(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】垂直壁面バイアル中の凍結乾燥固形物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/02 20060101AFI20230119BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20230119BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20230119BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230119BHJP
A61K 39/205 20060101ALI20230119BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20230119BHJP
A61K 39/175 20060101ALI20230119BHJP
A61K 39/002 20060101ALI20230119BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230119BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230119BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230119BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230119BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A61K39/02
A61J1/05 353
A61J3/00 300C
A61K39/00 H
A61K39/205
A61K39/12
A61K39/175
A61K39/002
A61P37/04
A61K47/42
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528654
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 US2020059074
(87)【国際公開番号】W WO2021101720
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516001834
【氏名又は名称】エランコ・ユーエス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Elanco US Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス ザ セカンド,ドナルド ディー
(72)【発明者】
【氏名】パテル,マユール
(72)【発明者】
【氏名】スティンプソン,リー ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047BB01
4C047BB11
4C047CC04
4C047CC13
4C047DD02
4C047DD06
4C047DD22
4C047DD32
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC06
4C076DD25
4C076DD26Q
4C076DD30Q
4C076DD38Q
4C076DD67Q
4C076EE30Q
4C076EE41Q
4C076FF36
4C076GG06
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA02
4C085BA17
4C085BA51
4C085BA64
4C085BB03
4C085EE01
4C085FF24
4C085GG01
(57)【要約】
バイアルを含むシステムと、クラッキングまたは破壊なしにバイアルから取り出し可能な凍結乾燥固形物を提供するためのその使用方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直壁面バイアル(14);および
垂直壁面バイアル(14)内の固体凍結乾燥ワクチン組成物、を含む垂直壁面バイアルシステム(10)であって、該組成物は、抗原および安定剤を含む、垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項2】
垂直壁面バイアル(14)が、底壁(143)、底壁(143)に連結されかつ底壁(143)から延びる側壁(141)、および底壁と反対側にある、側壁の開口端で側壁から外側に延びる放射状の襟部(145)とを含む、請求項1に記載の垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項3】
開口端に挿入可能な栓(12)をさらに含む、請求項1に記載の垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項4】
