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特表2023-503107複合ペイン構造を有するカラーファサード素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】複合ペイン構造を有するカラーファサード素子
(51)【国際特許分類】
   H02S 20/26 20140101AFI20230119BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20230119BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
H02S20/26
H01L31/04 560
E04F13/08 A ETD
E04F13/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529680
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2021073499
(87)【国際公開番号】W WO2021151373
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】20153987.1
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519375963
【氏名又は名称】中建材硝子新材料研究院集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】CNBM RESEARCH INSTITUTE FOR ADVANCED GLASS MATERIALS GROUP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パーム イエルク
(72)【発明者】
【氏名】タウテンハウン ルッツ
【テーマコード(参考)】
2E110
5F151
【Fターム(参考)】
2E110AA37
2E110AA50
2E110AA57
2E110AB04
2E110BA03
2E110BA04
2E110BA05
2E110GA33W
2E110GB32W
5F151AA04
5F151AA05
5F151AA09
5F151AA10
5F151BA03
5F151EA09
5F151EA10
5F151EA11
5F151FA02
5F151JA03
5F151JA04
5F151JA05
(57)【要約】
本発明はファサード素子(1)に関し、前記ファサード素子は中間層(13)によって互いに強固に接続されている透明または半透明の第1ペイン(2)と機械的支持透明第2ペイン(3)とを含み、前記第1ペイン(2)は、光入射側に配置された前面(4)と、反対の背面(5)とを有し、前記前面と前記背面から選択される少なくとも1つの面(4,5)は、少なくとも1つの構造化領域(8,8’)を有しており、前記前面と前記背面から選択される少なくとも1つの面(4,5)上には、既定の波長範囲内の光を反射するように、少なくとも1つの光学干渉層(9,9’)が配置されており、前記少なくとも1つの構造化領域(8,8’)は、- 前記第1ペイン(2)の平面に対して垂直に、山と谷とを含む高さプロファイルを有し、前記山と谷との間の平均高度差が少なくとも2μmであり、- 前記構造化領域のうちの少なくとも50%は、前記第1ペイン(2)の平面に対して傾斜したセグメントからなり、前記第1ペイン(2)の平面に対して、前記セグメントのうちの少なくとも20%が0°より大きく最大15°までの範囲内の傾斜角を有し、前記セグメントのうちの少なくとも30%が15°より大きく最大45°までの範囲内の傾斜角を有し、- 前記セグメントはそれぞれ平面状であり、少なくとも1μmのセグメント面積を有し、前記セグメントはそれぞれ、前記少なくとも1つの光学干渉層の層厚さの15%未満の平均粗さを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層(13)によって互いに強固に接続されている透明または半透明の第1ペイン(2)と機械的支持透明第2ペイン(3)とを含むファサード素子(1)であって、前記第1ペイン(2)は、光入射側に配置された前面(4)と、反対の背面(5)とを有し、前記前面と前記背面から選択される少なくとも1つの面(4,5)は、少なくとも1つの構造化領域(8,8’)を有しており、前記前面と前記背面から選択される少なくとも1つの面(4,5)上には、既定の波長範囲内の光を反射するように、少なくとも1つの光学干渉層(9,9’)が配置されており、前記少なくとも1つの構造化領域(8,8’)は、
- 前記第1ペイン(2)の平面に対して垂直に、山と谷とを含む高さプロファイルを有し、前記山と谷との間の平均高度差が少なくとも2μmであり、
- 前記構造化領域のうちの少なくとも50%は、前記第1ペイン(2)の平面に対して傾斜したセグメントからなり、前記第1ペイン(2)の平面に対して、前記セグメントのうちの少なくとも20%が0°より大きく最大15°までの範囲内の傾斜角を有し、前記セグメントのうちの少なくとも30%が15°より大きく最大45°までの範囲内の傾斜角を有し、
- 前記セグメントはそれぞれ平面状であり、少なくとも1μmのセグメント面積を有し、前記セグメントはそれぞれ、前記少なくとも1つの光学干渉層の層厚さの15%未満の平均粗さを有する
特徴を有する
ファサード素子(1)。
【請求項2】
前記第2ペイン(3)は、前記第1ペイン(2)より
i)厚いか、又は、
ii)薄い
請求項1に記載のファサード素子(1)。
【請求項3】
i)前記第1ペイン(2)または
ii)前記第2ペイン(3)
は前記中間層(13)の光入射側に配置されている
請求項1又は2に記載のファサード素子(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの平面状背面素子(14)が背面側(R)に取り付けられている
請求項1から3の何れか一項に記載のファサード素子(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの平面状背面素子(14)は光起電エネルギー発生に適合している
請求項4に記載のファサード素子(1)。
【請求項6】
請求項5に記載のファサード素子(1)であって、光起電エネルギー発生に適合している前記背面素子(14)は、太陽電池(18)を備えたキャリア基板(16)を含み、前記キャリア基板(16)は、中間ペインなしに、別の中間層(13’)を介して前記第1ペイン(2)又は第2ペイン(3)に強固に接続されている
請求項5に記載のファサード素子(1)。
【請求項7】
前記第1ペイン(2)又は前記第2ペイン(3)は、プレハブソーラーモジュール(20)のカバーペインである
請求項5又は6に記載のファサード素子(1)。
【請求項8】
前記平面状背面素子(14)は、前記前面ペイン(2,3)の平面に対して、前記前面ペイン(2,3)より小さい
請求項5から7の何れか一項に記載のファサード素子(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの背面素子は、
- 裏側第1又は第2ペイン(2,3)のコーティング、特に不透明コーティング、
- 透明接着剤、特に透明接着フィルムによって前記背面側第1又は第2ペイン(2,3)に強固に接合されたフィルム、特に不透明フィルム、又は-
透明接着手段、特に透明接着フィルムによって前記裏側第1又は第2ペイン(2,3)に強固に接続された剛体、特に不透明剛体、
として形成されている
請求項4に記載のファサード素子(1)。
【請求項10】
前記第1ペイン(2)の前記前面(4)は少なくとも1つの構造化領域(8)を有しており、前記少なくとも1つの構造化領域(8)上には、既定の波長範囲内の光を反射するように構成された光学干渉層(9)が配置されている
請求項1から9の何れか一項に記載のファサード素子(1)。
【請求項11】
i)前記第1ペイン(2)の前記背面(5)は構造化領域も光学干渉層も有しておらず、または
ii)前記第1ペイン(2)の前記背面(5)は構造化領域を有しておらず、前記第1ペイン(2)の前記背面(5)には、既定の波長範囲内の光を反射するように、別の光学干渉層(9’)が配置されており、又は、
iii)前記第1ペイン(2)の前記背面(5)は少なくとも1つの構造化領域(8’)を有しており、前記少なくとも1つの構造化領域(8’)上には、既定の波長範囲内の光を反射するように構成された光学干渉層(9’)が配置されている
請求項10に記載のファサード素子(1)。
【請求項12】
前記第1ペイン(2)の前記背面(5)には、既定の波長範囲内の光を反射するように構成された光学干渉層(9)が配置されており、前記背面(5)及び/又は前記前面(4)がそれぞれ少なくとも1つの構造化領域(8,8’)を有し、前記前面(4)が少なくとも1つの構造化領域(8)を有するか、又は前記前面(4)上には既定の波長範囲内の光を反射するように構成された別の光学干渉層(9’)が配置されている
請求項1から9の何れか一項に記載のファサード素子(1)。
【請求項13】
i)前記第1ペイン(2)の前記背面(5)は構造化領域を有しておらず、前記前面(4)は少なくとも1つの構造化領域(8)を有しており、前記前面(4)上には光学干渉層が設けられておらず、又は、
ii)前記第1ペイン(2)の前記背面(5)は少なくとも1つの構造化領域(8)を有しており、前記前面(4)は少なくとも1つの構造化領域(8’)を有しており、前記前面(4)上には光学干渉層が設けられておらず、又は、
iii)前記第1ペイン(2)の前記背面(5)は少なくとも1つの構造化領域(8)を有しており、前記前面(4)は構造化領域を有しておらず、前記前面(4)上には光学干渉層が設けられておらず、又は、
iv)前記第1ペイン(2)の前記背面(5)は少なくとも1つの構造化領域(8)を有しており、前記前面(4)は構造化領域を有しておらず、前記前面(4)上には別の光学干渉層(9’)が設けられている
請求項12に記載のファサード素子(1)。
【請求項14】
第1ペイン(2)と第2ペイン(3)との複合ペイン(15)が、スペーサ(24)を介して少なくとも1つの別のペイン(25)に接続されており、隔離ペインを形成している
請求項1から13の何れか一項に記載のファサード素子(1)。
【請求項15】
請求項1から14の何れか一項に記載のファサード素子(1)の、カーテンウォール背面通気ファサード、柱梁ファサード、又は窓ファサードでの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファサード製造の技術分野に関し、複合ペイン構造を有するカラーファサード素子に関する。
【背景技術】
【0002】
壁やファサード素子としてソーラーモジュールを利用するのは、経済的な観点からは現在も比較的小さな市場であるが、エコロジー的な観点からは非常に興味深い市場である。特に、分散型エネルギーソリューションとエネルギー中立な建築への取り組みが増加していることに鑑み、ソーラーモジュールの、建築物の囲い構造物の一体化部品としての用途への需要が高まっている。ソーラーモジュールの他の興味深い用途には、防音バリア(道路、鉄道)、屋外の目隠しフェンス、温室壁などが含まれる。これらの新しい用途は、ソーラーモジュールに対して、特に美観、耐用年数、および密閉および断熱のような他の機能に関して、全く新しい要求を出す。特に、そのためのソーラーモジュールは、形状、大きさ、色が異なっていなければならず、そして、できるだけ均一な色印象を伝えなければならない。色の由来(吸収/減衰、干渉、屈折)に応じて、ソーラーモジュールの本質的に均一な表面の色は、観察角度および/または照射角度に依存することがある。また、光のスペクトルと空間分布(拡散、方向性)も色印象を決定する。
【0003】
効率最適化の点から見ると、理想的なソーラーモジュールは、放射エネルギーを電気エネルギーに最適に変換するために、入射太陽光を完全に吸収する黒体でなければならない。しかしながら、実際の物体であれば、入射した放射を反射し、そして吸収された放射を屈折させるので、人間の目の色印象は基本的に、スペクトル選択反射と光の減衰の結果である。可視スペクトル範囲内での太陽スペクトルのエネルギー強度が最も高く、人の目の感度が最も大きい。ソーラーモジュールがカラーで設計されている場合、すなわち人の目に理想的な黒体とは異なるソーラーモジュールの色印象を与えようとする場合、光起電活性半導体に吸収される光の強度は必然的に低下し、それによってソーラーモジュールの電気出力または効率も低下する。最適な効率は基本的に黒いソーラーモジュールでしか実現できない。一方、色の由来(吸収/減衰、干渉、屈折)に応じて、ソーラーモジュールの本質的に均一な表面の色は、観察角度および/または照射角度に依存することがある。なお、光のスペクトルと空間分布(拡散、方向性)も色印象を決定する。
【0004】
未公開の欧州特許出願EP1818615及びEP18186161には、少なくとも1つの光学干渉層によって発色を実現したソーラーモジュールが示されている。前面ガラスを構造化することにより、受容可能なエネルギー収量、特に良好な効率を達成しながら、たとえ異なる観察方向から、および異なる照明条件においても、人の目に対して大体安定した色効果を有するカラーソーラーモジュールを得ることができる。
【0005】
ファサードの色を可能な限り均一にするために、ファサードの具体的なサイズによっては、異なるサイズと形状のカラーソーラーモジュールが必要になることがある。一般的に、実際の半導体スタックが広い領域で製造され、分割によってモジュールサイズを小さく製造しなければならない場合、小型で矩形でないソーラーモジュールは、かなりの追加コストを招くことになる。これは、小型のソーラーモジュールでは、単位出力パワーあたり、材料投入量の大幅増加が必要とされるからである。また、モジュールのエッジに対するモジュール領域の比例は、ソーラーモジュールが小さいほど不利であり、その結果、全体的なモジュール効率も低下する。なお、小型ソーラーモジュールの総コストの中で、一部材料のコストと付加部品およびエッジ封止の固定コストがより高い割合を占めている。なお、製造プロセスのいくつかのステップは、異なる基板サイズに対して大幅に変更された装置構想によってのみ実現できる。
【0006】
上記の理由から、ソーラーモジュールの工業的連続生産は、いくつかの標準的なモジュールサイズ、また、原則としてソーラーモジュールの矩形形状を対象としているため、ファサード全面をソーラーモジュールで覆うことは通常不可能であるか、経済的に受け入れられない。また、太陽電池の光起電設計およびコンタクトストリップ、接続箱およびケーブルなどの各種の付加部品は、標準的なモジュールサイズに合わせて最適化されている。なお、太陽に対する方角が悪い、同じ建物または隣接する建物の一部によって影ができるなどの理由で、ソーラーモジュールでファサードの一部の領域を覆うことは、追加コストを正当化するにはエネルギー収量が不十分であるため、経済的ではない可能性がある。
