(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(54)【発明の名称】病害の病徴を示す少なくとも1つの病徴果実植物の保存的処置方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/06 20060101AFI20230120BHJP
【FI】
A01G7/06 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022554971
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 IB2020060315
(87)【国際公開番号】W WO2021099868
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】102019000021546
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522195987
【氏名又は名称】エンドフルーツ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】ENDOFRUIT S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Gioachino Rossini 29,37012 Bussolengo(Verona),Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【氏名又は名称】遠藤 真治
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】スカピーニ,クリスティアーノ
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022EB03
(57)【要約】
病害の病徴を示す少なくとも1つの病徴果実植物(1)の保存的処置方法であって、剪定ステップを経た病徴植物(1)を特定するステップと、病徴植物(1)の休止期又は栄養成長の回復期を特定するステップと、休止期中又は栄養成長の回復期中に、病徴植物(1)の幹(2)に木部(4)に達するまで少なくとも1つの穴(3)を開けるステップと、最後に、上記少なくとも1つの穴(3)によって木部(4)に、処置液の、病徴植物(1)の剪定された部分からの前記処置液の排出及び/又は前記病徴植物(1)からの樹液の排出を誘発する量を導入するステップと、を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病害の病徴を示す少なくとも1つの病徴果実植物(1)の保存的処置方法であって:
-剪定ステップを経た前記病徴植物(1)を特定するステップと、
-前記病徴植物(1)の休止期又は栄養成長の回復期を特定するステップと、
-前記休止期又は栄養成長の回復期中に、前記病徴植物(1)の幹(2)に木部(4)に達するまで少なくとも1つの穴(3)を開けるステップと、
-前記少なくとも1つの穴(3)によって前記木部(4)に、処置液の、前記病徴植物(1)の剪定された部分からの前記処置液の排出及び/又は前記病徴植物(1)からの樹液の排出を誘発する量を導入するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記剪定した病徴植物(1)を特定する前記ステップが、以下のサブステップ:
-その成長期中に前記病徴植物(1)を特定すること、及び、
-前記病徴植物(1)を、その後の休止期又は栄養成長の回復期に特定できるように識別力のある要素で印を付けること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記剪定された病徴植物(1)が、以下のサブステップ:
-前記病徴植物(1)の休止期を特定すること、及び、
-処置液を前記木部(4)に導入するステップでの前記処置液及び/又は樹液の排出に有用な剪定部分を準備するために前記病徴植物(1)の1つ以上の部分を切り取ること、このステップを、ある量の処置液を前記木部(4)に導入するステップの最大15日前に実施すること、
