(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】新規な保護バリア組成物、およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20230120BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20230120BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230120BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230120BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20230120BHJP
A61L 27/28 20060101ALI20230120BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20230120BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230120BHJP
A61L 15/32 20060101ALI20230120BHJP
A61L 15/40 20060101ALI20230120BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230120BHJP
A23L 33/195 20160101ALI20230120BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20230120BHJP
C07K 14/335 20060101ALN20230120BHJP
【FI】
C12N1/20 E
A61K35/747 ZNA
A61P31/12
A61P31/04
A61L27/54
A61L27/28
A61L27/36 100
A61K38/16
A61L15/32 100
A61L15/40 100
A23L33/135
A23L33/195
C12N15/31
C07K14/335
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530696
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 US2020062017
(87)【国際公開番号】W WO2021194563
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513219876
【氏名又は名称】クオラム イノベーションズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】モンスル ニコラス ティー.
(72)【発明者】
【氏名】バークス エヴァ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベーム フレデリック ティー.
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C081
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018MD86
4B018ME09
4B018ME14
4B018MF14
4B065AA30X
4B065AA30Y
4B065AC14
4B065BD01
4B065BD09
4B065BD18
4B065CA24
4B065CA60
4C081AA12
4C081AB11
4C081BA14
4C081CD35
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA02
4C084BA08
4C084BA20
4C084MA55
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZB33
4C084ZB35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087ZB33
4C087ZB35
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA11
4H045EA34
4H045EA60
4H045FA72
4H045GA01
4H045GA10
(57)【要約】
本発明は、生化学物質産生微生物および/または該微生物によって合成された副産物を用いて表面および/または物体のバリア機能を強化する組成物および方法を提供する。本発明の好ましい態様は、ヒト微生物叢に由来しかつバイオフィルム表現型で増殖し得るラクトバチルス属(Lactobacillus)種またはその生物活性抽出物を含む組成物、およびそれを使用する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオフィルムとして増殖させたラクトバチルス属(Lactobacillus)種を含み、かつ/または該バイオフィルムの抽出物を含む、組成物であって、該組成物を表面に適用した場合に、その表面が微生物、ウイルス、および/または化学的汚染の影響をより受けにくくなるように、バイオフィルムおよび/またはその抽出物がバリア機能を強化する、組成物。
【請求項2】
前記細菌株が、アクセッション番号PTA-122195を有するL. ファーメンタム (L. fermentum) Qi6である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ラクトバチルス属によって産生された熱安定性タンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
以下:
i) SEQ ID NO: 1;
ii) SEQ ID NO: 1の変種;および
iii) i) またはii) の断片
より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物が適用された、表面。
【請求項6】
対象の皮膚、腸、胃、肺、眼、口、副鼻腔、鼻、耳、気管、または食道である、請求項5に記載の表面。
【請求項7】
医療機器、調理台、防護服、テーブル、電化製品、椅子、食器、調理器具、医療用インプラント、包帯、個人用衛生用品、衣類、眼鏡類、履物、頭に着用するもの、およびマスクより選択される物体上にある、請求項5に記載の表面。
【請求項8】
乗り物、ボート、船舶、自動車、トラック、タンク、航空機、および列車より選択される物体上にある、請求項5に記載の表面。
【請求項9】
表面に適用される組成物が、アクセッション番号PTA-122195を有するL. ファーメンタムQi6を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
表面に適用される組成物が、前記ラクトバチルス属によって産生された熱安定性タンパク質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
表面に適用される組成物が、以下:
i) SEQ ID NO: 1;
ii) SEQ ID NO: 1の変種;および
iii) i) またはii) の断片
より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
表面の化学的、ウイルス、および/または微生物汚染に対するバリアを強化するための方法であって、請求項1に記載の組成物を該表面に適用する段階を含む、方法。
【請求項13】
表面が、対象の皮膚、腸、胃、肺、眼、口、鼻、耳、気管、または食道より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
表面が、医療機器、調理台、防護服、テーブル、電化製品、椅子、食器、調理器具、医療用インプラント、個人用衛生用品、包帯、衣類、眼鏡類、履物、頭に着用するもの、およびマスクより選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
無生物表面が、乗り物、ボート、船舶、自動車、トラック、タンク、航空機、および列車より選択される物体上にある、請求項12に記載の表面。
【請求項16】
物体および/または表面の性能および/または寿命が、以下:
a) 生物または非生物による表面との直接接触を防ぐかまたは制限すること;
b) 生物または非生物による表面の汚損を防ぐこと;
c) 生物または非生物を隔離すること;
d) 生物または非生物を不活性化すること;
e) バリアの耐久性、安定性、および/または寿命を高めること;ならびに
e) 共生生物の存在を増加させること
のうちの1つまたは組み合わせによって向上する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
表面に適用される組成物が、アクセッション番号PTA-122195を有するL. ファーメンタムQi6を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
表面に適用される組成物が、前記ラクトバチルス属によって産生された熱安定性タンパク質を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
表面に適用される組成物が、以下:
i) SEQ ID NO: 1;
ii) SEQ ID NO: 1の変種;および
iii) i) またはii) の断片
より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月26日に出願された米国仮特許出願第62/940,598号および2020年4月28日に出願された同第63/016,336号に対する優先権を主張するものであり、これらの各々は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列リスト
本出願の配列リストは「SeqList-24Nov20_ST25.txt」と名付けられ、これは2020年11月24日に作成されたものであり、2 KBである。配列リストは、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
化学的および生物学的脅威は、世界中の軍人および民間人の両方にとって危険である。化学的脅威には、長期的な影響または死をしばしばもたらすびらん剤および神経剤が含まれ得る。生物学的脅威には、人または作物などの他の生物に害を及ぼす手段として散布される細菌、ウイルス、および真菌が含まれ得る。現在の生物学的脅威の一般的な例には、炭疽菌およびペストが含まれる。
【0004】
有害な化学的および生物学的脅威の影響を制限するかまたは防ぐためには、適切な保護手段または対抗手段が不可欠である。多くの化学的および生物学的脅威に対処するために、バリアを制定することができる。
【0005】
バリアは、人間に対する脅威の侵入または直接的な接触を防ぐことができる。バリアを用いて、脅威を無効にする、隔離する、またはその他の方法で不活性化することができる。バリアは、脅威の接着を防ぐ、または脅威の分散を強化することができる。生物学的脅威に関しては、バリアは、バイオフィルム形成または胞子形成を阻害することを含め、増殖の手段を積極的に防ぐまたは停止することができる。
【0006】
多くの生物学的脅威と同様に、ペストの原因病原体であるペスト菌 (Yersinia pestis) は、バイオフィルムを形成するその能力に依存している。ペスト菌(Y. pestis) 細胞の効率的な伝播は、ノミの前腸内でのバイオフィルム形成に依存しており、これは血液ミールの消化の阻止、およびそれに続くペスト菌細胞を伴った血液ミールのヒトへの逆流を促進する。
【0007】
細菌バイオフィルムマトリックスを攻撃する、溶解する、またはその他の方法で弱めることは、それぞれ生物学的病原体の処理に役立ち得る。皮膚上または他の器官内の病原性細菌、バイオフィルム、およびその他の物質を制御することは、同様に、兵士および民間人の健康を回復または維持する上での主要な要素である。しかしながら、現在の治療法は、化学的または生物学的脅威の増殖を阻害し、その接着および付着を減少させるために全体的なマイクロバイオームを調節するのではなく、主に症状のコントロールに重点を置いている。
【0008】
増大する有害な生物および物質の集団と戦うために、新たなツールが必要とされている。有害な生物または物質の接触または接着を防ぐこと、有害な生物または物質を無効にするまたは隔離すること、およびバリアの耐久性を向上させることはそれぞれ、集合的にまたは独立して作用して非生物的および生物的バリア機能の改善を促進し得る方法である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、生物および/または非生物のバリアを作出する、またはそのバリア機能を強化するための組成物および方法を提供する。好ましい態様は、好ましくはバイオフィルム表現型で増殖させた場合の、バイオフィルム産生細菌および/または該細菌によって合成された生物活性物質を提供する。
【0010】
好ましい態様において、本発明の組成物は、バイオフィルムからの分泌物質を含む。1つの態様において、分泌物質は、組成物に添加する前に培養物から精製することができる。本発明はまた、例えば凍結乾燥および/またはフリーズドライ形態の細胞溶解物を含む組成物を提供する。
【0011】
いくつかの態様において、細菌株は、本明細書においてLf Qi6とも称されるラクトバチルス・ファーメンタム (Lactobacillus fermentum) Qi6である。1つの態様において、本発明は、Lf Qi6の単離されたまたは生物学的に純粋な培養物を提供する。別の態様において、本発明は、バイオフィルムとして増殖させた、Lf Qi6の生物学的に純粋な培養物を提供する。バイオフィルム表現型、ならびにバイオフィルム表現型の抽出物およびその溶解物を利用する方法もまた、本明細書において提供される。
【0012】
ある特定の態様では、肺、眼、鼻、口、気管、食道、耳、胃、腸、および/または脳におけるバリアを改変することにより、自然バリア機能が強化される。
【0013】
1つの局面おいて、本発明は、好ましくは、抗菌活性の阻害、病原性バイオフィルムの成長の阻害、病原性バイオフィルムの接着の阻害、病原性バイオフィルムの脱離の促進、共生バイオフィルムの成長の促進、および皮膚バリア機能の強化より選択される、1つまたは複数の生物活性を有する。
【0014】
ある特定の態様において、本発明は自己汚染除去表面を提供する。
【0015】
例示的な態様において、病原性細菌はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)(MRSA) であり、共生細菌は表皮ブドウ球菌 (Staphylococcus epidermidis)(S. epidermidis) である。
【0016】
