(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】アンドロゲン受容体/AKR1C3二重阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07C 235/64 20060101AFI20230119BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20230119BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230119BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20230119BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230119BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230119BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20230119BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230119BHJP
A61K 31/4155 20060101ALI20230119BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20230119BHJP
C07C 235/70 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C07C235/64
A61K31/167
A61P35/00
A61P5/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/4166
A61K31/4439
A61K31/4155
A61K31/58
C07C235/70 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528594
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 US2020060907
(87)【国際公開番号】W WO2021101903
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(71)【出願人】
【識別番号】518251099
【氏名又は名称】オハイオ ステイト イノベイション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ガオ アレン シー.
(72)【発明者】
【氏名】リ プイ-カイ
(72)【発明者】
【氏名】シン エンミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】コン シャオティアン
(72)【発明者】
【氏名】ル ウェイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC02
4C084ZC41
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086BC38
4C086DA12
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC02
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA31
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC02
4C206ZC41
4C206ZC75
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB28
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM71
4H006BN30
4H006BP30
4H006BP60
4H006BR60
4H006BV74
(57)【要約】
本発明は、ベンズアミド化合物、当該ベンズアミドを含有する組成物、ならびにアンドロゲン受容体(AR)および/またはアルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC3 (AKR1C3)を阻害するための当該ベンズアミドの使用を提供する。去勢抵抗性前立腺がんなどのホルモン関連がんを含む、ホルモン媒介性の疾患および状態の処置のための方法も本明細書において記述される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iによる化合物:
または薬学的に許容されるその塩であって、式中:
Zが、-CH
2-、-C(O)-、-O-、-S-、および-NR
a-からなる群より選択され;
Zが、-OR
4に対してパラ位または-OR
4に対してオルト位にあり;
下付き文字mが、0、1、2、または3であり;
各R
1が、-OH、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;
下付き文字nが、0、1、2、3、4、または5であり;
各R
2が、-OH、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より独立して選択され;
下付き文字pが、2、3、4、5、0、または1であり;
各R
3が、C
1~8ハロアルキル、-OH、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より独立して選択され;
R
4が、H、α-アミノアシル; -S(O)
2N(R
a)
2、-C(O)N(R
a)
2、および-C(O)R
bからなる群より選択され;
各R
aが、HおよびC
1~8アルキルからなる群より独立して選択され; かつ
R
bが、C
1~8アルキルであり;
ただし以下である:
Zが、-OR
4に対してパラ位の-CH
2-であり、下付き文字mおよび下付き文字nが、0であり、R
4が、Hである場合、少なくとも1つのR
3は、C
1~8ハロアルキル、ハロゲン、-NO
2、C
2~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択され;
Zが、-OR
4に対してパラ位の-CH
2-であり、化合物が、2,3,4-トリヒドロキシ-ベンズアミドである場合、少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3は、-OH、-NO
2、-CN、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択され;
Zが、-OR
4に対してパラ位の-CH
2-であり、化合物が、5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドである場合、少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3は、-OH、-NO
2、-CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択され;
Zが、-OR
4に対してパラ位の-C(O)-であり、化合物が、2-ヒドロキシ-ベンズアミド、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミド、または5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドである場合、
(i) 少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3は、-OH、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択され、
(ii) 下付き文字nが、1であり、R
2が、4-クロロまたは4-(n-ブチル)である場合に、少なくとも1つのR
3は-CF
3または-NO
2以外であり; かつ
Zが、-OR
4に対してパラ位の-S-であり、化合物が、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドまたは5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドである場合、少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3は、-OH、C
2~8アルキル、C
2~8アルコキシ、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択される、
化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
Zが、-CH
2-である、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
Zが、-C(O)-である、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
Zが、-O-である、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
下付き文字mが、0である、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
各R
3が、C
1~8ハロアルキル、-OH、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
2~8アルケニル、およびC
2~8アルキニルからなる群より独立して選択される、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
各R
3が、C
1~8ハロアルキル、ハロゲン、および-NO
2からなる群より独立して選択される、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項8】
下付き文字pが、1または2である、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
式IIaによる構造:
を有する、請求項8記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項10】
R
3bおよびR
3dが独立してC
1~8ハロアルキルである、請求項9記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
R
3bおよびR
3dが独立して、-CF
3および-CCl
3からなる群より独立して選択される、請求項10記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項12】
式IIbによる構造:
を有する、請求項8記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項13】
R
3aおよびR
3cが、ハロゲンおよび-NO
2からなる群より独立して選択される、請求項12記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項14】
R
3aが、-Clであり、R
3cが、-NO
2である、請求項13記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項15】
式IIcによる構造:
を有する、請求項8記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項16】
R
3が、C
1~8ハロアルキルである、請求項15記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項17】
R
3が、-CF
3および-CCl
3からなる群より選択される、請求項15記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項18】
下付き文字nが、0である、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項19】
下付き文字nが、1である、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項20】
R
2が、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、およびC
1~8ハロアルキルからなる群より選択される、請求項19記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項21】
式IIIaによる構造:
を有する、請求項19記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項22】
R
3bおよびR
3dが独立して、C
1~8ハロアルキルである、請求項21記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項23】
R
3bおよびR
3dが、-CF
3および-CCl
3からなる群より独立して選択される、請求項22記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項24】
式IIIbによる構造:
を有する、請求項19記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項25】
R
3aおよびR
3cが、ハロゲンおよび-NO
2からなる群より独立して選択される、請求項24記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項26】
R
3aが、-Clであり、R
3cが、-NO
2である、請求項25記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項27】
式IIIcによる構造:
を有する、請求項19記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項28】
R
3が、C
1~8ハロアルキルである、請求項27記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項29】
R
3が、-CF
3および-CCl
3からなる群より選択される、請求項28記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項30】
R
2cが、-OCH
3である、請求項21記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項31】
R
4が、Hまたはα-アミノアシルである、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項32】
R
4が、l-バリニルおよびd-バリニルからなる群より選択される、請求項31記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項33】
Zが、-OR
4に対してパラ位に存在する、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項34】
Zが、-C(O)NH-に対してオルト位に存在する、請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項35】
以下からなる群より選択される、請求項1記載の化合物:
、および薬学的に許容されるその塩。
【請求項36】
Zが、-CH
2-であり;
下付き文字mおよび下付き文字nが、0であり; かつ
少なくとも1つのR
3が、ハロゲン、-NO
2、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択される、
請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項37】
Zが、-OR
4に対してパラ位の-C(O)-であり;
化合物が、2-ヒドロキシ-ベンズアミド、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミド、または5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドであり; かつ
少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3が、-OH、C
1~8アルコキシ、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択される、
請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項38】
Zが、-OR
4に対してパラ位の-S-であり;
化合物が、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドまたは5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドであり; かつ
少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3が、-OH、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択される、
請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか一項記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩と、
