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特表2023-503293プレプレグ、その製造方法およびそれから製造される繊維強化複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】プレプレグ、その製造方法およびそれから製造される繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20230120BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20230120BHJP
【FI】
B29B11/16
B29K105:10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529594
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2020018014
(87)【国際公開番号】W WO2021137464
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0179683
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0166676
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,サン ファン
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB06
4F072AB28
4F072AD23
4F072AG03
4F072AH06
4F072AH12
4F072AH13
4F072AH17
4F072AH44
4F072AH49
4F072AJ22
4F072AJ36
4F072AJ37
4F072AL02
4F072AL11
(57)【要約】
本発明は、プレプレグ、その製造方法およびそれから製造される繊維強化複合材料に関する。前記プレプレグの製造方法は、樹脂に対するぬれ性が向上したアラミド繊維基材を含み、プレプレグの成形時に厚さ減少率を増加させることができ、適切な樹脂含有量を有し、脱オートクレーブ成形法により成形するに適したプレプレグを提供することができる。そして、前記プレプレグは、脱オートクレーブ成形法によるのであっても、薄い厚さおよび高い樹脂含有量を示し、高強度および低い水分吸収率を示す繊維強化複合材料を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維基材に樹脂フィルムを積層して圧力を加える第1ラミネーティング段階;および第1ラミネーティング工程で得た積層体に圧力を加える第2ラミネーティング段階を含み、
前記第2ラミネーティング段階では、前記第1ラミネーティング段階に比べ、より低い温度で、より低い圧力を加える、プレプレグの製造方法。
【請求項2】
前記第1ラミネーティング段階は、80℃~90℃の温度で行われる、請求項1に記載のプレプレグの製造方法。
【請求項3】
前記第1ラミネーティング段階は、アラミド繊維基材に樹脂フィルムを積層して、2.6~5barの圧力を加える、請求項1に記載のプレプレグの製造方法。
【請求項4】
前記第2ラミネーティング段階は、70℃~79℃の温度で行われる、請求項1に記載のプレプレグの製造方法。
【請求項5】
前記第2ラミネーティング段階では、第1ラミネーティング工程で得た積層体に1.5~2.5barの圧力を加える、請求項1に記載のプレプレグの製造方法。
【請求項6】
前記第1ラミネーティング段階では、前記アラミド繊維基材の両面に樹脂フィルムが積層されるように、前記アラミド繊維基材と樹脂フィルムを0.1~1.5m/minの供給速度で連続供給する、請求項1に記載のプレプレグの製造方法。
【請求項7】
前記アラミド繊維基材は、1500~3500デニール(denier)のアラミド繊維で製織されたアラミド繊維基材である、請求項1に記載のプレプレグの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂フィルムは、90℃~130℃で硬化されるものを使用する、請求項1に記載のプレプレグの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂フィルムは、70℃における絶対粘度が約5~10Pa・sである樹脂フィルムを使用する、請求項1に記載のプレプレグの製造方法。
【請求項10】
前記樹脂フィルムは、エポキシ樹脂および硬化剤を含む熱硬化性樹脂組成物から形成される、請求項1に記載のプレプレグの製造方法。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂およびイソシアヌレート型エポキシ樹脂からなる群より選択された1種以上を含む、請求項10に記載のプレプレグの製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載のプレプレグの製造方法から製造されたプレプレグ。
【請求項13】
35~45重量%の樹脂含有量を有する、請求項12に記載のプレプレグ。
【請求項14】
アラミド繊維基材、および前記アラミド繊維基材に含浸された状態で硬化された樹脂を含み、ASTM D790により測定された曲げ強度が250~400MPaである、繊維強化複合材料。
