(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】変性音遮断装置
(51)【国際特許分類】
G10K 11/172 20060101AFI20230120BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
G10K11/172
G10K11/16 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526812
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 US2020057666
(87)【国際公開番号】W WO2021096683
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】スー シアオシー
(72)【発明者】
【氏名】デバシシュ バネルジー
(72)【発明者】
【氏名】新宅 裕二
(72)【発明者】
【氏名】中島 毅彦
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061CC04
(57)【要約】
遮音装置は、複数のチャネルを有する少なくとも1つの変性音響散乱体を含む。複数のチャネルは、3つ以上のチャネルを含んでもよい。チャネルは開放端と終端とを有し、チャネルの終端は互いから分離されている。少なくとも1つの変性音響散乱体は、実質的に同様の共振周波数を有する音響単極子応答及び音響双極子応答を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャネルを有する少なくとも1つの変性音響散乱体であって、前記複数のチャネルはそれぞれ開放端及び終端を有し、前記複数のチャネルの前記終端は互いから分離している、少なくとも1つの変性音響散乱体を具備する、遮音装置であって、
前記少なくとも1つの変性音響散乱体は、音響単極子応答及び音響双極子応答を有し、前記少なくとも1つの変性音響散乱体の前記音響双極子応答及び前記音響単極子応答は、実質的に同様の共振周波数を有する、遮音装置。
【請求項2】
前記複数のチャネルは、少なくとも3つのチャネルを含む、請求項1に記載の遮音装置。
【請求項3】
前記複数のチャネルは、少なくとも4つのチャネルを含む、請求項1に記載の遮音装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの変性音響散乱体が前記共振周波数で音を吸収する吸収係数は、(a)前記複数のチャネルの少なくとも1つが前記音の波動伝播方向に沿って平行に整列されている場合、あるいは(b)前記複数のチャネルの少なくとも1つが、前記音の波動伝播方向に沿って直交して整列されている場合のいずれかで実質的に同様である、請求項3に記載の遮音装置。
【請求項5】
前記複数のチャネルはジグザグに形成されている、請求項1に記載の遮音装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの変性音響散乱体の幅に沿った断面は、少なくとも1つの対称線を有する対称形状を画定し、前記対称形状は外周を有し、前記複数のチャネルの前記開放端は前記外周に隣接している、請求項1に記載の遮音装置。
【請求項7】
前記複数のチャネルの各チャネルは、実質的に同様の容積を有する、請求項1に記載の遮音装置。
【請求項8】
前記複数のチャネルの各チャネルは、前記少なくとも1つの変性音響散乱体の幅にわたって実質的に同様の形状を有する、請求項1に記載の遮音装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの変性音響散乱体は、複数の変性音響散乱体を含み、前記複数の変性音響散乱体は互いから実質的に等距離で離間され、前記複数の変性音響散乱体の前記音響双極子応答及び前記音響単極子応答は、実質的に同様の共振周波数を有する、請求項1に記載の遮音装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの変性音響散乱体は車両内に取り付けられている、請求項1に記載の遮音装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの変性音響散乱体は前記車両の構造部材を形成する、請求項10に記載の遮音装置。
【請求項12】
少なくとも1つの変性音響散乱体であって、
前記少なくとも1つの変性音響散乱体は、複数のチャネルを有し、前記複数のチャネルはそれぞれ開放端及び終端を有し、前記複数のチャネルの前記終端は互いから分離し、
