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  • 特表-向流洗浄 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】向流洗浄
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/06 20060101AFI20230120BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20230120BHJP
   D01F 2/00 20060101ALI20230120BHJP
   D06L 1/12 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
D01D5/06 101
B08B3/04 B
D01F2/00 Z
D06L1/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531070
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2020083490
(87)【国際公開番号】W WO2021105275
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】19211398.3
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピリッヒシャマー、ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】シュレンプ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】グレッセンバウアー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ライター、エルンスト
(72)【発明者】
【氏名】ノイントイフェル、マルティン
【テーマコード(参考)】
3B201
4L035
4L045
【Fターム(参考)】
3B201AA07
3B201AB13
3B201BB03
3B201BB92
3B201CD22
4L035BB03
4L035BB16
4L035BB66
4L045AA02
4L045DA05
4L045DA34
4L045DA35
4L045DB01
(57)【要約】
本発明は、フィラメントを洗浄する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントを洗浄するためのプロセスであって、洗浄されるフィラメントと洗浄液とは向流で通され、少なくとも2つの洗浄ステージを含み、各洗浄ステージにおいては、例えば付着によってフィラメント自体に付着した量の洗浄液のみがフィラメントに移行するように、洗浄エレメント(W1、W2)によって新たな洗浄液と接触させられ、次いで、各洗浄ステージにおいて洗浄液がフィラメントから再び分離され、分離された洗浄液(S2)は、プロセスの他の洗浄ステージからの分離された洗浄液と混合されることなく、それよりも前の洗浄ステージの洗浄エレメント(W2)において新たな洗浄液として使用されるような方法で回収される、
プロセス。
【請求項2】
少なくとも5つの洗浄ステップを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
各洗浄ステージにおけるフィラメントからの洗浄液の分離は、ストリッピング要素、スクイージング要素、または遠心分離要素によって行われる、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記洗浄エレメントは、洗浄液の流下フィルムを形成することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記フィラメントはリヨセルフィラメントであり、前記洗浄液は水である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
個々の洗浄ステージは、囲みによって、他の洗浄ステージから分離される請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記フィラメントは、前記洗浄エレメントを実質的に垂直に通過する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスから分離された使用済みの洗浄液を精製して、最終の洗浄ステージのための新鮮な洗浄液を得るか、またはフィラメント製造のプロセス液として用いることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
