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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】リチウム電池用の難燃剤
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230119BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230119BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20230119BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20230119BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0568
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528992
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020060940
(87)【国際公開番号】W WO2021101920
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/936,692
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グー,ヂォンシン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ツェー-チョン
(72)【発明者】
【氏名】ベルツ,ザッシャ・ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,マーク・ティモシー
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ08
5H029HJ01
5H029HJ14
(57)【要約】
本発明は、1つまたは複数の臭素系難燃剤を含有する、リチウム電池用の非水電解質溶液を提供する。非水電解質溶液は、i)液体電解質媒体と、ii)リチウム含有塩と、iii)少なくとも1つの臭素系難燃剤と、を含む。臭素系難燃剤は、電解質溶液中に難燃量で存在し、沸点は約60℃以上であり、臭素含量は臭素系難燃剤の重量に基づいて約55重量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池用の非水電解質溶液であって、前記溶液は、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)難燃量の少なくとも1つの臭素系難燃剤であって、前記臭素系難燃剤の沸点は、約60℃以上であり、前記臭素系難燃剤の重量に基づいて、約55重量%以上の臭素含量を有し、前記臭素系難燃剤が、トリブロモエチレンまたはトリブロモネオペンチルアルコールではないことを条件とする、前記臭素系難燃剤と、を含む、前記溶液。
【請求項2】
前記臭素系難燃剤は、約85℃以上の沸点を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記臭素系難燃剤は、約65℃~約340℃の範囲の沸点を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
前記難燃量は、前記溶液の総重量に対して4重量%を超え、前記臭素系難燃剤は、約145℃~約250℃の沸点を有し、前記臭素系難燃剤の重量に基づいて、約85重量%以上の臭素含量を有する、請求書1に記載の溶液。
【請求項5】
前記難燃量は、前記溶液の総重量に対して6重量%を超え、前記臭素系難燃剤は、約150℃~約225℃の沸点を有し、前記臭素系難燃剤の重量に基づいて、約75重量%以上の臭素含量を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
前記難燃量は、前記溶液の総重量に対して8重量%を超え、前記臭素系難燃剤は、約85℃~約250℃の沸点を有し、前記臭素系難燃剤の重量に基づいて、約65重量%以上の臭素含量を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項7】
前記難燃量は、前記溶液の総重量に対して15重量%を超え、前記臭素系難燃剤は、前記臭素系難燃剤の重量に基づいて、約65重量%以上の臭素含量を有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項8】
前記臭素系難燃剤は、1,2-ジブロモエタンと2,3-ジブロモ-2-プロペン-1-オールとの混合物である、請求項1に記載の溶液。
【請求項9】
2-フェノキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,3,5,2λ5,4λ5,6λ5トリアザトリホスフィニンをさらに含み、前記臭素系難燃剤は、1,2-ジブロモエタン及び1,3-ジブロモプロパンから選択され、
A)1,2-ジブロモエタンと2-フェノキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,3,5,2λ5,4λ5,6λ5トリアザトリホスフィニンの重量比が、約1.5:1~約3:1であり、前記難燃量は、前記非水電解質溶液の総重量に対して、難燃剤分子が約6重量%以上であり、
B)1,3-ジブロプロパンと2-フェノキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,3,5,2λ5,4λ5,6λ5トリアザトリホスフィニンの重量比が、約1.5:1~約3:1であり、前記難燃量は、前記非水電解質溶液の総重量に対して、難燃剤分子が約6重量%以上であることを条件とする、請求項1に記載の溶液。
【請求項10】
前記液体電解質媒質は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、またはそれらの混合物である、及び/または前記リチウム含有塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、またはビス(オキサラト)ホウ酸リチウムである、請求項1~9のいずれかに記載の溶液。
【請求項11】
a)3~約6つの炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネート、
b)3~約5つの炭素原子と1~約4つのフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネート、
c)3~約9つの炭素原子を含有する、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、
d)3~約12つの炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェート、
e)3~約8つの炭素原子を含有する、環状スルトン、
f)5員環または6員環を有し、2~約6つの炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルサルファイト、
g)5員環または6員環を有し、2~約6つの炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルサルフェート、
h)6員環、7員環、または8員環を有し、2~約6つの炭素原子を含有する、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、少なくとも1つの電気化学的添加剤を更に含む、請求項1~10のいずれかに記載の溶液。
【請求項12】
前記電気化学的添加剤は、
a)3~約4つの炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネート、
b)3~約4つの炭素原子と1~約2つのフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネート、
c)3~約6つの炭素原子を含有する、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、
d)3~約9つの炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェート、
e)3~約4つの炭素原子を含有する、環状スルトン、
f)5員環を有し、2~約4つの炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルサルファイト、
g)5員環を有し、2~約4つの炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルサルフェート、
h)6員環または7員環を有し、2~約4つの炭素原子を含有する、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、請求項11に記載の溶液。