【0007】
カラーソーラーモジュールの適切な大きさ及び/又は形状が不足する問題を解決するために、板金又はその他の従来の建築材料で作られた光起電不活性ファサード素子の使用が考えられ、そして、それらの色はカラーソーラーモジュールの色とできるだけ似ていなければならないことは理解されている。しかし、色生成の性質にある技術的且つデザイン的な問題がある。実際、色の由来(吸収/放出、干渉、屈折)に応じて、特に光の種類(拡散、直射、光の色)に応じて、入射角および/または観察角を変化させることにより、ソーラーモジュールの色は、異なる照明条件において変化することができる。光起電不活性ファサード素子がカラーソーラーモジュール以外の材料で作られると、設計上望ましくない色のコントラストを引き起こすことがよくある。
【0008】
この問題に対する解決策は、未公開の欧州特許出願EP18186175で確認できる。未公開の欧州特許出願EP1818615およびEP18186161と似て、前面ガラスが構造化されており且つ少なくとも1つの光学干渉層が設けられている光起電不活性ファサード素子が示されている。
【0009】
カーテン型の背面通気ファサードの場合、ファサード素子と後の構造物とは空気層で仕切られている。DIN 18516-1によれば、このような構造には、ファサード被覆、背面通気区域、断熱材、基礎構造が含まれている。前提条件として、静的に支持するアンカーリングベースが必要である。結露を乾燥させるために、断熱材も通気する。木材、金属、複合材料、カラーガラスパネルを含む各種のファサード被覆材が可能であり、これらはラインブラケット、ポイントブラケット又はクランプによって締め付けられる。本出願人が販売しているような、厚さ3~4mmの前面ガラスと、モノリシックで直列に相互接続されたCIGS薄膜太陽電池および接合された背面レールを備えた厚さ2mmの基板ガラスとを有するソーラーモジュールも、ファサード素子として特に適している。
【0010】
カーテン型の背面通気ファサードの代替案として、カーテンウォールも広く使われている。構造的に見ると、柱梁ファサードはエレメントファサードとともに、カーテンウォールファサードに属する。カーテンウォールファサードは自立しており、そして建物の他の部分からのさらなる構造荷重を可能な限り負担しない。これらの基礎構造は、建物の主要な支持構造に取り付けられている。製品規格DIN EN 13830(カーテンファサード)は、柱梁ファサードの一般的な要件を定義している。柱梁ファサードによって、大きな開口だけでなく、全ファサード領域を形成することができる。この構造は、異なる輪郭寸法、特に輪郭奥行き、および木材、鋼またはアルミニウムのような異なる材料の使用により、特に、隔離ガラスおよびソーラーモジュールのような異なる材料を充填材として選択することができるため、ほぼあらゆる設置状況に適合することができる。柱梁ファサードのモジュラー設計によって、素子(エレメントファサード)の工場内でのプレハブも、それらの建設現場での現場接続も可能になる。この構造は、共に骨組み状の耐荷重構造を構成する縦柱プロフィール(メインプロフィール)と横梁プロフィールとの接続を基礎としている。主な荷重伝達は、縦柱を介して行われる。梁は、それらにねじ止めされているか、差し込まれているか、または溶接されている。充填材は、透明または不透明な材料で形成できる。弾性封止素子は、ファサード領域と支持ファサードフレームワークとの間で使用される。
【0011】
同様に興味深いのは、大きなウィンドウウォールにソーラーモジュールを設置することである。これらは、さまざまな建造形式の外壁に(たとえば、石造りの外壁の間にも)組み込むことができる。例えば、ソーラーモジュールは、不透明素子として床から天井まである窓素子内に設置することができる。あるいは、窓素子内では、下部領域に光起電活性セグメントがあり、そして上部領域に透明セグメントがある。
【0012】
カーテンウォール背面通気ファサード、カーテンウォール、またはウィンドウウォール内にファサード素子としてソーラーモジュールを一体化する場合、以下の要件を満たす必要がある。
【0013】
均一色効果:
静的および経済的な理由から、ファサード素子は一定の最小寸法を持つ必要がある。寸法は、静的な面および建築的な美しさの面の両方に応じて可変であるべきである。この要件は、ソーラーモジュールの製造で得られる寸法と矛盾する可能性がある。薄膜ソーラーモジュールの場合、技術的な生産上の理由から、一般的に、特定の幅や長さしか得られない。したがって、大きな領域の場合、いくつかのモジュールを互いに隣接させまたは互いの下にして、柱梁構造のファサード素子に一体化しなければならない。その間に、光起電活性領域とは異なる色効果を有する領域(コンタクトストリップ、エッジ領域から絶縁等)が存在する。シリコンウェハ技術におけるソーラーモジュールの場合、実際の電池とは異なる色効果を持つ領域(コンタクトグリッド、コンタクトバンド、セル間の空間)も存在する。また、薄膜太陽電池とシリコンウェハ太陽電池は、それぞれ独自の色効果(グレー、ブルー、又はブラック)を有する。実際の電池表面および不活性領域は、ユーザの希望に応じて可能な限り任意の色で均一に被覆されるべきである。効率の損失は高すぎると、ファサードのエネルギー収量も低くなりすぎる。
【0014】
機械的安定性:
ソーラーモジュールは通常、CIGS薄膜ソーラーモジュールの場合は3mmの強化された安全前面ガラスと2mmの非強化ベースガラス、標準シリコンソーラーモジュールの場合は4mmの強化された前面ガラスと背面ペインなど、比較的薄いガラス厚さのガラス複合体(強化および/または非強化)から構成されている。これらのガラスの厚さは一般的には、特に高い建物および/または高い風荷重区域において、柱梁ガラス構造の充填物または背面通気カーテンウォールを被覆するパネルには不十分である。建物の高さが高くなればなるほど、耐風性の要求も高くなるので、より高い風荷重区域とより高い建物の高さに発展することが望ましい。
【0015】
気候安定性:
従来のファサード材とは異なり、ソーラーモジュールは、湿気などの環境影響から保護しなければならない電子部品(基本的に大面積の半導体ダイオードとそれらのコンタクト素子)から構成されている。これは通常、適切な封止材とエッジシールによって保証される。
【0016】
製造コスト:
従来、建築一体型ソーラーモジュールの多くは手作業または半自動で製造されていた。その結果、製造コストが割高になっている。建築一体型光起電は、製造コストとエネルギー発生の収量から、ファサードの追加コストに対する投資回収時間が許容できる場合にのみ、持続的に成長する応用分野となり得る。
【0017】
効率:
電力エネルギー収量に起因するファサードの追加コストに対して、ファサード一体化が許容できる投資回収時間を達成するためには、効率および年間平均エネルギー収量が低すぎてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これに対して、本発明の目的は、上記要件を考慮した複合ペイン構造を有するカラーファサード素子を提供することである。特に、ファサード素子の色は、照明条件、観察角度や照射角度にできるだけ依存しないようにする必要がある。ファサード素子は、受け入れられるコスト且つ満足できる均一性で、異なる大きさ及び形状で製造できることが好ましい。また、風荷重の大きい地域や高い建物の高さで使用できるように、耐風性への高い要求にも対応すべきである。
【0019】
本発明の提案によれば、これらおよび他の目的は、独立請求項の特徴を有するファサード素子によって解決される。本発明の有利な実施形態は、サブクレームの特徴によって示される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、複合ペイン構造を有するカラーファサード素子が示されている。
【0021】
「ファサード素子」という用語は、通常、ファサードに目に見える表面要素として取り付けることが好適であり、かつそのことを目的とされた部品を指す。一般的に、ファサードは正面側つまり外側と背面側つまり内側を有し、ファサードの正面側は外部環境から見ることができる。たとえば、ファサードは、建物壁、または視覚バリアまたは騒音バリアとして機能する独立壁である。ファサード素子は、独立した部品として、ファサード内に一体化ことができ、これによって、ファサード素子の前面がファサードの外側面つまり前面の一部になる。ファサード素子の前面側つまり外側は、ファサード素子上での光(例えば、太陽光)の入射に利用される。ファサード素子の背面側つまり内側は、外部環境からの視認にも光線の入射にも利用されない。
【0022】
「カラーファサード素子」、または「色効果を有するファサード素子」とは、光(例えば、太陽光)に曝されたときに、ファサード素子の前面側つまり外側が特定の(選択可能な)色を有することを意味する。
【0023】
「複合ペイン構造」によって、ファサード素子は、中間層を介して互いに強固に接続された(例えば、積層された)少なくとも2つのペインを有することが理解される。
【0024】
ファサード素子は、光起電活性な(すなわち、光起電発電に適しており且つそのことを目的とされた)ものであってもよい。しかし、これとは対照的に、ファサード素子を光起電不活性とすることも可能である。
【0025】
本発明によれば、透明中間層を介して互いに強固に接続された透明又は半透明の第1ペイン及び透明の第2ペインを含む、色効果を有するファサード素子が示される。第1ペイン及び第2ペインによって複合ペインを形成する。中間層は、2つのペインを接合する熱可塑性または架橋ポリマー中間層(例えば、PVB=ポリビニルブチラールまたはEVA=エチレン酢酸ビニル)であることが好ましい。透明シリコーン樹脂や注型樹脂を用いて接合することもできる。
【0026】
本発明の目的のために、「透明性」又は「透明」という用語は、可視光透過率が少なくとも85%、特に少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に100%であることを意味する。典型的に、可視光は380nmから780nmまでの波長範囲に存在する。「不透明性」または「不透明」という用語は、可視光透過率が5%未満、特に0%であることを意味する。「半透明性」または「半透明」という用語は、可視光透過率が85%未満、且つ少なくとも5%であることを意味する。パーセンテージとは、2次元構造の他方側に当たった光の強度に対する、検査対象の2次元構造(例えば、ペイン)の一方側で測定された光の強度を意味する。このような測定のために、例えば、白色光源(可視光源)を平面状構造の一方側に配置し、可視光検出器を平面構造の他方側に配置することができる。以下に示す光屈折率の値は、常に380nmから780nmまでの可視波長範囲内の光屈折率を意味する。
【0027】
本発明によるファサード素子において、以下でより詳細に説明されるように、透明または半透明の第1ペインが着色のために利用される。第1ペインはカラーの反射を有するため、完全に透明ではない。濃い色や飽和度の低い色について、可視光透過率はやはり85%より高いが、薄い色や飽和度の高い色について、通常85%より低い。透明な第2ペインは、着色のためではなく、ファサード素子が耐風性へのより高い要求にも対応できるように、ファサード素子の機械的支持または補強のために利用される。
【0028】
色付与第1ペインは、光入射側に配置された前(すなわち、前側)面と、反対の背(すなわち、後側)面とを有する。これにより、第1ペインの前面は、ファサード素子の前側つまり外側が見える外部環境に面している。したがって、第1ペインの背面は外部環境に背を向けている。
【0029】
本発明のファサード素子の一実施形態によれば、ファサード素子のペインは、ガラス又はプラスチック、好ましくはソーダライムガラス等の同一材料から作られる。好ましくは、ペインはそれぞれ、剛性のガラスペインまたはプラスチックペインとして形成されている。この場合、ペインの前面または背面は、ペインのそれぞれの材料によって形成される。代替実施形態によれば、ペインは、少なくとも2つの異なる材料を含んでもよく、ペインの前面および/または背面は、ペインのコアとは異なる材料から形成される。好ましくは、ペインのコアは、ガラス又はプラスチックのような同一の材料により、好適にはソーダライムガラスによって作製される。ペインのコアの外側及び/又は内側にペインのコアとは異なる材料が施されており、該材料は透明であり、ペインのコアの材料と同じ光学屈折率を有する。この場合、ペインの前面または背面は、ペインのコアに適用されたそれぞれの材料によって形成される。本発明によれば、「ペイン」という用語はこのため複合体も含み、ただし、ペインを形成する材料が非吸収性であり且つ同じ光学屈折率を有することが条件である。
【0030】
好ましくは、ファサード素子のペインは湾曲しておらず、平面状である(平坦である)。しかし、ペインが曲がっていてもよい。ペインは、剛性であってもよいし、可撓性であってもよい。可撓性のペインは平面状形式で提供することもできる。平面状(平坦)ペインの場合、平面はペイン自体によって定義され、本発明の意味では、平面は「ペインの平面」と理解される。湾曲したペインの場合、ローカル平面は、そのペインの任意の点にある(仮想)接線平面によって定義できる。この接線平面も、「ペインの平面」という用語に属する。
【0031】
本発明によるファサード素子は、外部から白色光で照射された場合、特に太陽光で照射された場合、少なくとも一部において観察者に均一な色印象を与え、すなわち、ファサード素子がカラーである。カラー部分は、ファサード素子の前面全体に亘って延在することが好ましい。表面全体で均一な色印象を持つファサード素子は、特に魅力的であると考えられる。
【0032】
ファサード素子の色は、三色座標L*、a*、b*によって記述することができ、ここによって色座標は、知覚可能なすべての色が正確に定義される、当業者自身に知られている(CIE)L*a*b*色空間を指す。この色空間は、欧州規格EN ISO 11664-4『測色-第4部:CIE 1976 L*a*b* 色空間』に規定されており、本明細書において全て引用されている。CIE(L*a*b*)色空間では、各色は3つのデカルト座標L*、a*、b*を持つ色位置によって定義される。a*軸では緑と赤が反対しており、b*軸は青と黄の間に延在し、そしてL*軸は色の明るさ(輝度)を説明する。より説明的な表現のために、これらの量はLhc色空間に変換できる。ここで、Lは同じままで、彩度はa*b*平面内の色の点の半径であり、hは角度である。
【0033】
