(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/16 20060101AFI20230120BHJP
A61B 3/107 20060101ALI20230120BHJP
A61B 3/10 20060101ALN20230120BHJP
【FI】
A61B3/16
A61B3/107
A61B3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528935
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 FI2020050786
(87)【国際公開番号】W WO2021105555
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514056252
【氏名又は名称】アイケア フィンランド オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】サルコラ ミカ
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA20
4C316AA25
4C316FA11
4C316FZ03
(57)【要約】
眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステム(100)が開示されている。本システムは、ハウジング(102)内に着脱可能に配置されたプローブ(104)であって、前記眼の表面(114)に予め定められた衝突属性で衝突するように動作可能なプローブと、前記プローブを前記ハウジング内に維持し、前記プローブを前記眼の前記表面に向けて放ち、前記プローブを前記ハウジング内へと後退させるように動作可能な少なくとも1つのコイル(106)と、前記プローブに振動を発生させるように動作可能なプローブ振動手段(108)と、前記眼の前記表面への衝突時に前記プローブの振動の変化を測定するための測定手段(110)と、前記眼の前記少なくとも1つのパラメータを求めるために、前記プローブの振動の前記測定された変化を使用するように構成されたコントローラ(112)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステム(100)であって、
・ ハウジング(102)内に着脱可能に配置されたプローブ(104)であって、前記眼の表面(114)に予め定められた衝突属性で衝突するように動作可能なプローブと、
・ 前記プローブを前記ハウジング内に維持し、前記プローブを前記眼の前記表面に向けて放ち、前記プローブを前記ハウジング内へと後退させるように動作可能な少なくとも1つのコイル(106)と、
・ 前記プローブに振動を発生させるように動作可能なプローブ振動手段(108)と、
・ 前記眼の前記表面への衝突時に前記プローブの振動の変化を測定するための測定手段(110)と、
・ 前記眼の前記少なくとも1つのパラメータを求めるために、前記プローブの振動の前記測定された変化を使用するように構成されたコントローラ(112)と、
を備えるシステム(100)。
【請求項2】
前記プローブ(104)の前記発生させた振動の周波数が、0.5kHzから100MHzの範囲にある、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記プローブの前記発生させた振動は、連続振動、定在波振動、パルス振動、2つ以上の振動周波数を含む振動のうちの少なくとも1つである、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記眼の前記少なくとも1つのパラメータは、前記眼の角膜の厚さ、眼球内の圧力、又は角膜の水分量である、請求項1から3のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記プローブ振動手段(108)は、磁歪発振器、圧電発振器、トランスデューサ、増幅器、マルチバイブレータのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記プローブ(104)の前記衝突属性は、前記プローブの速度、前記プローブの運動エネルギーのうちの少なくとも1つである、請求項1から5のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記測定手段(110)は、トランスデューサ、速度センサー、周波数センサーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から6のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項8】
眼の少なくとも1つのパラメータを測定する方法であって、
・ 前記眼の表面(114)に予め定められた衝突属性で衝突するようにプローブ(104)を配置することと、
・ 前記眼の前記表面に予め定められた振動で衝突するように前記プローブ(104)を配置することと、
・ 前記眼の前記表面への衝突の間に、前記プローブの衝突属性及び前記プローブの振動を測定することと、
・ 前記予め定められた衝突属性、前記予め定められた振動、前記測定された衝突属性、及び前記測定された振動のうちの少なくとも1つを使用して、前記眼の前記表面への衝突時の前記プローブの振動の変化を計算することと、
・ 前記プローブの振動の前記変化を使用して、前記眼の前記少なくとも1つのパラメータを求めることと、
を含む方法。
【請求項9】
前記プローブ(104)の前記発生させた振動の周波数が、0.5kHzから100MHzの範囲にある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プローブの前記発生させた振動は、連続振動、定在波振動、パルス振動、2つ以上の振動周波数を含む振動のうちの少なくとも1つである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記眼の前記少なくとも1つのパラメータは、前記眼の角膜の厚さ、眼球内の圧力、角膜の水分量のいずれか一つである、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記プローブ(104)の前記衝突属性は、前記プローブの速度、前記プローブの運動エネルギーのうちの少なくとも1つである、請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療機器に関し、より具体的には、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するための医療機器に関する。さらに、本開示は、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するための方法に関する。
