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特表2023-503241高破壊靭性を有するホウ素含有ガラス組成物
<図1>
  • 特表-高破壊靭性を有するホウ素含有ガラス組成物 図1
  • 特表-高破壊靭性を有するホウ素含有ガラス組成物 図2A
  • 特表-高破壊靭性を有するホウ素含有ガラス組成物 図2B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】高破壊靭性を有するホウ素含有ガラス組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20230120BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20230120BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
C03C3/091
C03C21/00 101
G09F9/00 302
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527105
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 US2020060082
(87)【国際公開番号】W WO2021137949
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】62/937,868
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シアオジュー
(72)【発明者】
【氏名】レッツィ,ピーター ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ジエン
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
5G435
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC16
4G059HB03
4G059HB13
4G059HB14
4G059HB15
4G059HB23
4G062AA01
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA06
4G062DB04
4G062DC03
4G062DC04
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA03
4G062EA04
4G062EB01
4G062EB02
4G062EB03
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4G062EC02
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EF01
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4G062FA01
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4G062FE01
4G062FF01
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4G062FJ01
4G062FK01
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4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
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4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
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4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062MM12
4G062NN33
5G435AA08
5G435BB04
5G435BB05
5G435GG43
5G435HH02
5G435HH05
5G435HH18
5G435HH20
5G435LL03
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL17
5G435LL18
(57)【要約】
50モル%~65モル%のSiO、13モル%~20モル%のAl3、6モル%以上のB、0モル%~5モル%のMgO、0モル%~2モル%のCaO、8モル%~14モル%のLiO、0モル%~4モル%のNaO、及び0モル%~1モル%のKOを含み、Alモル%>RO+R’O-3モル%である、ガラス組成物。該ガラス組成物は、シェブロン小形角棒法で測定して0.75MPa*m1/2以上のK1C値を有しうる。該ガラス組成物は、ガラス物品又は消費者向け電子製品に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品であって、
50モル%~65モル%のSiO
13モル%~20モル%のAl
6モル%以上のB
0モル%~5モル%のMgO;
0モル%~2モル%のCaO;
8モル%~14モル%のLiO;
0モル%~4モル%のNaO;及び
0モル%~1モル%のK
を含み、ここで、
Alモル%>RO+R’O-3モル%であり、
Oはアルカリ金属酸化物の総モル%であり、かつ
R’Oはアルカリ土類金属酸化物の総モル%である、
ガラス物品。
【請求項2】
Alモル%>RO+R’Oである、請求項1に記載のガラス物品。
【請求項3】
O+R’O+4モル%>Alモル%>RO+R’O-3モル%である、請求項1又は請求項2に記載のガラス物品。
【請求項4】
前記Bが三方晶酸化ホウ素を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス物品。
【請求項5】
8モル%~12モル%のBを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のガラス物品。
【請求項6】
前記ガラス物品が、ZrO、Ta、TiO、HFO、La、及びYを含まない、請求項1から5のいずれか一項に記載のガラス物品。
【請求項7】
前記ガラス物品の表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のガラス物品。
【請求項8】
表1、2、及び3の組成によって定義される凸包上又は凸包内にあるガラス組成物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のガラス物品。
【請求項9】
消費者向け電子製品であって、
前面、背面、及び側面を有する筐体;
少なくとも部分的に前記筐体内に設けられた電気部品であって、前記電気部品が少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを備えており、前記ディスプレイが前記筐体の前記前面又はそれに隣接して設けられている、電気部品;並びに
前記ディスプレイの上に配置されたカバーガラス
を備えており、
ここで、前記筐体の一部又は前記カバーガラスの一部のうちの少なくとも一方が、
50モル%~65モル%のSiO
13モル%~20モル%のAl
6モル%以上のB
0モル%~5モル%のMgO;
0モル%~2モル%のCaO;
8モル%~14モル%のLiO;
0モル%~4モル%のNaO;及び
0モル%~1モル%のK
を含むガラス物品を含み、
ここで、
Alモル%>RO+R’O-3モル%であり、
Oはアルカリ金属酸化物の総モル%であり、かつ
R’Oはアルカリ土類金属酸化物の総モル%である、
消費者向け電子製品。
【請求項10】
6モル%から16モル%までのBを含む、請求項9に記載の消費者向け電子製品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2019年11月20日出願の米国仮特許出願第62/937,868号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電子デバイス用のカバーガラスなど、高い破壊靭性を必要とする用途で使用するためのホウ素含有ケイ酸塩ガラス組成物に関する。特に、本開示は、過アルミニウムの又は過アルミニウムに近いホウ素含有ケイ酸塩ガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
スマートフォン、タブレット、ポータブルメディアプレーヤー、パーソナルコンピュータ、カメラなどの多くの消費者向け製品には、ディスプレイカバーとして機能することができ、タッチ機能を組み込むことができるカバーガラスが組み込まれている。多くの場合、これらのデバイスはユーザによって硬い表面に落とされ、それがカバーガラスに損傷を与え、例えばタッチ機能が損なわれる可能性があるなど、デバイスの使用に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
ガラスは、ガラス表面に圧縮応力を誘発することを包含するイオン交換プロセスによって、曲げ破壊に対してより耐性にすることができる。しかしながら、イオン交換されたガラスは、鋭い接触によって引き起こされるガラスの局所的なインデントによって引き起こされる高い応力集中に起因して、依然として動的な鋭い接触破壊の影響を受けやすい。カバーガラスにコーティングを施し、デバイスにベゼルを追加することによって、鋭い接触破壊を軽減することができ、これにより、カバーガラスを落とした場合に、カバーガラスが硬い表面に直接衝突するのを防ぐことができる。しかしながら、デバイスの美的要件及び機能的要件の制約の理由から、衝撃を完全に防ぐことは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、カバーガラス用途などの消費者向け製品用途のためのサイズ、厚さ、及び機能仕様で製造することができる、高い強度及び破壊靭性を有するガラス組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、さまざまな電子デバイスのためのカバーガラス用途など、高衝撃用途に適した破壊靭性を有するガラス組成物を対象とする。本明細書に開示されるガラス組成物は、曲げ破壊に対する耐性を高めるために、例えば溶融塩浴においてイオン交換をすることができるようになりうる。ガラス組成物は、イオン交換を促進するためにリチウムを含みうる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるガラス組成物は、破壊靭性を増大させることができる、高価な酸化物、例えば、ZrO、Ta、TiO、HfO、La、及び/又はYを実質的に含まなくてもよい。代わりに、組成物中のAlの量が、組成物中に存在するすべてのアルカリ金属酸化物及びすべてのアルカリ土類金属酸化物の合計よりも多いか又はほぼ多くなるように、過剰のAlが組成物中に存在しうる。言い換えれば、組成物は、過アルミニウムでありうるか、又は過アルミニウムに近いものでありうる。過剰のAl2O3は、組成物中のB2O3を三方晶構成にする可能性があり、これは、組成物の破壊靭性特性に利益をもたらしうる。
【0007】
本願の第1の態様(1)はガラス物品に関し、該ガラス物品は、50モル%~65モル%のSiO;13モル%~20モル%のAl;6モル%以上のB;0モル%~5モル%のMgO;0モル%~2モル%のCaO;8モル%~14モル%のLiO;0モル%~4モル%のNaO;及び、0モル%~1モル%のKOを含み、ここで、AlO3モル%>RO+R’O-3モル%であり、ROは、アルカリ金属酸化物の合計モル%であり、かつR’Oはアルカリ土類金属酸化物の総モル%である。
【0008】
第2の態様(2)では、Alモル%>RO+R’Oである、第1の態様(1)によるガラス物品が提供される。
【0009】
第3の態様(3)では、RO+R’O+4モル%>Alモル%>RO+R’O-3モル%である、第1の態様(1)又は第2の態様(2)によるガラス物品が提供される。
【0010】
第4の態様(4)では、Bが三方晶酸化ホウ素である、態様(1)から(3)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0011】
第5の態様(5)では、Bの50モル%以上が三方晶酸化ホウ素である、第4の態様(4)によるガラス物品が提供される。
【0012】
第6の態様(6)では、Bの75モル%以上が三方晶酸化ホウ素である、第4の態様(4)によるガラス物品が提供される。
【0013】
第7の態様(7)では、Bの90モル%以上が三方晶酸化ホウ素である、第4の態様(4)によるガラス物品が提供される。
【0014】
第8の態様(8)では、8モル%以上のBを含む、態様(1)から(7)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0015】
第9の態様(9)では、8モル%~12モル%のBを含む、態様(1)から(8)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0016】
