(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】高疎水性、にじみの少ない着色澱粉粉末とその調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230120BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518370
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 CN2021122189
(87)【国際公開番号】W WO2022078231
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202011087797.5
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522110326
【氏名又は名称】上海▲こう▼▲ふぁん▼生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI CO-FUN BIOTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 269, East Hongqi Road, Shanyang Town, Jinshan District, Shanghai 201508, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】謝 旭
(72)【発明者】
【氏名】亢 栄敏
(72)【発明者】
【氏名】劉 暁慧
(72)【発明者】
【氏名】呉 建軍
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB352
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC912
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD241
4C083AD242
4C083CC11
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】本発明は、高疎水性、にじみの少ない着色澱粉粉末とその調製方法及び応用を提供する。着色澱粉粉末を水の中に分散させ、pH値を4~5.5に調整して、シランカップリング剤、チタン酸塩カップリング剤、水素化レシチン及び脂肪酸などの表面処理剤を使用して、着色澱粉粉末を修飾処理して、乾燥、粉砕などの工程で処理して着色澱粉粉末を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色澱粉粉末を水の中に分散させ、pH値を4~5.5に調整して、第一混合溶液を形成し、
工程(a)又は(a’)を行い、
工程(a):表面処理剤とアルコール溶媒を均一に混合し、それを前記第一混合溶液に加え、前記着色澱粉粉末を修飾処理するために攪拌して、第二混合溶液を形成し、前記表面処理剤は、シランカップリング剤、チタン酸塩カップリング剤及び水素化レシチンのうちの少なくとも一つであり、
前記第二混合溶液の中の固体及び液体を分離し、前記固体を洗浄した後、前記固体を乾燥させて粉砕し、
工程(a’):前記第一混合溶液の中の固体と液体を分離し、前記固体を洗浄した後、初めて前記固体を乾燥させ、次に前記固体を粉砕し、
表面処理剤とアルコール溶媒を均一に混合して、第二混合溶液を形成し、前記着色澱粉粉末を修飾処理するために、攪拌しながら、粉砕して得られた粉末に前記第二混合溶液を均一に噴霧し、その後、噴霧された粉末に第二回の乾燥を行い、前記表面処理剤は、シランカップリング剤、チタン酸塩カップリング剤及び脂肪酸のうちの少なくとも一つである ことを特徴とする修飾された着色澱粉粉末の調製方法。
【請求項2】
前記表面処理剤の用量は、前記着色澱粉粉末の質量の2%~10%であることを特徴とする、請求項1に記載の修飾された着色澱粉粉末の調製方法。
【請求項3】
前記着色澱粉粉末の用量は、水の質量の30%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の修飾された着色澱粉粉末の調製方法。
【請求項4】
前記アルコール溶媒は、エタノール及びイソプロパノールのうちの少なくとも1つであり、及び/又は前記表面処理剤と前記アルコール溶媒は、1:1~1:1.5の質量比で均一に混合することを特徴とする、請求項1に記載の修飾された着色澱粉粉末の調製方法。
【請求項5】
前記着色澱粉粉末を水の中に分散させ、pH値を4-5.5に調整する操作温度は、60℃~80℃であることを特徴とする、請求項1に記載の修飾された着色澱粉粉末の調製方法。
【請求項6】
