(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】改善された尿素捕捉のための吸着剤粒子を含む多孔質膜
(51)【国際特許分類】
B01D 69/02 20060101AFI20230119BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20230119BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/38 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/42 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/66 20060101ALI20230119BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20230119BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20230119BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20230119BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20230119BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20230119BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B01D69/02
B01D69/06
B01D69/08
B01D71/16
B01D71/26
B01D71/34
B01D71/38
B01D71/40
B01D71/42
B01D71/52
B01D71/56
B01D71/64
B01D71/66
B01D71/68
B01J20/26 G
B01J20/10 A
B01J20/18 A
B01J20/20 A
A61M1/16 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528604
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2020082897
(87)【国際公開番号】W WO2021099578
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522193031
【氏名又は名称】シュティヒティング フォーア デ テヒニッシェ ヴェテンシャッペン
【氏名又は名称原語表記】STICHTING VOOR DE TECHNISCHE WETENSCHAPPEN
(71)【出願人】
【識別番号】506362417
【氏名又は名称】ユーエムシー ユトレヒト ホールディング ビー.ブイ.
(71)【出願人】
【識別番号】516236056
【氏名又は名称】ウニヴェルシテイト ユトレヒト ホールディング ベー.フェー.
(71)【出願人】
【識別番号】522193042
【氏名又は名称】ウニヴェルシテイト トゥヴェンテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT TWENTE
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】スタマティアリス, ディミトリオス
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミア, イラリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン ノストラム, コルネリュス, フランシスカス
(72)【発明者】
【氏名】ヘリツェン, カリン ヘラルダ フレデリカ
(72)【発明者】
【氏名】スマクマン, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヘニンク, ヴィルヘルムス エバーハードゥス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ヤコブス アドリアヌス ヴィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】グオ, ヨン
【テーマコード(参考)】
4C077
4D006
4G066
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC06
4C077EE01
4C077KK11
4C077LL02
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4C077MM07
4C077NN20
4C077PP08
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4C077PP14
4C077PP15
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4D006MC47
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4D006MC54
4D006MC58
4D006MC59
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4D006NA05
4D006NA10
4D006NA17
4D006NA51
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4D006PA01
4D006PB09
4D006PC47
4G066AA04B
4G066AA22B
4G066AA61B
4G066AA72B
4G066AC12B
4G066AC14B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA26
4G066BA36
4G066BA42
4G066CA27
4G066DA12
(57)【要約】
本発明は、尿素を捕捉する吸着剤粒子を含む膜を調製する方法に関する。本発明はまた、吸着剤含有膜それ自体、および膜の使用方法に関する。膜は、例えば溶液から尿素を除去するために、尿素などの小分子との継続反応を行うのに有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込まれた粒子状材料を含む膜であって、
前記膜は多孔質高分子膜であり、
前記粒子状材料が尿素吸着剤を含み、且つ
前記粒子状材料の粒径は、最大直径に従って最大250μmである、膜。
【請求項2】
前記粒子状材料が、前記膜および前記粒子状材料の総乾燥重量に基づいて、5重量%~80重量%、好ましくは25重量%~70重量%の範囲で前記膜中に存在する、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記粒子状材料の粒径が、最大直径に従って最大150μm、好ましくは最大85μm、より好ましくは最大70μmである、請求項1または2に記載の膜。
【請求項4】
中空繊維、完全繊維、または平坦なシートの形態である;好ましくは、膜は中空繊維である、請求項1~3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
前記膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエチレン-co-ビニルアルコール、ポリエチレン-co-酢酸ビニル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、および/またはポリアクリル酸から選択される少なくとも1つのポリマーを含み;好ましくは、ポリエーテルスルホンおよび/またはポリビニルピロリドンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
少なくとも1L/(m
2・h・Bar)の水透過率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項7】
前記尿素吸着剤が、尿素を共有結合的に捕捉する吸着剤であり、尿素捕捉の少なくとも10%が尿素の共有結合的捕捉である、請求項1~6のいずれか一項に記載の膜。
【請求項8】
前記尿素吸着剤が、尿素を共有結合的に捕捉することができる部分でグラフトされたポリマー骨格を含む高分子組成物であり、前記尿素を共有結合的に捕捉することができる部分が、好ましくは、2つ以上の隣接するカルボニル基またはその水和物を含む、請求項7に記載の膜。
【請求項9】
前記尿素吸着剤が、ニンヒドリン型吸着剤、フェニルグリオキサールアルデヒド型吸着剤、および/またはトリホルミルメチル型吸着剤から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の膜。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の膜であって
前記粒子状材料が、活性炭粒子、イオン交換樹脂粒子もしくはイオン交換シリカ粒子などのイオン交換粒子、未修飾シリカ粒子もしくはアルキル化シリカ粒子などのシリカ粒子、ゼオライト粒子、セラミック粒子、多孔質ポリマー粒子もしくは非多孔質ポリマー粒子などのポリマー粒子、および/または分子インプリント粒子を更に含み、および/または
前記膜は、親水性添加剤、好ましくはポリビニルピロリドン、キトサン、ポリエチレングリコール、デキストラン、グリセロール、ジエチレングリコール、オクタノール、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、塩化リチウム、および/または塩化カルシウムなどの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の膜。
【請求項11】
医薬として使用するための、好ましくは尿素の蓄積に関連する疾患または状態の治療において使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の膜。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の膜を調製するための方法であって、
i. 最大直径に従って最大250μmのサイズを有する尿素吸着剤粒子を提供す工程;
ii. 前記尿素吸着剤粒子をポリマー材料用の溶媒中で前記ポリマー材料と混合して混合物を得る工程;
iii. 前記混合物を押出またはキャスティングして膜を形成する工程;および
iv. 任意選択的に、好ましくは転相によって前記膜を固化させる工程
を含む、方法。
【請求項13】
流体から求核性老廃物溶質を除去するための方法であって、
i) 求核性老廃物溶質を含む流体を提供する工程;および
iia) 前記流体を請求項1~10のいずれか一項に記載の膜と接触させる工程、または代替的に
iib) 膜を通して前記流体を透析流体と接触させる工程であって、前記透析流体が、請求項1~10のいずれか一項に記載の膜と接触している工程、および
iii) 任意選択的に、流体を回収する工程
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の膜を含む、透析装置で使用するためのカートリッジ。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の膜または請求項14に記載のカートリッジを含む、透析装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の属する技術分野]
本発明は、尿素を捕捉する吸着剤粒子を含む膜を調製する方法に関する。本発明はまた、吸着剤含有膜それ自体、および膜の使用方法に関する。膜は、例えば溶液から尿素を除去するために、尿素などの小分子との継続反応を行うのに有用である。
【0002】
[背景技術]
末期腎疾患(ESKD)または重篤な急性腎不全を有する患者は、腎機能を置換するために、透析(血液透析またはHDまたは腹膜透析またはPDのいずれか)を受ける。生命を救うものであるが、従来の透析には大きな欠点がある。この処理は時間がかかり、老廃物分子および過剰な水の除去は不十分であり、生活の質の低下、深刻な健康問題および高い死亡率(年間15-20%)に大きく寄与する。治療コストは非常に高い。
【0003】
透析において、患者流体は、一般に、透析流体に対して透析され、次いで、透析流体は廃棄される。より少量の使用を可能にするために、透析流体を再生することが望ましい。小型化の努力において、患者流体は、透析液と呼ばれる比較的少量の透析流体に対して透析される。このプロセスの間、患者流体からの老廃物溶質は、拡散および/または対流によって、しばしば半透膜のような膜を通って透析液に向かって移動する。老廃物溶質が後に透析液から除去される場合、再使用することができ、これは透析液の再生と呼ばれる。透析液の効率的な再生は、大量の透析流体の必要性を減少させ、透析をより実際的に実施し、資源依存性を減少させ、そして老廃物流を減少させる。
【0004】
小型の人工腎臓装置は、腎代替療法における大きな躍進となる。世界中で、透析患者の数は3400000人と推定されている(www.fresenius.com/media_library/Fresenius_Annual_Report_2018.pdfを参照)。現在、透析患者の約89%が、HD技術をセンター(>96%)または在宅(<4%)で使用している(ERA-EDTA Registry Annual Report 2017を参照されたい)。センターHDは、病院への長い頻繁な訪問(週に約3回、セッション当たり4時間)を必要とするが、在宅用HDは、より高い柔軟性および自律性を提供する。しかしながら、在宅用HDは、依然として、かさばった透析機械および透析流体の大量供給(1回の処置当たり少なくとも20L)またはかさばった固定式水精製システムを必要とする。固定された水供給または大量の透析流体の供給に依存しない、ユーザフレンドリな軽量HD装置は、患者の可動性を増加させ、患者が社会生活において活動的なままであり、自由に移動することを可能にする。
【0005】
標準的な週3回のHDによる水バランスおよび尿毒症毒素レベルの透析処置の間における大きな変動は、連続的またはより頻繁なHDによって減弱され得、これは、患者の転帰を改善し得る(Nesrallah GE et al., J Am Soc Nephrol 2012; 23:696-705; Susantitaphong P et al., Am J Kidney Dis 2012;59:689-99; Ting GO, etal., Am J Kidney Dis 2003; 42: 1020-35)。より自由な食事が許容される。有意なコスト削減は、透析担当者および関連するインフラストラクチャの必要性の減少、より少ない投薬、および減少した合併症に起因するより少ない入院によって達成される。
【0006】
PDは、現在、透析患者の約11%によって使用されている(Fresenius 2018 年次報告参照)。PDは、HDとは対照的に、連続的に透析する機会を提供するが、この技術は、いくつかの主要な欠点を有する:尿毒症毒素除去が低い(Evenepoel P et al., Kidney Int 2006; 70: 794-9)、交換操作は時間がかかり、腹膜の感染(腹膜炎)の高い発生率および膜不全のため技術失敗率が高い(技術的生存期間中央値は3.7年)(Perl J et al., Clin J Am Soc Nephrol 2012; 7: 1145-54)。低い透析効率は、主に、滞留中の血漿と腹膜透析液との間の濃度勾配の急速な消散に起因し、それによって、溶質輸送を制限する(Gotch FA. "Kinetic modeling of continuous flow peritonealdialysis." Semin Dial 2001; 14: 378-83)。透析液を連続的に再生し、それによって血漿透析液濃度勾配を維持する小型PD装置は、PD効率を大幅に高める。これは、時間のかかる交換の数の減少を可能にする一方で、老廃物溶質除去をなお改善する。加えて、接続の数を低減することは、汚染の危険性を低減し、腹膜炎率を低下させるであろう(De Fijter CW, et al. Adv Perit Dial 1991; 7: 186-9; Piraino B, ShethH. Blood Purif 2010; 29: 145-9.)。小型PD装置による連続的なグルコース注入は、従来のPDにおいて適用されるような非常に高い毒性グルコース濃度を回避することによって、腹膜の機能的劣化を減少させる(Gotch 2001)。従来のPDにおける技術的失敗の2つの主要な原因(再発性感染および腹膜の機能的損失)を防ぐことによって、小型人工腎臓は、技術的生存を有意に延長する。
【0007】
したがって、病院外で透析を提供する、ユーザフレンドリな装着型または携帯型透析装置は、透析患者にとって大きな飛躍を示し、患者の生活の質を著しく向上させる。この装置は、連続的またはより頻繁な透析を可能にし、これは、老廃物溶質および過剰な流体の除去を改善し、従って、患者の健康を改善する。固定された水供給から独立した小型化された設計は、患者に自由度と自律性を提供する。
【0008】
近年、いくつかの有機老廃物溶質および老廃物イオンを適切に除去する小型プロトタイプ透析装置が構築されている。しかしながら、今までのところ、真に装着可能な割合まで小型化することを可能にする尿素除去のための適切な戦略は存在せず、これは、小型人工腎臓装置の成功した実現のための主な障害の1つである。尿素は、毎日の生産が最も高い老廃物溶質(窒素代謝の主要な老廃物生成物)であり、高血漿濃度で毒性効果を発揮する。しかし、尿素は捕捉しにくく、反応性が低い。
【0009】
尿素吸着剤として特に適した吸着剤は、長い間知られている。DE2305186A1/US3933753Aは、グリオキサール部分を特徴とするポリスチレン様足場を有する高分子組成物を開示している。この組成物は最大1mmol/gの尿素を捕捉した。これは、US4012317に記載されるようにさらに開発され、WO2004078797A1は、1.5mmol/gの尿素捕捉能に達する類似のケトアルデヒド材料を開示する。
