的及び生理学的特徴を模倣するマイクロエンジニアリング神経組織の生体測定的特性を評価するための高スループットの電気生理学的刺激及び記録方法を提供する。本開示のマイクロ電極アレイを使用する方法は、インビトロで神経生理学を評価するための新しいアプローチを提供するものであり、複合活動電位(CAP)を臨床的に類似した測定基準として使用することで、従来利用可能な方法よりもヒト生理学的に感度が高く予測可能な結果が得られる。
【0060】
本開示の一態様は、微小管、イオンチャネル、ミエリン、ミトコンドリア、および小神経線維を含むが、これらに限定されない様々な細胞標的の機能を測定するための方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のマイクロ電極アレイおよびインビトロモデルを使用して軸索の髄鞘形成を測定する方法を含む。ヒト求心末梢神経の構造と同様に、これらのインビトロ構築物中の背根神経節(DRG)ニューロンは、末梢に長く平行な筋循環軸索を投射する。天然組織において、様々な直径および髄鞘度の軸索は、異なる速度で感覚情報を中枢神経系に戻す。シュワン細胞は、軸索を髄鞘化し、より迅速な伝導のための絶縁を実現することによって感覚リレーをサポートする。同様に、このインビトロ構築物によって誘発される三次元成長は、最大10mmの距離にわたる密度の高い平行配向の様々な直径の軸索を含む。シュワン細胞の存在および被覆は、共焦点およびTEMイメージングにおいて観察することができる。
【0061】
ニューロンの形態は、表現型の成熟度の有用な指標であるが、健常なニューロンのより決定的な徴候は、活動電位を伝導する能力である。アポトーシスだけでは、ニューロンの健常の完全な尺度とはならない。細胞死が現れる前に多くの病理学的変化が生じる可能性があるためである。活動電位生成の電気生理学的研究により、観察される構造が予測機能をサポートするかどうか、かつ臨床的に重要なエンドポイントを測定する能力がより予測的な結果を生成するかどうかを判定することができる。同様に、イメージングから収集された情報により、髄鞘形成の程度の定量的測定基準が決定され得る。一方で、CAP測定は、ミエリンの全体的な健常性を実証し、様々な薬剤又は目的の化合物の毒性及び神経保護機序をさらに深く理解するのに役立ち得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの薬剤」は、小化学化合物を指し得る。一部の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、少なくとも1つの環境汚染物質又は工業汚染物質/化合物を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、化学療法剤、鎮痛剤、心血管調節剤、コレステロール、神経保護剤、神経調節剤、免疫調節剤、抗炎症薬、及び抗微生物薬物から選択される小化学化合物の1つ又は組み合わせを含む。
【0063】
少なくとも1つの薬剤は、化学療法剤の1つ又は組み合わせを含み得る。例示的な化学療法剤としては、アクチノマイシン、アリトレチノイン、オールトランスレチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カペシタビン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピリピシン、エポチロン、エロチニブ、エトポシド、フルオロウラシル、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニトロスーレ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ロミデプシン、タフルオシド、テモゾロミド(オルダカルバジン)、テニポシド、チオグアニン(旧チオグアニン)、トポテカン、トレチノイン、バルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチンビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビスモデギブ、及びボリノスタットのうちのいずれか1つ又は複数が挙げられる。
【0064】
実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、鎮痛剤の1つ又は組み合わせを含む。例示的な鎮痛剤としては、パラセトアモール、非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)、COX-2阻害剤、オピオイド、フルピルチン、三環式抗うつ剤、カルバマキセピン、ガバペンチン、及びプレガバリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
一部の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、心血管調節剤の1つ又は組み合わせを含む。心血管調節剤としては、ネピカスタット、コレステロール、ナイアシン、スキュテラリア、プレニルアミン、デヒドロエピアンドロステロン、モナテピル、エスケタミン、ニグルジピン、アセナピン、アトモキセチン、フルナリジン、ミルナシプラン、メキシレチン、アンフェタミン、チオペンタルナトリウム、フラボノイド、ブレチリウム、オキサゼパム、及びホノキオールが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、神経保護剤及び/又は神経調節剤の1つ又は組み合わせを含む。例示的な神経保護剤及び/又は神経調節剤としては、トリプタミン、ガラニン受容体2、フェニルアラニン、フェネチルアミン、N-メチルフェネチルアミン、アデノシン、キプトルフィン、サブスタンスP、3-メトキシチラミン、カテコールアミン、ドーパミン、GABA、カルシウム、アセチルコリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、及びセロトニンが挙げられる。
【0066】
少なくとも1つの薬剤は、免疫調節剤の1つ又は組み合わせを含み得る。例示的な免疫調節剤としては、クレノリジマブ、エノチクマブ、リゲリズマブ、シンツズマブ、バテリズマブ、パルサツズマブ、イムガツズマブ、トレガリザウムブ、パテクリズマブ、ナムルマブ、ペラキズマブ、ファラリモマブ、パトリツマブ、アチヌマブ、ウブリツキシマブ、フツキシマブ、及びデュリゴツマブが挙げられる。一部の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、抗炎症剤の1つ又は組み合わせを含む。例示的な抗炎症剤としては、イブプロフェン、アスピリン、ケトプロフェン、スリンダク、ナプロキセン、エトドラク、フェノプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ケトロラック、ピロキシカム、インドメタシン、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、オキサプロジン、ケトプロフェン、ファモチジン、メクロフェナメート、トルメチン、及びサラレートが挙げられる。
