(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの塩、それらの結晶形、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 225/20 20060101AFI20230120BHJP
C07C 55/08 20060101ALI20230120BHJP
C07C 59/06 20060101ALI20230120BHJP
C07C 65/10 20060101ALI20230120BHJP
C07C 53/126 20060101ALI20230120BHJP
A61K 31/133 20060101ALI20230120BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230120BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230120BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
C07C225/20 CSP
C07C55/08
C07C59/06
C07C65/10
C07C53/126
A61K31/133
A61K9/20
A61P25/24
A61P25/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528974
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 US2020060848
(87)【国際公開番号】W WO2021101867
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(71)【出願人】
【識別番号】511298990
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ メリーランド,ボルチモア
(71)【出願人】
【識別番号】503286251
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ ガバメント アズ レプリゼンテッド バイ ザ デパートメント オブ ベテランズ アフェアーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーリス パトリック ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クレイグ ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】バイヤード スティーブン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルムシュルツ マーティン ピー
(72)【発明者】
【氏名】ゴールド トッド
(72)【発明者】
【氏名】モーデル ルーイン
(72)【発明者】
【氏名】サラテ カルロス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076FF70
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206FA29
4C206KA13
4C206KA16
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA54
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA02
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006BM30
4H006BM72
4H006BN20
4H006BR70
4H006BU42
(57)【要約】
本開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの塩(HNK)、ならびにそれらの結晶形を提供し、塩は、マロン酸、サリチル酸、エタンスルホン酸、グリコール酸、ステアリン酸、またはカプリン酸から選択される有機酸との塩である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンと有機酸の付加塩であって、前記有機酸はマロン酸、サリチル酸、エタンスルホン酸、グリコール酸、ステアリン酸、またはカプリン酸である付加塩。
【請求項2】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の付加塩である、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の結晶付加塩である、請求項2に記載の塩。
【請求項4】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の前記結晶付加塩は、下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す、請求項3に記載の塩。
9.4、12.6、および15.2°2θ+/-0.2°2θ
【請求項5】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の前記結晶付加塩は、下記値の1、2、または3つのさらなるピークを有するXRPDスペクトルを示す、請求項4に記載の塩。
18.7、21.6、および25.7°2θ+/-0.2°2θ
【請求項6】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の前記結晶付加塩は、下記値の1、2、3、4、5、6、または7つのさらなるピークを有するXRPDスペクトルを示す、請求項4に記載の塩。
13.8、14.4、18.7、21.6、22.7、23.5、および25.7°2θ+/-0.2°2θ
【請求項7】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の前記結晶付加塩は、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトルを示す、請求項3に記載の塩。
9.4、12.6、13.8、14.4、15.2、17.2、17.7、18.7、20.2、20.7、21.6、22.7、23.5、24.1、25.7、および29.4°2θ+/-0.2°2θ
【請求項8】
実質的に
図3に示されるXRPDスペクトルを示す、請求項3に記載の塩。
【請求項9】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の付加塩である、請求項1に記載の塩。
【請求項10】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の結晶付加塩である、請求項9に記載の塩。
【請求項11】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の前記結晶付加塩は、下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す、請求項10に記載の塩。
9.8、10.2、および25.5°2θ+/-0.2°2θ
【請求項12】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の前記結晶付加塩は、下記値の1、2、または3つのさらなるピークを有するXRPDスペクトルを示す、請求項11に記載の塩。
16.1、16.7、および20.3°2θ+/-0.2°2θ
【請求項13】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の前記結晶付加塩は、下記値の1、2、3、4、5、6、または7つのピークを有するXRPDスペクトルを示す、請求項10に記載の塩。
9.8、10.2、16.1、16.7、20.3、22.1、および25.5°2θ+/-0.2°2θ
【請求項14】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の前記結晶付加塩は、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトルを示す、請求項10に記載の塩。
9.8、10.2、13.4、13.7、16.1、16.7、19.6、19.8、20.3、22.1、22.8、および25.5°2θ+/-0.2°2θ
【請求項15】
実質的に
図6に示されるXRPDスペクトルを示す、請求項10に記載の塩。
【請求項16】
前記塩は、
下記値でピークを有し:6.0、14.9、および16.5°2θ+/-0.2°2θ、任意で、下記値の1、2、3、または4つのさらなるピークを有するXRPDスペクトル:11.8、18.3、24.2、および25.3°2θ+/-0.2°2θ、あるいは、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトル:6.0、7.1、9.2、10.6、11.5、11.8、12.7、13.7、14.1、14.9、15.8、16.5、18.3、20.4、22.3、23.0、24.2、24.8、および25.3°2θ+/-0.2°2θを示す、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩の結晶形態、
下記値でピークを有し:7.3および8.3°2θ+/-0.2°2θ、任意で下記値の1または2つのさらなるピークを有するXRPDスペクトル:14.7および16.6°2θ+/-0.2°2θ、あるいは、下記値の1、2、3、4、または5つのピークを有するXRPDスペクトル:7.3、8.3、14.7、16.6、および22.1°2θ+/-0.2°2θを示す、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミングリコール酸塩の結晶形態、
下記値でピークを有し:6.1、6.7、および10.2°2θ+/-0.2°2θ、任意で下記値の1、2、または3つのさらなるピークを有するXRPDスペクトル:11.2、14.2、および37.0°2θ+/-0.2°2θ、あるいは、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトル:4.1、4.5、6.1、6.7、10.2、11.2、14.2、15.6、18.3、20.3、24.4、28.6、32.7、および37.0°2θ+/-0.2°2θを示す、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩の結晶形態、または
