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特表2023-503358水、及びイソソルビドエポキシドとアミンとの反応生成物、をベースとするヒドロゲル
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  • 特表-水、及びイソソルビドエポキシドとアミンとの反応生成物、をベースとするヒドロゲル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】水、及びイソソルビドエポキシドとアミンとの反応生成物、をベースとするヒドロゲル
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20230120BHJP
   C08J 3/075 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
C08G59/50
C08J3/075 CFC
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531071
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 FR2020052182
(87)【国際公開番号】W WO2021105619
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】1913342
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】サン-ルー、レネ
(72)【発明者】
【氏名】サユ、オードリー
【テーマコード(参考)】
4F070
4J036
【Fターム(参考)】
4F070AA46
4F070AC12
4F070AC46
4F070AE08
4F070AE28
4F070CB02
4J036AB11
4J036AE07
4J036DC02
4J036DC09
4J036DC10
4J036DC15
4J036FA03
4J036JA15
4J036KA07
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、水、水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシド、及び水溶性アミンをベースとするヒドロゲル、それを調製するための方法及びその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、及び
水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドと水溶性のジアミン、トリアミン又はポリアミンから選択された水溶性アミンとの反応生成物、
をベースとするヒドロゲル。
【請求項2】
前記水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドが、以下の式(I):
【化1】
(式中、nは0~300、好ましくは0~10、より好ましくは0~5の整数である)を有する、請求項1に記載のヒドロゲル。
【請求項3】
前記水溶性のジアミン、トリアミン又はポリアミンが、リジン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ヘキサメチレンジアミン、m-キシレンジアミン、及びJeffamine D-230、Jeffamine T-403などのポリエーテルアミン、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載のヒドロゲル。
【請求項4】
前記水溶性アミンのN-H官能基の数に対する、水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシド当量の比が、1:5~5:1、好ましくは1:2~2:1、及びより好ましくは1:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項5】
50~99%の含水量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項6】
水溶性活性成分、好ましくは着香分子、化粧品活性成分、又は水溶性医薬活性成分、及びより好ましくはイソソルビドを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のヒドロゲル。
【請求項7】
請求項1~6に記載のヒドロゲルを調製するための方法であって、以下の工程:
1)水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドを水溶性アミンと混合する工程と、
2)水を前記混合物に添加する工程と、
3)半透明の液体が得られるまで混合する工程と、
4)反応するままにしておく工程と、
を含む、方法。
【請求項8】
工程2)が、活性成分を添加することを含む、請求項7に記載のヒドロゲルを調製するための方法。
【請求項9】
医療、化粧品、農業、若しくは光学の分野においての、水処理、衛生製品の分野においての、分離技術においての、又はエネルギー分野においての請求項1~6に記載のヒドロゲルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロゲルに関し、より具体的には、水、及び水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドと水溶性アミンとの反応生成物、をベースとするヒドロゲル、それを調製するための方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロゲルは、その中に水が取り込まれ得る可逆的な物理的ネットワーク又は不可逆的な化学的ネットワークからなる生成物の一種である。これらのヒドロゲルは水に不溶性である。ヒドロゲルは、高吸収性ポリマー材料であり、様々な用途で使用される。
【0003】
不可逆的な化学的ヒドロゲルの調製には、例えば水溶性ポリマーを架橋すること、又は乾燥した親水性ポリマーのネットワークを水中で膨潤させることなどのいくつかの方法がある。