フィラメントを洗浄するためのシステムであって、少なくとも2つの洗浄ステージを含み、各洗浄ステージにおいて、フィラメントは、例えば、付着によってフィラメント自体に付着した量の洗浄液がフィラメントに移行するように、洗浄エレメント(W1、W2)によって新鮮な洗浄液と接触させられ、各洗浄ステージにおいて、洗浄液は、フィラメントから再度分離され、分離された洗浄液(S2)は、プロセスの他の洗浄ステージから分離された洗浄液と混合されず、前の洗浄ステージの洗浄エレメント(W2)における新鮮な洗浄液として使用されるように回収される、システム。
【請求項10】
前記洗浄エレメントは、洗浄液の流下フィルムを提供する要素、表面テクスチャを有してよいローラおよび/またはロール、調製ヤーンガイド、およびラムジェット洗浄装置とヤーンガイドとの組合せから選択される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
個々の洗浄ステージまたは洗浄ステージ群が囲みによって互いに分離されている、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記フィラメントからの前記洗浄液の分離は、スクレーパー、スクイーザーおよび/または遠心ロールによって行われる、請求項9~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
洗浄エレメントへの洗浄液の供給がポンピングによって行われる、請求項9~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
各洗浄ステージの洗浄液は、貯蔵チャンバから供給される、請求項9~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
各囲みは、各洗浄ステージで使用される洗浄液の出口を有する、請求項11~14のいずれか一項に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントを洗浄するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
フィラメントは、特にセルロースをベースにして、大規模に製造され、繊維産業のような多くの分野で使用されているが、工業分野でも使用されている。このようなフィラメントの一例は、溶媒中のセルロースの組成物、通常は水とN-メチルモルホリンN-オキシドの混合物から、リヨセル法によって製造されるフィラメントである。これから得られた紡糸液を、ノズルを通して紡糸し、フィラメントを産生し、水性沈殿槽で再生する。得られたリヨセルフィラメントは、いわゆる再生セルロース繊維であり、製品特性(例えば、柔らかい手触りと良好な吸湿性と組み合わされた高い乾燥および湿潤強度)の特別な組合せによって特徴付けられる。
【0003】
リヨセルフィラメントの産生に使用される紡糸液および沈殿浴溶液の個々の成分は、閉鎖材料サイクルで実施することができ、使用される材料の高度な再利用が達成されることから、リヨセルフィラメントの産生プロセスは、特にビスコースのような他の再生セルロース繊維と比較して、より環境に優しい。さらに、プロセスで使用される溶媒(水、およびNMNO)は、例えば、ビスコースプロセスで使用される成分よりもはるかに環境に優しい。
【0004】
リヨセルフィラメントの沈殿/再生後、得られたフィラメントをさらなる処理工程に供給する。必須の処理工程は、得られたフィラメントの洗浄であり、それにより、特になお付着している溶媒(NMNO)だけでなく、紡糸液および/または沈殿浴の他の成分も除去される。
【0005】
このような洗浄には、古典的な浴洗浄(フィラメントは洗浄液を含む浴槽に通される)、制御された浴洗浄(古典的な浴洗浄に類似のデザイン)、ノズルまたはジェットを通してフィラメントに洗浄液を塗布することによる洗浄、または、より複雑なプロセス、例えば、交互ローラ洗浄装置(フィラメントは、洗浄液の浴槽に再び通され、個々の洗浄工程の間にフィラメントは、例えば、過剰な液体が滴下されるように、洗浄液の外側の偏向ローラに通される)、有孔ドラム洗浄装置または圧力チャンバ洗浄装置のような、多くのアプローチがある。
【0006】
これらの洗浄方法はすべて、フィラメントが非常に多量の洗浄水によって囲まれているか、または非常に多量の水にさらされている点で共通している。しかしながら、フィラメントに直接接触するのは水のごく一部にすぎない。同時に、例えば、洗い落とされた溶媒が蓄積すると、洗浄槽内にこれらの成分が蓄積され、対策が講じられない限り、洗濯物の品質が低下する。水を交換するなどの適切な対策を講じると、水の使用量の増加、ひいては環境負荷の低減やコストの増加に繋がる。
【0007】
このような洗浄工程において、水を集めて循環させ、同じ場所で数回使用するアプローチもあるが、これは、ある時間経過後の洗浄性能の低下につながる。また、このことは、新しい淡水を加えることによってのみ埋め合わされる。
【0008】