【0067】
特定の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、抗微生物薬の1つ又は組み合わせを含む。抗微生物薬としては、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、熱、放射線、及びオゾンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
少なくとも1つの薬剤は、生理学的薬剤又は「生理学的製剤」を含み得る。生理学的製剤は、生体から産生されるか、又は生体内に見出される成分を含有する任意の薬剤又は治療薬を指し得る。実施形態では、「少なくとも1つの薬剤」は、免疫コンジュゲート、低分子薬物コンジュゲート、アンチセンスオリゴヌクレオチド、核酸療法、ウイルスベクター、低分子干渉RNA、又はそれらの組み合わせを含む。
【0069】
一部の実施形態では、免疫複合体は、少なくとも1つのエフェクター分子又は少なくとも1つの化学化合物にコンジュゲートされた抗体を指し得る。実施形態では、かかるコンジュゲーションは、診断剤又は治療剤として使用するための抗体分子の有効性を増加させるように機能し得る。抗体と化学化合物とのカップリングは、抗体又はそれにコンジュゲートされた化学化合物のそれぞれの活性に影響を与えることなく、2つの分子を一緒に結合する任意の機序又は化学反応によって実現され得る。好適な結合機序としては、共有結合、親和性結合、インターカレーション、座標結合、複合体化、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、エフェクター分子は、所望の活性、例えば細胞毒性活性を有する分子を含む。抗体に結合し得るエフェクター分子の非限定的な例としては、毒素、抗腫瘍剤、治療酵素、放射性核種、抗ウイルス剤、キレート剤、サイトカイン、成長因子、及びオリゴ又はポリヌクレオチドが挙げられる。ベクターは、標的部分(例えば、細胞表面受容体へのリガンド)、及び核酸結合部分(例えば、ポリリジン)、ウイルスベクター(例えば、DNA又はRNAウイルスベクター)を有する国際公開第WO93/64701号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるものなどの化学コンジュゲート、標的部分(例えば、標的細胞に特異的な抗体)、及び核酸結合部分(例えば、プロタミン)、プラスミド、ファージなどを含有する融合タンパク質である、PCT/US95/02140号(国際公開第WO95/22618号;参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような融合タンパク質を含み得る。ベクターは、染色体、非染色体、又は合成であり得る。
【0070】
ベクターとしては、ウイルスベクター、融合タンパク質、及び化学コンジュゲートが挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルスが挙げられる。ベクターには、オルトポックス又はアビポックスベクターなどのポックスベクター、単純ヘルペスウイルスI(HSV)ベクターなどのヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ関連ウイルスベクターが含まれ得る。
【0071】
ポックスウイルスベクターにより、遺伝子が細胞質に導入され得る。アビポックスウイルスベクターは、核酸の短期発現のみをもたらし得る。アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターにより、核酸を神経細胞に導入することができる。アデノウイルスベクターは、アデノ関連ウイルス(約4ヶ月)よりも短期の発現(約2ヶ月)をもたらし得、これは、HSVベクターよりも短い。選択される特定のベクターは、標的細胞及び治療される状態に依存する。導入は、標準的な技法、例えば、感染、トランスフェクション、形質導入又は形質転換によって行うことができる。遺伝子移入のモードの例としては、例えば、裸のDNA、CaP04沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、及びウイルスベクターが挙げられる。ベクターを用いて、本質的に任意の所望の標的細胞を標的とすることができる。
【0072】
本開示の別の態様は、三次元培養プラットフォームにおける生体模倣神経組織の細胞内及び細胞外記録の両方を測定する方法を含む。過去、電気生理学的実験は、分離表面メッキ培養又は器官型スライス調製のいずれかで行われており、各方法に固有の制限があった。分離細胞培養における研究は、典型的には、本明細書に開示されるマイクロエンジニアリング生理学的システムのような器官型調製物に見られるように、組織化された多細胞神経学的アーキテクチャの欠如に起因して、単一細胞の記録に限定される。器官型調製物は、無傷の神経回路を有しており、細胞内及び細胞外の両方の研究を可能にする。しかしながら、急性脳スライスは、個々の因子を制御する手段のない複雑な同時変数の配列を提示するため、スループットの可能性が本質的に制限される。
【0073】
本開示は、集団レベルの電気生理学的行動の検査を可能にする生体模倣三次元神経培養物を提供する。本明細書に開示されるシステム及び方法は、三次元幾何学形状における制限された神経突起の成長から生じる細胞外フィールド記録における全細胞パッチクランプ技術及び同期集団レベルの事象をサポートするものである。
【0074】
本明細書に開示される方法及びデバイスを使用して、フィールド記録を用いて、全ての動員線維におけるシグナル伝導によって引き起こされる電位の組み合わせた細胞外変化を測定することができる。電気刺激によって引き出される集団応答は、CAPである。電気的に誘発された母集団スパイクは、本質的に等級付けされ、遅い線維及び速い線維における活動電位の組み合わせ効果を含む。スパイクは、迅速な発症と短い持続時間を有する単一の凝集イベントであり、CAP又は応答の特徴は、シナプス入力がない場合に迅速なシグナル伝導を伴う単一の活動電位で構成されている。本開示によって開示される三次元神経構造物はまた、神経突起部又はチャネルに沿ってより遠い距離から刺激されるCAPをサポートし、求心性末梢神経のように遠い刺激からのシグナルを迅速に運ぶ神経培養物の能力を実証するものである。本開示の三次元神経培養物は、伝導特性の測定に有用な近位及び遠位刺激技術をサポートする。様々な実施形態では、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイは、マイクロエンジニアリング生理学的システムの刺激、CAPの記録、又はその両方のために使用される。
