IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティーの特許一覧

<>
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図1
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図2
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図3
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図4
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図5
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図6
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図7
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図8
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図9
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図10
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図11
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図12
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図13
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図14
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図15
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図16
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図17
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図18
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図19
  • 特表-放射線治療の為の予防的な皮膚処置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】放射線治療の為の予防的な皮膚処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/16 20060101AFI20230120BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230120BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
A61K31/16
A61P43/00 105
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529271
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(85)【翻訳文提出日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 US2020056421
(87)【国際公開番号】W WO2021101646
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/938,209
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ワン,デリック,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ロンゲーカー,マイケル,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ガートナー,ジェフリー シー.
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA16
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA41
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB21
(57)【要約】
放射線治療に先立って皮膚を予防的に処置する事に依って皮膚線維化を縮減する方法が本願に記載される。方法は、例えば処置部位に於いて癌の処置の間に放射線に付され得る皮膚に有効量のDFOを適用する事を包含する。DFOは経皮投与され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法が:
放射線処置に先立って第1の期間に渡って処置部位に於いて対象の皮膚の領域に有効量のDFOを投与する事と;
第2の期間に於いて有効量のDFOを皮膚の領域に投与する事と;
第2の期間に於いて放射線を皮膚の領域に投与する事と;
放射線処置の爾後の第3の期間に渡って有効量のDFOを皮膚の領域に投与する事と、
を含む、放射線誘発線維化を減少させる方法。
【請求項2】
有効量のDFOを皮膚の領域に投与する事がDFOを経皮送達する事を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有効量のDFOを皮膚の領域に投与する事が、処置部位に於いて皮膚の領域の表面に経皮送達デバイスを適用する事を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
経皮送達システムが逆ミセルに内包されたDFOを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
処置部位に於いて皮膚の領域の表面に経皮送達デバイスを適用する事が、更に、第1、第2、及び第3の期間の其々に於いて選択された時間的インターバルで新たな経皮送達デバイスを適用する事を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
選択された時間的インターバルが12時間から36時間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
選択された時間的インターバルが毎日である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
第1の期間が3日から21日である、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
第2の期間が5日から10週である、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
第2の期間に於いて放射線を投与する事が、更に、第2の期間の第1の部分に渡って放射線を投与し爾後に第2の期間の第2の部分に渡って放射線を投与しないパターンで放射線を投与する事を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
放射線を投与し爾後に放射線を投与しないパターンが、第2の期間に於いて3から10回繰り返される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2の期間に於ける時間の第1の部分が3日から7日であり、時間の第2の部分が4日から10日である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第3の期間が2週から8週である、請求項1~12の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2019年11月20日出願の米国出願第62/938,209号の利益を主張する。此れは其の全体が参照に依って本願に組み込まれる。
【0002】
参照に依る組み込み
本明細書に於いて言及される全ての公開及び特許出願は、各個々の公開又は特許出願が参照に依って組み込まれる事を具体的に且つ個々に指示される場合と同じ程度に、其れ等の全体が参照に依って本願に組み込まれる。
【0003】
連邦出資の研究についての申し立て
本発明は国立衛生研究所に依って授与された契約DE026914の政府の支援に依って成された。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0004】
此の発明は放射線治療の為の予防的な皮膚処置に関する。
【背景技術】
【0005】
