(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(54)【発明の名称】抗ヒトクローディン18.2抗体及びその適用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230119BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230119BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230119BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230119BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230119BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230119BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230119BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230119BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230119BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230119BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230119BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230119BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/02
A61K39/395 T
A61P35/00
A61K48/00
A61K39/395 E
A61K31/7088
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540748
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 CN2020118424
(87)【国際公開番号】W WO2021058000
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】201910929614.0
(32)【優先日】2019-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522261352
【氏名又は名称】▲邁▼威(上海)生物科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150212
【氏名又は名称】上野山 温子
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲鑑▼
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 小芳
(72)【発明者】
【氏名】高 攀
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲曉▼紅
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲驪▼淳
(72)【発明者】
【氏名】任 紅媛
(72)【発明者】
【氏名】▲畢▼ 建▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】王 晋
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ13
4B063QR48
4B063QS33
4B063QS36
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4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
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4C085AA16
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4C085BB33
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4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
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4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
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4C086AA01
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4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB33
4C087BB65
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はそのフラグメント、並びにそのコード核酸等を提供する。本発明の抗ヒトクローディン18.2抗体は、抗原クローディン18.2に対して強い親和性を有し、発現細胞を標的とするための顕著な補体依存性細胞傷害(CDC)活性及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有し、ヒトCLDN18.2に対して高い特異性を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒトクローディン18.2抗体の調製方法であって、
(1)表面にヒトクローディン18.2タンパク質を発現する細胞を免疫原として用いて、動物を免疫する工程と、
(2)工程(1)で免疫した前記動物を用いて抗体を産生することができる細胞クローンを調製する工程と、
(3)表面にヒトクローディン18.2タンパク質を発現する細胞を陽性スクリーニング抗原として用い、前記陽性スクリーニング抗原に対する結合活性を有する抗体、及び前記抗体を産生する細胞をスクリーニングする工程と、
(4)表面にヒトクローディン18.1タンパク質を発現する細胞を陰性スクリーニング抗原として用い、前記陰性スクリーニング抗原に対する結合活性を有する抗体、及び前記抗体を産生する細胞を排除する工程と、
を含む、調製方法。
【請求項2】
工程(1)においてヒトクローディン18.2タンパク質を発現する前記細胞が、免疫された動物と同じ種に由来する、好ましくは、ヒトクローディン18.2タンパク質を発現する前記細胞がマウス細胞であり、前記免疫された動物がマウスである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
工程(2)において、抗体を産生することができる前記細胞クローンが、ハイブリドーマ手法及び単一細胞増幅手法からなる群から選択される手法により調製される、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
工程(3)における前記陽性スクリーニング抗原が、工程(1)における前記免疫原と同じであり、工程(4)における前記陰性スクリーニング抗原が工程(1)における前記免疫原と異なるのは、発現されるタンパク質がヒトクローディン18.1タンパク質である点のみである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
工程(3)及び工程(4)が、それぞれ、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)及び蛍光共鳴エネルギー移動法(FRET)からなる群から選択される方法により行われる、請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
請求項1~6のいずれか一項に記載の調製方法に従って得られた抗ヒトクローディン18.2抗体。
【請求項7】
ヒトクローディン18.2のN末端、好ましくは第1の細胞外ループ(ECL1)を含むヒトクローディン18.2のN末端の細胞外領域に特異的に結合する、請求項6に記載の抗ヒトクローディン18.2抗体。
【請求項8】
nMスケールでヒトCLDN18.2に特異的な結合を有し、アイソタイプ陰性抗体(又は無関係な抗体)と比較してヒトCLDN18.1への結合において有意差を有さない、請求項6に記載の抗ヒトクローディン18.2抗体。
【請求項9】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗体又はそのフラグメントであって、前記重鎖可変領域(VH)及び前記軽鎖可変領域(VL)が、以下:
(1)配列番号31に示されるVH-CDR1、配列番号32に示されるVH-CDR2、及び配列番号33に示されるVH-CDR3;並びに配列番号34に示されるVL-CDR1、配列番号35に示されるVL-CDR2、及び配列番号36に示されるVL-CDR3;
(2)配列番号37に示されるVH-CDR1、配列番号38に示されるVH-CDR2、及び配列番号39に示されるVH-CDR3;並びに配列番号40に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号42に示されるVL-CDR3;
(3)配列番号43に示されるVH-CDR1、配列番号44に示されるVH-CDR2、及び配列番号45に示されるVH-CDR3;並びに配列番号46に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号47に示されるVL-CDR3;
(4)配列番号48に示されるVH-CDR1、配列番号49に示されるVH-CDR2、及び配列番号50に示されるVH-CDR3;並びに配列番号40に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号51に示されるVL-CDR3;
(5)配列番号52に示されるVH-CDR1、配列番号53に示されるVH-CDR2、及び配列番号54に示されるVH-CDR3;並びに配列番号55に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号56に示されるVL-CDR3;
(6)配列番号57に示されるVH-CDR1、配列番号58に示されるVH-CDR2、及び配列番号33に示されるVH-CDR3;並びに配列番号34に示されるVL-CDR1、配列番号59に示されるVL-CDR2、及び配列番号60に示されるVL-CDR3;
(7)配列番号61に示されるVH-CDR1、配列番号62に示されるVH-CDR2、及び配列番号63に示されるVH-CDR3;並びに配列番号46に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号64に示されるVL-CDR3;
(8)配列番号65に示されるVH-CDR1、配列番号66に示されるVH-CDR2、及び配列番号67に示されるVH-CDR3;並びに配列番号68に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号69に示されるVL-CDR3;
(9)配列番号65に示されるVH-CDR1、配列番号70に示されるVH-CDR2、及び配列番号71に示されるVH-CDR3;並びに配列番号72に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号73に示されるVL-CDR3;
(10)配列番号74に示されるVH-CDR1、配列番号75に示されるVH-CDR2、及び配列番号76に示されるVH-CDR3;並びに配列番号77に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号78に示されるVL-CDR3;
(11)配列番号79に示されるVH-CDR1、配列番号80に示されるVH-CDR2、及び配列番号81に示されるVH-CDR3;並びに配列番号82に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号83に示されるVL-CDR3;
(12)配列番号37に示されるVH-CDR1、配列番号38に示されるVH-CDR2、及び配列番号39に示されるVH-CDR3;並びに配列番号85に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号42に示されるVL-CDR3;
(13)配列番号37に示されるVH-CDR1、配列番号38に示されるVH-CDR2、及び配列番号39に示されるVH-CDR3;並びに配列番号85に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号86に示されるVL-CDR3;
(14)配列番号37に示されるVH-CDR1、配列番号38に示されるVH-CDR2、及び配列番号39に示されるVH-CDR3;並びに配列番号85に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号87に示されるVL-CDR3;
(15)配列番号74に示されるVH-CDR1、配列番号75に示されるVH-CDR2、及び配列番号76に示されるVH-CDR3;並びに配列番号89に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号90に示されるVL-CDR3;並びに、
(16)配列番号79に示されるVH-CDR1、配列番号91に示されるVH-CDR2、及び配列番号81に示されるVH-CDR3;並びに配列番号92に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号93に示されるVL-CDR3;
からなる群から選択されるCDR(VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3;及びVL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3)の組合せを含む、抗体又はそのフラグメント。
