(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】カンナビジオール型カンナビノイド化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20230119BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P25/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529060
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 GB2020052938
(87)【国際公開番号】W WO2021099777
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319016758
【氏名又は名称】ジーダブリュー・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルカー・クナッパーツ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ウォーリー
(72)【発明者】
【氏名】マリー・ウーリー-ロバーツ
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206KA18
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA06
(57)【要約】
本発明は、医薬として使用するためのカンナビジオール(CBD)型カンナビノイド化合物に関する。CBD型カンナビノイドであるカンナビジオール-C1(CBD-C1)は、大麻植物中に微量に存在しうる天然のカンナビノイドである。更に、5種のカンナビノイドが合成手段によって生成でき、CBD-C1の製造方法が本明細書に記載される。加えて、疾患モデルにおけるCBD-C1の有効性を実証するデータが本明細書で開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬として使用するためのカンナビジオール-C1(CBD-C1)。
【請求項2】
植物抽出物の形態である、請求項1に記載の使用するためのCBD-C1。
【請求項3】
高度に精製された植物抽出物の形態である、請求項2に記載の使用するためのCBD-C1。
【請求項4】
少なくとも80%(w/w)のCBD-C1を含む、請求項3に記載の使用するためのCBD-C1。
【請求項5】
少なくとも95%(w/w)のCBD-C1を含む、請求項3に記載の使用するためのCBD-C1。
【請求項6】
合成化合物の形態である、請求項1に記載の使用するためのCBD-C1。
【請求項7】
CBD-C1の用量が、100mg/kg/日超である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用するためのCBD-C1。
【請求項8】
CBD-C1の用量が、100mg/kg/日未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用するためのCBD-C1。
【請求項9】
カンナビジオール-C1(CBD-C1)、及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬として使用するための組成物。
【請求項10】
てんかんの治療に使用するためのカンナビジオール-C1(CBD-C1)。
【請求項11】
治療されるてんかんが、哺乳動物におけるものである、請求項10に記載の使用するためのCBD-C1。
【請求項12】
哺乳動物が、ヒトである、請求項11に記載の使用するためのCBD-C1。
【請求項13】
哺乳動物が、イヌである、請求項11に記載の使用するためのCBD-C1。
【請求項14】
カンナビジオール-C1(CBD-C1)の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として使用するためのカンナビジオール(CBD)型カンナビノイド化合物に関する。
【0002】
CBD型カンナビノイドであるカンナビジオール-C1(CBD-C1)は、大麻植物中に微量に存在しうる天然のカンナビノイドである。更に、カンナビノイドは、合成手段によって生成することができる。
【0003】
疾患モデルにおけるCBD-C1の有効性を実証するデータが本明細書で開示される。加えて、CBD-C1の製造方法が記載される。