ファサード素子の色は、外部環境からの、すなわち前面側ペイン上での観察結果を指す。ファサード素子の色測定又は色座標の確定は、市販の測色計(分光測光器)を用いて容易に行うことができる。この目的のために、色測定装置は、前面側ペインの前面に向けられ、特に前面に設置される。一般的な色測定装置は、規格に準拠した色測定を可能にしており、よってそれらの設計及び許容範囲は、典型的に、DIN 5033、ISO/CIE 10527、ISO 7724、ASTM E1347で定義された国際規格に準拠している。例えば、色の測定については、DIN 5033規格を完全に参照している。色測定装置は、例えば、キセノンフラッシュランプ、タングステンハロゲンランプ、又は1つ以上のLEDを光源として有し、それによって、生成された光(例えば、白色の光)で本体の前面を照明し、ファサード素子によって受光された光を測定する。前に説明したように、測色計によって測定される本体の色はファサード素子から反射・減衰された光によるものである。
【0034】
本発明によるファサード素子が少なくとも1つの部分において均一な色を有するようにするために、色付与第1ペインの少なくとも1つの表面(すなわち、前面および/または背面)は、少なくとも1つの構造化領域を有する。さらに、第1ペイン上には、少なくとも1つの色付与光学干渉層が設けられている。この少なくとも1つの光学干渉層は、第1ペインを色付与第1ペインにする。
【0035】
この少なくとも1つの光学干渉層は、既定の又は予め決定可能な波長範囲内の光を反射するために使用される。この少なくとも1つの光学干渉層は、好ましくは、第1ペインの表面上に直接(すなわち、さらなる中間層を必要とせず)配置される。
【0036】
この少なくとも1つの光学干渉層は、単層設計または多層設計であってもよく、すなわち、1つまたは複数の光屈折層(屈折層)を有していてもよい。光学干渉層は、第1ペインの色を生成し、それによってファサード素子の色を生成するために使用され、光学干渉層は、光学干渉層の様々な界面で反射された光の建設的干渉と相殺的干渉が可能になるように設計されている。光学干渉層の界面で反射された光の干渉により、ファサード素子の色が発生する。光学干渉層は、(白色の)光、特に太陽光で照射されると、カラーフィルタとして機能し、均一な色を生成する。好ましくは、構造化領域は、ファサード素子全体が均一な色を有するように、第1ペイン全体に亘って、すなわち、第1ペインの表面(前面および/または背面)全体に亘って延在する。ファサード素子は、それぞれが均一な色を持ついくつかのファサード素子部分を持つこともできる。ファサード素子部分の色は、同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
少なくとも1つの構造化領域は、山(隆起)および谷(凹部)を有する色付与第1ペインの平面に垂直な高さプロファイルを有し、山と谷との間の平均高度差は少なくとも2μmであり、そして、透明または半透明の第1ペインの厚さの好ましくは最大20%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%であるが、必ずしもそうとは限らない。なお、表面(前面および/または背面)の構造化領域のうちの少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%が、傾斜の異なるセグメント又は小面からなる。セグメントは、色付与第1ペインの表面の外部環境に面した部分であり、それぞれ、色付与第1ペインの平面に対して傾斜した平面状表面として形成されている。ここで、色付与第1ペインの平面に対して、セグメントのうちの少なくとも20%が0°より大きく最大15°までの範囲内の傾斜角を有し、セグメントのうちの少なくとも30%が15°より大きく最大45°までの範囲内の傾斜角を有する。有利に、しかし必ずしもそうではないが、セグメントのうちの30%未満は45°よりも大きい傾斜角を有する。それらの構造は、非周期的かつ異方性であることが好ましい。しかしながら、特殊な光学効果のために、周期的構造及び異方性構造を用いることもできる。
【0038】
なお、セグメントはそれぞれ平坦(平面状)であり、少なくとも1μmのセグメント面積を有する。なお、構造化領域の少なくとも1つの区域(すなわち、サブ領域)において、セグメントはそれぞれ、構造化領域に適用される光学干渉層の層厚さの15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満の平均粗さを有する。光学干渉層が複数の屈折層からなる場合、少なくとも1つの区域のセグメントはそれぞれ、最も小さい層厚さを持つ屈折層の層厚さの15%未満の平均粗さを有する。セグメントがそれぞれ光学干渉層の層厚さの15%未満の平均粗さを有する区域は、構造化領域に対応することができ、すなわち、区域と構造化領域とが同一である。構造化領域は、例えば、第1ペインをエッチング、砂吹き、又は圧延することによって生成することができる。
【0039】
したがって、ファサード素子の色付与第1ペインの少なくとも1つの構造化領域は、複数の平面状(平坦)セグメントを有する。本発明の意味では、平面状セグメントは非曲面から形成されてもよい。しかし、平坦(平面)セグメントは、わずかに湾曲した表面によって形成されてもよい。セグメントの点において1μmの領域を有する(仮想)接平面が構築された場合、セグメントの領域と接平面との間の、接平面の法線方向を基準とする距離が50nm未満であるという条件が、セグメントの各点に適用されると、セグメントは本発明の意味でわずかに湾曲することになる。
【0040】
本発明の目的のために、ファサード素子の文脈において、「構造化」または「構造化領域」という用語は、色付与第1ペインの前面または背面の、上記の特徴が組み合わせで存在する領域を意味する。
【0041】
構造化領域の特徴により、色付与第1ペインに光が照射されたとき、たとえ光沢角外で観察されても(色付与第1ペインの平面に対して、入射光の入射角は、反射光の反射角に対応する)、光は、比較的高い強度で反射されて戻ってくることが、有利に実現される。これは、光沢角外で観察しても高強度の反射光を達成するのに十分な数、適切な大きさ、および適切な傾斜角で存在する傾斜の異なるセグメントに起因する。セグメントでの屈折によって外側に構造化領域を有する場合と、セグメントでの反射によって内部に構造化領域を有する場合とで、色付与第1ペインの光沢角外の方向に十分な強度を散乱させる十分な数の傾斜セグメントが常に設けられている。
【0042】
ここで使用されるように、「光沢角」という用語は、色付与第1ペインの平面に対する法線を参照し、「局所光沢角」はセグメントの平面に対する法線を参照する。光沢角と局所光沢角は同じでもよいが(セグメント色付与第1ペインの平面に対して平行)、通常は異なる(セグメントが色付与第1ペインの平面に対して傾いている)。
【0043】
その結果、光沢角内で反射されない(すなわち散乱された)光の強度は比較的高くでき、このような構造化領域を持たない反射面と比較して、入射方向及び観察方向に対する角依存性はわずかである。光学干渉層により、光沢角外で反射された光は、光学干渉層の屈折率及び層厚さに応じて色選択され、それにより、色付与第1ペインの表面が比較的低い角度依存性を有する均一な色を持つようにすることができる。干渉層は狭帯域反射及び広帯域透過のフィルタとして機能する。
【0044】
この点において、有利に、構造化領域は、山と谷との間の平均高度差が少なくとも2μm、好ましくは少なくとも10μm、特に好ましくは少なくとも15μmである高さプロファイルを有する。このような構造化領域は、(例えば、ガラスの)第1ペインをエッチングすることによって生成することができる。この点において特に有利には、構造化領域は、山と谷との間の平均高度差が少なくとも50μm、好ましくは少なくとも100μmである高さプロファイルを有する。このようなテクスチャ化領域は、(例えば、ガラスの)色付与第1ペインを圧延することによって生成することができる。したがって、本発明は、色付与第1ペインの少なくとも1つの構造化領域がエッチング又は圧延によって生成され、それによって前記高さプロファイルを生成することができるファサード素子に有利に拡張される。
【0045】
しかしながら、色付与第1ペインに透明で構造化された層を塗布することにより、これらの構造を製造することもできる。この場合、層の屈折率は第1ペインと同じである(或いは少なくとも非常によく似ている)必要がある。本発明によれば、色付与第1ペインの表面の構造化は、このような透明で構造化された層の適用も含むべきである。
【0046】
色付与第1ペインの構造化領域の前記特性は、例えば、顕微鏡、特に共焦点顕微鏡、又はニードルプロファイルメータのような従来の測定装置によって測定することができる。
【0047】
好ましくは、本発明によるファサード素子の(コーティングされていない)第1ペインの少なくとも1つの構造化領域は、45°および15°の観察角(それぞれの場合、第1ペインの平面を基準とする)及びそれぞれの光沢角から(両方向に)45°ずれた入射角において、少なくとも10の反射光の明るさLが発生することを実現する。発生する反射光の明るさLは、少なくとも15であることが好ましく、少なくとも20であることがより好ましい。この測定において、(コーティングされていない)第1ペインの、特徴付けられる側に背を向けた側(すなわち、背面)に黒色のカバーが適用される。この測定には、明るさL(開口角10°)を測定するために、D65ビームと市販の多角度測色計を用いた。以下では、図26に関連して、測定設定について詳しく説明する。その中で、欧州規格EN ISO 11664-4を完全に参照している。
【0048】
本発明によるファサード素子において、第1ペインはファサード素子を着色するために使用される一方、第2ペインはファサード素子を機械的に支持(補強)するために使用される。ファサード素子の有利な実施形態において、機械的支持第2ペインは、色付与第1ペインよりも厚く、したがって機械的強度がより強いので、二つのペインは何れもそれらの機能に応じて最適化される。しかし、色付与第1ペインは、機械的支持第2ペインよりも厚くてもよい。これは、比較的低いペイン厚さを有する別の(機械的支持)ペインが、ファサード素子の所望の機械的安定性にとって十分である場合に特に有利である。
【0049】
本発明によるファサード素子の一実施形態において、色付与第1ペインが中間層の光入射側に設けられており、すなわち、第1ペインがファサード素子の前面カバーペインを形成している。しかし、機械的支持第2ペインが中間層の光入射側に配置されてもよく、すなわち、第2ペインがファサード素子の前側カバーペインを形成してもよい。後者の場合、光線は、色付与第1ペインに当たるまで、機械的支持第2ペインを通過する。
【0050】
ファサード素子の色は、白色の光(例えば、太陽光)が照射されたときに少なくとも1つの光学干渉層によって選択された色の結果であり、この選択された色は、ファサード素子が取り付けられた2次元構造(例えば、壁)の背景色と組み合わされる。したがって、全体的な印象は、この選択された色と背景色との結果として生じる。
【0051】
原則として、ファサード素子は、色生成に寄与する背面素子なしで使用してもよい。実際には、ファサード素子が取り付けられる平面状構造の背景色を考慮する必要がある。
【0052】
背景に依存しない色を実現するために、ファサード素子は、その背面(すなわち、裏)側に少なくとも1つの2次元背面(裏側)素子を有する。好ましくは、この少なくとも1つの平面状背面素子は、不透明または半透明である。この少なくとも1つの2次元背面素子は、ファサード素子の裏側に配置され、すなわち、光の入射方向に、色付与第1ペインと機械的支持第2ペインとの固定された複合体の後方に配置される。
【0053】
少なくとも1つの背面素子は、ファサード素子の着色に寄与する。この目的のために、背面素子は、例えば、無彩色、暗色、且つ無光沢である。背面素子は、第1ペイン上に配置された少なくとも1つの色付与光学干渉層と組み合わせて、ファサード素子に特定の(既定の又は予め決定可能な)色印象を与えるように着色されてもよい。裏面素子が光起電活性で且つCIGS薄膜太陽電池を有すれば、これらは全体の色にも寄与する。CIGS薄膜太陽電池は一般的に青黒い色を有する。
【0054】
上記のように、第1ペインは、外部環境に面する前面と、それと反対の背面とを有する。同様に、第2ペインは、外部環境(光入射側)に面する前面と、前面と反対の背面とを有する。ファサード素子のファサード内で取り付けられた状態では、それぞれのペインの前面が外部環境に面する。
【0055】
この少なくとも1つの平面状背面素子は接触面を有し、この接触面は、背面(裏側)ペイン(第1ペインまたは第2ペイン)の背面に、すなわち中間層の光入射に背を向けた側に配置されたペインの背面に、強固に接続される。
【0056】
例えば、この少なくとも1つの平面状背面素子は、背面(裏側)ペインの背(裏側)面の少なくとも70%、少なくとも90%、または少なくとも99%を覆っている。特に、平面状背面素子は、背面ペインの背面をその全領域にわたって覆っている(100%、つまり完全に被覆する)。しかしながら、この少なくとも1つの平面状背面素子は、背面ペインの背面の70%未満、特に50%未満をカバーしてもよい。
【0057】
ファサード素子の2次元背面素子は、光起電活性設計または光起電不活性設計を有することができる。
【0058】
本発明のファサード素子の好ましい実施形態によれば、この少なくとも1つの2次元背面素子は、光起電活性である、すなわち太陽光からエネルギーを生成するのに適しており且つそのことを目的とされるように設計されている。したがって、カラーファサード素子を光起電エネルギー発生に好適に利用することができる。
【0059】
好ましくは、この少なくとも1つの光起電活性背面素子は、直列接続された太陽電池が適用されたキャリア基板(ペイン)であり、このキャリア基板は、第12ペインと第2ペインの複合体の背面(裏側)ペイン(第1ペインまたは第2ペイン)に直接、すなわち、中間ペインなしに、別の中間層を介して(例えば、積層によって)強固に接続されている。これにより、背面ペインは、キャリア基板とともに2つのペインの別の複合体を形成する。全体として、これにより、3つのペインが積層(第1ペイン、第2ペイン、キャリア基板)によって互いに強固に接続された複合ペイン構造が実現される。色付与第1ペインと機械的支持第2ペインとの複合体により、太陽電池を外部の風化から良好に保護する。
【0060】
平面状背面素子が、ペインの平面に対して前側ペインよりも小さいと、有利になり得る。したがって、平面状背面素子の、前側ペインの各方向に沿った寸法は、前側ペインの寸法より小さい。このような対策により、平面裏面素子を、特にそれが太陽電池を備えている場合、外部からの影響を良好に保護することができる。
【0061】
光起電活性背面素子は、光起電力エネルギー発生のために、電気的に直列接続された太陽電池を備えている。原則として、これらの太陽電池は、任意のタイプの太陽電池、特にウェハに基づくシリコン系太陽電池(キャリア基板上の太陽電池は表板(superstrate)構成)またはモノリシック集積形式で直列接続された薄膜太陽電池(キャリア基板上の太陽電池は基板(substrate)構成)とすることができる。好ましくは、これらはモノリシック集積形式で直列接続された薄膜太陽電池である。