ある特定の態様において、組成物は、既存のバリアの耐久性を向上させるか、もしくは耐久性のある新たなバリアを作出することができ、および/または自己汚染除去性となり得る。好ましい態様において、バリアは安定であり、少なくとも1日、2日、3日、7日、10日、30日、もしくは180日間、またはそれ以上にわたって、化学的および/または微生物汚染を除去するその能力を保持する。
【0017】
ある特定の態様において、組成物は、無生物の物体および/または表面におけるバリアを作出または強化する。物体は、船体および飛行機翼などの大きな表面、または神経を修復するために用いられる道具などの微細な表面であってよい。本発明の組成物および方法は、無生物物体の汚損を防ぐことができ、外科用器具の場合には、細菌感染を防ぐことができる。好ましくは、本発明の組成物および方法は、物体上の生物もしくは非生物による直接接触を防ぐかもしくは制限し、生物もしくは非生物を隔離し、および/または生物または非生物を不活性化する。この点で、表面は自己汚染除去性であり得る。
【0018】
好ましい態様において、本発明は、バリア機能特性を有する生物活性タンパク質を提供する。特定の態様において、本発明は、SEQ ID NO. 1によるアミノ酸配列を有するタンパク質である「Qi611S」を提供する。ある特定の態様において、本発明はまた、Qi611Sならびにその生物活性断片および変種を含む「Qi611Sタンパク質」を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】32 mg/mlのQi601SL、Qi601SP、Qi601SML、Qi601SMP、または陰性対照としてのQi培地に曝露した場合の、3×10
8 CFU/mlでのMRSAバイオフィルム接着の阻害を図示する。培養物は脱イオン水で2回洗浄した。
【
図2】水またはPBS中の8 mg/ml、16 mg/ml、または32 mg/mlのQi601SLまたはQi601SPに曝露した場合の、3×10
8 CFU/mlでのMRSAバイオフィルム接着の阻害を図示する。培養物は脱イオン水で洗浄しなかった。
【
図3】32 mg/mlのQi601SL、Qi601SP、Qi601SML、Qi601SMP、または陰性対照としてのQi培地に曝露した場合の、3×10
8 CFU/mlでのMRSAバイオフィルム接着の阻害を図示する。培養物は脱イオン水で3回洗浄した。
【
図4】3.2%のQi601Sである溶液に曝露した場合の、3×10
8 CFU/mlでのMRSAバイオフィルム接着の阻害を図示する。培養物は、脱イオン水で1回、2回、3回、または4回洗浄した。
【
図5】3.2%、1.6%、0.8%、0.4%、0.2%、0.1%、0.05%、および0.025%を含む、Qi601SLまたはQi601SPの漸増希釈溶液に曝露した場合の、3×10
8 CFU/mlでのMRSAバイオフィルム接着の阻害を図示する。培養物は脱イオン水で3回洗浄した。
【
図6】3.2%、1.6%、0.8%、0.4%、0.2%、0.1%、0.05%、および0.025%を含む、Qi601SLまたはQi601SMLの漸増希釈溶液に曝露した場合の、3×10
8 CFU/mlでのMRSAバイオフィルム接着の阻害を図示する。培養物は脱イオン水で洗浄しなかった。
【
図7】Qi601AMに曝露した場合の、1.5×10
6 CFU/mlでのMRSAバイオフィルム接着の阻害を図示する。培養物は、脱イオン水で1回、2回、3回、または0回洗浄した。
【
図8】Qi601Aに曝露した場合の、1.5×10
6 CFU/mlでのMRSAバイオフィルム接着の阻害を図示する。培養物は、脱イオン水で1回、2回、3回、または0回洗浄した。
【
図9】本発明の組成物の原子間力顕微鏡画像である。
【
図10】Qi 601Sが、Caco-2細胞上に大腸菌 (E. coli) に対して有効な抗接着表面を作出することを示す。細胞を1ウェル当たり細胞5×10
4個で24ウェルプレートに分割し、分化および集密度のためにさらに10日間増殖させた。選択されたウェルをQi 601S 0.1% v/vで一晩前処理し、その後PBSで洗浄した。大腸菌K12をTSB中で一晩増殖させ、1×10
8 CFUを各ウェルに添加し、3時間インキュベートした。結合していない細菌を、PBS洗浄により除去した。腸細胞を1% Triton X-100で溶解した。結合している細菌を、連続希釈およびTSAにおける標準プレートカウントにより定量化し、未処理対照と比較した。
【
図11】Qi 601Sによって生成された、MRSAに対する抗接着表面を示す。PBS中1% v/vのQi 601Sを培養中の生きたヒト皮膚に24時間適用し、次いでリンスした。次いで、皮膚をMRSAと共に2日間培養し、皮膚をリンスし、その後MRSAコロニーを培養した。Qi 601Sによる前処理は、未処理の皮膚と比較して、60%を超える、MRSA負荷の顕著な減少を実証した。
【
図13】親水性熱安定性QI画分Qi 601SによるAChE保護を示す。2%で投与されたQi601Sは、使用されたすべての用量のドネペジルで、AChE活性の100%保護をもたらした。
【発明を実施するための形態】
【0020】
配列の簡単な説明
SEQ ID NO: 1は、「Qi611S」と命名されたタンパク質のアミノ酸配列である。
SEQ ID NO: 2は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列Qi611Sである。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、生物または非生物上のバリアを作出または強化するための組成物および方法を提供する。本発明の好ましい態様は、バイオフィルム表現型で増殖し得るラクトバチルス属 (Lactobacillus)種および/またはその1つもしくは複数の生物活性抽出物を含む組成物、ならびにそれを使用する方法を提供する。本発明はまた、凍結乾燥、フリーズドライ、および/または溶解物形態の、ラクトバチルス属種および/またはその生物活性抽出物の組成物を提供する。
【0022】
有利には、本明細書において提供される好ましい組成物および処理方法は、生物および非生物の両方において、既存のバリアを強化するか、または新たなバリアを作出するのに有効である。このアプローチで処理された生物および物質は、汚損が減少している、特に細菌バイオフィルムにより、汚損が減少している可能性がある。
【0023】
ある特定の態様において、本発明は自己汚染除去表面を提供する。例えば、組成物は、好ましい態様において、例えば動物組織の細胞を含む表面への微生物、ウイルス、および/または化学物質の接着を防ぐまたは減少させることによって、自己汚染除去性であり得る。好ましい態様において、このバリア機能は、抗原および病原体に依存しない。
【0024】
いくつかの態様において、ラクトバチルス属種は、本明細書においてLf Qi6と称されるラクトバチルス・ファーメンタムQi6である。1つの態様において、本方法は、バイオフィルム表現型、ならびにバイオフィルム表現型の溶解物を含むバイオフィルム表現型の抽出物を利用する。好ましい態様において、組成物は、Lf Qi6バイオフィルムの生物活性抽出物を含む。
【0025】
好ましい態様において、本発明は、バリア機能特性を有する生物活性タンパク質を提供する。特定の態様において、本発明は、SEQ ID NO. 1によるアミノ酸配列を有するタンパク質である「Qi611S」を提供する。ある特定の態様において、本発明はまた、Qi611Sならびにその活性断片および変種を含む「Qi611Sタンパク質」を提供する。
【0026】
いくつかの態様において、Qi611Sタンパク質は、細胞、好ましくは細菌細胞によって産生され得る。したがって、特定の態様において、本発明は、Qi611Sタンパク質を生産するための方法であって、該タンパク質の発現に好ましい条件下で、SEQ ID NO. 1のすべてもしくは一部、またはその変種もしくは断片をコードするヌクレオチド配列を有する細胞を培養する段階を含む方法を提供する。好ましい態様において、ヌクレオチド配列はQi611s (SEQ ID NO. 2) である。任意に、培養物から当該タンパク質を精製することができる。
【0027】
1つの態様において、本方法は、Qi611sヌクレオチド配列 (SEQ ID NO. 2) を有する微生物、例えばラクトバチルス・ファーメンタムQi6を利用する。Qi611sは、SEQ ID NO. 1 (Qi611S) によるアミノ酸配列をコードする。
【0028】
別の態様において、細胞は、Qi611Sタンパク質を発現する能力を保有するように組換え改変された微生物である。特定の態様において、微生物は、Qi611s遺伝子のすべてまたは一部を保有する。したがって、ある特定の態様において、本発明は、SEQ ID NO. 2によるDNA配列のすべてまたは一部を保有する、および/またはSEQ ID NO. 1によるアミノ酸配列を有するタンパク質、もしくはSEQ ID NO. 1の断片もしくは変種を発現し得る組換え細胞を提供する。例示的な態様において、組換え細胞は大腸菌BL21または大腸菌C43である。
【0029】
細胞のこのような形質転換は、微生物学分野の当業者に周知の技法を用いて達成することができる。1つの態様において、ヌクレオチド配列は、Qi611Sタンパク質の発現を最適化するように改変することができる。
【0030】
好ましい態様において、本発明は、Qi611Sタンパク質、および/またはSEQ ID NO. 2によるDNA配列のすべてもしくは一部を含む細胞と、任意に担体とを含む組成物を提供する。L. ファーメンタム微生物の培養物は、American Type Culture Collection (ATCC), 10801 University Blvd., Manassas, Va. 20110-2209 USAに寄託されている。寄託物には、受託機関によりアクセッション番号ATCC No. PTA-122195が割り当てられ、2015年6月10日に寄託された。
【0031】
本培養物は、37 CFR 1.14および35 U.S.C 122の下、特許商標庁長官がそれを取得する資格があると判断した者にとって、本特許出願の係属中に培養物を利用可能であることを保証する条件の下で寄託されている。寄託物は、本出願の写しまたはその所産が提出されている国の外国特許法の要請に応じて利用することができる。しかしながら、寄託物の利用は、行政措置によって付与された特許権の適用を制限して本発明を実施する認可とはならないことが理解されるべきである。
【0032】
さらに、本培養寄託物は、微生物の寄託に関するブダペスト条約の規定に従って保管され、公的に利用可能となる、すなわちそれは、それを汚染させることなく生存させておくために必要なあらゆる注意を払いつつ、寄託試料の最新の分譲請求から少なくとも5年間、およびいかなる場合にも、寄託日から少なくとも30年間、または培養物の開示を公表し得るあらゆる特許の権利行使可能期間にわたって保管される。寄託者は、寄託物の状態に起因して保存機関が請求時に試料を分譲できない場合には、寄託物を交換する義務を受け入れる。本培養寄託物の公共への利用可能性に対する制限はすべて、それを開示する特許の付与に際して、変更不可に取り除かれる。
【0033】
選択された定義
「Qi611S」は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列を有するタンパク質を指す。単数または複数での「Qi611Sタンパク質」への言及は、Qi611S、ならびに611Sの活性断片および変種を指す。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「遺伝子」は、ポリペプチドおよび/またはアミノ酸鎖を発現し得るDNAのセグメントまたはヌクレオチド配列を指す。ある特定の態様において、遺伝子は、コーディング領域の前および/または後に、プロモーター領域などの領域を含む。
【0035】
本明細書で用いられる場合、「生物学的に純粋な培養物」とは、自然界で会合していた可能性があるあらゆる物質を含む、他の生物活性物質から単離されたものである。好ましい態様において、培養物は、他のすべての生細胞から単離されている。さらなる好ましい態様において、生物学的に純粋な培養物は、自然界に存在し得る同じ微生物種の培養物と比較して、有利な特徴を有する。有利な特徴は、例えば、1つまたは複数の望ましい増殖副産物の産生の増強であってよい。
【0036】
ある特定の態様において、精製された化合物は、少なくとも60重量%の関心対象の化合物である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%の関心対象の化合物である。例えば、精製された化合物は、好ましくは、重量で少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%、または100% (w/w) の所望の化合物であるものである。純度は、任意の適切な標準的方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 分析によって測定される。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「対象」という用語は、活性薬剤(例えば、薬学的化合物)によって提供される利点の送達を必要とするまたは所望する動物を指す。動物は、例えば、ヒト、ブタ、ウマ、ヤギ、ネコ、マウス、ラット、イヌ、類人猿、魚類、チンパンジー、オランウータン、モルモット、ハムスター、ウシ、ヒツジ、鳥類(ニワトリを含む)、および任意の他の脊椎動物または無脊椎動物であってよい。これらの利点には、健康状態、疾患、もしくは障害の処置;健康状態、疾患、もしくは障害の予防;免疫健康の促進;および/または体内の器官、組織、もしくは系の機能の強化が含まれ得るが、これらに限定されない。本発明の状況における好ましい対象は、ヒトである。いくつかの態様では、対象は、健康状態、疾患、または障害に罹患しており;一方、いくつかの態様では、対象は良好な健康状態である(例えば、傷病がない)が、特定の器官、組織、または身体系の健康および/または機能の強化を所望している。対象は、乳児、幼児、思春期、ティーンエイジャー、成人、または高齢者を含む、任意の年齢または発達段階の対象であってよい。
【0038】
本明細書で用いられる場合、「治療有効量」、「治療有効用量」、「有効量」、および「有効用量」という用語は、対象に投与された場合に、対象における状態、疾患、もしくは障害を処置もしくは改善することができる、または器官、組織、もしくは身体系に健康もしくは機能の強化を提供することができる化合物または組成物の量または用量を指すために用いられる。言い換えれば、対象に投与された場合に、その量は「治療有効量」である。実際の量は、処置または改善される特定の状態、疾患、または障害;状態の重症度;健康または機能の強化が所望される特定の器官、組織、または身体系;患者の体重、身長、年齢、および健康状態;ならびに投与経路を含むがこれらに限定されない、多くの要因によって異なる。処置の処方、例えば投与量の決定等は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、処置されるべき障害、個々の患者の状態、投与部位、投与方法、および開業医に公知の他の要因を考慮に入れる。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「処置」という用語は、健康状態、疾患、または障害の徴候または症状を任意の程度まで根絶する、軽減する、寛解させる、または逆転させることを指し、状態、疾患、または障害の完全な治癒を含むが、それを必要とはしない。処置は、障害を治癒すること、改善すること、または部分的に寛解させることであり得る。「処置」にはまた、例えば、体内の特定の系の機能を健康または恒常性の高まった状態に持っていくなど、状態または特徴を改善するまたは向上させることが含まれ得る。
