IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図1
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図2
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図3
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図4
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図5
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図6
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図7
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図8
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図9
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図10
  • 特表-商用車用のディスクブレーキ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】商用車用のディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/097 20060101AFI20230119BHJP
   F16D 55/228 20060101ALI20230119BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
F16D65/097 E
F16D55/228
F16D65/02 C
F16D65/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530239
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2020081679
(87)【国際公開番号】W WO2021104857
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】102019131840.8
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ビェアン マイスナー
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ゾマー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン プラインティンガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴェッテラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ペシェル
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA66
3J058BA16
3J058CA50
3J058CA65
3J058FA03
3J058FA06
(57)【要約】
商用車用ディスクブレーキであって、ブレーキディスクに上方から係合する、摺動キャリパとして形成されたブレーキキャリパと、ブレーキキャリパ内に配置されており、ブレーキディスクに向かってそれぞれ反対の方向に可動の2つのブレーキパッド(3)とを備えており、ブレーキパッド(3)は、各1つのパッド支持体プレート(4)と、パッド支持体プレート(4)に取り付けられた摩擦パッド(5)とを有しており、ブレーキパッド(3)はそれぞれ、ブレーキキャリパに保持されておりかつブレーキキャリパの取付け開口の上に跨設されたパッド保持フレームを支持するパッド保持ばね(10)を介して予荷重を加えられた状態で、車両側のブレーキ支持体の、ブレーキディスクの回転方向においてブレーキ支持体突出部により画定されたパッド穴内に配置されており、さらに、ブレーキパッド(3)を、制動に基づく摺動後でありかつブレーキ解除後に戻すことができる戻し装置が設けられており、戻し装置は、互いに反対の側に位置するブレーキパッド(3)に作用する、各緊締方向とは逆の方向に等しく働くばね弾性的な拡開要素(6)を有している、商用車用ディスクブレーキは、V字形に形成された2つの拡開要素(6)が設けられており、拡開要素(6)は、それぞれのばね脚(7)の結合領域においてパッド保持フレームに支持されている、または取り付けられており、各拡開要素(6)のばね脚(7)は、ばね脚(7)の端部(15)でもって、互いに反対の側に位置するブレーキパッド(3)に保持されているように形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車用のディスクブレーキであって、
ブレーキディスク(12)に上方から係合する、摺動キャリパとして形成されたブレーキキャリパ(1)と、
