(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】流動床反応器、除熱水管およびアクリロニトリル製造におけるその適用
(51)【国際特許分類】
B01J 8/24 20060101AFI20230119BHJP
C07C 255/08 20060101ALI20230119BHJP
C07C 253/26 20060101ALI20230119BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
B01J8/24
C07C255/08
C07C253/26
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529712
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 CN2020129820
(87)【国際公開番号】W WO2021098729
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】201911152105.8
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】趙楽
(72)【発明者】
【氏名】呉糧華
【テーマコード(参考)】
4G070
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB06
4G070BB32
4G070CA18
4G070CA25
4G070CB02
4G070CB17
4G070DA23
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC54
4H006BA82
4H006BC11
4H006BC13
4H006BC19
4H006BC31
4H006BD81
4H006BE14
4H006BE30
4H039CA70
4H039CL50
(57)【要約】
アクリロニトリル製造における流動床反応器および除熱水管ならびにその適用を開示する。流動床反応器は、少なくとも1つの反応冷却部と、当該反応冷却部内に設けられた垂直内部構成とを含む。ここで、流動床反応器の中心軸を横断し、それに垂直な断面において、反応冷却部の面積をS1(単位m2で表す)とし、垂直内部構成の断面の外輪郭円周をL1(単位mで表す)とすると、L1/S1=2.0~4.3m-1である。流動床反応器は気泡の破壊を可能な限り早期に促進し、気泡の成長を効果的に制限することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応冷却部と、前記反応冷却部に配設される垂直内部構成とを少なくとも具備した流動床反応器であって、前記流動床反応器の中心軸に沿った方向における前記反応冷却部の全長をL(単位mで表す)と規定し、前記反応冷却部の前記全長Lの領域内の任意の位置、好ましくは前記反応冷却部の中心点から上方に49%Lのところから、該中心点から下方に49%Lのところまでの領域内(より好ましくは前記反応冷却部の中心点から上方に45%Lのところから、該中心点から下方に38%Lのところまでの領域内、さらに好ましくは前記反応冷却部の中心点から上方に40%Lのところから、該中心点から下方に8%Lのところまでの領域内)の任意の位置において、前記流動床反応器の中心軸を垂直に横切る断面における前記反応冷却部の断面積をS1(単位m
2で表す)と規定し、前記垂直内部構成の前記断面の外周(複数の断面が存在する場合には、全ての断面の外周の総和)をL1(単位mで表す)と規定して、L1/S1=2.0~4.3m
-1、好ましくはL1/S1=2.2~4.1m
-1、より好ましくはL1/S1=2.4~3.9m
-1である、流動床反応器。
【請求項2】
前記垂直内部構成が、除熱水管、または除熱水管と気固セパレータ(好ましくはサイクロンセパレータ)との組み合わせである、請求項1に記載の流動床反応器。
【請求項3】
前記垂直内部構成は、除熱水管であり、前記流動床反応器の中心軸を垂直に横切る断面における前記反応冷却部の断面積をS1(単位m
2で表される)と規定し、前記除熱水管の前記断面の外周(前記管の直管部の断面に基づいて計算される)(複数の断面が存在する場合、全ての断面の外周の総和)をL2(単位mで表す)と規定して、L2/S1=1.7~3.6m
-1、好ましくはL2/S1=1.9~3.5m
-1、より好ましくはL2/S1=2.1~3.3m
-1であり、前記垂直内部構成は、任意で気固セパレータ(好ましくはサイクロンセパレータ)をさらに含み、前記流動床反応器の中心軸を垂直に横切る断面における前記反応冷却部の断面積をS1(単位m
2で表される)と規定し、前記気固セパレータの断面の外周(ディプレグに基づいて計算される)(複数の断面が存在する場合、全ての断面の外周の総和を指す)をL3(単位mで表される)と規定して、L3/S1=0.25~0.85m
-1、好ましくはL3/S1=0.30~0.75m
-1、より好ましくはL3/S1=0.35~0.65m
-1である、請求項1に記載の流動床反応器。
【請求項4】
(前記管の直管部に基づいて計算された)前記除熱水管の数は、220~5000、好ましくは300~2400であり、および/または、(ディプレグに基づいて計算された)気固体セパレータの数は、16~516、好ましくは16~210であり、および/または、ディプレグの数に対する前記直管部の数の比率が8.5~24.0、好ましくは10.0~23.0、より好ましくは11.5~21.0である、請求項2に記載の流動床反応器。
【請求項5】
前記直管部同士の外径は、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して80~180mm、好ましくは90~170mmであり、および/または、前記直管部同士の内径は、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して60~150mm、好ましくは70~140mmであり、および/または、前記直管部同士の長さは、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して4.0~13m、好ましくは5.5~12.0mであり、および/または前記ディプレグ同士の外径は、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して150~410mm、好ましくは200~360mmであり、および/または前記ディプレグ同士の内径は互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して130~400mm、好ましくは180~350mmであり、および/または、前記ディプレグ同士の長さは、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して6~14m、好ましくは10~13mであり、および/または、前記反応冷却部が、5~29m、好ましくは7~20mの直径、19.6~660m
2、好ましくは38.5~314m
2の面積S1、および/または4~12.5m、好ましくは5.5~11.5mの長さLを有する、請求項4に記載の流動床反応器。
【請求項6】
ヘッドと、希薄相領域と、前記反応冷却部と、予備反応部と、コーンとを、上から下へこの順で含み、ガス分配プレートと、任意選択で前記予備反応部に設けられた流体分配器とをさらに含む、請求項1に配列の流動床反応器。
【請求項7】
前記反応冷却部は、実質的に円形の断面を有し、および/または前記垂直内部構成の断面は、実質的に円形の内輪郭を有するとともに実質的に円形の外輪郭を有し、および/または前記垂直内部構成の断面は、突出部を備えた、実質的に円形の内輪郭および実質的に円形の外輪郭を有し、および/または前記垂直内部構成は、除熱水管を含み、前記除熱水管が除熱媒体入口と、n個の直管(好ましくは直線状の円管)部と、除熱媒体出口とを有し、第1の前記直管部の先端が前記除熱媒体入口と連通し、n番目の前記直管部のテール端部が前記除熱媒体出口と連通し、i番目の前記直管部の後端がU字型の管を介して(i+1)番目の前記直管部のヘッド端部と連通し、nは2~100の整数(好ましくは2~20の整数)であり、iは1~n-1の任意の整数であり、直管部分の一部または全部(1~100%、5~80%、または10~40%など)の外壁に突出部がある、請求項1に記載の流動床反応器。
【請求項8】
除熱媒体入口と、n本の直管(好ましくは直線状の円管)部と、除熱媒体出口とを有する除熱水管であって、第1の前記直管部のヘッド端部が前記除熱媒体入口と連通し、第nの前記直管部のテール端部が前記除熱媒体出口と連通し、i番目の前記直管部のテール端部がU字型の管を介して(i+1)番目の前記直管部のヘッド端部と連通し、nが2~100の整数(好ましくは2~20の整数)であり、iが1~n-1の間の任意の整数であり、前記直管部の一部又は全部(1~100%、5~80%又は10~40%等)の外壁に突出部がある、除熱水管。
【請求項9】
前記直管部同士の外径は、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して80~180mm、好ましくは90~170mmであり、および/または、前記直管部同士の内径は、互いに同一であり、または互いに、異なっており、互いに独立して60~150mm、好ましくは70~140mmであり、および/または、前記直管部同士の長さは、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して4.0~13m、好ましくは5.5~12.0mであり、および/または任意の2つの隣接する前記直管部の中心線は互いに平行であり、任意の2つの隣接する直管部の中心線間の距離は互いに同一であり、または互いに異なっており(好ましくは互いに同一)、互いに独立して160~540mm、好ましくは180~430mmである、請求項8に記載の除熱水管。
【請求項10】
前記突出部は、前記直管部の中心線に沿った方向に連続的または不連続的に延在し、および/または、前記突出部は、前記直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在し、環または螺旋の形態のようになっている、請求項8に記載の除熱水管。
