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特表2023-503319エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20230120BHJP
   C12C 12/04 20060101ALI20230120BHJP
   C12H 3/00 20190101ALI20230120BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230120BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230120BHJP
   C12G 1/14 20190101ALI20230120BHJP
【FI】
A23L2/38 S
C12C12/04
C12H3/00
A23L2/00 B
A23L2/52
C12G1/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529925
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2020084533
(87)【国際公開番号】W WO2021105521
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】19211654.9
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.Teflon
(71)【出願人】
【識別番号】597109656
【氏名又は名称】クラリアント・プロドゥクテ・(ドイチュラント)・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】バンナート・ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フェアヒュルスドンク・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ツァフレル・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲンスラー・スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ビッターヴォルフ・カリーナ
【テーマコード(参考)】
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LG05
4B117LG16
4B117LK27
4B117LP10
4B117LP20
4B117LT05
4B128CP16
(57)【要約】
本発明は、エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法:
(a)1~60体積%のエタノールを含有する飲料を、熱によるまたは膜をベースとする脱アルコール化プロセスにより脱アルコール化するステップ;
(b)脱アルコール化された飲料から、エタノール含有プロセス流を分離するステップ;
(c)(i)分離されたエタノール含有プロセス流を、凝縮器、少なくとも1つのストリッピングカラムに、および引き続いて少なくとも1つの吸着体カラムに搬送するステップ、または
(ii)分離されたエタノール含有プロセス流を少なくとも1つの吸着体カラムに直接搬送するステップ;
この際、エタノール含有プロセス流のエタノール含有画分は、前記の少なくとも1つの吸着体カラムに吸着される;
(d)残留プロセス流を前記の脱アルコール化された飲料へリサイクルするステップ。
【請求項2】
前記の少なくとも1つの吸着体カラムの吸収体材料が、少なくとも200のSiO/Alモル比を有するMFIゼオライトおよび/またはシリカライトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記飲料が5~20℃の温度を有し、前記エタノール含有プロセス流が15~40℃の温度を有し、前記少なくとも1つの吸着体カラム内の温度が20~65℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)(i)または(ii)における吸着が、0.5~2barの圧力で行われる、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)のエタノール含有プロセス流の搬送が、50~950(L/時)/吸着体体積Lの流量で実施される、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が二段階ステップとして実施され、プロセス流1が得られ、これは方法ステップ(b)~(d)に付されるエタノール含有プロセスステップであり、プロセス流2が得られ、これは廃棄される、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
プロセス流2に対するプロセス流1の体積比が0.01~1の範囲から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記の脱アルコール化された飲料に対する前記エタノール含有プロセス流の比が、5~20体積%の範囲から選択される、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記エタノール含有プロセス流が、10~90体積%のエタノール、10~90体積%のH0および50~200mg/lの芳香化合物を含有する、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)における前記飲料の溶存酸素レベルが、0.01~3.0mg/lの範囲から選択される、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。.
【請求項11】
ステップ(c)が少なくとも1回繰り返される、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)および(b)が少なくとも1回繰り返される、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールおよびワイン消費の一般的な減少とは対照的に、減少したエタノール含有量の発酵飲料および/または蒸留飲料の需要は、過去10年間、絶えず増加していた。Muellerら(Physikalische Verfahren zur Entalkoholisierung verschiedener Getraenkematrizes und deren Einfluss auf qualitaetsrelevante Merkmale; Chem. Ing. Tech. 2016, 88, No.12, 1911-1928(非特許文献1))は、2010年から2016年までの間の50%超の増加について言及している。いくつかの方法が開発されてきたが、アロマ喪失は依然として大きな課題である。Muellerらは、熱による脱アルコール化によりビールの初期エタノール含有量を5体積%から0.51体積%へ減少させる間に、94%の高級脂肪族アルコールが喪失され、100%のエステルが喪失されることに言及しており、これはビールだけでなくワインの芳香物質プロファイルの大部分に相当する。これまでのところ、アロマ喪失は、分離されたアルコール性画分の一部を脱アルコール化ビールもしくはワイン製品にリサイクルすることによって補われているが、アロマ含有アルコール性画分は約96体積%というエタノール含有量を有するので、この手段は非常に限定されている。
