(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】窒素酸化物を還元するための触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20230120BHJP
B01J 29/068 20060101ALI20230120BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230120BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J29/068 A ZAB
B01D53/94 222
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517454
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2020082489
(87)【国際公開番号】W WO2021099361
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バドル・バソー
(72)【発明者】
【氏名】アンケ・ヴェルツ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091BA14
3G091BA17
3G091GB03W
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3G091GB09W
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4G169ZF05B
(57)【要約】
本発明は、長さLの担体基材と、少なくとも2つのウォッシュコート層A及びBとを含む触媒に関し、ウォッシュコート層Aは、アルミナと、セリアと、アルカリ土類化合物及び/又はアルカリ化合物と、白金、パラジウム又は白金及びパラジウムと、を含み、ウォッシュコート層Bは、ゼオライト及びパラジウムを含み、当該パラジウムは、当該ゼオライト構造においてパラジウムカチオンとして存在し、又は当該ゼオライト構造において及び/若しくは当該ゼオライト構造の表面上において、パラジウム金属として及び/若しくは酸化パラジウムとして全体的に又は部分的に存在し、ウォッシュコート層Aは、ウォッシュコート層Bの下に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さLの担体基材と、少なくとも2つのウォッシュコート層A及びBとを含む触媒であって、
ウォッシュコート層Aは、
アルミナと、
セリアと、
アルカリ土類化合物及び/又はアルカリ化合物と、
白金、パラジウム又は白金及びパラジウムと、
を含み、
ウォッシュコート層Bは、ゼオライト及びパラジウムを含み、
前記パラジウムは、ゼオライト構造においてパラジウムカチオンとして存在し、又は前記ゼオライト構造において及び/若しくは前記ゼオライト構造の表面上において、パラジウム金属として及び/若しくは酸化パラジウムとして全体的に又は部分的に存在し、
ウォッシュコート層Aは、ウォッシュコート層Bの下に配置されている、触媒。
【請求項2】
ウォッシュコート層A中のアルミナが、前記担体基材の体積に基づいて、25~100g/Lの量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
ウォッシュコート層A中のセリアが、前記担体基材の体積に基づいて、80~150g/Lの量で存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
ウォッシュコート層Aが、セリアとアルミナとの複合材料を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
ウォッシュコート層A中の前記アルカリ土類化合物が、酸化マグネシウム及び/又は酸化バリウムであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
ウォッシュコート層Aが、1:5~20:1の範囲の重量比で白金及びパラジウムを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
ウォッシュコート層Aが、ロジウムを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
前記触媒が、ロジウムを含み、かつウォッシュコート層Aの上及びウォッシュコート層Bの下に配置されている第3のウォッシュコート層A1を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
ウォッシュコート層Bが、構造タイプABW、AEI、AFX、BEA、CHA、ERI、ESV、FAU、FER、KFI、LEV、LTA、MFI、MWW、SOD又はSTTに属するゼオライトを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項10】
ウォッシュコート層B中の前記ゼオライトが、構造型BEAに属さないことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項11】
ウォッシュコート層B中の前記パラジウムが、
前記ゼオライト構造中のパラジウムカチオンとして、
前記ゼオライト構造中及び/若しくは前記ゼオライト構造表面上のパラジウム金属として、及び/又は
前記ゼオライト構造中及び/若しくは前記ゼオライト構造表面上の酸化パラジウムとして、
存在することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項12】
ウォッシュコート層Bが、白金を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項13】
前記触媒が、フロースルー基材である長さLの担体基材と、2つのウォッシュコート層A及びBとを含み、
ウォッシュコート層Aは、
前記担体基材の体積に基づいて、50~80g/Lの量のアルミナと、
前記担体基材の体積に基づいて、100~130g/Lの量のセリアと、
前記担体基材の体積に基づいて10~80g/Lの量で、複合材料の重量に基づいて5~95重量%の量で、アルミナを含む、セリアとアルミナとの複合材料と、
前記担体基材の体積に基づいて、15~20g/Lの量の酸化マグネシウム及び/又は酸化バリウムと、
1:1~12:1の重量比で白金及びパラジウムと、
を含み、
ウォッシュコート層Bは、
構造型ABW、AEI、AFX、BEA、CHA、ERI、ESV、FAU、FER、KFI、LEV、LTA、MFI、MWW、SOD又はSTTのゼオライトと、
パラジウムと、
を含み、
