(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】キメラT細胞の持続性を強化するためのAKT阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20230119BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230119BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230119BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230119BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20230119BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230119BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230119BHJP
A61K 31/7064 20060101ALI20230119BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
C12N5/10
C12N15/13
C07K16/28
C12N15/86 Z
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/7064
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529041
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 US2020061107
(87)【国際公開番号】W WO2021102038
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】304021853
【氏名又は名称】エイチ リー モフィット キャンサー センター アンド リサーチ インスティテュート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィラ,マルコ,エル.
(72)【発明者】
【氏名】セブチ,セイド,エム.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA04
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA30
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA24
(57)【要約】
CAR-T細胞の養子細胞移入における再発は、多くの場合、CAR-T細胞消失の結果である。対象におけるCAR-T細胞療法を強化するための方法であって、治療用CAR-T細胞の養子細胞移入を受ける対象に、CAR-T細胞の持続性を増加させるために有効な量のAkt阻害剤を投与することを含む、方法を本明細書に開示する。結果として、CAR-T細胞とAKT阻害剤との組み合わせで治療された対象は、再発する可能性が低い。したがって、対象を治療するための方法であって、有効量のCAR-T細胞を含む組成物を対象に養子移入することと、対象に、CAR-T細胞の持続性を増加させるために有効な量のAkt阻害剤を投与することと、を含む方法も、本明細書に開示される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を治療するための方法であって、
(a)有効量のCAR-T細胞を含む組成物を前記対象に養子移入することと、
(b)前記対象に、前記CAR-T細胞の持続性を増加させるために有効な量のAkt阻害剤を投与することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記Akt阻害剤が、トリシリビン(TCN)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CAR-T細胞が、腫瘍関連抗原(TAA)結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、および共刺激シグナル伝達領域を含むキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを含む、免疫エフェクター細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫エフェクター細胞が、αβT細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、B細胞、自然リンパ系細胞(ILC)、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、制御性T細胞、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
対象におけるCAR-T細胞療法を強化するための方法であって、治療用CAR-T細胞の養子細胞移入を受ける対象に、前記CAR-T細胞の持続性を増加させるために有効な量のAkt阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項6】
前記Akt阻害剤が、トリシリビン(TCN)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記CAR-T細胞が、腫瘍関連抗原(TAA)結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、および共刺激シグナル伝達領域を含むキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを含む、免疫エフェクター細胞を含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫エフェクター細胞が、αβT細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、B細胞、自然リンパ系細胞(ILC)、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、制御性T細胞、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
養子細胞療法に使用するためのキメラ抗原受容体エフェクターメモリーT(CAR-T
EM)細胞であって、キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを発現するように操作した、精製されたCD45RO
+/CCR7
-/CD62L
-T細胞の集団を含む、CAR-T
EM細胞。
【請求項10】
前記CARポリペプチドが、CD28共刺激ドメインを含まない、請求項9に記載のCAR-T
EM細胞。
【請求項11】
前記CARポリペプチドが、41BB共刺激ドメインを含む、請求項9または10に記載のCAR-T
EM細胞。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載のCAR-T
EM細胞を産生するための方法であって、
(a)ドナーからPBMCを単離し、前記PBMCからT細胞を単離することと、
(b)前記T細胞をCD3/CD28ビーズで刺激することと、
(c)CARポリペプチドをコードするウイルスベクターで活性化された前記T細胞に形質導入することと、
(d)エフェクターメモリーT細胞の割合を増加させるために有効な量のAKT阻害剤を含有する培地中で、前記CAR-T細胞を拡大することと、
(e)CD45RO
+/CCR7
-/CD62L
-CAR-T
EM細胞を単離するために、前記CAR-T細胞を選別することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記CAR-T
EM細胞が、CD8
+/CD4
-T細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記Akt阻害剤が、トリシリビン(TCN)である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
(e)CD45RO
+/CCR7
-/CD62L
-CAR-T
EM細胞を単離するために、前記CAR-T細胞を選別することをさらに含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記培地が、1~10μMの前記Akt阻害剤を含有する、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記培地が、3μMの前記Akt阻害剤を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記CARポリペプチドが、CD28共刺激ドメインを含まない、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記CARポリペプチドが、41BB共刺激ドメインを含む、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月18日に出願された米国特許仮出願第62/937,028号、2019年11月19日に出願された米国特許仮出願第62/937,359号、2019年12月2日に出願された米国特許仮出願第62/942,662号、2019年12月5日に出願された米国特許仮出願第62/944,295号、および2020年2月27日に出願された米国特許仮出願第62/982,480号の利益を主張し、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の不十分な持続性およびエフェクター機能は、養子T細胞療法の課題であった。CAR-T細胞の養子細胞移入における再発は、多くの場合、CAR-T細胞消失の結果である。
【発明の概要】
【0003】
対象におけるCAR-T細胞療法を強化するための方法であって、治療用CAR-T細胞の養子細胞移入を受ける対象に、CAR-T細胞の持続性を増加させるために有効な量のAkt阻害剤を投与することを含む、方法を本明細書に開示する。結果として、CAR-T細胞とAkt阻害剤との組み合わせで治療された対象は、再発する可能性が低い。したがって、対象を治療する方法であって、有効量のCAR-T細胞を含む組成物を対象に養子移入することと、CAR-T細胞の持続性を増加させるために有効な量のAkt阻害剤を対象に投与することと、を含む、方法も、本明細書に開示する。
【0004】
いくつかの実施形態では、Akt阻害剤は、プロテインキナーゼB(Akt)のATP結合ポケットを標的とするオルソステリック阻害剤である。例としては、イソキノリン-5-スルホンアミド(例えば、H-8、H-89、NL-71-101);アゼパン誘導体(例えば、(-)-バラノールに由来する一連の構造);アミノフラザン(例えば、GSK690693);複素環(例えば、7-アザインドール、6-フェニルプリン誘導体、ピロロ[2,3-d]ピリミジン誘導体、CCT128930、3-アミノピロリジン、アニリノトリアゾール誘導体、スピロインドリン誘導体、AZD5363、イパタセルチブ(GDC-0068、RG7440)、A-674563、A-443654);フェニルピラゾール誘導体(例えば、AT7867、AT13148);チオフェンカルボキサミド誘導体(例えば、アフレセルチブ(GSK2110183)、2-ピリミジル-5-アミドチオフェン誘導体(DC120)、ウプロセルチブ(GSK2141795)が挙げられる。
【0005】