【0003】
Muellerらのこれらの知見は、Mangindaanらによって確認された(Beverage dealcoholization processes: Past, present, and future; Trends in Food Science & Technology, 71 (2018) 36-45(非特許文献2))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Physikalische Verfahren zur Entalkoholisierung verschiedener Getraenkematrizes und deren Einfluss auf qualitaetsrelevante Merkmale; Chem. Ing. Tech. 2016, 88, No.12, 1911-1928
【非特許文献2】Beverage dealcoholization processes: Past, present, and future; Trends in Food Science & Technology, 71 (2018) 36-45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の発明者等は、エタノール含有飲料の熱による脱アルコール化(thermal dealcolization)のための現在確立されている方法を改善し、脱アルコール化飲料製品中の芳香化合物(aromatic compounds)の著しく増加した最終含有量を達成するための方法を開発することに自らの課題を設定した。
【0006】
この課題は、以下のステップを含む、エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法により解決された:
(a)1~60体積%のエタノールを含有する飲料を、熱によるまたは膜をベースとする脱アルコール化プロセスにより脱アルコール化するステップ;
(b)脱アルコール化された飲料から、エタノール含有プロセス流を分離するステップ;
(c)(i)分離されたエタノール含有プロセス流を、凝縮器、少なくとも1つのストリッピングカラム、および引き続いて少なくとも1つの吸着体カラムに搬送するステップ、または
(ii)分離されたエタノール含有プロセス流を少なくとも1つの吸着体カラムに直接搬送するステップ;
ここで、エタノール含有プロセス流のエタノール含有画分は、前記の少なくとも1つの吸着体カラムに吸着される;
(d)残留プロセス流を前記の脱アルコール化された飲料へリサイクルするステップ。
【0007】
本発明の方法は、優れた芳香フレーバープロファイルを有する脱アルコール化飲料を製造し、それによって、既存の熱によるまたは膜脱アルコール化プロセスの数十年間にわたって存在する問題を克服するだけでなく、エネルギー消費が低く、当該方法は連続的な様式で実施することができるので、費用効率が高く、工業的規模の製造に適している。さらに、本発明による方法は、既存の技術を変更する必要なしに、任意の既存の熱によるまたは膜脱アルコール化プロセスおよびプラントに組み入れることができる。さらに、分離されたエタノールは脱着させることができ、独立して使用/販売することができるので、顕著な体積損失は生じない。脱アルコール化飲料に追加的な水を添加する必要はなく、ガス流が連続的にリサイクルされ、再使用される。
【0008】
本出願において、「方法」および「プロセス」という用語は、同義語として使用され、両方とも、特許請求の範囲内で特許請求される本発明の方法を指す。
【0009】
本発明の範囲内において、ステップ(a)における用語「飲料」(すなわち、脱アルコール化プロセスを受ける飲料)は、ビール、ワインおよびマッシュを含むものとして理解されるべきである。本発明の方法は、例えばストロングビール、ラガー、エール、ペールビール、小麦ビール、スタウト、ライスビール(rice beer)、酒、サイダー、白ワイン、赤ワイン、ロゼ、シードルおよびスパークリングワインとして当業者に公知の全ての種類のビールおよびワインに特に適しているが、任意の種類のスピリットにも適している。ステップ(a)において特に好適な飲料(すなわち、脱アルコール化プロセスを受ける飲料)は、1~60体積%のエタノール含有量を有し、例示的な濃度範囲は、1~50体積%、2~40体積%、2~30体積%、2~25体積%、および2.5~20体積%、ならびに3~15体積%のエタノール含有量である。ステップ(a)における(すなわち、脱アルコール化プロセスを受ける)飲料が、0.01~3.0mg/l mg/l、0.01~1mg/lまたは0.01~0.2mg/l未満の溶解酸素レベルを有することがさらにとりわけ好適である。低い酸素レベルは、飲料内の酸化反応によるフレーバー喪失および/または望ましくないフレーバー化合物の生成を防止し、このことは最終製品の優れたフレーバープロファイルにさらに寄与する。
【0010】
エタノール含有飲料の脱アルコール化のための熱によるプロセスおよび膜プロセスは、1970年代後半以降当業者に周知であり、1960年代後半以降、例えばDE1442269B1またはWO2010086184によって既に記載され、そして特許されている。