【背景技術】
【0004】
カンナビノイドは、大麻植物の構成成分又はカンナビノイド受容体のCB1若しくはCB2の内在性アゴニスト(内在性カンナビノイド)に構造的又は薬理学的に関連する、天然化合物及び合成化合物である。これらの化合物が生成される唯一の自然界での方法は、大麻植物による。大麻(Cannabis)は、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)種、カンナビス・インディカ(Cannabis indica)種、及びカンナビス・ルデラリス(Cannabis ruderalis)種(時としてカンナビス・サティバの一部とみなされることもある)を含む、アサ科(Cannabaceae)の顕花植物属である。
【0005】
大麻植物は、化合物の非常に複雑な混合物を含む。少なくとも568個の特有の分子が同定されている。これらの化合物のうちには、カンナビノイド、テルペノイド、糖、脂肪酸、フラボノイド、他の炭化水素、窒素性化合物、及びアミノ酸等がある。
【0006】
カンナビノイドは、アドレナリン受容体、カンナビノイド受容体(CB1及びCB2)、GPR55、GPR3、又はGPR5を含むが、それらに限定されない、様々な受容体によってその生理的効果を発揮する。大麻植物中に存在する主要なカンナビノイドは、少量のそれらのそれぞれの中性(脱炭酸した)カンナビノイドを有する、カンナビノイド酸であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール酸(Δ9-THCA)及びカンナビジオール酸(CBDA)である。加えて、大麻は、より低いレベルの他の微量なカンナビノイドを含有しうる。「Chemical composition, pharmacological profiling, and complete physiological effects of these medicinal plants, and more importantly the extracts from cannabis, remain to be fully understood.」Lewis, M. M.ら、ACS Omega、2巻、6091~6103頁(2017)。
【0007】
CBDを含有する大麻植物の粗抽出物は、疾患及び障害を患う患者によって使用されてきた。しかし、このような粗生成物は、医薬製剤における使用には適していない。疾患又は障害の治療に使用するための、より一貫したCBD製剤を調製しようとする人々は、CBDを合成的に調製するか、又は植物由来のカンナビノイドからCBD以外の全ての化合物、特にTHC等の精神活性化合物を取り除こうと試みるために、協調的努力をしてきた。例えば、米国特許第2014/0298511号を参照されたい。
【0008】
本発明は、CBDに関連する微量のカンナビノイドが治療有効性を有するという驚くべき発見を包含する。この化合物、カンナビジオール-C1(CBD-C1)は、大麻植物から抽出し精製してもよく、又は合成的に生成してもよい。
【0009】
記載した通り、カンナビノイドは、大麻植物に天然に由来しうる、又は化学合成によって合成的に生成しうる化合物のクラスである。
【0010】
大麻によって生成される100種を超える異なるカンナビノイドが同定されている。これらのカンナビノイドは、以下の異なる群、植物性カンナビノイド、内在性カンナビノイド、及び合成カンナビノイド(新規のカンナビノイド又は植物性カンナビノイド若しくは内在性カンナビノイドの合成的に生成された変法種でもよい)に分けることができる。
【0011】
植物性カンナビノイドは、天然に由来し、大麻植物中に存在しうるカンナビノイドである。植物性カンナビノイドは、植物から単離して、高度に精製された抽出物を生成することができる。植物性カンナビノイドは、植物材料からカンナビノイドを抽出するために使用される方法に応じて、中性(脱炭酸形)か、又はカルボン酸形として得ることができる。例えば、カルボン酸形を加熱することによって、カルボン酸形の大部分を脱炭酸させ中性形にすることが知られている。植物性カンナビノイドは、植物から生成されうるのみだが、植物性カンナビノイドの変法種は化学合成によって合成的に生成されうる。
【0012】