【請求項11】
前記突出部が前記直管部の中心線に沿った方向に連続的または不連続的に延在する場合、前記突出部の延在長さLtが前記直管部の長さLzよりも長くなく(好ましくはLt/Lzが0.05~0.95、より好ましくは0.1~0.6であり)、および/または前記突出部が環の形態の前記直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在する場合、前記環の高さHhは前記直管部の長さLzよりも長くなく(好ましくはHh/Lzが0~0.5、より好ましくは0.01~0.3であり)、または前記突出部が螺旋の形態の前記直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在する場合、前記螺旋の高さHtは前記直管部の長さLzよりも長くなく(好ましくはHt/Lzが0.1~0.95、より好ましくは0.2~0.6であり)、および/または前記突出部の高さは前記直管部の外径の0.005~0.3倍(好ましくは0.008~0.1倍)であり、および/または前記突出部の幅は前記直管部の外径の0.005~0.3倍(好ましくは0.008~0.2倍)である、請求項8に記載の除熱水管。
【請求項12】
前記突出部は、前記直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在し、前記突出部の中心線と前記直管部の中心線との間には、0°より大きく90°以下(好ましくは5°以上75°以下、より好ましくは10°以上60°以下)の角度がある、請求項8に記載の除熱水管。
【請求項13】
ヘッド、希薄相領域、濃密相領域、およびコーンを、上から下へ、この順で含み、前記濃密相領域には、請求項8に記載の除熱水管が少なくとも1つ設けられている、流動床反応器。
【請求項14】
オレフィン(プロピレンなど)酸化プロセスまたはアンモ酸化プロセスによるエポキシ化合物(プロピレンオキシドなど)または不飽和ニトリル(アクリロニトリルなど)の製造における、請求項1または13に記載の流動床反応器の使用。
【請求項15】
不飽和ニトリル(アクリロニトリルなど)を製造するために、請求項1または13に記載の流動床反応器中でオレフィン(プロピレンなど)をアンモ酸化反応に供する工程を含む、不飽和ニトリルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、流動床反応器および前記流動床反応器内に配置するのに特に適した除熱水管に関する。さらに、本発明は、アクリロニトリルの製造における前記流動床反応器および前記除熱水管の使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
アクリロニトリルは、石油化学工業において重要な化学原料である。プロピレンアンモ酸化によるアクリロニトリルのシングルステップ製造法は、世界中で広く用いられており、流動床アンモ酸化触媒の作用下で、且つ、一定の反応温度および圧力下で、プロピレンをアンモ酸化して、アセトニトリル、シアン化水素酸などの副生成物、ならびにCO、CO2深酸化生成物と共にアクリロニトリルを生成する。この反応は発熱性が強く、大量の発熱を伴う。
【0003】
典型的なアクリロニトリル流動床反応器内部は、プロピレン-アンモニア分配器、空気分配プレート、除熱水管(冷却コイルとしても知られる)およびサイクロンセパレータを含む。ここで、除熱水管とサイクロンセパレータのディプレグとは、流動床の垂直成分として触媒床中に配置される。除熱水管は反応中に発生した大量の熱を反応系から適時に除去し、反応温度を安定状態に維持することができ、サイクロンセパレータは上方に移動するガスによって運ばれる触媒を捕捉し、触媒の損失を低減するようにディプレグを通して触媒床に触媒を戻すことができる。
【0004】
流動床反応器における従来の垂直的な構成要素を、
図1、
図2に示す。
図1は垂直的な構成要素の軸方向の図であり、
図2は垂直的な構成要素の断面配置の図である。垂直的な構成要素は、除熱水管およびサイクロンセパレータのディプレグを備える。除熱水管は冷却水管と過熱水管とを備え、過熱水管によって発生された高圧蒸気は、空気圧縮機および冷凍機のタービンで通常使用される。あるいは、装置の実態に応じて、除熱水管に冷却水管のみを設けてもよい。ここで、除熱水管は典型的には、入口と、直管部と、出口とを有し、隣り合う2つの直管部がU字管を介して流体連通している。
【0005】
中国特許出願CN104941532AおよびCN104941529Aは、アンモ酸化反応器用の冷却コイル設計を開示している。この冷却コイルは、直線的な配置ではなく横方向の配置で冷却コイルを画定する個々のラインを設けることによって、より密にパックすることができる。
【0006】
中国特許出願CN104624401Aは、サイクロンセパレータの改良された構成を開示している。サイクロンセパレータの多数のステージを含む組のそれぞれは、第1ステージサイクロンセパレータを含み、当該第1ステージサイクロンセパレータは第1ステージ入口を有する。当該第1ステージ入口は、反応器内の流動触媒床からの上方に流れる反応ストリームを受け入れるとともに、反応ストリームから触媒を少なくとも一部分離するように構成されている。反応器における利用可能な断面積1平方メートル当たりの、第1ステージ入り口面積の平方メートル比率は、約0.03から約0.05である。
【0007】
〔発明の概要〕
流動床反応器をプロピレンアンモ酸化反応に用いてアクリロニトリルを製造する場合、プロピレンアンモ酸化反応は気固不均質触媒反応であり、反応器内の気体の流動状態が自由バブリング床の流動状態とは異なっており、分配プレートを通過する気体によって生成される気泡は、前記床の上昇に伴って大きくなる。本発明者らは、垂直内部構造の存在が気泡を分解するのに役立ち、小さな気泡が大きな気泡よりも物質移動を助け、したがって有効な製品の製造を改善するのに有利であることを見出した。さらに、本発明者らは、除熱水管およびサイクロンセパレータが、垂直構成として、その基本的な機能に加えて気泡を破壊する機能を有し、気相と固相との逆混合を低減し、深酸化生成物の発生を低減することにも寄与し得ることを見出した。反応器の断面にわたるこれらの垂直成分の分布は、気泡の成長に対する有効な制限または気泡の有効な破壊が達成され得るかどうかという直接的な影響を与えるものであり、すなわち、反応結果に直接的な影響を与える。この知見に基づいて本発明が完成した。
【0008】
具体的には、本発明は以下の特徴に関する:
1. 反応冷却部と、前記反応冷却部に配設される垂直内部構成とを少なくとも具備した流動床反応器であって、前記流動床反応器の中心軸に沿った方向における前記反応冷却部の全長をL(単位mで表す)と規定し、前記反応冷却部の前記全長Lの領域内の任意の位置、好ましくは前記反応冷却部の中心点から上方に49%Lのところから、該中心点から下方に49%Lのところまでの領域内(より好ましくは前記反応冷却部の中心点から上方に45%Lのところから、該中心点から下方に38%Lのところまでの領域内、さらに好ましくは前記反応冷却部の中心点から上方に40%Lのところから、該中心点から下方に8%Lのところまでの領域内)の任意の位置において、前記流動床反応器の中心軸を垂直に横切る断面における前記反応冷却部の断面積をS1(単位m2で表す)と規定し、前記垂直内部構成の前記断面の外周(複数の断面が存在する場合には、全ての断面の外周の総和)をL1(単位mで表す)と規定して、L1/S1=2.0~4.3m-1、好ましくはL1/S1=2.2~4.1m-1、より好ましくはL1/S1=2.4~3.9m-1である、流動床反応器。
【0009】
2. 前述または後続の態様の何れかを具備する流動床反応器であって、前記垂直内部構成が、除熱水管、または除熱水管と気固セパレータ(好ましくはサイクロンセパレータ)との組み合わせである、流動床反応器。
【0010】
3. 前述または後続の態様の何れかを具備する流動床反応器であって、前記垂直内部構成は、除熱水管であり、前記流動床反応器の中心軸を垂直に横切る断面における前記反応冷却部の断面積をS1(単位m2で表される)と規定し、前記除熱水管の前記断面の外周(前記直管部の断面に基づいて計算される)(複数の断面が存在する場合、全ての断面の外周の総和)をL2(単位mで表す)と規定して、L2/S1=1.7~3.6m-1、好ましくはL2/S1=1.9~3.5m-1、より好ましくはL2/S1=2.1~3.3m-1であり、前記垂直内部構成は任意で気固セパレータ(好ましくはサイクロンセパレータ)をさらに含み、前記流動床反応器の中心軸を垂直に横切る断面における前記反応冷却部の断面積をS1(単位m2で表される)と規定し、前記気固セパレータの断面の外周(ディプレグに基づいて計算される)(複数の断面が存在する場合、全ての断面の外周の総和を指す)をL3(単位mで表される)と規定して、L3/S1=0.25~0.85m-1、好ましくはL3/S1=0.30~0.75m-1、より好ましくはL3/S1=0.35~0.65m-1である、流動床反応器。
【0011】
4. 前述または後続の態様の何れかを具備する流動床反応器であって、(前記直管部に基づいて計算された)前記除熱水管の数は、220~5000、好ましくは300~2400であり、および/または、(ディプレグに基づいて計算された)気固体セパレータの数は、16~516、好ましくは16~210であり、および/または、ディプレグの数に対する直管部の数の比率が8.5~24.0、好ましくは10.0~23.0、より好ましくは11.5~21.0である、流動床反応器。
【0012】