【請求項13】
前記電気化学的添加剤は、
a)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約12重量%の量の不飽和環状カーボネート、
b)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約8重量%の量のフッ素含有飽和環状カーボネート、
c)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.1重量%~約5重量%の量のトリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、
d)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量のトリヒドロカルビルホスフェート、
e)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%の量の環状スルトン、
f)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の飽和環状ヒドロカルビルサルファイト、
g)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%の量の飽和
環状ヒドロカルビルサルフェート、
h)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、請求項11または12に記載の溶液。
【請求項14】
前記電気化学的添加剤は、飽和環状ヒドロカルビルサルフェート、環状スルトン、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、または別のリチウム含有塩である、請求項11~13のいずれかに記載の溶液。
【請求項15】
前記電気化学的添加剤は、それぞれ、前記非水電解質溶液の総重量に対して、飽和環状ヒドロカルビルサルフェートは約1重量%~約4重量%の量であり、環状スルトンは約0.5重量%~約4重量%の量であり、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイトは約0.2重量%~約3重量%の量であり、別のリチウム含有塩は約1重量%~約4重量%の量である、請求項11に記載の溶液。
【請求項16】
前記電気化学的添加剤は、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1,3-プロペンスルトン、1,3-プロパンスルトン、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、またはビス(オキサラト)ホウ酸リチウムである、請求項11または15に記載の溶液。
【請求項17】
前記各電気化学的添加剤は、他の電気化学的添加剤と共に使用されない、請求項15または16に記載の溶液。
【請求項18】
前記電気化学的添加剤は、ビニレンカーボネート、4-フルオロ-エチレンカーボネート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリアリルホスフェート、1-プロパン-1,3-スルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、エチレンサルファイト、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシド、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、及びこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択される、請求項11~13のいずれかに記載の溶液。
【請求項19】
前記電気化学的添加剤は、
前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約3重量%の量のビニレンカーボネート、
前記非水電解質溶液の総重量に対して、約8重量%~約11重量%の量のビニレンカーボネート、
前記非水電解質溶液の総重量に対して、約1.5重量%~約5重量%の量の4-フルオロ-エチレンカーボネート、
前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.2重量%~約3重量%の量のトリス(トリメチルシリル)ホスファイト、
前記非水電解質溶液の総重量に対して、約1重量%~約5重量%の量のトリアリルホスフェート、
前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約4重量%の量の1,3-プロパンスルトンまたは1,3-プロペンスルトン、
前記非水電解質溶液の総重量に対して、約1重量%~約4重量%の量の1,3,2-ジオキサチオラン,2-オキシド、
前記非水電解質溶液の総重量に対して、約1重量%~約4重量%の量の1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、
前記非水電解質溶液の総重量に対して、約1重量%~約4重量%の量の1,5,2,4-ジオキジチアン2,2,4,4-テトラオキシド、
前記非水電解質溶液の総重量に対して、約1重量%~約4重量%の量のビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、及び
これらのうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、請求項18に記載の溶液。
【請求項20】
前記電気化学的添加剤は、1-プロパン-1,3-スルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキサイド、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、及びビス(オキサラト)ホウ酸リチウムから選択される、請求項18または19に記載の溶液。
【請求項21】
前記電気化学的添加剤は、それぞれ、前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約4重量%の量の1-プロパン-1,3-スルトン、約0.5重量%~約4重量%の量の1-プロペン-1,3-スルトン、約1重量%~約4重量%の量の1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、及び約1重量%~約4重量%の量のビス(オキサラト)ホウ酸リチウムから選択される、請求項18に記載の溶液。
【請求項22】
前記各電気化学的添加剤は、他の電気化学的添加剤と共に使用されない、請求項20または21に記載の溶液。
【請求項23】
正極、負極、及び請求項1~22のいずれかに記載の非水電解質溶液を含む、非水リチウム電池。
【請求項24】
リチウム電池用の非水電解質溶液であって、前記溶液は、
a)液体電解質媒質と、
b)リチウム含有塩と、
c)難燃量の少なくとも1つの臭素系難燃剤であって、前記臭素系難燃剤は、1,1,2-トリブロモエタン、1,1,2,2-テトラブロモエタン、ブロモクロロメタン、トリブロモメタン、1,3-ジブロモプロパン、2,3-ジブロモ-2-プロペン-1-オール、ジブロモメタン、1,2-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエチレン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、及び1,3-ジブロモベンゼンから選択される、前記臭素系難燃剤と、を含む、前記溶液。
【請求項25】
前記難燃量は、前記溶液の総重量に対して4重量%を超え、前記臭素系難燃剤は、1,1,2-トリブロモエタン、1,1,2,2-テトラブロモエタン、及びブロモホルムからなる群から選択される、請求項24に記載の溶液。
【請求項26】
前記難燃量は、前記溶液の総重量に対して6重量%を超え、前記臭素系難燃剤は、1,3-ジブロモプロパンである、請求項24に記載の溶液。
【請求項27】
前記難燃量は、前記溶液の総重量に対して8重量%を超え、前記臭素系難燃剤は、2,3-ジブロモ-2-プロペン-1-オール、ジブロモメタン、1,2-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエチレン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、及び前述のうちの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項24に記載の溶液。
【請求項28】
前記難燃量は、前記溶液の総重量に対して15重量%を超え、前記臭素系難燃剤は、1,3-ジブロモベンゼンである、請求項24に記載の溶液。
【請求項29】
前記非水電解質溶液は、前記非水電解質溶液の総重量に対して、約8重量%~約11重
量%の量のビニレンカーボネートを更に含む、請求項25に記載の溶液。
【請求項30】