【0062】
第1ペインと第2ペインとの複合体の背面(裏側)ペインとの積層により、太陽電池が適用されたキャリア基板と背面ペインから、複合ペイン構造を有する薄膜ソーラーモジュールが製造され、この背面ペインは、それぞれの中間層によって、前面ペイン及びキャリア基板に強固に接続されている。
【0063】
しかし、中間層を介して互いに強固に接続された2つのペインを含む完全なソーラーモジュール(例えば、太陽電池、特に薄膜太陽電池を有するキャリア基板およびカバープレート)は、単一のペイン(第1ペインまたは第2ペイン)に強固に接続されてもよい。この結果、ここで、2つの中間層を介して互いに強固に接続された3つのペイン備えた複合ペイン構造も形成される。有利には、このように、プレハブソーラーモジュールを使用することができる。プレハブのソーラーモジュールは、状況に応じて、機械的支持第2ペインまたは色付与第1ペインを有してもよく、この場合、ソーラーモジュールは、それぞれの別のペイン(色付与第1ペインまたは機械的支持第2ペイン)に強固に接合される。各中間層は、2つのペインを接合する熱可塑性または架橋ポリマー中間層(例えば、PVBまたはEVA)であることが好ましい。透明シリコーン樹脂や注型樹脂を用いて接合することもできる。
【0064】
光起電活性背面素子は、太陽電池製造用の層状構造が支持基板の入光側に面する表面に堆積された、基板構造の薄膜太陽電池を有することが好ましい。一般的な使用法では、「薄膜太陽電池」という用語は、例えば数ミクロンの薄い厚さの層構造を指し、これによって、十分な機械的強度を得るためには、支持基板が必要となる。キャリア基板は、例えば、無機ガラス、鋼またはプラスチックから構成されていてもよく、それぞれの層厚さおよび特定の材料特性に応じて、剛性プレート又は可撓性のフィルムとして設計することができる。好ましくは、キャリア基板はガラスからなる。
【0065】
薄膜太陽電池の場合、層構造は、本来既知の形で、背面電極層と、前面電極層と、背面電極層と前面電極層との間に配置された光起電性活性吸収体層とを含む。前面電極層は、層構造上、光が通過できる必要があるので、光学的に透明である。光学的に透明な前面電極層は、通常、n型の、ドープ金属酸化物(TCO=透明導電性酸化物)、特にアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)を含むかまたはそれからなる。
【0066】
好ましくは、光起電活性吸収体層は、有利には銅インジウム・ガリウム二硫化物・二セレン化物(Cu(ln,Ga)(S,Se))のグループからの三元I-III-VI化合物半導体であるカルコパイライト半導体を含むか、またはそれからなる。上記式において、インジウムとガリウムとは、それぞれ単独で存在してもよく、あるいは組み合わせて存在してもよい。これは硫黄とセレンについても同様であり、これらも単独で存在してもよく、あるいは組み合わせて存在してもよい。吸収体層の材料としては、CIS(銅インジウム二セレン化物/二硫化物)またはCIGS(銅インジウムガリウム二セレン化物、銅インジウムガリウム二硫化物、銅インジウムガリウム二硫セレン化物)が特に好適である。吸収体層は典型的には第1導電型(電荷キャリア型)のドープを有し、前面電極は反対の導電型のドープを有する。原則として、吸収体層はp型(pドープ)、すなわち欠陥電子(正孔)が過剰であるが、前面電極層はn型(nドープ)であるため、自由電子が過剰である。吸収体層と前面電極層との間に通常バッファ層が配置されている。これは、p型Cu(in,Ga)(S,Se)吸収体層とn型前面電極との間に通常バッファ層が必要とされるCu(in,Ga)(S,Se)に基づく吸収体層に特に適用される。これまでの知見によれば、バッファ層は吸収体と前面電極との間の電子整合を可能にする。また、例えばDCマグネトロンスパッタリングによる前面電極堆積の後続工程におけるスパッタ損傷に対する保護を提供する。n型前面電極層、バッファ層、p型吸収体層の順で、逆の導電型の層の間の接合であるpnヘテロ接合が形成されている。光起電活性吸収体層は、例えばテルル化カドミウム(CdTe)、非晶質及び/又は微結晶シリコンであってもよい。
【0067】
層構造において、パターニング領域によって直列接続された太陽電池が形成されている。これにより、少なくとも背面電極層は、第1パターニングライン(P1ライン)によって完全に分離された部分に分割され、これらの部分が太陽電池の背面電極を形成する。また、少なくとも吸収体層は第2パターニングライン(P2ライン)によって完全に分離された部分に分割され、これらの部分は太陽電池の吸収体を形成し、少なくとも前面電極層は第3パターニングライン(P3ライン)によって完全に分離された部分に分割され、これらの部分は太陽電池の前面電極を形成する。隣接する太陽電池は、第2パターニングラインに内の導電性材料によって直列接続で互いに電気的に接続されており、太陽電池の前面電極が隣接する太陽電池の背面電極に電気的に接続されて、且つ、典型的には後者と直接接触するが、必ずしもそうとは限らない。各パターニング区域は、3本のパターニングラインP1~P2~P3のそれぞれこの順番での直列配列を含む。
【0068】
非晶質および/または微結晶シリコン系およびCdTe系の薄膜モジュールは、通常、表板構造で構成されている。これにより、薄膜太陽電池が入光側ガラスにコーティングされる。背面には通常、気候安定性封入用の第2ガラスがある。この場合、入光側の透明キャリアガラスは、機械的支持ペインの役割を担うこともできる。色付与ペインとの積層により、本発明によるカラー積層ガラスモジュールが得られる。
【0069】
一般的な使用法では、薄膜ソーラーモジュールにおける「太陽電池」という用語は、前面電極、光起電活性吸収体、および背面電極を含む積層構造の領域を意味し、2つの直接隣接するパターニング区域によって定義される。各太陽電池は、積層された背面電極と、吸収体と、前面電極とを含む光学活性区域を有し、光を電流に光電変換することができる。
【0070】
本発明のファサード素子の一実施形態によれば、少なくとも1つの背面素子を部分的に覆うマスキング層が、光入射方向に、背面素子の光起電不活性領域(接続部、バスバー、接続箱等)を覆う最後の干渉層(以下参照)の後方に配置される。これにより、外部環境からは太陽電池の光学活性領域のみが見えるようになり、ファサード素子の外観がさらに改善される。
【0071】
平面状背面素子は、背面ペインに強固に接続されている。平面状背面素子は、それ自体が色を有してもよく、背面素子の色は、素子の全体的な色に影響を与える。
【0072】
本発明のファサード素子の一実施形態によれば、平面状背面素子は、光起電不活性である、すなわち、太陽光によってエネルギーを生成することを意図されておらず、かつ、それに適していない。
【0073】
光起電不活性背面素子は、例えば、背面(裏側)ペイン(第1ペイン又は第2ペイン)の背面のコーティング、特に不透明コーティングの形態で形成される。同様に、背面素子は、背面ペイン(第1ペインまたは第2ペイン)の背面に強固に接合されたフィルム、例えば、不透明なフィルム、または剛体(コーティングなし)、特に不透明剛体、例えば板の形態で、形成することができる。剛体は、支持体であっても非支持体であってもよく、そして、支持体としては、特に支持板であってもよい。フィルムまたは本体と背面(裏側)ペイン(第1ペインまたは第2ペイン)との接合は、透明接着剤、特に透明接着フィルムによって行うことができる。
【0074】
特に、光起電不活性平面状背面素子の色は、カラーソーラーモジュールの不透明な背景に対応するように選択することができ、すなわち、背面素子は、光活性太陽電池に対応する色を有することができる。好ましくは、この光起電不活性平面状背面素子は、無彩色、暗色、且つ無光沢である。したがって、ファサード素子の色印象及び角度依存性は、対応して製造された薄膜モジュールに基づくカラーモジュールと特に良好に整合することができる。これらの属性は、次のように説明できる。
【0075】
- L値は、最大値は50、好ましくは45未満、または40未満である。
【0076】
- A色度は、c=(a+a1/2で、最大値は5、好ましくは2未満、より好ましくは1.5未満である。
【0077】
光沢を避けるために、次の要件を追加することもできる。
【0078】
- 反射ヘイズが少なくとも90%である。反射ヘイズは、全反射光に対する拡散反射された光の割合である。
【0079】
本発明によるファサード素子の色付与第1ペインの様々な実施形態をさらに説明する。
【0080】
ファサード素子の実施形態(参照の便宜上「タイプI」と称される)によれば、色付与第1ペインの前面は、既定の又は予め決定可能な波長範囲内の光を反射するように色付与光学干渉層が配置された、少なくとも1つの構造化領域を有する。光学干渉層は、好ましくは、第1ペインの前面上に直接(すなわち、さらなる中間層を必要とせず)配置される。
【0081】
上述したタイプIの実施形態において、色付与第1ペインの背面が構造化領域も、光学干渉層も有していなければ、有利である。すると、背面は、好ましくは(製造誤差内で)平滑である。
【0082】
上記タイプIの実施形態において、色付与第1ペインの背面が構造化領域有しておらず、色付与第1ペインの背面上に、既定の波長範囲内の光を反射するように別の光学干渉層が設けられていれば、さらに有利である。すると、背面は、好ましくは(製造誤差内で)平滑である。これら2つの光学干渉層は、同一であっても異なっていてもよい。特に、これら2つの光学干渉層は、同じ波長範囲内で光を反射するように設計することができる。しかしながら、これら2つの光学干渉層は、異なる波長範囲、または部分的にのみ重複する波長範囲内で光を反射するように設計されてもよい。これら2つの光学干渉層の厚さ及び屈折率は、同一であっても異なっていてもよい。これにより、ファサード素子の色をよりよく限定できる。また、混合色を生成することもできる。
【0083】
上記タイプIの実施形態において、背(裏側)面が、少なくとも1つの構造化領域を有しており、当該少なくとも1つの構造化領域上に既定の波長範囲内の光を反射するように構成された光学干渉層が配置されている場合に、さらに有利である。背面の構造化領域と前面の構造化領域とは、同一であっても異なっていてもよい。これら2つの光学干渉層の層厚さ及び屈折率は、同一であっても異なっていてもよい。これらの測定値は、ファサード素子の色をさらに限定するためにも使用できる。また、混合色を生成することもできる。
【0084】
タイプIのファサード素子の実施形態において、光が干渉層を有する第1ペインの構造化前面に当たると、光沢角外であっても、反射および干渉によって、高い強度および低い角度依存性を有する色が既に生成される。第1ペインの背面上の追加の干渉層および/または構造化によって、この効果をさらに強めることができる。
【0085】
ファサード素子のもう一つの実施形態(参照の便宜上「タイプII」と称される)によれば、色付与光学干渉層は、色付与第1ペインの背面に配置され、既定の又は予め決定可能な波長範囲内の光を反射する。光学干渉層は、好ましくは、色付与第1ペインの背(裏側)面上に直接(すなわち、さらなる中間層を必要とせず)配置される。また、色付与第1ペインの背面及び/又は前面は、それぞれ少なくとも1つの構造化領域を有し、ただし、前面が少なくとも1つの構造化領域を有するか、又は、既定の又は予め決定可能な波長範囲内の光を反射するように構成された別の光学干渉層が前面に設けられていることが条件である。光学干渉層は、好ましくは、色付与第1ペインの前面上に直接(すなわち、さらなる中間層を必要とせず)配置される。すなわち、前面が少なくとも1つの構造化領域を有する場合には、前面上に光学干渉層が配置されない。
【0086】
したがって、改善された角度安定性で所望の彩度を達成するために、入射光は、少なくとも1回は第1ペインを通過し、内部干渉層で反射されなければならない。色付与第1ペインの内側構造化面および/または外側構造化面により、内側に位置する干渉層がより高い屈折率を有する境界面に相当するので、光沢角外でも高強度で角度依存性の低い光が反射される。外部構造化によって、光は空気とペインとの間の界面で既に屈折し、そして様々な角度から内部干渉層に拡散散乱される。内部構造化の場合にのみ、本発明によれば、異なる傾斜角を有する多数の表面セグメントが利用可能であるので、拡散散乱は、内部界面において生じる。また、色付与光学干渉層により、良好で均一な色印象を実現することができる。したがって、干渉層は狭帯域反射及び広帯域透過のフィルタとして機能する。
【0087】
上述したタイプIIの実施形態において、色付与第1ペインの背(裏側)面に光学干渉層が配置され、色付与第1ペインの背面が構造化領域を有せず、色付与第1ペインの前面が少なくとも1つの構造化領域を有し、且つ、色付与第1ペインの前面上には別の光学干渉層が配置されていなければ、有利である。すると、背面は、好ましくは(製造誤差内で)平滑である。ファサード素子の前面の構造化領域のセグメントに対して、粗さの条件は存在しない。構造化前面は、より大きな微視的粗さを有してもよい。この界面では、透過、屈折、散乱のみが発生し、干渉は発生しない。本発明によるファサード素子のこの実施形態において、色付与第1ペインの前面が、光学屈折率が色付与第1ペインの光学屈折率より小さい(例えば、薄い)反射防止層でコーティングされていることが有利である。これにより、色付与第1ペイン(例えば、ガラス)の実質的に白い反射を抑制し、色の彩度レベルを向上させることができる。しかしながら、色付与第1ペインの前面上の追加の層は、色付与第1ペインと同じ屈折率を有してもよい。この場合、この層は、色付与第1ペインを空気中の湿気やその他の腐食性成分から保護するためにのみ使用される。エッチング梨地ガラスは、平面ガラスやロール法ガラスよりも湿熱に敏感であることが既に証明されている。エッチングソーダライムガラスの場合、当該追加の層は、例えば薄いスパッタSiO層であってもよい。
【0088】
上述したタイプIIの実施形態において、色付与第1ペインの背(裏側)面上に光学干渉層があり、色付与第1ペインの背面が少なくとも1つの構造化領域を有し、前面が少なくとも1つの構造化領域を有し、色付与第1ペインの前面上には別の光学干渉層が配置されていなければ、さらに有利である。色付与第1ペインの背面の構造化領域と前面の構造化領域とは、同一であっても異なっていてもよい。前面の構造化領域のセグメントに対して、粗さの条件は存在しない。構造化前面は、より大きな微視的粗さを有してもよい。この界面では、透過、屈折、散乱のみが発生し、干渉は発生しない。背面の構造化領域のセグメントには、構造化領域上に光学干渉層が設けられているので、上記の粗さ条件が適用される。前面が構造化され、干渉層が背面上にある場合、構造化表面を通って入射した光が、異なる傾斜を有するセグメントで屈折され、異なる角度で干渉層に当たって、そして、干渉および反射の後、色付与第1ペインから離れるときに構造化前面を2回目に通過し、再び屈折によって方向を変えることから、角度安定性が生じる。
