(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】カンナビジオール-タイプのカンナビノイド化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20230120BHJP
C07C 37/00 20060101ALI20230120BHJP
C07C 39/23 20060101ALI20230120BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
A61K31/05
C07C37/00
C07C39/23
A61P25/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529679
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 GB2020052944
(87)【国際公開番号】W WO2021099783
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319016758
【氏名又は名称】ジーダブリュー・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルカー・クナッパーツ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ウォーリー
(72)【発明者】
【氏名】マリー・ウーリー-ロバーツ
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA04
4C206CA19
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA06
4H006AA02
4H006AC41
4H006FE12
4H006FE13
(57)【要約】
本発明は、医薬として使用のためのカンナビジオール(CBD)タイプのカンナビノイド化合物に関する。CBD-タイプのカンナビノイド、6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)は、カンナビジバリンの代謝産物である。カンナビノイドは、合成方法で製造され得、6-OH CBDVの製造方法が、本明細書に記載される。加えて、疾患のモデルにおいて6-OH CBDVの有効性を示すデータが、本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬として使用のための、6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)。
【請求項2】
合成化合物の形態である、請求項1に記載の使用のための6-OH CBDV。
【請求項3】
純粋化合物又は単離化合物の形態である、請求項1に記載の使用のための6-OH CBDV。
【請求項4】
6-OH CBDVの用量が、100mg/kg/日より多い、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための6-OH CBDV。
【請求項5】
6-OH CBDVの用量が、100mg/kg/日より少ない、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための6-OH CBDV。
【請求項6】
6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)及び1以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬として使用のための組成物。
【請求項7】
てんかんの治療における使用のための、6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)。
【請求項8】
治療されるてんかんは、哺乳類においてである、請求項7に記載の使用のための6-OH CBDV。
【請求項9】
哺乳類はヒトである、請求項8に記載の使用のための6-OH CBDV。
【請求項10】
哺乳類は犬である、請求項8に記載の使用のための6-OH CBDV。
【請求項11】
6ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として使用のための、カンナビジオール(CBD)タイプのカンナビノイド化合物に関する。
【0002】
CBD-タイプのカンナビノイド、6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)は、カンナビジバリン(CBDV)の代謝産物である。
【0003】
カンナビノイドは、合成方法によって製造され得る。
【0004】
疾患のモデルにおいて、6-OH CBDVの有効性を示すデータが本明細書中に記載される。加えて、6-OH CBDVの製造方法が記載される。
【背景技術】
【0005】
カンナビノイドは、構造的又は薬理学的に大麻植物(cannabis plant)の構成成分又はカンナビノイドレセプターCB1又はCB2の内因性アゴニスト(内在性カンナビノイド)に関する、天然化合物及び合成化合物である。天然では、これらの化合物が生産される唯一の方法が、大麻植物によるものである。大麻は、麻(Cannabis sativa)、インド麻(Cannabis indica)及び(時として麻の一部として考えられる)カンナビスルデラリス(Cannabis ruderalis)の種を含むアサ科(Cannabaceae)における花をつける植物の属である。