【0010】
EP121275A1/US4897200Aは、ニンヒドリン型吸着剤を開示している。臨床関連尿素濃度において、8時間で1.2mmol/g乾燥吸着剤の尿素捕捉能が示された。しかしながら、効果的な小型化のためには、より高い尿素捕捉能が必要とされる。WO2019110557は、2mmol/gを超える尿素捕捉能を有するニンヒドリン型吸着剤を開示している。
【0011】
US4178241Aは、パラ-チオ、パラ-ニトロ、またはパラ-アミノ部分を有するポリスチレン型吸着剤を開示している。チオ部分については、尿素の捕捉は再び約1.5mmol/gであることが示された。また、クレアチニンは、各官能基について、正常な成人の毎日の産生の90%を十分に超えて捕捉することが示された。
【0012】
膜は濾過用としてよく知られており、尿素除去用の膜も提案されている。WO2017116515A1は、透析液からの尿素分離を改善するための帯電膜の使用を開示しており、分離された尿素の電気酸化の使用を示唆している。この方法の欠点は、反応性酸素種が副生成物として生成されることである。
【0013】
膜はまた、流体から他の老廃物溶質を除去するのに使用されている。Geremia et al. (DOI: 10.1016/j.actbio.2019.04.009)は、活性炭素粒子を含む膜を記載している。これらの膜は尿毒症毒素を捕捉することができるが、活性炭は不十分な尿素捕捉剤であり、実際に尿素の捕捉は示されていない。この不十分な捕捉は、Cheah et al (Materials Chemistry and Physics, 175 (2016), 151-157)によって確認されており、彼らは、代替物として尿素の非共有結合的捕捉のためのアミンまたはヒドロキシル基を有するシリカ系材料を記載している。
【0014】
WO2014007716は、透析溶液からの尿素の吸着のためのマクロ多孔性銅-キトサンポリマー膜を記載している。この膜は尿素を捕捉するが、その性能は低い。加えて、膜は、それ自体同様に非共有結合している銅を介して尿素と非共有相互作用を有することができるだけであるので、除去は容易に可逆的な捕捉を介する。
【0015】
WO2011102807A1は、エポキシド被覆基材を開示している。エポキシドは、溶液から溶質を回収するために使用することができる。それらはまた、尿素の処理を助けるウレアーゼ酵素を固定化するために使用される。ウレアーゼ酵素の欠点は、環境因子に対するそれらの感受性、それらの高価で面倒な製造、およびそれらの反応によって有毒なアンモニウムが生成されるという事実であり、これは次に、それらが使用される装置に余分な重量を付加し、また望ましくないことにカルシウムまたはカリウムを捕捉し得るリン酸ジルコニウムなどの材料を含む陽イオン交換体を使用する除去を必要とする。WO2016126596は、非常に異なる基質、すなわち還元酸化グラフェンを使用する。高い尿素捕捉能が示されたが、捕捉された尿素は初期尿素濃度の15%未満に相当した。
【0016】
改善された人工腎臓装置の開発を可能にするために、より多量の尿素を捕捉し、成分または捕捉された尿素を透析物中に浸出する危険性がなく、そして有害な副生成物を生成せず、そして改善された動力学を有して尿素をより速く捕捉し、そして膜の利点を専用の尿素吸着剤の利点と組み合わせて、装置に必要とされる総重量を減少させる、容易に調製される材料についての継続的な必要性が存在する。
【0017】
[発明の要旨]
本発明は、吸着剤粒子が多孔質膜マトリックス中に埋め込まれると、尿素吸着剤の性能が向上するという驚くべき発見に基づいている。尿素吸着剤の捕捉能は増加し、捕捉の動力学も改善した。したがって、本発明は、埋め込まれた粒子状材料を含む膜であって、当該膜は多孔質ポリマー膜であり、粒子状材料が尿素吸着剤を含み、粒子状材料の粒径が最大直径に従って最大250μmである膜に関する。好ましくは、粒子状材料は、膜および粒子状材料の総乾燥重量に基づいて、5重量%~80重量%、より好ましくは25重量%~70重量%の範囲で膜中に存在する。好ましくは、粒子状材料の粒径は、最大直径に従って最大150μm、より好ましくは最大85μmである。好ましくは、膜は、中空繊維、完全繊維または平坦なシートの形態である。より好ましくは、膜は中空繊維である。好ましくは、膜は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエチレン-co-ビニルアルコール、ポリエチレン-co-酢酸ビニル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、および/またはポリアクリル酸から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。より好ましくは、ポリエーテルスルホンおよび/またはポリビニルピロリドンを含む。好ましくは、膜は少なくとも1L/(m2・h・Bar)の水透過率を有する。好ましくは、尿素吸着剤は尿素を共有結合的に捕捉する吸着剤である。好ましくは、尿素吸着剤は、尿素を共有結合的に捕捉することができる部分でグラフト化されたポリマー骨格を含む高分子組成物であり、尿素を共有結合的に捕捉することができる部分は、好ましくは、2つ以上の隣接するカルボニル基またはその水和物を含む。好ましくは、尿素吸着剤は、ニンヒドリン型吸着剤、フェニルグリオキサールアルデヒド型吸着剤、および/またはトリホルミルメチル型吸着剤から選択される。好ましい実施形態では、粒子状材料は、活性炭粒子、イオン交換樹脂粒子またはイオン交換シリカ粒子などのイオン交換粒子、未修飾シリカ粒子またはアルキル化シリカ粒子などのシリカ粒子、ゼオライト粒子、セラミック粒子、多孔質ポリマー粒子または非多孔質ポリマー粒子などのポリマー粒子、および/または分子インプリント粒子をさらに含み、および/または膜は、親水性添加剤、好ましくはポリビニルピロリドン、キトサン、ポリエチレングリコール、デキストラン、グリセロール、ジエチレングリコール、オクタノール、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、塩化リチウム、および/または塩化カルシウムなどの添加剤をさらに含む。
【0018】
医薬として使用するための、好ましくは尿素の蓄積に関連する疾患または状態の処置において使用するための、上記で定義される膜もまた提供される。
【0019】
さらに、上記で定義された膜を調製するための方法であって、
i. 最大直径に従って最大250μmのサイズを有する尿素吸着剤粒子を提供する工程;
ii. 尿素吸着剤粒子をポリマー材料用の溶媒中でポリマー材料と混合して混合物を得る工程;
iii. 混合物を押出またはキャスティングして膜を形成する工程;および
iv. 任意選択的に、好ましくは転相によって前記膜を固化させる工程
を含む方法が提供される。
【0020】
さらに、流体から求核性老廃物溶質を除去するための方法であって、
i) 求核性老廃物溶質を含む流体を提供する工程、および
iia) 流体を、クレーム1~10のいずれか1項に記載の膜と接触させる工程、あるいは
iib) 前記流体を、膜を通して透析流体と接触させる工程(ここで、前記透析流体は、クレーム1~10のいずれか1項に記載の膜と接触している)、および
iii) 必要に応じて、前記流体を回収する工程
を含む、方法が提供される。
【0021】
本発明はさらに、上記で定義された膜を含む、透析装置において使用するためのカートリッジを提供する。本発明はまた、上記で定義された膜または上記で定義されたカートリッジを含む透析装置を提供する。
【0022】
[実施形態の説明]
本発明は、尿素が重要な例である求核性老廃物溶質に対して増大した容量および捕捉速度を有する改良された吸着材料を提供しようとするものである。吸着剤は、標的物質を捕捉する材料であり、この場合、吸着剤は、尿素などの求核剤を捕捉する。本発明者らは、高い尿素捕捉能および速い結合動力学を有し、膜を透析における適用に適したものにする膜を発明した。膜は、吸着剤粒子を含む。ポリマーマトリックスに埋め込まれた粒子状材料を含むため混合マトリックス膜(MMM)と呼ぶことができる改善された吸着膜は、吸着剤カートリッジの小型化を可能にし、したがって小型人工腎臓装置に向けた重要なステップである。
【0023】
本発明は、吸着剤粒子が多孔質膜マトリックス中に埋め込まれると、尿素吸着剤の性能が向上するという驚くべき発見に基づいている。尿素吸着剤の捕捉能が増加しただけでなく、捕捉の動力学も改善した。したがって、本発明は、埋め込まれた粒子状材料を含む膜であって、
ここで、膜は多孔質高分子膜であり、
粒子状材料が尿素吸着剤を含み
粒子状材料の粒径は、最大直径に従って最大250μmである
膜を提供する。
【0024】
埋め込まれた尿素吸着剤粒子を有するそのような膜は、以下では本発明の膜と呼ばれる。一般に、本発明の膜は、遊離吸着剤粒子などの他の系と比較して、求核性老廃物溶質、特に尿素の除去のためのより速い動力学を達成する。さらに、本発明の膜は、他の系と比較して、求核性老廃物溶質、特に尿素を除去するより高い性能を有する。驚くべきことに、膜によって吸着される尿素の量は、吸着剤粒子が膜に埋め込まれておらず、尿素水溶液中に分散されている場合よりも多い。
【0025】
本発明の膜は、埋め込まれた粒子状材料を含む。当業者は、例えばWO2019175366またはWO2014007716またはGeremia et al. (DOI: 10.1016/j.actbio.2019.04.009)から、埋め込まれた粒子状材料を有する膜に精通している。一般に、埋め込まれた粒子状材料とは、膜を構成するポリマーマトリックスによって捕捉される粒子をいう。埋め込まれた粒子状材料は、膜マトリックスによって完全に囲まれていてもよく、またはポリマーの表面に部分的に露出していてもよい。
【0026】
膜
膜は、尿素の除去のための(血液)透析において有利に使用され得、ここで、血液は、膜を通過して、または少量の透析流体からそれを分離する半透膜を通過して導かれ、その後、透析流体は、本発明の膜と接触される。次いで、膜中の吸着剤粒子は、尿素などの求核性老廃物溶質を捕捉し、その結果、(半透過性)膜上でのこれらの溶質の拡散が継続され、飽和により減速しない。
【0027】
膜技術は十分に開発されており、当業者は、尿素吸着剤が埋め込まれる適切な種類の膜を選択することができ、換言すれば、MMMを開発するために尿素吸着剤が埋め込まれる適切なポリマーマトリックスを選択することができる(“Basic Principles of Membrane Technology”, Second edition by M.Mulder, Kluwer Academic publishers, ISBN 0-7923-4247-x; and “Biomedicalmembranes and bioartificial organs”, D. Stamatialis, Ed., World Scientific/Oxford press, ISBN 978-981-3221-75-8 (2018)参照)。好適な膜はポリマーから作製され、したがって、膜はポリマーマトリックスを含むか、またはそれからなる。膜は多孔性であり、マクロ多孔性、ミクロ多孔性またはナノ多孔性であり得る。高密度(非多孔質)膜は、そのような膜では粒状物質が流体に十分に接近できないので、適切ではない。用途およびその中での透過性の相対的重要性に基づいて、減少する孔径を有する精密濾過、限外濾過、ナノ濾過および逆浸透膜を定義することができる。必要な膜間差圧は、孔径が小さくなるにつれて増大する。
【0028】
尿素除去が主要な目的である用途については、精密濾過および/または限外濾過が好ましい。一般に、より低い透過性は、通過する分子の滞留が増加し、溶質が埋め込まれた吸着剤粒子に結合するためのより多くの時間を提供するので、尿素結合の動力学を改善するのに役立ち得る。
【0029】
本発明の膜は、液体濾過における用途に特に適しており、したがって、好ましい膜は濾過膜であり、より好ましくは多孔質膜である液体濾過膜である。濾過膜は、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、および逆浸透膜であり得る。好ましい実施形態において、膜は、精密濾過膜、限外濾過膜、またはナノ濾過膜である。好ましい実施形態では、膜は精密濾過膜または限外濾過膜である。好ましい実施形態では、膜はナノ濾過または逆浸透膜である。いくつかの好ましい実施形態では、例えば水処理で使用する場合、膜は逆浸透膜である。
【0030】
精密濾過膜は当技術分野で公知である。それらは典型的には約500~5000L/(m2・h・Bar)の水透過性を有し、それらは典型的には0~1barの範囲の圧力で操作される。精密濾過膜の例は、酢酸セルロース(CA)、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、および/またはポリアミドを含むポリマーを使用して作製される有機膜である。無機膜は、本発明の方法を用いて容易に調製されないので、あまり好ましくない。
【0031】
限外濾過膜も知られており、0.1μm~0.01μmの範囲の孔径を有する。それらはタンパク質、内毒素、ウイルスおよびシリカを保持することができる。限外濾過は、廃水処理から医薬用途および透析治療に及ぶ多様な用途を有する。それらは典型的には約50~800L/(m2・h・Bar)の水透過性を有し、それらは典型的には0.2~10barの範囲の圧力で操作される。限外濾過膜の例は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、および/またはポリ乳酸を含むポリマーを使用して作製された有機膜である。
【0032】
ナノ濾過膜も公知であり、0.001μm~0.01μmの大きさの孔を有する。それらは、多価イオン、合成色素、糖および特定の塩を濾過することができる。典型的には約1~15L/(m2・h・Bar)の水透過性を有し、典型的には5~20barの範囲の圧力で操作される。ナノ濾過膜の例は、エチレンビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、および/またはポリエチレンテレフタレートを含むポリマーを使用して作製される有機膜である。
【0033】
逆浸透は、利用可能な最も微細な分離膜プロセスであり、孔径は0.0001μm~0.001μmの範囲である。逆浸透は、水および尿素などの小さな親水性分子を除くほとんどすべての分子を保持することができる。孔の大きさのために、必要な浸透圧は他の濾過技術の場合よりも有意に大きい。典型的には、透過性は約1~5L/(m2・h・Bar)であり、典型的には8~100barの範囲の圧力で操作される。逆浸透膜の例は、三酢酸セルロース(CTA)を使用して作製される有機膜である。
【0034】
好ましい実施形態では、少なくとも1L/(m2・h・Bar)の透水性を有する、本発明の膜が提供される。他の好ましい実施形態において、水透過率は、少なくとも50、より好ましくは100、さらにより好ましくは150、さらにより好ましくは200、さらにより好ましくは250、最も好ましくは300L/(m2・h・Bar)である。他の非常に好ましい実施形態では、透水性は少なくとも500L/(m2・h・Bar)である。好ましくは最大5000L/(m2・h・Bar)、より好ましくは最大3500、さらに好ましくは最大2500、さらに好ましくは最大1500、さらに好ましくは最大800、さらに好ましくは最大500、さらに好ましくは最大400、さらに好ましくは最大250、さらに好ましくは最大150、さらに好ましくは最大75、さらに好ましくは最大50、25、15、10または5L/(m2・h・Bar)である。約10~約1000L/(m2・h・Bar)の範囲の水透過性が非常に適しており、約10~約500L/(m2・h・Bar)がさらに適しており、50~400L/(m2・h・Bar)がさらに適している。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明の膜は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエチレン-co-ビニルアルコール、ポリエチレン-co-酢酸ビニル、酢酸セルロースまたは三酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、キトサンなどの多糖類、およびポリアクリル酸からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。より好ましくは、膜は、ポリエーテルスルホンおよび/またはポリビニルピロリドン、好ましくは両方を含む。
【0036】
当業者が知っているように、ポリマーの混合物は、魅力的な膜をもたらすことができる。好ましい実施形態では、本発明の膜は、粒子を含む膜の乾燥重量に基づいて、20重量%~95重量%の範囲、好ましくは30重量%~75重量%の範囲、より好ましくは40重量%~60重量%の範囲の総量のポリマーを含む。有利には、膜は、ポリエーテルスルホン(PES,Pavlenko et al., Nature Scientific Reports, 6 (2016) 34429参照)などのEVAポリマー、エチレンビニルアルコール(Tetala & Stamatialis, Sep. Pur. Tech., 104 (2013) 214-220参照)、またはポリイミドP84などのポリイミド(Kopec et al., Sep.Pur. Tech., 80 (2011) 306-314参照)、好ましくはPESなどの第1のポリマーを、粒子を含む膜の乾燥重量に基づいて、10重量%~50重量%の範囲内の量、より好ましくは20重量%~40重量%の範囲内の量、最も好ましくは約30重量%の量で含む。好ましくは、膜は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはポリエチレンオキシド(PEO)、好ましくはPVPなどの第2のポリマーを、粒子を含む膜の乾燥重量に基づいて、1重量%~30重量%の範囲、より好ましくは10重量%~20重量%の範囲、最も好ましくは約14重量%の量で含む。当業者であれば、特に液体誘起相分離を可能にするためにポリマー溶媒および非溶媒が存在し、好ましくは粒子状材料がポリマー溶媒に溶解しない場合に、様々なポリマーを使用することができることを認識している。