心臓病の後で、癌は米国に於ける死の主因の儘であり、2017年には、見積もられる160万の新たな癌症例が診断され、600,000の癌関連死が予測される。然し乍ら、近年、医学的ケアの実質的な進歩が手術、化学療法、及び放射線治療について成されており、癌サバイバーの数及び其れ等の生残の長さ両方を増大させている。此の改善に依って、例えば放射線治療に依る癌の処置に関する長期的な問題が益々明らかに成っており、クオリティ・オブ・ライフに大いにインパクトを及ぼす事が示されている。放射線誘発軟部組織傷害は放射線療法の最も普通の副作用の1つであり、患者の90%超を冒し、齎される軟部組織萎縮及び線維化は重度の美容の及び長期的な機能の減損両方に至り得る。
【0006】
放射線治療は多くの悪性物の処置に於ける主力である。然し乍ら、放射線治療は、齎される乏血管性、線維化、及び萎縮を伴う周囲の組織の副次的損傷を引き起こし得、損傷した組織は再建する事が困難であり得る。不可避的に、放射線治療(RT)は病的レベルの進行性の皮膚線維化に関連する。
【0007】
米国に於いては、560万超の軟部組織再建術が毎年行われ、過半数は腫瘍摘除及びアジュバント放射線治療の後遺症に関係する。上に重なる無傷の上皮に依ってであっても、下に重なる不十分な軟部組織は目に見える非対称性及び輪郭異常を齎し、不安定な創傷と、骨、インプラントされたハードウェア、及び大血管を包含する枢要な臓器及び構造の不充分な保護とにもまた寄与し得る。放射線治療は種々の腫瘍の局部再発リスクを縮減する事に途方もなく有効である事が示されているが、微小血管の閉塞及び線維化を齎す隣接する軟部組織の副次的損傷は、再建戦略を有意に複雑化し得る。
【0008】
慢性の放射線傷害は、表皮菲薄化、真皮コラーゲンの好酸球性の均一無構造化した硬化、散在した大きい且つ異型の線維芽細胞、及び深部血管の内腔閉塞を伴う線維性の肥厚を特徴とする。血管損傷及び線維化の発生は放射線誘発サイトカイン発現、活性酸素種の生成、及び細胞のアポトーシスから齎されると思料され、斯かる不適部位の軟部組織再建は極めて難しい儘である。放射線後の軟部組織の欠如に対処する為の自家脂肪移植は益々ポピュラーに成っているが、線維炎症性変化及び乏血管性が、より不良な脂肪移植片アウトカムに関連している。細胞補助下脂肪移植では、改善された保持が指摘されているが、吸引脂肪組織を濃縮する為に用いられる間質細胞間の機能的不均一性は、腫瘍後の局所領域再発についての懸念と併せて、此の戦略の普及した採用を限定している。デフェロキサミン(DFO)は、急性の鉄中毒と慢性の鉄過剰症とについてFDA承認された鉄キレート薬であり、此れは血管新生を増大させる事もまた示されている。DFOは低酸素誘導因子1アルファ(HIF-1α)活性を増大させる事及び血管新生成長因子の発現を向上させる事が実証されている。研究は、DFOの局部注射がマウス及びブタモデル両方に於いて虚血性のフラップの生残を改善する事をもまた示しており、増大した皮膚フラップ血液灌流及び毛細血管密度がDFO処置された動物では指摘される。更に其の上、放射線照射される骨の場面設定では、複数の報告は、DFOが向上した血管分布に依って仮骨延長術後の骨再生を促進する事を見出している。
【0009】
健康な対象に於ける脂肪移植片生残を改善するポテンシャルを有する血管新生薬剤及び抗酸化剤としてのDFOのポテンシャルもまた研究されており、整形手術の脂肪移植片の生存率を増大させる為の其の使用が提案されている。重要な事に、最近、DFOはラットモデルに於いて脂肪移植片生存率を促進する事が示唆された。然し乍ら、DFO注射された脂肪移植片では、細胞アポトーシスの変化は認められなかったが、より多くの炎症及び線維化が指摘された。各注射に依る脂肪移植片の繰り返しの操作は此の観察に寄与し得た。加えて、内在する間質細胞の脂肪分化が長期的な脂肪移植片保持に寄与する事が主張されており、脂肪移植片に対するDFOの直接的暴露は此のプロセスに有害であり得る。研究は、DFO投与に依る細胞内鉄欠乏が脂肪細胞分化を重度に鈍らせる事を示している。其れ故に、此れ等の知見は脂肪移植片へのDFOの直接注射に対する熱意を冷ます。
【0010】
放射線誘発線維化(RIF)の為の現行の処置オプションは限定される。脂肪移植に先立って照射組織に注射される時に、鉄キレート剤デフェロキサミン(DFO)は皮膚血管形成を改善する事が先に示されている。出願人は放射線照射に先立つ及び直後のDFOの外用送達の方法を記載し、此れは皮膚に対する放射線損傷の慢性の効果を緩和し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
放射線誘発線維化を減少させる方法が提供され、方法は:放射線処置に先立って第1の期間に渡って処置部位に於いて対象の皮膚の領域に有効量のDFOを投与する事と;第2の期間に於いて有効量のDFOを皮膚の領域に投与する事と;第2の期間に於いて放射線を皮膚の領域に投与する事と;放射線処置の爾後の第3の期間に渡って有効量のDFOを皮膚の領域に投与する事とを包含する。
【0012】
幾つかの変形では、有効量のDFOを皮膚の領域に投与する事はDFOを経皮送達する事を包含し得る。有効量のDFOを皮膚の領域に投与する事は、処置部位に於いて皮膚の領域の表面に経皮送達デバイスを適用する事を包含し得る。幾つかの変形では、経皮送達システムは逆ミセルに内包されたDFOを包含し得る。
【0013】
幾つかの変形では、処置部位に於いて皮膚の領域の表面に経皮送達デバイスを適用する事は、更に、第1、第2、及び第3の期間の其々に於いて選択された時間的インターバルで新たな経皮送達デバイスを適用する事を包含し得る。選択された時間的インターバルは約12時間から約36時間であり得る。幾つかの変形では、選択された時間的インターバルは毎日である。
【0014】
幾つかの変形では、第1の期間は約3日から約21日であり得る。幾つかの変形では、第2の期間は約5日から約10週であり得る。幾つかの変形では、第3の期間は約2週から約8週、又はより多くであり得る。
【0015】
幾つかの変形では、第2の期間に於いて放射線を投与する事は、更に、第2の期間の第1の部分に渡って放射線を投与し爾後に第2の期間の第2の部分に渡って放射線を投与しないパターンで放射線を投与する事を含む。幾つかの変形では、放射線を投与し爾後に放射線を投与しないパターンは、第2の期間に於いて約3から10回繰り返され得る。幾つかの変形では、第2の期間に於ける時間の第1の部分は約3日から約7日であり、時間の第2の部分は約4日から約10日である。
【0016】
本発明の新規の特徴は後続する請求項に於いて特定して提出される。本発明の特徴及び利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される例解的な実施形態を提出する次の詳細な記載と、付属する図面との参照に依って得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に従う放射線照射される組織の処置の概略を示す。
図2A図2Aは、放射線照射前の、放射線照射後の、及び生理食塩水又はDFO何方かに依る処置後のマウス頭皮のヒートマップの代表的な写真を示す。より暗いエリアはより低い灌流を表し、より明るいエリアはより高い灌流を表す。
図2B図2Bは、放射線照射されたマウス頭皮からのレーザードップラー灌流指数の定量を示す。DFO処置(T)は生理食塩水注射と比較して4つの処置(T4)後に灌流の有意上昇を引き起こし、5つの処置(T5)後にプラトーに達した(*p<0.05)。
図3A】乃至
図3B図3A~Bは、DFO(図3A)又は生理食塩水(図3B)何方かでプレコンディショニングされた放射線照射された頭皮の8週後の脂肪移植片の代表的な3次元再建である。
図3C図3Cは、脂肪移植片体積の定量が、6及び8週後に、生理食塩水処置された頭皮(下側の線)と比較される時に、DFO処置された頭皮(上側の線)に定置した脂肪移植片の有意に増大した保持を明らかにしたという事を示す(*p<0.05)。
図4A】乃至
図4E図4A~Eは、CD31の免疫蛍光染色に依る頭皮皮膚の20×倍率で取られた代表的な画像に依って、放射線照射された頭皮の血管分布の組織学的評価を示し、DFOプレコンディショニングに依る増大した血管分布を示す。スケールバーは100μmを表す。
図5図5は、CD31免疫蛍光染色の定量が、放射線照射後に有意な降下を明らかにしたという事を示す。有意な改善がDFO処置で指摘され、血管分布は脂肪移植では更に向上した(*p<0.05)。
図6A】乃至
図6B図6は脂肪移植後のレーザードップラー分析を示す。図6Aは、脂肪移植後の生理食塩水(上段)及びDFO(下段)処置された組織頭皮の代表的なLDA画像を示す。より暗いエリアはより低い灌流を表し、より明るいエリアはより高い灌流を表す。図6Bでは、レーザードップラー灌流指数の定量は、DFO処置された頭皮(上側の線)が、脂肪移植の2週後に、生理食塩水処置された頭皮(下側の線)よりも有意に高い灌流を有するという事を実証した(*p<0.05)。両方の群は脂肪移植後に増大した灌流を実証し、有意な違いは第2週後には認められなかった。