ウォッシュコート層Aは、前記担体基材上に直接配置されており、ウォッシュコート層Bは、ウォッシュコート層A上に直接配置されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項14】
排気ガスシステムであって、
a)長さLの担体基材と、少なくとも2つのウォッシュコート層A及びBとを含む触媒であって、
ウォッシュコート層Aは、
アルミナと、
セリアと、
アルカリ土類化合物及び/又はアルカリ化合物と、
白金、パラジウム又は白金及びパラジウムと、
を含み、
ウォッシュコート層Bは、ゼオライト及びパラジウムを含み、
前記パラジウムは、ゼオライト構造においてパラジウムカチオンとして存在し、又は前記ゼオライト構造において及び/若しくは前記ゼオライト構造の表面上において、パラジウム金属として及び/若しくは酸化パラジウムとして全体的に又は部分的に存在し、
ウォッシュコート層Aは、ウォッシュコート層Bの下に配置されている、触媒と、
b)SCR触媒と、
を含む、排気ガスシステム。
【請求項15】
リーンバーンエンジンで運転される自動車からの排気ガスを浄化するための方法であって、前記排気ガスを、請求項14に記載の排気ガスシステム中に流すことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンNOxトラップと受動的窒素酸化物吸着剤とを組み合わせている窒素酸化物を還元するための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等のリーン-バーン内燃機関で運転される自動車の排気ガスは、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)に加えて、シリンダーの燃焼室内における燃料の不完全燃焼に起因する成分も含有する。通常は主にガス形態で存在する残留炭化水素(HC)に加えて、これらは「ディーゼルすす」又は「すす粒子」とも称される粒子排出物を含む。これらは、主に炭素質粒子状物質及び付着性液相からの複合アグロメレートであり、通常は主に長鎖炭化水素凝集物からなる。固体成分に付着する液相は「可溶性有機成分SOF」又は「揮発性有機成分VOF」とも称される。
【0003】
これらの排気ガスを浄化するためには、前述の成分をできる限り完全に無害な化合物へと変換しなければならない。これは、好適な触媒を使用することによってのみ実現可能である。
【0004】
すす粒子は、粒子フィルタの支援により排気ガスから極めて効果的に除去することができる。セラミック材料から作製したウォールフローフィルタが、特に立証されている。これらのウォールフローフィルタは、多孔質壁によって形成されている複数の並列チャネルから構成される。チャネルは、フィルタの2つの端部のうちの1つにおいて交互に封止され、それにより、第1のチャネルは、フィルタの第1の側部を開放し、フィルタの第2の側部を封止して形成され、第2のチャネルは、フィルタの第1の側部を封止し、フィルタの第2の側部を開放して形成される。例えば、第1のチャネルに流れ込む排気ガスは、第2のチャネルを介してだけ再度フィルタを出ることができ、また、この目的のためには、第1及び第2のチャネル間の多孔質壁を通って流れなければならない。排気ガスが壁を通過するときに、粒子が保持される。
【0005】
粒子フィルタには、触媒活性コーティングを施すことができることが知られている。欧州特許第1820561(A1)号には、例えば、濾過されたすす粒子の燃焼を促進する触媒層を有するディーゼル粒子フィルタのコーティングが記載されている。
【0006】
酸素の存在下で、排気ガスから窒素酸化物を除去するための既知の方法は、好適な触媒上でのアンモニアによる選択的接触還元(SCR法)である。本方法では、排気ガスから除去されるべき窒素酸化物が、アンモニアを使用して窒素及び水に変換される。
【0007】
鉄交換、特に、銅交換ゼオライトは、例えば、SCR触媒として使用することができ、例えば、国際公開第2008/106519(A1)号、同第2008/118434(A1)号及び同第2008/132452(A2)号を参照されたい。
【0008】
窒素酸化物をアンモニアで変換するためのSCR触媒は、いかなる貴金属も含有せず、特に、白金及びパラジウムを含有していない。これらの金属の存在下では、酸素でアンモニアが酸化されて窒素酸化物が形成されることが実際に優先的に起こり、SCR反応(アンモニアと窒素酸化物との反応)は遅延することになる。文献で、白金交換又はパラジウム交換ゼオライトを「SCR触媒」と呼ぶことがある場合、これは、NH3-SCR反応に関するものではなく、炭化水素による窒素酸化物の還元に関するものである。しかしながら、後者の反応は、選択性はほんのわずかであるため、より正確には「SCR反応」ではなく「HC-DeNOx反応」と呼ばれる。
【0009】
還元剤として使用されるアンモニアは、アンモニア前駆体化合物、例えば、尿素、カルバミン酸アンモニウム、又はギ酸アンモニウムを排気ガス流中に供給し、その後の加水分解によって、利用可能にすることができる。
【0010】
SCR触媒の欠点は、それらが、約180~200℃の排気ガス温度からのみ作用し、したがって、エンジンのコールドスタート段階で形成される窒素酸化物を変換しない点である。
【0011】
窒素酸化物を取り除くために、いわゆる窒素酸化物吸蔵触媒も知られており、「リーンNOxトラップ」、すなわちLNT、又は「窒素吸蔵触媒」、すなわちNSCという用語が一般的である。これらの触媒の浄化作用は、エンジンのリーン運転段階において、窒素酸化物が、主に、吸蔵触媒の吸蔵材料によって硝酸塩の形態で吸蔵され、当該硝酸塩が後続のエンジンのリッチ運転段階において再び分解され、それによって放出される窒素酸化物が、吸蔵触媒中の還元排気ガス成分によって窒素、二酸化炭素、及び水に変換されるという事実に基づいている。この運転原理は、例えばSAE文書SAE 950809に記載されている。
【0012】
吸蔵材料としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類金属の酸化物、炭酸塩、若しくは水酸化物、又はそれらの混合物が特に考慮される。これらの化合物は、そのアルカリ性という特性の結果として、排気ガスの酸性窒素酸化物と共に硝酸塩を形成し、そうすることで窒素酸化物を吸蔵することができる。これらは、排気ガスとの相互作用表面を大きくするために、好適な基材材料上に、可能な限り高度に分散した形態で堆積される。加えて、窒素酸化物吸蔵触媒は、概して、白金、パラジウム、及び/又はロジウムなどの貴金属を、触媒活性成分として含有する。それらの触媒の目的は、一方ではリーン条件下において、NOをNO2に酸化し、またCO及びHCをCO2へと酸化し、他方では窒素酸化物吸蔵触媒が再生されるリッチ運転段階中に、放出されたNO2を窒素へと還元することにある。
【0013】