【0006】
大麻植物は、高度に複雑な化合物の混合物を含む。少なくとも568の固有の分子が特定されている。これらの化合物の中には、カンナビノイド、テルペノイド、糖、脂肪酸、フラボノイド、他の炭化水素、窒素化合物及びアミノ酸が含まれる。
【0007】
カンナビノイドは、制限するものではないが、アドレナリンレセプター、カンナビノイドレセプター(CB1及びCB2)、GPR55、GPR3、又はGPR5を含む様々なレセプターを通じて生理学の効果を発揮する。大麻植物に存在する主要なカンナビノイドは、カンナビノイド酸Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸(Δ9-THCA)及びカンナビノール酸(CBDA)と少量のそれぞれの中性(脱カルボキシル化)カンナビノイドである。加えて、大麻は、低い濃度の他の少数のカンナビノイドを含有し得る。「これらの薬効のある植物、及び大麻からのより重量な抽出物の、化学組成、薬理学のプロファイリング、完全な生理学の有効性は、完全には解明されていない」Lewis,M.M.ら、ACS Omega,2,6091-6103(2017)。
【0008】
CBDを含有する大麻植物の粗抽出物は、病気及び疾患に苦しむ患者によって使用されてきた。しかしながらそのような粗製品は、製剤処方での使用に適切でない。病気又は疾患の治療において使用するため、より安定したCBD製剤を調製しようとする人々は、CBDを合成的に調整するか、植物由来のカンナビノイドから、CBD以外のすべての化合物、特にTHCなどの精神活性化合物を除去しようと試みる、一致した努力を行ってきた。例えば、米国特許2014/0298511参照。
【0009】
本発明は、CBDVの代謝産物は、治療効果を有するという驚くべき発見を含む。この化合物、6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)は、合成的に生産され得、純粋な形態で使用されてもよい。
【0010】
カンナビノイドは、大麻植物から天然に由来し得る又は化学合成を通じて合成的に生産され得る多くの化合物群である。
【0011】
大麻から生産される100以上の様々なカンナビノイドが特定されてきた。これらのカンナビノイドは、以下の異なる群に分離され得る:植物性カンナビノイド;内在性カンナビノイド、及び(新しいカンナビノイド又は植物性カンナビノイド又は内在性カンナビノイドの合成生産版であってもよい)合成カンナビノイド。
【0012】
植物性カンナビノイドは、天然に由来し、大麻植物中で発見され得るカンナビノイドである。植物性カンナビノイドは、高純度の抽出物を生産するために、植物から単離され得る。植物性カンナビノイドは、植物材料からカンナビノイドの抽出に使用される方法に依存して、中性(脱カルボキシル化形態)又はカルボン酸形態として得られてもよい。例えば、カルボン酸形態の加熱は、多くのカルボン酸形態を、脱カルボキシル化して中性形態にすることを引き起こすことが知られている。植物性カンナビノイドは、植物から生産され得るのみであるが、植物性カンナビノイド版として、化学合成によって合成的に生産されてもよい。
【0013】
内在性カンナビノイドは、カンナビノイドレセプターに結合した内因性の脂質ベースの、逆行性の神経伝達物質であり、(脳を含む)哺乳類の中枢神経系、及び末梢神経系を通じて発現されるカンナビノイドレセプタータンパク質である。内在性カンナビノイド系は、妊孕性、妊娠、生前及び生後発達の間、食欲、痛覚、気分、及び記憶を含む様々な生理学及び認知性の過程を調節すること、並びに大麻の薬理学の効果を媒介することに関係する。
【0014】
合成カンナビノイドは、カンナビノイド-様の構造を有する化合物であり、植物というよりはむしろ化学手法を用いて製造される。
【0015】
特定のカンナビノイドが以下に詳細に記載される。
【0016】
カンナビジオール(CBD)は、麻植物(Cannabis sativa)などの、大麻種の主要なカンナビノイド構成成分である。THCなどの他のカンナビノイドとは異なり、カンナビジオールは、CB1又はCB2に結合しない、又はそのレセプターへの結合は、薬理学の効果を含む観点において無視できる。したがって、カンナビジオールは、CB1又はCB2レセプターによって媒介される中枢神経系、又は末梢神経系への効果を引き起こさない。CBDは、向精神(大麻類似性の)作用がほとんど又は全くなく、その分子構造及び特性は、他のカンナビノイドとは大きく異なる。
【0017】
CBD及びCBDVの投与は、治療に応答し得る様々な病気及び疾患のための代替治療を提供する試みにおいて研究主題となっている。
【0018】
CBD及びCBDVの代謝を決定するための動物での多くの研究がある。CBD及びCBDVの薬物動態は、主に実質の初回通過効果により、複雑である。次にこれは、ヒト及び他の種において、経口CBDのバイオアベイラビリティーが低くなることを引き起こす。
【0019】