前記ブレーキキャリパ(1)内に配置されており、前記ブレーキディスク(12)に向かってそれぞれ反対の方向に可動の2つのブレーキパッド(3)であって、該ブレーキパッド(3)は、各1つのパッド支持体プレート(4)と、該パッド支持体プレート(4)に取り付けられた摩擦パッド(5)とを有しており、前記ブレーキパッド(3)はそれぞれ、前記ブレーキキャリパ(1)に保持されておりかつ該ブレーキキャリパ(1)の取付け開口の上に跨設されたパッド保持フレーム(11)を支持するパッド保持ばね(10)を介して予荷重を加えられた状態で、車両側のブレーキ支持体(2)の、前記ブレーキディスク(12)の回転方向においてブレーキ支持体突出部(9)により画定されたパッド穴内に配置されており、さらに、前記ブレーキパッド(3)を、制動に基づく摺動後でありかつブレーキ解除後に戻すことができる戻し装置が設けられており、該戻し装置は、互いに反対の側に位置する前記ブレーキパッド(3)に作用する、各緊締方向とは逆の方向に等しく働くばね弾性的な拡開要素(6)を有している、ブレーキパッド(3)と
を備える商用車用のディスクブレーキにおいて、
V字形に形成された2つの前記拡開要素(6)が設けられており、該拡開要素(6)は、それぞれのばね脚(7)の結合領域(13)において前記パッド保持フレーム(11)に支持されている、または取り付けられており、各前記拡開要素(6)の前記ばね脚(7)は、該ばね脚(7)の端部(15)でもって、互いに反対の側に位置する前記ブレーキパッド(3)に保持されていることを特徴とする、商用車用のディスクブレーキ。
【請求項2】
少なくとも1つの前記ばね脚(7)は、外向きに形成された支持体(14)を有しており、該支持体(14)は、対応して配置された前記ブレーキパッド(3)に支持されている、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
各前記拡開要素(6)は、前記結合領域(13)の頂点を通って案内される仮想の長手方向軸線(X)に対して非対称に形成されている、請求項1または2記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
2つの前記拡開要素(6)の前記結合領域(13)は、それらの前記長手方向軸線(X)に関して、互いにずらされて配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
前記拡開要素(6)は、線材、好適にはばね線材から一体に形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記ばね脚(7)の各前記端部(15)は、前記ばね脚(7)の隣接する領域の延在部に対して折り曲げられている、請求項1から5までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
各前記端部(15)は、前記パッド保持ばね(10)の孔に差し込まれている、請求項1から6までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
前記ばね脚(7)の各前記端部(15)は、前記パッド支持体プレート(4)の孔に差し込まれている、請求項1から7までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項9】
各前記ばね脚(7)の各前記端部(15)は、前記パッド保持ばね(10)の長孔を貫通する、前記パッド支持体プレート(4)の舌片(17)の孔に差し込まれている、請求項1から8までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項10】
各前記ばね脚(7)の前記端部(15)は、前記パッド保持ばね(10)に一体形成されたループ部(16)に差し込まれている、請求項1から9までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項11】
前記各ばね脚(7)の前記端部(15)は、ループ状に曲げられており、前記舌片(17)の孔に差し込まれている、請求項1から10までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項12】
2つの前記拡開要素(6)の前記結合領域(13)は、相接して位置している、請求項1から11までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項13】
相接して位置する前記結合領域(13)は、好適にはクリップ(18)により互いに結合されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項14】
前記拡開要素(6)は、前記仮想の長手方向軸線(X)に対して鏡像対称に形成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項15】