飲料の脱アルコール化のための熱によるおよび膜プロセスはまた、Muellerらにより(上記参照)、Mangindaanら(上記参照)、ZufallおよびWackerbauer(Verfahrenstechnische Parameter bei der Entalkoholisierung von Bier mittels Fallstromverdampfung und ihr Einfluss auf die Bierqualitaet (Monatsschrift fuer Brauwissenschaft, Heft 7/8, 2000, S.124f))、Andres-Iglesiasら(Simulation and flavor compound analysis of dealcoholized beer via one-step vacuum distillation; Food Research International, 76 (2015) 751-760)、Branyikら(A review of methods of low alcohol and alcohol-free beer production, Journal of Food Engineering 108 (2012) 493-506)およびBelisario-Sanchezら(Aroma Recovery in Wine Dealcoholization by SCC Distillation; Article in Food and Bioprocess Technology ・ August 2011, DOI: 10.1007/s11947-011-0574-y)により、言及され記載されている。これらの全ての特許、特許出願および刊行物の教示および内容は、参照により本明細書に組み込まれる。熱による脱アルコール化プロセスの例は、流下薄膜型蒸発(falling-film evaporation)、精留(rectification)またはスピニングコーンカラム蒸発(spinning cone column evaporation)による脱アルコール化である。膜脱アルコール化プロセスの例としては、パーベーパレーション、浸透蒸留、透析および逆浸透が挙げられる。
【0011】
本発明における脱アルコール化は、10~100%、20~100%、30~100%または40~100%の、飲料の元のエタノール含有量のエタノール減少が達成されるまで実施される。飲料の元のエタノール含有量のエタノール減少はまた、40~99.9%、50~99.7%、60~99.8%、または70~99.5%のエタノール減少が達成されるまで実施することもできる。従って、特に好適な実施態様内において、脱アルコール化飲料のエタノール含有量は、0~20%、0~15体積%、0~5体積%、0~1体積%、0~0.7体積%、0~0.5体積%、0~0.05体積%の範囲から選択される。脱アルコール化飲料のエタノール含有量のさらなる適切な範囲は、0.01~7体積%、0.01~5体積%、0.01~2.5体積%、0.01~1.5体積%から選択される。
【0012】
本発明の方法のステップ(a)は、1つまたは2つのステップのプロセスステップとして実施してよい。ステップ(a)が2ステッププロセスステップとして実施される実施態様内では、プロセス流1が得られ、これは方法ステップ(b)~(d)にさらに付される前記の「エタノール含有プロセス流」であり;さらにプロセス流2が得られ、これは廃棄される。プロセス流1とプロセス流2との体積比は、好適には0.01~1の範囲から選択され、0.05~0.9および0.1~0.75も適切な範囲である。
【0013】
本発明の方法のステップ(b)による「分離」は、本発明の目的のために適したものとして当業者に知られている任意の手段または方策によって実施することができる。脱アルコール化飲料とエタノール含有プロセス流を分離するための適切な分離手段または方策は当業者に公知であり、熱によるまたは膜をベースとする脱アルコール化プロセスに関して周知のプロセスの一部である。
【0014】
1~30または2.5~20体積%の初期エタノール含有量を有する飲料に適した特に好適な実施態様内において、本発明の方法のステップ(b)によるエタノール含有プロセス流と、脱アルコール化された飲料との体積比は、1~50体積%、2~40体積%、3~35体積%、または5~30体積%の範囲から選択される。
【0015】
別の特に好適な実施態様内において、前記エタノール含有プロセス流は2~40体積%のエタノールを含有し、ここで、さらなる可能なエタノール含有量は、2~35体積%、2~30体積%、2~25体積%、2~20体積%、3~35体積%、3~30体積%、3~20体積%または2~15体積%の範囲から選択することができる。
【0016】
本発明の方法の別の特に好適な実施態様内において、前記エタノール含有プロセス流は、2~40体積%のエタノール、60~98体積%のH20および50~200mg/lの芳香化合物を含有する。さらなる可能な含有量の範囲は、2~25体積%のエタノール、75~98体積%のH2Oおよび75~150mg/lの芳香化合物である。
【0017】
用語「芳香化合物」は、以下の化合物のうちの少なくとも1種を指すと理解されるべきである:アセトアルデヒド、n-プロパノール、i-ブタノール、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、酢酸エチル、フェニルエタノール、3-メチルブタン酸、ヘキサン酸およびカプリル酸。特に好適なエタノール含有プロセス流は、上記の芳香化合物のうちの少なくとも3種を含有する。別の適切な実施態様内において、本発明の方法は、5~70℃の範囲から選択される温度で実施され、他の適切な範囲は10~65℃または15~65℃である。それに関して、本発明の方法のプロセスステップが異なる温度で実施され、吸着が20~65℃または25~60℃の範囲から選択される温度で実施されることが、特に好適である。エタノール含有飲料は、5~25℃または5~20℃の範囲から選択される温度を有し得る。本発明の方法の特定の適切な実施態様内において、エタノール含有飲料は5~20℃の温度を有し、エタノール含有プロセス流は15~40℃の温度を有し、少なくとも1つの吸着体カラム内の温度は20~65℃である。
【0018】
本発明の方法のステップ(c)における「搬送」は、本発明に適したものとして当業者にわかる任意の手段または方策によって、例えば、エタノール含有プロセス流を凝縮器(ステップ(c)(i))にまたは吸着体カラム(ステップ(c)(ii))にポンプで送り込むことによって、行うことができる。
【0019】
本発明の方法内で使用される前記の少なくとも1つのストリッピングカラムは、エタノール含有プロセス流の表面を増加させて、エタノール含有プロセス流に対して向流で実施される不活性ガス流との大きな物質交換表面を生成する充填材料を含む。
【0020】
充填材料は、有利には、サドル、ポールリング、ハッケット(hacketten)またはラシヒリング(Raschig rings)から選択され得る。本発明の方法の特に好適な実施態様内において、前記の少なくとも1つのストリッピングカラムの充填材料は、1リットルのストリッピングカラム容積あたり100~5000個のラシヒリングを含み、ここで、1リットルのストリッピングカラム容積あたり500~4500個または1000~4300個のラシヒリングが、特に有利な結果をもたらす。特に好適な結果は、各サドル、ポールリング、ハッケット(hackett)またはラシヒリングのサイズがストリッピングカラムの直径の1/10~1/50の範囲から選択される充填材料に対して達成され得る。他の好適な範囲は、ストリッピングカラムの直径の1/15~1/45、またはストリッピングカラムの直径の1/20~1/40である。
