(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】予熱された粒子上で反応を行うための方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/08 20060101AFI20230120BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20230120BHJP
C10G 9/32 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
B01J8/08
C10G11/18
C10G9/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022523303
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2020079254
(87)【国際公開番号】W WO2021074407
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501389637
【氏名又は名称】ハーテーエー・ゲーエムベーハー・ザ・ハイ・スループット・イクスペリメンテイション・カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】593005895
【氏名又は名称】コンセホ・スペリオル・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス(セエセイセ)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS(CSIC)
(71)【出願人】
【識別番号】522156357
【氏名又は名称】ユニベルシタート ポリテクニカ デ バレンシア
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】キルヒマン,マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ヨルダン,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】ハース,アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】フコイェフィク,サシャ フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ダイメク,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ケヒェル,オリファー
(72)【発明者】
【氏名】コルマ,アベリノ
【テーマコード(参考)】
4G070
4H129
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB10
4G070BB21
4G070CA07
4G070CA13
4G070CA25
4G070CB17
4G070CC03
4G070DA23
4H129AA02
4H129CA08
4H129CA09
4H129CA10
4H129DA03
4H129DA04
4H129FA03
4H129GA03
4H129KA02
4H129KB02
4H129LA10
4H129NA20
4H129NA21
(57)【要約】
本発明は、予熱された粒子上で反応を行う方法であって:
(a)緩衝容器(3)に粒子(17)を供給すること;
(b)前記緩衝容器(3)から供給ライン(11)を介して反応器(5)に前記粒子(17)を供給すること;及び
(c)前記反応器(5)から前記粒子(17)を取り出すこと、
を含み、前記粒子(17)は前記供給ライン(11)内で加熱される、方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予熱された粒子上で反応を行う方法であって:
(a)緩衝容器(3)に粒子(17)を供給すること;
(b)前記緩衝容器(3)から供給ライン(11)を介して反応器(5)に前記粒子(17)を供給すること;及び
(c)前記反応器(5)から前記粒子(17)を取り出すこと、
を含み、
前記粒子(17)は前記供給ライン(11)内で加熱される、方法。
【請求項2】