【0004】
文献中のポリマーヒドロゲルのほとんどは、ポリエステル基、ポリウレタン基、又はシリコーン基を含有する。
【0005】
エポキシドの化学的性質は、ゲルの製造において具体的には研究されておらず、ヒドロゲルの製造に関しては尚のこと研究されてない。しかしながら、エポキシド化学は、低温で単純かつ定量的である反応を伴う。更に、水、酸素、又は不純物の存在に対して特に影響を受けない。エポキシドはまた、一般に、優れた機械的特性及び熱的特性を有する。数多くのエポキシド及びアミンが利用可能であるものの、それらの中で水溶性のものはほとんどない。
【0006】
国際公開第2008079440(A2)号は、ポリエーテルアミンとポリグリシジルエーテルとの間の反応によってエポキシドベースの超弾性ヒドロゲルを調製するための方法を記載している。
【0007】
Paul Calvert、Prabir Patra、及びDeepak Duggalによる刊行物、”Epoxy hydrogels as sensors and actuators”,Proc.SPIE 6524,Electroactive Polymer Actuators and Devices(EAPAD)2007,65240M(4 April 2007)は、水溶性である、ジエポキシドと、多官能性アミンとをベースとする、ヒドロゲルを記載している。この刊行物は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)の水溶液と反応させた脂肪族ポリアミン及びポリエーテルアミンからのヒドロゲルの調製について記載する。
【0008】
化石系資源の段階的な削減にまつわる現在の情勢において、化石由来の生成物を、それ以外の、経済的に実行可能であり環境面で許容可能な生成物と置き換えることが、ますます有益になっている。
【0009】
更にヒドロゲルの欠点のひとつは、不十分な機械的特性である。これを改善するためのいくつかの解決策が構想され得る。剛直なモノマーの割合又は架橋度を増加させることができる。しかしながら、ネットワークの密度が高くなるほど、材料はより脆くなり、吸収の容量が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、天然の、非化石起源のエポキシドポリマーから調製されたヒドロゲルであって、容易に吸水し及び容易な吸水を保持しながら、改善された機械的特性を有する、ヒドロゲルを提供できることが必要である。
【0011】
数多くの実験を使用する研究を追及して、出願人の会社は、イソソルビドエポキシドのポリマー又はモノマーなどの、天然の、非化石起源のポリマーをベースとするヒドロゲルが、そのような特性を有することを見出した。
【0012】
実際、イソソルビドエポキシドの剛直な二環式構造は、これらのイソソルビドエポキシドのポリマー又はモノマーの親水性により非常に良好な吸水特性を保持しながら、これらのイソソルビドエポキシドのポリマー又はモノマーで調製されたヒドロゲルの機械的特性を向上させることを可能にする。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読解することにより明らかになる。
【0014】
米国特許出願公開第2015/307650(A1)号は、植物起源の熱硬化性かつエポキシドベースの材料を記載している。
【0015】
米国特許出願公開第2008/009599(A1)号は、熱硬化性エポキシポリマー、より具体的には再生可能資源に由来する熱硬化性ポリマーを記載している。
【0016】
本発明の第1の主題は、水、及び水溶性のモノマー若しくはポリマーであるイソソルビドエポキシドと水溶性のジアミン、トリアミン又はポリアミンから選択された水溶性アミンとの反応生成物、をベースとするヒドロゲルに関する。
【0017】
本発明の第2の主題は本発明によるヒドロゲルを調製するための方法であって、以下の工程、すなわち、
1)水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドを水溶性アミンと混合する工程と、
2)水を前記混合物に添加する工程と、
3)半透明の液体が得られるまで混合する工程と、
4)反応するままにしておく工程と、
を含む、方法に関する。
【0018】
本発明の最後の主題は、医療、化粧品、農業、若しくは光学の分野においての、水処理、衛生製品の分野においての、分離技術においての、又はエネルギーの分野においての、本発明によるヒドロゲルの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
水、及び水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドと水溶性のジアミン、トリアミン又はポリアミンから選択された水溶性アミンとの反応生成物、をベースとするヒドロゲルが提案される。
【0020】
「水をベースとするヒドロゲル」又は「水性ヒドロゲル」は、ポリマー鎖を架橋することにより得られた三次元ネットワークからなり、その中に材料の水(material water)又は水中油型エマルションが取り込まれ得る、物質を意味するよう意図されている。不溶性である、架橋後の三次元ネットワークは、以下、ヒドロゲルマトリックスと称される。
【0021】
本発明によれば、ヒドロゲルマトリックスは、次式(I)を有するモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドから構成される。
【化1】
【0022】
式中、nは0~300、具体的には0~10、より具体的には0~5の整数である。
【0023】
式(I)のエポキシドは、国際公開第2015/110758(A1)号に記載されている方法に従って製造することができる。
【0024】
式(I)のエポキシドは、バイオベースである利点を有しており、ビスフェノールAとは異なり、内分泌撹乱物質ではない。
【0025】
イソソルビドエポキシドは、置換基R及び/又は下付き文字nによって互いに異なる、異なるイソソルビドエポキシドの混合物であり得る。
【0026】