【0037】
膜形態は、当技術分野で公知の方法を用いて制御することができる。好ましい実施形態では、本発明の膜が提供され、膜は、中空繊維、完全繊維、または平坦なシートの形態である。好ましくは、膜は中空繊維である。
【0038】
本発明の膜は、混合マトリックス膜(MMMs)と呼ぶことができる。MMMsは、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の層を有することができる。本発明の膜は、非対称であっても対称であってもよい。好ましい実施形態では、MMMは2つの層を有し、粒子状材料は、透析液に最も近い二重層混合マトリックス膜の層中に存在する。他の好ましい実施形態では、粒子状材料は全ての層に存在する。他の好ましい実施形態において、膜は単一層のみを有し、これは、膜の透過性および機械的安定性が複数層の必要性を取り除く場合に有用であり得る。
【0039】
好ましい実施形態では、膜は、1モル当たり1000~1000000グラム(g/mol)の範囲、好ましくは30000~500000g/molの範囲の分子量を有するポリマーを含む。好ましくは、ポリマー重量は数平均ポリマー重量である。本発明の膜は、好ましくは、0.5~1000キロダルトン(kDa)の範囲、より好ましくは5~50kDaの範囲、または最大40、より好ましくは最大30、より好ましくは最大25、最も好ましくは最大20kDaの分画分子量(MWCO)を有する。好ましい実施形態では、MWCOは約20kDa~約50kDaである。高流束膜を必要とするものなどの他の好ましい実施形態では、MWCOは約20kDaである。中カットオフ膜を必要とするものなどの他の好ましい実施形態では、MWCOは約50kDaである。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明の膜は、1~2000nm、より好ましくは1~500nmの範囲の平均孔径を有する。孔径は、好ましくは少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも2nm、最も好ましくは少なくとも約3nmである。低孔径は、アルブミンなどの血液タンパク質を保持するのに役立つので、透析用途に好ましい。好ましくは、約3nmの孔径と約20kDaなどの約10~50kDaのMWCOとを組み合わせたものが使用される。孔径は、様々なサイズの分子の混合物の濾過によるガス吸着またはMWCO決定、好ましくはMWCO決定などの公知の技術を使用して決定することができる。
【0041】
本発明の膜は、好ましくは少なくとも50cm-1、より好ましくは少なくとも100cm-1の表面積対体積比を有する。本発明の膜は、好ましくは、混合物、好ましくは透析液または血漿濾液などの濾液の最大流量に耐えることができ、ここで、混合物は、尿素などの求核性老廃物溶質を、10~1000ミリリットル/分(mL/分)、最も好ましくは300~800mL/分の範囲で含む。最大流速は、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも50、さらにより好ましくは少なくとも75、さらにより好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも250、より好ましくは少なくとも300mL/分である。最大流量は、好ましくは最大で1000、より好ましくは最大で750、さらにより好ましくは最大で600、さらにより好ましくは最大で500、より好ましくは最大で400、より好ましくは最大で350mL/分である。一般的な透析用途では、100mL/分の流量で十分である。在宅透析では、300mL/分の流量が好ましい。
【0042】
本発明の膜は、好ましくは60~600ミリリットル/平方メートル/時間/水銀柱ミリメートル(mL・m-2・h-1・mmHg-1)の範囲、より好ましくは100~400mL・m-2・h-1・mmHg-1の範囲、最も好ましくは250~350mL・m-2・h-1・mmHg-1の範囲の限外濾過係数Kufを有する。好ましくは、Kufは少なくとも10、より好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも60、より好ましくは少なくとも75、より好ましくは少なくとも100mL・m-2・h-1・mmHg-1である。好ましくは、Kufは、最大400、より好ましくは最大350、より好ましくは最大300、より好ましくは最大250、より好ましくは最大200、より好ましくは最大150、より好ましくは最大100mL・m-2・h-1・mmHg-1である。
【0043】
本発明の膜は、好ましくは1%~15%の範囲、好ましくは1%~5%、最も好ましくは約2%の膨潤度を有する。好ましくは、膜は、実質的に膨潤せず、より好ましくは最大3%、さらにより好ましくは最大1.5%、最も好ましくは最大0.5%などの1%未満膨潤する。
【0044】
本発明の膜は、好ましくは少なくとも1.8mmol/g、より好ましくは少なくとも2.0、さらにより好ましくは少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも2.6、さらにより好ましくは少なくとも2.7、さらにより好ましくは少なくとも2.8、より好ましくは2.9、さらにより好ましくは3mmol/gの尿素捕捉能を有する。本発明の膜は、好ましくは1時間後に少なくとも0.75mmol/g、より好ましくは0.8mmol/gの尿素を捕捉することができる。本発明の膜は、最大16時間後に、好ましくは少なくとも1.8mmol/g、より好ましくは2mmol/gの尿素を捕捉することができる。この尿素捕捉は、好ましくは本明細書の他の箇所に記載されている通りであり、より好ましくは70℃での捕捉であり、最も好ましくは実施例に記載されている通りである。
【0045】
尿素吸着剤
本発明の膜は、粒子状材料を含む。粒子状材料は少なくとも尿素吸着剤を含む。好ましい実施形態では、粒子状材料は尿素吸着剤からなる。
【0046】
吸着剤は、標的物質を捕捉する材料であり、この場合、吸着剤は尿素吸着剤であり、したがって、尿素を捕捉する。尿素吸着剤は、本発明の背景技術の欄に記載されるように、当該分野で周知である。尿素の結合についての2つの主要な様式は、共有結合および吸着、特に物理吸着を介する。共有結合は、化学吸着と呼ばれることもある。本発明の膜において使用するための尿素吸着剤は、尿素を共有結合的に捕捉する尿素吸着剤であることが好ましい。他の好ましい実施形態では、少なくとも1つの尿素吸着剤が尿素を共有結合的に捕捉する複数のタイプの尿素吸着剤が使用される。好ましくは、捕捉は尿素の共有結合的捕捉を含み、尿素捕捉の少なくとも10%が尿素の共有結合的捕捉である。より好ましくは、結合は、尿素の少なくとも50%の共有結合捕捉、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%の共有結合捕捉を含む。他の好ましい実施形態において、実質的に全ての尿素捕捉は、共有結合尿素捕捉である。本発明で使用するための尿素吸着剤は、好ましくは、吸着剤1グラム当たり0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0,1、1.1、1.2、1.3、1.4、1または1.5mmol超の尿素の尿素捕捉能を有する。より好ましくは、吸着剤は、吸着剤1グラム当たり0.1mmol超の尿素の尿素捕捉能を有し;さらにより好ましくは、吸着剤は、吸着剤1グラム当たり0.5mmol超の尿素の尿素捕捉能を有し;より好ましくは、吸着剤は、吸着剤1グラム当たり1mmol超、さらにより好ましくは1.5mmol超、さらにより好ましくは2mmol超の尿素、例えば吸着剤1グラム当たり2.5mmol超または2.6mmol超の尿素の尿素捕捉能を有する。尿素捕捉の結合価は、分光技術を用いて評価することができる。
【0047】
尿素吸着剤の例は、ニンヒドリン型吸着剤(例えばEP121275A1; US4897200A; WO2019110557);フェニルグリオキサールアルデヒド(PGA)型吸着剤(例えばDE2305186A1; US3933753A; US4012317; WO2004078797A1; EP19210947);トリホルミルメチル(TFM)型吸着剤(TFMによる尿素の捕捉は、Jong et al., ACS Omega 2019, 4, 11928-11937に記載されている)などのアルデヒド型吸着剤;銅-キトサン型吸着剤(例えばWO2014007716)などの銅複合型吸着剤;例えば、パラ-チオ、パラ-ニトロ、またはパラ-アミノ部分に特徴を有するパラ-官能化ポリスチレン型吸着剤(例えばUS4178241A);遊離ヒドロキシルまたはアミノ部分を有するシリカ型吸着剤(例えばCheahet al (Materials Chemistry and Physics, 175 (2016), 151-157);エポキシド被覆吸着剤(例えばWO2011102807A1);固定化ウレアーゼ酵素を有する粒子(例えばWO2011102807A1)などの酵素型吸着剤;還元グラフェン型吸着剤(例えばWO2016126596)である。尿素を共有結合的に捕捉する尿素吸着剤の例は、ニンヒドリン型吸着剤である。フェニルグリオキサールアルデヒド(PGA)型吸着剤;トリホルミルメチル(TFM)型吸着剤;エポキシドで覆われた吸着剤;還元されたグラフェン型吸着剤である。
【0048】
本発明者らは、尿素吸着剤を使用して良好な結果を達成し、尿素吸着剤は、尿素を共有結合的に捕捉することができる部分でグラフトされたポリマー骨格を含む高分子組成物であり、尿素を共有結合的に捕捉することができる部分は、好ましくは、尿素を共有結合的に捕捉する2つ以上の隣接するカルボニル基またはその水和物を含む。好ましい実施形態では、このような吸着剤を含む膜が提供される。さらなる特徴および定義は、本明細書において後に提供される。2つ以上の隣接するカルボニル基を有する部分はまた、これらの基がしばしば周囲条件で平衡状態で自発的に水和および脱水するので、その水和物であり得る。C(=O)部分が隣接するC(=O)部分に直接結合している場合、隣接するカルボニル基は直接隣接している必要はないことを理解されたい。例えば、2つ以上のカルボニル部分が不飽和炭素または二重結合によってのみ分離されている場合など、2つ以上のカルボニル部分が同じ共鳴安定化異性体に関与し得る場合も考慮されるべきである。適切な部分の例を以下の表に示し、参照名および参照番号をそれらの下に示す。
【表A】
【0049】
上記の表Aにおいて、星印は、示された部分がポリマー骨格に結合している部位を示す。Xは、完全な原子価までHで置換された、C、N、OおよびSから選択される1~10個の骨格原子を含むリンカー部分を表す。Xの例は、-CH2-、-O-CH2CH2-、およびフェニルであり得る。Xは、好ましくは-CH2-である。これらの部分は、例えば、C1~6炭化水素、またはC1~6アルコキシ、またはニトロ、ニトリル、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスフェート部分などでさらに置換され得る。吸着剤の構造の変化は可能であり、膜におけるそのような吸着剤の使用は本発明に包含される。
【0050】
上記表Aからの例1、2、3および4は、ポリマー骨格に連結される場合、ニンヒドリン型吸着剤を構成する部分である。上記表Aからの例6、7および8は、ポリマー骨格に結合した場合にPGA型吸着剤を構成する部分である。上記表Aからの例10は、ポリマー主鎖に結合した場合にTFM型吸着剤を構成する部分である。例1および4は、周囲条件で平衡状態で共存する。例7および8も同様である。
【0051】
特に好ましい実施形態では、尿素吸着剤は、ニンヒドリン型吸着剤、フェニルグリオキサールアルデヒド型吸着剤、および/またはトリホルミルメチル型吸着剤から選択される。他の好ましい実施形態において、尿素吸着剤は、ニンヒドリン型吸着剤および/またはTFM型吸着剤から選択される。他の好ましい実施形態において、尿素吸着剤は、ニンヒドリン型吸着剤および/またはPGA型吸着剤から選択される。他の好ましい実施形態において、尿素吸着剤は、TFM型吸着剤および/またはPGA型吸着剤から選択される。特に好ましい実施形態では、吸着剤はニンヒドリン型吸着剤である。特に好ましい実施形態では、吸着剤はTFM型吸着剤である。特に好ましい実施形態では、吸着剤はPGA型吸着剤である。
【0052】
粒子状材料の粒径は、最大直径に従って最大250μmである。好ましくは、最大直径に従って最大200、より好ましくは最大180、より好ましくは最大160、より好ましくは最大150、より好ましくは最大130、より好ましくは最大110、より好ましくは最大100、さらにより好ましくは最大90、さらにより好ましくは最大80、さらにより好ましくは最大70μmである。好ましい実施形態では、粒子状材料の粒径が最大直径に従って最大150μm、好ましくは最大85μm、より好ましくは最大70μmである、本発明の膜が提供される。
【0053】
好ましい実施形態において、吸着剤粒子は、規則的な、特に球状の、または不規則な形状を有する。吸着剤粒子は、好ましくは多孔質であり、より好ましくは、Pavlenko et al., Nature Scientific Reports, 6 (2016) 34429に記載されているような表面積対重量比を有する。吸着剤粒子は、破片、繊維、粉末、またはそれらの組み合わせとして適用されてもよい。粉末としては、金属粉末、プラスチック粉末、順相シリカ、ヒュームドシリカおよび活性炭が挙げられるが、これらに限定されない。粒子は、造粒された吸着剤を粉砕または微粉砕する結果として、好ましくは実質的に円形または球形である。より小さい粒子は、より薄い膜が形成されることを可能にする。したがって、粒子は、最大65μmまたは63μm、より好ましくは最大60μm、さらにより好ましくは最大50μm、最も好ましくは最大40μmの最大直径を有することが好ましい。最大直径は、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも10μm、さらにより好ましくは少なくとも15μm、最も好ましくは少なくとも20μmである。例えば、20~40μmの範囲が非常に好ましい。
【0054】
好ましい実施形態では、前の2つの段落のサイズは、尿素吸着剤のサイズに関するものであり、粒子状材料に含まれる他の粒子のサイズに関するものではない。最も好ましくは、サイズは全ての粒状物質に関する。
【0055】
好ましい実施形態において、吸着剤粒子は、最大で100μm、好ましくは最大で63μmの最小寸法のサイズ、より好ましくは0.05μm~60μmの範囲の最小寸法のサイズを有する。吸着剤粒子は、とりわけ、球体または楕円体であってもよいことが理解される。好ましくは、吸着剤粒子は実質的に球状である。その場合、最小寸法は吸着剤粒子の直径である。吸着剤粒子が楕円体である場合、吸着剤粒子の最大寸法は、好ましくは最大150μm、より好ましくは最大100μm、さらにより好ましくは最大80μm、最も好ましくは最大63μmである。
【0056】
好ましくは、吸着剤粒子は、0.05μm~100μmの範囲、より好ましくは0.1μm~63μmの範囲、さらにより好ましくは0.5μm~60μmの範囲、さらにより好ましくは1μm~50μmの範囲、最も好ましくは5μm~45μmの範囲の最小寸法のサイズを有する。
【0057】
吸着剤粒子のサイズは、当技術分野で標準的な手順である粉砕、ミリング、切断、および/または篩い分けなどの技法を使用することによって決定および/または制御することができることが理解されよう。粒子のサイズは、例えば、実施例において示されるように、光散乱または電子顕微鏡法などの顕微鏡法を使用して決定することができる。好ましい実施形態において、粒子のサイズは、電子顕微鏡を使用して決定される。好ましい実施形態では、粒子の少なくとも80%が最大直径に従って列挙されたサイズより小さく、より好ましくは少なくとも90%が列挙されたサイズより小さく、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%が列挙されたサイズより小さい。
【0058】
好ましい実施形態では、粒子状材料は、膜および粒子状材料の総乾燥重量に基づいて、5重量%~80重量%、好ましくは25重量%~70重量%の範囲で膜中に存在する。
【0059】
好ましくは、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70重量%の特定の材料が存在する。より好ましくは少なくとも10、さらにより好ましくは少なくとも15、なおより好ましくは少なくとも20、最も好ましくは少なくとも約25重量%の特定の材料が存在する。好ましくは、最大75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、または10重量%の特定の材料が存在する。より好ましくは最大60重量%、さらにより好ましくは最大50重量%、さらにより好ましくは最大40重量%、最も好ましくは最大約30重量%の特定の材料が存在する。
【0060】
好ましい実施形態において、前の2つの段落の重量%は、尿素吸着剤の重量%に関するものであり、粒子状材料中に含まれる他の粒子の重量%に関するものではない。最も好ましくは、重量%は全ての粒状物質に関する。
【0061】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの吸着剤粒子は、少なくとも0.5m2/g、より好ましくは少なくとも0.8m2/g、さらにより好ましくは少なくとも1m2/g、さらにより好ましくは少なくとも1.5m2/g、最も好ましくは少なくとも5m2/gのBrunauer-Emmet-Teller(BET)表面積を有する。好ましくは、吸着剤粒子のBET表面積は、0.5m2/g~10000m2/gの範囲、より好ましくは10m2/g~2500m2/gの範囲である。
