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特表2023-503147固体表面に結合させた親和性リガンドを使用する核酸の分離及び単離
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】固体表面に結合させた親和性リガンドを使用する核酸の分離及び単離
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530270
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 IB2020061105
(87)【国際公開番号】W WO2021105887
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/939,934
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520200160
【氏名又は名称】エーエムペー・バイオテック・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アリステア・イー・フルスト
(72)【発明者】
【氏名】デレク・ヴェー・カー・レフィゾン
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ムーラー
(57)【要約】
DNA(二本鎖又は一本鎖)、RNA(二本鎖又は一本鎖)、メッセンジャーRNA、又は他のオリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオシド等の標的高分子を、標的高分子を表面に結合させた親和性リガンドに結合させることによって試料から単離及び分離する方法が開示される。方法は、クロマトグラフィー又は任意の他の分離科学に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から標的高分子を分離する方法であって、
a.標的高分子に結合する親和性リガンドを選択する工程と、
b.親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、
c.カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、
d.標的高分子を含有する試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、標的高分子が親和性リガンドに結合する、工程と、
e.標的高分子に結合した、カップリングした表面-親和性リガンドを、標的高分子が取り出された試料から分離する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
標的高分子が、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、二本鎖メッセンジャーRNA、一本鎖メッセンジャーRNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、ウイルス、オリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオシドを含有するタンパク質、オリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオシドを含有する脂質、他のオリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオシド、これらの任意の断片、又はこれらの任意の組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
標的高分子が、DNA、RNA、これらの任意の断片、又はこれらの任意の組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
標的高分子が、二本鎖DNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
親和性リガンドが、インターカレーター、副溝結合物質、主溝結合物質、又はこれらの任意の組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
親和性リガンドが、アクリジン、ポリイミジゾール、インドール、ピロール、フェナントリジン、ベンゾチアゾール-キノリン又はベンゾキサゾール-キノリンのシアニン、フェノキサジン、フェノチアジン、アントラキノン、及びフラノクマリンからなる群から選択される化合物であり、化合物が、親和性リガンドを表面に結合させることができるリンカー基を含むように改変されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
f.標的高分子を実質的に含まない溶出液を収集する工程
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
f.カップリングした表面-親和性リガンドから標的高分子を溶出させ、回収する工程
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程a)が、
i.標的高分子と結合するインターカレーター、副溝結合物質、主溝結合物質、又はこれらの任意の組合せを選択する工程と、
ii.インターカレーター、副溝結合物質、主溝結合物質、又はこれらの組合せを、リンカー基を含むように改変して、表面に結合することができる親和性リガンドを作製する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
親和性リガンドが、試料中のいかなるタンパク質にも結合しない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
親和性リガンドが、改変フェノチアジン、改変Hoechst色素、ベンゾチアゾール-キノリンの改変シアニン、又はベンゾキサゾール-キノリンの改変シアニンである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
親和性リガンドが、エポキシ基、カルボキシ基、ハロゲン化物基又はアミノ基で終わるスペーサーを含むように改変されている、フェノチアジン、Hoechst色素、ベンゾチアゾール-キノリンのシアニン、又はベンゾキサゾール-キノリンのシアニンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
親和性リガンドが、モノカルボキシメチレンブルーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
親和性リガンドが、Hoechst 33258、Hoechst 33342、及びHoechst 34580からなる群から選択され、エポキシ基、カルボキシ基、ハロゲン化物基又はアミノ基で終わるスペーサーを含むように改変されている改変Hoechst色素であり、スペーサーが、1~30個の原子を含有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
親和性リガンドが、左側のアルキルアミノが改変されたHoechst色素である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
親和性リガンドが、右側のアルキルアミノが改変されたHoechst色素である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
親和性リガンドが、改変Mono-Hoechst色素である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
親和性リガンドが、エポキシ基、カルボキシ基、又はアミノ若しくはハロゲン化物で終わるスペーサーを含むように改変されているベンゾチアゾール-キノリンの改変シアニン又はベンゾキサゾール-キノリンの改変シアニンであり、スペーサーが、1~30個の原子を含有する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
表面が固体表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
固体表面が、ビーズ、膜、粒子、メッシュ、ポリマー、ガラス、金属、セラミック、シリカ、多糖、モノリス、又はクロマトグラフィーにおいて樹脂として使用される任意の他の材料である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
固体表面が、官能化された基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
官能化された基が、エポキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、又はアミノ基を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
固体表面が、アミノ-アガロースビーズである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
固体表面が、アルデヒド膜である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
クロマトグラフィーに使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
容器が、クロマトグラフィーカラム、ボウル、シリンダー、円錐形の器、又はバットである、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
DNA及び他の核酸を含有する試料からDNAを単離し、取り出すための方法であって、
a.DNAと結合する親和性リガンドを選択する工程と、
b.親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、
c.カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、
d.試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、DNAが親和性リガンドに結合する、工程と、
e.DNAに結合した、カップリングした表面-親和性リガンドを、DNAが取り出された試料から分離する工程と
を含む、方法。
【請求項28】
DNAが二本鎖である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
f.カップリングした表面-親和性リガンドからDNAを溶出させ、回収する工程
を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
親和性リガンドが、インターカレーター、副溝結合物質、主溝結合物質、又はこれらの任意の組合せである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
親和性リガンドが、アクリジン、ポリイミジゾール、インドール、ピロール、フェナントリジン、ベンゾチアゾール-キノリン又はベンゾキサゾール-キノリンのシアニン、フェノキサジン、フェノチアジン、アントラキノン、及びフラノクマリンからなる群から選択される化合物であり、化合物が、親和性リガンドを表面に結合させることができるリンカー基を含むように改変されている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
親和性リガンドが、エポキシ基、カルボキシ基、ハロゲン化物基又はアミノ基で終わるスペーサーを含むように改変されている、フェノチアジン、Hoechst色素、ベンゾチアゾール-キノリンのシアニン、又はベンゾキサゾール-キノリンのシアニンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
表面が固体表面である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
固体表面が、ビーズ、膜、粒子、メッシュ、ポリマー、ガラス、金属、セラミック、シリカ、多糖、モノリス、又はクロマトグラフィーにおいて樹脂として使用される任意の他の材料である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
固体表面が、官能化された基を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
RNA及び他の核酸を含有する試料からRNAを単離し、取り出すための方法であって、
a.RNAと結合する親和性リガンドを選択する工程と、
b.親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、
c.カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、
d.試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、RNAが親和性リガンドに結合する、工程と、
e.RNAに結合した、カップリングした表面-親和性リガンドを、RNAが取り出された試料から分離する工程と
を含む、方法。
【請求項37】
RNAが二本鎖である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
f.カップリングした表面-親和性リガンドからRNAを溶出させ、回収する工程
を更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
親和性リガンドが、インターカレーター、副溝結合物質、主溝結合物質、又はこれらの任意の組合せである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
親和性リガンドが、アクリジン、ポリイミジゾール、インドール、ピロール、フェナントリジン、ベンゾチアゾール-キノリン又はベンゾキサゾール-キノリンのシアニン、フェノキサジン、フェノチアジン、アントラキノン、及びフラノクマリンからなる群から選択される化合物であり、化合物が、親和性リガンドを表面に結合させることができるリンカー基を含むように改変されている、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
親和性リガンドが、エポキシ基、カルボキシ基、ハロゲン化物基又はアミノ基で終わるスペーサーを含むように改変されている、フェノチアジン、Hoechst色素、ベンゾチアゾール-キノリンのシアニン、又はベンゾキサゾール-キノリンのシアニンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
表面が固体表面である、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
固体表面が、ビーズ、膜、粒子、メッシュ、ポリマー、ガラス、金属、セラミック、シリカ、多糖、モノリス、又はクロマトグラフィーにおいて樹脂として使用される任意の他の材料である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
固体表面が、官能化された基を含む、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年11月25日出願の米国仮特許出願第62/939,934号の優先権の利益を主張するものである。前述の出願の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、DNA及びRNA等の標的高分子を、供給流、又は一般的に、試料から、表面に結合させた、特異的に選択された親和性リガンドを使用して分離し、単離し、取り出す方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に使用される場合、クロマトグラフィーは、試料混合物の種々の成分を分離するための技法である。液体クロマトグラフィー系では、試料、続いて溶離液をクロマトグラフィー分離カラムに注入する。分離カラムは、分離される試料の種々の成分と相互作用する充填又はマトリックス媒体又は材料を含有する。分離媒体の組成は、所望の分離をもたらすためにそれを通して方向付けられる流体に依存する。試料及び溶離液が分離媒体を通過するにつれ、試料の種々の成分が、示差的な相互作用の結果として異なる速度で分離媒体を通って移動する。これらの成分は出口又は流出液中に分離媒体から分離されて現れる。
【0004】
垂直流及び水平流分離カラムの種々の型が当技術分野で公知である。高性能クロマトグラフィーの必要性に伴い、水平流型クロマトグラフィーカラムが開発された。そのような水平流又は放射状流カラムは、例えば、米国特許第4,627,918号及び同第4,676,898号に記載されている。水平又は放射状流型カラムでは、試料及び溶離液はディストリビューターを介して分離媒体又はマトリックスの外周又は周壁又は表面に導入され、流体は分離媒体を水平又は放射状に内向きに中心又は収集ポートまで通過し、次いで、異なる時間及び異なる速度でカラムから溶出する。
【0005】
後に、細胞/発酵採取物、組織抽出物、及び血漿/血液を含む、生物活性材料を単離するために粗製供給材料を直接処理するためのクロマトグラフィーカラム及び方法が開発された。ラージビーズクロマトグラフィー媒体を、エンドプレートスクリーンがラージポアスクリーン(60~180μmのポア)で置き換えられた標準の低圧クロマトグラフィーカラムに充填する。ラージポアによりカラム遮断が防止される。細胞性材料は粒径が大きいので粒子間の内腔のビーズ間を流れるが、一方、可溶性生成物はビーズ上の官能基によって捕捉される。