前記工程(a)で、固液分離前の操作温度は、60℃~80℃であることを特徴とする、請求項5に記載の修飾された着色澱粉粉末の調製方法。
【請求項7】
洗浄液の導電率が50μS/cm未満になるまで前記固体を洗浄することを特徴とする、請求項1に記載の修飾された着色澱粉粉末の調製方法。
【請求項8】
前記工程(a)で、前記攪拌の回転速度は、300r /min~500r /minであり、時間は、100min~140minであることを特徴とする、請求項1に記載の修飾された着色澱粉粉末の調製方法。
【請求項9】
前記工程(a’)で、前記攪拌の回転速度は、5000r /min~20000r /minであることを特徴とする、請求項1に記載の修飾された着色澱粉粉末の調製方法。
【請求項10】
前記工程(a)で、乾燥温度は80℃~120℃であり、及び/又は、
前記工程(a’)で、最初の乾燥温度及び/又は2回目の乾燥温度は、80℃~120℃であることを特徴とする、請求項1に記載の修飾された着色澱粉粉末の調製方法。
【請求項11】
前記請求項1~請求項10のいずれかの一項に記載の修飾された着色澱粉粉末の調製方法によって調製されることを特徴とする修飾された着色澱粉粉末。
【請求項12】
前記請求項11に記載の修飾された着色澱粉粉末を含むことを特徴とする化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連特許出願の相互参照>
本願は、2020 年10月13日に出願した、出願番号が202011087797.5であり、発明の名称が「高疎水性、にじみの少ない着色澱粉粉末とその調製方法及び応用」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が参照により本願に援用される。
【0002】
本発明は、化粧品原材料の分野に関し、特に疎水性が優れ、にじみの少ない着色澱粉粉末とその調製方法及び応用の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
現代社会の生活水準の向上に伴い、人々が化粧品に対する需要も急速に高まる。口紅やアイシャドーなどの多くの化粧品には顔料が欠かせないが、顔料の溶解性を適切に処理しないと、顔料を含む化粧品は、使用の耐久性を保証できないだけでなく、ユーザーの健康に隠れた危険をもたらす。
【0004】
水溶性有機顔料と無機マトリックスを組み合わせた後で、有機顔料の鮮やかな色及び無機物の安全性と安定性を備えた着色澱粉粉末が得られる。これによって、元の水溶性原材料を油相にスムーズに分散させることができ、より使いやすく、色が長持ちする製品が得られる。また、着色澱粉粉末の親油性をさらに改善するために、人々は、修飾剤で着色澱粉粉末を処理すると試みる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の試験工程では、多くの着色澱粉粉末は優れた親油性を備えたが、疎水性が改善されないので、日常の使用中の発汗などにより、メイクが落ちやすくなることが分かる。そして、口紅などの比較的特殊な化粧品にとって、含まれる着色澱粉粉末の疎水性が良くなければ、食事によって顔料の析出を引き出すことができ、析出された顔料が人体にも持ち込まれ、安全上の問題が発生する可能性がある。また、多くの着色澱粉粉末は依然として色のにじみの問題があり、それも製品の使用感を大幅に低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従来技術の問題を解決するために、疎水性が優れ、にじみにくい着色澱粉粉末と、その調製方法及び応用を提供する必要がある。
【0007】
本発明は、修飾された着色澱粉粉末の調製方法を提供する。修飾された着色澱粉粉末の調製方法は、以下のステップを含む。着色澱粉粉末を水の中に分散させ、pH値を4~5.5に調整して、第一混合溶液を形成する。工程(a)又は(a’)を行う。工程(a):表面処理剤とアルコール溶媒を均一に混合し、それを前記第一混合溶液に加え、前記着色澱粉粉末を修飾処理するために攪拌して、第二混合溶液を形成し、前記表面処理剤は、シランカップリング剤、チタン酸塩カップリング剤及び水素化レシチンのうちの少なくとも一つであり、前記第二混合溶液の中の固体及び液体を分離し、前記固体を洗浄した後、前記固体を乾燥させて粉砕する。或いは、工程(a’):前記第一混合溶液の中の固体と液体を分離し、前記固体を洗浄した後、初めて前記固体を乾燥させ、次に前記固体を粉砕し、表面処理剤とアルコール溶媒を均一に混合して、第二混合溶液を形成し、前記着色澱粉粉末を修飾処理するために、攪拌しながら、粉砕して得られた粉末に前記第二混合溶液を均一に噴霧し、その後、噴霧された粉末に第二回の乾燥を行い、前記表面処理剤は、シランカップリング剤、チタン酸塩カップリング剤及び脂肪酸のうちの少なくとも一つである。
【0008】