【請求項10】
前記重鎖可変領域が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号27、及び配列番号29のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、若しくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は前記軽鎖可変領域が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、及び配列番号30のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、若しくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項11】
前記抗体又はそのフラグメントが、以下:
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(2)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(3)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(4)配列番号7に示されるアミノ酸配列、又は配列番号7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号8に示されるアミノ酸配列、又は配列番号8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(5)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号10に示されるアミノ酸配列、又は配列番号10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(6)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(7)配列番号13に示されるアミノ酸配列、又は配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(8)配列番号15に示されるアミノ酸配列、又は配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号16に示されるアミノ酸配列、又は配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(9)配列番号17に示されるアミノ酸配列、又は配列番号17に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号18に示されるアミノ酸配列、又は配列番号18に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(10)配列番号19に示されるアミノ酸配列、又は配列番号19に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号20に示されるアミノ酸配列、又は配列番号20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(11)配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号22に示されるアミノ酸配列、又は配列番号22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(12)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号24に示されるアミノ酸配列、又は配列番号24に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(13)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号25に示されるアミノ酸配列、又は配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(14)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号26に示されるアミノ酸配列、又は配列番号26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(15)配列番号27に示されるアミノ酸配列、又は配列番号27に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号28に示されるアミノ酸配列、又は配列番号28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;並びに、
(16)配列番号29に示されるアミノ酸配列、又は配列番号29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号30に示されるアミノ酸配列、又は配列番号30に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
からなる群から選択される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項12】
前記抗体又はそのフラグメントが、任意の形態、例えば、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、ナノボディ、完全若しくは部分ヒト化抗体、又はキメラ抗体等であるか、或いは、前記抗体又はそのフラグメントが、ハーフ抗体又はハーフ抗体の抗原結合フラグメント、例えば、scFv、BsFv、dsFv、(dsFv)2、Fab、Fab’、F(ab’)2、又はFvであり、
好ましくは、前記抗体又はそのフラグメントが、ヒト又はマウス定常領域、好ましくはヒト又はマウス軽鎖定常領域(CL)及び/又は重鎖定常領域(CH)を更に含み、
より好ましくは、前記抗体又はそのフラグメントが、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEからなる群から選択される重鎖定常領域及び/又はカッパ型若しくはラムダ型の軽鎖定常領域を含む、
請求項6~11のいずれか一項に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項13】
前記抗体がモノクローナル抗体、好ましくはマウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体であり、好ましくは、前記モノクローナル抗体の重鎖定常領域がIgG1又はIgG4サブタイプのものであり、前記モノクローナル抗体の軽鎖定常領域がカッパ型であり、
好ましくは、前記モノクローナル抗体の重鎖定常領域が、配列番号124に示されるアミノ酸配列、又は示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記モノクローナル抗体の軽鎖定常領域が、配列番号125に示されるアミノ酸配列、又は示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項6~12のいずれか一項に記載の抗体若しくはそのフラグメント。
【請求項14】
請求項6~13のいずれか一項に記載の抗体若しくはそのフラグメントをコードする、又は前記抗体若しくはそのフラグメントに含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸分子及び/又は請求項15に記載のベクターを含む宿主細胞、又は請求項14に記載の核酸分子及び/又は請求項15に記載のベクターで形質転換若しくはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項17】
請求項6~13のいずれか一項に記載の抗体又はそのフラグメントを含むコンジュゲート又は融合タンパク質。
【請求項18】
請求項6~13のいずれか一項に記載の抗体若しくはそのフラグメント、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、及び/又は請求項17に記載のコンジュゲート若しくは融合タンパク質と、任意に薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項6~13のいずれか一項に記載の抗体若しくはそのフラグメント、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17に記載のコンジュゲート若しくは融合タンパク質、及び/又は請求項18に記載の医薬組成物を含む、キット。
【請求項20】
癌の予防及び/又は治療のための医薬の製造における、請求項6~13のいずれか一項に記載の抗体若しくはそのフラグメント、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17に記載の医薬組成物、及び/又は請求項18に記載のコンジュゲート若しくは融合タンパク質の使用。
【請求項21】
癌の診断用薬剤の製造における、請求項6~13のいずれか一項に記載の抗体若しくはそのフラグメント、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17に記載の医薬組成物、及び/又は請求項18に記載のコンジュゲート若しくは融合タンパク質の使用。
【請求項22】
CAR-T細胞の製造における、請求項6~13のいずれか一項に記載の抗体若しくはそのフラグメント、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17に記載の医薬組成物、及び/又は請求項18に記載のコンジュゲート若しくは融合タンパク質の使用。
【請求項23】
癌を予防及び/又は治療する方法であって、請求項6~13のいずれか一項に記載の抗体若しくはそのフラグメント、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17に記載の医薬組成物、及び/又は請求項18に記載のコンジュゲート若しくは融合タンパク質と、任意に他の薬物又は手段とを、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【請求項24】
癌を診断する方法であって、請求項6~13のいずれか一項に記載の抗体若しくはそのフラグメント、請求項14に記載の核酸分子、請求項15に記載のベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17に記載の医薬組成物、及び/又は請求項18に記載のコンジュゲート若しくは融合タンパク質を、被験体に由来する試料と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月29日に出願された中国特許出願第201910929614.0号の優先権の利益を主張し、引用することでその全体が本明細書の一部をなす。
【0002】
本開示は、生物医学の分野に属し、新規な抗ヒトクローディン(Claudin)18.2抗体又はその機能的フラグメントに関する。本開示はまた、該抗体又はその機能的フラグメントの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトタイトジャンクションタンパク質クローディン18(CLDN18)は、密接な細胞接合部の構築、細胞バリア機能の維持、及び細胞間分子輸送への関与において生物学的に機能するタイトジャンクションタンパク質のファミリーに属する。クローディン18タンパク質は約26KDの分子量を有し、選択的スプライシングによって、異なる特性を有するクローディンサブタイプCLDN18.1及びCLDN18.2へと変更され得る。CLDN18.1及びCLDN18.2は、それぞれ261個のアミノ酸を含み、4つの膜貫通ドメイン、すなわち、細胞内に位置するNH2末端ドメイン及びCOOH末端ドメイン、並びに2つの細胞外ループ(ECL1、ECL2)を有する。CLDN18.1及びCLDN18.2の細胞外領域1は、互いに8アミノ酸異なる。
【0004】
CLDN18.2は、多くのヒト上皮腫瘍タイプの原発性病変及び転移において発現され、びまん性癌腫細胞において継続的に発現される。CLDN18.2の発現レベルは、食道癌、膵臓癌、肺癌及び胃癌の細胞において更に有意に増加する。Sahin et alによる研究は、CLDN18.2が胃癌の重要なバイオマーカーであることを示唆し、胃癌患者の70%に存在し、そのうち90%~95%が腺癌と診断され、別の5%~10%がリンパ腫、胃腸間質腫瘍(GIST)及びカルチノイド腫瘍を含んだ。
【0005】
CLDN18.2に対するモノクローナル抗体であるIMAB362は、ドイツのバイオテクノロジー企業であるGanymedによって開発され、現在、進行胃食道癌を有する患者の治療のための第III相臨床試験中である。IMAB362抗体単独の結合は、in vitro及びin vivoの両方でCLDN18.2を発現する標的細胞の増殖の阻害をもたらし、腫瘍増殖を阻害し、補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)の作用機序を介して癌細胞を排除し、様々な作用様式が独立しているが相乗的であることが示されている。IMAB362抗体は、転移性食道癌、及び転移性胃癌を含む適応症を対象としており、現在、米国及び欧州で第III相臨床試験中であり、2021年に販売承認を申請する予定である。
【0006】
IMAB362はキメラ抗体であるが、比較的多くのマウスアミノ酸を有し、ヒトにおいて拒絶反応免疫応答を引き起こす確率が比較的高い。そのため、ヒトCLDN18.2に対してより高い特異性、親和性及び生物学的活性を有する抗体、特にヒト化抗体に対する必要性が当該技術分野において依然として存在する。さらに、クローディン18の2つのサブタイプは、構造が非常に類似しているが、機能が異なる。CLDN18.1とCLDN18.2との間の相同性が高く、ECL1の上位構造のため、CLDN18.2に対する高品質の抗体をスクリーニングすることが難しくなり、抗体特異性に関して高い不確実性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、ハイブリドーマスクリーニング及びヒト化を通じて、モノクローナル抗体の調製方法を最適化し、クローディン18.2特異的抗体のスクリーニング効率を向上させることにより高親和性でヒトCLDN18.2に特異的に結合し得る抗体を得ることであり、該抗体は、ヒト化設計により最も少ないマウスアミノ酸を有し、より優れたin vivoでの安全性及び応用可能性を有することが期待される。