前記粒子(17)を加熱するために、可燃物と酸化剤が添加され、前記粒子(17)は前記可燃物と前記酸化剤の燃焼によって加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可燃物は、水素、メタン、エタン、プロパン及びブタンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤は酸素含有ガスである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸素含有ガスは、空気、希釈空気、酸素富化空気、酸素、又は酸素と不活性ガスの混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤は準化学量論的に添加される、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記可燃物と前記酸化剤は、前記粒子の流れ方向に対する対向流で前記供給ライン(11)に供給される、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子(17)は前記供給ライン(11)内で400~1200℃の範囲の温度に加熱される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子(17)は、前記反応器(5)から取り出された後に前記緩衝容器(3)にリサイクルされる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子(17)は前記緩衝容器(3)内で再生される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記緩衝容器(3)内の前記粒子(17)の温度は400~850℃の範囲である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記予熱された粒子上の反応は、接触分解反応である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記予熱された粒子上の反応は、熱分解用途である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予熱された粒子上で反応を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
予熱された粒子との反応は、例えば真空ガスオイル(VGO)又は長鎖炭化水素から燃料及び液化石油ガス(LPG)を製造するための流動接触分解(FCC)のような接触分解反応(catalytic cracking reaction)である。これらの反応では、粒子は流動接触分解反応のための触媒を含む。分子の熱活性化に重点を置いた予熱された粒子で行われる他のタイプの反応には、熱分解がある。
【0003】
これらの反応は、一般に500℃より高い温度で行われる。この反応温度は、少なくとも反応温度に対応する温度まで粒子を加熱することによって達成されることができる。このような反応中、コークスは固体粒子上に堆積し、再生器内でのコークス堆積物の燃焼により、反応器-再生器の構成粒子を予熱するために使用されることができる。
【0004】
不十分なコークス生成量を生成する炭化水素供給を使用した場合、再生器内でコークスを燃焼させることによって達成される温度は低くなりすぎるため、粒子をさらに予熱する必要がある。この目的のために、例えばトーチ油が、必要なコークスが形成される反応供給に添加される。さらに、オレフィン製造又は熱分解用途の新しい方法が、再生器で取り扱うには高すぎる可能性があるより高い粒子温度を必要とするより高い反応温度で実施される。したがって、反応温度より低い温度で粒子を緩衝及び再生し、再生器と反応器の間で追加の熱を供給することが必要である。
【0005】
US2005/0003552Aは、粒子と試薬との間の短い接触時間反応における粒子の研究のための試験ユニットを記載している。該試験ユニットは、粒子のための緩衝容器、反応器、及び分離器を備える。緩衝容器に粒子が保存され、予熱される。予熱された粒子は、次に、バルブによって閉じることができる装填ラインを通って反応器に流れ込む。反応器には、粒子を反応生成物から分離するための分離器が続く。しかし、触媒を予熱できる最高温度は、緩衝容器とバルブの材質によって決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、粒子が緩衝容器内で予熱できる温度を超える温度であって、任意でより低い温度で粒子に含まれる触媒を再生することを可能にする温度で、粒子を反応器に供給させ得る予熱された粒子上で反応を実行するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、予熱された粒子上で反応を行う方法によって達成され、該方法は:
(a)緩衝容器に粒子を供給することと;
(b)前記緩衝容器から供給ラインを介して反応器に前記粒子を供給することと;
(c)前記反応器から前記粒子を取り出すことと、
を含み、
ここでは、前記粒子は前記供給ライン内で加熱される。
【0009】