プラスチック製またはアルミニウム製である密閉部材(16)をさらに含む、請求項3に記載の垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項5】
抗原の供給元が、動物、ヒト、魚、鳥、微生物、寄生生物、原生動物、スピロヘータ、細菌、ウイルス、ベクター、組換え体、またはこれらの組み合わせであり;そして
抗原が、核酸、タンパク質、ペプチド、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項6】
抗原の供給元が、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)である、請求項1に記載の垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項7】
抗原の供給元が、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica, Bb)、狂犬病ウイルス、イヌインフルエンザウイルス(CIV)、イヌアデノウイルス-2(Canine Adenovirus-2, CAV2)、イヌアデノウイルス-1(Canine Adenovirus-1, CAV1)、イヌジステンパーウイルス(Canine Distemper Virus, CDV)、イヌパラインフルエンザウイルス(Canine Parainfluenza Virus, CPiV)、イヌパルボウイルス(Canine Parvo Virus, CPV)、ネコカリシウイルス(Feline Calicivirus, FCV)、ネコヘルペスウイルス(Feline Herpes Virus, FHV)、ネコ汎白血球減少症ウイルス(Feline Panleukopenia Virus, FPL)、ネコ白血病ウイルス(Feline leukemia Virus, FeLV)、ボレリア(Borrelia)、エーリキア(Ehrlichia)、およびジアルジア(Giardia)からなる群から選択される、請求項1に記載の垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項8】
組成物が、アジュバント、免疫アジュバント、免疫調節剤、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項9】
安定剤が、
Bactoペプトン;
スクロース;
りん酸水素二カリウム;
りん酸二水素カリウム;
水酸化カリウム;および
ゼラチン、を含む、請求項1に記載の垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項10】
安定剤が、マンニトール、キサンタンガム、充填剤、粘膜付着剤(mucoadhesive agent)、粘膜透過性を増強する剤、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項9に記載の垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項11】
固体凍結乾燥ワクチン組成物が、MEM粉末、炭酸水素ナトリウム、HEPES酸、および精製水からなる配合希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の垂直壁面バイアルシステム(10)。
【請求項12】
固体凍結乾燥ワクチン組成物の製造方法であって、
抗原および安定剤を混合して配合物を得ること;
垂直壁面バイアル(14)に該配合物を充填すること;
垂直壁面バイアル(14)中の該配合物を凍結乾燥して固体凍結乾燥ワクチン組成物を形成すること;および
垂直壁面バイアル(14)から該固体凍結乾燥ワクチン組成物を取り出すこと、を含む方法。
【請求項13】
固体凍結乾燥ワクチン組成物が、ヒト、魚、鳥、ウシ、ブタ、ネコ、イヌ、ウマ、ウサギ、または野生動物に使用するためのものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗原がボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)であり、固体凍結乾燥ワクチン組成物がイヌ、ネコ、またはウサギに使用するためのものである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
抗原および安定剤の配合物にマンニトールを添加することをさらに含み、また固体凍結乾燥ワクチン組成物を取り出す前に-25℃で該配合物をアニーリングすることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
固体凍結乾燥ワクチン組成物が、垂直壁面バイアル(14)の内側表面(142)より小さい直径を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
固体凍結乾燥ワクチン組成物を、クラッキングまたは破壊なしに取り出す、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年11月18日出願の米国仮特許出願第62/937,061号の利益および優先権を主張し、この全内容は引用により本明細書に包含される。