【請求項15】
下記式1で計算される水分吸収率が0~3重量%である、請求項14に記載の繊維強化複合材料。
[式1]
水分吸収率=(浸漬後のサンプルの重量-浸漬前のサンプルの重量)/浸漬前のサンプルの重量*100
(前記式1中、浸漬前のサンプルの重量は、サンプルを蒸溜水に浸漬させる前の重量であり、浸漬後のサンプルの重量は、サンプルを蒸溜水に完全に浸漬させて取り出した後に測定した重量であり、前記重量は、タオルを利用してサンプルの上側、下側および周縁の水気を1次除去した後、水気がないタオルで再び上側及び下側の水気を2次除去した後に測定した値である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレプレグ、その製造方法およびそれから製造される繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
強化用繊維素材にマトリックス樹脂を含浸および硬化させて製造される繊維強化複合材料は、電子部品または自動車部品などの多様な分野に幅広く使用されている。
【0003】
前記強化用繊維素材としては、ガラス繊維や炭素繊維が主に使用されてきている。しかし、ガラス繊維の場合、比重が高くて軽量化が難しく、人体に有害であるという問題点があり、炭素繊維は、比剛性が大きくて加工性および耐衝撃性が落ちるという問題点があった。
【0004】
このような問題を解決するための代替案としてアラミド繊維を使用する技術が紹介されている。しかし、アラミド繊維は、マトリックス樹脂とのぬれ性(Wetting property)および相溶性などがガラス繊維や炭素繊維に比べて悪いため、繊維強化複合材料として成形した後、気孔が発生するなど別の問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プレプレグの製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記プレプレグの製造方法から製造されたプレプレグとこれを使用して製造される繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、発明の具体的な実施形態によるプレプレグの製造方法と前記製造方法から製造されたプレプレグおよび前記プレプレグから製造される繊維強化複合材料などについて説明する。
【0008】
発明の一実施形態によれば、アラミド繊維基材に樹脂フィルムを積層して圧力を加える第1ラミネーティング段階;および第1ラミネーティング工程で得た積層体に圧力を加える第2ラミネーティング段階を含み、前記第2ラミネーティング段階では、前記第1ラミネーティング段階に比べて、より低い温度で、より低い圧力を加えるプレプレグの製造方法が提供される。
【0009】
本発明者らは、繊維強化複合材料のアラミド繊維の樹脂に対するぬれ性を改善するために研究した結果、繊維強化複合材料を製造するための中間材であるプレプレグについて、高温および高圧の条件で行われる第1ラミネーティング段階と、低温および中圧(中間圧力)の条件で行われる第2ラミネーティング段階とを通じて製造する場合、プレプレグの成形時の樹脂に対するアラミド繊維基材のぬれ性が改善されて、高品質の繊維強化複合材料を得ることができることを確認した上で本発明を完成した。
【0010】
具体的に、プレプレグの製造および成形の条件での、アラミド繊維基材の弾性回復特性と、樹脂フィルムの粘度特性および硬化特性などを考慮して、プレプレグの成形時の厚さ減少率を増加させることができ、適切な樹脂含有量を有するプレプレグの製造方法を開発した。
【0011】
前記一実施形態による製造方法の第1ラミネーティング段階は、樹脂フィルムがアラミド繊維基材に深く浸透できるように樹脂の流れ性を極大化させ、適正含有量の樹脂がアラミド繊維基材に含浸されるように、高温および高圧で行われ得る。
【0012】
具体的に、第1ラミネーティング段階は、80℃~90℃、82℃~88℃あるいは84℃~86℃の温度で行われ得る。このような温度範囲で樹脂フィルムが硬化されないながら、樹脂の流れ性を極大化させることができ、アラミド繊維基材の内部に未含浸部分が発生せず、以降の成形時に、未含浸領域または乾燥領域(dry area)が発生して、強度低下、高い水分吸収率などの問題が発生することを抑制することができる。
【0013】
また、前記第1ラミネーティング段階は、2.6~5bar、2.8~4.5barあるいは3~4barの圧力下で行われ得る。このように、アラミド繊維基材の両面に積層された樹脂フィルムに高温で高圧を加えれば、樹脂の粘度が低くなることでアラミド繊維基材の繊維の間に樹脂が容易に浸透することから、アラミド繊維基材の内部に未含浸部分が発生せず、前述した強度低下、高い水分含浸率などの問題が発生することを抑制することができる。また、アラミド繊維基材に高圧を加えた後、圧力が除去されると、アラミド繊維基材の弾性回復により、プレプレグの内部に相対的に大きい空隙が形成され得る。このような大きい空隙によりプレプレグは成形時に向上した厚さ減少率を示すことができる。
【0014】
前記一実施形態による製造方法の第2ラミネーティング段階は、アラミド繊維基材の表面付近における樹脂接着性および含浸性などを向上させ、適正水準の樹脂含有量を有するように、低温および中圧で行われ得る。
【0015】
