(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】金属部品用の二重層保護コーティング
(51)【国際特許分類】
C23C 28/00 20060101AFI20230119BHJP
C23C 24/08 20060101ALI20230119BHJP
C23C 4/11 20160101ALI20230119BHJP
C23C 4/10 20160101ALI20230119BHJP
C23C 4/02 20060101ALI20230119BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230119BHJP
B32B 9/04 20060101ALI20230119BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C23C28/00 B
C23C24/08 C
C23C4/11
C23C4/10
C23C4/02
B32B9/00 A
B32B9/04
B32B15/04 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022529538
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 IB2020060444
(87)【国際公開番号】W WO2021099873
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522198678
【氏名又は名称】カリダス プロセス ソリューションズ ピーティワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ビューズ,ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ン,エブリン
【テーマコード(参考)】
4F100
4K031
4K044
【Fターム(参考)】
4F100AA15B
4F100AA20B
4F100AA21B
4F100AA22B
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4F100GB51
4F100JB02B
4F100JK09B
4K031AA08
4K031AB02
4K031AB08
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4K044BA02
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4K044BC01
4K044BC02
4K044BC05
4K044CA11
4K044CA14
4K044CA18
4K044CA27
4K044CA53
(57)【要約】
金属部品用の二重層保護コーティングであって、金属部品の基材に冶金的に融合するボンドコーティングであって、1つ以上のレアメタルを含むボンドコーティングと、ボンドコーティングに機械的に結合するトップコーティングであって、1つ以上の金属酸化物、又は1つ以上の金属炭化物を含むトップコーティングとを含む、二重層保護コーティング。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品用の二重層保護コーティングであって、
前記金属部品の基材に冶金的に融合するボンドコーティングであって、1つ以上のレアメタルを含むボンドコーティングと、
前記ボンドコーティングに機械的に結合するトップコーティングであって、1つ以上の金属酸化物、又は1つ以上の金属炭化物を含むトップコーティングと、
を含む、二重層保護コーティング。
【請求項2】
化学蒸着、溶融塩電着、及び融接の1つ以上によって前記ボンドコーティングが前記基材に冶金的に融合する、請求項1に記載の二重層保護コーティング。
【請求項3】
前記ボンドコーティングが完全緻密又は実質的に完全緻密である、請求項1に記載の二重層保護コーティング。
【請求項4】
ナノメートルサイズの粒子及びマイクロメートルサイズの粒子の一方又は両方の溶射によって、前記トップコーティングが前記ボンドコーティングに機械的に結合する、請求項1に記載の二重層保護コーティング。
【請求項5】
前記ボンドコーティングが、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、及びタンタルからなる群から選択される1つ以上のレアメタルを含む、請求項1に記載の二重層保護コーティング。
【請求項6】
前記トップコーティングが、酸化チタン(TiOx)、酸化クロム(CrOx)、酸化ケイ素(SiOx)、及び酸化チタン-酸化クロム(TiOx-CrOx)からなる群から選択される1つ以上の金属酸化物を含む、請求項1に記載の二重層保護コーティング。
【請求項7】
前記トップコーティングが、炭化タングステン(WC)、炭化クロム(CrC)、及び炭化クロム-炭化タングステン(CrC-WC)からなる群から選択される1つ以上の金属炭化物を含む、請求項1に記載の二重層保護コーティング。
【請求項8】
前記ボンドコーティングに機械的に結合させた後に、前記トップコーティングが緻密化される、請求項1に記載の二重層保護コーティング。