【0006】
伝統的に、細胞培養/発酵採取物由来の生物学的物質の下流の処理には、2つの主要な操作:回収及び精製が必要とされている。回収は、細胞性材料及び他の粒子材料を遠心分離及び/又は精密濾過によって除去すること、並びに最初の体積を減少させる工程、一般には限外濾過を伴う。従来のクロマトグラフィー媒体は細胞片で急速に汚れてしまうので、精製操作のために粒子を含まない供給材料を調製しなければならない。
【0007】
(治療用)生物学的調製物(例えば、モノクローナル抗体)のある特定の精製プロセスでは、試料/産物が生細胞系(哺乳動物、細菌、蘚類、藻類、植物等)を介して産生され、産物が細胞によって供給流に分泌されるか、又は細胞が破壊されて産物が周囲の液体中に放出される。しかし、これらの産生系の全てにおいて、産物は単一成分の純粋な産物として入手可能ではなく、所望の産物と、宿主細胞のタンパク質(HCP)並びにゲノムDNA及びRNAを含む「夾雑物」との非常に複雑な混合物である。
【0008】
精製の間に、HCP及びDNA/RNAを精製された産物から規制当局(例えば、FDA)によって設定された限界を下回るレベルに除去しなければならない。この精製は、通常、アニオンイオン交換法によって達成される。タンパク質を含有する試料の濾過及び精製の間、タンパク質を他の細胞成分及び宿主タンパク質から目的のタンパク質を変性(degenerate)させずに分離すること、並びに同様に標的タンパク質を単離することは難しい場合がある。一般的な方法は沈殿によるものである。しかし、これは、タンパク質機能の喪失をもたらす恐れがあるタンパク質の変性(denaturation)又は変性(degeneration)を導く可能性がある。タンパク質のリフォールディングにより、多くの場合、活性の喪失が導かれる。高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)はタンパク質精製に使用される一般的な方法である。タンパク質を変性(denature)させる必要なく、高圧又は侵攻性pH緩衝剤を使用して、単離のために緩衝剤と目的のタンパク質の特異的な相互作用だけを使用してタンパク質を精製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,627,918号
【特許文献2】米国特許第4,676,898号
【特許文献3】米国特許第8,980,855号
【特許文献4】米国特許第5,658,751号
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0233710号
【特許文献6】Brenner, S.ら、「Fluorescent molecular motors」、PCT国際出願2014、WO 2014051521、A1 20140403
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Reddyら、「Recent developments in sequence selective minor groove DNA effectors」、Curr. Med. Chem.、8(2001)、475~508頁
【非特許文献2】Eckel, R.ら、「Identification of Binding Mechanisms in Single Molecule-DNA Complexes」、Biophys. J.、2003年9月、85(3): 1968-1973頁
【非特許文献3】https://en.wikipedia.org/wiki/Hoechst_stain
【非特許文献4】ThermoFisher Scientific、Molecular probes Handbook、A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies、Chapter 8、Nucleic Acid Detection and Analysis、11th Ed(2010)
【非特許文献5】https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=3&ved=2ahUKEwiL5NP478fdAhVqh4sKHffbCFkQFjACegQICBAC&url=http%3A%2F%2Fwww.thermofisher.com%2Fcontent%2Fdam%2FLifeTech%2Fglobal%2Ftechnical-reference-library%2FMolecular%2520Probes%2520Handbook%2Fchapter-pdfs%2FCh-8-Nucleic-Acid-Detection-Analysis.pdf&usg=AOvVaw2Ufpb7SkFbbWTbbzAwdgtm
【非特許文献6】Wiederholt, K.ら、DNA-Tethered Hoechst Groove-Binding Agent: Duplex Stabilization and Fluorescence Characteristics、J. Am. Chem. Soc.、1996、118、7055-7062頁
【非特許文献7】Thompson, M.、「Synthesis, photophysical effects, and DNA targeting properties of oxazole yellow-peptide bioconjugates」、Bioconjugate Chem. 2006、17、507-513頁
【非特許文献8】Pham, H. H.ら、「Bichromophoric dyes for wavelength shifting of dye-protein fluoromodules」、Org. Biomol. Chem. 2015、13、3699-3710頁
【非特許文献9】Fei, X.ら、「Thiazole orange derivatives: synthesis, fluorescence properties, and labeling cancer cells」、Bioorg. Med. Chem. 009、17、585-591頁
【非特許文献10】Fei, X.ら、「Solid-phase synthesis and modification of thiazole orange and its derivatives and their spectral properties」、J. Comb. Chem. 2007、9、943-950頁
【非特許文献11】Zhang, T. H.、He, H. X、Du, J. L.、He, Z. J. Yao, S. Molecules、2018、23、2011-2024頁
【非特許文献12】Gromov, S, P.ら、「Synthesis, Structure, and Properties of Supramolecular Photoswitches Based on Ammonioalkyl Derivatives of Crown Ether Styryl Dyes」、J. Org. Chem. 2014、79、11416-11430頁
【非特許文献13】Liu, Y.ら、「A "Double-Locked" and enzyme-activated molecular probe for accurate bioimaging and hepatopathy differentiation」、Chemical Science 2019、10(47)、10931-10936頁
【非特許文献14】Ranjan, N.ら、「Selective Inhibition of Escherichia coli RNA and DNA Topoisomerase I by Hoechst 33258 Derived Mono-and Bisbenzimidazoles」、J. Med. Chem. 2017、60、4904-4922頁
【非特許文献15】Nimesh, H. al.、「Synthesis and Biological Evaluation of Novel Bisbenzimidazoles as Escherichia coli Topoisomerase IA Inhibitors and Potential Antibacterial Agents」、J. Med. Chem. 2014、57、5238-5257頁
【非特許文献16】Chandrika, N. T.ら、「Synthesis and Investigation of Novel Benzimidazole Derivatives as Antifungal Agents」、S. Bioorg. Med. Chem. 2016、24、3680-3686頁
【非特許文献17】Frau, S.ら、New J. Chem. 1995、19、873-6頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
二本鎖及び一本鎖両方のDNA及びRNAを供給流から取り出し及び単離するための系が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
試料から標的高分子を分離する方法であって、標的高分子と結合する親和性リガンドを選択する工程と、親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、標的高分子を含有する試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、標的高分子が親和性リガンドに結合する、工程と、標的高分子に結合した、カップリングした表面-親和性リガンドを、標的高分子が取り出された試料から分離する工程とを含む、方法が開示される。場合により、方法は、標的高分子を実質的に含まない溶出液を収集する工程、及び/又はカップリングした表面-親和性リガンドから標的高分子を溶出させ、回収する工程を含む。
【0013】
標的高分子は、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、二本鎖メッセンジャーRNA、一本鎖メッセンジャーRNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、ウイルス、オリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオシドを含有するタンパク質、オリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオシドを含有する脂質、他のオリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオシド、これらの任意の断片、又はこれらの任意の組合せでありうる。ある特定の実施形態では、親和性リガンドは、試料中のタンパク質には結合しないものであり、及び/又は、メチレンブルー、Hoechst色素、ベンゾチアゾール-キノリンのシアニン、又はベンゾキサゾール-キノリンのシアニンである。表面は、官能化された基を含む、ビーズ、膜、粒子、メッシュ、ポリマー、ガラス、金属、セラミック、シリカ、多糖、モノリス、又はクロマトグラフィーにおいて樹脂として使用される任意の他の材料等の固体表面でありうる。容器は、クロマトグラフィーカラム、ボウル、シリンダー、円錐形の器、又はバットでありうる。
【0014】
DNA及び他の核酸を含有する試料からDNAを単離し、取り出すための方法並びにRNA及び他の核酸を含有する試料からRNAを単離し、取り出すための方法も開示される。これらの方法は、標的DNA又はRNAに結合する親和性リガンドを選択する工程と、親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、標的DNA又はRNAが親和性リガンドに結合する、工程と、標的DNA又はRNAに結合した、カップリングした表面-親和性リガンドを、標的DNA又はRNAが取り出された試料から分離する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】未処理の、並びに2つの濃度のMCMBビーズ付加アガロースゲル(ゲル1mL当たり30μgのMCMB及びゲル1mL当たり65μgのMCMB、MCMB=モノカルボキシメチレンブルー)で「限外濾過」したDNA(<50bpのサイズ)の比較を示す棒グラフである。2つの濃度のMCMBビーズ付加アガロースゲルで結合したDNAのパーセンテージ。添加した総DNAのうちゲルに結合したDNAの%を示す。黒色=MCMB-アガロース;灰色=対照(ゲル上にMCMBが存在しない)。
図1B】未処理の、並びに2つの濃度のMCMBビーズ付加アガロースゲル(ゲル1mL当たり30μgのMCMB及びゲル1mL当たり65μgのMCMB、MCMB=モノカルボキシメチレンブルー)で「限外濾過」したDNA(<50bpのサイズ)の比較を示す棒グラフである。DNAと結合するゲルの容量(ゲル1mL当たりのDNAのμg数)を示す。黒色=MCMB-アガロース;灰色=対照(ゲル上にMCMBが存在しない)。
図2A】異なるサイズのDNAを使用した、DNAと結合するゲルの容量を示すグラフである。添加した総DNAのうちゲルに結合したDNAの%。白色=アミノ基を有さないネイティブなアガロースビーズ;黒色=アミノ官能化されたアガロースビーズ;灰色=DNA、<50bp又は<2000bpのいずれかの濃度。
図2B】異なるサイズのDNAを使用した、DNAと結合するゲルの容量を示すグラフである。DNAと結合するゲルの容量(ゲル1mL当たりのDNAのμg数)。白色=アミノ基を有さないネイティブなアガロースビーズ;黒色=アミノ官能化されたアガロースビーズ;灰色=DNA、<50bp又は<2000bpのいずれかの濃度。
図3A】ネイティブなアガロースビーズを充填した1mLのFPLCカラムを通過する異なる濃度(各50μL)でのDNAの260nmにおけるピーク強度及び伝導率を示すグラフである。グラフは、DNA濃度3.3mg/mLでの結果を示す。
図3B】ネイティブなアガロースビーズを充填した1mLのFPLCカラムを通過する異なる濃度(各50μL)でのDNAの260nmにおけるピーク強度及び伝導率を示すグラフである。グラフは、DNA濃度1.5mg/mLでの結果を示す。
図3C】ネイティブなアガロースビーズを充填した1mLのFPLCカラムを通過する異なる濃度(各50μL)でのDNAの260nmにおけるピーク強度及び伝導率を示すグラフである。グラフは、DNA濃度0.33mg/mLでの結果を示す。
図3D】ネイティブなアガロースビーズを充填した1mLのFPLCカラムを通過する異なる濃度(各50μL)でのDNAの260nmにおけるピーク強度及び伝導率を示すグラフである。グラフは、DNA濃度0.15mg/mLでの結果を示す。
図4】アミノ-アガロースビーズ又はネイティブな改変されていないアガロースビーズを充填した1mLのFPLCカラムへのDNA(TRIS中2.5mg/mL、各50μL)のローディングの結果(強度及び伝導率)を示すグラフである。
図5】MCMBアガロースビーズを充填した1mLのFPLCカラムへのDNA(TRIS中2.5mg/mL、各50μL)のローディングの結果(強度及び伝導率)を示すグラフである。
図6】スピンカラム中、ゲル100μlに対してds DNA約11~13μgを有するローディング溶液を用いた、カップリングしたアガロース-親和性リガンド樹脂へのds DNAの結合を示す棒グラフである。
図7】スピンカラム中、ゲル100μlに対してds DNA約12μgを有するローディング溶液を用いた、カップリングしたアガロース-YO-C3樹脂へのds DNAの結合を示す棒グラフである。
図8】スピンカラム中、ゲル100μlに対してds DNA約12μgを有するローディング溶液を用いた、カップリングしたアガロース-TO-C3樹脂へのds DNAの結合を示す棒グラフである。
図9】スピンカラム中、ゲル100μlに対してds DNA約12μgを有するローディング溶液を用いた、カップリングしたアガロース-TO-C6樹脂へのds DNAの結合を示す棒グラフである。
図10】スピンカラム中、ゲル100μlに対してds DNA約18μgを有するローディング溶液を用いた、カップリングしたアガロース-Mono-Hoechst-C3樹脂へのds DNAの結合を示す棒グラフである。
図11】スピンカラム中、ゲル100μlに対してds DNA約12μgを有するローディング溶液を用いた、カップリングしたアガロース-L-Hoechst-C3樹脂へのds DNAの結合を示す棒グラフである。
図12】スピンカラム中、ゲル100μLに対してds DNA13.6μgを有するローディング緩衝剤の1バッチ当たりのds DNAの結合を示す棒グラフである。
図13】スピンカラム中、ゲル100μLに対してss DNA22.1μgを有するローディング緩衝剤の1バッチ当たりのss DNAの結合を示す棒グラフである。
図14】種々の樹脂を用いたアルブミンの結合容量を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