5. 前述または後続の態様の何れかを具備する流動床反応器であって、前記直管部同士の外径は、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して80~180mm、好ましくは90~170mmであり、および/または、前記直管部同士の内径は、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して60~150mm、好ましくは70~140mmであり、および/または、前記直管部同士の長さは、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して4.0~13m、好ましくは5.5~12.0mであり、および/または前記ディプレグ同士の外径は、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して150~410mm、好ましくは200~360mmであり、および/または前記ディプレグ同士の内径は互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して130~400mm、好ましくは180~350mmであり、および/または、前記ディプレグ同士の長さは、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して6~14m、好ましくは10~13mであり、および/または、前記反応冷却部が、5~29m、好ましくは7~20mの直径、19.6~660m2、好ましくは38.5~314m2の面積S1、および/または4~12.5m、好ましくは5.5~11.5mの長さLを有する、流動床反応器。
【0013】
6. 前述または後続の態様の何れかを具備する流動床反応器であって、ヘッドと、希薄相領域と、前記反応冷却部と、予備反応部と、コーンとを、上から下へこの順で含み、ガス分配プレートと、任意選択で前記予備反応部に設けられた流体分配器とをさらに含む、流動床反応器。
【0014】
7. 前述または後続の態様の何れかを具備する流動床反応器であって、前記反応冷却部は、実質的に円形の断面を有し、および/または前記垂直内部構成の断面は、実質的に円形の内輪郭を有するとともに実質的に円形の外輪郭を有し、および/または前記垂直内部構成の断面は、突出部を備えた、実質的に円形の内輪郭および実質的に円形の外輪郭を有し、および/または前記垂直内部構成は、除熱水管を含み、前記除熱水管が除熱媒体入口と、n個の直管(好ましくは直線状の円管)部と、除熱媒体出口とを有し、第1の前記直管部の先端が前記除熱媒体入口と連通し、n番目の前記直管部のテール端部が前記除熱媒体出口と連通し、i番目の前記直管部の後端がU字型の管を介して(i+1)番目の前記直管部のヘッド端部と連通し、nは2~100の整数(好ましくは2~20の整数)であり、iは1~n-1の任意の整数であり、直管部分の一部または全部(1~100%、5~80%、または10~40%など)の外壁に突出部がある、流動床反応器。
【0015】
8. 除熱媒体入口と、n本の直管(好ましくは直線状の円管)部と、除熱媒体出口とを有する除熱水管であって、第1の前記直管部のヘッド端部が前記除熱媒体入口と連通し、第nの前記直管部のテール端部が前記除熱媒体出口と連通し、i番目の前記直管部のテール端部がU字型の管を介して(i+1)番目の前記直管部のヘッド端部と連通し、nが2~100の整数(好ましくは2~20の整数)であり、iが1~n-1の間の任意の整数であり、前記直管部の一部又は全部(1~100%、5~80%又は10~40%等)の外壁に突出部がある、除熱水管。
【0016】
9. 前述または後続の態様の何れかを具備する除熱水管であって、前記直管部同士の外径は、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して80~180mm、好ましくは90~170mmであり、および/または、前記直管部同士の内径は、互いに同一であり、または互いに、異なっており、互いに独立して60~150mm、好ましくは70~140mmであり、および/または、前記直管部同士の長さは、互いに同一であり、または互いに異なっており、互いに独立して4.0~13m、好ましくは5.5~12.0mであり、および/または任意の2つの隣接する前記直管部の中心線は互いに平行であり、任意の2つの隣接する直管部の中心線間の距離は互いに同一であり、または互いに異なっており(好ましくは互いに同一)、互いに独立して160~540mm、好ましくは180~430mmである、除熱水管。
【0017】
10. 前述または後続の態様の何れかを具備する除熱水管であって、前記突出部は、前記直管部の中心線に沿った方向に連続的または不連続的に延在し、および/または、前記突出部は、前記直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在し、環または螺旋の形態のようになっている、除熱水管。
【0018】
11. 前述または後続の態様の何れかを具備する除熱水管であって、前記突出部が前記直管部の中心線に沿った方向に連続的または不連続的に延在する場合、前記突出部の延在長さLtが前記直管部の長さLzよりも長くなく(好ましくはLt/Lzが0.05~0.95、より好ましくは0.1~0.6であり)、および/または前記突出部が環の形態の前記直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在する場合、前記環の高さHhは前記直管部の長さLzよりも長くなく(好ましくはHh/Lzが0~0.5、より好ましくは0.01~0.3であり)、または前記突出部が螺旋の形態の前記直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在する場合、前記螺旋の高さHtは前記直管部の長さLzよりも長くなく(好ましくはHt/Lzが0.1~0.95、より好ましくは0.2~0.6であり)、および/または前記突出部の高さは前記直管部の外径の0.005~0.3倍(好ましくは0.008~0.1倍)であり、および/または前記突出部の幅は前記直管部の外径の0.005~0.3倍(好ましくは0.008~0.2倍)である、除熱水管。
【0019】
12. 前述または後続の態様の何れかを具備する除熱水管であって、前記突出部は、前記直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在し、前記突出部の中心線と前記直管部の中心線との間には、0°より大きく90°以下(好ましくは5°以上75°以下、より好ましくは10°以上60°以下)の角度がある、除熱水管。
【0020】
13. ヘッド、希薄相領域、濃密相領域、およびコーンを、上から下へ、この順で含み、前記濃密相領域には、前述または後続の態様の何れかを具備する除熱水管が少なくとも1つ設けられている、流動床反応器。
【0021】
14. オレフィン(プロピレンなど)酸化プロセスまたはアンモ酸化プロセスによるエポキシ化合物(プロピレンオキシドなど)または不飽和ニトリル(アクリロニトリルなど)の製造における、前述または後続の態様のいずれかに記載の流動床反応器の使用。
【0022】
15. 不飽和ニトリル(アクリロニトリルなど)を製造するために、前述または後続の態様のいずれかに記載の流動床反応器中でオレフィン(プロピレンなど)をアンモ酸化反応に供する工程を含む、不飽和ニトリルの製造方法。
【0023】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、従来技術の流動床反応器の概略正面図である。
【0024】
図2は、従来技術の流動床の反応冷却部の概略断面図である。
【0025】
図3は、本発明の流動床の反応冷却部の概略断面図である。
【0026】
【0027】
図5は、本発明の除熱水管の例示的な実施形態の模式図である。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
(符号の説明)
1: 流動床反応器
2: 混合供給ガスの供給ライン
3: サイクロンセパレータの入口
4: 除熱水管
5: サイクロンセパレータのシリンダ
6: サイクロンセパレータのコーン
7: サイクロンセパレータのアッシュバケット
8: サイクロンセパレータの第2ステージ(第3ステージ)のディプレグ
9: サイクロンセパレータの第1ステージのディプレグ
〔技術的効果〕
本発明の流動床反応器を用いることにより、流動床における流動様式の変化を可及的速やかに促進することができ、気泡の破壊を促進することができる。
【0034】
本発明の流動床反応器を用いることにより、気泡の成長を効果的に制限することができ、その結果、供給ガスの転化率を向上させることができ、目的とする反応生成物の収率を向上させることができる。
【0035】
本発明の流動床反応器を用いることにより、気相と固相との逆混合および深酸化生成物の生成を低減することができる。
【0036】
本発明の流動床反応器を使用することにより、伝熱効率および物質移動効率を改善することができ、装置の運転時間を延長することができる。
【0037】
〔発明の詳細な説明〕
本願について、その実施形態を参照して以下に詳細に説明するが、本願の範囲はそれらの実施形態によって限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義されることに留意されたい。
【0038】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本明細書に記載の含有量が優先されるべきである。
【0039】
本明細書に記載の材料、方法、構成要素、装置、またはデバイスが「当業者に知られている」、「当技術分野で一般に知られている」などの表現によって修飾される場合、前記材料、方法、構成要素、装置、またはデバイスは、本出願の出願時に当技術分野で従来から使用されているものだけでなく、現在一般に使用されていないものも包含するが、同様の目的に適していることが当技術分野で一般に知られるようになることを理解されたい。
【0040】
本出願の文脈において、用語「実質的に」は、±10%以内、±5%以内、±1%以内、±0.5%以内、または±0.1%以内のような、当業者に許容されるかまたは合理的であると考えられる逸脱が存在することが許容されることを意味する。
【0041】
本願の文脈において、特に断らない限り、全てのパーセンテージ、部、比率等は重量で表され、与えられた全ての圧力はゲージ圧である。
【0042】