図7A】乃至
図10図7~10は、脂肪移植後の放射線照射された頭皮の組織学の評価を示す。図7A~Eは、放射線照射されない健康な皮膚、生理食塩水又はDFO処置後の放射線照射された皮膚、並びに生理食塩水又はDFO処置及び脂肪移植後の放射線照射された皮膚の10×倍率の代表的なH&E染色切片を示す。スケールバーは200μmを表す。図8は、真皮厚さの定量が放射線後の有意な増大を実証し、生理食塩水又はDFO処置された皮膚の間に違いがなかったという事を示す。両方の処置群は脂肪移植後に有意な縮減を実証した(*p<0.05)。図9A~Eは、放射線照射及び生理食塩水又はDFOプレコンディショニング、次に脂肪移植後のポジティブ染色されたコラーゲンの密度を実証する20×倍率の代表的なピクロシリウスレッド染色切片を示す。スケールバーは100μmを表す。図10は、生理食塩水又はDFO処置に拘らず、コラーゲン含量の定量が、放射線後のコラーゲンの有意な増大を明らかにしたという事を示す。両方の群は脂肪移植後に有意な縮減を実証した(*p<0.05)。
図11図11は、脂肪移植の1週後に、DFO経皮送達システムに依って前処置された頭皮(上側の線)が、DFOを欠く経皮送達システムに依って前処置された頭皮(下側の線)よりも有意に高い灌流を有するという事をレーザードップラー灌流指数の定量が実証したという事を示す(*p<0.05)。
図12図12は、マウス頭皮の代表的なLDA画像を示す。灌流を、放射線治療に先立つマウス(最も左の画像)に於いて、経皮送達デバイスに依って送達されるDFOに依って前処置された実験群(上側の2つの画像)に於いて、及びDFOなしの経皮送達デバイスに依って前処置された対照群(下側の2つの画像)に於いて、放射線治療の終了の直後及び1週後に示す。
図13図13は、脂肪移植片体積の定量が、1及び2週後に、対照(DFOなし)処置された頭皮(下側の線)と比較される時に、DFO処置された頭皮(上側の線)に定置された脂肪移植片の有意に増大した保持を明らかにしたという事を示す。
図14図14は、DFO(上側)又は対照(下側)何方かでプレコンディショニングされた放射線照射された頭皮の2週後の脂肪移植片の代表的な3次元的再建を示す。
図15A】乃至
図16図15A~C及び16は、健康なマウス、DFO経皮送達デバイスに依って処置されたマウス、及びDFOなしの経皮送達デバイスに依って前処置されたマウスについて、皮膚剛性データを示す。
図17A】乃至
図17C図17Aは、DFOが如何に経皮送達システム(TDDS)に依って外用送達され得るかの概略図を示す。DFOはモノリシック層に沿って含有され、生分解性ポリマー中に分散され、其のアモルファス形態を安定化及び24時間の組織浸透を促進する為にPVPと複合体化される(矢印)。図17Bは、DFOの予防的な投与を示す実験の4つの実験群及びタイムラインの概略図である。第1群マウス(図17Bの横列1)は放射線照射単独を受けた(DFOなしIR)。第2群マウス(図17Bの横列2)放射線照射、次にDFO処置(IRtxDFO)。第3群マウス(図17Bの横列3)はDFO処置に依って先行及び後続両方をされる放射線照射を受けた(IRppxDFO)。第4群マウス(図4の横列4)放射線照射なし且つDFOなし(IRなし)(n=4/群)。図17CはDFOパッチが留められたマウスの写真の図である。DFO-TDDSがロイコテープに接着され、マウス頭皮に固定化された。吻側及び尾側端のスーパーグルーの細片と3つのアンカースーチャーとを用いた。インサイチュのDFO-TDDSが俯瞰(左)及び側面(右)視点から示されている。図17A~17Bの略語は次の通りである:DFO-デフェロキサミン、Gy-グレイ、IR-放射線照射、ppx-予防的、tx-治療的。
図18A】乃至
図18D図18Aは、レーザードップラー分析(LDA)の為に用意されたCD1ヌードマウスの写真の図であり、対象領域(ROI)は上に重なる白色の枠に依って表されている。放射線照射されたマウス頭皮のレーザードップラー分析(LDA)。図18Bは、マウス頭皮の代表的なヒートマップのグラフ提示であり、放射線照射の直後の(左;DFOの予防的なDFO-TDDS処置なし[上段]及びあり[下段])及び放射線照射の6週後の(右)灌流を示す。黒色/暗青色はより低い灌流を表し、黄色/赤色はより高い灌流を表す。図18C及び18Dは、放射線照射の直後の(18C)及び放射線照射の6週後の(18D)レーザードップラー灌流指数の定量を示す。図18A~18Cの略語は次の通りである:DFO-デフェロキサミン、Gy-グレイ、IR-放射線照射、ppx-予防的、tx-治療的。
図19A】乃至
図19B図19Aは、マウスの全ての4つの群の血管密度を示す免疫組織化学染色の写真の図である。内皮細胞がCD31に依って染色され(PECAM、赤色)、核がDAPIに依って染色された(青色)。スケールバー100μm。図19Bは、マウスの全ての4つの群のCD31について陽性の平均のピクセルの定量のグラフ図である。放射線照射されないマウスの皮膚は、DFO処置を受けない(****p<0.0001)及び放射線照射後にのみDFOを受けた(***p<0.001)放射線照射されたマウスの皮膚よりも有意に多く血管形成した。連続的DFO処置を受けたマウスの皮膚は、DFOを受けなかった放射線照射されたマウスの皮膚よりも有意に多く血管形成した(*p<0.05)。図19A~19Bの略語は次の通りである:DFO-デフェロキサミン、IR-放射線照射、ppx-予防的、tx-治療的。
図20A】乃至
図20C図20Aは、ヘマトキシリン及びエオジン(上段の横列)並びにピクロシリウスレッド染色された組織切片を包含する染色皮膚切片の写真の図であり、全ての4つの処置群のマウスに於ける組織学的構造及びコラーゲン線維ネットワークを示す。エラーバー:100μm(上段の横列)、50μm(下段の横列)。黒色の点線は真皮厚さを示す。図20Bは、全ての4つの処置群のマウスの真皮厚さの定量のグラフ図である。放射線照射されない皮膚は放射線照射された皮膚よりも菲薄であり(全て****p<0.0001)、DFO処置は真皮厚さを減少させる傾向があった。最も多大な利益は、放射線照射後のみのDFOと比較して、連続的DFO処置を受けたマウスで見出された。図20Cは、全ての4つの条件のマウスのコラーゲン線維ネットワークパラメータの群化を表すT分布型確率的近傍埋め込み(TSNE)プロットのグラフ図である。連続的DFO処置を受けたマウス皮膚のコラーゲン線維(「IRppxDFO」;赤色)は、TSNEプロットの最も右に於いて最も明瞭且つ一緒にクラスター化して見える。図20A~20Cに用いられる略語は次の通りである:DFO-デフェロキサミン、H&E-ヘマトキシリン及びエオジン、IR-放射線照射、ppx-予防的、tx-治療的。
【発明を実施するための形態】
【0018】
2019年迄には、200万の新たな患者が米国に於いて癌と診断され、此れ等の患者の半分よりも多くは遂には放射線治療(RT)を受けるであろうという事が見積もられている。増大している生残率に依って、癌処置の後期の影響が更により明らかに成りつつある。皮膚の線維化損傷はRT投与に於ける最も重要な線量制限要因である。皮膚はRTに対して極めて敏感であり、患者の95%よりも多くは急性の皮膚反応を経験する。急性の皮膚損傷は、数週から数年間で、低灌流及び低酸素に至る真皮硬結及び微小血管肥厚を特徴とする放射線誘発皮膚線維化(RIF)迄不可避的に進行する。RIFが重度である時には、可動域及び筋肉強さの喪失を包含するクオリティ・オブ・ライフに実質的にインパクトを及ぼし得る有意な美容上及び機能上の帰結が齎され得る。RIFの発症機序は多因子的であり、不完全に理解された儘である。過剰な軟部組織線維化に寄与する鍵の因子は、フリーラジカルの生成、線維芽細胞の活性化、及び微小血管内皮細胞の損傷を包含する。
【0019】
RIFの現行の処置は限定され、少数しか良好に設計された治験に於いて有意な利益を示さず、此の合併症を緩和する為の有効な予防レジメンは存在しない。また、心血管患者の血流を改善する為に元々開発されたメチルキサンチン誘導体ペントキシフィリンは11、特にビタミンEとの組み合わせで用いられる時には、RIFを減少させ、組織機能を改善する。ペントキシフィリンの有益な作用は、大きくは、局所領域血流を向上し、血液粘度及び全末梢血管抵抗を減少し、並びに其れ故に組織の低酸素を縮減する其の能力に依って駆動されると思料される。此の報告された利益にも拘らず、有意な数の患者が重度の副作用を経験し、不良な忍容性及びコンプライアンスが臨床的にペントキシフィリンの使用を有意に限定する。
【0020】
本発明は、デフェロキサミンの投与に依って、癌の放射線療法(RT)を経過する患者(partient)に於ける瘢痕形成及び身体機能の限定に至る皮膚線維化の長期的な発生を予防的に最小化する為の方法を提供する。幾つかの変形では、此の方法は自家脂肪移植との組み合わせで行われ得る。
【0021】