【0040】
本明細書で用いられる場合、健康状態、疾患、または障害を「予防すること」は、状態、疾患、または障害の特定の徴候または症状の発症を回避する、遅延させる、未然に防ぐ、または最小化することを指す。予防は、絶対的または完全であってよいが、そうである必要はなく;その後、徴候または症状がなお発生する可能性があることを意味する。予防には、そのような状態、疾患、もしくは障害の発症の重症度を軽減すること、および/または状態、疾患、もしくは障害がより重篤な状態、疾患、もしくは障害に進行するのを阻害することが含まれ得る。
【0041】
本明細書で用いられる場合、「微生物ベースの組成物」または「微生物供給源の組成物」への言及は、微生物または他の細胞培養物の増殖の結果として産生された成分を含む組成物を意味する。微生物ベースの組成物は、微生物自体を含んでよく;または微生物は、それが培養されたブロスもしくは培地から分離されてもよく、したがって、組成物は、残留細胞成分および/もしくは微生物増殖の副産物を含む。微生物増殖の副産物は、例えば、代謝産物、細胞膜成分、合成されたタンパク質、および/または他の細胞成分であってよい。
【0042】
本発明はさらに、所望の結果を達成するために実際に適用されるべき製品である「微生物ベースの製品」を提供する。微生物ベースの製品は、単に、微生物培養工程から回収された微生物ベースの組成物であってよい。あるいは、微生物ベースの製品は、添加されたさらなる成分を含み得る。これらの追加の成分には、例えば、安定剤、緩衝剤、および/または適切な担体(例えば、水もしくは塩類溶液)が含まれ得る。微生物ベースの製品は、微生物ベースの組成物の混合物を含み得る。微生物ベースの製品はまた、これらに限定されないが、濾過、遠心分離、溶解、乾燥、および精製などの何らかの方法で加工された微生物ベースの組成物の1つまたは複数の成分を含み得る。
【0043】
本明細書で用いられる場合、「回収された」は、増殖容器から微生物ベースの組成物の一部またはすべてを取り出すことを指す。
【0044】
本明細書で用いられる場合、組成物または製品を「適用すること」は、組成物または製品がその標的または部位において効果を有し得るように、それを標的または部位と接触させることを指す。その効果は、例えば、微生物の増殖および/または増殖副産物の作用に起因し得る。例えば、微生物ベースの組成物または製品は、物体および/または表面上に噴霧することができる。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「単離された」または「精製された」タンパク質は、それが自然界でまたは増殖容器内で会合している、細胞物質などの他の化合物を実質的に含まない。ある特定の態様において、精製された化合物は、少なくとも60重量%(乾燥重量)の関心対象の化合物である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%の関心対象の化合物である。例えば、精製された化合物は、重量で少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100% (w/w) の所望の化合物であるものである。純度は、任意の適切な標準的方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 分析によって測定される。
【0046】
「代謝物」は、代謝によって生じた任意の物質(すなわち、増殖副産物)、または特定の代謝工程に関与するために必要な物質を指す。代謝物は、代謝の出発物質(例えば、グルコース)、中間体(例えば、アセチル-CoA)、または最終生成物(例えば、n-ブタノール)である有機化合物であり得る。代謝物の例には、バイオサーファクタント、酵素、酸、溶媒、ガス、アルコール、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素、アミノ酸、およびポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
「調節する」という用語は、変化(増加または減少)を指す。このような変化は、本明細書に記載されているような、当技術分野で公知の標準的な方法によって検出される。
【0048】
本明細書において提供される範囲は、その範囲内の値のすべての省略表現であると理解される。例えば、1~20の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲、ならびに前述の整数の間に介在するすべての小数値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、および1.9などを含むと理解される。部分範囲に関しては、範囲のいずれかの終点から延びる「入れ子の部分範囲」が具体的に企図される。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子の部分範囲は、一方向の1~10、1~20、1~30、および1~40、または他方向の50~40、50~30、50~20、および50~10を含み得る。
【0049】
「減少する」とは、少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、75%、または100%の負の変化を意味する。
【0050】
「増加する」とは,少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、75%、または100%の正の変化を意味する。
【0051】
「参照」とは、標準または対照状態を意味する。
【0052】
本明細書で用いられる場合、「医薬品」、「健康増進化合物」、または「健康増進物質」は、医薬および/または治療薬として使用するために製造された化合物を指す。
【0053】
本明細書で用いられる場合、「汚染物質」は、別の物質または物体を汚損させるかまたは不潔にする任意の物質を指す。汚染物質は、生物または非生物であってよく、無機もしくは有機の物質もしくは沈着物であってよい。1つの態様において、汚染物質はウイルスである。生物には、細菌、例えば、シアノバクテリア、シュードモナス属種、バチルス属種、リステリア属種、スタフィロコッカス属種、ラクトバチルス属種、およびラクトコッカス属種など、真核生物、例えば、藻類、酵母、真菌、フジツボ、およびムール貝などが含まれ得る。さらに、汚染物質には、スケール、炭化水素、例えば、石油、タールサンド、もしくはアスファルテンなど;脂肪、油、およびグリース (FOG)、例えば調理用グリースおよびラードなど;脂質;ワックス、例えばパラフィンなど;樹脂;バイオフィルム;または、例えば、泥、粉塵、汚泥、沈殿物、鉱滓、垢、浮きかす、プラーク、蓄積物、もしくは残留物と称される任意の他の物質が含まれ得るが、これらに限定されない。「スケール」への言及は、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸塩、硫酸ストロンチウム、水酸化酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、マグネタイトまたはニッケルフェライト、塩化ナトリウム、二酸化ケイ素、硫化鉄、酸化鉄、炭酸鉄、銅、リン酸塩、酸化物、および沈殿して沈着物を形成し得る任意の他の無機化合物の沈殿に起因する任意の種類のスケールを意味する。
【0054】
生物または非生物を含む物質の有害な蓄積は、「汚損」の過程をもたらす。「汚損」は、目詰まり、垢の形成、または他の望ましくない蓄積をもたらし得る。「汚損」は、物体の効率、信頼性、または機能性に影響を及ぼし得る。
【0055】
「含むこと (comprising)」という移行語は、「含むこと (including)」または「含有すること」と同義であって、包括的または非限定的であり、列挙されていない付加的な要素または方法段階を排除しない。対照的に、「~からなる」という移行句は、特許請求の範囲において指定されていないいかなる要素、段階、または成分も排除する。「~から本質的になる」という移行句は、特許請求の範囲の範囲を、指定された材料または段階、および、例えば細菌の増殖を妨げる能力といった、特許請求される発明の「基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しないもの」に限定する。「含むこと」という用語の使用は、列挙された成分から「なる」および「本質的になる」態様を企図する。
【0056】
具体的に記述されるかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で用いられる場合、「または」という用語は包括的であると理解される。具体的に記述されるかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で用いられる場合、「1つの (a)」、「1つの (an)」、および「その」という用語は、単数または複数であると理解される。
【0057】
具体的に記述されるかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、当技術分野における通常の許容値の範囲内、例えば平均の2標準偏差内にあると理解される。「約」という用語は、記載値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内にあると理解され得る。
【0058】
本明細書で用いられる場合、「バイオフィルム」は、細菌などの微生物の複雑な凝集物であり、通常、細胞が、多糖類材料から構成されるがこれに限定されないマトリックスを用いて互いに接着している。バイオフィルム中の細胞は、液体もしくは気体媒体中を浮遊もしくは遊泳し得る、または固体もしくは半固体表面の上もしくはその中に存在し得る単細胞である、同じ生物のプランクトン様細胞とは生理的に異なる。個々の微生物細胞はまた、明確なバイオフィルムを形成することなく、細胞が鎖状に共につながった繊維状であり得る。しかしながら、細胞の繊維状の特質は、バイオフィルムの作出を促進し得る。
【0059】
本明細書における変数の任意の定義における化学基の一覧の列挙は、任意の単一基または列挙された基の組み合わせとしての、その変数の定義を含む。本明細書における変数または局面についての態様の列挙は、任意の単一の態様としての、または任意の他の態様もしくはその一部と組み合わせた、その態様を含む。本明細書において提供される任意の組成物または方法は、本明細書において提供される他の組成物および方法のいずれか1つまたは複数と組み合わせることができる。
【0060】
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい態様の以下の説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書において引用される参考文献はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0061】
ラクトバチルス属種およびQi601S溶解物
ラクトバチルス属種はグラム陽性桿菌である。ラクトバチルス・ファーメンタム Qi6 (Lf Qi6) は、MRS培地中で37℃で増殖させることができる。Lf Qi6培養物を、現在示される開示において使用することができ、または生物活性溶解物をLf Qi6培養物から単離し、本発明の抗菌および他のバリア強化/作出の方法および組成物において使用することができる。
【0062】
加えて、Lf Qi6は、バイオフィルム表現型で増殖させることができる。Lf Qi6培養物を、本開示に従って使用することができ、またはQi601S、Qi601SM、Qi601SP、Qi601SL、Qi601SMP、Qi601SML、Qi601ML、Qi601MP、Qi601AM、およびQi601Aを含む生物活性溶解物をLf Qi6バイオフィルム培養物から単離し、抗菌または他のバリア強化/作出の方法および組成物において使用することができる。Qi601はLf Qi6の生物活性溶解物を表し、Qi601に付随する各文字は、培養物から単離された異なる画分、または培養物の増殖および/もしくは加工の方法を表す。Qi601S、Qi601SM、Qi601A、およびQi601AMは、Lf Qi6から単離された異なる画分である。「L」および「P」は、それぞれ、画分の液体および粉末/凍結乾燥調製物を表す。
【0063】
バイオフィルムを形成するために培養物を増殖させる1つの方法において、培養物は、5 mlのMRSブロス中で37℃で24時間インキュベートすることができる。次いで、培養物1 mlを、25 mlのMRSブロスを含むT-150組織培養プレートに移すことができる。次いで、25 mlのMRS培地を48時間ごとに交換して、Lf Qi6のバイオフィルムを培養プレートの底上に菌叢として増殖させることができる。次いで、培養物を例えば7日間増殖させて、厚いバイオフィルム層を生成させることができる。その後、成長したバイオフィルム層を剥離し、新鮮な培地中に懸濁することができる。グリセロールを用いて冷凍庫貯蔵物を作製し、-80℃で貯蔵することができる。
【0064】
凍結貯蔵物中のバイオフィルム表現型のLf Qi6を、10 mlの新鮮MRS培地中で37℃で24時間培養することができる。培養物10 mlを、500 gの無菌グラスウールを含む25 LのMRS培地中に接種することができる。次いで、バイオフィルムを静的条件下で37℃で72時間培養することができる。穏やかに振盪させることにより培養物を24時間ごとに混合し、その後培地およびグラスウールを回収することができる。続いて、超音波処理によってバイオフィルム細胞をグラスウールから分離することができる。細胞をさらに遠心分離して、Lf Qi6のバイオフィルムを濃縮することができ、これを次いで滅菌水中に懸濁した。このスケールアップによって、2 g/Lの濃度のバイオフィルム培養物が得られる。
【0065】
Qi611Sタンパク質、および611Sタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列
好ましい態様において、本発明は、バリアを作出するために有用なタンパク質、ならびにその断片および変種を提供する。本発明はさらに、該タンパク質ならびにその断片および変種をコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0066】