【0002】
(本開示の分野)
本開示は、一般的に、垂直壁面バイアルを含むシステム、および取り出し可能な凍結乾燥固形物を提供するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(本開示の背景)
安定、安全かつ有効なバイオ医薬品の開発は、適切な容器システムの使用に大きく依存する。これらのシステムは、そうでなければ壊れやすいバイオ医薬品組成物を、分解および不安定化を促進する要因から保護し保管するために必要である。凍結乾燥は、一般に採用されている冷凍乾燥工程であり、これは、凍結乾燥工程バイアル内に安定な乾燥または粉末製品、多くの場合凍結乾燥固形物をもたらす。しかし、既存の凍結乾燥用バイアルには頸状部が含まれるため、得られた固形物を無傷の形態で取り出すことができない。
【0004】
取り出し可能な凍結乾燥固形物(cake)は、ワクチンのようなバイオ医薬品の呈示のための治療的に有用な経口または注射可能な選択肢となるであろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様において、クラッキングまたは破壊なしにバイアルから取り出し可能な凍結乾燥固形物を提供するシステムが提供される。第一態様による実施態様において、垂直壁面バイアルシステムは、垂直壁面バイアル;および該垂直壁面バイアル内の固体凍結乾燥ワクチン組成物を含み、該組成物は、抗原および安定剤を含む。
【0006】
本実施態様のいくつかの変形例において、抗原の供給元は、動物、ヒト、魚、鳥、微生物、寄生生物、原生動物、スピロヘータ、細菌、ウイルス、ベクター、組換え体、またはこれらの組み合わせであり;抗原は、核酸、タンパク質、ペプチド、またはこれらの組み合わせである。
【0007】
本開示の第二態様において、クラッキングまたは破壊なしにバイアルから取り出し可能な凍結乾燥固形物を提供する方法が提供される。第二態様による実施態様において、固体凍結乾燥ワクチン組成物を調製する方法は、抗原および安定剤を混合して配合物を得ること;垂直壁面バイアルに該配合物を充填すること;垂直壁面バイアル中の該配合物を凍結乾燥して固体凍結乾燥ワクチン組成物を形成すること;および垂直壁面バイアルから固体凍結乾燥ワクチン組成物を取り出すこと、を含む。
【0008】
本実施態様のいくつかの変形例において、本発明の方法は、抗原および安定剤の配合物にマンニトールを添加することをさらに含み、また固体凍結乾燥ワクチン組成物を取り出す前に-25℃で該配合物をアニーリングすることをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、垂直壁面バイアルを含む垂直壁面バイアルシステムの実施態様の斜視図である。
【0010】
【
図2】
図2は、
図1の垂直壁面バイアルから無傷の形態で取り出された固形物の実施態様の斜視図である。
【0011】
【
図3】
図3は、
図1に示される垂直壁面バイアルの実施態様の側面図である。
【0012】
【
図4】
図4は、
図3の垂直壁面バイアルの実施態様の断面図である。
【0013】
【
図5】
図5は、
図1の垂直壁面バイアルシステムの実施態様の成分の斜視図である。
【0014】
【
図6】
図6は、垂直壁面バイアルの底部にある固形物を示す
図1の垂直壁面バイアルシステムの実施態様の斜視図である。
【0015】
【
図7】
図7は、垂直壁面バイアルの上部にある固形物を示す
図1の垂直壁面バイアルシステムの実施態様の斜視図である。
【0016】
【
図8】
図8は、垂直壁面バイアルシステムの使用方法の実施態様を示す体表的な流れ図である。
【0017】
図面において、対応する参照文字は、いくつかの図を通じて、対応する部分、機能、および特徴を示す。図面は本発明による様々な特徴および成分の実施態様を表しているが、該図面は必ずしも縮尺されているわけではなく、本発明をより良く例示し説明するために、特定の特徴が誇張されていることがある。しかしながら、本発明は、図面に示されている実施態様の正確な配置および手段に限定されるものではない。
【0018】
(開示されている実施態様の詳細な説明)
開示されている実施態様の原理の理解を促進する目的で、ここで、以下に説明される図面に示される実施態様を参照する。以下に開示される実施態様は、網羅的であること、または本発明を以下の詳細な説明で開示される正確な形態に限定することを意図するものではない。むしろ、実施態様は、当業者がその教示を利用することができるように選択され、説明される。それによって、本発明の範囲の限定が意図されていないことが理解されるであろう。本発明は、例示されている装置および説明されている方法における任意の変更およびさらなる修正、ならびに特許請求の範囲に規定されている本発明の原理のさらなる適用を含む。
【0019】
図1は、垂直壁面バイアル14、栓12、密閉部材16、および固形物20を含む、組み立てられた状態の垂直壁面バイアルシステム10の実施態様の斜視図である。密閉部材16は、アルミニウムであってもよく、任意の公知の方法で栓12上に圧着されている。密閉部材16は、代替的に、プラスチックであってもよい。変形例において、栓12および密閉部材16は、単一のユニットとして構成され得て、このユニットは、タブを用いるなどして、該ユニットの一部を取り外すことができるように構成され得る。このような例において、タブを取り外して、注射器または針を挿入することができる。