具体的に、第2ラミネーティング段階は、70℃~79℃、70℃~75℃あるいは70℃~73℃の温度で行われ得る。また、第2ラミネーティング段階は、1.5~2.5bar、1.7~2.3barあるいは1.8~2.2barの圧力下で行われ得る。このように、積層体に低温で中圧を加えれば、アラミド繊維基材の弾性回復程度と樹脂の粘度を適切な水準に制御して、アラミド繊維基材の表面付近における樹脂との接着性および含浸性を向上させ、プレプレグ内の樹脂含有量を増加させながら表面品質を向上させることができる。
【0016】
前記一実施形態による製造方法は、連続工程で行われ得る。具体的に、アラミド繊維基材の両面に樹脂フィルムが積層されるように前記アラミド繊維基材と前記樹脂フィルムを連続供給することができる。より具体的に、前記アラミド繊維基材と樹脂フィルムとは、ローラにより連続供給されうるのであり、表面が加熱された加圧ローラを通じてラミネーティングされ得る。一例として、前記第1および第2ラミネーティング段階は、少なくとも2つ以上のローラを通じて行われうるのであり、少なくとも一つのローラは、表面温度が高温(例えば、80℃~90℃、82℃~88℃あるいは84℃~86℃)に加熱された状態にて、高圧(例えば、2.6~5bar、2.8~4.5barあるいは3~4bar)で、アラミド繊維基材の両面に積層された樹脂フィルムを加圧しうるのであり、少なくとも他の一つのローラは、表面温度が低温(例えば、70℃~79℃、70℃~75℃あるいは70℃~73℃)に加熱された状態にて中圧(例えば、1.5~2.5bar、1.7~2.3barあるいは1.8~2.2bar)で積層体を加圧することができる。
【0017】
この際、第1ラミネーティング段階での供給速度を0.1~1.5m/min、0.1~1.0m/minあるいは0.1~0.8m/minに調節して、アラミド繊維基材の中心部まで樹脂フィルムを十分に含浸させることができる。
【0018】
前記第2ラミネーティング段階での積層体供給速度は、第1ラミネーティング段階と連続の工程で行うことができるという側面から、第1ラミネーティング段階と同一に調節され得る。
【0019】
前記一実施形態による製造方法で使用することができるアラミド繊維基材は、アラミド繊維で製織された織物であり得る。ここで、アラミド繊維としては、1500~3500デニール(denier)の繊維を使用して樹脂の含浸性を極大化しながら機械的物性に優れたプレプレグを製造することができる。
【0020】
前記一実施形態による製造方法では、約90℃~130℃の温度で硬化される樹脂フィルムを使用して第1および第2ラミネーティング段階にて樹脂フィルムが硬化されることを防止することができる。
【0021】
また、約70℃での絶対粘度が約5~10Pa・sと測定される樹脂フィルムを使用して、アラミド繊維基材に対する樹脂フィルムの含浸性を向上させることができる。
【0022】
前記絶対粘度は、直径が約300mmであり、厚さが約300μmである試片を作製した後、回転式レオメータ(Rotational Rheometer)を利用して約70℃で測定した粘度値である。
【0023】
このような樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはこれらの混合物を含むことができる。
【0024】
一例として、前記樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂組成物から形成されたものを使用することができる。前記熱硬化性樹脂組成物の主な樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびシアネートエステル樹脂などからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0025】
この中でも前記樹脂フィルムとしては、エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物から形成されたものを使用することができる。
【0026】
前記熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する物質あるいはこのような物質の重合により生成された樹脂を意味する。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの臭素化エポキシ樹脂;ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;およびジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂などからなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0027】
そして、前記熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤を含むことができる。前記硬化剤としては、エポキシ基と架橋反応できる活性基を有する化合物を使用することができる。このような硬化剤の例としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、他のカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタン、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体または他のルイス酸錯体などが挙げられる。