本願の文脈では、本願の任意の2つ以上の実施形態を任意に組み合わせることができ、結果として得られる技術的解決策は本願の最初の開示の一部を形成し、本願の範囲内に入る。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、流動床反応器、特にアクリロニトリルの製造のための流動床反応器に関する。ここで、流動床反応器は、反応冷却部と、反応冷却部内に配置された垂直内部構成とを少なくとも含む。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、流動床反応器の中心軸に沿った方向の反応冷却部の長さをL(単位mで表す)と呼ぶ場合、反応冷却部の全長Lの範囲内の任意の位置で、流動床反応器の中心軸を横断し垂直な断面の平面において、反応冷却部の断面および垂直内部構成の断面を得ることができる。また、複数の垂直内部構成が存在する場合には、複数の垂直内部構成の断面を得ることができる。これらの断面は、
図3の4、8、9で表される円のような、面積と円周(外輪郭円周と呼ぶ)とを有する外輪郭を有している。ここで、反応冷却部の断面の面積をS1(単位m
2で表す)とし、垂直内部構成の断面の外輪郭円周(複数の断面が存在する場合、全断面の外輪郭円周の和をいう)をL1(単位mで表す)とし、L1/S1=2.0~4.3m
-1とする。ここで、L1/S1=2.0~4.3m
-1は、反応冷却部の中心点から上方に49%Lのところから、該中心点から下方に49%Lのところまでの領域内が好ましく、より好ましくは前記反応冷却部の中心点から上方に45%Lのところから、該中心点から下方に38%Lのところまでの領域内、さらに好ましくは前記反応冷却部の中心点から上方に40%Lのところから、該中心点から下方に8%Lのところまでの領域内である。好ましくは、L1/S1=2.2~4.1m
-1、より好ましくはL1/S1=2.4-3.9m
-1である。L1/S1が2.0m
-1未満の場合、装置の動作が不安定になる可能性があり、L1/S1が4.3m
-1を超える場合、反応器内の空間が過剰に占有される可能性がある。本発明の一実施形態によれば、垂直内部構成の具体的な実施例は除熱水管および気固セパレータを含み、特には、除熱水管と気固セパレータとの組合せを含む。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、反応冷却部の断面積S1は、典型的には19.6~660m2、好ましくは38.5~314m2である。
【0046】
本発明の実施形態によれば、外輪郭が実質的に円形である場合、外輪郭円周=3.14×Dであり、ここで、Dは、関連する垂直内部構成(一例として、除熱管の直管部またはサイクロンセパレータのディプレグ)の外径(単位mで表される)に対応する、外輪郭の直径(単位mで表される)を指す。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、流動床反応器の中心軸に沿った反応冷却部の長さLは、典型的には、4~12.5m、好ましくは5.5~11.5mである。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管は、当該管内の冷却液の潜熱を利用して、反応によって発生した熱を反応系から除くための冷却水管と、当該管内の冷却液の顕熱を利用して、反応によって発生した熱を反応系から除くための過熱水管とを備えている。ここで、冷却水管および過熱水管の直径は同一であっても異なっていてもよく、特に限定されるものではないが、従来から用いられている直径であってもよい。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管の直管部は、流動床反応器の濃密相領域に実質的に配置され、システムから反応熱を適時に除去し、システムの安定した動作を維持するために使用される。このために、本明細書の文脈において、「反応冷却部」という語は、除熱水管が設けられる流動床反応器の領域、より詳細には除熱水管の直管部が配置される流動床反応器内の領域、さらに詳細には除熱水管の直管部が配置される流動床反応器の濃密相領域内の領域を指す。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管は入口と、直管部と、出口とを有し、隣り合う2つの直管部は、典型的にはU字型の管を介して接続され、互いに流体連通している。前記除熱水管は1本の直管部のみを備えてもよいし、1本のU字管のみを備えてもよく、また、複数のU字管を直列に接続して形成してもよい。U字管の数が多いほど、外輪郭円周L1は大きくなる。加えて、除熱水管は、典型的には流動床反応器内に均等に分散される。具体的な実施例としては、流動床反応器をABCDの4分円に分割すれば、各分円の除熱水管の外輪郭円周は実質的に同じである。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、気固セパレータとして、サイクロンセパレータを挙げることができる。ここで、サイクロンセパレータはガス入口、コーン、アッシュバケット、ディプレグ、およびガス出口を有する。ディプレグは触媒床、すなわち流動床反応器の濃密相領域中の垂直構成として配置され、他の構成は流動床反応器の上部の希薄相領域中に配置される。ここで、サイクロンセパレータは、1つのサイクロンセパレータに1つのディプレグが対応した、単一のステージのサイクロンセパレータであってもよく、又は2つ以上のサイクロンセパレータが直列に接続されている構成であってもよい。典型的には第1ステージサイクロンセパレータのディプレグが、触媒床の下部(濃密相領域の下部に対応する)の特定の位置まで延在し、第2ステージ(第3ステージ)サイクロンセパレータのディプレグは、触媒床の下部、中間部、または上部(濃密相領域における、下部、中間部、または上部に対応する)の特定の位置まで延在する。
【0052】
本発明の実施形態によれば、サイクロンセパレータは、典型的には2つ以上が直列に接続された態様で配置される。流動床反応器の運転中、微粒子触媒の一部は反応ガスによって触媒床から運び去られ、ガスによって運ばれた触媒は第1ステージサイクロンセパレータの入口を通ってサイクロンセパレータに入り、第1ステージサイクロンセパレータを通った後、触媒の大部分は第1ステージサイクロンセパレータのディプレグに沿って触媒床に戻り、触媒の残りの小部分はさらなる気固分離のためにガスと共に第2ステージサイクロンセパレータに入り、分離された触媒は第2ステージサイクロンセパレータのディプレグに沿って触媒床に戻され、第2ステージサイクロンセパレータのディプレグの末端には翼弁が設けられ、第2ステージサイクロンセパレータはさらなる気固分離を行うために、第3ステージサイクロンセパレータに直列にさらに接続されてもよく、分離された触媒はディプレグに沿って触媒床に戻され、ガスはガス収集チャンバを通って上方に流れ、次いで、反応器を離れる。各サイクロンセパレータは、分離された触媒を触媒床に戻すためのディプレグを有する。マルチステージサイクロンセパレータのセットは、複数のディプレグを有する。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、垂直内部構成は除熱水管であり、流動床反応器の中心軸を横切って垂直な断面において、反応冷却部の断面積がS1(単位m2で表す)で表され、除熱水管の断面の外輪郭円周(直管部に基づく計算)(複数の断面が存在する場合、それは、すべての断面の外輪郭円周の合計を指す)がL2(単位mで表す)で表される場合、L2/S1=1.7~3.6m-1、好ましくはL2/S1=1.9~3.5m-1、より好ましくはL2/S1=2.1~3.3m-1である。前記比が1.7m-1未満では反応器の長期安定運転に支障をきたすおそれがあり、一例として、除熱水管の壁面にモリブデンシートが付着して熱伝達率が低下し、温度制御に失敗するおそれがあり、前記比が3.6m-1を超えることは、除熱水管の本数が増加することを意味し、気泡を破壊するためには有利であり得るが、装置の保守時に技術者に不便を強いる。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、流動床反応器内の除熱水管の本数(直管部に基づく計算)は、典型的には220~5000本、好ましくは300~2400本である。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管の直管部の外径は互いに同じであるかまたは異なり、それぞれ独立して80~180mm、好ましくは90~170mmである。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管の直管部の内径は互いに同じであるかまたは異なり、それぞれ独立して60~150mm、好ましくは70~140mmである。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管の直管部の長さは、互いに同じであるかまたは異なり、それぞれ独立して4.0~13m、好ましくは5.5~12.0mである。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、垂直内部構成は、気固セパレータ、特にサイクロンセパレータである。このために、流動床反応器の中心軸を横切って垂直な断面において、反応冷却断面の面積をS1(単位m2で表す)とし、気体セパレータの断面の外輪郭円周(複数の断面が存在する場合、それは、全ての断面の外輪郭円周の合計を意味する)をL3(単位mで表す)とする場合、L3/S1=0.25~0.85m-1、好ましくはL3/S1=0.30~0.75m-1、より好ましくはL3/S1=0.35~0.65m-1である。前記比率が0.25m-1未満の場合、触媒分離が不十分になったり、ディプレグがふさがれたりするおそれがある。その代わりに、前記比率が0.85m-1より大きい場合、一方では装置費用が増加し、他方では反応器内のより効果的な空間が占有され、同じ反応条件下では反応運転の線速度が増加し、これは触媒エントレインメントのさらなる増加を引き起こし得る。
【0059】