【0020】
図2は、垂直壁面バイアルシステム10から取り出された固形物20の平面図である。いくつかの実施態様において、固形物20は、凍結乾燥された薬物またはバイオ医薬品製品である。固形物20の寸法は、垂直壁面バイアル14の高さおよび断面を変更することによってカスタマイズすることができ、それにより最終的な投与対象の動物またはヒトに一部対応して、得られる固形物20をより大きく、またはより小さくすることができる。いくつかの実施態様において、固形物20は、固体形態で投与されるように設計される。あるいは、固形物20は、投与の前に溶解することができる。
【0021】
図3は、
図1に示される垂直壁面バイアル14の実施態様の側面図である。垂直壁面バイアル14は、側壁141、内側表面142、底壁143、および垂直壁面バイアル14の上端(底壁143の反対側)を囲む襟部(collar)145を含む。側壁141は、底壁143から襟部145まで垂直に延び、内側表面142から外側に延びる放射状の襟部145の幅の中間の円周内側溝部146を含み得る。該溝部は、例えば、垂直壁面バイアル14が真空などを用いて封着された場合に、栓12を容易に取り出すことを可能にし得る。側壁141および底壁143は、垂直壁面バイアル14の内側体積144を画定する。本明細書で使用される場合、「垂直壁面」とは、バイアルの側壁がくびれてないことを意味し、この用語は、底壁に対して正確に垂直な側壁を有するバイアルに限定されない。例えば、バイアルの長さ方向の断面が底壁から襟部に向かって徐々に大きくなっていてもよく、そのような円錐台状のバイアルであれば、無傷の固形物を取り出すことも可能である。固形物はその製造過程で収縮することがあるため、その断面が固形物の断面より決して小さくならない限り、断面も徐々に小さくなってもよい。
【0022】
いくつかの実施態様において、垂直壁面バイアル14は、高分子材料を含むか、またはそれから製造される。他の実施態様において、垂直壁面バイアル14は、ガラスを含むか、またはそれから製造される。他の実施態様において、垂直壁面バイアル14は、日常的凍結乾燥温度および圧力に耐えることができる他の材料を含むか、それから製造される。
【0023】
いくつかの実施態様において、垂直壁面バイアル14は、15x35mmのバイアルである。
【0024】
いくつかの実施態様において、垂直壁面バイアル14は、15±0.25mmの外径を有する。
【0025】
いくつかの実施態様において、側壁141は、高さが35±0.05mmである。いくつかの実施態様において、側壁141は、1.2±0.05mmの厚さである。
【0026】
いくつかの実施態様において、側壁141は、凍結乾燥中の最適な熱伝達を可能にするように、標準的な凍結乾燥バイアルよりも薄い。
【0027】
いくつかの実施態様において、底壁143は、0.70mmの最小厚さを有する。
【0028】
いくつかの実施態様において、垂直壁面バイアル14の底部半径は1.47mm~2.49mmである。
【0029】
いくつかの実施態様において、底壁143は、0.2mm~0.8mmの底部押し上げおよび最大0.3mmの底部傾斜を有する。
【0030】
いくつかの実施態様において、内側体積144は、0.3mL、0.5mL、1mL、1.5mL、2mL、3mL、5mL、10mL、または20mLである。
【0031】
いくつかの実施態様において、垂直壁面バイアル14は、約15±0.25mmの外径および約35±0.05mmの長さを有する円筒形状である。側壁141は、1.2±0.05mmの厚さであり得る。底壁143は、最小0.70mmの厚さを有し得る。
【0032】
図4は、側壁141、内側表面142、内側体積144、襟部(collar)145、および溝部146を含む垂直壁面バイアル14の実施態様の側面図である。いくつかの実施態様において、襟部(collar)145は、垂直壁面バイアルが栓12および密閉部材16と一緒に構成され、結果、密閉部材16が襟部145の上に圧着できる。内側溝部146は、栓12の対応する外側隆起と嵌合することができる。いくつかの実施態様において、1つの内側表面142から別の内側表面までの内半径は12.6±0.2mmである。いくつかの実施態様において、襟部(collar)145は、3.4mm~3.78mmの高さを有する。いくつかの実施態様において、溝部146は、ブローバックを有するように構成される。
【0033】
図5は、内部に挿入されている栓12を有する垂直壁面バイアル14の斜視図である。栓12は、頭部121と、頭部から延び、かつ頭部よりも小さい断面を有する頸状部122と、頸状部の少なくとも一部を分割する溝部123とを含む。溝部123は、凍結乾燥中の水蒸気移動のための通気穴として機能することができる。
【0034】
いくつかの実施態様において、栓12は、標準的な20mm血清栓または凍結乾燥栓である。
【0035】
いくつかの実施態様において、栓12は、ゴムを含むか、またはそれから製造される。