【背景】
【0002】
眼病の世界的な有病率は10億人を超えると推定されている。具体的には、眼の何らかのパラメータの異常を正確に診断することにより、眼病の治療や予防を行うことができる。例えば、緑内障などの疾患は、眼球内の液圧を定期的に調べることで診断や治療を行うことができる。眼の角膜の厚さは緑内障の有病率に関係し、その他いくつかの眼の疾患の指標ともなる。緑内障によって、眼球内の液圧が高いために眼の視神経が本質的に劣化し、多くの場合、永久的な視力喪失を引き起こすことが理解されるであろう。そのため、眼の異常を見つけるには、定期的に眼のパラメータを調べることが不可欠である。
【0003】
従来、眼のパラメータを測定するために、眼圧計やパキメータなどの機器が採用されている。このうち、眼球内の液圧、すなわち眼圧(Intraocular Pressure:IOP)を測定するために使用されるのが眼圧計である。眼球内の液圧を測定することにより、検査者が例えば緑内障の危険性を判断することができる。さらに、眼の角膜厚を測定するために使用されるのがパキメータである。角膜パキメータは、屈折矯正手術前、角膜輪部減張切開術(Limbal Relaxing Incision:LRI)前、円錐角膜スクリーニング、緑内障スクリーニングなどに必須である。
【0004】
しかし、例えば緑内障といった疾患の発生を見つけるための眼のパラメータ測定用の従来の機器は、信頼性が低く、迅速性に欠ける。一般に、パキメータで測定した値は、眼の角膜が厚い場合は眼圧が高く、薄い場合は眼圧が低くなるという誤判定を生じる。その結果、パキメータは信頼性が低く、将来的に眼に対して行われる検査、例えば眼圧検査、散瞳検査、視野検査、画像検査、ゴニオスコープなどと比較するための基準値を作成するに過ぎない。
【0005】
また、従来の眼圧計は、眼球内の眼圧(IOP)を正確に測定できず、ノイズの多い推定値しか得られないという欠点がある。この点で、眼圧計による測定値には多くの要因(例えば、眼圧計の技術、眼圧計の較正、角膜曲率、角膜の水分量、角膜の厚さ、角膜の硬さなど)が影響する。さらに、従来の眼圧計は、上記要因による測定値のノイズを除去できず、眼球内の眼圧を効率的に測定するには不正確で信頼性の低いものとなっていた。また、眼圧計を使った眼の検査では、その前に麻酔による処置が必要である。このような眼の検査は痛みを伴い、さらに患者に不快感や刺激を与える可能性がある。
【0006】
眼の検査用の従来の機器は、時間を要し、感度が低く、誤差が生じやすい。また、従来の機器で測定値を得るには、眼の異常を見つけるために多くの手間をかける必要がある。
【0007】
したがって、前述の議論に照らして、眼のパラメータの測定に使用される従来の機器に関連する欠点を克服する必要がある。
【摘要】
【0008】
本開示は、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステムを提供しようとするものである。本開示はまた、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するための方法を提供しようとするものである。本開示は、眼の少なくとも1つのパラメータの測定が不正確であり、それによって眼病の診断に影響を与え、さらに測定中に患者に不快感を与える、従来の医療機器の既存の問題に対する解決策を提供しようとするものである。本開示の目的は、従来技術における問題を少なくとも部分的に克服する解決策を提供し、疾患の効率的な診断のために眼の少なくとも1つのパラメータを正確に測定する医療機器を提供することである。
【0009】
一態様では、本開示の実施形態は、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステムを提供する。このシステムは、ハウジング内に着脱可能に配置されたプローブであって、前記眼の表面に予め定められた衝突属性で衝突するように動作可能なプローブと、前記プローブを前記ハウジング内に維持し、前記プローブを前記眼の前記表面に向けて放ち、前記プローブを前記ハウジング内へと後退させるように動作可能な少なくとも1つのコイルと、前記プローブに振動を発生させるように動作可能なプローブ振動手段と、前記眼の前記表面への衝突時に前記プローブの振動の変化を測定するための測定手段と、前記眼の前記少なくとも1つのパラメータを求めるために、前記プローブの振動の前記測定された変化を使用するように構成されたコントローラと、を備える。
【0010】
別の態様では、本開示の実施形態は、眼の少なくとも1つのパラメータを測定する方法を提供する。この方法は、前記眼の表面に予め定められた衝突属性及び予め定められた振動で衝突するようにプローブを配置することと、前記眼の前記表面への衝突の間に、前記プローブの衝突属性及び前記プローブの振動を測定することと、前記予め定められた衝突属性、前記予め定められた振動、前記測定された衝突属性、及び前記測定された振動のうちの少なくとも1つを使用して、前記眼の前記表面への衝突時の前記プローブの振動の変化を計算することと、前記プローブの振動の前記変化を使用して、前記眼の前記少なくとも1つのパラメータを求めることと、を含む。
【0011】
本開示の実施形態は、従来技術における前述の問題を実質的に排除するか又は少なくとも部分的に対処し、ノイズのない眼の少なくとも1つのパラメータの迅速かつ正確な測定を、痛みのない方法で可能にし、さらに、多数の検査を伴うことなく疾患の信頼できる診断を可能にし、それによって、患者の様々な検査に関連するコスト及び時間をかなり節約することができる。
【0012】
本開示の追加の態様、効果、特徴、及び目的は、添付の請求項と併せて解釈される図面及び例示的な実施形態の詳細説明から明らかにされるであろう。本開示の特徴は、添付の請求項によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組合せで組み合わせることが可能であることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上記の摘要及び例示的な実施形態の以下の詳細説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的な構造が図面に示されている。しかしながら、本開示は、本明細書に開示される特定の方法や器具に限定されるものではない。さらに、当業者であれば、図面が縮尺通りでないことは理解できるだろう。可能な限り、同様の要素を同一の符号で示す。