【0021】
ストリッピングカラム内で、エタノール含有プロセス流を向流の不活性ガス流と接触させる。本発明の方法の特に好適な実施態様内において、不活性ガス流の比流量は、30~600L(不活性ガス)/時/L(ストリッピングカラムの充填容積)の範囲から選択される。他の適切な範囲は、50~500L(不活性ガス)/時/L(充填容積)、または75~400L(不活性ガス)/時/L(充填容積)である。代替の適切な実施態様内において、不活性ガス流の比流量は、50~950L(不活性ガス)/時/L(吸着体材料体積)の範囲から選択される。他の適切な範囲は、80~900L(不活性ガス)/時/L(吸着体材料体積)または120~750L(不活性ガス)/時/L(吸着体材料体積)である。本発明の別の有利な実施態様内において、前記の少なくとも1つのストリッピングカラムを通る不活性ガス流の流量は、0.05~0.5m不活性ガス/(mストリッピングカラム断面積・s)、例えば0.075~0.25m不活性ガス/(mストリッピングカラム断面積・s)または0.09~0.20m不活性ガス/(mストリッピングカラム断面積・s)である。
【0022】
ステップ(c)(i)において本発明の方法に特に適した例示的な不活性ガスは、COおよびNである。
【0023】
本発明の方法のステップ(c)(i)において、および前記の少なくとも1つのストリッピングカラムを出た後、不活性ガス流を少なくとも1つの吸着体カラムと接触させる。本発明による方法のステップ(c)(i)の範囲内において「接触」という用語は、当業者にとって本発明の目的のために適していると考えられる任意のタイプの接触を意味するものと理解される。ステップ(c)(i)の範囲内において接触は、有利には、不活性ガス流を前記の少なくとも1つの吸着体カラムに通すことによって行うことができる。特別な実施態様内では、複数のカラム、例えば2~10個または2~6個の吸着体カラムが使用される。本発明の方法の例示的な実施態様は、3、4、5または6個の吸着体カラムを使用する。これらのカラムは、直列または並列に接続することができる。
【0024】
本発明の方法がステップ(c)(i)の代わりにステップ(c)(ii)を行うことによって実施される場合、エタノール含有プロセス流は、凝縮されず、前記の少なくとも1つの吸着体カラムに直接搬送される。この実施態様において、エタノール含有プロセス流はまた、それが前記の少なくとも1つの吸着体カラムに入る前に、前記の少なくとも1つの吸着体カラムに入る前に凝縮が起こらないことを確実にするために、不活性ガス体積とエタノール含有プロセス流体積とが0.1/1~25/1の体積となるまで富化されてもよい。不活性ガスおよび不活性ガス流に関する上記の定義は、本発明の方法のステップc(ii)における実施態様にも適用される。
【0025】
本発明の範囲内において、前記の少なくとも1つの吸着体カラムは、吸着体材料、例えば、少なくとも200のSiO/Alモル比を有する、MFIゼオライトおよび/またはシリカライトを含む。例示的なSiO/Alモル比は、200~1600、350~1500、400~1400、500~1300、または800~1200である。1超の吸着体カラムを有する実施態様では、前記カラムは、同一のまたは異なる吸着体材料を含むことができる。
【0026】
例示的な実施態様の範囲内において、吸着体材料中のゼオライトの量は、(吸着体材料の全重量を基準として)少なくとも10重量%であり、さらなる適切な量は少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも85重量%または少なくとも90重量%である。適切な範囲は、10~100重量%、30~100重量%、50~100重量%、40~95重量%、50~95重量%、60~95重量%、または60~100重量%である。
【0027】
別の例示的な実施態様内において、MFIゼオライトの細孔直径は8Å以下(または7.5Å以下、7Å以下、または6.5Å以下)である。細孔直径の好適な範囲は、5~8Å、5.5~7Å、6~6.5Å、5~6.5Å、または2.4~3.4Åである。特に好適な実施態様内において、上記で定義された範囲から選択される細孔直径を有するゼオライトに関する量は、25~100重量%(吸着体の全重量を基準として)、50~100重量%、75~100重量%または90~100重量%の範囲で選択される。
【0028】
別の好適な実施態様では、吸着される化合物の質量と、8Å以下の細孔直径を有するMFIゼオライトおよび/またはシリカライトの質量との比は、1~1000または2~500または3~200の範囲から選択され、同様に好適な範囲は4~100および5~50の範囲である。
【0029】
特に好適な実施態様では、MFIゼオライトは、液体が少なくとも50g/lのアルコールの水溶液である場合に、40℃の温度および1.013barの絶対圧力で、水と比較して、少なくとも2倍の質量の、好ましくは2.5倍の質量の、特に好ましくは3倍の質量のメタノール、エタノールまたはプロパノールを含むアルコールに結合するゼオライトである。MFIゼオライトのこれらの特性は、少なくとも50g/lのアルコールを含む水溶液500mlを、1.013バールの圧力および30℃の温度で24時間、1分あたり1リットルの不活性ガス体積でストリッピングし、アルコールで富化されたガス流を、400gのMFIゼオライトを充填したカラムに通すことによって決定することができる。アルコールを枯渇させたガス流はリサイクルされる。取り込まれた全質量は、試験前後のMFIゼオライトの重量を決定することによって決定される。水の量は、カールフィッシャー滴定法によって決定することができる。結合した質量の残りは、吸着されたアルコールに起因すると考えられる。水中50g/lのエタノールからなる液体を使用する。
【0030】
本発明の範囲内で、吸着体材料のさらなる可能な構成成分は、シリカ、ベントナイト類、ケイ酸塩、クレー類、ハイドロタルサイト類、ケイ酸アルミニウム類、酸化物粉末、雲母、ガラス、アルミン酸塩、クリノプチロライト類(clinoptolites)、ギスモンジン類、石英、活性炭、獣炭、モンモリロナイト類、ならびに本発明による方法に適しているとして当業者にわかる有機ポリマー、ならびにそれらの混合物からなる群から選択することができる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)は、吸着体材料の構成成分として追加的に好適である。本発明による方法の範囲内において、吸着体材料中のバインダーおよび/またはPTFEの適切な量は、75重量%以下、50重量%以下、25重量%以下、20重量%以下または10重量%以下である。特に好適な実施態様内において、吸着体材料中のバインダーおよび/またはPTFEの量は、10~50重量%の範囲、または10~25重量%の範囲で選択される。