薬学的に許容される賦形剤と
を含む、薬学的組成物。
【請求項40】
ホルモン媒介性の疾患または状態を処置するための方法であって、以下:
それを必要とする対象に、治療的有効量の、請求項1記載の化合物を投与する段階であって、それによってホルモン媒介性の疾患または状態を処置する、段階
を含む、該方法。
【請求項41】
ホルモン媒介性の疾患が、がんである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
がんが、去勢抵抗性前立腺がんである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
抗アンドロゲン剤を対象に投与する段階
をさらに含む、請求項40~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
抗アンドロゲン剤が、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、アビラテロン、薬学的に許容されるその塩、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
アンドロゲン受容体(AR)を阻害するための方法であって、以下:
有効量の、請求項1記載の化合物またはその塩と、ARを接触させる段階であって、それによってARを阻害する、段階
を含む、該方法。
【請求項46】
アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC3 (AKR1C3)を阻害するための方法であって、以下:
有効量の、請求項1記載の化合物またはその塩と、AKR1C3を接触させる段階であって、それによってAKR1C3を阻害する、段階
を含む、該方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2019年11月18日付で出願された米国仮特許出願第62/937,136号に対する優先権を主張するものであり、該仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エンザルタミド、アパルタミド、およびダロルタミドなどの次世代抗アンドロゲン、ならびにアビラテロンなどのアンドロゲン合成阻害剤は、化学療法前後の両方で去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者の処置のために承認されている。これらの治療法は、最初は効果的であるが、薬剤に対する耐性の発現を急速にもたらし、疾患の進行をもたらす。効果的なAR遮断中に疾患の進行を持続させる耐性経路を標的指向する方法を考案するために、潜在的な耐性機構を解明するための差し迫った現在進行中の研究が行われている。臨床研究と実験研究の両方からのかなりの証拠によって、アンドロゲン受容体(AR)およびその変種7 (AR-V7)が、アンドロゲン遮断療法中のCRPC進行の促進ならびにエンザルタミドおよびアビラテロン療法に対する耐性の誘導において決定的な役割を果たすことが実証されている。また、最近の研究では、AKR1C3の活性化および細胞内分泌アンドロゲン合成の増強がエンザルタミドおよびアビラテロン耐性に寄与することが示唆されている。エンザルタミド/アビラテロン耐性前立腺がん細胞では、AKR1C3が過剰発現し、細胞内分泌アンドロゲンが上昇している。
【発明の概要】
【0003】
本明細書において提供されるのは、式Iによる化合物:
または薬学的に許容されるその塩であり、式中:
Zは、-CH
2-、-C(O)-、-O-、-S-、および-NR
a-からなる群より選択され;
各R
1は、-OH、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;
各R
2およびR
3は、-OH、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より独立して選択され;
R
4は、H、α-アミノアシル; -S(O)
2N(R
a)
2、-C(O)N(R
a)
2、および-C(O)R
bからなる群より選択され;
各R
aは、HおよびC
1~8アルキルからなる群より独立して選択され;
R
bは、C
1~8アルキルであり;
下付き文字mは、0から3の範囲の整数であり;
下付き文字nは、0から5の範囲の整数であり; かつ
下付き文字pは、1から5の範囲の整数である。
【0004】
本明細書において記述される1つまたは複数の化合物と、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含有する、薬学的組成物もまた、本明細書において提供される。
【0005】
がん、例えば、去勢抵抗性前立腺がんなどのホルモン媒介性の疾患または状態を処置するための方法も、本明細書において提供される。本方法は、以下:治療的有効量の、本明細書において記述される化合物または組成物を、それを必要とする対象に投与する段階であって、それによってホルモン媒介性の疾患または状態を処置する、段階、を含む。
【0006】
アンドロゲン受容体(AR)および/またはアルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC3 (AKR1C3)を阻害するための方法も、本明細書において提供される。本方法は、以下:ARおよび/またはAKR1C3を、有効量の、本明細書において記述される化合物と接触させる段階であって、それによってARおよび/またはAKR1C3を阻害する、段階、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】CWR22rv1細胞を化合物1および化合物2で処理した後の、AR-FL、AR-VおよびAKR1C3タンパク質発現に関するウエスタンブロット分析を示す。
【
図2】化合物1または化合物2のいずれかで48時間にわたり処理したLNCaP-AKR1C3細胞の酵素活性のプロットを示し、これらの化合物がAKR1C3活性を阻害することを実証している。
【
図3】漸増用量の化合物1で48時間にわたり処理したLNCaP-AKR1C3細胞における酵素活性のプロットを示し、AKR1C3が用量依存的に阻害されることを実証している。
【
図4】C4-2B MDVR細胞を化合物1または化合物2のいずれかで処理した後に測定された総細胞数を示し、これらの化合物が細胞増殖を阻害することを実証している。
【
図5】C4-2B MDVR細胞を漸増用量の化合物1で48時間にわたり処理した後に測定された総細胞数を示し、細胞増殖が用量依存的に阻害されることを実証している。
【
図6】エンザルタミド(Enza)耐性MDVR細胞、アビラテロン(Abi)耐性AbiR細胞、アパルタミド(Apal)耐性ApalR細胞、およびダロルタミド(Daro)耐性DaroR細胞を、それぞれの抗アンドロゲンEnza (20 μM)、Abi (10 μM)、Apal (20 μM)、Daro (20 μM)または化合物1 (5 μM)で48時間処理した後に測定した総細胞数を示す。
【
図7】MCF-7乳がん細胞を漸増用量の化合物1で48時間にわたり処理した後に測定された総細胞数を示し、細胞増殖が用量依存的に阻害されることを実証している。
【
図8】C4-2B AKR1C3細胞を異なる化合物で48時間にわたり処理した後に測定された総細胞数を示す。
【
図9A】化合物1および媒体対照で処置したマウスにおけるVCaP腫瘍の体積を示す。
【
図9B】VCaPモデルにおいて化合物1および媒体対照で処置したマウスの体重を示す。
【
図9C】VCaPモデルにおいて化合物1および媒体対照で処置したマウスにおける前立腺特異抗原(PSA)のレベルを示す。まとめると、
図9A~9Cは、化合物1がVCaP腫瘍増殖を阻害することを示す。
【
図10A】化合物1および媒体対照で処置したマウスにおけるLuCaP35CR腫瘍の体積を示す。
【
図10B】LuCaP35CRモデルにおいて化合物1および媒体対照で処置したマウスの体重を示す。
【
図10C】LuCaP35CRモデルにおいて化合物1および媒体対照で処置したマウスにおける前立腺特異抗原(PSA)のレベルを示す。
【
図10D】LuCaP35CRモデルにおいて化合物1および媒体対照で処置したマウスにおける腫瘍内テストステロンレベルを示す。まとめると、
図10A~10Dは、化合物1がLuCaP35CR腫瘍増殖を阻害することを示す。
【
図11】化合物1がエクスビボでLuCaP35CR腫瘍において、アンドロステンジオンからテストステロンへの変換を阻害することを示す。
【
図12】化合物1および化合物5がLNCaP細胞におけるAR核移行を阻害することを示す。チャコール除去FBS条件において培養されたLNCaP細胞を、DHTおよび示されている化合物で処理した。AR発現を免疫蛍光染色によって視覚化した。
【
図13】
図13A:化合物1および化合物5が、C4-2B MDVR細胞におけるAR活性シグネチャー遺伝子を阻害することを実証する、RNAseqヒートマップを示す。
図13B:化合物1および化合物5が、C4-2B MDVR細胞におけるAR-V7活性シグネチャー遺伝子を阻害することを実証する、RNAseqヒートマップを示す。
【
図14】化合物1、2、5、および8が、C4-2B MDVR細胞におけるがん細胞の増殖および生存に関連する遺伝子を阻害することを実証する、RNAseqヒートマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、AR/ARv7およびAKR1C3の両方の阻害が、進行性前立腺がんなどの、ホルモン関連がんを処置するための、および現在の治療法に対する耐性を克服するための理想的な戦略であろうという認識に一部基づいている。AKR1C3の過剰発現はエンザルタミド/アビラテロンに対する耐性を付与し、一方でAKR1C3の下方制御はエンザルタミド/アビラテロン処置に対して細胞を感受性にする。重要なことに、AKR1C3の過剰発現が、臨床転移性前立腺がんにおいて実証されている。本明細書において記述されるように、いくつかの新しいベンズアミド化合物は、驚くべきことに、ARおよびAKR1C3の二重阻害剤として機能することが見出されている。ベンズアミドは、前立腺がん細胞におけるAR/ARv7およびAKR1C3の発現と活性の両方、ならびに耐性前立腺がん細胞の増殖を阻害する。さらに、これらの化合物は、エンザルタミド耐性C4-2B MDVR細胞増殖、アビラテロン耐性細胞増殖、アパルタミド耐性細胞増殖、およびダロルタミド耐性細胞増殖を阻害する。
【0009】
I. 定義
本明細書において用いられる場合、「アルキル」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、示された数の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族基をいう。アルキルはC1~2、C1~3、C1~4、C1~5、C1~6、C1~7、C1~8、C1~9、C1~10、C2~3、C2~4、C2~5、C2~6、C3~4、C3~5、C3~6、C4~5、C4~6、およびC5~6などの、任意の数の炭素を含むことができる。例えば、C1~6アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどを含むが、これらに限定されることはない。アルキルは、限定されるものではないが、例えばヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの、20個までの炭素原子を有するアルキル基をいうこともできる。アルキル基は置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。特に指定されない限り、「置換アルキル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、およびアルコキシから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「アルコキシ」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、式-ORを有する基をいい、式中、Rは上記のアルキルである。
【0011】
本明細書において用いられる場合、「アルケニル」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1個の二重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素をいう。アルケニルは、C2、C2~3、C2~4、C2~5、C2~6、C2~7、C2~8、C2~9、C2~10、C3、C3~4、C3~5、C3~6、C4、C4~5、C4~6、C5、C5~6、およびC6などの、任意の数の炭素を含むことができる。アルケニル基は、1、2、3、4、5個またはそれ以上を含むが、これらに限定されない任意の適当な数の二重結合を有することができる。アルケニル基の例としては、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、イソペンテニル、1,3 ペンタジエニル、1,4 ペンタジエニル、1 ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3 ヘキサジエニル、1,4 ヘキサジエニル、1,5 ヘキサジエニル、2,4 ヘキサジエニル、または1,3,5 ヘキサトリエニルが挙げられるが、これらに限定されることはない。アルケニル基は置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。特に指定されない限り、「置換アルケニル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0012】
本明細書において用いられる場合、「アルキニル」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1個の三重結合を有する直鎖または分枝鎖のいずれかの炭化水素をいう。アルキニルは、C2、C2~3、C2~4、C2~5、C2~6、C2~7、C2~8、C2~9、C2~10、C3、C3~4、C3~5、C3~6、C4、C4~5、C4~6、C5、C5~6、およびC6などの、任意の数の炭素を含むことができる。アルキニル基の例としては、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、イソブチニル、sec ブチニル、ブタジイニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、イソペンチニル、1,3 ペンタジイニル、1,4 ペンタジイニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、1,3 ヘキサジイニル、1,4 ヘキサジイニル、1,5 ヘキサジイニル、2,4 ヘキサジイニル、または1,3,5 ヘキサトリイニルが挙げられるが、これらに限定されることはない。アルキニル基は置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。特に指定されない限り、「置換アルキニル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルキル、カルボキシ、アミド、ニトロ、オキソ、およびシアノから選択される1つまたは複数の部分で置換されていてもよい。
【0013】
本明細書において用いられる場合、「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素をいう。
【0014】
本明細書において用いられる場合、「ハロアルキル」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されているアルキル基をいう。アルキル基に関しては、ハロアルキル基は、C1~6などの任意の適当な数の炭素原子を有することができる。例えば、ハロアルキルはトリフルオロメチル、フルオロメチルなどを含む。場合によっては、「パーフルオロ」という用語は、水素の全てがフッ素で置換されている化合物または基を定義するために用いることができる。例えば、パーフルオロメチルは、1,1,1 トリフルオロメチルをいう。
【0015】
本明細書において用いられる場合、「ヒドロキシ」という用語は、部分、-OHをいう。
【0016】
本明細書において用いられる場合、「オキソ」という用語は、化合物に二重結合している酸素原子(すなわちO=)をいう。
【0017】
本明細書において用いられる場合、「アミノ」という用語は、各R基がHまたはアルキルである、部分、-NR2をいう。アミノ部分をイオン化して、対応するアンモニウムカチオンを形成させることができる。「アルキルアミノ」は、R基の少なくとも1つがアルキルであるアミノ部分をいう。
【0018】
本明細書において用いられる場合、「α-アミノアシル」という用語は、部分-C(O)CNR'R''をいい、式中、R'およびR''は独立して水素、アルキル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアシルキル(cycloaclkyl)またはヘテロシクリルであり、これらの各々は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノおよびアルコキシから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0019】