下記値でピークを有し:3.0および3.9°2θ+/-0.2°2θ、任意で下記値の1または2つのさらなるピークを有するXRPDスペクトル:8.9および11.6°2θ+/-0.2°2θ、あるいは、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトル:3.0、3.9、8.9、11.6、14.3、14.8、17.8、19.3、21.1、21.6、23.8、および28.2°2θ+/-0.2°2θを示す、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩の結晶形態
である、請求項1に記載の塩。
【請求項17】
前記塩は、
実質的に
図7に示されるXRPDスペクトルを示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩の結晶形態、
実質的に
図8に示されるXRPDスペクトルを示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミングリコール酸塩の結晶形態、
実質的に
図9に示されるXRPDスペクトルを示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩の結晶形態、または
実質的に
図10に示されるXRPDスペクトルを示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩の結晶形態
である、請求項1に記載の塩。
【請求項18】
前記結晶形態は、検出可能な量の、X線粉末回折により決定される他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩結晶形態を含まない、請求項3~8および10~17のいずれか一項に記載の塩。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の塩と薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、特定的には、前記医薬組成物は固体経口医薬組成物である、医薬組成物。
【請求項20】
うつ病性障害、不安症、精神病性うつ病、自殺念慮、重篤気分調節症、持続性うつ病性障害(気分変調症)、月経前不快気分障害、物質/薬剤誘発うつ病性障害、別の医学的状態が原因のうつ病性障害、他の特定のうつ病性障害、不特定うつ病性障害、分離不安症、場面緘黙症、特定恐怖症、社交不安症(社会恐怖症)、パニック障害、パニック発作(特定用語)、広場恐怖、全般不安症、物質/薬剤誘発不安症、別の医学的状態が原因の不安症、他の特定の不安症、快感消失、外傷後ストレス障害、不特定不安症、または疲労を治療する方法であって、
有効量の、請求項1~18のいずれか一項に記載の塩、または請求項19に記載の医薬組成物を、そのような治療が必要な患者に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの塩、それらの結晶形、およびその製造方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年11月18日に出願された、米国特許仮出願第62/936,823号の優先権を主張する。その内容はこれにより、全ての目的のためにその全体として参照により組み込まれる。
【0003】
(政府支援の記載)
この発明は、政府支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
ケタミンは、現在のところ、ヒト麻酔および獣医学において使用されている薬物であり、臨床研究において、疼痛、治療抵抗性双極性うつ病、大うつ病性障害、ならびに他の抑うつおよび不安関連障害を含むいくつかの病状の治療で有効であることが示されてきた。
【0005】
しかしながら、薬物の日常的な使用は望まれない中枢神経系(CNS)効果により妨害される。患者のおよそ30%はケタミン治療に応答しない。加えて、ケタミン治療は薬物の麻酔作用および乱用の可能性のために重篤な副作用と関連する。
【0006】
ケタミン類似体は標準抗うつ薬を超える潜在的利点を有する。というのも、効果を発揮するのに数週間必要とする標準治療選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)とは異なり、ケタミンの時間対効力は迅速であり、数時間または数分以内に発効するからである。さらに、ケタミンの抗うつ効果に応答するが、SSRIに応答しない患者がいる。
【0007】
化合物(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)は、疼痛、うつ病、不安、および関連障害の治療に有用となり得るケタミンの類似体である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、これらの化合物の合成の実用的で効率的な方法、および良好な薬学的特性を有する安定な多形が必要とされている。本開示は、この要求を満たし、本明細書で明記される追加の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(分野)
この開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)の塩形態、および対応する塩の結晶形を提供する。本開示は、2R,6R-HNK塩を生成させる方法および対応する塩の結晶形を生成させる方法をさらに提供する。
【0010】
(概要)
本開示は、アミンの、マロン酸、サリチル酸、エタンスルホン酸、グリコール酸、ステアリン酸、またはカプリン酸である有機酸との反応により得ることができる、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの付加塩を含む。
【0011】
本開示は、アミンの、マロン酸、サリチル酸、エタンスルホン酸、グリコール酸、ステアリン酸、またはカプリン酸である有機酸との反応により得ることができる、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの付加塩の結晶形態を含む。
【0012】
本開示は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩および(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩の結晶形態を含む。
【0013】
本開示は、下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩の結晶形態を含む:9.4、12.6、および15.2°2θ+/-0.2°2θ。
【0014】
本開示はまた、下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩の結晶形態を含む:9.8、10.2、および25.5°2θ+/-0.2°2θ。
【0015】
本開示はまた、検出可能な量の、X線粉末回折により決定される他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩結晶形態を含まない(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩の結晶形態、ならびに、検出可能な量の、X線粉末回折により決定される他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩結晶形態を含まない(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩の結晶形態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩の示差走査熱量測定(DSC)曲線である。
【
図2】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩の動的水蒸気吸着(DVS)等温線プロットである。
【
図3】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩のX線粉末回折(XRPD)スペクトルである。
【
図4】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩のDSC曲線である。
【
図5】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩のDVS等温線プロットである。
【
図6】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩のXRPDスペクトルである。
【
図7】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩のXRPDスペクトルである。
【
図8】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミングリコール酸塩のXRPDスペクトルである。
【
図9】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩のXRPDスペクトルである。
【
図10】(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩のXRPDスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(2R,6R)-2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)-6-ヒドロキシシクロヘキサノン((2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK))ケタミンは下記構造を有する。
【化1】
【0018】
この開示は、マロン酸、サリチル酸、エタンスルホン酸、グリコール酸、ステアリン酸、またはカプリン酸の付加塩を含む、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン((2R,6R)-HNK)の塩形態、ならびにマロン酸、サリチル酸、エタンスルホン酸、グリコール酸、ステアリン酸、またはカプリン酸の(2R,6R)-HNK付加塩の結晶形態を提供する。