【0008】
上記のような技術的課題に対して、免疫原に関しては、ヒトCLDN18.2を発現するマウス由来細胞が本開示で利用される。一態様では、宿主としてのマウス由来細胞は、非免疫原性であるか、又はマウスに対する免疫原性が非常に低く、それによって、目的の免疫原CLDN18.2に対する宿主細胞の陰影効果を回避し、異種免疫原の導入によって引き起こされるCLDN18.2特異的ハイブリドーマの生産効率に対する悪影響を回避する。別の態様では、マウス由来細胞の細胞膜の表面におけるヒトCLDN18.2の発現は、スクリーニングによって得られたモノクローナル抗体がCLDN18.2の細胞外領域に特異的に結合し、CLDN18.2特異的抗体の生物学的活性を保証するように達成することができる。
【0009】
スクリーニング戦略に関しては、陽性スクリーニング及び陰性スクリーニングを組み合わせた戦略が本開示で使用される。まず、ヒトCLDN18.2を発現する組換え細胞を用いて陽性スクリーニングを行い、細胞に対して高い親和性を有するモノクローナル抗体を得て、次いで、ヒトCLDN18.2を発現する組換え細胞に結合し得る抗体クローンについてヒトCLDN18.1を発現する組換え細胞を用いて陰性スクリーニングを行い、CLDN18.2及びCLDN18.1の共通の細胞外領域構造に特異的に結合することができるモノクローナル抗体を除外する。さらに、本発明で用いる免疫原、陽性スクリーニング抗原、及び陰性スクリーニング抗原は、全て同じマウス由来細胞プラットフォームであり、プロセスを簡素化して、異種抗原の導入を回避するだけでなく、マウス由来細胞の個々のマウスに対する同種抗原効果によって生成された抗体を排除する陰性スクリーニング工程を可能にし、CLDN18.2の細胞外領域2に特異的に結合するモノクローナル抗体の生産効率を更に向上させる。
【0010】
本開示の更なる目的は、ヒトCLDN18.2に特異的に結合する抗体又はそのフラグメントを提供し、その用途を提供することである。本開示による抗体のフラグメントは、とりわけ、抗体の様々な機能的フラグメント、例えばその抗原結合部分、例えばFab、F(ab’)2又はscFvフラグメントを包含する。
【0011】
本開示は、以下の技術的解決策を提供する。
【0012】
1つの態様では、本開示は、抗ヒトクローディン18.2抗体の調製方法であって、
(1)表面にヒトクローディン18.2タンパク質を発現する細胞を免疫原として用いて、動物を免疫する工程と、
(2)工程(1)で免疫した動物を用いて抗体を産生することができる細胞クローンを調製する工程と、
(3)表面にヒトクローディン18.2タンパク質を発現する細胞を陽性スクリーニング抗原として用い、陽性スクリーニング抗原に対する結合活性を有する抗体、及び抗体を産生する細胞をスクリーニングする工程と、
(4)表面にヒトクローディン18.1タンパク質を発現する細胞を陰性スクリーニング抗原として用い、陰性スクリーニング抗原に対する結合活性を有する抗体、及び抗体を産生する細胞を排除する工程と、
を含む、調製方法を提供する。
【0013】
好ましくは、本開示による調製方法において、工程(1)においてヒトクローディン18.2タンパク質を発現する細胞は、免疫された動物と同じ種に由来し、好ましくは、ヒトクローディン18.2タンパク質を発現する細胞がマウス細胞であり、免疫された動物がマウスである。
【0014】
好ましくは、本開示による調製方法において、工程(2)において、抗体を産生することができる細胞クローンは、ハイブリドーマ手法及び単一細胞増幅手法からなる群から選択される手法により調製される。
【0015】
好ましくは、本開示による調製方法において、工程(3)における陽性スクリーニング抗原は、工程(1)における免疫原と同じであり、工程(4)における陰性スクリーニング抗原が工程(1)における免疫原と異なるのは、発現されるタンパク質がヒトクローディン18.1タンパク質である点のみである。
【0016】
好ましくは、本開示による調製方法において、工程(3)及び工程(4)は、それぞれ、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)及び蛍光共鳴エネルギー移動法(FRET)からなる群から選択される方法により行われる。
【0017】
別の態様では、本開示は、本開示の調製方法に従って得られた抗ヒトクローディン18.2抗体を提供する。
【0018】
好ましくは、本開示による抗ヒトクローディン18.2抗体は、ヒトクローディン18.2のN末端、好ましくは第1の細胞外ループ(ECL1)を含むヒトクローディン18.2のN末端の細胞外領域に特異的に結合する。
【0019】
好ましくは、本開示による抗ヒトクローディン18.2抗体は、nMスケールでヒトCLDN18.2に特異的な結合を有し、アイソタイプ陰性抗体(又は無関係な抗体)と比較してヒトCLDN18.1への結合において有意差を有さない。
【0020】
更なる態様では、本開示は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗体又はそのフラグメントであって、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は、以下:
(1)配列番号31に示されるVH-CDR1、配列番号32に示されるVH-CDR2、及び配列番号33に示されるVH-CDR3;並びに配列番号34に示されるVL-CDR1、配列番号35に示されるVL-CDR2、及び配列番号36に示されるVL-CDR3;
(2)配列番号37に示されるVH-CDR1、配列番号38に示されるVH-CDR2、及び配列番号39に示されるVH-CDR3;並びに配列番号40に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号42に示されるVL-CDR3;
(3)配列番号43に示されるVH-CDR1、配列番号44に示されるVH-CDR2、及び配列番号45に示されるVH-CDR3;並びに配列番号46に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号47に示されるVL-CDR3;
(4)配列番号48に示されるVH-CDR1、配列番号49に示されるVH-CDR2、及び配列番号50に示されるVH-CDR3;並びに配列番号40に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号51に示されるVL-CDR3;
(5)配列番号52に示されるVH-CDR1、配列番号53に示されるVH-CDR2、及び配列番号54に示されるVH-CDR3;並びに配列番号55に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号56に示されるVL-CDR3;
(6)配列番号57に示されるVH-CDR1、配列番号58に示されるVH-CDR2、及び配列番号33に示されるVH-CDR3;並びに配列番号34に示されるVL-CDR1、配列番号59に示されるVL-CDR2、及び配列番号60に示されるVL-CDR3;
(7)配列番号61に示されるVH-CDR1、配列番号62に示されるVH-CDR2、及び配列番号63に示されるVH-CDR3;並びに配列番号46に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号64に示されるVL-CDR3;
(8)配列番号65に示されるVH-CDR1、配列番号66に示されるVH-CDR2、及び配列番号67に示されるVH-CDR3;並びに配列番号68に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号69に示されるVL-CDR3;
(9)配列番号65に示されるVH-CDR1、配列番号70に示されるVH-CDR2、及び配列番号71に示されるVH-CDR3;並びに配列番号72に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号73に示されるVL-CDR3;
(10)配列番号74に示されるVH-CDR1、配列番号75に示されるVH-CDR2、及び配列番号76に示されるVH-CDR3;並びに配列番号77に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号78に示されるVL-CDR3;
(11)配列番号79に示されるVH-CDR1、配列番号80に示されるVH-CDR2、及び配列番号81に示されるVH-CDR3;並びに配列番号82に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号83に示されるVL-CDR3;
(12)配列番号37に示されるVH-CDR1、配列番号38に示されるVH-CDR2、及び配列番号39に示されるVH-CDR3;並びに配列番号85に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号42に示されるVL-CDR3;
(13)配列番号37に示されるVH-CDR1、配列番号38に示されるVH-CDR2、及び配列番号39に示されるVH-CDR3;並びに配列番号85に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号86に示されるVL-CDR3;
(14)配列番号37に示されるVH-CDR1、配列番号38に示されるVH-CDR2、及び配列番号39に示されるVH-CDR3;並びに配列番号85に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号87に示されるVL-CDR3;
(15)配列番号74に示されるVH-CDR1、配列番号75に示されるVH-CDR2、及び配列番号76に示されるVH-CDR3;並びに配列番号89に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号90に示されるVL-CDR3;並びに、
(16)配列番号79に示されるVH-CDR1、配列番号91に示されるVH-CDR2、及び配列番号81に示されるVH-CDR3;並びに配列番号92に示されるVL-CDR1、配列番号41に示されるVL-CDR2、及び配列番号93に示されるVL-CDR3;
からなる群から選択されるCDR(VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3;及びVL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3)の組合せを含む、抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0021】
好ましくは、本開示による抗体又はそのフラグメントにおいて、重鎖可変領域は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号27、及び配列番号29のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は軽鎖可変領域は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、及び配列番号30のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
本開示の特定の実施の形態によれば、抗体又はそのフラグメントは、以下:
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(2)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(3)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(4)配列番号7に示されるアミノ酸配列、又は配列番号7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号8に示されるアミノ酸配列、又は配列番号8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(5)配列番号9に示されるアミノ酸配列、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号10に示されるアミノ酸配列、又は配列番号10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(6)配列番号11に示されるアミノ酸配列、又は配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号12に示されるアミノ酸配列、又は配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(7)配列番号13に示されるアミノ酸配列、又は配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号14に示されるアミノ酸配列、又は配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(8)配列番号15に示されるアミノ酸配列、又は配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号16に示されるアミノ酸配列、又は配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(9)配列番号17に示されるアミノ酸配列、又は配列番号17に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号18に示されるアミノ酸配列、又は配列番号18に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(10)配列番号19に示されるアミノ酸配列、又は配列番号19に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号20に示されるアミノ酸配列、又は配列番号20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(11)配列番号21に示されるアミノ酸配列、又は配列番号21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号22に示されるアミノ酸配列、又は配列番号22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(12)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号24に示されるアミノ酸配列、又は配列番号24に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(13)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号25に示されるアミノ酸配列、又は配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(14)配列番号23に示されるアミノ酸配列、又は配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号26に示されるアミノ酸配列、又は配列番号26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;