内在性カンナビノイドは、カンナビノイド受容体、並びに哺乳動物の(脳を含む)中枢神経系及び末梢神経系にわたって発現されるカンナビノイド受容体タンパク質と結合する内在性の脂質系逆行性神経伝達物質である。内在性カンナビノイド系は、生殖能力、妊娠、出生前発達及び生後発達の間、食欲、痛覚、気分、並びに記憶を含む様々な生理的過程及び認知過程の制御、並びに大麻の薬理効果の媒介に関与する。
【0013】
合成カンナビノイドは、カンナビノイド様構造を有する化合物であり、植物によるものではなく、化学的手段を使用して製造される。
【0014】
いくつかのカンナビノイドは、以下により詳細に記載される。
【0015】
カンナビジオール(CBD)は、アサ植物(カンナビス・サティバ)等の大麻種の主要なカンナビノイドの構成成分である。THC等の他のカンナビノイドとは異なって、カンナビジオールは、CB1若しくはCB2に結合しない、又は、薬理効果を誘発することに関して、受容体へのその結合は無視できる。したがって、カンナビジオールは、CB1受容体又はCB2受容体によって媒介される中枢神経系又は末梢神経系への作用を引き起こさない。CBDは、向精神性の(大麻類似性の)活性がほとんど又はまったくなく、その分子構造及び特性は、他のカンナビノイドのそれとは実質的に異なる。
【0016】
カンナビジオールの投与は、このような治療に応答しうる様々な疾患及び障害のための代替治療を提供する試みにおいて研究の対象になっている。
【0017】
テトラヒドロカンナビノール(THC)は、大麻の主要な精神活性構成成分である。THCは、CB1受容体及びCB2受容体における部分アゴニストである。合成THC又はドロナビノールは、AIDS患者における食欲不振、並びにがん化学療法によって引き起こされる悪心及び嘔吐の治療のために承認されている。
【0018】
カンナビス・サティバにおいて同定された100種を超える天然のカンナビノイドのうち、7種はCBD型化合物に分類されており、これらのカンナビノイドは、CBDと同一の絶対配置を有する。これらは、CBD、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビジバリン酸(CBDVA)、カンナビジオール-C1(CBD-C1)、カンナビジオール-C4(CBD-C4)、及びカンナビジオールモノメチルエーテル(CBDM)である。
【0019】
カンナビジオール酸(CBDA)は、CBDが大麻植物中に存在する主要な形態である。これは、脱炭酸後、CBDに変換される。
【0020】
カンナビジバリン(CBDV)は、2つのメチレン架橋によって短縮された側鎖を有するCBDの相同体である。CBDVは、非精神活性カンナビノイドであり、てんかんのマウスモデルにおいて抗痙攣活性を有することが示されている。
【0021】
カンナビジオールコール(cannabidiorcol)としても知られているカンナビジオール-C1(CBD-C1)は、4つのメチレン架橋によって短縮された側鎖を有するCBDの相同体である。CBD-C1は、CBDを生成する植物中に天然に存在するが、いかなる治療効果も有することが示されていない。
【0022】
ノルカンナビジオールとしても知られるカンナビジオール-C4(CBD-C4)は、1つのメチレン架橋によって短縮された側鎖を有するCBDの相同体である。CBD-C4は、CBDを生成する植物中に天然に存在し、本発明以前には、いかなる治療効果も有することが示されていない。
【0023】
本発明は、化合物カンナビジオール-C1が治療有用性を有しうることを示すために、初めてデータを実証する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第2014/0298511号
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】「Chemical composition, pharmacological profiling, and complete physiological effects of these medicinal plants, and more importantly the extracts from cannabis, remain to be fully understood.」Lewis, M. M.ら、ACS Omega、2巻、6091~6103頁(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の第1の態様によれば、医薬として使用するためのカンナビジオール-C1(CBD-C1)が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0027】