【0062】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの吸着剤粒子は、0.1~250nm、最も好ましくは25~150nmの範囲の平均細孔直径を有する。好ましい実施形態では、少なくとも1つの吸着剤粒子は、0.001~0.12mL/g、より好ましくは0.01~0.10mL/g、最も好ましくは0.02~0.09mL/gの範囲の平均細孔容積を有する。好ましい実施形態では、少なくとも1つの追加の吸着剤粒子が本発明の膜に埋め込まれる。追加の吸着剤粒子は、有利には、本明細書で上記に定義される吸着剤粒子と同じサイズ、形状、BET表面積、および/または細孔径を有し得る。好ましい実施形態において、膜に埋め込まれた吸着剤粒子の総量は、粒子を含む膜の乾燥重量に基づいて、5重量%~80重量%の範囲、好ましくは25重量%~70重量%の範囲、より好ましくは40重量%~60重量%の範囲である。
【0063】
吸着剤のさらなる詳細
本発明の文脈において、吸着剤は、溶解または部分的に溶解することができる固体、懸濁固体、コロイド懸濁液、凝集体、樹脂、またはポリマーである高分子組成物である。それは求核性老廃物溶質に結合することができ、尿素吸着剤は少なくとも尿素に結合し、その後、吸着剤を混合物から回収することができる。結合は、共有結合、または静電相互作用もしくは疎水性相互作用によるような非共有結合であり得る。
【0064】
PGA型吸着剤は、PGA型部分を含む吸着剤である。PGAは、フェニルグリオキサールアルデヒドまたは1-フェニルエタン-1,2-ジオンまたはフェニルオキサールアルデヒドである。PGA型部分は、芳香環または芳香環系に結合した、好ましくはフェニル部分または置換フェニル部分(例えば、ポリマー骨格で置換された)に結合した、好ましくは2個のみの炭素原子を有する短い脂肪族構造であることが好ましく、2個の隣接カルボニル基(またはその水和物)を特徴とする。グリオキサールアルデヒドおよびその水和物は互いに容易に変換し、PGAへの言及は一般にその水和物への言及も伴うことを理解されたい。一般に、グリオキサールアルデヒドの水和物は非乾燥環境中で形成され、グリオキサールアルデヒドは加熱によって脱水することができる。水性環境では、両方の種は一般に平衡状態で共存する。PGA型部分の好ましい例は、オルト-オキサールアルデヒドフェニル、メタ-オキサールアルデヒドフェニル、およびパラ-オキサールアルデヒドフェニル、ならびにそれらの水和物からなる群から選択され、ここで、フェニル環は、必要に応じてさらに置換され得る。いくつかの実施形態において、PGA型部分は、オルト-オキサールアルデヒドフェニルおよびメタ-オキサールアルデヒドフェニルからなる群から選択される。他の実施形態において、PGA型部分は、オルト-オキサールアルデヒドフェニルおよびパラ-オキサールアルデヒドフェニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PGA型部分は、メタ-オキサールアルデヒドフェニルおよびパラ-オキサールアルデヒドフェニルからなる群から選択される。最も好ましくは、PGA型部分はパラである。
【0065】
本発明での使用に適したPGA型吸着剤は、求核性老廃物溶質を結合するのに好適であり、高容量で結合する。これらの溶質は、吸着剤に含まれるPGA様部分と反応する。好ましくは、PGA型吸着剤は、吸着剤1グラム当たり1.60mmol超、好ましくは1.80mmol超、より好ましくは2.00mmol超の尿素の尿素捕捉能を有する。
【0066】
ニンヒドリン型吸着剤は、ニンヒドリン型部分を含む吸着剤である。ニンヒドリンは、2,2-ジヒドロキシ-1H-インデン-1,3(2H)-ジオンであり、2,2-ジヒドロキシインダン-1,3-ジオンおよび1,2,3-インダントリオン水和物としても知られている。ニンヒドリン型部分は、好ましくは、芳香環または芳香環系の2つの隣接する位置に縮合した、好ましくはフェニル部分に縮合した3つの隣接するカルボニル基を有する5員環構造の水和物である。ニンヒドリン型部分の好ましい例は、4-[2,2-ジヒドロキシ-1H-インデン-1,3(2H)]-ジオニル、5-[2,2-ジヒドロキシ-1H-インデン-1,3(2H)]-ジオニル、6-[2,2-ジヒドロキシ-1H-インデン-1,3(2H)]-ジオニル、および7-[2,2-ジヒドロキシ-1H-インデン-1,3(2H)]-ジオニルからなる群から選択される。より好ましいニンヒドリン型部分は、5-[2,2-ジヒドロキシ-1H-インデン-1,3(2H)]-ジオニルおよび6-[2,2-ジヒドロキシ-1H-インデン-1,3(2H)]-ジオニルからなる群から選択される。ニンヒドリンは対称軸を有するので、他の置換基が存在しない場合、5-[2,2-ジヒドロキシ-1H-インデン-1,3(2H)]-ジオニルと6-[2,2-ジヒドロキシ-1H-インデン-1,3(2H)]-ジオニルは同一である。
【0067】
本発明での使用に適したニンヒドリン型吸着剤は、求核性老廃物溶質を捕捉するのに適している。これらの溶質は、吸着剤に含まれるニンヒドリン様部分と反応する。好ましくは、ニンヒドリン型吸着剤は、吸着剤1グラム当たり1.4mmol超、好ましくは2.1mmol超の尿素の尿素捕捉能を有する。
【0068】
尿素は、その極性および水素結合形成に関与する性能のために、水中(400mg/ml)、ならびにメタノール、エタノールおよびグリセロールなどのプロトン性有機溶媒中で高度に可溶性である、小さな高度に極性の分子である。生化学における尿素の役割は必須であり、肥料用の窒素源として、およびポリマー前駆体として含まれる、工業的に重要な分子であり、尿素を流体溶液から除去することがしばしば重要である。
【0069】
本発明で使用するためのPGA型吸着剤は、好ましくは、吸着剤1グラム当たり1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.60、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.67、1.68、1.69、1.70、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1,3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9mmol超の尿素の尿素捕捉能を有する。より好ましくは、吸着剤は、吸着剤1グラム当たり1.60mmol超の尿素の尿素捕捉能を有し;さらにより好ましくは、吸着剤は、吸着剤1グラム当たり1.80mmol超の尿素の尿素捕捉能を有し;さらにより好ましくは、吸着剤は、2.00超、さらにより好ましくは2.20超、さらにより好ましくは、吸着剤1グラム当たり2.40、2.45、2.50、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、または4.9mmol超の尿素、例えば吸着剤1グラム当たり2.5または2.6mmol超の尿素の尿素捕捉能を有する。
【0070】
ニンヒドリン型吸着剤は、好ましくは、吸着剤1グラム当たり1.5mmol超の尿素の尿素捕捉能を有する。この態様のより好ましい実施形態において、吸着剤は、吸着剤1グラム当たり1.6mmol超の尿素の尿素捕捉能を有する。さらに好ましい実施形態では、ニンヒドリン型吸着剤は、吸着剤1グラム当たり1.63、1.64、1.65、1.67、1.68、1.69、1.70、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8または4.9mmol超の尿素の尿素捕捉能を有する。より好ましくは、吸着剤は、吸着剤1グラム当たり2.10mmol超の尿素の尿素捕捉能を有し;さらにより好ましくは、吸着剤は、吸着剤1グラム当たり2.20mmol超の尿素の尿素捕捉能を有し;最も好ましくは、吸着剤は、吸着剤1グラム当たり2.40mmol超の尿素、例えば吸着剤1グラム当たり2.5mmol超または2.6mmol超の尿素の尿素捕捉能を有する。
【0071】
これに関連して、吸着剤の尿素捕捉能は、好ましくは最大尿素捕捉能であり、これは好ましくは、溶液中(約30mMなど)で約70℃で約24時間、吸着剤を過剰の尿素と共にインキュベートした後に決定することができる性能である。結合尿素の量は、吸着剤に結合した尿素の量を直接分析することによって、または吸着剤への曝露前後の溶液中に存在する尿素の量の差を分析することによって、または結合尿素を解離させることによって吸着剤を再生し、続いて放出された尿素の量を決定することによって決定することができる。尿素濃度は、WO2004078797A1に記載されている元素分析などの当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。あるいは、ウレアーゼ酵素によって放出されるアンモニアの量は、尿素濃度を間接的に定量するために使用され得る。あるいは、約4%(w:v)の4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドおよび4%(v:v)硫酸を無水エタノール中に含有するPAB試薬溶液を、WO2016126596A1に記載されているように、予め調製した検量線を使用する尿素反応付加物のUV-VIS分析(422nm)に使用することができる。尿素濃度を決定するための様々なキットが市販されており、使用説明書を含む。吸着剤の尿素捕捉能は、本発明の膜にまだ埋め込まれていない粒子としての遊離吸着剤のものであることが好ましい。
【0072】
PGA型またはニンヒドリン型吸着剤において、好ましくは、重合モノマーの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%が、PGA型またはニンヒドリン型モノマーである。好ましいPGA型またはニンヒドリン型吸着剤は、重合モノマーの少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%がPGA型またはニンヒドリン型モノマーであるPGA型またはニンヒドリン型吸着剤である。さらに好ましいPGA型またはニンヒドリン型吸着剤において、重合モノマーの少なくとも50%および最大90%は、PGA型またはニンヒドリン型モノマーである。より好ましい実施形態において、重合モノマーの55%~90%は、PGA型モノマーまたはニンヒドリン型モノマーである。さらにより好ましい実施形態では、重合モノマーの70%~90%、PGA型モノマーまたはニンヒドリン型モノマーである。最も好ましい実施形態において、重合モノマーの70%~80%は、PGA型モノマーまたはニンヒドリン型モノマーである。PGA型またはニンヒドリン型モノマーの量は、固体NMRまたはIR分光法などの当技術分野で公知の従来の技法を使用して評価することができる。特定の実施形態では、重合モノマーの100%がPGA型またはニンヒドリン型モノマーである。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明のPGA型またはニンヒドリン型吸着剤は、重合、好ましくは懸濁重合によって得ることができる。好ましい実施形態では、PGA型またはニンヒドリン型吸着剤は、重合によって得ることができ、最大50%、好ましくは最大35%、より好ましくは最大25%、さらにより好ましくは最大20%、最も好ましくは最大10%の架橋モノマーが使用される。
【0074】
吸着剤を生成するための重合中に、PGA型もしくはニンヒドリン型モノマーまたはその前駆体ではないコモノマーも存在し得る。コモノマーは、重合を受け、得られたポリマー中に共有結合的に組み込まれるさらなるモノマーである。そのような得られたポリマーは、しばしばコポリマーと呼ばれるが、明確にするために、本明細書では、コポリマーも参照できるかどうかを文脈から明らかにする場合には、ポリマー自体のみを参照する。本発明の文脈において、2つのクラスのコモノマーが特に適切である:親水性コモノマーおよび架橋性コモノマー。
【0075】
好ましい実施形態では、吸着剤は、少なくとも1つのコモノマーを含み、コモノマーは、好ましくは、スチレン、イソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、アクリロニトリル、2-ヒドロキシルエチル 2-メチルプロパ-2-エノエート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピル 2-メチルプロパ-2-エノエート(enotate)、2-ヒドロキシルエチル プロパ-2-エノエート、2-ヒドロキシプロピル プロパ-2-エノエート(enotate)、N-(2-ヒドロキシルエチル)メタクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、N-(2-ヒドロキシルエチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(NMAA)、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)等のテレケリックN,N’-アルキレンビスアクリルアミド、ジビニルスルホン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルスルホンアミド、N-メチルビニルスルホンアミドなどのN-アルキルビニルスルホンアミド、およびN,N-ジメチルビニルスルホンアミドなどのN,N-ジアルキルビニルスルホンアミドからなる群から選択される。より好ましい実施形態において、コモノマーは、ジビニルベンゼン、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、ビニルスルホンアミド、N-アルキルビニルスルホンアミドN,N-ジアルキルビニルスルホンアミド、および2-ヒドロキシエチル 2-メチルプロパ-2-エノエート(HEMA)からなる群から選択される。さらにより好ましくは、コモノマーは、ジビニルベンゼンおよびビニルベンゼンスルホン酸からなる群から選択される。最も好ましくは、ジビニルベンゼンおよびビニルベンゼンスルホン酸の両方が存在する。本明細書の文脈において、ジビニルベンゼンは、1,2-ジエテニルベンゼン、1,3-ジエテニルベンゼン、もしくは1,4-ジエテニルベンゼン、またはそれらの混合物のいずれかであり得る。1,4-ジエテニルベンゼンまたは1,4-ジエテニルベンゼンを含む混合物は、より広い架橋を提供し、得られるポリマーの溶媒透過性を改善するので好ましい。本明細書の文脈において、ビニルベンゼンスルホン酸は、2-ビニルベンゼンスルホン酸、3-ビニルベンゼンスルホン酸もしくは4-ビニルベンゼンスルホン酸またはそれらの混合物のいずれかであり得る。4-ビニルベンゼンスルホン酸は、その望ましい重合動力学のために好ましい。
【0076】
架橋吸着剤については、少なくとも1種の架橋コモノマーが存在することが好ましい。架橋コモノマーは、一般に、重合反応に関与することができる2つ以上の反応性部分を有する。好ましくは、そのような架橋コモノマーは、ジビニルベンゼン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(NMAA)などのテレケリックN,N’-アルキレンビスアクリルアミド、ジビニルスルホン、およびブタジエンからなる群から選択され、好ましくは、ジビニルベンゼンが重合中に提供されて吸着剤を形成する。本明細書の文脈において、架橋の量は、吸着剤の形成中に重合混合物中に存在した架橋コモノマーの量として定義される。より多量の架橋は、より高密度の吸着剤をもたらす。より少ない量の架橋は、より多孔性またはよりマクロ多孔性の吸着剤をもたらす。好ましくは、最大で10%の架橋コモノマーが存在する。より好ましくは、最大で5%の架橋コモノマーが存在する。さらにより好ましくは、架橋吸着剤について、0.1%~5%の架橋コモノマーが存在し、より好ましくは0.2%~4%の架橋コモノマーが存在し、さらにより好ましくは0.4%~4%の架橋コモノマーが存在し、最も好ましくは0.8%~3%の架橋コモノマーが存在し、例えば、約1%~約2%、または約2%である。
【0077】
親水性コモノマーを含む吸着剤は、本明細書では親水性吸着剤と呼ばれる。親水性コモノマーは、水性溶媒が吸着剤をより容易に透過することを可能にし、その結果、求核性老廃物溶質は、同様により容易に吸着剤を透過することができる。これは、吸着剤の内部も求核性老廃物溶質の結合に関与することを可能にする。親水性コモノマーは、一般に、PGA型またはニンヒドリン型部分が結合し得る様式で求核性老廃物溶質を結合し得ないので、バランスがある。したがって、親水性コモノマー含有量の増加は、PGAまたはニンヒドリン型部分をより有効にするが、それらの数を減少させる。
【0078】
親水性吸着剤については、少なくとも1種の親水性コモノマーが存在することが好ましい。好ましくは、そのような親水性コモノマーは、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシルエチル 2-メチルプロパ-2-エノエート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピル 2-メチルプロパ-2-エノエート(enotate)、2-ヒドロキシルエチル プロパ-2-エノエート、2-ヒドロキシプロピル プロパ-2-エノエート(enotate)、N-(2-ヒドロキシルエチル)メタアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタアクリルアミド(HPMA)、N-(2-ヒドロキシルエチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、およびN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)、より好ましくはビニルベンゼンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシルエチル 2-メチルプロパ-2-エノエート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピル 2-メチルプロパ-2-エノエート(enotate)、2-ヒドロキシルエチル プロパ-2-エノエート、2-ヒドロキシプロピル プロパ-2-エノエート(enotate)、N-(2-ヒドロキシルエチル)メタアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタアクリルアミド(HPMA)、N-(2-ヒドロキシルエチル)アクリルアミド、およびN-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミドからなる群から選択され、より好ましくは、ビニルベンゼンスルホン酸が存在する。当業者は、メチルメタクリレートなどのいくつかのコモノマーが、それらのエステルの加水分解によって親水性になるように容易に後修飾され得ることを理解するであろう。好ましくは、最大60%の親水性コモノマーが存在する。より好ましくは、最大で50%の親水性コモノマーが存在する。さらにより好ましくは、親水性吸着剤に関して、0%~50%の親水性コモノマーが存在し、より好ましくは0%~40%の親水性コモノマーが存在し、さらにより好ましくは5%~40%の親水性コモノマーが存在し、さらにより好ましくは10%~35%の親水性コモノマーが存在し、さらにより好ましくは15%~35%の親水性コモノマーが存在し、最も好ましくは20%~30%の親水性コモノマー、例えば約25%が存在する。