第10の態様(10)では、アルカリ金属酸化物がLiO、NaO、及びKOからなる、態様(1)から(9)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0017】
第11の態様(11)では、アルカリ土類金属がMgO及びCaOからなる、態様(1)から(10)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0018】
第12の態様(12)では、ZrO、Ta、TiO、HFO、La、及びYを実質的に含まない、態様(1)から(11)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0019】
第13の態様(13)では、ZrO、Ta、TiO、HFO、La、及びYを含まない、態様(1)から(11)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0020】
第14の態様(14)では、0モル%~2モル%の範囲のTiOをさらに含む、態様(1)から(13)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0021】
第15の態様(15)では、0モル%~2モル%の範囲のZrOをさらに含む、態様(1)から(14)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0022】
第16の態様(16)では、0モル%~2モル%の範囲のSnOをさらに含む、態様(1)から(15)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0023】
第17の態様(17)では、0モル%~0.1モル%の範囲のFeをさらに含む、態様(1)から(16)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0024】
第18の態様(18)では、Alの量+Bの量が20モル%以上である、態様(1)から(17)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0025】
第19の態様(19)では、Alの量+Bの量が24モル%以上である、態様(1)から(17)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0026】
第20の態様(20)では、RO<15モル%である、態様(1)から(19)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0027】
第21の態様(21)では、3モル%未満のNaOを含む、態様(1)から(20)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0028】
第22の態様(22)では、0.75MPa*m1/2以上のK1C値を有する、態様(1)から(21)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0029】
第23の態様(23)では、1000ポアズ以上の液相線粘度を有する、態様(1)から(22)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0030】
第24の態様(24)では、ガラス物品の表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域を含む、態様(1)から(23)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0031】
第25の態様(25)では、圧縮応力領域が400MPa以上の圧縮応力を含む、態様(24)によるガラス物品が提供される。圧縮応力は、400MPa~775MPa、400MPa~1000MPa、又は400MPa~2000MPaでありうる。
【0032】
第26の態様(26)では、圧縮深さがガラス物品の厚さの15%以上である、態様(24)又は(25)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0033】
第27の態様(27)では、圧縮応力領域が、ガラス物品の厚さ全体の2つ以上の点で異なる金属酸化物の濃度を含む、態様(24)から(26)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0034】
第28の態様(28)では、表1、2、及び3の組成によって定義される凸包上又は凸包内にあるガラス組成物を含む、態様(1)から(27)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0035】
本願の第29の態様(29)はガラス物品に関し、該ガラス物品は、SiO;Al;B;及び、LiOを含み、ここで、Alモル%>RO+R’O-3モル%であり、ROはアルカリ金属酸化物の合計モル%であり、R’Oはアルカリ土類金属酸化物の総モル%であり、ガラス物品は0.75MPa*m1/2以上のK1C値を有する。
【0036】
第30の態様(30)では、Alモル%>RO+R’Oである、態様(29)によるガラス物品が提供される。
【0037】
第31の態様(31)では、8モル%以上のBを含む、第29の態様(29)又は第30の態様(30)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0038】
第32の態様(32)では、6モル%~16モル%のBを含む、第29の態様(29)又は第30の態様(30)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0039】
第33の態様(33)では、Bが三方晶酸化ホウ素を含む、態様(29)から(32)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0040】
第34の態様(34)では、Bの90モル%以上が三方晶酸化ホウ素である、第33の態様(33)によるガラス物品が提供される。
【0041】
第35の態様(35)では、Alの量+Bの量が20モル%以上である、態様(29)から(34)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0042】
第36の態様(36)では、アルカリ金属酸化物がLiO、NaO、及びKOを含み、アルカリ土類金属酸化物がMgO及びCaOからなる、態様(29)から(35)のいずれかによるガラス物品が提供される。
【0043】
第37の態様(37)では、ガラス物品の表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域を含む、態様(29)から(36)のいずれかによるガラス物品が提供され、該圧縮応力領域は、ガラス物品の厚さ全体の2つ以上の点で異なる金属酸化物の濃度、及び400MPa以上の圧縮応力を含む。
【0044】
本願の第38の態様(38)は、消費者向け電子製品に関し、該消費者向け電子製品は、前面、背面、及び側面を有する筐体少なくとも部分的に筐体内に設けられた電気部品であって、該電気部品が少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含み、該ディスプレイが筐体の前面又はそれに隣接して設けられている、電気部品;並びに、ディスプレイの上に配置されたカバーガラスであって、筐体の一部又はカバーガラスの一部のうちの少なくとも一方が、ガラス組成物を含むガラス物品を含み、該ガラス物品が、50モル%~65モル%のSiO;13モル%~20モル%のAl;6モル%以上のB;0モル%~5モル%のMgO;0モル%~2モル%のCaO;8モル%~14モル%のLiO;0モル%~4モル%のNaO;及び、0モル%~1モル%のKOを含み、ここで、Alモル%>RO+R’O-3モル%であり、ROは、アルカリ金属酸化物の合計モル%であり、かつR’Oはアルカリ土類金属酸化物の総モル%である。
【0045】
第39の態様(39)では、8モル%のBを含む、第38の態様(38)による消費者向け電子製品が提供される。
【0046】
第40の態様(40)では、6モル%~16モル%のBを含む、第38の態様(38)による消費者向け電子製品が提供される。
【0047】
本明細書に組み込まれる添付の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の実施形態を示している。説明と共に、図面はさらに、開示された実施形態の原理を説明しており、それらを関連技術の当業者が製造及び使用可能にするのに役立つ。これらの図面は、限定ではなく例示することが意図されている。本開示は、概して、これらの実施形態の文脈で説明されるが、本開示の範囲をこれらの特定の実施形態に限定することは意図していないものと理解されたい。図面において、同様の参照番号は、同一又は機能的に類似した要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】幾つかの実施形態による、圧縮応力領域を有するガラスの断面図
図2A】本明細書に開示されるガラス物品のいずれかによるガラス物品を組み込む例示的な電子デバイスの平面図
図2B図2Aの例示的な電子デバイスの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の例は、本開示の例示であって、限定するものではない。当分野で通常遭遇するさまざまな条件及びパラメータの他の適切な修正及び適合は、当業者にとって明らかであり、本開示の精神及び範囲内にある。
【0050】
ポータブル電子デバイス、例えば、スマートフォン、タブレット、ポータブルメディアプレーヤー、パーソナルコンピュータ、カメラなどの消費者向け製品には、例えば、汚れ、水、ハンドオイルなどから保護するために、ディスプレイの上に配置されたカバーガラスが含まれることがよくある。多くの場合、カバーガラスは、タッチ機能を組み込んでおり、したがって、デバイスの全体的な機能に不可欠である。しかしながら、これらのデバイスは、その携帯可能な性質のため、頻繁に落とされ、それによってカバーガラスが破損し、デバイスの機能が大幅に損なわれる可能性がある。したがって、カバーガラスとして用いられるガラス物品は、衝撃時の亀裂に耐えるために、高い破壊靭性を有する必要がある。
【0051】
カバーガラスが硬い表面に衝突した場合、カバーガラスには2つの主要な故障モードが存在する。1つのモードは曲げ破壊であり、これは、デバイスが硬い表面との衝突によって動的負荷を被った場合にガラスが曲がることによって引き起こされる。もう1つのモードは、ガラス表面への損傷の導入によって引き起こされる鋭い接触破壊である。
【0052】
ガラスは、例えば溶融塩浴中でガラス表面に圧縮応力を誘発することを包含するイオン交換プロセスによって、曲げ破壊に対してより耐性にすることができる。イオン交換されたガラス物品は強度が向上しているが、それでもなお、動的な鋭い接触破壊の影響を受けやすい可能性がある。鋭い接触破壊は、アスファルト、花崗岩、家具の隅部などの粗い表面及び/又は硬い表面へのガラスの衝突による、局所的な高い応力集中によって引き起こされる。これらの応力集中により、ガラス表面に鋭いインデントが生じる可能性がある。また、これらのインデントは、亀裂が発生し、伝播しうるガラス表面の破損部位となる可能性がある。
【0053】
本明細書に開示されるガラス組成物は、ベゼル又は同様の構造支持体を追加せずに、消費者向け製品に利用されたときに曲げ破壊及び鋭い接触破壊を回避するように設計される。特に、本明細書に開示されるガラス組成物は、過アルミニウム又は過アルミニウムに近くなるように設計されており、かなりの量の三方晶ホウ素を含む。ガラス組成物の酸化ホウ素含有量は、破壊靭性、製造可能性、及びイオン交換能力などの所望の特性を達成するために、他の酸化物に対して調整される。
【0054】
本明細書で用いられる場合、「ガラスをベースとした材料」という用語は、ガラス及びガラスセラミックを含む、少なくとも部分的にガラスから作られた任意の材料を含むことを意味する。「ガラスセラミック」は、ガラスの制御された結晶化を通して製造された材料を含む。均質な結晶化を促進するために、1つ以上の核剤、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ナトリウム(NaO)、及び酸化リン(P)をガラスセラミック組成物に添加することができる。「ガラス」という用語には、ガラスセラミックは含まれない。
【0055】
本明細書に開示されるガラス組成物は、Alを含む。本明細書で論じられるように、Alは、特に組成物中のAlの量がアルカリ金属酸化物の総量とアルカリ土類金属酸化物の総量の合計より過剰であるか、又は過剰に近い場合に、ガラス組成物の破壊靭性を高めるのに効果的でありえ、その結果、該組成物は過アルミニウムの又は過アルミニウムに近いものとして分類されうる。しかしながら、過アルミニウムの又は過アルミニウムに近い組成物に関する問題は、過剰のAlが溶融及び失透を困難にする可能性があることである。
【0056】