本発明の実施態様によれば、流動床反応器中の気固セパレータの数(ディプレグに基づいて計算される)は、16~516、好ましくは16~210である。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、流動床反応器において、ディプレグの数に対する直管部の数の比率は、8.5~24.0、好ましくは10.0~23.0、より好ましくは11.5~21.0である。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、気固セパレータのディプレグの外径は互いに同じであるかまたは異なり、それぞれ独立して150~410mm、好ましくは200~360mmである。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、気固セパレータのディプレグの内径は互いに同じであるかまたは異なり、それぞれ独立して130~400mm、好ましくは180~350mmである。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、気固セパレータのディプレグの長さは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して6~14m、好ましくは10~13mである。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、流動床反応器は、上から下へ順に、ヘッドと、希薄相領域と、反応冷却部と、予備反応部と、コーンとを含み、更には、ガス分配プレートと、任意選択で予備反応部に設けられた流体分配器とを含む。ここで、流動床反応器としては、アクリロニトリル製造用の流動床反応器が好ましく挙げられる。この場合、前記他の分配プレートは空気分配プレートであり、流体分配器はプロピレン-アンモニア分配器である。流動床反応器、特にアクリロニトリル等の生産のための流動床反応器の構造および操作については、当業者には公知の関連技術情報を直接適用することができ、その詳細な説明は本明細書では省略する。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、反応冷却部の断面は、実質的に円形である。また、反応冷却部の直径は典型的には5~29m、好ましくは7~20mであるが、これに限定されない場合がある。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、垂直内部構成の断面の内側輪郭および外側輪郭は、実質的に円形である。この目的のために、垂直方向の内側成分は、実質的に円管、特に直線状の円管の形状をしている。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、垂直内部構成は、実質的に円形の内側輪郭と、突出部を有する実質的に円形の外側輪郭とを有する。この目的のために、垂直内部構成の外観は、突出部を有する実質的に円形の管であり、垂直内部構成の内部は実質的に円形の管形状である。このような構造の垂直内部構成としては、特に、直管部の一部又は全部の外壁に突起部を有することを特徴とする、以下に説明する本発明の除熱水管を挙げることができる。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、垂直内部構成は、以下に説明する本発明の除熱水管を含む。このような特定の構造を有する垂直内部構成については、その断面の外形がもはや実質的に円形状ではなく、突出部を有する実質的円形状(すなわち、異形形状)を有する。このため、異形形状の実際の状況に応じて外輪郭円周を計算しなければならない。それにもかかわらず、輪郭形状がどのようなものであっても、当業者は既知の数学的幾何学的方法を使用して、前記形状の外側輪郭の円周を計算することができ、その詳細な説明はここでは省略される。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、除熱媒体入口と、n個の直管部と、除熱媒体出口とを有する除熱水管に関する。ここで、直管部としては、直線状の円管を好ましく挙げることができる。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管において、第1直管部の先端は、除熱媒体入口と連通し、第n直管部の後端は、除熱媒体出口と連通し、第i直管部の後端はU字管を介して第i+1直管部の先端と連通し、直管部の外壁の一部または全部に突出部が設けられている。ここで、nは2~100、好ましくは2~20の整数であり、iは1~n-1の任意の整数である。また、用語「一部又は全部」とは、例えば、総量の1~100%、5~80%、又は10~40%を含むが、これらに限定されない場合がある。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、突出部は、直管部の外壁に接続される。ここで、接続方法は特に限定されず、スポット溶接、連続溶接、一体成形等を採用してもよい。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管の直管部の外径は、互いに同一であり、または互いに異なり、それぞれ独立して80~180mm、好ましくは90~170mmである。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管の直管部の内径は、互いに同一であり、または互いに異なり、それぞれ独立して60~150mm、好ましくは70~140mmである。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管の直管部の長さは、互いに同一であり、または互いに異なり、それぞれ独立して4.0~13.0m、好ましくは5.5~12.0mである。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管において、任意の2つの隣接する直管部の中心線は互いに平行であり、任意の2つの隣接する直管部の中心線間の距離は、同一であり、または異なり(好ましくは互いに同じ)、それぞれ独立して160~540mm、好ましくは180~430mmである。
【0076】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管において、前記突出部は、前記直管部の中心線の方向に沿って(平行に)連続的または不連続的に延在する。ここで、突出部の数は、1~10個、1~4個、1個または2個であってもよい。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、除熱水管において、突出部は、環または螺旋の形態などの形態で、直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在する。ここで、突出部の数は、1~20であってもよく、1~10であってもよく、1~4であってもよく、1または2であってもよい。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、前記突出部が前記直管部の中心線に沿った方向に連続的または不連続的に延在する前記除熱水管において、前記突出部の延在長さLtは前記直管部の長さLz以下であり、好ましくはLt/Lzが0.05~0.95であり、より好ましくは0.1~0.6である。複数の突出部が存在する場合、異なる突出部は互いに平行であってもよく、または互いに角度をなしていてもよく、好ましくは互いに平行であり、より好ましくは前記直管部の半径方向に均一に配置されている。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、突出部が環の形態で直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在する除熱水管において、当該環の高さHhは、直管部の長さLz以下であり、好ましくはHh/Lzは0~0.9、より好ましくは0.01~0.6である。ここで、高さHhとは、突出部を有する直管部の対応する部分の長さをいう。複数の突出部が存在する場合、異なる突出部間の垂直間隔l1は直管部の長さLz以下であり、好ましくはl1/Lzが0.01~0.5であり、より好ましくは0.03~0.4である。好ましくは、突出部の中心線と直管部の中心線との間の角度α1が0°より大きく90°以下、好ましくは5°以上75°以下、より好ましくは10°以上60°以下である。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、突出部が螺旋の形態で直管部の中心線の周りに連続的または不連続的に延在する除熱水管において、当該螺旋の高さHtは、直管部の長さLz以下であり、好ましくはHt/Lzは0.1~0.95であり、より好ましくは0.2~0.6である。ここで、高さHtとは、突出部を有する直管部の対応する部分の長さをいう。加えて、当該螺旋のねじピッチl1は直管部の長さLzより大きくなく、好ましくはl1/Lzは0.01~0.5、より好ましくは0.03~0.4である。好ましくは、突出部の中心線と直管部の中心線との間の角度α1が0°より大きく90°以下、好ましくは5°以上75°以下、より好ましくは10°以上60°以下である。また、直管部に沿った突出部の接線と直管部の中心線とのなす角度α2は、0°以上90°以下であることが好ましく、好ましくは5°以上75°以下、より好ましくは10°以上60°以下である。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、前記除熱水管において、前記突出部の高さは、前記直管部の外径の0.005~0.3倍、好ましくは0.008~0.1倍である。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、前記除熱水管において、前記突出部の幅は、前記直管部の外径の0.005~0.3倍、好ましくは0.008~0.2倍である。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、上から下へ順に、ヘッド、希薄相領域、濃密相領域、およびコーンを含む流動床反応器にも関する。ここで、前述の本発明の態様のいずれかに記載の少なくとも1つの除熱水管は、濃密相領域に設けられている。好ましくは、除熱水管が流動床反応器内に均一に分布される。具体的な実施例については、流動床反応器をABCDの4分円に分割すれば、各分円の除熱水管の外輪郭円周は実質的に同じである。また、流動床反応器としては、アクリロニトリル製造用の流動床反応器を好ましく挙げることができる。流動床反応器、特にアクリロニトリル等の生産のための流動床反応器の構造および操作については、当業者には公知の関連技術情報を直接適用することができ、その詳細な説明は本明細書では省略する。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、流動床反応器には、本発明の特徴的な構造を有する除熱水管に加えて、従来公知の構造を有する除熱水管を設けてもよい。好ましくは、直管部に基づいて計算された本発明の特徴的な構造を有する除熱水管の本数は、例えば、全除熱水管の総本数のうちの1~100%、5~80%または10~40%である。好ましくは、除熱水管が流動床反応器内に均一に分布される。例えば、流動床反応器をABCDの4分円に分割すれば、各分円における除熱水管の外輪郭円周は実質的に同じである。