いくつかの実施形態では、Akt阻害剤は、より高い特異性、低減された副作用、およびより低い毒性を提供するオルソステリック阻害剤よりも優れている可能性がある、アロステリック阻害剤である。例としては、類似体(例えば、MK-2206);アルキルリン脂質(例えば、エデルホシン(1-O-オクタデシル-2-O-メチル-rac-グリセロ-3-ホスホコリン、ET-18-OCH3)イルモホシン(BM41.440)、ミルテホシン(ヘキサデシルホスホコリン、HePC)、ペリホシン(D-21266)、エルシルホスホコリン(ErPC)、エルホシン(ErPC3、およびエルシルホスホホモコリン);インドール-3-カルビノール類似体(例えば、インドール-3-カルビノール、3-クロロアセチルインドール、ジインドリルメタン、ジエチル6-メトキシ-5,7-ジヒドロインドロ[2,3-b]カルバゾール-2,10-ジカルボキシレート(SR13668)、およびOSU-A9);スルホンアミド誘導体(例えば、PH-316、PHT-427);チオ尿素誘導体(例えば、PIT-1、PIT-2、DM-PIT-1、N-[(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)カルボニル]-N’-(3-ブロモフェニル)-チオ尿素);プリン誘導体(例えば、トリシリビン(TCN、NSC154020)、トリシリビン一リン酸活性類似体(TCN-P)、4-アミノ-ピリド[2,3-d]ピリミジン誘導体API-1,3-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン誘導体、ARQ092);ならびに他の構造、誘導体(例えば、BAY1125976、3-メチル-キサンチン、キノリン-4-カルボキサミドおよび2-[4-(シクロヘキサ-1,3-ジエン-1-イル)-1H-ピラゾール-3-イル]フェノール、3-オキソ-チルカル酸、3α-および3β-アセトキシ-チルカル酸、およびアセトキシ-チルカル酸)が挙げられる。
【0006】
いくつかの実施形態では、Akt阻害剤は、天然物、抗生物質、Lアクトキノマイシン、フレノリシンB、カラフンギン、メデルマイシン、Boc-Phe-ビニルケトン、4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)、1,6-ナフチリジノン誘導体、およびイミダゾ-1,2-ピリジン誘導体などの不可逆的阻害剤である。
【0007】
特定の実施形態では、Akt阻害剤は、トリシリビン(TCN、NSC154020)などのプリン誘導体である。
【0008】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載する。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】TCNがセントラルメモリーCAR T細胞集団を増加させることを示す。陰性選択を用いて、健康なドナーPBMCからT細胞を単離した。最初のスピン形質導入の2日前にTCNを添加した。7日目に、細胞を染色し、LSRII上でフローサイトメトリーを実行した。
【
図2A】TCNがm1928zのCAR T細胞においてp-Aktを阻害することを示す。陰性選択を用いて、T細胞をC57BL6脾細胞から単離した。最初のスピン形質導入の2日前にTCNを添加した。5日目に、CAR T細胞を3T3-mCD19標的で24時間刺激した。刺激後、細胞を溶解し、ウェスタンブロットを実行した。
【
図3A】TCNがh19BBzのCAR死滅およびサイトカイン分泌を低減することを示す。陰性選択を用いて、健康なドナーPBMCからT細胞を単離した。最初のスピン形質導入の2日前にTCNを添加した。リアルタイム細胞死滅を測定するために、xCelligence RTCAマシンを使用してCAR T細胞を3T3-hCD19標的細胞で刺激した。サイトカイン分泌を測定するために、CAR T細胞を標的細胞で24時間刺激した。次いで、上清を収集し、Ellaを使用してサイトカイン測定を実行した。
【
図4】TCNがエフェクターメモリーCAR T細胞集団を増加させることを示す。陰性選択を用いて、健康なドナーPBMCからT細胞を単離した。最初のスピン形質導入の2日前にTCNを添加した。7日目に、細胞を染色し、LSRII上でフローサイトメトリーを実行した。
【
図5】m19dz、m19z、m19hBBZ、およびm1928zの構築物を例示する。
【
図6】h19BBZおよびh1928z構築物を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示をより詳細に説明する前に、本開示は、説明される特定の実施形態に限定されず、そのため、当然ながら変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるので、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0011】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確にそうでないことを指示しない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間の各介在値と、その記述された範囲内の任意の他の記述された値または介在値が、本開示内に包含されることを理解されたい。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して、より小さな範囲に含まれてもよく、また、記述された範囲内の任意の明確に除外された限定を前提として、本開示内に包含される。記述された範囲が、上限および下限の一方または両方を含む場合、それらの含まれた上限および下限の一方または両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0012】
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または均等の任意の方法および材料もまた、本開示の実施または試験に使用することができるが、ここで好ましい方法および物質を本明細書に記載する。
【0013】
本明細書で引用されたすべての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、参照により本明細書に組み込まれることを明確にかつ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれ、引用された刊行物に関連して方法および/または物質を開示し、説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日以前のその開示のためのものであり、本開示が、先行開示のためにそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供した公開日は実際の公開日とは異なる可能性があり、これらは独立して確認する必要があり得る。
【0014】
本開示を読むと当業者には明らかであろうように、本明細書に記載および例示される個々の実施形態の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得る、またはそれらと組み合わされ得る個別の成分および特徴を有する。任意の詳述された方法は、詳述されたイベントの順序、または論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0015】
本開示の実施形態は、別段の指示がない限り、当技術分野の範囲内である、化学、生物学などの技術を用いる。
【0016】
以下の実施例は、当業者に、本明細書において開示および特許請求された方法およびプローブの使用方法の完全な開示および説明を提供するために示される。数値(例えば、量、温度など)に関して正確度を確保するように努力がなされてはいるが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。別段の指定がない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、圧力は大気圧またはその付近である。標準温度および圧力は、20℃および1気圧と定義されている。
【0017】
本開示の実施形態が詳細に説明される前に、別段の指示がない限り、本開示は、特定の材料、試薬、反応物質、製造プロセスなどに限定されないので、変化し得ることが理解されるであろう。また、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことを理解されたい。本開示では、ステップが、これが論理的に可能である異なる順序で行われ得ることも可能である。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の参照対象を含むことに留意されたい。
【0019】
「アミノ酸配列」という用語は、アミノ酸残基を表す略語、文字(letter)、文字(character)または単語のリストを指す。本明細書で使用されるアミノ酸略語は、アミノ酸のための従来の1文字コードであり、以下のように表される。A、アラニン;B、アスパラギンまたはアスパラギン酸;C、システイン;Dアスパラギン酸;E、グルタミン酸、グルタミン酸;F、フェニルアラニン;G、グリシン;Hヒスチジン;Iイソロイシン;K、リジン;L、ロイシン;M、メチオニン;N、アスパラギン;P、プロリン;Q、グルタミン;R、アルギニン;S、セリン;T、スレオニン;V、バリン;W、トリプトファン;Y、チロシン;Z、グルタミンまたはグルタミン酸。
【0020】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン、特異的結合能力を維持するその誘導体、および免疫グロブリン結合ドメインに相同であるか、またはほぼ相同である結合ドメインを有するタンパク質を指す。これらのタンパク質は、天然源に由来し得るか、または部分的もしくは完全に合成的に産生され得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、ヒトクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのうちのいずれを含む、あらゆる種由来のあらゆる免疫グロブリンクラスのメンバーであってもよい。例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物とともに使用される抗体は、IgGクラスの誘導体である。インタクトな免疫グロブリン分子に加えて、「抗体」という用語にも含まれるのは、それらの免疫グロブリン分子の断片またはポリマー、および標的抗原に選択的に結合するヒトもしくはヒト化バージョンの免疫グロブリン分子である。
【0021】
「抗体断片」という用語は、完全長未満である抗体の任意の誘導体を指す。例示的な実施形態では、抗体断片は、全長抗体の特異的結合能の少なくとも重要な部分を保持する。抗体断片の例には、Fab、Fab′、F(ab′)2、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、Fc、およびFd断片が含まれるが、これらに限定されない。抗体断片は、任意の手段によって産生され得る。例えば、抗体断片は、インタクトな抗体の断片化によって酵素的または化学的に産生されてもよく、部分的抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に産生されてもよく、または完全にまたは部分的に合成的に産生されてもよい。抗体断片は、任意選択で、一本鎖抗体断片であってもよい。あるいは、断片は、例えばジスルフィド結合によって一緒に連結された複数の鎖を含み得る。断片はまた、任意選択で、多分子複合体であってもよい。機能的抗体断片は、典型的には、少なくとも約50個のアミノ酸を含み、より典型的には、少なくとも約200個のアミノ酸を含むであろう。
【0022】
「抗原結合部位」という用語は、抗原上のエピトープに特異的に結合する抗体の領域を指す。
【0023】