最新の窒素酸化物吸蔵触媒は、例えば、欧州特許第0885650(A2)号、米国特許出願公開第2009/320457号、国際公開第2012/029050(A1)号、及び同第2016/020351(A1)号に記載されている。
【0014】
すす粒子フィルタ及び窒素酸化物吸蔵触媒を組み合わせることは既に知られている。例えば、そのため、欧州特許第1420149(A2)号及び米国特許出願公開第2008/141661号では、下流に配置された、ディーゼル粒子フィルタと、窒素酸化物吸蔵触媒と、を備えたシステムを記載している。
【0015】
更に、欧州特許第1393069(A2)号、同第1433519(A1)号、同第2505803(A2)号、及び米国特許出願公開第2014/322112号は、例えば、窒素酸化物吸蔵触媒でコーティングされている粒子フィルタを既に提案している。
【0016】
米国特許出願公開第2014/322112号では、粒子フィルタの上流端から出発している一方のゾーンは入力チャネル内に位置し、粒子フィルタの下流端から出発しているもう一方のゾーンは出力チャネル内に位置するような様式で、窒素酸化物吸蔵触媒による粒子フィルタのコーティングをゾーニングすることを記載している。
【0017】
窒素酸化物がエンジンのリーン-バーン運転段階で窒素酸化物吸蔵触媒によって吸蔵され、その後のリッチ運転段階で再び放出されるというSAE Technical Paper 950809に記載の技法は、活性窒素酸化物吸蔵とも呼ばれる。
【0018】
更に、受動的窒素酸化物吸蔵として知られる方法も記載されている。窒素酸化物は、それによって、第1の温度範囲で吸蔵され、第2の温度範囲で再び放出され、その第2の温度範囲は、第1の温度範囲より高い温度である。受動的窒素酸化物吸蔵触媒は、この方法を実施するために使用され、その触媒は、(「受動的NOx吸着剤」を短縮して)PNAとも呼ばれる。
【0019】
受動的窒素酸化物吸蔵触媒によって、窒素酸化物は、特に、SCR触媒がまだ作動温度に達していない200℃未満の温度では吸蔵され得、またSCR触媒の作動準備が整うと直ちに再び放出され得る。したがって、排気ガス後処理システムでは、エンジンから放射される窒素酸化物を200℃未満で一時的に吸蔵し、また200℃を超えると、それらの窒素酸化物を協調放出することによって、総窒素酸化物変換率の増加が実現される。
【0020】
酸化セリウム上に担持されたパラジウムは、受動的窒素酸化物吸蔵触媒として記載されてきた(例えば、国際公開第2008/047170(A1)号及び同第2014/184568(A1)号を参照されたい)。
【0021】
国際公開第2012/166868(TA1)号から、受動的窒素酸化物吸蔵触媒としてゼオライトを使用することが知られており、当該ゼオライトは、例えば、パラジウム、及び更なる金属、例えば、鉄を含有している。
【0022】
国際公開第2015/085303(A1)号では、貴金属と、8個の四面体原子の最大環サイズを有する小細孔モレキュラーシーブと、を含有する受動的窒素酸化物吸蔵触媒を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
将来到来する厳しい規制を満たすために、全ての運転条件下で、窒素酸化物を吸蔵/処理する新しい触媒系が必要である。それは、低温及びコールドスタート、並びにより高い温度及び加速段階でのことを意味する。実際の標準系は、一般に、2つの系、すなわち、密結合位置におけるNOx吸蔵触媒と、床下位置のSCR又はSDPF触媒との組み合わせである。NSCは、SCR触媒と重なり合う広い作動ウィンドウを有するが、RDE(実際の駆動放射)の導入を含む新しい規制を考慮すると、それでも低温では十分に有効ではない。将来の系に関する戦略は、NSCを含む第1のブリックを低温側に集中させることであり、それは、下流のSCR触媒が機能する温度まで完全に有効である必要がある。更に、第1のブリックは、CO、HC、及びNOを酸化する必要がある。
【0024】
窒素吸蔵触媒と受動的NOx吸着剤との組み合わせは、下流のSCR触媒が機能するまで、低温及び中間温度で高いNOx吸蔵を提供することが現在見出されている。加えて、古典的なNOx吸蔵触媒とは対照的に、その組み合わせは、頻繁にリッチ活性化(rich activation)が必要ないため、安定したHC及びCOのライトオフを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
したがって、本発明は、長さLの担体基材と、少なくとも2つのウォッシュコート層A及びBとを含む触媒に関する。
ウォッシュコート層Aは、
アルミナと、
セリアと、
アルカリ土類化合物及び/又はアルカリ化合物と、
白金、パラジウム又は白金及びパラジウムと、
を含み、
ウォッシュコート層Bは、ゼオライト及びパラジウムを含み、当該パラジウムは、ゼオライト構造においてパラジウムカチオンとして存在し、又はゼオライト構造において及び/若しくはゼオライト構造の表面上において、パラジウム金属として及び/若しくは酸化パラジウムとして全体的に又は部分的に存在し、
ウォッシュコート層Aは、ウォッシュコート層Bの下に配置されている。
【0026】
ウォッシュコート層Aに含有されるアルミナは、本発明の実施形態において、1~6重量%、特に、4重量%の酸化ランタンによって安定化される。ウォッシュコート層Aは、担体基材の体積に基づいて、特に25~100g/Lの量で、担体基材の体積に基づいて、好ましくは50~80g/Lの量で、アルミナを含む。
【0027】
本発明の文脈内で、セリアという用語は、市販グレードの酸化セリウム、すなわち、酸化セリウムの占有率が90~100重量%の酸化セリウムを意味する。
【0028】
ウォッシュコート層Aは、担体基材の体積に基づいて、特に80~150g/Lの量で酸化セリウムを含み、担体基材の体積に基づいて、好ましくは100~130g/Lの量で酸化セリウムを含む。
【0029】
本発明の一実施形態では、ウォッシュコート層Aは、好ましくは、複合材料の重量に基づいて、5~95重量%の量のアルミナを含む、セリアとアルミナとの複合材料を含む。好ましくは、複合材料の重量に基づいて、アルミナの量は80~95重量%であり、セリアの量は5~20重量%である。
【0030】
ウォッシュコート層Aは、セリアとアルミナとの複合材料を、担体基材の体積に基づいて、0~100g/Lの量で、担体基材の体積に基づいて、好ましくは10~80g/Lの量で含む。
【0031】
ウォッシュコート層A中のアルカリ土類化合物としては、特に、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウムの酸化物、炭酸塩又は水酸化物、特に、酸化マグネシウム、酸化バリウム、及び酸化ストロンチウムが好適である。酸化マグネシウム及び/又は酸化バリウムが好ましい。
【0032】