【0085】
本発明の一実施形態は、オレフィン酸化プロセスまたはアンモ酸化プロセスによるエポキシ化合物または不飽和ニトリルの製造における、本発明の上記態様のいずれか1つによる流動床反応器の使用にも関する。ここで、オレフィンとしてはプロピレンを特に挙げることができ、エポキシドとしてはプロピレンオキシドを特に挙げることができ、不飽和ニトリルとしてはアクリロニトリルを特に挙げることができる。
【0086】
本発明の一実施形態は、特に、本発明の上記態様のいずれか1つによる流動床反応器中でプロピレンをアンモ酸化反応させてアクリロニトリルを製造する工程を含む、アクリロニトリルの製造方法に関する。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、オレフィン酸化またはアンモ酸化プロセスは任意の方法で、および当業者に公知の任意の方法によって実施することができ、そのような情報は当業者に公知であり、その詳細な記載は本明細書では省略する。しかしながら、アンモ酸化反応のための状態の具体的な実施例は、典型的には1:1.1~1.3:1.8~2.0のプロピレン対アンモニア対空気のモル比(酸素分子に基づいて計算される)、典型的には420~440℃の反応温度、典型的には0.03~0.14MPaの反応圧力(ゲージ圧)、および典型的には重量毎時空間速度0.04~0.10h-1を含む。
【0088】
〔実施例〕
以下、実施例および比較例を用いて本願をさらに詳細に説明するが、本願は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
以下の実施例および比較例において、アクリロニトリルの収率およびプロピレンの転化率は、以下の式に従って計算することができる:
アクリロニトリルの収率: AN%=CAN/ΣC*100
プロピレンの転化率: Cc3%=(1-CC3in/CC3out)*100
ここで、
CAN: 反応器の出口における気体中のANに含まれる炭素のモル量(mol)
ΣC: 反応器の出口における気体中の炭素の総モル量(mol)
CC3out: 反応器の出口における気体中のC3に含まれる炭素のモル量(mol)
CC3in: 反応器の入口における気体中のC3に含まれる炭素のモル量(mol)
である。
【0090】
以下の実施例および比較例において、流動床の流動化状態は、圧力脈動強度のグラフまたはデータによっても特徴付けることができる。
【0091】
(比較例1)
図1に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒3.8トンを、直径1.5m、接線高さ16m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域との合計高さ)を有する流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径が30mm、直管部の長さが10mの、13本のU字型の除熱水管を備えている。また、流動床反応器の内部には、2組のサイクロンセパレータを備えており、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径はそれぞれ50mmおよび50mmであり、第1ステージのディプレグの長さは15.5m、第2ステージのディプレグの長さは14.7mであった。
【0092】
流動床反応器の反応冷却部は、1.5mの直径および8.5mの長さLを有していた。反応冷却部の中央部において、L1/S1=1.74m-1、L2/S1=1.39m-1、L3/S1=0.36m-1であった。
【0093】
装置の運転条件は、送気速度3200NM3/h、室温、常圧であった。
【0094】
圧力脈動強度データは2mのH
0で測定された。圧力脈動強度データを、
図6に示す。
【0095】
〔比較例2〕
図1に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒3.8トンを、直径1.5m、接線高さ16m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域との合計高さ)を有する流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径が30mm、直管部の長さが10mの、39本のU字型の除熱水管を備えている。また、流動床反応器の内部には、2組のサイクロンセパレータを備えており、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径はそれぞれ50mmおよび50mmであり、第1ステージのディプレグの長さは15.5m、第2ステージのディプレグの長さは14.7mであった。
【0096】
流動床反応器の反応冷却部は、1.5mの直径および8.5mの長さLを有していた。反応冷却部の中央部において、L1/S1=4.52m-1、L2/S1=4.16m-1、L3/S1=0.36m-1であった。
【0097】
本装置の運転条件は、送気速度3200NM3/h、室温、常圧であった。
【0098】
圧力脈動強度データは2mのH
0で測定された。圧力脈動強度データを、
図7に示す。
【0099】
装置の運転中、装置の出口において、気相中の微粒子触媒の濃度が増加した。このことは、触媒の比較的深刻な摩耗を示している。
【0100】
〔実施例1〕
図1に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒3.8トンを、直径1.5m、接線高さ16m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域との合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直線管の外径が30mm、直線管の長さが10mの、30本のU字型の除熱水管を備えている。また、流動床反応器の内部には、2組のサイクロンセパレータを備えており、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径はそれぞれ50mmおよび50mmであり、第1ステージのディプレグの長さは15.5メートル、第2ステージのディプレグの長さは14.7メートルであった。
【0101】
流動床反応器の反応冷却部は、1.5mの直径および8.5mの長さLを有していた。反応冷却部の中央部において、L1/S1=3.56m-1、L2/S1=3.20m-1、L3/S1=0.36m-1であった。
【0102】
本装置の運転条件は、送気速度3200NM3/h、室温、常圧であった。
【0103】
圧力脈動強度データは2mのH
0で測定された。圧力脈動強度データを、
図8に示す。
【0104】
〔実施例2〕
図1に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒3.8トンを、直径1.5m、接線高さ16m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域の合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径が30mm、直管部の長さが10mの、18本のU字型の除熱水管を備えている。また、流動床反応器の内部には、2組のサイクロンセパレータを備えており、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径はそれぞれ50mmおよび50mmであり、第1ステージのディプレグの長さは15.5m、第2ステージのディプレグの長さは14.7mであった。
【0105】
流動床反応器の反応冷却部は、1.5mの直径および8.5mの長さLを有していた。反応冷却部の中央部において、L1/S1=2.28m-1、L2/S1=1.92m-1、L3/S1=0.36m-1であった。
【0106】
本装置の運転条件は、送気速度3200NM3/h、室温、常圧であった。
【0107】
圧力脈動強度データは2mのH
0で測定された。圧力脈動強度データを、
図9に示す。
【0108】
〔実施例3〕
図1に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒3.8トンを、直径1.5m、接線高さ16m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域の合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径が30mm、直管部の長さが10mの、36本のU字型の除熱水管を備えている。流動床反応器の内部には、2組のサイクロンセパレータを備えており、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径は、それぞれ50mmおよび50mmであり、第1ステージのディプレグの長さは15.5m、第2ステージのディプレグの長さは14.7mであった。
【0109】
流動床反応器の反応冷却部は、1.5mの直径および8.5mの長さLを有していた。反応冷却部の中央部において、L1/S1=4.20m-1、L2/S1=3.84m-1、L3/S1=0.36m-1であった。