本明細書に開示されるようなガラス組成物へのBの添加は、特に三方晶構成の場合に、破壊靭性を大幅に改善するのに役立てることができる。この構成の酸化ホウ素は、ヌープスクラッチ閾値の性能の向上を実証する。しかしながら、酸化ホウ素は、イオン交換中に達成可能な中心張力(CT)を低下させる可能性がある。本明細書に開示される、酸化ホウ素濃度、及びこれらの濃度と他の酸化物との間の関係は、イオン交換特性を含む所望の特性を備えたガラス組成物を達成するように設計される。本明細書に開示されるように、過剰のAlを有するガラス組成物にBが添加される場合、組成物の脆弱性限界は高いままであり、このような組成を有するガラス基板のイオン交換は、高ナトリウム含有量を有する溶融塩浴中で依然として実施されうる。また、この組成を有する基板は、適切に高いイオン交換速度を有しうる。
【0057】
本明細書に記載されるガラス組成物の実施形態では、構成成分(例えば、SiO、Al、LiOなど)の濃度は、特に明記しない限り、酸化物基準のモルパーセント(モル%)で与えられる。実施形態によるガラス組成物の構成成分について、以下に個別に論じる。一の構成成分のさまざまに記載された範囲のいずれかは、他の任意の構成成分についてさまざまに記載された範囲のいずれかと個別に組み合わせることができるものと理解されたい。本明細書で用いられる場合、番号の末尾の0は、その番号の有効桁数を表すことが意図されている。例えば、数値「1.0」には有効数字2桁が含まれ、数値「1.00」には有効数字3桁が含まれる。本明細書で用いられる場合、下限として0モル%で定義される範囲内の酸化物を含むと記載された組成物は、該組成物が、0モル%を超えて(例えば、0.01モル%又は0.1モル%)、範囲の上限までの任意の量の酸化物を含むことを意味する。
【0058】
本明細書に開示されるガラス組成物は、その組成物を有するガラス物品の効率的な製造を可能にする、ある程度の製造可能性を示しつつ、高い破壊靭性(K1C)も示す。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、シェブロン小形角棒法で測定して0.75MPa*m1/2以上のK1C破壊靭性値によって特徴づけられる。
【0059】
幾つかの実施形態では、SiOはガラス組成物の最大の構成要素でありえ、したがって、ガラス組成物から形成されたガラスネットワークの主要な構成要素である。純粋なSiOは、比較的低いCTEを有し、アルカリを含まない。しかしながら、純粋なSiOは高い融点を有する。したがって、高濃度のSiOはガラスの溶融の困難さを増大させ、これが次にガラスの成形性に悪影響を与えることから、ガラス組成物中のSiOの濃度が高すぎると、ガラス組成物の成形性は低下しうる。
【0060】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、SiOを、50モル%以上~65モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含みうる。例えば、ガラス組成物は、SiOを、51モル%以上、例えば、52モル%以上、53モル%以上、54モル%以上、55モル%以上、56モル%以上、57モル%以上、58モル%以上、59モル%以上、60モル%以上、61モル%以上、62モル%以上、63モル%以上、又は64モル%以上の量で含みうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、SiOを、65モル%以下、例えば、64モル%以下、63モル%以下、62モル%以下、61モル%以下、60モル%以下、59モル%以下、58モル%以下、57モル%以下、56モル%以下、55モル%以下、54モル%以下、53モル%以下、52モル%以下、又は51モル%以下の量で含みうる。
【0061】
上記の範囲のいずれかを他の任意の範囲と組み合わせてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、SiOを、51モル%以上~64モル%以下、例えば、52モル%以上~63モル%以下、53モル%以上~62モル%以下、54モル%以上~61モル%以下、55モル%以上~60モル%以下、56モル%以上~59モル%以下、57モル%以上~58モル%以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げたSiO値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含みうる。
【0062】
本明細書に開示されるガラス組成物は、Alを含む。Alの添加は、ガラスネットワーク形成剤としての役割を果たしうる。さらには、Alの濃度が組成物中のSiOの濃度及びアルカリ酸化物の濃度とバランスが取れている場合、それはガラス溶融物の液相線温度を低下させ、それによって液相線粘度を高めうる。
【0063】
幾つかの実施形態では、組成物中のAlの濃度は、該組成物が過アルミニウムになるように、アルカリ金属酸化物の総量とアルカリ土類金属酸化物の総量の合計より大きくなりうる。言い換えれば、幾つかの実施形態では、Alモル%>RO+R’Oモル%であり、ここで、ROはアルカリ金属酸化物の合計モル%であり、R’Oはアルカリ土類金属酸化物の総モル%である。幾つかの実施形態では、過アルミニウム組成物では、組成物中のAlの濃度は、アルカリ金属酸化物の総量とアルカリ土類金属酸化物の総量との合計より4モル%以下だけ大きくなりうる。よって、幾つかの実施形態では、過アルミニウム組成物は、次式で表すことができる:RO+R’O+4モル%>Alモル%>RO+R’O-3モル%。
【0064】
幾つかの実施形態では、ROは15モル%未満である。幾つかの実施形態では、AlとBとを合わせた量は20モル%以上である。幾つかの実施形態では、AlとBとを合わせた量は24モル%以上である。幾つかの実施形態では、AlとBとを合わせた量は32モル%以下である。幾つかの実施形態では、AlとBとを合わせた量は30モル%以下である。
【0065】
幾つかの実施形態では、組成物中のアルカリ金属酸化物(RO)は、LiO、NaO、及びKOからなる。幾つかの実施形態では、アルカリ土類金属酸化物(R’O)は、MgO及びCaOからなる。
【0066】
幾つかの実施形態では、組成物中のAlの濃度は、該組成物が過アルミニウム又はほぼ過アルミニウムになるように、アルカリ金属酸化物の総量とアルカリ土類金属酸化物の総量との合計よりも多いか、又はほぼ多くなりうる。幾つかの実施形態では、過アルミニウムに近い組成物では、組成物中のAlの濃度は、アルカリ金属酸化物の総量とアルカリ土類金属酸化物の総量の合計より3モル%(又は2モル%、又は1モル%)以上少なくなりうる。よって、幾つかの実施形態では、過アルミニウムに近い組成物は、次式で表すことができる:Alモル%>RO+R’O-3モル%。幾つかの実施形態では、過アルミニウムに近い組成物は、次式で表すことができる:Alモル%>RO+R’O-2モル%。幾つかの実施形態では、過アルミニウムに近い組成物は、次式で表すことができる:Alモル%>RO+R’O-1モル%。
【0067】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、Alを、13モル%以上~20.0モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の濃度で含みうる。例えば、ガラス組成物は、Alを、13モル%以上、例えば、13.5モル%以上、14モル%以上、14.5モル%以上、15モル%以上、15.5モル%以上、16モル%以上、16.5モル%以上、17モル%以上、17.5モル%以上、18モル%以上、18.5モル%以上、19モル%以上、19.5モル%以上、又は20モル%に等しい量で含みうる。
【0068】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、Alを、20モル%以下、例えば、19.5モル%以下、19モル%以下、18.5モル%以下、18モル%以下、17.5モル%以下、17モル%以下、16.5モル%以下、16モル%以下、15.5モル%以下、15モル%以下、14.5モル%以下、14モル%以下、13.5モル%以下、又は13モル%に等しい量で含みうる。
【0069】
上記の範囲のいずれかを他の任意の範囲と組み合わせてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、Alを、13モル%以上~20モル%以下、例えば、13.5モル%以上~19.5モル%以下、14モル%以上~19モル%以下、14.5モル%以上~18.5モル%以下、15モル%以上~18モル%以下、15.5モル%以上~17.5モル%以下、又は16モル%以上~17モル%以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げたAl値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含みうる。
【0070】
本明細書に開示されるガラス組成物はBを含む。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、Bを、6モル%以上のBから16モル%以下のBまで、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含みうる。例えば、ガラス組成物は、Bを、6モル%以上、例えば、6モル%以上、6.5モル%以上、7モル%以上、7.5モル%以上、8モル%以上、8.5モル%以上、9モル%以上、9.5モル%以上、10モル%以上、10.5モル%以上、11モル%以上、11.5モル%以上、12モル%以上、12.5モル%以上、13モル%以上、13.5モル%以上、14モル%以上、14.5モル%以上、15モル%以上、又は15.5モル%以上の量で含みうる。
【0071】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、Bを、16モル%以下、例えば、16モル%以下、15.5モル%以下、16モル%以下、14.5モル%以下、14モル%以下、13.5モル%以下、13モル%以下、12.5モル%以下、12モル%以下、11.5モル%以下、11モル%以下、10.5モル%以下、10モル%以下、9.5モル%以下、9モル%以下、8.5モル%以下、8モル%以下、7.5モル%以下、7モル%以下、又は6.5モル%以下の量で含みうる。
【0072】
上記の範囲のいずれかを他の任意の範囲と組み合わせてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、Bを、6モル%以上~16モル%以下、例えば、6.5モル%以上~15.5モル%以下、7モル%以上~15モル%以下、7.5モル%以上~14.5モル%以下、8モル%以上~14モル%以下、8.5モル%以上~13.5モル%以下、9モル%以上~13モル%以下、又は9.5モル%以上~12.5モル%以下、10モル%以上~12モル%以下、10.5モル%以上~11.5モル%以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げたB値のいずれかを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含みうる。幾つかの実施形態では、組成物中のBの濃度は16モル%超でありうる。幾つかの実施形態では、組成物中のBの濃度は8モル%以上でありうる。幾つかの実施形態では、組成物中のBの濃度は8モル%~12モル%でありうる。幾つかの実施形態では、組成物中のBの濃度は6モル%~16モル%でありうる。
【0073】
組成物の破壊靭性を改善するために、B2O3を本明細書に開示される濃度でガラス組成物に添加することもできる。組成物の破壊靭性を改善するために、Bを本明細書に開示される濃度でガラス組成物に添加することもできる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物中のBは、四面体構成などの他の可能な構成とは対照的に、三方晶構成でありうる。幾つかの実施形態では、組成物が過アルミニウムであるか又は過アルミニウムに近い場合、Bのすべて又はかなりの部分が三方晶構成でありうる。これにより、組成物のヌープスクラッチ閾値を改善することもできる。幾つかの実施形態では、三方晶構成中のBの量は、組成物中のBの50モル%以上、例えば、55モル%以上、60モル%以上、65モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、又は95モル%以上である。幾つかの実施形態では、三方晶構成中のBの量は、部分範囲を含めて、組成物中の総Bの50モル%から組成物中のBの100モル%までの範囲でありうる。例えば、三方晶構成中のBの量は、組成物中のBの50モル%、55モル%、60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、80モル%、85モル%、90モル%、95モル%、又は100モル%、若しくは端点として(当該端点を含む)これらの値のうちのいずれか2つによって定義される範囲内でありうる。幾つかの実施形態では、組成物中のBの90モル%以上が三方晶酸化ホウ素である。幾つかの実施形態では、組成物中のBの75モル%以上が三方晶酸化ホウ素である。幾つかの実施形態では、組成物中のBの50モル%以上が三方晶酸化ホウ素である。