【0028】
前記硬化剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して約3~10重量部で使用されることで、硬化剤の残留なしにエポキシ樹脂を適切に硬化させることができる。
【0029】
前記熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて熱可塑性樹脂を追加的に含むことができる。前記熱可塑性樹脂の例としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダゾールなどからなる群より選択された1種以上が挙げられる。
【0030】
前記熱可塑性樹脂は、粒子あるいは繊維形状で添加され得るのであり、粒子形状で添加される場合、その形状は、球形状、非球形状、多孔質、ウィスカー形状、またはフレーク形状であり得、繊維形状で添加される場合、単繊維または長繊維状態で添加され得る。
【0031】
前記熱硬化性樹脂組成物は、前述した構成以外に、本発明が属する技術分野に知られた多様な添加剤、例えば、硬化助剤などを追加的に含むことができる。
【0032】
一方、発明の他の一実施形態によれば、前記製造方法により製造されたプレプレグが提供される。前記製造方法により製造されたプレプレグは、アラミド繊維基材および前記アラミド繊維基材に含浸された樹脂を含む。前記アラミド繊維基材および樹脂については、前記で詳しく説明したため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0033】
特に前記プレプレグは、特定条件の2段階のラミネーティング工程を通じて製造されることで、プレプレグの中心部まで樹脂により含浸されて、未含浸領域が最小化された形態で提供され得るのであり、また、内部に相対的に大きい空隙を有することに伴い繊維強化複合材料として成形する際、大きい厚さ減少率を示しながらも適切な樹脂含有量を示すことができる。
【0034】
具体的に、前記プレプレグは、35~45重量%、37~43重量%あるいは39~41重量%の高い樹脂含有量を有することができる。
【0035】
また、前記プレプレグは、高価な加圧設備であるオートクレーブを使用せずに、真空ポンプとオーブンだけを使用する脱オートクレーブ成形法を通じて繊維強化複合材料を提供することができる。
【0036】
既存の脱オートクレーブ成形法は、高価の加圧設備を利用しないという長所にもかかわらず、樹脂フィルムの揮発成分による気孔の形成のために、不良品の発生率が高いという短所があった。
【0037】
しかし、前記一実施形態の製造方法により製造されたプレプレグは、脱オートクレーブ成形法によるのであっても、高品質の繊維強化複合材料を提供することができる。
【0038】
一方、発明のまた他の一実施形態によれば、前記プレプレグから製造される繊維強化複合材料が提供される。前記繊維強化複合材料は、アラミド繊維基材、および前記アラミド繊維基材に含浸された状態で硬化された樹脂を含む。前記アラミド繊維基材および樹脂については、前記で詳しく説明したため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0039】
前記繊維強化複合材料は、1つ以上のプレプレグ、あるいは2つ以上のプレプレグを積層した積層体から製造され得る。
【0040】
前記繊維強化複合材料は、前述した特定条件の2段階のラミネーティング工程を通じて製造されたプレプレグから製造されることによって、未含浸領域または乾燥領域を最小化することができるため、優れた強度および低い水分吸収率などを示すことができる。
【0041】
具体的に、前記繊維強化複合材料は、ASTM D790にしたがって測定された曲げ強度が、250~400MPa、270~350MPa、あるいは300~330MPaであり得る。
【0042】
また、前記繊維強化複合材料は、下記式1で計算される水分吸収率が、0重量%以上であり、3重量%以下、2重量%以下、あるいは1.7重量%以下であり得る。
【0043】
[式1]
水分吸収率=(浸漬後のサンプルの重量-浸漬前のサンプルの重量)/浸漬前のサンプルの重量*100
【0044】
前記式1で、浸漬前のサンプルの重量は、サンプルを蒸溜水に浸漬させる前の重量であり、浸漬後のサンプルの重量は、サンプルを蒸溜水に完全に浸漬させてから取り出した後に測定した重量であり、前記重量は、タオルを利用してサンプルの上側、下側および周縁の水気を1次除去した後、水気がないタオルで再び上側及び下側の水気を2次除去した後に測定した値である。
【0045】
前記曲げ強度および水分吸収率の測定方法は、後述する試験例に記載された内容を参照することができる。
【0046】
前記繊維強化複合材料は、脱オートクレーブ成形法により成形されても、前述した、優れた曲げ強度および低い水分吸収率を示すことができる。
【0047】
また、前記繊維強化複合材料は、35~45重量%、35~40重量%、36~38重量%あるいは37~38重量%の高い樹脂含有量を示すことができる。
【発明の効果】
【0048】