行われる反応に応じて、本方法で使用される粒子は、例えば、粒子を含む触媒である。この場合、粒子は触媒活性物質からなり得るか、又は担体上の触媒活性物質を含み得る。流動接触分解の場合、粒子は、例えば、マトリックス及び/又はバインダー又はゼオライトを含み、さらに触媒活性材料として希土類金属をさらに含み得る複合材料である。適切なマトリックス材料及びバインダー材料は、例えば、砂、シリカ、カオリン又は石英のようなシリコン酸化物又はアルミニウム酸化物である。
【0010】
高温で行われるが触媒を必要としない反応、例えば熱分解の場合、粒子の材料は、好ましくは、粒子が所望の温度に加熱され、熱を蓄えることができるように選択される。例えば適切な材料は、砂、シリカ、カオリン、石英又はゼオライトのようなシリコン酸化物又はアルミニウム酸化物である。
【0011】
供給ラインで粒子を加熱することにより、緩衝容器内で粒子を予熱できる温度より高い温度で、反応器に粒子を供給することが可能である。さらに、触媒の再生が可能な温度で粒子を緩衝容器内に保存することも可能である。
【0012】
反応に使用される粒子は、例えば粉末形態、又は、顆粒もしくはペレット形態であってよい。本方法を作動させるためには、粒子が緩衝容器から供給ラインを通して反応器に輸送され得ることが必要である。通常輸送するために、粒子は、例えば不活性ガスなどによって流動化され得る。これにより、粒子の形態と種類は、反応器内で行われる反応に依存する。
【0013】
反応が分解又は熱分解反応であり、コークスが副生成物である場合、通常、コークスが粒子上に堆積する。このため、反応に必要な熱の一部をコークスの燃焼により供給することができる。粒子を必要な温度まで加熱するために必要な追加の熱は、当業者に知られている任意の適切な加熱手段によって供給され得る。このような加熱手段は、例えば、内部ヒーター又は外部ヒーターであり得る。内部ヒーターは、例えば、加熱導体のような加熱要素であってよい。さらに、例えば、供給ラインを囲む電気加熱要素によって、又は高電流低電圧での伝導によってなど、供給ラインの壁を加熱することによって熱を供給することも可能である。別の方法として、粒子又は供給ラインの材料が誘導を受け得る限り、誘導加熱によって供給ライン内の粒子を加熱することも可能である。
【0014】
供給ラインにおいて粒子が加熱される温度は、好ましくは400~1200℃の範囲、より好ましくは500~1000℃の範囲、特に好ましくは600~900℃の範囲である。粒子をこのような温度に加熱することにより、例えば、接触分解反応、特に流動接触分解反応のような吸熱反応、又は反応器内での熱分解の実行を可能にすることができる。
【0015】
好ましくは、粒子を加熱するために、可燃物と酸化剤が添加され、該可燃物と酸化剤の燃焼によって熱が供給される。可燃物と酸化剤の燃焼により、粒子を均一に加熱することが実現でき、特に反応器をさらに加熱することなく、反応に十分な熱を供給できる温度まで粒子を加熱することが可能である。
【0016】
このような温度を達成するために、添加される可燃物の量は、比熱出力P/(m・ΔT)(「P」はワット単位の加熱出力、「m」はキログラム単位の粒子の量、及び「ΔT」はケルビン単位の意図される温度上昇)が、5~50W/(kg・K)の範囲、より好ましくは8~30W/(kg・K)の範囲、特に10~25W/(kg・K)の範囲であるように選択されることが好ましい。
【0017】
さらに、発熱反応の開始温度としてそのような温度が必要な場合は、そのような温度まで、十分な熱を供給し、反応物を加熱することも必要であるかもしれない。しかし、発熱反応の場合は、発熱反応中に放出される熱を使用して粒子を加熱することが好ましい。この場合、本方法に追加の熱を供給する必要がないという利点がある。
【0018】
しかし、本発明の方法は、特に、400~1000℃の範囲の温度で行われる反応、例えば流動接触分解(FCC)のような接触分解反応又は高温熱分解用途に使用される。
【0019】
本発明の方法で使用される反応器は、連続反応を可能にする任意の反応器であり得る。好ましくは、反応器は、ライザー又はダウンフロー反応器のような粒子の同伴流を含む管形反応器である。さらに、反応器-再生器構成で作動する流動床反応器は、再生器と反応器の間の追加の予熱によって利益を得ることができる。
【0020】
反応が行われる温度より高い温度に粒子を加熱することは、加熱された粒子によって、反応を行うために必要な熱をすべて供給することを可能にする。このことは、反応器内のより均一な熱分布が達成されるという追加の利点を有する。さらに、不活性雰囲気、特に酸化剤を含まない雰囲気で行わなければならない反応では、燃焼に使用される酸化剤も反応に影響を与え、また、通常、内部ヒーター又は外部ヒーターはそのような反応を行うための十分な熱を供給するのに十分ではないため、燃焼によって反応器内に熱を提供することは不可能である。