【0019】
(専門用語)
本明細書で開示される化合物は標準命名法を使用して記載される。別に規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、この開示が属する分野の当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0020】
「1つの(a、an)」という用語は量の制限を示さず、むしろ、言及したアイテムの少なくとも1つの存在を示す。「または」という用語は、「および/または」を意味する。「備える」、「有する」、「含む」、および「含有する」という用語は制約のない用語として解釈されるべきである(すなわち、「含むが、限定はされない」ことを意味する)。値の範囲の列挙は、本明細書で別記されない限り、その範囲内にある各々の別個の値に個々に言及する簡単な方法として機能することが意図されるにすぎず、各々の別個の値は、それが、本明細書で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。全ての範囲の終点がその範囲内に含まれ、独立して組み合わせ可能である。本明細書で記載される全ての方法は、本明細書で別記されない限り、または、別に文脈により明確に反対されない限り、好適な順序で実施することができる。任意のおよび全ての例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、発明をより良好に説明するために意図されるにすぎず、別段クレームされない限り、発明の範囲に制限を課すものではない。明細書におけるいずれの言語も、いずれかのクレームされていない要素を本明細書で使用される発明の実施に必須なものとして示すと解釈されるべきはない。別に規定されない限り、本明細書で使用される技術および科学用語は、この発明が属する分野の当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0021】
「患者」は医学的処置を必要とする任意のヒトまたは非ヒト動物を意味する。医学的処置は、疾患または障害などの既存の状態の治療、不安またはうつ病の症状を経験するリスクがあることが知られている患者における予防的または防止的治療、あるいは診断治療を含むことができる。いくつかの実施形態では、患者はヒト患者である。
【0022】
「パーセント収率または単離収率(%収率)」は、単離生成物の分子量で割った単離生成物(複数可)の重量を、反応において使用された開始材料のモル数で割ったものである。
【0023】
「を含む」、「から本質的に構成される」および「から構成される」という移行句は、現在の特許法によるこれらの用語にふさわしい意味を有する。移行句の1つによりクレームされる実施形態は全て、他の移行句を使用してもクレームされ得る。例えば、移行句として「を含む」を用いてクレームされる一実施形態はまた、「から本質的に構成される」または「から構成される」という移行言語を用いてクレームされ得る実施形態を含み、逆の場合も同じである。
【0024】
(化学的記載)
(2R、6R)-ヒドロキシノルケタミン、IUPAC名(2R,6R)-2-アミノ-2-(2-クロロフェニル)-6-ヒドロキシシクロヘキサノンの構造は下記である。
【化2】
【0025】
本開示は、結晶形態の2R,6R-HNKの塩ならびにマロン酸、サリチル酸、エタンスルホン酸、グリコール酸、ステアリン酸、またはカプリン酸を有する対応する付加塩の結晶形態を生成させる方法を提供する。
【0026】
本開示は、遊離塩基を標的塩に変換する、または、アミンの第一塩を標的塩に変換することにより、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの塩を製造するための方法を提供する。方法は一般に、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンを適切な酸と接触させ、標的塩を生成させる工程を含み、任意で標的塩を単離する工程をさらに含む。一実施形態では、アミンは酸と、溶媒または溶媒混合物中で合わせられ、任意で加熱され、続いて、冷却され、アンチソルベントが任意的に添加され、懸濁液が形成される。塩は、濾過により懸濁液から単離することができ、濾液が形成され、真空乾燥される。ある一定の実施形態では、懸濁液は、冷却後、あるいは溶媒または溶媒混合物の添加が完了した後、あるいはアンチソルベントの添加が完了した後、約1から約24時間、または約5から約12時間撹拌される。ある一定の実施形態では、濾液が8時間超、12時間超、約12、約20時間または約16時間乾燥される。
【0027】
アミンの第一塩を標的塩に変換するプロセスは、塩基、例えば、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、または重炭酸ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、または1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)を使用して第一塩を遊離塩基に変換する工程を含むことができる。一実施形態では、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリ塩基が使用され得る。一実施形態では、重炭酸ナトリウムなどの炭酸塩塩基が使用され得る。得られた遊離塩基は次いで、標的塩の酸で処理することができ、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの塩が生成される。一実施形態では、第一塩は、塩酸塩であり、標的塩はマロン酸塩、サリチル酸塩、エタンスルホン酸塩(エシレート塩)、グリコール酸塩、ステアリン酸塩、またはカプリン酸塩(デカン酸塩)とすることができる。
【0028】
他の酸が使用され、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの他の塩が生成され得る。
【0029】
一実施形態では、マロン酸塩が製造され、方法は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンをマロン酸で処理し、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩を製造する工程をさらに含む。
【0030】
一実施形態では、マロン酸塩が製造され、方法は、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンをサリチル酸で処理し、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩を製造する工程をさらに含む。
【0031】
一実施形態では、マロン酸塩、サリチル酸塩、エタンスルホン酸塩(エシレート塩)、グリコール酸塩、ステアリン酸塩、またはカプリン酸塩(デカン酸塩)が製造される。一実施形態では、マロン酸塩、サリチル酸塩、エタンスルホン酸塩(エシレート塩)、グリコール酸塩、ステアリン酸塩、またはカプリン酸塩(デカン酸塩)の結晶形態が製造される。
【0032】
一実施形態では、付加塩は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の塩である。優れた結晶化特性、合理的に高い融点、高い融解エンタルピー、非常に低い吸湿性およびある範囲の相対湿度にわたる最小の吸湿性を示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩の結晶形態が提供される。
【0033】
下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩が開示される:9.4、12.6、および15.2°2θ+/-0.2°2θ。XRPDスペクトルは、下記値の1、2、または3つのさらなるピークを有することができる:18.7、21.6、および25.7°2θ+/-0.2°2θ。
【0034】
一実施形態では、結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩は、検出可能な量の、X線粉末回折により決定される他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩結晶形態を含まない。
【0035】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩は、下記値の1、2、3、4、5、6、または7つのさらなるピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:13.8、14.4、18.7、21.6、22.7、23.5、および25.7°2θ+/-0.2°2θ。
【0036】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩は、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:9.4、12.6、13.8、14.4、15.2、17.2、17.7、18.7、20.2、20.7、21.6、22.7、23.5、24.1、25.7、および29.4°2θ+/-0.2°2θ。
【0037】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩は、実質的に
図3に示されるXRPDを示すことができる。
【0038】
本開示は、遊離塩基(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンをマロン酸と合わせ、任意で(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩を単離することにより、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩を製造するための方法を提供する。一実施形態では、方法は、約1.0から約1.3当量のマロン酸を約1.0当量の遊離塩基(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンと適切な体積の溶媒(例えば、エタノール)中で合わせる工程を含み、混合物は、約室温で撹拌され、続いて、アンチソルベント(例えばヘキサン)が添加され、固体が形成するまで撹拌が続けられる。固体は当技術分野で知られている技術を使用して回収し、乾燥させることができる。この実施形態内では、エタノールの体積は約4.8から約5.3とすることができ、ヘキサンの体積は約5から約8とすることができる。