【0014】
本開示の実施形態を、例示のみを目的として、以下の図面を参照して説明する。
【
図1】本開示の一実施形態による、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステムの概略図である。
【
図2】本開示の例示的な実施形態による、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステムの概略図である。
【
図3】本開示の例示的な実施形態による、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステムの概略図である。
【
図4】本開示の例示的な実施形態による、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステムの概略図である。
【
図5A】本開示の一実施形態による、時間の変化に対するプローブの速度の変化のグラフ表示である。
【
図5B】本開示の一実施形態による、眼の表面へのプローブ衝突時の周波数変化プロファイルを示す図である。
【
図6A】本開示の一実施形態による、眼の表面に対するプローブの動きの概略図である。
【
図6B】本開示の一実施形態による、眼の表面に対するプローブの動きの概略図である。
【
図6C】本開示の一実施形態による、眼の表面に対するプローブの動きの概略図である。
【
図6D】本開示の一実施形態による、眼の表面に対するプローブの動きの概略図である。
【
図7】本開示の一実施形態による、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するための方法のステップを示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態による、角膜への衝突に対するプローブの定在波の波形を示す図である。
【
図9A】本開示の一実施形態による、角膜への衝突の間のプローブにおける波の伝搬の概略図である。
【
図9B】本開示の一実施形態による、角膜への衝突の間のプローブにおける波の伝搬の概略図である。
【
図9C】本開示の一実施形態による、角膜への衝突の間のプローブにおける波の伝搬の概略図である。
【
図9D】本開示の一実施形態による、角膜への衝突の間のプローブにおける波の伝搬の概略図である。
【
図9E】本開示の一実施形態による、角膜への衝突の間のプローブにおける波の伝搬の概略図である。
【0015】
添付の図面において、下線付きの符号は、その符号が配置されている品目、又はその符号が隣接している品目を示すために使用される。下線のない符号は、その符号と品目を結ぶ線によって識別される品目に関連する。符号に下線が引かれておらず、かつ矢印が関連付けられている場合、その符号は、矢印が指し示す品目全体を識別するために使用される。
【実施形態の詳細説明】
【0016】
以下の詳細説明は、本開示の実施形態と、実施形態を実装可能な方法とを示す。本開示を実施する複数の態様を開示したが、当業者であれば、本開示を実施又は実践するための他の実施形態も可能であることを認識するであろう。
【0017】
一態様では、本開示の実施形態は、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステムを提供する。このシステムは、ハウジング内に着脱可能に配置されたプローブであって、前記眼の表面に予め定められた衝突属性で衝突するように動作可能なプローブと、前記プローブを前記ハウジング内に維持し、前記プローブを前記眼の前記表面に向けて放ち、前記プローブを前記ハウジング内へと後退させるように動作可能な少なくとも1つのコイルと、前記プローブに振動を発生させるように動作可能なプローブ振動手段と、前記眼の前記表面への衝突時に前記プローブの振動の変化を測定するための測定手段と、前記眼の前記少なくとも1つのパラメータを求めるために、前記プローブの振動の前記測定された変化を使用するように構成されたコントローラと、を備える。
【0018】
別の態様では、本開示の実施形態は、眼の少なくとも1つのパラメータを測定する方法を提供する。この方法は、前記眼の表面に予め定められた衝突属性及び予め定められた振動で衝突するようにプローブを配置することと、前記眼の前記表面への衝突の間に、前記プローブの衝突属性及び前記プローブの振動を測定することと、前記予め定められた衝突属性、前記予め定められた振動、前記測定された衝突属性、及び前記測定された振動のうちの少なくとも1つを使用して、前記眼の前記表面への衝突時の前記プローブの振動の変化を計算することと、前記プローブの振動の前記変化を使用して、前記眼の前記少なくとも1つのパラメータを求めることと、を含む。
【0019】
本開示に記載の眼の少なくとも1つのパラメータを測定するシステムは、眼の異なる状態及び疾患を検出するための、患者に優しい、迅速かつ苦痛のない解決策を提供する。具体的には、本開示は、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するための機器を提供し、この機器は、予め定められた衝突属性(例えば予め定められた速度)及び予め定められた振動(予め定められた周波数、振動のパルス、振動に関する波形)で眼の表面に衝突するプローブを備える。前記機器は、少なくとも1つのパラメータを求めるように、予め定められた振動からの振動の変化を計算するようにさらに動作する。少なくとも1つのパラメータは、眼の状態や病気、又は眼の物理的なパラメータを示すものであることが理解されるであろう。このシステムは、患者の時間、費用、不快感を軽減する、眼の全体的な検査のための少なくとも1つのパラメータを正確に測定することが特徴である。さらに、本明細書に記載されたシステムを用いて眼のあらゆる状態を正確かつオンタイムに診断することにより、その状態を効果的に治癒し、眼のさらなる損傷を防ぐことが可能となり、緑内障などの疾患による永久的な視力喪失をさらに防止することができるのである。プローブが眼の表面に衝突し、そこから後退する時間は、眼の反応時間よりも短く、したがって、患者の眼に不快感を与えることは最小限に抑えられる。さらに、例えばプローブの衝突により眼の表面が傷つくことによって、眼が痛くなったり、眼の表面が傷ついたりすることを防ぐために、プローブには生体用の被覆材が施されている。また、このシステムは軽量であるため、検査者が容易に使用可能である。さらに、眼の表面を傷つけることを防ぐように、プローブは低速で眼の表面に接触する。また、軽量で衝突速度が小さいため、このシステムの動作に必要なエネルギーは小さくて済むという利点もある。このシステムは、何ら悪影響を及ぼすことなく眼の少なくとも1つのパラメータを測定し、したがって、患者の快適性と安全性を確保するという利点もある。