【請求項9】
前記ボンドコーティングが、前記基材に耐食性を少なくとも部分的に付与する、請求項1に記載の二重層保護コーティング。
【請求項10】
前記トップコーティングが、前記ボンドコーティングに耐摩耗性及び耐侵食性を少なくとも部分的に付与する、請求項1に記載の二重層保護コーティング。
【請求項11】
金属部品上に二重層保護コーティングを形成する方法であって:
前記金属部品の基材にボンドコーティングを冶金的に融合させるステップであって、前記ボンドコーティングが1つ以上のレアメタルを含むステップと;
前記ボンドコーティングにトップコーティングを機械的に結合させるステップであって、前記トップコーティングが1つ以上の金属酸化物、又は1つ以上の金属炭化物を含むステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記ボンドコーティングに機械的に結合させた後に、前記トップコーティングを緻密化させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の二重層保護コーティングで被覆された金属部品。
【請求項14】
請求項11に記載の方法を用いて被覆された金属部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
[0001] 本発明は、金属部品(metal component)用の二重層(bi-layer)保護コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 種々の工業プロセスでは、限定されないがバルブなどの金属部品は、高温及び高圧、並びに高い腐食性及び侵食性の環境にさらされる。
【0003】
[0003] このようなプロセスの例としては、スラリー化した鉱石及び精鉱の圧力酸化(POX)及び高圧酸浸出(HPAL)のためのオートクレーブプロセスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。多くのプロセスでは、金属部品の摩耗及び腐食損傷に関連する保守及び中断時間が重要となりうる。
【0004】
[0004] 金属部品用の、従来技術の単層酸化物(single oxide)コーティングなどの従来の単層保護コーティングは、耐摩耗性が得られるが、腐食により生じる破壊及び層間剥離が非常に生じやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] この背景を考慮して、腐食、摩耗、侵食、及び層間剥離に対して高い抵抗性を有する金属部品用の改善された保護コーティングが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
[0006] 本発明によると、金属部品用の二重層保護コーティングであって:
金属部品の基材に冶金的に融合(metallurgically fused)するボンドコーティングであって、1つ以上のレアメタルを含むボンドコーティングと;
ボンドコーティング機械的に結合するトップコーティングであって、1つ以上の金属酸化物、又は1つ以上の金属炭化物を含むトップコーティングと、
を含む、二重層保護コーティングが提供される。
【0007】
[0007] 化学蒸着、溶融塩電着(molten salt electrodeposition molten salt electrodeposition)、及び融接(fusion welding)の1つ以上によって、ボンドコーティングを基材に冶金的に融合させることができる。
【0008】
[0008] ボンドコーティングは完全緻密(full density)又は実質的に完全緻密であってよい。
【0009】
[0009] ナノメートルサイズの粒子及びマイクロメートルサイズの粒子の一方又は両方の溶射(thermal spraying)によって、トップコーティングをボンドコーティングに機械的に結合させることができる。
【0010】
[0010] ボンドコーティングは、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、及びタンタルからなる群から選択される1つ以上のレアメタルを含むことができる。
【0011】
[0011] トップコーティングは、酸化チタン(TiOx)、酸化クロム(CrOx)、酸化ケイ素(SiOx)、及び酸化チタン-酸化クロム(TiOx-CrOx)からなる群から選択される1つ以上の金属酸化物を含むことができる。
【0012】
[0012] 或いは、トップコーティングは、炭化タングステン(WC)、炭化クロム(CrC)、及び炭化クロム-炭化タングステン(CrC-WC)からなる群から選択される1つ以上の金属炭化物を含むことができる。
【0013】
[0013] ボンドコーティングに機械的に結合させた後に、トップコーティングを緻密化(densify)させることができる。
【0014】
[0014] ボンドコーティングは、基材に耐食性を少なくとも部分的に付与することができる。
【0015】
[0015] トップコーティングは、ボンドコーティングに耐摩耗性及び耐侵食性を少なくとも部分的に付与することができる。