【0039】
一実施形態では、付加塩は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の塩である。優れた結晶化特性、合理的に高い融点、高い融解エンタルピー、非常に低い吸湿性およびある範囲の相対湿度にわたる最小の吸湿性を示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩の結晶形態が提供される。
【0040】
下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩が開示される:9.8、10.2、および25.5°2θ+/-0.2°2θ。XRPDスペクトルは、下記値の1、2、または3つのさらなるピークを有することができる:16.1、16.7、および20.3°2θ+/-0.2°2θ。
【0041】
一実施形態では、結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩は、検出可能な量の、X線粉末回折により決定される他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩結晶形態を含まない。
【0042】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩は、下記値の1、2、3、4、5、6、または7つのピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:9.8、10.2、16.1、16.7、20.3、22.1、および25.5°2θ+/-0.2°2θ。
【0043】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩は、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:9.8、10.2、13.4、13.7、16.1、16.7、19.6、19.8、20.3、22.1、22.8、および25.5°2θ+/-0.2°2θ。
【0044】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩は、実質的に
図6に示されるXRPDを示すことができる。
【0045】
本開示は、遊離塩基(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンを、サリチル酸と合わせ、任意で、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩を単離することにより、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩を製造するための方法を提供する。一実施形態では、方法は約1.0から約1.3当量のサリチル酸を約1.0当量の遊離塩基(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンと適切な体積の溶媒(例えば、エタノール)中で合わせる工程を含み、混合物は約50℃から約70℃の温度まで約20から約40分間加熱され、約室温まで冷却され、続いて、アンチソルベント(例えばヘキサン)が添加され、固体が形成するまで撹拌が続けられる。固体は当技術分野で知られている技術を使用して回収し、乾燥させることができる。この実施形態内では、エタノールの体積は約8から約14とすることができ、ヘキサンの体積は約10から約16とすることができる。
【0046】
一実施形態では、付加塩は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとエタンスルホン酸の塩である。
【0047】
下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩が開示される:6.0、14.9、および16.5°2θ+/-0.2°2θ。XRPDスペクトルは、下記値の1、2、3、または4つのさらなるピークを有することができる:11.8、18.3、24.2、および25.3°2θ+/-0.2°2θ。
【0048】
一実施形態では、結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩は、検出可能な量の、X線粉末回折により決定される他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩結晶形態を含まない。
【0049】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩は、下記値の1、2、3、4、5、6、または7つのピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:6.0、11.8、14.9、16.5、18.3、24.2、および25.3°2θ+/-0.2°2θ。
【0050】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩は、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:6.0、7.1、9.2、10.6、11.5、11.8、12.7、13.7、14.1、14.9、15.8、16.5、18.3、20.4、22.3、23.0、24.2、24.8、および25.3°2θ+/-0.2°2θ。
【0051】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩は、実質的に
図7に示されるXRPDを示すことができる。
【0052】
一実施形態では、付加塩は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとグリコール酸の塩である。
【0053】
下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミングリコール酸塩が開示される:7.3および8.3°2θ+/-0.2°2θ。XRPDスペクトルは、下記値の1または2つのさらなるピークを有することができる:14.7および16.6°2θ+/-0.2°2θ。
【0054】
一実施形態では、結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミングリコール酸塩は、検出可能な量の、X線粉末回折により決定される他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩結晶形態を含まない。
【0055】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミングリコール酸塩は、下記値の1、2、3、4、または5つのピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:7.3、8.3、14.7、16.6、および22.1°2θ+/-0.2°2θ。
【0056】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミングリコール酸塩は、実質的に
図8に示されるXRPDを示すことができる。
【0057】
一実施形態では、付加塩は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとステアリン酸の塩である。
【0058】
下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩が開示される:6.1、6.7、および10.2°2θ+/-0.2°2θ。XRPDスペクトルは、下記値の1、2、または3つのさらなるピークを有することができる:11.2、14.2、および37.0°2θ+/-0.2°2θ。
【0059】
一実施形態では、結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩は、検出可能な量の、X線粉末回折により決定される他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩結晶形態を含まない。
【0060】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩は、下記値の1、2、3、4、5、6、7、8つのピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:4.1、4.5、6.1、6.7、10.2、11.2、14.2、および37.0°2θ+/-0.2°2θ。
【0061】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩は、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:4.1、4.5、6.1、6.7、10.2、11.2、14.2、15.6、18.3、20.3、24.4、28.6、32.7、および37.0°2θ+/-0.2°2θ。
【0062】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩は、実質的に
図9に示されるXRPDを示すことができる。
【0063】
一実施形態では、付加塩は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとカプリン酸(デカン酸)の塩である。
【0064】
下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩が開示される:3.0および3.9°2θ+/-0.2°2θ。XRPDスペクトルは、下記値の1または2つのさらなるピークを有することができる:8.9および11.6°2θ+/-0.2°2θ。
【0065】
一実施形態では、結晶(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩は、検出可能な量の、X線粉末回折により決定される他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩結晶形態を含まない。