CBD-C1は、植物抽出物の形態であることが好ましい。CBD-C1は、高度に精製された大麻抽出物の形態であることがより好ましい。
【0028】
好ましくは、高度に精製された抽出物は、少なくとも80%(w/w)のCBD-C1を含み、より好ましくは、高度に精製された抽出物は、少なくとも85%(w/w)のCBD-C1を含み、より好ましくは、高度に精製された抽出物は、少なくとも90%(w/w)のCBD-C1を含み、より好ましくは、高度に精製された抽出物は、少なくとも95%(w/w)のCBD-C1を含み、更により好ましくは、高度に精製された抽出物は、少なくとも98%(w/w)のCBD-C1を含む。
【0029】
或いは、CBD-C1は、合成化合物として存在する。
【0030】
CBD-C1の用量は、100mg/kg/日超であることが好ましい。CBD-C1の用量は、250mg/kg/日超であることがより好ましい。CBD-C1の用量は、500mg/kg/日超であることがより好ましい。CBD-C1の用量は、750mg/kg/日超であることがより好ましい。CBD-C1の用量は、1000mg/kg/日超であることがより好ましい。CBD-C1の用量は、1500mg/kg/日超であることがより好ましい。
【0031】
或いは、CBD-C1の用量は、100mg/kg/日未満である。CBD-C1の用量は、50mg/kg/日未満であることがより好ましい。CBD-C1の用量は、20mg/kg/日未満であることがより好ましい。CBD-C1の用量は、10mg/kg/日未満であることがより好ましい。CBD-C1の用量は、5mg/kg/日未満であることがより好ましい。CBD-C1の用量は、1mg/kg/日未満であることがより好ましい。CBD-C1の用量は、0.5mg/kg/日未満であることがより好ましい。
【0032】
本発明の第2の態様によれば、カンナビジオール-C1(CBD-C1)、及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬として使用するための組成物が提供される。
【0033】
本発明の第3の態様によれば、てんかんの治療に使用するためのカンナビジオール-C1(CBD-C1)が提供される。てんかんは、哺乳動物において治療されることが好ましい。哺乳動物は、ヒトであることがより好ましい。或いは、哺乳動物は、イヌである。
【0034】
本発明の第4の態様によれば、カンナビジオール-C1の製造方法が提供される。
【0035】
添付の図面を参照して、本発明の実施形態を以下に更に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施例2に記載の通り、マウスにおけるMEST試験でのCBD-C1の評価を示すグラフである。
【
図2】実施例3に記載の通り、マウスにおける電気刺激誘発の全身発作閾値(MEST)に対するCBD-C1の効果を示すグラフである。
【0037】
カンナビノイドとそれらの略語
本出願において記載されるカンナビノイドは、それらの一般的な略語とともに以下に列挙される。
【0038】
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0039】
カンナビジオール-C1(CBD-C1)の合成製造方法
先に記載の通り、化合物CBD-C1は、大麻植物中に微量なカンナビノイドとして生成される。カンナビジオールの高度に精製された抽出物において、抽出物中に残るCBD-C1の量は0.15%(w/w)以下である。
【0040】
したがって、以下に記載される合成経路は、より多量のカンナビノイドCBD-C1を生成するために使用されうる方法論を詳述する。
【0041】
R=CH3のスキーム上
【0042】
【実施例2】
【0043】
マウスにおける最大電気刺激発作閾値(MEST)試験を使用した抗痙攣活性に対するカンナビジオール-C1(CBD-C1)の評価
最大電気刺激発作閾値(MEST)試験で、発作のマウスモデルにおけるCBD-C1の有効性を、試験した。
【0044】
最大電気刺激発作閾値(MEST)試験は、分子の痙攣促進特性及び抗痙攣特性を評価するために臨床前に広く利用されている(Loscherら、1991)。
【0045】