(15)配列番号27に示されるアミノ酸配列、又は配列番号27に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号28に示されるアミノ酸配列、又は配列番号28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列;並びに、
(16)配列番号29に示されるアミノ酸配列、又は配列番号29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号30に示されるアミノ酸配列、又は配列番号30に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
からなる群から選択される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。
【0023】
本開示の文脈において少なくとも75%の同一性は、75%以上の任意の同一性パーセント、例えば少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は更に99%の同一性である。
【0024】
本開示による抗体又はそのフラグメントは、任意の形態、例えば、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、ナノボディ、完全若しくは部分ヒト化抗体、又はキメラ抗体等であるか、或いは、抗体又はそのフラグメントは、半抗体又は半抗体の抗原結合フラグメントであり、例えば、一本鎖可変フラグメント(scFv)、二価の一本鎖可変フラグメント(BsFv)、ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、(ジスルフィド安定化Fvフラグメント)2(dsFv)2、抗原結合フラグメント(Fab)、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、又は可変フラグメント(Fv)である。本開示によって提供されるフラグメントに関して、好ましくは、抗体又はそのフラグメントは、ヒトクローディン18.2に結合し得る抗体の任意のフラグメントである。
【0025】
好ましくは、抗体又はそのフラグメントは、ヒト又はマウス定常領域、好ましくはヒト又はマウス軽鎖定常領域(CL)及び/又は重鎖定常領域(CH)を更に含み、より好ましくは、抗体又はそのフラグメントは、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEからなる群から選択される重鎖定常領域及び/又はカッパ型若しくはラムダ型の軽鎖定常領域を含む。
【0026】
好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体、好ましくはマウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体であり、好ましくは、モノクローナル抗体の重鎖定常領域はIgG1又はIgG4サブタイプのものであり、モノクローナル抗体の軽鎖定常領域はカッパ型である。
【0027】
本開示の特定の実施の形態によれば、モノクローナル抗体の重鎖定常領域は、配列番号124に示されるアミノ酸配列、又は示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含む。本開示の特定の実施の形態によれば、モノクローナル抗体の軽鎖定常領域は、配列番号125に示されるアミノ酸配列、又は示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0028】
更に別の態様では、本開示は、本開示による抗体若しくはそのフラグメントをコードする、又は抗体若しくはそのフラグメントに含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0029】
本開示の特定の実施の形態によれば、核酸分子は、本開示による抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む。例えば、核酸分子は、配列番号96~配列番号125に示されるような塩基配列を含む。
【0030】
本開示による核酸分子は、ベクターにクローニングすることができ、次にこのベクターが宿主細胞をトランスフェクト又は形質転換する。更に別の態様では、本開示は、本開示の核酸分子を含むベクターを提供する。ベクターは、真核生物発現ベクター、原核生物発現ベクター、人工染色体、ファージベクター等であり得る。
【0031】
本開示のベクター又は核酸分子は、宿主細胞を形質転換若しくはトランスフェクトするために、又は抗体の保存若しくは発現等のために宿主細胞に任意の方法で入るために使用され得る。したがって、更なる態様では、本開示は、本開示による核酸分子及び/又はベクターを含む宿主細胞、又は本開示による核酸分子及び/又はベクターで形質転換若しくはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の原核生物又は真核生物細胞、例えば細菌若しくは昆虫、真菌、植物又は動物の細胞であり得る。
【0032】
本開示による抗体は、当該技術分野で知られている任意の従来の技術を用いて得ることができる。例えば、抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、又は抗体の重鎖及び/又は軽鎖は、本開示によって提供される核酸分子から得ることができ、次いで、抗体は、それらを抗体の任意の他のドメインと共に集合させることによって得られるか、或いは、本開示によって提供される宿主細胞は、宿主細胞が抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、又は抗体の重鎖及び/又は軽鎖を発現し、それらを抗体に集合させることを可能にする条件下で培養される。任意に、この方法は、産生された抗体を回収する工程を更に含む。
【0033】
本開示によって提供される抗体又はそのフラグメントはまた、他の部分、例えば、細胞表面受容体、アミノ酸及び炭水化物等の小分子化合物、小分子ポリマー、若しくは本開示の抗体を修飾する任意の他の部分、又は活性タンパク質若しくは活性ポリペプチドと組み合わせることもできる。したがって、別の態様では、本発明は、本開示によって提供される抗体又はそのフラグメントを含むコンジュゲート又は融合タンパク質を提供する。例えば、コンジュゲート又は融合タンパク質は、本開示による抗体又はそのフラグメントを含む二重特異性抗体であり得る。
【0034】
本開示によって提供される抗体若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、及び/又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質は、医薬組成物、より詳しくは、医薬製剤に含有されてもよく、実際に必要に応じて様々な目的に使用される。したがって、更なる態様では、本開示はまた、本開示による抗体若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、及び/又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質と、任意に薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0035】
任意の使用目的のため、本開示はまた、本開示の抗体若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、医薬組成物及び/又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質を含むキットを提供する。
【0036】
別の態様では、本開示はまた、癌の予防及び/又は治療のための医薬の製造における上記のような抗体若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、及び/又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質の使用を提供する。好ましくは、癌は、膵臓癌、胃癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌、卵巣癌、肺癌、胆嚢癌、及び頭頸部癌からなる群から選択される。
【0037】
更なる態様では、本開示はまた、癌の診断のための試薬の製造における上記のような抗体若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、及び/又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質の使用を提供する。好ましくは、癌は、膵臓癌、胃癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌、卵巣癌、肺癌、胆嚢癌、及び頭頸部癌からなる群から選択される。
【0038】
別の態様では、本発明はまた、癌を予防及び/又は治療する方法を提供し、該方法は、本開示による抗体若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、及び/又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質と任意に他の薬物又は手段とを、それを必要とする被験体に投与することを含む。任意の他の薬物又は手段は、本開示の抗体若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、及び/又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質と組み合わせて投与され得る他の薬物又は手段、例えば小分子薬物;標的薬物;抗体、ワクチン、ADC、腫瘍溶解性ウイルス、遺伝子又は核酸療法薬等の組換えタンパク質薬物;及び放射線療法を指す。2者の同時投与は、同時、逐次的又は間隔をおくことを含む任意の方法であってもよい。
【0039】
好ましくは、癌は、膵臓癌、胃癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌、卵巣癌、肺癌、胆嚢癌、及び頭頸部癌からなる群から選択される。好ましくは、被験体は哺乳動物であり、より好ましくは、被験体はヒトである。
【0040】
或いは、本発明はまた、癌を診断する方法を提供し、該方法は、本開示による抗体若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、及び/又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質を被験体に由来する試料と接触させることを含む。好ましくは、癌は、膵臓癌、胃(stomach)癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌、卵巣癌、肺癌、胆嚢癌、及び頭頸部癌からなる群から選択される。好ましくは、被験体は哺乳動物であり、より好ましくは、被験体はヒトである。
【0041】
レンチウイルスベクターを介して本開示による抗ヒトクローディン18.2抗体をコードする遺伝子を健常ドナー由来の初代T細胞に形質導入し、調製したCAR-T細胞がヒトクローディン18.2を発現する細胞によって効率的に活性化されることを見出した。したがって、更なる態様では、本発明はまた、CAR-T細胞の製造における本開示による抗体若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、及び/又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質の使用を提供する。
【0042】
本発明は、ヒトクローディン18.2に特異的に結合することができる新規抗体を提供する。既存の抗ヒトクローディン18.2抗体とは対照的に、本開示による抗体は、以下の特徴を有する。
【0043】
本開示によって提供される抗ヒトクローディン18.2抗体は、抗原クローディン18.2に対して強い親和性を示し、標的発現細胞に対して有意な補体依存性細胞傷害(CDC)活性及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有し、いずれもIMAB362よりも強かったか、又はIMAB362に匹敵していた。さらに、本開示の抗ヒトクローディン18.2抗体は、IMAB362と比較してヒトCLDN18.2に対してより高い特異性を示した。
【0044】
さらに、レンチウイルスベクターを介して本開示による抗ヒトクローディン18.2抗体をコードする遺伝子を健常ドナー由来の初代T細胞に形質導入し、CAR-T細胞を調製した。標的細胞の刺激に際し、調製したCAR-T細胞を、CAR-T細胞の表面上の活性化タンパク質CD25及び分泌されたIFNγについて検出し、ヒトクローディン18.2を発現する細胞によって効率的に活性化されることが見出され、ヒトCLDN18.2に関する本開示による抗体の標的特異性を実証した。