【0066】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩は、下記値の1、2、3、4、または5つのピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:3.0、3.9、8.9、11.6、および21.6°2θ+/-0.2°2θ。
【0067】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩は、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトルを示すことができる:3.0、3.9、8.9、11.6、14.3、14.8、17.8、19.3、21.1、21.6、23.8、および28.2°2θ+/-0.2°2θ。
【0068】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩は、実質的に
図10に示されるXRPDを示すことができる。
【0069】
(医薬組成物)
本明細書で開示される化合物は純粋化学物質として投与することができるが、好ましくは医薬組成物として投与される。したがって、本開示は、(2R,6R)-HNKの塩を少なくとも1つの薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物を提供し、(2R,6R)-HNKの塩は結晶形態であってもよい。例示的な塩としては、(2R,6R)-HNKのマロン酸塩、サリチル酸塩、エタンスルホン酸塩、グリコール酸塩、ステアリン酸塩、またはカプリン酸塩が挙げられ、(2R,6R)-HNK塩の結晶形態が含まれる。医薬組成物は、(2R,6R)-HNKの塩を唯一の活性剤として含み得るが、1つ以上の追加の活性剤を含み得る。ある一定の実施形態では、医薬組成物は、約1mgから約5000mg、約10mgから約1000mg、または約50mgから約500mgの、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンの1つの塩、またはそれらの組み合わせである活性剤、および、任意で約0.1mgから約2000mg、約10mgから約1000mg、約100mgから約800mg、または約200mgから約600mgの追加の活性剤を、単位剤形中に含む経口剤形、特定的には、固体経口剤形である。
【0070】
本明細書で開示される化合物は、経口で、局所的に、非経口的に、吸入もしくはスプレー式点鼻薬により、舌下に、経皮的に、頬側投与を介して、直腸に、点眼液として、または他の手段により、従来の薬学的に許容される担体を含む投与単位製剤中で投与され得る。医薬組成物は任意の薬学的に有用な形態として、例えば、エアロゾル、クリーム、ゲル、丸薬、カプセル、錠剤、シロップ、経皮パッチ、または点眼液として製剤化され得る。錠剤およびカプセルなどのいくつかの剤形は、適切な量の活性成分、例えば、所望の目的を達成するための有効量を含む適当なサイズの単位用量に細分される。
【0071】
担体としては賦形剤および希釈剤が挙げられ、治療される患者への投与に好適なものとするために十分高純度で、十分低毒性でなければならない。担体は不活性とすることができ、またはそれ自体の薬学的利益を有することができる。化合物と併せて使用される担体の量は、化合物の単位用量あたりの投与のための実用的量の材料を提供するのに十分なものである。
【0072】
担体のクラスとしてはバインダ、緩衝剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、着香剤、流動促進剤(glident)、潤滑剤、保存剤、安定剤、界面活性剤、打錠剤、および湿潤剤が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの担体が1を超えるクラスにおいて列挙される可能性があり、例えば植物油はいくつかの製剤では潤滑剤として、他の製剤では希釈剤として使用され得る。例示的な薬学的に許容される担体としては、糖、デンプン、セルロース、トラガント末、麦芽、ゼラチン、タルク、および植物油が挙げられる。任意的な活性剤を医薬組成物に含めてもよく、それらは本発明の化合物の活性を実質的に妨害しない。
【0073】
医薬組成物は経口投与のために製剤化することができる。例示的な経口剤形は1日1回または1日2回投与用に製剤化される。これらの組成物は0.1から99重量%(wt%)の(2R,6R)-HNKの塩、特定的には(2R,6R)-HNKの結晶塩を含有することができる。いくつかの実施形態は約25wt%から約50wt%または約5wt%から約75wt%の(2R,6R)-HNKの塩、特定的には(2R,6R)-HNKの結晶塩を含有する。
【0074】
(治療方法)
治療方法は、ある一定の投与量の(2R,6R)-HNKの塩を患者に提供することを含む。1日につき体重1キログラムあたり約0.1mgから約140mgの各活性剤の投与量レベルが以上で指示される状態の治療において有用である(1日につき患者一人あたり約0.5mgから約7g)。単一単位剤形を生成させるために担体材料と組み合わせることができる活性材料成分の量は、治療される患者および特定の投与方法によって変動するであろう。
【0075】
ある一定の実施形態では、塩の治療効果のある量は、約0.25mcg/mLから約125mcg/mL、または約1mcg/mLから約50mcg/mLの(2R,6R)-HNKの血漿Cmaxを提供する量である。本開示はまた、用量あたり約0.2mgから約500mgの(2R,6R)-HNKの塩を提供する静脈内医薬組成物を、または末梢指標では約0.5mgから約500mg/用量を提供する化合物を含む。
【0076】
治療方法は、(2R,6R)-HNKの塩が追加の活性剤または別の療法と一緒に投与される組み合わせ方法を含む。組み合わせ投与は同時投与、併用投与、および、追加の活性剤または他の療法の投与の順がHNK塩の投与の前または後となり得る連続投与を含む。
【0077】
治療方法は、(2R,6R)-HNKの塩が、心理療法、認知行動療法、疑似体験療法、系統的脱感作、マインドフルネス、弁証法的行動療法、対人関係療法、眼球運動による脱感作と再処理、社会リズム療法、アクセプタンス・コミットメント・セラピー、家族焦点化療法、精神力動療法、光線療法、コンピュータ療法、認知矯正療法、運動、または他の型の療法と併せて投与される方法を含む。
【0078】
治療方法は、(2R,6R)-HNKの塩が電気痙攣療法、経頭蓋磁気刺激、脳深部刺激、ニューロモデュレーション装置の使用、または他の神経調節療法と併せて投与される方法を含む。
【0079】
(2R,6R)-HNKの塩は投与される唯一の活性剤であってもよく、または、追加の活性剤と一緒に投与されてもよい。例えば、HNK活性剤は、下記CNS活性剤のいずれかから選択される別の活性剤と一緒に投与され得る:d-サイクロセリン、デキストロメトルファン、エスシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、デュロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、ブプロピオン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ナルトレキソン、ミルタザピン、ベンラファキシン、アトモキセチン、ブプロピオン、ドキセピン、アミトリプチリン、クロミプラミン、ノルトリプチリン、ボルチオキセチン、ビラザドン(vilazadone)、ミルナシプラン、レボミラシプラン(levomilacipran)、プラミペキソール、ブスピロン、リチウム、甲状腺または他の型のホルモン(例えば、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン)、アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、クロザピン、ロキサピン、ルラシドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、ガバペンチン、ラモトリギン、フェニトイン、プレガバリン、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、ミノサイクリン、リバスチグミン、リルゾール、トラミプロセート、ケタミン、またはそれらの薬学的に活性な塩もしくはプロドラッグ、または前記の組み合わせ。
【0080】
追加の活性剤の前記リストは全てを含んでいるというよりむしろ例示的であることが意味される。上記リストに含まれていない追加の活性剤が、(2R,6R)-HNKの塩と組み合わせて投与され得る。追加の活性剤はその認可された処方情報に従い投与されるが、いくつかの実施形態では、追加の活性剤は典型的に処方される用量より少なく、場合によっては、最小認可用量より少なく投与される。
【0081】
本開示は、化合物の有効量がうつ症状を減少させるのに有効な量である、うつ病性障害を治療する方法を含み、うつ症状の減少は、うつ症状評価尺度に基づいて識別される症状の50%以上の低減、またはHRSD17に基づいて7以下の、もしくはQID-SR16に基づいて5以下の、もしくはMADRSに基づいて10以下のスコアの達成である。同様に、本開示はまた、有効量の本開示の化合物を投与することを含む、不安症、快感消失、疲労、および自殺念慮を治療する方法を提供し、化合物の有効量は、不安症症状を減少させるのに十分な量、または不安、快感消失、疲労、または自殺念慮についての症状評価尺度に基づいて、不安症、快感消失、または自殺念慮症状の臨床的に有意な減少を達成するのに十分な量である。
【実施例】
【0082】
[一般的方法]
<化学的方法>
市販されている試薬および溶媒は全て購入し、さらに精製せずに使用した。
【0083】
(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンおよびその塩酸塩は、米国特許出願公開2014/0296241号および2019/0135732号において以前記載されている。
【0084】
(示差走査熱量測定(DSC))
DSC曲線は全て、Mettler Toledo Stareソフトウェアバージョン9.01を動作させるTA8000ワークステーションとインタフェースされたMettler Toledo823熱量計を用いて取得した。典型的な分析条件を以下に列挙する。
開始温度:20℃
加熱速度:10℃.min-1
終了温度:320℃
パージガス:70mL.min-1の窒素
試料パン:穴あき蓋を有する40μLアルミニウムパン
【0085】