このような洗浄プロセスおよびプラントは、例えば、米国特許第4,549,415号明細書に記載されている。ここでは、洗浄エリアのカスケードが既に使用されているが、それらは互いに接続されており、洗浄は、繊維を、洗浄浴を通して誘導することによって行われ、それもまた大量の洗浄液を必要とする。国際公開第00/18991号A1明細書には、短繊維から形成されたフリースを洗浄するプロセスが示されている。米国特許第2019/264356号A1号明細書にはまた、繊維フリースを洗浄するプロセスが示されている。それ以外では処理するフリースにおいて十分な効果が得られないから、上記のいずれの文章における方法においても多量の洗浄液が使用される。
【0009】
これらすべてのアプローチでは、洗浄水のごく一部のみがフィラメントと接触するが、特に洗い落とされた溶媒は、汚染されていない水またはわずかに汚染された水と再び混合するので、洗浄の効率は低下する。これは、資源の慎重な利用に関する需要がますます高まっていることを考慮すると、特に問題である。同時に、特に繊維分野においては、フィラメント上に少量の溶剤等が残留しても健康に悪影響を及ぼさず、また、快適性等の面で問題とならないとしても、「化学物質からの解放」に対する要求がますます高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,549,415号明細書
【特許文献2】国際公開第00/18991号A1明細書
【特許文献3】米国特許第2019/264356号A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、一方では極力効率的で完全な除去を可能にし、他方では溶媒および化学物質を処理するフィラメント処理プロセスが必要とされている。リヨセルフィラメントの洗浄に関して、これは、特に、製造されたリヨセルフィラメントから溶媒NMNOを除去することを意味する。同時に、洗浄液(リヨセルフィラメントの場合は水)の量はできるだけ少なくする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1に記載のプロセスによって解決される。好ましい実施形態は、従属項に記載されており、また、以下の説明にも記載されている。さらに、この課題は、請求項9に記載のシステムによって解決され、それによって、再び好ましい実施形態が、従属項および以下の記載に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図は、2つの洗浄ステージを用いた、本発明による向流洗浄プロセスまたは向流洗浄のためのシステムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、まず、そのプロセスについて記載される。しかし、この文脈でなされた説明が請求項に記載されたシステムにも同様に適用されることは当業者には明らかである。本発明のプロセスは、多数の異なるフィラメントに適用可能である。以下の記述が、特に好ましい設計で、洗浄液の水でライセルフィラメントを洗浄すること、フィラメントに依然として付着している溶媒NMNOの残存量を除去することを目的としているとしても、この方法は、他の種類のフィラメントと共に、他の洗浄液を用いてフィラメントに付着している他の成分を除去するためにも使用することができることは当業者には明らかである。
【0015】
本発明のプロセスは、一方において洗浄されるフィラメントおよび洗浄液が向流に導かれるという事実を特徴とする。図では、真水(洗浄液)と製品の流れ(フィラメント)とについて逆向きの矢印で示されてている。これは、汚染されていない洗浄液が最終洗浄ステージに供給され、処理されるフィラメントが第1洗浄ステージに供給されることを意味する。図は、2つの洗浄ステージを有するプロセスの例を示すが、本発明によれば、洗浄ステージの数が有意に多いプロセスが好ましい。好ましくは2~60、特に10~50、好ましくは20~40の洗浄ステージを有するプロセスが適切であることが証明されている。洗浄ステージの数は、達成されるべき結果(例えば、NMNOのような規定された物質の繊維上における残存量)およびフィラメント/フィラメント束の糸の太さ(フィラメントまたはフィラメント束の直径のより大きい値)のような製品特性に応じて選択することができ、且つ/または、製造速度(より高い速度は、しばしば、より多くの洗浄ステージを必要とする)に応じて選択することができる。
【0016】
このプロセスにより、最終洗浄ステージで新鮮な洗浄液が使用され、処理されるフィラメントは除去される成分の量が最小になるため、優れた効果が得られる。
【0017】