【0075】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、神経線維管で典型的であるように、多数の線維型の動員を誘発する1つ以上の成長因子と共に使用され得る。特に、神経成長因子(NGF)は、本明細書に提示されるデータに示されるように、痛みシグナル伝達にしばしば関連する小径線維を優先的に動員する。脳由来の神経栄養因子(BDNF)及び神経栄養因子3(NT-3)は、より大きな直径の自己受容性線維の成長を優先的にサポートすることが示されている。生体活性分子及び薬理学的薬剤のような成長影響因子は、電気生理学的調査と共に組み込まれ、機械的研究のための系統的な条件の操作を可能にし得る。追加の好適な因子としては、フォースコリン、TGFB-1、GDNF、グルタマックス、N2、B27、FBS、ロック阻害剤、アスコルビン酸、BSA、及びcAMPが挙げられるが、これらに限定されない。様々な例示的な方法において、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイは、様々な神経障害の根底にある機序を研究するために、マイクロエンジニアリング生理学的システムと共に使用され得る。例として、神経培養物に対する既知の髄鞘形成不全剤、神経障害を誘発する培養条件、及び毒性神経障害を誘発する化合物の効果を調査することによって、ミエリン障害性疾患及び末梢神経障害を研究する方法が本明細書に開示される。本開示により、伝導速度が、毒性及び治療条件下でミエリン及び神経線維の完全性の機能的尺度として使用され、薬物の安全性及び有効性に関する研究を容易にし得る。本明細書に開示される技術を使用して産生された神経培養物中に遺伝子変異及び薬物を組み込むことにより、制御された方法で疾患現象の再現を可能にし得、神経変性及び可能な治療療法のより良好な理解につながる。
【0076】
マイクロ電極アレイは、毒性、疾患、又は任意の細胞集団内の任意の薬剤の病態生理学的機序を研究するため、又は細胞の任意の態様もしくは成分に対する毒性、疾患、又は任意の薬剤の効果を研究するために使用され得る。例として、本明細書に開示される様々な実施形態を適用して、細胞、細胞膜、又は細胞膜の成分の任意の内容物を研究することができる。実施形態は、細胞器官、細胞下器官、細胞質、細胞膜内の構造、又はそれらの組み合わせに適用することができる。特定の実施形態を適用して、微小管、染色体、DNA、RNA、ミトコンドリア、リボソーム、ゴルジ装置、リソソーム、細網、液胞、前述のいずれかの断片、又は細胞の他の内容物もしくは断片的内容物を調査することができる。細胞膜内の構造は、任意の膜タンパク質、膜チャネル、膜受容体、又はそれらの組み合わせを含み得る。実施形態は、環境との細胞相互作用の研究に適用することができる。
【0077】
本発明の別の態様は、化学薬剤及び生体薬剤の薬理学的及び/又は毒性特性のスクリーニングのための神経機能の高スループットのアッセイに対する培地を含む。実施形態では、薬剤は、細胞、例えば、本明細書に開示される任意の種類の細胞、又は抗体、例えば、臨床疾患を治療するために使用される抗体である。実施形態では、毒性、効果、又は神経調節が、提案される哺乳類治療である新規の薬剤とヒト疾患からの既存の治療との間で比較され得るように、薬剤は、ヒト疾患を治療するために使用される任意の薬物又は薬剤である。一部の実施形態では、ヒト疾患の治療のための新規の薬剤は、神経変性疾患の治療であり、神経変性疾患の既存の治療と比較される。非限定的な例として、多発性硬化症の場合、新規の薬剤(修飾細胞、抗体、又は小化学化合物)の効果を比較し、コパキソン、レビフ、他のインターフェロン療法、タイサブリ、フマル酸ジメチル、フィンゴリモド、テリフルオノマイド、ミトキサントロン、プレドニゾン、チザニジン、バクロフェン、又はそれらの組み合わせなどの既存の多発性硬化症の治療の同じ効果と対比することができる。一態様では、本発明は、ミエリンを損なう疾患及び末梢神経障害の根底にある機序を複製、操作、改変、及び評価する方法を提供する。
【0078】
別の態様では、本開示は、化学薬剤及び生体薬剤の薬理活性及び/又は毒性活性のスクリーニングのためのヒト神経細胞における神経調節の高スループットのアッセイに対する培地を含む。
【0079】
様々な態様において、現在開示されているマイクロ電極アレイは、ヒト神経細胞集団の記録を可能にするために、光学的及び電気化学的刺激と組み合わせて、2D及び3Dマイクロエンジニアリングニューラルバンドルなどの独特なマイクロエンジニアリング生理学的システムと組み合わせて用いられる。
【0080】
末梢神経回路、中枢神経回路、又はそれらの組み合わせを特異的に模倣する生体模倣、マイクロエンジニアリング生理学的システムにおける誘発されたシナプス後電位を定量化する方法も本明細書に提供される。実施形態では、マイクロ電極アレイは、複合活動電位及びシナプス後電位の伝導などの集団レベルの生理学を研究するために使用される。特定の実施形態では、本明細書に開示される様々なマイクロ電極アレイのいずれかは、別々のマイクロエンジニアリング生理学的システム間の相互作用を研究するために使用され得る。例として、マイクロ電極アレイは、少なくとも2つの独立したオルガノイドシステム間、少なくとも2つの独立した生体機能チップシステム間、少なくとも1つのオルガノイドシステムと少なくとも1つの生体機能チップシステムとの間、又はそれらの組み合わせの相互作用を検知することができる。
【0081】
別の態様では、照明及び蛍光イメージングの光学的方法、ハードウェア及びソフトウェア制御は、神経回路内で誘発された電位に対する多単位生理学的応答の非侵襲的刺激及び記録を可能にするために、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイと関連して使用される。
【0082】
追加の方法としては、選択的5-HT再取り込み阻害剤(SSRI)及び第2世代抗精神病薬を試験する際にマイクロ電極アレイを使用して、それらが発達成熟を変化させるかどうかを調べる研究が挙げられる。
【0083】
様々な態様では、本方法は、神経組織の組織学的又は形態学的分析を更に備え得る。実施形態では、組織学的分析は、軸索直径、軸索密度、髄鞘形成、細胞形態、細胞タイプ、神経構造又はそれらの組み合わせの評価を備える。特定の実施形態では、電気生理学的試験は、軸索成長領域、神経節領域、又はそれらの組み合わせに沿った複数の場所を刺激すること、及び神経節領域、軸索成長領域、又はそれらの組み合わせからの、結果として生じる電気応答を記録することを備え得る。実施形態では、組織学的分析から得られたデータは、電気生理学的試験から得られたデータと相関がある。神経病理学の特定の推論は組織学的データと電気生理学的データとの間の相関関係に基づいて行うことができる。特定の実施形態は、サンプル神経組織から得られた神経伝導速度を健常神経組織であることが知られている神経組織の神経伝導速度と比較することをさらに備え、ここで、健常神経組織と比較してサンプル神経組織における神経伝導が低下することは、神経病理学を示していることを示す。実施形態では、形態、表現型、遺伝子型、構造、電気生理学又はそれらの組み合わせにおける相対的な変化は、サンプル神経組織と健康な神経組織のと間、又はサンプル神経組織と少なくとも1つの薬剤にさらされた神経組織との間で比較され得る。特定の実施形態では、電気生理学的試験、組織学的/形態学的試験又はそれらの組み合わせは、神経変性を慢性的に測定するため又は成熟もしくは発達中の神経細胞を追跡するために数週間にわたって実施される。
【0084】