前記拡開要素(6)は、該拡開要素(6)の前記結合領域(13)でもって前記パッド保持フレーム(11)に取り付けられている、請求項1から14までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項16】
前記結合領域(13)は、前記パッド保持フレーム(11)に支持されている、請求項1から15までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項17】
前記パッド保持フレーム(11)に支持される前記結合領域(13)は、クランプ装置(19)により前記パッド保持フレーム(11)に取り付けられている、請求項1から16までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の商用車用のディスクブレーキに関する。
【0002】
機能した場合、つまり制動時に、このような摺動キャリパ式ディスクブレーキのブレーキパッドの緊締は、緊締装置により行われ、この場合、まず緊締側のブレーキパッドがブレーキディスクに押し当てられ、次いで反対側に位置する応答側のブレーキパッドがブレーキディスクに押し当てられる。
【0003】
この場合、作動側のブレーキパッドは、緊締装置のブレーキプランジャを介してブレーキディスクに押し当てられるのに対し、応答側のブレーキパッドを押し当てるためには、摺動キャリパとして形成されたブレーキキャリパが作動側のブレーキパッドの緊締方向とは逆の方向に摺動させられる。
【0004】
ブレーキ解除後に、周知のディスクブレーキの場合、ブレーキキャリパはこの、各ブレーキパッドが、ただし少なくとも応答側のブレーキパッドが、無圧状態ではあるが引きずり状態でブレーキディスクに接触している前記位置に留まる。
【0005】
これにより走行運転中に生じる、いわゆる残留引きずりモーメントは、車両の燃料消費量を増大させると共に、ブレーキディスクおよびブレーキパッドの耐用年数を減少させる。
【0006】
走行運転中は確かに、ブレーキディスクの振れならびにカーブ走行時の振動および横方向加速によりブレーキパッドが僅かに離れるが、ただしこれらの作用は、前記引きずりを有効に防ぐためには不十分である。
【0007】
この問題を解決するために国際公開第2016/202778号では、ディスクブレーキに、戻し装置を形成するばね弾性的な拡開要素を備え、拡開要素により、制動終了後にブレーキパッドを能動的に戻す、すなわち車両側のブレーキディスクの作用範囲外にもたらす、ということが提案されている。
【0008】
この場合、各ブレーキパッドに対応して1つの拡開要素が配置されており、拡開要素は、それぞれのパッド支持体プレートに係合する各2つのばね腕を備えている。
【0009】
これらの拡開要素は、ブレーキディスクに対して実質的に平行に延びる保持フレームに取り付けられており、保持フレームもやはり、車両側のブレーキ支持体に保持されている。この構成は、ブレーキパッドの摩耗の増大につながる残留引きずりモーメントが発生する、ということを防ぐ。
【0010】
この戻し装置は、実地において有利であるということが判ったが、しかしながら比較的大きな製造技術手間をかけなければ実現され得ず、このことは、コスト最小化に対する恒常的な要求と矛盾する。
【0011】
独国特許出願公開第4301621号明細書から、定置のブレーキ支持体を備えたディスクブレーキが公知であり、ブレーキ支持体は、ブレーキパッドを取り付ける2つのパッド穴を有しており、各パッド穴は、ブレーキディスクの両周方向において、複数のブレーキ支持体突出部により画定されており、ブレーキ支持体突出部には、各ブレーキパッドの摩擦パッドを支持するパッド支持体プレートが緊締方向に滑動するように支持されている。
【0012】
ブレーキパッドを戻すために、ブレーキパッドに軸線方向でブレーキ解除方向に作用するばねユニットが設けられており、ばねユニットはブレーキ解除後に、ブレーキパッドとブレーキディスクとの間の空隙の調節を支援する。
【0013】
このばねユニットは、摩擦パッドの上側でパッド支持体プレートにばね弾性的に当接する各2つのばね腕を備えた2つのばね弾性的な拡開要素を有しており、この場合、各拡開要素は定置の構成部材、例えばブレーキ支持体に取り付けられている。
【0014】
米国特許出願公開第20140339026号明細書に記載の拡開要素は、拡開要素をブレーキパッドに結合するロックアームと、後退アームと、ロックアームと後退アームとの間に配置された予荷重装置とを有している。この場合、予荷重装置は、ブレーキ動作中にエネルギを蓄え、ブレーキ解除後にブレーキパッドを引き戻す複数の螺旋形のループばねを有している。
【0015】
上位概念とは異なり、この構成は摺動キャリパ式ブレーキではなく、乗用車に使用されるが商用車には適さない浮動キャリパ式ブレーキに関する。
【0016】
本発明の根底を成す課題は、上位概念に記載の形式のディスクブレーキを改良して、その戻し装置をより簡単に構成しひいてはより廉価に製造可能にすると共にその動作確実性を改良することにある。
【0017】
この課題は、請求項1記載の特徴を有するディスクブレーキにより解決される。
【0018】