【0045】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語の意味は、当業者によって一般的に理解される意味である。本明細書に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、並びにタンパク質及びオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの化学及びハイブリダイゼーションにおいて使用される命名法及び技術は、当該技術分野においてよく知られており、一般的に使用されている。標準的手法は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、脂質トランスフェクション)に使用される。酵素反応及び精製技術は、当該技術分野において通常使用されるか、又は本明細書に記載される製造業者の仕様又は手順に従って行われる。前述の技術及び手順は、当該技術分野において一般的に知られている多くの包括的でより具体的な文献に記載される通りに使用され、本明細書において引用及び検討される。例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))を参照されたい。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、並びに医学及び薬学化学において使用される命名法、並びに実験室の手順及び技術は、当該技術分野においてよく知られており、一般的に使用されている。
【0046】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、一般に、2対のポリペプチド鎖(各対が1つの「軽」(L)鎖及び1つの「重」(H)鎖を有する)からなる免疫グロブリン分子を指す。一般的な意味では、重鎖は、抗体においてより大きな分子量を有するポリペプチド鎖として解釈することができ、軽鎖は、抗体においてより小さい分子量を有するポリペプチド鎖を指す。軽鎖は、κ及びλ軽鎖に分類される。重鎖は一般に、μ、δ、γ、α又はεに分類され、抗体のアイソタイプはそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとして定義される。軽鎖及び重鎖において、可変領域及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約3個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。抗体の定常領域は、宿主の組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができ、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)の古典的補体系の第1成分(C1q)への結合を含む。VH領域及びVL領域は、高度に可変な領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に更に細分化することができ、その間にフレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存領域が分布している。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシル末端に以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VH及びVL)は、それぞれ抗体結合部位を形成する。各領域又はドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、又はChothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917; Chothia et al. (1989) Nature 342:878-883の定義に従う。特に、重鎖はまた、6個、9個、又は12個等の4個以上のCDRを含み得る。例えば、本発明の二重特異性抗体において、重鎖は、IgG抗体の重鎖のN末端が別の抗体に連結されたScFvであってもよく、この場合、重鎖は9個のCDRを含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「抗原結合フラグメント」という用語は、全長抗体が結合する同じ抗原に特異的に結合する能力を維持する、及び/又は「抗原結合部分」としても知られる抗原への特異的結合について全長抗体と競合する、全長抗体のフラグメントを含むポリペプチドを指す。一般に、Fundamental Immunology, Ch.7 (Paul, W., ed., 2nd edition, Raven Press, N.Y. (1989)を参照されたい(あらゆる目的でその全体を引用することにより本明細書の一部をなす)。抗体の抗原結合フラグメントは、組換えDNA技術によって、又はインタクトな抗体の酵素的若しくは化学的な切断によって製造することができる。場合によっては、抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域(CDR)フラグメント、単鎖抗体フラグメント(例えば、scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、及びポリペプチドに特異的な抗原結合能を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含むポリペプチドを含む。
【0048】
本明細書で使用される場合、「Fvフラグメント」という用語は、抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなる抗体フラグメントを指し、「Fabフラグメント」という用語は、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1(又はCH)ドメインからなる抗体フラグメントを指し、「F(ab’)2」という用語は、ヒンジ領域上のジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む抗体フラグメントを指す。
【0049】
幾つかの場合、抗体の抗原結合フラグメントは、VLドメイン及びVHドメインが対合して、それらが単一のポリペプチド鎖を生成することを可能にするリンカーを介して一価分子を形成している一本鎖結合フラグメント(例えば、scFv)である(例えば、Bird et al., Science 242:423-426 (1988)及びHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988)を参照されたい)。かかるscFv分子は、一般的な構造:NH2-VL-リンカー-VH-COOH、又はNH2-VH-リンカー-VL-COOHを有し得る。適切な先行技術のリンカーは、反復G4Sアミノ酸配列又はその変異体からなる。例えば、アミノ酸配列(G4S)4を有するリンカーを用いることができるが、その変異体も用いることができる(Holliger et al. (1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448)。
【0050】
抗体の抗原結合フラグメント(例えば、上述の抗体フラグメント)は、当業者に既知の従来の手法(例えば、組換えDNA技術、又は酵素的若しくは化学的な切断)を用いて所与の抗体から得ることができ、抗体の抗原結合フラグメントは、インタクトな抗体の場合と同様に特異性についてスクリーニングされる。
【0051】
本明細書で使用される場合、文脈において特に明確に定義されない限り、「抗体」という用語に言及する場合、それはインタクトな抗体だけでなく、抗体の抗原結合フラグメントも含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、人工的な手段によって天然の状態から得られる状態を指す。或る特定の「単離された」物質又は成分が自然界に存在する場合、それは、その自然環境が変化するか、又は物質が自然環境から単離されるか、又はその両方であるから可能である。例えば、或る特定の単離されていないポリヌクレオチド又はポリペプチドが、或る特定の動物生体内に天然に存在し、かかる天然の状態から単離された高純度の同じポリヌクレオチド又はポリペプチドを、単離されたポリヌクレオチド又はポリペプチドと呼ぶ。「単離された」という用語は、単離された物質の活性に影響を及ぼさない混合された人工物質若しくは合成物質、又は他の不純物質を排除するものではない。
【0053】
「宿主細胞」という用語は、ベクターを導入することができる細胞を指し、限定されるものではないが、大腸菌(Escherichia coli)細胞等の原核細胞、酵母細胞等の真菌細胞、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(S2)細胞若しくはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞等の昆虫細胞、又は線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞又はヒト細胞等の動物細胞を含む。
【0054】
「KD」という用語は、特異的抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)を指し、これは、抗体と抗原との間の結合親和性を記述するために使用される。平衡解離定数が小さければ小さいほど、抗体-抗原結合が近くなり、抗体と抗原との間の親和性が高くなる。一般に、抗体は、例えば、BIACORE機器における表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定する場合、約10-5M未満、例えば、約10-6M未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、又は10-10M未満の、又はそれよりも少ない平衡解離定数で抗原に結合する。例えば、抗体の細胞との親和性は、KINEXA法を用いてKINEXA 400機器で検出される。
【0055】
「特異的結合」という用語は、抗体が抗原の1つ以上の抗原決定基と反応するが、他のポリペプチドとは反応しないか、又は抗体が非常に低い親和性(Kd>10-6)で他のポリペプチドに結合することを意味する。抗体としては、限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、一本鎖、Fab、Fab’及びF(ab’)2フラグメント、Fv、scFv及びFab発現ライブラリーが挙げられる。モノクローナル抗体(mAb)は、モノクローナル細胞株から得られる抗体であり、細胞株は真核生物、原核生物又はファージクローン細胞株に限定されない。モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えばハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージディスプレイ技術、及びCDR移植等の合成技術、又は他の既知の手法を用いて組換えを行うことにより得ることができる。
【0056】
本開示の「マウス抗体」は、当該技術分野の知識及び技能に従って産生されたヒトCLDN18.2に対するモノクローナル抗体である。産生の間、試験被験体にCLDN18.2抗原を注射し、次いで、所望の配列又は機能特性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離する。
【0057】
本開示の「キメラ抗体」は、マウス由来抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域とを融合させてなる抗体であり、マウス由来抗体により誘導される免疫応答を低下させることができる。キメラ抗体を樹立するためには、まずマウス由来特異的モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを樹立し、マウスハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子をクローニングし、次いで必要に応じてヒト抗体の定常領域遺伝子をクローニングし、マウス可変領域とヒト定常領域遺伝子とを連結することによって形成されるキメラ遺伝子を発現ベクターに挿入する必要がある。最後に、キメラ抗体は、真核生物系又は原核生物系において発現される。
【0058】
本開示の「ヒト化抗体」は、CDR移植抗体(CDR grafted antibody)とも呼ばれ、マウスCDR配列をヒト抗体の可変領域フレームワーク(FR)に移植することによって産生される抗体である。かかる可変領域フレームワーク配列は、公開DNAデータベース又は公開参考文献から、例えば、ImMunoGeneTics(IMGT)ウェブサイトhttp://imgt.cines.frから、又はthe Journal of Immunoglobulin, 2001ISBN012441351から得ることができる。
【0059】
「CLDN18.2」という用語は、アイソフォーム、哺乳動物(例えばヒト)CLDN18.2、ヒトCLDN18.2の種相同体、及びヒトCLDN18.2と共通の少なくとも1つのエピトープを有する類縁体(analogs)を含む。CLDN18.2(例えばヒトCLDN18.2)のアミノ酸配列は、例えばNCBIデータベースに示されるように、当該技術分野において知られている。
【0060】
「CLDN18.1」という用語は、アイソフォーム、哺乳動物(例えばヒト)CLDN18.1、ヒトCLDN18.1の種相同体、及びヒトCLDN18.1と共通の少なくとも1つのエピトープを有する類縁体(analogs)を含む。CLDN18.1(例えばヒトCLDN18.1)のアミノ酸配列は、例えばNCBIデータベースに示されるように、当該技術分野において知られている。
【0061】
「任意の(optional)」、「任意に(optionally)」、「任意の(any)」、又は「いずれか1つ(any one)」は、次に続く事象又は状況が起こり得るが、必ずしも起こらないことを意味し、その記載は、事象又は状況が発生するか又は発生しない場合を含む。例えば、「任意に1つの抗体重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列を有する抗体重鎖可変領域が存在し得るが、必ずしも存在しなくてもよいことを意味する。
【0062】