同時に、本発明の方法は、フィラメントを洗浄液の浴中に通す必要がなく、多量の洗浄液を噴霧する必要がないことを特徴とする。本発明の方法において使用される洗浄液の量を最小限にするために、フィラメントが吸収し結合できるだけの液体がフィラメントに移行するように、洗浄されるフィラメントは、各洗浄ステージにおいて洗浄エレメント(W1、W2)によって洗浄される。洗浄中の関連する物質移動プロセス、即ち洗浄プロセスが、フィラメントの表面上の非常に薄い領域において直接生起する(例えば、リヨセルフィラメントの場合、付着した残留量のNMNOがフィラメントから洗浄液に移動する)ので、効率的な洗浄効果にはこれで完全に十分である。最小限に抑えながら最適化された量の洗浄液を目標とした使用は、効率的な処理に完全に十分であることが示されており、かなり多量の洗浄液では、使用される洗浄液の量のみが増加するが、洗浄の有効性は増加しない。
【0018】
このようなフィラメントの洗浄液への目標とする最小限の曝露は、例えば、洗浄液(特に水)の薄い流下フィルム(falling film)を提供する洗浄エレメント(W1、W2)によって達成することができ、洗浄すべきフィラメントは、表面において洗浄液によって湿潤されるようにフィルムを通って導かれる。これにより、少量ではあるが十分な量の洗浄液を移行させることができる。洗浄エレメントの他の設計は、例えば、洗浄液、特に、専門家に知られているが、本発明による新規かつ発明的な方法で使用される、洗浄液で湿潤されたロールまたはローラである(おそらく、適当な表面構造、例えば、全周または軸方向に設けられた溝および溝など)。これらのロールおよび/またはローラには、スプレー要素、小型浸漬浴または同様の装置によって洗浄液を供給することができる。所望の少量の洗浄液をフィラメント/フィラメント束に適用する別の可能性は、調製ヤーンガイドの使用である。このような装置は、専門家に知られており、洗浄液を一方の側面から塗布して、他方の側面に液体フィルムを形成し、フィラメント/フィラメント束を通過して、洗浄液による所望の湿潤が達成されるように導くように設計されている。ラムジェット洗浄装置と組み合わせたネジガイドも適している。ここで、フィラメント/フィラメント束は、好ましくは、フィラメント/フィラメント束の輸送方向に横向きに設けられるノズルを通して洗浄液で湿潤される。
洗浄されるフィラメント/フィラメント束は、上記のように、異なる要素によって提供される液体フィルムを通過して案内され、洗浄液による所望の湿潤が達成されると同時に、使用される洗浄液の量を最小にする。フィラメント/フィラメント束は、ロール/ローラの場合のように、図示されるような垂直から水平まで、任意の方向に導くことができる。
【0019】
これにより、各洗浄ステージで絶対に必要な量の洗浄液のみが使用されるようになる。所定の洗浄ステージで使用されるが消費されない洗浄液は、例えば、洗浄液の適切なリサイクルによって、同じ洗浄ステージで再利用することができる。
【0020】
各洗浄ステージまたは少なくとも一群の洗浄ステージは、例えば囲み(enclosure)によって、他の洗浄ステージまたは洗浄ステージ群から分離され、その結果、特に、フィラメントを洗浄するために実際に使用された量の洗浄液が混合されず、従って、フィラメントから分離された後に洗い落とされた成分の割合が増加する。この使用済み洗浄液は、フィラメント/フィラメント束から適当な方法で、遠心分離、スクレーパーの使用等により除去される。これは、特に、洗浄ステージで発生する汚染された洗浄液の望ましくない混合が起こらないことを確実にする。本発明の方法は、洗浄液の最大限の利用を可能にするために、1つの洗浄ステージで生成された洗浄液の汚染量が、前の洗浄ステージに洗浄液として供給されるように設計されている。各洗浄ステージが他の洗浄ステージから個別に分離されてなく、洗浄ステージ群のみが互いに分離されていても、少なくとも2つの異なる洗浄ステージ群が存在し、好ましくは上述のように2を大幅に超える洗浄ステージ群が存在するならば、本発明によれば十分である。
【0021】
図を参照すると、以下のように記述することができる。最終洗浄ステージ(洗浄エレメントW1の右側の洗浄ステージ)では、洗浄液として真水を使用する。これは、貯蔵タンクS1から洗浄エレメントW1へと導かれる。洗浄エレメントW1に沿って誘導されるフィラメントは、例えば、偏向ローラによって洗浄液の量が取り込まれ(ただし、ここでは、拭き取り法や絞り法など、洗浄液を除去する他の方法も使用することができる)、洗浄ステージ内のフィラメントから除去される。このように、このステージで洗浄液によって除去された含有NMNOは、(リヨセルフィラメントが水で洗浄されるとき)分離される。この洗浄液は、NMNOがわずかに混入しているため、最終洗浄ステージでは使用できないが、NMNO含有量は依然として低く、洗浄エレメントW2による前洗浄ステージの洗浄液として使用することができる。
【0022】