【0074】
組成物中に存在する三方晶酸化ホウ素の量は、以下の方法を使用する核磁気共鳴分光法(NMR)を使用して測定することができる。ガラス組成物中のホウ素配位は、固体NMR分光法を使用して定量化される。ガラス試料は粉末化されて、20kHzの速度でのマジック角試料スピニングのためにジルコニアロータに充填される。データは、三方晶系と四面体の両方のホウ素共鳴が均一に励起されるように、先端角度が約π/12の短い高周波パルスを使用して収集される。少なくとも11.7テスラ(T)の磁場強度を使用して、3倍及び4倍に配位したホウ素ピークからの共鳴の分離を確実にする。4倍配位のホウ素の割合(いわゆるN4値)を定量化するために、ピーク面積が用いられる。四重極線の形状を適切に適合させ、四面体のピークからの重複する衛星遷移を考慮するように注意を払う。これらの衛星ピークが分析に含まれていない場合、N4値が高くなりすぎる(実際の濃度より約2原子%程度大きくなる)。特に明記されていない限り、この方法が本願の目的で三方晶酸化ホウ素の量を測定する方法である。
【0075】
幾つかの実施形態では、Bは、ネットワーク形成剤として作用することができ、それにより、ガラス組成物の溶融性及び成形性を低下させる。したがって、Bは、これらの特性を過度に低下させない量で添加されうる。
【0076】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるガラス組成物は、LiOを含みうる。LiOをガラス組成物に含めて、イオン交換プロセスの制御を改善し、ガラスの軟化点をさらに低下させ、それによってガラスの製造可能性を高めることができる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、LiOを、8モル%超~14モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含みうる。例えば、ガラス組成物は、LiOを、8モル%以上、例えば、8モル%以上、8.5モル%以上、9モル%以上、9.5モル%以上、10モル%以上、10.5モル%以上、11モル%以上、11.5モル%以上、12モル%以上、12.5モル%以上、13モル%以上、又は13.5モル%以上の量で含みうる。
【0077】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、LiOを、14モル%以下、例えば、14モル%以下、13.5モル%以下、13モル%以下、12.5モル%以下、12モル%以下、11.5モル%以下、11モル%以下、10.5モル%以下、10モル%以下、9.5モル%以下、9モル%以下、又は8.5モル%以下の量で含みうる。
【0078】
上記の範囲のいずれかを他の任意の範囲と組み合わせてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、LiOを、8モル%以上~14モル%以下、例えば、8.5モル%以上~13.5モル%以下、9モル%以上~13モル%以下、9.5モル%以上~12.5モル%以下、10モル%以上~12モル%以下、又は10.5モル%以上~11.5モル%以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げたLiO値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含みうる。
【0079】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、NaOなど、LiO以外のアルカリ金属酸化物も含みうる。NaOは、ガラス組成物のイオン交換能を助けることができ、ガラス組成物の成形性、さらには製造可能性を改善することができる。しかしながら、ガラス組成物に添加するNaOが多すぎると、CTEが低くなりすぎる場合があり、また融点が高くなりすぎる場合がある。
【0080】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、NaOを、0モル%超のNaOから4モル%以下のNaOまで、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含みうる。例えば、ガラス組成物は、NaOを、0モル%超、例えば、0.5モル%以上、1モル%以上、1.5モル%以上、2モル%以上、2.5モル%以上、3モル%以上、又は3.5モル%以上の量で含みうる。
【0081】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、NaOを、4モル%以下、例えば、4モル%以下、3.5モル%以下、3モル%以下、2.5モル%以下、2モル%以下、又は1.5モル%以下、1モル%以下、又は0.5モル%以下の量で含みうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、3モル%未満のNaOを含みうる。
【0082】
上記の範囲のいずれかを他の任意の範囲と組み合わせてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、NaOを、0モル%超~4モル%以下、例えば、0.5モル%以上~3.5モル%以下、1モル%以上~3モル%以下、又は1.5モル%以上~2.5モル%以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げたNaO値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含みうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、NaOを、0.1モル%~4モル%の量で含みうる。
【0083】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物はKOを含みうる。NaOと同様に、KOは、イオン交換を促進し、圧縮応力層のDOCを増加させる。しかしながら、KOを添加すると、CTEが低くなりすぎる場合があり、また融点が高くなりすぎる場合がある。幾つかの実施形態では、ガラス組成物はKOを含みうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、実質的にKOを含まない。幾つかの実施形態では、KOは、1モル%以下、例えば、0.1モル%~1モル%の量でガラス組成物中に存在しうる。
【0084】
本明細書で用いられる場合、「実質的に含まない」という用語は、成分が汚染物質として非常に少量で最終ガラス中に存在しうるとしても、その成分がバッチ材料の成分として添加されていないことを意味する。本開示のガラス組成物を製造するために用いられる原材料及び/又は装置の結果として、意図的に添加されていないある特定の不純物又は成分が、最終的なガラス組成物中に存在する可能性がある。このような材料は、ガラス組成物中に少量で存在し、「トランプ材料」と呼ばれる。ある成分を「実質的に含まない」組成物は、その成分が意図的に組成物に添加されなかったが、組成物は依然としてその成分をトランプ又は微量で含みうることを意味する。酸化物を「実質的に含まない」組成物とは、酸化物が0.1モル%以下、例えば 0モル%~0.1モル%の量で存在することを意味する。本明細書で用いられる場合、ある成分を「含まない」ガラス組成物は、トランプ又は微量であっても、その成分(例えば、酸化物)が組成物中に存在しないことを意味するものとして定義される。
【0085】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物はMgOを含みうる。MgOはガラスの粘度を低下させ、これにより、ガラスの成形性及び製造可能性を高めることができる。ガラス組成物中にMgOを含めると、ガラス組成物の歪み点及びヤング率、並びにガラスのイオン交換能力も向上させることができる。しかしながら、ガラス組成物に添加するMgOが多すぎると、ガラス組成物の密度及びCTEが望ましくないレベルまで増加する可能性がある。
【0086】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、MgOを、0モル%超~5モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の濃度で含みうる。例えば、ガラス組成物は、MgOを、0モル%超、例えば、0.5モル%以上、1モル%以上、1.5モル%以上、2モル%以上、2.5モル%以上、3モル%以上、3.5モル%以上、4モル%以上、又は4.5モル%以上の量で含みうる。
【0087】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、MgOを、5モル%以下、例えば、4.5モル%以下、4モル%以下、3.5モル%以下、3モル%以下、2.5モル%以下、2モル%以下、1.5モル%以下、1モル%以下、又は0.5モル%以下の量で含みうる。
【0088】
上記の範囲のいずれかを他の任意の範囲と組み合わせてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、MgOを、0モル%超~5モル%以下、例えば、0.5モル%以上~4.5モル%以下、1モル%以上~4モル%以下、1.5モル%以上~3.5モル%以下、又は2モル%以上~3モル%以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げたMgO値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量で含みうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、MgOを、0.1モル%~5モル%の範囲で含みうる。
【0089】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物はCaOを含みうる。CaOは、ガラスの粘度を低下させることができ、これにより成形性、歪み点、及びヤング率を向上させることができ、イオン交換能力を改善することができる。しかしながら、ガラス組成物に添加するCaOが多すぎると、ガラス組成物の密度及びCTEが増加しうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、CaOを、0モル%超~2モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の濃度で含みうる。例えば、ガラス組成物は、CaOを、0モル%超、例えば、0.1モル%以上、0.2モル%以上、0.3モル%以上、0.4モル%以上、0.5モル%以上、0.6モル%以上、0.7モル%以上、0.8モル%以上、0.9モル%以上、1モル%以上、1.1モル%以上、1.2モル%以上、1.3モル%以上、1.4モル%以上、1.5モル%以上、1.6モル%以上、1.7モル%以上、1.8モル%以上、又は1.9モル%以上の量で含みうる。
【0090】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、CaOを、2モル%以下、例えば、1.9モル%以下、1.8モル%以下、1.7モル%以下、1.6モル%以下、1.5モル%以下、1.4モル%以下、1.3モル%以下、1.2モル%以下、1.1モル%以下、1モル%以下、0.9モル%以下、0.8モル%以下、0.7モル%以下、0.6モル%以下、0.5モル%以下、0.4モル%以下、0.3モル%以下、0.2モル%以下、又は0.1モル%以下の量で含みうる。上記の範囲のいずれかを、端点として(当該端点を含む)上に挙げたCaO値のうちのいずれか2つを有する他の範囲と組み合わせてもよい。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、CaOを、0.1モル%~2モル%の範囲で含みうる。
【0091】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、La、Y、TiO、又はZrOのうちの1つ以上を含まないか、又は実質的に含まない。上で論じたように、これらの特定の酸化物は、ガラス組成物の破壊靭性を増加させることができる。しかしながら、それらは通常、高価であり、供給も限られている。したがって、これらの酸化物は、組成物から除外されうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、TiOを、0モル%超~2モル%以下の範囲で含みうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、TiOを、0.1モル%~2モル%の範囲で含みうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、ZrOを、0モル%超~2モル%以下の範囲で含みうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、ZrOを、0.1モル%~2モル%の範囲で含みうる。