典型的には、2-7mgの試料をアルミニウム試料パンに詰め込んだ。機器を、測定を行う前に、温度および熱流に関してインジウム、水およびシクロヘキサンの追跡可能な標準を用いて較正した。
【0086】
(X線粉末回折(XRPD))
X線粉末ディフラクトグラムを、ブラッグ-ブレンターノ構成のBruker D5000回折計を用いて取得した。拡張取得パラメータを、以下で詳述されるように、原薬の各バッチについて使用した。
取得パラメータ:
線源:CuKα
波長:1.5406A
走査範囲:2-40°(2θ)
ステップサイズ:0.01°(2θ)
ステップあたりの時間:4.0s
発散スリット幅:2mm
散乱防止スリット幅:2mm
検出器スリット幅:0.2mm
試料回転:係合(Engaged)
管加速電位:40kV
管加速電流:30mA
温度:周囲(通常18-22℃)
【0087】
およそ2mgの各試料を分析のためにケイ素ベース上に載置した。
【0088】
全てのデータをフーリエアルゴリズムの使用により平滑化し、バックグラウンドを各ディフラクトグラムから減算した。機器性能チェックを完了した後、コランダムのNIST追跡可能標準を使用して、および、また、アーカンソーストーンクォーツの標準を使用して測定した。表1は様々な塩について、ブラッグ回折角を2θ度(°(2θ))で報告する。
【0089】
(動的水蒸気吸着(DVS))
動的水蒸気吸着-脱着実験を、Surface Measurement Systemsにより供給されるDVS Resolution機器を用いて実施した。データを、下記取得パラメータを用いて取得した:
溶媒:水
開始相対湿度:30%RH
相対湿度サイクル(%RH):30、40、50、60、70、80、90、95、90、80、70、60、50、40、30、20、10、0、10、20、30
平衡条件(dm/dt):0.0002%/分
平衡条件ウィンドウ:5分
最小段階期間:10分
最大段階期間:360分
温度:25℃
キャリアガス:窒素
キャリアガス流速:100mL.min-1
【0090】
典型的には、20-50mgの試験物質をガーゼバスケット内に載置し、試料ポートに移した。過度の静電気を試料取扱いおよび試料載置を通して、210Po静電気除去装置を用いて除去した。機器性能チェックを塩化ナトリウムおよび塩化リチウムの追跡可能な試料を使用して完了した。
【0091】
[実施例]
総括:
2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)(遊離塩基)を、全ての塩形成のための開始材料として使用した。2R,6R-ヒドロキシノルケタミンを2R,6R-ヒドロキシノルケタミン塩酸塩から、HCl塩を水に溶解し、水溶液を濾過し、次いで1.1eqの2M水酸化ナトリウム水溶液を使用して、塩酸塩を中和することにより、合成した。水溶液をジクロロメタンで3回抽出し、有機抽出物を合わせ、溶媒を蒸発により除去し、RR-HNKを遊離塩基として得た。
【0092】
下記実験における全ての重量当量は、RR-HNK遊離塩基に対するものであり、1グラムRR-HNKは、1グラム溶媒に等しい。体積は重量/体積当量を示し、1グラムRR-HNKは1ミリリットル溶媒に等しい。当量はモル当量であり、1ミリモルRR-HNKは1ミリモル酸に等しい。全ての塩形成は0.7グラムから1.4グラムの間のRR-HNKを塩形成のための開始材料として使用した。
【化3】
【0093】
<一般的方法A:酢酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩>
一般的方法Aを実施した。この場合、1.2当量の酸を1wt.eqの水および7体積のエタノールと共に撹拌した。得られた混合物に、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む4.2体積のエタノールの溶液を添加した。混合物を室温で撹拌し、約60℃まで30分間加熱し、冷却し、13体積のヘキサンを添加し、撹拌を最低12時間続けた。
【0094】
(実施例1:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)酢酸塩)
RR-HNK酢酸塩を、一般的方法Aに従い調製した。1.1eq多くの酢酸を添加し、混合物を蒸発させオレンジ油とし、エーテルでトリチュレートし、冷却した。室温で静置した後、生成した固体をエーテルで洗浄し、乾燥させた。95%収率。
【0095】
(実施例2:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)硫酸塩)
RR-HNK硫酸塩を、一般的方法Aに従い調製した。溶媒を蒸発させた。エーテルおよび酢酸エチルでトリチュレートする試みの後、残渣を3.5体積の40℃のエタノールに溶解し、静置し、冷却し、2.1体積の酢酸エチルを添加した。得られた溶液にイソプロパノールを添加し、次いで、混合物を蒸発乾固させ、1.4体積の水に再溶解し、濾過し、フィルタを約0.7体積の水で洗浄した。溶液として保存した後、窒素流を適用し、徐々に蒸発させた。液体表面上の最初の膜を破り、蒸発を可能にし、最終的には大きな固体の塊が現れ、これをすりつぶし、乾燥させた。結晶のクラスターが形成したが、主に油が存在した。1つの結晶塊をいくらかの周囲の油と共にバイアル中に取り出し、アセトン中ですりつぶし、微細白色固体を得た。より多くの結晶/油を徐々にこの混合物に添加し、より多くの固体を生成させた。0.4体積のアセトンをフラスコ内の残渣に添加し、これを10分間かくはんさせ、次いで一晩静置した。より多くのアセトンを全ての油が溶解するまで添加し、次いで、バイアルおよびフラスコ両方の中身を濾過し、白色固体を収集し、これをアセトンで洗浄し、乾燥させた。16%収率。
【0096】
(実施例3:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)メタンスルホン酸塩)
RR-HNKメタンスルホン酸塩を、一般的方法Aに従い調製した。溶媒を蒸発させ、残渣をエーテルでトリチュレートした。2.8体積のヘキサンを添加し、固体を濾過により収集した。フラスコを2×1.4体積の1:1エタノール:ヘキサンでフィルタ上にすすぎ、ケーキを洗浄し、固体を乾燥させた。74%収率。
【0097】
<一般的方法B:クエン酸一水和物、サリチル酸>
一般的方法Bを実施した。この場合、1.2当量の酸を7体積のエタノールと共に撹拌した。得られた混合物に、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む4.2体積エタノールの溶液を添加した。混合物を室温で撹拌し、約60℃まで約30分間加熱し、冷却し、13体積のヘキサンを添加し、撹拌を最低12時間続けた。
【0098】
(実施例4:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)クエン酸塩)
RR-HNKクエン酸塩一水和物を、一般的方法Bに従い調製した。溶媒を除去し、酢酸エチルを添加した。得られた材料をエーテルで処理し、溶媒をデカントし、残渣を、アセトン、酢酸エチル、次いでエタノールで順次トリチュレートした。加熱して油を溶解させた後、静置し、酢酸エチルを添加し、最終的には、粘性の不透明エマルジョンが得られ、これをドライアイス中で冷却させ、周囲まで温め、次いで放置した。液体をデカントして除去し、油を温めて、冷却した。0.7体積のエタノールを添加し、混合物を超音波処理し、一晩静置し、混合し、再び超音波処理し、再び静置した。3.5体積のエタノールを添加し、混合物をかくはんし、黄色溶液を形成させ、これをデカントして除去した。ガムを別々の粒子が形成するまで1.4体積のエタノールと完全に混合し、これを濾過により収集し、エタノールで洗浄し、粘着性の淡黄色固体を乾燥させた。33%収率。
【0099】
(実施例5:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)サリチル酸塩)
RR-HNKサリチル酸塩を、一般的方法Bに従い調製した。固体を濾過により収集し、2.1体積の1:1エタノール:ヘキサンで洗浄し、乾燥させた。84%収率。
【0100】
(2R,6R)ヒドロキシノルケタミンサリチル酸塩のDSC曲線、DVS等温線プロファイルおよびX線粉末ディフラクトグラムが、それぞれ、
図4、
図5、および
図6に示される。サリチル酸塩の結晶化はかなり有利であり、容易に白色流動性結晶粉末が得られた。DSC曲線およびX線粉末ディフラクトグラムにより、塩は高結晶性であり、合理的な融点(>140℃)および融解エンタルピーを有することが確認される。DVS等温線プロットにより、材料は実験に含まれる相対湿度の全範囲にわたって(0%RHから95%RH)水をほとんど獲得しないことが示され、これはかなり例外的である。また、X線粉末回折データに基づくと、高い相対湿度への曝露はサリチル酸塩形態の物理的形態を変化させないことが明らかである。RR-HNKサリチル酸塩は非吸湿性である。
【0101】
<一般的方法C:臭化水素酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸>
一般的方法Cを実施した。この場合、1.03当量の酸を1.4体積のエタノールと共に撹拌した。得られた混合物の各々に1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む2.2体積エタノールの溶液を添加し、別の0.7体積のエタノールで洗浄した。混合物を最低12時間、室温で撹拌した。
【0102】
(実施例6:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)臭化水素酸塩)
RR-HNK臭化水素酸塩を、一般的方法Cに従い調製した。3.5体積のヘキサンを添加し、撹拌を6時間続け、混合物を静置させた。固体を濾過により回収し、ヘキサンで洗浄し、乾燥させた。39%収率。
【0103】
(実施例7:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)ベンゼンスルホン酸塩)
RR-HNKベンゼンスルホン酸塩を、一般的方法Cに従い調製した。7.2体積のヘキサンを添加し、撹拌を6.5時間続け、混合物を静置させた。溶媒を蒸発させ、残渣をエーテルでトリチュレートした。固体を濾過により収集し、エーテルで洗浄し、乾燥させた。43%収率。
【0104】
(実施例8:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)p-トルエンスルホン酸塩)