ある特定の態様において、「Qi611S」と称される本発明のタンパク質は、約8.0 kDAの分子量を有する。Qi611Sならびにその断片および変種を含む「Qi611Sタンパク質」は、例えば、例えば微生物、ウイルス、および/または化学物質による汚染から表面を保護するバリアを作出するかまたはそれに寄与する能力を含む、いくつかのパラメータに従って特徴付けられ得る。
【0067】
Qi611Sタンパク質はさらに、そのアミノ酸配列によって定義され得る。特定の態様 (Qi611S) において、該タンパク質は、SEQ ID NO: 1として示される74アミノ酸の配列を有する。
【0068】
ある特定の態様において、本明細書において提供されるタンパク質はまた、ある特定の抗体との免疫反応性に基づいて同定され得る。
【0069】
ある特定の態様において、Qi611Sタンパク質は、実験室の増殖条件を使用して増殖にバイオフィルム表現型を強いる場合に、ラクトバチルス・ファーメンタムQi6細菌株によって産生される。好ましい態様において、この細菌株はQi611S DNA配列 (SEQ ID NO: 2) を有し、これは、バイオフィルム表現型条件下で、SEQ ID NO: 1を有するタンパク質を発現し得る。
【0070】
ラクトバチルス・ファーメンタムは、グラム陽性桿菌である。ラクトバチルス・ファーメンタム Qi6 (Lf Qi6) は、MRS培地中で37℃で増殖させることができる。
【0071】
ある特定の態様において、ポリヌクレオチド配列はQi611Sであり、これは222塩基対であり、Qi611Sをコードする;しかしながら、ある特定の態様では、例えば遺伝暗号の冗長性のために、異なるDNA配列が、本明細書において開示されるアミノ酸配列をコードし得る。Qi611Sタンパク質をコードするこれらの代替DNA配列を作出することは、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0072】
本明細書で用いられる場合、タンパク質の「変種」は、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、または挿入を有する配列を指す。好ましい態様において、これらの置換、欠失、付加、または挿入は、Qi611Sのバリア活性に実質的に悪影響を及ぼさない。バリア活性を保持する変種は、本発明の範囲内である。
【0073】
Qi611Sおよびその変種の「断片」もまた、断片がQi611Sの1つまたは複数の生物学的特性を保持する限り、Qi611Sタンパク質の範囲内である。好ましくは、1つまたは複数の生物活性には、バリア促進活性が含まれる。好ましくは、断片は、全長Qi611Sの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%である。断片は、例えば、Qi611Sまたは変種の1つまたは複数の親水性ドメインを含み得る。これらのドメインは、介在するアミノ酸が除去された状態で直接連結されてもよい。親水性ドメインは、当技術分野で公知の標準的な手順を用いて、および
図12に例示されているように、容易に同定することができる。
【0074】
本発明はさらに、Qi611Sタンパク質が、例えば、標的化部分(例えば、リガンド、抗体、もしくはアプタマー)、毒素、担体、標識、または活性増強剤であり得る別の部分に直接または間接的に(例えば、リンカーを介して)結合している融合構築物を企図する。
【0075】
本発明はさらに、Qi611Sタンパク質に対する抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、およびヒト化)を企図する。これらの抗体は、本明細書において提供される教示を有する当業者によって容易に調製され得る。これらの抗体は、例えばタンパク質精製に使用することができる。
【0076】
ある特定の態様では、Qi611Sタンパク質をコードするポリヌクレオチドを単離し、増幅し、ベクターに連結することができる。「ベクター」、「プラスミド」、または「プラスミドベクター」は、DNAを細胞に、しばしばある細胞から別の細胞(宿主細胞)に移すために用いられるDNA分子である。ベクターは宿主細胞内で複製することができ;またはベクターは、細胞にDNAを組み入れる(もしくは細胞からDNAを除去する)ための手段となり得る。種々の手段を用いて、ベクターを宿主細胞に導入することができる。いくつかの細胞は、ベクターを細胞培養物に入れる以外に当業者によるいかなる作用がなくても、ベクターを取り込むことができる。化学的修飾を必要とするものもある。細胞がベクターを取り込み得る手段にかかわらず、ひとたび宿主細胞がそうする能力を有したら、それは今や「コンピテント」細胞である。
【0077】
ある特定の態様において、本発明は、Qi611Sタンパク質を産生する能力を宿主細胞に提供するための、宿主細胞の遺伝子形質転換に関する。例えば、Qi611S(またはQi611Sタンパク質をコードする他のポリヌクレオチド)を有するベクターを宿主細胞(例えば、微生物、植物、真菌、および/または動物細胞)に形質転換して、Qi611Sタンパク質の生産のための組換え細胞の使用を可能にすることができる。
【0078】
好ましい態様において、宿主細胞は、大腸菌 (Escherichia coli) の株、例えば、大腸菌BL21または大腸菌C43である。あるいは、大腸菌以外の細胞をコンピテント細胞に形質転換する能力は当技術分野で十分に理解されており、これには、例えば、その形質転換能力、異種タンパク質発現の能力および効率、宿主におけるタンパク質の安定性、補助遺伝子能力の存在、哺乳動物毒性の欠如、タンパク質を損なわない殺傷および固定の容易性、培養および/または製剤化の容易性、取り扱いのしやすさ、経済性、貯蔵安定、ならびに同様の物に基づいて選択された細胞が含まれる。
【0079】
本発明のDNA配列が遺伝暗号の縮重およびコドン使用によって変動し得ることは、当業者によって認識されるであろう。Qi611Sタンパク質をコードするすべてのDNA配列が企図される。したがって、SEQ ID NO: 1をコードするDNA(任意にコード領域の前にATGを含む)を含む、Qi611Sタンパク質をコードするすべてのポリヌクレオチド配列が、本発明に含まれる。本発明はまた、本明細書において言及される特定の種類の細胞のいずれかを含む宿主細胞における発現のために最適化されたコドンを有するポリヌクレオチドを含む。最適化された配列を作出するための様々な技法は、当技術分野で公知である。
【0080】
加えて、DNA配列がコードするペプチドのアミノ酸配列の活性を著しく変化させない対立遺伝子変異がDNA配列に生じ得ることが、当業者によって認識されるであろう。そのような変種DNA配列はすべて、本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
当業者は、例示された配列を用いて、Qi611Sタンパク質をコードする付加的なヌクレオチド配列を同定、生成、および使用することができることを理解するであろう。列挙されたDNA配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有し、かつQi611Sタンパク質をコードする変種DNA配列は、本発明に含まれる。変種ポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列に関する他の数値範囲は、以下に提供される(例えば、50~99%)。本明細書における教示に従い、かつ当技術分野で周知の知識および技法を用いて、当業者は、過度の実験を用いることなく、変種DNA配列を有する多数の有効な態様を作成することができるであろう。他の株または種からの相同体が具体的に企図される。
【0082】
本発明のポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列の断片ならびに変異、挿入、および欠失変種は、断片および変種が元の配列と実質的な配列類似性を有する限り、例示された配列と同じ様式で使用することができる。本明細書で用いられる場合、実質的な配列類似性は、変種または断片配列が元の配列と同じ能力で機能することを可能にするのに十分なヌクレオチドまたはアミノ酸配列の類似性の程度を指す。好ましくは、この類似性は50%を上回り;より好ましくは、この類似性は75%を上回り;および最も好ましくは、この類似性は90%を上回る。変種がその意図された能力で機能するために必要な類似性の程度は、その配列の意図された用途に依存する。配列の機能を向上させるか、または別の方法で方法論的利点をもたらすように設計された変異、挿入、および欠失変異を作製することは、当業者の技術の範囲内である。同一性および/または類似性はまた、本明細書において例示される配列と比較して、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%であってよい。
【0083】
アミノ酸の同一性/類似性および/または相同性は、典型的には、生物活性の原因となる、および/または最終的に生物活性を担う三次元配置の決定に関与する、タンパク質の重要な領域において最も高くなる。この点に関して、ある特定のアミノ酸置換は、これらの置換が活性に重要でない領域にあるか、または分子の三次元配置に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換である場合に、許容され、予測され得る。例えば、アミノ酸は、以下のクラス:非極性、非荷電極性、塩基性、および酸性に分類され得る。あるクラスのアミノ酸が同じタイプの別のアミノ酸で置き換えられる保存的置換は、その置換が化合物の生物活性を実質的に変化させない限り、本発明の範囲内に入る。以下(表1)は、各クラスに属するアミノ酸の例のリストである。
【0084】
【0085】
場合によっては、非保存的置換を作製することもできる。重要な要因は、これらの置換がタンパク質の生物活性を著しく損なってはならないことである。
【0086】
Lf Qi6およびQi601S溶解物の製剤化および送達
本発明は、バリア機能を強化するための組成物および方法を提供する。本発明の好ましい態様は、新規な溶解物を含む組成物、およびそれを使用する方法を提供する。本発明はまた、凍結乾燥および/またはフリーズドライ形態の組成物を提供する。
【0087】
有利には、本明細書において提供される好ましい組成物および処理方法は、細菌および/もしくはウイルス感染を処置もしくは予防する、汚損を防ぐ、物体と侵害性物質もしくは生物との間の接触を制限もしくは排除する、有害生物もしくは物質を不活性化する、ならびに/またはバリアの耐久性を高めるのに効果的である。
【0088】
ある特定の態様において、本発明は自己汚染除去表面を提供する。
【0089】
1つの局面において、本発明は、生物学的に純粋な細菌株および/またはその生物活性抽出物、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む、表面の化学的もしくは微生物汚染を防ぐもしくは軽減するため、ならびに/または細菌および/もしくはウイルス感染を処置するための組成物を提供する。加えて、組成物は、プランクトン様およびバイオフィルム表現型の両方で増殖することができる細菌株から構成され得、組成物は、一般的な抗菌活性、病原性バイオフィルムの成長の阻害、病原性バイオフィルムの接着の阻害、病原性バイオフィルムの脱離の促進、共生バイオフィルムの成長の促進、および皮膚バリア機能の強化より選択される、1つまたは複数の生物活性を有する。
【0090】
いくつかの態様において、自己汚染除去表面は、関与する基材のバリア機能を強化しながら、微生物またはウイルスの接着を防ぎ、および特定の態様においては、その後のバイオフィルム形成を防ぎ、かつ/または既存のバイオフィルを脱離させる。特定の態様において、組成物は、皮膚などの表面、ならびにポリスチレンおよびガラスなどの生物学的表面に適用された場合に、有害なバイオフィルムおよび/または他の汚染物質の形成を阻止する1つまたは複数の熱安定性バイオフィルムタンパク質を含む。これらの組成物は、皮膚免疫、物理的凝集力、および皮膚の全体的なバリア機能を改善する。これらの組成物は、従来の化学的な表面汚染除去および薬理学的抗菌剤の代替物を提供する。それらはヒトの生体表面に対する毒性がないため、生物医学的用途は広く、これには、対象の皮膚、腸、胃、肺、眼、口、副鼻腔、鼻、耳、気管、または食道に局所的に適用される自己汚染除去物質としての使用が含まれる。
【0091】
本明細書で用いられる場合、「抽出物」という用語は、細菌培養物を加工することによって得られた組成物を指す。加工は、例えば、物理的および/または化学的処理を含み得る。物理的および/または化学的処理は、例えば、濾過、遠心分離、超音波処理、加圧処理、放射線処理、溶解、溶媒または他の化学物質による処理、およびこれらの処理の組み合わせを含み得る。抽出物は、例えば、遠心分離によって生成されたような上清の形態であってよい。抽出物はまた、遠心分離によって得られた細胞塊を含み得る。細胞は、無傷であってもまたは無傷でなくてもよく、生存していてもまたは生存していなくてもよい。抽出物は、細胞膜成分および/または細胞内成分を含み得る。ある特定の態様において、抽出物は、少なくとも80、85、90、または95重量%の細胞塊である。ある特定の態様において、無傷細胞の少なくとも95%は生存していない。ある特定の態様において、抽出物中の細胞塊の10%未満は無傷細胞である。
【0092】
ヒトの皮膚は、2つの区画、深部区画(真皮)および表面区画(表皮)を含む。皮膚は、外部の攻撃、具体的には化学的、機械的、または感染性攻撃に対するバリア、ならびに例えば気候、紫外線、およびタバコなどの環境要因、および/または例えば微生物などの生体異物要因に対するいくつかの防御反応を構成する。この特性は皮膚バリア機能と称され、表皮の最表層、すなわち角質層によって主に提供される。バリアにおける有害変化は、例えば、皮膚の不快感、感覚現象、および/または皮膚の乾燥によって反映され得る。
【0093】
本発明のいくつかの態様による組成物は、バリア機能の低下を防ぐ、および/またはバリア機能を修復もしくは再生するのに有用である。皮膚および/または粘膜バリアの破壊と関連した障害には、乾癬、魚鱗癬 (icthyosis)、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化、炎症性腸疾患、ざ瘡(化膿性汗腺炎を含む)、熱傷、おむつ皮膚炎、ネザートン症候群、日光角化症、皮膚真菌症、皮膚症または外胚葉異形成症、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、尋常性、好酸球性食道炎、フィラグリン欠損、ならびに皮膚および/または粘膜バリアの損傷または破壊と関連した他の障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