【0092】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、SrOを実質的に含まないか、又は含まない。幾つかの実施形態では、ガラス組成物はまた、Pも実質的に含まないか、又は含まない。ガラス組成物中にPを含めると、ガラス組成物の溶融性及び成形性が望ましくなく低下し、それによってガラス組成物の製造可能性が損なわれる可能性がある。イオン交換強化を目的としたガラス組成物は、所望の圧縮応力又は圧縮深さを生成するために必要とされるイオン交換処理時間を短縮することなどによって、イオン交換処理の速度を高めるために、Pを含みうる。所望のイオン交換性能を達成するために、本明細書に記載されるガラス組成物中にPを含める必要はない。この理由から、所望のイオン交換性能を維持しつつ、ガラス組成物の製造可能性への悪影響を回避するために、Pはガラス組成物から除外されうる。
【0093】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、任意選択的に、1つ以上の清澄剤を含みうる。幾つかの実施形態では、清澄剤は、例えば、SnOを含みうる。このような実施形態では、SnOは、2モル%以下、例えば、0モル%超~2モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量でガラス組成物中に存在しうる。他の実施形態では、SnOは、0モル%超~1.5モル%以下、又は0.5モル%以上~1モル%以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の量でガラス組成物中に存在しうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、SnOを実質的に含まないか、又は含まない。幾つかの実施形態では、組成物は、SnOを、0モル%~2モル%の範囲で含みうる。幾つかの実施形態では、組成物は、SnOを、0.1モル%~2モル%の範囲で含みうる。
【0094】
幾つかの実施形態では、清澄剤は、例えばFeを含みうる。このような実施形態では、Feは、0.1モル%以下、例えば、0モル%超~0.1モル%以下の量でガラス組成物中に存在しうる。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、Feを実質的に含まないか、又は含まない。
【0095】
幾つかの実施形態では、(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO)/Alの関係は、0.85以上から1未満であってよく、ここで、各成分濃度はモル%単位である。この関係は、組成物中のBが三方晶構成になるように、組成物が過アルミニウムであることを確実にしうる。幾つかの実施形態では、(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO)/Alの比は、1以下、0.99以下、0.98以下、0.97以下、0.96以下、0.95以下、0.94以下、0.93以下、0.92以下、0.91以下、0.90以下、0.89以下、0.88以下、0.87以下、又は0.86以下でありうる。
【0096】
幾つかの実施形態では、(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO)/Alの比は、0.85以上、0.86以上、0.87以上、0.88以上、0.89以上、0.90以上、0.91以上、0.92以上、0.93以上、0.94以上、0.95以上、0.96以上、0.97以上、又は0.98以上でありうる。上記の範囲のいずれかを組み合わせて、端点として(当該端点を含む)上に挙げた値のうちのいずれか2つを有する範囲を形成することができる。
【0097】
幾つかの実施形態では、(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO)/Alの比は、1.0以上~1.15以下、例えば、1.01以上~1.14以下、1.02以上~1.13以下、1.03以上~1.12以下、1.04以上~1.11以下、1.05以上~1.10以下、1.06以上~1.09以下、又は1.07以上~1.08以下でありうる。上記の範囲のいずれかを組み合わせて、端点として(当該端点を含む)上に挙げた値のうちのいずれか2つを有する範囲を形成することができる。このような実施形態では、組成物は過アルミニウムでなくてもよい。しかしながら、ガラス組成物の破壊靭性が増加するように、Bの大部分は依然として三方晶構成のままであろう。
【0098】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、以下に示される表1、2、及び3の組成によって定義される凸包上又は凸包内に入る。凸包は、所与の次元の空間に一連の点を含む、最小の凸境界に対応する。凸包はd次元空間にあり、ここで、dは、表1、2、及び3に挙げられているさまざまな酸化物の数である。例えば、幾つかの実施形態では、d=14であり、これは、SiO、Al、P、B、MgO、CaO、SrO、LiO、NaO、KO、TiO、SnO、Fe、及びZrOを含む。凸包の境界は、表1、2、及び3の各元素の最大及び最小のモル%値によって定義される。凸包は、the Computation Geometry Algorithms Library (CGAL), User and Reference Manual, CGAL Editorial Board, 4.14 edition, 2019においてSusan Hert及びMichael Seelによって作成された、dD凸包とドロネー三角形分割アルゴリズムを使用して計算することができる。
【0099】
次に、上記に開示されたガラス組成物の物理的特性について論じる。これらの物理的特性は、例を参照してより詳細に論じられるように、ガラス組成物の成分量を調整することによって達成することができる。
【0100】
幾つかの実施形態によるガラス組成物は、0.75MPa*m1/2以上の破壊靭性を有しうる。特定の理論に拘束されることは望まないが、高い破壊靭性は、ガラス組成物に改善された落下性能を与えることができる。特に指定のない限り、破壊靭性とは、K1C値を指し、シェブロンノッチ付小形角棒法で測定され、MPa*m1/2(メガパスカル×平方根メートル)単位で報告される。K1C値を測定するために利用したシェブロンノッチ付小形角棒(CNSB)法は、Bubsey, R.T. et al., “Closed-Form Expressions for Crack-Mouth Displacement and Stress Intensity Factors for Chevron-Notched Short Bar and Short Rod Specimens Based on Experimental Compliance Measurements,” NASA Technical Memorandum 83796, pp. 1-30 (October 1992)の式5を使用してY*mを計算することを除き、Reddy, K.P.R. et al, “Fracture Toughness Measurement of Glass and Ceramic Materials Using Chevron-Notched Specimens,” J. Am. Ceram. Soc., 71 [6], C-310-C-313 (1988)に開示されている。加えて、K1C値は、ガラス物品をイオン交換する前にK1C値を測定する、又はイオン交換されたガラスがイオン交換前に有していた組成と同じ組成を有するガラスのK1C値を測定するなど、強化されていないガラス物品において測定される。イオン交換前のイオン交換ガラスの組成は、イオン交換ガラスの中心における組成を評価することによって決定することができる。イオン交換ガラスでは測定技法が上手く機能しないため、破壊靭性は、イオン交換されていないガラスで評価される。しかし、破壊靭性は依然としてガラス物品の属性に影響を与える。イオン交換されたガラスで直接測定することは困難であるが、測定値はイオン交換ガラスの特性と見なされる。
【0101】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、CNSB法で測定して、0.75以上、例えば、0.76以上、0.77以上、0.78以上、0.79以上、0.80以上、0.81以上、0.82以上、0.83以上、0.84以上、又は0.85以上のK1C値を示す。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、CNSB法で測定して、0.70以上~1以下、例えば、0.71以上~0.99以下、0.72以上~0.98以下、0.73以上~0.97以下、0.74以上~0.96以下、0.75以上~0.95以下、0.76以上~0.94以下、0.77以上~0.93以下、0.78以上~0.92以下、0.79以上~0.91以下、0.80以上~0.90以下、0.81以上~0.89以下、0.82以上~0.88以下、0.83以上~0.87以下、又は0.84以上~0.86以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げたK1C値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲のK1C値を示しうる。幾つかの実施形態では、ガラスセラミックの形態の本明細書に記載されるガラス組成物は、l部分範囲を含めて、CNSBで測定して1~10の範囲のK1C値を示しうる。例えば、K1C値は、1以上~10以下、2以上~9以下、3以上~8以下、4以上~7以下、又は5以上~6以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げたK1C値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲でありうる。
【0102】
幾つかの実施形態では、組成物の液相線粘度は、1000ポアズ以上、例えば、1050ポアズ以上、1100ポアズ以上、1150ポアズ以上、1200ポアズ以上、1250ポアズ以上、1300ポアズ以上、1350ポアズ以上、1400ポアズ以上、1450ポアズ以上、1500ポアズ以上、1550ポアズ以上、1600ポアズ以上、1650ポアズ以上、又は最大で7000ポアズである。幾つかの実施形態では、組成物の液相線粘度は、部分範囲を含めて、1000ポアズから7000ポアズまでの範囲にある。例えば、組成物の液相線粘度は、1000ポアズ以上~7000ポアズ以下、2000ポアズ以上~6000ポアズ以下、又は3000ポアズ以上~5000ポアズ以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げた液相線粘度値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲でありうる。特に指定のない限り、本願で開示される液相線粘度値は、次の方法によって決定される。ガラスの第1の液相線温度は、「勾配炉法によるガラスの液相温度の測定のための標準的技法(Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method)」と題されたASTM C829-81(2015)に準拠して測定される。次に、液相線温度におけるガラスの粘度は、「軟化点より上のガラスの粘度を測定するための標準プラクティス(Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point)」と題されたASTM C965-96(2012)に準拠して測定される。
【0103】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物のヤング率(E)は、70GPa以上~90ギガパスカル(GPa)以下、例えば、71GPa以上~89GPa以下、72GPa以上~88GPa以下、73GPa以上~87GPa以下、74GPa以上~86GPa以下、75GPa以上~85GPa以下、76GPa以上~84GPa以下、77GPa以上~83GPa以下、78GPa以上~82GPa以下、又は79GPa以上~81GPa以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げたヤング率値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲でありうる。特に指定のない限り、この開示で開示されるヤング率の値は、「金属及び非金属部品の欠陥検出のための共鳴超音波分光法の標準ガイド(Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts)」と題された、ASTM E2001-13に記載されている一般的なタイプの共鳴超音波分光法技法によって測定された値を指す。
【0104】