【0089】
ファサード素子の上述したタイプIIの実施形態において、色付与第1ペインの背面に光学干渉層が配置され、色付与第1ペインの背面が少なくとも1つの構造化領域を有し、色付与第1ペインの前面が構造化領域を有せず、色付与第1ペインの前面上には別の光学干渉層が配置されていなければ、さらに有利である。すると、前面は、好ましくは(製造誤差内で)平滑である。背面の構造化領域のセグメントには、構造化領域上に光学干渉層が設けられているので、上記の粗さ条件が適用される。本発明によるファサード素子のこの実施形態において、色付与第1ペインの前面が、屈折率が色付与第1ペインの屈折率より小さい(例えば、薄い)反射防止層でコーティングされていることが有利である。このようにして、ガラス色付与第1ペインの実質的に白い反射を抑制し、色の彩度を向上させることができる。
【0090】
上述したタイプIIの実施形態において、色付与第1ペインの背面が少なくとも1つの構造化領域を有し、前面が構造化領域を有せず、色付与第1ペインの前面上にはもう一つの光学干渉層が配置されていれば、さらに有利である。すると、前面は、好ましくは(製造誤差内で)平滑である。背面の構造化領域のセグメントには、構造化領域上に光学干渉層が設けられているので、上記の粗さ条件が適用される。これら2つの光学干渉層は、同一であっても異なっていてもよい。特に、これら2つの光学干渉層は、同じ波長範囲内で光を反射するように設計することができる。しかしながら、これら2つの光学干渉層は、異なる波長範囲、または部分的にのみ重複する波長範囲内で光を反射するように設計されてもよい。平滑な外面の干渉層は、全反射光の白い成分を低減するために、色中立的な反射防止層であってもよい。この色は、干渉層で構造化された内側上の反射によって生成される。しかし、平滑な外側の干渉層は、内側で生成された色を増強する、または異なる波長範囲内のもう一つの色成分を混合する色生成層であってもよい。
【0091】
したがって、タイプIIのファサード素子の設計において、色付与第1ペインの前面から離れた後に、改善された角度安定性で所望の色を実現するために、入射光は、色付与第1ペインを少なくとも1回通過しなければならず、内部干渉層で反射されなければならない。
【0092】
本発明によるファサード素子において、構造化された第1ペインは、たとえ光沢角外でも高強度と低い角度依存性で光を反射する。色付与効果を有する少なくとも1つの光学干渉層により、非常に均一な色印象が生じる。
【0093】
本発明によるファサード素子の有利な実施形態において、色付与第1ペインの(どの面が構造化されたかに応じて)前面または背面の構造化領域の少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%が、色付与第1ペインの平面に対して傾斜したセグメントからなる。セグメント数を増加させることにより、光沢角外でも、色付与第一ペインの表面の構造化領域から反射される光の強度及びその角度安定性をさらに向上させることができる。
【0094】
本発明によるファサード素子の有利な実施形態において、(表面)セグメントの傾斜角は、第1ペインの平面(ガラス平面)に対して0°から45°の間である。セグメントのうちの少なくとも50%、好ましくは70%は、25°未満の入射角を有することが好ましい。入射角の分布は、0°~35°、好ましくは5°~25°の範囲内にある0°~25°、好ましくは10°~20°の角度範囲内で最大度数を有することが好ましい。なお、非傾斜面(入射角=0°)の割合は、全角度分布の5%未満であることが好ましい。
【0095】
本発明によるファサード素子の有利な実施形態において、構造(セグメント)の高さ(H)に対する幅(B)のアスペクト比は少なくともB:H>2:1且つB:H<50:1で、好ましくはB:H>3: 1且つB:H<10:1である。
【0096】
10°未満の小さい傾斜角を有する比較的多数の小面が存在する場合、反射強度は実質的に光沢角に近い観察角でのみ(構造化されていない表面と同様に)発生し、本発明によれば望ましくない。以上の条件により、強度の特に低い反射光角度依存性を有しながら、光沢角外でも非常に強い反射光強度を実現することができる。それらの構造は、非周期的かつ異方性であることが好ましい。しかしながら、特殊な光学効果のために、周期的構造及び/又は異方性構造を用いることもできる。ガラス延伸において、ピラミッド、正方形又は六角形のハニカム構造、又は半球などの周期的且つ異方性のある構造がローラーにより容易に製造することができる。これらは魅力的な光沢や色効果の生成に使用できる。表面構造が上記条件を満足すると、ファサード素子はまた、光沢角外の角度では色度の低下が顕著に減少するが、角度依存性は色付与第1ペインの平面内向きについて異方性である。
【0097】
少なくとも1つの光学干渉層は、1つ以上の屈折層を含んでもよく、特に、1つ以上の屈折層で構成されてもよい。屈折層は、同じ材料(同じ組成)からなり、特に層厚さにわたって均一な(同じ)屈折率を有する。光学干渉層が複数の屈折層を含む場合、少なくとも2つの屈折層は互いに異なる材料からなり、且つ異なる屈折率を有する。有利には、少なくとも1つの屈折層は、1.7より大きく、好ましくは2.0より大きく、特に好ましくは2.3より大きい屈折率nを有する。原理的には、屈折率が大きいほど反射光の角度依存性が低くなり、色印象の角度依存性をより低くすることができる。
【0098】
有利には、光学干渉層は、TiO、ZrO、SiC及びSiからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物を含み、すなわち、高い屈折率を有する非吸収性材料を含む。光学干渉層が2層、3層又はそれ以上である場合には、MgF、AI、SiO及び酸窒化ケイ素からなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。これらは屈折率が比較的低い非吸収性化合物である。
【0099】
本発明によるファサード素子において、既に、構造化表面と、わずかな数の屈折層(例えば、1~3層の屈折層)のみを有する光学干渉層との組み合わせにより、良好な色印象を達成することができる。屈折層の少ない数は、ファサード素子の製造を簡単にし、製造コストを削減する。
【0100】
有利には、ファサード素子の少なくとも1つの光学干渉層(特にすべての光学干渉層)は、1.9より大きく、好ましくは2.3より大きい屈折率nを有するちょうど1つの屈折層を含む(又はそれからなる)。
【0101】
有利には、ファサード素子の少なくとも1つの光学干渉層(特に全ての光学干渉層)がちょうど2つの屈折層を含み(又はちょうど2つの屈折層からなり)、屈折率ndを有する色付与第1ペイン上に第1屈折率n1を有する第1屈折層が存在し、第1屈折層上に第2屈折率n2を有する第2屈折層が存在する。屈折率差の量(絶対値)には、以下が適用される。|n1-nd|>0.3且つ|n2-n1|>0.3であり、屈折率n1とn2のうちの少なくとも一方が1.9より大きく、好ましくは2.3より大きい。
【0102】
有利には、ファサード素子の少なくとも1つの光学干渉層(特にすべての光学干渉層)がちょうど3つの屈折層を含む(またはちょうど3つの屈折層からなり)、屈折率ndを有する色付与第1ペイン上に第1屈折率n1を有する第1屈折層が存在し、第1屈折層上に第2屈折率n2を有する第2屈折層が存在し、第2屈折層上に第3屈折率n3を有する第3屈折層が存在する。屈折率差の量(絶対値)には、以下が適用される。|n3-n2|>0.3、|n2-n1|>0.3且つ|n1-nd|>0.3。ここで、屈折率の値は、n1>n2且つn3>n2であるか、またはn1<n2且つn3<n2であるかどちらかである。また、屈折率n1、n2、n3のうちの少なくとも1つは1.9より大きく、好ましくは2.3より大きい。
【0103】
光学干渉層がちょうど1つ、ちょうど2つ、またはちょうど3つの屈折層を有するので、ファサード素子の簡単な製造および低い製造コストで、ファサード素子の均一な色印象を実現することができる。2つまたは3つの層は、特定の狭い波長範囲での色の強さ(すなわち明るさ)及び彩度(すなわち反射)を増加させることができる。相対的に高い屈折率は、角度依存性を低減する。示された本発明及び実施形態に従って構造化された色付与第1ペインと組み合わされた3つ以上の層を有する層スタックで作られた干渉層も、本発明の範囲内にあるが、製造がより複雑である。高屈折率と低屈折率を交互に有する屈折層の四重層により、例えば、反射光の帯域幅をより小さくするとともに、透過率を向上させることができる。
【0104】
色付与第1ペインの少なくとも1つの構造化領域では、たとえ光沢角外であっても、比較的高い強度で入射光放射の反射が生じる。この目的のために、構造化領域は、50%を超える反射ヘイズ、特に好ましくは90%を超える反射ヘイズが存在するように形成されることが好ましい。反射ヘイズは市販のヘイズ計で確定することができる。ASTM D1003によると、ヘイズは反射光の拡散成分と全反射との比率である。
【0105】
本発明によるファサード素子において、少なくとも1つの区域が設けられ、その領域において、セグメントは前面の光学干渉層の層厚さの15%未満の平均粗さを有し、それによって反射光の建設的干渉又は相殺的干渉が可能になる。有利には、この区域は色付与第1ペイン全体にわたって延在する。一実施形態によれば、構造化領域は、少なくとももう1つの領域、すなわち(部分的な)領域を有し、その領域において、セグメントがそれぞれ、光学干渉層上で干渉が生じないような平均粗さを有する。例えば、そこのセグメントは、光学干渉層の層厚さの50%から100%の平均粗さを有する。これらの区域では、ファサード素子は、光学干渉層によって生成されたいかなる色も示さない。
【0106】
本発明のファサード素子の一実施形態によれば、隔離ペインを形成するための第1ペインと第2ペインとの複合体が、スペーサを介して少なくとも1つの追加のペインに接続されている。隔離ペインの基本構造は当業者には既知であるので、ここでより詳細な議論を行う必要はない。
【0107】
なお、本発明は、本発明によるファサード素子を、建築物囲い構造物(建築壁)または独立壁(例えば、視覚保護壁または騒音保護壁)の(一体)部材として使用することにも及ぶ。本発明によるファサード素子は、カーテンウォール、柱梁ファサード、または窓ファサードの部品として使用されることが特に有利である。
【0108】
本発明の様々な実施形態は、単独で、または任意の組み合わせで実現できる。特に、上述した特徴及び以下に説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせにおいて又はそれら単独でも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
以下、添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。これらは、簡略化されたノンスケール表示で以下を示す。
図1】~
図2】背面素子のない本発明によるファサード素子の様々な実施形態を示す断面模式図である。
図3】~
図5】少なくとも1つの背面素子を有する本発明によるファサード素子の様々な実施形態を示す断面模式図である。
図6】~
図7】背面素子を有する本発明によるファサード素子の様々な実施形態を示す平面図である。
図8】隔離ペインの形態の本発明によるファサード素子の別の実施形態を示す図である。
図9】本発明によるファサード素子の一実施形態による色付与第1ペインの断面模式図である。
図10】本発明によるファサード素子上の典型的な照明条件を示す模式図である。
図11】~
図14図9の色付与第1ペインの構造化領域内での反射時の例示的な光路の模式図である。
図15】光学干渉層内での光干渉の模式図である。
図16】~
図17】本発明によるファサード素子の色付与第1ペインのさらなる実施形態の断面模式図である。
図18】色付与第1ペインからの反射時の例示的な光路を示す模式図である。
図19】~
図20】本発明によるファサード素子の色付与第1ペインの別の実施形態の断面模式図である。
図21図20のファサード素子の構造化領域での反射時の例示的な光路の模式図である。
図22】本発明によるファサード素子の色付与第1ペインの別の実施形態の断面模式図である。
図23図22のファサード素子の色付与第1ペインでの反射時の例示的な光路の模式図である。
図24】~
図25】本発明によるファサード素子の色付与第1ペインのさらなる実施形態の断面模式図である。
図26】多角度測色の方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
図1及び図2には、断面図(ファサード素子の表面に垂直な断面)によって、本発明の実施形態による符号1で全体をしてされたファサード素子の構造を模式的に例示している。ファサード素子1は、ファサードに設置するためのものである。例えば、ファサード素子1は、背面通気ファサードのパネルとして使用したり、柱梁支持構造物の充填物に挿入したり、ウィンドウウォールの窓素子として使用したりすることができる。
【0111】
ファサード素子1は、中間層13を介して(例えば、積層によって)強固に接続されている、透明または半透明の色付与第1ペイン2と、機械的支持第2ペイン3とを含む。第1ペイン2及び第2ペインは、例えばガラスペインであり、ソーダライムガラス等の吸収性の低いガラスからなることが好ましい。また、第1ペイン2は色付与ガラス素子とも称され、第2ペイン3は機械的支持ガラス素子とも称される。
【0112】
ファサード素子1は、外部環境(光入射側)から見られる前面側Vと、設置状態で略平面状の構造物(例えば、壁)に面する背面側Rとを有する。本発明の目的のために、ファサード素子1の前面側Vの周囲領域Uを外部環境と見なす(図1及び図2においては、いずれの場合も、ファサード素子1の左側に位置する周囲領域Uとする)。
【0113】
色付与第1ペイン2は、外部環境Uに面する前面4と、それと反対し外部環境Uに背を向けた背面5とを含む。同様に、第2ペイン3は、外部環境Uに面する前面4’と、それと反対し外部環境Uに背を向けた背面5’とを含む。本発明の説明のために、表面が外部環境Uに面する場合は、「前面」と呼ばれる。それに応じて、表面が外部環境Uに背を向けた場合は、「背面」と呼ばれる。第1ペイン2および/または第2ペイン3は、複合体として形成されてもよく、特に、コアと同じ光学屈折率を有する別の透明な材料(例えばサンドイッチ状)に埋め込まれた透明なコアを含んでもよい。次に、この材料から前面4,4’及び背面5,5’を形成する。これについては、図1ではより詳細には示されていない。
【0114】