【0021】
粒子を加熱するための燃焼からの望ましくない副生成物を反応器に供給することを回避するために、水、一酸化炭素及び二酸化炭素に完全に変換されることができ、さらなる燃焼生成物を形成しない可燃物を使用することが好ましい。適切な可燃物は、例えば、水素、メタン、エタン、プロパン及びブタン、並びに乾燥ガス(一般にC1及びC2炭化水素)又はLPG(一般にC3及びC4炭化水素)などのそれらの組み合わせからなる群から選択される。燃焼によって水、一酸化炭素、二酸化炭素を形成するだけの可燃物を使用する利点は、これらの化合物が分解反応に関して不活性であることである。さらに、水素、メタン、エタン、プロパン及びブタンは、完全に燃焼しない場合、通常コークスを形成することはない。触媒反応の場合、このコークスは、触媒の効率を低下させる可能性がある粒子を含む触媒上に堆積する。
【0022】
粒子を加熱するための燃焼に使用される酸化剤は、爆発限界の範囲外で利用されるべき任意の適切な酸化剤であり得る。望ましくない副生成物の生成を避けるために、酸化剤としての酸素含有ガス、例えば空気、希釈空気、酸素富化空気、酸素、又は酸素と不活性ガスの混合物を使用することが特に好ましい。特に好ましくは、酸化剤として酸素を使用することである。酸化剤として酸素を使用することにより、酸素含有ガス中のいかなるさらなるガスも加熱される必要がなく、特に化学反応に影響を与える可能性のあるいかなるさらなるガスも反応器に供給されない。
【0023】
酸化剤として酸素と不活性ガスの混合ガスが使用される場合、不活性ガスは窒素、アルゴン、水蒸気又はこれらの混合ガスであることが好ましい。
【0024】
特に、副生成物の形成を回避するために追加の酸素なしに行わなければならない反応、又は安全上の理由から酸素を追加してはならない反応に使用する場合は、酸化剤を準化学量論的に添加することが好ましい。酸化剤を準化学量論的に添加することによって、燃焼中に酸化剤が完全に可燃物と反応することが保証される。したがって、酸化剤が反応器に供給されることはない。添加される酸化剤の量は、好ましくは10~100%、より好ましくは30~90%、特に50~90%の範囲であり、ここで、100%とは、可燃物の燃焼のための酸化剤の化学量論的量を意味する。
【0025】
供給ラインにおける粒子の凝集及び/又は粒子の目詰まりを避けるために、供給ラインへの粒子の流れ方向にガスを供給することによって、粒子を流動化させることが好ましい。粒子を外部又は内部のヒーターで加熱する場合、粒子に同伴される可能性のあるガスからの反応に悪影響を及ぼすことを避けるために、ガスは反応器内で行われる反応に関して不活性ガスであることが好ましい。
【0026】
粒子が添加された可燃物と酸化剤の燃焼によって加熱される場合、可燃物と酸化剤はガス状の形態で供給ラインに供給されることが特に好ましい。
【0027】
本発明の文脈では、「供給ライン」という用語は、供給ラインにおいて予熱される粒子のための供給ラインを指す。供給ラインは、反応器の入り口が反応物供給に接続されているため、一般に反応器の入り口には直接接続されていない。
【0028】
粒子が供給ラインで加熱される温度は、反応器内での化学反応に依存し、したがってこの反応が行われる温度に依存する。反応器にさらなる熱を供給できない場合、又は反応器内の温度分布を一定に保つ場合、粒子の温度は、反応を行うのに必要なエネルギーを供給するために十分に高くなければならない。これは、反応の停止を避けるために熱を供給する必要がある吸熱反応において特に重要である。一方、発熱反応では、反応を開始した後の発熱反応ではさらなる熱が供給される必要がないため、必要な開始温度を提供することだけが重要である。逆に、発熱反応では通常、熱を放散させる必要がある。
【0029】
反応を継続させるために、粒子は、供給ラインによって反応器に供給されるのと同じ量で反応器から取り出される。粒子の取り出し点及び反応器への供給ラインの接続は、したがって、好ましくは反応器の対向端にある。反応器から取り出された粒子は、プロセスから排出され得るか、又は好ましくは、再利用され得るかのいずれかである。
【0030】
粒子を再利用するために、粒子は、反応生成物から分離され、好ましくは反応器から取り出された後に緩衝容器にリサイクルされる。緩衝容器から、リサイクルされた粒子は、その後供給ラインに流れ込み、そこで加熱され、供給ラインから反応器に流入して再利用されることができる。
【0031】
緩衝容器内で緩衝されている間の粒子のエイジングを低減させるために、反応器内の粒子の温度よりも低い温度で粒子を緩衝することが好ましい。特に、触媒含有粒子を使用する場合、緩衝容器内の温度は、触媒が再生できるように設定されることが好ましい。必要に応じて、緩衝容器内に再生媒体を添加し、触媒の再生を向上させることもできる。このような再生媒体は、反応に使用される触媒のタイプに依存し、当業者にはよく知られている。代表的な再生媒体は、例えば空気である。