「アプタマー」という用語は、特定の標的分子に結合するオリゴ核酸またはペプチド分子を指す。これらの分子は、一般に、ランダム配列プールから選択される。選択されたアプタマーは、特有の三次構造に適応して、高い親和性および特異性で標的分子を認識することができる。「核酸アプタマー」は、その立体構造を介して標的分子に結合し、それによってそのような分子の機能を阻害または抑制するDNAまたはRNAオリゴ核酸である。核酸アプタマーは、DNA、RNA、またはそれらの組み合わせで構成され得る。「ペプチドアプタマー」は、定常足場タンパク質内に挿入された可変ペプチド配列を有するコンビナトリアルタンパク質分子である。ペプチドアプタマーの同定は、典型的には、ストリンジェントな酵母ジハイブリッド条件下で行われ、これは、選択されたペプチドアプタマーが、細胞内の状況において安定して発現され、正しく折りたたまれる可能性を強化する。
【0024】
「担体」という用語は、化合物または組成物と組み合わせた場合に、その意図される使用または目的のために、化合物または組成物の調製、保存、投与、送達、有効性、選択性、またはいかなる他の特徴を補助または促進する、化合物、組成物、物質、または構造を意味する。例えば、担体は、活性成分の任意の分解を最小限に抑え、対象におけるいかなる有害な副作用も最小限に抑えるように選択することができる。
【0025】
「キメラ分子」という用語は、それらの天然状態で別々に存在する2つ以上の分子を結合することによって作製される単一の分子を指す。単一のキメラ分子は、そのすべての構成分子の所望の官能性を有する。キメラ分子の1つの種類は、融合タンパク質である。
【0026】
「操作された抗体」という用語は、少なくとも、抗体の重鎖および/または軽鎖の可変ドメインに由来する抗原結合部位を含む抗体断片を含み、任意選択で、Igクラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMおよびIgY)のうちのいずれかに由来の抗体の可変および/または定常ドメインの全体または一部を含み得る組換え分子を指す。
【0027】
「エピトープ」という用語は、抗体が優先的かつ特異的に結合する抗原の領域を指す。モノクローナル抗体は、分子的に定義され得る分子の単一の特異的エピトープに優先的に結合する。本発明において、複数のエピトープは、多重特異性抗体によって認識され得る。
【0028】
「融合タンパク質」という用語は、1つのポリペプチドのアミノ末端と別のポリペプチドのカルボキシル末端との間に形成されるペプチド結合を介して2つ以上のポリペプチドが結合することによって形成されるポリペプチドを指す。融合タンパク質は、構成ポリペプチドの化学的カップリングによって形成され得るか、または単一の連続した融合タンパク質をコードする核酸配列からの単一のポリペプチドとして発現され得る。一本鎖融合タンパク質は、単一の連続したポリペプチド骨格を有する融合タンパク質である。融合タンパク質は、分子生物学における従来の技術を使用して調製して、フレーム内の2つの遺伝子を単一の核酸に結合させ、次いで、融合タンパク質が産生される条件下で適切な宿主細胞内で核酸を発現させることができる。
【0029】
「Fab断片」という用語は、ヒンジ領域N末端でH鎖間ジスルフィド結合に切断し、1つの抗体分子から2つのFab断片を生成する、酵素パパインによる抗体の切断によって生成される抗原結合部位を含む抗体の断片を指す。
【0030】
「F(ab′)2断片」という用語は、ヒンジ領域C末端でH鎖間ジスルフィド結合に切断する酵素ペプシンによる抗体分子の切断によって生成される、2つの抗原結合部位を含有する抗体の断片を指す。
【0031】
「Fc断片」という用語は、その重鎖の定常ドメインを含む抗体の断片を指す。
【0032】
「Fv断片」という用語は、その重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む抗体の断片を指す。
【0033】
「遺伝子構築物」は、ポリペプチドの「コード配列」を含むか、またはそれ以外の場合、生物学的に活性なRNA(例えば、アンチセンス、デコイ、リボザイムなど)に転写可能であり、例えば、特定の実施形態では、哺乳類細胞において細胞にトランスフェクトされ得、構築物でトランスフェクトされた細胞においてコード配列の発現を引き起こし得る、ベクター、プラスミド、ウイルスゲノムなどの核酸を指す。遺伝子構築物は、コード配列に作動可能に連結された1つ以上の調節エレメント、ならびにイントロン配列、ポリアデニル化部位、複製起点、マーカー遺伝子などを含み得る。
【0034】
「同一性」という用語は、2つの核酸分子またはポリペプチド間の配列同一性を指す。同一性は、比較の目的で整列され得る各配列における位置を比較することによって決定することができる。比較配列中の位置が同じ塩基によって占有される場合、分子はその位置で同一である。核酸またはアミノ酸配列間の類似性または同一性の程度は、核酸配列が共有する位置における同一または一致するヌクレオチドの数の関数である。様々なアラインメントアルゴリズムおよび/またはプログラムを使用して、2つの配列間、例えば、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin,Madison,Wis.)の一部として利用可能であり、例えば、デフォルト設定とともに使用することができるFASTA、またはBLASTの同一性を計算することができる。例えば、本明細書に記載される特定のポリペプチドに対して少なくとも70%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性を有し、好ましくは実質的に同じ機能を示すポリペプチド、ならびにそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが企図される。別段の指示がない限り、類似性スコアはBLOSUM62の使用に基づく。BLASTPが使用される場合、パーセント類似性は、BLASTP陽性スコアに基づいており、パーセント配列同一性は、BLASTP一致スコアに基づいている。BLASTP「一致」は、同一である高スコアリング配列対における総残基の数および部分を示し、BLASTP「陽性」は、アラインメントスコアが正の値を有し、互いに類似している残基の数および部分を示す。本明細書に開示されるアミノ酸配列と同一性もしくは類似性のこれらの程度、または同一性もしくは類似性の任意の中程度を有するアミノ酸配列が、本開示によって企図され、包含される。類似のポリペプチドのポリヌクレオチド配列は、遺伝暗号を用いて推論され、従来の手段、特に遺伝暗号を用いてそのアミノ酸配列を逆翻訳することによって得ることができる。
【0035】
「リンカー」という用語は、当該技術分野で認識されており、2つのポリペプチドなどの2つの化合物を結合する分子または分子群を指す。リンカーは、単一の連結分子から構成され得るか、または連結分子とスペーサー分子とを含み得、連結分子と化合物とを特定の距離で分離することを意図する。
【0036】
「多価抗体」という用語は、2つ以上の抗原認識部位を含む抗体または操作された抗体を指す。例えば、「二価」抗体は、2つの抗原認識部位を有するが、「四価」抗体は、4つの抗原認識部位を有する。「単一特異性」、「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」などという用語は、(抗原認識部位の数とは対照的に)多価抗体に存在する異なる抗原認識部位特異性の数を指す。例えば、「単一特異性」抗体の抗原認識部位はすべて、同じエピトープに結合する。「二重特異性」抗体は、第1のエピトープに結合する少なくとも1つの抗原認識部位と、第1のエピトープとは異なる第2のエピトープに結合する少なくとも1つの抗原認識部位とを有する。「多価単一特異性」抗体は、すべて同じエピトープに結合する複数の抗原認識部位を有する。「多価二重特異性」抗体は、複数の抗原認識部位を有し、そのうちのいくつかは、第1のエピトープに結合し、そのうちのいくつかは、第1のエピトープとは異なる第2のエピトープに結合する。
【0037】
「核酸」という用語は、1つのヌクレオチドの3’位でリン酸基によって、別のヌクレオチドの5’末端に連結された単一のヌクレオチドまたは2つ以上のヌクレオチドを含む、天然もしくは合成分子を指す。核酸は、長さによって限定されず、したがって、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を含むことができる。
【0038】
「作動可能に連結された」という用語は、核酸と別の核酸配列との機能的関係を指す。プロモーター、エンハンサー、転写および翻訳停止部位、ならびに他のシグナル配列は、他の配列に作動可能に連結された核酸配列の例である。例えば、DNAの転写調節エレメントへの操作可能な結合は、DNAとプロモーターとの間の物理的および機能的関係を指し、したがってそのようなDNAの転写は、DNAを特異的に認識し、結合し、DNAを転写するRNAポリメラーゼによってプロモーターから開始される。
【0039】
「ペプチド」、「タンパク質」、および「ポリペプチド」とい用語は、1つのアミノ酸のカルボキシル基によって別のアミノ酸のアルファアミノ基に連結された2つ以上のアミノ酸を含む天然または合成分子を指すために互換的に使用される。
【0040】
「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に見合った過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題もしくは合併症もなくヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに好適な化合物、物質、組成物、および/または剤形を指す。
【0041】
「ポリペプチド断片」または「断片」という用語は、特定のポリペプチドに関して使用される場合、参照ポリペプチド自体と比較してアミノ酸残基が欠失されるが、残りのアミノ酸配列が通常、参照ポリペプチドのものと同一であるポリペプチドを指す。そのような欠失は、参照ポリペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端、または代替的に両方で生じ得る。断片は、典型的には、少なくとも約5、6、8、または10アミノ酸長、少なくとも約14アミノ酸長、少なくとも約20、30、40、または50アミノ酸長、少なくとも約75アミノ酸長、または少なくとも約100、150、200、300、500、またはそれ以上のアミノ酸長である。断片は、参照ポリペプチドの生物活性のうちの1つ以上を保持することができる。様々な実施形態では、断片は、参照ポリペプチドの酵素活性および/または相互作用部位を含み得る。別の実施形態では、断片は免疫原性を有し得る。
【0042】
「タンパク質ドメイン」という用語は、構造的完全性を示すタンパク質の一部、複数のタンパク質の一部、またはタンパク質全体を指し、この決定は、タンパク質の一部、複数のタンパク質の一部、またはタンパク質全体のアミノ酸組成に基づき得る。
【0043】
「一本鎖可変断片またはscFv」という用語は、重鎖ドメインおよび軽鎖ドメインが連結されているFv断片を指す。1つ以上のscFv断片を他の抗体断片(重鎖または軽鎖の定常ドメインなど)に連結して、1つ以上の抗原認識部位を有する抗体構築物を形成してよい。
【0044】
「スペーサー」は、本明細書で使用される場合、融合タンパク質を含むタンパク質を結合するペプチドを指す。一般に、スペーサーは、タンパク質を結合するか、またはタンパク質間のいくつかの最小距離もしくは他の空間的関係を維持する以外に、特定の生物活性を有しない。しかしながら、スペーサーの構成アミノ酸は、分子の折りたたみ、正味荷電、または疎水性などの分子のいくつかの特性に影響を与えるように選択され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、ポリペプチド(抗体を含む)または受容体を指す場合、タンパク質もしくはポリペプチドもしくは受容体が、タンパク質および他の生物製剤の不均質な集団中に存在することを決定する結合反応を指す。したがって、指定された条件(例えば、抗体の場合のイムノアッセイ条件)下では、特定のリガンドまたは抗体が、試料中に存在する他のタンパク質、またはリガンドもしくは抗体が生物内で接触し得る他のタンパク質にかなりの量で結合しない場合、その特定の「標的」(例えば、抗体が内皮抗原に特異的に結合する)に「特異的に結合する」。一般に、第2の分子を「特異的に結合する」第1の分子は、約105M-1(例えば、106M-1、107M-1、108M-1、109M-1、1010M-1、1011M-1、および1012M-1以上)を超える親和性定数(Ka)をその第2の分子と有する。