国際特許出願PCT/US2019/049802の開示は、背景及びサポート情報として、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0085】
別の様々な例示的な実施形態では、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイは、毒性及び治療条件下での神経組織状態の機能的尺度として伝導速度を推定するために使用される。髄鞘形成の程度、ミエリンの健常状態、軸索輸送、mRNA転写、ニューロン損傷、又はそれらの組み合わせに関する情報は、電気生理学的分析から決定され得る。神経密度、髄鞘形成率、及び神経線維型などの形態測定分析と組み合わせることによって、目的の化合物について作用機序が決定され得る。一部の実施形態では、本明細書に開示されているデバイス、方法、及びシステムは、制御された方法で疾患現象を再現するための遺伝子変異及び薬物を組み込むことができ、神経障害及び可能な治療療法のより良い理解をもたらす。
【0086】
実施例1: 起電性細胞の光学的及び電気的プロービング用のメーカースペースベースのガラス基板上ステンレス鋼3Dマイクロ電極アレイ(MEA)
I.はじめに
細胞は、細胞からの信号を統合し、生成し、駆動し、外部環境へ伝達するための基礎となる膜電位を有する[1]。イオン透過性の変化は、細胞生理を制御する電気的活動に変換される。心筋活動による電位、神経伝達と神経伝達物質の生成、細胞の増殖、活性化および分化、イオン輸送およびホルモンの分泌などの現象は、電気的活動に基づく[2]。細胞電気生理学とは、生体細胞及び組織の電気的性質を研究する学問であり、その電気的活動を理解し解釈するために必要なものである[3,4]。マイクロ電極アレイ(MEA)は、インビトロ起電性細胞培養物の電気的活動を記録および刺激するために用いられるインターフェースの一つで、製薬業界では薬効などの情報を提供するラベルフリーのプラットフォームとして利用されている。MEAは、薬理学、毒物学、高スループット・スクリーニング、幹細胞分化などさまざまな分野で、さまざまなニューロン、細胞、組織などの電気的測定のインビトロ結果を得るために不可欠となっている[5]。MEAは、パーキンソン病、てんかん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、神経因性疼痛、自閉症スペクトラム障害などの神経疾患の疾患オンチップモデルとして、ますます利用されるようになってきている[6]。そのため、MEAは臨床に即した神経伝導試験を実施し、ヒトの神経系への影響を反映した電気生理学的特性の変化を測定することができる。また、MEA培養チップは、心筋細胞治療薬や既存の心筋安全機構の改善にも利用されている。MEAは不整脈のリスクを評価するプラットフォームとして機能する。そうした研究は、不整脈の複雑で変化に富んだ性質を理解するために不可欠だからである[7]。MEA技術は、創薬や安全性・毒性試験を含む疾病モデリング及び治療法の限界を押し広げ、人間の健康増進に重要な役割を担っている。ここで、従来のMEAは本質的に平面(2D)であり、「最新」のクリーンルーム設備で製造できることに留意されたい。
【0087】
2Dモデルと比較して疾患におけるシグナル伝達経路や薬物反応性をよりよく捉えることが可能であることから、インビトロの応用においてインビボに近い状態[8,9]をよりよく模倣するために、3D細胞培養モデルがますます適切になってきている。3D細胞培養により、細胞移動、細胞間コミュニケーション及び分化に影響を与える可溶性因子の動的な空間勾配を形成し、生体内の組織機能や薬物活性を正確に予測することができる。そのため、細胞培養用マトリックスや支持足場を3次元に拡張する必要性が高まっている[9]。このような培養は、「疾患オンプレート」や「臓器チップ」の完全機能モデルを実現し、細胞/組織のインビトロでの増殖や再生を促進することができる[10]。そのため、インビトロMEAを3次元に拡張する必要性が高まっている。3D MEAは、近年開発されたヒト神経チップ(HNoaC)システムのような中枢あるいは末梢神経系アプリケーションを含むが、これに限定されない3Dマイクロエンジニアリング細胞システムの研究において、ネットワークダイナミクスのシンプルで高スループットなスクリーニングと測定を可能にする。このシステムは本質的に3次元であり、心筋細胞インビトロハートオンチップモデル[12]から細胞外マイクロ電極による記録を取るように、電気生理学的及び組織学的指標[11]や、他の器官系の評価に用いることが可能である。光学的に透明な材料の上に構築されたMEAで3D機能を実現することにより、3D細胞培養物から光学的及び電気的データを同時に抽出することが可能となる。従来のクリーンルームを基礎とした技術を用いた3D MEAの微細製造は、そのほとんどが2次元デバイスの加工に適しているため、困難である。さらに、製造したデバイスを市販の増幅システムと接続し、データ処理、解析及びプロットするためのバックエンド技術(プリント基板(PCB)など)も必要である[6]。
【0088】
本実施例1は、ガラスプラットフォーム上に組み立てられたステンレス鋼(SS)3D MEAの微細製造とパッケージングに関する。このデバイスの製造には、従来とは異なる「メーカースペース微細製造」技術を採用し、主にクリーンルーム外においてデバイスを実現した。レーザー微細加工は、10個のオベリスクのような形状を持つSSシートをアブレーションに使用される。8本のオベリスクが直列に配置され、互いに隣接する2本のオベリスクで終端を形成している。オベリスクのアブレーションの寸法は、一旦面外に移行して3D形状になった後に、高さ400μm、幅300μmになるように設計されている。オベリスクのピッチは、アレイの直線部分で600μmである。このような構成は、特にヒト神経チップ(HNoaC)システムのような一部の3D細胞培養物に有用である。しかし、この3D構成は汎用性があり、あらゆる3次元細胞培養、組織スライス、細胞クラスターに使用されてもよい。オベリスクの形状の先端は、また、細胞外層にはしばしば死細胞が存在し、それが細胞内層の細胞信号を電極から遮断してしまうため、組織を貫通し、細胞内層からの記録ができる。その後、3Dオベリスクアレイは金属化されたチタン-金(Ti-Au)トレースを備えた高透明ガラスチップ上に組み立てられ、プラットフォームは光学的及び電気的プロービングを同時に行うことが可能となる。電極のアレイは、10個の別個の記録/刺激部位が形成されるようにレーザー微細加工によって互いに分離される。厚さ最大250μmのポリジメチルシロキサン(PDMS)が絶縁材料として使用されており、狭域精密ドロップキャスティング(CPDC)技術によって形成されている。CPDCは、絶縁材料(PDMS)が培養ウェルの領域内に制限されるようなポリエチレンテレフタレートグリコール(PET-G)培養ウェルのガラスチップへの接着後に、PDMSキャスティングを行うため、様々なサイズの3D電極を実現するために最適化することができる。最大0.03mmの面積を持つ微細製造3DMEAは、電気生理学的に適切な周波数である1kHzにおいて、インピーダンス6.9kΩ、位相-12.3°を示している。