幾つかの実施形態によれば、ガラス組成物は、30GPa以上~40GPa以下、例えば、31GPa以上~39GPa以下、32GPa以上~38GPa以下、33GPa以上~37GPa以下、又は34GPa以上~36GPa以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げた剪断弾性率値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の剪断弾性率(G)を有しうる。特に指定のない限り、本願で開示される剪断弾性率の値は、「金属及び非金属部品の欠陥検出のための共鳴超音波分光法の標準ガイド(Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts)」と題された、ASTM E2001-13に記載されている一般的なタイプの共鳴超音波分光法技法によって測定された値を指す。
【0105】
幾つかの実施形態によれば、ガラス組成物は、0.20以上~0.25以下、例えば、0.21以上~0.24以下、0.22以上~0.23以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げた値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲のポアソン比(ν)を有しうる。特に指定のない限り、本願で開示されるポアソン比の値は、「金属及び非金属部品の欠陥検出のための共鳴超音波分光法の標準ガイド(Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts)」と題された、ASTM E2001-13に記載されている一般的なタイプの共鳴超音波分光法技法によって測定された値を指す。
【0106】
実施形態によるガラス物品は、上記組成物から、スロット成形、フロート成形、圧延プロセス、溶融成形プロセスなどの任意の適切な方法によって成形することができる。
【0107】
ガラス組成物及びそれから製造される物品は、それが成形されうる方法によって特徴付けることができる。例えば、ガラス組成物は、フロート成形可能(すなわち、フロート法によって成形される)、下方延伸可能、及び特に溶融成形可能又はスロット延伸可能(すなわち、フュージョンドロー法又はスロットドロー法などのダウンドロー法によって成形される)として特徴付けることができる。
【0108】
本明細書に記載されるガラス物品の幾つかの実施形態は、ダウンドロー法によって成形することができる。ダウンドロー法は、比較的無傷な表面を有する、均一な厚さを有するガラス物品を生成する。ガラス物品の平均曲げ強度は表面の傷の量及び大きさによって制御されることから、最小限に接触している無傷の表面は、より高い初期強度を有する。加えて、下方に延伸されたガラス製品は、非常に平坦で滑らかな表面を有し、これは、高価な研削及び研磨をすることなく、その最終用途に使用することができる。
【0109】
ガラス物品の幾つかの実施形態は、溶融成形可能(すなわち、フュージョンドロー法を使用して成形可能)として説明することができる。フュージョン法は、溶融ガラス原料を受け入れるためのチャネルを有する延伸タンクを使用する。チャネルは、該チャネルの両側に、チャネルの長さに沿って上部が開放されている堰を有する。チャネルが溶融材料で満たされると、溶融ガラスは堰から溢れ出る。重力に起因して、溶融ガラスは、2つの流れるガラスフィルムとして延伸タンクの外面を流下する。延伸タンクのこれらの外面は、該延伸タンクの下方の縁部で接合するように、下方かつ内側へと延びている。2つの流れるガラスフィルムは、この縁部で接合し、融着して、単一の流れるガラス物品を形成する。フュージョンドロー法は、チャネル上を流れる2つのガラスフィルムが互いに融着することから、得られるガラス物品の外面はどちらも、装置のいずれの部分とも接触しないという利点をもたらす。よって、溶融延伸されたガラス物品の表面特性は、このような接触による影響を受けない。
【0110】
本明細書に記載されるガラス物品の幾つかの実施形態は、スロットドロー法によって形成することができる。スロットドロー法はフュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法では、溶融原料ガラスは延伸タンクに供給される。延伸タンクの底部は、スロットの長さにわたって延在する、ノズルを備えた開口スロットを有している。溶融ガラスは、スロット/ノズルを通って流れ、連続的なガラス製品として、アニーリング領域内へと下方に延伸される。
【0111】
例えばガラスシートなどのガラス物品を形成するための延伸プロセスは、ほとんど欠陥のない薄いガラス物品を形成可能であることから、望ましい。ガラス組成物は、例えば、溶融延伸又はスロット延伸などの延伸プロセスによって形成されるように、比較的高い液相線粘度(例えば、1000kP超、1100kP超、又は1200kP超の液相線粘度)を有することが必要であると以前は考えられていた。しかしながら、延伸プロセスの開発により、液相線粘度の低いガラスを延伸プロセスで使用できるようになりうる。
【0112】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載されるガラス物品は、非晶質微細構造を示すことができ、結晶又は微結晶を実質的に含まなくてもよい。言い換えれば、ガラス物品は、幾つかの実施形態では、ガラスセラミック材料を除外することができる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるガラス物品は、ガラスセラミック材料を含みうる。
【0113】
上記のように、幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、イオン交換などによって強化することができる。図1を参照すると、ガラス物品100は、ガラス物品100の外面(例えば、表面110、112)から圧縮深さ(DOC、d1、d2)まで延びる、圧縮応力下にある1つ以上の領域(例えば、第1及び第2の圧縮応力領域120、122)、並びにDOCからガラス物品100の中央領域又は内部領域内へと延びる引張応力又はCT下にある第2の領域(例えば、中央領域130)を有しうる。本明細書で用いられる場合、DOCとは、ガラス物品内の応力が圧縮から引張に変化する深さを指す。DOCでは、応力は正の(圧縮)応力から負の(引張)応力へと移行し、したがって、ゼロの応力値を示す。イオン交換された圧縮応力領域120、122は、ガラス物品100の厚さ全体の2つ以上の点で異なる金属酸化物の濃度を有する。幾つかの実施形態では、ガラス物品100は、第1の圧縮応力領域120及び/又は第2の圧縮応力領域122を含まない場合がある。
【0114】
本開示においてではないが、時折、当技術分野では、圧縮又は圧縮応力(CS)は負(<0)の応力として表わされ、張力又は引張応力は正(>0)の応力として表わされる。しかしながら、この説明全体を通して、「応力」は、圧縮応力の場合は正、引張応力の場合は負として表される。CSは圧縮応力を指し、正の値を有する。引張応力は、2つの方法(「応力」の負の値とCTの正の値)で表すことができる。よって、100MPaの絶対値を有する引張応力下の領域は、100MPaのCTと-100MPaの応力を有するということができる。
【0115】
幾つかの実施形態では、CSは、ガラスの表面で最大値を有し、CSは関数に応じて表面からの距離dとともに変化する。再び図1を参照すると、第1の圧縮応力領域120は、第1の表面110から深さdまで延び、第2の圧縮応力領域122は、第2の表面112から深さdまで延びる。これらのセグメントは一緒に、ガラス物品100の圧縮又はCSを画成する。特に指定のない限り、圧縮応力(表面CSを含む)は、折原製作所(日本所在)製造のFSM-6000などの市販の機器を使用して、表面応力計(FSM)によって測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光学係数(SOC)の正確な測定に依拠している。特に指定のない限り、SOCは、その内容全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、「ガラス応力-光学係数の測定のための標準試験方法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient)」と題されたASTM規格C770-16に記載される手順C(ガラスディスク法)に準拠して測定される。
【0116】
幾つかの実施形態では、ガラス物品の1つ以上の圧縮応力領域のCSは、400MPa以上~800MPa以下、例えば、425MPa以上~775MPa以下、450MPa以上~750MPa以下、475MPa以上~725MPa以下、500MPa以上~700MPa以下、525MPa以上~675MPa以下、550MPa以上~650MPa以下、又は575MPa以上~625MPa以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げた値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲である。応力の下限が指定されていない場合、特定の値より「小さい」応力は1MPa以下になりうる。応力の上限が指定されていない場合、特定の値より「大きい」応力は、7775MPa、1000MPa、2000MPa、又はそれより大きくなりうる。
【0117】
例えば、1つ以上の実施形態では、Na+及びK+イオンはガラス物品へと交換され、Na+イオンは、K+イオンよりもガラス物品のより深い深さまで拡散する。K+イオンの浸透の深さ(「カリウムDOL」)は、イオン交換プロセスの結果としてのカリウムの浸透の深さを表すことから、DOCとは区別される。カリウムDOLは、通常、本明細書に記載される物品のDOCよりも小さくなる。特に指定のない限り、カリウムDOLは、CS測定に関して前述したように、応力光学係数(SOC)の正確な測定に依拠する、折原製作所(日本所在)製の市販のFSM-6000表面応力計などの表面応力計を使用して測定される。第1及び第2の圧縮応力領域120、122の各々のカリウムDOLは、5μm以上~15μm以下、例えば、6μm以上~14μm以下、7μm以上~13μm以下、8μm以上~12μm以下、又は9μm以上~11μm以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げた値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲でありうる。
【0118】
両方の領域120及び122の圧縮応力は、ガラス物品100の中央領域130に蓄積された張力によってバランスがとられている。特に指定のない限り、本願で開示される最大CT及びDOC値は、当技術分野で知られている散乱光偏光子(SCALP)技法を使用して測定される。屈折近接場(RNF)法又はSCALPを使用して、応力プロファイルを測定することができる。RNF法を利用して応力プロファイルを測定する場合、SCALPによって提供される最大CT値がRNF法に利用される。特に、RNFによって測定された応力プロファイルは、力のバランスが取れており、SCALP測定によって提供される最大CT値に較正される。RNF法は、その全体が参照することによって本明細書に組み込まれる、「ガラス試料のプロファイル特性を測定するためのシステム及び方法(Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample)」と題された米国特許第8,854,623号明細書に記載されている。特に、RNF法は、ガラス物品を基準ブロックに隣接して配置し、1Hz~50Hzの速度で直交偏光間で切り替えられる偏波スイッチ光ビームを生成し、該偏波スイッチ光ビームのパワー量を測定し、かつ、偏波スイッチ基準信号を生成することを含み、ここで、直交偏光の各々において測定されたパワー量は互いに50%以内である。該方法は、偏波スイッチ光ビームをガラス試料及び基準ブロックを介してガラス試料にさまざまな深さで送信し、次に、リレー光学系を使用して、送信された偏波スイッチ光ビームを、偏波スイッチ検出器信号を生成する信号光検出器に中継することをさらに含む。該方法はまた、検出器信号を基準信号で除算して、正規化された検出器信号を形成し、正規化された検出器信号からガラス試料のプロファイル特性を決定することも含む。
【0119】
SCALP測定は、エストニア国タリン所在のGlassStress Ltd.社から入手可能なSCALP偏光器(例えば、SCALP-04又はSCALP-05)を使用して行われる。少なくとも1つの応力関連特性を特徴づけるために試料を測定する場合に、偏光計の測定ノイズを許容レベルまで低減するために必要とされる正確な試料速度SS及び曝露時間tは、幾つかの要因に依存する。これらの要因には、画像検知デバイスの特性(ゲイン、画像キャプチャレート(フレーム/秒)、ピクセルサイズ、内部ピクセル平均技法など)、並びに無応力関連(NSR)散乱特徴の性質、入力光ビームの強度、用いられる偏光状態の数などが含まれる。他の要因には、レーザ光源からの光線の測定波長、及び散乱光線の強度が含まれる。例となる測定波長は、640nm、518nm、及び405nmを含みうる。例となる曝露時間は、0.05ミリ秒から100ミリ秒の範囲でありうる。例となるフレームレートは、1秒あたり10フレームからび200フレームの範囲でありうる。光学位相差の計算例では、0.1秒から10秒の測定時間tにわたり、2フレームから200フレームを利用することができる。
【0120】