前記液体電解質媒質は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、またはそれらの混合物である、及び/または前記リチウム含有塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、またはビス(オキサラト)ホウ酸リチウムである、請求項24~29のいずれかに記載の溶液。
【請求項31】
正極、負極、及び請求項24~30のいずれかに記載の非水電解質溶液を含む、非水リチウム電池。
【請求項32】
リチウム電池用の非水電解質溶液を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)難燃量の少なくとも1つの臭素系難燃剤であって、前記臭素系難燃剤の沸点は、約60℃以上であり、前記臭素系難燃剤の重量に基づいて、約55重量%以上の臭素含量を有し、前記臭素系難燃剤が、トリブロモエチレンまたはトリブロモネオペンチルアルコールではないことを条件とする、前記臭素系難燃剤と、を含む、構成成分を配合することを含む、前記プロセス。
【請求項33】
前記構成成分は、
a)3~約6つの炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネート、
b)3~約5つの炭素原子と1~約4つのフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネート、
c)3~約9つの炭素原子を含有する、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、
d)3~約12つの炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェート、
e)3~約8つの炭素原子を含有する、環状スルトン、
f)5員環または6員環を有し、2~約6つの炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルサルファイト、
g)5員環または6員環を有し、2~約6つの炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルサルフェート、
h)6員環、7員環、または8員環を有し、2~約6つの炭素原子を含有する、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、少なくとも1つの電気化学的添加剤を更に含む、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
リチウム電池用の非水電解質溶液を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)難燃量の少なくとも1つの臭素系難燃剤であって、前記臭素系難燃剤は、1,1,2-トリブロモエタン、1,1,2,2-テトラブロモエタン、ブロモクロロメタン、トリブロモメタン、1,3-ジブロモプロパン、2,3-ジブロモ-2-プロペン-1-オール、ジブロモメタン、1,2-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエチレン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、及び1,3-ジブロモベンゼンから選択される、前記臭素系難燃剤と、を含む、構成成分を配合することを含む、前記プロセス。
【請求項35】
前記構成成分は、ビニレンカーボネート、4-フルオロ-エチレンカーボネート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリアリルホスフェート、1-プロパン-1,3-スルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、エチレンサルファイト、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシド、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、及びこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択される、少なくとも1つの電気化学的添加剤を更に含む、請求項34に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池用の難燃剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の安全性に影響を及ぼす構成成分のうちの1つは、リチウム含有電解質溶液での可燃性溶媒を使用することである。電解質溶液に難燃剤を含めることは、これらの溶液の可燃性を軽減する1つの方法である。難燃剤が電解質溶液の適切な構成成分であるためには、電解質への溶解性、ならびに電池動作範囲での電気化学的安定性、及び電池性能への悪影響が最小限であることが必要である。電池性能への悪影響には、電気伝導率の低下、及び/または活物質への化学的不安定性が含まれ得る。
【0003】
リチウムイオン電池の電気化学的性能への影響を最小限に抑えながら、合理的なコストでリチウムイオン電池の可燃性を効果的に抑制できる難燃剤が望まれている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、少なくとも1つの臭素系難燃剤を含有する、リチウム電池用の非水電解質溶液を提供する。臭素系難燃剤(複数可)の存在下では、少なくとも実験室条件下で、これらの非水電解質溶液で火が消える。
【0005】
本発明の一実施形態は、リチウム電池用の非水電解質溶液であり、この溶液は、i)液体電解質媒質と、ii)リチウム含有塩と、iii)少なくとも1つの臭素系難燃剤と、を含む。臭素系難燃剤は、電解液中に難燃量で存在し、沸点は約60℃以上であり、臭素含量は臭素系難燃剤の重量に基づいて約55重量%以上、好ましくは約60重量%以上である。臭素系難燃剤は、トリブロモエチレンまたはトリブロモネオペンチルアルコールではない。
【0006】
本発明の別の実施形態は、リチウム電池用の非水電解質溶液であり、この溶液は、i)液体電解質媒質と、ii)リチウム含有塩と、iii)少なくとも1つの臭素系難燃剤と、を含む。臭素系難燃剤は、1,1,2-トリブロモエタン、1,1,2,2-テトラブロモエタン、ブロモクロロメタン、トリブロモメタン(ブロモホルム)、1,3-ジブロモプロパン、2,3-ジブロモ-2-プロペノール、ジブロモメタン、1,2-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエチレン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、及び1,3-ジブロモベンゼンから選択される。
【0007】
本発明のこれら及び他の実施形態及び特徴は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から更に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書全体を通して、「電解質溶液」という語句は、「非水電解質溶液」という語句と同じ意味で使用される。
【0009】
液体電解質媒質は、リチウム電池で使用されるリチウム電解質溶液用の液体電解質媒質を通常形成する、1つまたは複数の溶媒を含み、これらの溶媒は、極性及び非プロトン性であり、電気化学的サイクルに対して安定していて、好ましくは低粘度である。これらの溶媒には通常、非環状炭酸エステル、環状炭酸エステル、エーテル、硫黄含有化合物、及びホウ酸のエステルが含まれる。
【0010】
本発明の実施で液体電解質媒質を形成できる溶媒には、エチレンカーボネート(1,3-ジオキソラン-2-オン)、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジオキソラン、ジメトキシエタン(グリム)、テトラヒドロフラン、メタンスルホニルクロリド、エチレンサルファイト、1,3-プロピレングリコールホウ酸エステル、及び前述のうちの任意の2つ以上の混合物が挙げられる。
【0011】
好ましい溶媒には、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びそれらの混合物が含まれる。より好ましいのは、特に約20:80~約40:60、より好ましくは約25:75~約35:65のエチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート比の体積比でのエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合物である。
【0012】