【0079】
適切な吸着剤の概略例を以下に示す。角括弧は、吸着剤に含まれる異なるモノマータイプを分ける。モノマーは、好ましくはランダムまたは統計コポリマーとして存在する。異なるモノマータイプに適した量は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【表B】
【0080】
膜のさらなる特性
さらなる添加剤が、当該分野で公知であるように、ポリマーマトリックス中のような膜に存在し得る。例えば、好ましい実施形態では、本発明の膜であって、粒子状材料が、活性炭粒子、イオン交換樹脂粒子またはイオン交換シリカ粒子などのイオン交換粒子、未修飾シリカ粒子またはアルキル化シリカ粒子などのシリカ粒子、ゼオライト粒子、セラミック粒子、多孔質ポリマー粒子または非多孔質ポリマー粒子などのポリマー粒子、および/または分子インプリント粒子をさらに含む、および/または
膜は、親水性添加剤、好ましくはポリビニルピロリドン、キトサン、ポリエチレングリコール、デキストラン、グリセロール、ジエチレングリコール、オクタノール、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、塩化リチウム、および/または塩化カルシウムなどの添加剤をさらに含む、膜が提供される。
【0081】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の膜は、少なくとも1種の親水性添加剤をさらに含む。膜への親水性添加剤の添加は、膜形態を調整するのを助けることができ、膜の水輸送を改善し、膜の汚損を減少させ、膜の血液適合性を増加させ、またはそれらの組合せを行う。好ましくは、親水性添加剤は、粒子を含む膜の乾燥重量に基づいて、0.01重量%~50重量%の範囲、より好ましくは0.5~10重量%の範囲の量で存在する。より好ましくは、添加剤は、少なくとも1、好ましくは2、より好ましくは5、さらにより好ましくは10重量%で存在する。より好ましくは、添加剤は最大15重量%、より好ましくは8重量%、より好ましくは3重量%で存在する。
【0082】
親水性添加剤は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、デキストラン、グリセロール、ジエチレングリコール、オクタノール、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、塩化リチウム、および塩化カルシウムからなる群から選択されることが好ましい。最も好ましくは、親水性添加剤はポリビニルピロリドンである。ポリビニルピロリドンは、好ましくは2500~2500000g/molの範囲、より好ましくは2500~500000g/molの範囲の分子量を有する。
【0083】
膜は一般に2つの主表面を有する。シートの場合、これらは、シートを大まかに画定する平面の対向する表面である。これらの表面は両方とも外表面として見ることができる。中空繊維の場合、外面および内面は2つの主面である。内面は、膜自体とその内腔との間の境界を画定する。完全繊維は、孔を有さず、したがって、この意味で内面を有さないが、表面積を提供する多孔質構造を有してもよい。この表面積は、膜を内腔から分離しない。表面は、当技術分野で知られているように、平滑であっても粗くてもよく、ひだ状でなくてもひだ状であってもよい。ひだは、表面から突出するリブを指す。好ましくは、ひだは実質的にまたは完全に平行である。好ましくは、ひだは膜の最長寸法に沿っている。ひだは、好ましくは平均膜厚に対して少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは20%、なおより好ましくは30%、最も好ましくは少なくとも40%突出する。ひだは、好ましくは平均膜厚に対して最大150%、より好ましくは最大100%、さらにより好ましくは75%、なおより好ましくは60%、最も好ましくは最大50%突出する。好ましい実施形態では、少なくとも1つの表面が平滑である。好ましい実施形態では、一方の表面のみが平滑である。好ましい実施形態において、両方の表面が平滑である。好ましい実施形態では、少なくとも1つの表面はひだ状である。好ましい実施形態では、一方の表面のみがひだ状である。好ましい実施形態において、両方の表面はひだ状である。表面が外表面である場合、それは平滑であることが非常に好ましく、最も好ましくは平滑でひだ状ではない。表面が内面である場合、それはひだ状であることが非常に好ましく、最も好ましくはひだ状で平滑である。知られているように、ひだは表面積を増加させ、したがって、増加した表面積が所望される任意の表面に好ましいことがある。
【0084】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの追加のタイプの吸着剤粒子が本発明の膜に含まれる。追加の吸着剤粒子は、有利には、本明細書の他の箇所で定義される尿素吸着剤粒子と同じサイズ、形状、BET表面積、および/または細孔径を有し得る。好ましくは、少なくとも1つの追加の吸着剤は、活性炭素粒子、イオン交換樹脂、未修飾シリカ粒子、C2-誘導体化シリカ粒子、C4-誘導体化シリカ粒子、C6-誘導体化シリカ粒子、C8-誘導体化シリカ粒子、C16-誘導体化シリカ粒子、イオン交換シリカ粒子、ゼオライト、リン酸ジルコニウムまたは酸化ジルコニウムまたはオキシ水酸化ジルコニウムまたは炭酸ジルコニウムなどのジルコニア、セラミック粒子、多孔質ポリマー粒子、非多孔質ポリマー粒子、および分子インプリント粒子からなる群から選択される。本明細書において、イオン交換樹脂は、弱もしくは強カチオン交換樹脂または弱もしくは強アニオン交換樹脂であり得ることが理解される。
【0085】
好ましい実施形態では、追加の吸着剤粒子は活性炭粒子である。活性炭粒子は混合物から老廃物溶質(特に尿素以外の化合物)を除去することができるので、これは特に有利である。
【0086】
活性炭粒子は、好ましくは0.1~20nm、最も好ましくは1~5nmの範囲の平均孔径を有する。別の態様において、活性炭粒子は、好ましくは0.1~100μmの範囲、好ましくは0.1~30μmの範囲のサイズを有し、最も好ましくは活性炭粒子は25μmより小さい。いくつかの実施形態において、活性炭粒子は、1グラム当たり100~10000平方メートル(m2/g)、最も好ましくは2000m2/gのBrunauer-Emmet-Teller(BET)表面積を有する。活性炭粒子は、ヨウ素、銀、アルミニウム、マンガン、亜鉛、鉄、リチウムおよびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの無機含浸物で任意に含浸される。好ましくは、アルミニウム、マンガン、亜鉛、鉄、リチウムおよびカルシウムは、それらのカチオン形態である。好ましい実施形態において、このような含浸は存在しない。活性炭粒子は、好ましくはAC Norit A Supra粒子およびCMK3粒子からなる群から選択される。
【0087】
膜の製造
本発明の膜は、当技術分野で公知の技術を用いて調製することができる。粒子含有膜は、当該技術分野において、例えば、WO2006019293A1またはGeremia et al. (DOI:10.1016/j.actbio.2019.04.009)から公知である。本発明の膜を調製するための製造方法は、最大直径に従って最大250μmのサイズを有する尿素吸着剤粒子を使用するという点で異なる。したがって、一態様において、本発明は、本発明の膜を調製するための方法であって
i. 最大直径に従って最大250μmのサイズを有する尿素吸着剤粒子を提供する工程;
ii. 尿素吸着剤粒子をポリマー材料用の溶媒中でポリマー材料と混合して混合物を得る工程;
iii. 混合物を押出またはキャスティングして膜を形成する工程;および
iv. 好ましくは転相によって、膜を固化する工程
を含む方法が提供される。
このような方法は、本明細書において本発明の製造方法と呼ばれる。
【0088】
工程i.において、尿素吸着剤粒子が提供される。これらの粒子は、本明細書において先に定義されている。好ましい実施形態では、粒子は、最大直径に従って最大200μm、好ましくは最大150μm、より好ましくは最大100μm、さらにより好ましくは最大70μm、さらにより好ましくは最大50μmのサイズを有する。粒子は、本発明の方法の一部として製造することができ、または商業的供給源から入手することができる。好ましい実施形態において、粒子は、工程iの一部としてサイズ調整される。このサイジングは、粒子を所望のサイズ範囲にすることである。サイジングは、ミリング、グラインディング、クラッシング、またはカッティング、あるいは当該分野で公知の任意の他の材料加工方法によって実施され得る。サイジングはまた、ふるい分けを含むことができ、これは、上限サイズカットオフを確実にするための便利な方法である。好ましい尿素吸着剤粒子は、液体中に懸濁された場合、それらの最長軸に従って最大で20%膨潤する。より好ましくは、粒子は、最大15%、さらにより好ましくは最大10%、なおより好ましくは最大5%、最も好ましくは最大2%膨潤する。粒子は、液体中に懸濁された場合に実質的に膨潤しないことが非常に好ましく、これは、連続的な湿潤および脱湿潤の後、または貯蔵の間に得られる膜の機械的安定性を改善する。
【0089】
工程iiにおいて、尿素吸着剤粒子は、ポリマー材料用の溶媒中でポリマー材料と混合される。このようにして得られた懸濁液は、後に膜を構成する溶解したポリマーを含み、その中に吸着剤粒子が懸濁している。混合は、以下に記載されるかまたは実施例に示されるような任意の公知の方法を使用して実施され得る。好ましくは、混合は、少なくとも1、2、3、4、5、6、12、18、24、36、48、72時間以上行われる。好ましくは、混合は最大で120時間、より好ましくは最大で96または72時間、例えば72時間行われる。好ましくは、尿素吸着剤粒子は、凝集体を形成することなく、溶媒中に個々に懸濁される。本発明の膜のさらなる成分、例えばさらなる粒子または例えば膜のための添加剤を、ここで都合よく添加することができる。これらのさらなる成分は、工程iiで得られた混合物の一部である。
【0090】
工程iiの混合物は、好ましくは少なくとも1.5Pa・s、より好ましくは少なくとも10Pa・s、最も好ましくは少なくとも約12.5Pa・s、例えば約15Pa・sの粘度を有する。工程iiの混合物は、好ましくは最大150Pa・s、より好ましくは最大100Pa・s、さらにより好ましくは最大50Pa・s、最も好ましくは最大25Pa・s、例えば最大20Pa・sの粘度を有する。粘度は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定することができる。好ましくは、Stormer粘度計が使用される。
【0091】
工程iiiにおいて、溶解したポリマーと懸濁した尿素吸着剤との混合物は、共押出などで押し出されるか、またはキャストされて膜を形成する。この工程に適した詳細は以下に記載され、実施例に示される。
【0092】
任意である工程ivにおいて、形成された膜は固化される。これは、以下に記載されるような、または実施例において示されるような任意の公知の方法を使用して行われ得る。本発明の製造方法は、好ましくは工程ivを含む。
【0093】
本方法のさらなる詳細は、好ましくは以下の通りである:本発明の方法は、好ましくは、少なくとも2つの同心円状に配置された出口開口部を有する紡糸ヘッドを使用する共押出工程を含み、ここで、粒子状材料を含有する流れ(A)およびポリマー材料のための溶媒中のポリマー材料の流れ(B)は、2つの隣接する出口開口部を通して別々にかつ同時に供給され、その後、2つの流れは転相に供され、好ましくは、2つの流れは2工程転相プロセスに供されて、多孔質層を有する繊維として本発明の膜が得られる。好ましくは、流れ(A)は、0~50重量%のポリマーマトリックスおよび1~100重量%の粒子状材料を含む混合物である。好ましくは、流れ(B)は3~50重量%のポリマー材料を含む。好ましくは、2段階転相法は、液体、蒸気、またはガス、好ましくは液体の流れ(C)が第3の最も外側の出口開口部を通して供給され、外側多孔質層の孔径の制御を可能にする三層紡糸口金を使用することを含む。流れ(A)は、流れ(B)の内側の紡糸ヘッドを通して供給されることがさらに好ましい。さらに、好ましくは、ポリマー材料用の溶媒中のポリマー材料の流れ(D)が共押出され、ここで流れ(A)が供給される出口開口部は、流れ(B)および(D)が供給される出口開口部の間に挟まれ、その後、3つの流れが転相に供されて、3つの多孔質層を有する繊維として本発明の膜が得られる。転相工程の後に、好ましくは、熱処理、化学処理、延伸またはさらなる官能化工程を行って、粒子を活性化し、繊維の多孔質構造を固定し、または多孔質繊維の細孔のサイズを減少させる。
【0094】
同時押出は、複数の開口部を有する紡糸ヘッドを使用した別個の材料の同時押出であると理解される。転相は相分離であると理解され、これは、均質溶液の温度の変化(熱相分離)、不揮発性非溶媒を含有するポリマー溶液からの溶媒の蒸発(蒸発誘導相分離)、非溶媒蒸気の浸透(蒸気誘導相分離)、または非溶媒浴中への均質ポリマー溶液の浸漬(浸漬誘導相分離)によって誘導することができる。本発明の製造方法においては、後者が好ましい。WO-A-2004/003268の11頁2~20行目に記載されているような2段階転相法を使用することが好ましい。要約すると、凝固浴に入る前に、ここでは繊維の形状である新生膜の外部は、選択された媒体と接触し、層の外部の組成の変化をもたらす。これは、相分離プロセスの第1工程と考えられる。膜が凝固浴に入ると、新生繊維はさらに相分離し、構造が停止する。これは相分離の第2段階と考えられる。WO-A-93/12868に記載されているような三層紡糸口金を使用して、第1工程において、液体、蒸気、ガスまたは蒸気/ガス混合物の流れを第3の最も外側の出口開口部を通して供給して、外側多孔質層の孔径の制御を可能にすることができる。しかしながら、内壁の孔径が制御され中空繊維としての膜の調製方法を提供することは、本発明の範囲内であると考えられる。その場合、液体、蒸気またはガスの流れは、代わりに紡糸ヘッドの最も内側の出口開口部を通して供給される。
【0095】
単純なチューブインオリフィス紡糸口金もまた、本発明の製造方法において使用することができるが、第1の凝固工程において外層の多孔度を制御するための出口開口部が残されていないので、繊維表面の多孔度を変更する際の柔軟性が低い。外表面の多孔性を制御するために三層紡糸口金を使用する代わりに、発生期の繊維は、蒸気、ガスまたは蒸気/ガス混合物の連続流によって雰囲気が制御される「煙突」または密閉箱を通して紡糸することができる。高温の凝固浴を使用する場合、凝固浴から蒸発する蒸気を使用して、外層の細孔構造に影響を与えることもできる。
【0096】
共押出工程において、粒子状材料を含有する流れ(A)およびポリマー材料のための溶媒中のポリマー材料の流れ(B)は、2つの隣接する紡糸ヘッド出口開口部を通して別々にかつ同時に供給される。流れ(A)および流れ(B)は、最終的に、それぞれ繊維の第1および第2の多孔質層をもたらす。流れ(A)は、流れ(A)の総重量に基づいて0~50重量%のポリマーマトリックスを含む混合物であることが好ましい。粒子の適切な量は、使用されるポリマーのタイプおよびポリマーの濃度に依存する。一般に、粒子の量は、1~95重量%の間で変化し得る。したがって、流れ(A)は、0重量%~50重量%のポリマー材料および1重量%~100重量%の粒子状材料を含み、残りは溶媒であり、重量は流れ(A)の総重量に基づく。より好ましくは、流れ(A)は、0.5重量%~50重量%のポリマー材料および1重量%~95重量%の粒子状材料を含む。したがって、単一の調製工程で第2の多孔質シェル層内に捕捉された100重量%の官能化粒子状物質を含む繊維を調製し、好ましくは0.5mm未満の内径を有する薄膜寸法を選択することが可能である。
【0097】
より好ましくは、流れ(A)は、3~50重量%、最も好ましくは5~20重量%のポリマー材料を含む。好ましくは、マトリックスポリマー濃度は12重量%未満、より好ましくは10重量%未満である。流れ(A)中の粒子の量は、その乾燥重量に基づいて、より好ましくは流れ(A)の1~97重量%、典型的には30重量%超、さらにより好ましくは40重量%超、最も好ましくは50~90重量%である。好ましい濃度は、使用される特定のポリマーおよび粒子状物質、ならびに得られる繊維の第1の多孔質層中の粒子の所望の量に依存する。
【0098】
