(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】仕上工程が後工程となる粗面化工程を実施する、可変ピッチ歯部を備えるラックの製造方法及び螺旋状ブローチング工具
(51)【国際特許分類】
B23F 1/08 20060101AFI20230120BHJP
B23D 37/14 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
B23F1/08
B23D37/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529872
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 FR2020052161
(87)【国際公開番号】W WO2021105606
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケスレール ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジエール パスカル
(72)【発明者】
【氏名】リシャール-ヴィットン エメリ
(57)【要約】
本発明は、ラック(2)の半加工品(1)が製造され、半加工品(1)が、ラック(2)の所望の寸法特徴と比較して、歯部の少なくとも1つの領域上に少なくとも1つの余分な厚さを含む、可変ピッチ(P1)を有する歯部を備えるラック(2)を製造するための方法に関し、この方法は、半加工品(1)の少なくとも1つの余分な厚さが除去される仕上工程(F)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の寸法特性に対して歯部の少なくとも1つの領域上に少なくとも1つの余分な厚さを含む、ラック(2)の半加工品(1)が製造される半加工品成形工程と、
前記半加工品(1)の少なくとも1つの余分な厚さが除去されるブローチ工具(11)を使用する螺旋ブローチ法によって実行される仕上工程(F)とを含む、
可変ピッチ歯部(P1)を含むラック(2)の製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの余分な厚さは、0.02mm以上1mm以下である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記仕上工程(F)は、前記ブローチ工具(11)が前記ラック(2)の前記半加工品(1)に対して所定の角度(A)を形成するように位置決めされる、位置決め段階を含む、
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記仕上工程(F)は、前記ブローチ工具(11)が前記ブローチ工具(11)の長さ方向に沿って延びる回転軸(Y)に沿って回転運動を行う、ブローチ段階を備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ブローチ段階において、前記ブローチ工具(11)は、前記ブローチ工具(11)の長さ方向に沿って延びる平行移動軸(Z)に沿った並進運動を行う、
請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記ブローチ段階において、前記ラック(2)の前記半加工品(1)が、前記ラック(2)の前記半加工品(1)の長手方向に延びる軸(X)に沿って並進運動を行う、
請求項4又は5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ブローチ段階において、前記ラック(2)の前記半加工品(1)の並進速度、又は前記ブローチ工具(11)の並進速度、又は前記ブローチ工具(11)の回転速度が可変である、
請求項4~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ラック(2)の半加工品(1)の並進速度又は前記ブローチ工具(11)の並進速度は、前記ラック(2)と協働することが意図されるピニオン(6)との間の減速比(R)に対応するブローチ曲線にしたがって、前記ブローチ工具(11)の回転速度に相関する、
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
ブローチ工具(11)の長さにわたって延在する少なくとも1つの螺旋溝(14)を含み、