本発明の実施での適切なリチウム含有塩には、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム、硝酸リチウム、チオシアン酸リチウム、アルミン酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、テトラフルオロアルミン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、アルキル基が1~6つの炭素原子を有するアルキル炭酸リチウム、メチルスルホン酸リチウム、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム、ペンタフルオロエチルスルホン酸リチウム、ペンタフルオロフェニルスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウム(エチルスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及び前述のうちの任意の2つ以上の混合物が含まれる。好ましいリチウム含有塩には、ヘキサフルオロリン酸リチウム、及びビス(オキサラト)ホウ酸リチウムが含まれる。
【0013】
電解質溶液中のリチウム含有塩の典型的な濃度は、約0.1M~約2.5M、好ましくは約0.5M~約2M、より好ましくは約0.75M~約1.75M、更により好ましくは約0.95M~約1.5Mの範囲である。複数のリチウム含有塩がリチウム含有電解質を形成する場合、濃度は、電解質溶液中に存在するすべてのリチウム含有塩の総濃度を指す。
【0014】
電解質溶液は、リチウム塩に加えて他の塩を含むことができるが、そのような他の塩(複数可)が、所望の用途のための電池の性能または電解質溶液の難燃性のいずれかを実質的に低下させない場合に限る。リチウム塩以外の適切な電解質には、他のアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、及びセシウム塩、ならびにアルカリ土類金属塩、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、及びバリウム塩が含まれる。いくつかの態様にて、非水電解質溶液中の塩は、ただ1つまたは複数のリチウム塩である。
【0015】
電解質溶液中に存在し得る適切なアルカリ金属塩には、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、テトラクロロアルミン酸ナトリウム、テトラフルオロアルミン酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、及びヘキサフルオロリン酸ナトリウムなどのナトリウム塩、ならびに塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、過塩素酸カリウム、硝酸カリウム、チオシアン酸カリウム、アルミン酸カリウム、テトラクロロアルミン酸カリウム、テトラフルオロアルミン酸カリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、及びヘキサフルオロリン酸カリウムなどのカリウム塩が含まれる。
【0016】
電解質溶液中に存在し得る適切なアルカリ土類金属塩には、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、チオシアン酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、テトラクロロアルミン酸マグネシウム、テトラフルオロアルミン酸マグネシウム、テトラフェニルホウ酸マグネシウム、テトラフルオロホウ酸マグネシウム、及びヘキサフルオロリン酸マグネシウムなどのマグネシウム塩、ならびに塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、過塩素酸カルシウム、硝酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、テトラクロロアルミン酸カルシウム、テトラフルオロアルミン酸カルシウム、テトラフェニルホウ酸カルシウム、テトラフルオロホウ酸カルシウム、ヘキサフルオロリン酸カルシウムなどのカルシウム塩が含まれる。
【0017】
本発明の実施で、難燃剤は、非水電解質溶液の液体媒質に可溶であるか、またはそれと混和性である。液体形態の難燃剤は、非水電解質溶液の液体媒質と混和性であり、ここで「混和性」とは、難燃剤が、電解質溶液から分離した相を形成しないことを意味する。更に具体的には、1.2Mのヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する30重量%のエチレンカーボネートと70重量%のエチルメチルカーボネートの混合物中で、撹拌装置で24時間振とうした後、単一の相を形成し、振とうを停止した後に別の相は形成されず、難燃剤は、非水電解質溶液から沈殿したり、懸濁液またはスラリーを形成したりしなければ、難燃剤は混和性がある。
【0018】
固体形態の難燃剤に通常使用される「可溶性」という用語は、溶解すると、難燃剤が非水電解質溶液から沈殿したり、懸濁液またはスラリーを形成したりしないことを指す。更に具体的には、1.2Mのヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する30重量%のエチレンカーボネートと70重量%のエチルメチルカーボネートの混合物中で、撹拌装置で24時間振とうした後、溶解し、振とうを停止した後に沈殿、懸濁液またはスラリーを形成しなければ、難燃剤は可溶性がある。臭素系難燃剤は、非水電解質溶液の他の成分のいずれかの沈殿、または懸濁液もしくはスラリーの形成を引き起こさないことが推奨され、かつ好ましい。
【0019】
本発明の実施にて、臭素系難燃剤は一般に、臭素系難燃剤の重量に基づいて、約55重量%以上、好ましくは約60重量%以上の臭素含量を有し、沸点は、約60℃以上、好ましくは約65℃以上、より好ましくは約85℃以上である。いくつかの実施形態にて、本発明の実施での臭素系難燃剤は、分子中の臭素含量が、約55重量%~約95重量%、より好ましくは約60重量%~約95重量%の範囲である。いくつかの好ましい実施形態にて、臭素系難燃剤は、分子中の臭素含量が、約75重量%~約95重量%の範囲である。
【0020】
本発明の臭素系難燃剤の沸点は、約60℃以上、好ましくは約65℃以上、より好ましくは約85℃以上であり、通常、約60℃~約340℃、好ましくは約65℃~約325℃、より好ましくは約95℃~約300℃、更により好ましくは約100℃~約250℃の範囲である。本明細書全体で説明されている沸点は、特に明記されていない限り、標準の温度と圧力(標準状態)でのものである。
【0021】
本発明の実施で、非水電解質溶液における難燃量とは、溶液が以下に記載される修正された水平UL-94試験に合格するのに十分な難燃剤が存在することを意味する。難燃量は、異なる臭素系難燃剤ごとに異なり、いくつかの実施形態では、非水電解質溶液の総重量に対して、約4重量%を超える難燃剤分子、好ましくは約6重量%以上の難燃剤分子である。他の実施形態では、難燃量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約6重量%を超える難燃剤分子、約8重量%を超える難燃剤分子、約10重量%を超える難燃剤分子、または約15重量%を超える難燃剤分子であり、好ましくは約8重量%以上の難燃剤分子、
約10重量%以上の難燃剤分子、約15重量%以上の難燃剤分子、約20重量%以上の難燃剤分子である。
【0022】
非水電解質溶液における難燃量(後述の修正水平UL-94試験に合格)は、臭素含有量に関して、通常、非水電解質溶液の総重量に対して、約5重量%以上の臭素(原子)であり、異なる臭素系難燃剤ごとに異なる。いくつかの実施形態では、難燃量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約6重量%以上、好ましくは約7重量%以上の臭素(原子)である。他の実施形態では、難燃量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約8重量%以上、好ましくは約9重量%以上、より好ましくは約10重量%以上、更により好ましくは約12重量%以上の臭素(原子)である。
【0023】
本発明で使用する臭素系難燃剤は、通常、1~約8つの炭素原子、好ましくは1~約6つの炭素原子を有する。臭素系難燃剤は、通常、約125g/モル~約350g/モル、好ましくは約150g/モル~約325g/モルの範囲の分子量を有する。臭素系難燃剤中の臭素原子の数は、一般に、分子中に1~約4つの臭素原子の範囲である。
【0024】
好ましい実施形態では、臭素系難燃剤の沸点は、60℃~約340℃、好ましくは約65℃~約325℃、より好ましくは約95℃~約300℃の範囲であり、分子中の臭素含量は、約55重量%~約95重量%、より好ましくは約60重量%~約95重量%、更により好ましくは約75重量%~約95重量%の範囲である。いくつかの好ましい実施形態で、臭素系難燃剤は、約95℃~約325℃の範囲の沸点と、約75重量%~約95重量%の範囲の分子中の臭素含量を有する。より好ましい実施形態で、臭素系難燃剤はまた、1~約8つの炭素原子、好ましくは1~約6つの炭素原子を有し、約125g/モル~約350g/モル、好ましくは約150g/モル~約325g/モルの範囲の分子量を有する。