MEST試験において、後肢の強直性伸展痙攣を誘発するのに必要な発作閾値電流を変化させる薬物の能力を、ショック滴定の「アップアンドダウン」法(Kimballら、1957)に従って測定した。発作閾値の上昇は、抗痙攣効果を意味している。全身強直間代性発作に対する臨床的に証明された有効性を有するナトリウムチャネル阻害剤(例えば、ラモトリギン)を含む抗てんかん薬は、いずれも、マウスにおけるこの試験で抗痙攣特性を示す。
【0046】
逆に、発作閾値の低下は、ピクロトキシン等の既知の痙攣剤で見られるように、痙攣促進効果を意味している。
【0047】
方法
未処置のマウスを、自由に利用できる食物及び水とともに、それらのホームケージ中の処置室に順応させた。
【0048】
用量群に従って、動物にi.p投与した。
【0049】
溶媒(10ml/kg、i.p.、治療前の時間60分)は、1:1:18の溶媒であり、エタノール5%、kolliphor EL 5%、生理食塩水90%であった。
【0050】
試験化合物であるCBD-C1を、10ml/kg、i.p.、治療前の時間60分で投与する、20、100、及び200mg/kgの投与量で投与した。
【0051】
陽性対照であるジアゼパムを、2.5mg/kg(10ml/kg、i.p.、治療前の時間30分)で使用した。
【0052】
マウスを、強直性後肢伸展発作の発生について、角膜電極によって0.1秒間で調節可能な定電流(1~300mA)を送達するHugo Sachs Electronik刺激装置(Hugo Sachs Electronik stimulator)を使用して、個別に評価した。
【0053】
刺激強度は、ショック滴定の「アップアンドダウン」法によって変化させた。したがって、治療群内の第1のマウスに、予期した又は推定した発作閾値(CC50)電流、即ち、動物の50%に強直性後肢伸展発作を発生させる電流でショックを与えた。その後の動物に対しては、前述のマウスが強直性後肢伸展を示す又は示さなかった場合、それぞれ2mAの間隔で刺激強度を低下又は上昇させた。
【0054】
治療群内の全てのマウスに対して、この手順を継続した。n=12の治療群から作成したデータを使用して、Kimballらの方法(1957)に従って、CC50±s.e.m.値を算出した。
【0055】
動物を、頭蓋を打つことによる脳震盪、続いて首を脱臼させることによって、直ちに殺処分した。
【0056】
発作の誘発を、各動物について、存在(+)か、又は非存在(0)にスコア付けする全か無かの作用として測定する。
【0057】
各治療群についてのデータを、用いた各電流レベルで、+及び0の数として記録し、ついでこの情報を使用して、CC50値(動物の50%が発作行動を示すのに必要である電流)±標準誤差を算出する。
【0058】
データを、フィッシャーの正確確率検定を使用して、治療群を適した溶媒対照と比べることによって解析した。
【0059】
結果
以下の
図1及びTable 1(表2)は、この実験で生成したデータを実証する。
【0060】
溶媒群では、CC50値が20mAになるように算出した。
【0061】
試験30分前にi.p.投与したジアゼパム(2.5mg/kg)治療群では、CC50値は33.5mAであった。この結果は、溶媒対照に比べて、統計的に有意であった(p<0.01)。
【0062】
試験60分前にi.p.投与したCBD-C1治療群では、低用量の20mg/kgのCBD-C1は、溶媒に比べて、統計的に有意なCC50値を生成した。
【0063】
高用量のCBD-C1で治療したマウスでは、溶媒と非常に大きな(>225%)差があり、したがって有意値は算出できなかった。しかし、見られた効果は、治療有用性があるとみなすべきである。
【0064】
【0065】
結論
これらのデータは、化合物CBD-C1の治療効果を初めて実証する。
【0066】
これらのデータは、大麻植物の抽出物中に微量に存在するこのカンナビノイドが、治療的価値である可能性があるという、これまで知られていなかった証拠をもたらしたので、有意である。
【実施例3】
【0067】
マウスにおける最大電気刺激発作閾値(MEST)試験を使用した抗痙攣活性に対するカンナビジオール-C1(CBD-C1)の評価
実施例2に記載の最大電気刺激発作閾値(MEST)試験で、全身発作のマウスモデルにおけるCBD-C1の有効性を、試験した。
【0068】
方法
試験の詳細
未処置のマウスを、自由に利用できる食物及び水とともに、それらのホームケージ中の処置室に最大7日間順応させた。
【0069】
試験の開始時に全ての動物を秤量し、群にわたる体重の平均分布に基づいて無作為に治療群に割り当てた。全ての動物に、腹腔内(i.p)注射によって、溶媒、50、100、若しくは150mg/kgのCBD-C1、2.5mg/kgのジアゼパム、又は250mg/kgのバルプロ酸ナトリウムを、10mL/kgで投与した。