を含む、剪定ステップにより得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記剪定を実施するステップが、近くに存在する他の無病徴植物を剪定するステップとは異なる時点で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各病徴植物(1)の前記幹(2)に少なくとも1つの穴(3)を開ける前記ステップが、処置される前記病徴植物(1)の前記幹(2)の直径に応じて1~3つの穴を開けるステップを含み、各穴(3)が、2ミリメートル~10ミリメートルの範囲の直径及び最大20ミリメートルまでの深さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各病徴植物(1)の前記幹(2)に少なくとも1つの穴(3)を開ける前記ステップが、前記幹(2)の基部から、30センチメートル~100センチメートルの間の高さに、前記少なくとも1つの穴(3)を開けるステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記処置液が、コロイド銀及び/又は肥料物質及び/又は植物保護物質を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
-対応する無病徴植物の前記幹の体積を推定するステップと、
-推定された前記体積を処置するために必要な処置液の理論量を計算するステップと、
-前記病徴植物(1)に実際に導入された前記処置液の量を測定するステップと、
-前記処置液の導入量と前記処置液の理論量との差に応じて、病害にかかっていない幹(2)の体積の推定値を導出するために、前記測定量を前記理論量と比較するステップと、を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病害の病徴を示す果実植物の保存的処置方法に関する。特に、本発明は、一般的には処置できない特定の病害の病徴を示す果実植物の保存的処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
観賞植物の分野では、寄生虫及び真菌の病状に冒された樹木植物を処置する目的で植物保護物質を投与するためのエンドセラピーの使用は周知である。更に詳細には、エンドセラピーは、植物にとって可能な限り最も侵襲性の低い1つ以上のマイクロインジェクションによって栄養素及び/又は薬用物質を木部道管に直接注入するために、処置される植物の幹に少なくとも1つの穴を開けることを必要とする。このようにして、注入された植物保護物質は、葉に到達するまで植物全体に広がり、植物の内部に貯蔵され、時間の経過とともに連続的且つ絶え間なく作用して、植物に影響を与える病害を弱めることができる。
【0003】
果実栽培では、現在、一部の植物で非常に毒性の強い病害の最初の病徴が特定された場合、病害が近隣の健康な植物に蔓延するのを防ぐために、圃場で感染した植物を迅速且つ制御された方法で取り除く必要がある。
【0004】
より正確には、果実栽培者は、病害が圃場で広がるリスクを可能な限り減らすために、病害にかかった植物を排除することを目的としたクリアランスプロトコルを採用しなければならない。特に、このプロトコルでは、健康な植物の通常の剪定作業に使用されるものとは異なる道具を使用するように注意しながら、ほぼ基部で(例えばブドウの場合)抜根又は切断する必要がある。
【0005】
加えて、病害の最初の病徴は、通常、植物の成長期、すなわち、果実植物の生理機能のためにエンドセラピー処置を行うことが困難な期間、に特定されると理解すべきである。
【0006】
更に、植物保護処置の大部分が植物の成長期に集中していることを考えると、エンドセラピー処置に関与する作業者は、有害物質との化学的接触のリスクが高くなる。
【0007】
最後に、従来技術の更なる欠点は、病害にかかった植物の除去、収穫物からの収益の損失、及びその後の健康な植物の植え替えに起因する生産コストの結果としての増加である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本文脈中、本発明の基礎となる技術的課題は、先行技術の前述の欠点を克服する、病害の病徴を示す果実植物の保存的処置方法を提案することである。
【0009】
特に、本発明の1つの目的は、果実植物に対して効果的且つ同時に侵襲が最小限である果実植物の保存的処置方法を説明することである。
【0010】
本発明の別の目的は、果実栽培者の生産コストを最適化することができ、好ましくは病害の蔓延を防ぐために取り除く必要のある植物の数を減らすことができる、病害の病徴を示す果実植物の保存的処置方法を提案することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、処置自体を実施しなければならない作業者の健康を守ることができる、病害の病徴を示す果実植物の保存的処置方法を提供することである。より正確には、本方法では、果実植物の圃場で最も多くの処置が行われている期間に作業者の介入を必要としないため、実施される通常の処置に加えて問題の処置を実施するための、例えば全身保護服又はつなぎ服及び統合頭部保護などの過剰な数の安全装置を適用する必要がない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