【0020】
本開示は、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステムを提供する。この点において、このシステムによる眼の少なくとも1つのパラメータの測定は、眼の状態、例えば、正常な状態、病気、病気の段階、異常な状態などを示すものである。任意で、眼の少なくとも1つのパラメータは、眼の角膜の厚さ、眼球内の圧力、又は角膜の水分量である。さらに任意で、眼の少なくとも1つのパラメータは、角膜の厚さ(例えば、高眼圧症、緑内障)、角膜混濁(例えば、白内障、角膜潰瘍)、眼球内の眼圧(IOP)などに関連した異常を診断するために使用される。
【0021】
眼の少なくとも1つのパラメータに関連する正常な測定値からの逸脱は、病気又は異常な状態とみなされることが理解されるであろう。その後、このシステムは、パラメータの測定値とこのパラメータに関連する正常測定値とに基づいて、患者の眼の病気や異常を見つけることができる眼の少なくとも1つのパラメータを正確に測定する。
【0022】
任意で、患者の眼の病気や異常は、このシステムのユーザ、例えば、医師、眼科医、検眼士、技術者等又は患者自身によって手動で見つけられる。この点で、少なくとも1つのパラメータの測定に関連する測定値を使用して、病気や異常を見つける。さらに任意で、患者の眼の病気や異常は、このシステム内のコントローラ(本明細書で以下に詳述する)により自動的に見つけられる。
【0023】
このシステムは、ハウジング内に着脱自在に配置されたプローブを備える。具体的には、プローブは、眼の表面に衝突させるために使用される細長い器具である。この点で、プローブは、予め定められた衝突属性で眼の表面に衝突するように動作可能である。さらに、少なくとも1つのプローブ振動手段によって、プローブに振動を発生させる。本開示の実施形態によると、プローブは、第1の端部及び第2の端部を有する細長いバーである。さらに、プローブの第1の端部は球状の突起を有し、この球状の突起が眼の表面に衝突する部分である。さらに、任意で、プローブの第2の端部は、ハウジング内に懸垂されている。
【0024】
任意で、プローブは金属棒である。例えば、強磁性化合物を用いたプローブやエラストマーの製造には、強磁性材料(例えば、鉄、ニッケルなど)が使用される。別の例では、圧電材料、例えば石英をプローブの製造に使用する。さらに別の例では、強磁性材料と圧電材料の組合せでプローブを製造する。さらに、任意で、プローブの表面は、生体適合性材料で構成されているか、少なくとも部分的に覆われている。プローブにこのような生体適合性のある被覆を設けることにより、このシステムは、不快感や痛みを最小限に抑えて眼の生体組織と密着して機能できるという利点がある。さらに、プローブの厚さは、0.1mmから1mmの範囲にあり、例えば0.3mmである。さらに、プローブは非常に軽量である。一例として、プローブの重量は0.25ミリグラム(mg)である。
【0025】
「ハウジング」は、具体的には、システムの構成要素(すなわち、プローブ、測定手段、プローブ振動手段、コントローラ)を実質的に包む保護カバーのことを指す。さらに、任意で、ハウジング上に配置された開口部(すなわち、入口及び/又は出口)が設けられる。一般的に、開口部は、システムの構成要素への電力供給を可能にするために動作可能である。さらに、任意で、ハウジングは、システムの使用に便利で、取扱いや維持が容易なように戦略的に設計されている。
【0026】
さらに、プローブはハウジング内に着脱自在に配置されている。この点で、プローブは、ハウジングの長手方向軸に沿って移動し、眼の表面に衝突するように配置されている。任意で、ハウジングはプローブを完全に包む。あるいは、任意で、プローブの一部(例えば、球状の突起)は、ハウジングの外側にある。ある例では、ハウジングはポリマーを用いて製造される。別の例では、ハウジングは金属合金を用いて製造される。
【0027】
さらに、プローブは、予め定められた衝突属性で眼の表面に衝突するように動作可能である。この点で、プローブは眼の表面に力を加えながらぶつかる。本開示の実施形態によると、プローブは、眼の表面に穏やかに接触し、さらにそこに力を加え、この表面を内側に曲げさせる。この点で、眼の表面を突き破ることがないように、プローブは十分に大きな表面積を有し、これによって、眼の表面の組織を損傷する事例をなくすことができる。さらに、予め定められた衝突属性は、プローブが眼の表面に衝突する際のプローブの特徴的な点である。プローブは角膜の表面に当たって跳ね返り、その衝突の際に、プローブの振動の一部は角膜に向かい、一部は角膜の内皮から反射して戻って来る。
【0028】
任意で、プローブの衝突属性は、プローブの速度、プローブの運動エネルギーのうちの少なくとも1つである。プローブの速度は、プローブが眼に向かって移動する速度であることが理解されるであろう。さらに、プローブの予め定められた速度は、プローブが眼の表面に向かって移動し、眼の表面に最初に接触する瞬間(すなわち、衝突の瞬間)におけるプローブの速度である。一例として、プローブの速度は0.20m/秒(m/s)から0.35m/sの範囲にある。プローブの速度が低いため、プローブの駆動に必要なエネルギーが少なく、眼の表面の組織を損傷する事例をなくすことが特徴である。
【0029】
このシステムは、プローブをハウジング内に維持し、プローブを眼の表面に向けて放ち、プローブをハウジング内へと後退させるように動作可能な少なくとも1つのコイルを備える。少なくとも1つのコイルは、コイル、螺旋、又は渦巻き状の電気導体(例えば、ワイヤ)であることが理解されるであろう。具体的には、少なくとも1つのコイルは、プローブを囲むように、システムのハウジング内に配置される。少なくとも1つのコイルの中を通るプローブは、システムが作動すると付勢され、これによって、プローブを眼の表面に向けて放つように、少なくとも1つのコイルが減圧することが特徴である。さらに、プローブが眼の表面に衝突した後、少なくとも1つのコイルが圧縮されて、プローブをハウジング内へと後退させる。その後、少なくとも1つのコイルは、プローブをハウジング内に維持する。一例では、システム内に2つのコイルがあり、これらのコイルは2箇所でプローブを囲み、コイルに対応するプローブの2箇所は重複していない。