【0036】
図6は、固形物20が垂直壁面バイアル14の底壁143上に堆積していることを示す、
図1に示されている垂直壁面バイアルシステム10の実施態様の斜視図である。いくつかの実施態様において、固形物20は、内側表面142から分離し、底壁143からわずかに上昇することができる。
【0037】
図7は、固形物20が底壁143および内側表面142から分離して内側体積144内で自由に移動し、この図では固形物20が栓12上に堆積していることを示す、垂直壁面バイアルシステム10を逆さにした斜視図である。密閉部材16および栓12を取り出すと、固形物20は垂直壁面バイアル14から実質的に無傷で取り出すことができる。
【0038】
図8は、垂直壁面バイアルシステム10の使用方法の実施態様を示す代表的な流れ図であり、この方法は、垂直壁面バイアルを提供すること(202);抗原を安定剤と配合すること(204);バイアルに配合物を充填すること(206);該配合物を凍結乾燥すること(208);および固形物を実質的に無傷の形態で取り出すこと、を含む。
【0039】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、抗原は、疾患または状態の予防または処置に使用されるいずれかの医薬、化合物または薬物である。変形例において、組成物は、抗原性組成物である。変形例において、抗原性組成物は、免疫応答を引き起こすことができるか、生物学的活性に関与することができる。いくつかの実施態様において、抗原は、動物由来であり得る。例えば、抗原は、哺乳動物由来、例えばヒト由来であり得る。いくつかの例において、抗原は、非哺乳動物由来、例えば魚または鳥由来であり得る。他の例において、抗原は、微生物由来または寄生生物由来であり得る。例えば、抗原は、細菌由来、ウイルス由来、または真菌由来であり得る。いくつかの例において、細菌抗原は、スピロヘータ由来であり得る。他の例において、抗原は、細菌ベクター由来またはウイルスベクター由来、またはこれらの組換え体の供給元由来であり得る。いくつかの実施態様において、抗原は、核酸、タンパク質、ペプチド、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施態様において、抗原は、生きている微生物、生きている改変された微生物、または不活性化微生物であり得る。例えば、抗原は、一つまたはそれ以上の病原性感染症由来であってもよく、それの予防または処置に使用されるものであってもよく、これには、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica, Bb)、狂犬病ウイルス、イヌインフルエンザウイルス(CIV)、イヌアデノウイルス-2(Canine Adenovirus-2, CAV2)、イヌアデノウイルス-1(Canine Adenovirus-1, CAV1)、イヌジステンパーウイルス(Canine Distemper Virus, CDV)、イヌパラインフルエンザ(Canine Parainfluenza Virus, CPiV)、イヌパルボウイルス(Canine Parvo Virus, CPV)、ネコカリシウイルス(Feline Calicivirus, FCV)、ネコヘルペスウイルス(Feline Herpes Virus, FHV)、ネコ汎白血球減少症ウイルス(Feline Panleukopenia Virus, FPL)、ネコ白血病ウイルス(Feline leukemia Virus, FeLV)、ボレリア(Borrelia)、エーリキア(Ehrlichia)、およびジアルジア(Giardia)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、抗原は、医薬担体などと共に製剤化され得る。
【0040】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、固体凍結乾燥組成物は、動物対象に使用するためのワクチンである。例えば、動物対象は、哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ブタ、ネコ、イヌ、ウマ、ウサギ、または野生動物であり得る。他の例において、対象は、非哺乳動物、例えば魚または鳥であり得る。
【0041】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、抗原は、アジュバント、免疫アジュバント、または免疫調節剤、またはこれらの組み合わせと配合され得るものである。変形例において、抗原は、配合物として投与されたときに組成物の免疫原性または生理学的有効性を増強するいくつかの化合物を含む。
【0042】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、抗原は充填剤と配合され得るものである。変形例において、充填剤は、得られる固形物を強固にするのに、および/または得られる固形物をより無傷にするのに使用することができる。例えば、充填剤は、マンニトール、デンプン、ゼラチン、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0043】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、抗原は、粘膜付着剤(mucoadhesive agent)と配合され得るものである。変形例において、粘膜付着剤は、化合物と粘膜との相互作用の有効性を増大させることができる。いくつかの実施態様において、抗原は、粘膜透過性を増強する剤と配合され得るものである。