製造されたデバイスを市販のデータ収集システムと接続するために、ビアとチャネルを備えたカスタムデザインの3Dプリント配線フレームが製造される。ビアとチャネルは銀インクキャスティングによって導電性ペーストで充填され、これによりガラスチップの上面にあるプロービングパッドを、インクがキャスティングされた3Dプリントフレームを備えたパッケージ済みデバイスの下面に移行させることができる。銀インクは、金、グラフェン、カーボンナノチューブなど(ただし、これらに限定されない)の他の適切な材料で代用できることは、当業者には理解されるであろう。3Dプリントフレームを備えた3D MEAの性能は、電気生理学的に適切な1kHzの周波数において、インピーダンス最大13.3kΩ、位相-12.1°を示している。フレームを組み合わせる前後で抽出した3D MEAのランドルズ等価に相当する回路素子の値は、許容範囲内の値であることを示している。AT-1マウス由来の心筋細胞株で、成体心筋細胞の表現型特性を保持しながら収縮するHL-1細胞をデバイス上で培養し、完全に完成したデバイスでの生体適合性と信号品質を評価した。細胞の電気生理学的活動は、約2日インビトロ(DIV)の後に測定された。古典的な活動電位が3D MEAプラットフォームから取得されたことで、このデバイスの医療及び製薬研究用の、費用対効果が高く迅速に製造可能なバイオセンシングプラットフォームとしての能力が実証された。
【0089】
II.素材及び方法
(a)3次元ステンレス鋼マイクロニードル電極の微細製造
オベリスク状のマイクロニードルアレイは、米国マサチューセッツ州のDassault Systems社製のSolidWorksを用いて、Drawing Interchange Format(.dxf)で設計された。構築物の長さは4200μm、幅は500μmで、終端には直径800μmの円形領域がある。10本のマイクロニードルは、先述のシルエットの内部に配置され、マイクロニードルの切り出しが、300μmのベース幅、400μmの長さ、及び600μmのピッチを有していた。図1(a)は、米国オレゴン州のEolite Lasers社製 QuikLaze 50 ST2 レーザー微細加工システムを用いて、SSシート(25μm厚)20を赤外線レーザー波長(1064nm)でレーザー微細加工したときの模式図である。レーザーは、繰り返し周波数50Hz、走査速度40μm/sで動作させた。SS20のオベリスク型切り込み22は、皮下注射針23を用いて平面から3D形状に移行させた[図1(b)]。本実施形態では皮下注射針を示したが、切り込み22を面外に移行させることができる構造物であれば、移行構造物として利用することが可能である。図1(c)は、3Dマイクロニードル25がSS基板20から離脱した後の模式図であり、挿入図は、シャドウマスクとしてその後の処理ステップで使用されるSS基板20の切り込み26を示す。
【0090】
(b)デバイスの組み立て及びパッケージング
SS3D電極は、光学的及び電気的プロービングを同時に行うことを可能にするために、高透明ガラスチップ30(22mm×22mm×0.5mm)上に組み立てた[図2(a)]。ガラス基板30は、まず、IPA(イソプロピルアルコール;2-プロパノール)にKOH(水酸化カリウム)を混合したもので洗浄した。なお、ガラス基板は、ポリスチレン、ポリカーボネート、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレートなどの透明ポリマーを含むがこれに限定されない別の透明基板で代替することが可能であることに留意されたい。3Dマイクロニードルアレイからの電気的プロービングのために、(Ti;4N5純度ペレット)及び金(Au;5N純度ペレット)(米国ペンシルベニア州Kurt J. Lesker社製)のトレース32を、カプトンから製造されたシャドウマスク34を介して、電子ビーム(E-beam)蒸着(米国Thermionics Laboratory社)によって蒸着した。シャドウマスクは、プロービングパッド35が、ガラスチップ30に後付けされる3Dプリントフレームのビアに対応して配置される設計であった[図2(c)]。シャドウマスク34のトレース32とプロービングパッド35は、SolidWorksで設計した。トレースは、電極とパッドの位置に応じて、幅150μm、長さ最大7~16mmになるように設計される。パッドの寸法は1×1mmで、ピッチは4mmであった。カプトンマスク34は、米国Eolite Lasers社製のQuikLaze 50 ST2 レーザー微細加工システムでアブレーションした(紫外線波長:355nm、走査速度:70μm/s、繰り返し周波数:50Hz)[図2(b)]。その後、ガラスチップ30の上にSS鍵型切り欠きマスク36[図2(d)]を置き、ガラスチップの中心領域と位置を揃え[図2(c)]、銀ペースト(米国ニュージャージー州AI Technology社製の PRIMA-SOLDER(トレードマーク) EG8050)で3Dマイクロニードル40をガラス基板に接着させた[図2(d)]。銀ペーストの硬化は、55℃のオーブンで48時間行った。[図2(e)]は、3Dマイクロニードル40をトレース32とともにガラスチップ30上に接着した後のデバイスの模式図である。外径16mm、内径14mmのPET-G(ポリエチレンテレフタレートグリコール)培養ウェル42をPDMS(ポリジメチルシロキサン、化学式:(C10H8O4)n)を用いて生体適合性接着層として作用させた[図2(f)]。PET-G培養リング42は、米国ミシガン州Wellsaw社製の Horizontal Band Sawを使用して親チューブから切り出した。PET-G培養ウェルとPDMSの双方は、MEAチップが生物学的用途に適するような生体適合性を有している[9,16]。
【0091】
3Dマイクロニードル電極40は、デバイスが(N=10)記録/刺激サイトを持つように、QuikLaze 50 ST2レーザー微細加工(IR波長:1064nm、走査速度:40μm/s、繰り返し周波数:50Hz)を用いて互いに分離した[図2(f)]。レーザー微細加工工程は、SS基板とその下の銀ペーストをすべてアブレーションすることができたが、精密アブレーション能力と、特定の材料をアブレーションするために複数の波長を切り替えることができるシステムのマルチモダリティにより、ガラス上で停止する。3D MEAを実現するためのトレース32及び電極(マイクロニードル)40の絶縁は、PET-G培養ウェル内でのPDMSドロップキャスティング工程で実施された。この狭域精密ドロップキャスティング(CPDC)技術[図2(g)]により、3D MEAのサイズ/面積を制御することができる。PDMSを50℃で18時間硬化させ、最終的なデバイスを実現した[図2(h)]。図2(i)は、単一のマイクロニードル40と相互作用しているHL-1細胞50の模式図である。
【0092】
(c)市販の電子増幅システムとの接続用のカスタム3Dプリント配線パッケージングフレームの完成