脂肪移植に先立つデフェロキサミン(DFO)の皮下注射は、先に放射線照射された部位の軟部組織血管分布及び爾後の移植片保持を向上させるという事が実証されている。DFOは米国食品医薬品局(FDA)承認薬剤であり、鉄過剰症に関連する状態を処置する為に普通に用いられる。其の鉄キレートメカニズムに依って、DFOは低酸素誘導因子1アルファ(HIF1α)を安定化する。此れは核に移行し、血管内皮増殖因子(VEGF)及び内皮一酸化窒素シンターゼを包含する幾つもの強力な血管新生促進遺伝子の転写因子として作用する。下流の結果は、改善された組織血管形成である。数々の研究は、DFO処置が、皮膚フラップ、放射線照射された骨、及び糖尿病性足潰瘍に関連する物を包含する組織の低酸素の状態に於ける血管形成を改善するという事を見出している。皮膚の放射線損傷は遅い進行性のプロセスであり、此れは完全な時には後退させる事が特に困難である。故に、理想的な処置レジメンは、本質的に予防的であるか、又は此の病理プロセスの最も早期の段階を標的化するか何方かであろう。放射線照射に先立つ及び直後の新規の薬物経皮送達システム(TDDS)を用いる外用DFO処置は、皮膚内に於いて、組織血管分布を改善し及び後期の慢性RIFの下流の重症度を緩和し得る。
【0022】
RTに依って処置された殆どの患者では、皮膚線維化及び其の長期的な後遺症は、高頻度の且つ多くの場合には避けられない副作用である。審美的な懸念に加えて、此れは組織の形態及び機能を有意に変改し、患者のクオリティ・オブ・ライフに対する大いなるインパクトを有し得る。RIFは放射線処置後に数ヶ月及び数年間で悪化する進行性の疾患である。故に、RTに先立ってRIFを防止する事、又は其の発生の最も早期の段階を標的化する処置は、より後期の下流の増幅を防止し得、其れ故に最も多くの治療上の利益を提供し得る。出願人は、DFOの外用投与が皮膚血管形成及び灌流を増大させ、其れに依ってRIFの1つの鍵の様相を緩和し得るという事を発見した。最も有益な効果は、放射線照射前に、間に、及び後に投与される予防的なDFO処置の為の本願に記載される方法で得られ得る。
【0023】
RIFが皮膚に顕れる主要なメカニズムは、放射線照射された微小血管の損傷に依ってである。RT後の最初の24時間には、白血球が血管に浸潤し、フィブリンプラグが形成する。血管を裏打ちする内皮細胞は爾後に膨潤し、過形成を経過し、血管周囲の線維化、小血管閉塞、低灌流、及び究極的には組織の低酸素に至る。低い酸素分圧の条件は、コラーゲン1型アルファ1(COL1A1)の増大した発現を刺激し、組織線維化の発生を促進する。放射線が皮膚血流を有意に縮減するという事を示す為には、CD31染色に加えて、レーザードップラーイメージングが血管密度の代理尺度として用いられ得る。脂肪移植に先立つ放射線照射された組織へのDFOの皮下注射は、上に重なる皮膚の灌流を増大させ得、其れに依ってRTの線維化効果を緩和し得るという事が先に示されている。出願人は、皮膚がRTに先立ってコンディショニングされる時に、新規のTDDSに依る外用DFO投与が有意な利益を授け得るという事を此処で初めて示す。
【0024】
DFOの保護的な役割は其の下流の血管新生促進効果に関係し得るという事が蓋然的である。DFOはFDA承認された鉄キレート剤であり、此れは虚血性の且つ放射線照射された組織の場面設定に於いて最近の利益を示している。DFOは鉄をキレートし、此れは、高まったHIF1αと、其れ故に、VEGFの様な幾つもの強力な血管新生促進遺伝子の増大した発現とに至る。DFOに依って患者を予防的に処置する事は、RT直後の期間に於いて頭皮灌流に有意な利益を齎し得る。更に其の上、予防的な処置は放射線後処置単独よりも有意に有効であり得る。RTは待期的な処置であり、多くの場合には数週又は数ヶ月事前に計画されるので、此の早期のタイムウィンドウに於いて皮膚を標的化する事は臨床的に実現可能であり、皮膚線維化の中等度の緩和であっても癌患者への大いなる橋渡し上の利益を有し得る。
【0025】
従って、放射線誘発線維化を減少させる方法が本願に於いて提供され、方法は:放射線処置に先立つ第1の期間に渡って処置部位に於いて対象の皮膚の領域に有効量のDFOを投与する事と;第2の期間に於いて皮膚の領域に有効量のDFOを投与する事と;第2の期間に於いて皮膚の領域に放射線を投与する事と;放射線処置の爾後の第3の期間に渡って皮膚の領域に有効量のDFOを投与する事とを包含する。
【0026】
皮膚の領域に有効量のDFOを投与する事は、DFOを経皮送達する事を包含し得る。皮膚の領域に有効量のDFOを投与する事は、処置部位に於いて皮膚の領域の表面に経皮送達デバイスを適用する事を包含し得る。幾つかの変形では、有効量の(if)DFOを投与する事は、処置部位の皮膚の領域周囲の皮膚の領域を包含し得る。周囲の皮膚の領域のエリアは、処置部位に於ける皮膚の領域のエリアの(than)約5%、10%、25%、50%、又はより多くであり得る。幾つかの変形では、経皮送達システムは逆ミセルに内包されたDFOを包含し得る。
【0027】
処置部位に於いて皮膚の領域の表面に経皮送達デバイスを適用する事は、更に、第1、第2、及び第3の期間の其々に於いて選択された時間的インターバルで新たな経皮送達デバイスを適用する事を包含し得る。選択された時間的インターバルは、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約24時間、約28時間、約32時間(about)、約36時間、約48時間、又は其れ等の間の何れかの時間数であり得る。幾つかの変形では、選択された時間的インターバルは毎日である。
【0028】
幾つかの変形では、第1の期間は約3日、約5日、約7日、約10日、約14日、約18日、約21日、又は其れ等の間の何れかの日数であり得る。幾つかの変形では、第2の期間は約5日から約10週であり得る。幾つかの変形では、第3の期間は約2週、約3週、約4週、約6週、約8週、又はより多くであり得る。
【0029】
幾つかの変形では、第2の期間に於いて放射線を投与する事は、更に、第2の期間の第1の部分に渡って放射線を投与し爾後に第2の期間の第2の部分に渡って放射線を投与しないパターンで放射線を投与する事を含む。幾つかの変形では、放射線を投与し爾後に放射線を投与しないパターンは、第2の期間に於いて約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10回、又はより多く繰り返され得る。幾つかの変形では、第2の期間に於ける時間の第1の部分は約3日、約4日、約5日、約6日、又は約7日であり、時間の第2の部分は約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、又はより多くである。
【0030】
本発明の別の態様は、放射線照射される軟部組織部位をDFOに依ってプレコンディショニングして、脂肪移植片の移植に先立って血管分布を向上させる方法を提供する。典型的には、HIF-1αはプロリルヒドロキシラーゼドメイン含有蛋白質2(PHD2)に依って分解される。DFOは、PHD2活性の鉄補因子のキレートに依ってHIF-1αを安定化し、下流の血管新生因子の増大及び内皮前駆細胞の動員に至るという事が示されている。此れは、DFOが虚血性の皮膚フラップの血管再形成を促進し、糖尿マウスに於ける創傷治癒を向上させ、放射線照射された骨傷害部位に於けるカルスサイズ、石灰化、及び機械的強さを増強すると思料されているメカニズムである。更に其の上、放射線誘発乏血管性の後退もまた下顎仮骨延長術の間のDFO処置で認められている。此れ等の知見の全ては、HIF-1αの安定化及び増大した血管新生遺伝子発現に依って、爾後の脂肪移植の為の放射線照射された受容側部位をプレコンディショニングするDFOのポテンシャルを支持する。
【0031】
脂肪移植片の移植前にDFOに依って脂肪移植片部位に於いて放射線照射組織をプレコンディショニングする事は、脂肪移植片のより早期の血管再形成を容易化する。此の方法に従う処置された皮膚の組織学的分析は、脂肪移植片がDFOに依ってプレコンディショニングされた受容側部位に定置された時に、増大した血管分布を明らかにした。此れは向上した体積保持への橋渡しである。興味深い事に、DFOに関係する効果は4つの処置後にプラトーに達し得るが、DFO処置された放射線照射された組織への脂肪移植片の追加は、血管分布の更なる改善に至る。此れは、脂肪移植後の血管分布を改善する為の、移し入れられた脂肪細胞及び関連する間質細胞に依る代替的なメカニズムもまた使用され得るという事を示唆する。最後に、皮膚血管分布に対するDFO処置の効果は、脂肪移植後の減少した真皮厚さ及びコラーゲン含量と比較して、真皮厚さ及びコラーゲン含量の有意な変化に関連しない。脂肪移し入れに副次的な減少したコラーゲンを有する真皮で観察されるアーキテクチャ変化は、必ずしも改善された血管分布単独の結果ではなくあり得る。
【0032】