【0025】
いくつかの実施形態で、難燃量は、溶液の総重量に対して4重量%を超え、臭素系難燃剤は、約145℃~約250℃の沸点を有し、臭素系難燃剤の重量に基づいて、約85重量%以上の臭素含量を有する。好ましい実施形態で、難燃量は、溶液の総重量に対して約6重量%以上、または非水電解質溶液の総重量に対して約5.4重量%以上の臭素(原子)である。好ましくは、臭素系難燃剤は、1つまたは2つの炭素原子、及び2~4つの臭素原子を有する脂肪族またはアルケニル分子である。これらの臭素系難燃剤は、通常、約225g/モル~約375g/モル、好ましくは約245g/モル~約360g/モルの分子量を有する。より好ましくは、臭素系難燃剤は、1,1,2-トリブロモエタン、1,1,2,2-テトラブロモエタン、またはブロモホルム(CHBr)である。
【0026】
他の実施形態で、難燃量は、溶液の総重量に対して6重量%を超え、臭素系難燃剤は、約150℃~約225℃の沸点を有し、臭素系難燃剤の重量に基づいて、約75重量%以上の臭素含量を有する。好ましい実施形態で、難燃量は、溶液の総重量に対して約8重量%以上、または非水電解質溶液の総重量に対して約6.3重量%以上の臭素(原子)である。いくつかの好ましい実施形態で、臭素系難燃剤の沸点は、約175℃~約215℃である。好ましくは、臭素系難燃剤は、3つの炭素原子及び2~3つの臭素原子を有する脂肪族分子である。これらの臭素系難燃剤は、通常、約185g/モル~約225g/モルの分子量を有する。より好ましくは、臭素系難燃剤は、1,3-ジブロモプロパンである。
【0027】
更に他の実施形態で、難燃量は、溶液の総重量に対して8重量%を超え、臭素系難燃剤は、約85℃~約250℃の沸点を有し、臭素系難燃剤の重量に基づいて、約65重量%以上の臭素含量を有する。好ましい実施形態で、難燃量は、溶液の総重量に対して約10重量%以上、または非水電解質溶液の総重量に対して約6.9重量%以上の臭素(原子)
である。いくつかの好ましい実施形態で、臭素系難燃剤の沸点は、約95℃~約250℃、より好ましくは約95℃~約225℃である。好ましくは、臭素系難燃剤は、1~5つの炭素原子及び2つの臭素原子を有するα,ω-臭素化脂肪族もしくはアルケニル分子、または3つの炭素原子及び2つの臭素原子を有するアルケノールである。これらの臭素系難燃剤は、通常、約165g/モル~約250g/モルの分子量を有する。より好ましくは、臭素系難燃剤は、2,3-ジブロモ-2-プロペン-1-オール、ジブロモメタン、1,2-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエチレン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタンである。
【0028】
別の実施形態で、難燃量は、溶液の総重量に対して15重量%を超え、臭素系難燃剤は、臭素系難燃剤の重量に基づいて、約65重量%以上の臭素含量を有する。好ましい実施形態で、難燃量は、溶液の総重量に対して約20重量%以上、または非水電解質溶液の総重量に対して約13.6重量%以上の臭素(原子)である。いくつかの好ましい実施形態で、臭素系難燃剤の沸点は、約175℃~約225℃、より好ましくは約200℃~約225℃である。好ましくは、臭素系難燃剤は、6~12つの炭素原子、より好ましくは約6~約8つ炭素原子、及び芳香環に結合した2つ以上の臭素原子を有する芳香族化合物である。これらの臭素系難燃剤は、通常、約200g/モル~約250g/モルの分子量を有する。より好ましくは、臭素系難燃剤は、1,3-ジブロモベンゼンである。
【0029】
本発明の実施で、2つ以上の臭素系難燃剤の混合物を使用できる。2つ以上の臭素系難燃剤の混合物において、難燃量は、非水電解質溶液の総重量に対して、難燃剤分子が約20重量%以上であり、ここで、その量は、非水電解質溶液中の臭素系難燃剤の総量を指す。同様に、臭素としての難燃量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約16重量%以上の臭素(原子)であり、この量は、非水電解質溶液中のすべての臭素系難燃剤からの臭素原子の総量を指す。臭素系難燃剤の混合物では、構成成分のうちの1つは、1,2-ジブロモエタンであり、他の構成成分は、2,3-ジブロモ-2-プロペン-1-オール(ジブロモアリルアルコール、またはDBAA)である。混合物で、1,2-ジブロモエタンとDBAAの重量比は、約1.5:1~約3:1、より好ましくは約1.5:1~約2.5:1、更により好ましくは約2:1~約2.5:1の範囲である。
【0030】
所望により、1つまたは複数の非臭素系難燃剤を電解質溶液に含めることができる。これらの他の難燃剤は、一般に、2-フェノキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,3,5,2λ5,4λ5,6λ5トリアザトリホスフィニン、及び2-エトキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-トリアザトリホスフィニンなどのフッ素化シクロトリホスフィニン誘導体である。好ましい非臭素系難燃剤は、2-フェノキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,3,5,2λ5,4λ5,6λ5トリアザトリホスフィニンである。
【0031】
非臭素系難燃剤を使用する場合、難燃量は、非水電解質溶液の総重量に対して、難燃剤分子が約4重量%以上、好ましくは約6重量%以上であり、この量は、非水電解質溶液中の臭素系難燃剤と非臭素系難燃剤の総量を指す。これらの難燃剤の混合物では、臭素系難燃剤は、1,2-ジブロモエタンと1,3-ジブロモプロパンから選択され、非臭素系難燃剤は、2-フェノキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,3,5,2λ5,4λ5,6λ5トリアザトリ-ホスフィニンである。これらの混合物では、1,2-ジブロモエタンと2-フェノキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,3,5,2λ5,4λ5,6λ5トリアザトリホスフィニンの重量比は、約1.5:1~約3:1、好ましくは約2:1~約2.5:1であり、難燃量は、非水電解質溶液の総重量に対して、難燃剤分子が約6重量%以上である。臭素の量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約3重量%以上、好ましくは約3.5重量%以上の臭素(原子)である。別の混合物では、1,3-ジブロプロパンと2-フェノキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,
3,5,2λ5,4λ5,6λ5トリアザトリホスフィニンの重量比は、約1.5:1~約3:1、好ましくは約2:1~約2.5:1であり、難燃量は、非水電解質溶液の総重量に対して、難燃剤分子が約6重量%以上である。臭素の量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約3重量%以上、好ましくは約3.25重量%以上の臭素(原子)である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの電気化学的添加剤が非水電解質溶液に含まれる。
【0033】
本発明の実施で、電気化学的添加剤は、非水電解質溶液の液体媒質に可溶であるか、またはそれと混和性である。液体形態の電気化学添加剤は、非水電解質溶液の液体媒質と混和性であり、ここで「混和性」とは、電気化学的添加剤が、電解質溶液から分離した相を形成しないことを意味する。更に具体的には、1.2Mのヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する30重量%のエチレンカーボネートと70重量%のエチルメチルカーボネートの混合物中で、撹拌装置で24時間振とうした後、単一の相を形成し、振とうを停止した後に別の相は形成されず、電気化学的添加剤が、非水電解質溶液から沈殿したり、懸濁液またはスラリーを形成したりしなければ、電気化学的添加剤は混和性がある。
【0034】
固体形態の電気化学添加剤に通常使用される「可溶性」という用語は、溶解すると、電気化学添加剤が非水電解質溶液から沈殿したり、懸濁液またはスラリーを形成したりしないことを指す。更に具体的には、1.2Mのヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する30重量%のエチレンカーボネートと70重量%のエチルメチルカーボネートの混合物中で、撹拌装置で24時間振とうした後、溶解し、振とうを停止した後に沈殿、懸濁液またはスラリーを形成しなければ、電気化学的添加剤は可溶性がある。臭素系難燃剤は、非水電解質溶液の他の成分のいずれかの沈殿、または懸濁液もしくはスラリーの形成を引き起こさないことが推奨され、かつ好ましい。
【0035】
臭素系難燃剤、電気化学的添加剤、及びそれらの混合物は、一般に電気化学的サイクルに対して安定で、好ましくは低粘度であり、及び/または非水電解質溶液の粘度を著しく増加させない。