生物学的供給流、例えば、清澄化されていない(すなわち、濾過されていない)細胞培養物から標的高分子を捕捉及び取り出す方法が本明細書に開示される。ある実施形態では、主溝結合物質、副溝結合物質、又はインターカレートリガンドでありうる特別な捕捉用リガンド(まとめて「親和性リガンド」と称される)を、例えば共有結合によって固体表面に結合させることができ、それを使用して、DNA、RNA、並びにオリゴヌクレオチドを含有する脂質及びタンパク質等の標的高分子を細胞培養物供給流等の複雑な混合物から不可逆的に又は可逆的に捕捉する。この方法は、これらに限定されないが、クロマトグラフィー、濾過、蒸留及び蒸発を含む分離科学において使用される。クロマトグラフィーは、これらに限定されないが、放射状流クロマトグラフィー、軸方向クロマトグラフィー、バッチクロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、膨張層クロマトグラフィー、擬似移動層クロマトグラフィー、向流クロマトグラフィー、及び高圧高性能液体クロマトグラフィーを含む、クロマトグラフィーの任意の公知の方法を含む。濾過は、これらに限定されないが、膜濾過、中空糸濾過、及び接線流/クロスフロー濾過を含む、当技術分野で任意の公知の濾過方法を含む。
【0017】
親和性リガンド(標的分子との規定された相互作用を示す分子)を使用して核酸を濾過し、分離し、単離し、取り出し及び/又は精製する方法が本明細書に開示される。方法は、(a)標的高分子と結合する親和性リガンドを選択する工程と、(b)親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、(c)カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、(d)標的高分子を含有する試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、容器中で標的高分子が親和性リガンドに結合する、工程と、(e)標的高分子に結合した、カップリングした表面-親和性リガンドを、標的高分子が取り出された試料から分離する工程とを含む。場合により、方法は、(f)溶出液、すなわち、標的高分子が取り出された試料を収集する工程を更に含む。
【0018】
親和性リガンドを表面に、親和性リガンドが標的高分子と相互作用及び結合することができるように不可逆的に固定化及び接着することができる。標的高分子は核酸又はその断片でありうる。核酸は、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、二本鎖メッセンジャーRNA、一本鎖メッセンジャーRNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、ウイルス、オリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオシドを含有するタンパク質、オリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオシドを含有する脂質、他のオリゴヌクレオチド若しくはオリゴヌクレオシド、これらの任意の断片、又はこれらの任意の組合せでありうる。標的高分子は、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、二本鎖メッセンジャーRNA、一本鎖メッセンジャーRNA、これらの任意の断片、又はこれらの任意の組合せでありうる。
【0019】
親和性リガンドは、副溝結合物質、主溝結合物質又はインターカレートリガンドでありうる。各濾過及び/又は精製プロセスに使用される親和性リガンドは、標的高分子以外の分子との交差反応性(望ましくない結合)が減少又は排除されるように個別に選択される。親和性リガンドは、副溝結合物質、主溝結合物質又はインターカレートリガンドであることが公知の任意の分子、及び、標的高分子に対してさらなる選択性を有することも認められる、副溝結合物質、主溝結合物質又はインターカレートリガンドであることが公知のさらなる任意の分子でありうる。
【0020】
ある実施形態では、大きな鎖のDNAと結合し、且つ、タンパク質との最低限の顕著な相互作用を有する親和性リガンドを選択することができる。二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、二本鎖メッセンジャーRNA、一本鎖メッセンジャーRNA、これらの任意の断片、又はこれらの任意の組合せと結合し、且つ、他のオリゴヌクレオチドとの最低限の顕著な相互作用を有する親和性リガンドを選択することができる。
【0021】
表面は、例えばイオン交換基、又は疎水性相互作用基を含むように場合によって官能化されている固体表面でありうる。表面は、エポキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、ハロゲン化物基又はアミノ基で終わるスペーサー等の官能化された基を有しうる。スペーサーは、固体表面に付着した原子、好ましくは1個~30個、又は1個~20個の原子の鎖を指す。スペーサーは、エステル、カルボキシル基、又は炭素鎖(例えば、アルキル)を含有しうる。スペーサーは、(CH2CH2O)nCH2CH2-(式中、n=1~10)等のポリエチレングリコール部分を含有しうる。スペーサーは、C1~20アルキルアミノ、C1~12アルキルアミノ、又はC2~12アルキルアミノでありうる。反応後、スペーサーは固体表面と親和性リガンドの間に入り、それらを接続する。
【0022】
固体表面は、場合により上記の通り官能化されている、ビーズ、膜、粒子、メッシュ、ポリマー、ガラス、金属、セラミック、シリカ、多糖、モノリス、又はクロマトグラフィーにおいて樹脂として使用される任意の他の材料でありうる。ビーズは、アガロースビーズ又はアミノ-アガロースビーズでありうる。膜は、Sartobind(登録商標)Aldehyde A4 Sheetでできたもの等のアルデヒド膜でありうる。モノリスは、エポキシ又はエチレンジアミン(EDA)-AEX/Activatedでありうる。
【0023】
表面は、使用される方法がバッチクロマトグラフィーの場合には膜でありうる。表面は、使用される方法が軸方向又は放射状流クロマトグラフィーである場合にはビーズでありうる。
【0024】
親和性リガンドは表面に結合され、標的高分子を含有する試料又は供給流が親和性リガンドと接触すると親和性リガンドは標的高分子を捕捉する。親和性リガンドは当技術分野で公知の任意の手段によって表面に結合されうる。例としては、これらに限定されないが、N-ヒドロキシスクシンイミドにより活性化されたカルボン酸を使用するアミド結合形成、アルデヒド/シッフ塩基との反応、エポキシ基との反応、クリックケミストリー、及びマイケル付加を介する結合形成が挙げられる。
【0025】
結合した親和性リガンドは、再使用することもでき、一度使用した後に廃棄することもできる、すなわち、使い捨て製品であってよい。規制上の目的で、各使用後の清浄後に任意の残留夾雑物が残っているかどうかに関する疑義がないようにディスポーザブルの使い捨て製品が好ましい場合がある。更に、清浄は非常に高価であり、また、技術的に難しい場合がある。
【0026】
そのように、親和性リガンドが標的高分子と選択的に結合し、それにより、標的高分子を実質的に含まない溶出液がもたらされる。場合により、根拠がある場合、回収並びにさらなる実験及び/又は処理のために標的高分子を残りの試料から単離する。親和性リガンドは標的高分子と選択的に結合することができるが、タンパク質には結合しない。例えば、DNAの固定化及び単離は、インターカレート分子としてのカップリングした表面-親和性リガンド、例えば、改変メチレンブルー、又は改変Hoechst色素とカップリングしたアミノ-アガロースビーズを使用して行うことができる。インキュベーション後、DNAが親和性リガンドに結合し、それを試料から分離することができる。
【0027】
親和性リガンドからのDNAの回収は、シリカ又はガラス等の固相間のイオン性の相互作用に基づくものでありうる。通常イオン強度が高く、pKaが表面シラノール基のpKa以下である結合性緩衝剤により、DNAを結合させることと、同時に不純物を洗浄することの両方が可能になる。次いで、DNAを、一般には、低イオン強度の緩衝剤を使用して溶出させる。不都合は合成カラムの固相からDNAを除去するために使用される切断用緩衝剤のpHが高いことである。pHが高いことにより、シリカが溶解し、最後にはDNA中の不純物になる可能性がる。
【0028】
標的高分子の一部又は全部が供給流から枯渇又は取り出された後、溶出液は、約5質量%未満の標的高分子、約2質量%未満の標的高分子、約1質量%未満の標的高分子、約0.5質量%未満の標的高分子、約0.2質量%未満の標的高分子、約0.1質量%未満の標的高分子、約0.05質量%未満の標的高分子、約0.01質量%未満の標的高分子、約0.005質量%未満の標的高分子、又は約0.001質量%未満の標的高分子を含有しうる。
【0029】
別のやり方で説明すると、親和性リガンドは、試料中の標的高分子の少なくとも約50wt%、少なくとも約60wt%、少なくとも約70wt%、少なくとも約80wt%、又は少なくとも約85wt%と結合しうる。親和性リガンドは、試料中の標的高分子の約50wt%~約99wt%、試料中の標的高分子の約60wt%~約98wt%、又は試料中の標的高分子の約70wt%~約98wt%と結合しうる。
【0030】
親和性リガンドは、標的高分子との副溝結合又は主溝結合を示しうる。副溝結合は、ファンデルワールス相互作用、水素結合、及び静電相互作用によるATリッチ配列の狭い副溝との選択的結合を特徴とする。Reddyら、「Recent developments in sequence selective minor groove DNA effectors」、Curr. Med. Chem.、8(2001)、475~508頁。主溝結合は、ヘリックスリガンドの骨格並びに水素結合との静電相互作用を特徴とする。Eckel, R.ら、「Identification of Binding Mechanisms in Single Molecule-DNA Complexes」、Biophys. J.、2003年9月、85(3): 1968-1973。
【0031】
親和性リガンドは、標的高分子とのインターカレーションを示しうる。インターカレーションは、材料への分子(又はイオン)の可逆的挿入である。ある実施形態では、標的高分子がDNAである場合、親和性リガンドは、DNAと、適当なサイズ及び化学性質のリガンドがDNAの塩基対の間にフィットするようにインターカレートすることによってDNAと相互作用する。これらの親和性リガンドは、大部分が多環、芳香族、及び平面である。親和性リガンドは色素でありうる。親和性リガンドは、標的高分子及び選択された固体表面に基づいて選択される。親和性リガンドは配列特異的なものではない。ある特定の実施形態では、親和性リガンドは荷電しておらず、場合により、供給流中のいかなるタンパク質にも結合しない。親和性リガンドが荷電している場合、リガンドは、タンパク質又は他の物質に無差別に結合しうる。ある実施形態では、標的高分子がDNAである場合、親和性リガンドは、DNAと選択的に結合し、場合によりタンパク質とは結合しない、改変メチレンブルー、改変Hoechst色素、改変チアゾールオレンジ、又は改変オキサゾールイエローでありうる。
【0032】
標的高分子を試料、反応、又は供給流から単離し、隔離し、取り出し、富化し又は精製するために、親和性リガンドを改変して、任意の固体表面(すなわち、ビーズ、膜、粒子、メッシュ、ネット、ポリマー、ガラス、金属、セラミック、シリカ、多糖、モノリス、又は他の固相)に結合することができ、1つ又は複数の標的高分子に結合することができる。表面がビーズである場合、親和性リガンドにも結合することができる、クロマトグラフィーに使用されることが公知の任意のビーズを使用することができる。ビーズは、官能化されたガラス又はアガロース、例えば、改変メチレンブルー、改変Hoechst色素、又はベンゾチアゾール-キノリン若しくはベンゾキサゾール-キノリンの改変シアニン、例えば、改変チアゾールオレンジ、改変オキサゾールイエローに結合したガラス又はアガロースでありうる。ビーズは、アルデヒド基、カルボン酸基又はエポキシ基を有するガラス又はアガロース、例えば、改変親和性リガンドのアルキルアミノに結合したガラス又はアガロースでありうる。表面が膜である場合、膜は改変メチレンブルー、改変Hoechst色素又はベンゾチアゾール-キノリン若しくはベンゾキサゾール-キノリンの改変シアニン、例えば、改変チアゾールオレンジ、改変オキサゾールイエローに結合することができる。
【0033】
親和性リガンドを改変するために、第1に、リンカー又はスペーサー基の最適な付着点(例えば、リガンドが標的高分子を認識する部位に干渉しない付着点)を分析又は同定し、第2に、リガンド上の望ましくない及び制御されない基を防止し、リンカー基の一方の末端が固体表面に化学的に結合するための適当な官能基を有することを確実にするために、適当な長さのリンカー基を当技術分野で公知の標準の合成技法を利用して導入するための合成戦略を開発する。
【0034】
親和性リガンドは、官能化された表面に化学的に結合するように改変されている任意のインターカレーター、副溝結合物質又は主溝結合物質でありうる。親和性リガンドは、表面に結合し、標的高分子を捕捉することができる、アクリジン、ポリイミジゾール、インドール、ピロール、フェナントリジン、ベンゾチアゾール-キノリン又はベンゾキサゾール-キノリンのシアニン、フェノキサジン、フェノチアジン、アントラキノン、フラノクマリン、これらの任意の改変体、又は任意の他のリガンドから選択することができる。
【0035】
本開示に従って有用なアクリジン構造としては、GelGreen(10,10'-(6,22-ジオキソ-11,14,17-トリオキサ-7,21-ジアザヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(3,6-ビス(ジメチルアミノ)アクリジン-10-イウム)ヨージド)、アクリジンオレンジ(N,N,N',N'-テトラメチルアクリジン-3,6-ジアミン)及びその誘導体、アムサクリン(シノニム: m-AMSA、アクリジニルアニシジドとしても公知)、並びにプロフラビン(プロフラビン及びジアミノアクリジン;アクリジン-3,6-ジアミンとも称される)を含むアクリフラビン(3,6-ジアミノ-10-メチルアクリジン-10-イウムクロリド)及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本開示に従って有用なとしてポリイミダゾール、インドール、及びピロールは、DNA/RNAAにインターカレートすることが公知の「Hoechst」色素(すなわち、Hoechst 33258、Hoechst 33342(別名ビスベンズイミダゾール)、及びHoechst 34580)(https://en.wikipedia.org/wiki/Hoechst_stain)、DAPI(4',6ジアミジノ-2フェニルインドール、DNAのアデニン-チミンリッチ領域に強力に結合する蛍光染色剤である)、レキシトロプシン、ネトロプシン(コンゴシジン又はシナノマイシンとも称されるポリアミド)、並びにジスタマイシン(副溝結合物質として作用するポリアミド抗生物質であり、ヘルペレチン、スタリマイシンとしても公知である)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
レキシトロプシンは、半合成DNA結合性リガンドファミリーのメンバーである。レキシトロプシンはDNAの副溝と結合しうる。レキシトロプシンはDNAと1:1及び2:1のストイキオメトリーで複合体を形成する。レキシトロプシンは以下の構造:
【0038】
【化1】
【0039】
を有しうるが、これらに限定されない。
【0040】
本開示に従って有用なフェナントリジン構造としては、フェナントリジン及びその誘導体、例えば、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、プロピジウムモノアジド、及びGelRed(5,5'-(6,22-ジオキソ-11,14,17-トリオキサ-7,21-ジアザヘプタコサン-1,27-ジイル)ビス(3,8-ジアミノ-6-フェニルフェナントリジン-5-イウム)ヨージド)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本開示に従って有用なベンゾチアゾール-キノリン及びベンゾキサゾール-キノリン構造のシアニンとしては、「Sybr Green」ファミリーの色素(Sybr Green I(N',N'-ジメチル-N-[4-[(E)-(3-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-2-イリデン)メチル]-1-フェニルキノリン-1-イウム-2-イル]-N-プロピルプロパン-1,3-ジアミン)、Sybr Green II、Sybr Gold、及びSybr Safe((Z)-4-((3-メチルベンゾ[d]チアゾール-2(3H)-イリデン)メチル)-1-プロピルキノリン-1-イウム 4-メチルベンゼンスルホン酸)を含むが、これらに限定されない)、TOTO(商標)ファミリーの色素及びその誘導体、YOYO(商標)ファミリーの色素及びその誘導体、YO-PRO(商標)ファミリーの色素及びその誘導体、TO-PRO(商標)ファミリーの色素及びその誘導体、POPO(商標)ファミリーの色素及びその誘導体、BOBO(商標)ファミリーの色素及びその誘導体、LOLO(商標)ファミリーの色素及びその誘導体、JOJO(商標)ファミリーの色素及びその誘導体、(ThermoFisher Scientific、Molecular probes Handbook、A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies、Chapter 8、Nucleic Acid Detection and Analysis、11th Ed(2010)、以下で入手可能:https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=3&ved=2ahUKEwiL5NP478fdAhVqh4sKHffbCFkQFjACegQICBAC&url=http%3A%2F%2Fwww.thermofisher.com%2Fcontent%2Fdam%2FLifeTech%2Fglobal%2Ftechnical-reference-library%2FMolecular%2520Probes%2520Handbook%2Fchapter-pdfs%2FCh-8-Nucleic-Acid-Detection-Analysis.pdf&usg=AOvVa