前記螺旋溝(14)は、前記ラック(2)が協働するように意図されたピニオン(6)の溝(15)に対応する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の製造方法の実施を可能にするブローチ工具(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に使用されるパワーステアリング機構用のラック、すなわち歯部付バーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラックは、一方に歯で形成された歯部を含み、他方に歯部と反対側の歯部の背面を含む歯部付バーである。さらに、歯は、第1フランクと、第1フランクを第2フランクに接続する頂点に関して第1フランクに対して概ね対称である第2フランクとを備える。
【0003】
特定の用途では、可変ピッチラック、すなわち、その歯部が一定ではないピッチ(2つの連続する歯間の距離)を含むラックを有することが有用である。
【0004】
このような可変ピッチは、実際に、ラックと、それと噛み合うピニオンとの間の可変減速比を提供することを可能にする。
【0005】
したがって、例えば、前記ラックの中央部において、より小さなピッチ、すなわち、より近接した歯を使用し、前記ラックの端部において、より大きなピッチを使用し、直線の近傍でハンドルの小さな変位に対してより正確であり、また、コーナリング又は駐車操縦時のハンドルの大きな変位時に、より速い、パワーステアリング制御の進行性が得られる。
【0006】
可変ピッチラックの歯の側面は、直線状ではなく、螺旋角度、すなわち、一定でも可変でもない曲率半径を有する。
【0007】
このようなラックを製造するには、鍛造法、又は切削工具を使用する機械加工法など、いくつかの方法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような方法は、一般に満足のいく結果を与える。しかしながら、「半加工歯振れ(teeth spacerunout)」とも呼ばれ、いわゆる完全なマスターピニオンで測定された中心距離の変更、圧力角、及びラックの螺旋角に対応する半径方向成分のピッチ精度のような所望の寸法成分を考慮したラックを得るために、種々の方法のパラメータを調整することは非常に困難である。
【0009】
したがって、このような方法の実施は、予想される標準に対応するラックを得るために、特に長い調整時間を必要とする。
【0010】
したがって、本発明は、迅速、正確かつ容易に調整可能な製造を可能にする可変ピッチ歯部付ラックの製造方法を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、ラックの半加工品(blank) が製造される半加工品形成工程を含み、前記半加工品は、ラックの所望の寸法特性に対して歯部の少なくとも1つの領域上に少なくとも余分な厚さを含み、前記方法はまた、半加工品の少なくとも1つの余分な厚さが除去される仕上工程を含むことを特徴とする、可変ピッチ歯部を含むラックを製造する方法である。
【0012】
ラックの半加工品は、歯部の少なくとも1つの領域にわたって少なくとも1つの余分な厚さを含むラックである。半加工品は、必然的に、所望の寸法特性を達成するために除去することができる、余分な材料を含む。半加工品が材料の欠如を示すことはない。換言すれば、半加工品は、過剰な材料を有するので、所望の寸法特性を満たさない。半加工品は、例えば、パワーステアリングシステムにおいてそのまま使用することはできない。半加工品成形工程中に使用される方法は、全ての所望の寸法特性を有するラックを製造するように意図していないので、容易に調整可能である。したがって、期待される標準に対してダイレクトにラックを生成する従来の方法よりも自由度が大きい。使用される設定は、可変ピッチ歯部を備えるラックの半加工品を迅速に製造することを可能にする。
【0013】
半加工品成形工程中に使用される方法は、技術的及び経済的制約に従って選択される。
【0014】
好ましくは、ラックの半加工品は、工作機械を用いる機械加工方法によって製造される。機械加工方法は、材料を除去する。半加工品のみを製造しようとする、このような方法は、容易に調整可能であり、多数の部品を迅速に製造することを可能にする。一実施形態によれば、前記工作機械は、少なくとも5つの制御軸を備える。
【0015】
仕上工程は、半加工品成形工程中にラックの半加工品を製造するための選択される方法とは無関係である。
【0016】
仕上工程は、半加工品形成工程に続いて行われる。
【0017】
仕上工程は、半加工品の製造のために実施される方法とは異なる方法によって、半加工品の余分な厚さを除去する。
【0018】
このように、仕上工程は、調整及び製造が簡単な方法で、複雑な形状の歯部を有するラックを製造することを可能にする。
【0019】