最も豊富なCBDの代謝産物は、CBDのヒドロキシル化7-カルボキシ誘導体であって:2”-OH-7-COOOH,3”,4”,5”-トリノル CBD; CBD-グルクロニド; 4”-OH-7-COOH CBD; 2”-OH-7-COOH CBD; 10-OH-7-COOH CBD; 3”-OH-7-COOH CBD; 7-OH-3”-COOH,4”,5”-ジノル CBD; 7-COOH-8,9-ジヒドロ-8,9-diOH CBD; 1”-OH-7-COOH CBD; 6-OH-42-COOH,5”-ノル CBD; 6-OH-3”-COOH,4”,5”-ジノル CBD; 7-COOH CBD; 7-OH-4”-COOH,5”-ノル CBD; 4”-COOH,5”-ノル CBD; 7-OH CBD; 8,9-ジヒドロ-7,8,9-トリOH CBD; カンナビノール; 3”-COOH,4”,5”-ジノル CBD; 2”-COOH,3”,4”,5”-トリノル CBD; 2”,6-ジOH,3”,4”,5”-トリノル CBD6,7-ジOH CBD; 7-OH-1”-COOH,2”,3”,4”,5”-テトラノル CBD; 6-OH CBD; 7-OH-5”-COOH CBD; 1”-COOH,2”,3”,4”,5”-テトラノル CBD; 6-OH-1”-COOH,2”,3”,4”,5”-テトラノル CBD 及び 6-OH-5”-COOH CBD を含む(Ujvary 及び Hanus, 2016)。
【0020】
現在、CBDV分子に対して代謝が起こることは知られていないが、CBDVに対してもCBDと同様の代謝産物が存在すると考えられるが、その代謝産物は、CBD分子に存在するペンチル側鎖ではなく、プロピル側鎖を有するであろう。
【0021】
米国特許6,630,507号は、多数のカンナビジオールの類似体を記載している。化合物6-OH CBDが、この文書に詳述されているが、この化合物が治療薬として有効であるという根拠となるデータは示されていない。
【0022】
テトラヒドロカンナビノール(THC)は、大麻の主要な精神活性の構成成分である。THCは、CB1及びCB2レセプターで部分的なアゴニストである。合成THC又はドロナビノールは、AIDS患者における食欲喪失及びがんの化学療法により引き起こされる吐き気及び嘔吐の治療のために承認されている。
【0023】
麻(Cannabis sativa)において特定された100種以上の天然カンナビノイドのうち、7種類がCBD-型化合物として分類されており、これらのカンナビノイドは、CBDと同じ絶対配置を有している。これらは:CBD、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビジバリン酸(CBDVA)、カンナビジオール-C1(CBD-C1)、カンナビジオール-C4(CBD-C4)、カンナビジオール-C6(CBD-C6)及びカンナビジオールモノメチルエーテル(CBDM)である。
【0024】
カンナビジオール酸(CBDA)は、CBDが大麻植物中に存在する主要な形態である。脱カルボキシル化の後、それはCBDに変換される。
【0025】
カンナビジバリン(CBDV)は、二つのメチレン架橋によって側鎖が短くされたCBDのホモログである。CBDVは、非精神活性のカンナビノイドであり、てんかんのマウスモデルにおいて抗けいれん性の活性を有することが示されている。
【0026】
カンナビジオール-C1(CBD-C1)もまた、カンナビジオールコールとして知られ、4つのメチレン架橋によって側鎖が短くされたCBDのホモログである。CBD-C1は、CBDを生産する植物中において自然に発生するが、治療効果を有することは示されていない。
【0027】
カンナビジオール-C4(CBD-C4)は、ノル-カンナビジオールとしても知られており、一つのメチレン架橋によって側鎖が短くされたCBDのホモログである。CBD-C4は、CBDを生産する植物中で自然に発生し、本発明の前に治療効果を有することが示されてはいない。
【0028】
カンナビジオール-C6(CBD-C6)は、一つのメチレン架橋によって側鎖が増加されたCBDのホモログである。CBD-C6は、CBDを生産する植物中で自然に発生し、本発明の前に、治療効果を有することが示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】米国特許2014/0298511号
【特許文献2】米国特許6,630,507号
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】ACS Omega,2,6091-6103(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明は、化合物6-ヒドロキシカンナビジバリンが治療上の利点を提供し得ることを示唆するデータを初めて示す。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の第一の態様によると、医薬として使用のための6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)が提供される。
【0033】
好ましくは、6-OH CBDVは合成化合物として存在する。別法として、6-OH CBDVは、純粋化合物及び単離化合物として存在する。
【0034】