【0032】
再生媒体が使用されない場合は、緩衝容器内に不活性雰囲気を提供することがさらに有利である。このような不活性雰囲気は、粒子が緩衝容器内でエイジングしないことを保証する。不活性雰囲気は、例えば、緩衝容器に不活性ガス、例えば、窒素又はアルゴンのような希ガスを流入させることによって提供されることができる。特に好ましくは、不活性ガスは窒素である。
【0033】
緩衝容器内のすべての触媒含有粒子を再生媒体と接触させるためには、触媒含有粒子と再生媒体を密に混合させることが好ましい。ガス状再生媒体の場合は、これらを下方から供給し、再生媒体を供給して緩衝容器内に流動床を生成させることが特に好ましい。このような流動床では、すべての触媒含有粒子が再生媒体と接触する。
【0034】
粒子を再生する必要がない場合、又は粒子を低温で緩衝することだけが必要な場合は、緩衝容器に追加の物質を投入せず、緩衝容器内で粒子のエイジングが起こらないような温度に設定し、又は追加の物質を投入せずに粒子が再生する場合は、粒子が再生するような温度に設定する。エイジングが回避される温度及び/又は粒子が再生する温度もまた、当業者にはよく知られている。通常、緩衝容器内の粒子の温度は、400~850℃の範囲、より好ましくは500~800℃の範囲、特に650~750℃の範囲にある。緩衝容器内の温度をこのような範囲に保つことは、粒子が反応器に供給されるべき必要な温度に達成するために供給ライン内の粒子に供給されなければならない熱量を最小にすることができるというさらなる利点を有する。可燃物と酸化剤の燃焼によって加熱が行われる場合、このように可燃物と酸化剤の量を最小限に抑えることができ、それによって、燃焼から生じて反応器に供給される不純物の量も最小限に抑えることができる。
【0035】
温度を上記の特定された範囲に保つ別の利点は、緩衝容器及び粒子が通って供給ラインに供給される対応するバルブを、鋼のような標準的な材料から作ることができ、緩衝容器の十分な寿命を達成するために特に耐熱性のある特殊な材料を使用する必要がないことである。
【0036】
反応器から取り出された後、粒子は反応器から取り出された他の媒体から、特に反応生成物から、及び(存在する場合は)反応しなかった反応物から分離されなければならない。
【0037】
粒子を他の媒体から分離するために、分離器が使用され得る。反応が接触分解反応である場合、粒子のみが固体であり、すべての他の媒体はガス状である。したがって、粒子をさらなる媒体から分離するために、気体固体分離装置が使用され得る。このような気体固体分離装置は、例えばサイクロンである。あるいは、粒子及び反応媒体が供給される容器を使用することも可能である。該容器では、粒子は底部に集められ、ガス状媒体は上部から取り出されることができる。ただし、粒子がガス状媒体と一緒に取り出されることを避けるために、サイクロンのように気体から固体を除去する気体固体分離装置を使用することが好ましい。
【0038】
気体固体分離装置から固体は、適切な搬送手段、例えば回転式供給器によって取り出される。固体粒子を含むこのようにして除去された固体は、次いで、粒子の再生及び再利用のために緩衝容器にリサイクルされることができる。あるいは、固形物をプロセスから取り出して廃棄することも可能である。
【0039】
粒子に堆積され得る不純物を除去するために、粒子の一部のみを緩衝容器にリサイクルし、残りの固体をプロセスから取り出することもさらに可能である。
【0040】
プロセスから取り出されたガス状反応媒体は、さらなるプロセスに使用されることができ、あるいは、反応器内で行われた反応と、こうして得られた反応媒体に応じて、後処理され得る。
【0041】
特に、さらなる工程では、得られた反応生成物は、例えば、得られた反応生成物を不純物、副生成物及び反応しなかった試薬から分離するによってさらに処理されることができる。
【0042】
本方法は、特に試験ユニットで使用されるのに適している。このような試験ユニットは、粒子を含む緩衝容器と供給ラインによって接続された反応器を含む。このような試験ユニットの緩衝容器は、好ましくは0.15~15Lの範囲、より好ましくは0.2~10Lの範囲の粒子の取り込み容量を有する。試験ユニットで用いられる粒子は、好ましくは20~300μmの範囲の粒径を有する。
【0043】
このような試験ユニットにおいて、緩衝容器から反応器に粒子を移送するための供給ラインは、好ましくは、0.3~5mの範囲、特に0.5~2mの範囲の長さ、及び0.2~2cmの範囲、特に0.3~1.5cmの範囲の内径を有している。供給ラインは、好ましくは、その縦方向軸が水平に対して30°から90°の範囲(好ましくは、その角度は40°から70°の範囲にある)の角度を有するように配置される。供給ラインの傾斜によって、触媒の供給が垂直配置よりも良好に制御されることが可能になる。供給ラインの長さが0.6m以上の場合は、省スペースの構成を提供するために供給ラインは螺旋状であることが好ましい。