本発明による方法は、高い寸法精度を有する可変ピッチ歯部を備えるラックを製造するために、半加工品を得ることを可能にする方法と、仕上工程とを両方とも容易に調整可能に組み合わせると有利である。したがって、本発明による方法は、ラックを製造するための方法の継続時間を短縮することを可能にする。
【0020】
本発明の1つの特徴によれば、少なくとも1つの余分な厚さは、0.02mmと1mmとの間に含まれる。
【0021】
余分な厚さは、ラックのサイズに関して制限された値の範囲内に全て含まれるため、均一である。
【0022】
したがって、半加工品は、所望の寸法特性に近い寸法特性を有し、仕上工程は、少量の材料を除去するだけでよい。よって、仕上工程中に実施される方法及びその調整は、余分な厚さが含まれる値の範囲に適合される。
【0023】
本発明の1つの特徴によれば、少なくとも1つの余分な厚さは、0.02mmと0.11mmとの間に含まれる。
【0024】
本発明の1つの特徴によれば、仕上工程は、ブローチ工具を実施するブローチ法によって実施される。
【0025】
ブローチ法の使用は、ブローチ工具の各経路で除去することができる材料の量を制限する。したがって、除去される材料の量が少ない場合には、半加工品形成工程の後に仕上工程を実行しなければならない。
【0026】
仕上工程には、容易に調整でき、素早く到達できる利点、すなわち半加工品上のブローチ工具の経路数を減らして、ラックに望ましい寸法特性を持つブローチ工法を用いる。好ましくは、仕上工程は、ブローチ工具の1回の通過のみを必要とする。
【0027】
ブローチ工具は、歯部に存在し得る余分な厚さを正確に除去するために、半加工品をその全長にわたって移動させるように設計される。
【0028】
本発明の1つの特徴によれば、ブローチ法は螺旋ブローチ法である。
【0029】
螺旋ブローチ方法により、従来のブローチ方法よりも複雑な形状を作ることができる。
【0030】
螺旋方式は回転ブローチ工具を用いる。このようにして、一定でない螺旋角度を有する歯の側面を容易に製造することが可能である。
【0031】
したがって、螺旋ブローチ方法は可変ピッチ歯部付ラックに特に適している。
【0032】
本発明の1つの特徴によれば、仕上工程は、ブローチ工具が所定の角度を形成するようにラックの半加工品に対して位置決めされる位置決め段階を含む。
【0033】
位置決め段階は、ブローチ工具に対する半加工品の位置決めに対応する。
【0034】
所定の角度は、製造される歯部の配向に依存する。製造される歯部は、協働することが意図されるピニオンに直接依存する。
【0035】
本発明の1つの特徴によれば、所定の角度は、ラックとそれが協働しようとするピニオンとの間に形成される角度に等しい。
【0036】
前記所定の角は、70°と85°との間、又は75°と80°との間に含まれることを特徴とする。
【0037】
このように、所定の角度は、車両のパワーステアリングシステムのラックを製造するようになっており、したがって、車両のステアリングピニオンと協働するようになっている。本発明の1つの特徴によれば、仕上工程は、ブローチ工具がブローチ工具の長手方向に延びる回転軸に沿って回転運動を行うブローチ段階を含む。
【0038】
位置決め段階の後、仕上工程はブローチ段階を含み、その間に余分な厚さが除去される。
【0039】
このために、半加工品と接触しているブローチ工具は、半加工品の歯部の長さをカバーするように回転運動を行う。各歯の高さでの経路中に、ブローチ工具は、余分な厚さに対応する少量の材料を除去する。
【0040】
本発明の1つの特徴によれば、ブローチ段階の間、ブローチ工具は、ブローチ工具の長手方向に延びる平行移動軸に沿って並進運動を行う。
【0041】
回転運動に関連する並進運動は、ブローチ工具が半加工品の歯部の長さだけ移動することを可能にし、したがって、歯の各々の余分な厚さを排除する。
【0042】
本発明の1つの特徴によれば、ブローチ段階中、ラックの半加工品は、ラックの半加工品の長手方向に延びる軸に沿って並進運動を行う。
【0043】
回転運動に関連した並進運動は、ブローチ工具が半加工品の歯部の長さにわたって移動することを可能にし、したがって、各歯の余分な厚さを排除することを可能にする。並進運動は、部分的にラックによって、部分的にブローチ工具によって実行することができる。
【0044】
本発明の1つの特徴によれば、ブローチ段階中、ラックの半加工品の並進速度、又はブローチ工具の並進速度、又はブローチ工具の回転速度は可変である。
【0045】
したがって、半加工品とブローチ工具との相対移動は、可変ピッチ歯部を形成するように変化する。
【0046】