ウォッシュコート層A中のアルカリ化合物としては、特に、リチウム、カリウム、又はナトリウムの酸化物、炭酸塩、又は水酸化物である。
【0033】
本発明の実施形態において、アルカリ土類化合物又はアルカリ化合物は、アルカリ土類酸化物又はアルカリ酸化物として計算され、担体基材の体積に基づいて、10~50g/L、特に15~20g/Lの量で存在する。
【0034】
ウォッシュコート層Aでは、アルカリ土類化合物又はアルカリ化合物は、通常は、アルミナ、セリア、及び/又は、存在する場合、セリアとアルミナとの複合材料の上に担持される。
【0035】
ウォッシュコート層Aは、白金のみを含むことができ、かつパラジウムを含むことができない、パラジウムのみを含むことができ、かつ白金を含むことができない、又は白金及びパラジウムの両方を含むことができる。後者の場合、白金とパラジウムとの重量比は、広範に変化し得るが、好ましくは1:5~20:1、より好ましくは1:1~12:1の範囲内である。白金とパラジウムとの可能な重量比は、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1及び12:1である。
【0036】
ウォッシュコート層Aは、白金、パラジウム、並びに白金及びパラジウムを、それぞれ、担体基材の体積に基づいて、好ましくは20~150、より好ましくは50~120g/cftの量で含む。
【0037】
ウォッシュコート層Aでは、白金、パラジウム、並びに白金及びパラジウムは、それぞれ、通常は、アルミナ、セリア、及び/又は、存在する場合、セリアとアルミナとの複合材料の上に担持される。
【0038】
本発明の一実施形態では、ウォッシュコート層Aは、ロジウムを含む。ロジウムは、通常は、アルミナ、セリア、及び/又は、存在する場合、セリアとアルミナとの複合材料の上に担持される。ウォッシュコート層A中のロジウムの量は、通常は、担体基材の体積に基づいて、0~10g/cft、特に1~8g/cftである。
【0039】
ウォッシュコート層Aによる充填量は、担体基材の体積に基づいて、好ましくは150~300g/Lに達する。
【0040】
本発明の更なる実施形態では、触媒は、ロジウムを含み、かつウォッシュコート層Aの上及びウォッシュコート層Bの下に配置されている第3のウォッシュコート層A1を含む。
【0041】
ウォッシュコート層A1中のロジウムは、通常は、好適な担体材料上に存在する。この目的について当業者によく知られている全ての材料が、担体材料とみなされる。担体材料は、30~250m2/g、好ましくは100~200m2/g(DIN66132に従って特定した)のBET表面を有し、特に、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、及びこれらの材料のうちの少なくとも2つの混合物又は混合酸化物である。
【0042】
アルミナ、マグネシア/アルミナ混合酸化物、及びアルミナ/シリカ混合酸化物が好ましい。アルミナを使用する場合、例えば、1~6重量%、特に、4重量%の酸化ランタンを用いて安定化されることが特に好ましい。
【0043】
本発明による触媒のウォッシュコート層Bは、ゼオライトを含む。ゼオライトは2次元又は3次元構造であり、その最も小さい構造は、SiO4及びAlO4の四面体であると考えることができる。これらの四面体は、一緒になってより大きな構造を形成し、ここで、2つは常に共通の酸素原子を介して接続される。それによって、様々なサイズの環が形成され得、例えば4個、6個、又は更には9個の四面体配位したケイ素原子又はアルミニウム原子の環が形成され得る。このサイズによってどのゲスト分子がゼオライト構造に浸透することができ、どれが浸透できないかが決まるため、様々なゼオライトのタイプはしばしば最大の環サイズによって定義される。通常、最大環サイズが12員の大細孔ゼオライト、最大環サイズが10員の中細孔ゼオライト、及び最大環サイズが8員の小細孔ゼオライトで区別される。
【0044】
更に、ゼオライトは、国際ゼオライト学会の構造委員会によって構造タイプに分類されて、それは3文字のコードで示されており、例えば、Atlas of Zeolite Framework Types,Elsevier,5th edition,2001に見ることができる。
【0045】
ウォッシュコート層Bのゼオライトは、大細孔ゼオライト、中細孔ゼオライト又は小細孔ゼオライトであることができる。
【0046】
本発明の一実施形態では、ウォッシュコート層Bのゼオライトは、6個の四面体配位原子によって形成された最大環サイズを含み、例えば、構造型AFG、AST、DOH、FAR、FRA、GIU、LIO、LOS、MAR、MEP、MSO、MTN、NON、RUT、SGT、SOD、SVV、TOL又はUOZに属する。
【0047】
構造型AFGのゼオライトは、アフガナイト(Afghanite)である。構造型ASTのゼオライトは、AlPO16及びオクタデカシル(Octadecasile)である。構造型DOHのゼオライトは、ドセカシル(docecasil)1Hである。構造型FARのゼオライトは、ファルネサイト(Farneseite)である。構造型FRAのゼオライトは、フランジナイト(Franzinite)である。構造型GIUのゼオライトは、ギューセペタイト(Giuseppettite)である。構造型LIOのゼオライトは、リオットタイト(Liottite)である。構造型LOSのゼオライトは、ロソド(Losode)及びビストライト(Bystrite)である。構造型MARのゼオライトは、マリンライト(Marinellite)である。構造型MEPのゼオライトは、メラノフロジャイト(Melanophlogite)である。構造型MSOのゼオライトは、MCM-61及びMu-13である。構造型MTNのゼオライトは、ZSM-39、CF-4、ドデカシル-3C(Docecasile-3C)及びホールズタイト(Holdstite)である。構造型NONのゼオライトは、ノナシル(Nonasile)、CF-3及びZSM-51である。構造型RUTのゼオライトは、RUB-10及びNu-1である。構造型SGTのゼオライトは、シグマ-2である。構造型SODのゼオライトは、ソーダライト、AlPO-20、備中石、デーナライト、G、亜鉛ヘルビン、アウイン、ヘルビン、ノゼアン、SIZ-9、TMA及びタグプタイトである。構造型UOZのゼオライトは、IM-10である。
【0048】
6個の四面体配位原子によって形成された最大環サイズを含むウォッシュコート層Bの好ましいゼオライトは、構造型SODに属する。
【0049】
構造型SODに属するウォッシュコート層Bの特定の好ましいゼオライトは、文献から既知である。例えば、AlPO-20の合成は、米国特許第4,310,440号に開示されている。
【0050】