いくつかの態様において、本発明の方法は、粘膜の修復または再生を含め、バリアの修復、再生、または他の強化を促進する。粘膜には、口腔粘膜(頬、軟口蓋、舌下面を含む舌、および口腔底の粘膜を含む)、鼻粘膜、咽喉粘膜(咽頭、喉頭、気管、および食道の粘膜を含む)、気管支粘膜、肺粘膜、眼粘膜、耳粘膜、胃腸管粘膜、膣粘膜、陰茎粘膜、尿道粘膜、膀胱粘膜、ならびに肛門粘膜が含まれる。ある特定の態様において、本発明の組成物はまた、急性および慢性ウイルス感染症の処置に使用され得る。特に、本発明は、集団において遍在性であり、免疫監視の減少と関連している、慢性エプスタイン・バーウイルス感染症、インフルエンザ感染症、コロナウイルス(COVID-19を含む)感染症、サイトメガロウイルス感染症、および他のヘルペス型ウイルス感染症の処置、またはそれらの侵入に対するバリアに使用され得る。いくつかのウイルス感染症はがんを引き起こし得る。例えば、エプスタイン・バーウイルス感染症は、リンパ球のがんであるホジキンリンパ腫のリスク因子となり得る。
【0095】
有利には、本発明の好ましい組成物は、加熱滅菌され、活性を保持し得る。1つの態様において、本発明の組成物は、254°Fおよび21ポンド/平方インチの圧力に30分間供された後でさえ、表面の微生物定着に抵抗する能力を保持する。好ましい態様において、活性は、pH4.0~8.0、4.5~7.5、または5.0~7.5で維持される。
【0096】
本明細書において提供される薬学的組成物はまた、薬学的に許容される担体、補助剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、および着色剤を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の他の薬学的に許容される成分を含み得る。製剤は、例えば、他の治療薬または予防薬を含む他の活性薬剤をさらに含み得る。
【0097】
本明細書において提供される場合、「薬学的に許容される」とは、米国連邦政府もしくは州政府の規制当局によって認可されているもしくは認可され得るということ、またはヒトを含む動物に使用するための米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方に掲載されているということを指す。
【0098】
「薬学的に許容される賦形剤、担体、または補助剤」とは、活性成分と共に対象に投与され得、かつその薬理学的活性を損なわず、本明細書において提供される組成物の治療量を送達するのに十分な用量で投与された場合に非毒性である、賦形剤、担体、または補助剤を指す。
【0099】
感染症は、疾患を引き起こす微生物が身体の組織に侵入する場合に生じる。そのような微生物およびそれらが産生する毒素は、身体の組織と反応して、感染宿主による免疫応答を引き起こす場合が多い。感染症は、細菌、ウイルス、ウイロイド、真菌、および他の寄生虫によって引き起こされ得る。感染症は、皮膚、腸、または膜などの、身体の組織のいずれかを介して生じ得る。特定の態様において、本発明は、身体の外表面、および具体的には皮膚の感染症を処置および/または予防するための組成物を提供する。感染症は、病原性黄色ブドウ球菌などの細菌によって引き起こされ得る。本明細書において提供される薬学的組成物は、感染性因子への曝露と別々に、連続して、または同時に適用され得る。他の態様において、本発明は、腸の障害および他の内部障害を処置するための材料および方法を提供する。
【0100】
黄色ブドウ球菌 (S. aureus)は、鼠径部、腋窩、および前鼻孔などの、主に身体の湿った温かい領域における、皮膚の一過性生着菌である。世界の人口の最大60%までが断続的な保因者である一方、別の20%には安定して定着している可能性がある。通常の保因は無症候性であるが、黄色ブドウ球菌は組織に侵入する可能性があり(例えば、傷ついた皮膚を通して)、そこで比較的軽微な膿痂疹および熱傷様皮膚症症候群から、敗血症などの生命を脅かす状態に及ぶ疾患を引き起こす。さらに、黄色ブドウ球菌感染症は、アトピー性皮膚炎 (AD) などの根底にある状態を伴う、皮膚における二次的現象である場合が多い。
【0101】
本発明によって提供される例示的な組成物は、スタフィロコッカス属種(スタフィロコッカス・サプロフィティクス (Staphyloccus saprophyticus)、スタフィロコッカス・キシロサス (Staphyloccocus xylosus)、スタフィロコッカス・ルグデュネンシス (Staphyloccocus lugdunensis)、スタフィロコッカス・シュレイフェリ (Staphyloccocus schleiferi)、スタフィロコッカス・カプラエ (Staphylococcus caprae)、スタフィロコッカス・サプロフィティクス、スタフィロコッカス・ホミニス (Staphylococcus hominis)、黄色ブドウ球菌)、シュードモナス属種、フェカリス菌 (Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE)、セレウス菌 (Bacillus cereus)、枯草菌 (Bacillus subtilis)、リステリア菌 (Listeria monocytogenes)、化膿性連鎖球菌 (Streptococcus pyrogenes)、ストレプトコッカス・サリバリウ (Streptococcus salivariu)、ミュータンス菌 (Streptococcus mutans)、および肺炎球菌 (Streptococcus pneumonia) を含むがこれらに限定されない、いくつかの病原性細菌による感染症の処置、またはそれらに対するバリアに有用である。他の病原性細菌は、当業者によって容易に認識されるであろう。
【0102】
ある特定の態様において、本発明は、人体または動物体の医学的処置のためではない、洗浄製品、洗浄液、表面コーティング、または他の組成物の形態で、抗菌組成物を提供する。したがって、特定の態様において、これらの組成物は、無生物表面を消毒するため、または無生物表面の微生物定着に対するバリアを提供するために用いられる。ある特定の態様において、本発明は自己汚染除去表面を提供する。
【0103】
別の局面において、本発明は、組成物の有効量を対象に投与する段階を含む、ヒトの皮膚科学的障害を処置する、または該障害に対するバリアを提供する方法を提供し、組成物は好ましくはLf Qi6バイオフィルムの1つまたは複数の生物活性抽出物を含む。
【0104】
組成物は、処置または保護されるべき状態に応じて、単独で、または他の処置と組み合わせて、同時または連続のいずれかで、投与され得る。本明細書において提供される組成物は、1つまたは複数の許容される他の成分中に溶解され得るか、懸濁され得るか、またはそれらと混合され得る。組成物はまた、リポソームまたは他の微粒子中に存在してもよい。
【0105】
好ましい態様において、組成物は、局所投与用に、具体的には皮膚へまたは皮膚上への使用または適用のために製剤化される。そのような製剤は、生物学的または非生物的表面上のMRSAなどの病原性細菌などの望ましくない物質を除去する、死滅させる、またはその接着、定着、および/もしくは蓄積を妨げるのに、あるいは細菌の作用または増殖を阻害するのに有用であり得る。さらに、特定の態様において、Lf Qi6のバイオフィルムまたはその抽出物を含む組成物は、ヒトの皮膚マイクロバイオーム中の共生細菌の増殖を促進する利点を有する。共生細菌の非限定的な例には、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ワルネリ (Staphylococcus warneri)、ストレプトコッカス・ミティス (Streptococcus mitis)、プロピオニバクテリウム・アクネス (Propionibacterium acnes)、コリネバクテリウム属種、アシネトバクター・ジョンソニイ (Acinetobacter johnsonii)、および緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書において提供される組成物は、適切には、微生物バイオフィルムおよび/またはその1つもしくは複数の抽出物と、任意で、例えば浸透、透過、および吸収促進剤を含む1つまたは複数の他の許容される成分とを、含浸させるか、またはそれでコーティングされた、パッチ、絆創膏、包帯、ドレッシング、または同様の物として提供され得る。
【0107】
本発明の態様による組成物は、対象への投与、または対象の処置、または対象における使用に先立って、生体材料、インプラント、および装具(ステント、弁、眼、補聴器、胃バンド、義歯、および人工関節置換物を含む)、手術器具、または他の医療機器を処理するのに有用であり得る。抗菌組成物は、細菌またはウイルスが定着しやすいかまたはそれらに曝露されやすい表面、例えば、手すり、食品調理面、台所の表面もしくは設備、テーブル、シンク、トイレ、または他の浴室機器などを処理するのに有用であり得る。
【0108】
組成物は、微生物(例えば、Lf Qi6)バイオフィルムまたはその生物活性抽出物に加えて、薬剤、例えば、洗浄剤、安定剤、陰イオン性界面活性剤、香料、キレート剤、酸、アルカリ、緩衝剤、および/または洗剤などを含み得る。そのような薬剤は、細菌および/またはウイルスを死滅させるかもしくは阻害する、または表面の定着を防ぐなど、組成物の抗菌および/またはバリア特性を促進または強化し得る。
【0109】
皮膚および/または経皮投与に適している製剤には、ゲル、ペースト、軟膏、クリーム、ローション、および油、ならびにパッチ、絆創膏、包帯、ドレッシング、デポー、セメント、グルー、およびリザーバーが含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
軟膏は典型的には、本明細書において提供される美容的組成物、およびパラフィン系または水混和性軟膏基剤から調製される。
【0111】
クリームは典型的には、本明細書において提供される美容的組成物、および水中油型クリーム基剤から調製される。必要に応じて、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも約30% w/wの多価アルコール、すなわち2つもしくはそれ以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えば、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物などを含み得る。
【0112】
当業者によって容易に認識されるように、本発明による製剤はまた、他のアルコール、例えばイソプロピルアルコールまたはエタノールなどを含んでよく、また他のアルコールベースの製剤、例えばアルコールベースの手指消毒薬をカバーし得る。
【0113】
局所製剤は望ましくは、皮膚または他の患部を通じた活性化合物の吸収または浸透を強化する化合物を含み得る。そのような皮膚浸透促進剤の例には、ジメチルスルホキシドおよび関連類似体が含まれる。
【0114】
乳濁液は典型的には、本明細書において提供される美容的組成物、および油相から調製され、それは単に乳化剤(さもなければエマルジェント (emulgent) として知られる)を任意に含んでよく、あるいはそれは少なくとも1つの乳化剤と脂肪もしくは油との、または脂肪および油の両方との混合物を含み得る。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。油および脂肪の両方を含めることも好ましい。総合すると、乳化剤は安定剤の有無にかかわらずいわゆる乳化ワックスを構成し、ワックスは油および/または脂肪と共に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0115】
適切なエマルジェントおよび乳化安定剤には、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、およびラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。薬学的乳濁液製剤に使用される可能性の高い大部分の油における活性化合物の溶解度は非常に低いと考えられるため、製剤に適した油または脂肪の選択は、所望の美容的特性の達成に基づく。したがって、クリームは好ましくは、チューブまたは他の容器からの漏出を避けるために適切な稠度を有する、べたつかず、非染色性であり、かつ洗浄可能な製品であるべきである。直鎖または分岐鎖の一塩基性または二塩基性アルキルエステル、例えば、ジイソアジペート (di-isoadipate)、ステアリン酸イソセチル、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、またはCrodamol CAPとして知られる分岐鎖エステルの混合物などが使用され得るが、最後の3つが好ましいエステルである。これらは、必要とされる特性に応じて、単独でまたは組み合わせて使用され得る。あるいは、白色軟パラフィンおよび/もしくは流動パラフィンなどの高融点脂質、または他の鉱油が使用され得る。他の製剤には、歯科スプレー、口腔洗浄液、歯磨き粉、トローチ剤、抗菌洗浄液、飲料(例えば、牛乳、ヨーグルト)、食品(ヨーグルト、アイスクリーム、キャンディバーなど)、または粉末食品(粉乳など)が含まれる。
【0116】
本明細書において提供される組成物は、単回(単位)用量のプロバイオティクス細菌またはその溶解物もしくは抽出物を含み得る。プロバイオティクス細菌(無傷、溶解された、または抽出された)の適切な用量は、104~1012 cfu、例えば、104~1010、104~108、106~1012、106~1010、または106~1080 cfuのうちの1つの範囲内であってよい。いくつかの態様において、用量は1日1回または2回投与され得る。いくつかの態様において、本発明による使用のための組成物は、重量で少なくとも約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.5%、約2.0%、約3.0%、約4.0%、約5.0%、約6.0%、約7.0%、約8.0%、約9.0%、約10.0%、約11.0%、約12.0%、約13.0%、約14.0%、約15.0%、約16.0%、約17.0%、約18.0%、約19.0%、約20.0%、約25.0%、約30.0%、約35.0%、約40.0%、約45.0%、約50.0%の抽出物を含み得る。いくつかの態様において、組成物は、重量で少なくとも約0.01%~約30%、約0.01%~約20%、約0.01%~約5%、約0.1%~約30%、約0.1%~約20%、約0.1%~約15%、約0.1%~約10%、約0.1%~約5%、約0.2%~約5%、約0.3%~約5%、約0.4%~約5%、約0.5%~約5%、約1%~約5%のうちの1つのLf Qi6抽出物を含み得る。
【0117】
本発明の目的のために、cfuという略語は、寒天プレート上の微生物数によって示される細菌細胞数と定義される「コロニー形成単位」を指定する。
【0118】