w2Ufpb7SkFbbWTbbzAwdgtmを参照されたい)、チアゾールオレンジ及びその誘導体、オキサゾールイエロー及びその誘導体、Pico Green及びその誘導体
【0042】
【化2】
【0043】
、並びにLightCycler(登録商標)Green及びLightCycler(登録商標)Redファミリーの色素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本開示に従って有用なフェノキサジンとしては、7-アミノアクチノマイシンD、アクチノマイシンD及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本開示に従って有用なフェノチアジンとしては、これらに限定されないが、ジカルボキシメチレンブル-NHSエステル(DCMB-SE)、及びモノカルボキシメチレンブルー(MCMB)を含む、メチレンブルー(メチルチオニニウムクロリドとしても公知)及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
【化3】
【0047】
本開示に従って有用なアントラキノン構造としては、アントラサイクリン及びその誘導体、ダウノルビシン(ダウノマイシンとしても公知)、及びドキソルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
ミトキサントロン、ロソキサントロン(アントラキノンアントラピラゾール抗悪性腫瘍剤であり、ミトキサントロンの類似体である)、ピキサントロン、ピラルビシン及びその他のアントラキノン類似体(例えば、アントラキノン-2-アミドフェニルカルボン酸NHSエステル)
【0049】
本開示に従って有用なフラノクマリン構造としては、ソラレン、アンゲリシン、ベルガモチン((E)-4-[(3,7-ジメチル-2,6-オクタジエニル)オキシ]-7H-フロ[3,2-g][1]ベンゾピラン-7-オン)及びその誘導体、並びにアミケリン(C18H21NO5)及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本開示に従って有用な他の親和性リガンドとしては、DNAと主としてイオン性相互作用を有するものであるがメチルグリーン(C27H35Cl2N3)、及び、エリプチシン(5,11-ジメチル-6H-ピリド[4,3-b]カルバゾール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
親和性リガンドは、表面に結合し、標的高分子を捕捉することができる、上記のアクリジン、ポリイミジゾール、インドール、ピロール、フェナントリジン、ベンゾチアゾール-キノリン又はベンゾキサゾール-キノリンのシアニン、フェノキサジン、フェノチアジン、アントラキノン、フラノクマリン、又は他のリガンドのいずれであってもよい。親和性リガンドは、a)リンカー基を化合物若しくは色素にすでに存在している官能基に付着させ、次いで、そのリンカー基を表面に結合させること、又はb)化合物若しくは色素を、リンカー基を含むように化学的に変更し、次いでそのリンカー基を表面に結合させることのいずれかによって改変されている、インターカレーター、副溝結合物質、主溝結合物質、又はこれらの組合せでありうる。リンカー基は、エポキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、ハロゲン化物基又はアミノ基で終わるスペーサーを含有する任意の反応性リンカーでありうる。スペーサーは、親和性リガンドに付着した原子、好ましくは1個~30個、又は1個~20個の原子の鎖を指す。スペーサーは、エステル、カルボキシル基、又は炭素鎖を含有しうる。スペーサーは、(CH2CH2O)nCH2CH2-(式中、n=1~10)等のポリエチレングリコール部分を含有しうる。スペーサーは、C1~20アルキルアミノ、C1~12アルキルアミノ、又はC2~12アルキルアミノでありうる。ハロゲン化物は、任意のハロゲンでありうる、又はF、CL、Br又はIでありうる。反応後、スペーサーは表面と親和性リガンドの間に入り、それらを接続する。リンカー基は、C2~12アルキルアミノ、又はC2~8アルキルアミノ等のアルキルアミノ基でありうる。
【0052】
ある実施形態では、親和性リガンドは、親和性リガンドを表面に結合させる(又は繋ぐ)ことができるリンカー基を含むように改変されているメチレンブルー、Hoechst色素、チアゾールオレンジ、Sybr Green、又はオキサゾールイエローである。親和性リガンドは、例えば、エポキシ基、カルボキシ基、ハロゲン化物基又はアミノ基で終わるスペーサーのリンカー基を含むように改変されたHoechst色素でありうるが、これらに限定されない。親和性リガンドは、化合物の左側又は右側がC2~12アルキルアミン、又はC2~8アルキルアミン等のアルキルアミンで改変されたHoechst色素でありうる。親和性リガンドは、例えば、エポキシ基、カルボキシ基、ハロゲン化物基又はアミノ基で終わるスペーサーのリンカー基を含むように改変されたチアゾールオレンジでありうるが、これらに限定されない。親和性リガンドは、C2~12アルキルアミン、又はC2~8アルキルアミン等のアルキルアミンで改変されたチアゾールオレンジでありうる。親和性リガンドは、例えば、エポキシ基、カルボキシ基、ハロゲン化物基又はアミノ基で終わるスペーサーのリンカー基を含むように改変されたオキサゾールイエローでありうるが、これらに限定されない。親和性リガンドは、C2~12アルキルアミン、又はC2~8アルキルアミン等のアルキルアミンで改変されたオキサゾールイエローでありうる。親和性リガンドは、モノカルボキシメチレンブルー等の改変メチレンブルーでありうる。モノカルボキシメチレンブルーを創出するためには、表面に付着させるための繋ぎとして作用するようにカルボキシ基をメチレンブルーの片側に導入し、付加する。
【0053】
親和性リガンドは、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,980,855号の第12欄に開示されているCDPI3TFPエステルでありうる:
【0054】
【化4】
【0055】
この化合物において、テトラフルオロベンジルは反応性カルボキシ基であり、例えば、ビーズ上のアミノ基と反応してアミド結合を形成する。
【0056】
親和性リガンドは、アミノ基を含むように改変されているSybr Green I等の改変Sybr Green Iでありうる。改変Sybr Green Iを合成するための1つの手段は部分的に、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,658,751号及び米国特許出願公開第2010/0233710号に開示されている通り、以下の通りである:
【0057】
【化5】
【0058】
ここで、Sybr Green Iは、表面に持続的に共有結合により結合するアミノ基を含むように改変されている。例えば、アミノ基が、NHSエステル試薬を使用することにより活性化されているエポキシ基又はカルボキシ基を含有するビーズに結合し、カルボキシ基とアミノ基を反応させてアミド基を形成する。
【0059】
本開示に従って利用されるC3アミン改変TO(1)又はYO(2)は、以下の合成スキームに従って作製することができる:
【0060】
【化6】
【0061】
1-(3-アミノプロピル)-4-{[3-メチル-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾキサゾール-2-イリデン]メチル}キノリン-1-イウムクロリド(2)は、本明細書ではYO-C3とも称されうる。1-(3-アミノプロピル)-4-{[3-メチル-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イリデン]メチル}キノリン-1-イウムクロリド(1)は、本明細書ではTO-C3とも称されうる。
【0062】
親和性リガンドは、親和性リガンド(又はこの場合Hoechst色素)を表面に繋ぐことができるリンカー基が付加されている、Hoechstビスベンズイミダゾールファミリーの色素の化合物である改変Hoechst色素でありうる。Hoechst色素は、Hoechst 33258、Hoechst 33342、若しくはHoechst 34580、又はモノHoechst色素(すなわち、通常の2つのベンズイミダゾール環系とは対照的に1つのベンズイミダゾール環を含有する)でありうるが、これらに限定されない。改変は、分子の右側、分子の左側、又は両方でありうる。Hoechst 33342をヒドロキシベンズアルデヒド側(左側)においてC2-アミン基、C3-アミン基又はC4-アミン基で改変することができる。Hoechst 33342をピペラジン側(右側)においてC2-アミン基、C3-アミン基又はC4-アミン基で改変することができる。
【0063】
改変Hoechst 33342を合成するための1つの手段は、部分的に、Wiederholt, K.ら、DNA-Tethered Hoechst Groove-Binding Agent: Duplex Stabilization and Fluorescence Characteristics、J. Am. Chem. Soc.、1996、118、7055-7062頁に開示されている通り、以下の通りである:
【0064】
【化7】
【0065】
ここで、Hoechst 33342は、表面に持続的に共有結合により結合するアミノ基(分子の左側にある)を含むように改変されている。この化合物(10)、3-[4-(5-(4-メチル-1-ピペラジニル)-(2,5'-ビス-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]-フェノキシ-エチルアミンは、本明細書ではL-Hoechst-C2とも称されうる。例えば、アミノ基が、NHSエステル試薬を使用することにより活性化されているエポキシ基又はカルボキシ基を含有するビーズに結合し、カルボキシ基とアミノ基を反応させてアミド基を形成する。
【0066】
本開示に従って利用される別の改変Hoechst 33342は、例えば以下の合成スキームによって作製されるヒドロキシベンズアルデヒド側(左側)のC3アミンである:
【0067】
【化8】
【0068】
この化合物(17)、3-[4-(5-(4-メチル-1-ピペラジニル)-(2,5'-ビス-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]-フェノキシ-プロピルアミンは、本明細書ではL-Hoechst-C3とも称されうる。
【0069】
本開示に従って利用される別の改変Hoechst 33342は、例えば以下の合成スキームによって作製されるピペラジン側(右側)のC2アミンである:
【0070】
【化9】
【0071】
この化合物(12)、2'-(4-エトキシフェニル)-6-(4-アミノエチル-1-ピペラジニル)-2,6'-ビス-1H-ベンズイミダゾールは、本明細書ではR-Hoechst-C2とも称されうる。
【0072】
改変モノHoechst、又はモノ-イミダゾールHoechstをヒドロキシベンズアルデヒド側(左側)においてC2-アミン基、C2-アミン基又はC4-アミン基で改変することができる。本開示に従って利用される改変モノHoechstは、例えば以下の合成スキームに従って作製されるヒドロキシベンズアルデヒド側(左側)のC3-アミンである:
【0073】
【化10】
【0074】
この化合物(7)、3-[4-(6-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]-フェノキシ-プロピルアミンは、本明細書ではMono-Hoechst-C3とも称されうる。
【0075】
メチレンブルーをビーズに結合させる場合(例えば、モノカルボキシメチレンブルーをアミノ-アガロースビーズに結合させる等)、メチレンブルーは正に荷電しているので、DNAと結合し、また、ウシ血清アルブミン(BSA)(球状タンパク質)等のタンパク質とも結合することが予測される。しかし、驚いたことに、メチレンブルーはDNAに結合するがタンパク質には結合しないことが見いだされたので、メチレンブルーがクロマトグラフィーにおいてDNAの除去のためによく機能することが見いだされた。それにより、供給流からタンパク質まで取り出すことなくDNAを取り出し、単離することができる。DNAをメチレンブルーから溶出させ、場合により、さらなる試験及び/又は処理のために回収することができる。
【0076】
カップリングした表面-親和性リガンドがアガロースビーズに改変メチレンブルーを結合させたものである場合、試料中の標的高分子の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約70%~約95%が親和性リガンドに結合しうる。標的高分子がDNAである場合、改変メチレンブルーは、試料中のDNAの約70%~約85%又は約70%~約80%と結合しうる。
【0077】
カップリングした表面-親和性リガンドがアガロースビーズに改変Hoechst色素を結合させたものである場合、試料中の標的高分子の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約70%~約99%、約80%~約99%、約85%~約98%が親和性リガンドに結合しうる。標的高分子がDNAである場合、改変Hoechst色素は、試料中のDNAの約70%~約99%、約80%~約99%、又は約85%~約98%と結合しうる。標的高分子がDNAである場合、ビーズ又は膜とカップリングしたMono-Hoechst-C2~6、L-Hoechst-C2~6又はR-Hoechst-C2~6は、試料中のDNAの約70%~約99%、約80%~約99%、又は約85%~約98%と結合しうる。標的高分子がDNAである場合、ビーズとカップリングしたMono-Hoechst-C3、L-Hoechst-C3又はR-Hoechst-C3は、試料中のDNAの約70%~約99%、約80%~約99%、又は約85%~約98%と結合しうる。
【0078】
カップリングした表面-親和性リガンドがアガロースビーズに改変チアゾールオレンジを結合させたものである場合、試料中の標的高分子の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約60%~約99%、約70%~約99%、約70%~約95%が親和性リガンドに結合しうる。標的高分子がDNAである場合、改変チアゾールオレンジは、試料中のDNAの約60%~約95%、約70%~約90%、又は約75%~約85%と結合しうる。標的高分子がDNAである場合、ビーズ又は膜とカップリングしたTO-C2~8は、試料中のDNAの約60%~約95%、約70%~約90%、又は約75%~約85%と結合しうる。標的高分子がDNAである場合、ビーズとカップリングしたTO-C3~6は、試料中のDNAの約60%~約95%、約70%~約90%、又は約75%~約85%と結合しうる。
【0079】
カップリングした表面-親和性リガンドがアガロースビーズに改変オキサゾールイエローを結合させたものである場合、試料中の標的高分子の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約60%~約99%、約70%~約99%、約70%~約95%が親和性リガンドに結合しうる。標的高分子がDNAである場合、改変オキサゾールイエローは、試料中のDNAの約60%~約98%、約70%~約95%、又は約80%~約95%と結合しうる。標的高分子がDNAである場合、ビーズ又は膜とカップリングしたYO-C2~8は、試料中のDNAの約60%~約98%、約70%~約95%、又は約80%~約95%と結合しうる。標的高分子がDNAである場合、ビーズとカップリングしたYO-C3は、試料中のDNAの約60%~約98%、約70%~約95%、約80%~約95%、又は約85%~約95%と結合しうる。
【0080】
親和性リガンドを表面とカップリングさせる場合、固体表面の体積当たりの親和性リガンドの数である密度(μg/mL)を算出することができる。密度が大きいほど、標的高分子との結合に利用可能な親和性リガンドが多くなる。色素リガンド密度は、約5μg/mL~約50μg/mL、又は約6μg/mL~約45μg/mLにわたりうる。
【0081】
カップリングした表面-親和性リガンドの作製後、それを、選択された分離プロセスにおいて使用するために容器に入れる。ガラス、プラスチック、又は金属等の当技術分野において使用することが公知の任意の材料でできたカラム、器、バット、ボウル、シリンダー、円錐形の器等の任意の容器を本開示に従って使用することができる。容器は、実行される分離科学のプロセスで機能するように選択することだけが必要である。