流れ(B)は、3~50重量%、好ましくは5~25重量%のポリマー材料を含む。一実施形態では、流れ(B)に、流れ(A)に従って1~95重量%の官能化粒子状材料をさらに供給して、ポリマーマトリックス中に捕捉された粒子状材料の2つの隣接する層を有する多孔質繊維を得、ここで、両方の層の粒子状材料および/またはポリマーマトリックスは異なっていてもよい。流れ(A)および流れ(B)の両方について、ポリマー材料が適切な溶媒に溶解されるべきであることが適用される。したがって、溶媒の種類はポリマーの選択に依存する。転相プロセスを考慮して、好ましくは、水と十分に混和性である溶媒が使用される。1種以上の溶媒は、非溶媒と組み合わせても一緒に使用することができる。好適な溶媒としては、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド(FA)、テトラヒドロフラン(THF)、ε-カプロラクタム、ブチロラクトン、特に4-ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノンおよびトリエチルホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい溶媒はNMP、DMAc、DMF、DMSO、THF、ε-カプロラクタムおよび4-ブチロラクトンである。流れ(A)および流れ(B)中のポリマーの選択は互いに独立して行われるので、溶媒は異なっていてもよい。いずれかの層の形態学的構造に影響を与えるために、溶媒および非溶媒の混合物ならびに任意の性質の添加剤成分を凝固浴中に適用することができる。添加剤を流れ(A)および/または流れ(B)に適用して、例えば粘度に影響を及ぼすことができ、細孔形成剤として、細孔連結性増強剤として、マクロボイド形成を低減または防止することができ、および/または親水性を導入することができる。可能な添加剤としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、デキストラン、グリセロール、ジエチレングリコール、オクタノールなどの(高級)アルコール、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸などのカルボン酸または有機酸、LiClおよびCaCl2などの塩が挙げられるが、これらに限定されない。他の添加剤は、本明細書中で先に記載されている。所望の特性を有する繊維を製造するために、適切な(混合物)の(非)溶媒、添加剤およびプロセス条件を評価および適用することは、当業者の能力の範囲内である。添加剤および/または非溶媒は、溶媒を部分的に置き換えることができ、0.01~50重量%の間で変動し得る。
【0099】
内部に捕捉された粒子状材料を有する第1の多孔質層が内層を形成する繊維の形状の膜が得られる場合、流れ(A)は流れ(B)の内側で紡糸ヘッドを通して供給され、第2の多孔質層が繊維の外層である実施形態についてはその逆である。中空コアおよび/または第3の層またはさらに多くの層が必要とされる実施形態については、必要とされる数の出口開口部を備えるように紡糸ヘッドを適合させ、流れがこれらの開口部に送られる必要がある順序を選択することが当業者には明らかであろう。中空コアを達成するために、例えば、最も内側の開口部である針を通して孔液体の流れ(C)を適用することが当該技術分野において知られている。繊維が第3のポリマー層を保留する必要がある場合、この層は流れ(D)から形成され、流れ(D)については流れ(B)と同じ条件および制約が適用される。これらの場合、共押出工程において、ポリマー材料用の溶媒中のポリマー材料の流れ(D)は、流れ(A)および流れ(B)と共押出され、流れ(A)が供給される出口開口部は、流れ(B)および(D)が供給される出口開口部の間に挟まれ、その後、3つの流れは転相を受ける。
【0100】
上記のように、転相工程は、好ましくは凝固媒体を含む。水が好ましい凝固媒体である。可能な凝固媒体および非溶媒の他の例は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトンである。繊維において所望の多孔度を得るために、温度、生産速度、湿度、空隙長、延伸および巻き取り速度のような物理的プロセスパラメーターの変動と組み合わせた非溶媒および溶媒の混合物が使用される。
【0101】
膜に所望の多孔度を得るために、温度、製造速度、湿度、空隙長、延伸および巻き取り速度のような物理的プロセスパラメーターの変化と組み合わせた非溶媒および溶媒の混合物が使用される。膜の多孔度は、繊維については、最終的に繊維のシェル層を形成する流れに隣接する出口開口部を通る液体、蒸気またはガスの流れの流れによって主に制御される。この流れの組成および凝固浴に入る前の接触時間の選択は、シェル層が緻密になるか多孔質になるかを決定する。最終的にシェル層を形成する流れが適度な湿度の空気と接触すると、外層の表面は緻密になる。捕捉された吸着剤粒子の最適な接近可能性を得るために、好適な媒体は、好ましくは、紡糸中に最終的にシェル層を形成する流れに沿って流される。好ましくは、媒体は、ポリマーのための溶媒および非溶媒の液体混合物である。好ましくは、非溶媒は水である。
【0102】
あるいは、ポリマーに対する非溶媒を含むガス流を適用することが可能である。しかしながら、蒸気が使用される場合、最終的に繊維のシェル層を形成する流れが不揮発性溶媒を含有することが提供され、その結果、蒸気経路への溶媒の排出は、非溶媒の蒸気の内側への拡散と比較して小さい。2つの非溶媒または溶媒および非溶媒の蒸気の混合物もまた、繊維形成に影響を与えるために使用され得る。ガスまたは蒸気流の場合、好ましくは、非溶媒は水蒸気である。当業者は、第1の転相効果を生じさせるためのガス流中の水蒸気の所望の量を容易に決定することができる。第1の多孔質層の多孔度は、WO-A-2004/003268の10頁4~26行により詳細に説明されているように、ポリマー材料の濃度、添加剤の量および種類、ならびに粒子状材料のサイズ、含量および官能性を変えることによって制御することができる。
【0103】
したがって、本方法は、本明細書で定義される吸着剤粒子およびポリマーを溶媒と接触させて混合物を形成し、前記混合物を押出またはキャスティングし、続いて固化させて膜を形成するステップを効果的に含む。当業者は、膜、特に混合マトリックス膜を調製する方法を知っている。膜調製技術の概要は、例えば、Ladewig and Al-Shaeli(Fundamentals of Membrane Bioreactors-Chapter2:Fundamentals of Membrane Processes,Springer 2017,pages 13-37)によって与えられる。膜調製方法の非限定的な例は、転相である。転相は、溶媒蒸発による沈殿、制御された蒸発による沈殿、熱沈殿、気相からの沈殿、および浸漬沈殿などの様々な技術でさらに特定することができる。後者は非溶媒誘導転相としても知られている。好ましい実施形態では、固化は非溶媒誘導転相であり、好ましくは非溶媒は水である。その場合、押出またはキャスト後、混合物は、例えば水浴を使用することによって、実質的に直ちに水と接触させられることが理解される。好ましくは、混合物の押出は紡糸口金を使用して行われる。本発明の膜を製造するために適用することができる特に好適な方法は、EP1518011に記載されている。特に、その[0019]~[0051]に記載されている条件が有利である。
【0104】
好ましくは、本発明の膜を調製するために使用されるポリマーは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエチレン-co-ビニルアルコール、ポリエチレン-co-酢酸ビニル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリアクリル酸からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーである。最も好ましくは、この方法は、本明細書で定義される吸着剤粒子をポリエーテルスルホンおよびポリビニルピロリドンと接触させることを含む。
【0105】
好ましい実施形態では、膜が調製される混合物中のポリマー濃度は、ポリマーおよび溶媒の総重量(すなわち、吸着剤粒子の重量を除いて)と比較して、3重量%~50重量%の範囲である、好ましくは5重量%~35重量%の範囲、最も好ましくは10重量%~20重量%の範囲である。最も好ましくは、混合物は、ポリマーおよび溶媒の総重量と比較して、5重量%~15重量%の範囲のポリエーテルスルホンおよび1重量%~5重量%の範囲のポリビニルピロリドンを含む。
【0106】
好ましい実施形態では、溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド(FA)、テトラヒドロフラン(THF)、ε-カプロラクタム、ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノンおよびリン酸トリエチルからなる群から選択される。NMPが最も好ましい溶媒である。混合物は、本明細書で定義される吸着剤粒子、ポリマー、および溶媒から本質的になることも好ましい。
【0107】
膜を含む装置
本発明の膜は、腹膜透析または血液透析などの腎代替療法において有利に使用することができる。そのような使用中、膜は、一般に、(血液)透析装置に交換可能に挿入することができるカートリッジ内に存在する。したがって、本発明は、本発明の膜を含む、透析装置で使用するためのカートリッジを提供する。そのような透析装置は、血液透析装置または腹膜透析における腹膜透析液の再生のための装置であり得る。したがって、本発明は、本発明の膜または本発明のカートリッジを含む透析装置を提供する。そのような透析装置は、血液透析装置または腹膜透析における腹膜透析液の再生のための装置であり得る。
【0108】
本発明の膜の他に、このようなカートリッジおよび透析装置は、当該分野で公知である。特定の実施形態では、カートリッジは使い捨てカートリッジである。特定の実施形態では、カートリッジは再生可能なカートリッジである(例えば、吸着剤が、WO2019110557に記載されるような酸性条件下で再生することができるニンヒドリン型吸着剤である場合)。カートリッジはカセットと呼ぶこともできる。カートリッジは、様々な異なるタイプの構成要素と共に使用され、様々な方法で配置されるように適合可能であることが好ましい。カートリッジは、さらなる吸着剤または膜を含んでもよい。求核性老廃物溶質を除去することによって、カートリッジは、透析中に使用される透析液および/または濾液を少なくとも部分的に再生する。カートリッジは、流体入口および流体出口を有する本体を含むことが好ましい。カートリッジの内部は、入口から内部に入る流体が膜を通り、続いて出口を通って流れるように構成され配置されることが好ましい。
【0109】
透析装置に使用される膜は、好ましくは半透過性である。それはシート状であり、壁または壁の一部として作用することによって2つの容積を分離することができる。それは、2つの容積を接続する繊維束の形態であり得る。非常に好適な繊維束は、WO2006019293に記載されており、同軸に配置された複数の多孔質層を有する中空または中実繊維の束が記載されている。
【0110】
透析装置は閉鎖された無菌システムである。それは、1つまたは2つの流体回路を備える。それは、通常、2つの回路、すなわち、血液または腹膜透析液等の被検体の流体がそれを通して流動するように配置される流体回路である、いわゆる患者ループと、透析液および/または濾液等の透析流体が上述のようにカートリッジを通して循環される、いわゆる再生ループとを備える。この2つの回路は、(半透過性)膜によって互いに分離され、この膜を通って、老廃物溶質が被験体の流体から透析流体中に拡散または通過し得る。透析装置の周囲の環境からの空気、水分、病原体、および流体は、流体回路に入ることができない。透析システムは、流体(例えば、限外濾過液)および空気が、制御された状況下でこれらの流体回路を出るかまたは入ることのみを可能にする。
【0111】
本発明はまた、本発明の膜を含むカートリッジに関する。好ましくは、カートリッジは透析装置での使用に適している。カートリッジは、膜が配置されるハウジングを含むことが好ましい。好ましくは、カートリッジは、通常の使用中に、膜が、アミンまたはアミド含有化合物をそれぞれ除去するための処置または非治療的方法に関して本明細書で定義される関連する流体または混合物と接触するように構成される。典型的には、カートリッジは、それぞれ流体の流入または流出のための少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含む。
【0112】
本発明はまた、本発明の膜または本明細書に記載されるカートリッジを含む透析装置に関する。好ましくは、前記透析装置は、携帯型または装着型人工腎臓装置である。好ましい実施形態では、透析装置は、それぞれ流体の流入または流出のための少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を備える。また、透析装置は、本発明の膜の温度を高温、好ましくは20℃~90℃の範囲、より好ましくは35℃~80℃の範囲、最も好ましくは36℃~75℃の範囲に維持することを可能にする手段を含むことが好ましい。
【0113】
医療用途
第4の態様において、本発明は、本発明の膜の医学的使用を提供する。したがって、この態様は、医薬として使用するための、好ましくは尿素の蓄積または尿素の不適切な除去に関連する疾患または状態の治療において使用するための、本発明の膜を提供する。そのような膜は、本明細書では本発明に従って使用するための製品と呼ばれる。この同じ使用において、それぞれが本発明の(使用のための)膜を含む、上記のカートリッジおよび上記の透析装置が提供される。
【0114】
本発明の使用のための製品において、製品は、記載されるような吸着剤を含み、これは、医学的効果を達成する物質または組成物であり、化学物質または化学物質の組成物である。ここで、処置は、本明細書中に記載されるような状態に罹患している患者の血漿からの尿素の除去を包含する。この効果は、化学物質であり吸着剤である尿素のための特定の結合剤によって達成される。
【0115】
この態様の特定の実施形態において、本発明は、アンモニアの蓄積またはアンモニアの不適切な除去に関連する疾患または状態の処置において使用するための医薬として使用するための、本発明の膜を提供する。この態様のさらなる特定の実施形態において、本発明は、医薬として使用するための本発明の膜であって、尿素を捕捉するための膜を提供する。この態様のさらなる特定の実施形態において、本発明は、薬剤として使用するための本発明の膜であって、アンモニアを捕捉するための膜を提供する。
【0116】
疾患または状態の処置は、疾患もしくは状態またはその症状の改善、抑制、予防、遅延、治癒または予防であり得、好ましくは、疾患または状態の症状の抑制であるものとする。尿素は蓄積する可能性があり、または腎不全の場合には十分に除去されない可能性がある。尿素の蓄積または尿素の不適切な除去に関連する疾患または状態の例は、末期腎疾患(ESKD);重度急性腎不全;例えば、胃腸出血による尿素の肝臓産生の増加;例えば、大手術または筋肉破壊を伴う極度の飢餓などの外傷によるタンパク質異化の増加;例えば、うっ血性心不全、ショック、重篤な下痢などの腎臓灌流低下の任意の原因による、尿素の腎臓再吸収の増加;利尿作用のための尿素注入による、テトラサイクリンまたはコルチコステロイドでの処置などの尿素産生の増加をもたらす薬物療法による医原性状態;慢性腎不全;および尿流出閉塞である。
【0117】
本発明の使用のための製品は、処置方法における使用に適切である。そのような処置方法は、被検体、好ましくはそれを必要とする被検体からの流体を本発明の膜と接触させるステップ、好ましくは本発明の使用のための有効量の製品と接触させるステップを含む方法であり得る。
【0118】
透析治療に関して、本発明は、腎不全を処置するための種々の異なる透析治療において使用され得る。透析治療は、この用語または同様の用語が本明細書を通して使用される場合、疾患または状態に罹患している被験体から老廃物、毒素および過剰な水を除去するための任意のおよび全ての形態の治療を含み、そして包含することを意味する。血液透析、血液濾過および血液透析濾過などの血液治療は、間欠的治療と、持続的腎代替療法(CRRT)に使用される持続的治療との両方を含む。連続療法としては、例えば、緩徐連続限外濾過(SCUF)、連続静静脈血液濾過(CVVH)、連続静静脈血液透析(CVVHD)、連続静静脈血液透析濾過(CVVHDF)、連続動静脈血液濾過(CAVH)、連続動静脈血液透析(CAVHD)、連続動静脈血液透析濾過(CAVHDF)、連続限外濾過周期間欠血液透析などが挙げられる。本発明はまた、例えば、連続携行式腹膜透析、自動腹膜透析、連続フロー腹膜透析などを含む腹膜透析の間に使用され得る。さらに、本発明は、ある実施形態において、急性または慢性の腎不全または疾患を有する被験体に対して透析治療を提供する方法において利用され得るが、本発明はまた、例えば、緊急治療室の設定において、急性透析の必要性のために使用され得ることが理解されるべきである。しかし、本発明の組成物は、透析に加えて、種々の異なる適用(生理学的および非生理学的)で効果的に利用され得ることが理解されるべきである。
【0119】