放射線線維化及び軟部組織萎縮を有する患者では、脂肪移植に先立って連続DFO注射に依って組織をプレコンディショニングする事は、ロジスティクス的に困難であり得、患者に依って良好に忍容され得ない。脂肪移植片移植に先立つ及び/又は後の放射線照射組織へのDFOの経皮送達は、直接注射に依るDFOの送達の代替として用いられ得る。また、斯かるアプローチは、脂肪移植の為に放射線照射組織をプレコンディショニングする事に潜在的に有効であり得、蓋然的には患者に依ってより良好に忍容されるであろう。代替的には、DFOのナノ粒子製剤もまた開発されており、DFOの其れ等の制御放出は、類似に、放射線照射皮膚の血管分布を改善する為に使用され得る。また、此れ等のナノ粒子はより早期の血管再形成を促進する為に脂肪移植片と共に直接注射され得る。
【0033】
DFOはHIF-1αの安定化に依って複数の血管新生因子の発現を促進するので、放射線照射される腫瘍切除後の部位への其の使用については、懸念もまた提起され得る。我々の知る限り、研究はDFOの局部投与後の癌再発の増大したリスクを実証していないが、幾つかの報告は抗腫瘍効果を示唆している。鉄は酸素輸送、細胞代謝、及び成長に必要であり、其れは活発な成長を有する細胞で特に重要である。驚くべき事ではないが、DFO等の鉄キレート剤は肝臓線維化を縮減する事が見出されており、鉄代謝に対する其の効果は肝細胞癌の進行を臨床的に縮減する事が示されている。鉄依存性もまたヒト上皮成長因子受容体2陽性乳癌細胞で報告されており、複数の乳癌細胞株は鉄キレートに対して弱い事が示されている。其れ故に、此れ等の報告は、DFOの局部適用が癌再発の増大したリスクに関連し得ないという事を示唆する。
【0034】
DFO処置は放射線誘発乏血管性を改善し得、此の向上した灌流は脂肪移植の受容側部位の品質を改善し得る。DFO処置後には、放射線照射部位に注射された脂肪移植片の長期的な保持が有意に改善された。
【0035】
移植床の放射線に依って誘発される変改が原因で、放射線照射された組織の再建は難しい儘である。線維炎症性変化及び乏血管性は脂肪移植片保持にインパクトを及ぼす事が示されており、細胞に基づく戦略がアウトカムを改善する事が示されているが、今日迄、規制上の及び安全性の懸念が其れ等の橋渡し上のポテンシャルを限定している。代替的なアプローチとして、放射線照射組織をデフェロキサミンに依ってプレコンディショニングする事は局部灌流を改善し、此れは改善されたラジオグラフィー的な及び組織学的な脂肪移植片アウトカムに関連する。因って、脂肪移植に先立つデフェロキサミンに依るプレコンディショニングは、放射線照射組織の再建アウトカムを向上させる事について有望である。
【実施例
【0036】
実験
例1
成体の60日齢の雄Crl:NU-FoxlNu免疫低下マウスを此の研究の実験に用いた。12匹のマウスを、12日間で其々5Gyの6つの分割された線量として送達されるトータルで30Gyの外照射放射線、次に5週の回復に依って処置した。追加の6匹の放射線照射されないマウスをレーザードップラー分析(LDA)及び皮膚分析の健康な対照として用いた。放射線照射されたマウスを2つの処置群:DFO実験群及び生理食塩水対照群に分けた。回復後に、マウスは、1日置きの真皮の真下のDFO(100μl生理食塩水中に1mg)又は100μlの生理食塩水単独の何方かの注射を、トータルで7つの処置だけ経過した。図1は此の放射線照射頭皮の処置の概略を示す。
【0037】
放射線照射後に、脂肪移植を放射線照射されたマウスに対して行った。インフォームドコンセントが得られた後に、承認されたIRBプロトコール#2188の下で、吸引脂肪組織を他の医学的併存疾患を有さない年齢45、49、及び51の3人の健康な女性ドナーから得た。吸引脂肪組織が15分に渡って沈降する事を許して、層を重力沈殿に依って分離し、其れから油及び血液層を真空吸引に依って除去した。残りの脂肪層を1300rcfで3分に渡って4℃に於いて遠心した。何れかの残りの油及び血液を再び除去し、残りの脂肪を14ゲージ針から注射の為の1ccシリンジに移し入れた。針に依って皮下トンネルを作る事と、其れから針を抜き乍ら逆行的な様式で200μlの吸引脂肪組織を注射する事とに依って、脂肪移植を頭皮の真下に行った。
【0038】
PerimedのPIM3レーザードップラー灌流イメージャー(ダタヴェーゲン、スウェーデン)を用いて、レーザードップラー分析(「LDA」)を行って放射線照射部位に於ける灌流を測定した。LDAに依って生成するシグナルのレーザードップラー灌流指数(LDPI)を比較目的に用いた。LDPIは血液細胞速度及び濃度の積であり、カラースペクトルに依って表され、黒色/暗青色は低い灌流を表し、赤色は高い灌流を表す。LDAは、放射線照射に先立って、放射線照射及び回復の完了後に、並びに其れからDFO又は生理食塩水に依る各処置の24時間後に行った。LDAは脂肪移植後の2週毎にもまた行った。
【0039】
5つの画像を各マウスから取り、5つの画像の平均LDPIを記録した。図2Aは、放射線照射前の、放射線照射後の、及び生理食塩水又はDFO何方かに依る処置後のマウス頭皮のヒートマップの代表的な写真を示す。より暗いエリアはより低い灌流を表し、より明るいエリアはより高い灌流を表す。図2Bは、レーザードップラー灌流指数の定量が放射線照射後の灌流の有意な減少を実証するという事を示す。レーザードップラー分析はDFO処置に依る放射線照射組織の改善された灌流を示す。レーザードップラー分析は、動く赤血球に依って散乱された光の周波数シフトに依って微小循環中のインビボの局部血液灌流の見積もりを可能にする。此れは、DFOに依る各処置後の同じ動物に於ける縦断的測定を容易化した。DFO処置(T)(図2Bの上側の線)は、生理食塩水注射(図2Bの下側の線)と比較して4つの処置(T4)後に灌流の有意上昇を引き起こし、5つの処置(T5)後にプラトーに達した(*p<0.05)。
【0040】
また、マウスは、ベースライン体積測定の為に、脂肪移植片注射の2日後にMicroCAT-IIインビボX線マイクロCTスキャナー(Imtek社;ノックスビル、TN)を用いてイメージングした。其れから、脂肪移植片体積保持をマイクロトモグラフィーを用いて2週毎にトータルで8週間分析し、画像を3次スプライン補間に依って3次元表面として再建した。全ての再建は観察者間のばらつきを避ける為に単一の研究者に依って行われた。
【0041】
皮膚分析の為に、頭皮皮膚生検を放射線の完了後及び其れから脂肪移植の8週後に両方の処置群から収穫した。切片化の為に、標本を4%パラホルムアルデヒド中に於いて固定し、処理し、パラフィンに包埋した。真皮厚さ測定の為に、切片をヘマトキシリン及びエオジン(H&E)に依って染色し、ライカDM5000B光学顕微鏡(ライカマイクロシステムズ;バッファローグローブ、IL)を20×対物で用いてイメージングした。真皮測定を各サンプルからの10個の染色切片について行った。また、ピクロシリウスレッド染色をコラーゲン含量の為に行った。CD31免疫蛍光染色(1:100のAb28364;Abcam;ケンブリッジ、MA及び1:200のAF547;サーモフィッシャーサイエンティフィック;ウォルサム、MA)と細胞核を視覚化する為のDAPI対比染色とに依って、血管分布を決定した。蛍光画像はX-Cite120蛍光照明システム(LumenDynamicsGroup社;オンタリオ、カナダ)を用いて20×対物で得た。CD31染色の定量をImageJ(国立衛生研究所;ベセスダ、MD)を用いて行い、高倍率視野当たりのピクセルが陽性のエリアを測定して、血管密度を決定した(11)。また、真皮厚さ及びCD31免疫蛍光染色両方の比較が放射線照射されない皮膚に対して成された。
【0042】
放射線照射及び5週の回復の完了後に、頭皮の灌流は265.23±7.01LDPI(放射線前のベースライン)から176.70±2.59LDPIに有意に降下する事が指摘された(図2B)。然し乍ら、放射線回復後の1日置きの1mgのDFOに依る頭皮の処置は増大したLDPIを齎し、此れは4つの処置後に有意に成った(205.08±2.30LDPI)(*p<0.05)。然し、DFOの3つの追加の処置は灌流に何れかの有意な増大を齎さなかったので、4つの処置後にLDPI測定の増大は指摘されなかった。対照的に、図2Bの下側の線に依って示される通り、生理食塩水の注射単独は処置クール全体の間にLDPI測定の変化を齎さなかった。
【0043】
統計分析では、データは平均±SEとして提示する。スチューデントの両側t検定を2つの群間の比較に用い、テューキー事後検定に依る分散分析を多群比較に用いた。全ての分析はStatPlusソフトウェア(Analyst-Soft社、アレクサンドリア、Va.)を用いて行った。*p<0.05の値は有意と見做された。
【0044】