本発明の1つの特徴によれば、ラックの半加工品の並進速度又はブローチ工具の並進速度は、協働することが意図されるラックとピニオンとの間の減速比に対応するブローチ曲線にしたがって、ブローチ工具の回転速度に相関する。
【0047】
ブローチ曲線は、ラックの半加工品の並進速度、又はブローチ工具の回転速度の関数としてのブローチ工具の並進速度を表す。ブローチ曲線は、協働を意図したピニオンの回転の関数として、可変ピッチラックの減速係数を表す減速比の曲線に類似している。
【0048】
したがって、ブローチ工具は、ラックが協働しようとするピニオンの運動と同様の運動で半加工品上を移動する。このようにして、ブローチ工具は、ピニオン/ラック結合のその後の動作を妨げる領域内の材料を正確に除去する。
【0049】
したがって、仕上工程は、ラック上のピニオンの動きを再現するブローチ工具によって行われる。したがって、調整は特に容易である。
【0050】
本発明はまた、本発明による製造方法の実施を可能にするブローチ工具に関し、ブローチ工具の長さにわたって延在する少なくとも1つの螺旋溝を含み、螺旋溝は、ラックが協働することが意図されるピニオンの溝に対応する。
【0051】
ブローチ工具は、ラックが協働することを意図したピニオンを再生する螺旋溝を備える。ブローチ工具は、ラック上のピニオンの動きを正確に再現する。
【0052】
したがって、このような工具を使用するブローチ段階は、ラックのその後の動作を再現するので、実施が特に容易である。
【0053】
したがって、ラックの機械加工は、その後の予想される使用に完全に適合される。
【0054】
本発明の1つの特徴によれば、前記ピニオンが前記ラック上の並進運動に結合された回転運動を行うとき、前記螺旋溝はピニオンの溝のトレースに対応する。
【0055】
したがって、螺旋溝は、ブローチ工具の全長にわたって螺旋状に延在する。ブローチ工具は螺旋ブローチの製造に適している。本発明は、非限定的な例として与えられ、添付の概略図を参照して説明される、本発明による実施形態に関する以下の説明のおかげで、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】本発明による方法の仕上工程の第1瞬間を示す図である。
【
図2】本発明による方法の仕上工程の第2瞬間を示す図である。
【
図3】本発明の目的である方法により製造された可変ピッチ歯部付ラックと噛み合うピニオンを備える車両用パワーステアリング機構の一部を示す模式斜視図である。
【
図4】本発明による方法によって使用されるブローチ曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、半加工品成形工程、次いで仕上工程Fを含む2つの別個の工程を実施する可変ピッチP1を有する歯部を備えるラック2を製造する方法に関する。
【0058】
半加工品成形工程中、ラック2の半加工品1は、例えば機械加工方法を用いて製造される。「機械加工方法(machining method)」とは、切削効果を得るために自身の中心軸を中心に回転駆動されるフライスなどの回転切削工具、好ましくは移動切削工具を用いて切削屑を切削して材料を除去する方法を意味する。
【0059】
半加工品形成工程は、ラック2の半加工品1、すなわち歯部の領域に余分な厚さを有するラック2を生成する。したがって、半加工品1は、過剰な材料が存在するため、ラック2に望まれる寸法特性に適合しない。そのため、半加工品1は、車両のパワーステアリングシステムで直ちに使用することはできない。
【0060】
ラック2の直接的な製造よりも低い精度を必要とする半加工品1の製造は、機械加工方法によって使用される機械加工工具の調整を容易にする。したがって、本発明による方法は、機械加工工具を調整するために必要な時間を短縮することを可能にする。
【0061】
半加工品1は、ラック2の使用中の機械的強度の問題のために、好ましくは金属である直線バーに歯部を切削することによって作られる。歯部は、バーの長手方向L2に対して実質的に横断方向に延在する。
【0062】
歯部は、可変ピッチP1を有し、すなわち、2つの連続する歯4を軸方向に分離する間隔P1は、バーの長手方向L2に沿った前記歯4の位置及び曲率に従って変化する。
【0063】
これは、特に、考慮される噛合領域8,9,10の関数としてラック2の減速比Rを変化させることを可能にする。
【0064】
したがって、
図3に示すような車両のステアリング機構の例では、ラック2は、例えば補助モータ及び/又はステアリングホイールに接続されたステアリングコラム7によって駆動されるピニオン6と噛み合っている。ラック2の中央領域8に短いピッチP1を設けることにより、直線近傍でのステアリングの精度をより高めるとともに、ラック2の中央領域から端部領域に向かって離れるときにピッチP1を大きくすることができ、特に駐車操縦時の大規模な移動を加速することができる。中央領域8と端部領域9,10における操舵運動の挙動の差は、