本発明の別の実施形態では、ウォッシュコート層Bのゼオライトは、8個の四面体配位原子によって形成された最大環サイズを含み、例えば、構造型ABW、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFV、AFX、ANA、APC、APD、ATN、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BIK、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EEI、EPI、ERI、ESV、ETL、GIS、GOO、IFY、IHW、IRN、ITE、ITW、JBW、JNT、JOZ、JSN、JSW、KFI、LEV、-LIT、LTA、LTJ、LTN、MER、MON、MTF、MWF、NPT、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、RWR、SAS、SAT、SAV、SBN、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG又はZONに属する。
【0051】
構造型ABWのゼオライトは、Li-Aである。構造型ACOのゼオライトは、ACP-1である。構造型AEIのゼオライトは、SAPO-18、SIZ-8及びSSZ-39である。構造型AENのゼオライトは、AlPO-53、IST-2、JDF-2、MCS-1、Mu-10及びUiO-12-500である。構造型AFTのゼオライトは、AlPO-52である。構造型AFXのゼオライトは、SAPO-56及びSSZ-16である。構造型ANAのゼオライトは、方沸石、AlPO-24、リューサイト、Na-B、ポルサイト、及びワイラカイトである。構造型APCのゼオライトは、AlPO-C及びAlPO-H3である。構造型APDのゼオライトは、AlPO-D及びAPO-CJ3である。構造型ATNのゼオライトは、MAPO-39及びSAPO-39である。構造型ATTのゼオライトは、AlPO-33及びRMA-3である。構造型ATVのゼオライトは、AlPO-25である。構造型AWOのゼオライトは、AlPO-21である。構造型AWWのゼオライトは、AlPO-22である。構造型BCTのゼオライトは、メタバリスカイト及びスヴィアトスラフ石(Svyatoslavite)である。構造型BIKのゼオライトは、ビキタ沸石である。構造型BREのゼオライトは、ブリュースター沸石及びCIT-4である。構造型CASのゼオライトは、EU-20bである。構造型CDOのゼオライトは、CDS-1、MCM-65及びUZM-25である。構造型CHAのゼオライトは、AlPO-34、チャバザイト、DAF-5、リンデ-D、リンデ-R、LZ-218、Phi、SAPO-34、SAPO-47、SSZ-13、UiO-21、ウィルヘンダーソン沸石、ZK-14及びZYT-6である。構造型DDRのゼオライトは、シグマ-1及びZSM-58である。構造型DFTのゼオライトは、DAF-2及びACP-3である。構造型EABのゼオライトは、TMA-E及びベルベルヒ沸石である。構造型EDIのゼオライトは、エディントン沸石、K-F、リンデF及びゼオライトNである。構造型ERIのゼオライトは、エリオナイト、AlPO-17、リンデT、LZ-220、SAPO-17及びZSM-34である。構造型ESVのゼオライトは、ERS-7である。構造型GISのゼオライトは、ギスモンド沸石、アミチ沸石、ガロン沸石、ゴビンス沸石、MAPO-43、Na-P1、Na-P2及びSAPO-43である。構造型IHWのゼオライトは、ITQ-3である。構造型ITEのゼオライトは、ITQ-3、Mu-14及びSSZ-36である。構造型ITWのゼオライトは、ITQ-12である。構造型JBWのゼオライトは、Na-J及び霞石である。構造型KFIのゼオライトは、ZK-5、P及びQである。構造型LEVのゼオライトは、レビン、レビナイト、AlP-35、LZ-132、NU-3、SAPO-35及びZK-20である。構造型-LITのゼオライトは、リソサイトである。構造型LTAのゼオライトは、リンデA型、アルファ、ITQ-29、LZ-215、N-A、UZM-9、SAPO-42、ZK-21、ZK-22及びZK-4である。構造型LTNのゼオライトは、リンデN型及びNaZ-21である。構造型MERのゼオライトは、メルリーノ沸石、K-M、リンデW及びゼオライトWである。構造型MTFのゼオライトは、MCM-35及びUTM-1である。構造型NSIのゼオライトは、Nu-6(2)及びEU-20である。構造型OWEのゼオライトは、UiO-28及びACP-2である。構造型PAUのゼオライトは、ポーリング沸石及びECR-18である。構造型PHIのゼオライトは、十字沸石、DAF-8、重土十字沸石、灰重十字沸石及びZK-19である。構造型RHOのゼオライトは、Rho及びLZ-214である。構造型RTHのゼオライトは、RUB-13、SSZ-36及びSSZ-50である。構造型RWRのゼオライトは、RUB-24である。構造型SASのゼオライトは、STA-6及びSSZ-73である。構造型SATのゼオライトは、STA-2である。構造型SBNのゼオライトは、UCSB-89及びSU-46である。構造型SIVのゼオライトは、SIZ-7である。構造型THOのゼオライトは、トムソン沸石である。構造型UEIのゼオライトは、Mu-18である。構造型UFIのゼオライトは、UZM-5である。構造型VNIのゼオライトは、VPI-9である。構造型YUGのゼオライトは、湯河原沸石及びSr-Qである。構造型ZONのゼオライトは、ZAPO-M1及びUiO-7である。
【0052】
8個の四面体配位原子によって形成された最大環サイズを含むウォッシュコート層Bの好ましいゼオライトは、構造型ABW、AEI、AFX、CHA、ERI、ESV、KFI、LEV又はLTAに属する。
【0053】
構造型AEIのゼオライトの合成は、例えば、米国特許出願公開第2015/118150号及び米国特許第5,958,370号のSSZ-39の合成に記載されている。構造型AFXのゼオライトは、国際公開第2016/077667(A1)号から知られる。構造型CHAのゼオライトは、文献に広く記載されており、SSZ-13に関する米国特許第4,544,538号を参照されたい。構造型KFIに属するZK-5は、例えば、欧州特許第288293(A2)号に記載されている。構造型LEVのゼオライトは、例えば、欧州特許第40016(A1)号、同第255770(A2)号及び同第3009400(A1)号に開示されている。構造型LTAに属するゼオライトは、例えば、SAPO-42、ZK-4、ZK-21及びZK-22として知られている。例えば、ZK-4の合成は、Leiggener et al.により、Material Syntheses,Springer Vienna,2008(Schubert,Husing,Laine編),Seiten 21-28)に開示されている。ZK-21は、米国特許第3,355,246号に開示されており、SAPO-42は、米国特許出願公開第2014/170062号に開示されている。