SolidWorks 3Dを使用したCAD設計は、Axion BioSystems社製のMUSEなどの市販の電子増幅システムとの接続用カスタム配線パッケージングフレームの設計に使用した[17]。パッケージングフレーム60は、図3(a)に見られるように、両側のガラスチップにスライドする2つの部分62、64を備える。フレーム60の長さは24mm、幅は12mm、厚さは2mmであり、すべての寸法は改良型MUSEシステムと一致するようにした。フレームは、厚さ最大500μmのガラスチップが内部でスライドする、最大510μmの溝(図示せず)を有するように設計されている。各フレーム62、64は、合計5つのビア65を有し、その寸法は直径1mmであり、ガラスチップ上の接点パッド(隠れている)の位置の上部に重なる。ビア65は、ビア65とチャネル67が導電性銀ペーストで完全に充填されると、ガラスチップの上部から3Dプリントフレームの下部に接点パッドを電気的に移行させる[図3(b)]。フレーム62,64は、オーストラリアのAsiga MAXUV デジタル光処理(DLP)システムで、高温樹脂(米国マサチューセッツ州のFormlabs社製RS-F2-HTAM-02)を用いて3Dプリントされた。材料がプリントされた後、イソプロピルアルコール(IPA)で10分間洗浄し、オーブンで乾燥させた。3Dプリントフレーム60は、最後にUVエンクロージャ(385nmのUV波長)内で180秒間硬化させ、樹脂を完全に架橋し、配線フレームを硬化させた。ビア65及びチャネル67の目的は、銀接着剤69を用いたインクキャスティングステップを用いて上部から下部の間の配線を提供することである[図3(b)]。3D MEAのインピーダンス測定は、電解質としてダルベッコのリン酸緩衝液(米国マサチューセッツ州ウォルサムのThermo Fisher Scientific社製)を用いたBode 100(米国テキサス州ヒューストンのOmicron Labs社製)を使用して実施した。対極に白金線(オーストラリア、デニストーンイーストのeDAQ社製)を用い、100Hzから1MHzのインピーダンススキャンを行った。
【0093】
(d)心筋細胞培養
微細製造され組み立てられたデバイスの電気生理学的活動を測定する能力を調べるために、HL-1細胞(起電性細胞株)をデバイス上で培養した。HL-1細胞は不死化マウス心房心筋細胞であり、培養により連続的に分裂し,自発的に収縮する[18]。細胞は細胞培養フラスコ(Fisher Scientific社製T25)で滅菌クレイコーム培地(Sigma-Aldrich社製51800C-500ML)により、48時間培養した。HL-1細胞は、コンフルエントに達した時点で継代した。MEAはIPA(イソプロピルアルコール)で滅菌し、HL-1細胞(約31000個)をプレーティングする前に12時間ゼラチン/フィブロネクチン細胞外マトリックスコーティングでプレコートした。クレイコーム細胞培地は1日ごとに交換した。電気生理学的測定は、3DガラスMEA上で2DIV(days in vitro)後にAxion社製MUSEとデバイスを接続することで行った。システムの二乗平均平方根(RMS)ノイズの6倍以上のスパイク活動を活動電位として記録した。
【0094】
III.結果及び考察
(a)3次元ステンレス鋼マイクロニードル電極の微細製造
図4(a)は、皮下注射針を用いて面外移行させた後の3Dマイクロニードルアレイ70のSEM画像を示している。図4(b)は、3Dマイクロニードル電極78のクローズアップSEM画像を示している。マイクロニードルは水平に対して垂直であった。更に、3Dマイクロニードルの角度の傾きの箱ひげ図が図4(c)に示されており、すべての3Dマイクロニードルの水平に対する角度が一貫していることが強調されている。合計10個の電極について、傾斜角度は最大90°で、最小86°であった。3Dマイクロ電極の水平に対する平均値は89°であった。図4(d)は、10個の記録/刺激部位をレーザーで分離した後、銀ペーストを用いてガラス基板30に接着された3Dマイクロニードル70のSEM画像を示している。図示するように、図4(d)において、3Dマイクロニードル70は、第1部分71と第2部分72のマイクロニードル78を含む。第1部分71は、長さ寸法73と幅寸法74とを含む。第2部分は、長さ寸法75と幅寸法76とを含む。図示するように、第1の長さ寸法73は第2の長さ寸法75より大きく、第2の幅寸法76は第1の幅寸法74より大きい。第1部分71及び第2部分72は、神経細胞が複数のマイクロニードル70に配置されたときに、第1部分と神経細胞の神経管の位置が揃い、第2部分と神経細胞の神経節の位置が揃うような幾何学形状を形成している。図4(e)は、マイクロニードル電極アレイを分離するためのレーザーのスクライブラインを示すクローズアップSEM画像を示している。単一のマイクロニードル78は、上述した高さオプションに従った高さ寸法79を有する。図4(f)は、PDMS絶縁体を用いたCPDC処理後の完成した3D MEAのSEM画像を示している。図4(f)の挿入図に見られるように、CPDC技術によってデバイス全体が絶縁され、SS先端が最大400μmの高さで露出して3D MEAが実現されることが分かる。図4(b)、(c)、(d)の3DマイクロニードルSEM画像は、ピッチ600μmで高さ400μm、幅300μm(N=10配列)の設計寸法に極めて近い状態を維持している。
【0095】
図5は、3D MEAを実現するための各段階におけるデバイス製造及び組立の顕微鏡写真である。図5(a)は、レーザーカットされたカプトンのシャドウマスクを介して電子ビーム蒸着後に得られたTi-Auトレースの顕微鏡写真である。図5(b)は、3Dマイクロニードルを銀ペーストでガラス基板に接着した後のデバイスの顕微鏡写真である。3Dマイクロニードルは、その後、互いに分離するようにレーザー微細加工して、PET-G培養ウェル内でPDMS CPDCによってトレースとマイクロニードルの絶縁を行い、組立済みデバイスを得た[図5(c)]。図5(d)は、3Dプリントフレームをガラスチップの両側にスライドさせて得られた最終パッケージ済みデバイスの顕微鏡写真である。図5(e)は、ビアを備えた3Dプリントフレームのクローズアップ画像であり、ビアは、その後3Dプリント部品の外縁にあるインクキャストマイクロチャネルを利用して銀ペーストで充填され、これによりガラスチップ上の金パッドを3Dプリントフレームの下部に移行させることができる[図5(f)]。
【0096】
(b)電気的特性評価
3D MEAのフルスペクトルインピーダンス測定は、導電性生理食塩水媒体中で行った。図6(a)及び(b)は、N=3電極で組み立て、パッケージングした後の3D MEAのインピーダンススペクトルを示している。測定値は、マイクロ電極に使用される一般的なインピーダンスモデルであるランドルズの回路モデル[図6(c)]で適正化した[19、20]。これらのデータは両方とも非常によく似ており、ガラス上の3Dマイクロニードルの組み立てから3Dプリントフレームへの取り付けまでにおいて変化が少ないことを示している。組み立てられたデバイスの平均インピーダンス(実数)は6.9kΩ、位相は1kHzで-12.3°であった。パッケージ済みデバイスでは、平均インピーダンス(実数)は13.3kΩで、位相は1kHzで-12.1°であった。これらの値は、類似のサイズの電極に関する他の文献で報告されたものと同様であった[9,21,22]。