【0070】
動物を、溶媒の投与後15分に、50、100及び150mg/kgのCBD-C1の投与後それぞれ15分、15分及び30分に、並びにジアゼパム及びバルプロ酸ナトリウムの投与後30分に、単回電気刺激による強直性後肢伸展痙攣の発生について個別に評価した。
【0071】
治療群内の第1の動物に、予期した又は推定したCC50電流でショックを与えた。その後の動物に対しては、前述の動物の痙攣の結果に応じて、電流を低下又は上昇させた。
【0072】
各治療群から作成したデータを使用して、治療群のCC50±SEM値を算出した。
【0073】
試験化合物
溶媒(エタノール5%、ソルトール(solutol)5%、生理食塩水90%)を、以下のように調製した。エタノール2mL及びソルトール2mLを、生理食塩水36mL中で60℃まで温めた(1:1:18)。
【0074】
陽性対照:ジアゼパムを2.5mg/kg及びバルプロ酸ナトリウムを250mg/kgで使用した。
【0075】
試験化合物であるCBD-C1を、実施例1に記載の方法に従って調製した。CBD-C1を、1:1:18のエタノール:ソルトール:生理食塩水製剤0.9%に、50、100及び150mg/kg(i.p)で加えた。
【0076】
試料の採取
各動物を、痙攣の発生後、1986年動物法の附則1(科学的処置)(Schedule 1 to the Animals (Scientific Procedures) Act 1986)の人道的な動物殺害(The Humane Killing of Animals)の下、頭蓋を打つことによる脳の破壊、続いて断頭による血液循環の永久停止を確認することによって直ちに安楽死させた。断頭に続いて、血液及び脳の最終的な採取を行った。
【0077】
血液をリチウムヘパリン管に採取し、4℃で、10分間1500xgで遠心分離した。得られた血漿を取り除き(>100μL)、安定化のためにアスコルビン酸100μL(100mg/mL)を含有するEppendorfチューブ 0.5mLに2つの一定分量に分けた。脳は取り除き、生理食塩水中で洗浄して、二分した。各半分を別々のねじ蓋付きクライオバイアル2mLに入れ、秤量し、ドライアイス(cardice)上で凍結した。
【0078】
統計解析
各治療群についてのデータを、用いた各電流レベルで、+及び0の数として記録し、ついでこの情報を使用して、CC50値(動物の50%が発作行動を示すのに必要である電流)±標準誤差を算出する。
【0079】
CBD-C1の効果も、溶媒対照群からのCC50のパーセント変化率として算出した。薬物治療動物と対照の有意差を、リッチフィールド及びウィルコクソン法(1949)に従って評価した。
【0080】
結果
以下のTable 2(表3)は、この実験で生成したデータを実証し、
図2はこれらの結果を示す。
【0081】
溶媒群では、CC50値が22.3mAになるように算出した。
【0082】
試験30分前にi.p.投与した陽性対照であるジアゼパム(2.5mg/kg)治療群では、CC50値は77.5mAであった。試験30分前にi.p.投与したバルプロ酸ナトリウム(250mg/kg)治療群では、CC50値は281.5mAであった。これらの結果は、溶媒対照に比べて統計的に有意であった(p<0.001)。
【0083】
試験15分前にi.p.投与したCBD-C1治療群では、用量50及び100mg/kgのCBD-C1は、溶媒に比べて、統計的に有意なCC50値を生成した。150mg/kgで試験したCBD-C1は、CC50>255を生成し、正確な値は「+」として算出されず、強直性後肢痙攣は、試験した12匹の動物中では見られなかった。CC50が決定されず統計的有意性が得られなかったとはいえ、150mg/kgは、MESTにおいて、明らかな発作閾値の上昇を示した。
【0084】
このようなデータは、この化合物に治療有用性があるであろうことを示す。
【0085】
【0086】
結論
MESTにおいて、CBD-C1は用量に依存した上昇を引き起こし、その結果、この化合物が抗痙攣特性を示すという証拠がもたらされる。溶媒と比べたとき、有意な効果は、50及び100mg/kgで認められた。
【0087】
これらのデータは、このカンナビノイドが治療的価値を持ちうるという、これまで知られていなかった証拠を与えるので、有意である。
【国際調査報告】