【0030】
任意で、少なくとも1つのコイルは、電磁コイルである。より詳細には、少なくとも1つのコイルは、プローブを振動させるために、電場及び/又は磁場をプローブに発生させる。さらに、任意で、少なくとも1つのコイルは、コイルフレーム内に配置され、コイルフレームは、少なくとも1つのコイルを所望の方法で維持するスケルトン構造体である。
【0031】
このシステムは、プローブに振動を発生させるように動作可能なプローブ振動手段を備える。発生させた振動は、例えば、0.5キロヘルツ(kHz)から100MHzの範囲の周波数とすることができる。さらなる例として、周波数は、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100kHz、あるいは1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80MHzから5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100kHz、あるいは1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100MHzの範囲とすることができる。
【0032】
任意で、振動は、連続振動、定在波振動、パルス振動、2つ以上の振動周波数を含む振動のうちの少なくとも1つとすることができる。さらに、発生させた振動は単一周波数の振動であっても、複数の周波数の振動であってもよい。さらなる例として、発生させた振動は定在波型の振動であってもよい。パルス振動の例としては、例えばプローブの中央部分から振動パルスを発生させる方法がある。この場合、振動パルスは、プローブにおける特徴的な音速でプローブの両端に向かって移動する。また、発生させた振動は、(干渉パターンを得るため)同時に2つ以上の周波数の振動の組合せであってもよい。さらに、発生させた振動は、予め定められた振動の波形を持つことも可能である。また、振動を発生させる際に、その振動の振幅を求めることができる。
【0033】
任意で、プローブに振動を発生させるために、プローブ振動手段を事前に較正しておく。任意で、プローブ振動手段は、磁歪発振器、圧電発振器、トランスデューサ、増幅器、マルチバイブレータのうちの少なくとも1つを含む。一例において、プローブ振動手段は、磁歪発振器を用いてプローブに振動を発生させる。この点で、2つのコイル(すなわち、第1のコイルL
1及び第2のコイルL
2)を用いて少なくとも1つのコイルが実装され、これら2つのコイルは、プローブを囲むように設けられる。プローブを囲むこれら2つのコイルは、電気エネルギーが供給されるとプローブの経線に平行な交流磁界を形成する。第1のコイルと第2のコイルは、例えば電界放出トランジスタ(Field-Emitting Transistor:FET)、バイポーラ接合トランジスタ(Bipolar Junction Transistor:BJT)などのトランジスタを介して、互いに接続される。第1のコイル(L
1)は、接続線を用いて可変コンデンサ(C)及び電源(例えば電池)にさらに接続され、上記トランジスタと共にコレクタ回路を形成している。さらに、第2のコイル(L
2)は、上記トランジスタと共にベース回路を形成するように接続されている。コレクタ回路は、電力が供給される(すなわち、電力供給がオンになる)と、次式で定義される所定の周波数で発振する。
【0034】
さらに、第1のコイルL
1に流れる交流電流により、プローブの経線に沿った交流磁界が発生する。その後、磁歪効果によりプローブが経線方向に振動し始める。通常、発振回路の周波数(すなわち所定の周波数)、さらに交流磁界の強さ及びプローブの振動の周波数を、可変コンデンサを使用して制御する。プローブに発生させた振動は、交流磁場の強さ、プローブの材質の性質に依存することが理解されるであろう。この点で、交流磁場によって発生するプローブの振動の周波数は、次式で定義される。
【0035】
第2のコイルのベース回路は、プローブへのフィードバックコイルとして機能する。任意で、発振回路の周波数がプローブに予め定められた振動を発生させるように、可変コンデンサを較正する。別の実施形態では、周波数パルスを変調することによって合成的にプローブに振動を発生させるか、又は他の方法で別のパルスを生成することによって振動を発生させる。
【0036】
別の例では、プローブ振動手段は、圧電発振器を用いてプローブに振動を発生させる。この点で、プローブは圧電材料、例えば金属、水晶、又はそれらの組合せを用いて製造される。さらに、プローブは、変圧器の一次巻線に接続されており、この変圧器の一次巻線は電子発振器に誘導可能に接続されている。電子発振器は、ベース回転式(base turned)発振回路である。さらに、変圧器の二次巻線は2つのコイル(すなわち、第1のコイルL
1及び第2のコイルL
2)を有し、第1のコイルL
1は可変コンデンサと分流して発振器のトランジスタと共にベース回路を形成し、第2のコイルL
2は電源と接続されて発振器のトランジスタと共にコレクタ回路をさらに形成するいる。発振回路の第1のコイルL
1及び第2のコイルL
2は、誘導可能に接続されている。さらに、発振回路は、第2のコイルへの電力供給時(すなわち、電源オン時)に高周波の交流電圧を生成する。その結果、変圧器の作用により、変圧器の一次巻線に起電力(EMF)を発生させる。このとき、プローブ内の圧電材料を振動させる逆圧電効果により、プローブに振動を発生させる。さらに、高周波の交流電圧がプローブに供給される。ここで、プローブの振動周波数は次式で求められる。
【0037】
交流電圧の周波数、つまりプローブに発生させる振動の周波数を変えるには、可変コンデンサを変更する必要があることが理解されるであろう。
【0038】
さらに、任意で、トランスデューサは、電源からの電力を機械的な振動に変換するように動作する。一例として、トランスデューサは、圧電、磁歪、又は電歪を利用して動作する電気機械式トランスデューサである。さらに、任意で、トランスデューサは発振器である。さらに、増幅器は、例えば、プローブに振動を発生させる交流磁界、交流電圧、交流電界などを増幅することにより、プローブの振動の周波数を増幅するように動作する。さらに、マルチバイブレータは、プローブに振動を発生させる発振回路を実装するように設計されてもよい。さらに、任意で、プローブに発生させた振動の周波数は、上述したように、0.5キロヘルツ(kHz)から100メガヘルツ(MHz)の範囲にある。この点で、プローブの振動周波数とは、プローブが振動する速度と振幅を指す。さらに、プローブ振動手段は、プローブに特定の波形の振動を発生させる。