【0097】
さらに、抽出されたパラメータ(表1)から、3Dプリントフレームは3D MEAの性能に影響を与えないことがわかり、特に二重層キャパシタンス(CDL)とRの値は変化していないことが確認された。さらに、電荷移動抵抗(RCT)とワールブルグ素子の変化も予想される範囲内で観察された[21,23-25]。これは、3Dプリントフレームにおける銀インクがキャスティングされたビアの直流抵抗が非常に低いことに起因している。図6(d)は、N=10個のビアの直流抵抗の箱ひげ図を示している。このビアのセットの平均抵抗は3.99Ωであった。平均値と比較した場合、結果の差は±1.00Ω以下であった。
【0098】
(c)HL-1細胞を用いたAxion Biosystem MEAのノイズ測定
図7は、製造されたデバイスがAxion BioSystem社製MUSE電子機器増幅装置と接続している様子を示している(図7(a)、(b))。この設計は、デバイスと増幅装置システムとが密接に連携することを意図しており、結果はその成果を明確に示している。図7(c)は、デバイスとMUSEシステムとを連携させて測定したピーク・トゥ・ピーク・ノイズを示している。4.2μVという低い値で、神経信号及び心電信号の取得に最適であることが観察される。図7(d)は、2DIVのHL-1細胞株を示している(培養フラスコ内で撮像)。図7(e)は、3D MEAデバイス上で約5Hzで拍動するHL-1細胞の古典的な細胞外心筋活動電位のスクリーンキャプチャを示している。図7(f)は、25個の心筋活動電位を重ね合わせたもの(25個の平均がハイライトされている)を示している。この拍動活動は、デバイスの生体適合性と3D SS電極の良好な電気生理学的な接続能力を実証している。
【0099】
IV.結論
本書では、起電性細胞の光学的プロービング用として、ガラス基板上に3次元ステンレス鋼製MEAの微細製造と組み立てを行ったことを報告する。レーザー微細加工、金属化、3Dプリント、インクキャスティング、生体適合性を有する材料によるPDMS絶縁を用いた技術を開発し、3次元細胞培養モデルの測定用ツールとして応用した。3Dマイクロニードル電極の向きは、N=10マイクロニードルの場合、水平に対して平均89°であり、複数のデバイス間で一貫していることが分かった。完全に製造・組立済みのデバイスの電気インピーダンス分光法では、組立済みデバイスで実数インピーダンス6.9kΩ、位相は1kHzで-12.3°、パッケージ済みデバイスで13.3kΩ、位相は1kHzで-12.1°であった。これらの値はいずれも、文献にある他の報告された値と同等である。また、パッケージ済み配線ビアでは、N=10のビアで3.99Ωを測定した。さらに、3D MEAを市販の電子機器増幅システムと接続し、4.2μVの優れたノイズを持つ電極が報告された。最後に、不死化心筋細胞株(HL-1)から2DIVで心拍が記録され、これによりデバイスの設計、製造、パッケージング及び特性評価がエンドツーエンドで行われることが示された。このようなデバイスは、急成長する「臓器チップ」市場において重要な役割を果たし得る。
【0100】
実施例1の参考文献
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【0101】
実施例2:Nerve-on-a-Chip(登録商標)構造物の光学的及び電気的プロービングを同時に行うための「エッジラップ」金属配線と3Dプリント組み立てリグを備えた3Dマイクロ電極アレイ(3D MEAs)の製造と特性評価
【0102】
I.はじめに
臓器チップモデルは、インビトロでのヒト組織のモデルとしてますます重要となってきている[1]。このような組織チップの観察を行うマイクロシステムにおいては、構造物の評価を同時に行うために、複数のセンシングモダリティをチップ上に集積することが要求される。チップ上の神経系を観察するための3次元電極の必要性が確立されていることは明確である[1]。電気生理学的センシングは、神経伝導速度(NCV)のような臨床的に重要なパラメータをNerve-on-a-Chipのようなインビトロモデルシステムから測定できるため、これらの3Dマイクロ電極を用いることが望ましい[2]。多様なプロービング能力を実現することで、成熟途中の細胞構造物に対する電気生理学的及び光学的な追跡が可能となる。光学的プロービングの場合、ガラス基板MEAは可能性がありかつ望ましい材料とされるが、これは、ガラスはその光学的透明度で知られており、またその並外れた生体適合性がよく実証されているためである。しかし、このようなガラス基板MEAにおける前後配線を確立することは困難である。これを実現にするにあたり、新しい「エッジラップ」トレース配線技術が開発されたことで、光学的に透明な基板上に3D MEAを製造するスケーラブルなアプローチが可能となった。3D MEAの小さな実装面積での3次元マイクロ電極の組み立ては困難であるが、3Dプリント組み立てリグが有用な役割を果たし得る。
【0103】
以前の研究[3]では、パッケージング基板に依存しない3D MEAプラットフォームを実証した。本研究においては、カスタムマイクロニードル(μN)をベースとした「鍵型アレイ」3D MEA、具体的には、光学的透明度を維持しつつ、エンジニアリング神経軸索繊維路を刺激し、その長さを記録するように設計された独自の線形3D電極構造物についてのデバイス開発方法を報告する。本書に詳述する方法は、「メーカースペース微細製造」の工程フローにおいて、追加的な技術と選択的な技術の両方を用いて組み立てられた独自の構造物を製造することにある。完成したデバイスは、独自のNerve-on-a-Chip(登録商標)[2]3D神経モデルに組み込まれ、アレイの上に設置される。神経チップを組み込む前に、マイクロ電極の特性評価が行われ、細胞に電気的な観察を行うための適切な条件が確保される。その結果、3D MEAからの機械的及び電気的データ、並びにNerve-on-a-Chip(登録商標)内に領域を指定され28DIV培養された初代ラットDRG細胞の成長及び生存率の実証に成功した。
【0104】
II.素材
厚さ25μmのステンレス鋼(SS)基板をレーザー微細加工し、鍵型デザインの10本のマイクロニードルにした(図8A;800μmの円及び5mmの直線アレイ)。微細加工されたSSの2Dから3Dへの移行ガイドをSolidworks CADソフトウェアで設計し、Asiga DLP 3Dプリンターで印刷し、70%IPAで洗浄し、30分間UV硬化させた(図8B)。その後、鍵型のSSアレイは酸洗され、移行ガイドに押し付けられて最終的な3D MEA構造へ円滑に移行した(図8C)。別途、厚さ1.5mmのスライドガラスを機械加工し、24×24mmのサイズに研磨した。これらのスライドは、塩基バス(10%w/v;KOH/H2O+IPA)で24時間洗浄した後、純水バスですすぎ洗いされた。12.5μmのKapton(登録商標)テープから「エッジラップ」金属トレースパターンを備えたカスタムシャドウマスクをレーザー微細加工し、洗浄したスライドガラスに取り付けた(図8D)。図8Dは、上面81、上面81と反対側の下面82及び縁面83を有する基板80を示している。マルチチップ、角度付き蒸着構造物を設計し、先述のDLPプロセスを使用して3Dプリントした。シャドウマスクと位置を揃えたスライドガラスを構造物上に置き、電子ビーム蒸着で「エッジラップ」配線(100nm Ti/400nm Au)を形成した(図9A-B)。次に、同じマスクを通して、中央の電極パッドに導電性アジェポキシ(厚さ12.5μm)を選択的に塗布した。移行した3D MEAは、エポキシの上に位置を揃えて置き、60℃で一晩硬化させた。その後、MEAをIRレーザーによる微細加工で分割し、PDMSを用いて絶縁し、培養ウェルとともに収容した(図8D)。インピーダンス分光法及びRMSノイズ測定は、それぞれBODE 100及びAxion BioSystems社製MUSE電気生理学的測定システムで行った(図8E)。