【0082】
カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れた後、本開示の方法は、標的高分子及び1つ又は複数の核酸と他の夾雑物の任意の他の組合せを含有する試料を、容器に、試料とカップリングした表面-親和性リガンドが接触し(例えば、混合される又は組み合わさり)、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせるように導入する工程を含み、ここで、標的高分子は親和性リガンドに結合する。標的高分子を含有する試料又は供給流が親和性リガンドと一緒にインキュベートされると、親和性リガンドが表面に結合し、標的高分子を捕捉する。試料と親和性リガンドは、標的高分子が親和性リガンドを見つけ、次いでそれに結合するために必要な時間量である滞留時間の間インキュベートされなければならない、すなわち、接触したままでなければならない。滞留時間は、結合反応が遅い場合には長くなり、標的高分子と親和性リガンドの結合反応が速い場合には短くなる。当技術分野で容易に理解される通り、結合が起こるのに必要な時間はカップリングの結合動態に基づき、各カップリングで異なりうる。滞留時間は、約0.1分~約180分、約0.1分~約120分、又は約0.1分~約90分でありうる。
【0083】
滞留時間後、標的高分子に結合した、カップリングした表面-親和性リガンドを、標的高分子が取り出された試料から当技術分野で公知の任意の手段によって分離することができる。例えば、クロマトグラフィーを使用する場合、固体をカラム中に残して、液体試料又は溶出液をカラムから流出させることができる。バッチクロマトグラフィーを使用する場合、試料を流出させることもでき、固体を容器から取り出すこともできる。
【0084】
この分離後、当技術分野で公知の任意の手段によって標的高分子をカップリングした表面-親和性リガンドから溶出させ、さらなる試験及び/又は処理のために回収することができる。これは、オリゴヌクレオチドの親和性リガンド精製と称することができる(夾雑物の除去とは対照的に)。
【0085】
標的高分子の単離及び回収後、数量化(すなわち、試料中の標的高分子の量の決定)を当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。
【0086】
別の実施形態は、標的高分子及び他の夾雑物、核酸、オリゴヌクレオシド、又はこれらの組合せを含有する試料から標的高分子を単離し、回収する方法である。方法は、(a)標的高分子に結合する親和性リガンドを選択する工程と、(b)親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、(c)カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、(d)標的高分子を含有する試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、容器中で標的高分子が親和性リガンドに結合する、工程と、(e)残りの試料を、標的高分子とカップリングした、カップリングした表面-親和性リガンド(すなわち、固体)から分離する工程とを含む。
【0087】
この分離後、当技術分野で公知の任意の手段によって標的高分子をカップリングした表面-親和性リガンドから溶出させ、さらなる試験及び/又は処理のために回収することができる。これは、オリゴヌクレオチドの親和性リガンド精製と称することができる(夾雑物の除去とは対照的に)。
【0088】
DNA及び他の核酸又はオリゴヌクレオチドを含有する試料からDNAを単離し、取り出すための方法であって、(a)DNAと結合する親和性リガンドを選択する工程と、(b)親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、(c)カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、(d)試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、DNAが親和性リガンドに結合する、工程と、(e)DNAに結合した、カップリングした表面-親和性リガンドを、DNAが取り出された試料から分離する工程とを含む、方法も開示される。DNAは一本鎖DNA又は二本鎖DNAでありうる。DNAを試料から単離し、取り出す方法は、カップリングした表面-親和性リガンドからDNAを溶出させ、回収する工程を更に含みうる。
【0089】
RNA及び他の核酸又はオリゴヌクレオチドを含有する試料からRNAを単離し、取り出すための方法であって、(a)RNAと結合する親和性リガンドを選択する工程と、(b)親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、(c)カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、(d)試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、RNAが親和性リガンドに結合する、工程と、(e)RNAに結合した、カップリングした表面-親和性リガンドを、RNAが取り出された試料から分離する工程とを含む、方法も開示される。RNAはメッセンジャーRNAでありうる。RNAは一本鎖RNA又は二本鎖RNA又はメッセンジャーRNAでありうる。試料からRNAを単離し、取り出すための方法は、カップリングした表面-親和性リガンドからRNAを溶出させ、回収する工程を更に含みうる。
【0090】
別の実施形態は、二本鎖DNA及び他の核酸を含有する試料、例えば、一本鎖DNAと二本鎖DNAの両方を含有する試料から、二本鎖DNAと優先的に結合する親和性リガンドを選択することによって二本鎖DNAを単離し、取り出す方法である。方法は、(a)二本鎖DNAに結合する親和性リガンドを選択する工程と、(b)親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、(c)カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、(d)二本鎖DNAを含有する試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、容器中で二本鎖DNAが親和性リガンドに結合する、工程と、(e)残りの試料を、二本鎖DNAとカップリングした、カップリングした表面-親和性リガンドから、当技術分野で公知の任意の手段によって分離する工程とを含む。
【0091】
別の実施形態は、二本鎖RNA及び他の核酸を含有する試料、例えば、一本鎖RNAと二本鎖RNAの両方を含有する試料から、二本鎖RNAと優先的に結合する親和性リガンドを選択することによって二本鎖RNAを単離し、取り出す方法である。方法は、(a)二本鎖RNAに結合する親和性リガンドを選択する工程と、(b)親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、(c)カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、(d)二本鎖RNAを含有する試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、容器中で二本鎖RNAが親和性リガンドに結合する、工程と、(e)残りの試料を、二本鎖RNAとカップリングした、カップリングした表面-親和性リガンドから、当技術分野で公知の任意の手段によって分離する工程とを含む。
【0092】
別の実施形態は、一本鎖DNA及び他の核酸を含有する試料、例えば、一本鎖DNAと二本鎖DNAの両方を含有する試料から、一本鎖DNAと優先的に結合するが二本鎖DNAとは結合しない親和性リガンドを選択することによって一本鎖DNAを単離し、取り出す方法である。方法は、(a)一本鎖DNAに結合する親和性リガンドを選択する工程と、(b)親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、(c)カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、(d)一本鎖DNAを含有する試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、容器中で一本鎖DNAが親和性リガンドに結合する、工程と、(e)残りの試料を、一本鎖DNAとカップリングした、カップリングした表面-親和性リガンドから、当技術分野で公知の任意の手段によって分離する工程とを含む。
【0093】
別の実施形態は、一本鎖RNA及び他の核酸を含有する試料、例えば、一本鎖RNAと二本鎖RNAの両方を含有する試料から、一本鎖RNAと優先的に結合するが二本鎖RNAとは結合しない親和性リガンドを選択することによって一本鎖RNAを単離し、取り出す方法である。方法は、(a)一本鎖RNAに結合する親和性リガンドを選択する工程と、(b)親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、(c)カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、(d)一本鎖RNAを含有する試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、容器中で一本鎖RNAが親和性リガンドに結合する、工程と、(e)残りの試料を、一本鎖RNAとカップリングした、カップリングした表面-親和性リガンドから、当技術分野で公知の任意の手段によって分離する工程とを含む。
【0094】
別の実施形態は、他の型のRNA(二本鎖及び/又は一本鎖)及び/又はDNA(二本鎖及び/又は一本鎖)及び/又は他の核酸を含有する試料から、メッセンジャーRNAと優先的に結合するが試料中の他の核酸とは結合しない親和性リガンドを選択することによってメッセンジャーRNA(二本鎖及び/又は一本鎖)を単離し、取り出す方法である。方法は、(a)メッセンジャーRNAに結合する親和性リガンドを選択する工程と、(b)親和性リガンドを表面に結合させて、カップリングした表面-親和性リガンドを創出する工程と、(c)カップリングした表面-親和性リガンドを容器に入れる工程と、(d)メッセンジャーRNAを含有する試料をカップリングした表面-親和性リガンドに導入し、カップリングした表面-親和性リガンドを試料と滞留時間の間一緒にインキュベートさせる工程であって、容器中でメッセンジャーRNAが親和性リガンドに結合する、工程と、(e)残りの試料を、メッセンジャーRNAとカップリングした、カップリングした表面-親和性リガンドから、当技術分野で公知の任意の手段によって分離する工程とを含む。
【0095】
これらの実施形態(使用方法)と関連して使用される用語は、上記のものと同じ意味及び定義を有する。
【0096】
本発明の特徴及び利点を以下の実施例によってより詳細に示す。以下の実施例は例示目的で提示するものであり、本発明を限定するものとは決して解釈されるものではない。
【実施例
【0097】
(実施例1)
メチレンブルーとカップリングしたアガロースビーズを合成し、放射状流クロマトグラフィーに使用した。DNAとタンパク質の混合物を含有する試料をクロマトグラフィーカラムに入れ、必要な滞留時間の間放置するようにした後に流したところ、メチレンブルーとカップリングしたアガロースビーズが試料中のDNAの約80%と結合した。少量の材料(100μL)、並びに樹脂1mLのスケールアップのどちらでも、FPLCによって分析して、結合相互作用が明白に示された。同時に、DNAと陰性対照の非特異的結合は認められなかった。この新しく設計されたマトリックスを用いたDNAの飽和レベルはまだ決定されていない。しかし、>310mg/mLのDNA濃度を使用するとDNAの結合レベルのパーセンテージが低下する傾向を認めることができた。非常に小さなDNA断片では、DNAの結合パーセンテージの低下も引き起こされた。最小DNA断片を限外濾過(10kDa未満の排除)によって排除することを試みたところ、改善が検出された。
【0098】
次に、モノカルボキシメチレンブルーとカップリングしたアガロースビーズを、1mg/mLのBSA溶液と一緒にインキュベートして、インターカレート色素がタンパク質と相互作用するかどうかを決定した。メチレンブルーアガロース又は陰性対照のいずれを用いてもタンパク質の結合を検出することはできなかった。
【0099】
要約すると、大きな鎖のDNAと結合することができるがタンパク質とは相互作用しないメチレンブルーとカップリングしたアガロース樹脂が合成された。
【0100】
図1A及び図1Bは、未処理の、並びに2つの濃度のMCMBビーズ付加アガロースゲル(ゲル1mL当たり30μgのMCMB及びゲル1mL当たり65μgのMCMB、MCMB=モノカルボキシメチレンブルー)で「限外濾過」したDNA(<50bpのサイズ)の比較を示す:図1A=添加した総DNAのうちゲルに結合したDNAの%、図1B=DNAと結合するゲルの容量(ゲル1mL当たりのDNAのμg数)。黒色=MCMB-アガロース;灰色=対照(ゲル上にMCMBが存在しない)。
【0101】
図2A及び図2Bは、異なるサイズのDNAを使用した、DNA結合及びDNAと結合するゲルの容量の比較である:図2A=添加した総DNAのうちゲルに結合したDNAの%、図2B=DNAと結合するゲルの容量(ゲル1mL当たりのDNAのμg数)。白色=アミノ基を有さないネイティブなアガロースビーズ;黒色=アミノ官能化されたアガロースビーズ;灰色=DNA、<50bp又は<2000bpのいずれかの濃度。所与の濃度(64.8及び69)はゲル1mL当たりのMCMBのμg数である。
【0102】
図3A図3Dは、対照の結果を示す:ネイティブなアガロースビーズを充填した1mLのFPLCカラムを通過する異なる濃度(各50μL)のDNAの260nmにおける吸光度及び伝導率を示す。グラフから、4つの異なるDNA濃度(3A=3.3mg/mL、3B=1.5mg/mL、3C=0.33mg/mL、3D=0.15mg/mL)について結合は認められず、濃度に関する直線性も認められなかった(左側の目盛りのピークの高さを参照されたい)ことが示される。
【0103】
図4は、アミノ-アガロースビーズ(淡いブルー)又はネイティブなアガロースビーズ(淡いオレンジ、どちらも左側の目盛り、ガウス曲線は260nmにおける吸光度である)を充填した1mLのFPLCカラムへのDNA(TRIS中2.5mg/mL、各50μL)のローディングに関するグラフである。上部の「水平な」曲線は伝導率である(右側の目盛り)。
【0104】
図5は、MCMBアガロースビーズを有する1mLのFPLCカラムへのDNA(TRIS中2.5mg/mL、各50μL)のローディングに関する結果を示す。1回目のローディング(黒色の実線)はカラムを通過するDNAが著しく減少したことを示し、2回目のローディング(黒色の破線)は飽和しているカラムに起因してより高い。
【0105】
Table 1(表1)は、メチレンブルーとカップリングしたアガロースビーズに結合したDNAの量を示す。NK1=アミノアガロースビーズ、30%のDNA結合(おそらくイオン相互作用)、NK2=ネイティブなアガロースビーズ、DNA結合が基本的にない。MCMBアガロースビーズ、1回目のローディングでは試料中のDNAの88%が結合し、2回目のローディングでは50%が結合した(おそらく飽和に起因して)。
【0106】
【表1】
【0107】
Table 2(表2)は、メチレンブルーとカップリングしたアガロースビーズに結合するBSAタンパク質を示す。NK1アミノ-アガロースには3.9%が結合し、NK2ネイティブ-アガロースには5.5%が結合し、MCMB-アガロースと結合したBSAは基本的にゼロであり、42マイクログラムのDNAを予め結合させたMCMB-アガロースとは11%のBSAが結合した。BSAタンパク質とリガンドの相互作用及びカチオン性アミノ基又はアニオン性DNAのいずれかとの一部のイオン結合はないと思われる。5.5%のBSAのうちネイティブなアガロース結合は、樹脂との少量の非特異的相互作用に起因すると考えられる。
【0108】
【表2】
【0109】
(実施例2)
TO-Iの合成
チアゾールオレンジ-ヨウ化プロピル(TO-I)を以下の通り合成した:
【0110】
【化11】
【0111】
S-メチル-ベンズチオキサゾール-トシラート1.84(5.0mmol)をレピジンヨージド2.20mg(5.0mmol)と混合し、次いで、混合物をEtOH 10ml中に溶解させた。Et3N 0.5mlを添加し、混合物はすぐに赤色になり、暗褐色がかった赤色になった。溶液を60℃で60分間撹拌し、次いで、室温で12時間放置した。得られた細かい沈殿物を真空下で真空濾過し、乾燥させた。合計1.95gの純粋な生成物が得られた→収率67%
UV(MeOH):λmax 506nm
HPLC:Nucleosil 100、C18、5μm、MeCN/H2O(98:2)、Rt 18.8分間
MALDI: m/z: 459.8 (C21H20IN2S+)
1H-NMR (DMSO-d6): 2.35 (m, 2H), 3.33 (s, 3H), 3.95 (m, 2H), 4.55 (m, 2H), 6.79 (s, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.34 (tr, 1H), 7.53 (tr, 1H), 7.67 (2d, 2H), 7.92 (tr, 1H), 7.96 (d, 1H), 7.90 (tr, 1H), 8.02 (d, 1H), 8.53 (d, 1H), 8.71 (d, 1H).