脂肪移植片のインビボラジオグラフィー分析は、DFOプレコンディショニングされた放射線照射されたマウスが、2週後に、生理食塩水注射された対照マウス(74.03+7.91)と比較してより多くの脂肪体積(89.24%+1.69)を保持するという事を示した(図3A~C)。脂肪移植片体積保持は、一貫して、DFO処置されたマウス(図3Cの上側の線)では生理食塩水対照マウス(図3Cの下側の線)と比較してより多大であり、6及び8週に於いて、此れ等の違いは統計的に有意であった(第6週:73.17%±4.26DFO対52.40%±4.83生理食塩水処置、第8週:71.75%±3.70DFO対49.47%+4.62生理食塩水処置;*p<0.05)。
【0045】
放射線照射及び生理食塩水対照処置の後に、CD31染色に依って実証される皮膚生検の血管分布は、照射されない健康な皮膚よりも有意に低い事が見出された(*p<0.05)(図4A~E及び図5)。然し乍ら、図4Aに示される通り、DFOに依る放射線照射皮膚の処置は増大したCD31染色を齎したが、此れは健康な皮膚レベルには達しなかった。また、予想される通り、脂肪移植後に、8週後に得られた皮膚生検は、対照の生理食塩水注射された放射線照射皮膚と比較して増大したCD31染色を実証した。興味深い事に、生理食塩水対照脂肪移植マウスに対して相対的に、DFOプレコンディショニングマウスでは脂肪移植後の軽微に多くのCD31染色もまた指摘されたが、此の違いは有意ではなかった。
【0046】
また、脂肪移植後の皮膚の灌流がLDAに依って測定され、LDPI値は、脂肪の定置後の対象領域の3次元アーキテクチャの変化を原因として、DFO又は生理食塩水プレコンディショニングの完了の直後よりも低い事が見出された。然し乍ら、脂肪移植片の注射の2週後には、依然として、有意により多くの灌流がDFOプレコンディショニングマウスに於いて指摘された(生理食塩水対照の65.72±2.02LDPIに対して86.33±2.00;*p<0.05)(図5)。また、灌流は脂肪移植後のDFOプレコンディショニングマウスに於いて増大し続けたが(図6Bの上側の線)、灌流は脂肪移植後の生理食塩水注射された対照マウスに於いて類似に増大し(図6Bの下側の線)、第2週後には、LDAの有意な違いは2つの群間に於いて認められなかった(移植の8週後のDFO及び生理食塩水処置マウスについて其々127.78±2.29対119.18±4.09LDPI;p>0,05)(図6A~B)。
【0047】
最後に、生理食塩水処置後の放射線照射皮膚の真皮厚さは、健康な放射線照射されない皮膚よりも有意に多大であった(*p<0.05)(図7~8)。生理食塩水注射マウス(256.71±16.76pm)と比較して、放射線照射皮膚に対するDFO処置は真皮厚さの軽微な減少を齎したが(242.09±7.22pm)、此れは有意により少なくはなかった。然し乍ら、生理食塩水又はDFOプレコンディショニング部位かどうかに拘らず、脂肪移植は真皮厚さを有意に減少させる事が見出されたが、此れ等の2つの群を比較する時に有意な違いはなかった(p>0.05)。此れ等の知見と対比して、ピクロシリウスレッド染色は、放射線照射及び生理食塩水処置後の有意に増大したコラーゲン含量を明らかにした(*p<0.05)。放射線照射皮膚に対するDFO処置はコラーゲン含量の軽微な減少を齎し、此れは統計的に有意ではなかった。そして、真皮厚さの我々の観察に類似に、生理食塩水又はDFOプレコンディショニング部位かどうかに拘らず、脂肪移植は有意にコラーゲン含量を縮減する事が見出された(*p<0.05)(図9~10)。
【0048】
其れ故に、放射線照射された乏血管性の皮膚へのDFOの局部注射は、レーザードップラー分析に依って測定される灌流を改善した。レーザードップラー分析は、動く赤血球に依って散乱された光の周波数シフトに依って微小循環中のインビボの局部血液灌流の見積もりを可能にした。此れはDFOに依る各処置後の同じ動物に於ける縦断的測定を容易化した。処置された皮膚の組織学的分析は、DFO処置後にCD31染色に依って増大した血管分布をもまた明らかにした。此の時に、脂肪移植片は、DFOプレコンディショニングされた受容側部位に定置された。此れは向上した体積保持への橋渡しであった。興味深い事に、DFOに関係する効果は4つの処置後にプラトーに達する事が見られたが、DFO処置された放射線照射された組織への脂肪移植片の追加は、血管分布の更なる改善に至った。此れは、脂肪移植後の血管分布を改善する為の、移し入れられた脂肪細胞及び関連する間質細胞に依る代替的なメカニズムもまた使用され得るという事を示唆する。最後に、皮膚血管分布に対するDFO処置の効果は真皮厚さ及びコラーゲン含量の有意な変化に関連する事は見出されなかった。
【0049】
例2
成体の60日齢雄Crl:NU-FoxlNU免疫低下マウスを此の研究の実験に用いた。12匹のマウスを、12日間で1日置きの其々5Gyの6つの分割された線量として送達されるトータルで30Gyの外照射放射線、次に1ヶ月の回復に依って処置した。追加の6匹の放射線照射されないマウスをレーザードップラー分析(LDA)及び皮膚分析の健康な対照として用いた。放射線照射されたマウスを2つの処置群:DFO実験群及び対照群に分けた。回復後に、我々(the we)は、DFO実験群の放射線照射された頭皮皮膚に経皮送達システムを適用した。エチルセルロースマトリックス中にポリビニルピロリドン(PVP)に依って安定化された非イオン性界面活性剤に依って逆ミセルに内包されたフィルムの13.4%重量/重量%の濃度のDFOを有する乾燥フィルムを含み、5/8インチの円にカットされ、同じサイズのシリコンシートに依ってカバーされた。同一だがDFOを省いた経皮送達デバイスを対照群マウスの放射線照射頭皮皮膚に適用した。経皮送達システムは2日に渡って其の儘にし、其れから新たなデバイスに取り替えた。放射線照射と経皮送達デバイスの7つの交換に依る処置との後に、上の例1に記載されている通り、脂肪移植を放射線照射マウスに対して行った。
【0050】
上で例1に記載されている通り、レーザードップラー分析(「LDA」)を脂肪移植に先立って及び後に行って、放射線照射部位に於ける灌流を測定した。図11及び12は、DFO経皮送達パッチに依るマウス(図11の上側の線)が、DFOなしの経皮送達デバイスに依って処置されたマウスと比較して血流の有意な改善を示した(*p<0.05)という事を示す。図11は、DFO経皮送達システムに依って前処置された頭皮(上側の線)が、脂肪移植の1週後に、DFOを欠く経皮送達システムに依って前処置された頭皮(下側の線)よりも有意に高い灌流を有するという事をレーザードップラー灌流指数の定量が実証したという事を示す(*p<0.05)。図12は、マウス頭皮の代表的なLDA画像を示す。灌流を、放射線治療に先立つマウス(最も左の画像)に於いて、経皮送達デバイスに依って送達されるDFOに依って前処置された実験群(上側の2つの画像)に於いて、及びDFOなしの経皮送達デバイスに依って前処置された対照群(下側の2つの画像)に於いて、放射線治療の終了の直後及び1週後に示す。より暗いエリアはより低い灌流を表し、より明るいエリアはより高い灌流を表す。
【0051】
脂肪移植片のインビボラジオグラフィー分析は、DFOに依ってプレコンディショニングされた放射線照射されたマウスが、対照マウスと比較して2週後により多くの脂肪体積を保持するという事を示した(図13~14)。脂肪移植片体積保持は、一貫して、経皮投与DFOに依って処置されたマウス(図13の上側の線)では、其の経皮送達デバイスがDFOを欠いた対照マウス(図13の下側の線)と比較して、より多大であった。図14は、DFO(上側)又は対照(下側)何方かでプレコンディショニングされた放射線照射された頭皮の2週後の脂肪移植片の代表的な3次元的再建を示す。
【0052】
皮膚分析の為に、脂肪移植片切開部位の皮膚片を切り取る事に依って、頭皮皮膚生検を放射線の完了後に脂肪移植片の定置の時間に両方の処置群から収穫した。頭皮皮膚は放射線照射されなかった健康なマウスからもまた収穫した。皮膚剛性をMTS-Bionix200を用いて界面SM-19力変換器に依って測定した。応力-ひずみ曲線を図に示されている通り生成し、其れから、ヤング率(傾き)を計算して剛性を算出した。図15Aは、放射線照射されていない健康なマウスの応力-ひずみ曲線を示し、図15Bは、DFOなしの経皮送達デバイスに依って処置された放射線照射されたマウスの応力-ひずみ曲線を示し、図15Cは、経皮送達システムに依ってDFOに依って処置された放射線照射されたマウスの実験群の応力-ひずみ曲線を示す。図16は3つの群のヤング率データを要約している。此れ等のデータは、放射線治療後のDFOに依る皮膚の処置が縮減された皮膚剛性を齎すという事を示す。
【0053】
例3
雌の成体の60日齢CD-1ヌード免疫低下マウス(Crl:CD1-Foxn1nu、チャールズ・リバー)を実験作業に用いた(トータルn=16)。マウスはスタンフォード大学研究動物施設(4匹/ケージ)に於いて無菌のマイクロインシュレーターで維持し、水及び齧歯類チャウを自由に与えた。スタンフォード大学ガイドラインに従った。全ての実験は承認されたAPLACプロトコール(APLAC#31212)の下でスタンフォード大学動物実験委員会ガイドラインに従って行った。