本明細書において用いられる場合、「アリール」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、任意の適当な数の炭素環原子および任意の適当な数の環を有する芳香族環系をいう。アリール基は、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15またはC16、およびC6~10、C6~12またはC6~14などの、任意の適当な数の炭素環原子を含むことができる。アリール基は単環式であってもよく、縮合されて二環式(例えば、ベンゾシクロヘキシル)基もしくは三環式基を形成してもよく、または結合により連結されてビアリール基を形成してもよい。代表的なアリール基は、フェニル、ナフチルおよびビフェニルを含む。他のアリール基は、メチレン連結基を有するベンジルを含む。いくつかのアリール基は、フェニル、ナフチルまたはビフェニルなどの、6~12環員を有する。他のアリール基は、フェニルまたはナフチルなどの、6~10環員を有する。いくつかの他のアリール基は、フェニルなどの、6環員を有する。アリール基は置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。特に指定されない限り、「置換アリール」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、およびアルコキシから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい。
【0020】
本明細書において用いられる場合、「ヘテロアリール」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、5~16個の環原子を含む単環式または縮合二環式もしくは三環式芳香族環集合体をいい、ここで環原子の1~5個が、N、OまたはSなどのヘテロ原子である。B、Al、SiおよびPを含むが、これらに限定されない、追加のヘテロ原子も有用でありうる。ヘテロ原子は酸化されて、限定されるものではないが、 S(O) および S(O)2 のような部分を形成することができる。ヘテロアリール基は、C5~6、C3~8、C4~8、C5~8、C6~8、C3~9、C3~10、C3~11、またはC3~12のような、任意の数の環原子を含むことができ、ここで炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子に置換されている。1、2、3、4もしくは5、または1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4もしくは3~5のような、任意の適当な数のヘテロ原子をヘテロアリール基中に含めることができる。例えば、ヘテロアリール基は、1~4個の炭素環原子がヘテロ原子で置換されているC5~8ヘテロアリール; または1~3個の炭素環原子がヘテロ原子で置換されているC5~8ヘテロアリール; または1~4個の炭素環原子がヘテロ原子で置換されているC5~6ヘテロアリール; または1~3個の炭素環原子がヘテロ原子で置換されているC5~6ヘテロアリールであることができる。ヘテロアリール基は、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-異性体、1,2,4-異性体および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、ならびにイソキサゾールなどの基を含むことができる。ヘテロアリール基をフェニル環などの芳香族環系に縮合させて、インドールおよびイソインドールなどのベンゾピロール、キノリンおよびイソキノリンなどのベンゾピリジン、ベンゾピラジン(キノキサリン)、ベンゾピリミジン(キナゾリン)、フタラジンおよびシンノリンなどのベンゾピリダジン、ベンゾチオフェン、ならびにベンゾフランを含むが、これらに限定されない、成員を形成することもできる。他のヘテロアリール基は、ビピリジンなどの、結合によって連結されたヘテロアリール環を含む。ヘテロアリール基は置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。特に指定されない限り、「置換ヘテロアリール」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、およびアルコキシから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい。
【0021】
ヘテロアリール基は、環上の任意の位置を介して連結することができる。例えば、ピロールは1-ピロール、2-ピロールおよび3-ピロールを含み、ピリジンは2-ピリジン、3-ピリジンおよび4-ピリジンを含み、イミダゾールは1-イミダゾール、2-イミダゾール、4-イミダゾールおよび5-イミダゾールを含み、ピラゾールは1-ピラゾール、3-ピラゾール、4-ピラゾールおよび5-ピラゾールを含み、トリアゾールは1-トリアゾール、4-トリアゾールおよび5-トリアゾールを含み、テトラゾールは1-テトラゾールおよび5-テトラゾールを含み、ピリミジンは2-ピリミジン、4-ピリミジン、5-ピリミジンおよび6-ピリミジンを含み、ピリダジンは3-ピリダジンおよび4-ピリダジンを含み、1,2,3-トリアジンは4-および5-トリアジンを含み、1,2,4-トリアジンは3-トリアジン、5-トリアジンおよび6-トリアジンを含み、1,3,5-トリアジンは2-トリアジンを含み、チオフェンは2-チオフェンおよび3-チオフェンを含み、フランは2-フランおよび3-フランを含み、チアゾールは2-チアゾール、4-チアゾールおよび5-チアゾールを含み、イソチアゾールは3-イソチアゾール、4-イソチアゾールおよび5-イソチアゾールを含み、オキサゾールは2-オキサゾール、4-オキサゾールおよび5-オキサゾールを含み、イソキサゾールは3-イソキサゾール、4-イソキサゾールおよび5-イソキサゾールを含み、インドールは1-インドール、2-インドールおよび3-インドールを含み、イソインドールは1-イソインドールおよび2-イソインドールを含み、キノリンは2-キノリン、3-キノリンおよび4-キノリンを含み、イソキノリンは1-イソキノリン、3-イソキノリンおよび4-イソキノリンを含み、キナゾリンは2-キナゾリンおよび4-キナゾリンを含み、シンノリンは3-シンノリンおよび4-シンノリンを含み、ベンゾチオフェンは2-ベンゾチオフェンおよび3-ベンゾチオフェンを含み、ならびにベンゾフランは2-ベンゾフランおよび3-ベンゾフランを含む。
【0022】
いくつかのヘテロアリール基は、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-異性体、1,2,4-異性体および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェンおよびベンゾフランなどの、5~10個の環員およびN、OまたはSを含む1~3個の環原子を有するものを含む。他のヘテロアリール基は、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-異性体、1,2,4-異性体および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、ならびにイソキサゾールなどの、5~8個の環員および1~3個のヘテロ原子を有するものを含む。いくつかの他のヘテロアリール基は、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフランおよびビピリジンなどの、9~12個の環員および1~3個のヘテロ原子を有するものを含む。さらに他のヘテロアリール基は、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、およびイソキサゾールなどの、5~6個の環員およびN、OまたはSを含む1~2個の環原子を有するものを含む。
【0023】
いくつかのヘテロアリール基は、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-異性体、1,2,4-異性体および1,3,5-異性体)、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、ならびにシンノリンなどの、5~10個の環員および窒素ヘテロ原子のみを含む。他のヘテロアリール基は、フランおよびベンゾフランなどの、5~10個の環員および酸素ヘテロ原子のみを含む。いくつかの他のヘテロアリール基は、チオフェンおよびベンゾチオフェンなどの、5~10個の環員および硫黄ヘテロ原子のみを含む。さらに他のヘテロアリール基は、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-異性体、1,2,4-異性体および1,3,5-異性体)、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、およびシンノリンなどの、5~10個の環員および少なくとも2つのヘテロ原子を含む。
【0024】
本明細書において用いられる場合、「シクロアルキル」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、3~12個の環原子または示された原子数を含む飽和または部分不飽和の単環式、縮合二環式または架橋多環式環集合体をいう。シクロアルキルは、C3~6、C4~6、C5~6、C3~8、C4~8、C5~8、C6~8、C3~9、C3~10、C3~11、およびC3~12などの、任意の数の炭素を含むことができる。飽和単環式シクロアルキル環は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチルを含む。飽和二環式および多環式シクロアルキル環は、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレンおよびアダマンタンを含む。シクロアルキル基は、部分的に不飽和であり、環中に1つまたは複数の二重結合または三重結合を有することもできる。部分的に不飽和である代表的なシクロアルキル基は、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-異性体および1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-異性体、1,4-異性体および1,5-異性体)、ノルボルネン、ならびにノルボルナジエンを含むが、これらに限定されることはない。シクロアルキルが飽和単環式C3~8シクロアルキルである場合、例示的な基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含むが、これらに限定されることはない。シクロアルキルが飽和単環式C3~6シクロアルキルである場合、例示的な基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを含むが、これらに限定されることはない。シクロアルキル基は置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。特に指定されない限り、「置換シクロアルキル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、およびアルコキシから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい。
【0025】
本明細書において用いられる場合、「ヘテロシクリル」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、3~12個の環員および1~4個のヘテロ原子N、OおよびSを有する飽和環系をいう。B、Al、SiおよびPを含むがこれらに限定されない追加のヘテロ原子も有用でありうる。ヘテロ原子は酸化されて、限定されるものではないが、 S(O) および S(O)2 などの部分を形成することができる。ヘテロシクリル基は、C3~6、C4~6、C5~6、C3~8、C4~8、C5~8、C6~8、C3~9、C3~10、C3~11、またはC3~12などの、任意の数の環原子を含むことができ、ここで炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子に置換されている。1、2、3、もしくは4、または1~2、1~3、1~4、2~3、2~4、または3~4などの、任意の適当な数の炭素環原子をヘテロシクリル基中のヘテロ原子で置換することができる。ヘテロシクリル基は、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-、1,3-および1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン、またはジチアンなどの基を含むことができる。ヘテロシクリル基を芳香族または非芳香族環系に融合させて、インドリンを含むがこれに限定されない成員を形成することもできる。ヘテロシクリル基は置換されていなくてもまたは置換されていてもよい。特に指定されない限り、「置換ヘテロシクリル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、オキソ(=O)、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、およびアルコキシから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい。
【0026】
ヘテロシクリル基は、環上の任意の位置を介して連結されることができる。例えば、アジリジンは1-または2-アジリジンであることができ、アゼチジンは1-または2-アゼチジンであることができ、ピロリジンは1-、2-または3-ピロリジンであることができ、ピペリジンは1-、2-、3-または4-ピペリジンであることができ、ピラゾリジンは1-、2-、3-、または4-ピラゾリジンであることができ、イミダゾリジンは1-、2-、3-または4-イミダゾリジンであることができ、ピペラジンは1-、2-、3-または4-ピペラジンであることができ、テトラヒドロフランは1-または2-テトラヒドロフランであることができ、オキサゾリジンは2-、3-、4-または5-オキサゾリジンであることができ、イソオキサゾリジンは2-、3-、4-または5-イソオキサゾリジンであることができ、チアゾリジンは2-、3-、4-または5-チアゾリジンであることができ、イソチアゾリジンは2-、3-、4-または5-イソチアゾリジンであることができ、およびモルホリンは2-、3-または4-モルホリンであることができる。
【0027】
ヘテロシクリルが3~8個の環員および1~3個のヘテロ原子を含む場合、代表的な成員は、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、オキサン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサンおよびジチアンを含むが、これらに限定されることはない。ヘテロシクリルは、5~6個の環員および1~2個のヘテロ原子を有する環を形成することもでき、代表的な成員は、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、およびモルホリンを含むが、これらに限定されることはない。
【0028】
本明細書において用いられる場合、「アミド」という用語は、部分、-NRC(O)Rまたは-C(O)NR2をいい、式中、各R基はHまたはアルキルである。
【0029】
本明細書において用いられる場合、「アシル」という用語は、各R基がアルキルである、部分、-C(O)Rをいう。
【0030】
本明細書において用いられる場合、「ニトロ」という用語は、部分、-NO2をいう。
【0031】
本明細書において用いられる場合、「シアノ」という用語は、窒素原子に三重結合している炭素原子(すなわち、部分、-C≡N)をいう。
【0032】
本明細書において用いられる場合、「カルボキシ」という用語は、部分、-C(O)OHをいう。
【0033】
本明細書において用いられる場合、「塩」という用語は、アンドロゲン受容体阻害剤またはAKR1C3阻害剤などの活性剤の酸性塩または塩基性塩をいう。塩基性活性剤の酸性塩は、鉱酸塩(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸などを用いることにより形成される塩)、有機酸塩(例えば、酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸などを用いて形成される塩)、および第4級アンモニウム塩(例えば、アミンとヨウ化メチル、ヨウ化エチルなどとの反応を介して形成される塩)を含む。薬学的に許容される塩は無毒であると理解される。
【0034】
酸性活性剤を塩基と接触させて、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩などの塩基塩、ならびにアンモニウム、トリメチル-アンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリス-(ヒドロキシメチル)-メチル-アンモニウム塩などの、アンモニウム塩を提供することができる。
【0035】
塩を塩基または酸と接触させ、必要に応じて従来の方法で親化合物を単離することにより、活性剤の中性形態を再生することができる。いくつかの態様において、化合物の親形態は、極性溶媒への溶解性などの、ある種の物理的特性がさまざまな塩形態とは異なりうるが、それ以外は、塩形態は化合物の親形態と同等でありうる。
【0036】
「薬学的に許容される」とは、賦形剤が製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害でないことを意味する。本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、対象への活性剤の投与を補助する物質をいう。有用な薬学的賦形剤は、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、コーティング、甘味料、香料および着色料を含むが、これらに限定されることはない。