下付き文字nは0~300の範囲にわたってもよく、具体的には290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1に等しくてもよい。
【0027】
一実施形態によれば、下付き文字nは0~290、0~280、0~270、0~260、0~250、0~240、0~230、0~220、0~210、0~200、0~190、0~180、0~170、0~160、0~150、0~140、0~130、0~120、0~110、0~100、0~90、0~80、0~70、0~60、0~50、0~40、0~30、0~20、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5であり得る。
【0028】
一実施形態によれば、下付き文字nは1~290、1~280、1~270、1~260、1~250、1~240、1~230、1~220、1~210、1~200、1~190、1~180、1~170、1~160、1~150、1~140、1~130、1~120、1~110、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5であり得る。
【0029】
一実施形態によれば、下付き文字nは2~290、2~280、2~270、2~260、2~250、2~240、2~230、2~220、2~210、2~200、2~190、2~180、2~170、2~160、2~150、2~140、2~130、2~120、2~110、2~100、2~90、2~80、2~70、2~60、2~50、2~40、2~30、2~20、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5であり得る。
【0030】
一実施形態によれば、下付き文字nは3~290、3~280、3~270、3~260、3~250、3~240、3~230、3~220、3~210、3~200、3~190、3~180、3~170、3~160、3~150、3~140、3~130、3~120、3~110、3~100、3~90、3~80、3~70、3~60、3~50、3~40、3~30、3~20、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5であり得る。
【0031】
一実施形態によれば、下付き文字nは4~290、4~280、4~270、4~260、4~250、4~240、4~230、4~220、4~210、4~200、4~190、4~180、4~170、4~160、4~150、4~140、4~130、4~120、4~110、4~100、4~90、4~80、4~70、4~60、4~50、4~40、4~30、4~20、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5であり得る。
【0032】
一実施形態によれば、下付き文字nは5~290、5~280、5~270、5~260、5~250、5~240、5~230、5~220、5~210、5~200、5~190、5~180、5~170、5~160、5~150、5~140、5~130、5~120、5~110、5~100、5~90、5~80、5~70、5~60、5~50、5~40、5~30、5~20、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6であり得る。
【0033】
一実施形態によれば、下付き文字nは10~290、10~280、10~270、10~260、10~250、10~240、10~230、10~220、10~210、10~200、10~190、10~180、10~170、10~160、10~150、10~140、10~130、10~120、10~110、10~100、10~90、10~80、10~70、10~60、10~50、10~40、10~30、10~20であり得る。
【0034】
上記ヒドロゲルにおいて、式(I)のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドは、架橋剤を使用して架橋される。架橋剤は、水溶性のジアミン、トリアミン又はポリアミンから選択される水溶性アミンである。一実施形態によれば、水溶性アミンは、アミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ヘキサメチレンジアミン、m-キシレンジアミン、並びにジアミノポリプロピレングリコール(Jeffamine D-230)及びトリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン(Jeffamine T-403)などのポリエーテルアミン、並びにこれらの混合物から選択される。
【0035】
好ましい実施形態によれば、水溶性アミンのN-H官能基の数に対する、水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシド当量の比は、1:5~5:1、好ましくは1:2~2:1、及びより好ましくは1:1である。最適比は、2:1~1:2の間に位置し、1:1の比率で最大密度を有する。
【0036】
「水」は、脱塩水を意味するよう意図されている。好ましい実施形態によれば、ヒドロゲルは、50~99%の含水量を有する。含水量は、以下の方法に従って、TGA(NETZSCHのTG209F1 iris装置)を用い、測定される。
数mgの生成物が、アルミニウムるつぼに置かれる。不活性ガス(40mL/分の流量の窒素)下、10℃/分で25℃から300℃までの加熱勾配を実行する。
【0037】
ヒドロゲルは、感受性である刺激の存在下にあるとき、膨張又は収縮する。刺激の種類としては、pH、温度、酵素、又はその他の生化学的薬剤について挙げられ得る。ヒドロゲルはまた、特にそれが置かれた環境に基づいて、経時的に膨張又は収縮し得る。
【0038】
要約すると、本発明によるヒドロゲルは、以下の特性を有する:
-バイオベース
-適応可能、及び
-制御可能なシネレシス。
【0039】
ヒドロゲルの機械的特性及び架橋密度は、ヒドロゲルを調製するための方法中に調整することができる。
【0040】