【0105】
Nerve-on-a-Chip(登録商標)ハイドロゲル構造物は、以前に報告されたように、フォトリソグラフィー技術を使用して3D MEA上に製造された[2]。摘出した単一のラットDRG(胚15日目)を、細胞透過性の内側ゲルと細胞制限性の外側ハイドロゲルを備えるNerve-on-a-Chip(登録商標)構造物に挿入し、3D MEAニードル電極を囲む高密度3D軸索成長を促進させた。28DIV培養後、神経組織を明視野顕微鏡で撮影し、Nikon AZ100システムでの免疫蛍光顕微鏡観察用に生細胞マーカーであるカルセインAMで染色した。
【0106】
III.結果及び考察
図10は、3D MEAの電気的及び機械的特性について報告している。フルスペクトラムのインピーダンスと位相性能(図10A;N=4)は、生理学的に適切な1kHzにおいてそれぞれ7.5kΩと-20°の値を示し、文献の値と同等であった[4]。これらのデバイスの平均RMSノイズ(図10B、N=4)は3.44μVで、同様に文献の値と同等であった[5]。3Dプリントされた移行リグは、平均角度80°(N=10;図10C)で信頼できる性能を示した。
【0107】
ラットDRG細胞を3D MEA Nerve-on-a-Chip(登録商標)デバイス(N=3)上で28日間培養し、ロバストな軸索伸長、シュワン細胞の増殖及び髄鞘形成を行わせた。カルセインAMイメージング(図11)により、すべての3D MEAサンプルで3Dマイクロ電極と共局在化した高密度軸索成長が確認され、長期の生体適合性が実証された。高密度細胞増殖及び移動は、鍵型のMEA円形領域に近接したチャネル領域で観察され(図11B)、軸索の伸長はチャネル領域で明確に見られた。
【0108】
カルセインAM染色を明視野顕微鏡撮像に置き換えることにより(図11B)、28DIVにおける培養物のロバスト性と軸索の成長が明確に示されている。今後の研究は、3D MEAの鍵型構造物の線状領域を用いた機能的な電気生理学的記録の詳細に焦点を当てる予定である。
【0109】
IV.結論
臓器チップモデルは、インビトロでの組織培養と特性評価のために必要になってきており[1,3]、これらのモデルとの光学的及び電気的同時接続の新しい複雑な方法は、こうした臓器チップの使用方法において極めて重要になる。本実施例2では、光学的に透明なガラス基板上に構築されたカスタムMEA鍵型デザインを中心とした、3D MEA Nerve-on-a-Chip(登録商標)接続のための新しい微細製造及び組立方法を示している。チップの下部に電気接点を形成するために、マスクラッピング技術と、電子ビーム蒸着のトレースを均一にするためのカスタム角度付き蒸着リグの両方を組み合わせて使用し、革新的な「エッジラップ」金属配線技術を開発した。その後、デバイスの電気インピーダンスとRMSノイズの特性評価を行い、このプラットフォームがインビトロ神経電気生理学に適していることを実証した。最後に、蛍光顕微鏡と明視野顕微鏡を用いて、28DIV時点でのNerve-on-a-Chip(登録商標)プラットフォームの生体適合性と成長方向性を評価した。
【0110】
このような「メーカースペース微細製造」の方法は、分析ツールの開発に非常に大きな柔軟性を与え、将来新しく行われる反復実験に対して道を開くであろう。現在進行中及び将来の研究としては、DRG集団の機能記録、薬物/毒素反応の調査などが含まれる。
【0111】
実施例2の参考文献
[1] K. Pollard et al., “Neural Microphysiological Systems for In Vitro Modeling of Peripheral Nervous System Disorders,” Future Medicine, 2(2), (2019).
[2] A.D. Sharma et al., “Engineering a 3D Functional Human Peripheral Nerve In Vitro using the Nerve-on-a-Chip Platform,” Sci Rep, 9, 8921, (2019).
[3] C. Didier et al., “Facile, Packaging Substrate-Agnostic, Microfabrication and Assembly of Scalable 3D Metal Microelectrode Arrays for In Vitro Organ-on-a-Chip and Cellular Disease Modeling,” IEEE Transducers Conference, pp. 1686-1689, (2019).
[4] D. Borkholder, “Cell-Based Biosensors using Microelectrodes,” Stanford Univ. Ph.D. Thesis, (1999).
[5] N. Azim et al., “Precision Plating of Human Electrogenic Cells on Microelectrodes Enhanced with Precision Electrodeposited Nano-Porous Platinum for Cell-Based Biosensing Applications,” IEEE JMEMS, 28 (1), pp. 50-62, (2019).
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図4A
図4B
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図4D
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図4F
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図6A
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図8B
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図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
【国際調査報告】