【0036】
様々な実施形態にて、電気化学的添加剤は、a)3~約4つの炭素原子を含有する不飽和環状カーボネート、b)3~約4つの炭素原子及び1~約2つのフッ素原子を含有するフッ素含有飽和環状カーボネート、c)3~約6つの炭素原子を含有するトリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、d)3~約9つの炭素原子を含有するトリヒドロカルビルホスフェート、e)3~約4つの炭素原子を含有する環状スルトン、f)5員環を有し、2~約4つの炭素原子を含有する飽和環状ヒドロカルビルサルファイト、g)5員環を有し、2~約4つの炭素原子を含む飽和環状ヒドロカルビルサルフェート、h)6員環または7員環を有し、2~約4つの炭素原子を含有する環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、i)別のリチウム含有塩、及びj)前述のうちの任意の2つ以上の混合物から選択される。
【0037】
他の実施形態では、電気化学的添加剤は、a)非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約12重量%の量の不飽和環状カーボネート、b)非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約8重量%の量のフッ素含有飽和環状カーボネート、c)非水電解質溶液の総重量に対して、約0.1重量%~約5重量%の量のトリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、d)非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量のトリヒドロカルビルホスフェート、e)非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%の量の環状スルトン、f)非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の飽和環状ヒドロカルビルサルファイト、g)非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%の量の飽和環状ヒド
ロカルビルサルフェート、h)非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、i)非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の別のリチウム含有塩、及びj)前述のうちの任意の2つ以上の混合物から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態にて、電気化学的添加剤は、3~約6つの炭素原子、好ましくは3~約4つの炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネートである。適切な不飽和環状カーボネートには、ビニレンカーボネート(1,3-ジオキソール-2-オン)、4-メチル-1,3-ジオキソール-2-オン、及び4,5-ジメチル-1,3-ジオキソール-2-オンが含まれる。ビニレンカーボネートは、好ましい不飽和環状カーボネートである。不飽和環状カーボネートは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.5重量%~約12重量%、より好ましくは約0.5重量%~約3重量%、または約8重量%~約11重量%の量である。
【0039】
電気化学的添加剤が、3~約5つの炭素原子、好ましくは3~約4つの炭素原子、及び1~約4つのフッ素原子、好ましくは1~約2つのフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネートである場合、適切なフッ素含有飽和環状カーボネートには、4-フルオロ-エチレンカーボネート、及び4,5-ジフルオロ-エチレンカーボネートが含まれる。好ましくは、フッ素含有飽和環状カーボネートは、4-フルオロ-エチレンカーボネートである。フッ素含有飽和環状カーボネートは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.5重量%~約8重量%、より好ましくは約1.5重量%~約5重量%の量である。
【0040】
トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト電気化学的添加剤は、3~約9つの炭素原子、好ましくは約3~約6つの炭素原子を含む。トリヒドロカルビルシリル基は、同じでも異なっていてもよい。適切なトリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイトには、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、ビス(トリメチルシリル)(トリエチルシリル)ホスファイト、トリス(トリエチルシリル)ホスファイト、ビス(トリメチルシリル)(トリエチルシリル)ホスファイト、ビス(トリメチルシリル)(トリ-n-プロピルシリル)ホスファイト、及びトリス(トリ-n-プロピルシリル)ホスファイトが含まれる。トリス(トリメチルシリル)ホスファイトは、好ましいトリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイトである。トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイトは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.1重量%~約5重量%、より好ましくは約0.15重量%~約4重量%、更により好ましくは約0.2重量%~約3重量%の量である。
【0041】
いくつかの実施形態にて、電気化学的添加剤は、3~約12つの炭素原子、好ましくは3~約9つの炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェートである。ヒドロカルビル基は飽和または不飽和であり得て、トリヒドロカルビルホスフェートのヒドロカルビル基は、同じでも異なっていてもよい。適切なトリヒドロカルビルホスフェートには、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、トリ-n-プロピルホスフェート、トリアリルホスフェート、及びトリビニルホスフェートが含まれる。トリアリルホスフェートは、好ましいトリヒドロカルビルホスフェートである。トリヒドロカルビルホスフェートは、一般に、非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約5重量%、より好ましくは約2重量%~約4重量%の量である。
【0042】
電気化学的添加剤が、3~約8つの炭素原子、好ましくは3~約4つの炭素原子を含有する環状スルトンである場合、適切な環状スルトンには、1,3-プロパンスルトン、1,3-プロペンスルトン、1,3-ブタンスルトン(5-メチル-1,2-オキサチオラ
ン2,2-ジオキシド)、2,4-ブタンスルトン(3-メチル-1,2-オキサチオラン2,2-ジオキシド)、1,4-ブタンスルトン(1,2-オキサチアン2,2-ジオキシド)、2-ヒドロキシ-α-トルエンスルホン酸スルトン(3H-1,2-ベンゾオキサチオール2,2-ジオキシド)、及び1,8-ナフトスルトンが含まれる。好ましい環状スルトンには、1,3-プロパンスルトン、及び1,3-プロペンスルトンが含まれる。環状スルトンは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.25重量%~約5重量%、より好ましくは約0.5重量%~約4重量%の量である。
【0043】
飽和環状ヒドロカルビルサルファイト電気化学的添加剤は、2~約6つの炭素原子、好ましくは2~約4つの炭素原子を含有し、5員環または6員環、好ましくは5員環を有する。メチル基またはエチル基、好ましくは1つまたは複数のメチル基などの1つまたは複数の置換基は、環上に存在することができ、より好ましくは、環上に置換基は存在しない。適切な飽和環状ヒドロカルビルサルファイトには、1,3,2-ジオキサチオラン、2-オキシド(1,2-エチレンサルファイト)、1,2-プロパンジオールサルファイト(1,2-プロピレンサルファイト)、4,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサチオラン2-オキシド、1,3,2-ジオキサチアン2-オキシド、4-メチル-1,3-ジオキサチアン、2-オキシド(1,3-ブチレンサルファイト)が含まれる。好ましい環状ヒドロカルビルサルファイトには、1,3,2-ジオキサチオラン、2-オキシド(1,2-エチレンサルファイト)が含まれる。環状ヒドロカルビルサルファイトは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.5重量%~約5重量%、より好ましくは約1重量%~約4重量%の量である。