特に、本発明の膜は、被検体における尿毒症および高窒素血症からなる群から選択される疾患の治療および/または予防において使用するためのものである。好ましい態様において、疾患は尿毒症である。尿毒症は、血液中に望ましくない高レベルの尿素を有する状態である。状態は、慢性または急性のいずれかであり得る。処置および/または予防の間、本発明の膜は、1つ以上の関連する流体(例えば、被験体の血液、または被験体を血液透析、血液濾過、または血液透析濾過もしくは腹膜透析のいずれか1つに供することから生じる使用済み流体)と接触され得ることが理解される。血液透析、血液濾過、ならびに血液透析濾過および腹膜透析は、患者の血液から溶質を除去するために一般的に使用される方法である。血液透析のセットアップでは、血液は透析膜の一方の側に流され、透析液は膜の他方の側に流される。血液透析において、溶質は、主に濃度の差(すなわち拡散)に起因して、膜を通って透析液へと流れる。血液濾過では、透析液は使用されない。その代わりに、正の静水圧が水および溶質を血液区画から濾液区画へと濾過膜を横切って移動させ、濾液区画から排出される。溶質および水は膜を横切って移動し、静水圧の差によって生じる対流によって血液から除去される。置換流体は、(血液が透析膜と接触する前および/または後に)血液に添加されて、膜上を輸送される水を補充する。血液透析濾過は、血液透析と血液濾過との組み合わせである。したがって、血液は透析膜の一方の側を流れ、透析液は膜の他方の側を流れ、置換流体が血液に添加され(血液が透析膜と接触する前および/または後)、血液から透析液への溶質の輸送は、拡散および対流の両方に基づく。典型的な血液透析、血液濾過、または血液透析濾過治療において、血液は、透析膜と接触した後に患者に戻される。本発明の膜と接触した使用済み流体は、膜がアミン含有化合物、特に尿素を前記使用済み流体から除去するので、例えば透析液または置換流体として(再)使用することができる。これは、とりわけ、より少量の流体が治療を行うために必要とされるため、特に、携帯型および装着型人工腎臓装置等の小型透析システムにおいて有利である。使用済み流体は、処置中に直接再循環されてもよく、あるいは後の使用のために貯蔵されてもよい。血液透析の場合、この使用済み流体は使用済み透析液である。血液濾過の場合、この使用済み流体は、対流に起因して、被験体の血液と接触している膜上に押し出された溶質を含む水である。血液透析濾過の場合、使用済み流体は、使用済み透析液のうちの1つ以上であり、溶質を含有する水は、対流に起因して、被験体の血液と接触している膜上に押し出される。好ましい実施形態では、膜は、被検体における尿毒症および高窒素血症からなる群から選択される疾患の治療および/または予防、好ましくは治療に使用するためのものであり、被検体は、血液透析、血液濾過、または血液透析濾過もしくは腹膜透析を受け、膜は、本明細書で定義される使用済み流体と接触しており、好ましくは、膜は、被検体の血液と直接接触していない。好ましい実施形態では、処置中、膜は高温、好ましくは20℃~90℃の範囲、より好ましくは35℃~80℃の範囲、最も好ましくは36℃~75℃の範囲に維持される。好ましい実施形態において、被験体はヒトである。被験体は、任意の性別であり得、同様に、処置は、特定の年齢または任意の他のいかなる特徴の被験体にも限定されない。好ましくは、治療は、血液透析、血液濾過、および血液透析濾過および腹膜透析からなる群から選択される。いずれの処置においても、処置時間は1~36時間の範囲が好ましく、1~24時間の範囲がより好ましい。最も好ましくは、治療が血液透析である場合、治療期間は4~8時間である。本開示はまた、本明細書で定義される被検体における尿毒症および高窒素血症からなる群から選択される疾患、好ましくは尿毒症を治療および/または予防する方法であって、前記被検体の血液を接触させる工程、および/または被検体を血液透析、血液濾過、血液透析濾過または腹膜透析のいずれか1つに供することから生じる使用済み流体を、本発明の膜と接触させる工程を含む方法に関する。処置および/または予防は、好ましくは本明細書中上記に開示されるとおりである。
【0120】
使用方法
本発明の膜は、求核性溶質、好ましくは求核性老廃物溶質を捕捉するのに驚くほど有効である。第5の態様において、本発明は、流体から求核性老廃物溶質を除去する方法であって、
i) 求核性老廃物溶質を含む流体を提供する工程;
iia) 前記流体を、本発明の膜、または本発明のカートリッジと接触させる工程、または代替的に
iib) 前記流体を、膜を通して透析流体と接触させる工程であって、前記透析流体が、本発明の膜または本発明のカートリッジと接触している工程;
iii) 任意選択的に、流体を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0121】
以下、このような方法を本発明の捕捉方法と称する。本方法は、求核性老廃物溶質を含む流体の供給が流体の連続流の供給による連続プロセスであり得る。そのような場合、好ましくは、工程iii)は任意ではなく、連続的にも行われる。本発明の捕捉方法は、常に、工程i)、工程ii)(工程iia)または工程iib)のいずれか1つ)、および任意に工程iii)を含む。工程iibにおける膜は、好ましくは本発明の膜ではないか、または工程iibにおいてそのようなものとして言及される本発明の膜にさらに存在する本発明の膜である。
【0122】
求核性老廃物溶質は、求核性である溶解物質であり、その除去が望ましい。例えば、ヒト血液では、尿素は老廃物溶質である。飲料水として意図される未精製の水において、ほとんどの有機求核試薬は老廃物溶質である。求核性老廃物溶質の例は、アンモニア、尿素、クレアチニン、および小分子有機アミン、チオール、またはアルコールである。化学結合特性は、本発明の膜を、生理学的条件および/または非生理学的条件に供される種々の異なる適用に十分に適合させる。一実施形態では、本発明の膜は、血液、腹膜透析液、ならびに/または透析液および/もしくは濾液などの血液を透析および/もしくは濾過するために使用される溶液から、尿素、クレアチニン、尿酸および/または尿毒症毒素、生物学的物質、タンパク質性物質などの他のものなどの代謝、タンパク質性物質などを除去するために使用することができる。本明細書の他の箇所に記載されるようなその関連性に起因して、非常に好ましい求核性老廃物溶質は尿素およびアンモニアである。好ましい実施形態では、求核性老廃物溶質はアンモニアである。他の好ましい実施形態では、求核性老廃物溶質は尿素である。
【0123】
工程i)において、求核性老廃物溶質を含む流体が提供される。これは、精製されるべき廃水であり得、精製されるべき廃溶媒であり得るが、被験体由来の(身体)流体(例えば、血液または腹膜透析液)でもあり得る。ステップi)の流体が被検体からの流体である場合、それは好ましくは血液または腹膜透析液であり、最も好ましくは血液であり、好ましくは被検体から以前に得られた流体である。
【0124】
ステップii)では、2つの選択肢が存在する。1つの選択肢である工程iia)では、流体自体を本発明の膜、本発明の組成物、または本発明の膜もしくはカートリッジと直接接触させる。工程iia)は、溶媒の精製に、または老廃物溶質の除去後の消費または医療目的を意図しない流体に非常に適している。工程iib)は、透析流体および/または濾液を使用することによって、本発明の捕捉膜を工程i)で提供された流体から分離する。工程iib)は、薬学的溶液から、または被験体から得られた流体(例えば、被験体の体液)からの求核性老廃物溶質の除去に特に適している。接触は、好ましくは24時間、12時間、6時間、4時間、3時間、2時間、60分、50分、40分、30分、20分、15分、10分、9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分、2分もしくは1分、またはそれ未満続く。接触はまた、吸着剤を通過する連続流中であってもよく、その場合、除去された老廃物溶質の総量がより価値がある。
【0125】
工程iib)において流体を分離する際に使用するためのさらなる膜は、好ましくは半透膜である。これらは当該分野で公知であり、例えば、従来の(血液)透析装置中に存在する半透膜であり得る。上記のような本発明の膜を使用することもできる。透析流体は当技術分野において公知であり、超純水から生理学的緩衝液までの範囲であり得る。透析流体の非限定的な例は、既知量の、例えば、Na、K、Ca、Mg、Cl、アセテート、HCO3、およびグルコースを含む媒体(例えば、MDN Netherlands GmbH (Neubrandenburg,Germany)またはBaxter(Deerfield, Illinois, USA)またはDirinco B.V.(Oss,the Netherlands)から入手可能なもの)である。
【0126】
任意である工程iii)において、流体は回収される。本発明の膜は、多孔質またはマクロ多孔質であり、しばしば水性媒体中で膨潤可能であり、その結果、流体がそれを通って流れ、それを透過することができる。吸着剤と接触した流体の回収は、濾過、遠心分離、または吸着剤を含むカートリッジの除去によって容易に達成される。流体の回収は、そのさらなる処置、または被験体へのその戻りを可能にする。この態様内の好ましい実施形態では、流体は回収される。
【0127】
好ましくは、流体が工程iii)で回収される場合、関連する生理学的パラメータがその後分析され、適切な場合に調整される。例は、イオン濃度、浸透圧、pH、特にNa濃度、Ca濃度、およびMg濃度である。したがって、好ましいステップiii)は、流体を回収するステップであり、その後、流体pH、流体ナトリウム濃度、流体マグネシウム濃度、および流体カルシウム濃度のうちの少なくとも1つが決定され、任意選択で基準値に調整される。好ましい基準値は、流体の種類に対応する生理学的値である。調整は、当技術分野で知られている任意の適切な方法で行うことができる。調整は、基準値からの偏差が検出されたときに実行されることが好ましい。
【0128】
捕捉方法の好ましい実施形態では、吸着剤1グラム当たり少なくとも1.40、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.60、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.67、1.68、1.69、1.70、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.70、2.80、2.90、3.00または3.10mmolの求核性老廃物溶質が除去される;好ましくは、吸着剤1グラム当たり少なくとも1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.60mmol、より好ましくは少なくとも2.20、さらにより好ましくは少なくとも2.50、最も好ましくは少なくとも2.55mmolの求核性老廃物溶質が除去される。この除去は、好ましくは、工程i)で提供される流体からの特定の求核性老廃物溶質の初期濃度の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上の除去、より好ましくは少なくとも50%またはそれ以上の除去を伴った。
【0129】
本発明の膜はまた、混合物からアミンまたはアミド含有化合物を除去するために使用され得る。好ましくは、その化合物は尿素である。混合物が、アミンまたはアミド含有化合物を除去するための非治療的方法について本明細書中で定義される通りであることもまた好ましい。この使用は、好ましくは非治療的使用であることが理解される。
【0130】
本発明はまた、混合物からアミンまたはアミド含有化合物を除去するための非治療的方法であって、前記混合物を本発明の膜と接触させることを含む方法に関する。好ましくは、化合物は尿素である。好ましい実施形態では、混合物は水溶液、例えば患者試料である。可能な用途としては、例えば、さらなる分析のために前記試料を調製するための、血液もしくは尿などの患者試料または腹膜透析液などの透析液からのアミン含有化合物の除去が挙げられる。他の適用において、水溶液は、例えば、多量の尿素およびこれらの条件下で変性するタンパク質のような生体分子を含み得る。好ましい実施形態では、非治療的方法において、膜は、高温、好ましくは20℃~90℃の範囲、より好ましくは37℃~80℃の範囲、最も好ましくは60℃~75℃の範囲に維持される。
【0131】
一般的な定義
本明細書および特許請求の範囲において、「含む(to comprise)」という動詞およびその活用形は、その非限定的な意味で使用されて、その単語に続く項目が含まれるが、具体的に言及されていない項目は除外されないことを意味する。さらに、不定冠詞「a」または「an」による要素への言及は、その要素が1つしか存在しないことを文脈が明確に要求しない限り、その要素が2つ以上存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。「約」または「およそ」という用語は、数値(例えば約10)に関連して使用される場合、「約」または「およそ」を意味する。は、好ましくは、値が、その値の5%前後の所与の値であり得ることを意味する。本明細書中で使用される場合、「被験体」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。好ましい実施形態において、被験体は非ヒトである。
【0132】
本発明の文脈において、評価されるパラメータの減少または増加は、そのパラメータに対応する値の少なくとも5%の変化を意味する。より好ましくは、値の減少または増加は、少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、または100%の変化を意味する。この後者の場合、パラメータに関連する検出可能な値がもはや存在しない場合があり得る。
【0133】
本明細書に記載される薬剤としての物質の使用は、薬剤の製造における前記物質の使用として解釈することもできる。同様に、物質が処置のためにまたは医薬として使用される場合は常に、それはまた、処置のための医薬の製造のために使用され得る。使用のための製品は、処置の方法における使用に適切である。
【0134】
本明細書全体を通して、混合物中のモノマーおよびコモノマーの量を表すために百分率が使用される場合、別段の記載がない限り、または文脈から明らかに明白でない限り、モル百分率が意図される。
【0135】
本出願を通して、(血液)透析は、血液透析および透析の両方をいう。一般に、透析装置は、本明細書に記載される任意のタイプの透析装置を指すことができる。
【0136】
以上、いくつかの例示的な実施形態を参照して本発明を説明した。いくつかの部分または要素の修正および代替実装形態が可能であり、添付の特許請求の範囲で定義される保護の範囲に含まれる。文献および特許文献の全ての引用は、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【
図1】実施例2に記載されるように調製された混合マトリックス膜の走査型電子顕微鏡画像である。
図1Aは、膜のMMMひだ状内腔形態の断面画像である。
図1Bは、指状のマクロボイド構造を示すMMMの壁の拡大画像である。吸着剤粒子は、凝集することなく十分に分散しており、ポリマー溶液によって十分に囲まれている(白い矢印)。
図1Cおよび1Dは、それぞれ、内腔表面(
図1E)または外表面(
図1F)に目に見える孔のない非常に薄い緻密層を示すMMMの内腔(内層)および外層を示す。外側の緻密層(
図1D)は、内側の緻密層(0.2μm)と比較してわずかに厚い(0.5μm)。
【
図2】実施例2に記載されるように調製されたMMMの様々な圧力における水透過性を示す。データは平均±SE(n=6)として表した。線形近似により、238±9L/(m
2・h・Bar)に等しい水透過率が得られた。
【
図3】483±282μm(n=30)の平均直径±SDを有する、懸濁液中のニンヒドリン型吸着剤粒子(吸着剤1g当たり約2.5mmolのニンヒドリンを含有する)を使用して37℃、50℃および70℃で測定された尿素捕捉の動態を示す図である。
【
図4】粉砕およびふるい分けの前(直径±483±282μmの標準偏差)および後(直径<63μm)の、懸濁液中のニンヒドリン型吸着剤粒子(約2.5mmol/gのニンヒドリンを含有する)について経時的に得られた尿素捕捉結果(n=3)である。
【
図5】懸濁液中のニンヒドリン型吸着剤(直径<63μm)およびそのような吸着剤粒子を含むMMMについて経時的に得られた尿素捕捉結果(平均±標準偏差)である。
【
図6】実施例2に記載されるように調製された吸着剤含有MMM上、および実施例2.2に記載されるように調製された、吸着剤粒子を含まない対照中空繊維(HF、PES/PVP)上の尿素等温線結合(n=3)である。
【
図7】実施例2に記載されるように調製されたMMM含有吸着剤粒子を使用した動的尿素捕捉の結果を示す。この実験では、尿素溶液を膜を通して4時間連続的に再循環させる(n=5)。4時間での尿素捕捉(星印で示す)を、MMMから溶出した尿素の量で正規化した。
【
図8】実施例2に記載されるように中空繊維の形態で調製されたPGA型吸着剤粒子を含むMMMを使用した尿素捕捉の動力学である。ここで、尿素溶液は、MMM(n=2)を通して連続的に再循環されるか、または粉砕された吸着剤粒子(n=3)とともに連続的に撹拌される。膜中のPGA型吸着剤は、小さな粒子を得るために粉砕された遊離PGA型吸着剤よりも速い尿素捕捉挙動を示す。
【0138】
[実施例]
<実施例1-吸着剤の準備>
1.1 ニンヒドリン型吸着剤の準備
このタイプの吸着剤は当技術分野で公知であり、例えば、EP121275A1、US4897200A、またはWO2019110557に記載されているように調製することができる。
【0139】
1.2 PGA型吸着剤の準備
このタイプの吸着剤は当技術分野で公知であり、例えば、US3933753AまたはWO2004078797A1に記載されているように調製することができる。また、以下のようにして製造することもできる。
【0140】
1.2.1 前駆体モノマーの準備
【化1】
3つ口丸底フラスコ中で、p-(エチニルフェニル)エタノン(10.0g、69.4mmol)をEtOH(350mL)に懸濁し、リンドラー触媒(300mg、3重量%)を添加した。空気をH
2で置き換え、懸濁液を室温で2~16時間撹拌した。変換をモニターするために(これによりVPEのアルカンへの過剰還元を防止するために)、試料を反応混合物から頻繁に採取し、減圧下でEtOHを蒸発させた後、変換を
1H-NMR(CDCl
3)によって決定した。変換後、>90%で、H
2充填バルーンを除去し、反応混合物を減圧下で濃縮した。粗生成物をCH
2Cl
2に再溶解し、Hyflo上での濾過により精製した。濾液を減圧下で濃縮して、粗pVPE(p-(ビニルフェニル)エタノン)を黄色液体として収率99%で得た(10.1g、69.0mmol)。融点29℃、融解エンタルピー90.6J/g.
1H-NMR (CDCl
3, 600 MHz) δ7.92 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.48 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 6.75 (dd, J = 17.6 Hz, 10.9Hz, 1H), 5.87 (d, J = 17.6 Hz, 1H), 5.39 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 2.59 (s, 3H).