【0046】
「特異的送達」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の標的分子またはマーカーを有する細胞または組織との分子の優先的な会合を指し、その標的分子を欠く細胞または組織には適用されない。もちろん、分子と非標的細胞または組織との間にある程度の非特異的相互作用が生じ得ることは認識されている。それにもかかわらず、特異的送達は、標的分子の特異的認識を介して媒介されるものとして識別され得る。典型的には、特異的送達は、送達された分子と標的分子を欠く細胞との間よりも、送達された分子と標的分子を有する細胞との間ではるかに強い会合をもたらす。
【0047】
「対象」という用語は、投与または治療の標的である任意の個体を指す。対象は、脊椎動物、例えば、哺乳類であり得る。したがって、対象は、ヒト患者または動物患者であり得る。「患者」という用語は、臨床医、例えば、医師の治療下にある対象を指す。
【0048】
「治療上有効な」という用語は、使用された組成物の量が疾患または障害の1つ以上の原因または症状を改善するのに十分であることを指す。このような改善は、必ずしも除去ではなく、減少または変化を必要とするだけである。
【0049】
「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、核酸、例えば、発現ベクターの、当該細胞の染色体DNAへの核酸の導入を含む、レシピエント細胞への導入を意味する。
【0050】
「治療」という用語は、疾患、病的状態、または障害を治療、改善、安定化、または予防する意図を有する患者の医学的管理を指す。この用語は、積極的治療、すなわち、疾患、病的状態、または障害の改善に特異的に向けられた治療を含み、原因治療、すなわち、関連疾患、病的状態、または障害の原因の除去に向けられた治療も含む。加えて、この用語は、緩和的治療、すなわち、疾患、病的状態、または障害の治癒ではなく、症状の緩和のために設計された治療、予防的治療、すなわち、関連する疾患、病的状態、または障害の発症を最小限に抑える、または部分的に、もしくは完全に阻害することを目的とする治療、および支持的治療、すなわち、関連する疾患、病的状態、または障害の改善を目的とする別の特定の療法を補完するために使用される治療を含む。
【0051】
「バリアント」という用語は、保存的アミノ酸置換、非保存的アミノ酸置換(すなわち、縮重バリアント)、アミノ酸をコードする各コドン(すなわち、DNAおよびRNA)のゆらぎ位置内の置換、ペプチドのC末端に付加されたアミノ酸、または参照配列に対して60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%配列同一性を有するペプチドを有するアミノ酸またはペプチド配列を指す。
【0052】
「ベクター」という用語は、ベクター配列に連結している別の核酸を細胞内に輸送することができる核酸配列を指す。「発現ベクター」という用語は、細胞による発現に好適な形態で(例えば、転写調節エレメントに連結された)遺伝子構築物を含む任意のベクター(例えば、プラスミド、コスミドまたはファージ染色体)を含む。
【0053】
CAR T細胞拡張
メモリーT細胞は、以前にそれらの同族抗原に遭遇し、それに応答した感染およびがんと戦うT細胞(Tリンパ球としても知られる)のサブセットであり、したがって、抗原経験T細胞という用語がしばしば適用される。
【0054】
歴史的に、メモリーT細胞は、各々が独自の細胞表面マーカーの識別セットを有する、エフェクターまたはセントラルメモリーサブタイプのいずれかに属すると考えられた。その後、多数の追加のメモリーT細胞集団が発見された。すべてのメモリーT細胞サブタイプの単一の統一テーマは、それらが長寿命であり、同種抗原への再曝露時に多数のエフェクターT細胞に迅速に拡張することができることである。この機構によって、以前に遭遇した病原体に対して免疫系に「メモリー」を提供する。メモリーT細胞は、CD4+またはCD8+のいずれかであってよく、通常、CD45ROを発現するが、CD45RAを欠いている。
【0055】
エフェクターメモリーT細胞(TEM細胞)は、CD45ROを発現するが、C-Cケモカイン受容体7型(CCR7)およびL-セレクチン(CD62L)の発現を欠く。それらはまた、中等度の高いCD44の発現を有する。これらのメモリーT細胞は、リンパ節ホーミング受容体を欠いているため、末梢循環および組織に見出される。
【0056】
セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)は、CD45RO、CCR7、およびL-セレクチン(CD62L)を発現する。セントラルメモリーT細胞も、中等度から高度のCD44の発現を有する。このメモリー亜集団は、一般的にリンパ節および末梢循環に見られる。
【0057】
ウイルスまたは他の微生物分子に対する抗原特異的メモリーT細胞は、TCMサブセットおよびTEMサブセットの両方に見出すことができる。現在、ほとんどの情報は、細胞傷害性T細胞(CD8陽性)サブセットにおける観察に基づいているが、ヘルパーT細胞(CD4陽性)および細胞傷害性T細胞の両方について同様の集団が存在するようである。メモリー細胞の主要な機能は、関連する病原体を体内に再導入することによって、それらの細胞の再活性化後の増強された免疫応答である。この分野は集中的に研究されており、一部の情報はこれまでのところ入手できない可能性があることに留意することが重要である。
【0058】
CARポリペプチド
開示される方法を使用して、CARポリペプチドを含有するキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を産生することができる。CARポリペプチドは、一般に、エクトドメイン、膜貫通ドメイン、およびエンドドメインの3つのドメインから構成される。エクトドメインは、抗原認識に関与している。また、任意選択で、CARがグリコシル化され、免疫エフェクター細胞の細胞膜に固定され得るように、シグナルペプチド(SP)を含有する。膜貫通ドメイン(TD)は、その名の通り、エクトドメインをエンドドメインに結合し、細胞によって発現される場合に細胞膜内に存在する。エンドドメインは、抗原認識後に免疫エフェクター細胞に活性化シグナルを伝達するCARの先端部である。例えば、エンドドメインは、細胞内シグナル伝達ドメイン(ISD)および任意選択で、共刺激シグナル伝達領域(CSR)を含有することができる。CARポリペプチドは、概して、リンパ球活性化に関与する膜貫通シグナル伝達モチーフを有するモノクローナル抗体(mAb)の一本鎖可変断片(scFv)からの抗原認識ドメインを組み込む(Sadelain M,et al.Nat Rev Cancer 2003 3:35-45)。
【0059】
「シグナル伝達ドメイン(SD)」は、概して、ITAMがリン酸化されるときにシグナル伝達カスケードを活性化する免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。「共刺激シグナル伝達領域(CSR)」という用語は、T細胞受容体によるT細胞活性化を強化することができるCD28、41BB、およびICOSなどの共刺激タンパク質受容体からの細胞内シグナル伝達ドメインを指す。
【0060】
追加のCAR構築物は、例えば、Fresnak AD et al.Engineered T cells:the promise and challenges of cancer immunotherapy.Nat Rev Cancer.2016 Aug 23;16(9):566-81に記載されており、その全体が、これらのCARモデルの教示のために参照により組み込まれる。
【0061】
例えば、CARは、TRUCK、ユニバーサルCAR、自己駆動型CAR、アーマードCAR、自己破壊型CAR、条件付きCAR、標識化CAR、TenCAR、デュアルCAR、またはsCARであり得る。
【0062】
免疫抑制に耐性があるように操作されたCAR T細胞(アーマードCAR)は、免疫チェックポイントスイッチ受容体とともに、様々な免疫チェックポイント分子(例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)またはプログラム細胞死タンパク質1(PD1))を発現しなくなるように遺伝子組換えされてもよく、または免疫チェックポイントシグナル伝達をブロックするモノクローナル抗体とともに投与されてもよい。
【0063】
自己破壊型CARは、エレクトロポレーションによって送達されたRNAを使用してCARをコードするように設計され得る。あるいは、T細胞の誘導性アポトーシスは、遺伝子改変リンパ球におけるチミジンキナーゼへのガンシクロビル結合、またはつい最近記載された小分子二量体化剤によるヒトカスパーゼ9の活性化系に基づいて達成され得る。
【0064】
条件付きCAR T細胞は、回路を完了するための小分子の追加まで、デフォルトでは応答しないか、または「オフ」に切り替えられ、シグナル1とシグナル2の両方の完全な形質導入を可能にし、それによってCAR T細胞を活性化する。あるいは、T細胞は、標的抗原を対象としたその後投与される二次抗体に対する親和性を有するアダプター特異的受容体を発現するように操作され得る。
【0065】
タンデムCAR(TanCAR)T細胞は、細胞内共刺激ドメインおよびCD3ζドメインに融合した異なる親和性を有する2つの連結した一本鎖可変断片(scFv)からなる単一のCARを発現する。TanCAR T細胞活性化は、標的細胞が両方の標的を共発現するときにのみ達成される。
【0066】
デュアルCAR T細胞は、異なるリガンド結合標的を有する2つの別個のCARを発現し、一方のCARは、CD3ζドメインのみを含み、他方のCARは、共刺激ドメインのみを含む。デュアルCAR T細胞活性化には、両方の標的の共発現が必要である。
【0067】
安全性CAR(sCAR)は、細胞内阻害ドメインに融合された細胞外scFvからなる。標準CARを共発現するsCAR T細胞は、標準CAR標的を有するが、sCAR標的を欠く標的細胞に遭遇する場合にのみ活性化される。
【0068】
開示されるCARの抗原認識ドメインは、通常、scFvである。しかしながら、多くの代替物がある。天然のT細胞受容体(TCR)アルファおよびベータ単鎖からの抗原認識ドメインが、単純なエクトドメイン(例えば、HIV感染細胞を認識するためのCD4エクトドメイン)および連結サイトカイン(サイトカイン受容体を有する細胞の認識を導く)などのより外来性の認識成分を有するとして、記載されている。実際、所与の標的に高い親和性で結合するほぼすべてのものを抗原認識領域として使用することができる。
【0069】
エンドドメインは、抗原認識後に免疫エフェクター細胞にシグナルを伝達し、免疫エフェクター細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも1つを活性化するCARの先端部である。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。したがって、エンドドメインは、T細胞受容体(TCR)および任意選択で共受容体の「細胞内シグナル伝達ドメイン」を含み得る。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を用いることができるが、多くの場合、鎖全体を用いる必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される限り、その切断部分は、エフェクター機能シグナルを伝達する限りにおいて、インタクトな鎖の代わりに使用され得る。