図4に示すように、減速比のカーブによって表される。
【0065】
減速比Rの曲線は、可変ピッチを有するラック2の減速係数をピニオン6の回転Dの関数として図示している。-10°と10°との間、つまり中央領域8で構成されるピニオン6の回転角Dについては、駆動精度やハンドルフィーリングを直線的に促進するために、減速比Rがほぼ一定となる。ピニオン6の回転角Dは、-10°と-130°と10°と130°との間、すなわち端部領域8,9では、減速比Dが大幅に増加するので、好みの車両の軌道を得ることができる。
【0066】
半加工品成形工程の完了後、本発明による方法は、位置決め段階、次いでブローチ段階を含む仕上工程Fを実施する。
【0067】
この位置決め段階は、ブローチ段階を行うことを視野に入れてブローチ工具11に対向して先に作製した半加工品1を位置決めすることからなる。このために、半加工品1は、半加工品1がラック2の半加工品1の長手方向に延びる軸Xに沿って並進運動を行うことができるように、摺動する第1往復台12上に固定される。
【0068】
さらに、ブローチ工具11は、ブローチ工具の長手方向に延びる回転軸Yに沿った回転運動と、ブローチ工具11の長手方向に延びる並進軸Zに沿った並進運動とを可能にするように、第2往復台13上に取り付けられている。
【0069】
ブローチ工具11は、ブローチ工具11の長さにわたって延在する複数の螺旋溝14を備える。より正確には、螺旋溝14は、ピニオン6がラック2の上を移動するときに、ラック2が協働することが意図されているピニオン6の溝15のトレースに対応する。換言すれば、ブローチ工具11の螺旋溝14は、螺旋溝14がブローチ工具11の全長にわたって延長されている場合には、ピニオン6の溝15と同一である。螺旋溝14は、半加工品1が作られる材料をノッチングし、除去することができる切刃を有する。
【0070】
ブローチ工具11はまた、螺旋溝14に対して実質的に横断方向に延びる溝16を備える。溝16の目的は、螺旋溝14によって切断された材料の要素又は削り屑を排出することである。
【0071】
位置決め段階の間、
図1にも表すように、ブローチ工具11は、半加工品1の第1端部に位置決めされる。
【0072】
さらに、ラック2のブローチ工具11と半加工品1とが協働するものであるラック2とピニオン6とのなす角度に応じた所定の角度Aを形成する。
【0073】
位置決め段階に続いて、仕上工程は、
図2に示すようにブローチ段階を実行し、半加工品1の余分な厚さがブローチ工具によって除去される。
【0074】
ブローチ段階の間、ブローチ工具11は、ラック2上のピニオン6のように半加工品1上のブローチ工具11と係合するように、半加工品1と接触させられる。
【0075】
次に、ブローチ工具11は、半加工品1が並進運動を行う間、並進運動及び回転運動を行う。したがって、ブローチ工具11は、ラック2上のピニオン6のように半加工品1の歯部の上を移動する。ブローチ工具11が半加工品1の第2端部のレベルに到達すると、ブローチ工具11の全長が半加工品1を通過し、半加工品1の全体をブローチ工具11が移動する。
【0076】
ラック2の半加工品1の変換速度又はブローチ工具11の変換速度は、
図4に示す減速比の曲線に類似したブローチ曲線に従ってブローチ工具11の回転速度と相関関係にある。
【0077】
したがって、ブローチ工具11は、ラック2上のピニオン6の動きと同様の動きで半加工品1上を移動する。このようにして、ブローチ工具11は、ピニオン6/ラック2結合の後続動作を妨げる領域内の材料を正確に除去する。
【0078】
ブローチ段階の完了後、半加工品1はもはや余分な厚さを含まない。半加工品1は、車両のパワーステアリングシステムに搭載可能なラック2となっている。
【0079】
本発明の1つの特徴によれば、ブローチ段階は、熱処理段階の後に実施される。実際、熱処理段階の間に、特にラックがかなりの螺旋角度を有するときに、ラックの膨張及びねじれのような変形が起こり得る。したがって、熱処理段階の後にブローチ段階を実施することは、側面の幾何学的品質を付与する点で有利である。
【0080】
もちろん、本発明は、添付の図面に記載され、表された実施形態に限定されない。特に、様々な要素の構成の観点から、又は技術的均等物の置換によって、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、変更が可能なままである。
【国際調査報告】