【0054】
本発明の別の実施形態では、ウォッシュコート層Bのゼオライトは、9個の四面体配位原子によって形成された最大環サイズを含み、例えば、構造型CHI、LOV、NAB、NAT、RSN、STT又はVSVに属する。
【0055】
構造型-CHIのゼオライトは、キアヴェンナ石である。構造型LOVのゼオライトは、ロヴダル石(Lovdarit)である。構造型NABのゼオライトは、ナベサイト(Nabesit)である。構造型NATのゼオライトは、ナトロライト、ゴナルド沸石、中沸石、メタナトロライト(Metanatrolite)、パラナトロライト(Paranatrolite)、テトラナトロライト(Tetranatrolite)、及びスコレス沸石である。構造型RSNのゼオライトは、RUB-17である。構造型STTのゼオライトは、SSZ-23である。構造型VSVのゼオライトは、ゴールト石、VPI-7及びVSV-7である。
【0056】
9個の四面体配位原子によって形成された最大環サイズを含むウォッシュコート層Bの好ましいゼオライトは、構造型STTに属する。特に好適な構造型STTのゼオライトは、SSZ-23である。SSZ-23は、米国特許第4,859,442号に記載されており、当該特許に記載された方法に即して得ることができる。
【0057】
本発明の別の実施形態では、ウォッシュコート層Bのゼオライトは、10個の四面体配位原子によって形成された最大環サイズを含み、例えば、構造型FER、MEL、MFI、MTT、MWW又はSZRに属する。
【0058】
構造型FERのゼオライトは、文献から既知である。ZSM-35は米国特許第4,107,196号に開示されており、NU-23は欧州特許第103981(A1)号、FU-9は欧州特許第55529(A1)号、ISI-6は米国特許第4,695,440号、並びにフェリエライトは例えば米国特許第3,933,974号、同第4,000,248号及び米国特許第4,251,499号に開示されている。
【0059】
構造型MELのゼオライトは、文献から既知である。したがって、ZSM-11は、Nature 275,119-120,1978に記載されており、SSZ-46は米国特許第5,968,474号及びTS-2はベルギー特許第1001038号に記載されている。
【0060】
構造型MTTのゼオライトは、文献から既知である。ZSM-23は米国特許第4,076,842号、EU-13は米国特許4,705,674号及びISI-4は米国特許第4,657,750号に開示されている。加えて、米国特許第5,314,674号は、構造型MTTのゼオライトの合成を扱っている。
【0061】
構造型MFIのゼオライトは、例えば、ZSM-5、ZS-4、AZ-1、FZ-1、LZ-105、NU-4、NU-5、TS-1、TS、USC-4及びZBHとして文献から既知である。ZSM-5は、米国特許第3,702,886号及び米国特許第4,139,600号に開示されている。
【0062】
構造型MWWのゼオライトは、文献から既知である。SSZ-25は米国特許第4,826,667号に記載されており、MCM-22はZeolites 15,Issue 1,2-8,1995に記載されており、ITQ-1は米国特許第6,077,498号に記載されており、PSH-3は米国特許第4,439,409号に記載されている。
【0063】
構造型SZRのゼオライトは、文献から既知である。SUZ-4は、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1993,894-896に開示されている。
【0064】
10個の四面体配位原子によって形成された最大環サイズを含むウォッシュコート層Bの好ましいゼオライトは、構造型FERに属する。
【0065】
本発明の別の実施形態では、ウォッシュコート層Bのゼオライトは、12個の四面体配位原子によって形成された最大環サイズを含み、例えば、構造型AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、IWR、IWV、IWW、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OSI、-RON、RWY、SAO、SBE、SBS、SBT、SFE、SFO、SOS、SSY、USI又はVETに属する。
【0066】
構造型AFIのゼオライトは、AlPO-5、SSZ-24及びSAPO-5である。構造型AFRのゼオライトは、SAPO-40及びAlPO-40である。構造型AFSのゼオライトは、MAPO-46である。構造型ASVのゼオライトは、ASU-7である。構造型ATOのゼオライトは、SAPO-31及びAlPO-31である。構造型ATSのゼオライトは、SSZ-55及びAlPO-36である。構造型BEAのゼオライトは、ベータ及びCIT-6である。構造型BPHのゼオライトは、リンデQ、STA-5及びUZM-4である。構造型CANのゼオライトは、ECR-5、ダビン(Davyne)、ミクロソマイト(Microsommite)、チップトップ石及びビシネフ石である。構造型CONのゼオライトは、CIT-1、SS-26及びSSZ-33である。構造型DFOのゼオライトは、DAF-1である。構造型EMTのゼオライトは、EMC-2、CSZ-1、ECR-30、ZSM-20及びZSM-3である。構造型EONのゼオライトは、ECR-1及びTUN-7である。構造型EZTのゼオライトは、EMM-3である。構造型FAUのゼオライトは、フォージャサイト、LZ-210、SAPO-37、CSZ-1、ECR-30、ZSM-20及びZSM-3である。構造型GMEのゼオライトは、グメリナイトである。構造型GONのゼオライトは、GUS-1である。構造型IFRのゼオライトは、ITQ-4、MCM-58及びSSZ-42である。構造型ISVのゼオライトは、ITQ-7である。構造型IWRのゼオライトは、ITQ-24である。構造型IWVのゼオライトは、ITQ-27である。構造型IWWのゼオライトは、ITQ-22である。構造型LTLのゼオライトは、リンデL型及びLZ-212である。構造型MAZのゼオライトは、マッシィ沸石、LZ-202、オメガ及びZSM-4である。構造型MEIのゼオライトは、ZSM-18及びECR-40である。構造型MORのゼオライトは、モルデン沸石、LZ-211及びNa-Dである。構造型MOZのゼオライトは、ZSM-10である。構造型MSEのゼオライトは、MCM-68である。構造型MTWのゼオライトは、ZSM-12、CZH-5、NU-13、TPZ-12、シータ-3及びVS-12である。構造型OFFのゼオライトは、オフレット沸石、LZ-217、リンデT及びTMA-Oである。構造型OSIのゼオライトは、UiO-6である。構造型RWYのゼオライトは、UCR-20である。構造型SAOのゼオライトは、STA-1である。構造型SFEのゼオライトは、SSZ-48である。構造型SFOのゼオライトは、SSZ-51である。構造型SOSのゼオライトは、SU-16及びFJ-17である。構造型SSYのゼオライトは、SSZ-60である。構造型USIのゼオライトは、IM-6である。構造型VETのゼオライトは、VPI-8である。