【0070】
刺激的な方法で作用するTCR複合体の一次活性化を調節する細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)として知られているシグナル伝達モチーフを含み得る。ITAM含有細胞質シグナル伝達配列の例としては、CD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32(FcガンマRIIa)、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、FcγRIγ、FcγRIIIγ、FcεRIβ(FCERIB)、およびFcεRIγ(FCERIG)に由来するものが挙げられる。
【0071】
特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)由来である(TCR zeta,GenBank受入番号BAG36664.1)。T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ(CD3ζ)鎖は、T細胞受容体T3ゼータ鎖またはCD247(分化クラスター247)としても知られており、ヒトにおいては、CD247遺伝子によってコードされるタンパク質である。
【0072】
第1世代のCARは、典型的には、内因性TCRからのシグナルの主要伝達物質であるCD3ζ鎖からの細胞内ドメインを有していた。第2世代のCARは、様々な共刺激タンパク質受容体(例えば、CD28、41BB、ICOS)からの細胞内シグナル伝達ドメインをCARのエンドドメインに付加し、T細胞に追加のシグナルを提供する。つい最近では、第3世代のCARは、複数のシグナル伝達ドメインを組み合わせて、効力をさらに増強させる。これらのCARを移植したT細胞は、共刺激性受容体/リガンド相互作用とは無関係に、拡張、活性化、持続性、および腫瘍消滅効率の向上を実証した(Imai C,et al.Leukemia 2004 18:676-84;Maher J,et al.Nat Biotechnol 2002 20:70-5)。
【0073】
例えば、CARのエンドドメインは、それ自体でCD3ζシグナル伝達ドメインを含むか、または本発明のCARの状況で有用な任意の他の所望の細胞質ドメインと組み合わせるように設計され得る。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3ζ鎖部分および共刺激シグナル伝達領域を含むことができる。共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部分を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要とされる、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。そのような分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD123、CD8、CD4、b2c、CD80、CD86、DAP10、DAP12、MyD88、BTNL3、およびNKG2Dと特異的に結合するリガンドが挙げられる。したがって、CARは、主にCD28を共刺激シグナル伝達エレメントとして例示するが、他の共刺激エレメントは、単独でまたは他の共刺激シグナル伝達エレメントと組み合わせて使用することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、CARは、ヒンジ配列を含む。ヒンジ配列は、抗体の柔軟性を促進するアミノ酸の短い配列である(例えば、Woof et al.Nat.Rev.Immunol.,4(2):89-99(2004)を参照されたい)。ヒンジ配列は、抗原認識部分(例えば、scFv)と膜貫通ドメインとの間に配置され得る。ヒンジ配列は、任意の好適な分子に由来または得られる任意の好適な配列であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、ヒンジ配列は、CD8a分子またはCD28分子に由来する。
【0075】
膜貫通ドメインは、天然または合成源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来し得る。例えば、膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8(例えば、CD8アルファ、CD8ベータ)、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、またはCD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、およびPAG/Cbpに由来し得る(すなわち、少なくともこれらの膜貫通領域を含む)。代替的に、膜貫通ドメインは、合成であってもよく、その場合、それは、主にロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含むことになる。一部の例では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。2~10アミノ酸長などの短いオリゴリンカーまたはポリペプチドリンカーは、膜貫通ドメインとCARの内質ドメインとの間の結合を形成し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、CARは、同じ膜貫通ドメインの反復であり得るか、または異なる膜貫通ドメインであり得る2つ以上の膜貫通ドメインを有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、CARは、WO2015/039523に記載される多鎖CARであり、これは、この教示のために参照により組み込まれる。多鎖CARは、異なる膜貫通ポリペプチド内に別個の細胞外リガンド結合およびシグナル伝達ドメインを含むことができる。シグナル伝達ドメインは、膜近傍位置に構築されるように設計することができ、これは天然の受容体に近い柔軟な構造を形成し、最適なシグナル伝達を付与する。例えば、多鎖CARは、FCERIアルファ鎖の一部分およびFCERIベータ鎖の一部分を含み、したがってFCERI鎖が自発的に二量体化してCARを形成することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗原認識ドメインは、一本鎖可変断片(scFv)抗体である。ScFvの親和性/特異性は、重鎖(VH)および軽鎖(VL)における相補性決定領域(CDR)内の特異的配列によって大部分が決定される。各VHおよびVL配列は、3つのCDR(CDR1、CDR2、CDR3)を有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗原認識ドメインは、モノクローナル抗体などの自然抗体に由来する。一部の例では、抗体は、ヒトである。一部の例では、抗体は、ヒトに投与された場合に免疫原性を低下させるように変化を受けている。例えば、変化は、キメラ化、ヒト化、CDR移植、脱免疫化、および最も近いヒト生殖系列配列に対応するためのフレームワークアミノ酸の変異からなる群から選択される1つ以上の技術を含む。
【0080】
また、2つの抗原を標的にする二重特異性CARも開示される。また、異なる抗原に結合する別のCARと組み合わせてのみ機能するように設計されたCARも開示される。例えば、これらの実施形態では、開示されるCARのエンドドメインは、シグナル伝達ドメイン(SD)または共刺激シグナル伝達領域(CSR)のみを含有することができるが、両方を含有することはできない。第2のCAR(または内因性T細胞)は、活性化された場合、欠損しているシグナルを提供する。例えば、開示されるCARがSDを含有するが、CSRを含有しない場合、このCARを含有する免疫エフェクター細胞は、CSRを含有する別のCAR(またはT細胞)が各々の抗原に結合する場合のみ活性化される。同様に、開示されるCARがCSRを含有するがSDを含有しない場合、このCARを含有する免疫エフェクター細胞は、SDを含有する別のCAR(またはT細胞)が各々の抗原に結合する場合のみ活性化される。
免疫エフェクター細胞
【0081】
開示されるCARを発現するように操作された免疫エフェクター細胞(本明細書では「CAR-TEM細胞」とも称されるも開示される。これらの細胞は、好ましくは、治療される対象から得られる(すなわち、自家性である)。しかしながら、いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞株またはドナーエフェクター細胞(同種異系)が使用される。さらに他の実施形態では、免疫エフェクト細胞は、HLA適合ではない。免疫エフェクター細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脊髄血液、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含むいくつかの供給源から得ることができる。免疫エフェクター細胞は、当業者に既知の任意の数の技術、例えば、Ficoll(商標)分離を使用して、対象から収集された血液から得ることができる。例えば、個体の循環血液からの細胞は、アフェレーシスによって得られ得る。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって、例えば、PERCOLL(商標)勾配を介した遠心分離によって、または対向流遠心溶出法によって、末梢血リンパ球から単離される。免疫エフェクター細胞の特定の亜集団は、陽性または陰性選択技法によってさらに単離され得る。例えば、免疫エフェクター細胞は、陽性選択される細胞に特有の表面マーカーに向けられる抗体の組み合わせを使用して、例えば、所望の免疫エフェクター細胞の陽性選択に十分な時間、抗体コンジュゲートされたビーズとともにインキュベーションすることによって、単離され得る。あるいは、免疫エフェクター細胞集団の濃縮は、陰性選択さる細胞に特有の表面マーカーに向けられる抗体の組み合わせを使用して、陰性選択によって達成され得る。
【0082】
治療方法
開示されるCARを発現する免疫エフェクター細胞は、TAA発現がん細胞に対する抗腫瘍免疫応答を誘発することができる。開示されるCAR修飾免疫エフェクター細胞によって誘発される抗腫瘍免疫応答は、能動免疫応答または受動免疫応答であり得る。加えて、CAR媒介性免疫応答は、CAR修飾免疫エフェクター細胞がTAAに特異的な免疫応答を誘導する養子免疫療法アプローチの一部であり得る。
【0083】
キメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞の養子移入は、有望な抗がん治療薬である。患者の免疫エフェクター細胞の収集後、開示されるCARを発現させるように細胞を遺伝子操作し、次いで患者に注入して戻してもよい。
【0084】
開示されるCAR修飾免疫エフェクター細胞は、単独で、あるいは希釈剤と組み合わせて、かつ/またはIL-2、IL-15、もしくは他のサイトカインもしくは細胞集団などの他の成分と組み合わせて、医薬組成物として投与されてもよい。簡潔に述べると、医薬組成物は、1つ以上の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載の標的細胞集団を含み得る。そのような組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝液、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物、タンパク質、グリシンなどのポリペプチドまたはアミノ酸、抗酸化物質、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、および保存剤を含み得る。いくつかの実施形態では、開示される方法で使用される組成物は、静脈内投与のために製剤化される。医薬組成物は、MMを治療するのに適切な任意の方法で投与され得る。投与の量および頻度は、患者の状態、および患者の疾患の重症度などの要因によって決定されるが、適切な用量は、臨床試験によって決定され得る。