第1ペイン2は、例えばラミネートフィルム、透明シリコーン樹脂、注型樹脂等による接合によって第2ペイン3に接合されて積層ガラス素子を形成する。ここでは、第1ペイン2は例えば外側に位置し、すなわち、ファサード素子1の前面側Vを形成する。第2ペイン3は内側に位置し、すなわち、ファサード素子1の背面側Rを形成する。
【0115】
第1ペイン2と第2ペイン3とを含む複合ペイン15を備えるファサード素子1は、機械的機能(風荷重)と気象保護機能(雨等)とを担う。構造上の要求に応じて、ペイン2,3の厚さを合わせて設定しなければならない。構造上の要求に応じて、2つのペイン2,3は、熱強化ガラス、いわゆる強化安全ガラス(ESG)、または部分熱強化ガラス(TVG)などの加工ガラスで製造することが好ましい。
【0116】
第1ペイン2は、色付与のために、以下でより詳細に説明されるように、塗装され、テクスチャ化されている。第2ペイン3は、色付与第1ペイン2を機械的に支持(すなわち、補強)するために使用され、そして、より大きな風荷重に耐えられるように、ファサード素子1の機械的安定性に著しくに寄与する。
【0117】
図1に示す実施形態において、色付与第1ペイン2は、機械的支持第2ペイン3よりも薄い。例えば、第1ペインのペイン厚さは、2~4mmの範囲内である。第2ペイン3は、第1ペイン2よりも厚く、例えば4mmより大きいペイン厚さを有している。
【0118】
図2には、図1の変形が示されており、機械的支持第2ペイン3がファサード素子1の最外層のペインである、すなわち、ファサード素子1の前面側Vを形成する点においてのみ、図1と異なる。その後ろは色付与ペイン2である。
【0119】
図1及び図2のファサード素子1において、色付与第1ペイン2は(例えば積層によって)第2ペイン3に強固に接続されており、両者共にカラー複合ペイン15を形成している。ファサード素子1はたとえば背面素子を有しない。具体的には、ファサード素子1の色は、ファサード素子1の一部ではないカラー背景の影響を受けることができる。
【0120】
好ましくは、ファサード素子1は、その背面側Rに少なくとも1つの平面状背面素子を有し、この平面状背面素子は、例えば、光起電不活性背面素子である。この平面状背面素子は不透明であることが好ましい。光起電不活性背面素子は、例えば、背面(裏側)ペイン(第1ペイン2又は第2ペイン3)の背面5’、5のコーティング、特に不透明コーティングの形態で、例えば全面にわたって形成される。同様に、背面素子は、フィルム、例えば、背面ペイン(第1ペイン2または第2ペイン3)の背面5’,5に強固に接続された不透明なフィルム、または剛体、特に不透明な剛体、例えば板の形態で、形成することができる。これについては、図面ではより詳細には示されていない。
【0121】
特に好ましくは、カラーファサード素子1は、光起電活性である、すなわち太陽光からエネルギーを発生するのに適しており且つそのことを目的とされた少なくとも1つの平面状背面素子を有する。したがって、カラーファサード素子1を光起電エネルギー発生に好適に利用することができる。このような実施形態は、図3~5に例示されている。
【0122】
まず図3を考えてみよう。ここに、既に図1に関連して説明されたファサード素子1が示されている。図1の対応する説明を参照する。また、ファサード素子1は、光起電活性の背面素子14を有する。背面素子14は、キャリア基板16(ガラスペイン)を含み、キャリア基板16は、例えばガラス質であり、そしてキャリア基板16上には、複数の直列に接続された太陽電池18が形成されている。キャリア基板16は、第1ペイン2と第2ペイン3とを含む複合ペイン15の背面ペイン(ここでは、例えば第2ペイン3)に、直接的に、すなわち、中間ペインなしに、別の中間層13’を介して(例えば、積層によって)強固に接続されている。これにより、背面ペイン3は、キャリア基板16とともに別の複合ペイン15’を形成する。全体として、2つのペイン2,3とキャリア基板16とが積層により互いに強固に接合された複合ペイン構造となる。背面ペイン3とキャリア基板16とを強固に接合するための当該別の中間層13’は、熱可塑性または架橋ポリマー中間層(例えば、PVBまたはEVA)であることが好ましい。
【0123】
第1ペイン2と第2ペイン2との複合ペイン15により、太陽電池18を外部の風化から良好に保護する。太陽電池18は、光起電活性吸収体層がカルコパイライト半導体、特に銅インジウム・ガリウム二硫化物・二セレン化物Cu(ln,Ga)(S,Se)のグループからの三元I-III-VI化合物半導体からなる薄膜太陽電池であることが好ましい。
【0124】
図4は、第2ペイン3が色付与第1ペイン2よりも薄いという点で、図3の実施形態と異なる図3の変形を示す。また、第2ペイン3は、第1ペイン2よりも小さく、キャリア基板16に対応する大きさを有している。ここで、第2ペイン3は、太陽電池18を備えたキャリア基板16のカバープレートの形で設計されている。ファサード素子1の製造において、カバープレートとしての第2ペイン3および太陽電池18を含むキャリア基板16とからなるプレハブトソーラーモジュール20を、第1ペイン2に積層することができる。これは、ソーラーモジュール20を予め製造できるので、加工技術の観点から有利である。そして、背面素子14は、完成したソーラーモジュール20に対応する。キャリア基板16の平面内におけるソーラーモジュール20の大きさは、第1ペイン2の大きさよりも小さいので、ソーラーモジュール20を外部から良好に保護する。ソーラーモジュール20のカバープレートとして(それに応じてキャリア基板16と同じサイズで)色付与第1ペイン2を形成し、そしてソーラーモジュール20を前方に配置された機械的支持第2ペイン3に強固に接続することもできる。
【0125】
図3および図4の実施形態において、少なくとも1つのマスキング層19は、最後の干渉層(以下参照)の後、すなわち、色付与第1ペイン2の後に配置されている。図3及び図4において、マスキング層19がいずれも第1ペイン2の背面5に施されている。マスキング層19は、背面5を部分的にのみ覆っており、光起電不活性領域を覆っている。太陽電池18の光起電活性領域は覆われていない。これにより、ファサード素子1の外観を改善する。
【0126】
図3の実施形態において、色付与ガラス素子は薄い。例えば、ペイン厚さは2~4mmの範囲内である。機械的支持ガラス素子の方はより厚い。たとえば、ペイン厚さは4mmを超えている。機械的支持ガラス素子の後には、太陽電池18を備えた(前面ガラスのない)1つ又は複数のキャリア基板16、またはシリコンウェハ太陽電池の列を備えたガラスペインまたはシリコンウェハ太陽電池の列を備えた背面ペインが積層されている。不活性領域(コンタクトバンド、エッジ区域、中間領域、付属品)は、不透明マスキング層19で覆われている。不透明マスキング層19は、好ましくは、色付与ガラス素子の背面5(すなわち側面2)、または機械的支持ガラス素子の前面4’(すなわち側面3)または背面5’(すなわち側面4)に位置する。活性領域間の不透明マスキング層19は、ケーブル、プラグまたは接続箱も隠す。エッジ領域が線支持、点支持または接着によって取り付ける必要がある場合、色付与ガラス素子と機械的支持ガラス素子との積層ペイン15は、当該1つまたは複数のキャリア基板16の領域より大きくしてもよい。PVB、EVA、架橋TPO等の種々の既知のラミネートフィルムを用いて、1つ又は複数のキャリア基板16を積層することができる。標準サイズの、そして比較的薄いキャリア基板のガラスペインを使用することができる。これは、薄膜ソーラーモジュールの製造において有利である。
【0127】
図4の実施形態において、色付与ガラス素子は外側にある。この場合、機械的安定性の大部分を引き受けるので、非常に厚い(例えば、ペイン厚さは3~10mmの範囲内にある)。この場合、機械的支持ガラス素子は、色付与ガラス素子より薄く、または、それより小さい幅および/または高さを有してもよい。ここで、機械的支持ガラス素子は、ソーラーモジュール20の前面ペインである。機械的支持ガラス素子の導入は、製造技術の観点から有利である。これにより、ソーラーモジュール20は、フロントガラスと接続箱を備えたシリーズ製品としてモジュールメーカで製造し、さらに、既に封止された素子としてガラスファサードメーカでさらに加工することができる。図3に示すように、不活性領域(コンタクトストリップ、エッジ区域、中間領域、付属品)は、不透明マスキング層19によって覆われてもよい。好ましくは、不透明マスキング層19が、色付与ガラス素子の背面5(すなわち、側面4)上に配置される。活性領域間の不透明マスキング層19は、ケーブル、プラグまたは接続箱も隠す。色付与ガラス素子と機械的支持ガラス素子との複合ペイン15は、当該1つ又は複数のソーラーモジュール20の領域より大きくしてもよい。
【0128】
図5図3の実施形態の変形例を示す。これは、機械的支持ガラス素子がファサード素子1の最も外側のガラスペインである点において、図3と異なる。その後は、色付与ガラス素子である。色付与ガラス素子は、比較的薄い(例えば、ペイン厚さは2~4mmの範囲内にある)。色付与ガラス素子は機械的支持ガラス素子上に積層され、両者は共にカラー積層ガラス素子または積層ペイン15’を形成する。色付与ガラス素子の後には、太陽電池18、好ましくは薄膜電池を備えた1つ又は複数のキャリア基板16、またはシリコンウェハ太陽電池の列を備えたキャリア基板またはシリコンウェハ太陽電池の列を備えた背面ペインが積層されている。不活性領域(コンタクトバンド、エッジ区域、中間領域、付属品)は、少なくとも1つの不透明マスキング層19で覆われてもよい。好ましくは、少なくとも1つの不透明マスキング層19が、色付与ガラス素子の内面5(側面4)上に配置される。活性領域間の少なくとも1つの不透明マスキング層19は、ケーブル、プラグまたは接続箱も隠す。(薄膜)太陽電池18を備えた複数のキャリア基板16(回路)が積層されている場合、それらの背面(基板ガラス)は接続されていない。
【0129】
サプライチェーンの設計によっては、ソーラーモジュールは、ソーラーモジュール製造工場内で色付与ガラス素子と直接積層され、そして、良好に封止され且つテストされたソーラーモジュールとして、ファサード素子メーカーに交付されることができる。
【0130】
図6および図7には、いずれも背面側Rの平面視においてファサード素子1の様々な実施形態が示されている。ファサード素子1は、図3または図5に示す設計に基づいている。したがって、太陽電池18(回路)を備えた2つのキャリア基板16が第1ペイン2と第2ペイン3とを含む複合ペイン15上に積層される。2つのキャリア基板16の太陽電池セル18は、接続線21及び接続箱22によって直列又は並列に互いに接続されている。また、これによって外部接続を提供する。図7の実施形態において、太陽電池18(回路)を備えた2つのキャリア基板16に加えて、透明窓23も設けられている。不透明マスキング層19は、光起電不活性領域を覆っている。
【0131】
図8は、隔離ペインとしてのファサード素子1の実施形態を例示する。ここで、第1ペイン2、第2ペイン3および太陽電池18を備えたキャリア基板16を含む複合ペイン15,15’は、スペーサ24を介してもう一つの隔離ガラスペインに強固に接続されている。
【0132】
ファサード素子1の実施形態によっては、色付与第1ペイン2の前面4および/または背面5は、(例えば、延伸プロセス中にエッチング、砂吹きまたは圧延によって)構造化されているとともに、図1図8に示されていない少なくとも1つの光学干渉層を有する。以下、これについてより詳細に説明する。
【0133】
図9は、本発明によるファサード素子1の実施形態を例示しており、色付与第1ペイン2のみが、例示的な構造化を有するように示されている。具体的には、ファサード素子1は、図1乃至図8に示すように設計することができる。したがって、色付与第1ペイン2の前面4は、この例では前面4の全体に亘って延在する領域8で構造化されており、すなわち、前面4と構造化領域8とが同一である。光学干渉層9は、前面4に直接配置されている。構造化領域8において、前面4は、山と谷とを有する高さプロファイルを備えている。ここで、前面4の50%を超える部分は、平面がそれぞれ色付与第1ペイン2の平面に対して傾斜した平面セグメント10、すなわち色付与第1ペイン2の平面に対してゼロでない角度を有する平面セグメント10からなる。セグメント10はそれぞれ、少なくとも1μmのセグメント面積を有し、光学干渉層9の層厚さdの15%未満の平均粗さを有する。前面4の最高点(山)と最低点(谷)との間の平均高度差は、少なくとも2μmであり、かつ、例えば色付与第1ペイン2の厚さの20%以下である。色付与第1ペイン2の平面に対して、セグメントのうちの少なくとも20%が0°より大きく最大15°までの範囲内の傾斜角を有し、セグメントのうちの少なくとも30%が15°より大きく最大45°までの範囲内の傾斜角を有し、セグメント10のうちの30%未満が45°より大きい傾斜角を有する。図9の実施形態において、全てのセグメントは、最大45°の傾斜角を有する。
【0134】
光学干渉層9は薄く、例えば0.1から数(例えば2)ミクロンの範囲内の層厚さを有する。なお、光学干渉層9は、1.7より大きく、好ましくは2.0より大きく、特に好ましくは2.3より大きい屈折率と、入射光に関して可能な最小吸収度を有する。光学干渉層9は、単層または多層設計を有してもよく、すなわち、1つ又は複数の屈折層からなってもよい。各屈折層は、一定の屈折率を有し、且つ同じ材料からなる。例えば、光学干渉層9は、MgO、SiONx、Si、ZrO、TiOx及び/又はSiCからなる。個々の屈折層の導電率、特に光学干渉層9の導電率は可能な限り低いことが望ましい。
【0135】
以下では、色付与第1ペイン2の前面4の構造化の動作モードについてより詳細に説明する。まず、ファサード素子1の典型的な照明条件を例示した図10を見てみよう。これによると、太陽Sからの光は、色付与第1ペイン2に直接照射され、そして光沢角で反射される。入射光ビームEと光沢角で反射されたビームRが示されている。反射光ビームRに加えて、入射光は光沢角外でも拡散散乱する。2つの拡散散乱光ビームR’が例として示されている。色効果は、反射、散乱及び干渉の結果である。観察者Bがファサード素子1の前方に立って、その前方の色付与第1ペイン2を垂直に見た場合、彼の目は直接反射された光Rに遭遇することはめったにない(すなわち、通常、観察者は光沢角に立っていない)。これは図10に示され、図10において、観察者Bは、光沢角外にいて、拡散散乱光ビームR’しか見ることができない。構造化領域8のない平滑な表面では、拡散散乱光R’の強度は比較的低く、且つ、強い角度依存性を示す。拡散散乱部分が十分に大きい場合にのみ、満足のいく強度(明るさ、L値)を有する明るい色になる。
【0136】
