(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】鉄道車両の車輪とレールの間の粘着力値を判別するためのシステム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/10 20060101AFI20230120BHJP
B61K 13/00 20060101ALI20230120BHJP
B61F 13/00 20060101ALI20230120BHJP
B60T 8/172 20060101ALI20230120BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
G01M17/10
B61K13/00 Z
B61F13/00
B60T8/172 B
B60T8/171 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527683
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 IB2020060951
(87)【国際公開番号】W WO2021100003
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】102019000021951
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】フレア, マッテオ
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA17
3D246GA25
3D246GB18
3D246HA35A
3D246HA64A
3D246HA72A
3D246HB02B
3D246HC13
(57)【要約】
鉄道車両(RV)用の車輪(W)とレール(R)の間の粘着力値を判別するためのシステムは、レール(R)から光学情報を取得するよう設けられた光学情報取得手段(3)と、少なくとも学習段階において、取得した光学情報を記憶し、さらに、記憶されている光学情報と光学情報の取得時に測定された関連のある車輪(W)とレール(R)の間の実際の粘着力値とを関連付けるよう設けられたデータベース(5)と、取得された現在の光学情報と、事前にデータベース(5)に記憶されている光学情報との比較に基づき、車輪(W)とレールの間の現在の粘着力値を判別するよう設けられた制御部(7)と、を含んでいる。制御部(7)は、取得された光学情報に関連付けられている車輪(W)とレール(R)の間の現在の粘着力値が、データベース(5)に記憶されている光学情報の中で、取得された現在の光学情報と、最も高い類似度を有する光学情報に関連付けられている粘着力値に対応していること判別する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両(RV)用の車輪(W)とレール(R)との間の粘着力値を判別するためのシステムであって、
前記レール(R)から光学情報を取得するよう設けられた光学情報取得手段(3)と、
少なくとも学習段階において、取得された前記光学情報を記憶し、さらに、取得された前記光学情報と、前記光学情報取得手段(3)による前記光学情報の取得時に実質的に測定された前記車輪(W)と前記レール(R)の間のそれぞれの実際の粘着力値とを、関連付けるよう設けられたデータベース(5)と、
取得された現在の光学情報と、前記データベース(5)に事前に記憶されている前記光学情報との間の比較に基づいて、前記車輪(W)と前記レール(R)の間の現在の粘着力値を判別するよう設けられた制御部(7)と、を含み、
前記制御部(7)は、前記光学情報取得手段(3)によって取得された前記現在の光学情報に関連付けられている前記車輪(W)と前記レール(R)の間の前記現在の粘着力値が、前記データベース(5)に記憶されている前記光学情報の中で、取得された前記現在の光学情報と最も高い類似度を有する前記光学情報に関連付けられている前記粘着力値と対応していることを判別するよう設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記光学情報取得手段(3)は、視覚センサーである請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記視覚センサーは、ビデオカメラまたはカメラを備えている請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記光学情報取得手段(3)は、反射型の光学センサーである請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
反射型の前記光学情報取得手段(3)は、前記レール(R)に対して光信号を発信し、さらに、前記レール(R)によって反射された、前記レール(R)の表面の状態を示す前記光信号の量、および/または、分布を検出するよう設けられている請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御部(7)は、人工知能および/または機械学習に基づく画像認識アルゴリズムを介して、前記データベース(5)に記憶されている前記光学情報の中で、いずれの前記光学情報が、前記現在の光学情報と最も高い前記類似度を有しているかを判別するよう構成されている請求項1ないし5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記データベース(5)は、前記鉄道車両(RV)