【0044】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、抗原を安定剤と配合する場合、抗原は全配合物の最大50%を構成し。いくつかの実施態様において、抗原は全配合物の最大75%を構成する。全配合物中に使用される抗原の割合の決定は、用量、安定性データ、および乾燥時の損失に基づいて行うことができる。
【0045】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、抗原を安定剤と配合する場合、安定剤は、本明細書に開示されるSGGK3安定剤であり得るが、これに限定されない。いくつかの実施態様において、SGGK3安定剤は、SGGK3 Sol.1およびSGGK3 Sol.2の2つの溶液からなる。いくつかの実施態様において、SGGK3 Sol.1は、SGGK3安定剤の60%を構成し、SGGK3 Sol.2.は、全体の安定剤の40%を構成する。SGGK3 Sol.1およびSGGK3 Sol.2の組成は、以下の表1に提供する。
【0046】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、抗原を安定剤と配合する場合、安定剤は全配合物の50%を構成する。いくつかの実施態様において、安定剤は、全配合物の25%を構成する。いくつかの実施態様において、安定剤は、全配合物の20%~30%を構成する。
【表1】
【0047】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、抗原を安定剤と配合する場合、配合希釈剤は全配合物の最大25%を構成する。いくつかの実施態様において、配合希釈剤は、配合物にその最終体積になるまでにQS(十分な量)まで添加され、抗原の添加に応じて変動し得る。配合希釈剤の実施態様の組成は、以下の表2に提供する。
【表2】
【0048】
一般的に、凍結乾燥(lyophilizing)(別名、冷凍乾燥(freeze drying))は、適当な溶媒に溶解した物質を含有する製剤を凍結させ、次に真空にすることにより、氷が解凍の液相を経過するのではなく、昇華するようにする工程である。冷凍乾燥ワクチンを製造するための標準的な凍結乾燥技術はよく知られている。
【0049】
本実施態様の変形例において、抗原および安定剤の組成物が結晶成分を含む場合、凍結乾燥配合工程(208)は、追加のアニーリング工程を含み得る。変形例において、このアニーリング工程は、-25℃で行うことができ、製剤において結晶をより強い構造に再形成することを可能にすることができる。例えば、この工程は、製剤がマンニトールを含むものである場合に使用することができる。
【0050】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、固形物は、垂直壁面バイアル14の内側表面と比較して収縮しており、内側体積144内で移動できる。
【0051】
本開示の使用方法のいくつかの実施態様において、固形物を取り出す場合、
図7に示されているように、垂直壁面バイアル14を逆さにし、固形物20を重力によって落下させて栓12上に置かせることができ、あるいは、垂直壁面バイアル14において栓12を取り出した場合、固形物20を垂直壁面バイアル14から完全に取り出すことができる。いくつかの実施態様において、固形物の取り出しにより、固形物の生存性の最小限の損失および/または垂直壁面バイアル14の内側表面142上に残される最小限の残留物といった結果をもたらす。最小限の損失は、5%またはそれ以下の減少であり得る。いくつかの実施態様において、固形物は、それを物理的にクラッキングまたは破壊なしに垂直壁面バイアル14から取り出すことができる。
【実施例】
【0052】
実施例1:安定剤を有するガラス製の垂直壁面バイアル製剤
【0053】
本開示の方法の実施態様によれば、ガラス製の直壁バイアルシステムは、凍結乾燥製剤の取り出し可能な固形物を生成するのに使用できる。
【0054】
一実施態様において、試験群では、50%ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)抗原を、50%安定剤(n=5ずつ):SGGK3安定剤、マンニトールおよびキサンタンガム(充填剤および粘膜付着性)を有するSGGK3、Cuxhaven安定剤B(現行の家禽用安定剤)、またはマンニトールおよびキサンタンガム(充填剤および粘膜付着性)を有するCuxhaven、と配合した。配合物は生存細胞数のサンプリング(下記の表3を参照)に使用し、1.2mLまたは0.5mLで垂直壁面ガラス製バイアルに添加した。垂直壁面バイアルを、-50℃~28℃で、60mTorrで60~360分のサイクルを経て凍結乾燥し、-25℃アニーリング工程を追加で実施することで、(マンニトール添加による)適切な結晶形成を可能にした。