前記表面処理剤の用量は、前記着色澱粉粉末の質量の2%~10%である。
【0009】
前記着色澱粉粉末の用量は、水の質量の30%以下である。
【0010】
前記アルコール溶媒は、エタノール及びイソプロパノールのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、前記表面処理剤と前記アルコール溶媒は、1:1~1:1.5の質量比で均一に混合する。
【0011】
前記着色澱粉粉末を水の中に分散させ、pH値を4-5.5に調整する操作温度は、60℃~80℃である。
【0012】
前記工程(a)で、前記固液分離前の操作温度は、60℃~80℃である。
【0013】
前記洗浄液の導電率が50μS/cm未満になるまで前記固体を洗浄する。
【0014】
前記工程(a)で、前記攪拌の回転速度は、300r /min~500r /minであり、時間は、100min~140minである。
【0015】
前記工程(a’)で、前記攪拌の回転速度は、5000r /min~20000r /minである。
【0016】
前記工程(a)で、前記乾燥温度は80℃~120℃であり、及び/又は、前記工程(a’)で、最初の乾燥温度及び/又は2回目の乾燥温度は、80℃~120℃である。
【0017】
本発明は、着色澱粉粉末の分散液のpH値を4~5.5の範囲に制御することにより、着色澱粉粉末自体の化学結合構造が破壊されないことを確保するとの前提の下、工程(a)を含む方法を使用する場合、チタンカップリング剤、チタン酸カップリング剤、水素化レシチンなどの表面処理剤又はそれらの混合物の加水分解プロセスを促進し、着色澱粉粉末と上記の表面処理剤によりよく反応を発生させる。それによって、疎水性が優れた着色澱粉粉末を調製する。工程(a)又は工程(a’)を含む方法を使用する場合、それ自体がアルカリ性である着色澱粉粉末にとって、酸性化処理は、水素結合の形成にサポートを提供し、着色澱粉粉末に脱水反応により表面処理剤と結合させ、着色澱粉粉末の修飾を実現するとともに、従来の方法で調製された着色澱粉粉末に残され、析出しやすい顔料は、本発明の方法に処理された後に効果的に除去することができ、使用中に色のにじみにくい着色澱粉粉末を調製し、着色澱粉粉末の安全性と乳化システムでの安定性を高める。
【0018】
本発明は、前記修飾された着色澱粉粉末の調製方法によって調製される修飾された着色澱粉粉末を提供する。
【0019】
本発明は、前記修飾された着色澱粉粉末の調製方法によって調製される修飾された着色澱粉粉末を含む化粧品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、当業者に本発明をより容易に理解させるために、以下、本発明の関連する実施形態を参照しながら、本発明の実施例の技術方案に対して明確かつ完全に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されない。むしろ、これらの実施形態を提供する目的は、本発明の開示の内容をより完全に理解することである。
【0021】
本発明の明細書、請求の範囲における用語「第一」、「第二」は、説明及び区別の目的のみ使用され、相対的な重要性を示したり暗示したり、示された技術的特徴の数量を暗示したりするものとして解釈されるべきではない。したがって、「第一」、「第二」で限定された特徴は、その特徴の少なくとも1つを明示的又は暗示的に含むことができる。本発明の説明において、「複数」とは、明示的かつ具体的な定義がない限り、例えば二つ、三つなどの少なくとも二つを指す。本発明の説明において、「いくつか」の意味は、明示的かつ具体的な定義がない限り、例えば、1つ、2つなどの少なくとも1つを指す。
【0022】
特に明記されていない限り、本発明で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を持つ。本発明で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。本発明で使用される「及び/または」という用語は、一つ又は複数の関連するリストされた事項の任意又はあらゆる組み合わせを含む。
【0023】
本発明は、疎水性が優れ、にじみにくい着色澱粉粉末と、その調製方法及び応用を提供する。
【0024】
本発明の一つの実施形態は、修飾された着色澱粉粉末の調製方法を提供する。修飾された着色澱粉粉末の調製方法は、以下のステップを含む。
【0025】
着色澱粉粉末を水の中に分散させ、pH値を4~5.5に調整して、第一混合溶液を形成する。
【0026】
工程(a)又は(a’)を行う。
【0027】
工程(a):表面処理剤とアルコール溶媒を均一に混合し、それを第一混合溶液に加え、着色澱粉粉末を修飾処理するために攪拌して、第二混合溶液を形成する。表面処理剤は、シランカップリング剤、チタン酸塩カップリング剤及び水素化レシチンのうちの少なくとも一つである。