前記少なくとも1つの変性音響散乱体は、音響単極子応答及び音響双極子応答を有し、前記少なくとも1つの変性音響散乱体の前記音響双極子応答及び前記音響単極子応答は、実質的に同様の共振周波数を有する、少なくとも1つの変性音響散乱体と、
第1の壁及び第2の壁であって、前記第1の壁及び第2の壁は、概ね互いに対向し、空間を画定し、前記少なくとも1つの変性音響散乱体は、前記第1の壁と前記第2の壁との間の空間に位置づけられる、第1の壁及び第2の壁と、
を具備する、遮音システム。
【請求項13】
前記複数のチャネルは、少なくとも3つのチャネルを含む、請求項12に記載の遮音システム。
【請求項14】
前記複数のチャネルは、少なくとも4つのチャネルを含む、請求項12に記載の遮音システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの変性音響散乱体の幅に沿った断面は、少なくとも1つの対称線を有する対称形状を画定し、前記対称形状は外周を有し、前記複数のチャネルの前記開放端は前記外周に隣接している、請求項14に記載の遮音システム。
【請求項16】
前記複数のチャネルの各チャネルは、実質的に同様の容積を有する、請求項12に記載の遮音システム。
【請求項17】
前記複数のチャネルの各チャネルは、前記少なくとも1つの変性音響散乱体の幅にわたって実質的に同様の形状を有する、請求項12に記載の遮音システム。
【請求項18】
前記第1の壁と前記第2の壁との間の空間の距離が、前記共振周波数での波長よりも小さく(数1)、
【数1】
Dは前記第1の壁と前記第2の壁との間の空間の距離であり、cは音速であり、fは前記少なくとも1つの変性音響散乱体の前記音響単極子応答と前記音響双極子応答の共振周波数である、請求項12に記載の遮音システム。
【請求項19】
変性音響散乱体のアレイを形成する複数の変性音響散乱体であって、前記変性音響散乱体のアレイは前記第1の壁と前記第2の壁との間に位置づけられ、前記変性音響散乱体のアレイは、多数(N)の音響散乱体を含み、
複数の変性音響散乱体の数(N)は、
N=D/(c/f)であり、
Dは前記第1の壁と前記第2の壁との間の距離であり、cは空気中の音速であり、fは前記音響単極子応答と前記音響双極子応答の共振周波数である、
複数の変性音響散乱体をさらに具備する、請求項12に記載の遮音システム。
【請求項20】
前記変性音響散乱体のアレイは、前記第1の壁及び前記第2の壁のうちの1つに実質的に直交する列に沿って配置されている、請求項19に記載の遮音システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮音システム及び装置、さらに具体的には、音響単極子応答及び音響双極子応答を有する変性音響散乱体を備える遮音システム及び装置に概ね関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術の説明を提供するのは、開示の文脈を概ね提示するためである。この背景技術部分に記載する可能性のある範囲での本発明者らの研究と、出願時に先行技術として認められない可能性のある説明の態様とを、本技術に対する先行技術として明示的にも黙示的にも認めていない。
【0003】
いくつかの自動車用途では、低周波ノイズが乗客の快適性にとって長年の課題であった。車両では、大きな低周波ノイズが発生することがある。このような低周波ノイズは、車両のパワートレイン及びタイヤ、風切り音など、さまざまな原因から発生する可能性がある。
【0004】
低周波ノイズを管理するためのいくつかの異なる解決策があるが、多くには欠点がある。例えば、解決策の1つでは、高反射材を使用する必要がある。ドア及び窓などの高反射材から作成された構造物が、車両の車室から離れた場所でノイズを反射する可能性がある。しかし、反射されたノイズは騒音公害を引き起こす可能性があり、このようなタイプのシステムの性能は質量則によって制限される。
【0005】
別の解決策では、高吸収材の使用を必要とする。しかし、従来の多孔質吸音材は、その性質が高インピーダンスであるため、(1kHzを上回る)高周波の騒音低減にしか効果がない。材料の微細構造が大きな多孔性を有する場合、多孔性材料を通る音の伝送率が高い。
【発明の概要】
【0006】
この発明の概要部分は、開示を概ね要約したものであり、開示の全範囲又はその全特徴の包括的な開示ではない。
【0007】