【0085】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、または「治療量」が示される場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および患者(対象)の状態の個体差を考慮して医師によって決定され得る。本明細書に記載のT細胞を含む医薬組成物は、104~109細胞/kg体重、例えば、105~106細胞/kg体重、それらの範囲内のすべての整数値を含む、投与量で、投与され得ることが一般的に述べられ得る。T細胞組成物はまた、これらの投与量で複数回投与されてもよい。細胞は、免疫療法において一般的に知られている注入技術を使用することによって投与され得る(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676,1988を参照されたい)。特定の患者のための最適な投与量および治療計画は、患者を疾患の兆候についてモニターし、それに応じて治療を調整することにより、医学分野における当業者によって容易に決定され得る。
【0086】
特定の実施形態では、活性化されたT細胞を対象に投与し、その後、血液を再採血し(またはアフェレーシスを行う)、開示される方法に従ってそこからT細胞を活性化し、これらの活性化および増殖させたT細胞を患者に再注入することが所望され得る。このプロセスは、数週間ごとに複数回実行され得る。特定の実施形態では、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化され得る。特定の実施形態では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、または100ccの採血から活性化される。この複数回の採血/複数回の再注入プロトコルを使用することは、T細胞の特定の集団を選び出すのに役立ち得る。
【0087】
開示される組成物の投与は、注射、輸血、または移植を含む任意の都合の良い方法で行われ得る。本明細書に記載の組成物は、皮下に、皮内に、腫瘍内に、結節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射によって、または腹腔内に患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、開示される組成物は、皮内または皮下注射によって患者に投与される。いくつかの実施形態では、開示された組成物は、静脈内注射によって投与される。組成物はまた、腫瘍、リンパ節、または感染部位に直接注射してもよい。
【0088】
特定の実施形態では、開示されるCAR修飾免疫エフェクター細胞は、サリドマイド、デキサメタゾン、ボルテゾミブ、およびレナリドマイドを含むがこれらに限定されない任意の数の関連する治療モダリティと組み合わせて(例えば、その前に、同時に、またはその後に)患者に投与される。さらなる実施形態では、CAR修飾免疫エフェクター細胞は、化学療法、放射線、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸塩、およびFK506などの免疫抑制剤、抗体、またはCAM PATHなどの他の免疫除去薬剤、抗CD3抗体、もしくは他の抗体療法、サイトキシン、フルダリビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および照射法と併用されてもよい。いくつかの実施形態では、CAR修飾免疫エフェクター細胞は、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法剤、外部放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体のいずれかを使用するT細胞除去療法と組み合わせて(例えば、前に、同時に、または後に)患者に投与される。別の実施形態では、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサンなどのB細胞除去療法後に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、対象は、高用量化学療法、続いて末梢血幹細胞移植による標準治療を受けてもよい。特定の実施形態では、移植後、対象は、本発明の増殖させた免疫細胞の注入を受ける。さらなる実施形態では、増殖させた細胞は、手術の前または後に投与される。
【0089】
開示される方法のがんは、未制御の増殖、侵襲、または転移を受ける対象における任意のTAA発現細胞であり得る。いくつかの態様において、がんは、放射線療法が現在使用されている任意の新生物または腫瘍であり得る。あるいは、がんは、標準的な方法を使用する放射線療法に対して十分に感受性がない新生物または腫瘍であり得る。したがって、がんは、肉腫、リンパ腫、白血病、がん腫、芽細胞腫、または生殖細胞腫瘍であり得る。開示される組成物を治療するために使用することができるがんの代表的であるが非限定的なリストには、リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉症、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱がん、脳がん、神経系がん、頭頚部がん、頭頚部扁平上皮がん、腎臓がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんなどの肺がん、神経芽腫/膠芽腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、肝臓がん、黒色腫、口、喉、咽頭、および肺の扁平上皮がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、子宮頸がん、乳がん、上皮がん、腎臓がん、泌尿生殖器がん、肺がん、食道がん、頭頚部がん、大腸がん、造血器がん、精巣がん、結腸直腸がん、前立腺がん、ならびに膵臓がんが含まれる。
【0090】
開示されるCARは、細胞傷害性または細胞抑制効果を有する任意の化合物、部分または基と併用することができる。薬物部分には、ミクロチューブリン阻害剤、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはDNAインターカレーターとして機能し得る化学療法剤、特にがん療法に使用されるものが含まれる。
【0091】
開示されるCARは、チェックポイント阻害剤と併用することができる。2つの既知の阻害チェックポイント経路は、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)およびプログラム死1(PD-1)受容体を介したシグナル伝達を伴う。これらのタンパク質は、T細胞機能のすべての段階にわたって重要な役割を果たす共シグナル伝達分子のCD28-B7ファミリーのメンバーである。PD-1受容体(CD279としても知られている)は、活性化されたT細胞表面上で発現される。そのリガンドであるPD-L1(B7-H1;CD274)およびPD-L2(B7-DC;CD273)は、樹状細胞またはマクロファージなどのAPCの表面上で発現される。PD-L1が優勢なリガンドである一方で、PD-L2は、はるかに制限された発現パターンを有する。リガンドがPD-1に結合すると、T細胞に阻害シグナルが伝達され、サイトカイン産生を減少させ、T細胞増殖を抑制する。チェックポイント阻害剤には、PD-1(ニボルマブ(BMS-936558またはMDX1106)、CT-011、MK-3475)、PD-L1(MDX-1105(BMS-936559)、MPDL3280A、MSB0010718C)、PD-L2(rHIgM12B7)、CTLA-4(イピリムマブ(MDX-010)、トレメリムマブ(CP-675,206))、IDO、B7-H3(MGA271)、B7-H4、TIM3、LAG-3(BMS-986016)をブロックする抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
プログラム死1(PD-1)に対するヒトモノクローナル抗体、および抗PD-1抗体を単独でまたは他の免疫療法剤と組み合わせて使用してがんを治療するための方法は、米国特許第8,008,449号に記載されており、これをこれらの抗体について参照により組み込む。抗PD-L1抗体およびその使用は、米国特許第8,552,154号に記載されており、これをこれらの抗体について参照により組み込む。抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を含む抗がん剤は、米国特許第8,617,546号に記載されており、これをこれらの抗体について参照により組み込む。
【0093】
いくつかの実施形態では、PDL1阻害剤は、BMS-936559(Bristol-Myers Squibb)またはMPDL3280A(Roche)などのPDL1に特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、PD1阻害剤は、PD1に特異的に結合する抗体、例えば、ランブロリズマブ(Merck)、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)、またはMEDI4736(AstraZeneca)を含む。PD-1に対するヒトモノクローナル抗体、および抗PD-1抗体単独で、または他の免疫療法剤と組み合わせて使用するがんを治療するための方法は、米国特許第8,008,449号に記載されており、これをこれらの抗体に関して参照により組み込む。抗PD-L1抗体およびその使用は、米国特許第8,552,154号に記載されており、これをこれらの抗体について参照により組み込む。抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を含む抗がん剤は、米国特許第8,617,546号に記載されており、これをこれらの抗体について参照により組み込む。
【0094】
開示されるCARは、他のがん免疫療法と併用することができる。2つの別個の種類の免疫療法が存在する:受動免疫療法は、免疫系の成分を使用して、必ずしも患者において免疫応答を開始することなく、がん細胞に対する標的細胞傷害性活性を指示し、一方、能動免疫療法は、内因性免疫応答を能動的に誘発する。受動的戦略は、特定の抗原に応答してB細胞によって産生されるモノクローナル抗体(mAb)の使用を含む。1970年代のハイブリドーマ技術の発達および腫瘍特異的抗原の同定により、免疫系による破壊のために腫瘍細胞を特異的に標的とすることができるmAbの医薬的開発が可能になった。これまで、mAbは、免疫療法における最大の成功例であり、2012年のベストセラー抗がん剤トップ3は、mAbであった。その中には、非ホジキンリンパ腫(NHL)などのB細胞悪性腫瘍の表面で高度に発現されるCD20タンパク質に結合するリツキシマブ(Rituxan,Genentech)が含まれる。リツキシマブは、化学療法と併用してNHLおよび慢性リンパ性白血病(CLL)の治療についてFDAにより承認されている。別の重要なmAbは、HER2の発現を標的とすることによって、HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)-陽性乳がんの治療に革命をもたらしたトラスツズマブ(Herceptin;Genentech)である。
【0095】