から離れた遠隔地にある請求項1ないし6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記光学情報取得手段(3)は前記鉄道車両(RV)の進行方向(V)従って、前記鉄道車両(RV)の第1の車軸(A1)の前方に位置している前記レール(R)の前記光学情報を取得するよう、前記鉄道車両(RV)に設けられている請求項1ないし7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記データベース(5)は、それぞれ既知の粘着力値に関連付けられている既知の光学情報の所定量を記憶するよう設けられており、前記既知の光学情報の所定量と前記既知の粘着力値との関連付けの正確性は、事前に検証されている請求項1ないし8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記車輪(W)と前記レール(R)の間の前記実際の粘着力値は、ブレーキ段階中の前記鉄道車両(RV)の車軸の挙動を分析することにより測定される請求項1ないし9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記鉄道車両(RV)の前記車軸は、前記車軸が滑り始めるまで、または、所定の限界値までブレーキが掛けられる請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、鉄道車両の分野に関するものであり、より具体的には、鉄道車両の車輪とレールの間の粘着力値(摩擦力値)を判別するためのシステム(system for determining a wheel-rail adhesion value for a railway vehicle)に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪とレールの間の粘着力(adhesion)を測定するための従来技術は、基本的に、視覚センサー(vision sensor)または反射型の光学センサー(reflection optical sensor)に基づく「間接的」ソリューション、または、粘着力を推測するための専用のブレーキ制御(brake control)または牽引制御(traction control)を実施する(implement)「直接的」ソリューションに基づいている。この第2のカテゴリ(「直接的」ソリューション)は、例えば、1つ以上の車軸(axle)に既知のブレーキ力を加え、回転速度に関する車軸の応答を検出するソリューションを含む。ブレーキ力と角加速度(angular acceleration)を用いて、車輪とレールの間の接触において利用可能な粘着力を推測することは容易である。
【0003】
しかしながら、不利なことに、視覚または反射に基づく光学的ソリューションは、複雑な較正手順(calibration procedure)を介して、適切に事前較正(pre-calibrated)されなければならない。それにもかかわらず、視覚または反射に基づく光学的ソリューションは、システムが動作する視界および照明の環境条件に影響されやすいため、基本的に使用されない。
【0004】
一方、直接的な粘着力測定には信頼性があるが、車軸にブレーキトルク(braking torque)が加えられた場合にのみ実行することができる。したがって、この測定は、例えば、既知のブレーキ力を周期的に加え、角加速度に関して車軸の応答を検出する専用のブレーキ制御が実施される場合を除いて、ブレーキ段階中にのみ実行(performed)され得る。専用の制御ソリューションは、所望の時間・空間分解能(spatial-temporal resolution)で粘着力を測定することを可能にするが、不利なことに、車両走行のために不要な、鉄道車両の少なくとも1つの車軸に対するブレーキ力を、定期的に加えることが必要となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、例えば、人工知能技術に基づいて、システムの使用中に自己較正(self-calibrating)が可能な、鉄道車両の車輪とレールの間の粘着力値を判別するためのシステムを提供することである。鉄道車両の車輪とレールの間の粘着力値を判別するためのシステムは、直接的な粘着力の測定に基づき、光学センサーからの結果を較正する。前述のシステムにより、システムの一連の処理、すなわち、直接的な粘着力の測定の結果を蓄積するため、光学センサーに基づく間接測定の解釈(interpretation of indirect measurements)の信頼性がますます高まる。適切に較正されたシステムによって得られた間接的な測定の結果に対する信頼性は、車輪とレールの間の粘着力の信頼のある連続測定を可能にする。同時に、適切に較正されたシステムによって得られた間接的な測定の結果に対する信頼性を高めることにより、粘着力測定のためだけに専用のブレーキを掛ける必要性を、低減または排除することができる。
【0006】
本発明の1つの態様によれば、上記目的および他の目的、並びに利点は、請求項1において規定される特徴を有する、鉄道車両の車輪とレールの間の粘着力値を判別するためのシステムによって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において規定されており、その内容は、本明細書の重要な部分として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