好ましくは、6-OH CBDVの用量は、100mg/kg/日より多い。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、250mg/kg/日より多い。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、500mg/kg/日より多い。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、750mg/kg/日より多い。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、1000mg/kg/日より多い。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、1500mg/kg/日より多い。
【0035】
別法として、6-OH CBDVの用量は、100mg/kg/日より少ない。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、50mg/kg/日より少ない。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、20mg/kg/日より少ない。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、10mg/kg/日より少ない。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、5mg/kg/日より少ない。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、1mg/kg/日より少ない。より好ましくは、6-OH CBDVの用量は、0.5mg/kg/日より少ない。
【0036】
本発明の第二の態様によると、6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)及び1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬としての使用のための組成物が提供される。
【0037】
本発明の第三の態様によると、てんかんの治療における使用のための6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)が提供される。このましくは、てんかんは哺乳類において治療される。より好ましくは、哺乳類はヒトである。別法として、哺乳類は犬である。
【0038】
本発明の第四の態様によると、6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の態様が、図面を参照して、このあと更に記載される。
【
図1】
図1は、マウスにおけるMEST試験での、6-OH CBDVの有効性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
カンナビノイド及びそれらの略称
本明細書に記載されるカンナビノイドが、それらの標準的な略称と共に以下にリスト化される。
【表1】
【実施例】
【0041】
実施例1:アルファ6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)の合成製造方法
前記の化合物6-OH CBDVは、カンナビジオールの代謝産物である。
【0042】
以下に示される合成経路は、カンナビノイドアルファ6-OH CBDVを生成するために使用され得る方法論を詳述する。
【0043】
式中R=C3H7である。
【0044】
無水ピリジン(20mL)中のCBDV(5.00g、17.5mmol)に、無水酢酸(5.63g、5.20mL、55.2mmol)を添加し、4時間溶液を撹拌した。ジクロロメタン(300mL)を加え、溶液を水(200mL)、1M塩酸(200mL)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濃縮して、更なる精製なしで使用される黄色のオイルとして、CBDVジアセテート(6.84g、定量)を得た。
【0045】
氷酢酸(9mL)及び無水酢酸(4.96g、4.59mL、48.6mmol)中のCBDVジアセテート(4.00g、10.8mmol)に、ニクロム酸ナトリウム(3.86g、13.0mmol)を加え、混合物を室温で4日間撹拌した。得られた溶液を水(150mL)で希釈し、ジエチルエーテル(2×150mL)で抽出した。混合された有機抽出物は、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄され(150mL)、乾燥(MgSO4)され、濃縮され、黄色のオイルを得、Biotage Isolera自動クロマトグラフィー装置を使用して、通常の段階条件(シリカカラム、勾配5→33%ガソリン中の酢酸エチル)の下、254nmで検出して、精製し、6-oxo-CBDVジアセテート(1.40g33%)を無色のオイルとして得た。
【0046】
Rf=0.36(酢酸エチル-ガソリン、1:4v/v)
【0047】