【0028】
第二混合溶液の中の固体及び液体を分離し、固体を洗浄した後、固体を乾燥させて粉砕する。
【0029】
工程(a’):第一混合溶液の中の固体と液体を分離し、固体を洗浄した後、初めて固体を乾燥させ、次に固体を粉砕する。
【0030】
表面処理剤とアルコール溶媒を混合して、第二混合溶液を形成し、着色澱粉粉末を修飾処理するために、攪拌しながら、粉砕して得られた粉末に第二混合溶液を均一に噴霧し、その後、噴霧された粉末に第二回の乾燥を行う。表面処理剤は、シランカップリング剤、チタン酸塩カップリング剤及び脂肪酸のうちの少なくとも一つである。
【0031】
一つの具体的な実施形態では、任意に、pH値は、例えば、4.1~5.3であってもよく、又は例えば、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.2、5.4であってもよい。合理的なpH値の範囲の選択は非常に重要である。酸性度が強すぎると(pH値が4未満)、着色澱粉粉末の自体の化学結合構造が破壊されることを引き出すことができる。酸性度が弱い(pH値が5.5より高い)場合又はアルカリ性である場合、着色澱粉粉末の構造の安定性を保証できるにもかかわらず、修飾効果が大幅に削減される。
【0032】
表面処理剤自体の性質によって、表面処理剤と着色澱粉粉末の反応過程が異なる。工程(a)は、湿式処理であり、水の中で一定の分散性を有する表面処理剤に適し、水中で着色澱粉粉末の修飾を達成する。工程(a’)は、乾式処理であり、高温でも安定して存在できる表面処理剤に適し、高温では、溶融状態の表面処理剤と着色澱粉粉末がよく混合することもでき、それによって反応を発生し、着色澱粉粉末の修飾を達成する。
【0033】
一つの具体的な実施形態では、シランカップリング剤は、トリメトキシオクチルシラン、トリエトキシオクチルシラン及びヘキシルトリメトキシシランのうちの少なくとも1つである。
【0034】
一つの具体的な実施形態では、チタン酸塩カップリング剤は、イソプロポキシチタントリイソステアレートである。
【0035】
一つの具体的な実施形態では、脂肪酸は、ステアリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸のうちの少なくとも1つである。
【0036】
一つの具体的な実施形態では、表面処理剤の用量は、着色澱粉粉末の質量の2%~10%である。任意に、表面処理剤の用量は、例えば、3%~9%であってもよく、又は例えば、4%、6%、8%であってもよい。表面処理剤の用量は、着色澱粉粉末に対する修飾効果に直接関係し、用量が少なすぎると(2%未満)、修飾効果が良くなく、用量が多すぎると、着色澱粉粉末は処理剤に対する収容が限られるので、表面処理剤の用量が一定量に増える時、その用量の増加に伴って修飾効果が向上し続けない一方で、ひいては修飾効果に悪い影響を及ぼし、疎水性が低下することを引き出す。
【0037】
一つの具体的な実施形態では、着色澱粉粉末の用量は、水の質量の30%以下である。任意に、着色澱粉粉末の用量が水の質量に占める割合は、5%~25%であり、10%、15%、20%であってもよい。着色澱粉粉末の用量が水の質量に占める割合は、高すぎることができない。着色澱粉粉末の用量が水の質量に占める割合が高すぎると、システムが濃厚すぎ、十分に分散できず、修飾効果に影響を及ぼす。
【0038】
一つの具体的な実施形態では、水は脱イオン水である。
【0039】
一つの具体的な実施形態では、アルコール溶媒は、エタノール及びイソプロパノールのうちの少なくとも1つである。アルコール溶媒の使用は、表面処理剤が水の中での分散性の向上に役立ち、着色澱粉粉末との接触がより良くなり、それによって反応を発生し、修飾を達成する。
【0040】
一つの具体的な実施形態では、表面処理剤とアルコール溶媒は、1:1~1:1.5の質量比で均一に混合する。
【0041】
一つの具体的な実施形態では、着色澱粉粉末が水の中に分散され、pH値を4-5.5に調整する操作温度は、60℃~80℃である。
【0042】
一つの具体的な実施形態では、工程(a)における固液分離前の操作温度は、60℃~80℃である。
【0043】
一つの具体的な実施形態では、洗浄液の導電率が50μS/cm未満になるまで固体を洗浄する。
【0044】
一つの具体的な実施形態では、工程(a)で攪拌の回転速度は、300r /min~500r /minであり、時間は、100min~140minである。
【0045】
一つの具体的な実施形態では、工程(a’)で攪拌の回転速度は、5000r /min~20000r /minである。
【0046】