【0067】
12個の四面体配位原子によって形成された最大環サイズを含むウォッシュコート層Bの好ましいゼオライトは、構造型BEA又はFAUに属する。
【0068】
構造型BEA及びFAUのゼオライト、並びにそれらの合成は、文献に広く記載されている。
【0069】
ウォッシュコート層Bの特に好ましいゼオライトは、構造型ABW、AEI、AFX、BEA、CHA、ERI、ESV、FAU、FER、KFI、LEV、LTA、MFI、MWW、SOD又はSTTに属する。
【0070】
ウォッシュコート層Bの非常に特に好ましいゼオライトは、構造型AEI、BEA、CHA、FAU、FER、LEV又はMFIに属する。
【0071】
本発明の一実施形態では、ウォッシュコート層B中のゼオライトは、構造型BEAに属さない。
【0072】
本発明による触媒のウォッシュコート層Bは、パラジウムを含む。パラジウムは、それにより、ゼオライト構造中のパラジウムカチオンとして、すなわち、イオン交換された形態で存在する。しかしながら、パラジウムはまた、ゼオライト構造中及び/又はゼオライト構造の表面上のパラジウム金属及び/又は酸化パラジウムとして全体的に又は部分的に存在し得る。
【0073】
特に、パラジウムは、
ゼオライト構造中のパラジウムカチオンとして、
ゼオライト構造中及び/若しくはゼオライト構造表面上のパラジウム金属として、及び/又は
ゼオライト構造中及び/若しくはゼオライト構造表面上の酸化パラジウムとして、
存在する。
【0074】
パラジウムは、通常は、ゼオライトとパラジウムとの重量の合計に基づいて、かつパラジウム金属として計算して、0.01~20重量%の量で存在する。
【0075】
パラジウムは、ゼオライトとパラジウムとの重量の合計に基づいて、かつパラジウム金属として計算して、好ましくは約0.5~10重量%、特に好ましくは0.5~4重量%、非常に特に好ましくは約0.5~約2重量%の量で存在する。
【0076】
本発明の一実施形態では、ウォッシュコート層Bは、白金を含む。パラジウムと同様に、白金は、好ましくは、それにより、ゼオライト構造中の白金カチオンとして、すなわち、イオン交換された形態で存在する。しかしながら、白金はまた、ゼオライト構造中及び/又はゼオライト構造の表面上の白金金属及び/又は酸化白金として全体的に又は部分的に存在し得る。
【0077】
白金は、通常は、パラジウムの重量に基づいて、かつ白金金属として計算して、1~10重量%の量で存在する。
【0078】
白金は、パラジウムの重量に基づいて、かつ白金金属として計算して、好ましくは1~8重量%、特に好ましくは1~5重量%の量で存在する。
【0079】
好ましくは、ウォッシュコート層Bは、パラジウム及び存在する場合は白金を除いて、任意の更なる金属を含まない。特に、ウォッシュコート層Bは、銅も鉄も含まない。
【0080】
本発明による触媒は担体基材を含む。それは、フロースルー基材又はウォールフローフィルタであってもよい。
【0081】
ウォールフローフィルタは、ウォールフローフィルタの第1端部と第2端部との間に平行に延びる長さLのチャネルを備えた支持体であり、チャネルは、第1端部又は第2端部のいずれかにおいて交互に封鎖され、多孔質壁によって分離される。フロースルー基材は、特に、長さLのチャネルがその2つの端部において開放されているという点で、ウォールフローフィルタとは異なる。
【0082】
未コーティングの状態において、ウォールフローフィルタは、例えば、30~80%、具体的には50~75%の多孔度を有する。未コーティング状態において、ウォールフローフィルタの平均細孔サイズは、例えば、5~30マイクロメートルである。
【0083】
一般に、ウォールフローフィルタの細孔は、いわゆる開細孔であり、すなわち、それらはチャネルに接続している。更に、細孔は、一般的には、互いに相互接続される。これにより、一方では、細孔の内側表面のコーティングが容易になり、他方では、ウォールフローフィルタの多孔質壁を通る排気ガスの通過が容易になる。
【0084】
フロースルー基材は、ウォールフローフィルタがそうであるように、当業者に知られており、市販されている。それらは、例えば、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、又はコーディエライトからなる。
【0085】
通常は、ウォッシュコート層A及びB、及び存在する場合A1は、担体基材上のコーティングの形態で存在する。ウォッシュコート層A、及び、存在する場合、ウォッシュコート層A1は、通常は、担体基材の長さLの100%にわたって延びており、ウォッシュコート層Bは、好ましくは、担体基材の長さLの20~100%にわたって延びている。
【0086】
ウォールフローフィルタでは、ウォッシュコートA及びB、並びに存在する場合A1は、入口チャネルの表面上、出口チャネルの表面上、及び/又は入口チャネルと出口チャネルとの間の多孔質壁中に配置される。
【0087】
本発明の一実施形態では、ウォッシュコート層Aは、担体基材上に直接配置され、ウォッシュコート層Bは、ウォッシュコート層A上に直接コーティングされる。
【0088】
本発明の一実施形態では、ウォッシュコート層Aは、担体基材上に直接配置され、ウォッシュコート層A1は、ウォッシュコート層A上に直接コーティングされ、ウォッシュコート層Bは、ウォッシュコート層A1上に直接コーティングされる。
【0089】
ウォッシュコートA及びB、並びに存在する場合はA1が、担体基材上のコーティングの形態で存在する本発明の触媒は、当業者によく知られている方法、例えば、通常のディップコーティング法、又はポンプアンドサックコーティング法とその後の熱後処理(焼成)によって製造することができる。当業者は、ウォールフローフィルタの場合、平均細孔サイズとコーティングされる材料の平均粒径が、それらがウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔質壁上にあるように(オンウォールコーティング)、互いに適合させることができることを知っている。しかしながら、コーティングされる材料の平均粒径は、その材料が、ウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔質壁中に配置されて、細孔の内側表面がコーティングされるように(インウォールコーティング)、選択されてもよい。この場合、コーティングされる材料の平均粒径は、ウォールフローフィルタの細孔内に入り込むために十分に小さくなければならない。