【0044】
試験ユニットの反応器は、好ましくは0.3~3mの範囲、より好ましくは0.5~2mの範囲の長さを有する管形反応器である。該管形反応器の内径は、好ましくは0.3~2cm、より好ましくは0.5~1.8cm、特に0.6~1.5cmの範囲であり、供給ラインは反応器より小さい径を有することが好ましい。
【0045】
供給ライン内の粒子を加熱するために、供給ラインの外部に直接近接して配置された加熱装置を使用することが好ましい。
【0046】
一般に、ユニットの個々の部分は互いに分離されており、緩衝容器と供給ラインは反応器と一体化した部分を形成しない。分離されたコンポーネントは、当業者に公知の手段によって接続されることができる。コンポーネントは、例えば、ねじ接続又は溶接によって接続され得る。
【0047】
本方法が試験ユニットで使用される場合、クロマトグラフィー法又は分光法、例えばガスクロマトグラフィー又は赤外分光法のような通常の分析方法によって反応生成物を分析することもさらに可能である。もちろん、反応生成物を分析するためのすべてのさらなる分析方法を使用することができる。反応生成物を分析するための好適な方法は、例えばUS-A2005/0003552に開示されている。
【0048】
本発明の例示的な実施形態を添付の図に示し、以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】予熱された粒子上で反応を行う本方法を作動させるための実験室試験ユニットを示す図である。
【
図2】第2の実施形態における予熱された粒子上で反応を行う本方法を作動させるための装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、予熱された粒子上で反応を行う本方法を作動させるための試験ユニットである。
【0051】
気相中で予熱され粒子によって反応を行う本方法を作動させるための試験ユニット1は、粒子のための緩衝容器3、反応器5、及び反応混合物を固体粒子から分離する分離器7を備える。
【0052】
反応器5で反応を行うために、液体又は気体の反応物が反応物供給9を介して反応器5に供給される。さらに、緩衝容器3は、供給ライン11によって反応器に接続されている。試験ユニットが作動すると、少なくとも1つの反応物が反応物供給9を介して反応器5に供給される。
【0053】
少なくとも1つの反応物の反応器5への供給を担保するために、適切な気体又は液体の搬送装置、例えばポンプ13又はコンプレッサーを使用することができる。気体又は液体の搬送装置は、少なくとも1つの反応物を反応器内に送ることができる任意のポンプ又はコンプレッサーであってよい。少なくとも1つの反応物が予熱されている場合、通常は、気体又は液体搬送装置を通って流れる少なくとも1つの反応物の温度に対して耐性を有する気体又は液体運搬装置が使用される。
【0054】
粒子を反応器に供給するために、さらにバルブ15が開かれる。バルブ15を開くことにより、粒子17は、緩衝容器3から供給ライン11を通って反応器5に流れ込む。
【0055】
図1に示す実施形態の反応器5は、少なくとも1つの反応物と粒子とが上から下に並流で流れる管形反応器である。したがって、反応器5内の粒子と少なくとも1つの反応物の流れは、重力によって支持される。
【0056】
本発明によれば、粒子は、反応器5に入る前に、供給ライン11において、反応器で行われる反応の温度より高い温度に予熱される。反応器5に入る前に粒子を予熱することによって、例えば、発熱反応の開始エネルギーとして使用される必要エネルギー、又は反応器5において吸熱反応を作動させるために使用されるエネルギーを提供することが可能である。粒子17を加熱するために、任意の適切な加熱手段19を使用することができる。適切な加熱手段19は、例えば、加熱導体のような内部ヒーターである。適切な外部ヒーターは、例えば供給ライン11を囲む電気加熱要素によって、供給ライン11の壁を加熱することによって実現される。さらに、加熱手段19はまた、粒子又は供給ラインが誘導を受けることを可能にする供給ライン11内の粒子の誘導加熱を含むこともできる。誘導を受け得る粒子を得るために、例えば、磁化可能な支持体を有する粒子を提供することが可能である。加熱手段19による粒子の加熱に加えて、可燃物と酸化剤とを供給ライン11に供給することによって粒子を加熱することも可能であり、特に好ましい。供給ライン11において、可燃物は酸化剤と反応し、それによって熱が発生する。