記載された技術的課題及び特定の目的は、独立請求項に開示された技術的特徴を含む、病害の病徴を示す果実植物の保存的処置方法によって実質的に達成される。従属請求項は、本発明の更なる有利な態様に対応する。
【0013】
この発明の概要では、いくつかの概念を簡略化した形式で紹介するという点に留意すべきであり、以下で説明する詳細な説明で更に詳しく説明する。
【0014】
本発明は、病害の病徴を示す少なくとも1つの果実植物の保存的処置方法に関する。方法は、
-剪定ステップを経た病徴植物を特定するステップと、
-病徴植物の休止期又は栄養成長の回復期を特定するステップと、
-休止期中、例えば秋/冬の剪定期間中、又は栄養成長の回復期中に、病徴植物の幹に木部に達するまで少なくとも1つの穴を開けるステップと、
-上記少なくとも1つの穴によって木部に、処置液の、病徴植物の剪定された部分からの前記処置液の排出及び/又は前記病徴植物からの樹液の排出を誘発する量を導入するステップと、を含む。
処置される病徴植物は、好ましくは、直径が最大約15センチメートルの幹を有する果実植物である。
【0015】
有利には、上記方法の作業ステップは、樹液輸送(又は木部)道管が処置液の容易な導入及び流れを可能にする植物の期間中、好ましくは、各病徴植物の休止期又は栄養成長の回復期中に実施される。植物の生物学的サイクルは、実質的に、木部道管を通る樹液の流れの減少のために植物の重要な機能が中断又は大幅に遅くなる休止期、及び、木部道管を通る樹液の流れが完全に再活性化した結果として全ての植物器官の成長が起こる成長期を含む。
【0016】
換言すれば、上記の保存的処置方法により、病害の病徴を示す植物の幹の木部道管を通して、処置液、例えば栄養素及び/又は薬用及び/又は刺激性物質を容易に導入することが可能になる。実際、休止期又は栄養成長の回復期中、木部道管内の圧力は実質的にゼロであり、したがって、後者は物質(例えば、植物自体の樹液、又は木部に達するまで植物の幹に開けられた特別な穴を通して外部から導入された処置液)の容易な通過を可能とする。それはまた植物で行われた剪定により可能となる。このようにして、前記方法は、病害の増殖を抑制し、したがって、果実植物を最適な生育状態に維持し、高ストレスの状態に積極的に対応できるようにすることで、植物の生産性を維持することを可能にする。
【0017】
本発明の更なる特徴及び利点は、発明の詳細な説明と組み合わせて、本発明に基づく本発明の原理を説明するための添付の図面からより明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、保存的処置方法のステップ中の病害の病徴を示す果実植物の幹の断面の概略図を示す。
【
図2】
図2は、果実植物、特にブドウの様々な種類の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、病害の病徴を示す果実植物の保存的処置方法に関する。
発明の詳細な説明に照らして当業者に明らかであるべき修正又は変形は、技術的同等性の考慮に従って、本発明によって確立された保護の範囲内にあると見なされなければならない。
【0020】
植物学では、主に樹木又は実を結ぶ植物に関して、植物の年間サイクルは、休息期(「休止期」又は「冬眠期」としても知られる)と交互になる成長発達期(「成長期」としても知られる)によって特徴付けられる。
【0021】
したがって、本明細書において、「成長期」という用語は、全ての植物器官の成長活動が存在する期間に関連する。
【0022】
対照的に、本明細書において、「休止期」という用語は、植物全体又はその器官の一部で、重要な機能が中断又は大幅に遅くなる生物学的サイクルの期間(成長停滞、又は休息、又は休眠としても知られる)に関連する。
【0023】
果実植物について言えば、成長期は一般的に春に始まり、葉が自然に失われるまで続く。更に詳細には、この期間は、別の2つのサブ期間:多かれ少なかれ激しい栄養成長活動期、並びに花の原基を含む芽の形成及び発達に関する生殖成長期で構成される。
【0024】
したがって、休止期は葉の落下から始まり、冬の間続き、次の春の成長活動の開始で終わる。
【0025】