最適な「キラー」CD8T細胞応答を生成するには、T細胞受容体活性化+共刺激も必要であり、これは、OX40(CD134)および4-1BB(CD137)を含む腫瘍壊死因子受容体ファミリーメンバーのライゲーションによって提供され得る。活性化(アゴニスト)抗OX40mAbを用いた治療が、T細胞分化および細胞溶解機能を増強し、種々の腫瘍に対する抗腫瘍免疫の強化をもたらすため、OX40が特に興味深い。
【0096】
いくつかの実施形態では、そのような追加の治療剤は、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビンまたはクラドリビンなどの代謝拮抗剤から選択され得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、そのような追加の治療剤は、メクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチン、およびカルボプラチンなどの他の白金誘導体などのアルキル化剤から選択され得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、そのような追加の治療剤は、タキサン、例えば、ドセタキセル、およびパクリタキセル、ならびにビンカアルカロイド、例えば、ビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビノレルビンなどの有糸分裂阻害剤から選択され得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、そのような追加の治療剤は、トポテカンまたはイリノテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、またはエトポシドおよびテニポシドなどの細胞分裂阻害剤から選択され得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、そのような追加の治療剤は、増殖因子阻害剤、例えば、ErbBl(EGFR)の阻害剤(EGFR抗体、例えば、ザルツムマブ、セツキシマブ、パニツムマブもしくはニモツズマブ、または他のEGFR阻害剤、例えば、ゲフィチニブまたはエルロチニブ)、ErbB2の別の阻害剤(HER2/neu)(例えば、HER2抗体、例えば、トラスツズマブ、トラスツズマブ-DMlまたはペルツズマブ)、またはEGFRおよびHER2の両方の阻害剤、例えば、ラパチニブ)から選択され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、そのような追加の治療剤は、イマチニブ(Glivec、Gleevec STI571)またはラパチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤から選択され得る。
【0102】
したがって、いくつかの実施形態では、開示される抗体は、オファツムマブ、ザノリムマブ、ダラツムマブ、ラニビズマブ、ニモツズマブ、パニツムマブ、hu806、ダクリズマブ(Zenapax)、バシリキシマブ(Simulect)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)、ナタリズマブ(Tysabri)、オマリズマブ(Xolair)、エファリズマブ(Raptiva)、および/またはリツキシマブと組み合わせて使用される。
【0103】
いくつかの実施形態では、上述の障害を治療するためのCARと組み合わせて使用するための治療剤は、抗がんサイトカイン、ケモカイン、またはそれらの組み合わせであり得る。好適なサイトカインおよび増殖因子の例としては、IFNy、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNa(例えば、INFa2b)、IFN、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチム、およびTNFaが挙げられる。好適なケモカインとしては、ヒトCXCおよびC-Cケモカインファミリー由来のIP-10、MCP-3、MIG、およびSDF-laなどのGlu-Leu-Arg(ELR)-陰性ケモカインが挙げられ得る。好適なサイトカインとしては、サイトカイン誘導体、サイトカインバリアント、サイトカイン断片、およびサイトカイン融合タンパク質が挙げられる。
【0104】
いくつかの実施形態では、上記の障害を治療するためのCARと組み合わせて使用するための治療剤は、細胞周期制御/アポトーシス調節因子(または「調節剤」)であり得る。細胞周期制御/アポトーシス調節因子は、(i)cdc-25(NSC663284など)、(ii)細胞周期を過剰刺激するサイクリン依存性キナーゼ(フラボピリドール(L868275、HMR1275)、7-ヒドロキシスタウロスポリン(UCN-01、KW-2401)、およびロスコビチン(R-ロスコビチン、CYC202)など)、ならびに(iii)テロメラーゼ調節因子(BIBR1532、SOT-095、GRN163、ならびに例えばUS6,440,735およびUS6,713,055に記載されている組成物など)などの細胞周期制御/アポトーシス調節因子を標的とし、調節する分子を含んでよい。アポトーシス経路を妨げる分子の非限定的な例としては、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)/アポトーシス-2リガンド(Apo-2L)、TRAIL受容体、IFN、およびアンチセンスBcl-2を活性化する抗体が挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、上記の障害を治療するためのCARと組み合わせて使用するための治療剤は、抗アンドロゲンおよび抗エストロゲン療法に有用な薬剤などのホルモン調節剤であり得る。そのようなホルモン調節剤の例は、タモキシフェン、イドキシフェン、フルベストラント、ドロロキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール/エスチニル、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド/エウレキシン)、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン/プロベラ、酢酸メゲストロール/メガス)、副腎皮質ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(およびその類似体、ならびにブセレリンおよびゴセレリンなどの他のLHRHアゴニスト)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール/アリミデックス、アミノグルテチミド/シトラデン、エキセメスタン)、またはホルモン阻害剤(例えば、オクトレオチド/サンドスタチン)である。
【0106】
いくつかの実施形態では、上述の疾患を治療するためのCARと組み合わせて使用するための治療剤は、抗がん核酸または抗がん阻害RNA分子であり得る。
【0107】
上述のように、組み合わせた投与は、同時的、別個的、または逐次的であってもよい。同時投与のために、薬剤は、必要に応じて、1つの組成物として、または別個の組成物として投与され得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、開示されるCARは、放射線療法と併用して投与される。放射線療法は、患者への放射線または関連する放射性医薬品の投与を含み得る。放射線源は、治療されている患者の外部または内部のいずれかであり得る(放射線治療は、例えば、外部放射線療法(EBRT)または近接照射療法(BT)の形態であり得る)。そのような方法を実施する際に使用することができる放射性元素は、例えば、ラジウム、セシウム-137、イリジウム-192、アメリシウム-241、金-198、コバルト-57、銅-67、テクネチウム-99、ヨウ化物-123、ヨウ化物-131、およびインジウム-111を含む。
【0109】
一部の実施形態では、開示されるCARは、手術と併用して投与される。
【0110】
CAR-T細胞は、腫瘍細胞傷害性および特異性を強化し、腫瘍免疫抑制を逃れ、宿主拒絶を回避し、それらの治療半減期を延長するいくつかの方法で設計され得る。TRUCK(広範なサイトカイン死滅のためにリダイレクトされたT細胞)T細胞は、例えば、CARを保有するが、腫瘍死滅を促進するIL-12などのサイトカインを放出するようにも操作される。これらの細胞は、一旦腫瘍環境に局在化されたCARの活性化時に分子ペイロードを放出するように設計されているため、これらのCAR-T細胞は、「アーマードCAR」とも称されることがある。がん療法としてのいくつかのサイトカインは、前臨床的にも、臨床的にも研究されており、同様にCAR-T療法のトラック形態に組み込まれる場合にも有用であることが証明され得る。これらの中には、IL-2、IL-3。IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、M-CSF、GM-CSF、IFN-α、IFN-γ、TNF-α、TRAIL、FLT3リガンド、リンホタクチン、およびTGF-β(Dranoff 2004)が含まれる。「自己駆動型」または「ホーミング」CAR-T細胞は、それらのCARに加えて、ケモカイン受容体を発現するように操作されている。特定のケモカインが腫瘍において増加し得るため、ケモカイン受容体の組み込みは、養子T細胞への腫瘍の輸送および養子T細胞による浸潤を助け、それによってCAR-Tの特異性および機能性の両方を強化する(Moon 2011)。ユニバーサルCAR-T細胞はまた、CARを有するが、内因性TCR(T細胞受容体)またはMHC(主要組織適合性複合体)タンパク質を発現しないように操作されている。養子T細胞療法のシグナル伝達レパートリーからこれらの2つのタンパク質を除去することは、それぞれ、移植片対宿主病および拒絶反応を防止する。さらに、アーマードCAR-T細胞は、腫瘍免疫抑制および腫瘍誘発性CAR-T低機能を回避する能力にちなんでそのように名付けられている。これらの特定のCAR-Tは、CARを保有し、チェックポイント阻害剤を発現しないように操作され得る。あるいは、これらのCAR-Tは、チェックポイントシグナル伝達をブロックするモノクローナル抗体(mAb)とともに同時投与され得る。抗PDL1抗体の投与は、CAR TIL(腫瘍浸潤リンパ球)の死滅能力を著しく回復させた。PD1-PDL1およびCTLA-4-CD80/CD86シグナル伝達経路が研究されているが、LAG-3、Tim-3、IDO-1、2B4、およびKIRを含むアーマードCAR-Tの設計において、他の免疫チェックポイントシグナル伝達分子を標的化することが可能である。TILの他の細胞内阻害剤としては、ホスファターゼ(SHP1)、ユビキチンリガーゼ(すなわち、cbl-b)、およびキナーゼ(すなわち、ジアシルグリセロールキナーゼ)が挙げられる。アーマードCAR-Tはまた、腫瘍分泌サイトカインの影響からそれらを保護するか、またはそれらを耐性にするタンパク質または受容体を発現するように操作されてもよい。例えば、二重陰性型のTGF-β受容体を形質導入したCTL(細胞傷害性Tリンパ球)は、リンパ腫が分泌するTGF-βによる免疫抑制に耐性がある。これらの形質導入細胞は、それらの対照の対応物と比較した場合、インビボで顕著な抗腫瘍活性の増加を示した。
【0111】
タンデムおよびデュアルCAR-T細胞は、2つの別個の抗原結合ドメインを有するという点で特有である。タンデムCARは、細胞内共刺激ドメインおよび刺激ドメインに結合された細胞外環境に面する2つの連続した抗原結合ドメインを含む。デュアルCARは、1つの細胞外抗原結合ドメインが細胞内共刺激ドメインに結合され、第2の別個の細胞外抗原結合ドメインが細胞内刺激ドメインに結合されるように操作される。刺激ドメインおよび共刺激ドメインは、2つの別個の抗原結合ドメイン間で分割されるため、デュアルCARは、「スプリット型CAR」とも称される。タンデムおよびデュアルCAR設計の両方において、両方の抗原結合ドメインの結合は、T細胞におけるCAR回路のシグナル伝達を可能にするために必要である。これらの2つのCAR設計は、異なる別個の抗原に対する結合親和性を有するため、それらは「二重特異性」CARとも称される。