一つの具体的な実施形態では、工程(a)で乾燥温度は80℃~120℃であり、乾燥後のシステムの水分含有量は5%以下である。任意に、乾燥温度は、例えば、110℃~120℃であり、又は、例えば、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃であってもよい。
【0047】
一つの具体的な実施形態では、工程(a’)で最初の乾燥温度及び/又は2回目の乾燥温度は、80℃~120℃であり、最初の乾燥後のシステムの含水量は、5%以下であり、2回目の乾燥時間は、3~5時間である。任意に、最初の乾燥温度及び/又は2回目の乾燥温度は、例えば、110℃~120℃であり、又は、例えば、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃であってもよい。
【0048】
本発明において、着色澱粉粉末の分散液のpH値を4~5.5の範囲に制御することにより、着色澱粉粉末自体の化学結合構造が破壊されないことを確保するとの前提の下、工程(a)を含む方法を使用する場合、チタンカップリング剤、チタン酸カップリング剤、水素化レシチンなどの表面処理剤又はそれらの混合物の加水分解プロセスを促進し、着色澱粉粉末と上記の表面処理剤によりよく反応を発生させる。それによって、疎水性が優れた着色澱粉粉末を調製する。工程(a)又は工程(a’)を含む方法を使用する場合、それ自体がアルカリ性である着色澱粉粉末にとって、酸性化処理は、水素結合の形成にサポートを提供し、着色澱粉粉末に脱水反応により表面処理剤と結合させ、着色澱粉粉末の修飾を実現するとともに、従来の方法で調製された着色澱粉粉末に残され、析出しやすい顔料は、本発明の方法に処理された後に効果的に除去することができ、使用中に色のにじみにくい着色澱粉粉末を調製し、着色澱粉粉末の安全性と乳化システムでの安定性を高める。
【0049】
本発明の他の態様は、上記の調製方法によって調製された着色澱粉粉末を提供する。
【0050】
本発明は、更に、上記の調製方法によって調製された着色澱粉粉末を含む化粧品を提供する。
【0051】
以下、具体的な実施形態及び比較例と結合して、さらに詳細に説明される。以下の実施形態で使用される器具及び原材料は、より具体的であり、他の具体的な実施形態では、これに限定されず、例えば、塩酸でpH値を調整することに限定されず、水浴で操作温度を制御することにも限定されない。
【0052】
実施形態1
(1)50gのコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末(Cogilor Ruby D&C Red6 Ba lake)を500gの脱イオン水に分散し、60℃の水浴で10分間攪拌して分散する。
【0053】
(2)塩酸でシステムのpH値を4.0に調整する。
【0054】
(3)2.5gのトリエトキシオクチルシランと2.5gのエタノール(95%)を均一に混合する。
【0055】
(4)(3)を(2)に加え、60℃で400r/minの回転速度で攪拌し、120分間反応させる。
【0056】
(5)次に、吸引ろ過し、洗浄液の導電率が50μS/cm未満になるまで洗浄する。
【0057】
(6)115℃でフィルター残留物を、水分含有量が5%未満になるまで乾燥する。
【0058】
(7)乾燥されたフィルター残留物を粉砕し、修飾されたコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を得る。
【0059】
実施形態2
実施形態1のコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末をコジラールビーD&C赤7カルシウムの着色澱粉粉末に変更する。
【0060】
実施形態3
実施形態1のコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末をコジラールビーD&C赤30アルミニウムの着色澱粉粉末に変更する。
【0061】
実施形態4
実施形態1の50gのコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を150gのコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末に変更する。
【0062】
2.5gのトリエトキシオクチルシランと2.5gのエタノール(95%)を均一に混合する代わりに、7.5gのトリエトキシオクチルシランと7.5gのエタノール(95%)を均一に混合する。
【0063】
実施形態5
実施形態1のpH値を5.5に変更する。
【0064】
実施形態6
実施形態1の2.5gのトリエトキシオクチルシランと2.5gのエタノール(95%)を均一に混合する代わりに、1.0gのトリエトキシオクチルシランと1.0gのエタノール(95%)を均一に混合する。
【0065】
実施形態7