本明細書では、遮音装置及び遮音システムの例を説明する。一例では、遮音装置には、複数のチャネルを有する少なくとも1つの変性音響散乱体が含まれる。複数のチャネルは、3つ以上のチャネルを含む場合がある。チャネルは開放端と終端とを有し、チャネルの終端は互いから分離されている。少なくとも1つの変性音響散乱体は、実質的に同様の共振周波数を有する音響単極子応答及び音響双極子応答を有する。
【0008】
遮音システムには、概ね対向する壁の間に位置づけられた少なくとも1つの変性音響散乱体が含まれる場合がある。少なくとも1つの変性音響散乱体は複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、3つ以上のチャネルを含む場合がある。チャネルは開放端と終端とを有し、チャネルの終端は互いから分離されている。少なくとも1つの変性音響散乱体は、実質的に同様の共振周波数を有する音響単極子応答及び音響双極子応答を有する。
【0009】
適用可能性の追加の領域と、開示した技術を強化するためのさまざまな方法が、提供した説明から明らかになるであろう。この要約の説明及び特定の例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本教示は、詳細な説明及び添付の図面からさらに充分に理解されるであろう。
【0011】
【
図1】変性音響散乱体を利用して遮音するためのシステムを示す図である。
【
図3】変性音響散乱体の1つの実装を示す図である。
【
図4A】異なる回転角で4つのチャネルを有する変性音響散乱体の吸音係数を示す図である。
【
図4B】異なる回転角で4つのチャネルを有する変性音響散乱体の吸音係数を示す図である。
【
図5A】異なる回転角で6つのチャネルを有する変性音響散乱体の吸音係数を示す図である。
【
図5B】異なる回転角で6つのチャネルを有する変性音響散乱体の吸音係数を示す図である。
【
図6A】変性音響散乱体のアレイの一実装を示す図である。
【
図6B】変性音響散乱体のアレイの別の実装を示す図である。
【
図7A】2つのチャネルを有する変性音響散乱体のアレイの吸収能力の結果を示す図である。
【
図7B】2つのチャネルを有する変性音響散乱体のアレイの吸収能力の結果を示す図である。
【
図7C】2つのチャネルを有する変性音響散乱体のアレイの吸収能力の結果を示す図である。
【0012】
本明細書に記載の図は、特定の態様を説明するために、本技術の一般的な特徴のなかで、方法、アルゴリズム及び装置の一般的な特徴を例示することを意図するものである。このような図は、任意の所与の態様の特性を正確に反映していない場合があり、必ずしもこの技術の範囲内で特定の実施形態を規定するか制限することを意図するものではない。さらに、特定の態様では、図の組み合わせからの特徴を組み込む場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本教示は、薄いにもかかわらず高い吸音度を有する吸音構造を提供する。本教示の吸音構造は、競合する構造とは対照的に、異なる周波数の複数の設計を組み合わせることにより、広い周波数範囲にわたって高い吸収度を提供することができる。
【0014】
遮音装置が、音響単極子応答と音響双極子応答とを有する変性音響散乱体を備える。変性音響散乱体の音響双極子応答と音響単極子応答は、実質的に同様の共振周波数を有してもよい。変性音響散乱体は、開放端と終端とを有するさらに3つのチャネルを備えてもよい。装置は、等間隔に配置された音響散乱体のアレイを形成する複数の変性音響散乱体を備えてもよい。そうすることにより、変性音響散乱体のアレイは、特定の周波数の音波を完全に吸収することができるため、並外れた遮音性能を提供する。
【0015】
本明細書に記載する装置及びシステムの物理特性に関して、音響的に小さい物体の場合、背景の散乱波は、単極子成分及び双極子成分に分解することができる。単極子応答を示す材料が、入射波の単極子成分のみを吸収することができる。同じ制限が双極子にも適用される。この明細書で説明する変性音響散乱体は、同様の周波数での単極子散乱と双極子散乱とを有する。これは、単極子モード及び双極子モードが変性している場合に可能である。単極子応答と双極子応答の両方を有することの利点は、入射波のこの2つの成分が運動量交換プロセスに参加し、ひいては、吸収に利用できるようになることである。
【0016】
さらに簡単に言えば、単極子と双極子の散乱強度は同じであるため、その大きさは同じである。単極子散乱及び双極子散乱は、前方散乱方向に建設的な干渉を及ぼし、透過がゼロになるように背景波を打ち消す。もちろん、単極子散乱と双極子散乱は、後方散乱方向に破壊的な干渉を及ぼす。
【0017】