「医薬組成物」という用語は、本開示の1つ以上の化合物、又はその生理学的に/薬学的に許容され得る塩若しくはプロドラッグを、他の化学成分と並んで生理学的に/薬学的に許容され得る担体及び賦形剤等の他の成分と共に含む混合物を指す。医薬組成物は、生物への投与を容易にし、生物活性を発揮する有効成分の吸収を促進するために用いられる。治療用組成物は、一般に、製造及び保存の条件下にて無菌で安定でなくてはならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高抗体濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。滅菌注射用溶液は、活性化合物(すなわち、抗体又は抗体部分)を、上記に列挙したような1つの成分又は成分の組合せと共に適切な溶媒中に必要量で組み込み、必要に応じて、その後、滅菌のため濾過されることによって調製することができる。
【0063】
本開示による方法、組成物、及び併用療法は、他の活性剤又は治療方法と組み合わせることができる。この方法は、疾患(例えば、癌)の治療又は予防に有効な量の本開示のCLDN18.2抗体分子を、任意に、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、CTLA-4、若しくはTim-3抗体(免疫療法)、又はHer-2、EGFR、VEGF、VEGFR抗体等の他の腫瘍治療用抗体、並びにADC(T-DM1等の抗体薬物コンジュゲート)、二重特異性抗体、化学療法薬等から選択される1種以上の阻害剤と組み合わせて、被験体に投与することを含む。該方法はまた、単独で(例えば、単独療法として)使用される各活性剤の量又は用量より高い、より低い、又はそれと等しい量又は用量で投与され得るCLDN18.2抗体分子、追加の活性剤又は全ての投与を含む。CLDN18.2抗体分子、追加の活性剤又はそれらの全ての投与量又は投与用量は、単独で(例えば、単独療法として)使用される各活性剤の量又は用量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%)。
【0064】
さらに、本開示の抗CLDN18.2抗体は、CLDN18.2に結合して標的細胞(腫瘍細胞)のアポトーシスを誘導し、腫瘍細胞の増殖を阻害し、in vivoでエフェクター細胞による腫瘍細胞に対するADCCを増大させ、癌患者を治療するためのCDC殺傷効果を得ることができる。したがって、或る特定の実施の形態において、本明細書に記載の抗CLDN18.2抗体分子は、これらの機構を介して本開示の抗体の抗腫瘍効果を示す。また、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法が提供され、これは、治療有効量の本明細書に記載の抗CLDN18.2抗体分子を被験体に投与することを含む。この方法は、癌のin vivo治療に適している。標的特異的な治療効果を得るために、抗CLDN18.2抗体分子を他の抗体と共に投与してもよい。CLDN18.2抗体が1つ以上の活性剤と組み合わせて投与される場合、その組合せは、癌の種類に対して、特にCLDN18.2発現腫瘍を有する患者に対して、任意の順序で又は同時に投与され得る。或る特定の態様では、被験体において、固形腫瘍、血液学的癌、軟部組織腫瘍、又は転移性病変等の過剰増殖性の状態又は疾患(例えば、癌)を治療(例えば、軽減又は緩和)する方法が提供される。該方法は、本明細書に記載の1つ以上の抗CLDN18.2抗体分子を、単独で、又は他の活性剤若しくは治療と組み合わせて被験体に投与することを含む。
【0065】
本明細書で使用される場合、「癌腫(carcinoma)」、「癌」、「癌患者」という用語は、組織病理学的タイプ又は侵襲性の段階にかかわらず、全てのタイプの癌化増殖若しくは腫瘍形成のプロセス、転移性組織、又は悪性形質転換細胞、組織若しくは器官を含むことを意図する。例としては、限定されるものではないが、固形腫瘍、血液学的癌、軟部組織腫瘍、及び転移性病変が挙げられる。固形腫瘍の例としては、肝臓、肺、乳房、リンパ、胃腸管(例えば結腸)、尿生殖路(例えば腎臓、膀胱上皮細胞)、前立腺及び咽頭を冒すもの等の多臓器系の悪性腫瘍、例えば肉腫及び癌腫(腺癌及び扁平上皮癌を含む)が挙げられる。腺癌としては、結腸癌、直腸癌、胃(stomach)癌、腎細胞癌、肝臓癌及び肺癌の大部分における非小細胞癌、小腸癌、並びに食道癌等の悪性腫瘍が挙げられる。扁平上皮癌としては、肺、食道、皮膚、頭頸部領域、口腔、肛門及び子宮頸部等の悪性腫瘍が挙げられる。また、前述の癌の転移性病変が本開示の方法及び組成物を用いて治療又は予防され得る。CLDN18.2に向けられた抗体分子は、癌細胞、精製腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド及び糖分子を含む)、細胞及び免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトした細胞等の免疫原性物質と組み合わせることができる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「抗体依存性細胞傷害」(ADCC)という用語は、好ましくは標的細胞が抗体によってマークされることを必要とするエフェクター細胞(特にリンパ球)の細胞殺傷能力を説明する。ADCCは、好ましくは、抗体が腫瘍細胞上の抗原に結合し、抗体Fcドメインが免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcR)に係合するときに生じる。Fc受容体の幾つかのファミリーが同定されており、特定の細胞集団は、規定のFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、抗原提示及び腫瘍指向性T細胞応答の誘導をもたらす様々な程度の即時腫瘍破壊を直接誘導する機構と見なすことができる。好ましくは、ADCCのin vivo誘導は、腫瘍指向性T細胞応答及び宿主由来抗体応答をもたらすであろう。
【0067】
本明細書で使用される場合、「補体依存性細胞傷害性」(CDC)という用語は、抗体によって指示され得る別の細胞殺傷方法である。IgMは補体活性化に最も効果的なアイソタイプである。IgG1及びIgG3はまた、いずれも古典的な補体活性化経路を介してCDCを導くのに非常に有効である。好ましくは、このカスケードにおいて、抗原抗体複合体の形成は、IgG分子等の関与抗体分子のCH2ドメイン上の極めて近接した複数のC1q結合部位の解除(uncloaking)を生じる(C1qは補体CIの3つのサブコンポーネントのうちの1つである)。好ましくは、これらの解除されたC1q結合部位は、以前は低親和性のC1q-IgG相互作用を高いアビディティのものに変換し、これは一連の他の補体タンパク質を含む事象のカスケードを誘発し、エフェクター細胞走化性薬剤/活性化剤であるC3a及びC5aのタンパク質分解的放出につながる。好ましくは、補体カスケードは、膜攻撃複合体の形成において終了し、これは、細胞膜内に細孔を作り出し、水及び溶質の細胞への自由な出入りを促進する。
【0068】
驚くべきことに、本明細書の抗CLDN18.2抗体を用いて調製された抗体薬物コンジュゲートは、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解及び/又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解を誘導することによって、細胞、特に癌細胞等のCLDN18.2を発現する細胞の死滅を媒介できることがわかった。したがって、一実施の形態において、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解及び/又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解を誘導することによって、好ましくはCDC媒介性溶解及びADCC媒介性溶解を誘導することによって、細胞死滅を媒介する。
【0069】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】抗ヒトCLDN18.2キメラ抗体のin vitroでの細胞結合アッセイの結果を示す図である。
【
図2A】CHOK1細胞に関して、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体の補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイの結果を示す図である。
【
図2B】BxPC3細胞に関して、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体の補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイの結果を示す図である。
【
図2C】NCI-N87細胞に関して、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体の補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイの結果を示す図である。
【
図3A】CHOK1細胞に関して、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイの結果を示す図である。
【
図3B】BxPC3細胞に関して、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイの結果を示す図である。
【
図3C】NCI-N87細胞に関して、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイの結果を示す図である。
【
図4】同ファミリーのタンパク質に対する抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体の結合特性を分析した結果を示す図である。
【
図5】ヒトCLDN18.1発現細胞に対する異なる濃度での抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体の結合を示す図である。
【
図6】抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体の種交差結合特性を分析した結果を示す図である。
【
図7】異なる群における調製したCAR-T細胞の検出された陽性パーセンテージの結果を示す図である。
【
図8】構築された異なるCHO細胞株の異なる抗原発現プロファイルを示す図である。
【
図9】異なる群のCAR-T細胞を標的細胞と共にインキュベーションした後の上清中でIFN-γを検出した結果を示す図である。
【
図10】標的細胞とのインキュベーション後に異なる群のCAR-T細胞上でCD25発現を検出した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に本発明を、具体例を参照して説明する。これらの実施例は本発明の単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではないことが当業者には理解されよう。
【0072】
以下の実施例における実験手順は、特に明示がない限り、全て慣用のものである。以下の実施例で用いた材料及び試薬は、特に明示がない限り、いずれも市販品である。
【0073】
IMAB362の重鎖配列及び軽鎖配列は、配列番号126及び配列番号127に示す通りである。
【0074】
抗原ヒトCLDN18.2はNP_001002026.1に示す通りであり、抗原ヒトCLDN18.1はNP_057453.1に示す通りである。
【0075】
図中の陰性対照(アイソタイプ対照)は、全長の抗CD33 IgG抗体リンツズマブである。
【実施例】
【0076】
実施例1 マウスモノクローナル抗体のスクリーニング
Balb/cマウスを、細胞表面にヒトCLDN18.2タンパク質を安定に発現するCHOK1細胞で免疫した。1ヶ月後、マウス由来の血清をフローサイトメトリー(FACS)で分析し、血清中の抗体価が高いマウスから脾臓を採取した。標準的な方法で単離した脾臓細胞を、PEG法又は電気融合法を用いて骨髄腫細胞P3X63Ag8.653と融合させた。融合したハイブリドーマ細胞を384ウェルプレートに播種し、10日~14日間培養後、得られた上清をハイブリドーマ細胞による抗体分泌についてFACSで分析した。細胞表面にヒトCLDN18.2タンパク質を安定に発現するCHOK1細胞に結合することができ、細胞表面にヒトCLDN18.1タンパク質を安定に発現するCHOK1細胞には結合できなかったクローンが幾つか得られた。得られたクローンの単一細胞を限界希釈によって取得し、3倍に希釈した後に得られたモノクローナルハイブリドーマ細胞クローンの各々は1つの抗体のみを分泌した。
【0077】
抗ヒトCLDN18.2を分泌するモノクローナルハイブリドーマ細胞を増殖培養に供し、キットの説明書に記載される工程に従ってRNAfast200キット(Shanghai Flytech Biotechnology Co., Ltd.)を用いて細胞の全RNAを抽出し、得られたハイブリドーマ細胞の全RNAを、5×PrimeScript RTマスターミックス(Takara)を用いてcDNAに逆転写させ、抗体軽鎖可変領域IgVL(κ)及び重鎖可変領域VHの配列を、縮重プライマー(Anke Krebber., 1997)及びExtaq PCR試薬(Takara)を用いて増幅した。PCR増幅産物を、PCRクリーンアップゲル抽出キット(Macherey-Nagel GmbH & Co.)を用いて精製し、キットの説明書に従ってpClone007シンプルベクターキット(Tsingke Biotechnology Co., Ltd.)を用いてT-ベクターに連結させ、コンピテント大腸菌(Escherichia coli)細胞に形質転換した。モノクローナル抗体の可変領域配列は、株増幅及びプラスミド抽出後のDNAシーケンシングにより得た。
【0078】
【0079】
>11M23_vh(配列番号1)
QVQLKESGPDLVAPSQSLSITCTVSGFSLTNYGVHWVRQPPGKGLEWLVVIWSDGRINYNSALKSRLSITKDNSKRQVFLKMNSLQIDDTAIYYCVRHPAFGPHAMDYWGQGISVTVSS
>11M23_vl(配列番号2)
DIVMTQDAPSIPVTPGESVSISCRSSKSLLNSNGNTYLYWFLQRPGQSPHLLLYRMSNPASGAPDRFSGSGSGTEFTLRISRVEAEDVGVYYCMQYLEYPPTFGAGTRLELK
>16K15_vh(配列番号3)