構造化領域8の傾斜セグメント10の動作の基本原理は図11に例示されており、図11において例として、ファサード素子1のガラス面または前面4を垂直に見た観察者Bの種々の光路を示している。色付与第1ペイン2の模式的に示された平面GEに対して異なる傾斜を有する3つのセグメント10と、セグメント10に照射される光線Eとが示され、光線Eは全ての場合にセグメント10によって観察者Bに局所光沢角で反射される(反射光線R)。中部セグメント10は平面GEと平行に配置されており、入射光ビームEは垂直にセグメント10に照射され、そして観察者Bに垂直に反射される(反射ビームR)。中部セグメント10について、光沢角と局所光沢角とが同一である。隣接する2つのセグメント10については、入射光線Eはそれぞれ平面GEに垂直な表面に対してゼロでない角度を有し、同様に局所光沢角で観察者Bに照射される。セグメント10の傾斜角度が異なるので、異なる方向からの光が、いずれの場合にも、セグメント10の局所光沢角で、モジュール表面を垂直に観察する観察者Bに反射される。図11の実施形態では、入射角および反射角の最大値は45°である。
【0137】
図12には、観察者Bが色付与第1ペイン2の平面GEを、その表面法線に対して45°の角度で観察する状態が示されている。図11に示すように、色付与第1ペイン2の平面GEに対して異なる傾斜を有する3つのセグメント10は例として、セグメント10にそれぞれ入射する光線Eとともに示され、光線Eはセグメント10によって局所光沢角で観察者Bに反射される(反射光線R)。セグメント10の傾斜角度が異なるので、異なる方向からの光が、いずれの場合にも、局所光沢角で、モジュール表面を観察する観察者Bに反射される。図12の実施形態では、入射角および反射角の最大値は67.5°である。原則として、反射光は、光沢角が比較的大きな値である場合青色シフトする。この青色シフトは、光学干渉層のより高い屈折率によって低減され得る。表面の傾斜が比較的急な場合には、隣接する小面で多重反射が発生することもある。
【0138】
図13は、光源及びそれに応じて入射光が色付与第1ペイン2の平面GEに対して常に45°の角度で傾斜している状態を示している。観察者Bは、異なる角度でファサード素子1の表面を観察する。図13の角度表示は、(色付与第1ペイン2の平面GEに対する)入射角/観察角又は反射角(平面GE上の表面法線に対する光沢角からの偏差)であると理解されるべきである。度数記号「°」は表示されていない。図13には、平面GEに対して傾斜を有する4つのセグメント10が例示されている。色付与第1ペイン2の平面に平行な平面を有する1つのセグメント10においてのみ、観察者Bは、平面GEに対して光沢角に位置する:45/0。これは、入射光ビームのGE平面に対する角度が45°であり、反射光ビームの光沢角に対する角度偏差がゼロであることを意味する。その他のセグメント10については、観察者Bが光沢角外にいる。2つの左のセグメント10(45/90、45/45)について、観察者が光沢角に対してそれぞれ90°、45°の角度でファサード素子1の表面を観察し、光が平面GEに対して45°の角度で入射する。右のセグメント17(45/-15)の場合、観察者は光沢角に対して-15°の角度にある。傾斜の異なるセグメント10とそれによる局所光沢角での反射により、色付与第1ペイン10の平面GEに対して、観察者が光沢角に位置しなくても、観察者Bに向けて十分な強度で光が反射される。
【0139】
図14において、観察者Bが色付与第1ペイン2のモジュール面又は平面GEに対して常に45°の角度でファサード素子1の表面を観察する状態が示されている。図14には、平面GEに対して傾斜を有する4つのセグメント10が例示されている。平面GEに平行な平面を有する1つのセグメント10においてのみ、観察者Bは光沢角に位置する:45/0。他のセグメント10においては、観察者Bは光沢角外に位置する。2つの左のセグメント10(45/90、45/45)において、観察者Bは45°の角度でファサード素子1の表面を観察しており、光が光沢角に対して90°及び45°の偏差で入射する。右のセグメント10(45/-15)の場合、光が光沢角に対して-15°の角度で入射する。異なる傾斜のセグメント10とそれによる局所光沢角での反射により、光が光沢角外で入射しても、観察者Bに向けて十分な強度で光が反射される。
【0140】
本発明によるファサード素子1において、色付与第1ペイン2の前面4を色付与光学干渉層9と組み合わせて構造化することにより、予め決定可能な波長範囲において均一な色印象を実現することができ、これにより、色印象の角度依存性が非構造化表面に比べて格段に小さい。
【0141】
図15は、層厚さdを有する光学干渉層9における反射を例示している。入射光ビームEは、大気‐干渉層界面(R1)及び干渉層-ペイン界面(R2)両方で反射される。2つの光ビームR1,R2の光路差が入射光ビームの波長の倍数であれば、建設的干渉が発生し、一方、光路差が1/2波長の倍数であれば、相殺的干渉が発生する。白色光で照明されると、屈折率n及び層厚さdに依存して、適切な波長の光に対してのみ建設的干渉が生じるため、光学干渉層9はカラーフィルタとして機能する。ここでαは反射光線R1、R2と表面法線に対する角度である。光線R’は、干渉層-ペイン界面の粗さが大きすぎると構造化領域15に発生する可能性がある、光沢角外の反射光を例示する。干渉条件を満たすためには、散乱中心が波長及び層厚さより小さくなければならない。なお、R1とR2はやはり同じ平面表面セグメント上にある場合にのみ干渉することが可能である。したがって、本発明の保護を求めているセグメントの最小領域およびそれらの最大粗さによって、色付与干渉を実現できる。
【0142】
色付与第1ペイン2の前面4がSi等の無機で化学的に不活性で硬質な層からなる光学干渉層9にコーティングされれば、例えば、ファサード素子1の高い引っかき抵抗性、耐薬品性、汚染防止効果を得る。TiO等の光触媒層を用いることにより、セルフクリーニング効果を得ることもできる。気候試験でも、SiやTiOなどの材料の干渉層も、湿熱によるガラス第1ペイン2の腐食を防ぐことが示されている。
【0143】
本発明によるファサード素子1の別の実施形態が例示された図16を参照し、色付与第1ペイン2のみが再び示される。不要な重複を避けるため、図9との相違点のみを説明し、ほかの点では、上記の説明を参照する。この実施形態では、前面4の構造化領域8は、第1区域11と第2区域12とを有する。ここで、第1区域11は、セグメント10が前面4上の光学干渉層9の層厚さdの15%未満の平均粗さを有するように形成されている。図9の実施形態において、これは、構造化領域8全体に適用される。逆に、第2区域12における平均粗さは、光学干渉層9における干渉が防止される程度にされている。例えば、第2区域12におけるセグメント10の平均粗さは、光学干渉層9の層厚さの50%よりも大きい。これにより、光学干渉層9のカラーフィルタ効果により、ファサード素子1は第1区域11において均一な色を有する。第2区域12では、光学干渉層9は、建設的干渉の欠如のため、カラーフィルタ効果を有しないので、光学干渉層9が存在しないファサード素子1に対応する表面が実質的に存在する。これにより、ファサード素子1は、予め決定可能な第1区域11において均一な色を得ることができる。図16において、第2区域12は、より大きな粗さによって概略的に示されている。
【0144】
図17は、本発明によるファサード素子1の別の実施形態を例示しており、色付与第1ペイン2のみが示されている。不要な重複を避けるため、図9の実施形態との相違点のみを説明し、ほかの点では、上記の説明を参照する。したがって、ファサード素子1は、構造化領域8上で色付与第1ペイン2の前面4上に第1光学干渉層9を有し、そして色付与第1ペイン2の背面5上に第2光学干渉層9’を有する。色付与第1ペイン2の背面5は構造化されておらず、すなわち、前面4に似た構造化領域8を有していない。背面5は、製造誤差の範囲内で平滑である。第2光学干渉層9’は、第1光学干渉層9と同じ層厚さd’及び光屈折率n’を有してもよいが、必ずしも同じである必要はない。第2光学干渉層9’は、色効果をさらに高めることができる。図9の実施形態を参照すると、色付与第1ペイン2(例えばガラス)と接着層6との間の第2光学干渉層9’の屈折率が、色付与第1ペイン2(例えばガラス)と接着層6の屈折率よりも大きいので、カラーフィルタ効果を有する第2反射源が存在する。光の屈折により、2回目の反射時の入射角が小さくなる。光は1つの光学干渉層を合計3回通過するので、観察者に到達した光はより多くフィルタリングされる。特に、2つの光干渉コーティング9,9’のコーティング厚さd,d’と屈折率n,n’は互いと著しく異なってもよい。このように、著しく異なる光学的厚さn*dまたはn’*d’を有するコーティングの場合、第1光学干渉層9は、第2光学干渉層9’と異なる反射スペクトルを発生し、そして、第2光学干渉層9’で反射された光が、再び第1光学干渉層9’を通過する際に、重ね合わせられるので、混合色を発生されることができる。このようにして、非常に簡単かつ費用効率よく、複数の色を有し且つ角度安定性の高いカラーファサード素子1を製造することができる。
【0145】
図18において、入射光Eおよび反射光R1,R2のビーム光路を高度に簡略化して示している。図18において、色付与第1ペイン2の構造化は示されていない。ここでは、色付与第1ペイン2の平面に対する光沢角内にある単一のビーム光路のみが示されている。第1干渉層9を通過した光は、色付与第1ペイン9(例えばガラス)内で屈折され、第2干渉層9’で2回目に反射し、したがって干渉によってフィルタリングされたことが分かる。光は、色付与第1ペイン2から離れると、干渉層9を通過するので、干渉層9は3回通過されることになる。
【0146】
図19は、本発明によるファサード素子1の別の実施形態を例示しており、色付与第1ペイン2のみが示されている。不要な重複を避けるため、相違点のみを説明し、ほかの点では、上記の説明を参照する。したがって、ファサード素子1は、色付与第1ペイン2の前面4に第1構造化領域8を有し、色付与第1ペイン2の背面5に第2構造化領域8’を有し、第1構造化領域8上には第1光学干渉層9が配置され、第2構造化領域8’上には第2光学干渉層9’が配置されている。2つの構造化領域8,8’の設計は、同一であっても異なってもよい。同様に、2つの光学干渉層9,9’は、同一であっても異なっていてもよく、特に、2つの光学干渉層9,9’の層厚さd,d’と屈折率n,n’とが互いに異なるように形成されていてもよい。2つの光学干渉層9,9’の光学的厚さn*dを等しくすれば、ファサード素子1の色を強めることができる。著しく異なる光学的厚さでコーティングする場合、混合色を生成することができる。
【0147】
これらの実施形態に共通するのは、既に光が干渉層を有する構造化表面に照射された場合、たとえ光沢角外であっても、反射および干渉によって、高い強度および低い角度依存性を有する色が生成されることである。背面上の追加の干渉層および/または構造化によって、この効果をさらに強めることができる。
【0148】
図20には、ファサード素子1の色付与第1ペイン2の拡大断面によって、本発明によるファサード素子1の別の実施形態が例示されている。不要な重複を避けるため、相違点のみを説明し、ほかの点では、上記の説明を参照する。したがって、色付与第1ペイン2の前面4は、この例では前面4の全体に亘って延在する領域8で構造化されており、すなわち、前面4と構造化領域8とが同一である。光学干渉層9は、色付与第1ペイン2の背面5に直接配置されている。背面5は構造を有しておらず、製造誤差の範囲内で平滑である。前面4上には光学干渉層が存在しない。図20のファサード素子1の前面4の構造化領域8のセグメント10に対して、粗さの条件は存在しない。
【0149】
図21を参照して、図20の実施形態による内部干渉層9と組み合わされた構造化前面4の機能をより詳細に説明する。その中には、色付与第1ペイン2の異なる傾斜を有するセグメント10の例示的な異なる光路が示されている。例示的な3つのセグメント10が示され、右のセグメント10は色付与第1ペイン2の平面に平行であり、他の2つのセグメント10は色付与第1ペイン2の平面に対してゼロでない角度を有する。干渉層9からの光線の反射は簡略化された形で示されている。干渉層9での反射について既に説明済みである。図21には、3つの光ビームの光路が示されており、3つの光ビームの光路のそれぞれは、色付与ペイン2の前面4の異なる傾斜を有するセグメント10に、色付与第1ペイン2の平面の法線に対して同じ角度で照射される。セグメント10それぞれの法線は破線で描かれている。傾斜の異なるセグメント10により、光線は異なる方法で反射される。第1光ビーム1-1はセグメント10に当たって、屈折光ビーム1-2として色付与第1ペイン2を通過し、光ビーム1-3として干渉層9によって(光沢角で)反射され、そして屈折光ビーム1-4として色付与第1ペイン2から外部環境に出射する。最終的に色付与第1ペイン2によって反射された光ビーム1-4は、色付与第1ペイン2の平面の法線に対して入射光ビーム1-1とは異なる角度を有するので、光沢角では反射せずに散乱する。これに対応するように、第2光ビーム2-1は、別のセグメント10に当たって、屈折光ビーム2-2として色付与第1ペイン2を横切り、光ビーム2-3として干渉層9によって反射され、そして屈折光ビーム2-4として色付与第1ペイン2から外部環境に出射する。反射光ビーム2-4は、光ビーム2-1の入射方向に対してほぼ逆方向に色付与第1ペイン2から出射されるが、これも散乱プロセスであり、光沢角での反射ではない。第3光ビーム3-1は別のセグメント10に当たって、屈折光ビーム3-2として色付与第1ペイン2を通過し、光ビーム3-3として干渉層9によって反射され、そして屈折光ビーム3-4として色付与第1ペイン2から外部環境に出射する。光ビーム2~4が光沢角で反射されるように、このセグメント10は色付与第1ペイン2の平面に平行になっている。ここで重要なのは、色付与第1ペイン2の平面に対して傾斜したセグメント10により、それぞれのセグメント10での屈折、および後続の干渉層9との界面での反射、そして構造化表面でのさらなる屈折の結果として、結局、光沢角(色付与第1ペイン2の平面に関連する)外でも強い反射が発生するので、干渉層9との組み合わせにより、反射光の均一な色効果が達成されることである。
【0150】
図21に、光沢角外での観察者Bの位置例を示す。外部構造化および内部干渉層を備えた比較的強く(拡散)散乱する色付与第1ペイン2のおかげで、干渉層を通過した光沢角外の異なる視野角に対して、いつも適切な光路が見出される。これにより、構造化領域8を持たない従来のモジュールと比較して、方向依存性のより低い色印象を与えることになる。
【0151】