図1を参照すると、遮音装置10の一例が示される。遮音装置10は、その主要な構成要素として、音響源12、構造体14及び変性音響散乱体16を備えてもよい。音響源12に関して、この例の音響源12は、さまざまな波長の音を生成可能なスピーカであることが示されている。しかし、装置10は、1つ又は複数の構成要素の動きによって音が生成される状況で利用され得ることを理解されたい。例えば、タイヤの回転、風切り音、パワートレイン関連の音など、自動車の構成要素の動作である。そのため、音源は必ずしもスピーカ12である必要はない。
【0018】
この例では、構造体14は、複数の壁18、20、22及び24を備える状態で示されている。壁18及び20は、互いに概ね対向し、壁22及び24は、互いに概ね対向する。壁18、20、22及び24は、構造体14内の空間26と、音源12の反対側に位置づけられた開口13とを画定する。構造体14は、いくつかの異なる用途のいずれか1つで利用することができる。例えば、構造体14は、車両内に取り付けられることがあり得るか、車両の構造部材又は追加部分を形成する。
【0019】
構造体14の壁18、20、22及び24によって画定される空間26内に、変性音響散乱体16がある。変性音響散乱体16は、音響単極子応答及び音響双極子応答を有してもよい。音響単極子が、音波を全方向に放射する。単極子の放射パターンは、音圧の大きさと位相の両方に対して概ね角度依存性がない。音響双極子の放射は、角度依存性eiθを有する。ここで、θは2Dの極角である。圧力場は、2つの反対の放射方向に沿って同じ距離で、同じ大きさと逆位相を有する。単極子応答は、脈動する円柱であって、その半径が正弦波状に伸縮する、円柱から放射される音に相当する。双極子応答は、短距離だけ互いから離間した2つの脈動する円柱から放射される音に相当する。2つの脈動シリンダは、同じ強度であるが逆位相の音を放射する。
【0020】
変性音響散乱体16の音響双極子応答及び音響単極子応答は、実質的に同様の共振周波数を有してもよい。共振周波数に関する「実質的に同様」という用語は、共振周波数の差が約10%以下であることを意味すると理解されたい。変性音響散乱体16は、変性音響散乱体16の全体的な形状を画定するハウジング27を概ね有する。一般に、ハウジング27は、ハウジング27の幅にわたって対称であってもよい。しかし、ハウジング27は、いくつかの異なる形状のいずれかであってもよい。ハウジング27の両端にエンドキャップ17及び19が位置づけられていてもよい。
【0021】
図2A-
図2Bを参照すると、音響散乱体16A及び16Bの異なる例の
図1の線2-2に概ね沿った断面が示されている。
図2A及び
図2Bに示す変性音響散乱体16A及び16Bの異なる設計は単なる例であることを理解されたい。変性音響散乱体16は、本開示で示し説明するものだけでなく、いくつかの異なる設計のうちのいずれかを採用することがあり得る。変性音響散乱体16A及び16Bのそれぞれは、ハウジング27A及び27Bの幅にわたって形状が概ね対称であるハウジング27A及び27Bを有してもよい。各ハウジング27A及び27Bは、周囲28A-28Dを概ね画定する。ハウジング27A及び27Bの幅にわたって形状が概ね対称である場合、図示のように、形状は実質的に円形であってもよい。しかし、いくつかの異なる形状のいずれか1つを利用することがあり得ることを理解されたい。
【0022】
変性音響散乱体16A及び16Bは、複数のチャネルを有してもよい。例えば、変性音響散乱体16Aは、4つのチャネル30A、32A、34A及び36Aを有する。そのため、
図2Aの変性音響散乱体16Aは、4チャネル変性音響散乱体である。
図2Bの変性音響散乱体16Bは、6つのチャネル30B、32B、34B、36B、38B及び39Bを有する。そのため、
図2Bの変性音響散乱体16Bは、6チャンネル変性音響散乱体である。いくつかのチャネルのうちのいずれか1つが、変性音響散乱体16A及び/又は16Bにて利用され得ることを理解されたい。しかし、後に説明するように、3つ以上のチャネルを用いると、変性音響散乱体16A及び/又は16Bの回転位置に関係なく、変性音響散乱体16A及び/又は16Bが等しく有効であることを可能にする。
【0023】
変性音響散乱体16Aは、前述のように、4チャンネル変性音響散乱体であるため、4つのチャネル30A、32A、34A及び36Aを有する。4つのチャネル30A、32A、34A及び36Aのそれぞれは、外周28Aに隣接して配置された、開放端40A、42A、44A及び46Aをそれぞれ有する。さらに、4つのチャネル30A、32A、34A及び36Aのそれぞれは、終端50A、52A、54A及び56Aをそれぞれ有する。終端50A、42A、54A及び56Aは、変性音響散乱体16Aの中心29Aの近くに位置づけられてもよい。終端50A、52A、54A及び56Aは、互いから分離されていてもよく、互いに流体連通していなくてもよい。