【0057】
粒子が加熱される温度は、反応器5で行われる反応に依存する。好ましくは、粒子は、反応器内の温度より0~500℃高い温度、好ましくは反応器内の温度より100~400℃高い温度、特に反応器内の温度より100~300℃高い温度に加熱される。反応が流動接触分解反応である場合、粒子が加熱される温度は、好ましくは、反応器の温度より150~200℃高い範囲である。
【0058】
反応器5を通って流れた後、ガス状反応混合物及び粒子は分離器7に流入する。分離器7においては、ガス状反応混合物は、固体粒子から分離される。
図1に示す実施形態では、固体粒子は分離器7で集められ、ガス状反応生成物は出口ライン21を介して取り出される。ガス状反応生成物は、次に、例えば、反応生成物から不純物を除去し、そして、少なくとも1つの反応物の一部のみが変換されている場合には、生成物を未反応反応物から分離するなどの、さらなる処理のためのユニットに輸送されることができる。さらに、反応生成物を分析するための分析も行われ得る。
【0059】
分離器で集められた粒子を除去することも可能である。粒子を除去するために、分離器7から粒子を除去するために開かれるバルブ23が設けられる。好ましくは、粒子を除去するために、不活性ガスが粒子を通って流れ、流動床を形成し、粒子が流動床の上部から除去される。適切な不活性ガスは、例えば窒素である。
【0060】
分離器から取り出された後、粒子は粒子回収のための装置で集められ、任意で外部的に再生されることができる。粒子回収で処理された後、粒子は緩衝容器3にリサイクルされ、再利用されることができる。
【0061】
図1で明らかなように、試験ユニット1の個々の部品は互いに分離されており、緩衝容器3及び供給ライン11は反応器5の一体部分を形成していない。分離されたコンポーネントは、当業者に知られている手段によって接続されることができる。コンポーネントは、ねじ接続又は溶接によって接続されてよい。供給ライン11という用語は、粒子供給ラインにおいて予熱される予熱粒子のための供給ライン11を指す。反応器5の入口は、反応物を供給する反応物供給9に接続されている。
【0062】
好ましくは、試験ユニット1は、実験室規模又は小規模試験工場の規模で使用される。したがって、緩衝容器3は、好ましくは、0.15~15リットルの範囲、より好ましくは0.2~10リットルの範囲の粒子の取り込み容量を有する。
【0063】
緩衝容器3から反応器5に粒子を移送するための供給ライン11は、好ましくは、0.3~5mの範囲の長さを有し、そこでは0.5~2mの範囲の長さを有することがさらに好ましい。好ましくは、供給ライン11の内径は、0.2~2cmの範囲であり、より好ましくは0.3~1.5cmの範囲である。供給ライン11内の粒子の加熱は、特に好ましくは、供給ライン11の外部に直接的に近接して配置される加熱装置の使用に基づくものである。
【0064】
反応器5は好ましくは0.3~3mの範囲の長さを有し、より好ましくは、反応器5は0.5~2mの範囲の長さを有する。反応器の内径は好ましくは0.3~2cmの範囲であり、より好ましくは、0.5~1.8cmの範囲、特に0.7~1.5cmの範囲である。
【0065】
本発明による方法を行うために、本方法内で採用される粒子が、20~300μmの範囲の平均粒径を有することが好ましい。
【0066】
図2は、第2の実施形態における予熱された粒子上で反応を行う方法を作動させるための装置を示している。
【0067】
図2に示される実施形態は、特に、
図2による粒子が循環するという点で、
図1の実施形態とは異なる。さらに、
図2に示される実施形態の反応器5は、ガス及び粒子が重力方向とは逆に下から上へ流れるライザー反応器である。
図2の実施形態の反応器を作動させるためには、反応物と、反応器5内の反応によって得られる結果反応混合物の速度は、反応器5を通して粒子を輸送するために十分に高くなければならない。
【0068】
粒子は、緩衝容器3内に供給され、緩衝容器3から供給ライン11を通って反応器5へ流入する。緩衝容器3は、好ましくは、粒子の再生器としても機能する。供給ライン3において、粒子は、
図1に示される実施形態について上述した加熱手段19に対応し得る適切な加熱手段によって加熱される。しかしながら、特に好ましくは、粒子は、可燃物、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン又は水素と、酸化剤、例えば酸素を、可燃物用供給ライン27を介して供給ライン11に供給することにより加熱される。可燃物の酸化によって、粒子は供給ライン内で加熱される。可燃物及び酸化剤の量は、特に接触分解反応では酸化剤が望ましくない副生成物、特に一酸化炭素を形成して分解反応に悪影響を及ぼすため、酸化剤の総量が供給ライン11で可燃物と反応し、酸化剤が反応器5に供給されるのを回避するように、選択される。