【0054】
DFO-TDDS送達:DFOは、生分解性ポリマー中に分散されたDFOを含有するモノリシックマトリックス型TDDSに依って外用送達された。ドゥシェル等(Duscher, et al.)著「経皮デフェロキサミンは圧迫誘発糖尿病性潰瘍を防止する(Transdermal deferoxamine prevents pressure-induced diabetic ulcers)」米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)2015年;第112巻(1):p.94-99に記載されている通りであり、此れは参照に依って其の(it)全体が本願に組み込まれる。パッチは活性成分の持続放出を提供した。DFOは親水性であり、其のアモルファス形態を安定化し及び24時間の皮膚への浸透を促進する為に、100マイクロリットル中に1mgの濃度でポリビニルピロリドン(PVP)と複合体化させられる(図17A)。マウスを4つの実験群に分割した(n=4/群):1)放射線照射単独(DFOなしIR)、2)DFO処置に依って後続される放射線照射(IRtxDFO)、3)DFO処置に依って先行及び後続両方をされる放射線照射(IRppxDFO)、並びに4)放射線照射なし且つDFOなし(IRなし)である(図17B)。治療的なDFO処置は12日間の30Gy放射線照射期間の完了の4週後に始まり、2週に渡って続いた。予防的なDFOの送達は放射線照射の開始の2週に先立って始まり、完了の6週後迄続いた。DFO-TDDSを補強の為のロイコテープに貼り付け、頭蓋冠の上に重なるマウス皮膚に取り付けた。両端のスーパーグルーを3つのアンカースーチャーと用い、ロイコテープのバンドをマウスの顎下に留めた(図17C)。各DFO-TDDSは24時間毎に交換した。
【0055】
放射線照射:マウス頭皮を30Gyで放射線照射した。トータルで12日間で1日置きの6つの5Gy線量に依って送達された。鉛シールドを用いて体の残りを保護した。線量投与及び分割プロトコールはRIFを生成する先のプロトコールに基づいて選択した。
【0056】
レーザードップラー分析(LDA):放射線照射部位の灌流を測定する為に、レーザードップラー分析(LDA)を行った。PerimedのPIM3レーザードップラー灌流イメージャー(イェルファッラ(J.rf.IIa)、スウェーデン)を用いた。レーザードップラー分析に依って生成したシグナル(レーザードップラー灌流指数)を比較目的に用いた。此の指数は血液細胞速度及び濃度の積であり、カラースペクトルに依って表され、黒色/暗青色は低い灌流を表し、赤色は高い灌流を表す。LDAは放射線照射の直後及び放射線照射の6週後に行った。マウス頭皮上の対象領域(ROI)の測定が取られる前に、マウスを麻酔し(イソフルラン;2~3%導入、1~2%維持)、5分に渡ってヒートパッド上に定置した(図18A)。各マウスから5つの画像を取り、5つの画像の平均のレーザードップラー灌流指数を記録して、マウス当たり単一の平均値を与えた。
【0057】
組織学:放射線照射の6週後に、マウスを屠殺し、頭皮皮膚を組織学的分析の為に処理した。切片化の為に、標本を4%パラホルムアルデヒド(PFA、エレクトロン・マイクロスコピー・サイエンシズ、Cat#l5710)中に於いて4℃で18時間に渡って固定し、処理し、パラフィンに包埋した。真皮厚さの評価の為に、切片をヘマトキシリン及びエオジン(H&E、Abcam、ケンブリッジ、Mass.、ab245880)に依って染色し、コラーゲン線維ネットワークの評価の為に、切片をピクロシリウスレッド(Abcam、ab150681)に依って染色した。標準的なプロトコールを用いた。真皮は、表皮の基底層から下に重なる皮下組織迄の垂直距離として定義され、20×対物で条件当たりマウス当たり10個のランダムに選ばれた切片について測定された。コラーゲン線維ネットワークの評価の為に、ピクロシリウス染色された皮膚をイメージングした(図20A下段の横列)。偏光及び40×対物を用いた(条件当たりトータルで100画像でマウス当たり25画像)。スライドをライカDM5000B光学顕微鏡(ライカマイクロシステムズ、バッファローグローブ、Ill.)を用いてイメージングした。血管分布を評価する為に、マウス内皮細胞の免疫染色を行った。パラフィンスライドは1×Powerblock(Biogenex、HK083-50K)に依ってブロッキングし、0.1×Powerblock中の1:100希釈の非コンジュゲート化抗マウスCD31(PECAM、Abcam、Ab28364)と37℃で1時間に渡ってインキュベーションした。標本をリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Gibco(登録商標)、10010023)に依って洗浄し、AlexaFluor647コンジュゲート化二次抗体(Abcam、Ab10079)と1時間に渡って37℃でインキュベーションし、PBSに依って洗浄し、其れからDAPIフルオロマウントG(SouthernBiotech、0100-20)に依ってスライドガラスにマウントした。蛍光画像はLSM880倒立共焦点(Airyscan、GaAsP検出器、880、ベックマン)を用いて取られた。全ての画像について標準的な視野(1024×1024)を用いた。
【0058】
統計分析:データは、パラメトリックの時には平均及び標準誤差(SEM)として、ノンパラメトリックの時にはメジアン及び範囲として提示する。ピクロシリウスレッド染色されたスライドの画像はカラーデコンボリューションし、グレースケールに変換し、バイナリ化し、スケルトン化した。MATLAB(登録商標)(R2018b、MathWorks、ネイティック、MA)24で走る新規のアルゴリズムを用いた。スケルトン化画像から、コラーゲン(collage)線維の13のパラメータが抽出され(長さ、幅、分岐点、輝度を包含する)、2次元t分布型確率的近傍埋め込み(TSNE)プロットを生成する為の次元削減を経過して、群間のコラーゲン線維ネットワークパターンの集団的な違いを視覚化した。CD31染色の定量はImageJ(国立衛生研究所、ベセスダ、MD)を用いて条件当たりマウス当たり3つの画像について行い、真皮内の高倍率視野当たりのピクセルが陽性のエリアを測定して、血管密度を決定した(図20C)。マン・ホイットニー検定(ノンパラメトリック)を2つの群間で平均を比較する為に用い、クラスカル・ワリス検定(ノンパラメトリック)を3つ以上の群間で平均を比較する為に用い、PRISM(Graphpad)ソフトウェアを用いた。*p<0.05の値は統計的に有意と見做された。TSNEプロットは、連続的DFO処置を受けたマウス皮膚のコラーゲン線維が最も明瞭に見え、より多くの放射線照射後のリモデリングを表し得るという事を指示した。
【0059】
DFO前処置はRT後の組織灌流を改善する:RTの直後にLDAに依って得られた組織灌流測定は、TDDS-DFOに依る予防的な処置が皮膚灌流に対するRTの有害な影響を有意に緩和するという事を示した(**p<0.01)(図18B及び18C)。RTの6週後に、予防的なDFO及び治療的なDFO両方は灌流の改善を有する傾向があった(図18B及び18D)。予想される通り、DFOを受けなかった放射線照射されたマウスは、放射線照射されないマウスよりも有意に悪い頭皮灌流を有した(**p<0.01)。
【0060】
DFOは新生血管形成を向上させる:予想される通り、放射線照射されないマウスの皮膚は、無処置の放射線照射されたマウスの皮膚よりも有意に多く血管形成した(****p<0.0001)。類似に、予防的なDFOを受けたマウスからの皮膚は、放射線照射されないマウスの物と比較して良好に血管形成し、何れかのDFOを受けなかった放射線照射されたマウスの皮膚よりも有意に多く血管形成した(*p<0.05)。対照的に、放射線照射後にDFOを受けたのみのマウスの皮膚は、放射線照射されないマウスの皮膚よりも有意に少ない血管形成を有した(***p<0.001)(図19A及び19B)。
【0061】
DFOは真皮厚さを向上させ、トータルのコラーゲン含量を縮減する:DFO-TDDS処置が皮膚のRIFを緩和し得るかどうかを評価する為に、真皮厚さ及びコラーゲン線維ネットワークの組織学的評価の為のマウス頭皮皮膚を放射線照射の6週後に収穫した。ヘマトキシリン染色された皮膚の分析は、放射線照射が真皮厚さを有意に増大させ(全て****p<0.0001)、放射線照射されたがDFO処置された皮膚の真皮は放射線照射されない皮膚により類似であるという事を明らかにし、連続的DFO処置を受けたマウスは最も多大な利益を示した(図20A[上段の横列]&20B)。
【0062】
DFO処置はコラーゲン線維ネットワークのリモデリングを齎す:マウス頭皮皮膚のコラーゲン線維ネットワークをピクロシリウスレッドを用いて染色し(図20A下段の横列)、新規の計算アルゴリズムを用いてモデリングし、T分布型確率的近傍埋め込み(TSNEプロット)を用いて(suing)2次元空間で表した(図20C)。TSNEプロットは、連続的DFO処置を受けたマウス皮膚のコラーゲン線維が最も明瞭に見えるという事を指示し、恐らく、より多くの放射線照射後リモデリングを示唆した。