本発明は、病害の病徴を示す病徴植物1の保存的処置方法に関する。本方法は、好ましくは、小径、より正確には直径が最大約15センチメートルの幹2を有する果実植物を対象とする。
【0026】
例えば、本方法は、ブドウの生存及び生産性に大きな悪影響を与える広範な病害であるエスカ病の管理に適用できる。
【0027】
特に、保存的処置方法は、
-剪定ステップを経た病徴植物1を特定するステップと、
-病徴植物1の休止期又は栄養成長の回復期を特定するステップと、
-休止期、例えば、好ましくは果実栽培者の剪定に付随した(一般的には秋/冬)期間中、又は栄養成長の回復期中に、病徴植物1の幹2に木部4に達するまで少なくとも1つの穴3を開けるステップと、
-上記少なくとも1つの穴3によって木部4に、処置液の、病徴植物1の剪定された部分からの前記処置液の排出及び/又は前記病徴植物1からの樹液の排出を誘発する量を導入するステップと、を含む。
【0028】
有利には、木部道管内の圧力が大幅に低下する、又は更にはゼロである植物の期間中に作業ステップを実施することにより、以下で更に説明するように、作業上の障害を克服する必要なしに、処置液を病徴植物1の木部道管に非常に容易に導入することができる。更により有利には、介入(すなわち、休止期又は栄養成長の回復期における保存的処置方法の実施)の期間による木部道管内の低圧は、病徴植物1の剪定された部分の存在とともに、処置液を導入するために加えられる手動の圧力が比較的低いので、作業者が病徴植物1の木部道管4に処置液を低難易度で導入することを可能にする。
【0029】
本発明の一態様によれば、病徴植物1が病害を蔓延させるのを防ぎ、無病徴植物が存在する場合はその感染を防ぐために、作業者はその効率性及び有効性が最大になる期間に保存的処置を実施しなければならない。
【0030】
より正確には、作業者は、剪定ステップの後、休止期中、好ましくは剪定実施後数日以内、又はあるいはその後の栄養成長の回復期中に、処置液を導入するために、病徴植物1の幹2にマイクロインジェクションを実施しなければならない。
処置製品を注入するステップは、好ましくは手動で実施される。換言すれば、作業者は、特別な針7を備え、且つそれを処置液が入ったリザーバー8に接続するチューブに取り付けられた注射器6のプランジャーに、手の押しに対応する非常に小さな圧力を加える。
【0031】
有利には、剪定された部分から(休止期中に作られた「新鮮な」切り口から、又は栄養成長の回復期中の剪定切り口から)の処置液及び/又は樹液の排出は、作業者に、注射手順の正しい実施、したがって処置方法の正しい進行の即時確認を提供する。
【0032】
本発明の一態様によれば、各病徴植物1の幹2に少なくとも1つの穴3を開けるステップは、処置される病徴植物1の幹2の直径に応じて1~3つの穴3を開けるステップを含む。換言すれば、病徴植物1の幹2に開けられる穴3の数は、同一の病徴植物1の直径の増加とともに増加する。このようにして、本方法が可能な限り侵襲性が最も低くなるように、幹2に小さなサイズの多数の穴3を開けることが可能であり、同時に、病徴植物1の全体を、処置液の導入により処置することができる。
【0033】
特に、病徴植物1に対する保存的処置方法の侵襲性を最小限にするために、各穴3は、2ミリメートル~10ミリメートルの範囲の直径及び最大で20ミリメートルまでの深さを有する。
【0034】
本発明の別の態様によれば、各病徴植物1の幹2に少なくとも1つの穴3を開けるステップは、幹2の基部から、すなわち地面から約1メートルの高さで、30センチメートル~100センチメートルの間、好ましくは1メートル未満及び50センチメートル超である高さで、穴3を開けるステップを含む。
【0035】
図1は、病徴植物1、例えば、木部4の部分5が壊死状態にあるため、処置製品の注射を可能にするのに適していない、エスカ病に冒されたブドウの幹の断面を概略的に示している。
【0036】
各穴3は、植物にとって可能な限り最も侵襲性の低い正確な穿孔を達成するために、幹2に、好ましくは電気ドリルを使用して開けられる。
【0037】
壊死状態の植物の部分5に穴を開ける場合、作業者は処置液の注入を実施することができないため、幹2の別の部分に新しい穴を開ける必要がある。
【0038】
注入の終わりに、果実植物の種類及び生物季節学的段階に応じて、コーンスターチで作られた特別なプラグで穴を塞ぐことができる。
【0039】
本発明の一態様によれば、病徴植物1の木部4に作業者が導入する処置液は、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、及びヨウ化ナトリウム、並びに酪酸を含む熱水で強化された肥料製品、すなわち抵抗性誘導肥料を含む。