【0016】
[0016] 本発明は、金属部品上に二重層保護コーティングを形成する方法であって:
金属部品の基材にボンドコーティングを冶金的に融合させるステップであって、ボンドコーティングが1つ以上のレアメタルを含むステップと;
ボンドコーティングにトップコーティングを機械的に結合させるステップであって、トップコーティングが1つ以上の金属酸化物、又は1つ以上の金属炭化物を含むステップと、
を含む方法をさらに提供する。
【0017】
[0017] この方法は、ボンドコーティングに機械的に結合させた後に、トップコーティングを緻密化させることをさらに含むことができる。
【0018】
[0018] 本発明は、上記二重層保護コーティングで被覆された、又は上記方法を用いて被覆された金属部品をさらに提供する。
【0019】
図面の簡単な説明
[0019] 添付の図面を参照しながら、これより本発明の実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による二重層保護コーティングを示す金属部品の概略断面図である。
【
図2A】従来技術の単層酸化物コーティングで被覆されたボール弁(ball valve)のボールの一方の側の使用後検査(post-service inspection)の写真である。
【
図2B】従来技術の単層酸化物コーティングで被覆されたボール弁のボールの反対側の使用後検査の写真である。
【
図3A】
図2Aのボールの一方の側上における従来技術の単層酸化物で被覆された弁座(seat)の使用後検査の写真である。
【
図3B】
図2Bのボールの反対側上における従来技術の単層酸化物で被覆された弁座の使用後検査の写真である。
【
図4】ボールの基材上における従来技術の単層酸化物コーティングの断面の使用後のSEM顕微鏡写真である。
【
図5】ボールの基材からの層間剥離を示す、従来技術の単層酸化物コーティングの断面の使用後の光学顕微鏡写真である。
【
図6】従来技術の単層酸化物コーティングとボールの基材との間の界面における断面微細構造形態の使用後のSEM顕微鏡写真である。
【
図7A】本発明の一例の二重層コーティングで被覆されたボール弁のボールの一方の側の使用後検査の写真である。
【
図7B】本発明の一例の二重層コーティングで被覆されたボール弁のボールの反対側の使用後検査の写真である。
【
図8A】
図7Aの二重層で被覆されたボールの一方の側の上の二重層で被覆された弁座の使用後検査の写真である。
【
図8B】
図7Bの二重層で被覆されたボールの上の反対側の上の二重層で被覆された弁座の使用後検査の写真である。
【
図9】二重層コーティングと二重層がコーティングされたボールの基材との間の界面における、断面微細構造形態、並びにボンドコーティング層及びトップコーティング層の組成の、低倍率における使用後のSEM顕微鏡写真である。
【
図10】二重層コーティングと、二重層がコーティングされたボールの基材との間の界面における、断面微細構造形態、並びにボンドコーティング層及びトップコーティング層の組成の、高倍率における使用後のSEM顕微鏡写真である。
【
図11】二重層コーティングのボンドコーティングのみを取り付けた(すなわち、二重層コーティングのトップコーティングは取り付けなかった)、
図7A及び7Bの二重層で被覆されたボールのステムスロット領域における断面微細構造形態の使用後のSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態の説明
[0020] 図面を参照すると、本発明の一実施形態による金属部品用の二重層保護コーティング10は、一般に、金属部品10の基材14に冶金的に融合する(又は冶金的に接着する)ボンドコーティング12と、下にあるボンドコーティング12に機械的に結合する(又は機械的に接着する)トップコーティング16とを含むことができる。
【0022】
[0021] ボンドコーティング12は、例えば、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、及びタンタルからなる群から選択される1つ以上のレアメタルを含むことができる。別の代替の又は同等のレアメタルを用いることもできる。
【0023】
[0022] ボンドコーティング12は、例えば、化学蒸着、溶融塩電着、及び融接の1つ以上によって基材14に冶金的に融合させることができる。ボンドコーティング12を基材14に冶金的に融合させるための別の代替の又は同等の技術を用いることもできる。ボンドコーティング12の微細構造は、完全緻密、又は実質的に完全緻密であってよく、空間及び亀裂を有さず、又は実質的に空間及び亀裂を有さず、下にある基材14上に均一で、凝集性で、気密の(又は密封性の)コーティング層を形成することができる。ボンドコーティング12の完全緻密(すなわち、0%の多孔度)、又は実質的に完全緻密(すなわち約0%の多孔度)は、下にある基材14にボンドコーティング12を取り付けるための上記技術のプロセス条件を選択的に制御することによって実現できる。
【0024】