次に、以下の添付図面を参照して、本発明に係る、鉄道車両の車輪とレールの間の粘着力値を判別するためのシステムの、いくつかの好ましい実施形態の機能的特徴および構造的特徴を詳述する。
【
図1】
図1は、鉄道車両の車輪とレールの間の粘着力値を判別するためのシステムの一実施形態を示している。
【
図2】
図2は、鉄道車両の車輪とレールの間の粘着力値を判別するためのシステムのさらなる実施形態を示している。
【
図3A】
図3Aは、車軸にブレーキ力を加えることによる直接的な粘着力測定の結果の1つの例を示している。
【
図3B】
図3Bは、車軸にブレーキ力を加えることによる直接的な粘着力測定の結果のさらなる例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の複数の実施形態を詳述する前に、本発明は、その適用において、以下の説明で記述、または図に示されるコンポーネントの構造の詳細および構成に限定されないということが明らかにされるべきである。本発明は他の実施形態をとることができ、本発明を、様々に異なる方法で、実際に実施または構築し得る。また、表現および専門用語は、説明を目的とするものであって、限定として解釈されるものではないことも理解されるべきである。「備える(include)」、「含む(comprise)」、またはそれらのバリエーションは、以下に記述される要素やそれらの均等物、並びに、それらの追加要素およびその均等物を含むことを意味する。
【0009】
最初に
図1を参照する。
図1には、鉄道車両RV用の車輪WとレールRとの間の粘着力値を判別するシステムが示されている。
【0010】
このシステムは、レールRから光学情報を取得するよう設けられている光学情報取得手段3と、少なくとも学習段階において、光学情報を記憶し、さらに、その記憶されている光学情報と、光学情報取得手段3による光学情報の取得時に実質的に測定された車輪WとレールRとの間のそれぞれの実際の粘着力値とを関連付けるよう設けられているデータベース5と、を含んでいる。データベース5は、最初の学習段階の直後の使用においても、光学情報を記憶し、さらに、光学情報取得手段3による光学情報の取得時に実質的に測定された車輪WとレールRとの間のそれぞれの実際の粘着力値と関連付けるよう設けられていてもよいことは明らかである。これにより、そのシステムを使用中であっても、システムの学習(training)を継続し得る。
【0011】
換言すれば、光学情報は、データベース5において、車輪WとレールRとの間のそれぞれの実際の粘着力値に応じて分類(cataloged)されてもよい。
【0012】
車輪WとレールRとの間の測定される実際の粘着力値は、鉄道車両RVの車軸にブレーキを掛け、その車軸の挙動を解析することによって測定することができる。1つの車軸にブレーキを掛けたとしても、それは鉄道車両RVの動力学に影響を与えないので、1つの車軸に対してのみブレーキを掛けることは、鉄道車両RVの挙動には影響を与えない。このようにして、鉄道車両RVの速度、および、鉄道車両RVに乗車している乗客の快適性にマイナスの影響を及ぼすことなく、車輪WとレールRの間の実際の粘着力値を測定することが可能となる。好ましくは、鉄道車両RVの車軸が滑り(skid)始めるまで、または所定の限界値までブレーキが掛けられる。
【0013】
図3Aおよび
図3Bには、車軸に(専用の)ブレーキ力302を加えた場合の、直接的な粘着力測定の2つの例が示されている。
【0014】
グラフにおいて、300は、議論の対象となっている例示的な鉄道車両RVによって要求され得る、車軸レベルにおける最大ブレーキ力を示している。典型的に、最大ブレーキ力300は、非常ブレーキ中に加えられるブレーキ力である。
【0015】
直接的な粘着力測定のための手順は、1つ以上の車軸にブレーキ力302を加えることを含む。ブレーキ力302は、上昇している(グラフの)傾斜(increasing ramp)を有している。
図3Aに示すように最大ブレーキ力300に達した場合、または、本件車軸が滑り始めた場合、すなわち、
図3Bに示すように車軸の接線速度(tangential speed)304が車両の走行速度306(travel speed)から逸脱した場合、ブレーキ力302をゼロに戻し、この結果、ブレーキ力302のグラフの上昇傾斜が中断される。
【0016】
図3Aの場合、車輪WとレールRの間の粘着力を定量化することは不可能であるが、車輪WとレールRの間の粘着力は、最大のブレーキ力を加えるために(例えば、非常ブレーキを掛けるために)十分であると言うことができる。典型的には、非常ブレーキによって係合(engaged)される粘着力が約0.15である。したがって、
図3Aの場合には、例えば、車輪WとレールRの間の粘着力が0.15よりも大きいと言うことができる。
【0017】
いずれにせよ、非常ブレーキに必要な粘着力を超える粘着力の測定は、特に重要ではない。
【0018】
代替的に、
図3Bの場合、車輪WとレールRの間の粘着力は、最大ブレーキ力300を加えるために十分な大きさではない。破線で示されている、ある一定のブレーキ力の値303に達すると、車軸は滑り始める。この時点で、ブレーキ力302は直ちにゼロにリセットされ、車軸は、車両の速度を回復する。
【0019】
粘着力は、以下の関係式を用いて計算し得る。
ここで、
μ:車輪WとレールRの間の粘着力;
F
brake:車軸に加えられるブレーキ力;
R:車輪Wの半径;
J:車軸の慣性;
ω:車軸の角加速度;
M:車軸上における質量計量(mass weighing);
G:重力加速度.