【0024】
チャネル30A、32A、34A及び36Aの容積は、互いに実質的に等しくてもよい。この例では、「実質的に等しい」とは、容積の差が互いの10%以内にある可能性があることを意味する。さらに、変性音響散乱体16Aの幅を横切るチャネル30A、32A、34A及び36Aの全体的な形状は、形状及び/又は設計が実質的に同様であってもよい。
【0025】
チャネル30A、32A、34A及び36Aの設計に関して、チャネルは、概ねジグザグ型の形態を有してもよい。例えば、チャネル32Aに関して、チャネルはジグザグを有してもよい。ここで、チャネル32Aのある部分33Aが、チャネル32Aの別の部分35Aと部分的又は実質的に平行に延びる。しかし、チャネルの設計は大きく異なる場合があり、必ずしもジグザグ型の設計であるとは限らない場合があることを理解されたい。さらに、この正確なタイプの設計は、
図2Aの例に示すように、チャネルのある部分がチャネルの別の部分と実質的に平行に延びないようなものである場合がある。
【0026】
変性音響散乱体16Bに注意を向けると、前述のように、変性音響散乱体16Bは、6チャンネル変性音響散乱体であるため、チャネル30B、32B、34B、36B、38B及び39Bを備える。6つのチャネル30B、32B、34B、36B、38B及び39Bのそれぞれは、外周28Bに隣接して配置された、開放端40B、42B、44B、46B、48B及び49Bをそれぞれ有する。さらに、6つのチャネル30B、32B、34B、36B、38B及び39Bのそれぞれは、終端50B、52B、54B、56B、58B及び59Bをそれぞれ有する。終端50B、52B、54B、56B、58B及び59Bは、変性音響散乱体16Bの中心29Bの近くに位置づけられてもよい。終端50B、52B、54B、56B、58B及び59Bは、互いから分離されてもよく、互いに流体連通していなくてもよい。
【0027】
チャネル30B、32B、34B、36B、38B及び39Bの容積は、互いに実質的に等しくてもよい。この例では、「実質的に等しい」とは、容積の差が互いの10%以内である可能性があることを意味する。さらに、変性音響散乱体16Bの幅を横切るチャネル30B、32B、34B、36B、38B及び39Bの全体的な形状は、形状及び/又は設計にて実質的に同様であってもよい。
【0028】
チャネル30B、32B、34B、36B、38B及び39Bの設計に関して、チャネルは、概ねジグザグ型の形態を有してもよい。例えば、チャネル30Bに関して、チャネルは、ジグザグであってもよく、チャネル30Bのある部分33Bは、チャネル30Bの別の部分35Bと部分的又は実質的に平行に延びる。しかし、チャネルの設計は大きく異なる場合があり、必ずしもジグザグ型の設計であるとは限らない場合があることを理解されたい。さらに、この正確なタイプの設計は、
図2Bの例に示すように、チャネルのある部分がチャネルの別の部分と実質的に平行に延びないようなものである場合がある。
【0029】
変性音響散乱体16A及び/又は16Bは、いくつかの異なる材料のうちのいずれか1つを使用して作成されてもよい。例えば、変性音響散乱体16A及び/又は16Bは、プラスチック、シリコン、ガラス及び/又は金属などの音響的に硬質の材料から作成されてもよい。金属に関しては、アルミニウム、鋼、チタンなどの任意の金属を利用してもよい。
【0030】
図3を参照すると、遮音装置110の1つが示されている。ここで、類似する参照番号は、参照番号が100ずつ増分されていることを除いて、類似する要素を参照するために利用されている。さらに、変性音響散乱体116は、
図2Aに示す変性音響散乱体16Aの形状であることに留意されたい。しかし、この記載で説明するか、他の方法で想定されるさまざまなタイプの音響散乱体のいずれかを利用することがあり得ることを理解されたい。
【0031】
装置110は、変性音響散乱体116を備える。装置110はこのほか、距離Dだけ互いから分離された壁118及び120を備える。壁118及び120は、概ね互いに対向し、その間に空間126を画定する。装置110はこのほか、スピーカ、あるいは車両のパワートレインなどの近くの構成要素によって生成される音、車両に接触する風からのノイズ及び/又は車両のタイヤから発生するタイヤノイズなどの他の任意の音源であり得る音源112を備える。音源112の反対側の端部は開口部113である。変性音響散乱体116は、壁118と120との間の中間点の近くに位置づけられてもよい。この中間点は、本質的に、壁118と120との間の距離Dの半分である。