【0037】
本明細書において用いられる場合、「有効量」および「治療有効量」という用語は、投与される、治療効果をもたらすアンドロゲン受容体阻害剤、またはAKR1C3阻害剤、または抗アンドロゲンなどの化合物の用量をいう。的確な用量は処置の目的に依存し、当業者により既知の技術を用いて確かめられよう(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999); Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 11thEdition, 2006, Brunton, Ed., McGraw-Hill; およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21stEdition, 2005, Hendrickson, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照のこと)。
【0038】
本明細書において使用される場合、「がん」という用語は、制御されない異常な細胞増殖によって特徴づけられる疾患クラスの任意の成員を含むことが意図される。この用語は、悪性、良性、再発性、軟部組織、または固形として特徴づけられるかどうかを問わず、全ての既知のがんおよび新生物状態、ならびに進行、再発、転移前および転移後のがんを含む全ての段階および悪性度のがんを含む。さらに、この用語は、アンドロゲン非依存性、去勢抵抗性、去勢再発性、ホルモン抵抗性、薬物抵抗性、および転移性去勢抵抗性がんを含む。異なる種類のがんの例としては、前立腺がん(例えば、前立腺腺がん); 乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん、非浸潤性乳管がん、浸潤性腺管がん、管状腺がん、髄様がん、粘液がん、乳頭がん、篩状がん、浸潤性小葉がん、炎症性乳がん、上皮内小葉がん、パジェット病、葉状腫瘍); 婦人科がん(例えば、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、膣がん、および外陰がん); 肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、中皮腫、カルチノイド腫瘍、肺腺がん); 胃がん(gastric cancer)(例えば、胃がん(stomach cancer))、結腸直腸がん、消化管間質腫瘍(GIST)、消化管カルチノイド腫瘍、結腸がん、直腸がん、肛門がん、胆管がん、小腸がん、および食道がんなどの消化器がんおよび消化管がん; 甲状腺がん; 胆嚢がん; 肝臓がん; 膵臓がん; 虫垂がん; 腎臓がん(例えば、腎細胞がん); 中枢神経系のがん(例えば、神経膠芽腫、神経芽細胞腫); 皮膚がん(例えば黒色腫); 骨および軟部組織肉腫(例えば:ユーイング肉腫); リンパ腫; 絨毛がん; 泌尿器がん(例えば、尿路上皮膀胱がん); 頭頸部がん; ならびに骨髄および血液のがん(例えば、慢性リンパ性白血病、リンパ腫)が挙げられるが、これらに限定されることはない。本明細書において用いられる場合、「腫瘍」は1つまたは複数のがん性細胞を含む。
【0039】
本明細書において用いられる場合、「抗アンドロゲン」および「抗アンドロゲン薬」という用語は、アンドロゲン受容体を遮断すること、細胞の表面上の結合部位をめぐって競合すること、またはアンドロゲン産生に影響または媒介することにより、アンドロゲン経路を変化させる化合物をいう。抗アンドロゲンは、前立腺がんを含むがこれに限定されないいくつかの疾患を処置するのに有用である。抗アンドロゲンの例としては、エンザルタミド、アビラテロン、ビカルタミド、およびダロルタミドが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0040】
本明細書において用いられる場合、「約」および「前後」という用語は、その特定の値を修飾するように用いられる場合、数値前後の近い範囲を示す。例えば、「X」が値である場合、「約X」または「X前後」は、0.9X~1.1Xの値、例えば、0.95X~1.05Xの値、または0.98X~1.02Xの値、または0.99X~1.01Xの値を示すであろう。「約X」または「X前後」へのいずれの言及も、少なくとも値X、0.9X、0.91X、0.92X、0.93X、0.94X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、1.05X、1.06X、1.07X、1.08X、1.09X、および1.1X、ならびにこの範囲内の値を具体的に示す。
【0041】
II. AR/AKR1C3二重阻害剤
本明細書において提供されるのは、式Iによる化合物:
または薬学的に許容されるその塩であり、式中:
Zは、-CH
2-、-C(O)-、-O-、-S-、および-NR
a-からなる群より選択され;
各R
1は、-OH、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;
各R
2およびR
3は、-OH、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より独立して選択され;
R
4は、H、α-アミノアシル; -S(O)
2N(R
a)
2、-C(O)N(R
a)
2、および-C(O)R
bからなる群より選択され;
各R
aは、HおよびC
1~8アルキルからなる群より独立して選択され;
R
bは、C
1~8アルキルであり;
下付き文字mは、0から3の範囲の整数であり;
下付き文字nは、0から5の範囲の整数であり; かつ
下付き文字pは、1から5の範囲の整数である。
【0042】
いくつかの態様において、式Iの化合物において、Zが-OR4に対してパラ位の-CH2-であり、下付き文字mおよび下付き文字nが0であり、R4がHである場合、少なくとも1つのR3は、ハロゲン、-NO2、C2~8アルキル、C1~8アルコキシ、C1~8ハロアルキル、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、および-N(Ra)2からなる群より選択される。いくつかのそのような態様において、下付き文字pは1、2、3、4、または5であってもよい。
【0043】
いくつかの態様において、式Iの化合物において、Zが-OR4に対してパラ位の-CH2-であり、化合物が2,3,4-トリヒドロキシ-ベンズアミドである場合、少なくとも1つのR2または少なくとも1つのR3は、-OH、-NO2、-CN、C1~8アルコキシ、C1~8ハロアルキル、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、および-N(Ra)2からなる群より選択される。いくつかのそのような態様において、下付き文字nは1、2、または3であってもよく、下付き文字pは1、2、3、4、または5であってもよい。
【0044】
いくつかの態様において、式Iの化合物において、Zが-OR4に対してパラ位の-CH2-であり、化合物が5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドである場合、少なくとも1つのR2または少なくとも1つのR3は、-OH、-NO2、-CN、C1~8アルキル、C1~8アルコキシ、C1~8ハロアルキル、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、および-N(Ra)2からなる群より選択される。いくつかのそのような態様において、下付き文字nは1、2、または3であってもよく、下付き文字pは1、2、3、4、または5であってもよい。
【0045】
いくつかの態様において、式Iの化合物において、Zが-OR4に対してパラ位の-C(O)-であり、化合物が2-ヒドロキシ-ベンズアミド、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミド、または5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドである場合、(i) 少なくとも1つのR2または少なくとも1つのR3は、-OH、C1~8アルコキシ、C1~8ハロアルキル、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、および-N(Ra)2からなる群より選択され、(ii) 下付き文字nが1であり、R2が4-クロロまたは4-(n-ブチル)である場合に、少なくとも1つのR3は-CF3または-NO2以外である。いくつかのそのような態様において、下付き文字nは1、2、または3であってもよく、下付き文字pは1、2、3、4、または5であってもよい。
【0046】
いくつかの態様において、式Iの化合物において、Zが-OR4に対してパラ位の-S-であり、化合物が2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドまたは5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドである場合、少なくとも1つのR2または少なくとも1つのR3は、-OH、C2~8アルキル、C2~8アルコキシ、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、および-N(Ra)2からなる群より選択される。いくつかのそのような態様において、下付き文字nは1、2、または3であってもよく、下付き文字pは1、2、3、4、または5であってもよい。
【0047】
本明細書において用いられる場合、「2,3,4-トリヒドロキシ-ベンズアミド」という用語は、以下に示される化合物をいう:
式中、R
4はHである。
【0048】
本明細書において用いられる場合、「5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミド」という用語は、以下に示される化合物をいう:
式中、R
4はHであり、R
1bはC
1~8アルキルである。
【0049】
本明細書において用いられる場合、「2-ヒドロキシ-ベンズアミド」という用語は、以下に示される化合物をいう:
式中、R
4はHである。
【0050】
本明細書において用いられる場合、「2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミド」という用語は、以下に示される化合物をいう:
式中、R
4はHであり、R
1bおよびR
1eはC
1~8アルキルである。
【0051】
いくつかの態様において、Zが-OR4に対してパラ位の-C(O)-であり、化合物が2-ヒドロキシ-ベンズアミドまたは5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドであり、下付き文字nが1であり、R2が4-クロロまたは4-(n-ブチル)である場合、少なくとも1つのR3は-CF3または-NO2以外である、式Iの化合物、が提供される。
【0052】
いくつかの態様において、Zが-OR4に対してパラ位の-C(O)-であり、化合物が2-ヒドロキシ-ベンズアミドまたは5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドである場合、化合物は5-(4-ブチルベンゾイル)-2-ヒドロキシ-N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-ベンズアミドまたは5-(4-クロロベンゾイル)-2-ヒドロキシ-3-メチル-N-[4-ニトロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル]-ベンズアミド以外である、式Iの化合物、が提供される。
【0053】
いくつかの態様において、Zは-CH2-である。いくつかの態様において、Zは-C(O)-である。いくつかの態様において、Zは-O-である。
【0054】
いくつかの態様において、各R3が、-OH、ハロゲン、-NO2、-CN、C1~8アルキル、C1~8アルコキシ、C1~8ハロアルキル、C2~8アルケニル、およびC2~8アルキニルからなる群より独立して選択される、式Iの化合物、が提供される。
【0055】
いくつかの態様において、各R3が、C1~8ハロアルキル、ハロゲン、および-NO2からなる群より独立して選択される、式Iの化合物が提供される。
【0056】
式IIaによる化合物:
または薬学的に許容されるその塩も、本明細書において提供される。いくつかの態様において、式IIaの化合物においてR
3bおよびR
3dは独立してC
1~8ハロアルキルである。R
3bおよびR
3dは独立して、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリクロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロエチル、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロプロピル、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルなどであってもよい。いくつかの態様において、R
3bおよびR
3dは、-CF
3および-CCl
3からなる群より独立して選択される。
【0057】
式IIbによる化合物:
または薬学的に許容されるその塩も、本明細書において提供される。いくつかの態様において、式IIbの化合物においてR
3aおよびR
3cは、ハロゲンおよび-NO
2からなる群より独立して選択される。R
3aおよびR
3cは独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、または-NO
2であってもよい。いくつかの態様において、式IIbの化合物においてR
3aは-Clであり、R
3cは-NO
2である。
【0058】
式IIcによる化合物:
または薬学的に許容されるその塩も、本明細書において提供される。いくつかの態様において、R
3はC
1~8ハロアルキルである。R
3は、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリクロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロエチル、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロプロピル、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルなどであってもよい。いくつかの態様において、R
3は、-CF
3および-CCl
3からなる群より選択される。
【0059】
いくつかの態様において、式I、IIa、IIb、またはIIcの化合物において、R2は、C1~8アルキル、C1~8アルコキシ、およびC1~8ハロアルキルからなる群より選択される。いくつかの態様において、R2は、C1~8アルキルおよびC1~8アルコキシからなる群より選択され、R3はC1~8ハロアルキルである。
【0060】
式IIIaによる化合物:
または薬学的に許容されるその塩が本明細書において提供される。
【0061】
いくつかの態様において、R3bおよびR3dは独立して、C1~8ハロアルキルである。R3bおよびR3dは独立して、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリクロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロエチル、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロプロピル、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルなどであってもよい。いくつかの態様において、R3bおよびR3dは、-CF3および-CCl3からなる群より独立して選択される。いくつかの態様において、R2は、C1~8アルキル、C1~8アルコキシ、およびC1~8ハロアルキルからなる群より選択される。
【0062】
式IIIbによる化合物:
または薬学的に許容されるその塩が本明細書において提供される。
【0063】
いくつかの態様において、R3aおよびR3cは、ハロゲンおよび-NO2からなる群より独立して選択され、R3aおよびR3cは独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、または-NO2であってもよい。いくつかの態様において、R3aは-Clであり、R3cは-NO2である。いくつかのそのような態様において、R2は、C1~8アルキル、C1~8アルコキシ、およびC1~8ハロアルキルからなる群より選択される。
【0064】
式IIIcによる化合物:
または薬学的に許容されるその塩が本明細書において提供される。
【0065】
いくつかの態様において、式IIIa、IIIb、またはIIIcの化合物においてR2cは-OCH3である。
【0066】
いくつかの態様において、式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、またはIIIcの化合物においてZは-OR4に対してパラ位に存在する。
【0067】
いくつかの態様において、式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、またはIIIcの化合物においてZは-C(O)NH-に対してオルト位に存在する。
【0068】
式IV、V、またはVIによる化合物も、本明細書において提供され:
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、下付き文字m、下付き文字n、および下付き文字pは前記のように定義される。式IV、V、およびVIによる化合物は、上記のR
2c、R
3a、R
3b、およびR
3c基の1つまたは複数をさらに含んでもよい。
【0069】
いくつかの態様において、式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、IIIc、IV、V、および/またはVIの化合物においてR4はHまたはα-アミノアシルである。いくつかの態様において、式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、IIIc、IV、V、および/またはVIの化合物においてR4は、L-バリニルおよびD-バリニルからなる群より選択される。
【0070】
いくつかの態様において、下付き文字mが0である式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、IIIc、IV、V、および/またはVIの化合物が提供される。いくつかの態様において、下付き文字nが1または2である式I、IIa、IIb、IIc、IV、V、および/またはVIの化合物が提供される。いくつかの態様において、下付き文字pが1または2である式I、IV、V、および/またはVIの化合物が提供される。
【0071】
いくつかの態様において、化合物は、以下:
および薬学的に許容されるその塩である。
【0072】
いくつかの態様において、
Zが、-CH2-であり;
下付き文字mおよび下付き文字nが、0であり; かつ
少なくとも1つのR3が、ハロゲン、-NO2、C1~8アルコキシ、C1~8ハロアルキル、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、および-N(Ra)2からなる群より選択される、
式Iの化合物、が提供される。いくつかのそのような態様において、下付き文字pは1、2、3、4、または5であってもよい。
【0073】
いくつかの態様において、
Zが、-OR4に対してパラ位の-C(O)-であり;
化合物が、2-ヒドロキシ-ベンズアミド、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミド、または5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドであり; かつ
少なくとも1つのR2または少なくとも1つのR3が、-OH、C1~8アルコキシ、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、および-N(Ra)2からなる群より選択される、
式Iの化合物、が提供される。いくつかのそのような態様において、下付き文字nは1、2、または3であってもよく、下付き文字pは1、2、3、4、または5であってもよい。
【0074】
いくつかの態様において、
Zが、-OR4に対してパラ位の-S-であり;
化合物が、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドまたは5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドであり; かつ
少なくとも1つのR2または少なくとも1つのR3が、-OH、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、および-N(Ra)2からなる群より選択される、
式Iの化合物、が提供される。いくつかのそのような態様において、下付き文字nは1、2、または3であってもよく、下付き文字pは1、2、3、4、または5であってもよい。
【0075】
いくつかの態様において、Zは-CH2-であり、下付き文字mは0であり、下付き文字nは0であり、下付き文字pは1であり、R3は2-ヒドロキシ、4-シアノ、3-メチル、および4-メチル以外である。いくつかの態様において、Zは-CH2-であり、下付き文字mは1であり、R1は2-メチルであり、下付き文字nは0であり、下付き文字pは2であり、第1のR3は2-クロロであり、第2のR3は4-クロロ以外である。いくつかの態様において、Zは-CH2-であり、下付き文字mは2であり、第1のR1は2-ヒドロキシであり、第2のR1は3-ヒドロキシであり、下付き文字nは1であり、R2は2-イソプロピルであり、下付き文字pは1であり、R3は2-クロロ以外である。
【0076】
いくつかの態様において、Zは-S-であり、化合物は2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-2-メチル-ベンズアミドまたは5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミド以外である。いくつかの態様において、Zは-C(O)-であり、化合物は2-ヒドロキシ-ベンズアミド、2,5-ジアルキル-5-ヒドロキシ-ベンズアミド、または5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミド以外である。いくつかの態様において、各R3は、-OH、ハロゲン、-NO2、-CN、C1~8アルキル、C1~8アルコキシ、C1~8ハロアルキル、C2~8アルケニル、およびC2~8アルキニルからなる群より独立して選択される。
【0077】
化合物は、本明細書における開示および当技術分野において周知の方法を考慮すれば明らかになるであろう、本明細書において開示される方法およびその日常的な改変法を用いて調製されうる。合成経路には、市販されている出発物質、またはFiesers’ Reagents for Organic Synthesis Volumes 1-28 (John Wiley & Sons, 2016)において、March (Advanced Organic Chemistry 6th Ed. John Wiley & Sons, 2007)によって、およびLarock (Comprehensive Organic Transformations 3rd Ed. John Wiley & Sons, 2018)によって記述されているものを含めて、公知の方法にしたがって調製することができるものを利用してもよい。本明細書において記述される典型的な化合物の合成は、以下の実施例において記述されるように達成されうる。典型的なまたは好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合、特に明記されない限り、他のプロセス条件も使用できることが理解されよう。最適な反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒によって異なりうるが、そのような条件は、当業者が日常的な最適化手順によって決定することができる。さらに、当業者には明らかであるように、従来の保護基は、特定の官能基が望ましくない反応を受けるのを防ぐのに有利でありうる。さまざまな官能基に適した保護基、ならびに特定の官能基を保護および脱保護するのに適した条件は、当技術分野において周知である。例えば、多数の保護基が、Green and Wuts (Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Ed. 2007, Wiley-Interscience, New York)およびその中で引用されている参考文献に記述されている。
【0078】
III. 薬学的組成物
1つまたは複数のAR/AKR1C3阻害剤(例えば、上記の式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、もしくはIIIcによる1つもしくは複数の化合物、または薬学的に許容されるその塩)および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物も、本明細書において提供される。
【0079】
薬学的組成物は、薬学および薬物送達の分野において周知の方法のいずれかによって調製することができる(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1 3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, 2005, Hendrickson, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照のこと)。一般に、組成物を調製する方法は、1つまたは複数のAR/AKR1C3阻害剤を、1つまたは複数の副成分を含有する担体と会合させる段階を含む。薬学的組成物は、例えば、活性成分を液体担体もしくは細かく分割された固体担体またはその両方と均一かつ密接に会合させ、その後、必要に応じて、生成物を所望の製剤に成形することによって調製されうる。組成物は、単位投与量形態に都合よく調製および/または包装することができる。薬学的に許容される担体は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、および乳濁液(油/水もしくは水/油乳濁液のような)、ならびにさまざまなタイプの湿潤剤および/または補助剤を含む、標準の薬学的担体、緩衝液および賦形剤のいずれかを含む。好ましい薬学的担体は、活性剤の意図される投与様式に部分的に依存するであろう。
【0080】
薬学的組成物は、薬物の組み合わせ、例えば、式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、またはIIIcによる化合物、それらの組み合わせを、抗アンドロゲン薬(エンザルタミド、アビラテロン、ビカルタミド、ダロルタミド、アパルタミドなどを含むがこれらに限定されない)のようなさらなる薬剤と組み合わせて含むことができる。
【0081】
薬学的組成物は、局所投与、非経口投与、肺投与、鼻腔投与、直腸投与、または経口投与に適したものを含む。任意の所与の場合に最も適当な投与経路は、処置されている状態(例えば、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、または肝臓がん、およびそれらの特定の病期)の性質および重症度に部分的に依存するであろう。
【0082】
他の薬学的組成物には、全身(経腸または非経口)投与に適したものが含まれる。全身投与には、経口投与、直腸投与、舌下投与、または唇下投与が含まれる。非経口投与には、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、および頭蓋内が含まれる。他の送達様式には、リポソーム製剤、静脈内注入、経皮パッチなどの使用が含まれるが、これらに限定されることはない。特定の態様において、薬学的組成物は腫瘍内に投与されうる。
【0083】
経肺投与用の組成物には、本明細書において記述される化合物またはその塩の粉末、ならびに適当な担体および/または滑沢剤の粉末からなる乾燥粉末組成物が含まれるが、これらに限定されることはない。経肺投与用の組成物は、当業者に公知の任意の適当な乾燥粉末吸入具装置から吸入することができる。
【0084】
薬学的組成物は、経口使用に適した形態でありうる。経口投与に適した組成物には、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性または油性懸濁液剤、分散性散剤または顆粒剤、乳濁液剤、硬質または軟質カプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、溶液剤、口内パッチ剤、経口ゲル剤、咀嚼ガム剤、咀嚼錠剤、起泡性散剤、および起泡性錠剤が含まれるが、これらに限定されることはない。そのような組成物は、薬学的に上品かつ口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、着香剤、着色剤、抗酸化剤および保存剤から選択される1つまたは複数の薬剤を含有することができる。
【0085】
錠剤は一般に、セルロース、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、グルコース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、リン酸カルシウムおよびリン酸ナトリウムなどの、不活性希釈剤; トウモロコシデンプンおよびアルギン酸などの、造粒剤および崩壊剤; ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、デンプン、ゼラチンおよびアカシアなどの、結合剤; ならびにステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクなどの滑沢剤を含め、非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された活性成分を含有する。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、または腸溶性の、もしくは他の、胃腸管における崩壊および吸収を遅延させるための公知の技法によりコーティングされ、それにより、さらに長い期間にわたる持続作用をもたらしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を利用することができる。錠剤は、制御放出のための浸透圧ポンプ組成物を形成するために、既知の技術にしたがって半透膜および任意の高分子浸透剤でコーティングすることもできる。経口投与用の組成物は、活性成分が不活性な固形希釈剤(炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリンなど)と混合される硬質ゼラチンカプセルとして、または活性成分が水もしくは油媒体(落花生油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油など)と混合される軟質ゼラチンカプセルとして製剤化することができる。
【0086】
薬学的組成物は、注射可能な水性または油性の溶液または懸濁液の形態とすることもできる。無菌の注射可能な調製物は、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液、ならびに1,3-ブタンジオールなどの許容される溶媒を含む、無毒性の非経口的に許容される媒体を用いて製剤化することができる。さらに、無菌の固定油が溶媒または懸濁媒体として従来から利用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含めて、任意の無刺激性の不揮発性油を利用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製において用いられる。
【0087】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された活性剤を含有する。そのような賦形剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、油性(oleagino)プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴム懸濁化剤; レシチン、ステアリン酸ポリオキシエチレン、およびモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンなどの分散剤または湿潤剤; ならびに安息香酸エチル、安息香酸n-プロピル、および安息香酸p-ヒドロキシなどの保存料が含まれるが、これらに限定されることはない。油性懸濁液は、有効成分を植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油、または流動パラフィンなどの鉱油に懸濁することにより製剤化することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィン、またはセチルアルコールを含有することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存することができる。分散性粉末および顆粒(水の添加による水性懸濁液の調製に適している)は、分散剤、湿潤剤、懸濁化剤、またはその組み合わせと混合された活性成分を含有することができる。さらなる賦形剤も存在することができる。
【0088】
薬学的組成物は、水中油型乳濁液の形態であることもできる。油性相は植物油、例えばオリーブ油もしくは落花生油または鉱油、例えば流動パラフィンあるいはこれらの混合物であることができる。適当な乳化剤は、アカシアゴムまたはトラガカントゴムなどの天然ゴム; ダイズレシチンなどの天然リン脂質; モノオレイン酸ソルビタンなどの、脂肪酸およびヘキシトール無水物から導出されるエステルまたは部分エステル; ならびにモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどの、エチレンオキシドとの前記部分エステルの縮合生成物であることができる。
【0089】
経皮送達は、イオン導入パッチなどによって達成することができる。活性成分は、薬物の直腸投与のために坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、活性剤を、常温では固体であるが直腸温度では液体でありそれゆえ直腸で融解して薬物を放出する適当な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。そのような材料には、カカオ脂およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0090】