【0039】
このシステムは、眼の表面への衝突時にプローブの振動の変化を測定する測定手段を備える。プローブ振動手段によってプローブに発生させた振動(すなわち、予め定められた振動)は、特定の波形と予め定められた周波数を有することが理解されるであろう。
【0040】
プローブの振動の周波数又は波形は、第1の初期値から第2の最終値まで変化させることができ、最終値は第1の初期値と同じ、より高い、又はより低い値にすることができる。眼の表面に衝突している間、又はプローブの移動の間、プローブの振動の周波数は、プローブの振動の周波数の第1の初期値に比べて低くなってもよいし、高くなってもよい。例えば、プローブが眼のより硬い表面に当たった場合、周波数は、第1の初期値から(
図5Bに示すように、相対値の0.9から1.0へ)増加すると考えられる。プローブの振動の周波数又は波形の変化を測定することで、周波数変化のプロファイルを、例えば眼のパラメータの指標として使用することができる。周波数(任意の単位)は、1が5kHz~100MHzなどと同じであるような相対的な値を指す。
【0041】
発生させたプローブ振動の一部は角膜の外面である上皮から反射し、別の一部は角膜組織を通って角膜の内面である内皮から反射して戻って来る。これらの反射された振動は、最初に発生させた振動の周波数や波形と混ざり合う。
【0042】
測定手段は、システムが作動するとすぐに、すなわち、プローブが眼の表面に向かって動き始め、眼の表面に衝突して、そこに力を加え、眼の表面からハウジングに向かって後退するときに、プローブの振動を測定することが理解されるであろう。さらに、任意で、測定手段は、プローブの振動を連続的又は瞬時に測定する。
【0043】
任意で、測定手段は、トランスデューサ、加速度計、速度センサー、周波数センサーのうちの少なくとも1つを備える。この点で、トランスデューサは、プローブの振動の変化を測定するように、プローブの振動を電気エネルギーに変換する。あるいは、測定手段は、加速度センサーを用いてプローブの振動の変化を測定する。さらに、スピードセンサーは、プローブの瞬間的な速度を測定する。プローブの速度は、プローブの眼の表面への移動、眼の表面への衝突、眼の表面への力の作用、及び眼の表面からの後退の間に測定される。さらに、周波数センサーは、将来の参考や計算の用途のために、プローブの眼の表面への衝突の周波数を測定する。
【0044】
さらに、任意で、プローブの振動の変化を計算するために、少なくとも1つのコイルの特徴的な属性を測定する。例えば、プローブ振動手段が磁歪発振器の場合、プローブの振動の変化を測定するために、フィードバックコイル(すなわち、ベース回路を形成する第2のコイル)の属性(例えば、長さ、ピッチ等)を測定する。一実施形態では、超音速周波数に到達するために追加の1つ以上の励磁コイルを使用することができ、周波数変化及び反射信号を測定するために同じ又は異なるコイルが使用される。
【0045】
さらに、プローブの予め定められた衝突属性及び衝突の間に測定された衝突属性を用いてプローブの振動の変化を求めることができる。なお、
図5Bでは分かりやすいように、振動の変化を周波数で説明している。
【0046】
振動の変化は、例えば、プローブの干渉パターン、プローブの振動の波形の変化、プローブの振動の振幅、反射パルス間の時間差などと捉えることができる。
【0047】
眼の表面への衝突の間、そのようなプローブの速度の変化及び/又はプローブの振動の変化は、位相の異なる反射、すなわち接触のダンピング効果によって観察されることが理解されるであろう。
【0048】
このシステムは、測定された振動の変化を使用して、眼の少なくとも1つのパラメータを求めるように構成されたコントローラを備える。通常、コントローラは、制御ループを使用して他の機器の動作を管理、命令、指示、又は規制する。本開示の実施形態によると、コントローラは、このシステムの構成要素、すなわち、プローブ、プローブ振動手段、及び測定手段の動作を司る。さらに、眼の少なくとも1つのパラメータを求めるために、プローブの振動の変化をコントローラで分析する。この点で、プローブの振動の変化に関連する測定手段からの測定値は、コントローラによって取得され、少なくとも1つのパラメータを求めるためにさらに分析される。少なくとも1つのパラメータは、眼の状態及び/又は異常を示すものである。一例では、眼の角膜の厚さを求めるために、プローブの振動の変化をコントローラで分析する。一例では、眼球内の眼圧を求めるために、プローブの振動の変化をコントローラで分析する。任意で、コントローラは、演算部である。測定例としては、眼への衝突前、衝突の間、及び衝突後のプローブにかかる振動の波形を測定/決定する。この波形を使用して、衝突の後、プローブにおける伝搬する振動パルスの間隔を測定することで、例えば角膜の厚みに関するパラメータを計算できる。実際、ある例によれば、振動の波形は、時間に応じて、プローブに沿って、又はプローブのある点(又は長さ)で測定することができる。
【0049】
任意で、コントローラは、ネットワークアダプタ、メモリユニット、プロセッサのうちの少なくとも1つを備える。さらに任意で、コントローラは、システムの構成要素から取得した測定値を、例えば、携帯電話、コンピュータなどのユーザ機器に伝達することが可能である。このように測定値をユーザ機器に伝達することにより、ユーザは測定値に対してさらに分析を行い、眼及び/又は少なくとも1つのパラメータに関連する結論及び推論を導き出すことができる。さらに、任意で、コントローラは、外部データベースからデータを取得し、測定値(すなわち、プローブの振動の変化)に対して分析を行い、少なくとも1つのパラメータを求め、少なくとも1つのパラメータに対してさらに分析を行い、眼に関連する状態、リスク、疾患、及び異常を判定することが可能である。コントローラは、例えばインターネットなどのデータ通信ネットワークを介して、ユーザ機器及び/又は外部データベースと通信することが理解されるであろう。
【0050】
任意で、システムの構成要素は、例えば、電気ソケット、少なくとも1つの電気バッテリーなどからの電力供給を使って給電される。
【0051】
一例では、眼の表面の組織が0.2秒後に反射作用を起こすことが理解されるであろう。さらに、プローブが眼の表面に衝突した瞬間からプローブが眼の表面から完全に後退するまでの時間を0.1秒とすることで、組織の反射作用が起こる前にシステムを動作させることが可能である。さらに、測定手段は、プローブの振動の変化を0.05秒で確実に測定する。