【0044】
いくつかの実施形態にて、電気化学的添加剤は、2~約6つの炭素原子、好ましくは2~約4つの炭素原子を含有し、5員環または6員環、好ましくは5員環を有する、飽和環状ヒドロカルビルサルフェートである。メチル基またはエチル基、好ましくは1つまたは複数のメチル基などの1つまたは複数の置換基は、環上に存在することができ、より好ましくは、環上に置換基は存在しない。適切な飽和環状ヒドロカルビルサルフェートには、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド(1,2-エチレンサルフェート)、1,3,2-ジオキサチアン2,2-ジオキシド(1,3-プロピレンサルフェート)、4-メチル-1,3,2-ジオキサチアン2,2-ジオキシド(1,3-ブチレンサルフェート)、及び5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサチアン2,2-ジオキシドが含まれる。飽和環状ヒドロカルビルサルフェートは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.25重量%~約5重量%、より好ましくは約1重量%~約4重量%の量である。
【0045】
電気化学的添加剤が、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物である場合、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物は、2~約6つの炭素原子、好ましくは2~約4つの炭素原子を含有し、6員環、7員環、または8員環を有する。好ましくは、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物は、2~約4つの炭素原子を含有し、6員環または7員環を有する。メチル基またはエチル基、好ましくは1つまたは複数のメチル基などの1つまたは複数の置換基は、環上に存在することができ、より好ましくは、環上に置換基は存在しない。適切な環状ジオキサジチオポリオキシド化合物には、1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシド、1,5,2,4-ジオキサジチエパン2,2,4,4-テトラオキシド(シクロジソン)、3-メチル-1,5,2,4-ジオキサジチエパン、2,2,4,4-テトラオキシド、及び1,5,2,4-ジオキサジチオカン、2,2,4,4-テトラオキシドが含まれる。1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシドが好ましい。環状ジオキサジチオポリオキシド化合物は、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.5重量%~約5重量%、より好ましくは約1重量%~約4重量%の量である。
【0046】
「別のリチウム含有塩」及び「他のリチウム含有塩」という語句は、電解質溶液の調製に少なくとも2つのリチウム塩が使用されていることを示している。電気化学的添加剤が別のリチウム含有塩である場合、それは、好ましくは、非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量である。適切なリチウム含有塩には、上述のリチウム含有塩のすべてが含まれる。ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムが好ましい。
【0047】
同じ種類の様々な電気化学的添加剤及び/または異なる種類の電気化学的添加剤を含む、前述の電気化学的添加剤のうちの任意の2つ以上の混合物を使用できる。電気化学的添加剤の混合物が使用される場合、電気化学的添加剤の合計量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%である。不飽和環状カーボネートと飽和環状ヒドロカルビルサルファイトの混合物、または環状スルトン、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、及び環状ジオキサジチオポリオキシド化合物の混合物が好ましい。
【0048】
電気化学的添加剤の好ましい種類には、飽和環状ヒドロカルビルサルフェート、環状スルトン、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、及び特に他の電気化学的添加剤と一緒に使用しない場合の別のリチウム含有塩が含まれる。より好ましくは、それぞれ、非水電解質溶液の総重量に対して、飽和環状ヒドロカルビルサルフェートは約1重量%~約4重量%の量であり、環状スルトンは約0.5重量%~約4重量%の量であり、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイトは約0.2重量%~約3重量%の量であり、別のリチウム含有塩は約1重量%~約4重量%の量である。
【0049】
他の実施形態では、電気化学的添加剤は、ビニレンカーボネート、4-フルオロ-エチレンカーボネート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリアリルホスフェート、1-プロパン-1,3-スルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、エチレンサルファイト、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシド、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、及びこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択される。電気化学的添加剤は、好ましくは、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1-プロパン-1,3-スルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、またはビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、より好ましくは、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1-プロペン-1,3-スルトン、またはビス(オキソラト)ホウ酸リチウムである。より好ましい電気化学的添加剤は、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、及びビス(オキサラト)ホウ酸リチウムである。その量と好ましさは、上述のとおりである。
【0050】
前述の電気化学的添加剤のうちの任意の2つ以上の混合物を、使用できる。電気化学的添加剤の混合物が使用される場合、電気化学的添加剤の合計量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%である。
【0051】
リチウム電池用の電解質溶液中にしばしば含まれる追加の成分もまた、本発明の電解質溶液中に存在することができる。そのような追加の成分には、スクシノニトリル、及びヘキサメチルジシラザンなどのシラザン化合物が含まれる。通常、任意の成分の量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約1重量%~約5重量%、好ましくは約2重量%~約4重量%の範囲である。
【0052】
本発明の別の実施形態は、リチウム電池用の非水電解質溶液を製造するためのプロセスを提供する。このプロセスは、i)液体電解質媒質と、ii)リチウム含有塩と、iii)少なくとも1つの臭素系難燃剤と、を含む、構成成分を配合することを含み、ただし、臭素系難燃剤は、トリブロモエチレン、またはトリブロモネオペンチルアルコールではな
いことを条件とする。場合により、構成成分は、iv)上述のような少なくとも1つの電気化学的添加剤を更に含む。臭素系難燃剤は、電解液中に難燃量で存在し、沸点は約60℃以上であり、臭素含量は臭素系難燃剤の重量に基づいて約55重量%以上、好ましくは約60重量%以上である。成分は任意の順序で配合することができるが、すべての成分を液体電解質媒質に加えることが好ましい。任意の成分もまた、液体電解質媒質に加えることが好ましい。液体電解質媒質、リチウム含有塩、臭素系難燃剤、電気化学的添加剤(複数可)、及び各成分の量の特徴、ならびに好ましさは、上述のとおりである。
【0053】