【0069】
反応器5から、反応混合物及び粒子は、「ストリッパー」とも呼ばれ得る分離器7に流入する。分離器7では、反応生成物は固体粒子から分離される。反応生成物から粒子を分離するために、分離器7は、例えば、サイクロンであり得る。
【0070】
図2に示される実施形態では、固体粒子は分離器7の底部に集まり、分離器7から接続ライン25を介して緩衝容器3内に移送される。緩衝容器3内の温度は、緩衝容器3内で触媒を再生可能にするために、反応温度より低い。緩衝容器3内での触媒の再生を担保するために、ガス、例えば空気が、ガス供給ライン29を介して、緩衝容器3に加えられ得る。ガスは、好ましくは、緩衝容器3内に流動床を生成するために、適切なガス分配器31を介して加えられる。この流動床によって、すべての触媒粒子がガスと接触することが保証される。さらに、流動床を生成することにより、粒子の凝集を回避することができる。
【0071】
緩衝容器3内の圧力を一定に保つため、排気ライン33が緩衝容器3に接続され、それを通して排ガスを取り出すことができる。必要に応じて、排ガスは排ガス処理され、収集されるか、又は環境中に放出される。
【0072】
粒子の循環のために、
図1に示される装置は実験用の試験ユニットとして特に使用されるのに対し、
図2に示される装置は特に工業規模のプロセスで使用されるのに適している。
【符号の説明】
【0073】
1 試験ユニット
3 緩衝容器
5 反応器
7 分離器
9 反応物供給
11 供給ライン
13 ポンプ
15 バルブ
17 粒子
19 加熱手段
21 出口ライン
23 バルブ
25 接続ライン
27 可燃物用供給ライン
29 ガス供給ライン
31 ガス分配器
33 排気ライン
【手続補正書】
【提出日】2021-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予熱された粒子上で反応を行う方法であって:
(a)緩衝容器(3)に粒子(17)を供給すること;
(b)前記緩衝容器(3)から
、反応器(5)の入り口に直接に接続されていない供給ライン(11)を介して反応器(5)に前記粒子(17)を供給
し、そして、反応器の入り口に接続されている反応物供給(9)を介して反応物を供給すること;及び
(c)前記反応器(5)から前記粒子(17)を取り出すこと、
を含み、
前記粒子(17)は前記供給ライン(11)内で加熱される、方法。
【請求項2】
前記粒子(17)を加熱するために、可燃物と酸化剤が添加され、前記粒子(17)は前記可燃物と前記酸化剤の燃焼によって加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可燃物は、水素、メタン、エタン、プロパン及びブタンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤は酸素含有ガスである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸素含有ガスは、空気、希釈空気、酸素富化空気、酸素、又は酸素と不活性ガスの混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤は準化学量論的に添加される、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記可燃物と前記酸化剤は、前記粒子の流れ方向に対する対向流で前記供給ライン(11)に供給される、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子(17)は前記供給ライン(11)内で400~1200℃の範囲の温度に加熱される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子(17)は、前記反応器(5)から取り出された後に前記緩衝容器(3)にリサイクルされる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子(17)は前記緩衝容器(3)内で再生される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記緩衝容器(3)内の前記粒子(17)の温度は400~850℃の範囲である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記予熱された粒子上の反応は、接触分解反応である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記予熱された粒子上の反応は、熱分解
反応である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】