【0020】
図1に見られるように、データベース5は、鉄道車両RV上で取得されてもよい。または、
図2に見られるように、データベース5は、鉄道車両RVから離れた遠隔地に設けられてもよい。データベース5が遠隔地にある場合、システムは、適切な無線通信を介してデータベース5と通信することができる。
【0021】
本発明に係るシステムは、取得された現在の光学情報と、データベース5に事前に記憶されている光学情報との間の比較に基づいて、車輪WとレールRの間の現在の粘着力値を判別するよう設けられた制御部7をさらに含んでいる。
【0022】
有利には、判別された車輪WとレールRの間の現在の粘着力値を考慮して、キャビン内に設けられた適切な人間と機械のインターフェースを介して、運転手に提案を提供することが可能となる。代替的、または、追加的に、判別された車輪WとレールRの間の現在の粘着力値を考慮して、鉄道車両RVのブレーキシステム、鉄道車両RVのWSP(Wheel Slide Protection)システム、および/または、鉄道車両RVの加速度レベルを自動的に制御することが可能となる。
【0023】
制御部7は、例えば、PLC、マイクロプロセッサー、マイクロコントローラー、または、FPGAであってもよい。
【0024】
図1および
図2から分かるように、光学情報取得手段3は、鉄道車両RVの進行方向Vに従い、鉄道車両RVの第1の車軸A1の前方に位置しているレールRに関する光学情報を取得するよう、鉄道車両RVに設けてもよい。
【0025】
このような構成により、鉄道車両RVの車輪Wの通過に妨害されることなく、レールRに関する光学情報を得ることが可能となる。鉄道車両RVの車輪Wの通過は、レールRを清掃し、またはいずれにしても、レールRの状態を変更する傾向があるであろう。
【0026】
制御部7は、光学情報取得手段3によって取得された現在の光学情報に関連付けられている車輪WとレールRの間の現在の粘着力値が、データベース5に記憶されている光学情報の中で、現在の光学情報に対して、より高い類似度(degree of similarity)を有する光学情報に関連付けられている粘着力値と、対応していることを判別するよう設けられている。
【0027】
この類似度は、ディープラーニングアルゴリズム(deep learning algorithms)を介して制御部7によって判別されてもよいことは明らかである。
【0028】
「ディープラーニング」とは、異なる表現のレベル(different levels of representation)に基づく機械学習および人工知能の研究分野を指す。ディープラーニングは複数の異なる層で構築された人工ニューラルネットワーク(artificial neural networks)に基づく一連の技術である。人工ニューラルネットワークにおいて、各層は、情報がより完全に処理されるよう、後続の層のための値を計算する。
【0029】
画像認識は、「コンピュータビジョン(computer vision)」と呼ばれるコンピュータサイエンスの1つの分野である。
【0030】
画像認識のためのアルゴリズムは、類似度を規定するために用いられてもよい。広義に、自動的に画像を認識するということは、入力画像を受け取り、そこから様々な情報を抽出することができるアルゴリズムを使用するということを意味する。抽出された情報はいくつかのレベルに配置されてもよい。すなわち、いくつかのレベルとは、低レベル(low level)(グレー、または、その他の色の様々な濃淡の存在に関する統計、輝度の急激な変化に関する統計等)、中間レベル(intermediate level)(画像の領域および領域間の関係に関連する特性)、または高レベル(high level)(意味的な重要性(semantic significance)を有するオブジェクトの判別)である。低レベル、中間レベル、または高レベルの特性のみに基づいていても、2つの画像を類似するものとして認識することが可能である。
【0031】
好ましくは、光学情報取得手段3は、例えば、ビデオカメラ、または、カメラのような視覚センサー、または、画像取得センサーである。
【0032】
代替的には、光学情報取得手段3は、反射型の光学センサーであってもよい。この場合、反射型の光学センサーは、レールRに対して光信号を発信し、レールRから反射された、レールRの表面の状態を示している光信号の量、および/または、分布を検出するよう設けられる。
【0033】
システムを較正するため、データベース5は、既知の光学情報の所定量を事前に記憶(pre-store)していてもよい。この既知の光学情報の所定量は、それぞれ、既知の粘着値に関連付けられており、既知の光学情報の所定量と既知の粘着量の関連付けの正確性は、事前に検証されている。そして、記憶された光学情報は、鉄道車両RVの通常運転中に、これ以降も強化され(enhanced)、更新される。例えば、光学情報は、光学情報取得手段3によって、所定の間隔で取得されてもよいし、粘着状態の悪化(degraded adhesion condition)が検知された際に取得されてもよい。
【0034】
次に、実施例を挙げて説明をする。光学情報取得手段3を用いてデータベース5にデータを追加する(populating)第1段階において、判別された光学情報量が得られる。判別された光学情報量は、光学情報取得手段3からそれぞれの光学情報を取得する瞬間に実質的に測定され、実際の車輪WとレールRの間のそれぞれの実際の粘着力値に関連付けられている。第2段階において、光学情報取得手段3は、1つ以上の光学情報の追加項目を獲得(pick up)する。この光学情報の追加項目は、追加の光学情報とデータベース5に事前に記憶されている光学情報とを比較して、車輪WとレールRの間の現在の粘着力値を判別するために使用される。具体的には、車輪WとレールRの間の現在の粘着力値が、データベース5に記憶されている光学情報の中で、追加された現在の光学情報と、より類似度が高い光学情報に関連付けられている粘着力値に対応していることが判別される。
【0035】
したがって、本発明により達成される利点は、鉄道車両RVの車輪WとレールRの間の粘着力値を判別するシステムを提供できるということである。このシステムの自己較正は、一連の過去の結果を記憶するので、ますます信頼性の高い方法で自己較正することができる。適切に較正されたシステムにより、光学センサーに基づく間接的な測定の解釈は、より高い信頼を得ることができる。したがって、粘着力の測定のみに用いられる専用のブレーキを掛ける必要性の低減または排除を可能にする。
【0036】
本発明に係る鉄道車両の車輪とレールの間の粘着力値を判別するためのシステムの様々な態様および実施形態を詳述した。各実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わせることができることが理解される。さらに、本発明は、詳述された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内で変更されてもよい。
【国際調査報告】