【0031】
「細孔直径」という表現は、ゼオライトのマイクロポアに埋め込むことができる理論球体の最大直径を意味すると理解される。
【0032】
「分子直径」という表現は、分子の最大投影直径の直径を意味すると理解される。
【0033】
上記の議論によると、飲料に元々含有される芳香化合物の大部分は、技術水準の熱によるまたは膜ベースの脱アルコール化プロセスの間にエタノール含有プロセス流に移され、技術水準の方法内では、このプロセス流は部分的にまたは完全に廃棄される。これらの重要な芳香化合物には、以下が含まれる:n-プロパノール、3-メチルブチルアセテート、2-メチル-1-プロパノール、イソブチル、イソアミルアセテート、アセトアルデヒド、エチルアセテート、i-ブタノール、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、フェニルエタノール、エチルホルメート(ethylformiate)、フェニルエチルアセテートおよびイソアミルアルコール。従って、本発明の方法において「芳香化合物」という用語は、上に列挙した化合物から選択されるいずれか1種または複数の化合物を指す。
【0034】
本発明におけるエタノール含有プロセス流は、飲料のエタノール含有量を技術水準の熱によるまたは膜ベースのプロセスによって0.05~5体積%に低下させた場合、上記に列挙された化合物の元の含有量の85~100%を含有する。
【0035】
本発明の方法が、上記で定義されるようなステップ(c)(ii)を実施することによって実施される場合、本発明の方法のステップ(d)内において、前記の少なくとも1つの吸着体カラムを出る残留気体プロセス流は、脱アルコール化された飲料中にリサイクルされる。本発明の方法のステップ(d)を実施することにより、最終製品のフレーバープロファイルが修復され、なぜなら技術水準の熱によるまたは膜脱アルコール化プロセスによって分離された芳香化合物は、脱アルコール化された飲料にリサイクルされ、帰着されるためであり、なぜならば、それらは前記の少なくとも1つの吸着体カラムの吸着体材料に吸着されないからである。「リサイクリング」は、本発明の方法のために適したものとして当業者がわかる任意の手段または方策によって実施することができる。代替の実施態様内では、前記の少なくとも1つの吸着体カラムを出る気体プロセス流は、脱アルコール化飲料にリサイクルされる前に凝縮される。
【0036】
本発明の方法が、上記で定義されるようなステップ(c)(i)を実施することによって実施される場合、本発明の方法のステップ(d)内において、前記の少なくとも1つの吸着体カラムを出る残留気体プロセス流は、少なくとも1つのストリッピングカラムを経て脱アルコール化飲料中にリサイクルされる。この実施態様内では、前記の少なくとも1つの吸着体カラムを出る気体プロセス流は、少なくとも1つのストリッピングカラムを経て脱アルコール化飲料へ移される。この実施態様は、元々の飲料の芳香化合物の大部分だけでなく、最初に除去されたエタノールの一部分も特定の所望の含有量に至るまで最終製品に戻すことも可能にするため、最終製品のエタノール含有量が0.5~5体積%である場合、例えばライトビールまたはアルコール低減ワイン(alcohol-reduced wine)の場合に特に適している。本発明の方法のステップ(d)を実施することにより、最終製品のフレーバープロファイルが修復され、なぜなら技術水準の熱によるまたは膜脱アルコール化プロセスによって分離された芳香化合物は、脱アルコール化飲料にリサイクルされ、帰着されるためであり、なぜならば、それらは前記の少なくとも1つの吸着体カラムの吸着体材料に吸着されないからである。さらに、最終製品のエタノール含有量を正確に調節することができる。「リサイクリング」は、本発明の方法のために適したものとして当業者がわかる任意の手段または方策によって実施することができる。代替の実施態様内では、前記の少なくとも1つの吸着体カラムを出る気体プロセス流は、脱アルコール化飲料にリサイクルされる前に凝縮される。
【0037】
本発明の方法の別の実施態様内において、前記の少なくとも1つの吸着体カラムに吸着されているエタノール含有プロセス流の画分は、当該少なくとも1つの吸着体カラムから脱着させてもよい。この画分は、15~90体積%のエタノールを含有し、これは別に販売することができ、従って、さらなる精製を行う必要がないので、本発明の方法の収益性をさらに改善する。脱着は、20~65℃の温度および0.04~0.3barの圧力で実施するのが特に好適である。
【0038】
本発明の方法の別の実施態様内において、ステップ(c)は、少なくとも1回繰り返され、ここで、ステップ(c)を2~100回、3~80回または3~50回繰り返すことが特に好適である。
【0039】
本発明の方法の別の実施態様内において、ステップ(c)および(b)は、少なくとも1回繰り返され、ここで、ステップ(c)は2~100回、3~80回または3~50回繰り返すことが特に好適である。
【0040】
本発明の特定の実施態様
以下の特定の実施態様は、本発明の方法について特に有利な実施態様を明確にする。これらの実施態様は、いかなる点においても本出願の範囲を限定することを意味するものではない。
【0041】
特定の実施態様A
以下のステップを含む、エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法:
(a)1~20体積%のエタノールを含有するビールおよびワインから選択される飲料を、熱によるまたは膜をベースとする脱アルコール化プロセスにより脱アルコール化するステップ;
(b)脱アルコール化された飲料から、2~25体積%のエタノール含有量を有するエタノール含有プロセス流を分離するステップ、この際、前記エタノール含有プロセス流は、2~40体積%のエタノール、60~98体積%のH20および50~200mg/lの芳香化合物を含み、前記芳香化合物は、n-プロパノール、3-メチルブチルアセテート、2-メチル-1-プロパノール、イソブチル、イソアミルアセテート、アセトアルデヒド、エチルアセテート、i-ブタノール、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、フェニルエタノール、エチルホルメート(ethylformiate)、フェニルエチルアセテートおよびイソアミルアルコールからなる群から選択される;
(c)(i)分離されたエタノール含有プロセス流を、凝縮器、少なくとも1つのストリッピングカラム、および引き続いて少なくとも1つの吸着体カラムに搬送するステップ、この際、エタノール含有プロセス流のエタノール含有画分は、前記の少なくとも1つの吸着体カラムに吸着される;