【0052】
さらに、任意で、振動の変化の測定誤差を最小限に抑え、振動の変化を正確に測定するために、眼の表面にプローブを衝突させる手順を眼に対して複数回、例えば、6回行う。したがって、このような繰り返し測定によって、システムにおける不正確な測定値や誤差が排除され、これによって、眼の少なくとも1つのパラメータを確実に求め、眼の疾患のさらなる診断が可能になる。
【0053】
本開示はまた、上述のような方法に関する。以上に開示された様々な実施形態及び変形例は、この方法にも準用される。
【0054】
任意で、プローブに発生させた振動の周波数は、0.5キロヘルツ(kHz)から100メガヘルツ(MHz)の範囲にある。任意で、眼の少なくとも1つのパラメータは、眼の角膜の厚さ、眼球内の圧力、角膜の水分量のいずれか1つである。任意で、プローブの衝突属性は、プローブの速度、プローブの運動エネルギーのうちの少なくとも1つである。
【図面の詳細説明】
【0055】
図1を参照すると、本開示の一実施形態による、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステム100の概略図が示されている。図示のように、システム100は、ハウジング102内に着脱可能に配置されたプローブ104と、コイル106と、プローブ振動手段108と、測定手段110と、コントローラ112とを備える。プローブ104は、眼の表面114に予め定められた衝突属性で衝突するように動作可能である。さらに、コイル106は、プローブ104をハウジング102内に維持するように動作可能である。さらに、コイル106は、プローブ104を眼の表面114に向けて放ち、プローブ104をハウジング102内へと後退させるように動作可能である。プローブ振動手段108は、プローブ104に振動を発生させるように動作可能である。測定手段110は、眼の表面への衝突時にプローブ104の振動の変化を測定するように動作可能である。コントローラ112は、プローブ104の振動の測定された変化を使用して、眼の少なくとも1つのパラメータを求めるように構成される。
【0056】
図2を参照すると、本開示の例示的な実施形態による、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステム100の概略図が示されている。図示のように、このシステムは、2つのコイル106A、106Bを備え、2つのコイル106A、106Bはプローブ104を囲んでいる。ここで、コイル106A、106Bは、プローブ104を眼の表面に向けて放ち、プローブ104をハウジング内へと後退させるように動作可能である。さらに、コイル106A、106Bは、磁歪発振器であるプローブ振動手段108に接続されている。具体的には、磁歪発振器108は、プローブ104に振動を発生させる。この点で、コイル106Aは磁歪発振器108の第1のコイルL
1を形成し、コイル106Bは磁歪発振器108の第2のコイルL
2を形成している。
【0057】
図3を参照すると、本開示の例示的な実施形態による、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステム100の概略図が示されている。図示のように、システム100は、ハウジング102内に着脱可能に配置されたプローブ104を備える。プローブ104は、2つのコイル106A、106Bによって囲まれている。ここで、コイル106A、106Bは、プローブ104を眼の表面に向けて放ち、プローブ104をハウジング102内へと後退させるように動作可能である。
【0058】
図4を参照すると、本開示の例示的な実施形態による、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステム100の概略図が示されている。図示のように、システム100は、ハウジング102内に着脱可能に配置されたプローブ104を備える。プローブ104は、2つのコイル106A、106Bによって囲まれている。ここで、コイル106A、106Bは、プローブ104を眼の表面に向けて放ち、プローブ104をハウジング102内へと後退させるように動作可能である。さらに、コイル106A、106Bは、コイルフレーム402内に配置されている。
【0059】
当業者であれば、
図1、
図2、
図3、及び
図4は、単に明確にする目的のために、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するためのシステム100の簡略化された図解を含み、これは、本明細書の特許請求の範囲を不当に制限するものではないことを理解するであろう。当業者であれば、本開示の実施形態の多くの変形、代替、及び変更を認識することができる。
【0060】
図5Aを参照すると、本開示の一実施形態による、時間の変化に対するプローブの速度の変化を表すグラフ500が示されている。グラフ500は、速度に基づくプローブの理想的な動きを表している。502において、プローブがハウジングから放たれる。502と504の間では、プローブは、ハウジングから眼の表面に向かって予め定められた速度で移動する。504において、プローブは眼の表面に衝突する。504と508の間では、プローブの速度が低下していることが確認される。ここで、504と506の間では、プローブは、眼の表面に力を加える。さらに506において、プローブの速度がゼロになり、眼の表面へのさらなる力の作用を停止する。506を過ぎると、プローブは後退し始める。508において、プローブは眼からハウジングへと完全に後退する。プローブの後退は、少なくとも1つのコイルの圧縮によるもので、これによって、プローブの速度がさらに低下する。その後、プローブは眼の表面に次回衝突するのに十分な速度で付勢される。
【0061】
図5Bを参照すると、本開示の一実施形態による、時間変化に対する眼の表面へのプローブの衝突時の振動の周波数プロファイルの変化を表すグラフが示され、運動、プローブ振動、及び反射から生成される信号が混在している。512において、プローブがハウジングから放たれる。512と514の間では、プローブはハウジングから眼の表面に向かって第1の初期値で移動する。514において、プローブは眼の表面に衝突する。さらに、プローブが眼の表面に衝突し、ハウジングに向かって戻り始めた後、516において、プローブの周波数の減少が観察される。プローブがハウジングへと後退すると、518において、プローブは第2の端周波数値に到達する。