RR-HNKp-トルエンスルホン酸塩を、一般的方法Cに従い調製した。7.2体積のヘキサンを添加し、撹拌を5時間続け、混合物を静置させた。溶媒を蒸発させ、残渣をエーテル、続いて、アセトニトリルでトリチュレートした。油のほとんどをデカントして除去し、別々にトリチュレートし、より多くの固体を得た。全ての固体を一緒にすりつぶし、濾過により回収し、より多くのエーテルを使用してフラスコをすすぎ、より多くの油を結晶化させた。固体を合わせ、回収し、再びエーテルで洗浄し、乾燥させた。73%収率。
【0105】
(実施例9:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)エタンスルホン酸塩)
RR-HNKエタンスルホン酸塩を、一般的方法Cに従い調製した。7.2体積のヘキサンを添加し、撹拌を6時間続け、混合物を静置させた。エーテルを添加し、溶媒を蒸発させ、残渣をアセトニトリルでトリチュレートした。油を除去し、固体をフィルタに移し、エーテルおよびアセトニトリルで洗浄し、乾燥させた。フィルタおよびフラスコ洗浄液を油に添加し、より多くの固体を得、これを前に単離した固体と合わせ、固体を再濾過し、アセトニトリルで洗浄し、乾燥させた。82%収率。
図7は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩のXRPDスペクトルである。
【0106】
(実施例10:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)D-グルクロン酸塩)
1.0当量のD-グルクロン酸を5.1体積のエタノールと共に70℃で撹拌し、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む4.2体積のエタノールの溶液、続いて、0.28体積の水を添加した。混合物を、固体の全ての塊が溶解するまで撹拌し、13.3体積のヘキサンを添加し、混合物を撹拌しながら冷却させた。固体を濾過により収集し、エタノールで洗浄し、乾燥させた。55%収率。
【0107】
(実施例11:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)グリコール酸塩)
1.2当量のグリコール酸を7体積のエタノールと共に撹拌し、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む4.2体積のエタノールの溶液を添加した。混合物を70℃まで加熱し、0.56体積の水および13.3体積のヘキサンを添加し、冷却させた。溶媒を蒸発させ、残渣を一晩、アセトニトリル中で静置した。固体を濾過により収集し、フラスコをケーキ上にアセトニトリルですすいだ。固体をアセトニトリルで洗浄し、乾燥させた。85%収率。
図8は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミングリコール酸塩のXRPDスペクトルである。
【0108】
(実施例12:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)カプリン酸塩)
1.05当量のデカン酸を約40℃まで2.8体積のエタノールと共に加熱し、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む4.2体積のエタノールの溶液を添加し、これを0.7volのエタノールですすいだ。1時間後、13.3体積のヘキサンを添加し、混合物を撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を一晩静置した。アセトンによるトリチュレーションにより、非常に少量の白色固体が得られ、これを濾過により収集し、アセトンで洗浄し、乾燥させた。溶剤を蒸発させ、油にし、ヘキサンでトリチュレートし、液体を除去し、残りの残渣をアセトンでトリチュレートし、収集し、アセトンで洗浄し、前の固体と合わせ、乾燥させた。10%収率。
図10は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩のXRPDスペクトルである。この化合物についての別名は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンデカン酸塩であることに注意されたい。
【0109】
(実施例13:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)L-(-)リンゴ酸塩)
1.05当量のL-(-)リンゴ酸を約40℃まで2.8体積のエタノールと共に加熱し、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む4.2体積のエタノールの溶液を添加し、これを0.7volのエタノールですすいだ。4.9体積のヘキサンを添加した。黄色油を分離し、これを固化させ、白色結晶が溶液中で成長した。白色結晶を濾過により収集し、洗浄し(エタノール)、乾燥させた。固化した油を粉砕し、白色粉末を生成させ、エタノールでスラリー化し、濾過により収集し、乾燥させた。49%収率。
【0110】
(実施例14:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)アジピン酸塩)
1.05当量のアジピン酸を約40℃までエタノール中で加熱し、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む4.2体積のエタノールの溶液を添加し、これを0.7volのエタノールですすいだ。14.4体積のヘキサンを添加した。溶媒を蒸発させ、残渣をアセトンでトリチュレートして、白色固体を得、これを除去した。溶剤を蒸発させ、ヘキサンを添加し、溶媒をデカントして除去した。残渣をアセトニトリルと共に撹拌し、結晶を濾過により収集し、アセトニトリルで洗浄し、乾燥させた。21%収率。
【0111】
(実施例15:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)ステアリン酸塩)
1.05当量のステアリン酸を約40℃まで13.9体積のエタノールと共に加熱し、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む4.2体積のエタノールの溶液を添加し、これを1.3volのエタノールですすいだ。混合物を一晩、冷却させた。ろう様外観を有する固体の薄いシートを濾過により収集し、エタノールで洗浄し、乾燥させた。28%収率。
図9は(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩のXRPDスペクトルである。
【0112】
(実施例16:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)フマル酸塩)
0.82当量のフマル酸を約60℃まで8体積のエタノールと共に加熱し、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む3.3体積のエタノールの溶液を添加し、混合物を0℃まで冷却させた。3.8体積のヘプタン、続いて、さらに0.22当量の酸を添加した。混合物を再加熱して溶解させ、5.4体積のヘプタンを添加し、冷却させた。混合物を濾過し、固体を2.2体積のヘプタンで洗浄し、別の1.6体積のヘプタンを溶剤に添加した。4時間撹拌した後、溶媒をデカントして除去し、残渣をロータリー・エバポレーターで乾燥させ、次いでアセトニトリルでトリチュレートした。固体を粉砕し、濾過により回収し、アセトニトリルで洗浄し、乾燥させた。36%収率。
【0113】
(実施例17:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)コハク酸塩)
1.05当量のコハク酸を約60℃まで8体積のエタノールと共に加熱し、0.7eqのRR-HNK遊離塩基を含む3.3体積のエタノールの溶液を添加し、混合物を冷却し、5体積のヘプタンを添加した。およそ0.3eqの新たに調製したRR-HNK遊離塩基を1.8体積のエタノールを用いて添加した。別の7.2体積のヘプタンを添加し、混合物を撹拌した。溶媒の一部を蒸発により除去し、さらに10.8体積のヘプタンを添加した。溶媒をデカントして除去し、残渣をロータリー・エバポレーターで乾燥させ、次いでアセトニトリルでトリチュレートした。固体を濾過により回収し、アセトニトリルで洗浄し、乾燥させた。32%収率。
【0114】
(実施例18:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)マロン酸塩)
1.03当量のマロン酸を2.2体積のエタノールと共に撹拌し、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む2.2体積のエタノールの溶液を添加し、別の0.7体積のエタノールで洗浄した。混合物を室温で最低12時間撹拌し、7体積のヘキサンを添加し、撹拌を顆粒状固体が形成するまで続け、これを濾過により回収し、ヘキサンで洗浄し、乾燥させた。91%収率。
【0115】
(2R,6R)ヒドロキシノルケタミンマロン酸塩のDSC曲線、DVS等温線プロファイルおよびX線粉末ディフラクトグラムがそれぞれ、
図1、
図2、および
図3に示される。マロン酸塩の結晶化はかなり直接的で、結晶材料が容易に得られた。DSC曲線は高い融点および良好な融解エンタルピーを示し、低温イベントは示さない。X線粉末ディフラクトグラムはDVS実験前後に取得した(
図3)。RR-HNKマロン酸塩は非吸湿性である。
【0116】
(実施例19:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)L-酒石酸塩)
1.03当量のL-酒石酸を2.9体積のエタノールと共に約50℃で撹拌し、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む2.2体積のエタノールの溶液のおよそ3分の2を添加し、混合物を硬化させ、ゲルに類似させた。さらに1.4体積のエタノールを、続いて、残りのRR-HNK遊離塩基溶液を添加し、別の1.4体積のエタノールで洗浄した。混合物を80℃まで加熱し、別の5.8体積のエタノールおよび2.9体積の水を添加した。混合物を冷却させ、固体を濾過により回収し、エタノールで洗浄し、乾燥させた。84%収率。
【0117】