1つの態様において、本組成物は、食品、カプセル、錠剤、または飲用液体などの経口消費可能な製品として製剤化される。経口送達可能な健康増進化合物は、胃腸管におけるまたは口腔粘膜への初期吸収を介して送達される任意の生理活性物質である。組成物はまた、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、髄腔内、または皮下を含む注射を介して投与され得る溶液として製剤化することができる。他の態様において、本組成物は、局所的または全身的な効果のために、パッチを通じて皮膚を介して投与されるか、または皮膚に直接投与されるように、製剤化される。組成物はまた、舌下に、頬側に、直腸内に、または膣内に投与することができる。さらに、組成物は、鼻膜を通した吸収のために鼻にスプレーで噴霧し、ネブライザーで噴霧し、口もしくは鼻を介して吸入し、または眼もしくは耳に投与することができる。
【0119】
本発明による経口消費可能な製品は、消費、栄養、口腔衛生、または嗜好に適した任意の調製物または組成物であり、ヒトまたは動物の口腔に導入されて、一定期間そこに留まり、次いで嚥下されるか(例えば、消費の準備ができた食物もしくは錠剤)、または口腔から再び取り出される(例えば、チューインガムもしくは口腔衛生製品もしくは医療用洗口液)ことが意図された製品である。経口送達可能な医薬品は経口消費可能な製品に製剤化することができ、経口消費可能な製品は経口送達可能な医薬品を含み得るが、2つの用語は、本明細書において互換的に用いられることが意図されていない。
【0120】
経口消費可能な製品には、加工、半加工、または未加工の状態でヒトまたは動物によって摂取されることが意図されたすべての物質または製品が含まれる。これはまた、その製造、処理、または加工中に経口消費可能な製品(特に食物および医薬製品)に添加され、ヒトまたは動物の口腔内に導入されることが意図された物質を含む。
【0121】
経口消費可能な製品はまた、ヒトまたは動物によって嚥下され、次いで未修飾の、調製された、または加工された状態で消化されることが意図された物質を含み得る。本発明による経口消費可能な製品はまた、製品と共に嚥下されることが意図された、または嚥下が予期されるケーシング、コーティング、または他のカプセル化物を含む。
【0122】
1つの態様において、経口消費可能な製品は、所望の経口送達可能な物質を含有するカプセル、丸剤、シロップ、乳濁液、または液体懸濁液である。1つの態様において、経口消費可能な製品は、水または別の液体と混合されて、飲用に適した経口消費可能な製品を生成することができる、粉末形態の経口送達可能な物質を含み得る。
【0123】
いくつかの態様において、本発明による経口消費可能な製品は、栄養または嗜好のために意図された1つまたは複数の製剤を含み得る。これらには、ベーキング製品(例えば、パン、乾燥ビスケット、ケーキ、およびその他のペストリー)、菓子(例えば、チョコレート、チョコレートバー製品、その他のバー製品、フルーツガム、コーティング錠、ハードキャラメル、トフィーおよびキャラメル、ならびにチューインガム)、アルコールまたはノンアルコール飲料(例えば、ココア、コーヒー、緑茶、紅茶、緑茶または紅茶の抽出物で強化された紅茶または緑茶飲料、ルイボスティー、その他のハーブティー、果実含有レモネード、アイソトニック飲料、ソフトドリンク、ネクター、果物および野菜ジュース、ならびに果物または野菜ジュース調製品)、インスタント飲料(例えば、インスタントココア飲料、インスタント茶飲料、およびインスタントコーヒー飲料)、肉製品(例えば、ハム、フレッシュまたは生ソーセージ調製品、および調味またはマリネした生肉または塩漬け肉製品)、卵または卵製品(例えば、乾燥全卵、卵白、および卵黄)、シリアル製品(例えば、朝食シリアル、ミューズリーバー、および調理済みインスタント米製品)、乳製品(例えば、全脂または低脂肪または無脂肪乳飲料、ライスプディング、ヨーグルト、ケフィア、クリームチーズ、ソフトチーズ、ハードチーズ、乾燥粉乳、ホエー、バター、バターミルク、および乳タンパク質を含有する一部または完全加水分解製品)、大豆タンパク質またはその他の大豆画分由来の製品(例えば、豆乳およびその調製品、単離または酵素処理された大豆タンパク質を含有する飲料、大豆粉含有飲料、大豆レシチンを含有する調製品、その豆腐またはテンペ調製品などの発酵製品、ならびに果物調製品および任意に香味物質との混合物)、果物調製品(例えば、ジャム、果物アイスクリーム、果物ソース、および果物フィリング)、野菜調製品(例えば、ケチャップ、ソース、乾燥野菜、急速冷凍野菜、調理済み野菜、およびゆで野菜)、スナック類(例えば、焼いたもしくは揚げたポテトチップ(クリスプ)、またはポテト生地製品、およびトウモロコシまたは落花生をベースとした押出物)、油脂またはその乳濁液をベースとした製品(例えば、マヨネーズ、レムラード、およびドレッシング)、その他の既製食事およびスープ(例えば、乾燥スープ、インスタントスープ、および調理済みスープ)、調味料(例えば、ふりかけ調味料)、甘味料組成物(例えば、錠剤、小袋、および飲料または他の食物を甘くするまたは白くするためのその他の調製品)が含まれる。本組成物はまた、栄養または嗜好のために意図されたその他の組成物の生成のための半製品として機能し得る。
【0124】
本組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含むことができ、例えば、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、およびエアロゾルなどの、固体、半固体、液体、または気体形態の調製物中に製剤化することができる。
【0125】
本発明による担体および/または賦形剤には、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、緩衝剤(中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、または任意にTris-HCl、酢酸、もしくはリン酸緩衝液など)、水中油型または油中水型乳濁液、例えばIV使用に適した有機共溶媒を含むかまたは含まない水性組成物、可溶化剤(例えば、Polysorbate 65、Polysorbate 80)、コロイド、分散媒、媒体、充填剤、キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン)、アミノ酸(例えば、グリシン)、タンパク質、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、香味剤、芳香剤、増粘剤(例えば、カルボマー、ゼラチン、またはアルギン酸ナトリウム)、コーティング剤、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、ポリクアテリウム (polyquaterium))、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、浸透圧調節剤、吸収遅延剤、アジュバント、増量剤(例えば、ラクトース、マンニトール)、および同様の物が含まれ得る。薬物およびサプリメントの分野における担体および/または賦形剤の使用は、周知である。標的健康増進物質またはアジュバント組成物と不適合である任意の従来の媒体または作用物質を除いて、本組成物における担体または賦形剤の使用が企図され得る。
【0126】
1つの態様において、組成物は、例えばネブライザーで噴霧するかまたは吸入できるように、エアロゾル製剤にすることができる。エアロゾルまたはスプレーの形態で投与するのに適した薬学的製剤は、例えば、液剤、懸濁剤、または乳剤である。経口または経鼻のエアロゾルまたは吸入投与のための製剤はまた、例えば、生理食塩水、ポリエチレングリコールもしくグリコール、DPPC、メチルセルロースを含む例示的な担体を用いて、または粉末分散剤もしくはフルオロカーボンと混合して製剤化することができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素、フルオロカーボン、および/または当技術分野で公知の他の可溶化剤もしくは分散剤などの加圧噴霧剤中に配置することができる。例示的には、送達は、単回使用の送達装置、ミストネブライザー、呼吸作動式粉末吸入器、エアロゾル定量吸入器 (MDI)、または当技術分野において利用可能な多数のネブライザー送達装置のうちの任意の他のものの使用によるものであってよい。加えて、ミストテント、または気管内チューブを介した直接投与を用いてもよい。
【0127】
1つの態様において、組成物は、例えば液剤または懸濁剤として、注射による投与のために製剤化することができる。液剤または懸濁剤は、適切な非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル液、もしくは等張塩化ナトリウム溶液など、または適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤、例えば合成モノグリセリドもしくはジグリセリドを含む無菌の非刺激性固定油など、ならびにオレイン酸を含む脂肪酸を含み得る。静脈内使用のための担体の1つの例示的な例には、10% USPエタノール、40% USPプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール600、および残部USP注射用水 (WFI) の混合物が含まれる。静脈内使用のための他の例示的な担体には、10% USPエタノールおよびUSP WFI;USP WFI中の0.01~0.1%トリエタノールアミン;またはUSP WFI中の0.01~0.2%ジパルミトイルジホスファチジルコリン;および1~10%スクアレンもしくは非経口水中植物油型乳濁液が含まれる。水または生理食塩水溶液ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、好ましくは特に注射溶液のための担体として利用され得る。皮下または筋肉内使用のための担体の例示的な例には、リン酸緩衝生理食塩水 (PBS) 溶液、WFI中の5%デキストロースおよび5%デキストロース中の0.01~0.1%トリエタノールアミンもしくはUSP WFI中の0.9%塩化ナトリウム、または10% USPエタノール、40%プロピレングリコールの1:2もしくは1:4混合物、および5%デキストロースもしくは0.9%塩化ナトリウムなどの残部の許容可能な等張液;またはUSP WFI中の0.01~0.2%ジパルミトイルジホスファチジルコリンおよび1~10%スクアレンもしくは水中植物油型乳濁液が含まれる。
【0128】
1つの態様において、組成物は、例えば局所用溶液として、皮膚への局所適用を介した投与のために製剤化することができ、これには、リンス、スプレー、ドロップ、ローション、ゲル、軟膏、クリーム、泡、粉末、固体、スポンジ、テープ、蒸気、ペースト、チンキ、または経皮パッチが含まれる。局所適用の適切な製剤は、薬学的に活性のある担体のいずれかに加えて、皮膚軟化剤、例えば、カルナウバロウ、セチルアルコール、セチルエステルロウ、乳化ロウ、含水ラノリン、ラノリン、ラノリンアルコール、微結晶ワックス、パラフィン、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、ステアリルアルコール、白色ミツロウ、または黄色ミツロウなどを含み得る。加えて、組成物は、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール液、および1,2,6ヘキサントリオールなどの保湿剤、またはエタノール、イソプロピルアルコール、もしくはオレイン酸などの透過促進剤を含み得る。
【0129】
本発明の1つの細菌ベースの製品は、単に、細菌および/または細菌によって産生された微生物代謝産物および/または任意の残留栄養物を含有する増殖培地である。増殖の産物は、抽出または精製することなく、直接使用することができる。所望であれば、抽出および精製は、標準的な抽出および/もしくは精製方法または文献に記載されている技法を使用して容易に達成することができる。
【0130】
細菌ベースの製品中の細菌は、活性または不活性形態であってよい。細菌ベースの製品は、さらに安定化、保存、および貯蔵することなく使用され得る。有利には、これらの細菌ベースの製品の直接使用によって、微生物の高い生存率が保たれ、異物または望ましくない微生物からの汚染の可能性が減少し、および微生物増殖の副産物の活性が維持される。
【0131】
1つの態様において、溶解物は、精製形態または増殖産物の混合物であってよい。溶解物は、0.01~90重量% (wt %)、好ましくは0.1~50 wt %、およびより好ましくは0.1~20 wt %の濃度で添加することができる。別の態様において、溶解物は許容可能な担体と組み合わせることができ、その場合、溶解物は0.001~50% (v/v)、好ましくは0.01~20% (v/v)、より好ましくは0.02~5% (v/v) の濃度で示され得る。
【0132】
本発明に従って有用である界面活性剤および溶媒には、例えば生体乳化特性および表面/界面張力低減特性を有するマンノプロテイン、β-グルカン、エタノール、乳酸、および他の代謝物が含まれる。
【0133】
細菌ベースの組成物を増殖容器から回収する時点で、回収された産物を容器に入れ、および/またはパイプで送る(もしくは使用のためにその他の方法で輸送する)際に、さらなる成分を添加することができる。添加物は、例えば、染料、顔料、pH調整剤、塩、接着促進化合物、キレート剤(例えば、EDTA、クエン酸ナトリウム、クエン酸)、溶媒(例えば、イソプロピルアルコール、エタノール)、殺生物剤、他の微生物、および意図された使用に特有の他の成分であり得る。
【0134】
有利には、キレート剤は、例えばグラム陰性菌の細胞壁を修飾して、界面活性剤処理の影響をより受けやすくすることによって、抗菌バリア組成物の有効性を高める。その結果、グラム陰性菌を透過する能力により、本発明の抗菌能力のスペクトルが広がる。
【0135】
1つの態様において、キレート剤は、EDTA、クエン酸、クエン酸塩、酢酸ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。キレート剤は、約5 g/Lまたはそれ以上までの量で組成物に添加することができる。特定の態様において、キレート剤は、約0.5~3 g/Lの濃度のEDTAである。
【0136】
VOCレベルを変化させるため、混合物の浸透を高めるため、混合物の粘度を下げるため、混合物中の不溶性物質のカプラーとして、ならびに親油性および親水性土壌に溶媒を提供するためなどの特定の適用のために、必要に応じて、例えば50重量%またはそれ以上までの添加物を添加することができる。
【0137】
ある特定の態様において、本発明のバリア組成物は、主に塗料中で顔料をまとめる役割を担う結合剤を含む。結合剤は、油性結合剤またはラテックスベースの結合剤であり得る。結合剤化合物は、例えば、アクリル、アルキド、アクリル酸、アクリルアミド、フェノール、フェノール-アルキド、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、シリコン-アルキド、ポリエステル、エポキシ、ビニル、酢酸ビニル-エチレン、ビニル-アルキド、無機結合剤(ナトリウム、ケイ酸エチルカリウム、リチウム等)、有機結合剤(炭素ベース)、Tectyl(登録商標)(Daubert Chemical Company,Inc.、Chicago, IL)、脂肪族-ウレタン、および油変性ウレタンから選択され得る。