【0032】
第1の壁118と第2の壁120との間の距離Dは、低減したい波長のタイプに基づいて変化することができる。距離Dは、共振周波数での波長よりも小さくする必要がある(数式1)。
【数1】
ここで、Dは第1の壁118と第2の壁120との間の空間の距離であり、cは音速であり、fは変性音響散乱体116の単極子応答及び双極子応答の共振周波数である。
【0033】
音源112に対する変性音響散乱体116の回転方向は、共振周波数にて音を吸収する変性音響散乱体116の能力に影響を及ぼさない場合がある。例えば、
図4A及び
図4Bを参照すると、
図2Aに示すような、4チャネル変性音響散乱体の回転位置に関する2つの異なる事例が示されている。
【0034】
「事例1」と呼ばれる第1の事例は、4チャンネル音響散乱体のチャネルのうちの1つの開口部のうちの1つが実質的に音源に面しているときの4チャネル変性音響散乱体の吸収係数を示す。「事例2」と呼ばれる第2の事例は、4チャンネル音響散乱体のチャネルのうちの1つの開口部のうちの1つがその中心周りで実質的に回転するときの4チャンネル変性音響散乱体の吸収係数を示す。どちらの事例も、4チャンネル変性音響散乱体の全体的な吸収係数は実質的に同様である。そのように、本開示で説明する変性音響散乱体の回転方向は、吸音性能に大きな影響を及ぼすことはない。これは、変性音響散乱体装置が特定の回転位置にあるように較正する必要がないため、変性音響散乱体装置の製造及び利用をさらに容易に可能にすることから、有利である可能性がある。
【0035】
図2Bに示すように、変性音響散乱体が6チャネル(又はそれ以上)の変性音響散乱体である場合も同じである。例えば、
図5A及び
図5Bを参照すると、
図2Bに示すような、6チャネル変性音響散乱体の回転位置に関する2つの異なる事例が示されている。上記と同じように、「事例1」は、6チャンネル音響散乱体のチャネルのうちの1つのチャネルの開口部のうちの1つが実質的に音源に面している場合の6チャネル変性音響散乱体の吸収係数を示す。「事例2」は、6チャンネル音響散乱体のチャネルのうちの1つのチャネルの開口部のうちの1つが音源から実質的に離れるように回転したときの6チャネル変性音響散乱体の吸収係数を示す。どちらの場合も、6チャンネル変性音響散乱体の全体的な吸収係数は実質的に同様である。そのように、本開示で説明する変性音響散乱体の回転方向は、吸音性能に大きな影響を及ぼすことはない。
【0036】
図6Aを参照すると、システム210Aの一例が示されている。上記と同じように、類似の参照番号が、類似の要素を参照するために利用されている。この例では、アレイを形成する4つの変性音響散乱体216Aが存在する。変性音響散乱体216Aのアレイは、壁218A及び/又は220Aに直交する列を概ね形成する。このタイプの構成は、壁間の距離Dがかなり広く、システム210Aに適切な吸音タイプの特性を提供するために複数の変性音響散乱体216Aを必要とする状況で有用であることがある。
【0037】
変性音響散乱体216Aのそれぞれの間及び/又は列の端部の変性音響散乱体216Aと壁218A又は220Aとの間の距離217Aは、実質的に等しい。「実質的に等しい」に関して、これは、距離217Aが10%程度変動する可能性があることを意味する。アレイが音を最適に吸収するための音響散乱体216Aの総数は、第1の壁218Aと第2の壁220Aとの間の距離241Aに概ね基づくものである。用途に必要な音響散乱体の合計最小数(N)は、次のように表すことができる。
N = D/(c/f)
ここで、Dは第1の壁218Aと第2の壁220Aとの間の距離であり、cは空気中の音速であり、fは単極子応答と双極子応答の共振周波数である。
【0038】
図6Bを参照すると、システム210Bのこの例は、
図6Aに示すシステムと同様のものである。しかし、システム210Bは、2列の変性音響散乱体216Bを有する。上記と同じように、システム210Bの幅(壁218Bと壁220Bとの間)を横切る変性音響散乱体216Bの間の距離217Bは、実質的に等しい。さらに、ある列から別の列への変性音響散乱体216Bの間の距離はこのほか、距離217Bと実質的に同様である。変性音響散乱体216Bの2つ(又はそれ以上)の列を有する目的は、システム210Bの全体的な吸音特性を改善することである。1列だけが必要な場合もあるが、第2の列がさらに音を吸収することになる。