13C-NMR (DMSO-d6): 2.3, 32.5, 33.9, 54.4, 88.2, 107.7, 112.9, 117.6, 122.7, 123.8, 124.0, 124.4, 125.8, 126.6, 128.0, 133.1, 136.8, 140.2, 144.1, 148.2, 159.9.
【0112】
TO-Iをアガロースビーズに結合させ、次いで、DNAを結合させるために使用した。
【0113】
(実施例3)
TO-C3及びYO-C3の合成
チアゾールオレンジを、反応性リンカー、例えば、アミノ基を含有するリンカーを導入することによって改変した。以前正しいと考えられていたプロセスによってTO-C3を合成する試みに失敗した後、TO-C3を以下の通り合成した:
【0114】
TO-及びYO-C3-アミン(1)及び(2)
【0115】
【化12】
【0116】
N-Boc-1-(3-アミノプロピル)レピジウムブロミド(3)
【0117】
【化13】
【0118】
N-Boc-3-ブロモプロピルアミン5.8g(24.5mmol)及びレピジン2.3g(16.1mmol)をいかなる溶媒も用いずに50~60℃で16時間均一に溶解させた。残りの反応混合物を、固体沈殿物が観察されるまで酢酸エチルを用いて数回抽出した。この固体を真空下で濾過し、乾燥させた。N-Boc-レピジウムブロミド(3)4.8gを単離した(収率78%)。
【0119】
N-Boc-TO-C3-アミン(9)
【0120】
【化14】
【0121】
N-Boc-レピジニウム(3)400mg(1.09mmol)及びベンゾチアゾール-トシレート(4)(Thompson, M.、「Synthesis, photophysical effects, and DNA targeting properties of oxazole yellow-peptide bioconjugates」、Bioconjugate Chem. 2006、17、507-513頁)1.12g(3.05mmol)を室温(rt.)でCH2Cl2 50ml中に溶解させた。Et3N 2.0ml(14mmol)を室温で滴下した。深い赤色が現れた。60分後にTLCによって反応の終了が検出された。溶媒を真空下で(i.vac.)除去し、残留物をsc-クロマトグラフィー(CHCl3/MeOH(100/0→100/5)によって精製した。
Rf: 0.7(CHCl3/MeOH/aqu. NH3:70/28/2)
MALDI:m/z:348,2(C21H21N3S+:M-CO2tBu)
340mg N-Boc保護10を単離した(収率59%)
【0122】
1-(3-アミノプロピル)-4-{[3-メチル-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イリデン]メチル}キノリン-1-イウムクロリド(TO-C3)(1)
【0123】
【化15】
【0124】
N-Boc保護9 400mg(0.76mmol)をabs. MeOH 20ml中に溶解させた。透明な溶液をHCl/MeOHによって酸性化し、室温で16時間撹拌するようにした。溶媒を真空下で除去した。残留物を、酢酸エチルを用いて数回抽出し、真空下で濾過し、乾燥させた。
TO-C3(1)250mgを単離した(収率86%)。
Rf:0.45(CHCl3/MeOH/aqu. NH3:70/28/2)
UV(MeOH):λmax 506nm
HPLC:Nucleosil 100、C18、5μm、MeCN/H2O(98:2)、Rt 11.4分間
MALDI: m/z: 348.2 (C21H22N3S+)
1H-NMR (dmso-d6): 2.14 (五重線, J=7.2 Hz, 2H), 2.87 (tr, J=7.1 Hz, 2H), 4.03 (s, 3H), 4.73 (tr, J=7.3 Hz, 2H), 6.95 (s, 1H), 7.39 (d, J=7.2 Hz, 1H), 7.43 (tr, J=7.3 Hz, 1H), 7.62 (tr, J=7.1 Hz, 1H), 7.75 (tr, J=7.6 Hz, 1H), 7.81 (d, J=8.3 Hz, 1H), 7.99 (tr, J=8.2 Hz, 1H), 8.06 (d, J=7.2 Hz, 1H), 8.21 (d, J=8.7 Hz, 1H), 8.74 (d, J=6.8 Hz, 1H), 8.81 (d, J=8.1 Hz, 1H).
13C-NMR (dmso-d6): 27.0, 33.9, 36.0, 51.2, 88.3, 107.9, 113.1, 118.1, 122.9, 123.9, 124.3, 124.6, 125.9, 126.8, 128.2, 133.3, 137.0, 140.5, 144.2, 148.6, 160.4.
【0125】
1-(3-アミノプロピル)-4-{[3-メチル-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾキサゾール-2-イリデン]メチル}キノリン-1-イウムクロリド(YO-C3)(2)
【0126】
【化16】
【0127】
N-Boc保護10 400mg(0.76mmol)をabs. MeOH 20ml中に溶解させた。透明な溶液をHCl/MeOHによって酸性化し、室温で16時間撹拌するようにした。溶媒を真空下で除去した。残留物を、酢酸エチルを用いて数回抽出し、真空下で濾過し、乾燥させた。
TO-C3(2) 250mgを単離した(収率86%)。
Rf:0.45(CHCl3/MeOH/aqu. NH3:70/28/2)
UV(MeOH):λmax 580nm
HPLC:Nucleosil 100、C18、5μm、MeCN/H2O(98:2)、Rt 10.7分間
MALDI: m/z: 332.5 (C21H22N3O+)
1H-NMR (dmso-d6): 2.18 (五重線, J=7.3 Hz, 2H), 2.91 (六重線, J=6.0 Hz, 2H), 3.87 (s, 3H), 4.74 (tr, J=7.3 Hz, 2H), 6.30 (s, 1H), 7.39 (tr, J=7.8 Hz, 1H), 7.48 (tr, J=7.6 Hz, 1H), 7.64 (d, J=7.9 Hz, 1H), 7.72 (tr, J=7.6 Hz, 1H), 7.81 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.93 (d, J=7.2 Hz, 1H), 7.97 (tr, J=7.2 Hz, 1H), 8.18 (d, J=8.7 Hz, 1H), 8.62 (d, J=7.2 Hz, 1H), 8.78 (d, J=8.4 Hz, 1H).
13C-NMR (dmso-d6): 26.8, 30.5, 35.9, 50.9, 74.2, 109.1, 110.7, 110.9, 117.9, 123.4, 124.3, 125.9, 126.2, 126.5, 131.3, 133.3, 137.1, 143.4, 146.1, 150.0, 161.5.
【0128】
(実施例4)
先行技術との比較的な合成スキーム
先行技術で、著者らはTO-C3及びYO-C3を下記の合成スキームに従って作製することができると考えていた。チアゾールオレンジアミン1(TO-アミン1)に関しては、1つの報告では、1H-及び13C-NMRスペクトルのシグナルの化学シフトが割り当てなしで収集されたが(Pham, H. H.ら、「Bichromophoric dyes for wavelength shifting of dye-protein fluoromodules」、Org. Biomol. Chem. 2015、13、3699-3710頁)、一方、他の報告ではこの化合物に関して誤ったデータが公開された(Brenner, S.ら、「Fluorescent molecular motors」、PCT国際出願2014、WO 2014051521、A1 20140403;Fei, X.ら、「Thiazole orange derivatives: synthesis, fluorescence properties, and labeling cancer cells」、Bioorg. Med. Chem. 009、17、585-591頁;Fei, X.ら、「Solid-phase synthesis and modification of thiazole orange and its derivatives and their spectral properties」、J. Comb. Chem. 2007、9、943-950頁)。実験を行ったところ、所望のTO-C3及びYO-C3ではなく、アミジン化合物7及び8が作製された。この実験では、S-メチル-ベンゾチアゾールトシレート(4)が過剰であり、レピジニウムブロミドの右側及び左側と反応する。
【0129】
1-(3{[-3-メチル-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イリデン]アミノ}プロピル)-4-{[3-メチル-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イリデン]メチル}キノリン-1-イウムブロミド(TO-C3-アミジン)(7)
【0130】
【化17】
【0131】
S-メチル-ベンゾチアゾールトシレート(4)(Zhang, T. H.; He, H. X; Du, J. L.; He, Z. J. Yao、S. Molecules、2018、23、2011-2024頁)1.26g(3.6mmol)及びレピジニウムブロミド(10)(Gromov, S, P.ら、「Synthesis, Structure, and Properties of Supramolecular Photoswitches Based on Ammonioalkyl Derivatives of Crown Ether Styryl Dyes」、J. Org. Chem. 2014、79、11416-11430頁)980mg(3.5mmol)をCH2Cl2 20ml中に懸濁させた。Et3N 2.0ml(14mmol)を滴下した。深い赤色の反応混合物を更に60分間撹拌した。反応の終了をTLCによって検出した。反応混合物を、飽和NH4Cl及びNa2CO3水溶液を用いて抽出した。有機相を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、また、溶媒を真空下で蒸発させた。残留物を結晶化(エタノール)によって精製した。TO-C3-アミジン7 750mgを単離した(収率43%)。
Rf:(CHCl3/MeOHNH3:85/15)
UV(MeOH):λmax 506nm
HPLC:Nucleosil 100、C18、5μm、MeCN/H2O(98:2)、Rt 13.8分間
MALDI: m/z: 495.4 (C29H27N4S2 +)
1H-NMR (DMSO-d6): 2.24 (五重線, J=5.9 Hz, 2H), 3.16 (s, 3H), 3.17 (m, 2H), 4.00 (s, 3H), 4.76 (tr, J=6.7 Hz, 2H), 6.86 (tr, J=7.5 Hz, 1H), 6.87 (s, 1H), 6.99 (d, J=7.9 Hz, 1H), 7.10 (dtr, J=1.0, 7.3 Hz, 1H), 7.23 (d, J=7.1 Hz, 1H), 7.41 (tr, J=7.5 Hz), 7.46 (d, J=6,9 Hz, 1H), 7.61 (dtr, J=7.3 Hz, 1H), 7.74 (tr, J=7.5 Hz, 1H), 7.77 (d, J=8.3 Hz, 1H), 7.96 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.99 (tr, J=8.1 Hz, 1H), 8.22 (d, J=8.7 Hz, 1H), 8.31 (s, 1H), 8.59 (d, J=7.2 Hz, 1H), 8.77 (d, J=8.9 Hz, 1H).
13C-NMR (DMSO-d6): 29.6, 33.7, 50.7, 53.1, 79.2, 88.0, 107,7, 109.0, 112.9, 118.3, 120.6, 121.2, 122.3, 122.8, 123.9, 124.3, 124.4, 125.7, 126.3, 126.7, 128.1, 133.1, 137.2, 140.4, 140.6, 144.6, 148.5, 154.7, 159.9.