幾つかの実施形態では、ガラス物品は、35MPa以上、例えば、40MPa以上、50MPa以上、60MPa以上、70MPa以上、80MPa以上、90MPa以上、100MPa以上、又は110MPa以上の最大CTを有しうる。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、110MPa以下、例えば、100MPa以下、90MPa以下、80MPa以下、70MPa以下、60MPa以下、50MPa以下、又は40MPa以下、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の最大CTを有しうる。幾つかの実施形態では、上記の範囲のいずれかを他の任意の範囲と組み合わせてもよいものと理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス物品は、35MPa以上~110MPa以下、例えば、40MPa以上~100MPa以下、50MPa以上~90MPa以下、又は60MPa以上~80MPa以下の最大CTを有しうる。上記の範囲のいずれかを組み合わせて、端点として(当該端点を含む)上に挙げたCT値のうちのいずれか2つを有する範囲を形成することができる。
【0121】
上記のように、DOCは、当技術分野で知られている散乱光偏光子(SCALP)技法を使用して測定される。本明細書の幾つかの実施形態では、DOCは、ガラス物品100の厚さ(t)の一部として提供される。実施形態では、ガラス物品は、0.15t以上~0.25t以下、例えば、0.18t以上~0.22t以下、又は0.19t以上~0.21t以下の圧縮深さ(DOC)を有しうる。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、0.16以上~0.2t以下、例えば、0.17t以上~0.25t以下、0.18t以上~0.25t以下、0.19t以上~0.25t以下、0.20t以上~0.25t以下、0.21t以上~0.25t以下、0.22t以上~0.25t以下、0.23t以上~0.25t以下、又は0.24t以上~0.25t以下のDOCを有しうる。さらに他の実施形態ではガラス物品は、0.15t以上~0.24t以下、例えば、0.15t以上~0.23t以下、0.15t以上~0.22t以下、0.15t以上~0.21t以下、0.15t以上~0.20t以下、0.15t以上~0.19t以下、0.15t以上~0.18t以下、0.15t以上~0.17t以下、又は0.15t以上~0.16t以下のDOCを有しうる。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、0.20t以上のDOCを有しうる。幾つかの実施形態では、ガラス物品は、0.15t以上のDOCを有しうる。
【0122】
圧縮応力層は、ガラスをイオン交換溶液に曝露することによってガラス中に形成されうる。幾つかの実施形態では、イオン交換溶液は溶融硝酸塩でありうる。幾つかの実施形態では、イオン交換溶液は、溶融KNO、溶融NaNO、又はそれらの組合せでありうる。ある特定の実施形態では、イオン交換溶液は、約95%未満の溶融KNO、例えば、約90%未満の溶融KNO、約80%未満の溶融KNO、約70%未満の溶融KNO、約60%未満の溶融KNO、又は約50%未満の溶融KNOを含みうる。ある特定の実施形態では、イオン交換溶液は、約5%以上の溶融NaNO、例えば、約10%以上の溶融NaNO、約20%以上の溶融NaNO、約30%以上の溶融NaNO、又は約40%以上の溶融NaNOを含みうる。他の実施形態では、イオン交換溶液は、約95%の溶融KNO及び約5%の溶融NaNO、約94%の溶融KNO及び約6%の溶融NaNO、約93%の溶融KNO及び約7%の溶融NaNO、約80%の溶融KNO及び約20%の溶融NaNO、約75%の溶融KNO及び約25%の溶融NaNO、約70%の溶融KNO及び約30%の溶融NaNO、約65%の溶融KNO及び約35%の溶融NaNO、又は約60%の溶融KNO及び約40%の溶融NaNO、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲を含みうる。幾つかの実施形態では、他のナトリウム塩及びカリウム塩は、例えば、亜硝酸、リン酸、若しくは硫酸のナトリウム塩又はカリウム塩などのイオン交換溶液中で使用することができる。幾つかの実施形態では、イオン交換溶液は、LiNOなどのリチウム塩を含むことができる。
【0123】
ガラス組成物は、該ガラス組成物から作られたガラス物品をイオン交換溶液の浴に浸すか、ガラス組成物から作られたガラス物品にイオン交換溶液を噴霧するか、さもなければガラス組成物から作られたガラス物品をイオン交換溶液に物理的に塗布することによって、イオン交換溶液に曝露させることができる。ガラス組成物に曝される場合、イオン交換溶液は、実施形態によれば、400℃以上~500℃以下、例えば、410℃以上~490℃以下、420℃以上~480℃以下、430℃以上~470℃以下、又は440℃以上~460℃以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げた温度値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲の温度でありうる。幾つかの実施形態では、イオン交換溶液の温度は450℃でありうる。
【0124】
幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、4時間以上~24時間以下、例えば、8時間以上~20時間以下、又は12時間以上~16時間以下の期間、並びに前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げた時間値のうちのいずれか2つを有する範囲の期間、イオン交換溶液に曝露されうる。
【0125】
イオン交換プロセスは、例えば、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0102011号明細書に開示されているように、改善された圧縮応力プロファイルをもたらす処理条件下、イオン交換溶液中で行うことができる。幾つかの実施形態では、イオン交換プロセスは、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0102014号明細書に記載される応力プロファイルなど、ガラス物品に放物線状の応力プロファイルを形成するように選択されうる。
【0126】
イオン交換プロセスが行われた後、ガラス物品の表面の組成は、形成されたままのガラス物品(すなわち、イオン交換プロセスに供される前のガラス物品)の組成とは異なりうるものと理解されたい。これは、例えばLi又はNaなどの形成されたままのガラス内の1種類のアルカリ金属イオンが、例えば、それぞれNa又はKなどのより大きいアルカリ金属イオンに置き換えられることに起因する。しかしながら、ガラス物品の深さの中心又はその近くのガラス組成物は、幾つかの実施形態では、形成されたままのガラス物品のガラスの組成を有するであろう。特に指定のない限り、本出願で開示されるガラス組成物は、該組成物がイオン交換プロセスによって影響を受けない、物品の深さの中心近くのガラス物品の組成物、すなわち、形成されたままのガラス物品の組成物である。
【0127】
幾つかの実施形態では、ガラス物品の重量は、組成物中のより大きいアルカリ金属イオン、例えばNa又はKの存在に起因して、増加する。幾つかの実施形態では、ガラス物品の重量増加率は、0.4%以上~1.2%以下、例えば、0.5%以上~1.1%以下、0.6%以上~1%以下、又は0.7%以上~0.9%以下、並びに端点として(当該端点を含む)上に挙げた重量増加値のうちのいずれか2つを有する前述の値の間のすべての範囲及び部分範囲である。
【0128】
本明細書に開示されるガラス物品は、ディスプレイを備えた(一又は複数の)物品(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む消費者向け電化製品)、建築用品、輸送用品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、家電機器用品、若しくはある程度の透明性、耐スクラッチ性、耐摩耗性、又はそれらの組合せを必要とする任意の物品などの別の物品に組み込むことができる。本明細書に開示されるガラス物品のいずれかを組み込む例示的な物品が図2A及び2Bに示されている。具体的には、図2A及び2Bは、前面204、背面206、及び側面208を有する筐体202を含む消費者向け電子製品200を示している。筐体の少なくとも部分的に内部又は完全に内部にある電気部品は、少なくともコントローラ220、メモリ222、及び筐体202の前面204にあるか又は隣接するディスプレイ210を含む。ディスプレイ210は、例えば、発光ダイオード(LED)ディスプレイ又は有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイでありうる。
【0129】
カバー基板212は、ディスプレイ210上に配置されるように、筐体202の前面204又はその上に配置することができる。カバー基板212は、本明細書に開示されるガラス物品のいずれかを含んでよく、「カバーガラス」と呼ぶことができる。カバー基板212は、ディスプレイ210、及び消費者向け電子製品200の他の構成要素(例えば、コントローラ220及びメモリ222)を損傷から保護するのに役立てることができる。幾つかの実施形態では、カバー基板212は、接着剤でディスプレイ210に結合されうる。幾つかの実施形態では、カバー基板212は、筐体202の前面204の全部又は一部を画成しうる。幾つかの実施形態では、カバー基板212は、筐体202の前面204、及び筐体202の側面208の全部又は一部を画成しうる。幾つかの実施形態では、消費者向け電子製品200は、筐体202の背面206の全部又は一部を画成するカバー基板を含みうる。
【実施例
【0130】
以下の実施例によって実施形態がさらに明らかになるであろう。これらの実施例は、上記の実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0131】
以下の表1~3に列挙される成分を有するガラス組成物を従来のガラス成形法で調製した。表1~3において、すべての成分はモル%単位であり、ガラス組成物のK1C(MPa*m1/2)、ポアソン比(ν)、ヤング率(E)、及び剪断弾性率(G)は、本明細書に開示された方法に従って測定した。
【0132】
表4~6は、表1~3に示される試料1~18の各々のイオン交換条件及び特性を含む。表1~3において、「VFT」はVogel-Fulcher-Tammann方程式、「HTV」は「高温粘度曲線」、「BBV」は「ビーム曲げ粘度計」、「PPV」は「平行平板粘度計」を表す。「Pt」は、ガラスと白金の界面での液相線温度を示す。ガラス組成物の液相線温度は、「勾配炉法によるガラスの液相温度の測定のための標準的技法(Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method)」と題された、ASTM C829に準拠して測定した。歪み点、徐冷点、及び軟化点は、ASTM C598-93(「ビーム曲げを使用したガラスのアニーリングポイントと応力ポイントの標準試験方法(Standard Test Method for Annealing Point and Strain Point of Glass by Beam Bending)」)に準拠して測定した。表1に報告される、589.3ナノメートルにおける屈折率(RI)の値は、次の方法を使用して測定した。屈折率測定は、ナトリウムアークランプを備えたBausch&Lomb Low Range Precision Refractometerを使用して、ナトリウムD波長(589.3nm)で実施した。Bausch & Lomb Precision Refractometerは、臨界角を測定することによって材料の屈折率を測定する。使用した機器は、絶対物理標準、又は米国国立標準技術研究所(NIST)に起源を発する標準を使用して、ASTMの推奨手順に従って定期的に較正した。
【0133】
【表1-1】
【0134】
【表1-2】
【0135】
【表1-3】
【0136】
【表2-1】
【0137】
【表2-2】
【0138】
【表2-3】
【0139】
【表3-1】
【0140】
【表3-2】
【0141】
【表3-3】
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【0145】
さまざまな実施形態を本明細書で説明してきたが、それらは、例として提示されているのであって、限定ではない。適合及び修正が、本明細書に提示される教示及びガイダンスに基づいて、開示された実施形態の等価物の意味及び範囲内にあることが意図されていることは、明らかであるはずである。したがって、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される実施形態に対して形態及び詳細にさまざまな変更がなされうることは、当業者にとって明らかであろう。本明細書に提示される実施形態の要素は、必ずしも相互に排他的ではないが、当業者に理解されるように、さまざまな状況を満たすために入れ替えることができる。