【0138】
ある特定の態様において、本発明のバリア組成物は顔料または染料を含み、これは塗料または他のコーティングの色を提供し得るが、さらに表面または物体を紫外線から保護し得る。顔料または染料は、天然、合成、無機、または有機であり得る。顔料または染料は、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛 (zin oxide)、亜鉛黄、黄色染料、ベンジジンイエロー、酸化クロムグリーン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ウルトラマリンブルー、バーミリオン、顔料ブラウン6、レッド170、ジオキサジンバイオレット、カーボンブラック、酸化鉄 (II)、ケイ砂 (SiO2)、タルク、重晶石 (BaSO4)、カオリン (kaoline) 粘度、および石灰石 (CaC03) から選択され得る。
【0139】
ある特定の態様において、組成物中で使用される溶媒の1つは、例えば、エタノール、ブタノール、プロパノール、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、キシレン、トルエン、ケトン、および/またはイソプロピルアルコールを含む無機または有機溶媒から選択される。好ましい態様において、イソプロピルアルコールは1~100 ml/L、より好ましくは2~50 ml/Lの量であり、組成物に対して添加される。
【0140】
ある特定の態様において、組成物は、溶媒としてイオン性または半イオン性液体をさらに含む。イオン性液体は、共溶媒として作用し得、炭化水素沈殿の1つの原因である炭化水素組成物における環結合の形成を妨げ得る。本組成物に適した例示的なイオン性液体には、硝酸エチルアンモニウムまたはグリセリン/硫酸マグネシウム七水和物が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、組成物中のイオン性液体の濃度は、約0.1%~約5%の範囲である。
【0141】
イオン性液体は、完全に、陽イオン、陰イオン、および/またはそれらの組み合わせを含み得るイオンから構成される。多くのイオン性液体は、100℃未満、またはしばしば室温よりもさらに低い融点を有する有機塩の形態である。最も一般的なイオン性液体は、有機ベースの陽イオンおよび無機または有機陰イオンから調製されたものである。少なくとも1つのイオンは非局在化電荷を有し、1つの成分は有機物であり、これによって安定した結晶格子の形成が妨げられる。イオン性液体は、例えば、アルキル化および重合反応、ならびに二量化、オリゴマー化アセチル化、メタセシス、および共重合反応における触媒および溶媒としての使用に適していると考えられる。融点、粘度、および溶解度などのイオン性液体の特性は、有機成分上の置換基および対イオンによって決まる。
【0142】
ある特定の態様において、組成物は、溶媒として水酸化アンモニウムをさらに含む。好ましくは、水酸化アンモニウム(70%溶液)は、約1~50 ml/L、より好ましくは3~10 ml/Lの濃度で組成物中に存在する。
【0143】
1つの態様において、細菌ベースのバリア製品は、有機酸およびアミノ酸またはそれらの塩を含む緩衝剤をさらに含み得る。適切な緩衝剤には、クエン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩 (tartarate)、リンゴ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、アスパラギン酸塩、マロン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ピルビン酸塩、ガラクタル酸塩、グルカル酸塩、タルトロン酸塩、グルタミン酸塩、グリシン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アルギニン、およびこれらの混合物が含まれる。リン酸および亜リン酸またはそれらの塩もまた使用することができる。合成緩衝剤は使用するのに適しているが、上記の有機酸およびアミノ酸またはそれらの塩などの天然緩衝剤を使用することが好ましい。
【0144】
さらなる態様において、pH調整剤には、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムもしくは炭酸水素カリウム、塩酸、硝酸、硫酸、またはそれらの混合物が含まれる。
【0145】
細菌ベースのバリア製品は、処理されるべき表面への細菌ベースの製品の接着を促進する組成物と共に適用することができる。接着促進物質は、細菌ベースの製品の成分であってよく、または細菌ベースの製品と同時にもしくは連続して適用してもよい。
【0146】
コーティング組成物において典型的に使用される他の添加物を使用することができ、これには水軟化剤、金属イオン封鎖剤、腐食防止剤、および抗酸化剤が含まれ、これらはそれらの意図された機能を果たすのに有効な量で添加される。これらの添加物およびその量は、十分に当業者の技術の範囲内である。適切な水軟化剤には、直鎖リン酸塩、スチレン-マレイン酸共重合体、およびポリアクリル酸塩が含まれる。適切な金属イオン封鎖剤には、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;1-フェニル-3-イソヘプチル-1,3-プロパンジオン;および2ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシムが含まれる。腐食防止剤の例には、2-アミノメチルプロパノール、ジエチルエタノールアミンベンゾトライゾール (benzotraizole)、およびメチルベンゾトリアゾールが含まれる。本発明に適した抗酸化剤には、(BHT) 2,6-ジ-tert-ブチル-パラ-クレゾール、(BHT) 2,6-ジ-tert-ブチル-パラ-アニソール、Eastman阻害剤O A B M-オキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)、およびEastman DTBMA 2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンが含まれる。
【0147】
ある特定の態様において、組成物は、リン、マグネシウム、カリウム、グルコース、およびアンモニウムより選択される塩および/または無機塩をさらに含む。好ましくは、1~20 g/L、およびより好ましくは2~10 g/Lのアンモニウム塩、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二アンモニウム、塩化アンモニウム、または別の二塩基塩もしくは一塩基塩が添加される。
【0148】
本発明による製剤中に含有され得る他の適切な添加物には、そのような調製物に慣用的に使用される物質が含まれる。添加物は、例えば、担体、同一または異なる施設で生成された他の微生物ベースの組成物、粘度調整剤、保存剤、追跡剤、殺生物剤、乾燥剤、可塑剤、流動調節剤、消泡剤、乳化剤、紫外線安定剤、抗皮膚剤、調質剤、乳化剤、潤滑剤、溶解度制御剤、保存剤、および/または安定剤であり得る。
【0149】
有利には、本発明に従って、細菌ベースの製品は、その中で微生物が増殖したブロスを含み得る。製品は、例えば少なくとも重量で1%、5%、10%、25%、50%、75%、または100%のブロスであってよい。製品中のバイオマスの量は、重量で、例えば、その間のすべての割合を含む0%から100%の範囲であってよい。
【0150】
任意に、製品は使用前に貯蔵することができる。貯蔵時間は、好ましくは短い。したがって、貯蔵時間は、60日未満、45日未満、30日未満、20日未満、15日未満、10日未満、7日未満、5日未満、3日未満、2日未満、1日未満、または12時間未満であってよい。好ましい態様において、製品中に生細胞が存在する場合、製品は、例えば、20℃未満、15℃未満、10℃未満、または5℃未満などの冷温で貯蔵される。その一方で、細菌ベースの組成物は、典型的には周囲温度で貯蔵することができる。
【0151】
本発明による組成物は、表面、構造、および設備を洗浄するのに、ならびに/または汚染物質、スケール、および腐食の将来の蓄積を防ぐための効果的なコーティングを提供するのに有効な量の成分を含み得る。
【0152】
バリアにおける微生物およびそのバイオフィルム溶解物の使用
細菌由来のバリアの使用は、物体および/または表面に適用した際に、種々の改善をもたらし得る。
【0153】
バリアの性能および寿命の向上
ある特定の態様において、本組成物または本方法の物体への適用は、主に物体とその周囲との間の相互作用の修正を通じて、バリアの性能を向上させる。ある特定の態様においては、細菌および/または溶解物および/または細菌バイオフィルムから得られる分子(タンパク質など)を、物体の表面に適用することができ、これは、生物もしくは非生物による直接接触を防ぐかもしくは制限し、生物もしくは非生物による汚損を防ぎ、生物もしくは非生物を隔離し、生物もしくは非生物を不活性化し、バリアの耐久性を向上させ、および/または共生生物の濃度を増加させることができる。いくつかの態様において、分子は、合成により生成されている、および/または精製されている。
【0154】
ある特定の態様において、本発明は自己汚染除去表面を提供する。
【0155】
ある特定の態様において、組成物は、物体または表面が存在する環境を物体自体から物理的に分離することによって、汚染物質の直接接触を防ぐことができる。塗料、ニス、ラッカー、光沢剤、粘液、およびその他のバリアは、バリア内の環境と物体との間の物理的分離を提供する。
【0156】
ある特定の態様において、組成物は、ウイルスおよび細菌細胞などの生物による汚損を防ぐことができる。組成物は、表面の定着を防ぐ、およびバイオフィルム接着を防ぐことができ、これにより、疾患を引き起こす細菌の伝播が制限され得る。組成物はまた、生物の増殖を停止させるか、または細胞のアポトーシスを開始させることができる。
【0157】
ある特定の態様において、本発明の組成物は、塩沈着物などの無生物物質による汚損を防ぐことができる。
【0158】
ある特定の態様において、本発明の組成物は、バリアの耐久性を向上させることができる。これは、液体、気体、または固体からの摩擦磨耗に抵抗することによって達成され得る。
【0159】
ある特定の態様において、本発明の組成物は、物体または表面上の共生生物の濃度を増加させることができる。これは、表面上の共生生物に対する微生物競合体の増殖または接着を阻害することによって、間接的に行うことができる。または、組成物は、共生生物の増殖速度を直接上昇させることができる。
【0160】
本発明は、沈着の発生を防ぐために使用することができる。生物または沈殿物の分散または溶解により、表面または物体上に存在し得る汚染物質の濃度が減少する。したがって、本発明によって、沈殿物および沈着物の除去に関連する予防保守の必要性、ならびに設備の部品の交換または修理の必要性を遅らせるかまたは完全に除去することが可能になる。本コーティング組成物はさらに、機械的洗浄液または毒性溶媒を必要とせずに、例えば、貯蔵および輸送タンク、タンカー、船舶、トラック、パイプラインおよびフローライン、コンクリート、アスファルト、マルチ、金属、サイディング、およびスタッコにおけるスケール蓄積の分散のために適用することができる。
【0161】
ある特定の態様において、本方法は、表面を洗浄するために使用され、表面は、汚染除去、汚損除去、および/または目詰まり除去を必要とする設備である。有利には、本発明の方法を用いて、設備の保守および適切な機能を改善することにより、生産工程または1つの設備の全体的な生産性を改善することができる。
【0162】
組成物の表面への適用
組成物は、皮膚、粘膜、衣服、金属表面、眼鏡類、防護服(マスクを含む)、および履物などの無生物または生物の表面または物体に適用することができる。
【0163】
ある特定の態様において、本発明は自己汚染除去表面を提供する。
【0164】
ある特定の態様において、組成物は、包帯;個人用衛生用品;食器および調理器具;テーブルおよび調理台;ベスト、シャツ、ズボン、ソックス、ジャケット、スカート、ショーツ、下着、靴下類、手袋、スカーフ、鎧、ダイビングスーツ、水着、宇宙服、フォーマルウェア、スポーツウェア、革製服、レジャーウェアを含む衣類;靴、ブーツ、サンダル、スリッパ、フィン、クリート靴、デッキシューズ、木靴、クリート靴、雪靴、スキー靴、セーリングブーツ、トウシューズ、ハイヒールを含む履物;縁あり帽子、ヘルメット、王冠、縁なし帽子、ボンネット、フード、マスク、ターバン、ベール、肩掛け、ウィッグ、または医療機器を含む、頭に着用するもの;眼鏡、ゴーグル、コンタクトレンズ、目隠し、保護眼鏡、およびサングラスを含む眼鏡類;ブレスレット、指輪、バッグ、学生かばん、バックパック、ハンドバッグ、ネックレス、宝石、時計、傘、財布、日傘、扇子、剣、杖、ネクタイ、飾り帯、ショール、首ひも、飾りピン、ピアス、およびストッキングを含む衣料品アクセサリーに適用することができる。
【0165】
ある特定の態様において、組成物は、軍用車両、装甲戦闘車、偵察車両、自走式対空砲、自走式防空システム、救急車、自動車、トラック、ジープ、ハンヴィー、バン、ヘリコプター、自転車、一輪車、スクーター、スケートボード、ワゴン、バス、ホバークラフト、およびオートバイを含む乗り物;潜水艦、トロール船、流し網漁船、巡視船、駆逐艦、航空母艦、フリゲート艦、コルベット艦、戦艦、巡洋戦艦、砲艦、および機雷掃討艇を含むボートまたは軍艦;装甲列車、旅客列車、貨物列車、機関車、リニアモーターカー、モノレール、および鉱山列車を含む列車;ジェット、プロペラ、またはロケット推進の種類を含む航空機;人工衛星、宇宙探査機、ロケット、ポッド、カプセル、およびオービターを含む宇宙船に適用することができる。
【0166】
組成物は、例えばスプレーボトルまたは加圧噴霧装置を用いて噴霧することにより、表面に適用することができる。組成物はまた、布またはブラシを使用して適用することもでき、その場合には、組成物を表面に擦り付ける、広げる、またはブラシで塗る。さらに、組成物は、その中に組成物を有する容器に表面を浸す、浸漬する、または沈めることによって、表面に適用することができる。
【0167】
1つの態様において、物質および/または表面は、コーティングを適用するか、または物体および/もしくは表面から汚染物質を浮き上がらせるおよび/もしくは除去するのに十分な時間、その上に組成物を浸漬させることが可能である。例えば、浸漬は、必要に応じて、12時間~24時間~36時間~48時間~72時間またはそれ以上の間行うことができる。
【0168】