ヒドロゲルは、異なる物理的形態、例えば、
-コンタクトレンズなどの軟質固体、
-活性成分の経口投与のための特定の丸剤及びカプセルの製造に使用されるような圧縮粉末、
-医療用途のためのベクターとして機能し得る微粒子、例えば、創傷治療中のバイオ接着ベクター、又は
-インプラント用の特殊なコーティング、を有し得る。
好ましい実施形態によれば、ヒドロゲルは生体適合性がある。
【0041】
別の好ましい実施形態によれば、ヒドロゲルは、活性成分を更に含む。前述のヒドロゲルの全ての特性は、活性成分を含むヒドロゲルにも適用される。
【0042】
「活性成分」は、産業分野、特に、医療、化粧品、農業、若しくは光学の分野において、水処理、衛生製品の分野において、分離技術において、又はエネルギー分野において等、効果又は技術的な機能を有する、一つの物から成ろうと、混合物であろうと、化学物質、生化学物質又は生き物の何らかの物体、原料、又は物質を意味するよう意図されている。医療分野において、活性成分は、特定の条件下で塩析が生じ得る医薬活性物質であり得る。化粧品の分野では、活性成分は、皮膚引き締め分子であり得る。光学分野において、有効成分は、コンタクトレンズが装着されている間、眼の表面で塩析される分子であり得る。水処理の分野では、活性成分は除染剤(decontaminant)であり得る。衛生製品の分野では、活性成分は除染剤(decontaminant)であり得る。ヒドロゲルが水性のものである場合、活性成分は水に溶解される。その後、溶液はネットワークの網目によって捕捉され、最終的にはシネレシスによって塩析される。ヒドロゲルが水中油型エマルジョンに基づく場合、活性成分は、エマルションの油性不連続相に溶解される。その後、エマルションはネットワークの網目によって捕捉され、最終的にシネレシスによって塩析される。活性成分は、好ましくは、水溶性活性成分、好ましくは着香分子(odorizing molecule)、化粧品活性成分、又は水溶性医薬活性成分である。この活性成分は、例えば、創傷治癒特性で知られているイソソルビドであり得る。
【0043】
ヒドロゲルが活性成分を含まない場合、ヒドロゲルはこのヒドロゲルを含有する液体媒体から固体要素又は微粒子要素を抽出することを可能にする。このヒドロゲルは、医療、化粧品、農業又は光学の分野において、水処理、衛生製品の分野において、分離技術において、又はエネルギー分野ににおいて有用である。医療分野では、ヒドロゲルは、人体の中に存在する有毒な分子を抽出することができる。化粧品の分野では、ヒドロゲルは、皮膚の表面に存在する望ましくない分子を抽出することができる。水処理の分野では、ヒドロゲルは、廃水から活性物質を抽出することができる。衛生製品の分野では、ヒドロゲルは、望ましくない分子の表面を抽出することができる。分離技術の分野では、ヒドロゲルは、精製される溶液から分子を抽出することができる。
【0044】
「このヒドロゲルを含む液体媒体から固体要素又は微粒子要素を抽出すること」は、液体媒体中に存在する要素を取り込み、又は捕捉し、次いでそれらの要素を当該媒体から除去する作用を意味するよう意図されている。
【0045】
本発明の別の態様によれば、医療、化粧品、農業、又は光学の分野においての、水処理、衛生製品の分野においての、分離技術においての、又はエネルギー分野においての、ヒドロゲルの使用が提案されている。
【0046】
別の態様によれば、本発明によるヒドロゲルを調製するための方法であって、以下の工程、すなわち、
1)水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドを水溶性アミンと混合する工程と、
2)水を前記混合物に添加する工程と、
3)半透明の液体が得られるまで混合する工程と、
4)周囲温度で、又は最大80℃までの範囲にわたり得る温度で反応するままにしておく工程と、を含む方法が提案される。
【0047】
特定の実施形態によれば、本発明によるヒドロゲルを調製するための方法は、以下の工程、すなわち、
1)好ましくは1:5~5:1、より優先的には1:2~2:1、更により優先的には1:1であるエポキシ官能基の、NH官能基に対する比に従って、水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドを、水溶性アミンと混合する工程と、
2)水を前記混合物に添加する工程と、
3)半透明の液体が得られるまで混合する工程と、
4)任意で、得られた半透明の液体を型に注ぎ入れる工程と、
5)好ましくは周囲温度で、又は最大80℃の範囲にわたり得る温度で反応するままにしておく工程と、
6)任意で、このようにして形成されたヒドロゲルを型から取り外す工程と、を含む。
【0048】
別の実施形態によれば、本発明によるヒドロゲルを調製するための方法は、以下の工程、すなわち、
1)1:5~5:1、好ましくは1:2~2:1、より優先的には1:1であるエポキシ官能基の、NH官能基に対する比に従って、水溶性のモノマー又はポリマーであるイソソルビドエポキシドを、水溶性アミンと混合する工程と、
2)水を前記混合物に添加する工程と、
3)半透明の液体が得られるまで混合する工程と、
4)得られた半透明の液体をモールドに注ぎ入れる工程と、
5)周囲温度で、又は最大80℃までの範囲にわたり得る温度で反応するままにしておく工程と、
6)このようにして形成されたヒドロゲルを型から取り外す工程と、を含む。
【0049】
活性成分がヒドロゲル中に含まれる場合、ヒドロゲルは、上記工程2)の間に活性成分の添加を伴う以外は前述に調製されたように調製される。
【0050】
別の実施形態によれば、本発明によるヒドロゲルを調製するための方法の工程1)及び工程2)は、この順序若しくは逆の順序で連続的に、又は同時に行なわれ得る。
【0051】
本発明の他の特徴、詳細、及び利点は、以下の詳細な説明を読むことによって、また、図1がある添付の図面を分析することによって出現するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、実施例2の調製物から水中に塩析されたイソソルビドの濃度動態を示す図である。
【実施例
【0053】
試薬:
イソソルビドエポキシド:Roquette.