【0090】
本発明の好ましい実施形態では、触媒は、フロースルー基材である長さLの担体基材と、2つのウォッシュコート層A及びBとを含み、
ウォッシュコート層Aは、
担体基材の体積に基づいて、50~80g/Lの量のアルミナと、
担体基材の体積に基づいて、100~130g/Lの量のセリアと、
担体基材の体積に基づいて10~80g/Lの量で、複合材料の重量に基づいて5~95重量%の量で、アルミナを含む、セリアとアルミナとの複合材料と、
担体基材の体積に基づいて、15~20g/Lの量の酸化マグネシウム及び/又は酸化バリウムと、
1:1~12:1の重量比で白金及びパラジウムと、を含み、
ウォッシュコート層Bは、
構造型ABW、AEI、AFX、BEA、CHA、ERI、ESV、FAU、FER、KFI、LEV、LTA、MFI、MWW、SOD又はSTTのゼオライトと、
パラジウムと、
を含み、
ウォッシュコート層Aは、担体基材上に直接配置されており、ウォッシュコート層Bは、ウォッシュコート層A上に直接配置されている。
【0091】
本発明による触媒は、窒素酸化物吸蔵触媒として特に好適であり、それは、下流のSCR触媒が完全な作動状態となるまで窒素酸化物を吸蔵することができる。したがって、下流のSCR触媒と組み合わせて、コールドスタート温度を含めた排気ガスの全温度範囲にわたって、窒素酸化物を効率的に変換することが可能である。
【0092】
したがって、本発明は、
a)長さLの担体基材と、少なくとも2つのウォッシュコート層A及びBとを含む触媒であって、
ウォッシュコート層Aは、
アルミナと、
セリアと、
アルカリ土類化合物及び/又はアルカリ化合物と、
白金、パラジウム、又は白金若しくはパラジウムと、
を含み、
ウォッシュコート層Bは、ゼオライト及びパラジウムを含み、
当該パラジウムは、ゼオライト構造においてパラジウムカチオンとして存在し、又はゼオライト構造において及び/若しくはゼオライト構造の表面上において、パラジウム金属として及び/若しくは酸化パラジウムとして全体的に又は部分的に存在し、
ウォッシュコート層Aは、ウォッシュコート層Bの下に配置されている、触媒と、
b)SCR触媒、を含む、排気ガスシステムに関する。
【0093】
原則として、本発明による排気ガスシステムにおけるSCR触媒は、窒素酸化物とアンモニアとのSCR反応における全ての活性触媒から、特に、自動車排気ガス触媒反応の分野で当業者に一般的に知られている全ての活性触媒から選択され得る。これには、混合酸化物タイプの触媒、及びゼオライト、特に遷移金属交換ゼオライトに基づく触媒が含まれる。
【0094】
本発明の実施形態では、8個の四面体原子の最大環サイズを有する小孔ゼオライト及び遷移金属を含有するSCR触媒が使用される。このようなSCR触媒は、例えば、国際公開第2008/106519(A1)号、同第2008/118434(A1)号、及び同第2008/132452(A2)号に記載されている。
【0095】
しかしながら、更に、大細孔及び中細孔のゼオライトも使用することができ、特に、BEA構造型のゼオライトが議論される。したがって、鉄-BEA及び銅-BEAが対象である。
【0096】
特に好ましいゼオライトは、BEA、AEI、CHA、KFI、ERI、LEV、MER、又はDDR構造型に属し、特に好ましくはコバルト、鉄、銅、又はこれらの金属の2つ若しくは3つの混合物と交換される。
【0097】
「ゼオライト」という用語は、モレキュラーシーブも含み、それは時に「ゼオライト様」化合物とも呼ばれる。モレキュラーシーブが前述の構造タイプの1つに属する場合、それらが好ましい。例としては、用語SAPOで知られるシリカアルミノホスフェートゼオライト、及び用語AIPOで知られるアルミノホスフェートゼオライトが挙げられる。
【0098】
これらも、コバルト、鉄、銅、又はそれらの金属の2つ若しくは3つの混合物と交換されるときには、特に好ましい。
【0099】
好ましいゼオライトはまた、2~100、特に5~50のSAR(シリカ対アルミナ比)値を有するものである。
【0100】
ゼオライト又はモレキュラーシーブは、遷移金属を、特に金属酸化物として、すなわち例えばFe2O3又はCuOとして計算して1~10重量%、特に2~5重量%の量で含有する。
【0101】
本発明の好ましい実施形態は、SCR触媒として銅、鉄、又は銅と鉄とで交換された、ベータ型(BEA)、チャバザイト型(CHA)、又はレビン型(LEV)ゼオライト又はモレキュラーシーブを含有する。適切なゼオライト又はモレキュラーシーブは、例えば、ZSM-5、ベータ、SSZ-13、SSZ-62、Nu-3、ZK-20、LZ-132、SAPO-34、SAPO-35、AlPO-34及びAlPO-35の名称で知られており、例えば、米国特許第6,709,644号及び同第8,617,474号を参照されたい。
【0102】
本発明による排気ガスシステムの一実施形態では、還元剤のための注入デバイスは、長さLの担体基材と、パラジウムと、最大チャネルが8個の四面体配位原子によって形成されているゼオライトと、を含む、触媒と、SCR触媒との間に配置されている。
【0103】
当業者は、注入デバイスを任意に選択することができ、好適なデバイスは、文献(例えば、T.Mayer,Feststoff-SCR-System auf Basis von Ammoniumcarbamat(Solid SCR System Based on Ammonium Carbamate),Dissertation,TU Kaiserslautern,2005を参照されたい)において見出すことができる。そのまま又は化合物の形態のアンモニアを、注入デバイスを介して排気ガス流に導入することができ、そこで、一般的な周囲条件下でアンモニアが形成される。したがって、例えば、尿素又はギ酸アンモニウムの水溶液は、固体のカルバミン酸アンモニウムと同様に考慮される。通例、還元剤又はその前駆体は、注入装置に接続される付随容器内で利用可能に保持される。
【0104】
SCR触媒は、好ましくは、担持体上のコーティングの形態で存在し、それは、フロースルー基材又はウォールフローフィルタであることができ、例えば、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、又はコーディエライトからなり得る。
【0105】
あるいは、しかしながら、担持体自体は、上記したように、すなわち、押出形態で存在する、SCR触媒及びマトリックス成分からもなり得る。
【0106】
本発明はまた、リーンバーンエンジン、例えば、ディーゼルエンジンによって作動される自動車からの排気ガスを浄化するための方法にも関し、当該方法は、排気ガスが本発明による排気ガスシステムを通って流されることを特徴とする。
【国際調査報告】