組成物の制御放出非経口製剤は、インプラント、油性注射剤として、または粒子系として作製することができる。送達系の広範な概要については、参照により本明細書に組み入れられるBanga, A.J., THERAPEUTIC PEPTIDES AND PROTEINS: FORMULATION, PROCESSING, AND DELIVERY SYSTEMS, Technomic Publishing Company, Inc., Lancaster, PA, (1995)を参照されたい。微粒子系にはマイクロスフィア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフィア、およびナノ粒子が含まれる。
【0091】
重合体を活性剤のイオン制御放出に用いることができる。制御された薬物送達で用いるためのさまざまな分解性および非分解性重合体マトリックスが、当技術分野において公知である(Langer R., Accounts Chem. Res., 26:537-542 (1993))。例えば、ブロック共重合体であるポロキサマー407 (polaxamer 407)は、低温では、粘性だが移動性の液体として存在するが、体温では、半固体のゲルを形成する。これは、組み換えインターロイキン 2 およびウレアーゼの製剤化および持続送達に有効な媒体であることが示されている(Johnston et al., Pharm. Res., 9:425-434 (1992); およびPec et al., J. Parent. Sci. Tech., 44(2):58 65 (1990))。あるいは、ヒドロキシアパタイトは、タンパク質の制御放出のためのマイクロキャリアとして用いられている(Ijntema et al., Int. J. Pharm., 112:215-224 (1994))。さらに別の局面において、脂質カプセル化薬物の制御放出および薬物標的化のためにリポソームが用いられる(Betageri et al., LIPOSOME DRUG DELIVERY SYSTEMS, Technomic Publishing Co., Inc., Lancaster, PA (1993))。治療用タンパク質の制御された送達のための多数のさらなるシステムが知られている。例えば、米国特許第5,055,303号、同第5,188,837号、同第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、同第4,957,735号および同第5,019,369号、同第5,055,303号; 同第5,514,670号; 同第5,413,797号; 同第5,268,164号; 同第5,004,697号; 同第4,902,505号; 同第5,506,206号、同第5,271,961号; 同第5,254,342号および同第5,534,496号を参照されたく、これらの各々が参照により本明細書に組み入れられる。
【0092】
IV. アンドロゲン媒介性疾患を処置する方法
アンドロゲン媒介性疾患または状態を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、以下:治療的有効量の、式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、もしくはIIIcのいずれか1つによる化合物または薬学的に許容されるその塩、あるいは、治療的有効量の、上記の薬学的に許容される組成物を投与する段階であって、それによってホルモン媒介性の疾患または状態を処置する、段階、を含む該方法も、本明細書において提供される。
【0093】
いくつかの態様において、ホルモン媒介性疾患はがんである。がんは、例えば、アンドロゲン非依存性がん、転移性がん、去勢抵抗性がん、去勢再発性がん、ホルモン抵抗性がん、転移性去勢抵抗性がん、またはそれらの組み合わせでありうる。本開示による化合物は、乳房、前立腺、子宮内膜、または腎臓のがん腫、ならびに肝細胞がん腫、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、子宮頸がん、結腸がん、および肺がん(例えば、非小細胞肺がん; NSCLC)を処置するために用いることができる。これらのおよびその他のがんは、AKR1C3を発現することが知られている。例えば、Guise et al. Cancer Res 2010 (70) (4) 1573-1584を参照されたい。いくつかの態様において、がんは前立腺がん、乳がん、卵巣がん、または肝臓がんである。
【0094】
いくつかの態様において、本方法は、抗アンドロゲン剤を対象に投与する段階を含む。抗アンドロゲン剤は、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、アビラテロン、薬学的に許容されるその塩、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0095】
本明細書において記述される化合物および/または薬学的組成物は、本方法において任意の適当な用量で投与することができる。一般に、化合物および/または組成物は、対象の体重1キログラムあたり約0.1ミリグラム~約1000ミリグラムの範囲(すなわち、約0.1~1000 mg/kg)の用量で投与される。いくつかの態様において、化合物および/または組成物は、対象の体重1キログラムあたり約1ミリグラム~約100ミリグラムの範囲(すなわち、約1~100 mg/kg)の用量で投与される。用量は、例えば、約0.1~1000 mg/kg、または約1~10 mg/kg、または約10~50 mg/kg、または約25~50 mg/kg、または約50~75 mg/kg、または約1~75~100 mg/kg、または約1~500 mg/kg、または約25~250 mg/kg、または約50~100 mg/kgであることができる。用量は約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1000 mg/kgであることができる。投与量は、患者の必要条件、処置される障害の重症度、および投与される特定の製剤に応じて変化しうる。患者に投与される用量は、患者において有益な治療応答をもたらすのに十分でなければならない。用量のサイズは、特定の患者での薬物の投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質、および程度によっても判定されよう。特定の状況に対する適切な投与量の判定は、典型的な実践者の技術の範囲内である。総投与量は、がんまたは他の疾患/状態を処置するのに適した期間にわたり、分割して投与することができる。
【0096】
化合物および/または組成物は、特定の障害の性質、その重症度、ならびに化合物および/または組成物が投与される対象の全体的な状態に応じて変化する期間、投与することができる。投与は、例えば、1時間ごと、2時間ごと、3時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、もしくは12時間ごとを含む1日2回、またはそれらの任意の間をあけた間隔で行うことができる。投与は1日1回、または36時間もしくは48時間に1回、または1ヶ月もしくは数ヶ月に1回行うことができる。処置後、対象の状態の変化についておよび障害の症状の緩和について、対象をモニターすることができる。対象が特定の投与量レベルに有意に応答しない場合には投与量が増やされてもよく、あるいは障害の症状の緩和が観察される場合、または障害が改善された場合、または特定の投与量で許容されない副作用が見られた場合、用量が減らされてもよい。治療有効量は、投与間に少なくとも1時間、または6時間、または12時間、または24時間、または36時間、または48時間の間隔を含む処置計画で対象に投与することができる。投与は、少なくとも72、96、120、144、168、192、216、または240時間(すなわち、3、4、5、6、7、8、9、または10日)の間隔で行うことができる。
【0097】
いくつかの態様において、本方法は、1つまたは複数のさらなる抗がん剤の投与をさらに含む。抗がん剤の例としては、化学療法剤(例えば、カルボプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセドなど)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、エルロチニブ、クリゾチニブ、オシメルチニブなど)、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ阻害剤(例えば、オラパリブ、ルカパリブなど)、および免疫療法剤(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブなど)が挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、本方法は、放射線療法、例えば、外部ビーム放射線; 強度変調放射線治療(IMRT); 小線源療法(内部もしくはインプラント放射線療法); 定位放射線療法(SBRT)/定位切除放射線療法(SABR); 定位放射線手術(SRS); またはそのような技法の組み合わせを含む。
【0098】
これらの態様のいくつかにおいて、がんは進行期がんである。これらの態様のいくつかにおいて、がんは薬物抵抗性である。これらの態様のいくつかにおいて、がんは抗アンドロゲン薬抵抗性またはアンドロゲン非依存性である。これらの態様のいくつかにおいて、がんは転移性である。これらの態様のいくつかにおいて、がんは転移性かつ薬物抵抗性(例えば、抗アンドロゲン薬抵抗性)である。これらの態様のいくつかにおいて、がんは去勢抵抗性である。これらの態様のいくつかにおいて、がんは転移性かつ去勢抵抗性である。これらの態様のいくつかにおいて、がんはエンザルタミド抵抗性である。これらの態様のいくつかにおいて、がんはエンザルタミドおよびアルビラテロン抵抗性である。これらの態様のいくつかにおいて、がんはエンザルタミド、アルビラテロン、ダロルタミド、およびビカルタミド抵抗性である。これらの態様のいくつかにおいて、がんはエンザルタミド、アルビラテロン、ビカルタミド、ダロルタミド、およびアパルタミド抵抗性である。他の態様において、がんは(例えば、ドセタキセル、カバジタキセル、パクリタキセル)抵抗性である。がん(例えば、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、または肝臓がん)はこれらの薬物の任意の組み合わせに対して抵抗性でありうる。
【0099】
いくつかの態様において、処置は、がん細胞(例えば、前立腺がん細胞、乳がん細胞、卵巣がん細胞、または肝臓がん細胞)増殖(growth)の阻害、がん細胞増殖(proliferation)の阻害、がん細胞遊走の阻害、がん細胞浸潤の阻害、がんの症状の改善、がん腫瘍のサイズの低減、がん腫瘍の数の低減、がん細胞の数の低減、がん細胞の壊死、ピロトーシス、腫瘍症、アポトーシス、自食作用、もしくは他の細胞死の誘導、またはAR/AKR1C3阻害剤を含む組成物もしくは薬学的組成物の治療効果の増強を含む。特定の場合において、対象はがんを有していない。
【0100】
本明細書において記述されるがん(例えば、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、肝臓がん、アンドロゲン非依存性がん、または薬物抵抗性がん)を処置する特定の方法において、処置は、抗アンドロゲン薬(例えば、非ステロイド性アンドロゲン受容体アンタゴニストまたはCYP17A1阻害剤)の治療効果の増強を含む。ある種の態様において、処置はエンザルタミドの治療効果の増強を含む。ある種の他の態様において、処置はアビラテロンの治療効果の増強を含む。さらに他の態様において、処置はアパルタミドの治療効果の増強を含む。いくつかの他の態様において、処置はビカルタミドの治療効果の増強を含む。増強は相乗的または相加的であることができる。
【0101】
本明細書において記載される方法のある種の態様において、処置は、抗アンドロゲン薬に対するがん細胞(例えば、前立腺がん細胞、乳がん細胞、卵巣がん細胞、または肝臓がん細胞)抵抗性の反転、低減、または低下を含む。本明細書において記載される方法のある種の態様において、処置は、抗アンドロゲン薬へのがん細胞(例えば、前立腺がん細胞または乳がん細胞)の再感受性化を含む。本明細書において記述される方法のいずれにおいても、抗アンドロゲン薬は、非ステロイド性アンドロゲン受容体アンタゴニスト、CYP17A1阻害剤、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物である。ある種の態様において、抗アンドロゲン薬は、エンザルタミド、アパルタミド、ビカルタミド、および/または酢酸アビラテロンである。
【0102】
前述の方法のいずれにおいても、処置は、抗アンドロゲン薬(例えば、非ステロイド性アンドロゲン受容体アンタゴニストもしくはCYP17A1阻害剤)に対するがん細胞(例えば、前立腺、乳がん、卵巣、または肝臓がん細胞)抵抗性の反転; 抗アンドロゲン薬に対するがん細胞抵抗性の低減もしくは低下; または抗アンドロゲン薬へのがん細胞の再感受性化を含みうる。いくつかの態様において、処置は、エンザルタミド、アパルタミド、ビカルタミド、ダロルタミド、酢酸アビラテロン、またはそれらの組み合わせに対するがん細胞(例えば、前立腺がん細胞、乳がん細胞、卵巣がん細胞、または肝臓がん細胞)抵抗性の反転を含む。いくつかの他の態様において、処置は、エンザルタミド、アパルタミド、ビカルタミド、ダロルタミド、酢酸アビラテロン、またはそれらの組み合わせに対するがん細胞抵抗性の低減または低下を含む。いくつかの態様において、処置は、エンザルタミド、アパルタミド、ビカルタミド、酢酸アビラテロン、ダロルタミド、またはそれらの組み合わせへのがん細胞の再感受性化を含む。
【0103】
本明細書において記述される方法のいずれにおいても、がんは、去勢抵抗性がん、転移性去勢抵抗性がん、進行期がん、薬物抵抗性がん、抗アンドロゲン抵抗性がん、ビカルタミド抵抗性がん、エンザルタミド抵抗性がん、酢酸アビラテロン抵抗性がん、アパルタミド抵抗性がん、ダロルタミド抵抗性がん、AR-V1-、AR-V3-、AR-V7-、AR-V9-、および/またはAR-V12-誘導薬物抵抗性がん、AR-V1-、AR-V3-、AR-V7-、AR-V9-、および/またはAR-V12-誘導抗アンドロゲン薬抵抗性がん、AR-V1-、AR-V3-、AR-V7-、AR-V9-、および/またはAR-V12-誘導エンザルタミド抵抗性がん、AR-V1-、AR-V3-、AR-V7-、AR-V9-、および/またはAR-V12-誘導酢酸アビラテロン抵抗性がん、AR-V1-、AR-V3-、AR-V7-、AR-V9-、および/またはAR-V12-誘導アパルタミド抵抗性がん、AR-V1-、AR-V3-、AR-V7-、AR-V9-、および/またはAR-V12-誘導ビカルタミド抵抗性がん、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0104】
いくつかの態様において、試験サンプルは対象から得られる。試験サンプルは、AR/AKR1C3阻害剤が対象に投与される前および/または後に得ることができる。適当なサンプルの非限定的な例としては、血液、血清、血漿、脳脊髄液、組織、唾液、および尿が挙げられる。いくつかの場合には、サンプルは正常組織を含む。他の場合には、サンプルはがん組織を含む。サンプルはまた、正常細胞およびがん細胞の組み合わせから構成されることもできる。
【0105】
いくつかの態様において、参照サンプルが得られる。参照サンプルは、例えば、対象から得ることができ、正常組織を含むことができる。参照サンプルはまた、異なる対象および/または対象の集団からも得ることができる。いくつかの場合には、参照サンプルは、AR/AKR1C3阻害剤が対象に投与される前および/または後に対象、異なる対象、または対象の集団から得られ、正常組織を含む。しかしながら、いくつかの場合には、参照サンプルはがん組織を含み、対象からおよび/または異なる対象もしくは対象の集団から得られる。
【0106】
いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカーのレベルが試験サンプルおよび/または参照サンプルにおいて決定される。適当なバイオマーカーの非限定的な例としては、前立腺特異的抗原(PSA)、α-メチルアシル-CoAラセマーゼ(AMACR)、エンドグリン(CD105)、エングレイルド(engrailed)2 (EN-2)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、カベオリン-1、インターロイキン-6 (IL-6)、CD147、S100タンパク質ファミリーのメンバー(例えば、S100A2、S100A4、S100A8、S100A9、S100A11)、アネキシンA3 (ANXA3)、ヒトカリクレイン-2 (KLK2)、TGF-β1、β-マイクロセミノプロテイン(MSMB)、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、HER2、Ki67、サイクリンD1、およびサイクリンEが挙げられる。
【0107】
前立腺特異的抗原(PSA)は、主に前立腺細胞によって産生されるタンパク質である。ほとんどのPSAは精液中に放出されるが、PSAの中には血中にも放出されるものがある。血中で、PSAは非結合かつ複合(cPSA)形態で存在する。従来の実験室試験は、非結合PSAおよび/または全(非結合および複合)PSAを測定することができる。PSAレベルの上昇は、良性前立腺肥大症(BPH)および前立腺の炎症によって引き起こされうるが、前立腺がんによっても引き起こされうる。PSAレベルを決定することはまた、PSA速度(すなわち、経時的なPSAレベルの変化)、PSA倍加時間(すなわち、どのくらいの速さでPSAレベルが2倍になるか)、PSA密度(すなわち、PSA濃度および前立腺容積(これは、例えば、超音波によって評価することができる)の比較)、ならびに年齢特異的PSA範囲の1つまたは複数の決定を含みうる。