【0112】
「生きている治療薬」の形態としてのCAR-T細胞に関する主な懸念の1つは、インビボでのそれらの操作性およびそれらの潜在的な免疫刺激性副作用である。CAR-T療法をよりよく制御し、望ましくない副作用を予防するために、オフスイッチ、安全機構、および条件付き制御機構を含む様々な特徴が操作されている。例えば、自己破壊型およびマーク/タグ付けされたCAR-T細胞の両方は、CAR発現T細胞のクリアランスを促進する「オフスイッチ」を有するように操作されている。自己破壊型CAR-TはCARを含有するが、外因性分子の投与時に誘導可能なアポトーシス促進性自殺遺伝子または「排除遺伝子」を発現するようにも操作される。この目的のために、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)、Fas、iCasp9(誘導性カスパーゼ9)、CD20、MYCタグ、および切断型EGFR(内皮増殖因子受容体)を含む、様々な自殺遺伝子が用いられ得る。例えば、HSKは、プロドラッグガンシクロビル(GCV)を、それ自体を複製DNAに組み込むGCV-三リン酸に変換し、最終的に細胞死をもたらす。iCasp9は、小分子AP1903に結合するFK506結合タパク質の成分を含有するキメラタンパク質であり、カスパーゼ9二量体化およびアポトーシスをもたらす。しかしながら、マークされた/タグ付けされたCAR-T細胞は、CARを有するが、選択マーカーを発現するようにも操作されるものである。この選択マーカーに対するmAbの投与は、CAR-T細胞のクリアランスを促進する。切断型EGFRは、抗EGFR mAbによるそのような標的化可能な抗原の1つであり、セツキシマブの投与は、CAR-T細胞の排除を促進するように機能する。これらの特徴を有するように作製されたCARは、「切り替え可能なCAR」のsCAR、および「調節可能なCAR」のRCARとも称される。「安全性CAR」、別名「阻害性CAR」(iCAR)は、2つの抗原結合ドメインを発現するように操作されている。これらの細胞外ドメインのうちの1つは、腫瘍関連抗原に向けられ、細胞内共刺激および刺激ドメインに結合している。しかしながら、第2の細胞外抗原結合ドメインは、正常組織に特異的であり、CTLA4、PD1、またはCD45などの細胞内チェックポイントドメインに結合している。複数の細胞内阻害ドメインをiCARに組み込むことも可能である。これらの阻害ドメインを提供し得るいくつかの阻害分子としては、B7-H1、B7-1、CD160、PIH、2B4、CEACAM(CEACAM-1。CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、LAG-3、TIGIT、BTLA、LAIR1、およびTGFβ-Rが挙げられる。正常組織の存在下で、この第2の抗原結合ドメインの刺激は、CARを阻害するように機能する。この二重抗原特異性により、iCARはまた、二重特異性CAR-T細胞の形態であることに留意されたい。安全性CAR-Tのエンジニアリングは、腫瘍組織に対するCAR-T細胞の特異性を強化し、標準的なCARではオフターゲット効果をもたらす特定の正常組織が非常に低レベルの腫瘍関連抗原を発現し得る状況において有利である(Morgan 2010)。条件付きCAR-T細胞は、細胞内共刺激ドメインおよび別個の細胞内共刺激因子に結合された細胞外抗原結合ドメインを発現する。共刺激ドメインおよび刺激ドメインの配列は、外因性分子の投与時に、得られるタンパク質が細胞内に集まってCAR回路を完了するように操作される。このようにして、CAR-T活性化は調節され得、場合によっては「微調整」され得るか、または特定の患者に個別化され得る。デュアルCAR設計と同様に、刺激ドメインおよび共刺激ドメインは、条件付きCARで不活性であるときに物理的に分離され、このため、これらも「スプリット型CAR」と称される。
【0113】
いくつかの実施形態では、これらの操作された特徴のうちの2つ以上を組み合わせて、強化された多機能性CAR-Tを作成することができる。例えば、TRUCKのようにサイトカインも放出するデュアルCAR設計または条件付きCAR設計のいずれかを有するCAR-T細胞を作製することが可能である。いくつかの実施形態では、デュアル-条件付きCAR-T細胞は、それらのそれぞれの共刺激ドメインに各々結合している2つの別個のがん抗原に対して、2つの別個の抗原結合ドメインを有する2つのCARを発現するように作製され得る。共刺激ドメインは、活性化分子が投与された後にのみ、刺激ドメインとともに機能するようになる。このCAR-T細胞が効果的であるためには、がんは、がん抗原の両方を発現しなければならず、活性化分子は、患者に投与されなければならない。この設計は、それによって、デュアルCAR-T細胞と条件付きCAR-T細胞の両方の特徴を組み込む。
【0114】
典型的には、CAR-T細胞は、α-βT細胞を使用して作製されるがしかし、γ-δT細胞も使用され得る。いくつかの実施形態では、記載のCAR構築物、ドメイン、およびCAR-T細胞を生成するために使用される操作された特徴は、同様に、NK(ナチュラルキラー)細胞、B細胞、肥満細胞、骨髄由来の食細胞、およびNKT細胞を含む他の種類のCAR発現免疫細胞の生成に使用され得る。代替的に、CAR発現細胞は、T細胞およびNK細胞の両方の特性を有するように作製され得る。追加の実施形態では、CARで形質導入されたものは、自家または同種異系であり得る。
【0115】
レトロウイルス形質導入(γ-レトロウイルスを含む)、レンチウイルス形質導入、トランスポゾン/トランスポザーゼ(Sleeping BeautyシステムおよびPiggyBacシステム)、ならびにメッセンジャーRNA転移媒介遺伝子発現を含む、CAR発現のためのいくつかの異なる方法を使用してもよい。遺伝子編集(遺伝子挿入または遺伝子欠失/破壊)は、同様に、CAR-T細胞を操作する可能性に関して、ますます重要になっている。CRISPR-Cas9、ZFN(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)、およびTALEN(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)系は、CAR-T細胞を生成し得る3つの潜在的な方法である。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態を記載してきた。それにもかかわらず、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われ得ることを理解されたい。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【実施例】
【0117】
実施例1:
図1A~1Gは、TCNがセントラルメモリーCAR T細胞集団を増加させることを示す。陰性選択を用いて、健康なドナーPBMCからT細胞を単離した。最初のスピン形質導入の2日前にTCNを添加した。7日目に、細胞を染色し、LSRII上でフローサイトメトリーを実行した。
【0118】
抗ヒトCD19構築物については、SFG骨格を改変して、CD8α膜貫通およびヒンジドメインを有するFMC63 ScFv、続いてCD28または4-1BBのいずれか、およびCD3ζを含めた。すべてのSFG構築物に、リン酸カルシウムをH29細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトしたH29のレトロウイルス上清を採取し、Phoenix EまたはRD114細胞に形質導入するために使用した。プロデューサー細胞のレトロウイルス上清を採取し、0.45μmを濾過し、記載のようにT細胞に形質導入するために使用した。生存度をトリパンブルー染色によって測定し、自動細胞計数装置(Bio-Rad)上で数え上げた。形質導入効率を、フローサイトメトリーによって、タンパク質L+生細胞のパーセンテージとして推定した。ダウンストリーム実験のために、CAR T細胞用量を、CAR遺伝子移入に基づいて正規化したが、CAR陰性T細胞を除外するように選別しなかった。結果として、総T細胞用量が変化した。
【0119】
図2Aおよび2Bは、TCNがm1928z CAR T細胞においてp-Aktを阻害することを示す。陰性選択を用いて、T細胞をC57BL6脾細胞から単離した。最初のスピン形質導入の2日前にTCNを添加した。5日目に、CAR T細胞を3T3-mCD19標的で24時間刺激した。刺激後、細胞を溶解し、ウェスタンブロットを実行した。
【0120】
図3A~3Nは、TCNが、h19BBzのCAR死滅およびサイトカイン分泌を低減することを示す。陰性選択を用いて、健康なドナーPBMCからT細胞を単離した。最初のスピン形質導入の2日前にTCNを添加した。リアルタイムの細胞死滅CAR T細胞を測定するために、xCelligence RTCAマシンを使用して3T3-hCD19標的細胞で刺激した。サイトカイン分泌を測定するために、CAR T細胞を標的細胞で24時間刺激した。次いで、上清を収集し、Ellaを使用してサイトカインの測定を実行した。
【0121】
図4は、TCNがエフェクターメモリーCAR T細胞集団を増加させることを示す。陰性選択を用いて、健康なドナーPBMCからT細胞を単離した。最初のスピン形質導入の2日前にTCNを添加した。7日目に、細胞を染色し、LSRII上でフローサイトメトリーを実行した。
【0122】
実施例2:CAR T細胞産生中に与えられたときのTCNの効果を評価する。
以前の試験では、CAR T細胞産生中に投与された薬物がその機能に影響を及ぼし得ることを示している。TCNの効果を決定するために、健康なヒトドナーT細胞を、CAR形質導入前にTCNで処理する。T細胞に対する最高の無毒用量であるために、10μMのTCNを用いる。培養における形質導入および増殖後、インビトロアッセイを行って、CAR T細胞機能を決定する。これらには、細胞傷害性、サイトカイン分泌、RNAシーケンス、多機能性細胞強度指数、およびCAR T細胞表現型が含まれる。次に、インビボでの産生中にTCNを与えられたCAR T細胞の機能を評価する。合計60匹のNSGマウスに、ルシフェラーゼを含有するヒトB細胞腫瘍細胞株NALM6を-7日目に与える。0日目に、1群当たり10匹のマウスに、TCNを伴ってまたは伴わずに産生された未形質導入、h1928z、またはh19BBzのCAR T細胞を与える。生物発光イメージングを使用して、腫瘍量を決定し、全生存を測定する。
実施例3:CAR T細胞注入後に与えたTCNの効果を評価する。
TCNがすでにインビボでCAR T細胞に有する効果を決定するために、合計60匹のNSGマウスに、0日目にNALM6を与える。0日目に、20匹のマウスに、非形質導入、h1928z、またはh19BBzのいずれかのCAR T細胞を与える。各群のマウスの半分にも、実験期間中、週1回、TCNを静脈内に注射する。生物発光イメージングを使用して、腫瘍量を決定し、全生存を測定して、TCNおよびCARを与えられたマウスを、CARのみを与えられたマウスと比較する。次いで、この実験を、ルシフェラーゼも組み込んだ別のヒトB細胞腫瘍株Rajiを用いて1回繰り返す。これは、異なるB細胞腫瘍間で結果が一貫していることを実証する。
【0123】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、開示される発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に引用される刊行物およびそれらが引用する物質は、参照により具体的に本明細書に組み込まれる。
【0124】
当業者は、通常の実験だけを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【国際調査報告】