【0146】
本開示の実施形態は、同様の参照番号が同一又は機能的に類似の要素を示すために使用される、添付の図面に示されるように、その実施形態を参照して本明細書で詳細に説明される。「一実施形態」、「ある実施形態」、「例示的な実施形態」、「幾つかの実施形態」、「ある特定の実施形態」などへの言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含みうることを示すが、すべての実施形態が必ずしも特定の機能、構造、又は特性を含むとは限らない。さらには、このような句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらには、特定の特徴、構造、又は特性が一実施形態に関連して説明される場合、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、他の実施形態に関連してこのような特徴、構造、又は特性に影響を与えることは当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0147】
例は、本開示の例示であって、限定するものではない。当分野で通常遭遇するさまざまな条件及びパラメータの他の適切な修正及び適合は、当業者にとって明らかであり、本開示の精神及び範囲内にある。
【0148】
要素又は構成要素を説明する不定冠詞「a」及び「an」は、これらの要素又は構成要素のうちの1つ又は少なくとも1つが存在することを意味する。これらの冠詞は、通常、被修飾名詞が単数名詞であることを示すために用いられるが、本明細書で使用されるように、冠詞「a」及び「an」は、特定の事例において別段の定めがない限り、複数形も含む。同様に、本明細書で使用される定冠詞「the」は、特定の場合に別段の定めがない限り、被修飾名詞が単数形又は複数形でありうることも意味する。
【0149】
特許請求の範囲で用いられる場合、「含む」は、オープンエンドの移行句である。「含む」という移行句に続く要素のリストは非排他的なリストであり、その結果、そのリストに具体的に挙げられているもの以外の要素も存在しうる。特許請求の範囲で用いられる場合、「実質的に~からなる」又は「実質的に~で構成される」は、材料の組成を特定の材料並びに材料の基本的特性及び新規特性に実質的に影響を及ぼさない材料に限定する。特許請求の範囲で用いられる場合、「~からなる」又は「~で全体的に構成される」は、材料の組成を指定された材料に限定し、指定されていない材料を除外する。
【0150】
上限値と下限値を含む数値の範囲が本明細書に記載されている場合、特定の状況で特に明記されていない限り、その範囲は、その端点、並びにその範囲内のすべての整数及び分数を含むことが意図されている。特許請求の範囲が、範囲を定義するときに記載される特定の値に限定されることは、意図されていない。さらには、量、濃度、又は他の値若しくはパラメータが、範囲、1つ以上の好ましい範囲、又は上位の好ましい値と下位の好ましい値のリストとして与えられる場合、これは、このような対が別々に開示されているかどうかに関係なく、任意の上限値又は好ましい値と任意の下限値又は好ましい値の任意の対から形成されるすべての範囲を具体的に開示するものとして理解されるべきである。最後に、範囲の値又は端点を説明する際に「約」という用語が用いられる場合、本開示は、言及される特定の値又は端点を含むものと理解されたい。範囲の数値又は端点が「約」を記載しているかどうかにかかわらず、範囲の数値又は端点は、「約」によって修飾されたものと、修飾されていないもの2つの実施形態を含むことが意図されている。
【0151】
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の量及び特性が正確ではなく、かつ、正確である必要はなく、許容誤差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、並びに当業者に知られている他の要因を反映して、必要に応じて近似及び/又はより大きく又はより小さくてもよいことを意味する。
【0152】
本明細書で用いられる用語「実質的な」、「実質的に」、及びそれらの変形は、記載された特徴が値又は説明に等しいか又はほぼ等しいことを示すことが意図されている。例えば、「実質的に平坦な」表面は、平坦な又はほぼ平坦な表面を示すことが意図されている。さらには、「実質的に」は、2つの値が等しいか、又はほぼ等しいことを示すことが意図されている。幾つかの実施形態では、「実質的に」とは、互いの約10%以内、例えば、互いの約5%以内、又は互いの約2%以内などの値を意味しうる。
【0153】
(一又は複数の)本実施形態について、特定の機能及びそれらの関係の実装形態を示す機能的ビルディングブロックを用いて上で説明してきた。これらの機能的ビルディングブロックの境界は、説明の便宜上、本明細書では恣意的に定義されている。指定された機能とその関係が適切に実行される限り、代替的な境界を定義することができる。
【0154】
本明細書で用いられる表現又は専門用語は、説明を目的としているのであって、限定ではないものと理解されたい。本開示の幅及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物に従って定義されるべきである。
【0155】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0156】
実施形態1
ガラス物品であって、
50モル%~65モル%のSiO
13モル%~20モル%のAl
6モル%以上のB
0モル%~5モル%のMgO;
0モル%~2モル%のCaO;
8モル%~14モル%のLiO;
0モル%~4モル%のNaO;及び
0モル%~1モル%のK
を含み、ここで、
Alモル%>RO+R’O-3モル%であり、
Oはアルカリ金属酸化物の総モル%であり、かつ
R’Oはアルカリ土類金属酸化物の総モル%である、
ガラス物品。
【0157】
実施形態2
Alモル%>RO+R’Oである、実施形態1に記載のガラス物品。
【0158】
実施形態3
O+R’O+4モル%>Alモル%>RO+R’O-3モル%である、実施形態1又は実施形態2に記載のガラス物品。
【0159】
実施形態4
前記Bが三方晶酸化ホウ素を含む、実施形態1から3のいずれかに記載のガラス物品。
【0160】
実施形態5
前記Bの50モル%以上が三方晶酸化ホウ素で構成される、実施形態4に記載のガラス物品。
【0161】
実施形態6
前記Bの75モル%以上が三方晶酸化ホウ素で構成される、実施形態4に記載のガラス物品。
【0162】
実施形態7
前記Bの90モル%以上が三方晶酸化ホウ素で構成される、実施形態4に記載のガラス物品。
【0163】
実施形態8
8モル%以上のBを含む、実施形態1から7のいずれかに記載のガラス物品。
【0164】
実施形態9
8モル%~12モル%のBを含む、実施形態1から8のいずれかに記載のガラス物品。
【0165】
実施形態10
前記アルカリ金属酸化物が、LiO、NaO、及びKOからなる、実施形態1から9のいずれかに記載のガラス物品。
【0166】
実施形態11
前記アルカリ土類金属酸化物がMgO及びCaOからなる、実施形態1から10のいずれかに記載のガラス物品。
【0167】
実施形態12
前記ガラス物品が、ZrO、Ta、TiO、HFO、La、及びYを実質的に含まない、実施形態1から11のいずれかに記載のガラス物品。
【0168】
実施形態13
前記ガラス物品が、ZrO、Ta、TiO、HFO、La、及びYを含まない、実施形態1から11のいずれかに記載のガラス物品。
【0169】
実施形態14
0モル%~2モル%の範囲のTiOをさらに含む、実施形態1から13のいずれかに記載のガラス物品。
【0170】
実施形態15
0モル%~2モル%の範囲のZrOをさらに含む、実施形態1から14のいずれかに記載のガラス物品。
【0171】
実施形態16
0モル%~2モル%の範囲のSnOをさらに含む、実施形態1から15のいずれかに記載のガラス物品。
【0172】
実施形態17
0モル%~0.1モル%の範囲のFeをさらに含む、実施形態1から16のいずれかに記載のガラス物品。
【0173】
実施形態18
Alの量+Bの量が20モル%以上である、実施形態1から17のいずれかに記載のガラス物品。
【0174】
実施形態19
Alの量+Bの量が24モル%以上である、実施形態1から17のいずれかに記載のガラス物品。
【0175】
実施形態20
O<15モル%である、実施形態1から19のいずれかに記載のガラス物品。
【0176】
実施形態21
3モル%未満のNaOを含む、実施形態1から20のいずれかに記載のガラス物品。
【0177】
実施形態22
0.75MPa*m1/2以上のK1C値を含む、実施形態1から21のいずれかに記載のガラス物品。
【0178】
実施形態23
1000ポアズ以上の液相線粘度を含む、実施形態1から22のいずれかに記載のガラス物品。
【0179】
実施形態24
前記ガラス物品の表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域を含む、実施形態1から23のいずれかに記載のガラス物品。
【0180】
実施形態25
前記圧縮応力領域が400MPa以上の圧縮応力を含む、実施形態24に記載のガラス物品。
【0181】
実施形態26
前記圧縮深さが、前記ガラス物品の厚さの15%以上である、実施形態24又は実施形態25に記載のガラス物品。
【0182】
実施形態27
前記圧縮応力領域が、前記ガラス物品の厚さ全体の2つ以上の点で異なる金属酸化物の濃度を含む、実施形態24から26のいずれかに記載のガラス物品。
【0183】
実施形態28
表1、2、及び3の組成によって定義される凸包上又は凸包内にあるガラス組成物を含む、実施形態1から27のいずれかに記載のガラス物品。
【0184】
実施形態29
ガラス物品であって、
SiO
Al
;及び
Li
を含み、ここで、
Alモル%>RO+R’O-3モル%であり、
Oがアルカリ金属酸化物の総モル%であり、
R’Oがアルカリ土類金属酸化物の総モル%であり、かつ
前記ガラス物品が0.75MPa*m1/2以上のK1C値を含む、
ガラス物品。
【0185】
実施形態30
Alモル%>RO+R’Oである、実施形態29に記載のガラス物品。
【0186】
実施形態31
8モル%以上のBを含む、実施形態29又は実施形態30に記載のガラス物品。
【0187】
実施形態32
6モル%~16モル%のBを含む、実施形態29又は実施形態30に記載のガラス物品。
【0188】
実施形態33
前記Bが三方晶酸化ホウ素を含む、実施形態29から32のいずれかに記載のガラス物品。
【0189】
実施形態34
前記Bの90モル%以上が三方晶酸化ホウ素で構成される、実施形態33に記載のガラス物品。
【0190】
実施形態35
Alの量+Bの量が20モル%以上である、実施形態29から34のいずれかに記載のガラス物品。
【0191】
実施形態36
前記アルカリ金属酸化物が、LiO、NaO、及びKOからなり、
前記アルカリ土類金属酸化物がMgO及びCaOからなる、
実施形態29から35のいずれかに記載のガラス物品。
【0192】
実施形態37
前記ガラス物品の表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域を含み、該圧縮応力領域が、
前記ガラス物品の厚さ全体の2つ以上の点で異なる金属酸化物の濃度、及び
400MPa以上の圧縮応力
を含む、実施形態29から36のいずれかに記載のガラス物品。
【0193】
実施形態38
消費者向け電子製品であって、
前面、背面、及び側面を有する筐体;
少なくとも部分的に前記筐体内に設けられた電気部品であって、前記電気部品が少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを備えており、前記ディスプレイが前記筐体の前記前面又はそれに隣接して設けられている、電気部品;並びに
前記ディスプレイの上に配置されたカバーガラス
を備えており、
ここで、前記筐体の一部又は前記カバーガラスの一部のうちの少なくとも一方が、
50モル%~65モル%のSiO
13モル%~20モル%のAl
6モル%以上のB
0モル%~5モル%のMgO;
0モル%~2モル%のCaO;
8モル%~14モル%のLiO;
0モル%~4モル%のNaO;及び
0モル%~1モル%のK
を含むカバーガラスを含み、ここで、
Alモル%>RO+R’O-3モル%であり、
Oはアルカリ金属酸化物の総モル%であり、かつ
R’Oはアルカリ土類金属酸化物の総モル%である、
消費者向け電子製品。
【0194】
実施形態39
8モル%以上のBを含む、実施形態38に記載の消費者向け電子製品。
【0195】
実施形態40
6モル%~16モル%のBを含む、実施形態38に記載の消費者向け電子製品。
【符号の説明】
【0196】
100 ガラス物品
110 第1の表面
112 第2の表面
120 第1の圧縮応力領域
122 第2の圧縮応力領域
130 中央領域
200 消費者向け電子製品
202 筐体
204 前面
206 背面
208 側面
210 ディスプレイ
212 カバー基板
220 コントローラ
222 メモリ
図1
図2A
図2B
【国際調査報告】