【0141】
1.2.2 前駆体モノマーの重合
2相懸濁重合を使用した。要するに、水相を、NaCl(11mg)、ポリメタクリル酸ナトリウム塩溶液(452mgの水中10%ゲル)およびCaHPO4(84mg)を水(15mL)に添加することによって調製した。有機相は、VPE(2.1g、14.4mmol、2mL)、ポロゲン(2.9mL、ヘプタン/トルエン)、80%工業グレードジビニルベンゼン(3~6mol%)およびフタル酸ジシクロヘキシルとの50%過酸化ベンゾイルブレンド(174mg、0.36mmol、2.5mol%)から構成されていた。混合および重合(機械的撹拌下、油浴中、73℃で16時間加熱)後、得られた懸濁液を室温まで冷却し、フィルター(カットオフ200μm、Veco B.V.)上に注いだ。残渣をアセトンおよび水で洗浄し、最後に真空下でP2O5で乾燥させて、pVPE(1.1~1.9グラム、収率52~90%)を得た。
【0142】
1.2.3 ポリ-VPEに基づくPGA型吸着剤の調製
次いで、得られた粗pVPE混合物をさらにPGA型吸着剤に変換した。pVPEビーズ中のアセチル芳香族基をハロゲン化し、続いてワンポット操作でKornblum酸化によりPGAH-基に変換した。テフロン(登録商標)ブレード撹拌機を備えたガラス反応器中で、pVPEビーズ(60.0g)をDMSO(600mL、8.45mol)中で30分間連続撹拌下で膨潤させ、その後、48%HBr水溶液(175mL、1.55mol)をゆっくりと添加した。反応器の出口の1つを、形成されたMe2Sの流出を可能にする針を含むセプタムでキャップした。懸濁液を80℃で8時間撹拌し、その後、反応混合物を濾過した(カットオフ200μm、Veco B.V.)。濾液のpHが>5になるまで、残渣を水で洗浄した。残渣を真空下でP2O5上で乾燥させ、PGA型吸着剤(55.2グラム)を得た。
【0143】
<実施例2-吸着剤含有膜の調製>
2.1 吸着剤含有膜を調製するための一般的方法
所望量のポリマーを秤量し、超高純度NMPに完全に溶解させる。3日間撹拌した後、120μmの最長直径を有する乾燥吸着剤粒子を添加し、その後、懸濁液をローラーバンク上で4時間撹拌する。次いで、得られた懸濁液を水にキャストしてシート状の膜を形成するか、または紡糸口金を通して押し出して繊維を形成する。
【0144】
2.2 ニンヒドリン型吸着剤を含むPES/PVP膜の調製
膜を調製する前に、483±282μmの平均直径±標準偏差を有するニンヒドリン型吸着剤またはPGA型吸着剤(例えば粒子1g当たり約2.5mmolのニンヒドリン)を、乳鉢および乳棒を使用して粉砕した。その後、粉砕した吸着剤粒子を63μmの篩を通して篩い分けした。PES/PVPポリマーマトリックス中に埋め込まれた吸着剤粒子を用いて、中空繊維(HF)混合マトリックス膜(MMM)を調製した。HF MMMは乾湿式紡糸技術によって調製した。ポリマードープ溶液は、UltrasonE6020 PES (BASF, Ludwigshafen, Germany)およびPVP K90(分子量約360kDa、Sigma-Aldrich Chemie GmbH, Munchen, Germany)を超高純度N-メチルピロリドン(NMP)(Acros Organics, Geel, Belgium)に溶解することによって調製した。粒子をドープ溶液に添加して、膜の乾燥重量の55%に等しい粒子の最終重量を得た。PES/PVP/吸着剤ポリマー溶液を、ポリマー溶液中における粒子の適切な分散を確実にするために、60℃で2日間撹拌した。その後、それをステンレス鋼製シリンジに移し、24時間脱気した。本研究で使用したPES、PVPおよび吸着剤の濃度ならびに紡糸パラメータを表1に明記する。脱気後、シリンジを高圧シリンジポンプおよびHFを調製するための紡糸口金に接続した(表1の仕様)。孔形成溶液として超純水を使用した。紡糸口金と凝固浴との間の空隙を5.5cmに調節した。HFを水凝固浴中に自然落下させた。作製した膜を脱イオン水で洗浄し、さらなる使用のために脱イオン水中で保存した。
【0145】
【0146】
<実施例3-吸着剤含有膜の特定>
3.1 走査型電子顕微鏡法(SEM)
HF MMM(実施例2.2に記載されるように調製)の形態を、SEM(JEOL JSM-IT 100, Tokyo, Japan)によって分析した。膜の試料を空気中で乾燥させ、断面の画像化のために液体窒素中で破砕した。SEM画像化の前に、試料を金スパッタした(Cressington 108 auto sputter, (Cressington Scientific Instruments, Watford,UK))。
MMMの断面画像(
図1A)は、膜のひだ状内腔形態を示す。ひだ状形態は、膜形成システムの特定の不安定性を示し得るが、溝は、流れ方向と軸方向に良好に整列される。このようなひだは、一般に、繊維に沿った物質移動、流速および膜間圧を妨げない。加えて、繊維の内腔側に溝が存在することにより、活性表面積が増大し、膜の濾過および拡散性能に関する利点が得られる。また、膜の厚い壁は、単位長さ当たりより多くの粒子がポリマーマトリックス中に埋め込まれることを可能にし、したがって、MMMの捕捉特性を増強する。
MMMの壁の拡大図(
図1B)から、SEM膜に典型的な指状マクロボイド構造は、膜の内腔および外側で見ることができるが、壁断面の中心に沿って消失し、そこではより多くの粒子がポリマーマトリックス中にホストされる。吸着剤粒子は、凝集することなく十分に分散され、それらはポリマー溶液によって十分に取り囲まれている(
図1Bの白色矢印)。
MMMの内腔および外層の両方(それぞれ
図1Cおよび1D)は、目に見える孔を有さない非常に薄い緻密層を示す内腔表面(
図1E)または外表面(
図1F)にある。しかしながら、外側の緻密層(
図1D)は、内側の緻密層(0.2μm)と比較してわずかに厚い(0.5μm)。この理由から、膜の分画分子量および濾過特性を決定する膜の選択層は、外側の緻密層であると考えられる。
【0147】
3.2 水輸送実験
MMMはまた、水輸送特性に関して特徴付けられた。13.9cm
2の全表面積を有する3 HFからなる膜モジュールを使用した。2成分エポキシ接着剤(Griffon Combi Snel-Rapide, Bison International, Goes, TheNetherlands)をモジュールの調製に使用した。水輸送実験の前に、HFモジュール(n=6)を、0.2Barの膜間差圧(TMP)で30分間EtOHで予備湿潤させ、0.6BarのTMPで30分間超純水で予備圧縮した。その後、透過水の量を0.2、0.4および0.6BarのTMPで経時的に測定した。得られた水透過性を、流束(L/(m
2・h))対TMP(Bar)の線形フィットの傾きとして計算した。MMMは、238±9L/(m
2・h・Bar)に等しい水透過率を有する限外濾過膜である(
図2)。MMMの限外濾過係数(K
uf)は、309mL/(h・mmHg・m
2)である。膜を通る水フラックスは、HF MMMの圧縮または破壊なしに、圧力に比例して増加する。全体として、これらの結果は、MMMが限外濾過における使用のための優れた形態特性および濾過特性を有することを示唆する。
【0148】
<実施例4-吸着剤含有膜を使用した尿素の捕捉>
4.1 尿素の静的捕捉
4.1.1 ニンヒドリン型吸着剤を用いた尿素捕捉動力学に対する温度の影響
架橋ポリスチレン(PS-Nin)から調製されたニンヒドリン粒子中の尿素とニンヒドリン基(約2.5mmol/gの吸着剤)との捕捉反応に対する温度の影響を研究するために、尿素速度論的捕捉実験を37℃、50℃および70℃で行った。この実験に使用した遊離粒子は、483±282μm(N=30)の平均直径±標準偏差を有する。吸着剤ビーズ(15mg)をPBS中の尿素溶液(1.5mL、30mM)と共にインキュベートした。試料(各時点についてn=3)を37、50または70℃で回転装置上のオーブン中に置いた。1、2、4、8、16および24時間後、上清中の尿素濃度を、共役酵素反応を使用してAU 5800ルーチン化学分析装置(Beckman Coulter, Brea, CA)で分析し、尿素濃度に比例する比色(570nm)生成物を得た。物質収支を介して、結合した尿素の量を、溶液中の尿素の消耗量から計算した。
図3の結果は、平均±標準偏差として示される。より高い温度では、尿素捕捉反応速度はより速い。実際、70℃では、粒子は24時間にわたって1.4±0.0mmol/gの尿素に結合し、これは50℃および37℃での結合と比較してはるかに高い。尿素によるニンヒドリン部分の飽和は、70℃でさえ24時間では達成されない。ここで、達成可能な最大飽和は、粒子について1.6~1.7mmol/gであると確立された。70℃でのより速い捕捉反応速度を考慮して、後の尿素捕捉実験を70℃で行った。
【0149】
4.1.2 尿素捕捉動力学に対する粒径効果
尿素捕捉に対する粒径の影響を研究するために、平均直径483±282μmのPS-Nin粒子(約2.5mmol/gニンヒドリン)および63μm未満の直径を有する粉砕および篩い分け後の同じ粒子(実施例2.2)に対して、尿素速度論的結合実験を70℃で行った。より大きな吸着剤ビーズ(15mg)をPBS(pH7.4)中の尿素溶液(1.5mL、30mM)と共にインキュベートした。粉砕され篩にかけられた粒子を、透析液(pH7.4)中の尿素溶液(1.5mL、30mM)中でインキュベートした。試料(各時点についてn=3)を70℃で振盪し、1、2、4、8、16および24時間後、上清を濾過によって収集した。尿素濃度は、酵素アッセイUrea FS
* (Diasys, Holzheim, Germany)またはAU 5800ルーチン化学分析装置(Beckman Coulter, Brea, CA)によって決定した。どちらの方法も、尿素濃度に比例する比色生成物をもたらす共役酵素反応に基づく。物質収支を介して、結合した尿素の量を、溶液中の尿素の消耗量から計算した。
図4の結果は、平均±標準偏差として示される。尿素捕捉動力学は、より大きな粒子と比較してより小さな粒子上ではるかに速い。4時間で、より小さい粒子上の尿素捕捉は、より大きい粒子上の尿素の結合の2倍を超える。小粒子上の尿素捕捉動力学は、最初の4時間は非常に速く、その後ゆっくりと減少する。24時間の期間にわたって、尿素の結合は、より小さい粒子上では1.7±0.1mmol/gの尿素に等しく、より大きい粒子上では1.4±0.0mmol/gに等しい。より高い表面積にもかかわらず、最大結合能(2.5mmol/g)には達しなかった。したがって、粒子サイズは、結合動力学に対して強い効果を有するが、結合能に対してははるかに小さい効果を有する。
【0150】
4.1.3 吸着剤粒子を含むMMMについての尿素捕捉動力学
MMMのポリマーマトリックス中への粒子の組み込みの効果を研究するために、63μm未満の直径を有する粉砕PS-Nin粒子(約2.5mmol/gニンヒドリン)および実施例2.2に記載されるように調製されたMMMに対して、尿素速度論的結合実験を70℃で行った。吸着剤ビーズ(15mg)およびMMM(27mg、15mgの埋め込まれた粒子を含有する)を、透析液(pH7.4)中の尿素溶液(1.5mL、30mM)と共にインキュベートし、70℃で振盪した。1、2、4、8、16および24時間後、上清を回収し(粒子の濾過を介して)、上清中の尿素濃度を、酵素アッセイ(Urea FS
*,Diasys, Holzheim, Germany)を使用して決定した。物質収支を介して、結合した尿素の量を、溶液中の尿素の消耗量から計算した。各時点は、3つの異なる試料(n=3)によって表された(
図5)。
図5の結果は、平均±標準偏差として示される。尿素捕捉動力学は、懸濁液中の粒子およびMMM中の粒子について、8時間にわたって非常に類似している。興味深いことに、8時間の尿素捕捉で、懸濁液中の粒子は停滞期に入るが、MMM中に埋め込まれた粒子は結合を維持する。24時間で、懸濁液中の粒子への尿素捕捉は1.7±0.1mmol/gに等しく、一方、MMM中に埋め込まれた粒子上では2.1±0.1mmol/gである。より長い時間の後、MMM中の粒子への尿素捕捉は飽和に達することができる(最大捕捉能は約2.5mmol/gである)。これは、ポリマーマトリックスが尿素が粒子に到達する性能をどのように制限しないかを示している。明らかに、結合は、遊離吸着剤粒子と比較してさらに増強される。
さらに改善された尿素捕捉が、中空繊維MMM中のPGA型吸着剤を使用して実証された。比較実験において、88mgのPGA型吸着剤を含むある量のMMMを、30mM尿素を含むPBS緩衝液と、流速5mL/分(総容量25mL)の再循環設定を用いて70℃の温度で接触させた。
図8に示すように、尿素捕捉を様々な時点で決定した(t=6~8hに対してn=2;さらにn=1)。比較として、70℃で連続的に撹拌した同じ尿素溶液の総体積1mL中で、同じPGA型吸着剤5mgを使用して静的バッチ実験を行い、尿素捕捉を様々な時点で決定した(n=3)。
図8の結果は、MMM中のPGA型吸着剤の結合動力学が、撹拌下の粉砕吸着剤の動力学よりも速いことを実証する。
【0151】
4.1.4 MMMおよび対照膜への尿素等温線結合
種々の濃度での尿素捕捉を、MMM(実施例2.2に記載されるように調製した)およびPES/PVPコントロールHFを用いて測定した。PES/PVP対照HFは、Acta Biomaterialia 90 (2019) 100-111に記載されているような乾湿式紡糸技術によって調製した。簡潔には、Ultrason E6020 PES(15重量%)(BASF,Ludwigshafen, Germany)およびPVP K90(7重量%)(分子量約360kDa、Sigma-AldrichChemie GmbH, Munchen, Germany)を超高純度NMP(78重量%)(AcrosOrganics, Geel, Belgium)に溶解することによって、ポリマードープ溶液を調製した。ポリマー溶液をローラーベンチ上で3日間混合し、次いでそれをステンレス鋼シリンジに移し、24時間脱気した。その後、シリンジを高圧シリンジポンプおよび設計された紡糸口金に接続した。ドープ溶液のポンピング速度を0.4mL/分に設定した。孔形成溶液として超純水を使用し、孔溶液のポンピング速度を1.2mL/分に設定した。紡糸口金と凝固浴との間の空隙を10cmに調節した。生成したHFを回収するために回収ホイール(速度8.3m/分)を使用した。作製した膜を脱イオン水で洗浄し、さらなる使用のために保管した。
27mgのMMM(MMM中の15mgの粒子)および27mgの対照HFを、異なる濃度の透析液(pH7.4)中の1.5mLの尿素溶液と共にインキュベートした。試料を70℃の水平振盪水浴に入れた。24時間後、上清を回収し、酵素アッセイ(Urea FS
*, Diasys, Holzheim, Germany)を使用して上清中の尿素濃度を決定した。物質収支を介して、結合した尿素の量を、溶液中の尿素の消耗量から計算した。
図6の結果は、平均±標準偏差(N=3)として示される。グラフは、平衡尿素濃度(mM)に対する結合能(mmol/g)を示す。PES/PVP対照HFは尿素を捕捉せず、MMM内部の吸着剤粒子のみが尿素捕捉に関与することを示唆している。
興味深いことに、90.1mmol/gの平衡濃度では、MMMへの尿素捕捉は3.4±0.1mmol/gに等しく、ニンヒドリンへの1-on-1結合の期待値を上回っている。尿素のこのより高い結合は、尿素の多層結合を介して説明することができ、尿素分子は、粒子のニンヒドリン部分に共有結合(化学吸着)した尿素上に水素結合(物理吸着)を介して吸着する。
【0152】
4.1.5 尿素の動的結合
23.3cm
2の全表面積を有し、77mgに等しいPES/PVPマトリックス中に埋め込まれた粒子の総量を有する3 HF(実施例2に記載されるように調製された)から構成される膜モジュールを使用して、動的条件における尿素捕捉を研究した。2成分エポキシ接着剤(Griffon Combi Snel-Rapide, Bison International, Goes, TheNetherlands)をモジュールの調製に使用した。動的尿素捕捉実験の前に、HFモジュール(n=5)を脱イオン水中に保持した。尿素動的実験を、濾過モード(TMP=0.15Bar)で、20mL/分の流速で繊維を通して連続的に再循環させた透析液中30mMの尿素溶液を用いて、専用の設定(Convergence, Enschede, The Netherlands)を使用して行った。捕捉実験(n=5)を70℃で4時間実施した。再循環システム内の尿素溶液の温度を70℃に維持するために、供給溶液を70℃に加熱し、管を断熱し、HFモジュールを90℃に加熱した水浴中に浸漬した。尿素溶液の試料を定量化のために1時間毎に収集した。捕捉実験の終わりに、HFモジュールを90℃の水浴から取り出し、空にした。室温のMilliQ水24.5mLを20mL/分の流速で1時間モジュールを通して再循環させて、MMMから溶出した可能性のある尿素を回収した。酵素アッセイ(Urea FS
*, Diasys, Holzheim, Germany)を使用して尿素濃度を定量化した。
結合の結果を
図7に示す。4時間にわたって、膜は3.4±0.3mmol/gで捕捉することができ、飽和に達しないようである。捕捉実験が動的モードで行われる場合、捕捉反応速度は静的条件と比較してはるかに速い。静的条件と比較して、反応速度が速いだけでなく、吸着剤粒子に結合した尿素の総量も高い。MMM中の粒子1グラム当たりに結合した尿素の量は、粒子中のニンヒドリン部分の総量(約2.5mmol/g)よりも多い。1)粒子中の全てのニンヒドリン部分は飽和しており、2)尿素分子は、粒子のニンヒドリン部分に共有結合(化学吸着)した尿素上に水素結合(物理吸着)を介して吸着し、したがって、共有結合した尿素で飽和した形成された表面によって可能になる多層結合を有すると考えられる。
実験の最後にMMMモジュール(n=2)をMilliQ水ですすいだところ、1時間後に0.05ミリモルが検出された。MMMから溶出した尿素の量で標準化した4時間での尿素捕捉を、
図7に星印で示す。より長いすすぎ時間の間に、系中に物理吸着された全ての尿素が溶出されることが予想された。この実験は、動的条件において、MMMへの尿素捕捉が化学吸着と物理吸着との組み合わせであることを確認する。尿素は吸着剤粒子を含まない対照膜に結合しなかったので、結合の組み合わせは本発明の膜の効果である。
結論として、膜を通した尿素溶液の再循環および濾過は、結合動力学および全結合を改善する。さらに、最大化学吸着容量に達すると、おそらくは共有結合した尿素の新たに形成された表面への尿素分子の水素結合のために、尿素の吸着が継続し得る。
【国際調査報告】