(実施例20:2R,6R-ヒドロキシノルケタミン(RR-HNK)D/L-乳酸塩)
1.03当量のD/L乳酸を0.7体積のエタノールと共に撹拌し、1.0eqのRR-HNK遊離塩基を含む2.2体積のエタノールの溶液を添加し、別の0.7体積のエタノールで洗浄した。ヘキサンをエマルジョンが形成し始めるまで徐々に添加し、次いで一晩静置させた。溶媒を蒸発させ、残渣をおよそ1.4から2.2体積のアセトニトリルに溶解させ、エーテルを、混合物がおよそ等しい体積のアセトニトリルとエーテルを有するまで非常にゆっくりと添加した。溶媒を蒸発させ、残渣を水でトリチュレートした。得られた材料を水、イソプロパノールおよびエーテルで洗浄し、乾燥させた。7%収率。
【0118】
表1は、生成された様々な結晶塩についてのブラッグ回折角2θ度(°(2θ))を報告する。
【0119】
【0120】
[特定の実施形態]
実施形態1.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンと有機酸の付加塩であって、有機酸はマロン酸、サリチル酸、エタンスルホン酸、グリコール酸、ステアリン酸、またはカプリン酸である付加塩。
【0121】
実施形態2.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の付加塩である、実施形態1の塩。
【0122】
実施形態3.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の結晶付加塩である、実施形態2の塩。
【0123】
実施形態4.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の結晶付加塩は下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す、実施形態3の塩。
9.4、12.6、および15.2°2θ+/-0.2°2θ
【0124】
実施形態5.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の結晶付加塩は、下記値の1、2、または3つのさらなるピークを有するXRPDスペクトルを示す、実施形態4の塩。
18.7、21.6、および25.7°2θ+/-0.2°2θ
【0125】
実施形態6.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の結晶付加塩は、下記値の1、2、3、4、5、6、または7つのさらなるピークを有するXRPDスペクトルを示す、実施形態4の塩。
13.8、14.4、18.7、21.6、22.7、23.5、および25.7°2θ+/-0.2°2θ
【0126】
実施形態7.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとマロン酸の結晶付加塩は、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトルを示す、実施形態3の塩。
9.4、12.6、13.8、14.4、15.2、17.2、17.7、18.7、20.2、20.7、21.6、22.7、23.5、24.1、25.7、および29.4°2θ+/-0.2°2θ
【0127】
実施形態8.実質的に
図3に示されるXRPDスペクトルを示す、実施形態3の塩。
【0128】
実施形態9.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の付加塩である、実施形態1の塩。
【0129】
実施形態10.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の結晶付加塩である、実施形態9の塩。
【0130】
実施形態11.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の結晶付加塩は、下記値でピークを有するXRPDスペクトルを示す、実施形態10の塩。
9.8、10.2、および25.5°2θ+/-0.2°2θ
【0131】
実施形態12.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の結晶付加塩は、下記値の1、2、または3つのさらなるピークを有するXRPDスペクトルを示す、実施形態11の塩。
16.1、16.7、および20.3°2θ+/-0.2°2θ
【0132】
実施形態13.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の結晶付加塩は、下記値の1、2、3、4、5、6、または7つのピークを有するXRPDスペクトルを示す、実施形態10の塩。
9.8、10.2、16.1、16.7、20.3、22.1、および25.5°2θ+/-0.2°2θ
【0133】
実施形態14.(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンとサリチル酸の結晶付加塩は、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトルを示す、実施形態10の塩。
9.8、10.2、13.4、13.7、16.1、16.7、19.6、19.8、20.3、22.1、22.8、および25.5°2θ+/-0.2°2θ
【0134】
実施形態15.実質的に
図6に示されるXRPDスペクトルを示す、実施形態10の塩。
【0135】
実施形態16.塩は、
下記値でピークを有し:6.0、14.9、および16.5°2θ+/-0.2°2θ、任意で、下記値の1、2、3、または4つのさらなるピークを有するXRPDスペクトル:11.8、18.3、24.2、および25.3°2θ+/-0.2°2θ、あるいは、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトル:6.0、7.1、9.2、10.6、11.5、11.8、12.7、13.7、14.1、14.9、15.8、16.5、18.3、20.4、22.3、23.0、24.2、24.8、および25.3°2θ+/-0.2°2θを示す、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩の結晶形態、
下記値でピークを有し:7.3および8.3°2θ+/-0.2°2θ、任意で、下記値の1または2つのさらなるピークを有するXRPDスペクトル:14.7および16.6°2θ+/-0.2°2θ、あるいは、下記値の1、2、3、4、または5つのピークを有するXRPDスペクトル:7.3、8.3、14.7、16.6、および22.1°2θ+/-0.2°2θを示す、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミングリコール酸塩の結晶形態、
下記値でピークを有し:6.1、6.7、および10.2°2θ+/-0.2°2θ、任意で下記値の1、2、または3つのさらなるピークを有するXRPDスペクトル:11.2、14.2、および37.0°2θ+/-0.2°2θ、あるいは、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトル:4.1、4.5、6.1、6.7、10.2、11.2、14.2、15.6、18.3、20.3、24.4、28.6、32.7、および37.0°2θ+/-0.2°2θを示す、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩の結晶形態、または
下記値でピークを有し:3.0および3.9°2θ+/-0.2°2θ、任意で下記値の1または2つのさらなるピークを有するXRPDスペクトル:8.9および11.6°2θ+/-0.2°2θ、あるいは、下記値の少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、または少なくとも10の任意の組み合わせのピークを有するXRPDスペクトル:3.0、3.9、8.9、11.6、14.3、14.8、17.8、19.3、21.1、21.6、23.8、および28.2°2θ+/-0.2°2θを示す、(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩の結晶形態
である、実施形態1の塩。
【0136】
実施形態17.塩は、
実質的に
図7に示されるXRPDスペクトルを示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンエタンスルホン酸塩の結晶形態、
実質的に
図8に示されるXRPDスペクトルを示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミングリコール酸塩の結晶形態、
実質的に
図9に示されるXRPDスペクトルを示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンステアリン酸塩の結晶形態、または
実質的に
図10に示されるXRPDスペクトルを示す(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミンカプリン酸塩の結晶形態
である、実施形態1の塩。
【0137】
実施形態18.結晶形態は、検出可能な量の、X線粉末回折により決定される他のヒドロキシノルケタミンまたはヒドロキシノルケタミン塩結晶形態を含まない、実施形態3-8および10-17のいずれか一つの塩。
【0138】
実施形態19.実施形態1-18のいずれか一つの塩と薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、特定的には、医薬組成物は固体経口医薬組成物である、医薬組成物。
【0139】
実施形態20.うつ病性障害、不安症、精神病性うつ病、自殺念慮、重篤気分調節症、持続性うつ病性障害(気分変調症)、月経前不快気分障害、物質/薬剤誘発うつ病性障害、別の医学的状態が原因のうつ病性障害、他の特定のうつ病性障害、不特定うつ病性障害、分離不安症、場面緘黙症、特定恐怖症、社交不安症(社会恐怖症)、パニック障害、パニック発作(特定用語)、広場恐怖、全般不安症、物質/薬剤誘発不安症、別の医学的状態が原因の不安症、他の特定の不安症、快感消失、外傷後ストレス障害、不特定不安症、または疲労を治療する方法であって、方法は、有効量の、実施形態1-18のいずれか一つの塩、または実施形態19の医薬組成物を、そのような治療が必要な患者に投与することを含む、方法。
【国際調査報告】