1つの態様において、本方法は、表面から組成物および汚染物質を除去する段階をさらに含む。これは、例えば、組成物および汚染物質が表面から遊離するまで、表面を水でリンスするもしくは表面に水を噴霧する、および/または表面を布で擦るもしくは拭き取ることによって達成することができる。水によるリンスまたは噴霧は、表面を布で擦るまたは拭き取る前および/または後に行うことができる。
【0169】
別の態様においては、機械的方法を用いて、汚染物質および/または組成物を表面から除去することができる。例えば、例えば汚染物質の量または汚染物質の種類が原因で、除去が特に困難である表面から汚染物質を取り除くために、撹拌機、ドリル、ハンマー、またはスクレーパーを使用することができる。
【0170】
ある特定の態様において、組成物は、注射(すなわち、皮下、静脈内、腹腔内)、経口、経皮、または経鼻を含む薬学的に許容される様式で適用することができる。
【0171】
材料および方法
細菌株および培養液
ラクトバチルス・ファーメンタムQi6 (Lf Qi6) は、MRS培地中で37℃で増殖させた。
【0172】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) ATCC 33591(ATCC、Manassas, VA)は、20% (v/v) グリセロールを含有するトリプトンソーヤブロス (TSB)(Thermo Scientific、Waltham, MA)中で-80℃で貯蔵した。110 rpmのロータリーシェーカー上で、培養物を37℃で好気的に一晩インキュベートした。分光光度計(SpectraMax Plus384、Molecular Devices、Sunnyvale, CA)を用いて一晩培養物の光学濃度を読み取り、0.2 OD600になるように希釈した。この株はまた、MRSA状態を確認するために、確立されたプロトコールを用いてmetおよびeap PCRの両方に供した (3)。
【0173】
Lf Qi6バイオフィルムの培養
Lf Qi6をMRS寒天プレートで培養した。次いでこの培養物を、5 mlのMRSブロス中で37℃で24時間インキュベートした。培養物1 mlを、25 mlのMRSブロスを含むT-150組織培養プレートに移した。25 mlのMRS培地を48時間ごとに交換して、Lf Qi6のバイオフィルムを培養プレートの底上に菌叢として増殖させた。次いで培養物を7日間増殖させて、厚いバイオフィルム層を生成させた。その後、成長したバイオフィルム層を剥離し、新鮮な培地中に懸濁した。グリセロールを用いて冷凍庫貯蔵物を作製し、-80℃で貯蔵した。
【0174】
凍結貯蔵物中のバイオフィルム表現型のLf Qi6を、10 mlの新鮮MRS培地中で37℃で24時間培養した。培養物10 mlを、500 gの無菌グラスウールを含む25 LのMRS培地中に接種した。次いで、バイオフィルムを静的条件下で37℃で72時間培養した。穏やかに振盪させることにより培養物を24時間ごとに混合し、その後培地およびグラスウールを回収した。続いて、超音波処理によってバイオフィルム細胞をグラスウールから分離した。細胞をさらに遠心分離して、Lf Qi6のバイオフィルムを濃縮し、これを次いで滅菌水中に懸濁した。このスケールアップによって、2 g/Lの濃度のバイオフィルム培養物が得られる。
【0175】
Lf Qi6バイオフィルムの下流の加工
50 gのLf Qi6バイオフィルムを1 Lの滅菌水中に懸濁した。懸濁液を室温で24時間穏やかに混合して、複数の生物活性物質の受動的放出を可能にした。次いで、OmniSonic Ruptor 400を用いて、混合物を30分間超音波処理して(50 KHz、200ワット)均一な溶解物にした。次いで超音波処理した溶解物を凍結し、凍結乾燥して微粉末にした。
【0176】
プロバイオティクス細菌からのLf Qi6の調製
独占所有権のある培養法を用いて、L. ファーメンタムQi6をMRS培地中で増殖させた。次いで、この場合も同様に独占所有権のある培養法を用いて、細菌をさらなる期間にわたって500ml MRS培地中に継代培養した。細菌を超音波処理し(Reliance Sonic 550、STERIS Corporation、Mentor, OH, USA)、10,000×gで遠心分離し、細胞ペレットを滅菌水中に分散させ、回収された細胞を溶解し(Sonic Ruptor 400、OMNI International、Kennesaw, GA, USA)、再度10,000×gで遠心分離し、可溶性画分を遠心分離した(50 kDa Amicon限外濾過膜、EMD Millipore Corporation、Darmstadt, Germany、Cat#UFC905008)。得られた画分を0.5mlの一定分量になるよう分注し、液体窒素中で瞬時凍結して-80℃で貯蔵した。
【0177】
バイオフィルム阻害アッセイ
MRSAを、無菌ポリスチレン、組織培養 (TC) 処理済み、平底プレート(Genesee Scientific、San Diego, CA、Cat #25-109)のウェルに添加した。TSBを無菌対照とした。増殖対照ウェルには、等量のMRSAおよび培養液を添加した。選択された濃度のQi601Sまたは他の試験薬剤を添加し、プレートを37℃で18時間インキュベートし、次いで染色およびバイオフィルム定量化のセクションに記載されているようにバイオフィルムを定量化した。
【0178】
染色およびバイオフィルム定量化
BioTekプレートウォッシャーを用いて組織培養プレートをPBSで3回洗浄し、47℃のインキュベーター中に1時間入れて、バイオフィルムを熱固定した。プレートを室温まで冷却し、0.1 % (v/v) クリスタルバイオレットで15分間染色し、次いでマイクロプレートウォッシャーを用いて脱イオンH2Oで洗浄した。クリスタルバイオレット染色液を溶解するために、100%エタノールを添加して30分置いた。分光光度計(SpectraMax Plus384、Molecular Devices、Sunnyvale, CA)を用いて、プレートを590 nmおよび600 nmで読み取った。
【実施例】
【0179】
本発明およびその多くの利点のより深い理解は、例証として提供される以下の実施例から得ることができる。以下の実施例は、本発明の方法、適用、態様、および変化形のいくつかの例証である。それらは、本発明を限定すると見なされるべきではない。本発明に関して、多数の変更および修正を行うことができる。
【0180】
実施例1‐Qi601SL、Qi601SML、Qi601A、Qi601AM、およびQi601SPは、MRSAの接着を阻害する(
図2、
図6、
図7、
図8)
ラクトバチルス・ファーメンタムQi6からの溶解物の様々なバージョンがMRSAの接着を阻害し得ることを実証するために、最初にMRSAを対数期まで増殖させ、TSBで希釈し、次いで96ウェルまたは24ウェルプレート中のMRSAにQi601Sの様々な型(Qi601SL、Qi601SML、Qi601SP、Qi601AM、またはQi601A)を添加する。培養物を一晩培養する。クリスタルバイオレット染色および590 nmにおける光吸収を測定するプレートリーダーを使用して、各試料を接着について可視化する。
【0181】
Lf Qi601溶解物はMRSAの接着を阻害することができ、これによりMRSAバイオフィルム接着を阻害するための新規方法が確立される。
【0182】
実施例2‐Qi601SL、Qi601SP、Qi601SML、Qi601A、Qi601AM、およびQi601SMPは、洗浄後もMRSAの接着を阻害し続ける(
図1、
図3、
図4、
図5、
図7、
図8)
ラクトバチルス・ファーメンタムQi6からの溶解物の様々なバージョンがMRSAの接着を阻害し得ることを実証するために、最初にMRSAを対数期まで増殖させ、TSBで希釈し、次いで96ウェルまたは24ウェルプレート中のMRSAにQi601Sの様々な型(Qi601SL、Qi601SML、Qi601SMP、Qi601SP、Qi601A、またはQi601AM)を添加する。培養物を一晩培養する。クリスタルバイオレット染色および590 nmにおける光吸収を測定するプレートリーダーを使用して、各試料を接着について可視化する。
【0183】
実施例1および実施例2の両方で実証されたように、溶解物がMRSA接着を阻害し得ることが有意であると同時に、溶解物が洗浄後もその効果を維持する能力によって、組成物の耐久性が実証される。
【0184】
実施例3‐原子間力顕微鏡法
図9は、本発明の材料の原子間力顕微鏡画像を提供する。
【0185】
実施例4‐病原体付着の防止
ヒト組織への病原体の付着は、特に食中毒菌株である大腸菌O157:H7にとって、その病原性に不可欠である。そこで、モデルグラム陰性病原体である大腸菌に対する、ヒト腸細胞におけるQi 601Sの抗接着効果を評価した。ヒト細胞におけるこれらの結果(
図10)から、Qi601Sによる処理によって大腸菌耐性抗接着表面が作出されることが実証される。
【0186】
図10は、Qi 601SがいかにCaco-2細胞上に大腸菌に対して有効な抗接着表面を作出するかを示す。細胞を1ウェル当たり細胞5×10
4個で24ウェルプレートに分割し、分化および集密度のためにさらに10日間増殖させた。選択されたウェルをQi 601S 0.1% v/vで一晩前処理し、その後PBSで洗浄した。大腸菌K12をTSB中で一晩増殖させ、1×10
8 CFUを各ウェルに添加し、3時間インキュベートした。結合していない細菌を、PBS洗浄により除去した。腸細胞を1% Triton X-100で溶解した。結合している細菌を、連続希釈およびTSAにおける標準プレートカウントにより定量化し、未処理対照と比較した。
【0187】
48時間におけるQi 601Sの抗菌抗接着(自浄)活性の耐久性もまた、生きたヒト組織で実証された。インビボの保護を示すために、ヒトのエクスビボ全層皮膚標本(除去直後に得られた選択的腹壁形成術からの余剰組織)を使用した。
【0188】
簡潔に説明すると、方法は以下の通りであった:エクスビボの皮膚は、標準的な培養法によってMRSA陰性であることを事前に確認した。コロニーは、パッケージの説明書に従って、MRSA選択培地(CHROMagar、Becton Dickinson)上で表現型的に同定した。腹壁形成術の皮膚は連続培養で維持し、残存する術前抗生物質を除去するための3日間の培地交換の後、外科的切除から2週間以内に使用した。単一ドナーの外植片組織から1センチメートルのパンチ生検標本を取得し、24ウェルプレートにおいて5つの複製物で実験を行った。
【0189】
表皮を、媒体 (300 ul PBS) またはQi601S(300 ul PBS中1%)で24時間処理した。次いで、皮膚をPBSで3回リンスし、新たな培養プレートの0.5ミクロンtranswellインサートに入れた。次いで、実験試料をOD=0.1 (1×109 CFU/ml) の5 ul MRSAと共に48時間インキュベートし、PBSで再度リンスして非接着性細菌を除去し、ペトリ皿に移した。各皮膚試料を綿棒で3回拭き取り、綿棒の先端を、ガラスビーズと共に、PBS中の0.1% Triton-Xを含有するチューブにまとめて入れ、次いで15秒間ボルテックスした。連続希釈物をルリアベルターニ (LB) 寒天およびCHROMagar上にプレーティングし、翌日コロニーを数えた。
【0190】
図11は、Qi 601Sによって生成された、MRSAに対する抗接着表面を示す。PBS中1% v/vのQi 601Sを培養中の生きたヒト皮膚に24時間適用し、次いでリンスした。次いで、皮膚をMRSAと共に2日間培養し、皮膚をリンスし、その後MRSAコロニーを培養した。Qi 601Sによる前処理は、未処理の皮膚と比較して、60%を超える、MRSA負荷の顕著な減少を実証した。
【0191】
実施例5‐生物学的脅威に対する防御
MRSAバイオフィルムに対する活性に加えて、Qi 601Sは、ウイルス脅威を含むその他の生物学的脅威物質に対する活性も実証した。生物兵器剤は、CDCにより、生物テロ防御、生物戦争、およびバイオテロのリスクに基づき、3つのカテゴリーに分類されている。カテゴリーAには、炭疽菌などの容易に伝播または伝染する生物因子が含まれ、カテゴリーBには、サルモネラ菌、大腸菌O157:H7、および黄色ブドウ球菌、特にMRSAなどの、伝播または伝染するのが中程度に容易な生物因子が含まれ、およびカテゴリーCには新興因子が含まれる。カテゴリーCは、継続的に再評価が行われている。例えば、コロナウイルスは2014年にNIAID、CDC、およびアメリカ合衆国国土安全保障省によってカテゴリーCに追加され、カテゴリーCには現在、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス (SARS-CoV)、MERS-CoV、およびCOVID-19を含むその他の高病原性ヒトコロナウイルスが含まれる (NIAID Emerging Infectious Diseases/Pathogens, 2018)。
【0192】
Qi 601Sはまた、アセチルコリンエステラーゼ (AChE) 阻害に対する完全な防御も実証した。この酵素は正常な神経反応および機能に重要であり、その阻害は、不可逆的なAChE阻害剤である神経ガス剤の標的である。この酵素が不可逆的に阻害されると、神経系が過剰に興奮し、最終的には死に至る。AChEは、興奮性神経伝達物質であるアセチルコリン (Ach) を神経細胞のシナプスにおいてコリンと酢酸に分解し、主に中枢神経系のコリン作動性シナプスにおいて見出される。
【0193】
有機リン酸塩 (OP) は、マイクログラム量で致死的であるため、殺虫剤および神経ガス剤として使用されている。これらの化学物質は、公知の最も毒性の高い化合物の一つであるが、曝露された被害者を汚染除去するための非破壊的方法は今のところない。
【0194】
Qi601SのAChE活性保護の可能性を、標準的なアッセイキット(Abcam、#138871)を用いて、ドネペジルの酵素阻害活性に対して試験した。結果である
図13は、漸増用量のドネペジル塩酸塩を負荷した場合の、2% Qi601Sによる、強力で、完全で、かつ一貫したレベルのAChE保護を示す。
【0195】
実施例6‐活性および安定性
本発明の組成物の安全性プロファイルにより、皮膚、鼻、眼に局所的に適用され、および肺に吸入される自己汚染除去物質としての生物医学的適用が可能になる。熱安定性親水性画分Qi 601Sの1%溶液の単回適用は、5日間以上にわたってインビトロSARS CoVモデルにおいて無毒性の抗コロナウイルス防御を、ならびに最長2日間(試験した最後の時点)にわたってヒト皮膚において、および、リンスの繰り返しにかかわらず、かつ少なくとも4.5~7.5のpH範囲にわたって、不活性疎水性表面(ポリプロピレンおよびガラス)において、耐久性のある抗MRSA抗接着をもたらす。多くの生物学的製品とは異なり、この画分は、121℃を超える温度、凍結融解の繰り返し、および水性媒体中に曝露された場合に、安定性を保つ。硫安沈殿物として試験した場合の抗MRSA効果の維持、および化学的に精製されたバイオサーファクタントの組成分析から、抗菌活性および界面活性剤活性はタンパク質に由来することが示される。
【配列表】
【国際調査報告】