従来技術によるディスクブレーキに比べ、本発明による構成は大幅な利点を提供する。これらの利点はとりわけ、本発明の極めて簡単な実現に基づき得られる。それというのも、単に2つだけの、好適には一体の拡開要素が設けられているからである。ブレーキ解除後にブレーキパッドは、制動時に緊縮させられたばね脚のばね圧により、ブレーキパッドが最早ブレーキディスクには当接しない位置へ押しずらされる。
【0019】
原則として、拡開要素はばね線材から形成されていてもよく、この点において簡単に製造可能であるだけでなく、その耐用年数に関しても改良されている。まさにこの点が特に重要である。それというのも、安全上重要な構成部材としてのディスクブレーキには、特別な要求が課されるからである。
【0020】
各拡開要素のV字形の賦形は、組み込まれるべきブレーキパッドがそれぞれ異なる場合でも拡開要素の使用を可能にし、このためにブレーキパッドは、同じ位置にばね脚の端部の取付け手段を有している。これにより、拡開要素の大量生産が可能であり、このことは、拡開要素の調達コストを大幅に削減する。
【0021】
本発明によるV字形の拡開要素の構成は広義に解釈され得、この場合、各拡開要素は、少なくとも部分的に互いに斜めに共通の結合領域に向かって延びる複数のばね脚を有している。
【0022】
この場合、ばね脚のうちの少なくとも1つは、対応して配置された、対応するブレーキパッドのパッド保持ばねに支持されるように設計されており、これにより、ブレーキディスクの方向への傾倒を回避することができ、この場合、各結合領域は、パッド保持フレームの下面に当接している。
【0023】
1つの択一的な変化態様は、各拡開要素は、ばね脚の結合領域において保持フレームに、例えば緊締手段により取り付けられている、ということを想定している。
【0024】
拡開要素は、互いに向かい合う方向に上昇するように延びているため、ブレーキパッドの緊締時に生じる結合領域の立上がりが、拡開要素の、パッド保持フレームに対する当接部もしくは結合部により防止される。
【0025】
本発明の1つの別の思想に基づき、拡開要素は、それぞれ非対称に形成されて取り付けられており、これにより拡開要素は、ブレーキパッドが摩耗しかつこれに起因してパッド保持フレームの下側で拡開要素の結合領域がずれた場合でも、互いの傍らを通過して滑動することができるようになっている。
【0026】
パッド支持体プレートにおけるばね脚の端部の取付けは様々な形式で、例えばこれらの端部をパッド支持体プレートまたはパッド保持ばねの孔に差し込むことにより行われてもよい。
【0027】
本発明の別の有利な構成は、下位請求項において特徴付けられている。
【0028】
以下に、本発明の実施例を添付の図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】従来技術によるディスクブレーキを示す斜視平面図である。
図2】本発明によるディスクブレーキの一部を示す斜視図である。
図3】本発明によるディスクブレーキの一部を示す斜視図である。
図4図4図8は、本発明の変化態様をそれぞれ同様に示す斜視平面図である。
図5図4図8は、本発明の変化態様をそれぞれ同様に示す斜視平面図である。
図6図4図8は、本発明の変化態様をそれぞれ同様に示す斜視平面図である。
図7図4図8は、本発明の変化態様をそれぞれ同様に示す斜視平面図である。
図8図4図8は、本発明の変化態様をそれぞれ同様に示す斜視平面図である。
図9】ディスクブレーキの個別の部材を示す概略図である。
図10】拡開要素が取り付けられた状態で本発明の1つの択一的な構成を示す図である。
図11】拡開要素の1つの別の実施例を個別の部材として示す図である。
【0030】
図1には、従来技術による商用車用のディスクブレーキが示されている。このディスクブレーキは、ブレーキキャリパ1を有しており、ブレーキキャリパ1は、車両側に取り付け可能なブレーキ支持体2において摺動可能に保持されており、ブレーキキャリパ1内には、互いに間隔をあけて配置された2つのブレーキパッド3がそれぞれ反対の方向に可動に支持されている。
【0031】
各ブレーキパッド3は、パッド支持体プレート4と、パッド支持体プレート4に取り付けられた摩擦パッド5とを有しており、この場合、パッド支持体プレート4には各1つのパッド保持ばね10が取り付けられており、パッド保持ばね10は、パッド保持フレーム11に支持されており、パッド保持フレーム11は、ブレーキキャリパ1の取付け開口に上方から係合しておりかつブレーキパッド3を、ブレーキ支持体2のパッド穴内で予荷重が加えられた状態で保持しており、パッド穴は、側方をブレーキ支持体突出部9により画定されている。
【0032】
制動動作後にブレーキパッド3をそれらの非機能位置に戻すためには、戻し装置が設けられており、戻し装置は2つの拡開要素6から形成され、拡開要素6は、ブレーキ支持体突出部9に隣接する領域においてばね脚7を介してパッド支持体プレート4に作用する。
【0033】
拡開要素6は他方では、保持フレーム8に戻し装置の別の構成部材として取り付けられており、保持フレーム8は、その両端部でもってそれぞれブレーキ支持体突出部9に差し込まれている。この公知のディスクブレーキは、その他の点では既に述べたように、明確に関係する国際公開第2016/202778号に開示されている。