【0062】
図6A、
図6B、
図6C、及び
図6Dを参照すると、本開示の一実施形態による、眼の表面114に対するプローブ104の動きの概略図が示されている。
図6Aを参照すると、ハウジング(図示せず)から眼の表面114に向かうプローブ104の動きが示されている。
図6Bを参照すると、プローブ104と眼の表面114との間の衝突の瞬間(すなわち、最初の接触の瞬間)が示されている。
図6Cを参照すると、眼の表面114の内部でのプローブ104の動きが示されている。ここで、プローブ104は、眼の表面114に力を加える。
図6Dを参照すると、眼の表面114からハウジング(図示せず)に向かうプローブの後退動作が示されている。
【0063】
図7を参照すると、本開示の一実施形態による、眼の少なくとも1つのパラメータを測定するための方法700のステップが示されている。ステップ702では、予め定められた衝突属性及び予め定められた振動で眼の表面に衝突するようにプローブが配置される。ステップ704では、眼の表面への衝突の間に、プローブの衝突属性及びプローブの振動を測定する。ステップ706では、予め定められた衝突属性、予め定められた振動、測定された衝突属性、測定された振動を使用して、眼の表面への衝突時にプローブの振動の変化を計算する。ステップ708では、プローブの振動の変化を使用して、眼の少なくとも1つのパラメータを求める。
【0064】
ステップ702、704、706、及び708は例示に過ぎず、本明細書の特許請求の範囲から逸脱することなく、1つ以上のステップが追加され、1つ以上のステップが削除され、又は1つ以上のステップが異なる順序で提供される他の代替案を提供することが可能である。
【0065】
図8を参照すると、プローブ本体801とプローブヘッド802とを有するプローブの角膜803への衝突時の定在波振動の波形のグラフを表している。衝突時間は例えば14μsであり、プローブ本体801の長さは例えば3.3cmであり、プローブヘッド802の長さは例えば0.7cmである。
【0066】
第3の反射と第4の反射との伝搬時間差に基づいて、第3の反射波と第4の反射波との間隔(ΔX)とプローブ本体801内の音速を用いて、角膜の厚さを計算できる。この例では、プローブ本体801におけるパルスの間隔を示している。ここから、プローブ上のパルスの伝搬速度が既知であれば、受信コイル上の時間差が求められる。間隔(ΔX)は、振動の波形を測定することで測定できる。
【0067】
励起パルスを発生させ、その結果生じる反射を少なくとも1つのコイルによってプローブ本体801から測定する。例えば、プローブの周囲のコイルが、プローブ本体801に磁歪超音波パルスを発生させることができる。逆に、プローブにおける振動やパルスは、その周囲のコイルによって検出可能である。パルス励起と連続発振の共振器の場合も同様である。
【0068】
図9Aから
図9Eは、
図8に示すように、眼の表面、すなわち角膜の表面への衝突の間のプローブにおける(パルス振動の)周波数波の伝搬を示す図である。角膜の厚さは、反射波の差、具体的には第3の反射波と第4の反射波との(物理的又はタイミング的な)間隔を測定することによって求められる。本実施形態では、プローブ本体901は例えば鋼製であり、プローブヘッド902は例えば少なくとも一部が生体適合材料(例えば生体適合材料プラスチック)製である。
【0069】
図9Aでは、衝突時間1.2μsの間に、プローブに発生させたパルスがこのプローブの中央部分を離れ、プローブ本体901内を左右対称の両方向に、すなわちハウジング方向とプローブヘッド902方向に伝搬する。
図9Bでは、衝突時間4μsの間に、新たに発生させたパルスが、プローブ本体901内をプローブヘッド902に向かって伝搬する。プローブ本体901とプローブヘッド902の界面では、パルスの一部が反射して伝搬し、すなわちパルスの第1の反射がこの界面からハウジングに向かって起こり、パルスの別の一部がプローブヘッド902内を眼の表面、すなわち角膜903の表面に向かって伝搬し続ける。
【0070】
図9Cにおいて、衝突時間6.6μsの間に、第1の反射はハウジングに向かって伝搬し続け、一方、新しいパルスはプローブヘッド902に向かって伝搬し続け、プローブヘッド902に到達したパルス波は眼の表面、すなわち角膜903の表面に向かって伝搬し続ける。プローブ本体901とプローブヘッド902の界面では、新しいパルスの一部が反射して伝搬し、すなわちパルスの第2の反射がこの界面からハウジングに向かって起こり、パルスの別の一部がプローブヘッド902内を眼の表面に向かって伝搬し続ける。プローブヘッド902と眼903の表面との界面では、プローブヘッド902におけるパルス波の第1の部分が反射し(第3の反射)、プローブヘッド902におけるパルス波の第2の部分が眼の表面、すなわち角膜903の表面で吸収される。
【0071】
図9Dにおいて、衝突時間8μsの間に、パルス波の第1及び第2の反射は、プローブ本体901内をハウジングに向かって伝搬し続け、第3の反射及び角膜903の内面、すなわち内皮からの反射である第4の反射が、プローブ本体901とプローブヘッド902との界面に向かってプローブヘッド902内を伝搬し続ける。
【0072】
図9Eにおいて、衝突時間11μsの間に、内側(内皮)及び外側角膜(上皮)から反射されたパルスの第3及び第4の反射の波が、プローブ本体901内をハウジングに向かって伝搬される。第3の反射と第4の反射との間隔ΔXを測定し、角膜内の音速Ccornea=1640m/sと、プローブ内の音速、例えばCprobe=5900m/sを考慮すれば、角膜の厚さCCTを計算できる。
CCT=1/2×Ccornea/Cprobe×ΔX
ここで提供された値を用いて厚さを計算すると、本例ではCCT=1/2×1640/5900×0.004m=555μm(マイクロメートル)となる。間隔の測定は、例えば、プローブにおける任意の場所(例えば中央部)での振動の振幅を時間に応じて測定して波形を求めることにより実現できる。求められた波形は、間隔ΔXの測定値として使用することができる。
【0073】
前述の本開示の実施形態は、添付の請求項に定義される本開示の範囲から逸脱することなく変更可能である。本開示を説明し、請求するために使用される「含む」、「備える」、「内蔵する」、「有する」、「ある」などの表現は、非排他的に解釈されることを意図しており、すなわち明示的に説明されていない品目、構成要素、又は要素も存在することが許容される。また、単数形への言及は、その複数形にも関すると解釈される。
【国際調査報告】