発明の一実施形態によるプレプレグの製造方法は、樹脂に対するぬれ性が向上したアラミド繊維基材を含み、プレプレグの成形時の厚さ減少率を増加させることができ、適切な樹脂含有量を有し、脱オートクレーブ成形法により成形するのに適したプレプレグを提供することができる。そして、前記プレプレグは、脱オートクレーブ成形法によるとしても、薄い厚さおよび高い樹脂含有量を示し、高強度および低い水分吸収率を示す繊維強化複合材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例示として提示されたものであり、これによって発明の権利範囲が如何なる意味でも限定されるのではない。
【0050】
実施例1:プレプレグの製造
約3000デニール(denier)のアラミド原糸を、経糸および緯糸に使用して、平織りアラミド織物を製織した。
【0051】
一方、樹脂フィルムとしては、EZ Composite社からSCP-510として入手可能なエポキシ樹脂組成物を、離型紙に約80±10g/mの塗布量で塗布し乾燥して製造したエポキシ樹脂フィルムを使用した。
【0052】
前記アラミド織物を連続供給しながら、前記アラミド織物の両面に接触するようにエポキシ樹脂フィルムを連続供給した。前記アラミド織物および樹脂フィルムの供給速度は約0.5m/minに制御された。
【0053】
そして、85℃に加熱された加圧ローラを通じて、前記アラミド織物の両面に積層された樹脂フィルムに、3barの圧力を加えて第1ラミネーティング段階を行った。その後、再び70℃に加熱された加圧ローラを通じて、前記第1ラミネーティング段階で得られた積層体に、2barの圧力を加えて第2ラミネーティング段階を行うことによって、前記アラミド織物の両面に樹脂フィルムを含浸させてプレプレグを製造した。
【0054】
比較例1:プレプレグの製造
前記第1および第2ラミネーティング段階を行う代わりに、85℃に加熱された加圧ローラを通じて前記アラミド織物の両面に積層された樹脂フィルムに圧力を加える第1ラミネーティング段階、70℃に加熱された加圧ローラを通じて、前記アラミド織物の両面に積層された樹脂フィルムに圧力を加える第2ラミネーティング段階、および、100℃に加熱された加圧ローラを通じて前記アラミド織物の両面に積層された樹脂フィルムに圧力を加える第3ラミネーティング段階を行うことを除き、実施例1と同様の方法でプレプレグを製造した。
【0055】
試験例:プレプレグの物性評価
実施例および比較例で製造したプレプレグの物性を下記記載された方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0056】
1)成形前の樹脂含有量
プレプレグの面密度(mass per unit)に対する樹脂フィルムの面密度の百分率((プレプレグの面密度-アラミド織物の面密度)/プレプレグの面密度*100)を測定して樹脂含有量(単位:重量%)として規定した。
【0057】
2)成形後の厚さ、厚さ変化率および樹脂含有量
4個のプレプレグを4層に積層した後、ローラを通じて十分に圧搾した。次に、離型処理された平板金型に、前記積層体を載せて置き、離型フィルムを積層した。そして、前記離型フィルムの上に、2mmの厚さの前記プレプレグと、同一のサイズのカウルプレート(Caul Plate、Steel)を積層するかあるいは積層せず、真空バッグ内部の空気流れ通路になるブリーザー(breather)を積層し、最後に真空バッグ(vacuum bag)で全体を囲んだ後、シーラント(sealant)で密封した。そして、28水銀柱インチ(inchHg; inHG)の真空圧力下にて125℃で30分間維持してプレプレグを硬化させることによって、繊維強化複合材料を製造した。
【0058】
カウルプレート(Caul Plate)を使用して製造された繊維強化複合材料と、カウルプレート(Caul Plate)を使用せずに製造された繊維強化複合材料とに対して、それぞれ、厚さ、厚さ変化率および樹脂含有量(resin content)を測定した。
【0059】
前記厚さは、サンプルの隅角部ごとに2地点ずつ、総4個の隅角部での8地点に対する厚さを測定した後、その平均値として求めて測定したのであり、厚さ変化率は、成形前の厚さに対する、成形前後の厚さの差の百分率(成形前後の厚さ差/成形前の厚さ*100)から計算されたのであり、樹脂含有量は、前記記載された方法で測定された。
【0060】
3)曲げ強度
カウルプレート(Caul Plate)を使用して製造された繊維強化複合材料と、カウルプレート(Caul Plate)を使用せずに製造された繊維強化複合材料とについての曲げ強度は、ASTM D790にしたがって23±2℃の温度にて万能引張試験器で測定された。
【0061】
4)水分吸収率
カウルプレート(Caul Plate)を使用して製造された繊維強化複合材料と、カウルプレート(Caul Plate)を使用せずに製造された繊維強化複合材料とについての水分吸収率は、サンプルを蒸溜水(distilled water)に完全に浸漬させて測定した。そして、下記式1に浸漬前後の重量を代入して、水分吸収率を求めた。
【0062】
[式1]
水分吸収率(重量%)=(浸漬後のサンプルの重量-浸漬前のサンプルの重量)/浸漬前のサンプルの重量*100
【0063】
ここで、浸漬前後の重量はタオル(キムワイプ(Kimwipes)5枚や乾布(dry fabric)など)を利用して、サンプルの上側、下側および周縁の水気を1次除去した後、水気がないタオルでもって再び上側及び下側の水気を2次除去して、肉眼上完全に水気を除去した後に測定された。
【0064】
【表1】
【国際調査報告】