【0034】
図2および図3には、本発明によりV字形に形成された2つの拡開要素6が設けられたディスクブレーキの一部が描かれており、拡開要素6は、それぞれのばね脚7の結合領域13において、パッド保持フレーム11の下面に支持されている。この場合、各拡開要素6のばね脚7は、それらの端部15でもって、互いに反対の側に位置するブレーキパッド3に保持されており、図2および図3に示す例では、ばね脚7に対して折り曲げられた端部15が、パッド支持体プレート4の孔に差し込まれている。
【0035】
図3では、各拡開要素6のばね脚7の、ブレーキディスク12に対してアーチ状に外向きに形成された支持体14が、対応するブレーキパッド3のパッド保持ばね10に支持されており、これにより、拡開要素6の傾倒が防止される、ということが認められる。
【0036】
図4図8には、ブレーキパッド3、拡開要素6およびブレーキディスク12の構成群が単独状態で、つまりブレーキキャリパ1およびパッド保持フレーム11無しで描かれている。これにより、拡開要素6の構成を明確に判別することができる。
【0037】
つまり図4には、図3に相応する拡開要素6の構成が示されている。ただし図3とは異なり、パッド支持体プレート4に直接に取り付けられているのではなく、パッド保持ばね10の孔内に取り付けられている。
【0038】
図4に示した例では、各支持体14は片側だけに形成されておりかつ対応するパッド保持ばね10に当接している、ということが明確に認識され、この場合、両拡開要素6の支持体14が、互いに反対の側に位置するブレーキパッド3のパッド保持ばね10に当接している。
【0039】
両拡開要素6はそれぞれ、結合領域13の頂点を通って案内される仮想の長手方向軸線Xに対して非対称に、しかも拡開要素6の両結合領域13が取付け状態では長手方向軸線X同士の間隔をあけて、互いにずらされて位置決めされているように形成されている。
【0040】
図5に示す例でも、ばね脚7の端部15はやはりパッド保持ばね10の孔内に差し込まれている。この変化態様では各ばね脚7が、対応して配置されたパッド保持ばね10に当接する支持体14を有している。
【0041】
図6には、図4と比較可能な、すなわち各1つの支持体14のみを備えた拡開要素6の構成が描かれている。ただし、ばね脚7の端部15は、パッド支持体プレート4の孔に差し込まれている。
【0042】
図7に示す実施例では、ばね脚7の端部15が、端部側において各パッド保持ばね10に一体形成されたループ部16に差し込まれ、その内部で相対回動不能に保持されているため、支持体14は省かれてもよい。
【0043】
図8では、パッド支持体プレート4に対するばね脚7の結合部の1つの別の変化態様が認められる。この場合、端部15はループが生じるように巻回されており、ループはパッド保持ばね10の上側で、各パッド支持体プレートに一体形成されていてパッド保持ばね10を貫通する舌片17を通ってガイドされている。この場合、これらの端部15は、パッド支持体プレート4に対するパッド保持ばね10の半径方向での位置固定にも役立つ。
【0044】
図9には、拡開要素6が個別の部材として示されており、この実施例では、支持体14が片側に、すなわち2つのばね脚7のうちの一方に形成されている。その他の点では、この場合、端部15は、ばね脚7に対して直角に一体形成されている。
【0045】
図10には、パッド保持フレーム11における拡開要素6の保持部の1つの択一的な構成が示されている。この場合、結合領域13は、パッド保持フレーム11に支持されており、そこにクランプ装置19により取り付けられており、これにより、拡開要素6は半径方向に予荷重を加えられていることになり、その結果、拡開要素6が規定通りに位置決めされかつ振動による騒音が回避される。クランプ装置19は、好適には軸線方向に移動可能に保持されており、これにより、摩耗時のキャリパ移動が補償される。
【0046】
ばね脚7の端部15は、パッド支持体プレート4の長孔20を貫通して案内されており、この場合、端部15は、ばね脚7の延在平面内で直角に曲げられている。
【0047】
図11に示す2つの拡開要素6の別の実施例では、これらの拡開要素6は、それらの結合領域13でもって相接して位置しておりかつクリップ18により互いに結合されており、この場合、拡開要素6は上述した長手方向軸線Xに対して非対称ではなく、対称に形成されている。
【符号の説明】
【0048】
1 ブレーキキャリパ
2 ブレーキ支持体
3 ブレーキパッド
4 パッド支持体プレート
5 摩擦パッド
6 拡開要素
7 ばね脚
8 保持フレーム
9 ブレーキ支持体突出部
10 パッド保持ばね
11 パッド保持フレーム
12 ブレーキディスク
13 結合領域
14 支持体
15 端部
16 ループ部
17 舌片
18 クリップ
19 クランプ装置
20 長孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】