【0055】
各垂直壁面バイアルを、凍結乾燥前および凍結乾燥後のバイアル内と取り出し後の両方で、生菌数(viable plate count)について評価した。
【0056】
凍結乾燥後のバイアル内評価では、1.2mLのバイアルをそれぞれ1.2mLのPBSで再構成し、以下の表3に示すように、プール化して、生菌数(viable count)を評価した。凍結乾燥後の固形物をバイアルから取り出し、50mLのCチューブに入れ、プール化し(条件ごとに5つのバイアルからの固形物)、6mLのPBSで再構成して生菌数を評価した。表3を参照のこと。
【0057】
SGGK3安定剤を含有する製剤では、垂直壁面バイアル中で許容できる凍結乾燥外観をもたらし、Cuxhaven B製剤では、垂直壁面バイアル中で外観が悪く、Cuxhaven Bを含有するいくつかの製剤では、完全に乾燥されてないと見えた。
【0058】
SGGK3安定剤を含有する製剤から得られた固形物は、バイアルに軽く叩くだけで垂直壁面バイアルから容易に取り出すことができ、バイアル中に残留物をほとんど残さなかった。Cuxhaven Bを含有する製剤では、垂直壁面バイアルから取り出さなかった。垂直壁面バイアル中のすべての製剤は、乾燥時に最小限の損失を示した(表3に示すとおり)。
【0059】
表3に示されているように、SGGK3安定剤を含有する製剤から得られた固形物は、固形物としてバイアルから取り出す時に生菌数の損失がなかった。
【表3】
【0060】
SGGK3安定剤を含有する製剤から得られた固形物は機能的であり、以下の表4を参照のこと。
【表4】
【0061】
実施例2:安定剤を有するガラス製およびプラスチック製のバイアル製剤
【0062】
本開示の方法の実施態様によれば、プラスチック製バイアルシステムは、ガラス製の垂直壁面バイアルを用いて生成される取り出し可能な固形物に匹敵する、凍結乾燥製剤の取り出し可能な固形物を生成するのに使用できる。
【0063】
一実施態様において、試験群では、50%の生きているボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)抗原を安定剤(25%配合希釈剤を有する25%SGGK3)と配合した。生菌数のために配合物をサンプリングし(下記の表5を参照のこと)、1バイアルあたり1.2mLまたは0.3mL(n=20ずつ)でガラス製の垂直壁面バイアルに、または1.2mLまたは0.5mL(n=20ずつ)でプラスチック製3mL垂直壁面バイアルに添加した。垂直壁面バイアルは、上記の実施例1において詳述されているように凍結乾燥した。
【0064】
乾燥が完了したら、凍結乾燥後のバイアル内評価のために、1.2mLバイアルをそれぞれ1.2mLのPBSで再構成し、プール化して(5バイアル)、以下の表5に示すように生菌数を評価した。
【0065】
SGGK3安定剤を含有する製剤から得られた固形物は、ガラス製の垂直壁面バイアルから容易に取り出された。
【表5】
【0066】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する」、「有する」などの用語は、反対の意図が明示されている場合を除き、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味し、一般的には、オープン接続句であると解釈される。オープンエンドな移行用語に続いて具体的に列挙された成分、構造、ステップ等の記載は、当該クレームを具体的に列挙された成分、構造、ステップ等に何ら限定するものでない。「からなる(consisting of)」または「からなる(consists of)」という用語は、クローズド接続句である。
【0067】
反対の意図が明示されている場合を除き、ある方法が一連の工程を含むものとして本明細書に記載されている場合、本明細書に提示されているような工程の順序は必ずしもそのような工程が実行され得る唯一の順序ではなく、記載されている工程のうちのあるものはおそらく省略され得、および/または本明細書に記載されていない他のある工程はその方法に追加され得る。
【0068】
反対の意図が明示されている場合を除き、用語は、明確化のためにその単数形で使用され、その複数形を含むことが意図されている。
【0069】
本明細書における「一実施態様において」または「一態様において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施態様または態様を意味するわけではない。
【0070】
以下は、本明細書を通じて使用される参照数字のリストである。
【符号の説明】
【0071】
【0072】
本発明は、実施態様および実施例によって示される設計を有するものとして説明されてきたが、本発明は、本開示の精神および範囲内でさらに修正され得る。したがって、この出願は、その一般原理を使用して、本発明の任意の変形、使用、または適合をカバーすることを意図している。さらに、本出願は、本発明が関係する当技術分野における既知のまたは慣習的な慣行の範囲内にあるような本開示からの逸脱をカバーすることを意図している。
【国際調査報告】