【0108】
典型的には、1つまたは複数の試験サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルは、1つまたは複数の参照サンプル中の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルと比較される。バイオマーカーに応じて、正常対照または参照サンプルと比べた増加または減少は、がんの存在またはより高いがんのリスクを示すことができる。非限定的な例として、AR/AKR1C3阻害剤が対象に投与される前および後に採取された試験サンプルにおける1つまたは複数のバイオマーカーのレベルが、対象から得られた正常組織、または異なる対象もしくは対象の集団から得られる正常組織のいずれかである参照サンプルにおける1つまたは複数のバイオマーカーのレベルと比較される。いくつかの場合には、バイオマーカーは血清であり、AR/AKR1C3阻害剤が対象に投与される前に対象から採取された試験サンプルにおけるPSAのレベルは、参照サンプルにおけるPSAのレベルより高い。他の場合において、AR/AKR1C3阻害剤の投与後に対象から得られた試験サンプルにおけるPSAのレベルは、投与の前に得られた試験サンプルにおけるPSAのレベルと比べて減少する。あるいは、別の非限定的な例として、投与後に対象から得られるサンプルと参照サンプルとの間のPSAレベルの差異は、投与の前に対象から得られるサンプルと参照サンプルにおけるPSAレベル間の差異よりも小さい(すなわち、試験サンプルにおいて測定されたレベルと参照サンプルにおいて測定されたレベルとの間の差異が減少または排除されるように、投与が試験サンプルにおけるPSAの減少をもたらす)。
【0109】
参照サンプルまたは値と試験サンプルとの間の差異は、検出されるのに十分であるだけでよい。いくつかの態様において、試験サンプルにおけるバイオマーカー(例えばPSA)のレベルの増加、ゆえにがんの存在またはがんのリスクの増加は、バイオマーカーレベルが陰性対照と比較して少なくとも、例えば、約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍高い場合に決定される。他の態様において、試験サンプルにおけるバイオマーカーのレベルの減少、ゆえにがんの存在またはがんのリスクの増加は、バイオマーカーレベルが陰性対照と比較して少なくとも、例えば、約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍低い場合に決定される。
【0110】
バイオマーカーレベルは、バイオマーカーに特異的な抗体の使用を含む、当技術分野において公知の任意の方法を用いて検出することができる。例示的な方法としては、非限定的に、PCR、ウエスタンブロット、ドットブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、免疫沈降、免疫蛍光、FACS分析、電気化学発光、および多重ビーズアッセイ法(例えば、Luminexまたは蛍光マイクロビーズを用いた)が挙げられる。いくつかの場合には、核酸配列決定が利用される。
【0111】
ある種の態様において、1つまたは複数のバイオマーカーのレベルの減少または増加の存在は、免疫アッセイ法またはPCR反応(例えば、定量的PCR)における検出可能なシグナル(例えば、ブロット、蛍光、化学発光、色、放射能)によって示される。この検出可能なシグナルを、対照サンプルからのシグナルまたは閾値と比較することができる。いくつかの態様において、試験サンプルにおけるバイオマーカーの検出可能なシグナルが、参照サンプルにおける抗体のシグナルまたは所定の閾値と比較して、少なくとも、例えば、約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍低い場合に、存在の減少が検出され、がんの存在またはリスクの増加が示される。他の態様において、試験サンプルにおけるバイオマーカーの検出可能なシグナルが、参照サンプルにおける抗体のシグナルまたは所定の閾値と比較して、少なくとも、例えば、約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍大きい場合に、存在の増加が検出され、がんの存在またはリスクの増加が示される。
【0112】
アンドロゲン受容体(AR)を阻害するための方法であって、以下:有効量の、本明細書において記述される化合物(例えば、式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、もしくはIIIcによる化合物)またはその塩と、ARを接触させる段階であって、それによってARを阻害する、段階、を含む該方法も、本明細書において提供される。
【0113】
アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC3 (AKR1C3)を阻害するための方法であって、以下:有効量の、本明細書において記述される化合物(例えば、式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、もしくはIIIcによる化合物)またはその塩と、AKR1C3を接触させる段階であって、それによってAKR1C3を阻害する、段階、を含む該方法も、本明細書において提供される。ARまたはAKR1C3を阻害することは一般に、化合物の非存在下でのARまたはAKR1C3の活性と比較して、ARまたはAKR1C3の活性を低減させるのに十分な量の化合物とARまたはAKR1C3を接触させることを含む。例えば、ARまたはAKR1C3を阻害剤と接触させることで、約1%~約99%の阻害をもたらすことができる(すなわち、阻害されたARまたはAKR1C3の活性は、化合物の非存在下でのAR活性またはAKR1C3活性の99%~1%の範囲に及ぶ)。阻害のレベルは、約1%~約10%、または約10%~約20%、または約20%~約30%、または約30%~約40%、または約40%~約50%、または約50%~約60%、または約60%~約70%、または約70%~約80%、または約80%~約90%、または約90%~約99%の範囲に及ぶことができる。阻害のレベルは、約5%~約95%、または約10%~約90%、または約20%~約80%、または約30%~約70%、または約40%~約60%の範囲に及ぶことができる。いくつかの態様において、ARまたはAKR1C3を本明細書において記述される化合物と接触させることで、ARまたはAKR1C3の完全な(すなわち、100%)阻害がもたらされよう。
【0114】
VI. キット
対象におけるがんを予防または処置するためのキットも、本明細書において提供される。キットは任意のがんを処置するのに有用であり、そのうちのいくつかの非限定的な例としては、前立腺がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、胃がん、膵臓がん、肺がん(例えば、中皮腫、肺腺がん)、食道がん、頭頸部がん、肉腫、黒色腫、甲状腺がん、CNSがん(例えば、神経芽細胞腫、神経膠芽腫)、慢性リンパ性白血病、および本明細書において記述される任意の他のがんが挙げられる。キットは同様に、アンドロゲン非依存性、去勢抵抗性、去勢再発性、ホルモン抵抗性、薬物抵抗性、および転移性去勢抵抗性がんを処置するのに適している。
【0115】
いくつかの態様において、キットはAR/AKR1C3阻害剤を含む。いくつかの他の態様において、キットは薬学的に許容される担体をさらに含む。特定の態様において、AR/AKR1C3阻害剤は式I、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、および/またはIIIcによる化合物である。
【0116】
いくつかの態様において、抗アンドロゲン薬は非ステロイド性アンドロゲン受容体アンタゴニスト、CYP17A1阻害剤、またはその組み合わせである。適当な非ステロイド性ARアンタゴニストは、ビカルタミド(カソデックス(Casodex)、コスデックス(Cosudex)、カルチド(Calutide)、カルミド(Kalumid))、フルタミド、ニルタミド、アパルタミド(ARN-509、JNJ-56021927)、ダロルタミド、エンザルタミド(イクスタンジ(Xtandi))、シメチジンおよびトピルタミドを含む。適当なCYP17A1阻害剤は、酢酸アビラテロン(ザイティガ(Zytiga))、ケトコナゾール、およびセビテロネルを含む。抗アンドロゲン薬の任意の組み合わせをキットにおいて用いることができる。
【0117】
上記のさまざまな方法を実行するための材料および試薬は、方法の実行を容易にするためにキットで提供することができる。本明細書において使用される場合、「キット」という用語は、プロセス、アッセイ、分析、または操作を容易にする物品の組み合わせを含む。キットは、例えば、診断、予後診断、治療などを含む広範囲の用途において利用されうる。
【0118】
キットは化学試薬および他の成分を含むことができる。さらに、キットは、非限定的に、キット使用者への説明書、サンプル収集および/もしくは精製のための装置および試薬、産物収集および/もしくは精製のための装置および試薬、AR/AKR1C3阻害剤を投与するための装置および試薬、バイオマーカーのレベルを決定するための装置および試薬、サンプルチューブ、ホルダ、トレイ、ラック、ディッシュ、プレート、溶液、緩衝液または他の化学試薬、標準化、正規化のために使用される適当なサンプル、および/または対照サンプルを含むことができる。キットは同様に、好都合な保管および安全な輸送のために、例えば、蓋を有する箱の中に包装することもできる。
【0119】
いくつかの態様において、キットは同様に、バイオマーカーの検出のための陰性および陽性対照サンプルも含む。適当なバイオマーカーの非限定的な例としては、前立腺特異的抗原(PSA)、α-メチルアシル-CoAラセマーゼ(AMACR)、エンドグリン(CD105)、エングレイルド(engrailed)2 (EN-2)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、カベオリン-1、インターロイキン-6 (IL-6)、CD147、S100タンパク質ファミリーのメンバー(例えば、S100A2、S100A4、S100A8、S100A9、S100A11)、アネキシンA3 (ANXA3)、ヒトカリクレイン-2 (KLK2)、TGF-β1、β-マイクロセミノプロテイン(MSMB)、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、HER2、Ki67、サイクリンD1、およびサイクリンEが挙げられる。いくつかの場合には、1つまたは複数のバイオマーカーはPSAを含む。いくつかの態様において、陰性対照サンプルは、がんを有しない個体または個体群から得られる。他の態様において、陽性対照サンプルは、がんを有する個体または個体群から得られる。いくつかの態様において、キットは、試験生物学的サンプルにおける1つまたは複数のバイオマーカーの定量化レベルの評価を補助するために、サンプルにおける1つまたは複数のバイオマーカーの滴定曲線の作成用のサンプルを含む。
【実施例】
【0120】
VI. 実施例
実施例1. AR/AKR1C3二重阻害剤の合成
5-ベンゾイル-N-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシベンズアミド(3)を上記スキームに要約されているように調製した。2-ヒドロキシ安息香酸(a)をエステル化して、メチルエステル(b)を得た。(b)のアシル化によりベンゾフェノン(c)を得て、これを引き続き、加水分解して安息香酸(d)を得た。(d)のマイクロ波を用いたアミド化によって化合物3を得た。
【0121】
N-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-5-(4-メトキシベンゾイル)ベンズアミド(8)を以下のスキームに要約されているように調製した。2-ヒドロキシ安息香酸(a)をエステル化して、メチルエステル(b)を得た。(b)のアシル化によりベンゾフェノン(e)を得て、これを引き続き、加水分解して安息香酸(f)を得た。(f)のマイクロ波を用いたアミド化によって化合物8を得た。
【0122】
N-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-5-(4-メトキシベンジル)ベンズアミド(5)および5-ベンジル-N-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシベンズアミド(1)を以下のスキームに要約されているように調製した。化合物8および化合物3を還元して、それぞれ化合物5および化合物1を得た。
化合物1:
【0123】
2-ヒドロキシ-5-(4-メトキシベンジル)-N-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド(6)を同様に調製した。
【0124】
N-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-6-(4-メトキシフェノキシ)ベンズアミド(39)の合成を以下のスキームに要約されているように調製した。2-フルオロ-6-ヒドロキシベンズアルデヒド(g)を、対応するエーテル保護化合物(h)に変換した。4-メトキシフェノールとの化合物(h)のカップリングによりオキシジベンゼン(i)を得て、これを引き続き、酸化して安息香酸(j)を得た。(j)のさらなる還元によってヒドロキシ安息香酸(k)を得た。(k)の最終的なマイクロ波を用いたアミド化によって化合物39を得た。
【0125】
実施例2. AR/AR-VおよびAKR1C3発現の阻害
AR/AR-VおよびAKR1C3発現を阻害する化合物1および化合物2の能力を決定するため、CWR22rv1細胞を2つの化合物で処理した。細胞を5 μMの化合物1または5 μMの化合物2で48時間処理した。処理後、細胞溶解物を回収し、分析した。AR-FL、AR-V、およびAKR1C3タンパク質の発現について、ウエスタンブロット分析を用いて分析を実施した。この分析の結果を、
図1中のウエスタンブロット画像に示す。
【0126】
実施例3. AKR1C3活性の阻害
化合物1および化合物2がAKR1C3活性の阻害に有用であるかどうかを調べるため、LNCaP-AKR1C3を化合物1または化合物2のいずれかで48時間処理した。AKR1C3酵素活性をアルド-ケトレダクターゼ(AKR)活性アッセイキット(Colorimetric)によって決定したが、この結果を
図2に示す。同様に、AKR1C3活性の阻害をさまざまな用量の化合物1で調べた。LNCaP-AKR1C3細胞を漸増用量の化合物1で48時間処理した。AKR活性アッセイキット(colorimetric)を用いて分析を実施したが、この結果を
図3に示す。
【0127】
実施例4. エンザルタミド耐性前立腺がん細胞増殖の阻害
細胞増殖を阻害する化合物の能力を調べるため、C4-2B MDVR細胞を、化合物1または化合物2のいずれかで48時間処理した。細胞数を決定し、
図4にグラフで要約した。同様に、細胞増殖の用量依存的阻害を調べた。C4-2B MDVR細胞を漸増用量の化合物1で48時間処理した。化合物1の各用量での細胞数を決定し、
図5にグラフで要約した。
【0128】
実施例5. AR/AKR1C3阻害剤および抗アンドロゲンによるがん細胞増殖の阻害
化合物1が抗アンドロゲン耐性細胞増殖の効果的な阻害剤であるかどうかを評価するため、一連の耐性細胞をその各抗アンドロゲンで48時間処理した。エンザルタミド耐性MDVR細胞、アビラテロン耐性AbiR細胞、アパルタミド耐性ApaIR細胞、およびダロルタミド耐性DaroR細胞を、その各抗アンドロゲン: エンザルタミド(enza) (20 μM)、アビラテロン(abi) (20 μM)、アパルタミド(apal) (20 μM)、ダロルタミド(20 μM)、または化合物1 (5 μM)で処理した。細胞数を各耐性細胞型について決定し、
図6にグラフで要約した。
【0129】
実施例6. AR/AKR1C3阻害剤1によるインビボでの前立腺がん細胞増殖の阻害
次に、インビボでの化合物1の効果を2つの別々のモデルで研究した。まず、無傷のSCIDマウスに、マトリゲルに懸濁した耐性前立腺がんVCaP細胞を注射した。腫瘍が触知可能になったら、マウスを2つの群に分けた: 対照または20 mg/kgの化合物1を、週5日3週間、I.P.投与した。腫瘍体積を週2回測定し、マウスの体重をモニターした。処置の終了時に、腫瘍および血清を評価のために収集した。
図9Aに見られるように、化合物1による処置は対照と比較して、腫瘍体積を有意に減少させたが、マウスの体重には影響を与えなかった(
図9B)。さらに、血清PSAは、化合物1で処置した群において有意に減少した(
図9C)。
【0130】
また、インビボでの化合物1の効果を調べるために、LuCaP35CR PDXモデルを利用した。このモデルでは、SCIDマウスを去勢し、LuCaP35CR組織を移植した。腫瘍が触知可能になったら、マウスを2つの群に分けた: 対照または20 mg/kgの化合物1を、週5日3週間、I.P.投与した。腫瘍体積を週2回測定し、マウスの体重をモニターした。処置の終了時に、腫瘍および血清を評価のために収集した。VCaPモデルと同様に、化合物1処置は、腫瘍体積を有意に減少させた(
図10A)が、マウスの体重には影響を与えなかった(