この目的のために、最後のステージからの前記量の使用済み洗浄液が貯蔵タンクS2に供給され、そこからこの洗浄液が洗浄エレメントW2に供給される。このフィラメントおよび洗浄液の向流案内は、ここに示された2つの洗浄ステージを有する例よりもより多くの洗浄ステージに適用することができる。いずれの場合も、あるステージの使用済みの洗浄液を「新鮮である」洗浄液としてそれよりも前のステージに供給する。これは、洗浄液中のNMNOのような洗浄された成分の割合を増加させるが、前の洗浄ステージにおけるフィラメント上のこれらの成分の割合がより高いという事実は、各洗浄ステージにおいて良好な洗浄効果が依然として達成されることを意味する。
【0023】
既に述べたように、各洗浄ステージでは、フィラメント洗浄液で湿潤されるだけでなく、この洗浄液もまた、フィラメントから分離される(個々の洗浄ステージ間の分離によって個々の洗浄液の望ましくない混合が防止される)。これは、簡単な滴下、または、洗浄液を遠心分離するためのローラの周りの案内、スクレーパーまたはスクイージング装置を使用するなどの他の手段を使用することによって行うことができる。この分離された使用済み洗浄液は、それよりも前の洗浄ステージでの洗浄液として使用される。
【0024】
リヨセルフィラメントの洗浄プロセスの最後の洗浄ステージを考えると、これは、この洗浄ステージで得られた非常にわずかに汚染された使用済み洗浄水が、リヨセルフィラメントが依然としてわずかに高い割合の例えば溶媒を有するそれよりも前の洗浄ステージに供給されることを意味する。この洗浄ステージで使用される水には、一定量の溶媒(最終洗浄ステージのため)も含まれるが、この洗浄液は、依然として十分に清浄であるから、それよりも前の洗浄ステージにおいてもフィラメントは良好に洗浄される。この目的のために、洗浄水は、それよりも前の洗浄ステージの洗浄エレメントに再導入され、前記洗浄エレメントにおいてフィラメントを適切に誘導することによって、必要な量の水のみがフィラメントに接触することが確実にされる。この洗浄ステージは、それ自身の囲みにより隣接する洗浄ステージとは分離されており、洗浄水は、適当な手段(ローラ、ワイパー、絞りユニット)によりフィラメントから再び除去され、使用済みの洗浄水は、この洗浄ステージに再び蓄積され、この洗浄水は、NMNOの割合がさらに増加している。次いで、この洗浄水をそれよりも前の洗浄ステージに戻すことができ、それにより、さらに増加した比率のNMNOを含む洗浄水を、より高い比率のNMNOを有するフィラメントと再度接触させることができる。
【0025】
異なる洗浄ステージの洗浄液のための上述の貯蔵タンクは、適当な形態で提供することができる。図は、異なる洗浄液(S1、S2、フィラメントから洗い落とされた成分の割合だけが本質的に異なり、それによって、これらの洗い落とされた成分の含有量がゆっくりと増加し、すなわちS1よりS2が高い)のための別々の領域を有する貯蔵タンクの概略図を示しており、ここで、これらの領域は単純な仕切りによって分離される。したがって、例えば、個々のセグメント(S1、S2)のレベルを単にチェックすることによって、望ましくない混合を防止することができる。
【0026】
このプロセス設計は、フィラメントを洗浄液と向流で順次接触させることを可能にし、それによって、新鮮な洗浄液が溶媒を少量しか含まないフィラメント(filaments that are only lightly loaded)と接触し、一方、洗浄液中の(NMNOのような)洗い落とされた成分が徐々に増加するにもかかわらず、それよりも前の洗浄ステージからの使用済み洗浄液の対向流によってフィラメントから使用済み洗浄液を除去することを可能にし(個々の洗浄ステージではフィラメントは依然としてより多くの量のNMNOにさらされるが、NMNOで汚染された洗浄水によって効果的な洗浄が提供されるため)、依然として良好な効果が達成される。
【0027】
特に従来の浴槽洗浄と比較して、このようなプロセスは、洗浄中(in the laundry)の洗浄液の消費を著しく減少させることができる。同時に、洗浄の効率が良く、より多くのフィラメントを少量の洗浄液で全体的に洗浄することができる。また、本発明のプロセス管理によって、洗浄ステージの数を全体的に減少させることもできることが示されている。必要に応じて洗浄液を利用し、不必要に大量の洗浄液を使用しないようにすることにより、予想できない程大幅に効率を向上させることができる。
【0028】