(d)残留プロセス流を、予凝縮なしで、前記の脱アルコール化された飲料へリサイクルするステップ。
【0042】
特定の実施態様B
以下のステップを含む、エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法:
(a)1~20体積%のエタノールを含有するビールおよびワインから選択される飲料を、熱によるまたは膜をベースとする脱アルコール化プロセスにより脱アルコール化するステップ;
(b)脱アルコール化された飲料から、2~25体積%のエタノール含有量を有するエタノール含有プロセス流を分離するステップ、この際、前記エタノール含有プロセス流は、2~40体積%のエタノール、60~98体積%のH20および50~200mg/lの芳香化合物を含み、前記芳香化合物は、n-プロパノール、3-メチルブチルアセテート、2-メチル-1-プロパノール、イソブチル、イソアミルアセテート、アセトアルデヒド、エチルアセテート、i-ブタノール、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、フェニルエタノール、エチルホルメート(ethylformiate)、フェニルエチルアセテートおよびイソアミルアルコールからなる群から選択される;
(c)(ii)分離されたエタノール含有プロセス流を少なくとも1つの吸着体カラムに直接搬送するステップ;
この際、エタノール含有プロセス流のエタノール含有画分は、前記の少なくとも1つの吸着体カラムに吸着される;
(d)残留プロセス流を、予凝縮なしで、前記の脱アルコール化された飲料へリサイクルするステップ。
【0043】
特定の実施態様C
以下のステップを含む、エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法:
(a)1~20体積%のエタノールを含有するビールおよびワインから選択される飲料を、熱によるまたは膜をベースとする脱アルコール化プロセスにより脱アルコール化するステップ;
(b)脱アルコール化された飲料から、2~25体積%のエタノール含有量を有するエタノール含有プロセス流を分離するステップ、この際、前記エタノール含有プロセス流は、2~40体積%のエタノール、60~98体積%のH20および50~200mg/lの芳香化合物を含み、前記芳香化合物は、n-プロパノール、3-メチルブチルアセテート、2-メチル-1-プロパノール、イソブチル、イソアミルアセテート、アセトアルデヒド、エチルアセテート、i-ブタノール、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、フェニルエタノール、エチルホルメート(ethylformiate)、フェニルエチルアセテートおよびイソアミルアルコールからなる群から選択される;
(c)(i)分離されたエタノール含有プロセス流を、凝縮器、少なくとも1つのストリッピングカラム、および引き続いて少なくとも1つの吸着体カラムに搬送するステップ、
この際、エタノール含有プロセス流のエタノール含有画分は、前記の少なくとも1つの吸着体カラムに吸着される;
(d)残留プロセス流を、予凝縮を伴って、前記の脱アルコール化された飲料へリサイクルするステップ。
【0044】
特定の実施態様D
以下のステップを含む、エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法:
(a)1~20体積%のエタノールを含有するビールおよびワインから選択される飲料を、熱によるまたは膜をベースとする脱アルコール化プロセスにより脱アルコール化するステップ;
(b)脱アルコール化された飲料から、2~25体積%のエタノール含有量を有するエタノール含有プロセス流を分離するステップ、この際、前記エタノール含有プロセス流は、2~40体積%のエタノール、60~98体積%のH20および50~200mg/lの芳香化合物を含み、前記芳香化合物は、n-プロパノール、3-メチルブチルアセテート、2-メチル-1-プロパノール、イソブチル、イソアミルアセテート、アセトアルデヒド、エチルアセテート、i-ブタノール、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、フェニルエタノール、エチルホルメート(ethylformiate)、フェニルエチルアセテートおよびイソアミルアルコールからなる群から選択される;
(c)(ii)分離されたエタノール含有プロセス流を少なくとも1つの吸着体カラムに直接搬送するステップ;この際、エタノール含有プロセス流のエタノール含有画分は、前記の少なくとも1つの吸着体カラムに吸着される;
(d)残留プロセス流を、予凝縮を伴って、前記の脱アルコール化された飲料へリサイクルするステップ。
【0045】
特定の実施態様E
特定の実施態様A~Dのいずれかに定義されるような、エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法であって、ステップ(a)が二段階ステップとして実施され、プロセス流1が得られ、これは方法ステップ(b)~(d)に付されるエタノール含有プロセスステップであり、プロセス流2が得られ、これは廃棄され、ここで、プロセス流1とプロセス流2との体積比が0.01~1の範囲から選択される方法。
【0046】
特定の実施態様F
特定の実施態様A~Eのいずれかに定義されるような、エタノールを減少させた飲料およびエタノール不含の飲料の製造の間のアロマ喪失を減少するための方法であって、前記の少なくとも1つの吸着体カラムの吸着体材料が、少なくとも200のSiO2/Al2O3モル比を有するMFIゼオライトおよび/またはシリカライトを含む方法。
【0047】
例と図
例により、本発明をより詳細に以下で説明する。例は特定の実施態様を例示するものであり、本出願の範囲を何ら限定するものではないことを強調しておく。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1:ステップ(a)を二段階ステップとして実施し、エタノール含有飲料流の凝縮を実施する本発明の方法を実施するためのセットアップのフローチャートを示す。
図2図2:ステップ(a)を二段階ステップとして実施するが、エタノール含有飲料流の凝縮を実施しない本発明の方法を実施するためのセットアップのフローチャートを示す。
図3図3:例1における80分のサイクル時間での吸着体カラム後方のガス流中のエタノール含有量を示す。
図4図4:例1における20分のサイクル時間での吸着体カラム後方のガス流中のエタノール含有量を示す。
図5図5:例2の結果を示す。
図6図6は、飲料、脱アルコール化飲料およびエタノール含有プロセス流中の芳香化合物の分布を示す
図7図7は、ステップ(c)(i)を実施する前のエタノール含有プロセス流、およびステップ(c)(i)後の残留プロセス流における芳香化合物の分布を示す。