EVMLVESGGGLVRPGGSLKLSCAGSGITLSTYAMSWVRQTPERRLEWVASIISGGITYYLDSVKGRFTISRDNARNILYLQMSSLRSEDTAIYYCARKYHGNALDYWGQGTSVTVSL
>16K15_vl(配列番号4)
DIVMTQSPSSLPVTAGETVTMRCKSSQSLLNSGNQRNYLTWYQRKPGQPPKKLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISGVQAEDLAVYYCQNNYFYPLTFGAGTKLELK
>18B21_vh(配列番号5)
QIQMVQSGPELKKPGETVRISCKASGYSFTTAGMQWVRKMPGEGLKWIGWIIAHSGEPKYTEDFKGRFAFSLETSASTTYLQISNLKNEDTATYFCARWGKGNTMDYWGQGTSVIVSS
>18B21_vl(配列番号6)
DIVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNGGNQRNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTHFTLTISSVQAEDLAVYYCQNAYFFPLTFGAGTKLELK
>20L17_vh(配列番号7)
DVQLVESGGGLVQPGGSRKLSCAASGFTFSSFGMHWVRQAPEKGLEWVAYISSGSSTIYYPDTVKGRFTVSRDNPKNTLFLQMTSLRSEDTAMYYCVRLGPRGNVMDHWGQGTSVTVSS
>20L17_vl(配列番号8)
DIVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQRNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNVYFYPLTFGTGTKLELR
>43B5_vh(配列番号9)
DVQLQESGPDLVKPSQSLSLTCTVSGYSISGAYNWHWIRQFPGNKLEWLAYMQYSGSSNYNPSFKSRISISRDTSKNQFFLQLKSVTTEDTATYYCARMYNGNSFLYWGQGTLVTVSA
>43B5_vl(配列番号10)
DIVMTQSPSSLTVTAGEKVTMNCKSSQSLFNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLSLYYCQNSYSYPLTFGAGTKLELK
>43L6_vh(配列番号11)
QVQLKESGPDLVAPSQSLSLTCSVSGFSLTSYGIHWVRQPPGKGLEWLVVIWSDGRTTYNSGLKSRLSISKDNSKSQVLLKMNSLRTDDTAIYYCVRHPAFGPHAMDYWGQGTSVTVSS
>43L6_vl(配列番号12)
DIVMTQAAPSVPVTPGESVSISCRSSKSLLNSNGNTYLYWFLQRPGQSPQLLIYRMSNLASGVPDRFSGSGSGTDFTLRISRVEAGDVGVYYCMQYLEYPVTFGAGTKLELK
>46J05_vh(配列番号13)
DVQLVESGGGLVQPGGSRKLSCAASGFTFSRFGMHWVRQAPKKGLEWVAYISSGSNTIYYADTVKGRFTISRDNPKNTLFLQTTSLRSEDTAIYYCGRLGFYGNSFDHWGQGTLVTVSA
>46J05_vl(配列番号14)
NILMTQSPSSLTVTAGEKVTMNCKSSQSLLNGGNQRNYLTWYQQKAGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGGGSGTDFTLTISSVQAEDLALYYCQNSYYYPLTFGAGTKLELK
>48G12_vh(配列番号15)
EVQLRQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTTYIINWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDDTRYNERVKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVYYCARFYFGNSFTYWGQGTLVTVSA
>48G12_vl(配列番号16)
DIVMTQSPSSLPVTVGERVTMTCKSSQGLFNSGNQRNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQNNYIYPLTFGAGTKLELK
>50C14_vh(配列番号17)
EVQLRQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTTYIINWVKQKPGQGLEWIGYINPYNDGTRYNERVKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVYYCARFHFGNSFTYWGQGTLVTVSA
>50C14_vl(配列番号18)
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>52E22_vh(配列番号19)
QIQLVQSGPELKKPGETVKISCKASGYTLTNYGMNWVRQAPGKGLKWMGWIRPNTGEPTYAEDFKGRFVFSLETSAATAYLQITNLKSEDTSTYFCARLYRGNTLDNWGQGTSVIVSS
>52E22_vl(配列番号20)
DIVMTQSPSSLTVTTGEKVTMSCKSSQNLLNSGNQRNYLTWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPYRFTGSGSGTDFTLTISSVQTDDLAIYYCQNGYSFPFTFGSGTKLEIK
>8K13_vh(配列番号21)
QVHLQQSGAELVRPGSSVKISCKASGYAFSNYWMNWVRQRPGQGLEWIGQIYPGNGDTKYSGKFNSKDTLTADKSSNTAYMQLNSLTSEDSAVYFCARFYYGNVMDYWGQGTSVTVSS
>8K13_vl(配列番号22)
DIVLTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQTLLNGGNQKNYLTWYQQKSGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNGYSYPLTFGVGTKLELK
【0080】
実施例2 抗ヒトCLDN18.2キメラ抗体の調製
各マウス抗ヒトCLDN18.2モノクローナル抗体の重鎖可変領域配列と、公開されたヒトモノクローナル抗体IgG1サブクラスの重鎖定常領域配列(配列番号124を参照されたい)とを共にスプライシングして、哺乳動物細胞発現ベクターへと構築し、また、各マウス抗ヒトCLDN18.2モノクローナル抗体の軽鎖可変領域配列と、公開されたヒトモノクローナル抗体カッパサブクラスの軽鎖定常領域配列(配列番号125を参照されたい)とを共にスプライシングして、哺乳動物細胞発現ベクターへと構築した。構築された抗ヒトCLDN18.2キメラ抗体の重鎖ベクターと軽鎖ベクターとをペアで混合し、ポリエチレンイミン(PEI)を用いてHEK293細胞にベクターをトランスフェクトし、約7日後に細胞上清を回収した。抗ヒトCLDN18.2キメラ抗体タンパク質を、プロテインA精製を介して得た。
【0081】
本開示のキメラ抗体を、フォーマットに従って「マウス抗体略語-xiIgG」と命名した。
【0082】
実施例3 抗ヒトCLDN18.2キメラ抗体のin vitroでの細胞結合アッセイ
キメラ抗ヒトCLDN18.2抗体を初期濃度100nMから勾配で2倍に希釈し、全部で16濃度の各抗体の溶液を得た。各濃度の各抗体の溶液10μlを384ウェルプレートに添加した。細胞表面にCLDN18.2を発現しているCHOK1細胞を室温にて100gで5分間遠心分離により回収し、0.5%BSAを含むPBSで細胞を1回洗浄した後、室温にて100gで5分間遠心分離した。細胞を約2×106細胞/mlの密度で再懸濁し、抗体が添加された384ウェルプレートの各ウェルに10μlを加えた。4℃で1時間インキュベートした後、蛍光標識した二次ヤギ抗ヒトIgG抗体を加えた。4℃で1時間のインキュベーションを継続した後、細胞集団の平均蛍光読み取り値をフローサイトメーターで分析した。
【0083】
結果は、キメラ抗体がnMスケールでヒトCLDN18.2を発現する細胞に特異的な結合を有することを示した。
図1を参照されたい。
【0084】
実施例4 抗ヒトCLDN18.2マウス抗体のヒト化
Kabatの包括的な分析、及びChothiaの抗体コードスキームに基づいて、各マウス抗体の重鎖及び軽鎖の6つの相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列領域、並びに保存された三次元立体構造を支持するフレームワーク領域を決定した。続いて、主にIGHVl | IGHJ4*01等のマウス抗体に類似するヒト抗体の重鎖可変領域を、既知のヒト抗体配列について検索し、選択した。フレームワーク領域配列を鋳型として選択し、マウス抗体の重鎖CDRをヒト抗体のフレームワーク領域と合わせ、最終的にヒト化重鎖可変領域配列を生成した。同様にして、ヒト化軽鎖可変領域配列を生成した。
【0085】
マウスCDRをヒトフレームワーク領域に直接移植した抗体は、しばしば結合活性の劇的な低下を示すため、フレームワーク領域内の個々のアミノ酸をヒトからマウスに戻す変換を必要とする。どの位置を元のマウス残基に戻す必要があるかを決定するため、設計したヒト化抗体配列と元のマウス抗体配列とを比較して、アミノ酸の違いを確認し、それらの異なるアミノ酸が抗体構造を支持する、又は抗原に結合するために重要であるかを確認する必要がある。ヒト化設計によって得られた配列を、N(アスパラギン)グリコシル化部位、N-脱アミド化部位、D(アスパラギン酸)異性化部位等の潜在的な翻訳後修飾部位(PTM)について確認する必要がある。
【0086】
各ヒト化重鎖可変領域配列の遺伝子を、ヒトモノクローナル抗体IgG1サブクラスの重鎖定常領域配列の遺伝子を含む哺乳動物細胞発現ベクターに構築し、各ヒト化軽鎖可変領域配列の遺伝子を、ヒトモノクローナル抗体カッパサブクラスの軽鎖定常領域配列の遺伝子を含む哺乳動物細胞発現ベクターに構築した。構築されたヒト化抗ヒトCLDN18.2抗体の重鎖ベクターと軽鎖ベクターとをペアで混合し、ポリエチレンイミン(PEI)を用いてベクターでHEK293細胞にトランスフェクトし、約7日後に細胞上清を回収した。抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体タンパク質を、プロテインA精製を介して得た。
【0087】
本開示のヒト化抗体を、フォーマットに従って「マウス抗体略語-hz」と命名した。それらのヒトフレームワーク領域に直接移植されたマウス抗体由来のCDRを有する抗体を、フォーマットに従って「マウス抗体略語-hz00」と命名し、更に操作された抗体を、ヒト化配列の番号でナンバリングした。
【0088】
抗原であるヒトCLDN18.2に対するキメラ抗体及びそのヒト化抗体の結合速度論パラメータを、Fortebio(BLITZ pro1.1.0.28)機器により分析した。アッセイを行う前に、NTAバイオプローブをPBSに10分間浸漬し、次いで、100nM抗原を含むPBS中にプローブを300秒間入れ、Hisタグ付き抗原を捕捉した。プローブを更に、400秒の結合時間にわたって100nM抗体との結合反応に供し、次いで、プローブをPBSに移し、600秒間解離反応に供した。アッセイが終了すると、ブランク対照の応答値を差し引いたデータを、ソフトウェアを使用して1:1ラングミュア結合モデルに当てはめ、抗原抗体結合の速度論定数を計算した。結果を表2に示す。
【0089】
【0090】
結果は、11M23-hz22の解離定数が、マウスキメラ抗体に対して、ヒト化及び重要な翻訳後修飾部位(PTM)の除去後に10倍を超えて上昇し、したがって候補のリストから排除されたことを示した。残りの8K13-hz24、16K15-hz22及び52E22-hz12の解離定数は、元のマウスキメラ抗体と比較して1倍~4倍上昇し、その後の研究のリード分子として使用することができた。16K15-hz22の軽鎖アミノ酸配列は2つの連続する「NN」残基を含み、更に最適化された変異抗体16K15-hz22_2及び16K15-hz22_3は、「NN」残基をそれぞれ「SN」残基及び「QN」残基に変更することによって得られた。
【0091】
【0092】
>16K15_vl_hz2(配列番号24)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLSSGNQRNYLTWYQQKPGQPPKKLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDLAVYYCQNNYFYPLTFGQGTKLEIK
>16K15_vl_hz2_N-S(配列番号25)
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>16K15_vl_hz2_N-Q(配列番号26)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLSSGNQRNYLTWYQQKPGQPPKKLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDLAVYYCQQNYFYPLTFGQGTKLEIK
>16k15_vh_hz2(配列番号23)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAGSGITLSTYAMSWVRQAPGKGLEWVSSIISGGITYYLDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLRAEDTAVYYCARKYHGNALDYWGQGTLVTVSS
>52E22_vl_hz2(配列番号28)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQNLLSSGNQRNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDLAVYYCQQGYSFPFTFGQGTKLEIK
>52E22_vh_hz1(配列番号27)
QIQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTLTNYGMNWVRQAPGQGLEWMGWIRPNTGEPTYAEDFKGRFVFSLDTSVATAYLQITSLKAEDTAVYYCARLYRGNTLDNWGQGTLVTVSS
>8K13_vl_hz4_N-S_N-Q(配列番号30)
DIVLTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQTLLSGGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDLAVYYCQQGYSYPLTFGQGTKLEIK
>8K13_vh_hz2(配列番号29)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSNYWMNWVRQAPGQGLEWMGQIYPGSGDTKYSGKFQSRVTITADKSTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCARFYYGNVMDYWGQGTLVTVSS
【0093】
実施例5 抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体のin vitroでの結合親和性の速度実験
抗体-抗原相互作用を、GE Healthcare製のBIAcore S200を用いて測定した。
【0094】
GE Healthcare製のヒト抗体捕捉キット(カタログ番号BR-1008-39、ロット10261753)に提供される説明書を参照して、CM5センサーチップ上の分析チャネル及び対照試料チャネルを最初に飽和させ、最大量の抗ヒトFc抗体と結合させ、次いで、抗ヒトCLDN18.2キメラ抗体、ヒト化抗体又は対照抗体IMAB362を7.5μg/mlで含む緩衝液を分析チャネルに流して、均一に分配させ、最後に勾配で希釈した抗原試料(初期濃度を20nMとし、1:3で希釈して8濃度を得て、濃度0.741nMを繰り返すように設定した)を分析チャネルと試料チャネルとの両方に流し、抗体の抗原への結合時の光反応を測定した。続いて、各抗体の会合定数Kon及び解離定数Koff及び親和性定数KDを、最終的に機器ソフトウェアフィッティング分析により得た。
【0095】
結果は、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体のin vitro結合親和性定数が、元のマウス抗体の結合親和性定数と有意に異ならない一方で、IMAB362の結合親和性定数よりも1桁低いことを示した。表4を参照されたい。
【0096】
【0097】
実施例6 抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体のin vitroでの細胞診断アッセイ
6.1 補体依存性細胞傷害(CDC)
本開示のヒト化抗体について、Quidel, Inc.によって入手可能な市販のヒト血清全補体を用いて、ヒトCLDN18.2を安定して発現するCHOK1細胞、BxPC3細胞及びNCI-N87細胞上の補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導する能力を分析した。
【0098】
細胞を、250μg/ml~3.8ng/mlの範囲の最終濃度で試験するために抗体と混合し、細胞培養培地RPMI-1640に溶解した6.25%の濃度の全ヒト血清を混合物に添加し、次いでこれを37℃で3時間インキュベートした。細胞傷害性をCCK-8キットにより測定し、最後に、450nmにおける吸光度をMDプレートリーダーにより測定した。試料のEC50値を、softmax pro7ソフトウェアを使用して吸光度値を4パラメータフィッティング曲線にプロットすることによって計算した。
【0099】
結果は、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体は、標的発現細胞に対して特異的補体依存性細胞傷害(CDC)を有し、その殺細胞活性がIMAB362よりも有意に優れていることが示された。
図2及び表5を参照されたい。
【0100】
【0101】
6.2 抗体依存性細胞傷害(ADCC)
FcγRIIIa-FcεRIaγハイブリッド受容体を安定に発現し、NFAT応答エレメントによる駆動下でホタルルシフェラーゼを発現する操作されたJurkat細胞をエフェクター細胞として用いた。ADCC機構における抗体の生物学的活性は、NFAT経路の活性化により産生されるルシフェラーゼにより定量される。1.5E5エフェクター細胞を、33μg/ml~85pg/mlの範囲の最終濃度で試験するために抗体と混合し、次いで2.5E4標的細胞を混合物に添加し(エフェクター対標的E:T比は6:1であった)、次いでこれを37℃で16時間インキュベートした。細胞傷害性を、Promega製のキットBio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムによって測定し、最終的にMDプレートリーダーによってLUM値を決定した。
【0102】
データを次のように処理した:誘導倍率=(検出されたウェルの読み取り値-バックグラウンド値)/(陰性対照ウェルの読み取り値-バックグラウンド値)。試料のEC50値を、データを4パラメータフィッティング曲線にプロットすることによって計算した。
【0103】
結果は、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体が、標的発現細胞に対して特異的抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有し、それらの殺細胞活性はIMAB362に匹敵することを示した。
図3及び表6を参照されたい。
【0104】
【0105】
実施例7 同ファミリーのタンパク質に対する抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体の結合特性の分析
ヒトCLDN18.2及びCLDN18.1の遺伝子をそれぞれ真核生物発現ベクターに構築し、ポリエチレンイミン(PEI)を用いてベクターでHEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、遠心分離により細胞を回収し、PBSで1回洗浄し、細胞密度2×106/mlで再懸濁した。384ウェルプレートの各ウェルに10μlを加え、次いで異なる濃度のヒト化抗体をウェルに加えた。4℃で1時間インキュベートした後、蛍光標識した二次ヤギ抗ヒトIgG抗体を加えた。4℃で1時間のインキュベーションを継続した後、384ウェルプレートの平均蛍光読み取り値をフローサイトメーターで読み取った。データを分析して、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体に対する細胞の結合特性を得た。実験に使用した陽性対照は市販の抗ヒトCLDN18ウサギmAb 34H14L15(Abcam社から入手可能)であり、陰性アイソタイプ対照は全長の抗CD33 IgG抗体であるリンツズマブであった。
【0106】
結果は、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体が、ヒトCLDN18.2には結合するが、ヒトCLDN18.1には結合しないという特性を示したことを示した。
図4を参照されたい。また、低濃度、中濃度及び高濃度でのヒトCLDN18.1細胞への非特異的結合は、全てIMAB362のものよりも低かった。
図5を参照されたい。
【0107】
実施例8 抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体のヒト、サル、及びマウスの種交差結合特性の分析
ヒト、マウス及びアカゲザルCLDN18.2の遺伝子をそれぞれ真核生物発現ベクターに構築し、ポリエチレンイミン(PEI)を用いてベクターでHEK293細胞にトランスフェクトした。細胞を2日後に回収した。抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体に対する細胞の結合特異性を、フローサイトメトリーを用いて分析した。フローサイトメトリーの手順については実施例7を参照されたい。
【0108】
結果は、抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体16K15-22 IgGが3つの種の全てのCLDN18.2に結合し、8K13-24 IgG及び52E22-12 IgGはアカゲザルCLDN18.2に結合したがマウスCLDN18.2には結合しなかったことを示した。結果を
図6に示す。
【0109】
実施例9 抗ヒトCLDN18.2ヒト化抗体を用いたCAR-T細胞の調製及びその活性化
9.1 レンチウイルスのパッケージング
レンチウイルスのパッケージングを、表7に示すグループ分けに従って行った。異なる抗体遺伝子を含むレンチウイルスベクタープラスミドpLTRを最初に構築し、シーケンシングによりDNAが正しいことを確認した後、Qiagen製プラスミド抽出キットを用いてそれらのプラスミドDNAを抽出した。プラスミドDNAを滅菌TEに溶解し、その濃度及び純度をUV光吸収によって決定し、抽出されたプラスミドDNAのA260/A280が1.8~2.0であったことを確認した。2つのヘルパーパッケージングエレメントプラスミドであるpCMV-VSV-G及びpCMV-dR8.2のDNAも抽出した。トランスフェクション用のHEK293T細胞を調製し、約60%の培養密度まで増殖するはずの新たに継代した細胞を得た。3つのプラスミドを、リン酸カルシウムをトランスフェクション試薬として用いてHEK293T細胞に共移入した。トランスフェクションの48時間後、パッケージングされたウイルスを含む細胞上清を低温での遠心分離により回収し、0.45μmフィルターを用いて細胞の残骸を除去した。限外濾過遠沈管を用いてウイルスを濃縮し、サブパッケージを行って、-80℃の冷凍庫で保管した。少量のウイルス濃縮物を取って、ウイルス力価をFACSによって決定した。
【0110】
【0111】
表7に示す陰性対照はCLDN18.2に結合しない別の抗体であり、陽性対照はCarsgen Therapeutics製の抗体hu8E5(国際公開第2018006882号を参照されたい)であった。*:この一本鎖抗体は、ヒト化VHとVLとを短いペプチド(GSTSGGGSGGGSGGGGSS)を介して連結することによって形成された。
【0112】
9.2 CAR-T細胞の調製
HBV、HCV、HIVについて陰性と検出された健康なドナーを選択した。前肘静脈から100mlの血液を採取し、Ficoll密度勾配遠心分離を実施してPBMCを含む白色層を単離した。CD3+T細胞を、3:1のDynaBeads/CD3+T細胞の比率でDynaBeads CD3/CD28(LifeTechnologies、カタログ番号40203D)を用いて単離した。活性化の24時間後、CD25+CD69+T細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって検出した。活性化されると、5MOIのレンチウイルスを用いてCD3+T細胞に形質導入を行った。24ウェルプレートを、ノボネクチンを用いて37℃で2時間コーティングし、上記の手順により得られた細胞懸濁液を、各種レンチウイルス(MOI=5)、Synperonic(商標)F108(Sigma、カタログ番号07579-250G-F)及びTscm(2U/ml)とともに、形質導入用の懸濁液に製剤化した。形質導入用の懸濁液を、細胞密度を1.0E+06/mlに調整した24ウェルプレートに添加した。プレートを500gで30分間遠心分離し、37℃、5%CO2のインキュベーターに入れ、48時間静置培養した。形質導入後、細胞を、Tscm(最終濃度2U/ml)を隔日で補充した5%FBS X-vivo15培地(LONZA、カタログ番号04-418Q)で培養した。細胞を計数し、0.5E+06/mlに調整し、培養8日~10日目に採取した。
【0113】
得られた各群におけるCAR-T細胞の陽性パーセンテージの結果を
図7に示す。
【0114】
9.3 CAR-T細胞の活性化
抗原ヒトCLDN18.1及び抗原ヒトCLDN18.2を発現するCHO細胞を構築し、標的細胞として用いた。
【0115】
細胞の抗原発現の検出結果を
図8に示す。CHO-ブランク(ブランク対照)及びCHO-CLDN18.1は抗原CLDN18.2の発現がなく、CHO-CLDN18.2は抗原CLDN18.2の発現が高かった。
【0116】
レンチウイルス形質導入を伴わないCAR-T細胞及びT細胞の各群を含む上述の密度調整されたエフェクター細胞を、それぞれ1.5mL遠沈管中で標的細胞と16:1のエフェクター対標的(effective to target)比で混合した。全量を、T細胞ブロスX-vivo15(自家血清及びTscmを含まない)を用いて200μLに補充し、次いで、200μLの系をそれぞれV底の96ウェルプレートに移し、24時間の共インキュベーションを行った。
【0117】
インキュベーション後、ヒトIFNγの検出のために各培養系の上清を採取した。IFNγ放出の有意な増加は、CHO-CLDN18.1及びCHO-CLDN18.2とのインキュベーション後の群417のCAR-T細胞において見出され、IFNγ放出の増加は、CHO-CLDN18.2とのインキュベーション後にのみ、群418、群419、及び群420のCAR-T細胞において見られた。結果を表8及び
図9に示す。
【0118】
【0119】
各群由来のCAR-T細胞にてT細胞活性化マーカータンパク質であるCD3/CD25を検出した。CD25発現は、CHO-CLDN18.1及びCHO-CLDN18.2とのインキュベーション後に群417のCAR-T細胞においてアップレギュレートされ、群418、群419、及び群420のCARTのCAR-T細胞ではCHO-CLDN18.2とのインキュベーション後にのみアップレギュレートされることがわかった。
図10を参照されたい。
【0120】
本発明の実施形態に関する以上の説明は、本発明を限定することを意図するものではなく、当業者は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で本発明に種々の変更及び修正を加えることができ、これは添付の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】