実施例1の2.5gのトリエトキシオクチルシランと2.5gのエタノール(95%)を均一に混合する代わりに、5.0gのトリエトキシオクチルシランと5.0gのエタノール(95%)を均一に混合する。
【0066】
実施形態8
実施形態1の(1)~(4)の反応温度を80℃に変更する。
【0067】
実施形態9
(1)50gのコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を500gの脱イオン水に分散し、60℃の水浴で10分間攪拌して分散する。
【0068】
(2)塩酸でシステムのpH値を4.0に調整する。
【0069】
(3)次に、吸引ろ過し、洗浄液の導電率が50μS/cm未満になるまで洗浄する。
【0070】
(4)115℃で、水分含有量が5%未満になるまで乾燥する。
【0071】
(5)上記のパウダーケーキを高速粉砕機に加え、1回粉砕した後、10000r/minの回転速度で攪拌しながら、2.5gのトリエトキシオクチルシランと2.5gのエタノール(95%)の混合液を噴霧し、均一に混合する。
【0072】
(6)115℃で4時間乾燥し、処理されたコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を得る。
【0073】
実施形態10
実施形態1の工程(3)の2.5gのトリエトキシオクチルシランを2.5gのヘキシルトリメトキシシランに変更する。
【0074】
実施形態11
実施形態1の工程(3)の2.5gのトリエトキシオクチルシランを2.5gの水素化レシチンに変更し、工程(6)で80℃で乾燥することに変更する。
【0075】
実施形態12
実施形態9の工程(5)の2.5gのトリエトキシオクチルシランを2.5gのステアリン酸に変更する。
【0076】
実施形態13
実施形態9の工程(5)の2.5gのトリエトキシオクチルシランを2.5gのミリスチン酸に変更する。
【0077】
実施形態14
実施形態9の工程(5)の2.5gのトリエトキシオクチルシランを2.5gのパルミチン酸2.5gに変更する。
【0078】
実施形態15
実施形態9の工程(5)の2.5gのトリエトキシオクチルシランを、2.5gのトリイソステアリン酸イソプロポキシチタンに変更する。
【0079】
比較例1
(1)50gのコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を500gの脱イオン水に分散し、60℃の水浴で10分間攪拌して分散する。
【0080】
(2)2.5gのトリエトキシオクチルシランと2.5gのエタノール(95%)を均一に混合する。
【0081】
(3)(2)を(1)に加え、60℃で400r/minの回転速度で攪拌し、120分間反応させる。
【0082】
(4)次に、吸引ろ過し、洗浄液の導電率が50μS/cm未満になるまで洗浄する。
【0083】
(5)115℃でフィルター残留物を、水分含有量が5%未満になるまで乾燥する。
【0084】
(6)乾燥されたフィルター残留物を粉砕し、処理されたコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を得る。
【0085】
比較例2
比較例1のコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末をコジラールビーD&C赤7カルシウムの着色澱粉粉末に変更する。
【0086】
比較例3
比較例1のコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末をコジラールビーD&C赤30アルミニウムの着色澱粉粉末に変更する。
【0087】
比較例4
(1)50gのコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を500gの脱イオン水に分散し、60℃の水浴で10分間攪拌して分散する。
【0088】
(2)塩酸でシステムのpH値を4.0に調整する。
【0089】
(3)2.5gのトリエトキシオクチルシランを(2)に加え、60℃で400r/minの回転速度で攪拌し、120分間反応させる。
【0090】
(4)次に、吸引ろ過し、洗浄液の導電率が50μS/cm未満になるまで洗浄する。
【0091】
(5)115℃でフィルター残留物を、水分含有量が5%未満になるまで乾燥する。
【0092】
(6)乾燥されたフィルター残留物を粉砕し、処理されたコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を得る。
【0093】
比較例5
(1)50gのコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を高速粉砕機に加え、10000r/minの回転速度で攪拌しながら、実施形態1と同じ用量の塩酸を噴霧し、均一に混合する。
【0094】