【0132】
1-(3{[-3-メチル-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾキサゾール-2-イリデン]アミノ}プロピル)-4-{[3-メチル-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾキサゾール-2-イリデン]メチル}キノリン-1-イウムブロミド(YO-C3-アミジン)(8)
【0133】
【化18】
【0134】
S-メチル-ベンゾキサゾールトシレート(5)(Gromov, S, P.ら、「Synthesis, Structure, and Properties of Supramolecular Photoswitches Based on Ammonioalkyl Derivatives of Crown Ether Styryl Dyes」、J. Org. Chem. 2014、79、11416~11430頁)1.35g(3.8mmol)及びレピジニウムブロミド(10)980mg(3.5mmol)をCH2Cl2 20ml中に懸濁させた。Et3N 2.0ml(14mmol)を滴下した。深い赤色の反応混合物を更に60分間撹拌した。反応の終了をTLCによって検出した。反応混合物を、飽和NH4Cl及びNa2CO3水溶液を用いて抽出した。有機相を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、また、溶媒を真空下で蒸発させた。750mgを単離した(収率36%)
Rf:(CHCl3/MeOHNH3:85/15)
UV(MeOH):λmax 580nm
HPLC:Nucleosil 100、C18、5μm、MeCN/H2O(98:2)、Rt 10.7分間
MALDI: m/z: 331.2 (C21H21N3O+: M-(N-Me-ベンゾオキサゾール))
1H-NMR (dmso-d6): 2.13 (五重線, J=6.0 Hz, 2H), 3.13 (s, 3H), 3.41 (tr, J=6.0 Hz, 2H) 3.82 (s, 3H), 4.70 (tr, J=6.0 Hz, 2H), 6.82 (m, J=6.0 Hz, 1H), 6.96 (m, J=6.0 Hz, 1H), 7.00 (p, J=6.0 Hz, 1H), 7.17 (p, J=6.0 Hz, 1H), 7.33 (tr, J=6.0 Hz, 1H), 7.43 (tr, J=6.0 Hz, 1H), 7.57 (d, J=7.9 Hz, 1H), 7.67 (tr, J=6.0 Hz, 1H), 7.67 (d, J=6.0 Hz, 1H), 7.73 (d, J=7.2 Hz, 1H), 7.92 (tr, J=6.0 Hz, 1H), 8.14 (d, J=8.7 Hz, 1H), 8.33 (s, 1H), 8.50 (d, J=7.2 Hz, 1H), 8.71 (d, J=8.7 Hz, 1H).
13C-NMR (DMSO-d6): 28.3, 29.6, 30.5, 42.2, 52.4, 73.6, 79.2, 107.4 (br), 108.6, 110.5, 110.7, 118.0, 120.3 (br), 123.3, 123.6 (br), 125.8, 126.3, 126.0, 126.3, 131.1, 132.0, 133.1 (br), 137.2, 143.8, 143.8, 145.9, 149.7.3, 161.2.
【0135】
(実施例5)
3-[4-(6-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]-フェノキシ-プロピルアミン(Mono-Hoechst-C3)の合成
【0136】
【化19】
【0137】
N-Boc-(4-ホルミルフェノキシ)プロピルアミン(4)(Liu, Y.ら、「A "Double-Locked" and enzyme-activated molecular probe for accurate bioimaging and hepatopathy differentiation」、Chemical Science 2019、10(47)、10931-10936頁.)
【0138】
【化20】
【0139】
4-ヒドロキシアルデヒド2 960mg(11.7mmol)、K2CO3 2.52g(8mmol)及びN-Boc-3-ブロモプロピルアミン1 2.36g(10.0mmol)を乾燥DMF 3ml中で16時間加熱した。反応混合物を酢酸エチル100mlで希釈し、飽和NaCl溶液を用いて2~3回抽出した。有機相を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空下で蒸発させた。N-Boc保護アルデヒド4 2.47gを単離した(収率88%)。
Rf:約0.5(CHCl3/酢酸エチル:88/12)
C15H21NO4(279.3)
MS-ESI:280(M+1)、265(M-CH3)、223(M-tBu)、
【0140】
N-Boc-3-(4-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-フェノキシ)プロピル-1-アミン(6)((Ranjan, N.ら、「Selective Inhibition of Escherichia coli RNA and DNA Topoisomerase I by Hoechst 33258 Derived Mono-and Bisbenzimidazoles」、J. Med. Chem. 2017、60、4904-4922頁.)
【0141】
【化21】
【0142】
Na2S2O5 385g(2.0mmol)をH2O 2ml中に溶解させ、EtOH 5ml中N-Boc保護アルデヒド4 1.06g(3.8mmol)をこの水溶液に添加した。黄色~灰色の沈殿物が観察された。EtOH 50ml中ピペラジニルジアミン5 620mg(3mmol)の溶液をアルデヒド懸濁液に添加した。オレンジ~褐色の懸濁液を60℃で1~2時間加熱した。反応の完了をTLCによって検出した。
Rf:約(CHCl3/MeOH/aqu. NH3:80/16/4)
UV:λmax 326nm、λmax 272nm。
HPLC:Luna 3μ、フェニル-ヘキシル、MeCN/H2O(98:2)、Rt 11.8分間
C26H35N5O3(465.6)
MS-MALDI:466.7(M+1)、443(M-43(NC2H5))
【0143】
3-(4-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-フェノキシ)プロピル-1-アミン(7)
【0144】
【化22】
【0145】
N-Boc保護ベンズイミダゾール6 930mg(2mmol)をMeOH 10ml中に溶解させた。この溶液をHCL/MeOHによって酸性化した。室温で24時間後、完全な脱保護をTLCによって検出した。Mono-Hoechst-C3 7を反応混合物から結晶化した。濾過によって400mgを単離した(収率55%)。
UV:λmax 326nm、λmax 272nm
HPLC:Luna 3μ、フェニル-ヘキシル、MeCN/H2O(98:2)、Rt 3.1分間
C21H27N5O(365.5)
MS-MALDI: 366.1 (M+1), 309 (M-57(NC3H7))
1H-NMR (dmso-d6): 2.09 (五重線, J= Hz, 2H), 2.30 (s, 3H), 2.60 (m, 4H), 2.95 (tr, J= Hz, 2H), 3.16 (m, 4H), 4.15 (tr, J= Hz, 2H), 6.91 (m, 2H), 7.07 (d, J= Hz, 2H), 7.42 (m, J= Hz, 1H), 8.11 (d, J= Hz, 2H).
13C-NMR (DMSO-d6):
【0146】
(実施例6)
2'-(4-エトキシフェニル)-6-(4-アミノエチル-1-ピペラジニル)-2,6'-ビス-1H-ベンズイミダゾール(R-Hoechst-C2)の合成
【0147】
【化23】
【0148】
5-[4-(2-N-Boc-アミノエチル)ピペラジニル)]-2-ニトロアニリン(8)
【0149】
【化24】
【0150】
5-クロロ-2-ニトロアニリン2.0g(11.6mmol)、K2CO3 2.0g(14.4mmol)及び1-(2-N-Boc-アミノエチル)ピペラジン4.0g(17.5mmol)を乾燥DMF 2.0ml中に懸濁させた。この懸濁液を140~150℃で24時間撹拌した。冷却した反応混合物を酢酸エチル100ml中に溶解させ、飽和NaCl溶液を用いて3回抽出した。有機相を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空下で蒸発させた。残留物をsc-クロマトグラフィー(MeOH/CHCl3:1/9)によって精製した。N-Boc保護2-ニトロアニリン8 4.12gを単離した(収率97%)。
HPLC:Luna 3μ、フェニル-ヘキシル、MeCN/H2O(98:2)、Rt 15.3分間
C17H27N5O4(365.2)
MS-MALDI:366.1(M)、350.2(M-Me)、310(M-C4H8)
【0151】
(N-Boc-アミノエチル)-Hoechst 33342(11)
【0152】
【化25】
【0153】
N-Boc保護2-ニトロアニリン8 3.0g(8.2mmol)をエタノール160ml中に溶解させ、10% Pd/C 0.7gを添加した。混合物を水素雰囲気下で5~6時間撹拌した。反応の完全な完了はTLCによって観察される。触媒(セライト)の濾過後、N-Boc保護ジアミン10の溶液をいかなるさらなる精製も伴わずにすぐに使用した。
【0154】
同時に、エタノール溶液75ml中、Hoechstアルデヒド9(Nimesh, H. al.、「Synthesis and Biological Evaluation of Novel Bisbenzimidazoles as Escherichia coli Topoisomerase IA Inhibitors and Potential Antibacterial Agents」、J. Med. Chem. 2014、57、5238-5257頁、Chandrika, N. T.ら、「Synthesis and Investigation of Novel Benzimidazole Derivatives as Antifungal Agents」、S. Bioorg. Med. Chem. 2016、24、3680-3686頁)3.2g(12mmol)の溶液を、H2O 3.0ml中、Na2S2O5 1.23g(6.5mmol)に添加した。白色/灰色の沈殿物が生じる。
【0155】
ジアミン10の粗製還元混合物をこの懸濁液に添加した。得られたオレンジ~褐色の懸濁液を2時間70℃に加熱した。DC対照ではN保護ジアミン10の完全な変換が示される。セライトを添加し、溶媒を真空下で蒸発させた。固体残留物をsc-クロマトグラフィーによって精製した。
【0156】
酢酸エチル/MeOH勾配(100/0→80/20)。N-Boc保護Hoechst 11 4.76gを単離した(収率100%)
Rf:約0.5(酢酸エチル/MeOH/aqu. NH3:70/28/2)
HPLC:Luna 3μ、フェニル-ヘキシル、MeCN/H2O(98:2)、Rt 14.4分間
C33H39N7O3(581.7)
MS-MALDI: 582.1(M)、451.7(M-BocHN-CH2)
【0157】
2'-(4-エトキシフェニル)-6-(4-アミノエチル-1-ピペラジニル)-2,6'-ビス-1H-ベンズイミダゾール(12)
【0158】
【化26】
【0159】
N-Boc保護Hoechstアミン11 2.0(3.44mmol)をEtOH 20ml中に溶解させ、HCl/MeOHで酸性化した。室温で24時間後、得られた沈殿物を濾過し、乾燥させた。Hoechstアミン12・3 HCl 1.91gを単離した(94%)。
Rf:約0.5(酢酸エチル/MeOH/aqu. NH3:40/50/10)シリカゲル
約0.5(CHCl3/MeOH/aqu. NH3:70/22/8)シリカゲル
約0.8(CHCl3/MeOH/aqu. NH3: 70/22/8)Al2O3
HPLC:Luna 3μ、フェニル-ヘキシル、MeCN/H2O(98:2)、Rt11.8分間
C28H31N7O(481.6)
MS-MALDI: 482.7 (M+1), 451.5 (M-(N-CH2))
1H-NMR (DMSO-d6): 1.37 (tr, J=7.0 Hz, 3H), 3,26 (m, 4H), 3.38 (q, J=7.0 Hz, 1H), 3.42 (q, J=7.0 Hz, 1H), 3.48 (tr, J=7.0 Hz, 1H), 3.66 (d, J=7.0 Hz, 1H), 3.90 (d, J=7.0 Hz, 1H), 3.92 (m, 1H), 4.17 (q, J=7.0 Hz, 1H), 7.21(d, J=8.8 Hz, 2H), 7.22 (m, 1H), 7.36 (ddd, J=2.1, 5.8, 8.4 Hz, 1H), 7.72 (dd, 3.5, 5.5 Hz, 1H), 7.97 (d, J=8.5 Hz, 1H), 8.37 (m, 1H), 8.38 (d, J=8.7 Hz, 2H), 8.76 (s, 1H).
13C-NMR (DMSO-d6): 15.0, 33.9, 46.5, 51.3, 51.7, 53.3, 55.5, 64.2, 99.3, 99.5, 114.9, 115.8, 117.6, 124.1, 127.0, 130.4, 133.7, 138.2, 148.5, 149.0, 149.1, 153.2, 162.5.