[0023] トップコーティング16は、1つ以上の金属酸化物、又は1つ以上の金属炭化物を含むことができる。1つ以上の金属酸化物は、例えば、酸化チタン(TiOx)、酸化クロム(CrOx)、酸化ケイ素(SiOx)、及び酸化チタン-酸化クロム(TiOx-CrOx)からなる群から選択することができる。或いは、1つ以上の金属炭化物は、例えば、炭化タングステン(WC)、炭化クロム(CrC)、及び炭化クロム-炭化タングステン(CrC-WC)からなる群から選択することができる。別の代替の又は同等の耐摩耗性及び耐侵食性のトップコーティングを用いることもできる。
【0025】
[0024] 例えば、トップコーティング16は、改善された耐摩耗性及び耐侵食性を付与する、金属又は金属合金のマトリックスと組み合わされたナノ構造材料を含む選択されたナノコンポジットコーティングを含むことができる。金属炭化物又は金属酸化物のマトリックス中の適切なナノコンポジットの例としては:炭化タングステン-コバルト(WC-Co)マトリックス中の炭化タングステン(WC)のナノメートルサイズの粒子;アルミニウム-ケイ素(Al-Si)合金マトリックス中のアルミニウム-ケイ素のナノメートルサイズの粒子及びカーボンナノチューブ;並びに酸化アルミニウム(Al2O3)マトリックス/マイクロメートルサイズの粉末粒子中のカーボンナノチューブを挙げることができる。
【0026】
[0025] ナノメートルサイズの粒子及びマイクロメートルサイズの粒子の一方又は両方の溶射によって、トップコーティング16をボンドコーティングに機械的に結合させることができる。溶射は、例えば、燃焼、放電、コールドスプレー、及びレーザーから選択される1つ以上の溶射技術を含むことができる。このような技術の例としては、粉末フレーム溶射、大気プラズマ溶射APS、及び高速酸素燃料溶射(HVOF)が挙げられる。例えば、ナノメートルサイズの粒子の場合、それらは溶液又はサスペンジョンプラズマ溶射によって溶射することができる。別の代替の又は同等の溶射技術を用いることもできる。
【0027】
[0026] ボンドコーティング12に機械的に結合させた後に、トップコーティング16を緻密化させることができる。例えば、トップコーティング16をより緻密にするため、細孔及び亀裂を満たすために溶射表面上にシーラントを取り付けることによって、トップコーティング16を緻密化させることができる。別の代替の又は同等の緻密化技術を用いることもできる。
【0028】
[0027] ボンドコーティング12は、例えば、5~100μm、例えば30~70μmの厚さを有することができる。トップコーティング16は、例えば、100~900μm、例えば200~750μmの厚さを有することができる。トップコーティング16は、例えば、6,000PSI以上の結合強度又は剪断強度、並びに700HV0.5以上の硬度を有することができる。
【0029】
[0028] 使用中、ボンドコーティング12は、基材14に耐食性を少なくとも部分的に付与することができ、トップコーティング16は、ボンドコーティング12に耐摩耗性及び耐侵食性を少なくとも部分的に付与することができる。
【0030】
[0029] 金属部品は、例えば、工業プロセス、例えば限定するものではないがオートクレーブプロセス、例えば限定するものではないがHPAL又はPOXに用いることができる。金属部品は、例えばバルブ部品を含むことができる。しかし、本発明の実施形態は、オートクレーブプロセスに用いられるバルブ部品などの金属部品に限定されるものではなく、これとは別に、腐食、摩耗、及び侵食に対して高い抵抗性が必要なあらゆる工業プロセスに用いられるあらゆる金属部品を被覆するために実施することができることは認識されよう。
【0031】
[0030] 以下の実施例は本発明の説明を意図している。これは本発明の範囲の限定を意図したものではない。
【実施例】
【0032】
実施例-単層及び二重層で被覆された弁トリム(valve trim)の使用後の比較
従来技術の単層酸化物で被覆された弁トリム
[0031] この実施例では、「弁トリム」は、2つの側を有するボールと、ボールの互いに反対側の上の2つの弁座とを含むボール弁中の一連の内部金属部品を集合的に意味する。使用前、1組の弁トリム部品に従来技術の単層酸化物コーティングで被覆した。次に、従来技術の単層で被覆した弁トリムを、工業プロセス高温高圧、並びに高い腐食性及び侵食性の環境において用いられるボール弁中に使用するために取り付けた。従来技術の単層酸化物で被覆した弁トリムは、密閉効率が低下したため、62日のインライン後に取り外して使用をやめた。次に、従来技術の単層酸化物で被覆された部品の使用後検査を以下のように行った。
【0033】
[0032]
図2A及び2Bは、従来技術の単層酸化物コーティングで被覆されたボールの互いに反対側の使用後検査の写真である。従来技術の単層酸化物で被覆されたボールの両側は非常に腐食している。それぞれの側の表面上に腐食生成物が多量に蓄積しており、従来技術の単層酸化物コーティングの大部分は両側から剥離している。
【0034】
[0033]
図3A及び3Bは、
図2A及び2Bのボールの互いに反対側の上の従来技術の単層酸化物で被覆された弁座の使用後検査の写真である。従来技術の単層酸化物コーティングは、それぞれの弁座の広い領域で剥離している。従来技術の単層酸化物コーティングが剥離している両方の弁座の広い領域で腐食が存在し、両方の弁座のすべての表面に腐食生成物が蓄積している。弁座上の同じ方向にある印は、開放位置及び閉鎖位置の間で弁座が回転するときにボールによって生じる摩耗パターンを示している。