【0040】
本発明の別の態様によれば、処置液は、コロイド銀及び/又は肥料物質及び/又は植物保護及び/又は刺激物質を含む。
処置液は、好ましくは、果実植物(例えば、ブドウ、キウイ、ナシなど)を最適な成長状態に維持し、高ストレスの状態に積極的に対応できるようにする抵抗性誘導肥料を含む。
【0041】
更により好ましくは、処置液は、この物質として、コロイド銀を含み、木部道管を通って注入されると、果実植物の病害の進行を抑制及び阻止して植物の根系を維持し、その結果、病害にかかった植物を抜根し、それらを処分し、健康な植物を植え替えるという追加のコストを管理する必要なしに、その生産性を維持することができる。
【0042】
コロイド銀には、(植物保護製品がそうでありうるように)木材に存在する乾腐病又は細菌又は真菌を除去できる殺生物性(抗菌性又は抗真菌性)機能がない。実際、コロイド銀は、健康な木材(病害にかかった木材ではない)の木部道管を通って移動し、木材の病害にかかった部分5(例えば、壊死状態の部分)を健康な木材から閉じ込めて分離するバリアを形成する。このようにして、それは植物における病害の蔓延を防ぎ、それによりその弱体化、生産性の低下、及び果実の変質/非有用化を防ぐ。
【0043】
換言すれば、コロイド銀を含む処置液は、健康な木材の木部道管を維持して、病害の進行から植物を保護することを可能にし、これにより病気の進行は、停止するまで遅くなる。
【0044】
本発明の一態様によれば、剪定された病徴植物1を特定するステップは、以下のサブステップ:
-その成長期中に病徴植物1を特定すること、及び、
-病徴植物1を、その後の休止期又は栄養成長の回復期に特定できるように識別力のある要素で印を付けること、
を含む。
【0045】
一般的には、現れる病害の最初の病徴は、春/夏の成長期中に専門家の目で簡単に検出することができる。
【0046】
したがって、病徴植物1に印を付けることは、実際に好ましい場合のように、処置が、しばらく経ってから、例えば休止期中に実施される場合に特に有用である。
【0047】
この目的のために、1つの可能な例によれば、印付けは、大気条件に耐性があり、何年も長持ちすることができ、且つ植物を苦しめている病害の種類の指標を示すテープを使用して実施することができる。このようにして、病徴植物1の剪定作業は、例えば圃場又は果実植物園で隣接する無病徴植物で実施される処置とは別に、有利に管理することができる。
【0048】
本発明の別の態様によれば、剪定された病徴植物1は、以下のサブステップ:
-病徴植物1の休止期を特定すること、及び、
-処置液を木部4に導入するステップでの前記処置液及び/又は樹液の排出に有用な剪定部分を準備するために一部を切り取ることによって病徴植物1を剪定すること、
を含む剪定ステップにより得られる。好ましくは、本ステップは、ある量の処置液を木部4に導入するステップの最大15日前に実施される。
【0049】
換言すれば、病徴植物1の剪定が休止期に実施される場合に、幹2に穴を開けるステップ及び処置液を導入するステップは、剪定ステップから15日以内、好ましくは剪定ステップから1週間以内(後者は特に2つのステップの間)に行われることが好ましい。このようにして、剪定された部分の木部道管は開いており、木部4に処置液を導入した後、前記剪定された部分からの処置液の排出及び/又は樹液の排出を可能にする。
【0050】
剪定と保存的処置の間の期間がその制限である約15日を超えて延長される場合、剪定された部分の木部道管が瘢痕化する可能性があり、したがって、剪定された部分からの処置液の排出及び/又は樹液の排出が妨害されるため、処置液の導入を複雑にするか、又は更には不可能にする。したがって、このような場合、処置液による保存的処置の実施を延期し、栄養成長の回復期の開始を待つことが望ましい。この栄養成長の回復期に、剪定された部分の木部道管が自然に再開する傾向があり、したがって、樹液の排出が可能になる(実際、木部道管の再開により、植物の以前に剪定された部分からの少量の樹液の漏れが引き起こされるため、この期間は「出血」期間とも言われる)。
【0051】
エスカ病に冒されたブドウの例では、処置方法の実施は、植物の枝のリグニン化及び新芽の成長活動の再開を有利に可能にし、これは、完全な活動で植物の面積を広げ、連続性のある房(特に無傷で、膨潤した、完全に着色されたブドウ)の発達及び形成、並びに従来の技術(例えば、抜根及び植え替え)と比較して優れた費用便益比をもたらす。
【0052】