【0039】
図7Aを参照すると、1列を有するアレイを形成する9つの別個の音響散乱体316を有するシステムのシミュレーションが示されている。ここで、音響散乱体316は、音響散乱体316の開口部334が実質的に音源312に面するように回転する。
図7Aは、周波数2111Hzを有する全音場を示している。この図では、音響散乱体316のアレイの左側での波の振幅が単一であり、反射がないことを意味していることがわかる。このほか、音響散乱体316のアレイの右側の波の振幅はゼロであり、透過率がゼロであることを示し、全吸収を示している。
【0040】
このため、全エネルギーは、音響散乱体316のアレイによって吸収される。単一の散乱体の拡大図では、変性音響散乱体316の近くの圧力場は逆位相であるが、形状が異なることがわかる。これは、単極子モーメントと双極子モーメントの重ね合わせによるものである。この設計は、2つの構成要素を利用し、この2つの構成要素に同じ量のエネルギーを散乱させて、完全な吸収を実現する。
【0041】
図7Bは、単極子と双極子の散乱係数を示している。2つの構成要素は、設計で必要とされるのと同じ強度を有する。
図7Cに示すように、吸収係数は2111Hzで1.0である。
【0042】
前述の説明は、本質的に単なる例示であり、開示、その適用又は使用を制限することを決して意図するものではない。本明細書で使用する場合、A、B及びCの少なくとも1つという句は、非排他的論理「又は」を使用して、論理値の(A又はB又はC)を意味すると解釈する必要がある。方法内のさまざまなステップは、本開示の原理を変更することなく、異なる順序で実行され得ることを理解されたい。範囲の開示には、あらゆる範囲及び範囲全体内の細分化された範囲の開示が含まれる。
【0043】
本明細書で使用する(「背景」及び「要約」などの)見出し及び小見出しは、本開示内の主題の一般的な機構のみを意図しており、技術又はその任意の態様の開示を制限することを意図するものではない。記載した特徴を有する複数の実施形態の列挙は、追加の特徴を有する他の実施形態、あるいは記載した特徴の異なる組み合わせを組み込んだ他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0044】
本明細書で使用する場合、「備える」及び「含む」という用語及びその変形は、非限定的であることを意図するものであり、連続した項目の列挙又はリストは、この技術の装置と方法にも有用であり得る他の類似の項目を除外するものではない。同じように、「~することができる」及び「~してもよい」という用語及びその変形は、実施形態が特定の要素又は特徴を含むことができる、あるいは含んでもよいという記述が、そのような要素又は特徴を含まない本技術の他の実施形態を除外しないように、非限定的であることを意図するものである。
【0045】
本開示の広範な教示は、さまざまな形態で実施することができる。このため、本開示は特定の例を含むが、本開示の真の範囲は、本明細書及び以下の特許請求の範囲を検討すると他の変更が当業者に明らかになるため、それほど限定されるべきではない。本明細書での1つの態様又はさまざまな態様への言及は、実施形態又は特定のシステムに関連して説明する特定の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施形態又は態様に含まれることを意味する。「一態様で」(又はその変形)という句の出現は、必ずしも同じ態様又は実施形態を指しているわけではない。本明細書で考察するさまざまな方法ステップは、示したものと同じ順序で実施される必要はなく、各態様又は実施形態にて各方法ステップが必要とされるわけではないことも理解されたい。
【0046】
実施形態の前述の説明は、例示及び説明を目的として提供されている。包括的であったり、開示を制限したりすることを意図するものではない。特定の実施形態の個々の要素又は特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されないが、適用可能な場合、交換可能であり、具体的に示していないか説明していない場合でも、選択された実施形態で使用することができる。このほか、特定の実施形態の個々の要素又は特徴は、多くの方法で変えられてもよい。そのような変形は、開示からの逸脱と考えられるべきものではなく、そのような変更のいずれもが、開示の範囲内に含まれることを意図するものである。
【国際調査報告】