【0035】
[0034]
図4は、ボールの基材上の従来技術の単層酸化物コーティングの断面の使用後のSEM顕微鏡写真である。使用媒体は、従来技術の単層酸化物コーティングに固有の細孔を介して基材に接触しており、基材の腐食が開始した。従来技術の単層酸化物コーティングとボールの基材との間の界面に腐食生成物が顕著に蓄積しており、結果としてコーティングが剥離する。
【0036】
[0035]
図5は、ボールの基材からの従来技術の単層酸化物コーティングの層間剥離を示す、従来技術の単層酸化物コーティングの断面の使用後の光学顕微鏡写真である。基材と従来技術の単層酸化物コーティングとの間の界面に沿って腐食生成物が顕著に蓄積しており、基材材料の減少(すなわち腐食)の形跡があり、結果として、従来技術の単層酸化物コーティングの層間剥離及び破壊が生じる。
【0037】
[0036]
図6は、従来技術の単層酸化物コーティングと、下にあるボールの基材との間の界面の断面微細構造形態の使用後のSEM顕微鏡写真である。基材上に腐食生成物が顕著に蓄積しており、従来技術の単層酸化物コーティングは、腐食する基材との機械的かみ合いが失われることで、層間剥離している。
【0038】
二重層で被覆された弁トリム
[0037] 使用前の、別の組の同じ弁トリム部品を、前述の本発明のボンドコーティングとトップコーティングとを含む二重層コーティングで被覆した。次に、二重層で被覆された弁トリムを、前述の従来技術の単層酸化物で被覆された弁トリムと同じ工業プロセスに用いられるボール弁中で試験した。二重層で被覆された弁トリムは、前述の従来技術の単層酸化物で被覆された弁トリムと同じ過酷な使用条件にさらした。試験の成功を評価するため、及び二重層で被覆された弁トリムと前述の従来技術の単層酸化物で被覆された弁トリムとの使用性能を比較するための使用後検査のために、二重層で被覆された弁トリムを310日のインライン後に取り出した。次に、二重層で被覆された部品の使用後検査を以下のように行った。
【0039】
[0038]
図7A及び7Bは、本発明の二重層コーティングで被覆されボールの互いに反対側の使用後検査の写真である。ボールの両側の上の密封面上に腐食は見られない。二重層コーティングの上部酸化物コーティングは無傷であり、二重層コーティングのトップコーティング上にわずかな堆積物が存在するのみである。
【0040】
[0039]
図8A及び8Bは、
図7A及び7Bの二重層で被覆されたボールの互いに反対側の上の二重層で被覆された弁座の使用後検査の写真である。二重層コーティングのトップコーティングは、優れた状態のままであり、弁座の密封面の外縁においてごく小さなコーティングの剥離が存在した。
【0041】
[0040]
図9及び10はそれぞれ、二重層コーティングと、二重層で被覆されたボールの基材との間の界面におけるボンドコーティング層及びトップコーティング層の断面微細構造形態及び組成の低倍率及び高倍率の使用後のSEM顕微鏡写真である。二重層コーティングのボンドコーティングと、下にある基材との間の冶金的結合は、基材の腐食の兆候が見られないままであり、二重層コーティングの上部酸化物コーティングは無傷のままであり、下にあるボンドコーティングに結合していた。
【0042】
[0041]
図11は、二重層コーティングのボンドコーティングのみが取り付けられた(すなわち、二重層コーティングのトップコーティングは取り付けられていない)、
図7A及び7Bの二重層で被覆されたボールのステムスロット領域における断面微細構造形態の使用後のSEM顕微鏡写真である。ボンドコーティング単独は、機械的な力又は荷重が加わると、容易に破壊された。基材とボンドコーティングとの間の腐食生成物の蓄積、並びに基材中の広範囲の粒界割れ及び粒内割れによって明らかなように、基材の広範囲の腐食が起こった。
【0043】
[0042] 従来技術の単層酸化物で被覆された弁トリム、又は二重層コーティングのボンドコーティング単独(すなわち、二重層コーティングのトップコーティングなし)と比較した場合の、二重層で被覆された弁トリムの腐食、摩耗、侵食、及びコーティングの層間剥離に対する高い抵抗性によって示されるように、上記の従来技術の単層で被覆された弁トリムと二重層で被覆された弁トリムとの使用後の比較は、本発明の二重層コーティングのボンドコーティングとトップコーティングとの間で予期せぬ相乗効果が得られることを示している。
【0044】
[0043] 本発明の実施形態によって、腐食、摩耗、及び侵食に対して同時に抵抗性を示す金属部品を得るために特異的及び一般的の両方で有用な二重層保護コーティングが得られる。
【0045】
[0044] 本明細書の目的では、「含む」(comprising)という単語は、「含むが限定されるものではない」ことを意味し、「含む」(comprises)という単語は対応する意味を有する。
【0046】
[0045] 以上の実施形態は、単なる例として記載されており、以下の請求項の範囲内で修正が可能である。
【国際調査報告】