【0063】
マウスをDFOに依って予防的に処置する事は、RT直後の期間に於ける頭皮灌流に有意な利益を齎した。更に其の上、予防的な処置は放射線後の処置単独よりも有意に有効であった。
【0064】
特徴又は要素が本願に於いて別の特徴又は要素「の上」であると言われる時には、其れは他の特徴若しくは要素の直接的に上であり得るか、又は介在する特徴及び/若しくは要素もまた存在し得る。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素「の直接的に上」であると言われる時には、介在する特徴又は要素は存在しない。或る特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される」、「取り付けられる」、又は「結び付けられる」と言われる時には、其れは別の特徴若しくは要素に直接的に接続、取り付け、若しくは結び付けられ得るか、又は介在する特徴若しくは要素が存在し得るという事もまた理解されるであろう。対照的に、或る特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接的に接続される」、「直接的に取り付けられる」、又は「直接的に結び付けられる」と言われる時には、介在する特徴又は要素は存在しない。1つの実施形態について記載されるか又は示されるが、然う記載されるか又は示される特徴及び要素は他の実施形態に適用され得る。別の特徴「に隣接して」配置される構造又は特徴を言う事は、隣接する特徴にオーバーラップするか又は下に重なる部分を有し得るという事もまた当業者に依って認められるであろう。
【0065】
本願に於いて用いられる術語は特定の実施形態を記載する目的の為のみであり、本発明を限定する事は意図されない。例えば、文脈が明確に別様に指示しない限り、本願に於いて用いられる単数形「a」、「an」、及び「the」は複数形も包含する事を意図される。更に、用語「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」は、本明細書に於いて用いられる時には、申し立てられている特徴、ステップ、工程、要素、及び/又は構成要素の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、工程、要素、構成要素、及び/又は其れ等の群の存在又は追加を妨げないという事は理解されるであろう。本願に於いて用いられる用語「及び/又は」は、関連する列記された項目の1つ以上の何れかの及び全ての組み合わせを包含し、「/」と省略され得る。
【0066】
空間的に相対的な用語、例えば「~の下」、「~よりも下」、「下側」、「~の真上」、「上側」、及び同類は、本願に於いては、図中で図解される別の要素(単数若しくは複数)又は特徴(単数若しくは複数)に対する1つの要素又は特徴の関係性を記載する為の記載の容易さの為に用いられ得る。空間的に相対的な用語は、図中の図示されている定位に加えて、使用又は工程に於けるデバイスの異なる定位を包摂する事が意図されるという事は理解されるであろう。例えば、図のデバイスが倒立する場合には、他の要素又は特徴「の下」又は「の真下」と記載されている要素は、他の要素又は特徴「の真上に」定位するであろう。其れ故に、例示的な用語「~の下」は~の真上及び~の下の定位両方を包摂し得る。デバイスは別様に(90度回転して、又は他の定位で)定位し得、本願に於いて用いられる空間的に相対的な記述語は然るべく解釈され得る。類似に、具体的に別様に指示されない限り、用語「上方に」、「下方に」、「垂直の」、「水平の」、及び同類は本願に於いては説明の目的でのみ用いられる。
【0067】
用語「第1」及び「第2」は本願に於いては種々の特徴/要素(ステップを包含する)を記載する為に用いられ得るが、文脈が別様に指示しない限り、此れ等の特徴/要素は此れ等の用語に依って限定されるべきではない。此れ等の用語は1つの特徴/要素を別の特徴/要素から見分ける為に用いられ得る。其れ故に、本発明の教示から逸脱する事なしに、下で論じられる第1の特徴/要素は第2の特徴/要素と呼称され得、類似に、下で論じられる第2の特徴/要素は第1の特徴/要素と呼称され得る。
【0068】
本明細書及び次の請求項に於いては、文脈が別様に要求しない限り、単語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変形は、種々の構成要素が方法及び製品(例えば、組成物、及びデバイスを包含する装置、並びに方法)に合わさって使用され得るという事を意味する。例えば、用語「含む」は、何れかの他の要素又はステップの排除ではなく、何れかの申し立てられている要素又はステップの包含を含意すると理解されるであろう。
【0069】
例に用いられる事を包含する本願に於いて本明細書及び請求項に用いられる際に、別様に明示的に規定されない限り、全ての数は、用語が明示的に現れない場合であっても、単語「約」又は「凡そ」に依って前置きされる場合の様に読まれ得る。言い回し「約」又は「凡そ」は、大きさ及び/又は位置を記載する時に用いられて、記載される値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な予想される範囲内であるという事を示し得る。例えば、数値は、申し立てられている値(又は値の範囲)の+/-0.1%、申し立てられている値(又は値の範囲)の+/-1%、申し立てられている値(又は値の範囲)の+/-2%、申し立てられている値(又は値の範囲)の+/-5%、申し立てられている値(又は値の範囲)の+/-10%等である値を有し得る。また、文脈が別様に指示しない限り、本願に於いて与えられる何れかの数値は、約又は凡そ其の値を包含すると理解されるべきである。例えば、値「10」が開示される場合には、「約10」もまた開示される。本願に記載される何れかの数的範囲は、其の中に含められる全ての部分範囲を包含する事が意図される。当業者に依って適当に理解される通り、或る値が開示される時には(that when)、値「未満か又は等しい」、「値よりも多大か又は等しい」、及び値の間の可能な範囲もまた開示されるという事もまた理解される。例えば、値「X」が開示される場合には、「X未満か又は等しい」及び「Xよりも多大か又は等しい」(例えば、此処で、Xは数値である)もまた開示される。本願に於いては、データは幾つもの異なるフォーマットで提供されるという事と、此のデータは終点及び出発点、並びにデータポイントの何れかの組み合わせの範囲を表すという事ともまた理解される。例えば、特定のデータポイント「10」及び特定のデータポイント「15」が開示される場合には、10及び15よりも多大、其れよりも多大か又は等しい、其れ未満、其れ未満か又は等しい、及び其れに等しい、並びに10及び15の間が開示されると見做されるという事が理解される。2つの特定の単位の間の各単位もまた開示されるという事もまた理解される。例えば、10及び15が開示される場合には、11、12、13、及び14もまた開示される。
【0070】
種々の例解的な実施形態が上に記載されているが、請求項に依って記載される本発明の範囲から逸脱する事なしに、幾つもの変更の何れかが種々の実施形態に成され得る。例えば、種々の記載される方法ステップが行われる順序は代替的な実施形態では多くの場合に変更され得、他の代替的な実施形態では、1つ以上の方法ステップが全部飛ばされ得る。種々のデバイス及びシステムの実施形態の任意の特徴は、幾つかの実施形態には包含され得、他には包含されずにあり得る。因って、上述の記載は主として例示目的で提供され、請求項に於いて提出される本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0071】
本願に包含される例及び図解は、限定ではなく例解として、主題が実施され得る具体的な実施形態を示す。言及された通り、本開示の範囲から逸脱する事なしに、構造的及び論理的置換及び変更が成され得る様にして、他の実施形態が利用及び其れから導出され得る。本発明の主題の斯かる実施形態は、本願に於いては、単に便宜上、且つ1つよりも多くが実際に開示される場合に本願の範囲を何れかの単一の発明又は発明概念に自ら限定する事を意図する事なしに、個々に又は集団的に用語「発明」と言われ得る。其れ故に、具体的な実施形態が本願に於いて図解及び記載されたが、同じ目的を達成する様に計算された何れかの構成は、示されている具体的な実施形態と置換され得る。本開示は種々の実施形態の何れかの及び全ての適合又は変形をカバーする事が意図される。上の実施形態の組み合わせと本願に具体的には記載されない他の実施形態とは、上の記載を見直す事に依って当業者には明らかであろう。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】