本発明の更に別の実施形態は、リチウム電池用の非水電解質溶液を製造するためのプロセスを提供する。このプロセスは、i)液体電解質媒質と、ii)リチウム含有塩と、iii)少なくとも1つの臭素系難燃剤と、を含む、構成成分を配合することを含む。臭素系難燃剤は、1,1,2-トリブロモエタン、1,1,2,2-テトラブロモエタン、ブロモクロロメタン、トリブロモメタン(ブロモホルム)、1,3-ジブロモプロパン、2,3-ジブロモ-2-プロペノール、ジブロモメタン、1,2-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエチレン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、及び1,3-ジブロモベンゼンから選択される。成分は任意の順序で配合することができるが、すべての成分を液体電解質媒質に加えることが好ましい。任意の成分もまた、液体電解質媒質に加えることが好ましい。液体電解質媒質、リチウム含有塩、臭素系難燃剤、電気化学的添加剤(複数可)、及びそれぞれの量の特徴、ならびに好ましさは、上述のとおりである。
【0054】
1つまたは複数の臭素系難燃剤を含有する、本発明の非水電解質溶液は、通常、正極、負極、及び非水電解質溶液を含む、非水リチウム電池で使用される。非水リチウム電池は、任意選択でそれらの間にセパレータを有する、負極と正極との間に非水電解質溶液を注入することによって得ることができる。
【0055】
以下の実施例は、例示の目的のために提示され、本発明の範囲に制限を課すことを意図するものではない。
【0056】
実施例1~実施例3では、修正された水平UL-94試験を実施した。この修正された水平UL-94試験は、既知の公開されている水平UL-94試験と非常によく似ている。これに関しては、例えば、Otsuki,M.et al. “Flame-Retardant Additives for Lithium-Ion Batteries.”Lithium-Ion Batteries.Ed.M.Yoshio et al.New York,Springer,2009,275-289を参照のこと。修正されたUL-94試験は以下のとおりである。
【0057】
円筒状のグラスファイバーの芯から芯を切り取り、切り口を滑らかにした後、芯の表面からほこりや粒子を取り除いた。試験前に、芯を120℃で20時間乾燥させた。芯の長さは、5±0.1インチ(12.7±0.25cm)だった。試験する各試験片は、ドライボックスの中で、4オンス(120mL)のガラス瓶の中に準備され、所望の量の難燃剤と、存在する場合は電気化学的添加剤を、所望の量のプレーンな電解質溶液と配合することによって、例えば、5重量%の臭素系難燃剤と95重量%のプレーンな電解質溶液、または例えば、8重量%の臭素系難燃剤、2重量%の電気化学的添加剤及び90重量%のプレーンな電解質溶液を配合して、難燃剤を含有する電解質溶液を形成した。難燃剤と配合する前、プレーンな電解質溶液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(重量比3:7)中に1.2MのLiPFを含有していた。各芯を電解質溶液に30分間浸した。各試験片を電解質溶液から取り出し、液だれが生じなくなるまで電解質溶液の上で保持してから、4オンス(120mL)ガラス瓶に入れた。電解質溶液が蒸発するのを防ぐために、キャップを閉じた。バーナーを点火し、高さ20±1mmの青い炎を生成
するように調整した。試験片はその4オンス(120mL)ガラス瓶から取り出し、試験片を水平位置の金属支持固定具に置き、芯の一端で固定した。排気扇が作動している場合、試験のために停止した。炎は、水平の芯に対して45±2度の角度だった。バーナーにバーナーチューブがある場合にこれを実現する1つの方法は、バーナーチューブの中心軸を、水平から45±2度の角度で試験片の端に向かって傾斜させるというものだった。試験片の位置を変えずに、試験片の自由端に30±1秒間、炎を当てた。バーナーは、30±1秒後に、または試験片の燃焼フロントが1インチ(2.54cm)の印に達した直後に取り外した。試験炎を取り外した後も試験片が燃焼し続けた場合は、炎が消えるまで、または燃焼フロント(炎)が1インチ(2.54cm)の印から4インチ(10.16cm)の印まで移動するまでの時間を秒単位で記録した。
【0058】
バーナーを取り外したときに炎が消えた場合、試験片は「可燃性ではない」とみなされた。1インチ(2.54cm)の印に達する前に炎が消えた場合、試験片は「難燃性」であるとみなされた。4インチ(10.16cm)の印に達する前に炎が消えた場合、試験片は「自己消火性」であるとみなされた。
【0059】
以下に報告されている各修正水平UL-94試験の結果は、3回の実施の平均である。
【0060】
実施例1
上記のように調製された、臭素系難燃剤の混合物を含有する、いくつかの非水電解質溶液を、上述の修正UL-94試験に供した。結果を以下の表1A~表1Dにまとめる。上述のように、報告された数値は3回の実施の平均値である。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0061】
実施例2
上記のように調製された、臭素系難燃剤の混合物を含有する、非水電解質溶液を、上述の修正UL-94試験に供した。結果を以下の表2にまとめる。上述のように、報告された数値は3回の実施の平均値である。
【表5】
【0062】
実施例3
上記のように調製された、臭素系難燃剤及び非臭素系難燃剤を含有する、いくつかの非水電解質溶液を、上述の修正UL-94試験に供した。結果を以下の表3にまとめる。上述のように、報告された数値は3回の実施の平均値である。
【表6】
【0063】
実施例4
コイン電池における、臭素系難燃剤を含有するいくつかの非水電解質溶液の試験も実施した。コイン電池は、所望の量の難燃剤を含有する非水電解質溶液を使用して、組み立てた。次に、コイン電池を、C/5で4.2Vまで充電するCCCVの電気化学的サイクルに供し、CV部分でのC/50の電流遮断、及びC/5で3.0VでのCC放電を行った。
【0064】
1つの試料は、難燃剤を含まない非水電解質溶液であり、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(重量比3:7)中の1.2MのLiPFを含んだ。残りの試料
は、電解質溶液中に所望の量の難燃剤が含まれていた。結果は以下の表4にまとめる。クーロン効率の誤差範囲は、約±0.5%~約±1.0%である。表4に報告されている結果は、複数の電池の平均である。「複数の電池」とは、通常、2つまたは3つの電池を意味する。
【表7】
【0065】
本明細書または特許請求の範囲のいずれかで化学名または化学式で言及される成分は、単数または複数で言及されるかどうかにかかわらず、化学名または化学式で言及される別の物質(例えば、別の成分、溶媒など)と接触する前に存在するものとして識別される。そのような変化、変換、及び/または反応は、特定の成分を本開示に従って要求される条件下で一緒にすることの自然な結果であるため、結果として得られる混合物または溶液でどのような化学変化、変換、及び/または反応が起こるかは問題ではない。したがって、この成分は、所望の操作の実行または所望の組成物の形成に関連して一緒にされる成分として識別される。また、以下の本明細書の特許請求の範囲は、物質、構成要素、及び/または成分を現在形で言及している場合でも(「含む」、「である」など)、本開示に従う1つ以上の他の物質、構成要素、及び/または成分とこれが最初に接触されるか、ブレンドされるかまたは混合される直前の時点でそれが存在するかのように、この物質、構成要素、または成分を指すものである。物質、構成要素、または成分は、本開示及び化学者の通常の技術に従って実施された場合、接触、ブレンドまたは混合の操作の過程で、化学反応または変換により元の同一性を失った可能性があるという事実はしたがって、実質上問題はない。
【0066】
本発明は、本明細書に列挙される材料及び/または手順を含んでもよいし、それらからなってもよいし、またはそれらから本質的になってもよい。
【0067】
本明細書で使用する場合、本発明の組成物中のまたは本発明の方法で使用される、成分の量を修飾する「約」という用語は、例えば、典型的な測定及び現実世界での濃縮物の作製または溶液の使用に使用される液体処理手順によって;これらの手順の故意でない誤りによって;組成物の製造または方法の実行に使用される成分の製造、供給源、または純度の違いによって;などによって生じ得る、数的な量の変化を指す。約という用語はまた、特定の初期混合物から生じる組成物の異なる平衡条件に起因して異なる量も包含する。「約」という用語で修飾されているかどうかにかかわらず、請求項にはその量と等価なものが包含される。
【0068】
本明細書で使用される冠詞「a」または「an」は、本明細書で用いる場合、特に明示的に示される場合を除き、詳細な説明または請求項の範囲を、その冠詞が指す単一の要素に対して限定するものではなく、限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、
冠詞「a」または「an」とは、本明細書で用いる場合、本文で別段明記されていない限り、1つ以上のそのような要素を網羅することを意図している。
【0069】
本発明は、その実施においてかなりの変動を受けやすい。したがって、前述の説明は、本発明を上記に提示された特定の例示に限定することを意図するものではなく、限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】