本発明によるファサード素子1の別の実施形態が例示された図22を参照するが、色付与第1ペイン2のみが示されている。不要な重複を避けるため、相違点のみを説明し、ほかの点では、上記の説明を参照する。したがって、ファサード素子1は、色付与第1ペイン2の背面5上に構造化領域8を有し、構造化領域8上に光学干渉層9が配置されている。光学干渉層9は薄く、構造化領域8の表面に倣っている。構造化領域8および光学干渉層9はそれぞれ、前の実施形態と似たように形成することができる。色付与第1ペイン2の前面4は、構造化領域8を有しておらず、且つ、製造誤差の範囲内で平滑である。なお、前面4上には光学干渉層が設けられていない。前面4の構造化領域8のセグメント10とは対照的に、背面5の構造化領域8は光学干渉層9を有するので、セグメント10は、背面5の構造化領域8のセグメント10がそれぞれ平面であり、セグメント面積が少なくとも1μmであり、かつ、平均粗さが背面5上の光学干渉層9の層厚さの15%未満であるという条件を満たす必要がある。
【0152】
図23は、例として3つの異なる光路を示す。干渉層9での光ビームの反射は再び簡略化された形で示されている。傾斜の異なるセグメント10により、光線は色付与第1ペイン2から異なるように反射される。第1光ビーム1-1は、色付与第1ペイン2の前面4に当たって、屈折光ビーム1-2として色付与第1ペイン2を横切り、光ビーム1-3として色付与第1ペイン2の平面に対して傾斜したセグメント10から反射され、そして屈折光ビーム1-4として色付与第1ペイン2から外部環境に出射する。これに対応するように、第2光ビーム2-1は、色付与第1ペイン2の前面4に当たって、屈折光ビーム2-2として色付与第1ペイン2を横切り、光ビーム2-3として色付与第1ペイン2の平面に対して平行なセグメント10から反射され、そして屈折光ビーム2-4として色付与第1ペイン2から外部環境に出射する。これに対応するように、第3光ビーム3-1は、色付与第3ペイン2の前面4に当たって、屈折光ビーム3-2として色付与第1ペイン2を横切り、色付与第1ペイン2の平面に対して傾斜したセグメント10によって光ビーム3-3として反射され、そして屈折光ビーム3-4として色付与第1ペイン2から外部環境に出射する。入射光ビーム2-1および出射光ビーム2-4について、入射角=反射角、すなわち光沢角での反射という条件を満たすのは、中部セグメント10のみである。他の光ビームは、それぞれ局所光沢角でセグメント10によって反射されるが、局所光沢角が色付与第1ペイン2の平面の光沢角には対応しないので、比較的強い散乱が生じる。光学干渉層9と組み合わせることにより、ファサード素子1の、方向依存性があまり高くない均一な色効果を実現することができる。
【0153】
図24は、本発明によるファサード素子1の別の実施形態を例示しており、色付与第1ペイン2のみが示されている。不要な重複を避けるため、相違点のみを説明し、ほかの点では、上記の説明を参照する。したがって、ファサード素子1は、色付与第1ペイン2の背面5の構造化領域8上の光学干渉層9に加えて、色付与第1ペイン2の前面4直接上に別の光学干渉層9’を有する。前面4は、構造化されていない、すなわち、背面5と似た構造化領域8を有していない。むしろ、前面4は、製造誤差の範囲内で平滑である。2つの干渉層9,9’の光屈折率および層厚さは同一であっても異なってもよい。2つの光学干渉層9,9’の光学的厚さn*dを等しくすれば、観察者に到達した光は、光学干渉層を合計3回通過するため、より多くフィルタリングされるので、ソーラーモジュール1の色を強めることができる。著しく異なる光学的厚さを有するコーティングの場合、混合色を生成することができる。
【0154】
色付与第1ペイン2の前面4がSi等の無機で化学的に不活性で硬質な層からなる光学干渉層9にコーティングされれば、例えば、ファサード素子1の高い引っかき抵抗性、耐薬品性、汚染防止効果を得る。TiO等の光触媒層を用いることにより、セルフクリーニング効果を得ることもできる。
【0155】
前面4上に配置されたこのような追加の層は、色付与第1ペイン2の屈折率より小さい光学的屈折率を有する薄い反射防止層であってもよく、それによって色付与第1ペイン2(例えば、ガラス)の実質的に白い反射を抑制し、色の彩度を向上させる。
【0156】
図25は、本発明によるファサード素子1の別の実施形態を例示しており、色付与第1ペイン2のみが示されている。不要な重複を避けるため、相違点のみを説明し、ほかの点では、上記の説明を参照する。したがって、ファサード素子1の色付与第1ペイン2の背面5は、光学干渉層9が配置された構造化領域8を有する。なお、色付与第1ペイン2の前面4も構造化領域8’を有している。前面4上には光学干渉層が設けられていない。2つの構造化領域8,8’は、同一であっても異なってもよい。図25の実施形態において、すべてのセグメント10は、最大45°の傾斜角を有する。背面5の構造化領域8のセグメント10’とは対照的に、図25のファサード素子1の前面4の構造化領域8’のセグメント10’に対して、粗さの条件は存在しない。
【0157】
前面4上に配置されたこのような追加の層は、色付与第1ペイン2の屈折率より小さい光学的屈折率を有する薄い色中立的な反射防止層であってもよく、それによって色付与第1ペイン2(例えば、ガラス)の実質的に白い反射を抑制し、色の彩度を向上させる。しかし、前面4上に配置された追加の層も、色付与第1ペイン2と同じ光学屈折率を有していてもよい。この場合、この層は、色付与第1ペイン2を空気中の湿気やその他の腐食性成分から保護するためにのみ使用される。エッチング梨地ガラスは、平面ガラスやロール法ガラスよりも湿熱に敏感であることが既に証明されている。エッチングソーダライムガラスの場合、当該追加の層は、例えば薄いスパッタSiO層であってもよい。
【0158】
これらの実施形態において、表面から離れた後に改善された角度安定性で所望の着色を実現するために、光は色付与第1ペインを少なくとも1回通過しなければならず、内部干渉層によって反射されなければならない。
【0159】
原則として、ファサード素子1は、背面レール、ドリルポイントフィックス、クランピングストリップ等の任意の適切な締結技術によってファサードに取り付けることができる。サスペンションシステムは、フォームクロージャーによって接続される背面通気カーテンウォールによく使用される。
【0160】
図26は、本発明に係る市販の多角度測色計17(多角度測色)によるファサード素子1の拡散散乱を確定する測定装置を示している。構造化領域8は、より詳細には示されていないが、色付与第1ペイン2(例えば、ガラス)の全体上に延在している。ここで、光ビームは、ファサード素子1の前面4に導かれ、異なる入射角で特徴付けられ、散乱光又は反射光は、異なる観察角、例えば色付与第1ペイン2の平面の法線に対して15°又は45°からスペクトル的に測定される。色付与第1ペイン2の下には、不透明背面素子14があり、ここでは、不透明背面素子14例えば黒色の非光沢層として形成されている(例えば、屈折率が約1.5の液体で接合されている)。多角度測色計17は、L-a-b系の明るさ測定にD65標準照度および10°開口角で使用できる。それぞれ光沢角から測定された45°および15°の観察角および45°の入射角において、良好な角度安定性(すなわち、散乱光の低い角度依存性)が提供され、少なくともL=10、好ましくはL=15、さらに好ましくはL=20の明るさが依然として存在することは、既に示された。色付与第1ペイン2の前面4および/または背面5の少なくとも1つの構造化領域8により、いずれの場合も(両方向で)光沢角から測定された45°および15°の観察角および45°の入射角のいずれにおいても、少なくともL=10の明るさが得られる。これらの度は、(表面法線に対する)反射角/(光沢角に対する)入射角のように理解される。たとえば、(表面法線に対して測定された)45°の観察角と(光沢角から測定された)45°の入射角では、入射ビームは表面に対して完全に垂直に入射する(45/45)。15°の観察角と45°の入射角では、入射方向は、観察方向と同じ側で、法線から30°である(15/45)。多角度測色計20は、法線に対して45°又は15°の観察角に位置決めされている。
【0161】
光起電活性背面素子を有する本発明によるファサード素子の全ての実施形態において、電気活性領域は、有利には、第1ペインと第2ペインとを含む複合ペインの保護外皮の後に位置する。視覚的に目立つ部品は、不透明マスキング層の後に隠れたままである。接続箱やケーブルなどの機械部品は、ソーラーモジュールの後の、それらの通常の位置に残すことができる。前面ガラスの積層を省略したり、完成したソーラーモジュールを別のペイン(色付与ガラス素子または機械的支持ガラス素子)と積層したりするだけで、ソーラーモジュールの生産は、実質的に変わらない。フレームや背面レールは不要である。パネル、充填物または窓素子が高層建築のようなエリアサイズを達成するためのものであれば、いくつかのソーラーモジュールをより大きな複合素子に積層し、且つ、ケーブルで接続することができる。
【0162】
図3および図4の実施形態において、色付与ガラス素子がファサードの外側にあるので、色付与がより強くなる。図5の実施形態において、色付与ガラス素子は内側にあるので、より一層保護される。適切な大きさのソーラーモジュールを1つのみ使用する場合、これは既にテクスチャ化且つコーティングされたガラス素子で製造された連続生産からのソーラーモジュールであってもよい。いくつかのソーラーモジュールを1つの充填物内に設置される場合、中間の空間を不透明層で覆うことができるので、大きいデザインガラス素子を使用する方が有利である。
【0163】
モジュラー設計により、異なる機能を分離し、各ガラス素子ごとに最適化することができる。すなわち、色付与ガラス素子は、最小の効率損失で所望な着色を行うように最適化され、機械的支持ガラス素子は、風荷重に対する複合体の自重に関する機械的要件を満たすように、寸法決めされ後処理されている(柱梁ファサード、単一ペイン安全ガラス)。ソーラーモジュールは標準生産から大量に得ることができる。
【0164】
図3および図5に示される本発明による変形は、太陽電池を備えたキャリア基板を背面通気ファサード素子、柱梁構造または窓素子に一体化できることができるという利点を有する。いずれの場合も、機械的支持ガラス素子の必要な厚さとは無関係に、色付与ガラス素子を製造することができる。機械的支持ガラス素子の寸法は、必要な構造解析(複合素子の総重量と風荷重耐性)に基づいて寸法決めされている。
【0165】
図4の変型では、製造プロセスだけではなく、特定の保証も、サプライチェーンによって有利に分離することができる。ソーラーモジュールメーカは、完全な電気テストと封止を行ったソーラーモジュールを提供している。
【0166】
モジュール性能は、より厚いガラスへの積層である程度低下しているが、白色ガラスの使用によって無視できる値に最小化することができる。鉄含有量の低い白色ガラスについては、ガラス厚4mmと12mmの間の透過率は91%から90%にしか低下しない。
【0167】
色付与ガラス素子と、光起電活性背面素子を有する又は有しない機械的支持ガラス素子とを含むカラーファサード素子は、カーテン背面通気ファサード、エレメントファサード、柱梁ファサード又は大きな窓素子のための、様々な共通デザインと組み合わされることができる。柱梁ファサードまたはエレメントファサードの場合、あるいは窓素子として使用される場合には、ソーラーモジュールの背面側の後に、ファサード素子を部屋側から遮断する、少なくとも1つの追加のガラスペインまたは異なる材料からなる別のカバーが備えられてもよい。すると、接続箱とケーブルは、ソーラーモジュールと部屋側カバーとの間に配置される。部屋側カバーがガラスペインである場合、両者は、従来技術に従って、隔離ガラス、ファサード素子として、又はガス充填式窓素子として、適切なフレーム及び封止材を備えるように設計することができる。これを図8に例として示している。従来の隔離ガラス窓の外側ペインがカラー積層ペイン構造に置き換えられた。すると、ケーブルをフレームから引き出さなければならない。また、部屋側に三重ガラスとして追加の2つのペインを使用することもできる。
【0168】
積層ガラス構造と部屋側カバーは、(接続箱とケーブルのために)適切なスペーサと接着シールでフレームなしで接続され、そして、ラインブラケット又はポイントブラケットによってパッケージとして一緒に、柱梁支持構造に接続される。ケーブルを、スペーサを通して、または部屋側カバーを通して、引き出さなければならない。部屋側カバーとソーラーモジュールとの間に、断熱材(ポリスチレン(発泡スチロール)などの発泡プラスチック、鉱物繊維、ガラスウール)を配置することもできる。部屋側カバーは、支持ガラス素子内に配置されたファスナーから吊り下げられてもよい。すると、修理のために部屋側カバーを取り外すことができる。
【0169】
ソーラーパネルを有する窓素子の場合、色付与ガラス素子として、機械的支持ガラス素子よりもはるかに小さいものを選択することができる。すると、図7に示すように、充填物または窓素子は、透明領域(窓)と、光起電活性または完全にまたは部分的に不活性である不透明カラー領域とから構成される。
【0170】
ファサード素子は、背面通気カーテンウォールのペインとしても使用できる。現在使用されている背面レール付きモジュールとは対照的に、複合ペイン構造は、機械的支持ガラス素子による機械的補強により、通常の背面レールなしのガラス構造に一体化することが可能である。この目的のために、線支持、点支持、または機械的クランプを使用することができる。ソーラーモジュールと色付与ガラス素子は、風荷重耐性の実現にほんの少ししか寄与していない。基本的な機械的コアは、機械的支持ガラス素子である。
【0171】
本発明の上記の説明からわかるように、本発明は、非常に均一で強い色を有し、指向性がほとんどないか、または全くない改良されたファサード素子を提供する。ファサード素子は、種々の形状およびサイズで費用効率よく製造することができ、そして簡単な方法でファサード内に一体化することができる。特に有利なことに、より高い風荷重に耐えられるように、ファサード素子が特に高い機械的強度を有する。そのため、本発明は、ファサード構築の実践においてかなりの利点をもたらす技術革新を提供する。
【符号の説明】
【0172】
1 ファサード素子
2 第1ペイン
3 第2ペイン
4,4’ 前面
5,5’ 背面
6 接着層
7 コンタクト領域
8,8’ 構造化領域
9,9’ 光学干渉層
10,10’ セグメント
11 第1区域
12 第2区域
13,13’ 中間層
14 背面素子
15,15’ 複合ペイン
16 キャリア基板
17 多角度測色計
18 太陽電池
19 マスキング層
20 ソーラーモジュール
21 接続ケーブル
22 接続箱
23 窓
24 スペーサ
25 隔離ガラスペイン
前面 V
背面 R
外部環境 U
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図20
図21
図22
図23
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図25
図26
【国際調査報告】