ジエチルエーテル(50mL)中のリチウムアルミニウムヒドリド(0.58g、15.3mmol)に0℃で、ジエチルエーテル(23mL)中の6-oxo-CBDVジアセテートを加え、混合物を4時間室温で撹拌した。得られた混合物をアイスバスにて冷却し、氷水(100mL)で慎重にクエンチさせた。1Mの塩酸(60mL)を加え、混合物をジエチルエーテル(100mL+50mL)で抽出した。混合された有機層は、飽和食塩水(100mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)して、濃縮し、淡黄色のオイルを得、Biotage Isolera自動クロマトグラフィー装置を使用して、通常の段階条件(シリカカラム、勾配7→53%ガソリン中の酢酸エチル)の下、254nmで検出して、精製し、6-oxo-CBDV(0.70g64%)を白色のガラス状固体として得た。
【0048】
Rf=0.29(酢酸エチル-ガソリン、3:7v/v)
【0049】
【0050】
得られた材料はアルファ6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)であることを確認した。化合物は黄色のガラス状半固体材料であり、化学式C19H26O3、分子量302.4g/molである。
【0051】
化合物の純度を、HPLCによって試験し、96.7%の純物質を製造したことが示された。
【0052】
6-OH CBDVを-20℃で保管し、試験で必要になるまで光から遮断した。
【0053】
実施例2:マウスにおける最大上刺激電気ショック療法発作の(MES)試験を使用した6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)の抗けいれん活性の評価
6-OH CBDVの有効性は、発作、最大上刺激電気ショック療法発作(MES)試験のマウスモデルにおいて試験した。
【0054】
最大上刺激電気ショック療法発作(MES)試験は、分子の抗けいれん特性、及び標準の抗-てんかん性薬を評価するために臨床前に広く利用される(Loscherら、1991年)。
【0055】
MES試験は、マウスに対照動物の100%に確実に、剛直性後肢伸筋発作を引き起こすのに十分な強度の所定の高レベルの電気刺激を与える極めて厳しいモデルである。この様に、MES試験は、抗けいれん作用を厳密に評価する(Swinyard、1985年)。
【0056】
方法
ナイーブマウスを、アドリブで利用可能な食物及び水で、ケージ中で処置部屋に慣れさせた。
【0057】
治療群に応じて、動物にi.p.投与した。
【0058】
媒体(10ml/kgi.p.60分前処理時間)は、1:1:18の媒体であり、5%エタノール、5%Kolliphor EL、90%生理食塩水であった。
【0059】
試験化合物、アルファ6-OH CBDVを実施例1にて記載した方法によって調製した。
【0060】
試験化合物、6-OH CBDVを、10ml/kgi.p.60分前処理時間で、3、10、30及び100mg/kgの用量で投与した。
【0061】
陽性対照バルプロ酸を、250mg/kgで使用した(10ml/kgi.p.30分前処理時間)。
【0062】
マウスを個々に、対象動物の100%が確実に剛直性後肢伸筋発作を引き起こすのに十分強度のな所定の高レベル(30mA:50Hz)の角膜電気ショック(0.2秒間)の後に、剛直性後肢伸筋発作の引き起こしについて評価した。
【0063】
発作の誘因は、各動物について、あり(+)又はなし(0)として全か無かの効果として測定した。
【0064】
各動物の治療を知らない観察者がデータを収集し、各治療群の+又は0の数字で表現した。
【0065】
次に、関連する媒体処理群の阻害率(媒体処理群に対する保護率)を作成した。
【0066】
個々の処理群と媒体処理群の間の有意差を、フィッシャー直接確立法両側試験(p<0.05の場合、有意差ありと考えられる)を使用して評価した。
【0067】
結果
以下の表1にこの実験で得られたデータを示す。
【0068】
陽性対照バルプロ酸(250mg/kg)処理群において、試験前30分にi.p.投与され、すべての動物に発作が起きないとして評価された。この結果は、媒体対照と比較して、統計的に有意差(p<0.01)がある。
【0069】
6-OH CBDV処理群において、試験前60分にi.p.投与され、3及び10mg/kg6-OH CBDVの用量では、媒体対照と比較して発作において20%しか変化がなく、有意差なしであった。
【0070】
しかしながら、30及び100mg/kg6-OH CBDVの用量では、全てのマウスが発作に耐えることを可能にし、媒体に対して統計的な有意効果を発現した(p<0.001)。
【0071】
【0072】
結論
これらのデータは、化合物6-OH CBDVに対する治療の有効性を初めて示すものである。
【0073】
これらのデータは、このカンナビノイドが治療の有効性を発揮する可能性があることを示す証拠はこれまで知られていなかったため、重要である。
【0074】
実施例3:マウスにおける最大上刺激電気ショック療法発作の閾値(MEST)試験を使用した6-ヒドロキシカンナビジバリン(6-OH CBDV)の抗けいれん活性の評価
6-OH CBDVの有効性を、一般化された発作、最大上刺激電気ショック療法発作の閾値(MEST)試験のマウスモデルにおいて試験した。
【0075】
最大上刺激電気ショック療法発作の閾値(MEST)試験は、試験化合物の促進又は抗-けいれん特性を評価するために臨床前に広く利用される(Loscherら、1991年)。
【0076】