図8図8は、ステップ(c)(i)を実施する前のエタノール含有プロセス流、およびステップ(c)(i)後の残留プロセス流、ならびにエタノール含有画分におけるアセトアルデヒドの分布を示す。
図9図9は、本発明の方法を実施した後に脱アルコール化飲料にリサイクルすることができる芳香化合物の量を示す。
図10図10は、それぞれのプロセスステップ後に脱アルコール化飲料にリサイクルすることができる芳香化合物の量を示す。
【実施例
【0049】
例1:ステップ(c)(i)中のサイクル時間の影響
エタノールおよび水の合成溶液1L(エタノール濃度5体積%のエタノール含有プロセス流に似ている)を、強化(20℃)容器に供し、蠕動ポンプ(Watson Marlow,520DU)を用いることによって、ストリッピングカラム(直径60mm、高さ1400mm)中に、カラムの塔頂で1.5L/hの体積流量で搬送した。ストリッピングカラムを、充填材料(Teflonラシヒリング、直径6mm、高さ6mm、Sigma-Aldrich,Z243477)で充填した。向流で流れるN流(20L/分)を、ストリッピングカラムの塔底から塔頂へと搬送した。当該ストリッピングカラムは、1.013barの圧力および22℃の温度で使用した。Nガス流を吸着体カラムと接触させ、ストリッピングカラム中にリサイクルした。吸着のために、吸着体材料(Clariant,TZP9028;MFIゼオライト,SiO/Alモル比1000)で充填した3つの吸着体カラムを使用した。同時に2つの吸着体カラムを吸着のために使用し、1つのカラムを脱着のために使用した。Nガス流から、0.5L/分の副流を吸着体カラムの後方で採取し、吸着体カラムによるエタノール除去のモニタリングのために、ガス流のエタノール含有量を質量分析計(Thermo scientific PrimaPro Process MS)で分析した。吸着体カラムからのエタノールの脱着のために、Nガス流(0.5L/分)を使用した。真空ポンプによって、吸着体カラム内の圧力を100mbarに低下させた。
【0050】
2つの実験を、吸着体カラムを交換する、20分および80分のサイクル時間でそれぞれ行った。
【0051】
図3は、80分のサイクル時間での、吸着体カラムの後方のガス流内のエタノール濃度、および各吸着体カラム1~3のモードを示す。0-80分:カラム1/2は吸着、カラム3は脱着;80-160分:カラム1/3は吸着、カラム2は脱着;160-240分:カラム2/3は吸着、カラム1は脱着。
【0052】
図4は、20分のサイクル時間での、吸着体カラムの後方のガス流内のエタノール濃度、および各吸着体カラム1~3のモードを示す。
【0053】
例1の結果から、80分のサイクル時間での、ガス流中のエタノール濃度は、各サイクルの20~30分後に増加し、エタノールのより低い吸着をもたらすことが分かる。20分のサイクルでは、ガス流中のエタノール濃度は0.01~0.025%で大幅に低い。
【0054】
例2:ステップ(c)(i)中のエタノール濃度の影響
エタノールおよび水の合成溶液1L(5体積%、15体積%、30体積%および40体積%という異なるエタノール濃度を有するエタノール含有プロセス流に似ている)を、強化(20℃)容器に供し、蠕動ポンプ(Watson Marlow,520DU)を用いることによって、ストリッピングカラム(直径60mm、高さ1400mm)中に、カラムの塔頂で1.5L/hの体積流量で搬送した。ストリッピングカラムを、充填材料(Teflonラシヒリング、直径6mm、高さ6mm、Sigma-Aldrich,Z243477)で充填した。向流で流れるN流(20L/分)を、ストリッピングカラムの塔底から塔頂へと搬送した。当該ストリッピングカラムを、1.013barの圧力および22℃の温度で使用した。Nガス流を吸着体カラムと接触させ、ストリッピングカラム中にリサイクルした。吸着のために、吸着体材料(Clariant,TZP9028;MFIゼオライト,SiO/Alモル比1000)で充填した3つの吸着体カラムを使用した。同時に2つのカラムを吸着のために使用し、1つのカラムを脱着のために使用した。吸着体カラムからのエタノールの脱着のために、Nガス流(0.5L/分)を使用した。真空ポンプによって、吸着体カラム内の圧力を100mbarに低下させた。実験を20分のサイクル時間で行った。
【0055】
図5は、異なる合成溶液の脱アルコール化を示す。脱アルコール化は、時間tでのエタノール濃度としてのCエタノールを用いる指数関数Cエタノール(t)=A・e-B・tによってフィッティングすることができる。Aはプロセスの開始時のエタノール濃度として表すことができる定数であり、Bは、エタノール除去を表す定数である。フィッティングの定数とフィッティングの回帰係数Rを表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
前記関数の微分により、エタノール除去は、dcエタノール/dt=B・cエタノール(t)と記述することができる。見て分かるように、定数Bは、エタノール濃度から独立して0.58~0.72の範囲である。例2の結果から、エタノール除去が濃度と共に増加し、その結果、特にエタノール含有プロセス流の高濃度において、より迅速で費用効果の高い本発明のプロセスをもたらすことが分かる。
【0058】
例3:芳香物質プロファイルの分析
図1に示すように、熱をベースとする脱アルコール化を行うと、脱アルコール化飲料およびエタノール含有プロセス流1が生成する。
【0059】
飲料に元々含まれていた芳香化合物は、熱をベースとする脱アルコールプロセス中にエタノール含有プロセス流に移る。この移動は、図6に視覚化されている。そこには、飲料、ならびにそれに由来する脱アルコール化飲料およびエタノール含有プロセス流の、芳香化合物分布が示されている。以下の芳香化合物を、ガスクロマトグラフィー法(Gas Chromatography Headspace with FID Sampler)によって測定した。
アセトアルデヒド
n-プロパノール
i-ブタノール
2-メチルブタノール
3-メチルブタノール
酢酸エチル
フェニルエタノール
3-メチルブタン酸
ヘキサン酸
カプリル酸
【0060】
図1に示すように、エタノール含有プロセス流はステップ(c)(i)に付される。ここで、芳香化合物を含有するエタノール含有プロセス流は、エタノール含有画分と、芳香化合物が蓄積される残留プロセス流とに分離される。芳香化合物の分布を図7に示す。芳香化合物「アセトアルデヒド」(これはオフフレーバーと考えられる)は、吸着体に吸着され、従ってエタノール含有画分中に蓄積する(図8)。
【0061】
実験は以下の方法で行った:
1Lのエタノール含有プロセス流を、強化(15℃)容器に入れ、蠕動ポンプ(Watson Marlow,520DU)を用いることによって、ストリッピングカラム(直径60mm、高さ1400mm)中に、カラムの塔頂で2L/hの体積流量で搬送した。ストリッピングカラムを、充填材料(Teflonラシヒリング、直径6mm、高さ6mm、Sigma-Aldrich,Z243477)で充填した。向流で流れる不活性ガス流(N2、12L/分)を、ストリッピングカラムの塔底から塔頂へと搬送した。当該ストリッピングカラムを、1.013barの圧力および22℃の温度で使用した。不活性ガス流を吸着体カラムと接触させ、ストリッピングカラム中にリサイクルした。吸着のために、吸着体材料(Clariant,TZP9028;MFIゼオライト,SiO/Alモル比1000)で充填した3つの吸着体カラムを使用した。同時に2つのカラムを吸着のために使用し、1つのカラムを脱着のために使用した。吸着体カラムからのエタノールの脱着のために、不活性ガス流(N2、0.6L/分)を使用した。真空ポンプによって、吸着体カラム内の圧力を100mbarに低下させた。20分のサイクル時間の後、カラムはそれらの役割を変えた。72サイクルを実施した。
【0062】
例3は、本発明の方法が、エタノール含有プロセス流からエタノールを選択的に分離するが、残留プロセス流内に芳香化合物を保持することを示す。図6および7は、技術水準の脱アルコール化プロセスによって飲料から分離される芳香化合物の大部分を、最終製品にリサイクルできることを示す。さらに、オフフレーバーであるアセトアルデヒドを著しく減少させることができる(図8)。
【0063】
例4:エタノール含有プロセス流のリサイクリングと比較した、リサイクル可能な残留プロセス流の決定
例4では、リサイクル可能な残留プロセス流の量が決定される。最後に、それはまた、エタノール含有プロセス流の直接的なリサイクリングと比較される。リサイクル可能な残留プロセス流は、そのエタノール濃度によって決定される。エタノール含有プロセス流におけるエタノール濃度が低いほど、より多くを飲料中にリサイクルすることができる。残留プロセス流中のエタノール濃度については、2つのパラメータが決定的である。本発明の方法の抽出物(エタノール含有プロセス流)のエタノール濃度、および当該方法が実施される温度。
【0064】
この例では、これらのパラメータを変えて4つの実験を行った。実験は、例3の実験の説明に記載されているように行った。表2の第2および3列がパラメータを示す。抽出物のエタノール濃度を5~40%の間で変化させ、温度を5℃~20℃の間で変化させた。このようにして、4種の残留プロセス流を生成した。表2は、第4列に、これらの残留プロセス流のエタノール濃度を示す。さらに、第5列において、1Lの脱アルコール化飲料にリサイクルされる残留プロセス流の量が計算される。この計算は、脱アルコール化飲料が0.01体積%のエタノール濃度を有し、残留プロセス流で0.5体積%まで補われ得ることを基礎としている。
【0065】
表2は、実験に適用されたパラメーター、残留プロセス流における残留エタノール濃度、および1Lの脱アルコール化飲料にリサイクルできる残留プロセス流の量を示す。
【0066】
【表2】
【0067】
当該値を技術水準と比較するために、表3は、脱アルコール化飲料に直接リサイクルされたエタノール含有プロセス流の量のリストを示す。ここでも、リサイクルされる生成物の量はエタノール濃度によって異なる。ここでもまた、計算は、脱アルコール化飲料が0.01体積%のエタノール濃度を有し、エタノール含有プロセス流で0.5体積%まで補われ得ることを基礎としている。
【0068】
表3は、脱アルコール化飲料に直接リサイクルされる場合の、異なるエタノール濃度に関するエタノール含有プロセス流のリサイクル可能量を示す。
【0069】
【表3】
【0070】
リサイクルされるプロセス流(エタノール含有プロセス流または残留プロセス流)の量が多いほど、より多くの芳香化合物を最終飲料製品に再び移すことができる。サンプルAをサンプル1および2と比較し、サンプルBをサンプル3および4と比較すると、本発明の方法を実施することによって、1Lの脱アルコール化飲料に移されるリサイクルプロセス流の量は、本発明の処理なしでリサイクルできたであろう量よりも顕著に多いことが明らかとなる。5体積%のエタノール濃度に関しては、109mlのエタノール含有プロセス流(サンプルA)をリサイクルすることができ、本発明の方法を適用すると、272ml(サンプル1)またはさらには372ml(サンプル2)の残留プロセス流を脱アルコール化飲料にリサイクルすることができる。この手段は、リサイクル可能量を2倍にまたは3倍にさえする。従って、はるかに高い含有量の芳香化合物を脱アルコール化飲料にリサイクルすることができる。40体積%のエタノール濃度を有するエタノール含有プロセス流については、当該増加がより一層顕著である。12mlを脱アルコール化飲料にリサイクルして戻す(サンプルB)代わりに、51ml(サンプル3)またはさらには181ml(サンプル4)の残留プロセス流をリサイクルすることができる。この手段では、リサイクルされる量は5倍またはさらには15倍も多い。
【0071】
例5:再び移すことが可能な芳香化合物の質および量
例4において、リサイクル可能な残留プロセス流の可能な体積を既に計算し、エタノール含有プロセス流の直接のリサイクルと比較した。この例では、芳香化合物の質および量を、計算された体積について決定した。ここで再び、サンプルAをサンプル1および2と比較し、サンプルBをサンプル3および4と比較する。芳香化合物を質量分析法によって分析した。以下の芳香化合物を分析した。
酢酸イソブチルエステル
酪酸エチル
ヘキサン酸エチル
イソ吉草酸
ヘキサン酸
オクタン酸
【0072】
図9は、サンプルA、サンプル1またはサンプル2の体積をリサイクルすることによって脱アルコール化飲料に再添加することができる芳香化合物の量を示す。
【0073】
図10は、サンプルB、サンプル3またはサンプル4の体積をリサイクルすることによって脱アルコール化飲料に再添加することができる芳香化合物の量を示す。
【0074】
両方の図において、エタノール含有プロセス流の代わりに残留プロセス流をリサイクルさせると、5℃および20℃という例示の潜在的な製造温度について、最終飲料製品中の中核的な芳香化合物の量が大幅に多くなることが分かる。例えば、サンプルBにおける芳香化合物の量をサンプル4における量と比較すると、当該増加を非常に強力に示すことができる。
【0075】
最終的な飲料製品中にリサイクルされる酢酸イソブチルエステルの量は、本発明の方法を適用することによって14倍に増加させることができる。酪酸エチルの量を、4倍に増加させることができる。ヘキサン酸エチルの量は3倍であり、イソ吉草酸、ヘキサン酸およびオクタン酸の量は、35、55および28倍である。
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【国際調査報告】