【0110】
本装置の運転条件は、送気速度3200NM3/h、室温、常圧であった。
【0111】
圧力脈動強度データは2mのH
0で測定された。圧力脈動強度データを、
図10に示す。
【0112】
装置の運転中、装置の出口における気相中の微粒子触媒の濃度は許容範囲内であった。
【0113】
〔比較例3〕
図1に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒160トンを、直径8m、接線高さ18m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域の合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直線管の外径が114mm、直線管の長さが8mの、100本のU字型の除熱水管を内部に備えている。100本のU字型の除熱水管は、18グループに分けられて、各グループは、2つのU字型、5つのU字型および6つのU字型が直列につながれることによって形成されている。流動床反応器の内部には、18個のサイクロンセパレータが設けられており、それらは9組に分けられ、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径は、それぞれ326mm、219mmであった。第1ステージのディプレグの長さは12.0m、第2ステージのディプレグの長さは10.1メートルであった。
【0114】
流動床反応器のサイクロンディプレグの数に対する冷却水管の数の比率は、11.11であった。
【0115】
流動床反応器の反応冷却部は、直径8m、長さL6.9mであった。反応冷却部の中央部において、L1/S1=1.73m-1、L2/S1=1.43m-1、L3/S1=0.31m-1であった。
【0116】
圧力脈動強度データは2mのH0で測定され、圧力脈動強度データのグラフは、比較例1のものと同様であった。
【0117】
装置の運転条件は、プロピレン供給速度5900NM3/h、反応温度430℃、反応圧0.055MPa、プロピレン:アンモニア:空気の比率を1:1.2:9.6であった。
【0118】
装置の操作からの結果は、AN収率78.3%、およびプロピレン転化率95.4%であった。
【0119】
〔実施例4〕
図4に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒160トンを、直径8m、接線高さ18m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域との合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径が114mm、直管部の長さが10m、直管部の間隔が220mmの、225本のU字型の除熱水管を備えている。225本のU字型の除熱水管は、40グループに分けられており、各グループは、2つのU字型、5つのU字型および6つのU字型が直列につながれることによって形成されている。また、流動床反応器の内部には、20個のサイクロンセパレータが設けられており、それらは11組に分けられ、各組には、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径はそれぞれ326mmおよび219mmであり、第1ステージのディプレグの長さは12.0m、第2ステージのディプレグの長さは10.1mであった。
【0120】
流動床反応器のサイクロンディプレグの数に対する冷却水管の数の比率は、20.45であった。
【0121】
流動床反応器の反応冷却部は、直径8m、長さL7.4mであった。反応冷却部の中央部において、L1/S1=3.58m-1、L2/S1=3.21m-1、L3/S1=0.37m-1であった。
【0122】
圧力脈動強度データは2mのH0で測定された。圧力脈動強度データのグラフは、実施例1のものと同様であった。
【0123】
装置の運転条件は、プロピレン供給速度5900NM3/h、反応温度430℃、反応圧0.04MPa、プロピレン:アンモニア:空気の比は1:1.2:9.6であった。
【0124】
装置の操作からの結果は、AN収率80.5%、およびプロピレン転化率98.5%であった。
【0125】
〔実施例5〕
図4に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒160トンを、直径8m、接線高さ18m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域の合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径が114mm、直管部の長さが10m、直管部の間隔が220mmの、110本のU字型の除熱水管を備えている。110本のU字型の除熱水管は、20グループに分けられており、各グループは、2つのU字型、5つのU字型および6つのU字型が直列につながれることによって形成されている。また、流動床反応器の内部には、28個のサイクロンセパレータが設けられており、それらは14組に分けられ、各組には、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径は、それぞれ326mmおよび219mmであった。第1ステージのディプレグの長さは12.0m、第2ステージのディプレグの長さは10.1mであった。
【0126】
流動床反応器のサイクロンディプレグの数に対する冷却水管の数の比率は、7.85であった。
【0127】
流動床反応器の反応冷却部は、直径8m、長さL7.4mであった。反応冷却部の中央部において、L1/S1=2.04m-1、L2/S1=1.57m-1、L3/S1=0.48m-1であった。
【0128】
圧力脈動強度データは2mのH0で測定された。圧力脈動強度データのグラフは、実施例2のものと同様であった。
【0129】
装置の運転条件は、プロピレン供給速度5900NM3/h、反応温度430℃、反応圧0.04MPa、プロピレン:アンモニア:空気の比は1:1.2:9.6であった。
【0130】
装置の操作からの結果は、AN収率79.3%、およびプロピレン転化率96.8%であった。
【0131】
〔実施例6〕
図4に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒160トンを、直径8m、接線高さ18m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域との合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径114mm、直管部の長さ10m、直管部の間隔215mmの266本のU字型の除熱水管を備えている。266本のU字型の除熱水管は、48グループに分けられており、各グループは、2つのU字型、5つのU字型および6つのU字型が直列につながれることによって形成されている。流動床反応器の内部には、18個のサイクロンセパレータが設けられており、それらは9組に分けられ、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径は、それぞれ326mmおよび219mmであった。第1ステージのディプレグの長さは12.0m、第2ステージのディプレグの長さは10.1mであった。
【0132】
流動床反応器のサイクロンディプレグの数に対する冷却水管の数の比率は、29.55であった。
【0133】
流動床反応器の反応冷却部は、直径8m、長さL7.4mであった。反応冷却部の中央部において、L1/S1=4.10m-1、L2/S1=3.79m-1、L3/S1=0.31m-1であった。
【0134】
圧力脈動強度データは2mのH0で測定され、圧力脈動強度データのグラフは、実施例3のものと同様であった。
【0135】
装置の運転条件は、プロピレン供給速度5900NM3/h、反応温度430℃、反応圧0.04MPa、プロピレン:アンモニア:空気の比は、1:1.2:9.6とした。
【0136】
装置の操作からの結果は、AN収率80.5%、およびプロピレン転化率98.6%であった。
【0137】
〔実施例7〕
上海石油化学技術研究所SINOPECから利用可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒160トンを、直径8m、接線高さ18m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域の合計高さ)の
図4に示す流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径114mm、直管部の長さ10m、直管部の間隔220mmの225本のU字型の除熱水管を備えている。225本のU字型の除熱水管は、40グループに分けられ、各グループは、2つのU字型、5つのU字型および6つのU字型が直列につながれることによって形成されている。流動床反応器の内部には、12個のサイクロンセパレータが設けられており、それらは4組に分けられ、各組は、3つのステージのサイクロンセパレータが直列に接続されている。その第1ステージ、第2ステージおよび第3ステージの外径はそれぞれ326mm、219mm、219mmであった。第1ステージのディプレグの長さは12.0メートル、第2ステージおよび第3ステージのディプレグの長さは10.1メートルであった。
【0138】
流動床反応器の反応冷却部は、直径8m、長さL7.4mであった。反応冷却部の中央部はL1/S1=3.40m-1、L2/S1=3.21m-1、L3/S1=0.19m-1である。
【0139】
圧力脈動強度データは2mのH0で測定され、圧力脈動強度データのグラフは、実施例1のものと同様であった。
【0140】
装置の運転条件は、プロピレン供給速度5900NM3/h、反応温度430℃、反応圧0.04MPa、プロピレン:アンモニア:空気の比は1:1.2:9.6とした。
【0141】
装置の操作からの結果は次の通り:79.5%AN収率、およびプロピレン転化率97.6%であった。
【0142】
〔実施例8〕