MEST試験において、後肢剛直性伸筋けいれんを誘発するのに必要な発作閾値電流を変化させる薬物の能力は、ショック滴定法の「アップアンドダウン」法によって測定される(Kimballら、1957年)。発作閾値の増加は、抗けいれん効果を示唆している。一般化された剛直性間代性発作に対して効果が臨床的に示されている、ナトリウムチャンネルブロッカーを含む(例えばラモトリギン)抗てんかん薬は、マウスにおいてこの試験で全て、抗-けいれん特性を示す。
【0077】
逆に、発作閾値の減少は、ピクロトキシンなどの痙攣剤として知られるものに観察されるように、促進-けいれん効果を示唆するものである。
【0078】
電流(mA)として表現される、剛直性後肢伸筋けいれんの存在の誘導に必要とされる、刺激強度を変更させる試験化合物の性能は、MESTにおいて評価される。治療群の50%の動物(CC50)に剛直性後肢伸展を生じさせる電流から観察される剛直性後肢伸筋けいれんのあり(+)又はなし(0)の結果から、治療群に対する発作閾値を決定し、その後、その効果を媒体対照群のCC50と比較した。
【0079】
方法
試験詳細:
ナイーブマウスを、アドリブで利用可能な食物及び水で、最大7日間ケージ中で処置部屋に慣れさせる。
【0080】
すべての動物を試験の開始時に重さを量り、群間の体重の平均分布に基づいて治療群に無作為に割り当てた。媒体、3、10若しくは30mg/kgでの6-OH CBDV、2.5mg/kgでのジアゼパム、又は250mg/kgでのバルプロ酸ナトリウムのいずれかで、全ての動物が、10mL/kgで腹腔内(i.p)注射を通じて投与された。
【0081】
動物を、媒体の15分投与後、3、10及び30mg/kgそれぞれで、6-OH CBDVの15及び30分投与後、並びにジアゼパム及びバルプロ酸ナトリウムの30分投与後に、一度の電気ショックによって剛直性後肢伸筋けいれんの発現についてそれぞれ評価した。
【0082】
治療群の第一の動物は、推測又は推定CC50電流でショックを与えた。後続の動物には、前の動物のけいれんの結果に応じて電流を下げる又は上げた。
【0083】
各治療群から得られたデータを治療群のCC50±SEM値の計算に使用した。
【0084】
試験化合物:
媒体:(5%エタノール、5%Solutol、90%生理食塩水)を下記の様に調製した:36mLの生理食塩水中の2mLのエタノール、2mLのSolutolを60℃まで加熱した(1:1:18)。
【0085】
陽性対照:ジアゼパムを2.5mg/kgで、バルプロ酸ナトリウムを250mg/kgで使用した。
【0086】
試験化合物、アルファ6-OH CBDVを実施例1に記載した方法によって調製した。6-OH CBDVは、1:1:18のエタノール:Solutol:0.9%生理食塩水中の3、10及び30mg/kg(i.p.)処方で投与された。
【0087】
サンプル収集
各動物は、1986年動物(科学処置)法Schedule1に基づくHumane Killing of Animalsに準拠して、けいれん発現の直後に、頭蓋をたたいて脳を破壊し、その後首を切って永久に循環が停止したことを確認することによって、人道的に殺処分された。終末の血液及び脳収集は、首切り後に行った。
【0088】
血液をリチウム-ヘパリンチューブ内に収集し、1500×gで、10分間4℃で遠心分離した。得られた血漿を、除去し(>100μL)、安定化のために、100μLのアスコルビン酸(100mg/mL)を含有する0.5mLのエッペンドルフチューブに2分割した。脳を取り除き、生理食塩水で洗浄し、半割にした。それぞれ半分を、別々の2mlスクリューキャップクライオバイアルに入れ、重量を測定し、ドライアイス上で凍結させた。
【0089】
統計的分析
それぞれの治療群に対するデータを、採用したそれぞれの電流レベルで+及び0の数として記録し、この情報をCC50値(動物の50%が発作挙動を発現するのに必要な電流)±標準偏差の計算にその後使用した。
【0090】
6-OH CBDVの有効性についても、媒体対照群からCC50のパーセンテージ変化として計算した。薬-治療動物と対照間の有意差は、Litchfield and Wilcoxon(1949年)によって評価した。
【0091】
結果
以下の表2は、本実施例において得られたデータを示し、
図1はこれらの結果を示す。
【0092】
媒体群において、CC50値は25.7mAであると計算された。
【0093】
陽性対照ジアゼパム(2.5mg/kg)治療群において、試験前30分のi.p.投与で、CC50値は57.5mAであった。バルプロ酸ナトリウム(250mg/kg)治療群において、試験前30分のi.p.投与で、CC50値は281.5mAであった。これらの結果は、媒体対照と比較して統計的に有意であった(p<0.001)。
【0094】
6-OH CBDV治療群において、試験前15及び30分のi.p.投与、3、10及び30mg/kgの6-OH CBDVの用量で、3種すべて化合物の用量で、媒体と比較して統計的に有意であるCC50値が得られた。
【0095】
そのようなデータは、この化合物が治療的に有効であることを示唆するものである。
【表3】
【0096】
結論
6-OH CBDVは、MESTにおいて容量依存増加を発現し、この化合物が抗けいれん特性を有する証拠を与える。有意な効果は、媒体と比較した場合に、3、10及び30mg/kgで観察された。
【0097】
これらのデータは、このカンナビノイドが治療に効果がある可能性がある証拠はこれまで知られていなかったため、重要である。
【国際調査報告】