(2)2.5gのトリエトキシオクチルシランと2.5gのエタノール(95%)との混合溶液を噴霧し、均一に混合する。
【0095】
(3)115℃で、4時間乾燥し、処理されたコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を得る。
【0096】
比較例6
(1)50gのコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末をヘンシェルミキサーに入れる。
【0097】
(2)7.5gのトリエトキシオクチルシランと1.5gの反応性オルガノシロキサンを均一に混合する。
【0098】
(3)撹拌しながら、(2)を(1)に加え、30分間反応させる。
【0099】
(4)4kgの粉砕圧力及び10000r/minの階段回転速度で、(3)で得られた生成物を粉砕する。
【0100】
(5)110℃で、9時間乾燥し、処理されたコジラールビーD&C赤6バリウムの着色澱粉粉末を得る。
【0101】
比較例7
実施形態1の工程(2)のpH値を6に変更する。
【0102】
比較例8
実施形態1の工程(3)の2.5gのトリエトキシオクチルシランと2.5gのエタノール(95%)を、0.75gのトリエトキシオクチルシランと0.75gのエタノール(95%)に変更する。
【0103】
比較例9
実施形態1の工程(3)の2.5gのトリエトキシオクチルシランと2.5gのエタノール(95%)を、6gのトリエトキシオクチルシランと6gのエタノール(95%)に変更する。
【0104】
疎水性は、パウダーケーキを押して、水との接触角をテストすることによって特徴付けられる。
【0105】
【0106】
着色澱粉粉末の顔料の析出特性評価方法は、次のとおりである。
【0107】
(1)2.4gの着色澱粉粉末と9.6gのPAO12(Pionier Gel Pao 120)を均一に攪拌して混合する。
【0108】
(2)グリセリンと脱イオン水を1:1の質量比で均一に混合する。
【0109】
(3)10gのステップ(1)から形成された混合物と30gのステップ(2)から形成された混合物を混合し、暗所に24時間置いて、上清液の色を観察する。色が浅いのは顔料の析出が少ないことを示し、色が深いのは顔料の析出が多いことを示す。
【0110】
【0111】
【0112】
上記の処方は、それぞれ室温で暗所に保存され、暗所で48℃で保存され、10日後に室温で保存されたサンプルと比較した色の変化を観察する。
【0113】
【0114】
比較例1~3では、酸性化処理を行わなかったので、処理された着色澱粉粉末は、疎水性がほとんど改善されず、且つ色のにじみが深刻であり、乳化システムでの安定性もよくない。比較例4では、表面処理剤のトリエトキシカプリリルシランがアルコール溶媒で前処理されないので、表面処理剤が水の中での分散性が良くなく、修飾工程で着色澱粉粉末とよく接触できず、処理された着色澱粉粉末の疎水性が向上及び改善されず、色のにじみが深刻であり、乳化システムでの安定性もよくない。比較例5では、着色澱粉粉末を酸性化処理し、表面処理剤を酸性化処理していないと、疎水性はわずかに改善されるが、色のにじみは深刻であり、乳化システムでの安定性は非常に悪い。比較例6では、従来の方法を使用して着色澱粉粉末を修飾すると、親油性は大幅に改善されるが、疎水性が改善される程度も小さく、且つ色のにじみは深刻であり、乳化システムでの安定性は非常に悪い。比較例7では、pH値の選択は不合理であるので、同様に着色澱粉粉末の疎水性、色のにじみにくさ、及び乳化システムでの安定性にも影響を及ぼす。比較例8及び比較例9では、表面処理剤の用量が不合理であるので、まず、疎水性の改善は非常に限られ、次に、修飾された着色澱粉粉末の色のにじみはよく改善されず、且つ乳化システムの安定性も良くない。
【0115】
本発明の各技術的特徴は、着色澱粉粉末の疎水性を高め、色のにじみを改善し、乳化システムでの安定性を高めるのに重要な役割を果たすことが分かる。
【0116】
上記実施形態の技術的特徴は任意に組み合わせることができる。説明を簡潔にするために、上記実施形態における様々な技術的特徴のすべての可能な組み合わせは記載されていない。ただし、これらの技術的機能の組み合わせは、矛盾がない限り、本明細書の記載の範囲と見なすべきである。
【0117】
上記の実施形態は、本発明のいくつかの実施形態を表すだけであり、その説明が比較的具体的かつ詳細であるが、それらは、本発明の特許の範囲に対する限定に理解されるべきではない。当業者であれば、本発明の技術構成の趣旨や範囲を逸脱しない前提下で、いろいろな更正及び変形を行なうことができる。これらの更正及び変形は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。従って、本発明の保護範囲は、添付されたクレームをよりどころとする。
【国際調査報告】