【0160】
(実施例7)
3-[4-(5-(4-メチル-1-ピペラジニル)-(2,5'-ビス-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]-フェノキシ-プロピルアミン(L-Hoechst-C3)の合成
【0161】
【化27】
【0162】
N-メトキシ-N-メチル-3.4.ジアミノベンズアミド(13)
【0163】
【化28】
【0164】
2-(4-N-Boc-フェノキシ-プロピルアミン)-ベンズイミダゾール-5-カルボン酸メトキシ-メチルアミド(14)
【0165】
【化29】
【0166】
3.4-ジニトロ安息香酸のワインレブアミド2.6g(10.2mmol)を水素雰囲気下で還元して対応するN-メトキシ-N-メチル-3.4.ジアミノベンズアミド13を定量的に得た(10.2mmol)。この反応溶液を、いかなるさらなる精製も伴わずにN-Boc保護アルデヒド4との反応に使用した。
【0167】
EtOH 100ml中N-Boc保護アルデヒド4 4.2g(15mmol)の溶液をH2O3ml中Na2S2O5 1.54g(8.1mmol)の溶液に添加した。黄色~灰色の沈殿物が観察された。得られた懸濁液を室温で更に15分間撹拌するようにした。EtOH中N-メトキシ-N-メチル-3.4.ジアミノベンズアミド13 10.2mmolの濾過した反応溶液をこの懸濁液に添加し、反応混合物を65℃で30分間加熱した。反応の完了をTLC(酢酸エチル)によって検出した。溶媒を真空下で除去し、残留物をsc-クロマトグラフィーにより、CHCl3/酢酸エチル勾配:100/0→0/100によって精製した。
ワインレブアミド14 4.0gを単離した(2つの反応工程にわたって収率86%)
HPLC:Luna 3μ、フェニル-ヘキシル、MeCN/H2O(98:2)、Rt16.3分間
C24H30N4O5(454.2)
MS-MALDI:455.8(M+1)、399(M-56(C4H8))
【0168】
2-(4-N-Boc-フェノキシ-プロピルアミン)-ベンズイミダゾール-5-カルバルデヒド(15)
【0169】
【化30】
【0170】
N-Bocワインレブアミド14 1.3g(2.9mmol)をテトラヒドロフラン24ml及びジエチルエーテル8ml中に懸濁させた。この懸濁液を-80℃まで冷却し、LiAlH4 320mg(9mmol)を添加した。得られた懸濁液を-30°~-15℃に加熱した。反応の終了をTLC(酢酸エチル/ヘキサン:9/1)によって観察した。反応混合物を酢酸エチル、MeOH及び飽和NH4Cl水溶液で連続的に処理した。有機相を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空下で蒸発させた。N-Boc-アルデヒド15 1.05gをsc-クロマトグラフィーによって単離した(収率92%)。このアルデヒド15を、いかなるさらなる精製も伴わずに以下の酸化的環化に使用した。
HPLC:Luna 3μ、フェニル-ヘキシル、MeCN/H2O(98:2)、Rt 16.3分間
C22H25N3O4(395.5)
MS-MALDI:455.8(M+1)、399(M-56(C4H8))
【0171】
2-(4-N-Boc-フェノキシ-プロピルアミン)-ビス(ベンズイミダゾール)6-(4-メチルピペラジン)(16)
【0172】
【化31】
【0173】
ピペラジニルニトロアニリン3 470mg(2.0mmol)を水素雰囲気下で還元して対応するピペラジニルジアミン5を定量的に得た。この反応溶液を、いかなるさらなる精製も伴わずに、N-Boc保護アルデヒド15との反応に使用した。
【0174】
EtOH 30ml中N-Boc保護アルデヒド15 1.07g(2.7mmol)をH2O 2ml中Na2S2O5 385mg(2.0mmol)の溶液に添加した。灰色の沈殿物が生じる。懸濁液を室温で30分間撹拌するようにした。ピペラジニルジアミン5の溶液をこの懸濁液に添加し、反応混合物を60℃で2時間加熱した。DC対照ではピペラジオニルジアミン5の完全な変換が示される。セライトを添加し、溶媒を真空下で蒸発させた。固体残留物をsc-クロマトグラフィーによって精製した。勾配:CHCl3/MeOH(100/0→95/5)。
HPLC:Luna 3μ、フェニル-ヘキシル、MeCN/H2O(98:2)、Rt 14.3分間
C33H39N7O3(581.3)
MS-MALDI: 582.1 (M+1)
1H-NMR (DMSO-d6): 1.38 (s, 9H), 1.87 (七重線, J=6.6 Hz, 2H), 2.26 (s, 3H), 2.54 (m, 3H), 3.12 (tr, J=6.6 Hz, 2H), 3.13 (d, J=6.2 Hz, 2H), 3.31 (s, 3H), 4.07 (tr, J=6.2 Hz, 2H), 6.91 (m, 2H), 7.11 (d, J=7.6 Hz, 2H), 7.59 (d, J=8.3 Hz, 2H), 7.71 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.96 (d, J=8.1 Hz, 2H), 8.02 (d, J=8.1 Hz, 2H), 8.13 (dd, J=3.4, 8.3 Hz, 2H) 8.21 (m, ), 8.33 (m, 1H).
13C-NMR (DMSO-d6): 28.2, 29.1, 36.9, 45.6, 49.9, 54.8, 65.5, 77.5, 108.8, 111.3, 114.8, 116.1, 118.6, 120.3, 121.0, 122.3, 124.3, 128.2, 135.3, 136.0, 144.2, 145.0, 147.6, 152.7, 155.6, 160.2.
【0175】
3-[4-(5-(4-メチル-1-ピペラジニル)-(2,5'-ビス-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]-フェノキシ-プロピルアミン(17)(Frau, S.ら、New J. Chem. 1995、19、873-6頁)
【0176】
【化32】
【0177】
N-Boc保護Hoechst 16 813mg(1.4mmol)をMeOH 5ml中に溶解させた。この溶液をHCl/MeOHによって酸性化した。室温で24時間後、完全な脱保護をTLCによって検出した。生成物が反応混合物中で結晶化した。濾過によって400mgを単離した(収率60%)。
Rf:約0.5 CHCl3/MeOH/H2ONH3:2/8/0.5
HPLC:Luna 3μ、フェニル-ヘキシル、MeCN/H2O(98:2)、Rt:14.3分間
C28H31N7O(481.6)
MS-MALDI: 481.7
1H-NMR (DMSO-d6): 2.09 (五重線, J=6.4 Hz, 2H), 2.83 (d, J=3.6 Hz, 3H), 3.00 (六重線, J=5.7 Hz, 2H), 3.22 (m, 4H), 3.53 (m, J=8.4 Hz, 2H), 3.89 (m, J=9.4 Hz, 2H), 4.23 (tr, J=6.1 Hz, 2H), 7.21 (d, J=2.0 Hz, 1H), 7.24 (d, J=9.1 Hz, 2H), 7.35 (dd, J=2.1, 9.0 Hz, 1H), 7.72 (d, J=9.0 Hz, 1H), 7.98 (d, J=8.5 Hz, 1H), 8.38 (d, J=8.6 Hz, 1H), 8.42 (d, J=8.7 Hz, 2H), 8.77 (s, 1H),
13C-NMR (DMSO-d6): 26.9, 36.1, 41.9, 46.2, 52.0. 65.2, 98.9, 113.8, 114.2, 114.4, 115.2, 115.3, 117.2, 117.9, 118.7, 123.7, 126.2, 129.9, 133.2, 147.9, 148.7, 152.7,
161.7.
【0178】
(実施例8)
親和性リガンドとカップリングしたアガロースビーズへの二本鎖DNAの結合
YO-C3、TO-C3、TO-C6、MCMB、Mono-Hoechst-C3、L-Hoechst-C3及びR-Hoechst-C2を上記の通り合成し、アガロースビーズとカップリングした。官能化されたアガロースビーズの親和性リガンドへのカップリングはTable 3(表3)に示されている合成経路によって達成した。
【0179】
【表3】
【0180】
次いで、樹脂と称されるカップリングしたアガロース-親和性リガンドのそれぞれを、結合ds(二本鎖)DNAについて以下の手順に従って試験した。樹脂100μLをミニスピンカラムに入れ、緩衝剤(0.05MのTRIS、0.5MのNaCl、pH7.1)で平衡化した。ds DNA溶液(Invitrogen社、cat. No.15634-017、LOT 1885913)200μLを室温(RT)で添加して懸濁液を創出した。懸濁液を室温で90分間インキュベートし、30分毎にボルテクスサーで混合した。90分後、上清を遠心除去し、液体を収集し、UV光メーターを用いて260nmで測定して、樹脂に結合しなかった液体中に存在するDNAの量を検出した。樹脂を緩衝剤で1回洗浄した。洗浄溶液も測定した。ほとんどの場合、少量のDNAしか検出されなかった。
【0181】
次いで、DNAの100%が樹脂に結合した場合、260nmにおける吸収は0になる。逆に、DNAが樹脂に全く結合しなかった場合、吸収は100%になる。したがって、樹脂に結合したDNAの量を液体のUV吸収に基づいて測定することができる。結果をTable 4(表4)及び図6に示す。図6は、スピンカラム中、ds DNA約11~13μgを有する溶液をゲル100μlにローディングして得られた試験した樹脂へのds DNAの結合を示す棒グラフである。
【0182】
【表4】
【0183】
Table 5(表5)に、本実験で使用した製品の化合物及び供給源に関するより多くの情報を提示する。
【0184】
【表5】
【0185】
図7に示されている通り、YO-C3、TO-C3、TO-C6、MCMB、Mono-Hoechst-C3、L-Hoechst-C3及びR-Hoechst-C3は首尾よくds DNAと結合し、試料から分離した。PEIを陽性対照として含めた。PEIは正に荷電したアミノ基のイミンポリマーであり、DNAとの天然のイオン相互作用を有する。Mimetic Yellow 2、Mimetic Orange 1、Mimetic Red 2、Mimetic Red 3、Mimetic Blue 1、Mimetic Blue 1M、Mimetic Blue SA HL、Mimetic Blue SA HL、Mimetic Blue 2 A6XL、及びMimetic Blue AP A6XLは、DNAに対するインターカレーターではない色素である。これらを陰性対照色素として含めた。DNAに対して他の非インターカレート色素よりも高い親和性を同時に有するZetarose Mimetic Blue Dye 1FFも陰性対照として含めた。変更されていないアガロースビーズにds DNAの6%が結合した。これは、非特異的結合の影響である。したがって、このデータから、インターカレート小分子がDNAと首尾よくかつ選択的に結合したことが示される。
【0186】
(実施例9)
異なる色素リガンド密度のDNA結合に対する影響
色素リガンド密度は、固体ビーズの体積当たりの数又は量を表す。密度が高いほど、カップリングした表面-親和性リガンドに結合することができるDNAが多いことが予測された。この理論を、Table 3(表3)に示されている密度の異なる樹脂を用いて実施例8において説明されている手順を実施することによって試験した。結果をTable 6(表6)~Table 10(表10)に示し、図7図11にグラフ化する。図7図8図9図11は、スピンカラム中、ゲル100μlに対してds DNA約12μgを有するローディング溶液を用いた、試験した樹脂へのds DNAの結合を示す。図10は、スピンカラム中、ゲル100μlに対してds DNA約18μgを伴うローディング溶液を用いた、Mono-Hoechst-C3樹脂とカップリングしたアガロースへのds DNAの結合を示す。これらの図の全てにおいて、樹脂へのds DNA結合の量が対照アガロースビーズへの結合の量と比較されている。
【0187】
【表6】
【0188】
【表7】
【0189】
【表8】
【0190】
【表9】
【0191】
【表10】
【0192】
(実施例10)
DNA回収
調製された、並びにTable 3(表3)及びTable 4(表4)に示されているカップリングした表面-親和性リガンドからのds DNAの回収を以下の種々の異なる溶媒を使用して試みた:1)4MのNaCl、2)4MのNaCl及び95℃、3)pH2(0.1Mのグリシン、pH2.0)、及び4)pH10(0.2MのNa2CO3、pH10)。
【0193】
Table 11(表11)~Table 14(表14)は、分離され、各樹脂から異なる回収方法及び溶媒を使用して回収されたds DNAの量(%)を示す。
【0194】
【表11】
【0195】
【表12】
【0196】
【表13】
【0197】
【表14】
【0198】
(実施例11)
二本鎖(ds)及び一本鎖(ss)DNAの結合
DNA(ds DNAについては約67μg/mLを0.2mL、ss DNAについては約166μg/mLを0.2mL)及び樹脂100μLを用いて結合アッセイを行った。多数の非インターカレート色素(Mimetic Yellow 2、Mimetic Orange 1、Mimetic Red 2、Mimetic Red 3、Mimetic Blue 1、Mimetic Blue 1M、Mimetic Blue SA HLand Mimetic Blue AP A6XL)、変更されていないアガロースビーズ、及びMCMBを結合について試験した。陽性対照はMCMBであった。ds DNAに関しては、試料を、スピンカラム中、ゲル100μLに対してds DNA 13.6μgを有する緩衝剤を用いてローディングした。ss DNAに関しては、試料を、スピンカラム中、ゲル100μLに対してss DNA 22.1μgを伴う緩衝剤を用いてローディングした。データを図12及び図13に示す。示されている通り、Astrea Biosciences社のMimetic樹脂のいずれもss DNAとは結合せず、また、ds DNAとの結合は無視できる量であったが、一方、MCMBはss DNA及びds DNAのどちらとも首尾よく結合した。
【0199】
非MCMB樹脂の全てが「ネガティブな」量のDNA結合を有し、したがって、較正に誤差があった可能性がある。ネガティブな結果は本明細書では「ゼロ」として報告される。結合したDNAは、ローディングされる試料の測定されたDNAの質量から溶出したDNAを引くことによって算出される。この差は結合したDNAである。測定値は全て260nmにおける吸光度及びベールの法則を使用するDNAの質量の算出に基づく。
【0200】
(実施例12)
タンパク質の選択的非結合性
カップリングしたアガロース-親和性リガンドに対する選択的非結合性を実証するために、モデルタンパク質であるアルブミンを用いてDNAの結合アッセイを行った。陽性対照として、アルブミンと結合することが公知であることから、PEI並びにAstrea Biosciences社のMimetic樹脂を使用した。1mg/mLのアルブミン0.2ml、樹脂0.1ml、90分間のインキュベーション時間、室温、50mMのTris/0.5MのNaCl緩衝剤を使用して実験を行った。
【0201】
図14は、実験の結果、選択された樹脂によるアルブミンの結合を示すグラフである。TO-C3とカップリングしたアガロース-親和性リガンド、TO-C6とカップリングしたアガロース-親和性リガンド及びMCMBとカップリングしたアガロース-親和性リガンドへのアルブミンの結合は示されなかった。YO-C3では樹脂1mL当たりアルブミン0.4mgという最小の結合が示された。陽性対照であるPEIには存在するアルブミンのほぼ全てが結合した(樹脂1mL当たりアルブミン1.8mg)。なぜMimetic樹脂ではPEIと同様の結合値がもたらされなかったのかは不明である。
【0202】
この実験から、本開示の親和性リガンドを用いてタンパク質を結合させないことが可能であることが実証される。しかし、適当な選択性は試料中に存在するタンパク質、及び正しい親和性リガンドの使用に依存する。
【0203】
本発明の特定の望ましい実施形態であると現在考えられているものが記載されているが、本発明の主旨から逸脱することなくこれらに変化及び改変を行うことができることが当業者には理解されよう。また、そのような変化及び改変の全てが本発明の真の範囲内に入ることが意図されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】