リジン:Ajinomoto.
活性成分としてのイソソルビド:Roquette.
水:脱塩水.
【0054】
実施例1:50重量%の水を含有するヒドロゲルの調製
【0055】
5gのイソソルビドエポキシド(EEW=180g/eq)(すなわち、R=H及びn=0である式(I)の生成物)を1.03gのリジンと混合する。次いで、6.03gの脱塩水を添加する。均質な調製物を得るため、混合は最後に行われる。混合物を型に注ぎ入れ、周囲温度で反応するままにしておく。72時間後、ヒドロゲルが得られる。このようにして得られたヒドロゲルを型から取り外す。
【0056】
実施例2:有効成分としてイソソルビドを更に含む、50重量%の水を含有するヒドロゲルの調製
【0057】
5gのイソソルビドエポキシド(EEW=180g/eq)を1.03gのリジンと混合する。次いで、6.03gの20重量%のイソソルビド水溶液を添加する。均質な調製物を得るため、混合は最後に行われる。混合物を型に注ぎ入れ、周囲温度で反応するままにしておく。72時間後、ヒドロゲルが得られる。このようにして得られた、活性成分を含有するヒドロゲルを、型から取り外す。
【0058】
実施例3:実施例2の調製物の塩析試験
【0059】
実施例2で得られたイソソルビドを含有するヒドロゲルを、その後、所与の量の水に浸漬する。塩析されたイソソルビド量は、ガスクロマトグラフィーによりトリメチルシリル誘導体の形態で決定し、以下に記載されるような内部較正法によって定量する。
装置の名称:スプリット-スプリットレスインジェクタを備えたCPG型Varian3800又はBruker450;FID検出器;DB1キャピラリーカラム(J&W scientific、参照番号123-1033;長さ30m;内径0.32mm;膜厚1ミクロン。
【0060】
分析条件:
カラム温度:注入から始まる温度プログラム、3℃/分の速度で140°から250℃まで、次いで10℃/分の速度で300℃まで。
インジェクタ温度:300℃
検出器温度:300℃
圧力10psi
ベクターガス:ヘリウム
注入モード:必須の「ライナースプリット」でのスプリット
スプリットの流量:80mL/分
水素流量:30mL/分
空気流量:400mL/分
注入量:1マイクロリットル
ほぼ正確に1gの生成物及び50mgの内部標準(α-メチル-D-グルコピラノシド)を100mLのビーカーに量り入れる。約50mLのピリジン(4-1)を添加する。これを完全に溶解するまで磁気撹拌下で放置する。
1mLのこの溶液、1mLのピリジン及び0.3mLのBSTFAを、ネジ式の蓋を備える2mLの皿の中に入れる。該蓋を閉める。容器は撹拌される。この容器を、温度を70℃に調節したドライバス内に30分間放置した後、1マイクロリットルを注入した。
【0061】
水中に塩析されたイソソルビドの濃度動態を図1に示す。図中、2.5%の閾値は、イソソルビドの導入量並びに塩析工程に使用される既知量の水の観点において、この試験において実施され得る最大濃度に相当する。
【0062】
この試験は、形成されたヒドロゲルが、イソソルビドを塩析する能力を有することを示す。イソソルビドは4時間後に完全に塩析される。
【0063】
結果として、本発明者らは、本発明のヒドロゲルは活性成分を塩析することを可能にし、この塩析の時間はヒドロゲルの組成に基づき調節可能であることを発見した。
【0064】
単純な調製方法で得られる本発明のヒドロゲルは、化石起源のポリマーに基づくヒドロゲルの良好な代替物である。本発明の前記ヒドロゲルは良好な吸水性を有し、有利には、それが含有する活性成分を塩析することを可能にする。したがって、これらの特性により、本発明のヒドロゲルは、様々な用途において、特に、医療、化粧品、農業若しくは光学の分野において、水処理、衛生製品の分野において、分離技術において、又はエネルギー分野において、使用され得る。
図1
【国際調査報告】