本発明によれば、リヨセルフィラメントの洗浄は、製造工程から出てくるフィラメントを、必要に応じて付着した液体を除去した後で沈殿浴から個々の洗浄ステージに供給するように実施することができる。したがって、図に示されるように、フィラメントは、第1の洗浄ステージに供給され、そこで、フィラメントは、基本的に、偏向ローラ等によって洗浄エレメントW2を通過して垂直に案内される。フィラメントは、洗浄液と十分に接触し、洗浄液を吸収するように案内される。洗浄エレメントW2は、適切な保持および循環の設計によって、未使用の洗浄液を洗浄ステージで再利用できるように設計されている。このステージで使用する洗浄液S2は、それよりも後の洗浄ステージから回収した使用済みの洗浄液である。フィラメントは、図に示されたプロセスでフィラメントから洗浄液を除去する役割を果たす、さらなるロールの周りに通される。このようにしてフィラメントから分離され、この洗浄ステージで使用される洗浄液は、適当な方法で回収され、次いで、洗浄ステージの底部に示されるラインを通して排出され、システムからの排出のために、またはそれよりも前の洗浄ステージ(図には示されていない)における新鮮な洗浄液として使用される。使用済み洗浄水を洗浄システムから排出する場合、(例えば、少量の洗い落とされた洗浄成分に加えて、最終洗浄ステージ用の真水が再び得られるように)浄化するか、または本質的に水およびNMNOのみを含むこの混合物を、フィラメント製造プロセスの他の場所(例えば、紡糸液の調製または沈殿浴中)で使用することができる。このようにして、洗浄液投入量の極めて省資源化された全体バランスを再び達成することができる。フィラメントは、次の洗浄ステージに移され、そこで洗浄エレメントW1が、フィラメントに再び洗浄液を塗布する。次いで、フィラメントから洗浄液を再度分離する。このステージで回収・排出された使用済み洗浄液は、洗浄エレメントW2の新鮮な洗浄液S2として使用される。洗浄エレメントW1では、供給された真水が洗浄液S1として使用される。
【0029】
リヨセルフィラメントを用いた試験により、本発明による向流洗浄システムの使用は、分離および向流誘導なしの洗浄ステージと比較して、同じ洗浄ステージ数で、フィラメント上の残留NMNO含有量を80%以上減少させることが示された。同時に、本明細書に記載の向流洗浄システムは、非常に高いフィラメント/フィラメント束速度(例えば、1200m/分以上)でも(製造が妨害されることなく)優れた安定性および有効性を有する。さらに可能な連続的なプロセス制御によって、高い生産能力を確保することができる。
【0030】
上述のように、本発明はまた、既存のフィラメント製造プラントと容易に組み合わせることができるフィラメントを洗浄するためのシステム(装置)を提供する。このシステムは、例えば付着によってフィラメント自体に付着した量の洗浄液のみがフィラメントに移送されるようにフィラメントを新鮮な洗浄液に接触させる洗浄エレメント(W1、W2)と、その後、フィラメントから洗浄液を再分離する分離エレメントとを備え、分離された洗浄液(S2)が、プロセスの他の洗浄ステージの分離された洗浄液と混合されず、前の洗浄ステージの洗浄エレメント(W2)の新鮮な洗浄液として使用できるように、回収されるように設計された少なくとも2つの洗浄ステージを備える。各洗浄ステージが、分離された洗浄液のための回収タンクを含み、この回収タンクが、分離され回収された洗浄液がそれよりも前のステージの洗浄エレメントに例えば配管、ポンプ等によって供給されるように設計されることによって、このことが達成される。これらの回収タンクおよび上記の他の装置(配管、ポンプなど)は、適切な方法で設計することができる。必要な装置/要素は、専門家にとって馴染み深いものである。
【0031】
この目的のために、本システムは、洗浄液の供給および排出に必要な配管、ならびに洗浄液の供給および排出を維持するためのポンプなどの適切な装置も含む。各洗浄ステージの洗浄液は、貯蔵チャンバ内に貯留することができ、これにより、これらの貯蔵チャンバは、例えば、大型貯蔵タンクに隣接して配置されたセクションとして設計することができる。この設計では、異なる貯蔵チャンバは、例えば、隔壁によって互いに分離される。異なる高さの隔壁を適当に使用することにより、多数のチャンバを有する貯蔵タンクを簡単な方法で設けることができ、これにより、より溶媒の多い洗浄液(more highly loaded washing liquid)とより溶媒の少ない洗浄液(less loaded washing liquid)との望ましくない逆混合を防止することができる。
【0032】
洗浄エレメントは、特に、洗浄液の流下フィルムを提供する要素、表面テクスチャを有してよいローラおよび/またはロール、調製ヤーンガイド、およびラムジェット洗浄装置とヤーンガイドとの組合せから選択され得る。
【0033】
フィラメントから洗浄液を除去するための要素は、特に、遠心エレメント、スクイージング装置および/またはスクレーパーから選択することができる。
【0034】
本発明によって与えられる好ましい囲みは、個々の洗浄ステージまたは洗浄ステージ群を互いに分離する。このような囲みは、鋼板のような適当な材料から容易に製造することができる。ハウジングは、通常、使用済み洗浄液(すなわち、フィラメントから除去された洗浄液)が底部に集まるように設計され、それにより、前の洗浄ステージのための貯蔵室への簡単で安全な排出が可能となる。
【0035】
このシステムはまた、フィラメントが洗浄システムを通過するように、フィラメントを案内するのに必要なロールおよび/またはローラを含む。
図1
【国際調査報告】