図10B)。血清PSAはまた、このモデルにおいて化合物1での処置により低減した(
図10C)。さらに、化合物1での処置は、腫瘍内テストステロンレベルを有意に低減させた(
図10D)。これらのデータは、化合物1が耐容性良好であり、去勢抵抗性前立腺がんの処置に有用であることを実証している。
【0131】
実施例7. AR/AKR1C3阻害剤1によるテストステロンへのアンドロステンジオン変換の抑止
AKR1C3は、副腎性アンドロゲンであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)およびアンドロステンジオン(AD)のテストステロンへの変換を触媒することにより、テストステロンの合成において重要な役割を果たす。AKR1C3酵素活性の阻害に及ぼす化合物1の効果を決定するため、エクスビボ腫瘍に基づくAKR1C3酵素アッセイを行った。高レベルのAKR1C3を発現するLUCaP35CX腫瘍を、0.1%プロテアーゼで消化し、熱で非働化した、チャコールデキストラン処理済みの10%FBSを補充した培地中で培養した。終夜インキュベーション後、アンドロステンジオン(300 nmol/L)を、化合物1有りまたは無しで添加した。上清を回収して、テストステロンを測定した。化合物1は、テストステロンへのアンドロステンジオン変換の用量依存的阻害を示した(
図11)。
【0132】
実施例8. ARおよびAR-V7シグナル経路ならびにがん細胞の増殖および生存に関連する遺伝子の阻害
次に、ARシグナル伝達に及ぼす新しいAR/AKR1C3阻害剤の効果を研究した。化合物1および化合物5は、LNCaP細胞におけるDHT刺激AR核発現を阻害することができるとわかった(
図12)。ARシグナル伝達における化合物の阻害的役割をさらに確認するため、エンザルタミド耐性C4-2B MDVR細胞(これはAR、AR変種、およびAKR1C3の発現が増強されている)を、5 μMの化合物1、5 μMの化合物5、またはDMSO対照で処理した。RNAseqを用いて全RNAを単離し評価した。RNAseq分析により、両方の化合物での処理により、ARシグナル伝達に関連する遺伝子の発現が大幅に低減されることが明らかにされた(
図13A)。さらに、これらの処理はまた、AR-V7シグネチャー遺伝子の発現を低減させた(
図13B)。総合して、これらのデータは、化合物が意図された標的(すなわち、AR/AR-V7およびAKR1C3)を成功裏に阻害することを実証している。
【0133】
さらに、がんに関与する遺伝子の発現に及ぼす化合物の効果を研究した。エンザルタミド耐性C4-2B MDVR細胞を、5 μMの化合物1、2、5もしくは8、またはDMSO対照で処理した。全RNAを単離し、RNAseq分析によって、化合物での処理が、がん細胞の増殖および生存に関連する遺伝子の発現を大幅に低減させることが明らかにされた(
図14)。
【0134】
VII. 例示的な態様
本開示の主題によって提供される例示的な態様は、特許請求の範囲および以下の態様を含むが、これらに限定されることはない:
1.
式Iによる化合物:
または薬学的に許容されるその塩であって、式中:
Zが、-CH
2-、-C(O)-、-O-、-S-、および-NR
a-からなる群より選択され;
各R
1が、-OH、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;
各R
2およびR
3が、-OH、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より独立して選択され;
R
4が、H、α-アミノアシル; -S(O)
2N(R
a)
2、-C(O)N(R
a)
2、および-C(O)R
bからなる群より選択され;
各R
aが、HおよびC
1~8アルキルからなる群より独立して選択され;
R
bが、C
1~8アルキルであり;
下付き文字mが、0~3の範囲の整数であり;
下付き文字nが、0~5の範囲の整数であり; かつ
下付き文字pが、1~5の範囲の整数であり;
ただし以下である:
Zが、-OR
4に対してパラ位の-CH
2-であり、下付き文字mおよび下付き文字nが、0であり、R
4が、Hである場合、少なくとも1つのR
3は、ハロゲン、-NO
2、C
2~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択され;
Zが、-OR
4に対してパラ位の-CH
2-であり、化合物が、2,3,4-トリヒドロキシ-ベンズアミドである場合、少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3は、-OH、-NO
2、-CN、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択され;
Zが、-OR
4に対してパラ位の-CH
2-であり、化合物が、5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドである場合、少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3は、-OH、-NO
2、-CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択され;
Zが、-OR
4に対してパラ位の-C(O)-であり、化合物が、2-ヒドロキシ-ベンズアミド、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミド、または5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドである場合、
(i) 少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3は、-OH、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択され、
(ii) 下付き文字nが、1であり、R
2が、4-クロロまたは4-(n-ブチル)である場合に、少なくとも1つのR
3は-CF
3または-NO
2以外であり; かつ
Zが、-OR
4に対してパラ位の-S-であり、化合物が、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドまたは5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドである場合、少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3は、-OH、C
2~8アルキル、C
2~8アルコキシ、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択される、
化合物、または薬学的に許容されるその塩。
2.
Zが、-CH
2-である、態様1の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
3.
Zが、-C(O)-である、態様1の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
4.
Zが、-O-である、態様1の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
5.
下付き文字mが、0である、態様1~4のいずれかの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
6.
各R
3が、-OH、ハロゲン、-NO
2、-CN、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、およびC
2~8アルキニルからなる群より独立して選択される、態様1~5のいずれかの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
7.
各R
3が、C
1~8ハロアルキル、ハロゲン、および-NO
2からなる群より独立して選択される、態様1~5のいずれかの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
8.
下付き文字pが、1または2である、態様1~7のいずれかの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
9.
式IIaによる構造:
を有する、態様8の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
10.
R
3bおよびR
3dが独立してC
1~8ハロアルキルである、態様9の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
11.
R
3bおよびR
3dが独立して、-CF
3および-CCl
3からなる群より独立して選択される、態様10の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
12.
式IIbによる構造:
を有する、態様8の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
13.
R
3aおよびR
3cが、ハロゲンおよび-NO
2からなる群より独立して選択される、態様12の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
14.
R
3aが、-Clであり、R
3cが、-NO
2である、態様13の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
15.
式IIcによる構造:
を有する、態様8の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
16.
R
3が、C
1~8ハロアルキルである、態様15の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
17.
R
3が、-CF
3および-CCl
3からなる群より選択される、態様15の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
18.
下付き文字nが、0である、態様1~17のいずれかの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
19.
下付き文字nが、1である、態様1~17のいずれかの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
20.
R
2が、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、およびC
1~8ハロアルキルからなる群より選択される、態様19の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
21.
式IIIaによる構造:
を有する、態様19または態様20の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
22.
R
3bおよびR
3dが独立して、C
1~8ハロアルキルである、態様21の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
23.
R
3bおよびR
3dが、-CF
3および-CCl
3からなる群より独立して選択される、態様22の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
24.
式IIIbによる構造:
を有する、態様19または態様20の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
25.
R
3aおよびR
3cが、ハロゲンおよび-NO
2からなる群より独立して選択される、態様24の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
26.
R
3aが、-Clであり、R
3cが、-NO
2である、態様25の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
27.
式IIIcによる構造:
を有する、態様19または態様20の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
28.
R
3が、C
1~8ハロアルキルである、態様27の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
29.
R
3が、-CF
3および-CCl
3からなる群より選択される、態様28の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
30.
R
2cが、-OCH
3である、態様21~29のいずれかの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
31.
R
4が、Hまたはα-アミノアシルである、態様1~30のいずれかの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
32.
R
4が、l-バリニルおよびd-バリニルからなる群より選択される、態様31の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
33.
Zが、-OR
4に対してパラ位に存在する、態様1~32のいずれかの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
34.
Zが、-C(O)NH-に対してオルト位に存在する、態様1~32のいずれかの化合物、または薬学的に許容されるその塩。
35.
以下からなる群より選択される、態様1の化合物:
、および薬学的に許容されるその塩。
36.
Zが、-CH
2-であり;
下付き文字mおよび下付き文字nが、0であり; かつ
少なくとも1つのR
3が、ハロゲン、-NO
2、C
1~8アルコキシ、C
1~8ハロアルキル、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択される、
態様1の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
37.
Zが、-OR
4に対してパラ位の-C(O)-であり;
化合物が、2-ヒドロキシ-ベンズアミド、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミド、または5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドであり; かつ
少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3が、-OH、C
1~8アルコキシ、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択される、
態様1の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
38.
Zが、-OR
4に対してパラ位の-S-であり;
化合物が、2,5-ジアルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドまたは5-アルキル-6-ヒドロキシ-ベンズアミドであり; かつ
少なくとも1つのR
2または少なくとも1つのR
3が、-OH、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、および-N(R
a)
2からなる群より選択される、
態様1の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
39.
態様1~38のいずれか一項の化合物、または薬学的に許容されるその塩と、
薬学的に許容される賦形剤と
を含む、薬学的組成物。
40.
ホルモン媒介性の疾患または状態を処置するための方法であって、以下:
それを必要とする対象に、治療的有効量の、態様1~38のいずれかの化合物または薬学的に許容されるその塩、あるいは治療的有効量の、態様39の薬学的組成物を投与する段階であって、それによってホルモン媒介性の疾患または状態を処置する、段階
を含む、該方法。
41.
ホルモン媒介性の疾患が、がんである、態様40の方法。
42.
がんが、去勢抵抗性前立腺がんである、態様41の方法。
43.
抗アンドロゲン剤を対象に投与する段階
をさらに含む、態様40~42のいずれか一項の方法。
44.
抗アンドロゲン剤が、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、アビラテロン、薬学的に許容されるその塩、およびその組み合わせからなる群より選択される、態様43の方法。
45.
アンドロゲン受容体(AR)を阻害するための方法であって、以下:
有効量の、態様1~38のいずれかの化合物またはその塩と、ARを接触させる段階であって、それによってARを阻害する、段階
を含む、該方法。
46.
アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC3 (AKR1C3)を阻害するための方法であって、以下:
有効量の、態様1~38のいずれかの化合物またはその塩と、AKR1C3を接触させる段階であって、それによってAKR1C3を阻害する、段階
を含む、該方法。
【0135】
明確さおよび理解を目的に例示および実例によっていくらか詳述してきたが、当業者は、ある種の変更および修正を添付の特許請求の範囲内で実践できることを理解するであろう。さらに、本明細書において提供される各参考文献は、各参考文献が参照により個別に組み入れられるのと同じ程度まで、参照によりその全体が組み入れられる。
【国際調査報告】