いずれの場合でも、特定された病徴植物1は、無病徴植物に使用されるものとは異なる道具(例えば鋏)を使用するように注意して剪定しなければならない。あるいは、無病徴植物への病害の伝染を避けるために、例えば第四級アンモニウム塩の15%溶液でそれらを完全に消毒する予防策を採用して、同じ鋏の使用が可能である。
【0053】
加えて、病徴植物1の剪定は、病害の伝染を許さないように、無病徴植物の剪定作業とは異なる時間に、後者に関して制御された方法で行われなければならない。
【0054】
本明細書で主張される保存的処置方法の適用に有用な剪定は、休止期中、好ましくは果実栽培者の通常の剪定より約20日前、又は栄養成長の回復期中に実施される。
【0055】
有利には、冬期、例えば11月の剪定は、病徴植物1の樹液を剪定された部分(いわゆる剪定「傷」)から排出させ、保存的処置の実施の最後に行われた切り口の部位で「天然消毒剤」として機能することができる。
【0056】
別々に管理して無病徴植物への汚染を避けるために、病徴植物1の剪定残留物を圃場から取り出さなければならない。
【0057】
更により有利には、休止期中(すなわち、一般的には冬の間)に処置を実施することにより、有利には、圃場全体が、植物保護処置、一般的には有害物質が多い春/夏の処置、を受けていない時期に、作業者が病徴植物にアクセスできるようになる(夏の処置は、一般的に、吸入又は皮膚と直接接触する場合に人間に有害な様々な要素の使用を伴う)。実際、作業者は必要な全ての保護を備えているが、汚染のリスクは常に最小限に抑えられている一方で、統合頭部保護を備えた全身保護服又はつなぎ服を使用すると、処置方法の実施がかなり複雑になる。
【0058】
本発明の一態様によれば、方法は、
-処置される必要がある病徴植物1のタイプを決定するステップと、
-対応する無病徴植物の幹の体積を推定するステップと、
-前述の推定量を処置するために必要な処置液の理論量を計算するステップと、
-上記病徴植物1に実際に導入された処置液の量を測定するステップと、
-処置液の導入量と処置液の理論量との差に応じて、病害にかかっていない幹2の体積の推定値を導出するために、上記測定量を上記理論量と比較するステップと、を更に含む。
【0059】
換言すれば、処置方法は、有利には、処置される病徴植物1を構成する木材の状態の推定を提供することも可能である。
【0060】
図2は、3つの異なる種類:平均高さL1が約80センチメートルのギヨー(guyot)、平均高さL2が約120センチメートルのコルドン(cordon)、及び平均高さL3が約170センチメートルのペルゴラ(pergola)のブドウの比較を概略図で示している。
【0061】
検討された前記3種類のブドウは、長さの異なる3本の幹2を有しており、木材の総体積は同じではない。したがって、種類ごとに、それぞれの幹2に処置液を導入することで処置可能な木材の総体積の平均値を計算した。したがって、木材の総体積の平均値ごとに、病害が無く、したがって処置液の正しい流れを妨げる欠陥(例えば壊死状態の部分5)が無いと仮定して、体積の全体に導入可能な処置液の平均値を計算した。
【0062】
換言すれば、果実植物の種類ごとに、幹2に開けられた穴3と無病徴植物の剪定された部分の間の木部道管を通って流れることができる処置液の量の平均値を計算することができる。この平均値は、それぞれの種類の無病徴植物の幹2を通って流れることができる処置液の最大量を特定する。
処置液を導入するために使用される注射器6は、一般に、約5ミリリットルの体積を有するリザーバー8を有する。幹2の木材の体積の平均値に従って、正確な投与量の処置液を果実植物に分配するために、好ましくは、目盛り付き注射器が使用される。
【0063】
一般的には、少なくとも6ミリリットルの処置液が植物の木部4に導入される。好ましくは及び有利には、注射器6のリザーバー8の容量が導入される必要のある量よりも小さい場合、注入の繰り返しを数回実施することによって、約12ミリメートルがその中に導入される。
【0064】
注射器6のリザーバー8に挿入された処置液の実際の量を知ることにより、作業者は、病徴植物1の健康な木材の量を、その病徴植物1を通して導入された処置液の量の値を決定するだけで推定することができる。
【0065】
例えば、処置液の量の平均値の4分の3が病徴植物1を通って流れる場合、作業者は病害の進行が比較的低く、時間の経過とともに停止した場合でも、果実植物の生産性はまだ許容範囲内であると推測することができる。対照的に、病徴植物1を通って流れることができる処置液が、無病徴植物について計算された量の平均値の半分以下である場合、病害にかかった植物は病害の非常に進行した段階にあり、生産性が著しく損なわれるため、将来その除去が必要になる可能性がある。
【国際調査報告】