図4に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒160トンを、直径8m、接線高さ18m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域との合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径114mm、直管部の長さ10m、直管部の間隔220mmの225本のU字型の除熱水管を備えている。225本のU字型の除熱水管は、40グループに分けられ、各グループは、2つのU字型、5つのU字型および6つのU字型が直列につながれることによって形成されている。流動床反応器の内部には、24個のサイクロンセパレータが設けられており、それらは8組に分けられ、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの3つのステージを備えている。その第1ステージ、第2ステージおよび第3ステージの外径はそれぞれ326mm、219mm、219mmであった。第1ステージのディプレグの長さは12.0メートル、第2ステージおよび第3ステージのディプレグの長さは10.1メートルであった。
【0143】
流動床反応器の反応冷却部は、直径8m、長さL7.4mであった。反応冷却部の中央部はL1/S1=3.23m-1、L2/S1=2.85m-1、L3/S1=0.38m-1である。
【0144】
圧力脈動強度データは2mのH0で測定され、圧力脈動強度データのグラフは、実施例1のものと同様であった。
【0145】
装置の運転条件は、プロピレン供給速度5900NM3/h、反応温度430℃、反応圧0.04MPa、プロピレン:アンモニア:空気の比は1:1.2:9.6とした。
【0146】
装置の操作からの結果は、AN収率80.2%、およびプロピレン転化率98.1%であった。
【0147】
〔実施例9〕
図4に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒160トンを、直径8m、接線高さ18m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域との合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径114mm、直管部の長さ8mの140本のU字型の除熱水管を備えている。140本のU字型の除熱水管は、26グループに分けられ、各グループは、2つのU字型、5つのU字型および6つのU字型が直列につながれることによって形成されている。流動床反応器の内部には、18個のサイクロンセパレータが設けられており、それらは9組に分けられ、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージと第2ステージのディプレグの外径はそれぞれ326mmと219mmであった。第1ステージのディプレグの長さは12.0メートル、第2ステージのディプレグの長さは10.1メートルであった。
【0148】
流動床反応器の反応冷却部は、直径8m、長さL7.2mであった。反応冷却部の中央部はL1/S1=2.28m-1、L2/S1=2.00m-1、L3/S1=0.29m-1である。
【0149】
圧力脈動強度データは2mのH0で測定され、圧力脈動強度データのグラフは、実施例2のものと同様であった。
【0150】
装置の運転条件は、プロピレン供給速度5900NM3/h、反応温度430℃、反応圧0.04MPa、プロピレン:アンモニア:空気の比は1:1.2:9.6とした。
【0151】
装置の動作からの結果は、AN収率79.6%、およびプロピレン転化率97.3%であった。
【0152】
〔実施例10〕
図4に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒160トンを、直径8m、接線高さ18m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域との合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径114mm、直管部の長さ(Lz)8mの190本のU字型の除熱水管を備えている。190本のU字型の除熱水管は、34グループに分けられ、各グループは、2つのU字型、5つのU字型および6つのU字型が直列につながれることによって形成されている。また、95本のU字型の直管部の管壁の外側には、
図5fに示すようにフィンを設けている。フィンは、直管部の管壁の外側に4本が均一に分布している。フィンの長さ(Lt)3000mm、高さ10mm、幅20mmとした。流動床反応器の内部には、22個のサイクロンセパレータを備えており、それらは11組に分けられ、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径はそれぞれ326mmおよび219mmであった。第1ステージのディプレグの長さは12.0m、第2ステージのディプレグの長さは10.1mであった。
【0153】
流動床反応器の反応冷却部は、直径8m、長さL7.4mであった。反応冷却部の中央部はL1/S1=3.12m-1、L2/S1=2.75m-1、L3/S1=0.37m-1である。
【0154】
圧力脈動強度データは2mのH0で測定され、圧力脈動強度データのグラフは、実施例1のものと同様であった。
【0155】
装置の運転条件は、プロピレン供給速度5900NM3/h、反応温度430℃、反応圧0.04MPa、プロピレン:アンモニア:空気の比は1:1.2:9.6とした。
【0156】
装置の操作からの結果は、AN収率80.7%、およびプロピレン転化率98.8%であった。
【0157】
〔実施例11〕
図4に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒160トンを、直径8m、接線高さ18m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域との合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径が114mm、直管部の長さ(Lz)が8mの、190本のU字型の除熱水管を備えている。190本のU字型の除熱水管は、34グループに分けられ、各グループは、2つのU字型、5つのU字型および6つのU字型が直列につながれることによって形成されている。また、95本のU字型の直管部の管壁の外側には、
図5aに示すようにフィンを設けている。フィンは、直管部の管壁の外側に8本配され、フィン間の垂直間隔は500mm、角度α1は50°である。フィンは、長さ(Lt)3500mm、高さ10mm、幅20mmであった。また、流動床反応器の内部には、20個のサイクロンセパレータを備え、それらは10組に分けられ、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージのサイクロンセパレータを備えている。その第1ステージおよび第2ステージのディプレグの外径はそれぞれ326mmおよび219mmであった。第1ステージのディプレグの長さは12.0m、第2ステージのディプレグの長さは10.1mであった。
【0158】
流動床反応器の反応冷却部は、直径8m、長さL7.4mであった。反応冷却部の中央部はL1/S1=3.15m-1、L2/S1=2.78m-1、L3/S1=0.37m-1である。
【0159】
圧力脈動強度データは2mのH0で測定され、圧力脈動強度データのグラフは、実施例1のものと同様であった。
【0160】
装置の運転条件は、プロピレン供給速度5900NM3/h、反応温度430℃、反応圧0.04MPa、プロピレン:アンモニア:空気の比は1:1.2:9.6とした。
【0161】
装置の操作からの結果は、AN収率80.6%、およびプロピレン転化率98.7%であった。
【0162】
〔実施例12〕
図4に示すように、上海石油化学技術研究所SINOPECから入手可能なSANCシリーズのアクリロニトリル触媒160トンを、直径8m、接線高さ18m(つまり、図に示す濃密相領域と希薄相領域との合計高さ)の流動床反応器に充填した。流動床反応器の内部には、各除熱水管の直管部の外径114mm、直管部の長さ8mの225本のU字型の除熱水管を備えている。225本のU字型の除熱水管は、40グループに分けられ、各グループは、2つのU字型、5つのU字型および6つのU字型が直列につながれることによって形成されている。流動床反応器の内部には、42個のサイクロンセパレータが設けられており、それらは21組に分けられ、各組は、直列に接続されているサイクロンセパレータの2つのステージを備えている。その第1ステージのディプレグおよび第2ステージのディプレグの外径はそれぞれ400mmおよび325mmであった。第1ステージのディプレグの長さは12.0メートル、第2ステージのディプレグの長さ10.1メートルであった。
【0163】
流動床反応器の反応冷却部は、直径8m、長さL7.2mであった。反応冷却部の中央部はL1/S1=4.16m-1、L2/S1=3.21m-1、L3/S1=0.95m-1である。
【0164】
圧力脈動強度データは2mのH0で測定され、圧力脈動強度データのグラフは、実施例1のものと同様であった。
【0165】
装置の運転条件は、プロピレン供給速度5900NM3/h、反応温度430℃、反応圧0.04MPa、プロピレン:アンモニア:空気の比は1:1.2:9.6とした。
【0166】
装置の動作からの結果は、AN収率80.1%、およびプロピレン転化率98.7%であった。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【
図1】従来技術の流動床反応器の概略正面図である。
【
図2】従来技術の流動床の反応冷却部の概略断面図である。
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図3】本発明の流動床の反応冷却部の概略断面図である。
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図5】本発明の除熱水管の例示的な実施形態の模式図である。
【国際調査報告】